05/03/24 第4回ゲフィチニブ検討会議事録               ゲフィチニブ検討会 議事録 1.時及び場所   平成17年3月24日(木)10:00〜14:00   明治記念館 富士の間 2.出席者   北澤 京子、栗山 喬之、下方 薫、竹内 正弘、土屋 了介、貫和 敏博、   堀内 龍也、堀江 孝至、松本 和則、吉田 茂昭(10名)五十音順   欠席者(1名)池田 康夫   参考人:アストラゼネカ社   Mark Smith、田中 倫夫、羽田 修二、蒋 海=(「=」はさんずいに「猗」)、   内田 寛彦、深瀬 健二郎、増田 貴之、石野 幸子(通訳)、山下 順子(通訳) 3.事務局   阿曽沼 慎司(医薬食品局長)、黒川 達夫(大臣官房審議官・医薬担当)   本田 一(総務課長)、   平山 佳伸(安全対策課長)、森口 裕(安全使用推進室長)、   渡邊 伸一(安全対策課長補佐)、河野 典厚(安全対策課長補佐)、   星 順子(主査)、田尻 興保(主査)、   川原 章(審査管理課長)、関野 秀人(審査管理課長補佐)、   鶏内 雅司(化粧品専門官)、   豊島 聰((独)医薬品医療機器総合機構理事兼審査センター長)、   岸田 修一((独)医薬品医療機器総合機構安全管理監)、   伏見 環((独)医薬品医療機器総合機構安全部長)、   森 和彦((独)医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長) 4.備考   本検討会は公開で開催された ○事務局  ただいまから、第4回ゲフィチニブ検討会を開会いたします。お忙しい中を、度々お 集まりいただきましてありがとうございます。池田先生は欠席です。前回、日本肺癌学 会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」を根来先生にご説明いただきましたけ れども、今回もこのガイドラインについてご意見、ご質問があった場合にご説明、ご回 答いただくために、日本肺癌学会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」作成委 員会の委員であられます、国立がんセンター中央病院総合病棟部長の田村友秀先生にご 出席をいただいております。議事の進行は、松本座長にお願いいたします。 ○松本座長  事務局から、本日の配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局  議事次第、配付資料一覧、委員名簿、資料No.1「ISEL試験データ再解析の結果 」、資料No.2、日本肺癌学会作成「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」、資料 No.3はアストラゼネカ株式会社が作成した「イレッサ錠における推定投与患者数」の 説明資料です。  参考資料1は、第2回、第3回検討会資料のうち、「生存曲線、患者背景に関する資 料」の部分を抜粋した資料です。参考資料2は、本検討会で1月20日に初回解析結果に 関する意見を取りまとめていただいたものです。参考資料3は、「イレッサ錠250」の 添付資料です。参考資料4は、前回もご紹介いたしました、西日本胸部腫瘍臨床研究機 構が取りまとめた、患者の方々からの嘆願書を前回もご紹介いたしましたが、前回以後 再度取りまとめたものが追加で217名分このような文面の嘆願書が届いております。前 回ご紹介したものと合わせますと、合計1,139名分の嘆願書が西日本胸部腫瘍臨床研究 機構から届いています。参考資料5は、医薬ビジランスセンターから届いている、「ゲ フィチニブ検討会への要望」という意見書です。 ○松本座長  本日は、議題として1番目は、「ISEL試験結果について」竹内先生による解析の 結果の報告と、それに基づく検討。2番目は、「日本肺癌学会の『ゲフィチニブ使用ガ イドライン』の周知方法、活用方法について」検討を行います。また、1月20日の検討 会において、推定累積使用患者数と、その数から推計した急性肺障害・間質性肺炎の患 者数について議論がありましたので、厚生労働省からアストラゼネカ社に対し、推定累 積使用患者数について確認を行っていたということですので、その説明を聞きたいと思 っております。最後に、本検討会として、現時点での考え方の取りまとめを行いたいと 思います。  それでは、ISEL試験結果について、竹内先生が解析を行った結果について、竹内 先生から説明をお願いいたします。 ○竹内委員  ISEL試験データ再解析の結果を発表いたします。最初に、いままで議論されてお りましたISEL試験について簡単にまとめさせていただきます。そして、どうして私 がデータを欲しかったかという理由を述べさせていただきます。実際に再解析で何をや るのかを紹介させていただきます。そして、再解析の懸念事項を基に置いた再解析の結 果を発表させていただきます。再解析をやりましたけれども、その解釈においてはどう いう注意事項が要るかを述べさせていただき、最後にまとめを行います。  いちばん初めのISEL試験ですが、デザインとしては国際多施設無作為化並行二重 盲検の第III相試験であったということです。ターゲットとされてくる患者は、1-2のレ ジメンの化学療法歴がある方、かつ前治療で再発もしくは忍容性が不良であった進行の 非小細胞肺癌の患者がこの試験に入ってきたということです。  治療後の比較としては、IRESSA(250mg)+BSC(ベスト・サポーティブ・ケア) と、Placebo+BSCということで、2対1の割合でランダミゼーションが起こってお ります。イレッサ投与群においては1,129名、プラセボ群では563名の患者がISEL試 験に入ってまいりました。  いままでも、文献等で非常に重要であるという生存に関して影響を与える因子、即ち 組織型、性別、前治療中止の理由、喫煙歴、そして、たくさんの医療機関が入っており ますので、そこで無作為化をかけて、それぞれの因子を各治療群ごとにきれいに分けて いった試験です。  その結果ですが、主要評価項目として、生存期間が主要評価項目であった。一応ログ ランクテストをやり、P値が0.0871、Cox regressionというやり方があり、それでやる とP値が0.0299、即ちログランク検定がプロトコールに記載されておりまして、記載さ れていた統計解析では有意差がない。  ところが、Cox regression解析をするということが書かれておりましたので、Cox regressionでやると非常にイレッサがプラセボに対して、延命効果に対しては効果があ るという結果が出ております。  次に、東洋人の生存期間を見たところ、層別ログランクテストではP値が0.046、ロ グランクテストではP値が0.012、Cox regressionではP値が0.016ということで、2つ の検定においては、東洋人に対しても生存効果は、イレッサ群がプラセボ群に対してあ る。  ところが、層別ログランクをやると、その結果は非常にマージナルであるという結果 が出てきております。ここで考察しなければならないのは、生存期間に影響を及ぼす患 者の背景因子が影響しているのではないかということがあり、それがどのようにして、 このような結果に対して影響を与えているかということが議論になってまいりました。  この結果を見ていると、通常ではログランクテストが行うP値がいちばん高いのです が、この場合は精度が良いCox regressionと非常によく似ているということで何かが起 こっている。たぶん起こっている原因が、こういう患者背景の因子ではなかろうかとい うことに疑問を持ち、再解析が必要であろうということで、データセットを提示してい ただけないかということをこちらから要望いたしました。  再解析の必要性ですけれども、ここの前提としては全生存期間、または東洋人におけ る生存期間において、応用される統計解析によって非常に結果が違っている。即ち、イ レッサがプラセボに対してどれぐらいの薬効があるかが、効いている効いていないか が、応用される統計解析によって左右されることが問題になってまいりました。  再解析を実施する理由ですが、実際に1,700名の患者のデータがあり、そのデータに 対して統計解析をしていくのですが、その応用されている統計解析がデータに対して妥 当なのかどうかをチェックしてやらなければならない。いままではP値が出ているだけ で、実際に使用された統計解析がよいのかどうか。その統計解析は、すべて数学のモデ ルに成り立っておりますので、成り立っていた数学の条件が、このデータセットに対し て合っているのかどうかという妥当性は、スポンサーの方々も検証しておりませんでし たので、そういうところの妥当性を検証しながら、実際にどのような結果が出てくるか ということで、いちばん重要なのが比例ハザード性です。  比例ハザード性というのは、イレッサがプラセボに対する薬の効き方は、時間が変わ っていても変わらない、という非常に重要な、また非常に強い仮定です。それがCox regressionまたはログランクテストに応用されている。まず、このチェックが実際に当 たっているのかどうかをチェックしてみなければなりません。  モデルを構築していく場合に、喫煙状態やPS状態といった重要な因子の間で、スポ ンサーがやられたのはそれぞれ独立であると。ところがひょっとすると、それぞれで交 互作用があるかもしれないということで、それもチェックしなければいけない。  もう1つ大事なのは、2回目のときに吉田先生から指摘されましたが、たぶんこれは 吉田先生のご意向だと思うのですが、私もこれは納得しました。このモデルまたはCox regressionをやっていくときに、非常に重要な因子と薬効、即ちイレッサ群とプラセボ 群の間で独立性がなっていないといけないのですが、それはありますかという質問がさ れたと思います。やはり、こういうことが実際になっていないと、Cox regressionは成 り立たないという条件がありますので、それも成り立たせながら、どのような解析モデ ルがいちばん適当かをチェックいたしました。  実際に使ったデータが、この1,700名の患者のデータに対してどのぐらい当てはまっ ているのか。いままではPバリューだけでまだ示されておりませんでした。ですから、 生存解析理論では一応標準となっております、martingale residualsでstochastic processesを作りながら、まず標的にどのぐらい当てはまっているかを出していきたか ったというのが、私が再解析をした動機です。  まずモデルチェックを行い、ある程度モデルはいいと。そうした場合に、今度はその モデルに対して検定を行い、イレッサがプラセボ群に対して効いているかどうかを検定 しないといけないのですけれども、その検定が実際に信頼性があるものかどうかが非常 に大事だと思います。  これも、提出していただいたデータで、スポンサーが発表したPバリューはこのナイ ーブなテストでした。それは確認いたしました。ナイーブなテストだと、出てくる結果 に対して頑健性がありませんので、テストをする場合には頑健性のあるテストをやって いこうということで、頑健性のテストをこの再解析で行いました。  頑健性を行う前にいちばん大事なのがParsimonious modelといいまして、この場合に は東洋人の患者は340名ぐらいいたと思うのですが、そこに対して調整因子が、スポン サーは約7個入れております。7個ということは、約128ぐらいのセルが出てきて、各 セルごとに3名の患者しかいない。そこで統計解析をしていかないといけないというこ とがありますので、出てくる結果が非常に不安定であることが想像されます。医学的に 意義があり、かつシンプルなモデルを作り、そういうモデルの下で頑健性のテストをや っていこうということで再解析を行いました。  その結果ですが、まずISEL試験全体のデータについて見てみました。どうしてI SEL試験全体のデータを見たかというと、果たして、スポンサーが発表しているデー タと同じものを自分たちはいただいているのかどうかのバリデーションをかけないとい けませんので、すべて同じデータで全部再解析を行い、スポンサーが発表しているデー タは間違いないことを確認いたしました。  その確認の下で、まずこの主要評価項目が生存時間であります。即ち、主観的なジャ ジメントが入ってくる余地はあり得ないだろうという項目が成り立っている。この場合 には生存期間ですので、患者がどのぐらいfollow-upしているか、または途中で患者が 治験に入りたくないから途中でいなくなる、または副作用でプロトコールが落ちますの で、果たしてどのぐらいの確率で患者が副作用で、自分は入りたくないということで落 ちたかも、試験の結果に影響してまいりますので、どのぐらいのfollow-up率があった かを見ていったところ、約1%しかありませんでした。ほとんどすべての患者が、IS EL試験データではfollow-upされている。  また非常に大事なのは、どのぐらいの患者がISEL試験データでfollow-upされて いたか。即ち、中央値で7カ月ということは、7カ月follow-upしていれば、患者はあ る程度お亡くなりになっているというデータがありますので、統計学でいうとセンサリ ングにされた患者の数が非常に少ないということがありました。試験の期間に対しても 十分であろう、という結果が得られました。  もう1つは無作為化された因子ですが、これは4つ無作為化されると提言していま す。臨床的にも非常に大事な因子です。それが実際にどのようにイレッサ群とプラセボ 群に対し、バランスよく分布しているか。もしこれに偏りがあると、出てくる結果にも 影響を与えますので、実際に分布されているのかどうかをチェックしたところ、きれい に分布しているという確認は得ました。  患者が入ってくるISEL試験ですが、いままで言われている生存期間に対し、PS の状態や、喫煙歴、性別、組織型が影響を与えていると言われておりますので、実際に このISELデータの中にも、そういうエビデンスがあるのかどうか。そういうエビデ ンスがあるということは、このISELデータが望もうとしていた患者がリクルートさ れているのかどうかもチェックいたしました。それもすべて、ISEL試験データ全体 を通して確認ができたということで、現時点で書いてありますけれども、私が提出して いただいたデータ、または見せていただいたデータ、またこの検討会に対して提出して いただいた文章等を鑑みますと、現時点ではこのISEL試験データはwell-controlled trialであったと判断いたします。  東洋人のISEL試験データがどうなっているかということです。東洋人のデータに ついて、いま申し上げましたチェックをいたしました。また、生存時間に影響を与えて いる患者の背景因子、即ち組織型、喫煙歴、性別、PSの影響は、東洋人のサブグルー プの中でも確認し、やはり同じような患者が、東洋人のデータでもリクルートされてい ることが確認できました。  東洋人のサブグループのデータでも、解析しても構わないという結果が出てきました ので、そこで解析を始めました。まずモデル構築としては、影響を与える患者の背景因 子、いわゆる組織型、喫煙歴、性別、PSは考慮いたしました。  そのほかに、前のレジメンでいくつレジメンを使っているか、年齢はどうなっている か、診断されてからランダミゼーションまでの時間はどうなっているのか、すべて可能 性のある因子はチェックいたしました。すべてチェックしたもとで、私または医学的 に、または統計学的に重要であるという因子をピックアップしながら、なるべく簡潔な モデルを作り、交互作用、またはそこに治療部分が独立性になっているかをすべてチェ ックし、そこでモデルを作り、最終的な結果に頑健性が得られるという検定を行った結 果、プラセボ群に対してイレッサ群の生存期間延長は、東洋人において示唆されるとい う結果が出てまいりました。  次は、この結果の解釈の注意事項です。まずサブ解析についてですが、これはあくま でサブ解析をやっています。このサブ解析というのは、出てくる解析に対しては探索的 である。いま申しましたように、どの因子を調整するかにより、結果が非常に違ってき ます。  例えば、1番目の1月20日の時点においては、東洋人で非喫煙の患者のみにイレッサ がプラセボに対して延命効果があるという結論を出したかと思います。スポンサーか ら、2×2の分割比を出していただき、それを見ましたところ、東洋人非喫煙者と、東 洋人喫煙者との間で薬効が違っております。それを1つにまとめ、東洋人としていいか どうかということで見ると、私はあのデータを見る前にはできないであろうと思いまし た。ところが、データをいただいて、その調整因子を変えてPSをやったらどうかと。 PSの良い人と悪い人で変えると、その場合には薬効が、東洋人PSの良い人、東洋人 でPSの悪い人で、イレッサがプラセボ群に対して薬効があり、かつ薬効の効きめがさ ほど変わっていない。即ち、東洋人全体として見てもよろしい、という統計解析が出て きております。どの調整因子を取るかによって非常に影響しています。  私が、この前に発表した結果においては、そのような調整因子の選択の影響をさせる ために、まず東洋人全体を見て、そこで重要な因子がどれであるかを調査しながら、最 終的に薬効を入れるという統計解析を行っております。やはりサブグループのサブグル ープ解析というのは非常に探索的であります。ここで、Pバリューは0.05、即ちその意 味といいますのは、薬効はなくても20回検定をしていれば、イレッサが効いている、効 いていないという結果が出てきてしまいますので、そのような探索的な解析を多重やっ ていくことは、ここに書いてあります多重検定、即ちmultiple testの問題が統計学上 出てまいります。  また、このようなサブグループのサブグループ解析をすると、非常にサンプル数が小 さくなっておりますから、出てくる検定の結果に対しては頑健性に非常に問題がありま す。やはり、こういう探索的な解析は研究ベースではよろしいかと思いますけれども、 実際に効いているかどうかという検証の場合には絶対に避けるべきだと思います。やは り、このようなサブグループの解析で出てきた結果に対しては、検証のための臨床試験 が必要であると考えております。  最後には「解析プログラム最終バリデーションが必要」ということですが、どうして これを書いたかというと、私がデータをいただくまで結構時間がかかり、すぐにいただ いたというわけではありません。まずは、アストラゼネカ社が解析したデータが自分自 身にあるのかどうか、ということでまずバリデーションをかけなければいけないので、 そのバリデーションをかけるために2、3日かかりました。それで統計解析を全部やっ ていかなければいけませんので、たぶん4、5日は寝ていない状態で回しています。こ の使ったプログラムにバリデーションはかかっておりません。ですから、現時点で、こ こで発表している内容に対しては、たぶん問題はないと思うのですけれども、もう一度 バリデーションをかけていくことが私にとっては大事だと思っています。  このようなデータ解析で、私がFDAにいた経験を申しますと約2、3カ月の仕事を 4、5日で解析してしまえということで、ちょっと無理な面があります。そこは、スポ ンサーの方々にもわかっていただけるかということでお含みおきいただきたいと思いま す。  最後のまとめですが、提出された資料を評価した結果、私としては、ISEL試験は well-controlled trial、いわゆる質が非常に良いトライアルであったと判断しており ます。東洋人のサブグループ解析の結果、即ちイレッサ群がプラセボ群に対して延命効 果があると示唆するという結果に対しては、ある程度頑健性、または安定性があると判 断しております。  ここで注意事項ですが、やはりサブグループ解析を行っておりますので、検証するた めには新たな臨床試験が必要であるという注意事項が必要だと思います。以上です。 ○松本座長  竹内先生の最後のまとめのスライドによると、ISEL試験はwell-controlled trial であるということ。東洋人のサブグループ解析の結果は、頑健性が認められた。注意事 項として、サブグループ解析の結果について検証するためには、新たな臨床試験が必要 であるということになろうかと思います。これに関して、ご質問やご意見はございませ んでしょうか。 ○土屋委員  前回、私が言わせていただいたとおりのまとめで大変ありがたいと思います。大変お 疲れさまでしたということと、大変心強い結果だと思います。アストラゼネカ社から報 告していただいたものについて唯一の欠点は、組織内の統計センターで分析した結果を 報告していただいていたというところだろうと思います。  今回、竹内先生が全く第三者として解析をしていただいたというのは大変客観性、公 平性の意味から、以前に増して信用できる結果を私どもはいただいたと思っておりま す。したがって、このまとめのところは、前回臨床医としてこういうデータを突き付け られたときにどう解釈するか、というのが私としての結論でした。本日、竹内先生に裏 打ちされたというのは、それをさらにコンファームしていただいたという意味で心強く 感じております。 ○堀内委員  東洋人の解析の結果で、「プラセボ群に対してイレッサ群の生存期間延長は示唆され る」ということになっております。「結論できる」ということではなくて、「示唆され る」という意味合いについてもう少し説明をしていただけますか。 ○竹内委員  「示唆される」というのは、Pバリューはあまり出したくないのですけれども、0.05 以下であったということを私は確認しております。ただし先ほど申しましたように、こ れはサブグループの解析をやっておりまして、そこを目的にISEL試験が行われたの ではない。1,700名全体の患者に対して行われた試験である。私は解析をしていて、サ ブグループ解析をするつもりは全くありませんでした。  ただ、その試験を解析していて、東洋人または東洋人でない患者の間で、薬効、延命 効果に非常に違いがあるという結果が出ておりますので、そこに焦点を当てた結果、や はり同じような結果が確認できた。ただし、それは頑健性のあるやり方でやっていても 結果が出てきましたので、スポンサーが発表された、または私がそれを確認したという ことで「示唆される」ということです。  いま、第3相試験が行われておりますので、そこで確認していただいて初めて確認さ れることになるかと感じておりましたので、ここでは「示唆される」という表現でとど めておきました。 ○堀内委員  基本的には、確認されたということでよろしいのですね。 ○竹内委員  はい。ただ、ここでスポンサーがやっている統計の解析は好きではないです。そこ は、ある程度頑健性をもっている統計解析をしていただいて、しっかりした結果を示し ていただければデータを出していただかなくてもよかったかと思います。そこは、初め に発表していただいた中で戸惑いを感じてしまって、1回、2回、3回と引きずってお りましたので、最終的に自分で確認し、実際に効いているかどうかを見たかったことも あります。また、これは肺癌の患者の貢献度ですので、そこをもう少し真摯に捉えてス ポンサーは解析していただきたいと思っております。 ○北澤委員  ここの頑健性のあるテスト、バーサスナイーブなテストというのがスライドの6番に ありますが、前回までに示されたPバリューについては、ナイーブなテストであったけ れども、竹内先生が改めてrobust testという方法でやられても同じ結果が出たので、 結果については同じであると結論付けられたのですか。 ○竹内委員  はい、違う角度から見ていて、我々はスポンサーがやったやり方でナイーブな結果、 それで自分がモデルを立てて頑健性のある結果。なるほどスポンサーのやったナイーブ なテストを、頑健性のあるやり方でやって、自分もモデルを立てて頑健性のあるやり方 でやって、ある程度同じような結果が出てきたということです。何を示唆しているかと いうと、いろいろ数学的な条件を変えていったとしても、結果的にはイレッサがプラセ ボ群に対して延命効果が出ていると判断いたしました。 ○土屋委員  いまの問題で、竹内先生が言われた頑健性のあるログランクテストは大変よろしいか と思います。これは、いま実際に日本で行われている臨床試験で、サブセットアナリシ スでここまで厳格にやっているというのは一般的なのでしょうか。私が知る限り、やら れたのを聞いたことがないです。 ○竹内委員  はい、存じ上げていないのですけれども、これは既に1986年に論文が出ています。使 われているサスプログラムにも十分入っております。私がFDAにいたときには必ずこ れを使っていました。こちらのほうが、薬効は出にくいのですけれども、規制当局とい いますか、FDAにいたときには、ある程度結果に対しては安定性が欲しいということ で必ず使っていました。 ○土屋委員  アメリカの事情はそうだと思うのですが、我が国で実際にいま走っているのがあるの です。私どもにはJCOGというのが組織内にありますけれども、そういう所全部が全部こ ういうサブセットのところをやっているのか。我が国の現状では、私の知る限りでは、 そこまでのサブセットアナリシスはあまりやられていないのではないか。それが良いと は言いません。 ○竹内委員  私の経験で申し訳ございませんけれども、FDAにいたときに、例えばニューイング ランドやランセットに出すときには、研究ベースで出しますので、効いているのではな いかということで、たぶんナイーブなやり方で発表されます。  ところが、同じデータを規制当局側に持ち帰ってきますと、果たしてその結果は信頼 性があるのかどうかというところで、見ている視点が違っております。本日、検討委員 会で私が解析させていただいたときには、出てくる結果に対して、ある程度安定性があ るかということで注目を置きましたのでこういうテストを使わせていただきました。土 屋先生がおられるがんセンターで、もし研究ベースで走らせておりますと、たぶんナイ ーブテストが通常使われていると思います。 ○吉田委員  いまのお話は、臨床試験に対する評価の仕方の原則を竹内先生がずっとおっしゃって いるのだと思います。基本的に臨床試験を設計する場合は、プライマリーエンドポイン トを設定し、それが妥当であるかどうか、仮説が正しいかどうかを検定するわけです。 この場合のISELは、人種にかかわらずすべての人間においてイレッサが有効であ る、という前提が検証できるかどうかという試験なわけです。  ところが、出てきたときに東洋人の結果だけが非常に注目された。そのサブセットア ナリシスをやらなければいけなくなったときに、基本的には土屋先生のように、サブセ ットというのは信頼性のある探策的な検討ですので、それほどきちんとした統計解析を やらないで、こういうこともあるという認識でいきます。今回この検討会で、東洋人の 問題が非常に出てきたということで、竹内先生が頑健性のテストもして、サブセット解 析ではあるけれども、それなりの信頼性がある結果である、ということをお話になった と思うのです。  しかし、プライマリーエンドポイントでは、まだ未確定ですので、この結果をもって すべてが成立つということは言えませんので、東洋人というものをもう一回新たに設定 した臨床試験が必要であるという結論であると私は解釈しました。 ○貫和委員  確認ですが、本日は実際のログランクテストのグラフが出ませんでしたので、竹内先 生がおっしゃっていることはこういうことだろうと思いながら開きました。吉田先生の お話もそうですけれども、要するにアストラゼネカ社が出したデータで今回の資料 (3/24分参考資料1)の2頁の下のグラフが確認されたという理解でよろしいので しょうか。 ○竹内委員  本日グラフ等も出したかったのですけれども、いただいたデータがすべてコンフィデ ンシャルだと思っておりましたので、その結果をどこまで公の場で出していいかという ことの懸念がありましたので、Pバリューもすべて出しませんでした。  この結果とはちょっと違っております。いくつか言われている喫煙歴やパフォーマン スステータスなど重要な因子を調整しながら見ていきました。そういうところでも、は っきりと効いていますよということです。もちろん、貫和先生がおっしゃったように、 東洋人でこのようになっていると。ここは全体系になっていますけれども、それ以外に いままで議論されていた重要な因子に対しても、そういうことはちゃんとなっています よという結論です。 ○貫和委員  それで1点目はわかりました。もう1点はアストラゼネカ社から複雑なスライドが1 枚ありました。このスライドの何番かは指摘できないのですけれども、奏効しなかった 非喫煙患者においても延命効果があった(3/10分資料No2−1:19ページ上段 「生存期間:奏効しなかった非喫煙者」)、というスライドが確かあったと思うので す。これは本日の資料の何番か教えていただけますか。 ○事務局  本日の資料には入っていません。 ○貫和委員  あの解析結果は、竹内先生の解析でどうか。竹内先生は、それ以上のサブセットはや っても意味がないというご意見ですので、私もそれに同意はします。竹内先生のお立場 から、解析に対してのコメントをいただけたらと思います。 ○竹内委員  そこまでは、正直言いまして全然時間もありませんでしたし、最終的に私のスライド を出したのは昨日の夜中です。時間がありませんでしたので、まだ見ておりません。 ○土屋委員  いま貫和先生がおっしゃったように、竹内先生はたとえ時間があってそれを出されて も、議論の根拠としては非常に力の弱いものだろうと思います。かえって話が混乱する ばかりです。サブセットアナリシス自体もあまり参考にすべきではない。サブセットア ナリシスでさえ、次の研究の示唆でしかないわけですので、それ以上の言及はむしろ混 乱を招くのではないかと思います。 ○松本座長  ほかにご意見はございませんでしょうか。                 (特に発言なし) ○松本座長  それでは次に進ませていただきます。前回、日本肺癌学会から説明がありました「ゲ フィチニブ使用ガイドライン」の周知方法、活用方法について検討を行います。本日 は、肺癌学会から国立がんセンター中央病院総合病棟部長の田村友秀先生においでいた だいております、よろしくお願いいたします。このことに関しましてご意見はございま せんでしょうか。この周知方法などに関し、委員の方々から厚生労働省に対して要望、 その他があればお願いいたします。 ○土屋委員  こういうガイドラインができたときの周知が、専門家に行き渡っているかどうか、そ れが正確に理解されているかどうか、ということは検証する必要があると思います。確 かに、我が国では出しっぱなしというガイドラインが多かったと思います。この場合に は、患者そのものに影響が大きいので、その辺は出された日本肺癌学会で責任を持って その検証をやっていただくということが第1ではないかと思います。やはり、発行した 所自体にその責任が一義的にあると思います。  もう1つは、社会的にこれが認知されるには、一般の方にこういうものがあると。こ の内容は専門的な内容が多いので、その内容の理解を全国民に求めるわけにはいきませ んので、専門家の考え方の基になるものとしてこういうものがある、ということはいろ いろな手段を通じて知らしめるべきであろうと思います。いま厚生労働省ということが ありましたけれども、私もそのお膝元にいながらあれですけれども、やはりこれは官の 力を借りるよりも、これだけの専門家集団の肺癌学会があるわけですから、まずそこに やっていただくというのが一義的で、それを官のほう、あるいは本日たくさんお見えに なっているマスコミの方、その他のお助けをいただいて広めるのがいちばん健全なやり 方ではないかと考えています。 ○堀江委員  肺癌学会でのガイドラインがまとめられるに当たって、厚生労働省から肺癌学会への 働きかけが初めにあって、その結果としてこういうものがまとめられてきていると思い ます。  内容を拝見しますと、前に厚生労働省で副作用症例などについて検討を行った上で、 参考資料3として配付されているものに警告やいろいろなことが記載されていますが類 似しています。このガイドラインについても、肺癌学会として、既にこのように公表し ていますが、国側としてはこのガイドラインをどう扱われるのかお聞きしたい。 ○事務局  事務局側から回答させていただきます。厚生労働省側として、いま堀江先生からいた だいた、厚生労働省としてどうやって周知するのか、あるいは土屋先生からいただい た、どうやって厚生労働省は周知するのかということに対して、厚生労働省としてはど ういう周知する手段を取り得るか紹介させていただきます。  1つは、イレッサの添付文書に、こういうガイドラインを参考として投与するという ことを記載することで、ガイドラインを周知する方法が考えられます。ほかの方法とし ては、アストラゼネカ社がイレッサを販売しておりますので、アストラゼネカ社が医療 機関に情報提供活動を行うときに、このガイドラインを配付するようにということを厚 生労働省からアストラゼネカ社に対して指導を行う手段も考えられます。  先ほど土屋先生からもお話がありましたように、厚生労働省から肺癌学会に対して、 こういうガイドラインの周知を依頼しますとか、広く一般にという意味では医療関係職 種の団体の方々に対しても、厚生労働省からの周知を依頼するということで広く周知を していただくことが考えられます。  また、一般の方々への周知という意味では、厚生労働省の関係で医薬品医療機器情報 提供ホームページを持っておりますので、そのホームページにこのガイドラインを掲載 し、一般の方もご覧いただけるような形で周知する方法も1つの手段として考えられま す。このような手段が取り得るオプションとしてはあるのではないかと考えておりま す。 ○堀江委員  実際にイレッサを使用している累積症例数はだんだん増加傾向にあると思います。そ の状況で、確かに専門家がこのような症例に対して治療を行っていくことになれば、注 意点については徹底することはかなりできるだろうと思います。しかし、医師が肺癌患 者に、この薬剤を投与することを限定するのは難しいところがあると思います。従っ て、そういう医師の方々に、非常に重要な副作用、特に投与を開始して早期の時期に起 こってくる副作用を十二分に認識してもらう必要があるだろう。そのためには、文書で ガイドラインの存在そのものをなんとかもっと広く認識してもらう方法が必要なのでは ないかと思いますので、その辺の検討は是非お願いいたします。 ○土屋委員  揚げ足を取るようで申し訳ないのですが、一般の方への周知ですけれども、このガイ ドラインが見られるようにという発想だけでは十分でないと思います。専門家は、これ が見られれば全部読んでいただかなければいけませんが、一般の方にはこういうガイド ラインがあるということと、例えばそのガイドラインの4頁の第7項に「本剤は肺がん 化学療法に十分な経験を持つ医師が使用するとともに、投与に際しては緊急時十分処置 ができる医療機関で行うこと」を教えることが、一般の方へいちばん親切なことだと思 います。ここの入口を間違えなければ、多くの事故は防げるわけです。一般の方への周 知というのは、専門家への周知とは違った方策を考えて差し上げる必要があると思いま す。 ○北澤委員  この検討会の第1回のときに、イレッサがどのぐらいの方々に使われて、副作用の報 告が何例あったかという厚生労働省からの報告がありました。それによると580何人の 方がその副作用かもしれないということで亡くなられた、という発表だったかと思いま す。  こういうガイドラインによって、そういう方々が、最近は減少傾向にあるということ だったと思うのですが、本当にどのぐらい少なくなるのかということがすごく気になり ます。本日も、厚生労働省からこのガイドラインを周知徹底するためにいろいろなこと を考えているというお話がありましたが、実際にそれでどうなるのかについても厳しく 見ていただきたいと思います。 ○松本座長  累積使用患者数については、また後ほど報告があると思います。 ○医薬食品局長  一言私どもの問題意識を申し上げておきます。今回、肺癌学会にガイドラインの改訂 をお願いいたしました。私どもからお願いしたのは、1つは、ISEL試験の結果で延 命効果がないのではないかということが出たという事態がありました。もう1つは、E GFRの遺伝子変異の問題について、最近の知見を踏まえた議論が必要ではないかとい うこと。それについても最新の知見を反映した形でのガイドラインを作ったほうがいい のではないかと判断し、行政側として肺癌学会にお願いした経緯があります。  なぜこういうことをしたかというと、イレッサの問題は、イレッサという薬物そのも のの問題も当然あるわけですけれども、そもそも肺癌治療の問題といいますか、薬物療 法のあり方の問題と極めて密接に関連しておりますし、むしろ肺癌治療そのものの問題 として、その文脈で捉えるべきではないかという問題意識を私どもなりに持っておりま す。したがって、添付文書の改訂等を通じ、薬物の承認と、それに付随する添付文書と いう形での周知徹底、規制の仕方は従来からやっておりますけれども、ただそれだけで はなく、土屋先生がおっしゃいますように、一般国民にこういうガイドラインがある、 ということ自体を認識していただくことも大変大事ではないかと思っております。  医療現場の医師だけでなく、看護師や薬剤師といった多くのコメディカルな方々、あ るいは患者自身がこういうガイドラインがあるのだということを認知、認識していただ くことが、薬物療法の将来の普及向上につながるのではないかと考えております。そう いう意味で、イレッサ自体の問題でありながら、日本の医療の水準を引き上げていく、 あるいは質を上げていくことに対して、専門家の集団である学会のガイドラインが十分 期待できるのではないかということでお願いしたという経緯です。 ○松本座長  肺癌学会から、何かコメントはありませんか。 ○田村参考人  ガイドライン作成の依頼を受け、現在わかっている情報に基づく最も適正な使い方は どうかという観点から作らせていただきました。今後、さらにどういう患者がゲフィチ ニブでベネフィットを得るか、どういう患者が肺毒性のリスクが高いか、どんどん情報 が増えていくと思います。そういう情報を踏まえ、タイムリーに改訂していきたいと考 えております。 ○松本座長  肺癌学会の考え方としてお話していただきましたが、この問題についてほかにご意 見、ご質問はございませんか。 ○堀内委員  肺癌学会として、この会議でも議論されてきましたEGFRレセプターの遺伝子変異 の問題との関係で、現在では尚早云々という議論はありますけれども、遺伝子変異をチ ェックして投与するということに関してどのような議論がされ、どのような方向性を持 っておられますか。 ○田村参考人  遺伝子変異に関しては、極めて重要な腫瘍縮小の予測因子だと考えています。ただ、 この因子がすべてではない、他の因子もかかわっているので、もう少しその辺の知見を 集積せねばならない。そのためには、実際の患者の遺伝子変異やその他の因子を解析 し、さらに情報を蓄積する必要があります。  また大きな問題として、前回お話があったと思いますが、主にイレッサ投与の対象と なるIV期、転移のある患者から変異の検査に適するサンプルを採取するのは極めて難し いです。そちらの技術を向上させることも急務だと考えております。将来的には、この ような因子を用いて、より正確にゲフィチニブによってベネフィットを受ける患者を選 択していきたいと考えております。 ○堀内委員  私どもの群馬大学病院では、内科と外科が共同して、IRBで承認した上で、遺伝子 変異をチェックしてから、変異のある患者に優先してゲフィチニブを使う。患者が希望 すれば、変異がなくても当然使いますけれども、変異がある患者に優先して使うことに しています。変異がある患者に対しては、有効性は確かに高いという結果を得ておりま す。現時点で、そのような方向性を推奨するというのはいかがでしょうか。 ○田村参考人  群馬大学のデータも見させていただきました。主に手術検体で変異の頻度などを出し ておりますが、やや低目ではないかという印象を持っております。変異のある患者は、 腫瘍縮小を得る可能性が高いことは間違いない。ですから、患者にその情報を伝えれ ば、患者の治療選択においておおいに役立つと思います。  しかし、変異のない患者にはできるだけ投与しないほうがいいかというと、そうとも 言い切れません。いまの技術であれば変異があっても見つからない可能性も高いです。 そういう情報を十分伝えた上で、患者に投与の選択をしてもらう方針がいちばんだと思 います。とにかく、変異は重要な情報であり、より正確にそれをつかむ努力は早急にし ていかなくてはならないと考えております。 ○堀内委員  変異のない患者が求めれば投与することは必要かと思いますが、使用状況をみると、 直線的に使用患者数は伸びておりますので大多数の患者に使用されているのではないか と推測されます。したがって実際上は規制がかからないのではないかと危惧致します。 この薬は先ほどから出ていますように、専門医の所で使うことが必要であって、それ以 外の所では使うべきではないと思います。そういう規制をかけて、例えば間質性肺炎の 兆候が現れたらすぐストップするということをきちんとやりながら使うことが大事だと 思うのです。問題は、このガイドラインがどれだけ専門医以外の所にまで徹底するかだ と思いますが、いかがでしょうか。 ○田村参考人  おっしゃるとおりで、ガイドラインにも書きましたが、明確にこういう医師と規定す ることは難しいですけれども、専門医、肺癌治療を主業務とする医師が使うべきだと思 いますし、肺毒性に対してしっかりした処置ができる施設で実施すべきだと思います。  一般のドクターには、あなた方は使ってはいけない、専門医に任せてくださいという ことを周知することが重要で、ガイドラインの中身より、まずそれだと思います。そう いう方は学会誌を読んでくれないかもしれませんので、企業、当局、それからさまざま なホームページなどで呼びかけが必要です。マスコミの方にも是非協力していただきた いと考えます。 ○松本座長  堀内先生、こういうことでよろしいですか。 ○貫和委員  私も肺癌学会の会員ですので、内部からこういう話をするのはおかしいのですが、い ま堀内先生がおっしゃっていることは、単に変異ありなしということではなくて、変異 がある患者はかなりの確度で効果が期待できる、ということが背景にあるわけです。す なわち、前回の根来先生のデータにもありますように、少数例だとはおっしゃっていま したが、2週使えば約7割が奏効する。4週使えば8割から9割が奏効する。重要な点 は、使用期間と奏効性をどう考えるのかという点です。SDのままでも使えるというの がいまの状況ですが、これに対して、さらにEGFRの変異のデータが加わった段階 で、ガイドラインに加えていただきたいというのが会員からの希望でもあります。 ○田村参考人  まさにその通りだと思います。ゲフィチニブの効果に関して、2週、4週で見事に縮 小する人は、おそらく生存延長のベネフィットがあるということは、我々も、皆さんも 実感していると思います。一方で、縮小はないけれども長期間SDが維持される患者が いることもいわれますが、それが本当かどうか。いまのところ全くわからない、印象で しかないので、こちらも何らかの形ではっきりと検証する試験を計画したいと思ってい ます。 ○松本座長  その点については土屋先生、よろしいですか。 ○土屋委員  構いません。 ○松本座長  他にこの問題についてご意見はありませんか。ないようでしたら、次に進みます。推 定累積使用患者数について、厚生労働省からアストラゼネカ社に対して問い合わせたと いうことですが、このことに関してはアストラゼネカ社から説明をお願いします。 ○参考人  アストラゼネカ社薬事統括部の田中と申します。本日はよろしくお願いします。1月 20日の検討会の際に、私どもから報告させていただきました推定投与患者数8万6,000 人強という数字に関して、先生方からご意見をいただきました。その後、厚生労働省か ら、一度これをしっかりと見直してみろというご指摘もいただきましたので、今回その 結果、さらには前回報告させていただいた8万6,000という数字の計算の方法に関して ご報告させていただきます。  最初に申し上げておく必要があると考えていますのは、この計算方法に関しては、か なりの推定に推定を重ねる手法になっています。と申しますのも、当初この計算方法を 使用した2002年7月、8月、9月、10月という上市当時は、私どもが持っていた臨床デ ータ、あるいはこういう計算に使うことができるデータと申しますのは、IDEAL1 の中の日本人のサブセットのデータしかありませんでした。そういう意味で、この部分 はこういう仮定を置いて計算しようとかなりの仮定を置いています。ですから、逆の言 い方をしますと、仮定を変えると計算の数字は確かに変わります。そこは私どもも認め ざるを得ないところだと考えています。  まず、計算方法についてお話させていただきます。実は今回1月20日の会議以降、弊 社で計算方法を見直してきましたが、その際、1カ所計算の違っているところがありま したので、今回それも併せて修正した形でお話をさせていただきます。お手元の資料 No.3になります。その後ろのほうに表が掲示されています。この表を見ていただいて お話いたします。  この表の見方ですが、例えばここですと、1(5)と書いてありますが、これは何を示 しているかというと、(5)の前の1がMonthの数字に当たります。この(5)は、こちらの ここの部分に当たりますので、1(5)ということになると、ここのMonth1の(5)の数字 だとご理解ください。それぞれ○が付いたものに関しては、それぞれのセルの数値の理 由、意味を左端のカラムに表示しています。  まず、Month2のところで順番にご説明いたします。今回の計算手法のベースは、販 売総数から、それぞれの患者1人当たりがお使いになられると推定される量を用いて患 者さんを計算する。基本的にはそういう形で計算しております。Month2(1)は、その月 での販売実績、こちらは金額ベースが入っています。その下は、実際のその金額を錠数 に換算したものですので、単純に薬価で割算しています。  この計算方法が最初に使われたのは、上市直後になりますので、いちばん最初は、医 療施設では全くイレッサの錠剤のストックがないという状態が起こっています。ですか ら、最初医療施設に納入されたすべての錠剤が、そのまま患者さんにすべてが渡るとい うわけではなく、やはり医療施設ではいくらかの在庫を確保する。そこですでに1つの 推定が入ってきます。ですから、(3)は、2(2)で得られた実際の錠数、病院に納入され た錠数のうち、在庫としてキープされるであろうと考えられる部分に関して、こちらで 調整をかけたものを、実際に患者さんに投与されたものだという形で考えて記載しまし た。これが2(3)になります。  その錠剤は患者さん何人に使われたのか。全体を計算する際に、1カ月を30日と置い て、その月に使用された錠剤数を30で割ることによって、すべての患者さんがその月、 1カ月ずっと飲んでいたという仮定のもとですが、投与患者数を計算しました。それが 2(4)になります。  次に、必要なのは投与開始患者数で、これに関しては、1つ戻って、1カ月目のとこ ろは非常に単純で、上市直後の月ですので、前月投与を開始された患者さんはいらっし ゃいません。ですから、30で割った患者数が、このまますべてその月に投与を始められ た患者さんの数字になるわけです。ここで1つ調整が必要になってきます。すべての患 者さん、新規の患者さんが、その月の1日から服薬を始められるわけではないのです。 そこで1つ私はまた仮定を置いたのは、その月の最初から終わりまで、同じ割合で患者 さんが服薬を開始される。ですから、そこで補正が必要になってきます。ここでは、上 市月は、1月1日が上市ではありませんでしたので、1人当たり、新規の患者さんの平 均の錠数として15と置いています。ですから、補正としては、実際に販売された錠数を 30で割った、そこから出てきた患者さんの数よりも、実際には倍の分が使われているだ ろう、という補正がここの部分です。1の(A)のカラムで新規の患者さんの数として 当てはまっています。その後、この患者さんに関しては、ある一定の率で服薬を中止さ れていくだろう、ということが容易に想像できるわけです。その際に、ドロップアウト 率、どういう率で患者さんが服薬を中止されるのか。ここのデータが、推定投与患者数 の推定のためのいちばん大きな変動要因になる部分です。これをどこから持ってくる か、私どもは非常に苦慮したわけです。当時、持っていた情報はIDEAL1の日本人 のサブセットのデータだけでしたので、それを使うしかない。お手元の資料No.3の別 添資料2ですが、こちらに示している図は、IDEAL1の試験で患者が進行せずに生 きておられた期間です。進行せずに、すなわち進行ということは薬が効かなくなったと 解釈して、このグラフから患者がそれぞれの月にどれだけの割合で中止されていったか を得ております。  その数値を用いて、新規の患者さんの数を経時的に低下させています。ですから、2 カ月目の患者数という話になると、2の(4)に入っている、単純に30で割った数になり ますが、その患者さんの数は、前月から飲み始めていた患者さんで、この月も飲んでい た患者さんの数と、この月の新しい患者さんの数の合計になります。3カ月目は同じよ うに、だんだんその数が増えていくわけです。この2つの和になると考えられます。  そのうち新規のこの月に入った患者さんはどう計算するかというと、その月全体で使 われた患者さんのうち、この部分、前月から服薬されていた患者さんを引いた場合、残 った数字、括弧の中の部分が補正前の、この月に服薬を開始された患者さんと考えられ ます。実際、これは2002年8月の数値になりますので、薬価収載が月末にありました。 基本的には薬価収載から大きく使われ始めたということがありますので、この場合も新 規の患者さん1人当たりの平均服薬日数としては、やはり15日と置いています。  隣のセルを見ていただくとおわかりいただけるのですが、同じように新規の患者さん の数としては、この全体の中から、この部分の2つ、白い部分を引く。それに補正をか けるという計算を同じようにしていますが、2002年9月以降に関しては、ここが15日と いう仮定ではなく、20日と仮定を変化させています。この部分については、お手元の資 料に詳細にご説明をしております。イレッサは2週間に1回の処方であったということ になると、新規の患者さん、月の前半に開始された患者さんに関しては、その月にもう 一度処方を受けられるわけです。一方、月の後半に処方を受けられた患者さんに関して は、その月にはそれ以上の処方を受けることはない。当然そこも厳密な計算にはならな いわけですから、そこも推定、あるいは仮定になるわけです。  そのように考えますと、できるだけ単純化するということも必要でしたので、そうい う単純化を考えると、平均すると、2人の患者さんで、月に3回の処方を受けられる。 1処方は14錠ですから、そこから計算すると、1人当たりの患者さんとして、平均月の 3分の2の分、20錠、20日の服薬をされたと計算するのが妥当と考えています。ですか ら、2002年9月以降に関しては、すべて新規の患者さんのその月での服薬日数は20日と 置いています。ですから、こちらからその月の新規の患者さんの数が出てきます。そし てこの数字は、またこちらの部分に当たるわけですが、先ほどお話したドロップアウト 率に基づいて順次、経時的に低下していく。最終的にはそれをすべて足すことにより、 推定患者数すべて出てくるわけです。  最終的に1月20日の会議のときに報告させていただいた8万6,800人がどうやって出 たかと申しますと、薄いグリーンの部分ですが、すべてのこれらの数字を足し上げたも のになります。式としては、こちらはそのままですが、前月までの累積投与患者数に、 3の(5)に当たるその月の新規の患者数を足したものが最終的には累積投与患者数にな る。こういう形で計算しています。これは正しい計算方法としてご理解いただけたかと 思います。  私どもが8万6,800人の報告をさせていただいた際に、どういうことをしてきたかを ご説明させていただく必要があると思います。先ほど申しましたように、修正後のとこ ろでは、この部分で新規の患者さんに関して、投与日数での補正を行っています。とこ ろが実際に私どもが行ったものは、最終的にここで足し上げていく部分、この部分で補 正を行っていました。補正がここにしか影響していなかった。実際にいちばん詳細に患 者さんの数をカウントしていく、この薄いグリーンの部分に対しての補正がかかってい なかった。すなわち今回この補正をしていなかった分、先ほどの図で申しますと、3カ 月目で30分の20という掛け算をする補正をしていますが、それをこちらの部分ではして いなかったわけです。そうなりますと、当初の推定患者数の推定に若干のずれが出てき ます。  その結果、前回8万6,800人と報告させていただきましたが、いまお話させていただ いた補正、あるいは計算方法の修正を行うと、最終的には6万5,000人という推定値が 上がってきました。この6万5,000人という数字は、ここにお示ししたように、私ども のほうで推定した、仮定を置いた形での数値として計算してきたわけですが、上市直 後、あるいは緊急安全性情報が発出された2002年10月、あるいはその後の添付文書改 訂、専門家会議からの提言、こういうものがいろいろ出てきた時期でしたので、かなり の調整をかけています。ただ、それに関しては定量的な情報として、補正がかけられる ようなものは一切なかった。ただ市場への影響は当然あったということだけは明らかで ある。そのような状況で補正をしていました。  6万5,000人が、この計算方法での数値としては、私どもも最も妥当なものだと考え ています。それではいままでどうなのだ、というところも併せて私どもは検討していま す。それが資料No.3の4頁目になります。こちらのほうで、弊社が現時点で入手して いる情報を最大限に反映させた形で考えたものとして、今回報告させていただきます。 基本的にはスクリーンにお示ししている計算方法と変わるところはございません。  ただ、何が違うかと申しますと、このイレッサに関しても上市後、約2年半を経過し ています。そして特に2003年5月に添付文書の改訂があって、こういう患者さんに関し ては肺毒性のリスクは高いということも、先生方にいろいろご研究をいただいた結果と して判明してきています。弊社も2003年後半には、プロスペクティブ調査を実施させて いただきました。その結果として、リスクの高い患者さんがある程度見えてきた。そう いうものが2004年3月ぐらいには何とか出てきていました。こういう患者さんはやはり リスクが高いということを、先生方が認識された結果、この患者さんは使っていいだろ うとお考えになる患者さんの背景情報がかなり均一化されてきたと私ども実感していま す。そういう意味では、かなり単純な計算が現時点では可能ではないか。すなわち安定 した状況で使われ始めているのではないかと考えておりましたので、今回報告させてい ただくものに関しては、こちらのスライドに示したように、緊急安全性情報による影響 や添付文書の改訂による影響、そういうものは一切加味しておりません。  もう1つの理由としては、当然時期が経って患者さんの数も増えていますので、この 辺りの影響も、推定の中での計算を考えれば無視してもいいのではないか、ということ で入れておりません。では何を変えたかというと、それは先ほどのドロップアウト率に 関して見直しをかけています。その見直しをかけた基になるのは、弊社の社内調査、市 場調査に置くものなのです。4頁の2つ目のパラグラフに「IDEAL1では腺癌患者 が」という割合が記載してあります。これはIDEAL1の中での話であって、その 後、それが市場の中でどうなっていったか。当然、先生方は腺癌患者さんではリスクも 低そうだ。あるいはよく効きそうだということをお考えになられましたので、その部分 がかなりイレッサの処方に占める割合が高くなってきている。それは私どもの市場調査 から出ています。  2行目に、2003年の市場調査では79%、2004年になると94%になっています。一方、 腺癌の患者さん、それ以外の患者さんでもイレッサの有効性に関しては、かなり違うと いうデータが出てきています。それが別添資料3になります。実線が腺癌患者さんで、 これは進行までの期間で記載しているデータです。破線が、腺癌以外の患者さんのデー タです。ですから、患者さんの背景情報によって、これだけ違ってくるということです ので、こちらのドロップアウト率の計算の際に、もちろんベースになるのは現時点でも IDEAL1のデータしかありませんが、そのデータを患者さんの背景因子の割合で調 整をかけたドロップアウト率を今回使用しています。  2003年、2004年で数字が違っておりますので、2003年末までのドロップアウト率を、 先ほどの79%の腺癌患者さんという割合で計算しています。一方、2004年以降、適用さ れるドロップアウト率は腺癌患者さんが94%という想定のもとに、ドロップアウト率を 計算しました。ただしこの2種類のドロップアウト率を使うというところを今回用いま したが、それ以外には基本的に計算方法としては変えていません。その結果、4頁にあ るように、この計算方法に基づくと約4万2,000人という数字が推定投与患者数として 出てきました。かなり前回よりも減っているという感覚はあるわけです。  これがどれぐらい確からしいのか。これは計算手法を変えると、大きく変わるもので すから、決まった方法がないという状況の中でのことになっています。1つ、私どもが 今回考えられるものとしてここに示しているのは、年間の肺癌患者さん、進行の患者さ んが約5万5,000人いらっしゃいます。私どもの昨年の調査では、そのうち約4割の患 者さんがイレッサを服薬されるという情報を入手しています。ただしここから単純に計 算すると、昨年1年間で約2万2,000人の患者さん。上市後から単純に計算すると2年 半ですので、約5万5,000人の患者さんがイレッサをお使いになったのではないか、と いうようにここからは計算されます。  しかし2004年には40%という数字が出ていますが、2003年は当然それよりも売上げと しても、販売錠数としても、低い値を得ていますので、そこから考えますと、2003年に 40%の患者さんがお使いになられたとは考えられないということもありますので、やは り5万5,000人という数字がここから出てきますが、それよりは少ないのではないか。 今回出した4万2,000人という数字の妥当性を検討する上では、1つの材料になるので はないかと考えています。  先ほど申しましたように、ドロップアウト率に関しては、あくまでこれはIDEAL 1という臨床試験の中での日本人のサブセットの結果になります。ですから、これでは 今の実施医療の患者さんが実際使われている期間とどうなのか、ということに関しては 私どもも現時点でお答えできる材料は持っておりません。これに関しては、厚生労働省 とも議論させていただいておりまして、やはり私どもとしては実施医療でどれだけの患 者さんが、どれぐらいの期間を使われるのかということは把握した上で、ドロップアウ ト率を再度必要に応じて見直すことも必要ではないかと考えておりますので、今後その ドロップアウト率の調査を実施していきたいと考えております。以上です。 ○松本座長  ありがとうございました。ただいま累積患者数についての説明をいただきましたが、 ご質問等はございませんか。 ○堀内委員  いまのお話で、結局、アストラゼネカ社が何人の患者に使ったか、全く掌握していな いことが明確になったと思います。これだけ副作用が問題になったにもかかわらず、M Rがたくさんいるにもかかわらず、どの医療機関でどれだけの患者に使われているのか 掌握していないことが、いまのイレッサのいちばん大きな問題ではないかと思います。 いろいろなファクターを入れて計算することをやらなくても、MRがきちんとそれを掌 握しているのが当たり前ではないかと思います。  4頁の中央に、腺癌患者の占める割合云々という議論がありましたが、ここで見ます と、「全処方における腺癌患者が占る割合は79%及び94%」という明確なデータを出し ています。こういうデータが得られるのであれば、どういう患者に、どの医療機関で使 われたのかということは、メーカーとして掌握できていて当たり前だと思いますが、そ れについてはいかがですか。 ○参考人  ご意見ありがとうございます。最初のご指摘に対しては、資料の4頁のいちばん下の 行から5頁に関して、実は弊社は、かなり重点的にイレッサの安全性モニタリングをM Rに実施させておりますので、かなり頻繁に先生方にお目にかかって、いろいろな情報 をいただいております。  その中で100%というわけにはどうしてもいかないのですが、弊社のMRが入手した 新規の患者さんの情報、これはMRの日報、その日の報告書に入手できた分に関しては 記載させています。残念ながら、先生のおっしゃる意味での全例調査には至っていませ んが、そういう数字も掴むようにはしてきました。ただ、残念ながら100%ではないと いうところで、どこまでカバーできているのか、はっきりと私どもとして申し上げるこ とはできないものですから、いままで公表は差し控えておりました。そちらの数字が5 頁目に実は記載しています。同様の調査を1月の検討会以降、厚生労働省からご指示を いただきましたので、今年の1月、2月にも実施しています。その結果でいきますと、 2005年1月、2月はISELの結果が出た後でしたので、新規の患者さんの数はかなり 減っています。ですから、また遡って昨年の11月、12月を見ると。 ○堀内委員  私が申し上げているのは、イレッサが7月に発売になって、そのすぐあとから問題に なっているにもかかわらず、メーカーが患者状況を掌握する努力をしてこなかったこと を問題にしているのであって、部分的に1カ月やってどうのこうのということを言って いるわけではない。それをきちんとやっていれば、どのぐらいの患者に使われたかとい うのは、いろいろな憶測もまじえた推測によって出してくるのではなくて、もっと明確 な数値が、各々の時点で出てくるのではないかということを申し上げているのです。 ○参考人  回りくどい説明になってしまったのですが。MRのその日その日の報告書の中の数値 は、上市当時からすべてを出したものを持っております。 ○堀内委員  ですから、そのMRのデータからどのぐらいの患者に使われた、どういう医療機関で 使われたというデータが出てきてもいいのではないですか。それが出ないで推測で、そ れも8万人から4万人までという倍も違うデータが出てくるのは、納得がいかないので すがいかがですか。 ○参考人  先ほど申し上げたように、あくまで弊社のMRが入手した情報がすべてではない。極 端な言い方を申しますと、情報をくださる先生方は100%くださる。くださらない先生 は一切くださらない。そういう状況での数値になっていますので、それがそのままこう いう医療機関で、どれぐらいの患者さんである。あるいはトータルでこれぐらいの患者 さんであるということを、私どもがある程度の確度を持ってお話できるような数字では ない、というところで私もそれはちょっと使うべきか、逆に混乱を招くこともございま したので、あえて公表するものではないという判断をしております。 ○松本座長  最初からかなり注目されている薬剤ですから、もう少し精密な数値があっても、堀内 委員が言われるようにいいのではないかと思いますが、堀内委員、いまのお返事でよろ しいですか。 ○堀内委員  状況はわかりました。 ○松本座長  他にご意見はございませんか。 ○栗山委員  患者数の問題も大事だと思いますが、その患者さんたちがどういう施設で管理されて いるか、ということも副作用の点から言うと大事だと思います。何万人という患者さん がメディカルオンコロジストのいる専門病院で全部管理されているのか。それでしたら 安心なのですが、現実はそうではないかもしれませんし、聞けば聞くだけ病診連携、病 養連携で、専門施設から地方の病院へ紹介されて、薬だけ使う患者さんがだんだん増え てくる可能性があります。そういう観点から言うと、いまの患者さんの数が少しバラつ いて十分でないわけです。  一方では、MRを通して把握している患者さんの数も持っておられるわけです。MR がいく施設というのは、かなり専門施設だと思います。そういう意味で、そこできちん と情報をもらえるような先生の所に何人いて、もらえない所にいる患者さんが計時的に 見て増えているのか、減っているのか。それがわかればありがたいと思うのですが。 ○参考人  まずどういう施設、どういう先生方のもとで患者さんが治療を受けておられるかに関 しては、私どもは納入施設はすべて把握しておりますので、どの先生が専門医か、専門 医でないかは私どもがするべきことではございませんが、この先生方が例えば肺癌学会 や癌治療学会の学会員でいらっしゃるか、あるいは専門医認定制度等もあれば使うとい う形で、そういうところを把握しています。かなりの割合の先生方が、そういう所に属 されておられますが、それ以外の先生方がおられることも確かです。ですから、そこか ら私どもがどういうことをさせていただくか、再度検討する必要があると考えていま す。 ○栗山委員  私は副作用のほうからこの薬に関係して見ていたのですが、初期は副作用が出て亡く なられた患者さんたちの、亡くなられる前のデータや亡くなられていく途中のデータが 非常に不足でしたよね。投与前も、レントゲンをあまり撮られていないような状況で使 われていましたが、その後、だんだん見ていますと、いろいろきちんとしたデータが整 ってきています。ですから、初期と現在では、例えば専門医の管理下にある患者と、そ うでない患者はだいぶ変わってきているのではないかと思っているのです。 ○参考人  本日、私は手元に持っておりませんが、その観点で専門医の先生方に使われている割 合、あるいは一般診療所レベルで使われている割合の変化を先日計算したものを用意し ておりますので、必要でしたら後日お示しさせていただくことは可能です。 ○松本座長  最初のころから、そういうことであったほうがよかったと思いますが、いかがです か。 ○土屋委員  私は専門は外科なのでむしろ教えていただきたいのですが、こういう新規に開始した 患者数などは、病院の薬剤部からMRへ一般的に伝わるものなのですか。その辺、正確 に伝わるのかという疑問があるので、堀内先生はご専門なのでどうかと。  それから、もしこういうことを本格的に研究としてやるとすれば、保険請求を調べた ほうが早いのではないかという気がしますが、その点はいかがですか。 ○堀内委員  保険レセプトをチェックできれば最も正確でしょうが、レセプトの時点で、これは病 院の中ではわかりますが、メーカーにその情報がいくとは思いません。薬剤部では、特 にオーダリングになっている所ですと容易ですが、オーダリングになっていなくても、 どの科のどの患者にどのくらいの薬が出ているとか、患者情報についてもいまはかなり 正確に掌握できますから、MRがきちんとそういうコンタクトを取っていれば、情報と しては正確なデータがいくはずだと思います。 ○土屋委員  私どもは院内での把握は十分努めているつもりですが、それを特定のMRに定期的に 出すことに抵抗はないのかというか、縛りはないのか、その辺がわからないのです。 ○堀内委員  個人情報を出すことについては問題があると思いますが、新しく何人入ったとか、そ ういう人数を出すことについては特に問題はないと思います。 ○松本座長  よろしいですか。確かに難しい問題です。実際、MRが全部の情報を得られるかとい うことになると、かなり難しいところもあると思いますが、もう少し正確な数値があっ てもいいような気もしないわけではありません。他にご意見はございませんか。 ○北澤委員  厚労省に聞きたいのですが、抗癌剤の中には承認後、全数調査を義務づけた上で承認 する薬がありますが、イレッサの場合は、当初それがなかったのです。当時のことにな ってしまいますが、いまこういう話を聞いていますと、最初から全部調査しておけば、 こんなややこしいことはなかったのになと思ったものですから、当時のことがわかれば 教えていただきたいのですがいかがですか。 ○安全対策課長  いままで全数調査をかける医薬品の種類というのは、大体どういうケースがあるかを 考えていきますと、いちばん多いのは、国内のデータが少ないというケースがありま す。特に抗癌剤の中でも、患者数があまりにも少なく、どちらかと言いますと海外のデ ータを主体に審査をされて、日本人のデータがかなり希薄であるというケースでは、最 初に日本人での安全性、有効性のデータを早く取るという観点から、全数を把握、フォ ローしていって、その結果をデータとして作り上げるというケースがあります。  もう1つは、かなり使い方が難しいというか、特に細胞毒性の強いものについては、 副作用が明らかに出るだろう。特に抗癌剤ですと、ほぼ数十パーセントの確率で副作用 が出てきます。その中でも重篤な比率が高いものについては、その副作用の様子を早く 集めようということで、全数調査をかけるという対応をされておりました。一律新しい 薬であれば、全数ということではありませんでした。この薬については抗癌剤としては 症例数がそこそこありましたし、副作用の面では間質性肺炎というのは、言われて審査 過程ではちゃんと捉えていたわけですが、その比率自体は普通の細胞障害性のものに比 べれば、かなり低いという判断がされたものだと考えています。 ○北澤委員  ただイレッサの場合は、経口薬であるということで、むしろ使い方が簡単すぎたとい うか、そういう面もあるのではないかと思います。これは感想です。 ○松本座長  他にご意見はございませんか。もし意見がないようでしたら、ここで一時休憩とし て、これまでの検討会の議論を踏まえて、事務局と私で検討会の意見の取りまとめ案を 作成したいと思います。 ○事務局  この検討会は休憩に入ります。よろしくお願いします。                   (休憩) ○松本座長  それでは時間になりましたので午後の審議を始めます。休憩時間の間に、「ゲフィチ ニブISEL試験結果の評価とゲフィチニブ使用に関する当面の対応についての意見 (案)」を作成したので、いま委員の先生方はお持ちだと思いますが、ご確認くださ い。それでは最初に、事務局、この案を読み上げていただけますか。 ○事務局  では、ただいま配付されました「ゲフィチニブISEL試験結果の評価とゲフィチニ ブ使用に関する当面の対応についての意見(案)」を読み上げさせていただきます。  本検討会は、1月20日に「ゲフィチニブISEL試験の初回解析結果に関する意見」 を取りまとめた。その意見においては、本試験結果の日本におけるゲフィチニブの臨床 的有用性に対する影響を判断するためには、詳細な解析結果を待つ必要があるとしてい た。  その後、3月に、企業から詳細な解析結果が提出されたことから、本検討会におい て、ISEL試験の詳細解析結果、EGFR遺伝子変異に関する知見及び日本肺癌学会 作成の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」について、3回にわたり検討し、次 のような結論を得た。  1 ISEL試験結果について。企業から提出された資料を評価した結果、ISEL 試験は、well-controlled trialであることを確認した。その上で、詳細な解析結果を 検討し、ISEL試験について次のとおり確認した。  (1)全症例を対象とした場合、ゲフィチニブ投与群とプラセボ投与群との比較で、 腫瘍縮小効果(奏効率)では統計学的に有意な差が認められたが、主要評価項目である 生存期間について、プロトコールに記載された解析手法により解析した結果、統計学的 に有意な差は認められなかった。  (2)東洋人を対象としたサブグループ解析において、ゲフィチニブの投与が生存期 間の延長に寄与することが示唆された。このサブグループ解析の結果は、頑健性が認め られた。  2 EGFR遺伝子変異の臨床応用について。1月の検討会において指摘のあったE GFR遺伝子変異とゲフィチニブの有効性に関する最近の知見について検討し、次のと おり確認した。  (1)EGFR遺伝子変異は、ゲフィチニブの有効性を予測しうる重要な因子である こと。  (2)EGFR遺伝子変異検査については、(1)標準的な測定・評価方法が確立して いないことや、EGFR遺伝子変異検査の結果に偽陰性がありうること、(2)EGFR 遺伝子変異が確認されない症例においても、奏効する症例が少数ながら存在することか ら、現在の測定・評価方法において、EGFR遺伝子変異が確認されていない場合で も、その結果がゲフィチニブの投与を行わないこととするだけの決定的な根拠とはなり 得ないこと。  3 ゲフィチニブ使用に関する当面の対応について。本検討会は、上記1、2及び本 年3月に改訂された日本肺癌学会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」につい て、検討を行った。  その結果、1月20日の本検討会の意見に述べたように、従来の安全対策を引き続き実 施するとともに、国及び企業は、当面、次のとおり、対応することが適当であると考え る。  (1)国は、ゲフィチニブの適正使用を進めるため、以下のような方法により、本ガ イドラインの医薬関係者及び患者に対する周知を図ること。(1)企業に対し、ゲフィチ ニブを使用するに当たって、本ガイドラインを参考とする旨を添付文書に記載すること を指示すること。(2)企業に対し、企業の行う情報提供活動において医薬関係者に本ガ イドラインを配布し、関係者に周知することを指導すること。(3)関係学会・団体等を 通じて、医薬関係者に対して、本ガイドラインを周知するとともに、医薬品医療機器情 報提供ホームページ等を通じて、患者に対しても本ガイドラインの情報提供を行うこ と。  (2)企業は、関係学会と協力するなどして、ゲフィチニブの有効性と関係する変異 の解明、EGFR遺伝子変異検査方法の確立等に向けて努力し、得られた成果について は積極的に公表し、医薬関係者及び患者に対して情報提供すること。  (3)ゲフィチニブの日本人における生存期間に対する有効性を評価するためには、 現在実施中のドセタキセルを対照とした非盲検無作為化群間比較試験の結果が必要であ り、企業は早急な試験の完了に向けて努力すること。 ○松本座長  ありがとうございました。この意見(案)に対してご意見等ありますか。読んだ上 で、ご意見がありましたらお願いします。まず先に1つだけ確認をさせていただきま す。皆様方のお手元にコピーが回っておりますが、イレッサEGFR変異等、関連指摘 事項、及びその回答の中の(3)という所に、「データの考察」という項があるのです が、この上から5行目に、「アストラゼネカ社が実施した試験IDEAL1及び2云々 」以下で、「イレッサの単独療法、化学療法等の併用療法のいずれの場合も、EGFR 遺伝子変異とイレッサによる抗腫瘍効果の間の関連性は確定されなかった」という文章 があります。この点についてアストラゼネカ社からご説明をお願いします。 ○参考人  はい、ご説明いたします。弊社といたしましても、当然のことなのですが、EGFR 変異と本剤との有効性の関連に関しては可能性が非常に高いと考えております。ただ、 いまご指摘いただいた部分で、関連性は確定されなかったという記載をしたのですが、 それは結局、かなりの高い確信を持った上で「関連が認められた」というにはデータが まだ十分ではないと、まだまだ検討する部分はあるのだという意味でここに書かせてい ただきましたので、基本的には先ほど田村先生がご発言なさった内容と同じような方向 で私どもも考えております。 ○松本座長  ただいまの説明も含めまして、この案に関し、何方かご意見等ありませんか。 ○事務局  事務局から、ちょっと誤字がありましたので訂正させていただきます。2頁目の最後 の文章の下から2行目の真ん中に、「ドセタキセルを対象とした」という表現がありま すが、この「対象」の「象」の字は「照」という字に訂正していただきたいと思いま す。 ○貫和委員  ちょうどその文面の3の(3)の所です。これは1月20日の討議会のときに私は指摘 しましたが、ゲフィチニブのアームとドセタキセルのアームに入る患者に対して、ゲフ ィチニブ使用に関する肺癌組織EGF受容体の少なくとも変異の情報をどう伝えるの か。ということは、ドセタキセル側に入った患者が、もし仮にミューテーション陽性 で、むしろゲフィチニブの恩恵を受ける可能性が強いにもかかわらず、ドセタキセル側 に入ってしまう。これに関して、患者に十分な説明をどういうふうにするかという問題 について、会社側の説明を受けたいと思います。 ○松本座長  その辺の考慮はどうなのですか。 ○参考人  日本で実施中の第III相試験ですが、現在1月の検討会の結果を踏まえて、プロトコ ールの改訂作業を進めているところです。その改訂の中において、今後登録されてくる 患者様に対しては、組織切片の提供をいただきまして、EGFRミューテーションに関 しても調べていく予定です。また、ICに関して、同意説明文書に関しても、今回、こ れら検討されてきた内容について、十分に反映するような形でプロトコール、同意説明 文書の変更をしていく予定です。 ○貫和委員  いま私が質問しました内容、EGFR受容体変異の有無に対しての理解、これは一般 の方には非常に難しいと思いますので、実際にどういうICになるのか、また少し討議 が必要ではないかと思います。 ○参考人  ありがとうございます。またドラフトが出来上がってきましたら貫和先生ともご相談 させていただけると非常にありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○松本座長  この問題はこれでよろしいですか。ほかにご質問ありませんか。大枠でこのような取 りまとめ、これは当面の取りまとめですが。 ○堀内委員  先ほども申しましたが、ゲフィチニブの使用と副作用に関して、メーカーがきちんと 掌握していない。副作用についても同様ですが、これは大きな問題だと考えます。した がって、企業に対して、当面の間は全症例追跡調査を義務づけることが必要だと思いま す。何らかの方法でしっかりと掌握することを義務づけることが必要だと思います。  それから、もう1つは、間質性肺炎の副作用に関してはいまのところ原因が明らかで ないわけですが、それについて一言も触れられていません。その原因の究明について早 急に検討することを入れるべきではないかと思います。 ○松本座長  それは、そのことに関して、どこかこの案を変える必要はありますか。 ○堀内委員  副作用のことは全く触れられていません。いちばん大きな問題は、副作用、間質性肺 炎の問題がいまだに全く解決されていない事です。使用の仕方が改善されて減ってはい ます。が、しかしながら本質は明らかになっていないわけですから、それについてやは りきちんとすべきではないかと思います。できればその点について、文章の中に入れて いただきたい。 ○松本座長  ほかにこの案に関してご質問等ありませんか。 ○北澤委員  2の(1)、「EGFR遺伝子変異は、ゲフィチニブの有効性を予測しうる」という 所ですが、この有効性というのが何なのかというのがもう少し説明が必要なのではない かと思います。私の意見では、前回の光富先生のお話なども踏まえますと、腫瘍の縮小 という、だからここの、1の(1)の「奏効率」という所については、そういう重要な 因子であるような結果も出ているのかなと思いますが、少なくとも生存に関してはいま 何も言えないのではないかと思います。それと、先ほど座長が読まれたIDEAL1及 び2、INTACT1及び2という所ですが、そこにおいてはEGFR変異とイレッサ による抗腫瘍効果の関連性は確立されていないというふうにも書かれておりますし、も う少しこの2の(1)の所の言葉の使い方を考えたほうがいいのではないかと感じまし た。いかがでしょうか。 ○松本座長  この有効性を、奏効率または抗腫瘍効果。 ○北澤委員  ほかの先生のご意見はいかがでしょうか。 ○松本座長  ほかに何かいい言葉はありませんか。土屋先生、いかがですか、言葉としては。確か に有効性というと、あらゆるものが含まれる可能性がある。 ○土屋委員  そうですね。有効かどうかということになれば、生存曲線上どうかということに解釈 される可能性は強いと思います。 ○松本座長  ほかにご意見ありませんか。この言葉に関してはいかがでしょうか。下方先生、何か ご意見ありませんか。 ○安全対策課長  有効性の後ろに、括弧書きで「抗腫瘍効果」とか付け加えればいいかと思うのです が、どうでしょうか。 ○松本座長  治験のときの有効性は奏効率ですか。 ○安全対策課長  奏効率です。 ○松本座長  ほかにこのことに関してご意見ありませんか。このEGFRに関しては、先回の話か らいきますと重要な因子であるということはある程度納得できるのですが、これ以外の 言葉にするとすればどういう表現法を使ったらいいか、何かご意見やコメントありませ んか。 ○土屋委員  たしか、いま課長がご指摘のように、光富先生の前回の参考人意見では、標題では 「EGFR遺伝子変異とゲフィチニブの有効性」という題でお話になって、中のスライ ド17では、ゲフィチニブの有効性の関連という意味で、有効性の基準として腫瘍縮小あ るいはCEA減少というような形で、おっしゃるように具体的には奏効率という形でご 説明になっております。ですから、後ろに括弧を付けて奏効率と加えるのがいちばん、 光富先生のご報告を踏まえた上ではいい表現かと思います。 ○松本座長  (1)で、「有効性(奏効率)を予測しうる重要な因子」ということに関してはいか がですか。このままでもいいですか。「重要な因子」でも。 ○医薬食品局長  いいでしょう。 ○松本座長  ほかにご意見ありませんか。 ○安全対策課長  先ほど全数調査のご提案がありました。これについては、本日の議論からいきます と、推定患者数もわからないような状態が批判されたと考えておりますので、普通の全 数調査ですと、全患者さんに対して承認を取って、その患者さんのデータをずっとフォ ローして、それをすべて医療機関のほうから報告を受けるという、かなりそのデータを どう使うかという所をきっちりしておかないと、全数調査が、ただ単に推定患者数とい うか、登録された患者数がどのくらいいるのかということだけを把握するのであれば、 そこまでは要求してもしょうがないと。したがって、何人ぐらいの患者さんがおられ て、どういう医療機関で使われているかということを把握するのであれば、メーカーに 対してそういうデータを常に把握して、それをこちらのほうに報告しろというふうな形 にするのがいちばん現実的な対応かと思います。その中で、医療機関の変動とかを見ま して、新規に使われるような医療機関がどういう機関であるかということは、十分メー カーもきちんと把握して、その機関に対して、直接先生とのディスカッションをした上 で、どのくらいの能力がある施設であったかどうかは常にメーカーとしては把握する。 そして、それをこちらのほうに報告してもらって、それをチェックするという形にする のがいちばん現実的かと思います。 ○堀内委員  イレッサの承認をするときに承認条件が付いていて、それが添付文書のいちばん後ろ に2つありますが、この記載にもありますように、十分なサンプルサイズの無作為比較 試験を国内で実施することとなっています。これは先ほどの現在進行中のものと考えら れるわけです。さらに2番目にありますように、この承認段階では、まだ症例数も少な く、十分なデータが得られていなかったわけです。サンプル数も高々外国等も含めて 200症例ということでした。したがって、その後のフォローは、安全性についてのデー タがあるだけなので、まだ不十分だと思われるわけです。それに加えて、承認条件を実 施するという意味も含めて、全症例をしばらくの間フォローするということは妥当だと 考えます。 ○審議官  全症例調査が必要ではないかというご指摘だと思いますが、何らかの調査を指示ある いはサジェスチョンする場合は、通常の場合、問題点の指摘があって、それから仮説を 作りまして、その仮説を検証するためにどういうような方法が実際ベストであるのかと いうようなプロセスの中で、場合によっては全症例調査がいいとか、あるいは前向きの 母数をきちんと把握した副作用調査がいいと、そういったような方法論になってくるの ではないかと思います。先生の先ほどのご指摘ですと、そもそもこういった抗癌剤作用 も、副作用、間質性肺炎の原因究明もなかなかまだわかっていない段階で、医薬品企業 としての対応に問題があるのではないかというご指摘に立つのであれば、それはまた指 導とかそういった部分での問題であって、方法論としての全症例調査が必ずしもベスト であるのかどうかという、技術的な問題とは若干離れるように印象を持つのですが。し たがって、現時点では安全対策課長のコメントが妥当のように感じております。 ○松本座長  いかがですか。安全対策課長のご意見でよろしいですか。 ○堀内委員  要するにメーカーの姿勢としてきちんと患者を把握していないということに対して、 そこを明確にするという意味で全症例ということが1つと、それから、この会議をずっ とやってきて、特に日本人における有効性と安全性については、いろいろ議論されてき ましたが、まだ十分でないわけですから、それをきちんと検証するという、両方の点か ら申し上げているつもりです。ですから、目的としては明確だろうと思います。  副作用の問題についても、ISELのデータでも、東洋人であろうと日本人の入って いない所では1%前後で、その検査の仕方が妥当かどうかは別として、変わっていませ ん。日本ですと5.8%というデータが出ていますが、解析はまだまだできていないわけ です。それをきちんと解析するために、全症例をフォローしてどのくらいの間質性肺炎 の副作用が起こるか、有効性についても、現在わかっている段階ですと、EGFRの変 異等をできるだけフォローしていくということが大事だと思いますので、それらの関連 を明らかにすべきであるということを申し上げているわけです。 ○松本座長  先ほどプロスペクティブスタディーの結果も報告されましたが、それでは不十分であ るということですね。 ○堀内委員  日本人で起こっているこれが、これで十分解明されているとは私は思いませんが、い かがでしょうか。 ○松本座長  そうなりますと、この取りまとめ(案)の中のどの辺にどういうふうな言葉で入れま すか。 ○土屋委員  どういうふうに入れるか以前に、堀内委員の真意が私にはちょっとわかりにくい。全 症例とおっしゃりながら、できるだけEGFRというようなことですと、これはやはり きちんと調べるにはケースリポートフォームを明確にして、何を調べるのかというのが ないと、ただ単に全例把握したというその把握自体が何が結論としているのかというの は、ちょっと私、いまの説明では理解しかねるので、その辺をお教えいただければあり がたいです。 ○堀内委員  有効性と副作用の発現については全症例をフォローできると思います。ただ、EGF Rレセプターはこれまで議論されていますように、サンプルの問題等で全症例フォロー できるかというと、必ずしもそうでないという議論が、されてきたと思います。したが って、「できるだけ」という表現で申し上げたわけです。 ○土屋委員  ただ、そのやり方ですと、有効性1つ取っても、エクサミュラルレビューが行われる わけではないので、主治医の申告ということで、他との比較ができるデータが集められ ないのではないかという心配をするのですが。 ○松本座長  堀内先生、どうですか。なかなか難しいのではないかと思うのですが、信頼性がおけ るようなデータが集まるかどうか。 ○堀内委員  最後の所がわかりませんでした。何との比較ですか。申し訳ありません。 ○土屋委員  有効性1つ取っても、いわば主治医の自己申告での判定ということになりますので、 それと、いままでスタディーとしてやられたものと、比較はちょっと難しいのではない かと思うのです。 ○堀内委員  私が申し上げているのは、メーカーの責任を明確にする必要があるということが第一 です。そのためも含めて全症例ということを申し上げている。それと、もう1つはサイ エンティフィックな問題は当然あるわけですが、それはまた別のトライアルを考えれば いいと思いますが、両方の側面から申し上げているつもりです。これまで副作用等がこ れだけ起こって、たくさんの患者が亡くなっているにもかかわらず、先ほどのデータで 示されたように、どこでどのように使われているかをメーカーが把握していないという ことは驚きに足ることだろうと私は考えますので、そこを明確にする必要があるだろう と申し上げております。 ○松本座長  こういうご指摘ですが、メーカーのほうはそれでよろしいですか。 ○参考人  先生、ご指摘ありがとうございます。先生のおっしゃる部分、重々私どもも理解して おります。ご指摘の今回の肺毒性に関する知見あるいは有効性に関する知見に関して は、私どもも、先ほど来出ている第III相試験においてまず有効性をしっかりと見てい く、これを早急に済ませるということで、どのようにすれば患者さんに多く参加いただ けるかということも踏まえて、プロトコールの改訂まで現在検討しております。また、 特に肺毒性に関しては、別途私どもいま実施しております疫学的調査ですね、ケースコ ントロールスタディー、こちらのほうで最終的には6,000例程度まで患者さん集積でき るかと考えておりますが、その試験において、臨床的、あるいはバイオマーカーという か遺伝的な側面、そちらも含めた上で肺毒性に関する原因究明を全力で実施していくと いうことで現在実施しております。私どもとしては現在できることはさせていただいて おります。もちろん先生のおっしゃる部分は、今後私どもとしても真摯に受け止めてさ らにできることを検討していくということはもちろんさせていただきますが、現時点で 私どもは、臨床試験あるいはケースコントロールスタディーという形で解明に努力して おりますということを申し上げさせていただきます。 ○堀内委員  それでは、メーカーとして全体の患者情報の把握にどのような努力をされるかという ことについてお聞かせいただきたいと思います。 ○参考人  残念ながら、まだ社内でも議論の途中でありまして、いまこの場で申し上げるまでに 至っておりませんが、今後私の社内でも検討しまして、また今回のこの検討会の先生 方、あるいはそのほかにも臨床の先生方のご意見も伺いながら、厚生労働省と進めさせ ていただきたいと考えております。 ○貫和委員  全例調査に関しては、今回不備がわかった。要するに、どういう施設でどういう症例 に対してという問題は残ります。それは置いておいて、いちばん最初に堀内先生が指摘 された3の所の「ゲフィチニブ使用に関する当面の対応について」、安全対策を引き続 き実施するという、要するに副作用がいちばん大きな問題であるという面を、この(1 )(2)(3)(4)にやはり取り上げておくべきではないかと。私がアストラゼネカ さんにお尋ねしたいのは、こうした実際的な対策です。この肺毒性に関しては、私も肺 障害は専門としておりますので、海外へ行きましたら、ほとんどこれは日本人の問題だ ということになるわけです。こんなことはいままでほかの薬剤とかそういうことで事例 はないわけです。多少最近他剤でも気づかれているにしても。むしろ、アストラゼネカ さんは、例えばこの患者さんで肺毒性は起こりますよということを遺伝子解析あるいは プロテオーム解析でわかった段階で、その患者さんには使わないという方向にするので すか。それとも、前回少し言いましたが、用量の設定をより低い方に変化させるという ような取組みも将来的に考慮なさるのですか。 ○参考人  現時点ということでまず申し上げますと、例えばこの患者さんで、非常にリスクが高 いということが今後また判明してくる可能性があります。現時点でもいくつかのリスク ファクターとして私どもの添付文書にも記載させていただいております。その患者さん には一切使ってはいけませんと、「禁忌」という言葉になるかと思うのですが、そうい う対応になるかどうかという所に関しては、もちろん厚生当局ともご相談ということに なるのですが、やはり最終的には、今回ここの疾病、すなわち肺癌、予後が非常に悪い 肺癌であるということを考えますと、最終的にはやはり患者さんが使うとおっしゃった 場合、あるいは先生と相談されてそう決められた場合に関して、企業側から、「いや、 それは絶対に駄目です」ということを申し上げる立場にはないと、そのように考えてお ります。  また、先生からご指摘いただいた2点目の部分ですが、やはり今後出てくる情報に関 しても、私どもはさまざまな形で治療現場にもちろん提供しますし、今後こういう情報 が必要だと。例えば先生からご指摘いただいた低用量での件に関しても、今後私どもの いろいろな臨床試験あるいは非臨床的な検証の中でそういうことが必要であるというこ とが判明しました場合には、また日本の専門の先生方あるいは内科医も含めての先生方 ともご相談させていただきながら、進んでいく方向をしっかり考えていきたいと考えて おります。 ○貫和委員  この低用量に関しては、私ども肺癌の治療をやっておりますと、ドセタキセルを毎週 毎週使うというような使い方では、日本人の場合は肺毒性が前面に出る。ですから、バ イウイークリーで使うということで、ほぼ効果も変わらずにそれを使いこなせていると ころがあるわけです。ゲフィチニブ投与量の1日1回250ミリというのは、世界一律の 必要があるのかどうか。特に欧米人に肺毒性が起こってなくて日本人に起こっていると いう極端な差を考えると、おそらく用量の設定の所に問題があるのだろうと。ですか ら、最適用量を設定すれば、効果もあるし、副作用も抑えられるという可能性が十分考 えられると思いますので、それはもう将来的に企業のほうで考えていただきたいと思う のです。 ○松本座長  先生のご意見は、(4)に、肺障害についての研究を進めるとかそういう文言を入れ ようということですね。このことに関しては、ほかの委員の方、いかがですか。先ほど 申されました(3)の所のドセタキセルのときのEGFRの変異についての文言は、追 加の必要はないですね。貫和委員、これはこの文章で、あるないでどうこうするという ことで、変更を加える必要性はありますか。 ○貫和委員  すみません、もう一度位置を確認させてください。 ○松本座長  ドセタキセルの非盲検無作為化群間比較試験が現在行われているわけですが、EGF Rがあるないによっていろいろと結果に変化が出てくる。そのことをいまここに加える 必要はありますか。 ○貫和委員  いや、結果に変化が出てくるというよりも、先ほど私が指摘した点は、そういうこと ではなくて、むしろ患者へのインフォームの意味ですので、いま企業がそれを考えてく ださっているのでしたら、私としてはそれ以上ここでは発言はありません。 ○松本座長  それは現在治験やっている人の問題になりますから、実際やっている人がどうするか ということにかかっていますね。 ○貫和委員  はい。 ○松本座長  ほかにご意見ありませんか。いままでの意見を聞いてみますと、2の(1)の有効性 の所に、括弧して「奏効率」というのを入れるということと、もう1つは、(4)に副 作用についての記載を入れるということですが、これは事務局で適当な文章あります か。 ○事務局  ちょっと休憩して、その間に考えたいと思いますが。 ○松本座長  それでは10分ぐらい休憩してその文章を考えるということで、よろしいでしょうか。 ○堀内委員  先ほどのどこへ入れるというのは、3の(2)の所に、「企業は」という所がありま すが、そこに患者情報の把握について入れていただければということです。「患者情報 を正確に把握し」とか、「的確に把握し」とかいう形で。 ○松本座長  このことについては、ほかの委員の方、いかがでしょうか。患者情報の把握、これは 入れておいたほうがよろしいですか。 ○安全対策課長  どちらかというとこのガイドラインをどれだけ徹底できるかという所にも非常に密接 に関係してきますので、いまの患者把握については、(1)の(4)を立てるなりして書 いておけば。目的は、いかに適正に使っていただけるか、その検証のために医療機関と か患者の情報については、メーカーのほうもきちんと把握しておくということではない かと思うのです。 ○松本座長  先ほど用事でお帰りになりました吉田委員のご意見では、この薬については添付文書 の「警告」の欄に書いてある「肺癌化学療法に十分な経験を持つ医師が使用するととも に」というここの部分を強調するように指導してもらいたいというのがお帰りになると きの伝言でした。それを含めて、こういう文章をここに入れて作ってみたいと思うので すが、よろしいでしょうか。ほかに何か追加なりご意見なりありませんか。ないようで したら、いままでのご意見を参考に、少し改訂したものを10分ぐらいで作ってみますの で、お待ちください。                   (休憩) ○松本座長  それでは修正案をいま事務局から読み上げさせますのでお聞きください。 ○事務局  では、修正された事項のみを読み上げさせていただきます。1頁目の2の(1)の部 分です。「EGFR遺伝子変異は、ゲフィチニブの有効性(腫瘍縮小効果)を予測し得 る重要な因子であること」。そして、2頁目に移りまして、3の(2)の部分です。 「企業は患者情報の把握に一層努めるとともに、関係学会と協力するなどして、ゲフィ チニブの有効性と関係する変異の解明、EGFR遺伝子変異検査方法の確立等に向けて 努力し、得られた成果については積極的に公表し、医薬関係者及び患者に対して情報提 供すること」。それと、(3)については、「対象」の「象」の字を修正するというこ とです。新たに(4)として1項目追加しております。「(4)企業は、急性肺障害・ 間質性肺炎発症原因の解明に向けて努力し、得られた成果については積極的に公表し、 医薬関係者及び患者に対して情報提供すること」。以上です。それと、3の柱書きの最 後の文章ですが、「国及び企業は、当面、次のとおり、対応することが適当であると考 える」とありますが、「次のとおり」の後に読点がありますが、この読点をとらせてい ただきますので、その部分、もう一度修正をお願いします。 ○松本座長  この修正案に対してご意見等ありませんか。 ○貫和委員  私が追加をしていただいた(4)の所ですが、これは発症原因の解明だけではなく て、解明よりも、やはり回避方法の開発だと思いますので、それをもう少し考慮いただ くか、あるいは付け加えていただきたいと思います。 ○松本座長  予防では変ですか。 ○貫和委員  むしろ、回避。 ○松本座長  どうですか、回避。ほかの委員の方、回避でよろしいですか。ご異議がなければ「発 症原因の解明や回避の方法の策定に向けて努力する」ということでよろしいですか。ほ かにご意見ありませんか。特別ここに記載しませんでしたが、先ほどお帰りになりまし た吉田委員からは、この肺癌治療、このイレッサによる治療は、肺癌治療に精通した医 師または緊急時に十分対応できるような医療機関を選択して受けてもらいたいという要 望がありました。ほかに特にご意見ありませんか。もしご異議がないようでしたら、こ の修正案を本検討会の意見とさせていただきます。どうもありがとうございました。事 務局から何かありますか。 ○事務局  ただいまの修正意見に基づき案を修正し、修正後のものを座長にご確認いただいて、 厚生労働省のほうでなるべく早く公表させていただきたいと思います。 ○松本座長  ほかに全体を通してご意見ありませんか。ないようでしたら、1月20日から計4回に わたりましてご検討いただき、本当にありがとうございました。検討会はこれで閉会と させていただきます。どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省医薬食品局安全対策課  星(内線2794) Tel.03-5253-1111(代表)