05/03/30 第1回母性保護に係る専門家会合議事録             第1回母性保護に係る専門家会合                        日時 平成17年3月30日(水)                           14:00〜                        場所 専用21会議室17階 ○職業家庭両立課長(麻田)  ただいまから「第1回母性保護に係る専門家会合」を開催いたします。本日はお忙し い中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。第1回目の会合ですので、 座長選出までの間、事務局で司会をさせていただきます。私は雇用均等・児童家庭局の 職業家庭両立課長の麻田と申します。どうぞよろしくお願いします。それでは開催にあ たりまして、大臣官房審議官の北井よりご挨拶を申し上げます。 ○大臣官房審議官(北井)  雇用均等・児童家庭局の北井と申します。この度は大変お忙しい中、「母性保護に係 る専門家会合」にご参集いただきまして、心からお礼を申し上げます。本来なら局長も 出席する予定でしたが国会に呼ばれていますので、代わりまして一言ご挨拶を申し上げ ます。  雇用均等行政の最大の目的である男女が共に十分能力を発揮して、その職場生活で充 実した生活を送れるという社会の実現に向けて、私どももいろいろ対策に取り組んでい るところです。昨年の9月からは、男女雇用機会均等のさらなる推進に向けて、労働政 策審議会の雇用均等分科会におきまして、改めて幅広い検討を始めていただいていると ころです。こうした中で、母性保護の問題については、昭和60年に最初の均等法ができ た時代、それから平成9年に均等法を改正した時代、共に大変重要な問題であり、その 時代時代に専門家の先生方にお集まりいただいて、いろいろご審議をいただいて改正し てきました。まだまだ従来から課題とされた事項が残っています。したがいまして、厚 生労働省としては、この機会に改めて先生方にお集まりいただいて、母性保護について の適切な規制のあり方について、医学、労働衛生面も含めた専門的見地からのご検討を お願いします。なお、ご意見を取りまとめていただきたい時期としては、一応今年の夏 ごろまでにお願いしたいと存じます。大変お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願い します。 ○職業家庭両立課長  それでは本専門家会合にご参集いただいた皆様方のご紹介をいたします。資料No.2 に名簿があります。北海道大学大学院医学研究科教授の岸委員です。福島県立医科大学 医学部教授の佐藤委員です。日本大学大学院理工学研究科教授の城内委員です。総合母 子保健センター愛育病院院長の中林委員です。産業医科大学教授の森委員です。なお、 本日は村田委員はご欠席です。続いて、事務局から本会議の開催要綱についてご説明い たします。 ○職業家庭両立課課長補佐  資料No.1に沿って、本会合の開催要綱についてご説明いたします。「母性保護に係 る専門家会合開催要綱」について、本会合の趣旨は、女性に妊娠又は出産に係る機能に 有害である業務、具体的には、重量物の取扱い業務及び有害物の発散する場所における 業務については、妊産婦以外の女性、すなわち一般の女性に対しても就業が現在の法律 では禁止されています。これについて、平成9年の男女雇用機会均等法の改正時に、や はり母性保護に関する専門家会合を設けて検討した際に、重量物取扱い業務については 「今後の課題として引き続き検討することが必要である」とされています。また、有害 物の発散する場所における業務についても「新たな医学的知見を踏まえ、継続的に検討 していくことが必要」とされています。  今般、男女雇用機会均等の更なる推進についてということで、労働政策審議会雇用均 等分科会で検討を開始しています。こうした中で、母性保護に関して課題とされた事項 があることを踏まえて、母性保護にかかる規制のあり方について、専門的見地から検討 を行っていただくことがこの会合の趣旨です。  検討事項については2点挙げています。「重量物取扱い業務及び有害物の発散する場 所における業務の母性に与える影響等」が1点目です。2点目は「その他」です。具体 的には産前産後休業のあり方を想定しています。運営については、母性保護に係る専門 家会合の位置づけは、雇用均等・児童家庭局長が有識者の参集を求めて、開催する会議 であるという位置づけです。本日、委員は1名ご欠席ですが、6名の有識者の参集を求 めて開催する会議で、必要に応じて関係者の出席を求めることができるものです。な お、専門家会合の座長は、参集者の中から互選により選出し、専門家会合の庶務につい ては、私ども雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課で処理させていただきます。このよ うな要綱で開催させていただきます。 ○職業家庭両立課長  それでは本開催要綱に則して、今後の会議を進めさせていただきます。まず、開催要 綱に基づいて座長の選出をお願いします。座長は参集者の中から互選ということです が、事務局からの提案として、中林委員にお願いしたいと思いますがいかがですか。                 (賛成の声あり) ○職業家庭両立課長  それでは、中林委員に座長をお願いして、以下の議事進行をお願いします。 ○中林座長  それではこの会議の座長をさせていただきます。まず、事務局から説明をお願いしま す。 ○職業家庭両立課長  まず公開の取り扱いについてご相談させていただきます。資料No.3をご覧ください。 この会合の公開の関係をどのように取り扱うかについてです。このような専門家が集ま る会合は、最近公開が原則になっており、本専門家会合におきましても会議、議事要 旨、資料を公開とするような取扱いで進めていただければと考えています。ただし、通 例、特段の事情がある場合には、会合の決定をもって非公開とすることができることが 多くなっており、いま特に想定しているものがあるわけではないですが、専門家会合に おいても、他の会合の例に習って、1、2、3、4と並べた具体例に当てはまる場合に は、会議を非公開にすることができる形で運営していただければと考えており、ご提案 させていただきます。 ○中林座長  このような事務局からのご提案ですが、皆様よろしいですか。                   (了承) ○中林座長  ありがとうございます。それではこの公開の原則に従って行いたいと思います。それ では、次の資料の説明を事務局からお願いします。 ○職業家庭両立課課長補佐  資料No.4、5、資料No.7−1、資料No.7−2、資料No.8について順次ご説明いた します。はじめに現行の母性保護に関する法律の制度、規制がどういったようなものに なっているのか、現状について資料No.4で説明いたします。  資料No.4で「妊産婦等の就業制限の業務の範囲」という一覧表にしております。こ の規制は、どこのどういった法律で、どういうふうにかかっているのかですが、労働基 準法上の規定になります。労働基準法上、第64条の3において、妊娠中の女性及び産後 1年を経過しない女性を「妊産婦」と呼び、こういった妊産婦について重量物を取扱う 業務、有害ガスを発散する場所における業務、その他、妊娠、出産、哺育等に有害な業 務に就かせてはならないという一律の禁止規定を置いています。  この他に妊産婦に禁止されている業務のうちで、さらに女性の妊娠、出産にかかる機 能に有害である業務について、妊産婦以外の女性に関しても準用することができるとい うことで、要は就かせてはならないという制限を置くことができます。  それでは具体的にどういった業務が、どういった範囲で、例えば妊産婦や女性一般に 禁止されるのかは、女性労働基準規則という省令で定めることになっています。それは 2頁以降の「妊産婦の就業制限の業務の範囲等」で一覧になっています。この一覧で見 ていただくと若干わかりにくいものですから、それを表にしてまとめたものが1頁戻っ て「妊産婦等の就業制限の業務の範囲」になります。ここでは1号から24号までという ことで、24種類の業務を、妊産婦等に就業制限をかける業務として規定しています。こ の表の見方は、○△×になっています。○は就業してもいい業務。△は請求があった場 合に就業させてはならない業務。×は就業をさせてはならない業務となっています。  基本的には1号から24号のうちの22個については、基本的に妊婦、産婦についての就 業、要は妊娠中、産後1年の制限になっておりますが、そのうちの1号、重量物を取扱 う業務。18号は鉛、水銀、クロムという有害物の物質の発散する場所における業務、こ の2種類の業務については、妊婦、産婦、その他の女性について、すべて×が付いてい ます。この2種類の業務は、女性一般について妊娠、出産に係る機能に有害である、と いうことで現在就業制限がかかっている業務です。  1号の重量物を取扱う業務については、その下の表を見ていただくと、年齢と作業形 態によって重量制限の上限が決まっています。例えば満18歳以上で見ますと、断続作業 で30kg、継続作業で20kgという重量物を扱う業務の制限がかかっています。  有害物質は、18号で鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、 アニリン、その他、これらに準ずる物質のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所におけ る業務ということで、このような物質が発散する場所において、女性は妊娠している、 していないにかかわらず就業ができない規制です。それでは法律上の規制の様態はこう いうものであるとして、実際の就労実態はどうか。これはデータがなかなか取りにくい 部分があるのですが、資料No.5で把握できるものを少し出しております。  「危険有害業務への就労実態について」は、女性のみについて業務の規制がかかって いるので、女性の活躍を推進する上での問題であると思うかどうか。厚生労働省でやっ ている女性雇用管理基本調査の、平成15年度の調査によると、女性の活躍を推進する上 での問題点ということで、複数回答を挙げていただきましたところ、こういった労働基 準法上、重量物の取扱い、危険有害業務について制約があることが、女性の活躍を推進 する上で問題であると答えた企業の割合は、全体として14.1%になっています。表の中 の網掛けがしてある部分です。これもかなり産業によってバラつきがあります。重量物 や危険有害業務が割とあるのではないかと考えられる鉱業、建設業でこれを問題として 挙げる企業の割合が高くなっています。  次に、どれぐらいの事業所に、どれぐらいの割合でこういった作業があるのか。平成 13年の労働環境調査から少しデータを引っ張っています。これで事業所に有害業務があ ると答えた事業所は32.6%。そのうち鉛や有機溶剤、重量物を取扱う業務があると答え た企業は、この表に示すとおりになっています。ただ、これについては鉛や重量物を取 扱う業務で調査をしていますので、必ずしもこれが女性労働基準規則、法規制がかかる ような業務と一致するものではありませんが、1つの参考としてこの程度の企業で重量 物や有機溶剤を取り扱ったりしているデータとして考えていただければと思います。  この企業の割合は、従事している労働者で見たらどうかということで、労働者割合で 見ると、やはり男性のほうが多いが、女性でも2割弱有害業務に従事している割合が出 ています。男性は46.4%であるのに比べて、女性はかなり低い数字になっている状況で す。  データ的なものとしては、危険有害業務の就労実態を一定程度把握することはできま すが、そうは言っても事業所や業態によって違いがありますから、重量物や危険有害業 務が割と多いであろうと思われる業界、業種の方に少しお話を聞かせていただいた結果 をまとめたものが、資料No.6です。  これは昨年、鉄鋼業、サービス業の中で運送業、建設業の業界団体の方にお話を聞か せていただいた結果です。まず鉄鋼業は、現在の状況としては、鉄鋼業の現場製造ライ ンといった所には、女性はほとんどいない。検査作業やシステムを処理する工程管理と いった所に女性がいることはある。検査作業の工程で重量物、一定の重量のあるものを 持ち上げることはないわけではないといった状況です。具体的に重量物といった場合、 どういった重量物を扱うものがあるのか。鉄鋼業になると、製鉄業のものすごく大きい ものから、町工場といった小さなものまであります。やはり重いものを取り扱うことに ついては、最も早く機械化が進んだ分野である。特にコスト面や現実的に考えても人的 に行うよりも、機械でやったほうが安上がりですし効率的ということでした。  小さい部品などの場合に出荷工程、つまりパレットや出荷する箱に物を詰める場合、 ある程度の重さがあるようですが、やはり重量は通常20kg前後ぐらいのものになってい るそうです。鉄でできてきたものは製品ですと大半がトン単位で、人力というような分 野ではない。有害物の発散する場所での業務に関してはいまも機械化を進めていて、実 際人が直接その場にいて関わることは少なくなってきているという状況をお話いただい ています。  次にサービス業のうち運送業です。運送業といっても、いろいろな形態がありますの で、それぞれの形態ごとにどういうような感じで伺っています。まず鉄道輸送です。鉄 道で大きな荷物を運ぶものについては、基本的に荷上げ、荷下ろしについてはフォーク リフトの機械作業、人力作業もそこに積み込むものがある。ただ荷物は1個口当たり通 常1kg程度、重くても30kgぐらいまでのダンボールでの積み込みが主である状況のよう です。ただ、現状では女性が就業している例は、伺った運送業の会社ではないとおっし ゃっていました。逆に女性が多いのは集配や引越になります。集配はいわゆる宅急便で すが、女性ドライバーが配送していることは結構ある。やはり女性の応募も増えてきて いる。これは宅急便ですので、1個当たりの小包みの重量は通常30kg未満で、30kgを超 えるような建材やドラム缶のようなものになると、荷上げ、荷下ろしは機械作業にな る。1人当たり、1日どれぐらいやりますかというと、小包みの配送数は約100個で、 1軒当たりの荷下ろし等の作業については2、3分になる。実際に重いとして、小包み を持っている時間がどれだけかというと、それよりは短くなるということです。  最近多いのは、女性スタッフだけの引越というサービスで、引越に女性スタッフを従 事させています。ただこれについても引越の荷物、いろいろな重さがあるのですが、作 業の目安としては、1人当たり1回で運ぶ重量は30kg未満になるようにしているそうで す。  次に、運送業であるのが倉庫内作業です。荷分けの発送元の作業で、ここにも女性ス タッフの従事が非常に多い。目安として、1回で運ぶ荷物の重量は大体30kg未満。そう いったダンボールが積み重なって、それを移動するのはフォークリフトのような機械作 業になる。この分野についても、コスト面を考えて機械化を進めてきている分野ではあ るそうです。  最後に、こういった業務があることを想定して伺ったのが建設業です。これは実際聞 いたところ、妊産婦等の就業制限がある作業については、現実に女性全般が就いていな い。女性がこういう所で働いている現状はあまりない。建設業も、サービス業と運送業 と同じようにいろいろありまして、ダム、道路をつくるといった土木工事関係の分野 と、家を建てるという建設の分野、建築関係がある。土木関係になりますと、かなり重 いということで、最近はほとんど機械作業で、人力の作業は減ってきている。特殊な業 務については残っているそうですが、継続的に重量物を持ち上げる作業はめったにな い。石積作業というのがあるそうですが、これは持ち上げるというより並べる。これは 男性であっても、持ち上げるものが30kgを超えるとなかなかということもあり、20kg〜 30kgといったものではないかということです。  建築関係は土木関係よりも少し軽いですし、人力作業は多いということですが、継続 的な重量作業はほとんどない。当然、重いものについての移動は機械、車ですが、やは りそこで出てくる積み卸しは人力で行わなければいけない。業界ヒアリングをした結果 は、重量物や有害物の取扱い業務は、いまは機械化で減ってきている。20kg〜30kgでな いと持てないということでしたが、重量物を扱う業務、有害物を発散する場所がなくな っている状況で、もう全然ありませんということでもありませんでした。  次は資料No.7−1と資料No.7−2です。これまで、この規制についてどういったよ うな形で検討をしてきたのか、過去の状況を説明いたします。平成8年のものと昭和60 年のものです。この労働基準法の規制については、労働基準法が制定された昭和22年当 時からあります。いちばん最初、昭和60年に男女雇用機会均等法ができましたが、それ 以前については、重量物と一定の危険有害業務のみを女性一般に規制するという形では なくて、表に載っている業務については、妊娠している、いないにかかわらず、女性に ついて一般的にすべて就業禁止ということで規制してきました。  それを昭和60年に男女雇用機会均等法ができる際に、こういった業務について母性保 護の観点から必要なものと、そうではなく女性と年少者と同一に扱って体格の差、技能 の差をもって、女性一般に制限されていて、もうあまり意味がないものに分けて新たな 形で規制しました。そのときの議論については資料No.7−2で見ていただきますと、 「医学的・専門的観点からみた女子の危険有害業務の就業制限に関する研究報告書」の 中の3頁です。女性一般についての保護について、母性保護の観点から必要なものにつ いては残す、必要でないものは撤廃するということでした。今回、そういった検討を踏 まえても残っている重量物の制限に関しては、3頁の上から2番目のパラグラフで、重 量物の制限について、日常作業で一定限度以上の重量物運般が反復継続されると、子宮 脱垂を起こす可能性があるという報告が挙げられています。また子宮脱垂が多産による 影響も多いが、いまの段階で重量物についての法が不要であるということはできないの ではないか、というのが昭和60年の結論でした。そういった形で、重量物の制限につい ては女子一般の制限として、そのとき残すということになったわけです。  次に6頁です。危険有害業務、有害物質の発散する場所における作業についても、就 業制限のあり方について生産様式、作業方法の変化等々あるが、今後の医学的知見の進 歩等に応じて、今後も随時検討が行われるべきものだという形で昭和60年の結論になっ ております。こういった形で均等法の改正に合わせて、女性の保護の関係の就業制限に ついては整理をしました。その後、再度平成9年に男女雇用機会均等法の見直しが行わ れました際に、母性保護に関する部分についても、昭和60年の宿題を受けてどうかとい うことで検討を行いまして、その結果が資料No.7−1の専門家会議の報告書です。  4頁を開いていただくと、このときも重量物の取扱業務についてどうするか検討をし ていただきました。4頁の3の(1)重量物取扱業務の2番目のパラグラフですが、や はり昭和60年の研究会報告に結論づけている、重量物についての保護が不要であるとい うことはできないことについて、平成8年当時においても、これを否定する充分な知見 は見当たらないので、規制については維持になりました。生産様式や作業方法はいろい ろ変わってきていますので、こういった規定の必要性について今後とも課題として引き 続き検討すべきである、ということで宿題をいただいています。  有害物の発散する場所における業務についても検討していただいて、5頁に結論とし て出ております。鉛という物質については蓄積性があり影響があるということを踏まえ て、女子一般について有害物の発散する場所における業務の就業禁止という制度自体は いますぐ廃止ということではなく、今後も存続する。ただ具体的にどういった物質が有 害であるかどうかを含めて、今後とも新たな医学的知見を踏まえて、継続的に検討して いくことが必要である。この部分についても、随時検討すべきであると平成8年に結論 をいただいています。  こういった状況で昭和22年の制定から検討を踏まえて、現在に至っているというのが 現在の法規制の内容です。  参考までに、こういった規制について日本以外の国ではどういった規制をかけている のか、まとめたものが資料No.8です。わかりやすくかなり簡単な形でまとめておりま す。日本と同じように女性一般について一律に就業の禁止をかけているものがある、と いう規制のあり方をとっているのはフランスだけになります。フランスについては、日 本と同じように女性一般について一定の業務の就業を禁止しており、さらに妊産婦につ いてはもう少し厳しい就業制限をかけたりしている。同じく重量物、有害物質について も女性一般について、一定重量以上のものや、一定の有害物質にさらされる業務での就 業を禁止する法制度をとっています。  逆にフランス以外の国では、一律就業禁止という形をとっておらず、妊産婦について 一律に就業を禁止するタイプがドイツです。ILO条約での考え方は、妊産婦につい て、妊娠、出産は有害な業務に就くことが制限されているタイプです。重量物や有害物 質といったものも、妊産婦については制限の対象になっている。もう1つのタイプであ る、イギリス、EU(欧州連合)の統一した考え方については、むしろこういう一律に 規制をすることではなくて、妊産婦について一定の有害であるかどうか、問題があるの ではないかと考えられる業務については評価を行う。リスク評価を行い、こういった業 務が危ないとなった場合については、そうでない業務への転換をできるようにする形 で、一律に就業を禁止する形ではありません。  日本と同じような規制をしている外国の制度も少ない状況になっています。なお、フ ランスはEUの加盟国でもありますので、どういったようにこの規制を維持するのか、 しないのかということもあるのですが、私どもがいま把握した限りでは、フランスは今 後改正をどうするかという方向性を含めて、改正の動向についての確認はできておりま せん。まとめて説明いたしましたが、以上で資料の説明を終わります。 ○中林座長  ありがとうございました。この資料に関してご検討をいただく前に、今日の検討の趣 旨を事務局長からお話をしていただきます。 ○職業家庭両立課長  それでは本日の会合の検討の趣旨、視点についてご説明します。先ほど要綱、あるい は資料の説明をしましたが、平成9年の男女雇用機会均等法の改正のときの母性保護に 関する専門家会議がの報告書に「危険有害業務について引き続き検討する」と書き込ま れています。ここが宿題になっており、この点についていまの時点でどういうふうに考 えるかということがあります。  平成9年以降、医学、技術面での進歩、新しい医学的知見もあるかもしれません。職 場環境も変化してきて、また法制度も進展してきている。そういうことで労働者を取り 巻く状況はいろいろ変化していると思われますが、そういった状況を踏まえて、現在、 または将来において現行のような規制のあり方が適切かどうかについても、それぞれご 専門の立場から、ご議論をお願いしたいと思います。 ○中林座長  このような趣旨です。本日は第1回目ですので、比較的自由にそれぞれの委員のご意 見を頂戴したいと考えています。ちなみに平成9年のころは、当時の日母の坂元会長、 また九大の中野教授、日産婦学会の武田会長等で一度ディスカッションをさせていただ いたことがありました。その当時、新しい知見がまだ揃っていないということで、先ほ どの宿題項目が残っており、私はその中の1人の生き残りだったものですから、ここで 宿題をせよということと思いますので、よろしくお願いします。  最初に資料No.4から入りたいと思います。これは「妊産婦」と書いてありますが、 妊婦さんは、ここでは妊娠中の方のことで、産婦さんは産後1年までの方を言います。  資料No.4に関してはご質問はいかがですか。18歳で継続的には20kg、断続では30kg というのは、ちょうど海外のトランクのいちばん軽いほうが20kgで、ビジネスクラスか ファーストクラスですと30kg、その辺を想定して女性の重量物制限になっています。こ れに関して産科的な意味、または産業労働衛生のほうからご意見、ご質問があればお願 いします。 ○森委員  先に規制の内容について確認ということでお伺いします。重量物のほうは非常に明確 に何キロという数字が出ていて疑う余地もない。考えれば断続と継続はどう違うのかぐ らいの話かなと思います。一方で、18号の有害物に関しては、1つは「その他これらに 準ずる有害物のガス」で、実際に準ずるものの項目があるのかどうなのか。もう1点 は、「発散する場所」は、労働安全衛生法関係の規則の場合は、取扱う業務という規制 のかけ方をしています。この場合は発散する場所ということになっていて、その定義は 現在どういうふうに規制されているのか教えていただきたいと思います。 ○職業家庭両立課課長補佐  まずこれについては、18号のそれぞれの物質について、どういったような分量がある 場所です、ということは通達の中で示しています。「その他これらに準ずる有害物」と して、鉛の加工物、水銀の加工物等々の有害物を何個か通達の中で、これであるという ことで規制しております。これは委員がおっしゃるとおり、発散する場所ということ で、作業場の空気がこういった物質のガス、蒸気、粉じんを一定程度以上含有する場所 を言う、ということで通達上示しています。 ○森委員  例えば昭和60年9月の報告書の7頁にずっと化学物質が並んでいますが、この中で列 挙されているもの以外については、望ましいかどうかは別にして、特に規制という意味 ではかかっていない物質もあるという考え方でよろしいですか。 ○育児・介護休業推進室長  7頁の表に載っている物質ですが、通達も含めて規制がかかっていない物質もここの 表には入っています。 ○森委員  入っているということでいいですね。わかりました。ありがとうございました。 ○佐藤委員  20kg、30kgというのは、どこからこの数字が出てきたのですか。これは法律に労働基 準規則というところで、昭和61年に出ていますが、その根拠となる何かデータとか、そ ういうものはあるのですか。 ○中林座長  そうですね。この20、30kgというのは、非常にはっきりした数字ですので、これに何 か実験的な意味とか、いろいろなことがあるのですか。 ○佐藤委員  私が調べた範囲では、そんなことはどこにもないのですよね。外国ではないですね。 ○職業家庭両立課課長補佐  20kg、30kgの数字を含めて、昭和22年に労働基準法ができたときに、こういった形で 規制を作りました。昭和61年に女性労働基準規則自体を作り換えましたので、昭和61年 になっていますが、それ以前からこの数字が労働基準法に基づく省令に出てきていたも のです。 ○佐藤委員  もう前から出てきていた。その根拠は誰もわからない。 ○職業家庭両立課課長補佐  その根拠は、こちらも当時の書類を探したりはしたのですが、明確にこれだというも のはありませんでした。ただ、先ほど資料No.8でご説明したように、海外で規制をし ている国はフランスがありますが、フランスの中でも25kgと言ったり、40kgと言った り、いろいろしているものがありますので、ピッタリ20kg、30kgという同じものはあり ませんし、どうして21kgは駄目で、20kgならいいのだろうか、ということまでを私ども が探した限りでは、残念ながらわかりませんでした。 ○佐藤委員  わかりました。 ○中林座長  外国の女性と日本の女性と随分体型的にも違いますので、日本の標準の女性が30kgの ものを持つというと、かなり重そうに思いますが、がっちりした外国の女性が軽々と20 kgぐらいの荷物を持って歩くようなこともありますので、当時、20kg、30kgという数値 がよく出たなという感じはするのですが。  資料No.4は、有害物質のことと重量のことです。資料No.5は、女性の活躍の障害に なっているようなこととして、ここに挙げられているます。資料No.5と資料No.6を比 べ併せますと、最近の事業環境というのは、30kgのものを持たなければいけないとか、 20kgのものを常時運ぶという職場環境が非常に少なくなってきています。また、女性に 有害なもので、男性には有害ではないということはあまりないでしょう。妊娠していな い女性と妊婦との差に関しては、後ほどディスカッションすることにします。女性がこ れらの規制があるために、就労に問題が出てくるという、ここに書かれた内容とヒアリ ングの概要とはどう解釈すればいいのですか。この資料No.5と資料No.6を合わせます と。 ○職業家庭両立課課長補佐  どういう意図をもって企業さんが回答されたのかはわかりませんが、やはりある程度 ないと言っても、一定の危険な有害の業務はあることが1つ考えられます。  もう1つ、女性をそこに就けていない理由づけとして、やはり法律の規制があります から、ということを説明に使われる場合もあるのではないか。ただヒアリングをした中 でも、もう全くありませんよということではありませんでしたので、やはり業種によっ ては、こういった場合もあるのだろうと思います。 ○中林座長  重量物を取扱う所が多い運送業などでは、理由付けとして使われることがどうしても あるのですね。 ○職業家庭両立課課長補佐  敬遠されている場合もあるのではないだろうか、と。 ○中林座長  なるほど。その辺に関してはいかがですか。 ○森委員  有害物に関して、詳しい数字はまだ出ていないのですが、現状の職場環境に対する管 理濃度という法規制上の数字や、いわゆる許容濃度という、男性でもこれ以上では駄目 だよという数字と比べると、現行の規制の数字というのは、かなり高いレベルで昭和22 年時点で出ているので、そういうレベルの職場というのは、ほんの一部、残っていない とは言えないのですが、ほとんど実際上はない職場だと。むしろ、女性をそこに就けて はいけない理由づけにひょっとしたら使われている可能性はあるのかなと思うのです。 ○中林座長  考え方としては、女性に有害だと思うものは、男性にも有害なので、そのレベルにま で本来は下げるべきである。実際、森委員のお話ですと、現在のレベルでは十分そのレ ベルに下がっている、ということですか。 ○森委員  そう思いますが。 ○城内委員  皆さんと同じような疑問を感じています。重量物について言えば、ガイドラインです が腰痛予防指針というのがあって、それは男性でも20kgちょっと、女性でしたらもっと 少なくなるわけです。それは法律ではないのですが、そういうものがあって、なおかつ 30kgとか20kgという数字が生きていて、実際どうすればいいのかよくわからないので す。こちらのほうもよくわからないのです。つまり、本当に子宮脱垂がこれで起きたと いう例があって生きている数字であれば、それは腰痛よりも重篤な生体影響が出る数値 としては納得はしますけれども。実際同じ数字が、重量物取扱いについて2つ生きてい ることはちょっとわからないなというのはありますね。 ○中林座長  有毒物質に関してはどうですか。 ○城内委員  これもここの18号に挙げてある物質について、たぶん当時はいろいろな文献があった り、臨床の例があってこういうものが挙げられたのだと思います。例えばEU等で、こ ういうものを気をつけましょうというものと比べて、一致しているものもあるし、ここ に入っていないものもあるわけです。そういうものについて今後どんなふうに考えてい けばいいか、というところがポイントかなと思います。  これは今後のことになると思いますが、私が少しかかわっているのでお話させていた だきます。たぶん数年後には有害化学物質に、例えば生殖毒性がありますよ、というこ とがラベリングされてくると思うのです。そうしたときに、こういう法律、法律はリス ク管理の話ですので危険有害性の情報を伝達する意味でのラベルとは意味が違うのです が、ただそういうものが出てきたときに、じゃあ法律はどうなっているのか、というこ とがたぶん問題になるというか、課題にはなると思います。ですから、そういう広い視 野というか、視点で現状の法律を見直すほうがいいかなと思います。 ○佐藤委員  この重量物のことで言えば、これは将来子宮脱、下垂になりやすいので重いものを持 つのは駄目だというよりは、むしろ、妊産婦の場合には、早産や低出生体重児になるか らちょっとまずいということであって、そこの論点をどう解釈するかです。  例えば子宮脱の話をすれば、妊娠そのものが原因だと言われているわけです。それか ら重量物を取り扱っていた人と、そうでない人のコントロールを置いて行ったデータ や、エビデンスがないわけです。それに加えて言えば分娩が開始する前に帝王切開した 人と、そうでなく、経膣分娩した人が将来子宮脱にどのぐらいなるのかはまだわかって いません。  そういうことを考えると、いま論点は、やはり早産する、しない。低出生体重児を産 む、産まない。さもなければ、有害物質であれば奇形の問題、妊娠合併症の問題という ところに絞っていくのがまず第一義ではないかと思います。 ○中林座長  特に妊婦さんに関しては、性ホルモンの影響で全身のじん帯や関節等は緩やかになり ますので、それを支えるために筋肉が一生懸命張っているのです。ということは、普通 背骨がしっかりしていれば、あまり筋肉が張らなくてもしっかり立っていられるのです が、妊婦さんというのは赤ちゃんを出すために全身のじん帯が緩やかになって、そのた めに姿勢を正しく保つためには筋肉が張っているわけです。そのところに重い物を持つ と、さらに腰痛とか筋肉痛が出るだろうということは想像に難くないですね。妊婦さん にはあまり重い物を持たせると早産しそうだとか、または腰痛を起こしそうだとかいう ことで、我々も持たせたくないと思います。  それではお産が終わって産婦さんになると果たしてどうだろうか、ということはあま りはっきりしていません。また一般女性の重量物規制と子宮脱垂等の関係は、あまりに 駆け離れ過ぎていて、理論的には結び付きそうにないのですね。重量物の影響について は、男女差よりも個人差や年齢差が大きいので、この点は少し疑問は残ります。しか し、何かこれと言ったエビデンスが、全体としては重量物に関してはいまのところなさ そうですよね。  それから企業全体が重い物を人間に持たせようというよりは、そういうことは機械で やりましょうという方向になっているので、学問的な裏付けを付けて、重量物の規制を しましょうということにまでする必要がありますか? ○森委員  いま佐藤委員がおっしゃった中でいま考え方をまとめていたのですが、今回議論され ているのは妊婦、産婦に関しての規制ではなくて、一般女性に対する規制がまだ残って いるものについて議論しているわけです。そのときに先ほど妊娠から1年後までと言っ たときに、妊娠とはいつの時点で言うのかというと、使用者責任なので、妊娠がわかっ た時点ではなくて、使用者に申し出があった時点からしか、職場の中でそもそも管理が できないのです。 ○中林座長  産婦はお産をしてから1年以内ですよね。 ○森委員  だから妊産婦の規制なのですが、本人が妊娠をしたと。妊娠の診断が付いたと。使用 者に対して申し出があったという所は、規制はもしかすると、そのタイムラグの部分は 一般女性として規制するしかないのですよね。もしそこに本当に何かエビデンスがあれ ば、それは少し広げて考えましょうという考え方もあり得るかなと。ただそこになけれ ば、それも含めて逆に変な形で使われる規制なのではないか、という議論ができるのか と思います。 ○岸委員  いろいろあるのですが、有害化学物質について申し上げます。資料No.4の18号で、 女性労働基準規則第2条第1項で、鉛とか水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、 シアン化水素、アニリンという名を挙げられて、その後、これらに準ずる有害物質のガ ス、蒸気という辺りは非常に曖昧であるとともに、妊産婦ということを考えますと、こ こには女性でも男性でも、先ほど座長がおっしゃられたように、両性に対して非常に有 毒なものが挙がっています。過去のこの専門家会議あるいは研究会報告、昭和60年と平 成8年で見ますと、昭和60年のときには両方の危険有害業務、これは重量物と有害物質 と両方からかなり調べて作ったようですが、平成8年のときは双胎の妊娠中の休業につ いてはいろいろ掲げられているのですが、昭和60年から現在の平成17年まで、有害環境 についてはあまり文献を、さらに見直しをしていないように思えるのです。  そういう目でもう一度見てみますと、生殖次世代影響については、世界的に考え方 が、1990年代の初めぐらいに相当転換がありました。それは特に北欧やイギリスなどを 中心に、いろいろな面での転換があったのですね。いくつかあって、その考え方の大き なところは、生殖次世代影響の生殖のところが、妊娠のアウトカムばかりではなくて、 分娩のアウトカムばかりではなくてと言ったほうがいいかもしれません、双胎があると か流産が起こりやすいとか、そういうことばかりではなくて、受精の時期から生殖次世 代影響を考えるようになりました。つまり、妊娠がしづらくなったりすることに関して も生殖への影響と考えるようにと、これは男性も女性もそうなんです。  その背景にありますのは、DBCP(ジブロモクロロプロパン)のような男性の不妊 が非常に問題になるような物質、これは1980年の後半にアメリカのカリフォルニアの農 薬工場で非常に問題になって、かなりの男性が無精子症になってしまった。そういうと ころで、受精の時期から問題になったということと、女性ばかりでなく男性に関して も、生殖次世代影響というのを強く意識しなければ人類にとって、あるいは働く人にと って問題なんだということが出てきました。  そのころもう1つ、授乳中に、これはPCBなどは非常にはっきりしていますが、生 まれたあと、授乳可能な時期に母乳を通しての、経胎盤性のいろいろな問題もあるので すが、経母乳性のリスクもあるんだということもかなり指摘されました。ですからOE CDの次世代影響の、例えば動物実験で評価する評価の期間などに関しては相当いろい ろ見直しがありました。  動物実験ですと、ヒトと胎児の発達の時期が違いますので、例えば妊娠0日から、例 えばネズミが何かにばく露したとしますと、子どもの発達の時期が少しずれるのです。 特に中枢神経系の発達時期がずれますので、生まれたあともばく露を続けて、一定期間 まで動物実験を続けて、その結果をヒトに外挿するときに、そのリスク評価にとって価 値ある実験にしたいものですから、そういう見直しもかなりOECDを中心にされまし て、それは日本の中毒学分野でのばく露影響評価などでも、その方向でいろいろやって きております。  私はそういう意味で本日事務局のほうで用意された各国の危険有害業務に関わる規制 の状況、というのを非常に興味深くながめているのですが、EUとイギリスが比較的近 いやり方を取っている。ドイツとフランスについては、いままで改正の動向は把握でき ずということですが、このEUのやり方というのは、おそらく、1990年代初めの北欧の 見直しがかなり効いているのではないかなと思うのです。それでもしできましたら、私 も1993年ぐらいのときには、勉強のためにフィンランドやスウェーデンで開かれた会議 などに出て行きましたので、資料は持っているのですが、現時点でEUやイギリスがど ういうように危険有害業務一般で、妊産婦にリスクがあると考えられる業務について評 価を行っているか、また、もしこれが明らかになった場合、業務転換等の措置を講ずる と書いてある中身ですね。少し現時点での資料をお調べいただけるとありがたいなあ と。途中までの分は多少、私個人的には持っていますが、現時点のものは持っておりま せんので。  もう1つ追加しますと、1997年ぐらいから内分泌攪乱作用が世界的に非常に問題にな りましたので、論文の数が非常に増えていると思うのです。ですからリスク評価すると きに、特に昭和60年の段階で、ゼンツのディベロップメント・イン・オキュペーショナ ル・メディスンを準拠してこうしたその時点のゼンツのレビューの表はなかなかいい表 だったという記憶があるのですが、いまは教科書でそれをやることはとても。やはり教 科書は遅いですから、作るのが。ですから、いまも結構いい教科書はありますが、教科 書でそれをやるのはちょっとタイムラグがあるんですよね。ゼンツの最近のはあまり出 てないと思います。1回ぐらい書き直し、エディッションがかわっていると思います。 ですからもし何か調べるとしますとかなり。どういうやり方でやるのか。できるだけア ップデートなものがきちんと入っている資料集のようなものを、参考にされるほうがい いのではないかと思います。 ○中林座長  これはたしか北里大学の高田先生の班で、筑波大学の先生が男性不妊と、生殖毒性に 関して、数年前にまとめていたように思うのですが、ご存じではありませんか。高田先 生が、かなり大がかりな班会議をつくられて、それで泌尿器科の先生と私が参考人とし て呼ばれたことがあるのです。 ○岸委員  あのときはがん、生殖、神経と3本ありまして、私はあのときは神経のほうに入って いまして。 ○中林座長  そうでしたね。そのときに生殖毒性ということで、筑波大学の教授と私と泌尿器科の 先生と3名で少し意見をまとめた覚えがあります。それがいちばん最近のデータで、そ れ以降、そういった種類の班会議はないように思います。 ○岸委員  そうですね。いまそう言われてみて思い出しますと、あれは健康診断の項目について だったと思うのです。 ○中林座長  そうです。 ○岸委員  ですからこのリスク評価というよりも検診項目についてですので。 ○中林座長  検討項目の中のほんの一部しか健康診断には取り入れられなくて、将来的には生殖毒 性に関する発表に利用しようというお話でした。たぶんそのときの筑波大学の教授の方 がかなり資料を集めたと記憶しています。 ○岸委員  そのときのを参考にまとめたらよろしいかもしれませんね。 ○中林座長  私が資料を集めた平成8年のときはまだあまりなかったのです。そして高田先生がそ の会議を開かれたころに少し資料がそろってきたので、十分ではないけれど、検討はで きるぐらいにはそろっていたと思います。平成8年のころは双胎の産休が実質的には単 胎とあまり変わりなく、問題がありましたので、双胎と多胎の産休を延ばしましょうと いう話が中心になりました。これは双胎の産休を10週から14週に延ばすことにかなり仕 事を集中したために、その他の検討が若干不十分だったことは確かです。その後の資料 を集めて、これから十分に検討しようということは意義があることです。数年間の資料 を集積して、皆さんにお配りして、次の、検討会に使わせていただくということにしま しょう。いま世界的には、どの辺まで規制をしていったらいいかという話をまとめてい ったらいいのではないかと、岸委員の話から思いました。  受精着床になりますと、女性の仕事場のストレスが関係するといわれています。女性 のためには不妊症について別の機会に続けて検討はしたいと思います。今後の検討項 目、宿題として残したいと思います。  母乳とか、PCB、環境ホルモン。この辺は佐藤委員、最近のものは何かあります か。 ○佐藤委員  いろいろ言われていますが結論は出ていないと思います。 ○中林座長  母乳は、妊婦が食物を食べ、水を飲み、野菜を食べているとそこに含まれる物質が集 積して赤ちゃんにいくわけですから、母乳の成分はもっと考えなくてはいけないのだけ れど、それにもまして母乳のメリットが多いということで、母乳が推奨されているわけ ですね。環境ホルモンなどのいろいろなものの弊害よりも、母乳に関してはメリットが まさるとされているわけです。しかしいろいろな環境から母乳に入ってくるものは減ら したほうがいいに決まっているので、これは、全体としてはもちろん減らす方向にいく べきだろうと思います。  4、5、6の資料までいきました。7の資料、この辺に関してご質問またはご意見が ありますか。 ○城内委員  前の資料のことで1つ事務局のご意見をお伺いします。重量物を取り扱う業務という ことであって、最初の課長からのお話にもあったように、就業形態が変化してきたこと によるファクターも考えてということだったのですが、私がいまいちばん気になってい るのは、介護労働でいちばん現場で働いているのは女性で、女性の腰痛がすごく多いの ですね。8割ぐらいの方が腰痛だという調査結果もあります。それが先ほどからの、妊 産婦への直接的な影響がどうかはわかりませんが、現実として、重量物の取扱いで、な おかつ、介護の現場は重量物、重量物と言ってはいけないのですが、人間を扱うため に、非常に扱いにくいということが言われていまして、人間工学的には、取扱いが非常 に難しいということで注目されています。そこで是非介護のほうも、物ではないのです が、そういう視点でちょっと見ていただければと思いました。 ○中林座長  介護となるとこういう職業の中には、いままでは入っていないわけですが、今後は入 ってくる可能性は十分にあるわけですね。 ○佐藤委員  看護師だってそうでしょう。 ○中林座長  そうですね。この辺に関していかがですか。 ○職業家庭両立課長  重量物の中に要介護の高齢者の方などは、いまの解釈では入っていませんので、それ は腰痛防止のガイドラインとか、そちらの領域でカバーされる問題かと思います。 ○中林座長  患者とか、老人を扱う介護は、これから外れてしまうわけですね。 ○職業家庭両立課長  はい、そうです。介護とか看護とか。 ○中林座長  それのほうが大きな問題のように見えますね。機械で運ぶというわけにいきませんも のね。私どもが行った調査では、看護師とか麻酔科医とか、どうしても患者のために動 かなければいけない人ほど、切迫流早産が多いですね。ですから、そういう特殊な仕事 の人は何らかの形で、妊娠したら守らなくてはいけないし、そうでないときでも保護し なければいけない対象だとは思うのですが、これは、いまのこの範疇には入ってこない ということですね。 ○城内委員  人間は重量物ではないですね。 ○職業家庭両立課長  いろいろご指摘をいただくこともあるのですが。 ○中林座長  でも、どこかで検討する所はあるわけでしょうね、先ほどの、腰痛その他の防止のた めにとか。 ○職業家庭両立課長  はい、女性に限らない問題として問題はあるわけですので、現在の仕切りの中では、 そちらのほうで取り扱っているということになります。 ○岸委員  追加でお願いします。先ほどの高田先生の委員会、あれは、現状の健康診断項目でど ういう問題があるだろうかというような委員会だったと記憶するものですから、リスク 評価としては。私もあの時点で神経のほうのレビューを書かされまして、そのときは、 かなり限定した化学物質についてやった気もしますので、できましたら日本産業衛生学 会の許容濃度委員会、あるいはアメリカのACGIHの、ACGIHというのは、アメ リカン・カンファレンス・ガバメンタル・インダストリアル・ハイジーニストの略なん ですが、そのACGIHの許容濃度TLV、スレッショールド・リミット・バリュー (TLV)それを決めるときに、生殖次世代等に関する、例えば発がん性とかいろいろ な毒性をまとめて、それぞれヘッディングを出しながら書いていくのです。日本の許容 濃度委員会で、年間数件ずつは書き直しをしている。私は許容濃度委員会の委員でもあ るのでちょっと気がつきまして。ただ、ここ数年分書き直したものについては日本の許 容濃度委員会のドキュメントも、生殖次世代影響をヘッディングを出してやっているの ですが、それ以前から、例えば50ppmなら50ppmにリスク評価をして決めたものについて は、昔のことですので出していない、生殖次世代影響について整理していないのです。 できれば、その過去の中災防等がやったこと以外に、最近、特にアメリカとか、ドイツ も許容濃度かなりまとめていますし、EUでもいろいろやっています。それの、生殖次 世代影響について出されているものがあり、それはネットでも取れますし、それを見ま すとどんなふうにされているのか、どういうものを入れるとしているのか。先ほど申し ました北欧等で考え方が変わったときには、一群、二群、三群などというように、群を 分けてリスク評価をしていたはずなんです。これは先ほどの1993年代の自分が出ていた 会議という意味なんですが、最近はそれをどういうふうにしているのか、アメリカとヨ ーロッパの動向をちょっとお調べいただくと非常にいいと思います。手に入るはずです ので、お願いしたいと思います。 ○中林座長  事務局にお願いしたいということですね。 ○岸委員  はい、そういうことです。お願いしたいということです。 ○中林座長  是非、そういうことで資料をお願いします。7−2の資料ですが、これに関してはい かがでしょうか。ご質問またはご追加等ありませんか。分娩後の回復過程について、1 年以内の産婦に関する考え方は、子育てということと全身の回復ということと思いま す。産褥期というのは8週間、それでほぼ分娩に関係したものが元に戻りますが、それ 以降のことはどのような考え方になっているのでしょうか。 ○育児・介護休業推進室長  この報告書では分娩後1年で、おおむね妊娠前の状態に復帰すると考えてよいという ことで、その1年という期間をやっているということです。 ○中林座長  確かに排卵が回復したりとか、そういうことを見ますと1年近くかかりますね。しか し体力的には、重量物規制を1年間続けるというのは必要なんでしょうか?性器脱、子 宮脱の発生に関係するのでしょうか?母乳への影響は何かありそうな気はしますが。 ○佐藤委員  そういうエビデンスというのは、はっきりしたものは出ていないですよね。 ○中林座長  森先生何かご意見ありますか。  8頁の現行の就業制限業務について。これは先ほどの資料の4とほぼ似たようなもの ですが。これとほとんど同じですね。 ○職業家庭両立課課長補佐  これにつきましては昭和60年の改正前の項目が並んでいまして。その当時は妊婦、産 褥期以降の産婦、妊産婦以外の女子というのが、△、×、○ではなくて全部×だったわ けですが、この昭和60年にこういった分け方にしたらどうかと。 ○中林座長  変わったわけですね。 ○職業家庭両立課課長補佐  はい。 ○中林座長  発想としては、昭和60年と我々の発想はあまり変わっていないような気がします。  つぎは資料8です。海外の資料との比較です。日本は比較的フランスに近い立場をと っています。これを見ながら、いま岸委員からは、それに合わせたような方向をという ご意見が出ていますが、ほかにはいかがでしょうか。ただ、どの国もどういう業務が有 害なのかということに関しては、はっきり書かれていないですね。 ○岸委員  あるはずですが。 ○中林座長  そうですか。あるのですか。 ○岸委員  はい。それを出していただきたい。EUは特に。 ○中林座長  はっきりしているのですか。 ○岸委員  はい、EU全体でコミッティ開いたり、例えばスウェーデンの人、イギリスの人、最 近ですといろいろ、例えば5、6カ国集めて、何かを調査するとかいろいろなことをや っていますから、相当の資料を。資料も実際に作っていますし。ですからフランスだけ が独自ということはむしろ考えづらいのでお調べいただくほうが。EUとして全体でど ういうふうな方向にいまあるのか。 ○中林座長  「妊産婦にリスクがあると考えられる業務について評価を行い、それではっきりすれ ば措置を講ずる」ということになっていますから、何かあるのでしょうね。 ○岸委員  1993年ぐらいにすでに一群、二群、三群とかなんとかと分けて。たぶんそのことが 「評価を行い」ということの内容だと思います。「業務転換等の措置を講ずる」という ことと関連しますのが、妊婦が働くことを制限するというようなやり方ではなくて、た ぶん、働いている職場が、資料No.7−2の5頁ですね。「有害物質のばく露による影 響」という所で、現在のばく露環境が具体的に、かなりリスクを起こす可能性に近いと なったときに、その妊婦をどういうふうに措置するのかということに関して、いろいろ まとめを出しているはずです。それをお調べいただいて資料にしてほしいというのが、 私の希望です。 ○中林座長  そうするとこれは、次回までに、少し事前にいただければそれを見て、次回のディス カッションにするということでよろしいですか。 ○岸委員  はい、お願いいたします。 ○中林座長  妊娠中はいろいろな有害物に対して敏感だろうと思うのです。流早産、妊娠高血圧、 その他の異常を防ぎたいと思いますので、少しでも異常をおこす可能性のあるものは避 けたいですね。産褥期が終わった1年ぐらいに関しては、ヨーロッパではどういう規制 がかけられているかですね。それ以降に関してはだんだん、男性も女性も変わりはない という方向になりつつあるんだろうと思います。その辺は森先生、どういう考え方です か。やはり、1年経てば男性も女性も、あまり差なく働けますか? ○森委員  いまその話と関連づけて思ったのですが、岸委員がACGIHの次世代生殖毒性の話 を出されて、これは配慮したほうがいいだろうということになって、それに基づく許容 濃度が出たとしても。より女性のほうに影響があるからと言って、女性の許容濃度は何 ppmで男性の許容濃度は何ppmという設定の仕方は、基本的にしていないと思うのです。 そうすると基本的に、より低いほうに合わせていこうという話と理解するのはどうでし ょうか。 ○岸委員  私も1995年ぐらいに多少のレビューを自分で書いたことがありまして、そのときは、 アメリカとヨーロッパの考え方が違うのですね。アメリカはこういう影響があるという ことを、知らせることが非常に大事だということで、それはそこまでなのです。ところ が、1995年ですからまだECの段階かECからEUの段階か、そのころ、特に北欧で は、やはり次の世代への影響が気になるものですから、最初のトライメスターの時期と か、そういうところが非常にクリティカルですよね。そのときにその濃度と、その人が 働いている環境が、実際にどのくらいのばく露濃度なのかということを合わせないと決 められないわけですね。それで具体的に、例えばトルエンがいま50ppmだとしますと、 50ppmにかなり触れるような所で働いている場合、その人がどういうふうにするのかと いうことに関して、雇用者側に対しても、また、もし労働者として働いている人がコン サルテーションを受けたければ、両方に対して、例えばナショナル何々というような所 が相談の窓口を持っているとか、そんなようなことまでやっていました。それはフィン ランドの例です。  そのときどういう対応をとるかということは、いま森委員がおっしゃったようにかな り、その時点では、EUというように、こんなふうになるちょっと前だったと思いま す。北欧5カ国は比較的似ていまして、この事務局が用意されたものにあるように、こ れが明らかになった場合は業務転換の措置を講ずるとか、その業務にかわれるような、 その可能性を残しておくと言うのでしょうか。一定期間だけです。その時期が過ぎれば また戻ってというような、そういういろいろなコンサルタントをするとか何をすると か、いろいろなものを用意していくわけですね。そのあと、例えばオランダなどですと その濃度を、できれば、予防原則と言いますか、ア・プレコーショナリ・プリンシプル というような書き方をしていたと思いますが、何分の1ぐらいにすることが望ましいけ れども、いまはこういう競争時代だから、それでは企業がもたないことがあるかも。そ うなるとむしろ下げるよりも、その人は一定時間、一定時期だけほかに転換して戻れる というようにするとか、かなり弾力的なやり方をしていたと思います。それがここに書 いてあるEU、イギリスのやり方だと思うのです。 ○中林座長  それは妊娠中はとても大事なことだと思うのです。特に最近言われているのは、妊娠 中の低栄養が、子どもが生まれたあと、その子どもの成人病、つまり小学生、中学生で 糖尿病とか高血圧などの成人病になってしまうということで、胎内での栄養状況という のが大変大事だといわれています。これは職場環境にも影響されるかもしれませんが、 それらが先進国または北欧等で、どのくらい規制されているということは大事だろうと 思うのです。  それと同時に今度は、妊娠というのはたかだか8カ月か9カ月ですね。それが終わっ たあとではどういう規制があるのだろう。1年以上経ったらもうあまり関係ないのだろ うか。その辺の流れはいまどうなっているのでしょうか? ○森委員  基本的には今回残っている規制以外は男性と女性が同じように働けるということを目 標にし、重量物でもそうだと思うのですが、出産1年後の女性にとって辛い職業は、当 然男性にとっても辛い職業であって、そういうような環境を、規制とはまた別に、職場 としてはそれをやっていくというのが基本的な考え方だと思います。 ○岸委員  全くそのとおりで、日本では全般的に、女性がむしろ保護されて働いていないという ことを言うと、非常に驚かれると言いますか、ただしこういう、ここでお出しになって いるようなリスク評価をきちんとした上で対応しているので、一律のやり方はあまりし ないというほうが、委員の先生方が言われているように、ベターだというように私も認 識しております。 ○中林座長  そうするとエビデンスがはっきりしたものに関しては別にしていく、そうでないもの は一律にしていく。 ○岸委員  一律と言いますか、就かせないというようなことはむしろしないで。 ○中林座長  そういう差をつけない。 ○岸委員  はい。ただ、ヨーロッパなどは労働時間とか何か非常に、ある意味では日本とは違う 状態をとっていますので、そこの配慮は必要です。特に物理環境などに関しては配慮は 必要、配慮と言いますか、日本ではすぐ、全部一緒にしてしまって本当にいいかどうか ということに関しては、ちょっと考えながらやるほうがいいのではないかというように は、私は個人の意見としては思っております。 ○中林座長  最近では、生まれたあと半年ぐらいは母乳哺育です。いま母乳率が50%ぐらいありま すか。そうするとその間は、母乳にいろいろなものが出ますよね。次世代を考えるとそ の辺の影響は、どういう考えが主流になっているのでしょうか。 ○岸委員  それこそ事務局に少し調べてもらいたいのですが。 ○中林座長  宿題が多くて恐縮ですが。佐藤委員、いかがですか。 ○佐藤委員  私たちは専門家ではないのでわからないのですが、有害物質に対して、こういうもの を扱っている所では働いてはいけないというのはわかりますよね。いろいろなものがあ ってというときに、どのくらいのppmかわかりませんが、先ほど、スレッショールドとい うのがあるということですね。だけど、一般の人たちがいちばん心配しているという か、妊婦さんたちが心配しているのは、こういうのが書かれて出されると、私のいまの 職場は大丈夫なのか。そのときに、どこに行ってどういうものを調べて、どういうふう にしたらいいかというところがわからないと、世間一般を騒がせるだけで、いちばん困 るのは我々なのです。そこのところをきちんと指針をださないとこの規制法というのは 役に立ないと思う。 ○岸委員  全くそのとおりなのですね。私は大学で公衆衛生学あるいは産業衛生を教えていて、 日本医師会の産業医の認定の講習会などにもしょっちゅう行かされるわけですが、地方 に行って、産婦人科の医師で産業医をされている先生から、自分の職場の妊婦からこう いう相談を受けた、これはどういうふうに取り扱ったらいいかと、本当に真剣に、一生 懸命考えてくださっての質問をされます。まさに佐藤委員がおっしゃったそのもの。 ○佐藤委員  精神的に安心を得られる、または相談できることが必要ですね。 ○岸委員  そうなんですね。それを北欧などでは、相談窓口をちゃんと用意しているということ を、先ほどちょっと申し上げたのですが。 ○中林座長  日本の場合は、女性が子どもを産んでからも働くという歴史が比較的浅いものですか ら。結婚して妊娠したら仕事はやめよう。それで、職場環境によって次世代への影響と いうデータは、いままであまり持ち合わせていないのですね。我々も経験的にあまり知 らないのですね。ただ経験的には先ほど言った看護師とか麻酔医とか、そういう人に流 早産が多そうだなという感じはしているのですが、何がいけないのかに関して、はっき りしたデータがないのですね。世界の文献を調べて、妊婦に悪影響があるものをはっき りさせていくことは、必要なことだろうと思いますね。 ○岸委員  そうですね。ちょうどこの昭和60年に出されたのが均等法導入の時期だとしますと、 いまはむしろいろいろな職場に進出していってる時期ですので、いま座長がおっしゃら れたような相談はたくさん、現在も潜在化してある可能性があるし、これからもっとい ろいろな職場で女性に活躍してもらうためには、そこら辺を少しまとめる必要がありま すね。 ○中林座長  安全に活躍してもらうために必要な項目は、できるだけ早急に決めたいですね。 ○岸委員  そうですね。日本もそれに対応するようにしますと。重量物の問題も非常に重要だと 思うのですが、もう1つ、この有害環境、危険有害業務の中の化学物質、特に新しい化 学物質も非常に増えていますので、そういうことも含めていろいろ対応するような形に なっていくと、とてもいいのではないかなと思いますね。 ○中林座長  我々の感覚では日本では重量物に関しては、妊婦に重い物を持たせよとかいう意識は ないので、その点は保護されているように思うし、職場でもあまり重い物を妊婦が持つ と、そんな重い物は持たないでというような環境にあるのではないかと思いますが、そ の他のものに関しては意外と知らないですよね。それは是非今後調べていきたいと思い ますね。 ○城内委員  いまのご意見はそのとおりだと思うのですが、先ほども申し上げましたように、これ からはたぶん、いろいろな化学物質のハザードについては、必ずラベルで出てくる可能 性があるのですね。そうすると、明らかにその影響がわかって規制がかかっているもの は、それはリスク管理もしていけばいいわけですが、それもできないもので、なおかつ その情報提供だけが起きてくるということが起こり得るわけですね。これは日本の化学 物質の法律の非常に特徴的なことなのですが、業務とか化学物質をリストアップする と、それで必ずそれについての法律、例えば排気装置をつけましょうとか、手袋をしま しょうとか、何々しましょうというものがずるずるついてくるのですね。危険有害性に 関する情報提供だけの法律というのが日本ではないために、それは学会や行政の責任で もあると思うのですが、そういう法体系の下できたので、いまおっしゃられたような懸 念がすぐ出てくるのですね。でもこれからはそれは、どこかでやめにしないと、日本だ け遅れることになるわけです。ですからちゃんとプライオリティをつけて、こういうも のについては行政も責任を持ってリスク管理をします、そうでないものはわからないか ら、これは法律にはしませんが、皆さんでちゃんと対応を考えてくださいというような ところまで、一歩進んだことにしないとたぶんまずいのではないかなと思っています。  それは先ほど重量物の取扱いで、物ではないものはここでは議論しませんということ にもちょっと通じるかなと感じました。というのは、介護労働を重量物取扱いにする と、それこそ、介護労働はしてはいけないということになるわけですね。看護師もそう ですね。だけど現実にはやっているわけです。それはたぶん、申し訳ないけれど、いま までそういうことは避けて通ってきたせいだと、実は思っています。ですから、リスク としてある場合にはこういう対処をしなさい、そうでない場合には、ある程度リスクを 負って仕事をする、ただしそのリスクはできるだけ小さくしてやっていくという姿勢 で、扱う人にも責任を持ってもらうし、事業者も、行政も、そういうことのプライオリ ティをつけてやっていくということが非常に大事ではないかなと、思っています。 ○中林座長  それに対しては、大変大きなテーマをいただいたわけですが、何らかの形でご検討い ただけるように、お考えいただきたいと思います。  ずいぶんいろいろなご議論をいただきましたが、そのほかに今日の課題に関して、次 回までにこういうことをというご意見がありましたらお願いします。次回は、宿題がだ いぶ出ましたので、これをやることでいい方向が出ればと思っております。今日の全体 の内容、その他に関してのご質問やご追加がありましたらいただきたいと思いますがい かがでしょうか。佐藤委員、産科医の立場として、基本的にどういうふうにしていこう かとお考えですか? ○佐藤委員  具体的にいろいろなことがわかってきていれば、それに越したことはないのですが。 私が前に見たところでは、あまりエビデンスがないというところで、結論的に言ってし まうと、そんなに変わらないということです。そうなると今度は、これからこういう問 題がわからないので、こういうところを今後日本としては調べていこうか、いかなくて はいけないのかという指針が出ればいいのではないかというように私は思っているので す。 ○中林座長  まさに佐藤委員がおっしゃったとおり、現在のこれだけの資料では、はっきりしたこ とはあまり言えそうにないですね。岸委員から全く同じご意見が出ました。城内委員か らも、人は物ではないということの提案が出ましたので、この会としては、5年後にで もこの辺の資料を集めて検討しましょう。 ○佐藤委員  それまでに、どういう研究をどういう所で、振り分けて、それを国がサポートして、 そのデータを出せというような格好をやるようなことをしないと、いつまで経っても同 じことを繰り返しているという無駄なことだと思いますからね。 ○中林座長  そうですね。やはり一歩でもいいから進んでいきたいというお考えですね。私も全く 同感ですが、森委員、いかがでしょう。 ○森委員  私もそのとおりです。今日の中で1点だけ、また質問に戻って申し訳ないのですが、 最初、開催要項をご説明になるときに、検討事項のその他の中で、産前産後休業のあり 方というのをおっしゃったと思うのです。今日その話は全く出ないまま、ここまできて いるのですが、次回ということでいいのでしょうか。 ○中林座長  これは次回という話でしたか。 ○職業家庭両立課課長補佐  夏ぐらいまでにまとめていただくというようなスケジュールで考えていまして、今日 は重量物、危険有害業務についてご議論いただいて、母性保護ということになります と、産前産後休業というのは大きい部分ですので、それについても次回以降少し資料を 出して討論していただきたい、と。 ○中林座長  産前産後休業に関しては、例えば、いまは8週間ですよね。それからの何か新しいこ とということですか。 ○職業家庭両立課課長補佐  平成8年に多胎妊娠の部分について、10週から14週に延ばすというようなことで結論 を出して改正させていただいています。いまそういうような法規制になっていますの で、それで問題がないかというようなことについては、現行制度こうなっていますとい うようなことを含めてご説明をさせていただきたいと。 ○中林座長  それを次回ということですか。 ○職業家庭両立課課長補佐  はい。 ○中林座長  次回その説明をしていただくということで、今日は重量物と有害物質ということを中 心に討論いただきました。次回以降の、さらに5年後ぐらいを目指した計画も是非やっ ていただきたいというご意見をいただいたところで、今日の第1回目のフリーディスカ ッションはお開きにさせていただきたいと思います。これ以降の予定について事務局の ほうからお知らせがあったらお願いします。 ○職業家庭両立課課長補佐  いま皆様にファックスなどで日程調整させていただいておりますので、改めて日時、 場所を決定して、早いうちにご連絡させていただきたいと思います。 ○中林座長  いまが3月の末ですから。 ○職業家庭両立課課長補佐  はい、5月のゴールデンウィークがあけたぐらいで。 ○中林座長  そうすると1カ月少しありますので、それまでに事務局で資料をお調べいただいて、 我々も事前に読ませていただいて、その上でディスカッションをするという形に次回は したいと思います。本日はありがとうございました。私どもはこういう方面は、普段あ まり馴染みがないものですから、産業衛生の専門の先生にいろいろお話を伺いながら進 めていくと大変勉強になります。今後とも是非よろしくお願いします。本当にありがと うございました。 照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課 法規係 (内線7856)