05/03/18 第22回社会保障審議会介護給付費分科会議事録          社会保障審議会 第22回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所 : 平成17年3月18日(金) 午前10時から12時           東京會舘本館ゴールドルーム 2 出席委員:浅野、井形、大森、沖藤、漆原、喜多、木下、木村、京極、見坊、        笹森、田中(滋)、田中(雅)、野中、橋本、花井、矢野(代理:        遠藤参考人)、山崎、山本、横山の各委員        浅野、喜多、山本の各委員は欠席 3 議題:介護保険制度見直しについて ○大森分科会長、井形分科会長代理より挨拶。 ○渡辺企画官より資料1、資料1−2に沿って説明。 ○三浦老人保健課長より資料2、資料3に沿って説明。 (横山委員)  今回の改正は給付費の抑制を大きな目的として行われるということだが、一方で、介 護予防、地域密着型、老人保健事業、地域支援事業といったものが介護保険の財源の中 で行われることになるようだ。果たして本当に、介護保険制度全体の給付費、保険料の 抑制につながっていくのかお伺いしたい。介護保険部会で審議されたとのことだが、当 分科会としても、サービス体系についてもう一度議論できればと思う。  特に地域密着型サービスの地域密着型介護老人福祉施設は、資料によると30床未満と 書いてある。現状でも小規模特養と言われる30床の特養が整備をされてきたことがあ る。当然、50床の特養に比べて介護報酬は高く設定されているわけだが、新たに地域密 着型として、いわゆる個室ユニットで29床以下の特養をつくるということが果たして給 付費の抑制につながっていくのかどうか疑問だ。  先般、石川県のグループホームで事件があったが、非常に小規模の施設の従業員、あ るいは職員の労働環境の劣悪さからあのような事件につながったと理解している。小規 模化、ケアを個別化するということがどのように結び付いているのかということについ ても考えなければならないと思う。  ルール上は3年に1回介護報酬の改定を行うことになっていると思うが、そのルール に沿わないで、本年10月から利用者に居住費、食費、光熱費等の負担をしてもらうとい うことは、非常に遺憾だと考えている。社会保障費の自然増分2,200億円の縮減のため に介護保険施設、ショートステイ、デイサービスといったサービスの利用者が犠牲にな ったと思うが、この点について医療サービスとの整合性といったようなことについて考 えを伺いたい。  介護予防に関してはワーキンググループを作って検討するということだが、十分給付 費分科会で議論して、ワーキンググループを設置することを御検討いただきたい。そし て、ワーキンググループが開催された折には、その都度この分科会に報告していただく ようお願いしたい。 (大森分科会長)  サービスの在り方そのものについて本分科会で検討すべきだということか。 (横山委員)  そうではなくて、介護給付費の抑制を目的とする今回の改正案が、軽度者の方々を給 付体系の中にどのように位置づけていくのかを議論してもらいたいということ。 (山崎総務課長)  御指摘は全般にわたっていると受け止めている。介護保険法の改正法案は大枠を決め るものだ。持続可能性という観点から、ある面、厳しい内容も入っているわけだが、そ れが実際にどのような形で現実するかは、まさにこの分科会で御議論いただくことだ。 我々も、お話をお伺いしながら、介護報酬や基準を制定していきたい。  分科会の審議に資するためにワーキンググループを設置するので、十分連携して進め ていきたいと考えている。 (京極委員)  予防重視で法律も改正されるのは大変結構なことだと思うが、旧来の老人保健事業で 行われる健康増進等と地域支援事業との住み分けはどう考えたらいいのか。 (三浦老人保健課長)  今回、地域支援事業を創設するが、新たな要支援、要介護者を生まないように十分な 対応をしていこうという考えだ。  老人保健事業は、御案内のとおり施行後20年余りが経っており、その内容について見 直すべきという御意見を介護保険部会からいただいており、それを踏まえて、専門家の 御意見を伺いながら御議論していただいてきた。結論としては、今後の老健事業は、介 護予防に重点化していくべきだという御意見をいただいた。そういう意味では、介護予 防に資するものについて、地域支援事業に移していくことになると考えている。 (大森分科会長)  介護保険が始まった後、介護予防に関する仕事をしていた市町村の職員は、何となく 隅に置かれたような印象がある。こういった方々について、今回の見直しで制度全体の 仕組みの中に入ってがんばって頂きたいということもあり、市町村レベルの職員の方々 をきちんと位置づけるという趣旨も一部入っていると私も聞いている。 (田中(滋)委員)  地域包括支援センターは、介護保険以外のサービスも視野に入れるとか、多職種で働 くとか、それを運営協議会によってサポートするとか、大変いい試みだと思うのでうま くいくことを望んでいる。この資料のとおり実現したら大変すばらしいと思うのだが、 実行可能性についてどのようにお考えなのか。  措置的なサービス機関になってしまうと困る。地域包括支援センターの職員の連携の あり方、研修、支援をどのぐらい考えているのか。 (香取振興課長)  地域包括支援センターについては、御指摘のとおり、実効ある形にしていくことが非 常に重要であると考えている。  市町村側の体制が十分整わないとできないということと、無理に形だけ作ると行政権 限が先行するような形で作られるので、ある意味で措置的で統制的なものになってしま うという可能性もあり、できるだけ市町村のスピードに合わせて作れるようにというこ とで2年間経過措置を置いた。平成18年4月に間に合わなくても、時間をかけて作れる ように考えている。それ以外にも、平成17年度予算の中で地域包括支援センター職員の 研修や、どういう業務をどういうふうにこなしていくかという具体の基準よりはもう少 し詳しいマニュアルのようなものもできるだけ早目に検討してお示しして、市町村が早 目に準備に入れるようにしたい。  人員体制については、一応3職種を考えているが、こういったこともできるだけ市町 村の実態に応じて実効的に動くような形で詳細なルールを決めていきたい。 (大森分科会長)  今の回答だとちょっと不安だ。今日は市長会、町村会の代表者は来ていないが、ちょ うど介護保険制度が導入されたときに、いくつかの首長さんが人事配置について頑張っ た。今回の改正においても相当大事な仕組みができるので、そこへきちんと人を配置す ることが重要だということを市町村長さんにまずご認識いただかなければいけないと思 っている。ご出席できなかった2人の首長さんにも議事録を通じて伝わるようにして欲 しい。そのぐらい重要な問題だと思っている。 (田中(滋)委員)  行政権限の場になるのではなくて地域包括ケア実現のためのツールとしてうまく生き るように、我々研究者ももちろん応援しなければいけない。頑張っていただきたい。 (沖藤委員)  つい10年ぐらい前まで、日本人は医療好きの福祉嫌いだと言われてきた。福祉の世話 になんかなるかと人々は言い続けてきて、そこに介護という言葉が現れたことによって 非常に人々の心が開いた。更に介護保険というシステムができたことによって福祉嫌い から、むしろ介護好きになってしまった。そこに今回の改正の趣旨があると思う。  なぜ人々が介護保険に心を開いたかというと、安心の道筋がついたということだと思 う。措置制度の下、こういう状況になったらどこへ行ったらいいんだろうと不安を抱え ていた人たちが、ケアマネージャーと繋がることで、常に軽度の状態から重度になった ときまでの安心の道筋がついたということが、介護保険を人気にしたのではないかと思 う。  介護予防に関しては、反論する人はいないと思う。皆それはいいと言うが、不安を感 じている人が非常にたくさんいる。具体的に地域包括支援センターと言われて、イメー ジ図を見ても、なお私はイメージが湧かない。システムがなかなか理解できない。  現在、住民に対してどの程度の説明をしているのか。また、どういう形で説明しよう としているのか。介護保険導入のときは地域単位で集会を重ねて、自治会なども動いて やった。今回のこの改正について、どの程度市町村や老人会、自治会、女性のさまざま な会と連携を取って住民への説明を行っているのかお聞きしたい。 (山崎総務課長)  今回の改正は法律改正を伴うので、国会で御議論頂いている。確かに介護保険制度を 作るときもいろいろな議論をしたわけだが、やはり政府として、まずは国会で御審議い ただくことが基本になる。基本的には法律を審議していただいて国会の御意思が決まっ てからだと思う。市町村とは既にこれまで法案作成段階から会議を何度も重ねている が、確かにおっしゃるように必ずしも十分細部まで伝わっているかはわからない。6 月、7月以降になると思うが、法案を成立させていただいた後には総出で説明していこ うと思っている。  特に予防については、サービスを利用される方、提供される方、市町村で考え方その ものをだんだんつくり上げていくような作業は当然必要だと思っている。法律改正で済 むようなものとは思っていないし、地域包括支援センターはまさに地域づくりの中でや っていかないとできないと思っている。これから夏にかけてとそれ以降が我々も本番だ と思っている。 (野中委員)  在宅と施設のバランスという観点から居住費と食費の保険外の件が提案されている。 本来、施設に入られる方々が在宅か施設かを自ら選択されている状況であれば私はまだ 理解できるが、現在の状況の中で必ずしも在宅か施設を好んで選んでいるわけではな い。いろいろな環境によってやむなくそれを選択しなければならない。そんな中で居住 費、食費を保険外とし負担させるということは、本当の社会保障なのかどうか。もっと 検討していただきたいと思う。  保険料の第4段階の方々に対して特に負担が多くなっている。老人保健施設あるいは 介護療養型施設入所の約6割から7割の方が第4段階の方だ。その方々に、これだけの 負担を一挙に課すということが社会保障として適切なのかどうかは引き続き検討すべき と考える。また、それが今年の10月から施行というのはどうも理解できない。 (山崎委員)  介護予防について、新しいサービスとして給付の対象にしていくとのことで、その報 酬その他については当分科会の審議事項だということだが、スクリーニングのツールの 問題や、介護認定審査会の問題といった具体的な部分は多分ほかの検討会、研究会で進 められているのだろう。それらについてきちんと当分科会に途中経過なりを御報告して いただけるのか。  それから、支給限度額については、この分科会で審議する事項なのかどうか。  地域密着型サービスの介護報酬は、市町村が弾力的な基準で決められるということで あれば、全国統一のサービスと地域密着型の報酬なり基準なりの枠組みを当分科会で作 るのかどうかといったことについてもお教えいただきたい。  また、平成18年4月に地域包括支援センターを作る市町村は新予防給付を即スタート するのだろうが、平成20年3月に地域包括支援センターを作る市町村は新予防給付をい つスタートさせるのか。平成18年4月の報酬改定でどこからどこまで動いていくのか、 その辺のイメージをお示しいただきたい。  医療と介護の機能分担と連携強化については、法改正ではなく介護報酬の改定におい て必要な対応を行うと提示されており、介護予防の新予防給付も大事だが、特に重度者 の更なる重度化を予防するという意味での医療と介護の連携が非常に重要だということ が、この約5年間で現場で新たな課題として発生してきたことだ。特にこの5年間、急 性期医療の現場では平均在院日数が大変短縮しており、在宅の施設も医療ニーズの高い 方が予想を超えて増えている。それに対して、今の支給限度額では特に要介護5などは 対応できない。それから、訪問看護等も24時間のサービスをしようと思っても、なかな か今の報酬の仕組みでは使い勝手がよくない。重度者に対応した医療型多機能サービス だとか、居住系サービスが小規模になればなるほど外部サービスをきちんと使ってチー ムケアをするというのがあるべき姿ではないかと思う。外部の専門的な医療サービスを 使う場合の報酬の在り方についても、この分科会で方向付けをしていただきたい。 (三浦老人保健課長)  スクリーニングを行う審査会での審査の方法、要介護状態区分の在り方について分科 会に示すべきではないかということだが、これらについては、研究班を設置して専門家 の皆様方に御議論いただいている。この研究班での成果物については、まとまり次第こ の分科会に御報告させていただきたいと思っている。  地域密着型サービスと当分科会との関係については、指定地域密着型サービスの事業 の設備及び運営に関する基準は厚生労働大臣が定めることにしており、それを定める際 にはあらかじめ社会保障審議会の意見を聞かなければならないということになっている ことから、全体の枠組みはこの分科会で御議論いただくべきものと考えている。 (香取振興課長)  地域包括支援センターと新予防給付との関係だが、法律案では新予防給付を施行する 時期は条例で定めることができるとなっており、新予防給付をスタートさせることにつ いて、2年間の経過措置を設けている。  新予防給付のマネジメントは地域包括支援センターで行うということになっているた め、地域包括支援センターの設置が新予防給付施行の前提になっている。したがって、 地域包括支援センターを平成18年4月から2年間のうちに作っていただき、その時点 から新予防給付がスタートするというのが法律案の内容だ。  したがって、地域包括支援センターを作った市町村から、新予防給付がスタートし、 当分科会で御議論いただいた新予防給付の報酬体系や基準が施行される。それ以外の市 町村は新予防給付は施行されないので、現行の制度が続くことになる。2年間は市町村 によって新予防給付が動いているところと、そうでないところがあることになる。 (大森分科会長)  そうすると、我々委員の役割は、新予防給付の介護報酬について検討し、新予防給付 以外の介護報酬についても検討するということになるのか。 (香取振興課長)  基本的にはそうなる。例えば、新予防給付がスタートしていない市町村では既存の要 介護認定の基準に従って認定がされるので、新予防給付に係る認定は行わず、既存のサ ービス体系の報酬にしたがって給付がなされることになる。  細かく言うといろいろあるので、また整理して御説明するが、既存の制度のまま走る ところと新予防給付に移行しているところが2年間は並存するという形になる。  小規模サービスにおける、外部の医療サービスの適用等々の話だが、サービスのメニ ュー立てだとか基本的なスキームは法律政省令で規定されるので、そういった部分は制 度論になるが、外部サービスをどのぐらい導入するかとか、それと報酬の関係がどうな のかというのは報酬や基準に関わることになり、当然当分科会で御議論いただいて決め るということになると思う。 (笹森委員)  市町村が実施する地域支援事業は、要支援、要介護になるおそれのある者が対象との ことだが、例として挙げられているのが転倒、骨折、栄養指導ということで、ある意味 では身体面の例だ。  認知症については、痴呆予防教室といったことが随分一人歩きしたところがあった。 そうすると、予防の範疇に痴呆が入るのではないかという声が聞こえてきたりしたのだ が、痴呆は予防の対象に入らないということでよいのか。もし入らないとすれば、スク リーニングで要介護1と要支援2に分かれるところで対応されるのだろうと思ってい る。  地域密着型サービスについては認知症に配慮した支援というようなことが載っている ので、こういうところは非常に評価できるし、すばらしいと思うのだが、予防の対象に 認知症は入らないのかどうか確認したい。 (三浦老人保健課長)  老人保健事業を見直して地域支援事業にどのように再編していくかについて、専門家 の方々に御議論いただいた際に、認知症については地域支援事業で対応していってはど うだろうかというような御提案をいただいている。現在、どのようにすれば認知症のお それのある方々に対応できるのか、専門家の先生方に検討していただいているところ だ。  一般的には認知症の状態がかなり進んでいて、そのために予防を行うということにつ いてご理解いただいたり、あるいは意欲を持っていただくということが難しいという方 については、介護給付を受けていただくという枠組みを考えているが、一方で、例えば 軽度の方でまだ御理解いただけるような状態にある方々については、この予防給付の中 でも日常生活に対応したいろいろなサービスは御利用いただけるものと考えている。グ ループホームを予防給付の対象として残しているのは、予防給付で対応すべき認知症の 方もおられるという認識を持っているということ。 (漆原委員)  医療と介護の機能分担や連携というのは制度的にもう少し整理をされるべきであっ て、いつも介護報酬、診療報酬等のお金の話で機能連携を成し遂げるというのは残念か なという感じがしている。  居住費、食費が保険給付の対象外になったということだが、この低所得者対策の部分 が少し不十分ではないかと思っている。保険料の段階で第1段階から新第3段階に該当 する者は世帯非課税ということになっているわけだが、そもそも保険料段階について は、根拠になる年金収入が世帯単位で考えられている、一方、保険料や給付は個人単位 になっている。  保険料の第4段階については、世帯収入が267万円あったとしても、例えば世帯のだ れか1人がサービスを利用したら、その世帯の生活費はどうなるのかという心配があ る。そういった意味で、少し低所得者対策が不十分かと思うし、現在の日本の世帯の考 え方というのは非常にあいまいだと伺っている。世帯分離をすることによって随分状況 が変わってくるということなら、時の流れに逆行しているように感じる。  住所を移して入る施設、居住系のサービス、あるいは保健医療施設について、不公平 感が相当生まれてくることを心配する。一部負担の在り方や介護報酬で何らかの対応が なされるのかどうかはわからないが。 (山崎総務課長)  御指摘の点は、今回の制度改正というよりも元々介護保険制度にある問題で、世帯で 考えるのか個人で考えるのかということだと思う。介護保険制度は、個人を単位として できているが、その所得を把握する作業について、税の情報以外に更に追加的な所得調 査はできない。そうなると、結局世帯非課税という一つの区切りを使わざるを得ない。 そこに矛盾が発生している部分もある。我々も全部個人的な完全所得把握ができれば一 番よいと思うが、税との問題があり、様々な対応をしているが、税の枠を乗り越えるこ とは難しい。  世帯の分離という話だが、基本的にこれをどうするかというのは様々な考え方や判断 もあるし、特別養護老人ホームの場合は、現行の取扱いだと概ね1年以上離れていると 世帯分離できるし、医療機関でも医師の判断によって概ね1年以上離れていると世帯分 離できる状態にあるので、我々はそれほど不公平だとは感じでいない。これは住所地の 問題なので、総務省にも関係する部分だが、長期にわたる入院もしくは入所の場合は、 基本的には世帯を分けていくというのが今の取扱いになっている。  医療と介護の関係で我々の説明が悪かったかもしれないが、制度改正ではなく今回介 護報酬でやると言っているのは、法律改正はサービスの大きな枠組みの話で、医療と介 護の問題はサービスの内実の話になり、サービスの内実を定める報酬と基準はこの分科 会で審議していただきたいということ。もう一つは、この問題は一方で医療保険の診療 報酬と非常に関係があるので、こういう場でお願いしたいという趣旨であって、決して お金で何とかしようということではなく、そういう分け方だということだ。医療と介護 の連携は今回我々は大変大きなテーマだと思っているので、そこはしっかりやっていき たいと思う。よろしくお願いしたい。 (漆原委員)  世帯と個人については、現行の考え方で今はやむを得ないということだが、新第3段 階の人たち、4段階になったばかりの人たちというのが救われる方法がもう少しあって もいいのではないかとは感じている。 (木下委員)  施設と在宅の負担の公平性ということで説明されているが、どうしても施設でなけれ ば介護できないという方々もいると思うので、そういった方々の説明がちょっと理解し づらいところがある。それから、本年10月から一気に負担が増えることは利用者にかな り負担になるので、段階的実施ということが可能なのか疑問がある。  1年経てば病院でも老健でも世帯分離できるという話だったが、もともと介護保険が できるだけ在宅で生活するということを趣旨にしている一方で、世代分離をしてしまう と、今度は在宅に帰るチャンスがなくなってしまうということにもなるかもしれないの で、整合性について疑問を感じた。 (田中(雅)委員)  介護報酬の改定は、前回も収支の面から議論された。しかし、我々は、以前から言っ ているように、介護報酬の改定においては、質の確保という観点からも是非議論してい ただきたいと切に願っている。介護現場においては就労実態が大きく変化している。例 えば、介護福祉士は既に40万人の方々が資格を取っているし、今なお資格を目指す方々 も増えているというのが現状だが、40万人の介護福祉士のうち実際に現場で働いている 方が6割程度であるという実態で、ある意味では非常に残念な事態になっている。  労働環境の実態もあるかと思うが、本当に大事なことは質の向上という観点であり、 良質な介護労働力を確保するということではないかと思う。効率的で良質な介護労働力 を確保するということは、結果としては効果的なサービスの提供に結び付くと思ってい るので、是非、質の確保という観点からも介護報酬の改定をしていただきたいと願って いる。 (橋本委員)  認定審査会に関することだが、予防給付の対象なのか介護給付の対象なのかという分 かれ道の部分が認定審査会としては大変重要な仕事だと思う。  その方法については今、研究会をつくって御議論なさっているということであるの で、その結果を期待したいと思うが、今まで発表になった資料を拝見していると、認定 審査会の委員の中に生活機能が判断できる委員を含めることが望ましいというようなニ ュアンスの表現があったように思う。認定審査会のメンバーがどのような人で構成され るかというのは大変気になるところだ。どういうふうになっているかをお尋ねしたい。  それから、予防を大切にしていこうという考え方に反対する人は全くいないが、その ためのサービスをどう提供していくか。新予防給付に関しても、介護が必要にならない ように、重度にならないようにするためには、サービスを継続的に利用できるというこ とは極めて重要だと思うが、どうお考えなのか。ただ、今回の制度改正の趣旨、背景を 考えると、継続的な利用は多分難しいだろうと思っている。そうだとすれば、地域で支 え合ってサービスが提供されていく。皆で支え合って地域でしっかりと守り合っていく ことが非常に重要になってくるはずであって、このことについて触れていく必要がある だろう。  予防給付の対象者のマネジメントは地域包括支援センターで行うとのことで、おそら く保健師が中心になってやっていくのだろうと思うが、本当にできるのか。業務量が多 くなると思うので心配だ。 (三浦老人保健課長)  認定審査会のメンバー構成だが、現状は保健、医療、福祉の専門家の方々によって構 成するというのが原則になっている。特に生活機能の専門家というのが世の中におられ るわけではないので、保健、医療、福祉の専門家の方々に、生活機能に着目して審査を していただきたいということ。  新予防給付を含めて予防的なサービスについて継続的に利用できることが重要だとい う御指摘だが、我々もそのとおりだと思っている。新予防給付についても、ケアマネジ メントを通じてプランを作り、サービスの提供、利用によって当初の目標が実現できて いるのかどうか評価を行い、必要に応じて例えばサービスの内容を変更していくことに なるので、状態により適合したサービスが継続的に利用できるという仕組みは重要だ。  そのために、例えば予防的なサービスの効果によって、要支援状態から非該当の状態 になった場合でも、地域の中で支えていくということは極めて重要であり、地域支援事 業などを利用していただきながら、再び要介護者になることを防いでいくことができる 仕組みにしていきたい。 (香取振興課長)  地域包括支援センター設置の趣旨だが、御説明したように、自立の状態から要支援ま でについて連続的なマネジメントができるようにということと、軽度者の場合には介護 保険のサービスだけではなく、それ以外のさまざまな地域資源を活用して支えていこう ということ。その意味から、介護保険を超えた地域全体でのマネジメントという視点が 必要である。  逆に言えば、それを現在では、全部ケアマネジャーや介護保険のサービスで抱え込も う、あるいはやり切ろうとしているところにさまざまな問題が生じていると認識してい おり、そういう意味では地域全体でマネジメントができるという意味において地域包括 支援センターが公正、中立な立場からマネジメントするという視点が必要だろう。  個々のマネジメントの場面でもそういった介護保険を超える部分が出てくるので、そ こをサポートするため、ケアマネジャーの支援という意味で地域包括支援センターがサ ポートするということもある。地域包括支援センターにはケアマネに関してスーパーバ イズできる主任ケアマネを配置することを考えている。予防についてのマネジメントに ついては、そういう観点で制度上は地域包括支援センターが行うということにしてい る。また、地域包括支援センターが行うマネジメントの事務の一部を現場のケアマネジ ャーさんに委託できるようにしようと思っている。簡単に言うと、予防の部分について はいわば介護保険を超えた部分のマネジメントも一体的に行うという視点が必要だろう ということで、そういう意味で言うと地域包括支援センターの保健師、スーパーバイザ ーとしてのケアマネジャー、現場のケアマネジャーとの一種の共同作業という形で、軽 度者に対するマネジメントが行われるということ。 (橋本委員)  認定審査会の機能について、要介護認定だけだったらよいが、どういうサービスを使 った方が適当かという意見まで述べるのだとすれば、それは認定というよりもニーズを 判断していることになるので非常に重要になってくる。  認定審査会の委員の方について、生活機能についての判断について期待されているよ うなことができるだろうかと聞いてみたが、無理だと言っていた。  予防給付の対象なのか、介護給付の対象なのか、その判断をしていく作業が的確に行 われることを願っている。 (三浦老人保健課長)  予防給付の認定については、生活機能や要介護状態の回復の可能性の有無を勘案し て、回復の可能性が高い方については予防給付の対象者になると考えている。  例えば個別の要支援者について利用することが適当なサービスを認定審査会が決めて いくということではなくて、基本的には利用するサービスについては、今の介護給付の ケアマネジメントと同様、利用者の意向も踏まえながら、最終的にマネジメントにおい て決めていくということなので、基本的には認定審査会が筋トレを強要するというよう なことはないと考えている。  新しい予防給付対象者のスクリーニングについては、認定審査会にとっては新しい業 務になるので、市町村でモデル事業を行い、改善すべきことは改善していきたいと考え ている。 (山崎総務課長)  補足だが、我々が出している文章で「生活機能を評価できる人」という表現はなかっ たと思う。評価項目を加えて、そういう観点で評価をお願いしたいという趣旨で、新た な人を置くことを考えているわけではない。  現行制度においても、認定審査会はサービス提供について意見を言えることになって いる。これは制度創設当初に、要介護認定だけではなく、例えば医療系サービスが必要 だとかいった意見は審査会からもしっかり出すようにすべきとの議論があった。介護予 防についても、個別サービスについてまでは意見を述べることはないかもしれないが、 予防的なものを重視すべきかどうかといった大きな方針については、現行制度において も審査会に求められている一つの機能ではないかと思う。 (遠藤参考人)  介護保険制度改革に伴い、予防給付などを取り入れて給付を抑制するという方向性が 出されたことは結構である。2010年代になると、医療給付、介護給付ともに急増すると 思っており、今回の介護給付費分科会の議論は非常に重要な意味を持っていると思う。  したがって、介護保険部会との共通テーマとして、制度の持続可能性を担保する方向 性での議論を、当分科会でも続けていきたいと思う。経済との整合性を確保するという 点を重視していく必要がある。  前回の改定で、施設から在宅へという方向性で見直しが行われたと認識しており、今 回も引き続き同じ視点は重要だろうと思う。医療保険においても在宅への流れというよ うなことを確保していくことも非常に重要である。  食費、居住費について意見が出たが、我々としては年金給付と重複している部分があ り、社会保障全体としての改革の一環という観点からは、やはりこの改革は避けて通れ ない。政府の方針については内容的にはまだ少しどうかという点は幾つかあるが、基本 的には賛成したい。  これは要望だが、要支援2の人数がどれくらいになるかということも含め、検討の内 容を是非この分科会にも御報告をお願いしたいと思う。その人数次第によっては、今後 の給付の伸び等に影響してくると思うので、是非御検討をお願いしたい。もし今何かお 手元にそのようなものがあれば、お示し頂きたい。 (三浦老人保健課長)  認定審査会の審査基準等については、今まさに検討していただいているところだが、 基本的な考え方について専門家の委員会で中間取りまとめが行われている。その報告に よると、認知症の高齢者の自立度を一つの指標にして考えると、現在の要支援、要介護 1の中で、例えば自立度IIを一つの指標にすると、II以上の方は現在2割程度おられる というような数字が示されている。  ただ、それをそのまま今回の選定の基準に使うかどうかということなどについては、 現在検討いただいているところだ。 (見坊委員)  第2期ももう半ばを過ぎて、第3期は目前だ。約5年間経って、ようやく高齢者の間 でも介護保険の姿が見えてきたという状況ではないかと思う。これからが制度が定着す るか否かの瀬戸際になっていくのではないか。保険料を例にとっても市町村間で格差が ある。北海道の鶴居村が一番高く、第5段階の人は月に約9,000円を負担しており、一 番低い山梨県の秋山村の第1段階の人は1,000円未満の負担である。現在、市町村合併 でどのようになっているのわからないが、これが第3期には多分、高い場合は1万円を 軽く突破していくことになると思う。  そういう状況なので、この介護保険財政を効率的に、合理的に、しかも公正に運営す るということは非常に重要だと思っている。今の介護保険の方向性は間違っていないと 思うのだが、これから被保険者の範囲の拡大については、附則の中で含みのある表現で 規定されているが、その方向で是非進めなければならないと思う。方向性はいいのだ が、実際にそれが可能かということはいろいろと議論があると思うが、この点は各市町 村の実態に合った、そして地域の高齢者も納得できるような介護保険制度の運営を是非 お願いしたいと思っている。  最近の新聞報道は、介護保険に関わる不正事件等、いろいろな問題が大きく取り上げ られている。それによって、非常に貴重な財源が無駄に使われているというような印象 を受ける。確信犯的であり、いかに事後規制を強化しても防ぐことはできないだろう。 県を変えて同じ事業者がやっているというようなこともある。  いろいろな問題があるが、事後規制ではなくて、事後の処罰であるべきで、場合によ ってはきちんと取り消す。そして関係者は二度と指定を受けられないぐらいのものであ るべきだと思う。被害を受けてから規制するのは問題があり、むしろ事前のチェックと いった点についてもう少しきちんとやっていただきたいと思う。  それから、規制緩和ということで、だれでも自由に参入できるという仕組みになって いるわけだが、そうであるならば、指定を受ける方々の自己規制、自己管理、をはっき りしなければいけないのではないか。官に規制の緩和を求めるのであれば、自分たちで 質のよいサービス提供を実現するということで、専門の組織がそれぞれもっときちんと した人事規定と自己管理、自主規制を明確にして、利用者に、自分たちのところはこの ような形でサービスを行うということを示していただきたい。それにより初めて、選択 の自由も成果を上げるのだろうと思っている。 (木村委員)  介護支援専門員が法の中にきちんと位置づけられたことは、とてもよいことだと思う が、その所属する事業所の経営実態が今回ポイントだと思う。  公正中立にきちんとやっていくためには、やはり自立した事業所の運営が必要だ。そ れが、併設なのか、構造的独立なのかということは賛否両論あると思うが、問題なのは 機能的、経済的に独立し、また構造的にも独立していなければだめだと思う。  経営実態調査については、調査項目が決まって動かせないのであればしかたないのだ が、我々が見ると、ほとんど母体施設が併設事業所の家賃や光熱費を全部負担してい る。なので、その部分が、完全に独立して経営したきにどれぐらいの経費になるのかと いう分析の仕方をしていただきたいと思う。  また、現在、独立型と言われているところも、よく収支を見ていくと、どこからかお 金が入って何とか経営しているというような状況も現場からは聞こえてくる。せっかく これだけの調査をするわけなので、どこかの研究班というのではなく、この場でその実 態を明らかにして、本当にこの制度をきちんと運営していくために介護支援専門員の機 能を発揮できる環境づくりをお願いしたいと思う。 (花井委員)  要介護認定、1人当たりの給付額に相当大きな地域差が出ており、それがますます拡 大しているのではないかと思っている。地域密着型サービスで、市町村が独自に上限の 範囲内で報酬を決めるということになっているが、そういう市町村、あるいは県ごとの 格差をどう見ていくのかということが、介護報酬に大きな影響を与えると思うので、是 非その辺の資料を提出していただきたい。  介護報酬の単価を検討するに当たっては、やはり施設もまだまだ問題があり、例えば 身体拘束の問題だとか、金銭管理の問題だとか、本当に入っている利用者の人権が確保 されているのかどうかとか、まだまだ私どもの調査でも危うい実態が見えている。9割 近くが認知症の方だと言われているので、その辺のことも合わせて判断材料として提出 していただけたらと思う。  働いている人の雇用、労働条件がどうなのかということもサービスの質に大きく影響 すると思うので、その辺の実態調査も是非ともお願いしたい。  医療と介護の連携強化ということが強調されているが、今回は6年に1度の介護報酬 と診療報酬の同時改定である、中医協でも診療報酬の見直しが夏以降に行われるかと思 うが、共通するサービスや、医療と介護の関連する報酬の在り方はどこか検討する場が あるのかどうかということを最後に質問したい。 (山崎総務課長)  最後の御質問については、現在中医協の在り方を含めて検討していると聞いている し、我々も今回、介護報酬、診療報酬の同時改定の初めての作業なので、両者の連携も 考える必要があるとは思っているが、どういうスケジュールでどういうやり方があるか というのは少し考えながら、御相談しながら進めていきたいと思っている。今の段階で は、まだ具体的なイメージを持っていない。 (井形分科会長代理)  制度創設時に、予防給付が介護保険に取り入れられたことは高い評価を受け、予防に 給付が開始されたというのは大きな出来事だったが、私が強調したいのは、利用者から そっぽを向かれたら、何にもならないということ。要支援ができたときもこれでサービ スが受けられると喜んだ。今度の場合は、若干、新しい訓練が義務として課せられると いうイメージがある。例えば筋力トレーニングなどはオリンピック選手が汗を流して厳 しいトレーナーが控えているというイメージになる。だから、例えば、にこにこ体操と か、行ってみようかなと思うようなことをやらないといけない。 理論的には正しいことをやっているが、肝心の利用者に行きたくないと言われたのでは 元も子もない。したがって、いろいろな用語もこれから提案していこうと思うが、行き たいなというムードをつくるよう努力していただきたいと思う。 ○大森分科会長より閉会の宣言。 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係  TEL03(5253)1111(内3948 3949)