諸外国におけるポジティブ・アクション(P・A)に係る規定等(概要)
  アメリカ EU イギリス フランス ドイツ スウェーデン 日本
ポジティブ・アクション
(P・A)を許容する根拠規定等
○法令に明文の規定なし。
※裁判所については公民権法706条(g)に基づき、差別に対する救済措置としてアファーマティブ・アクション(A・A)を命ずることができる。

○連邦最高裁は公民権法第7編の趣旨に合致することを認め、一定の範囲内で許容。
○EEOCガイドラインに規定
・A・Aの実施が適切な場合として、(1)不利な影響を生じさせている慣行の存在、(2)過去の差別的慣行の影響の存続、(3)過去の排除を原因とする登用可能な層の不足
・A・Aの手順として、(1)合理的な自己分析と、(2)これに基づく合理的な根拠に基づく計画の下での合理的な行動、(3)さらにそれが文書化されていることが必要。
○欧州共同体設立条約
 職業生活の慣行における男女の完全な均等待遇を確保するために、均等待遇原則は、加盟国が、より少数の性に属する者が職業活動を追求することを容易にし、または職業経歴における不利益を防止しもしくは保障するために、特別の便宜を提供する措置を維持しまたは採用することを妨げるものではない。(条約141条4項)(1997年)

○男女均等待遇指令
 加盟諸国は、実際に男女の完全な均等待遇を目的として、欧州共同体設立条約141条(4)の意味する範囲内の施策を維持または採用することができる。(指令2条8項)(2002年)
※2002年改正前の2条4項
「・・女性の機会に影響を及ぼす既存の不平等を排除することにより、男女の機会均等を促進する措置を妨げるものではない・・」
○性差別禁止法
 限定的に、過去12ヶ月間に、グレート・ブリテンにおいて当該性の者でその仕事を行う者が全くいないか比較的少数の場合において、女性または男性にのみ、(1)その職務に適合するのに役立つ訓練施設の利用を認めること、(2)職務を行う機会の利用を奨励すること等の場合のみ、許容される。(法47条他)
○労働法典
・法123条-1,123条-2の規定は、男女の機会、とくに女性の機会に影響する事実上の不平等を是正して平等を確立するために、女性に対してのみとられる暫定的措置の実施を妨げるものではない。(法123条-3)(1983年)
○民間部門を対象とした明文の規定なし。

○公務部門を対象としたものとして、「連邦行政機関及び連邦裁判所における女性の雇用促進並びに家庭と職業の両立のための法律」(1994年)
 女性はこの法律の基準に基づき、適正、能力および専門の仕事についての優位を考慮して、雇用を促進される。個々の部門で雇用されている女性が男性よりも少数である限り、決められた基準目標に即して女性の割合を高めることも雇用促進の目的である。男性並びに女性のための家庭と職業の両立も同様に促進すべきものである。(法2条)
○機会均等法
・P.Aに対しては差別禁止を適用しない(法15条2項)(2000年)
・使用者はその活動の枠内で、職業生活における男女平等を促進するために、目標に向けた努力を行う(法3条)(1991年)
・使用者は教育訓練・能力開発その他適切な措置により、各職種における男女比および異なる職種間の男女比を均等にするよう努力する(法7条)(1991年)
・使用者は、求人に際して男女両者が応募できるように努力するものとする。(法8条)(1991年)
・使用者は、ある特定の職種あるいはあるカテゴリーの労働者の中で性の偏りがある場合には、少ない性の応募者を採用するよう努力する。(法9条)(1991年)
○男女雇用機会均等法
 事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げない。(9条)(1997年)
ポジティブ・アクション
(P・A)施策
【政府の活動】
○大統領命令11246,11375号
 50人以上の労働者を雇用する年5万ドル以上の政府契約を締結する事業主等は、マイノリティや女性の活用状況に関する統計的分析と計画の実施方法を盛り込んだ計画を毎年作成し、実行しなければならない。

○OFCCP規則(41CFR60-1.7)
 上記の事業主に加え、100人以上の労働者を雇用する事業主は、毎年、労働力構成の報告書をOFCCP及びEEOCに提出しなければならない。
○EEOCにおいて、ベスト・プラクティスの報告書の作成(1998年第2版)・普及
○グラスシーリング委員会提言(1995年)
○717条に基づく連邦公務員のアファーマティブ・アクション実施。

【民間団体の活動】
○カタリストの活動
 会員数284のNPO(1962年設立)。女性がビジネス・職業において能力を最大限に発揮できるようにすること、企業が女性の才能を十分に活用できるようにすることを目的として、出版、調査研究、助言制度、企業役員会への援助、カタリスト賞の授与などの活動を実施。
○第1次アクションプログラム(1981年-1985年)
(国家レベルの法的枠組みによってP・Aを展開する方針の提起)

○女性のためのP・A促進に関する理事会勧告の採択(1984年)
(女性が少ない分野でのP・Aの実施等)

○P・Aのガイドの策定(1988年)

○第2次アクションプログラム(1986年-1990年)
(P・Aを通した総合的な特別措置の採用を指摘。特に公共が模範となるべきこと、女性の意思決定への参画促進等を提言。)

○第3次アクションプログラム(1991年-1995年)
(「女性のための均等」を「男女のための均等」と位置づけを正す。)

○第4次アクションプログラム(1996年-2000年)

○第5次アクションプログラム(2001年-2005年)
【政府の活動】
パンフレット等を作成して、周知。

【民間団体の活動】
○オポチュニティ・ナウの活動
 女性が働きやすい環境を創造する企業参加型のキャンペーン活動から生まれた、公共団体、民間企業、高等教育機関により構成されている会員数364の団体。1991年に活動が開始された。リサーチ、ベンチマーキング、表彰、ベストプラクティスの認識と会員への情報提供を行っている。
【政府の活動】
○「労働法典」
・毎年企業委員会等への「男女の雇用及び職業訓練の一般条件の比較状況」報告書の提出を義務づけ
(法432条-3-1)(1983年)
・企業内の義務的年次交渉において、男女間の職業上の平等等をとりあげることについて義務づけ。
(法132条-27)(2001年)
・報告書に基づき、労使の協議により男女職業平等計画を策定することが想定されており(法123条-4)模範的な男女職業平等計画等に対して財政援助を行う。
(規則123条-6)(1983年)
・労働協約において、3年に1度男女間の職業上の平等を確保するための措置及び確認された不平等を改善するための是正措置について交渉する旨規定。
(法132条-12)(2001年)

【民間団体の活動】
○労働組合の活動
 職業における平等ガイドの配布。
【政府の活動】
○「連邦行政機関及び連邦裁判所における女性の雇用促進並びに家庭と職業の両立のための法律」
・3年毎に女性雇用促進計画の作成・公表。(法4条)
・統計資料の報告、提出(法5条)
・女性の雇用促進義務(法7条)
・女性問題委員の任命(法15条)

○EUの方針に沿い、偏見除去等意識の改革に向けた周知。

【民間団体の活動】
○E−クオリティー・マネジメントの活動
 1996年に協会設立。企業の自主的な機会均等政策を促進することを目的として、機会均等政策において優れた企業に「トータル・イー・クオリティ」の称号を与える運動。有力企業、労使団体、省庁が参加して発足。
【政府の活動】
○「機会均等法」
・10人以上の被用者を雇用する使用者は、毎年平等に関する職場計画(労働条件、採用等に関する措置の概要を示した上、そのうち当該年に開始するか、次年に実行することを計画している措置を示す。また、同一賃金に関する行動計画の総括的な報告も含む。)を策定しなければならない。(法13条1項、2項、4項)
・次年の計画においては、法13条1項により計画した措置の実施状況について報告するものとする。(法13条3項)
・機会均等オンブズマンは、計画を精査する。P.A等の規定を使用者が遵守するよう指導・監督調査を行う(法30-33条)違反した使用者に対しては、機会均等委員会が罰金を課すことができる。(35条)

【民間団体の活動】
○経営者団体「スウェーデン産業」およびこれに加盟する産業別組織の活動
 機会均等計画作成、実施についてのセミナーを行うなどの啓発。

○労働組合の活動
 雇用主が機会均等計画を作成する際に労働組合も状況分析などを行って関与。
【政府の活動】
○P・Aを講じようとする事業主に対する相談援助。

○女性の活躍推進協議会の開催。

○パンフレット等による周知・啓発。
特記すべき施策 ○家族・医療休暇法(1993年)(育児休暇、介護休暇、病気休暇、出産休暇の付与の義務づけ。) ○欧州産業経営者連盟(UNICE)、欧州公共企業体センター(CEEP)、欧州労連(ETUC)により締結された育児休業に関する枠組み労働協約に関する1996年6月3日の指令96/34/EC(働く親の親としての責任と職業的責任の両立を容易にするために考案された最低要件を規定。) ○長期の出産休暇制度(育児休暇制度はなし)。2003年から父親の出産休暇が新たに施行。 ○労働法典において、育児休業、看護休暇、付添親休暇、終末介護休業が認められている。休暇中の賃金の補填として、社会保障法典により、手当制度が定められている。 ○育児休業制度の改革(2000年)(子が満3歳になるまでの「親時間」の取得、2歳になるまでの育児手当の受給、親時間中のパートタイム労働の許容、親時間中の解雇の禁止等。) ○育児休暇(親保険)(子供が満8歳になるか基礎学校第1学年を終了するまでに、所得保障付きで合計480日間取得可能。さらに、臨時親保険もあり。)
○労働時間の短縮(8歳以下、基礎学年第1学年終了までの子供がいる場合は、労働時間を4分の3に短縮可。)
○育児・介護休業法(育児休業・介護休業等の義務づけ。)(育休:1991年、介休:1995年)
○両立支援策に係る雇用改善のための事業主に対する助成金の支給。
雇用者総数に占める女性の割合 47.2%

出典※(1)
  49.4%

出典※(1)
46.0%

出典※(1)
44.9%

出典※(1)
50.3%

出典※(1)
40.5%

出典※(2)
女性の管理職割合 民間:45.5% 公務:51.4%
全体:45.9%

出典※(3)
  民間:28.0% 公務:40.0%
全体:32.3%

出典※(4)
民間:31.7% 公務:30.0%
全体:34.4%

出典※(6)
民間:19.8% 公務:28.9%
全体:26.9%

出典※(5)
民間:16.5% 公務:51.5%
全体:31.5%

出典※(7)
民間:11.3%
公務:5.5%
全体:10.9%
出典※(8)
男女賃金格差)(男性=100) 76.0%

出典※(9)
  80.6%

出典※(5)
79.8%

出典※(5)
74.2%

出典※(5)
82%

出典※(10)
66.5%

出典※(11)
平均勤続年数 男性:7.9年
女性:6.8年
出典※(12)
  男性:8.9年
女性:6.7年
出典※(12)
男性:11.0年
女性:10.3年
出典※(12)
男性:10.6年
女性:8.5年
出典※(12)
男性:10.7年
女性:10.4年
出典※(12)
男性:13.5年
女性:8.8年
出典※(11)
※(出典)
(1)ILO Year book of Labour Statistics 2001/(2)労働力調査(平成14年)/(3)Employment &Earnings 2002/(4)Woman&Equality Unit(2001)、Office for National Statistics(2003)/(5)ILO Year book of Labour Statistics 2000/(6)ILO Year book of Labour Statistics 2000、フランスキリスト教労働者同盟CFTC(1999)/(7)ILO Year book of Labour Statistics 2000、Women and Men in Sweden(1998)/(8)2000年国勢調査/(9)Employment &Earnings 2001/(10)Wage/salary statistics,Statistics Sweden(1998)/(11)賃金構造基本統計調査(平成14年)/(12)OECD Employment Outlook ,1997

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