05/03/18 第23回厚生科学審議会科学技術部会議事録                   第23回               厚生科学審議会科学技術部会                    議事録              厚生労働省大臣官房厚生科学課             第23回厚生科学審議会科学技術部会                   議事次第 ○日時    平成17年3月18日(金)17:00〜19:00 ○場所    厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階) ○出席委員  矢崎部会長        今井委員 井村委員 垣添委員 金澤委員 北村委員 倉田委員        佐藤委員 中尾委員 長尾委員 松本委員 南委員        (事務局)        松谷技術総括審議官 上田厚生科学課長 高山研究企画官 他 【議題】  1.部会長代理の指名について  2.平成17年度科学技術関係予算について  3.今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門員会と総合科学技術会    議の動向について  4.戦略研究の進捗状況について(報告)  5.機関評価について  6.遺伝子治療臨床研究について  7.遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価について  8.医学研究における個人情報の取扱いの在り方等について(報告)  9.その他 【配付資料】  資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  資料2ー1 平成17年度科学技術関係施策について  資料2−2 平成17年度厚生労働省科学技術関係予算額(案)の概要  資料3ー1 「今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会」の        開催状況について(報告)  資料3−2 第3期科学技術基本計画にむけて  資料3−3 今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会名簿  資料3−4 総合科学技術会議における第3期科学技術基本計画の検討状況について  資料3−5 総合科学技術会議における主要検討課題  資料4 戦略研究の創設にかかる検討状況(報告)  資料5−1−1 平成15年度国立感染症研究所機関評価報告書と対処方針のポイン          ト  資料5ー1ー2 平成15年度国立感染症研究所機関評価報告書  資料5−1ー3 平成15年度国立感染症研究所機関評価に対する対処方針  資料5−2−1 国立医薬品食品衛生研究所機関評価と対応  資料5−2−2 国立医薬品食品衛生研究所機関評価報告書  資料5−2−3 国立医薬品食品衛生研究所外部評価委員会の評価結果及び研究開発          機関の対処方針  資料6ー1 遺伝子治療臨床研究に関するフランスの有害事象を踏まえた国内の取扱        いについて(報告)  資料6−2 遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について(1件)  資料7ー1 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する        法律に基づき申請のあった第一種使用規程に係る意見について  資料7−2 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する        法律の概要  資料8−1 医学研究分野における個人情報保護に係る検討について  資料8−2 医学研究等における個人情報の取扱いの在り方等について  参考資料1 厚生科学審議会令関係規程         (1)厚生労働省設置法         (2)厚生科学審議会令         (3)厚生科学審議会運営規程         (4)厚生科学審議会科学技術部会運営細則  参考資料2 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針 ○上田厚生科学課長  ただいまから第23回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたしたいと存じます。  私は、厚生労働省の大臣官房厚生科学課長の上田です。  委員の皆様方には、ご多忙のおりにお集まりいただき御礼を申し上げます。  議事に入ります前に、平成17年度になり委員の改選があり、本部会の構成の変更がご ざいましたので、委員の方々のご紹介をさせていただきます。資料1に委員のお名前を 50音順に載せておりますので、読み上げます。  今井通子委員 株式会社ル・ベルソー代表取締役社長  井村伸正委員 財団法人日本薬剤師研修センター理事長  垣添忠雄委員 国立がんセンター総長  加藤尚武委員 鳥取環境大学長  金澤一郎委員 国立精神・神経センター総長  岸玲子委員 北海道大学大学院医学研究科教授  北村惣一郎委員 国立循環器病センター総長  倉田毅委員 国立感染症研究所長  黒川清委員 東京大学先端科学技術研究センター客員教授  笹月健彦委員 国立国際医療センター総長  佐藤徳太郎委員 国立身体障害者リハビリテーションセンター総長  竹中登一委員 山之内製薬株式会社代表取締役社長  永井良三委員 東京大学大学院医学系研究科循環器内科教授  中尾一和委員 京都大学大学院医学研究科教授  長尾拓委員 国立医薬品食品衛生研究所長  橋本信也委員 社団法人日本医師会常任理事  長谷川真理子委員 早稲田大学政治経済学部教授  松本恒雄委員 一橋大学大学院法学研究科教授  南砂委員 讀賣新聞社編集局解説部次長  矢崎義雄委員 独立行政法人国立病院機構理事長  以上の委員にお願いをしたところです。なお、委員の数は20名で、現在11名の方がご 出席です。過半数を超えておりますので部会が成立しておりますことをご報告申し上げ ます。また、本部会長の選出につきましては、厚生科学審議会令第6条に「当該部会に 属する委員の互選」となっていますが、すでに委員による互選は終了しており、矢崎委 員が部会長に選出されておりますので、ご報告をいたします。  本日の会議資料の確認ですが、議事次第のいちばん下に配付資料を示してありますの で、もし欠落等がありましたらご指摘いただきたいと思います。では、今後の議事の進 行については、矢崎部会長、よろしくお願い申し上げます。 ○矢崎部会長  早速議事に入りたいと思います。まず、審議会の第6条第5項に「部会長に事故があ るときは、当該部会に属する委員または臨時委員のうちから予め部会長が指名する者が その職務を代理する」とされていますので、この部会長代理については、本日欠席をさ れておられます加藤委員に、前回に引き続いてお願いしたいと思いますので、よろしく お願いいたします。事務局からご連絡をお願いします。  続いて次の議題の平成17年度科学技術関係予算について、事務局から説明をお願いし ます。 ○上田厚生科学課長  資料2−1で説明いたします。平成17年度の科学技術関係施策ということで、その下 に「17年度の科学技術分野の重点事項」として4つの考え方を出していますが、それに 呼応して、私どもとして「17年度の科学技術関係施策」として重点事項を3つのポイン トでまとめています。  1.健康安心の推進、2.健康安全の確保、3.先端医療の実現ということで、それ ぞれここには厚生労働科学研究費の研究の柱とその金額が書かれています。括弧書きが 平成16年度の当初予算で、例えば糖尿病等の生活習慣病対策の推進22億円(13億円)と なっていますが、22億円は来年度、この4月からの予算額で(13億円)というのは16年 度の当初予算額です。こういう形でメリハリをもって健康安心、健康安全、先端医療の 実現という3つの大きな柱を中心に、重点事項を組み、総合科学技術会議にも報告を し、かつ予算要求をし、このような形で予算がとれたということです。予算の詳細につ いては後ほど述べますが、総合科学技術会議に呼応しつつ、重点事項を定め予算を確保 してきたということをご報告をいたします。  中でも特に健康寿命を延ばす科学技術の振興ということで、「健康フロンティア戦略 」が、平成17年度からスタートいたします。これに科学的基盤を与えるということで、 研究は非常に大事なものであると認識しており、健康フロンティア戦略では、10年後の 平成27年には、高齢者数が3,300万人と予測され、その中で明るく活力のある社会を構 築し、健康寿命を延伸することが必要ではないか。糖尿病・がん等の疾病の罹患と死亡 を減らす、働き盛り層の生活習慣病とこころの健康、女性層に対しては女性のがんの問 題、高齢者層については介護予防、こういうものに対してしっかりした対策を打って、 健康寿命を延ばす科学技術の振興を図っていくとしています。  「健康安心の推進」では、糖尿病等の生活習慣病対策の推進、介護予防の推進。「先 端医療の実現」では、ゲノム科学・たんぱく質科学・ナノテクノロジー等の応用、先端 医療の実用化、治験環境整備の推進、こういうものを大きな柱として進めていきたい。 特に、「健康寿命を延ばす科学技術振興」では、生活習慣病(特に糖尿病)、うつ病、 こういうものに対しての科学的な基盤を与える研究を進めていきたいと考えています。  資料2−2に、平成17年度の厚生労働省科学技術関係予算額が書かれています。全体 では1,076億7,500万、前年度に対して100.1%ということですが、その中で特に厚生労 働科学研究費補助金は、16年度予算が419億6,400万でしたが、0.7%と、微増ではあり ますが少し増えて、17年度の予算額は422億3,700万円となっています。内訳ですが、先 ほどの「健康安心の推進」の中で、循環器疾患等総合研究経費が166.7%と67%ほど増 えました。8億7,900万増えていますが、具体的にはこれは主として糖尿病等の生活習 慣病対策の推進で、その分が8億ほど増えたということです。  その他、増分が目立つところとしては、こころの健康科学研究経費で、これはうつに 取り組むということで16%の伸び。第3次の対がん総合戦略研究経費が5.4%の伸び。 新興・再興感染症研究経費が11.9%の伸び。先端医療の実現では(1)のヒトゲノム・ 再生医療等研究経費が4.2%の増、(3)の萠芽的先端医療技術推進研究経費が26.3%。 (7)のがん臨床研究経費が4.2%。健康フロンティア戦略関連経費は10.6%の伸び。 このような形で研究費を配分した予算を作っています。全体としては若干の伸びですの で、増分のあおりを受けて減っているところがあるというのも現状です。なお研究関係 トータルで約1,000億円余りの予算になっています。以上、来年度の予算についてご報 告いたしました。 ○矢崎部会長  ただいまの説明に、どなたかコメント、あるいは質問がございますでしょうか。厚生 科学課がだいぶ頑張って、評価もSという、いちばん良い評価だったのですが、厚労省 全体の予算の枠組みの中で、本当に厳しい中で予算全体は少しプラスにしていただい た。他の所はみんなマイナスになっているわけですが、よろしいでしょうか。 ○北村委員  厚生労働省の研究費ですから、ライフサイエンスが中心になっていますが、他省庁の 予算も含めて、ライフサイエンスだけに限ると、この金額は何パーセントぐらいです か。50%に達しているのですか。文部科学省に出ているライフサイエンス関係の研究 費、あるいは農林水産省、あるいは経産省に出ているもの、総合的に全体のライフサイ エンスの経費の中で、厚生労働省のこの予算は何パーセントを占めているのでしょう か。 ○上田厚生科学課長  他省庁のこともありますので、いま調べて後ほど報告させます。 ○矢崎部会長  その他、よろしいでしょうか。それでは、次の議題、今後の中長期的な厚生労働科学 研究のあり方に関する専門委員会の報告について、よろしくお願いします。 ○上田厚生科学課長  資料3−1に基づいて説明いたします。この科学技術部会において、中長期の専門委 員会の設置、検討については以前にお諮りして、ご承諾いただいているところですが、 その開催状況が資料3−1です。検討課題は、中長期的な厚生労働科学研究の展望につ いて概観をし、今後の厚生労働科学研究のあり方について検討するということで、昨年 の6月1日の第20回科学技術部会において設置が了承されています。開催状況は、昨年 の11月26日を第1回とし、今年の2月18日まで、都合4回開催されています。概要は、 そこに掲げたとおりです。  具体的に、資料3−2で説明いたします。なお、資料3−2は、第4回の2月18日の 中長期の専門委員会において用いられた資料を一部改編をしたものです。第4回の専門 委員会のおりに、この資料を少し校正し、科学技術部会に報告をすることについてはご 了承いただいています。要するに、専門委員会から、この資料の内容について、ぜひ科 学技術部会に上げて、報告をしていただきたいという形になっているものです。どのよ うな議論がなされたかということについて、この資料に基づいて概要をご説明したいと 思います。  1頁の下の段のスライドですが、第3期の科学技術基本計画については、総合科学技 術会議が科学技術基本法に基づいて第3期の科学技術基本計画をいま策定しようとして いるところで、それに対してさまざまな私どもとしての、あるいは厚生労働省として、 あるいはこの審議会としてインプットをしていく必要があるだろうということで、まず 何をターゲットとしてやるべきか、どのようにアプローチをするべきかということで、 第2期にもありましたライフサイエンス分野の研究を重点的に支援すべきだ、というこ とを1つ入れるべきだろうとしています。かつ、必要な研究をバランスよく、戦略的に 支援をする。その結果として、保健医療福祉分野の科学技術振興や政策の推進があるだ ろう。このような基本的な理念で、第3期の科学技術基本計画に対処していきたいと考 えています。  2頁、上のスライド「第3期科学技術基本計画に向けて」とありますが、右側の図に もありますように、健康問題は非常に国民の関心が高い、そういう点ではライフサイエ ンスはやはり重要分野ではないか、という結論を引き出しているスライドです。  2頁の下のスライド、ではライフサイエンスがなぜ最重要分野かということについて は、国民のニーズもそうですが、それをうまく進めることによって国民の受ける恩恵は 計り知れない。特に死亡率が低減する、QOLが改善する、健康寿命が延伸する等々、 恩恵が広く国民1人ひとりに届くのではないかということもあって、ライフサイエンス の研究により、国民の受ける恩恵は計り知れないと結論づけているわけです。  3頁も、やはり今、なぜライフサイエンスが最重要分野かということですが、成果が どんどん上がってきている、本当にアウトカムが出るのにはあと一歩なのだという研究 がたくさんあるということです。1つはがん研究、1つは新興・再興感染症の研究を挙 げていますが、これまで例えばゲノム遺伝子情報等の蓄積をやってきたわけですが、こ れからは病気の本態解明が進み、さらにテーラーメイド医療にいくような、スパートの 時期にあるのではないか。このようなことで、ライフサイエンスは着実に成果が上が り、さらにこれから飛躍的に成果が上がる、そういうところにきているのだ、というこ とをここで示しています。  3頁の下、厚生労働省の立場としては、政策目的志向型の研究がさらに推進されるべ きだ、あるいは成果に直結する効果的な、あるいは効率的な研究手法の開発が必要であ る、人材の育成が必要である、こういうアプローチでやっていくべきではないかと考え ており、それについて次の4頁からスライドがあります。  厚生労働省、あるいはこの厚生科学審議会の立場から考えると、国民の方が何か困っ ている、それを解決するという政策目的から研究が出発すべきではないかということ で、政府の政策目的に直結した科学技術の振興、例えば例の1・2・3として挙げてい ますが、花粉症の問題や糖尿病対策、がん医療の均てん化といったこと、まさに国民が その恩恵を直接手にすることができるような政策目的志向型の研究をやるべきではない か、ということを謳っているわけです。  4頁の下の段、成果に直結する効果的・効率的研究手法の開発としては「戦略研究の 創設」、結果が本当に出るような研究を行おうということをここに書いているわけで す。この戦略研究の創設については、後ほど詳しく述べたいと思います。  アプローチの中の3番目、「人材の育成」では、質の高い研究成果を創出できる人材 の育成ということで、背景として人口構造の変化や臨床研究を支える研究者層の薄さ、 人材の偏在がありますが、方向性としては、これから特に必要とされる研究領域の人 材、例えば疫学や統計学者をしっかり育成していく。あるいは、臨床研究をやる人をも っと育てていくということも必要ではないかということを謳っています。このような議 論の方向性により、中長期の専門委員会は議論がされているということをご報告しま す。  なお、資料3−3として、今後の中長期的な厚生労働科学研究のあり方に関する専門 委員会の委員のメンバーが書かれており、黒川清先生に委員長をお願いしています。報 告は以上です。 ○矢崎部会長  ただいまの報告について、何かご意見、コメントはございますでしょうか。厚生科学 の領域で、中長期的な目標を立てて検討するというのは新しい試みで、その成果が期待 されるところですが、ご意見はございませんか。 ○上田厚生科学課長  もしよろしければ資料3−4の、総合科学技術会議においていまされている議論の内 容についても併せて報告をさせていただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○矢崎部会長  では、続いてお願いします。 ○上田厚生科学課長  資料3−4、総合科学技術会議における第3期科学技術基本計画の検討状況につい て、私どもで把握した情報についてご紹介を申し上げます。総合科学技術会議において は、平成16年10月21日に第40回の総合科学技術会議を開催し、基本政策専門調査会を設 置しました。この「基本政策専門調査会は、科学技術創造立国を目指し、第3期科学技 術基本計画の策定に資するため、国際社会及び国内における情勢も踏まえて、科学技術 に関する基本的な政策について調査・検討を行う」ということで、これまで総合科学技 術会議においては、この基本政策専門調査会を12月20日の第1回を皮切りに、3月16日 までに4回進められているところです。  私どもでは、総合科学技術会議の動き、あるいは情報を入手していますが、特に第1 回目に、議題にもありますように、「第3期科学技術基本計画の主要検討課題について 」というものが出されており、その資料をその次に付けてあります。資料3−5になり ます。これをご覧いただくと、いま総合科学技術会議がどのような方向で議論をしてい るか、ということがかなり把握できると思います。これについて簡単にご説明いたしま す。なお、そこに断り書きがあり、「今後の基本政策専門調査会の議論の中で取り上げ ることが、現時点で適当と考えられる主要な課題を事務局・内閣府においてとりまと め、第1回の議論に供するもの。予め議論の範囲を限定するものではない」とありま す。第1回の委員会の中で、とにかく事務局としてこれを作ったものということで、そ の後、いろいろ議論が発展しているだろうということはご理解いただきたいと思いま す。  事務局で作られた内容ですが、「第3期基本計画の理念」として、1)〜4)です。 近年の注目すべき状況としては、第2期の科学技術基本計画の期間中で新たに何が顕在 化したかをしっかり把握しよう。また、第2期の期間中に、大学や独立行政法人がで き、大学も法人化されたという構造変化があったわけで、それをどうとらえるべきかと いうことも書かれています。また、今後重視すべき諸情勢ということでは、エネルギー 問題等様々な状況が書かれています。当然ながら3)では第2期の基本計画の進捗状況 も評価しなければならないということで、第3期の計画の位置付け、性格付けが4番に 書かれています。  読み上げます。「第3期計画においては、これまでの科学技術投資の拡充を踏まえ た、科学技術成果の社会への還元−国家や公的主体による活用、国際協力・外交への活 用、産業競争力への還元など−を強化すべきとする意見についてどう考えるべきか。他 方で科学技術の進歩はそれ自体で大きな価値があると評価をする意見もあり、どのよう に考えるべきか」というような1つの基本認識が示されています。  さらに2頁ではイノベーションのことも書かれています。5)に、「第3期の計画の 理念・目標の考え方」ということで、かなり大きな議論の内容がそこに書かれています ので読み上げます。「以上を踏まえ、第2期計画の3つの理念、すなわち目指すべき国 の姿としての、(1)『知の創造と活用により世界に貢献できる国』、(2)『国際競争力が あり持続的発展ができる国』、(3)『安心・安全で質の高い生活のできる国』は、修正 を要するか。修正すべきとすればどのような点か。また、第3期計画を主導するスロー ガンやキャッチフレーズはどう考えたらよいか」というようなことが示されています。  次に「新しい科学技術戦略」として、いくつか書かれています。1つは、全体的方向 として、第2期の計画の成果をどう評価すべきか。あるいは基礎から開発まで一貫した 戦略を策定すべきという点についてどう考えるかというようなことが書かれています。 基礎研究についても書かれており、その中でビッグサイエンスとスモールサイエンスの 位置付けとか、そういうことも書かれているのですが、非常に重要なポイントは3) で、「分野別戦略別重点化の評価と今後の対応」ということです。  第2期計画による戦略的重点化の評価、「分野別」手法、4分野の設定と分野別推進 戦略の策定、この4分野にライフサイエンスが入っているわけですが、その有効性をど う評価するか、重点化が行きすぎて、将来への十分な目配りができていないとの意見、 目標設定が明確でなく、重点化の成果が上がっていないのではないかという意見につい てどう考えるか。要するに、ライフサイエンスがこの4分野の中に入っているのです が、ちょっと重点化が行きすぎているのではないか、逆方向に舵を切ったほうがいいの ではないかというような議論が問題認識として出ているということです。次も重要な問 題で、また現在の分野設定を維持すべきか、新たな分野を設定すべきかということも、 ここで問題認識としてあげられているわけです。  3頁では、新たな重点的推進の仕組みということで、いくつかのことが書かれていま す。国家重要基幹技術の概念に基づく仕組みを構想し得るか。国家的、社会的、経済的 な科学技術の活用目標を設定し云々というようなこと、国際ベンチマーキングを行うな ど、戦略性を強める仕組み作りの必要はあるか、このようなことが書かれています。  次が「第3期における科学技術システムの改革」ということで、かなり具体的なこと が書かれていますので、ポイントをいくつかご説明いたします。1つは、科学技術を担 う優秀な人材づくりということで、キャリア・パスの問題や人材マッチングの話が書か れています。(2)は非常に大事なポイントだと思うのですが、研究開発資金の配分の 方向ということで書かれています。「研究開発の質を高め、創造的研究を促進するため の資金配分のあり方について一層の改革は必要か」。イ.特に競争的研究資金を研究開 発予算の中でどのように位置付け、目標設定をすべきか。競争的研究資金は、既存の意 見具申に沿った制度改革に加え、審査システムなどについて新たな改革は必要か。政策 目標達成型研究予算、その他研究予算の位置付けをどうすべきか。競争的研究資金とも 併せて資金配分のあり方をどう考えるか。また、大型プロジェクトの配分をどう考える か。このような研究資金の配分、あるいは競争的研究資金のことについても触れられて います。  4頁は、各研究機関における研究活動への動機付け、知的所有権の問題、研究開発の 評価、産学官の連携、地域科学技術振興ということで、地域科学技術クラスターの連携 を一層強化するにはどういう施策があるかです。  4「創造的科学技術推進に向けて各主体が果たすべき役割とその実行手段」というこ とで、政府においては予算の優先順位付けの改善、連携施策も含む研究予算の改革によ る調整機能の強化に加え、予算配分以外の様々な制度改革について、どのように進める べきか、という問題意識が出されています。  5頁では大学、公的研究機関、民間企業、主体間の競争と連携として、それぞれ改革 の議論の要素のようなことが書かれているのですが、3番目の公的研究機関について説 明します。「公的研究機関は大学と産業の間にあって、わが国の科学技術においてどの ような役割を果たすべきか。独立行政法人化の下での任務の付与と評価の仕組みは、財 政資金を科学技術振興に有効に活用する上で十分か。新たな仕組みが必要か」。このよ うなことが認識として書かれています。  次に「社会・国民に受容され、支持される科学技術の推進方策」ということで、国民 の「理科離れ」の話や、科学技術を身近なものにするにはどうしたらいいか。科学技術 システムのオープンネス、透明性をどうやって高めるか。アカデミアの果たす役割は何 か、といったことを書いています。  6「科学技術の国際的展開」ということで、科学技術を通じた地球的課題への国際協 力を一層強化すべきといったことが書かれています。簡単に申し上げますと、総合科学 技術会議の中では、ライフサイエンスが入っている重点4分野をどうするのか、今後競 争的研究資金の方向性をどうするのか、あるいは人材をどのように育成していくかとい ったことが、我々に特に関係する分野として議論が進められている。このような認識を 持っているところです。以上です。 ○矢崎部会長  ただいまの報告について、盛りだくさんの内容ですが、何かコメントはございます か。先ほど北村委員からご指摘がありましたが、総合科学技術会議のライフサイエンス の部門で、どれほどの重きがかかっているかということでしたが。 ○高山企画官  政府全体の科学技術関係の予算の中におけるライフ分野の予算の割合についてご質問 がありましたが、事務局で調べたところ、平成16年度の政府の科学技術関係予算の額 は、約3兆6,000億円ぐらいあり、そのうち大学の運営費交付金関係で区分できないも のが1兆5,000億円ぐらいありますので、残りが2兆1,000億円程度になります。そのう ち、ライフサイエンス分野について各省の分を足し上げますと、約4,360億円ぐらい、 5分の1ぐらいの金額がライフ分野に分類されています。残りの分野の中で、非常に基 礎的な研究があり、もしかしたらライフに関係するかもしれないのですが、それは分類 できないので入っていません。大体、大学関係の運営費交付金などを除くものの5分の 1程度がライフサイエンス分野です。また、厚生労働省は、それの大体4分の1程度で す。金額はそうですが、中にはいろいろ非常に大型プロジェクトで予算の張るものもあ るわけですが、実際の金額だけご紹介いたしました。 ○矢崎部会長  4本柱の中で、ライフサイエンスのほうが過分な処遇をされているのではないかとい う議論がありましたが、あまり根拠はない。それはアウトカムと比較してどうこうとい うことですか。 ○北村委員  厚生省が1,300億円で、約4分の1がライフサイエンスの研究費だというご説明があ りました。ライフサイエンスは4,300億で全体の5分の1ということですが、総合科学 技術会議の方針に呼応して厚生労働省が、いまご説明いただいた方向性に特化した形で 1,300億円を配付しようという考えは、従来と大きな差はないわけですね。各省庁に配 られるライフサイエンス関連研究費の中で、厚生労働省は何を担当するかということ の、省庁間での業務分担的なことについての考え方はどうですか。 ○上田厚生科学課長  私どもは、やはり政策目的を実現するということが我が省に課せられた任務だと思っ ています。そういう点では、国民に身近なところで、身近な結果が出るような研究をす べきであろうと考えています。その辺は、一般的に基礎研究をされている省と、私ども の研究がうまく連携していく必要があるし、かつそこでそれぞれが住み分けていく必要 があるだろう。そしてその中で、私どもとしては政策目的にできるだけ近づけるような 研究を分担して、関係省庁とも連携をしていくという姿勢です。やはり、ライフサイエ ンスを重点事項として、政府としても取り上げていただきたいと思っているところで す。 ○北村委員  従来と同等の、平成17年度についてもそうですね。 ○上田厚生科学課長  はい。 ○矢崎部会長  いまのご議論は、戦略研究の創設に係る検討とも関連しますので、続いてこの説明を いただけますでしょうか。 ○上田厚生科学課長  資料4「戦略研究の創設にかかる検討状況」ということで、ご報告を申し上げます。 この「戦略研究」について、経緯が書いてありますが、国民的ニーズが高く、確実に解 決を図ることが求められている研究課題について、成果目標を設定した大規模な「戦略 研究」の必要性が指摘されてきている。そこで、厚生労働科学研究費補助金において、 従来の一般公募による研究課題に加えて、厚生科学審議会科学技術部会の意見を踏まえ ながら、研究の成果目標および研究の方法を定め、選定された機関が実際に研究を行う 者や研究に協力する施設等を一般公募する新たな「戦略研究」を平成17年度から創設す ることになりました。このため、平成16年度厚生労働科学特別研究を黒川清委員が主任 研究者となり、科学的妥当性に基づく5年後の成果目標を可能とする発症予防・診断・ 効果的治療技術に関する研究戦略の骨格をまとめる作業に着手しているところです。  これまでの検討結果の概要は、戦略研究の具体的な実施体制案ということで、「大局 的政策目標・課題に基づき、専門家が関与しながら研究課題、アウトカムおよび研究方 法を設定し、研究委託先から公募する。厚生労働科学審議会科学技術部会・本省は戦略 研究の調整・政策評価関係業務を行う。戦略研究実施委託機関は、研究資金配分・研究 執行等の事務関係業務を行う」ということで、ここに書いてありますのは、要するにF A(Funding Agency)を置いて、それをこの科学技術部会も関与し、あるいは本省が評 価をする。その前に、専門家がフィージビリティ・スタディをやって、アウトカムと研 究方法を設定する。このようなことをここで言っているわけです。  平成17年度実施ということで、予算のほうが先に決まったような形になるのですが、 17年度は糖尿病予防対策研究で予算額約8億6,000万円、自殺関連うつ対策研究で予算 額としては約2億円がついています。先ほど言いましたことを次の頁で図示していま す。  では、このアウトカム研究あるいは戦略研究といわれているものは、従来とどこが違 うのかということで、左右に一般公募課題(従来型)と戦略研究課題(これから)とを 対比しています。左側の一般公募課題については、従来行政ニーズというものがあり、 それから研究課題が生まれてくるわけですが、行政としてはこういう研究課題をやって いただきたいということを公表・公募する。それに対して主任研究者が研究方法を提案 し、その研究方法や主任研究者の能力等が十分適しているということになれば、その研 究に対して補助をしスタートする。このような体制をとっているわけです。  戦略研究課題はこれを変えることを考えているわけで、行政ニーズがあるというのは そのとおりなのですが、それをもう少し大局的な政策目標課題として整理をし、国とし てこういう方向の結論が出てほしい、あるいはエビデンスがほしいということを、まず 国としても出していく。それによって研究課題が決まるのですが、研究課題で公募をか けるのではなく、その研究課題について専門家の皆さんに関与していただき、こういう アウトカムを出すべきではないか、こういう政策目標があるのなら、こういう研究成果 を出すべきではないか。その研究成果を出すには、こういう研究方法、プロトコール、 フィージビリティ、可能性があるというようなことを合わせて検討していただくことに なります。  そういう事前の様々な検討を踏まえた上で、アウトカムとプロトコールを決めて、そ れを外に出すことによって研究委託先を決める。研究委託先は、そのアウトカムとプロ トコールを基にして、若干の修正、訂正は行うにしても、それをベースにして公募をか け、そういうアウトカムとプロトコールを担える主任研究者が応募し、それが妥当とい うことになれば、その研究に対して補助をする、このような違いが出てくると思ってい ます。  もちろん、すべての研究をこれから戦略研究にするというわけではありませんが、私 どもとしてもできるだけ政策に密着した結論を出すということであれば、こういう研究 のやり方もあるのではないかということで、従来の一般公募課題のやり方と別に、この 戦略研究というものを進めたいということです。この方法論について、黒川委員に研究 班を設けていただき、いろいろ検討していただいたということです。  その下に「戦略研究の特徴」と書いてありますが、いま申し上げたようなことを表に したものです。ポイントは、戦略研究については、やはり大型になるだろう、1件数億 円、期間も従来の厚生労働科学研究の3年から、5年ぐらいに延ばすべきではないかと いうことで、大規模なこういうアウトカム研究という方向を打ち出しているということ です。3頁は細かい図になっていますが、「戦略研究の実施委託団体」というのが右下 にあり、これを中心にこの研究は進められていくのですが、その前に、左側にある「研 究プラットホーム策定委員会」という所でアウトカムとプロトコールの骨格を作り、そ れをこのFAとなる戦略研究の実施委託団体に渡し、そこでさらに詳細化をして進めて いく。そのプラットホームの策定委員会のアウトカムやプロトコールについては、厚生 労働省もいろいろ関与する。あるいは、この戦略研究の実施委託団体が進める研究の状 況については、評価委員会やモニタリング委員会などを設けて進捗状況を管理してい く。さらに戦略研究実施委託団体は、プロジェクトリーダーを選び、そこで実際に研究 をさせるわけですが、場合によってはデータマネジメントセンターを設けて、この大規 模研究を支えていくこともする、ということを概念的に書いています。  具体的にうつと糖尿病について、黒川研究班においてどの程度の議論がなされたか。 すなわち何がアウトカムとなり、何が研究プロトコールとなったか、そのフィージビリ ティはどうなのかということを簡単に表にしたものが4頁です。4頁の上の表は糖尿病 関連の研究成果、4頁の下は自殺関連うつ対策についての研究成果です。  糖尿病関係では、J−DOIT1、J−DOIT2、J−DOIT3と、こうなって いますが、J−DOITというのはJapan Diabetes Outcome Intervention Trialの略 です。1、2、3というのは、それぞれ1次予防、2次予防、3次予防というふうに大 まかには考えていただいたらいいと思います。DOIT1のほうは、IGTの異常のあ る方から糖尿病型への移行率が半減するという介入研究の方法を検討し研究結果を出 す。DOIT2は、糖尿病患者の治療の中断率が半減する介入方法をアウトカムとして 出す。DOIT3は、糖尿病合併症の進展を30%抑制する介入方法をアウトカムとして 出すということで、それぞれ研究のプロトコール、研究方法がその下に書かれていま す。例えばDOIT1では、30〜60歳のIGT4,500名、DOIT2は、最初の年度は パイロットスタディから入るということで1,600名、DOIT3というのは、代謝異常 のある40〜69歳の3,000名、この辺をターゲットにして、そこに書いてあるようなプロ トコールで進めてはどうかというのが黒川研究班の成果です。  自殺関連うつ対策研究については、地域介入研究と救急部門におけるうつ再発予防研 究とがあり、地域介入研究では、アウトカムとしては地域における自殺率が20%減少す る介入方法、救急部門におけるうつ再発予防研究については、うつによる自殺未遂者の 再発率が30%減少する介入方法がアウトカムになっています。地域介入研究では、15万 人の複数地域を対象として、非無作為化比較介入研究です。救急部門のほうは、「うつ 」による自殺未遂者1,000人程度に対する比較介入試験ということです。  このような形で、黒川班において新年度から戦略研究をこのような方向性、このよう なアウトカムをもって進めてはどうか、という一定の結論が得られたということです。 5頁は、いま申し上げたことの概念図ですので説明は省略させていただきます。 ○矢崎部会長  戦略研究の進め方、組織のあり方まで、細かく議論されたところですが、何かご意見 はございますか。 ○中尾委員  いまさら内容に関して細かいことを述べることはないのですが、例えば糖尿病の予防 ということになってきますと、ここに挙げられている戦略は一旦糖尿病になった方の進 行を抑えるということであって、国民的な課題はもっと広く、その前の段階も含めてい かないと。これは、一旦糖尿病になった方以降の問題であって、生活習慣病という名前 が使われているにもかかわらず、分野は非常に狭くなっているきらいがある。糖尿病全 体の発病を予防するためには、もっとこれよりも前の段階、IGTから糖尿病ではな く、肥満も含めて、その前の段階が国民的な課題になるのではないかという気がいたし ます。  また合併症の問題に関しても、糖尿病の合併症というだけではなく、最終的には循環 器疾患として、動脈硬化も起こるわけで、全体に占めているものは、多段階で攻められ ているようですが、やり方によっては狭くなる恐れがあるということを十分に認識し て、もっとフレキシブルに、広い捉え方をしないと、やり方によっては狭くなってしま う。戦略研究というのは極めて重要だと思いますので、もし可能であるならば、戦略研 究の中にできるだけ競争的な、グループ間の競争というようなコンセプトを入れていか ないと、一定の段階で収まった研究費が、中で取り合うだけになるような、非常に消極 的な面に使われる恐れがあり得ると思いますので、戦略研究の核になるところでも、さ らに競争的なコンセプトが活かされるような運用を期待したいと思います。 ○矢崎部会長  大変大事なポイントをご指摘いただいたと思います。いかがでしょうか。 ○上田厚生科学課長  若干事務局から補足させていただきます。まさにおっしゃるとおりで、特にDOIT 1のところ、いわゆる正常域にある方を、例えば肥満させない、あるいは肥満から正常 域に戻すということ、そういうことが最終的には糖尿病をはじめとする、いわゆるメタ ボリックシンドロームに対して効果がある、という議論がありました。ただ、一定の限 られた資源の中で答えを出すとなると、どこが今、いちばん必要かということで、こう いう形になったということが1つあります。DOIT1の中でも、ある程度そういうよ うな、境界域ではないような方も対象として拾うということで、当然そういう一部の介 入研究をする中で、境界域になる前のほうがむしろ大事なのだ、という結論をここから 引き出せるのではないかという議論があったことは、ご報告をしておきます。  これはあくまでも研究の話をさせていただきましたが、健康局のほうでは、いわゆる 「健康日本21」の中で、運動の問題や食事の問題など、様々に取り上げており、国民 運動としてそちらのほうも進んでいます。そちらのほうはある程度科学的基盤があって 進んでいるものもありますので、それはそれでやっていこうということで、これは現在 とりあえず研究資源を投入して、結論をとにかく出したい部分ということで挙がってい ますが、幅広く他の研究成果や、メタアナリシス等も含めて、全体を統合していくとい う中で、おっしゃる点についてはできるだけ幅広く対応できるようにしたいと考えてい ます。最終的に、この研究は健康局のほうでされるのですが、そちらのほうにも今の委 員のご指摘をお伝えし、幅広くそういう対応ができるようにしたいと思います。ただ、 あまり分散してしまうと、結果が出なくなるということもありますので、そういうこと を十分天びんにかけながらできるように、今いただいたご意見があったということをお 伝えしたいと思います。 ○矢崎部会長  いまのご意見、ごもっともだと思います。また、厚生科学課で頑張って研究費をとら れたのですが、8億円という予算は大きいようで、こういう研究の視点からすると極め て少ない研究費ですね。こういう研究にはものすごくお金がかかる。ですから、そうい う視点から、ある程度は焦点を絞らざるを得ないという観点もあるかもしれませんね。 ○中尾委員  個々の症状は、例えば糖尿病でも高血圧でも肥満でも、程度は軽くても重積するとい うことが最終的な動脈硬化を含めたイベントを増やすということは、グローバルなエビ デンスとしてできているわけです。ですから、糖尿病だけという感じではまずいのでは ないか。糖尿病死というのは非常に少ない。糖尿病死を我々は対象としているのではな くて、最終的に起こるイベントを対象とするわけで、その点での認識が十分必要だと思 うのです。糖尿病だけに目を向けると、その周辺にある病態とのコネクションがつかめ ない。矢崎部会長が言われましたように予算の問題がありますので、それを拡大しろと ばかりは言えませんが、そういう視点がいまグローバルなものであるということで、糖 尿病だけを考えていればいいという時代ではなくなってきている、ということについて の明確な認識が必要だろうと思います。 ○矢崎部会長  研究プラットホーム策定委員会や研究企画委員会に、いまのご意見を十分反映するよ うに伝達していただければ大変ありがたいと思います。中尾委員の言われたような視点 から考えますと、おそらく今、高齢化社会で医療費がどんどん大きくなるので、それを 何とか縮小しようという大きな流れがありますね。このような研究は、医療全体はこの ぐらい縮小することができるという戦略もあると思うのです。死亡率半減などというば かりではなく、予算的にもこのぐらい減少する可能性があるので研究費は8億円ではな く、80億円とか200億円出してほしいというストラテジーを考えることも一方ではあるか もしれません。 ○今井委員  中尾委員の応援演説になってしまうのですが、まだこれが出た段階ぐらいのころに、 黄色の所の「健康安心の推進」に「糖尿病等の生活習慣病」と書いてあっただけで、大 御所の医事評論家から、糖尿病に絞ることがいちばんやさしいというか、研究しやすい ので、そのようにしてあるのだろうという、とてもひねくれたご意見をいただいてしま いました。見方によってはマスコミ的にそう見られてしまうのだなと考えたときがあり ます。この段階で書いているときにも、画期的な予防・診断・治療法の開発の一環で、 予防が入っていますから、DOIT1のところをDOITゼロぐらいを足すわけにはい かないのですかね。肥満の人間の研究の部分をちょっと足す。そうすると、そんなに予 算がいっぱいにならないというか、フォーマットそのものは全部同じにして、そういう 形にしていくとそれなりに。私も中尾委員のご意見に大賛成なので、そこぐらい広げて おけば、まずは第一歩で、あまり縮小しないぞという見方ができるのではないだろうか と思うのですが。 ○矢崎部会長  その議論は、ここの検討過程ではあまりなかったのでしょうか。「糖尿病等」という ことで始まっていたのですかね。 ○上田厚生科学課長  実際は糖尿病を1つのシンボルと捉えてアプローチをしようという考え方は皆さんお ありで、そういうことから糖尿病を取り上げたと理解しています。もちろん今後は糖尿 病以外にも、いろいろな血管障害等も議論になっていくと思います。今回は私どもとし ては限られた予算ですので、予算を取りに行くにはわかりやすい概念のほうがいいとい うことで、糖尿病に限らせていただいたことが1つあると思いますが、様々、いわゆる メタボリックシンドロームといった議論はありました。  いわゆるゼロステージのところの話はありましたが、ある程度既存のものでも言える のではないか。例えば、肥満はよくないですよとか、そういうことは言えるのではない かということもあって、そこはメタアナリシス的な方法論でもいいのではないかという 声もあったので、結局は糖尿病の一次予防、ある程度境界域になった人からスタートし たほうがアウトカムが出やすいということで、観察期間の問題もあるのでしょうが、こ のような形になったのです。これは「健康日本21」とか、健康増進法などの大きな流 れの中で、また健康フロンティアという中でこれが動くわけですから、健康フロンティ ア、あるいは健康日本21の全体の中で、いまのご指摘はほかの研究事業等も含めて、 幅広く取り組んでいくことになると思います。あくまでも今回のアウトカム研究をトラ イアルとして、ターゲットを絞ってアウトカムを出すということで、このような設定に なったのだと理解しています。 ○矢崎部会長  生活習慣病の中にがんという部分がありますが、それ以外の部分の生活習慣病をどう 捉えるかというと、皆さんは糖尿病がパッときますよね。ですから、先生がおっしゃる メタボリックシンドロームというもう少し広い範囲で、がん以外の生活習慣病を括るよ うな言葉というかキーワードがあると、研究ももう少し幅広い視点から行く可能性があ るので、そういうキーワードを考えていただいて。 ○中尾委員  いまのグローバルな共通ワードは、ヨーロッパでもアメリカでも日本でも、やはりメ タボリックシンドロームだと思います。日本のいまの疫学研究でメタボリックシンドロ ームの中で、最も多いのは肥満症と高血圧症の方が約80%で、糖尿病の方はその中の30 〜40%しか占めないのです。そういう現実は、いますでにメタボリックシンドロームの 中に出てきています。糖尿病だけをそこから切り離して考えるのは、大きな循環器系の 疾患の最後のリスクファクターのクラスターとしたら、糖尿病がメインであるとは考え られない。日本では高血圧と肥満の方のほうがメインであることは、ある程度の疫学研 究でエビデンスは出かかっていますので、その中に糖尿病をメインにするコンセプトが 別になかったら駄目だと思います。データは血液検査だけで出るかもしれませんが、大 きな流れでは糖尿病の患者は、決してメタボリックシンドロームの中のメインのコンポ ーネントではないというのが最近のエビデンスです。 ○矢崎部会長  それがわかりにくいのですよね。ですから、がんは非常にわかりやすいのです。 ○中尾委員  がんと循環器疾患の中でリスクファクターとしたら、メタボリックシンドロームが。 ○矢崎部会長  がんと糖尿病というのは比較的わかりやすいという、今井委員が言われたところがあ って、何かうまい括りがある、もう少し広い領域を包含するようなものがあるといいの で、中尾委員、考えてください。 ○中尾委員  広く捉えていただけるという話が先ほどありましたので、その中で最後のイベントの 病気が起こってくるのは糖尿病とか、そういうものではなく、循環器系疾患のイベント であるということを、十分認識してやっていかないといけないと思います。 ○今井委員  今のは糖尿病を切り取ると説得力がないというお話ですよね。糖尿病だけを切り取る と説得力がない。パーセンテージや何かからいっても、最初の部分で、メタボリックシ ンドロームとして、高血圧と糖尿病と肥満の3点セットだということですね。でも、糖 尿病でかなり検討してしまっているから、今年度分というか、今回はしようがないのか なと思ったときに、では、糖尿病で何が説得できるかというと、もともと糖尿病で起こ ってしまう血管の部位というか部分は、眼底や腎など、もともとは小血管だったと思う のです。でも現在はマクロになっているという、その違いが出てきたことを、ある程度 謳えば、それなりに研究価値自身は上がるのではないかという気がします。 ○矢崎部会長  それは研究企画委員会などで、いまのご議論を伝えていただいて、さらに具体的に検 討していただければということで、いろいろなご意見があると思います。ですから、い ろいろな複眼的な視野から、実際にこれから内容を検討していくわけです。そのときに 反映していただければということですが。 ○上田厚生科学課長  いまお話がありましたように、ファンディング・エージェンシーのほうに黒川班の成 果を渡します。要するに、アウトカムとプロトコールを渡して、そこでさらに専門家に 入っていただいて、揉んでいただき、公表して公募をかけるという手順になっていくと 思いますが、その都度またこの部会にもご報告していきたいと考えています。 ○中尾委員  一言だけ審議官に。がんというのは、全身的に種々のがんがあって、非常に広い対象 です。糖尿病とがんと同等に持っていくという、2つの柱にするのは、あまりに比率が 違いすぎるということを認識していただきたい。わかりやすいというのは矢崎部会長が 言われたとおりですが、がんと糖尿病と同じレベルに置くという考え方は全くない。ち ょっと同じレベルでは語れないということです。 ○松谷総括技術審議官  大変有意義なご議論をいただきましたので、お願いと補足をさせていただきます。1 つは、いまの中尾委員のお話に関連しますが、今までの研究の中では長寿等があります が、がんと循環器疾患等という形になっていて、いわゆる「糖尿病等の生活習慣病対策 」という言い方になっています。  戦略研究の8億円の話ですが、全体では22億円あって、もちろん肥満からメタボリッ クシンドローム全体についての研究費は従前どおりあるわけですので、そこはお忘れい ただかないようにしたいということです。  お願いは、がん対策やがん疾患というのは、国民にも非常に分かりやすい形で政策と してもキーワードとしても非常に良く、いろいろながんがありますが、全体として1つ のエンティティとして分かるのです。生活習慣病には肥満、高血圧、糖尿病と並べてが んも入れてしまっているものですから、非常に幅広くてある意味では曖昧な概念になっ てしまった。学問的にはメタボリックシンドロームという言葉が、最近確立されつつあ り、内科学会では間もなく決めるという話も伺っていますが、政策の中で、国民にもう 少し分かりやすいキーワードがないかというのが私どもの願いです。片仮名で、メタボ リックシンドロームというと、非常に分かりにくいので、何かいい言葉をお教えいただ ければと思っています。  おっしゃるとおり糖尿病はその中の一部だと思いますので、全体を取り上げて研究を 進めるということが今後必要になると思いますので、そのときに○○対策、○○研究、 ○○5カ年克服事業などができるような言葉が必要かと最近考えておりますので、先生 方のお知恵を拝借したいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  是非、中尾委員と今井委員に考えていただいて。 ○中尾委員  生活習慣病でいいのだと思います。生活習慣病で、最終的には循環器的な心・血管病 につながる生活習慣病がそのものであって、生活習慣病という名前がここまで定着して きたわけですから、循環器疾患のリスクファクターになる生活習慣病という括りでいけ るのです。その中が糖尿病だけではないということをしっかり認識していかないと。私 は肥満対策のほうが重要であると認識しており、その結果として糖尿病が増えてくると いう考え方のほうが、いまグローバルな考えとして主流であると考えます。 ○矢崎部会長  ご議論はいっぱいあると思います。生活習慣病の大きな部分は、垣添先生のがんも入 っていますので、生活習慣病の中で、極めて大きいがんと、もう一方の極めて大きい部 分を、何とかまとめるような言葉を考えていただければ、大変有難いということです。 議論は尽きないと思いますが、時間もオーバーしておりますので、この辺で終了させて いただいて、「機関評価について」に移りたいと思います。 ○上田厚生科学課長  機関評価については、平成14年8月に策定された厚生労働省の「科学研究開発評価に 関する指針」において、「研究開発機関は各研究開発機関における科学研究開発の一層 の推進を図るため、機関活動全般を評価対象とする研究開発機関の評価を定期的に実施 する」とされており、順次、科学技術会にも報告されてきたところです。今回は国立感 染症研究所と国立医薬品食品衛生研究所の機関評価についてご審議いただきたいと存じ ます。  なお、指針上は3年に1回を目安として定期的に行えるよう評価実施計画を策定する となっておりますが、感染研については自主的に1年に1回実施しているところです。 説明については重点に絞って5分程度で、審議については説明を行ったあとお願いでき ればと思います。まず国立感染症研究所から機関評価について説明をいたします。 ○荒川国立感染症研究所細菌第二部長  資料5−1−1です。国立感染症研究所は、感染症に関する厚生労働省の政策に関し て科学的な根拠を提供する役割を果たしており、具体的な業務の内容としては、感染症 にかかわる基礎・応用研究、感染症のレファレンス、感染症のサーベイランス、感染症 の予防のために必要なワクチン等の生物学的製剤の国家検定・検査。さらに感染症に関 する国際協力関係、海外・国内からの研修生の受入れ・講習等を行っています。  職員のほうは、常勤の研究者300余名、その他リサーチレジデント、客員研究員、協 力研究員等で構成されており、事務系の職員を入れて約1,000名の職員がおります。  現在、新宿戸山庁舎のほかに、私がおります村山分室、ハンセン病研究センター及び この4月から基盤研に移りますが、霊長類センターがあります。  2枚目です。感染研の業務としては大きく分けて3つあって、病原体のいろいろな検 査・解析等あるいは技術講習等を国内の衛生研究所あるいは大学の方々を対象に実施し ています。  紫色の所ですが、国内外の様々な感染症がありますが、それの発生動向の監視、ある いはそういうものが発生したときの対策のためのいろいろな調査等をしております。  緑の所ですが、生物学的製剤、特にワクチン、血液製剤、その他、抗毒素血清等につ いての品質管理を担当しています。この根拠となる法律は薬事法で、抗生物質等医薬品 については、日本薬局法に基づいて、その品質管理が行われています。  3枚目です。役割として厚生労働省の厚生科学課の下にあって、海外及び国内で発生 するいろいろな感染症、例えば最近ではO157や海外ではSARS、アメリカのウエス トナイル、その他様々な感染症が世界の多くの地域で発生し、国内でもいろいろな感染 症が起きており、こういうものに対する病原体診断、臨床診断。特に希な病原体の場 合、診断が実際に大学あるいは一般の検査センターでできませんので、感染研及び地方 衛生研究所で協力体制を作って、様々な病原体に対して検査等を対応しています。  将来的には新たないろいろな病原体も出現してきますので、病原体ゲノム解析センタ ーを作り、未知の病原体、新たに出現した病原体について遺伝子レベルできちんと検査 法、診断法を確立することも目指しています。  今回平成15年度の研究機関評価があって、この中で研究・試験・調査の状況と成果 で、評価委員会から何点かご指摘をいただきました。その1つは4枚目にありますよう に、研究業績も上げているが、業務に関する研究が少し弱いのではないか、あるいは検 定業務は必要だが、抗生物質の検定で感染症とは関係ないものがあるから、そういうも のの扱いを再考する必要があるのではないかというご指摘をいただきました。  これに対する回答は、現在、生物学的製剤の品質管理業務については、生物学的製剤 基準に基づいて行われており、抗生物質については日本薬局法に基いて行われています が、こういう中に規定されている様々な試験法、特に生物学的製剤の安全性にかかわる 諸問題がありますので、そういうものを改善するための様々な研究が進められていま す。こういう研究はどちらかというと、地味な研究に属するもので、時間も手間もかか るものですが、そういうものについては着実に進められ、今回の生物製剤基準の改定の 中に、そういう試験法の新たな改良等が盛り込まれてきているという実績もあります。  海外で使われているいろいろなワクチンが、日本に将来的に入ってくることも十分想 定されますので、そういうものと国内のもの、あるいは海外のワクチンの品質管理上の いろいろな問題点についての調査も進めております。  抗生物質は、現在感染研で扱っているのは約140品目ありますが、その中の5品目は、 確かに感染症の治療ではなく、主にがんの治療のためのアクチノマイシンDやマイトマ イシンC、ジノスタチンスチマラマーなどの抗生物質があります。こういうものは、過 去に一般の抗生物質と同じように開発されてきた経緯があって、現在でも感染研におい て収去検査、あるいは標準品の制定等が実施されております。これについては、もしこ れを担うことが可能な機関等がありましたら、そちらに将来的には移管することも考え ております。  指摘事項の2番目は、実地疫学調査の充実や恒常的な病原体サーベイランス体制の構 築について、感染研の機能を強化すべきである。あるいはサーベイランス事業の評価に 当たっては、専門家や疫学者などの意見を求めて、現実の姿と乖離していないように注 意するようにという指摘がありました。実地疫学調査については、国内、海外といろい ろありますが、特に国内のいろいろな医療機関あるいは都道府県等からの出動要請も最 近は増えており、実際に毎日あちこちへ出動しているのが現状です。さらに今後、FE TP(実地疫学調査のための研修コースの職員)等を増やすなどを行い、この機能を充 実させていきたいと考えています。  病原体のサーベイランスですが、主に都道府県、地方衛生研究所との連携により進め られていますが、このために必要ないろいろな試験法をマニュアル化したり、診断をす るための標準品などの制定なども進めています。ただ、病原体の種類も非常に多い、あ るいは試験法も多岐にわたりますので、これを体系的に整備していくことになると、十 分な予算措置をしなければいけませんし、現在、予算請求を進めているところです。  感染症サーベイランスが現実と少し乖離しているのではないかという指摘があります が、サーベイランスの手法や疫学的な解析の方法によっては、確かに現実を十分反映し ていない結果が得られる場合もあります。こういうことが生じた場合は、感染症分科会 で討議をしていただき、法律の改正等に当たっては、この問題について論議を行ってい ただき、技術的、あるいは疫学的な両側面において改善が図られることになっています ので、現在もし問題があるようでしたら、具体的なご指摘をさらにいただければと考え ております。 ○上田厚生科学課長  それでは、次に国立医薬品食品衛生研究所から説明をお願いいたします。 ○大野国立医薬品食品衛生研究所薬理部長  国立医薬品食品衛生研究所では、1つの事務部門と19の研究部門、3つのプロジェク トチーム、4つの試験所からなっています。構成員は、研究職が200名強、その他50〜 60名で成り立っています。そのほかポスドクの方が40名強、研修生・実習生の100名の 近くの方に協力していただいています。  仕事の内容は、名前のとおり医薬品と食品、生活環境の衛生に関する仕事を行ってい ます。医薬品、食品、医療用具の品質、有効性、安全性について、主に研究していま す。また情報活動、緊急の安全体策への対応も行っています。そのほか有機化学部や機 能生化学部、代謝生化学部は全体の研究を支援する部として位置づけております。安全 情報部や医薬安全科学部などは、医薬品や化学物質の安全性に関する情報提供、行政へ の協力などを主に行っております。  私どもの機関に対する評価についてお話いたします。評価に関しては、国立医薬品食 品衛生研究所の研究評価委員会が、平成11〜15年にかけて4回開催されて、評価報告を いただいています。その報告が資料5−2−2に書いてあります。それをサマライズし たのがパワーポイントをプリントアウトしたものです。  評価委員は、平成14年度では5名の先生に協力していただき、評価しています。すべ て外部委員です。食品薬品安全センター秦野研究所の小野先生に評価をいただきまし た。評価結果は3頁にありますが、研究の内容、試験・調査の内容、その結果のいずれ に関しても、いずれもの部が活発に研究を行って、その結果を公表していることが評価 できるという評価をいただいています。  また業務に関しても、試験・調査部門を滞りなく行っています。それらの全体として の評価は、研究者あたりの論文数が、我が国のトップクラスの大学に匹敵し、他機関と の研究連携も効果的に実施されているという評価をいただいております。  そのほか国際協力、倫理規定に関しても適切に行われているという指摘をいただいて います。ただ、いくつか指摘事項があって、それに関しては4頁目からサマライズして います。大きなところは、私どもは昔は国立衛生試験所と言っており、試験が中心の研 究機関でした。それを医薬品食品衛生研究所と名前を変えて、それ以来、研究中心の業 務を行うように変更しています。今でも試験業務が残っており、その辺に関しては民間 にできるものは民間に移管するのがよろしいのではないかという指摘を受けています。 それに関しては大阪支所でやっていた標準品などの諸々の検定や様々な国家検定をでき る限り民間に移しています。ただ、国としての緊急対応などに必要なものは残さざるを 得ないと考えて、そういう技術レベルの維持に努めております。  研究テーマが非常に多いという指摘があり、それをこなすためには流動研究員や研究 者を大幅に増やす必要があるという指摘をいただいています。これに関しては、当然国 の研究機関ですので、行政ニーズの高い研究に集中してやっていくように資源、人員を 配置していくことが必要だと考えております。また流動研究員や研究協力者になるべく 来ていただけるように、そのための研究資金の確保に鋭意努力しているところです。  医薬品の研究所という名前が付いているので、そちらに特化したらどうかというご意 見もいただきましたが、私どもは医薬品と食品と一般の生活環境の3つを中心として成 り立っている機関で、それぞれのバランスを取りながら運営していくことが、国立医薬 品食品衛生研究所としてのミッションを果たすことだと思っています。ただ、それぞれ の部門が積極的にやり、成果を上げ、シナジー効果によって研究がさらに進歩すると考 えています。  5頁目ですが、研究活性度が低下した研究員が全くいないとは申しません。そういう 方への研究の配分の問題などもあり、これからは研究員の任期制導入はやむを得ないの ではないかという指摘をいただきました。それに基づいて最近では、5年の任期を区切 った採用が度々行われるようにしています。  行政ニーズに対応した仕事を首尾よくこなして、かつ試行錯誤を要するようなしっか りした質の高い研究を行うためには研究員が少なすぎるという指摘もありましたが、先 ほど申し上げたことと同じように、業務の見直しを図り、優先順位の高い業務に人や資 源をあてていきたいと考えています。  施設に関して、施設が狭い、老朽化があるということについての指摘がありました が、それに関してはレンタルラボの借り上げや、既存の施設をなるべく整備して活用す る形で円滑化を図っていきたいと思っています。レンタルラボに関してはミレニアムプ ロジェクトを当研究所で一部担っていますが、それにあたっては周辺の民間の施設を借 りて研究を行っております。  組織を一部センター化して時限的な研究チームを結成して、プロジェクト研究を行う 方式を盛んにしてはいかがという指摘がありました。それは安全性に関しては、安全セ ンターというのがあって、毒性部、病理部、薬理部、変異遺伝部という安全性に関した センターがありますが、それと同じようなセンターを食品や衛生関係に作ったらいかが という考えですが、現在ではまだ困難なところがありますが、できる限りタスクフォー スを作って、プロジェクト研究を推進しております。例えば今年問題になったスギヒラ タケの問題などに関しは、所内でプロジェクトチームを作って検討を進めております。  特許に関しては、まだ活発とは言えないという指摘がありました。これは平成14年度 では特許の申請が11件、職務発命として認められたのが7件でしたが、鋭意所員に刺激 を与えて、平成15年では19件、平成16年では23件と徐々に増えております。  人事面においても外部との交流を推進してほしいという意見がありました。それに関 しては、最近の所員の採用はほとんど公募によって、外部と内部と区別なく運用してお ります。  人員・予算の自由度が著しく乏しい。国立研究機関にもう少し自由度を与え、活性化 を図る必要があるというご指摘をいただきました。それに関しては公募型研究費の獲得 に向けて研究員にインセンティブを与え、活性化を図っていきたいと考えております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。2つの研究機関からの評価についてのお話ですが、 ご質問、コメントはございますか。 ○金澤委員  感染症研究所についてですが、最後の辺りで、少しコメントがあったように思います が、私たちが期待するのは、ありとあらゆる感染の病原体は、すべてそこにあるという ことを、贅沢かもしれませんが期待するわけです。そういうリソースというか、研究リ ソースでもあり、かつ、レファレンスでもあるわけですが、そういうことに対してパン フレットの7頁の組織図を見ても、リソースというか標準品をキープしておく場所とい うか部というか、そういうのがあまり見当たらないのですが、今後の見通しも含めて、 少しお考えを聞かせていただければ有難いのですが。 ○荒川国立感染症研究所細菌第二部長  先生のご指摘は、まさにごもっともでして、感染研の中に、現在標準株やいろいろな 試験試薬の標準品等を専門に管理する組織はありません。ただ、将来的にそういうもの が充実できるように、過去から予算的なことについての検討はされてきておりますが、 現在に至っても、まだそれが実現していないという現状です。  現時点では、そのいろいろな病原体あるいは診断に使ういろいろな標準物質について は、それぞれの病原体を担う部において個々に管理されています。ただ、職員が交代し たり定年になられて、そういうもの管理が一部あやふやになった事例もありますので、 将来的には病原体の標準株、あるいは試験診断用のマテリアルの標準物質等を管理でき るような部門、そういう機能を持ったセクションを感染研の中に置く方向を実現してい ただければと考えております。 ○矢崎部会長  そのほかはよろしいでしょうか。それでは時間も過ぎておりますので、次の「遺伝子 治療臨床研究について」に移りたいと思います。 ○高山企画官  それでは、資料6−1と6−2に基づいて、遺伝子治療臨床研究に関する報告をし、 資料7で取り扱いの関係を説明させていただきたいと思います。  まず資料6−1ですが、フランスで実施されているX連鎖性複合免疫不全症の遺伝子 治療の研究について、平成14年に2例の有害事象が出たということがありました。当 時、この審議会においてもご議論いただき、同じプロトコールの研究の扱いと、その他 関連する研究の扱いについてご審議いただき、その指示を施設に伝えていたところです が、今回、平成14年ぐらいに投与されたもう一例の患者から、白血病が起こったという 報告を受けましたので、事務局のほうで施設に伝えて、その対応方針などを伺うととも に、作業委員会に報告して、ご議論いただき、意見をいただいたところです。その経緯 は資料6−1の2.に書いておりますが、今回、各施設においては、すでに投与を受け た患者に対してインフォームドコンセントやフォローアップを実施しているということ の報告を受けました。結果として、3月8日に、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会と 小児免疫不全疾患遺伝子治療臨床研究作業委員会の合同委員会を開き、4つの関連する 研究についてご審議をいただきました。これは両委員会とも笹月先生が委員長です。  結果として、同じ計画である東北大学病院の計画については、現在も保留としてお り、フランスの詳しい解析結果をもって、また検討することについては、委員会として は妥当と判断するが、実質的に計画の再点検をしたらどうかと。北海道大学病院のAD A欠損症に対する遺伝子治療臨床研究については、今までに行われた2例の患者に対し て、フォローアップをきちんとしていただくとともに、臨床状況などを報告いただけれ ば有難いということとともに、これらを踏まえて、再度検討されてはどうかということ です。  がん研究会附属病院の計画については、進行再発乳癌に対してMDR1遺伝子を入れ ることによって化学療法の効果を図るものですが、現在までに行われた3例の臨床状況 等の報告を行った上に、4例目の検討を行う予定ですので、その報告を行った上で、さ らに議論したいと。  筑波大学病院の研究については、自殺遺伝子を組み込んで白血病治療の効果を上げる というものですが、1例目については、あとで報告しますが、遺伝子導入部位の検索を 行っているとともに、その後の状況を報告してくださいと。今後の2例目については、 そのような検索を行うとともに、リスク・ベネフィットを考慮して取り扱うべきという 意見でした。また各施設に対して、引き続き情報収集を行っていただくとともに、事務 局においても収集を行うべきということです。  資料6−2ですが、筑波大学の事例については、重大報告がありますので、報告いた します。報告の様式は、「重大事態等報告書」になっており、研究の過程で死亡例が出 たり、海外の有害事象が出たときに報告いただくもので、筑波大学の件については、白 血病の治療の最終段階で再発したときに、ドナーのリンパ球を入れるのですが、その際 にそれによって移植片対宿主病が起こることがあり、それを和らげるために、予めドナ ーのリンパ球に自殺遺伝子を入れておいて、発症したときにガンシクロビルを投与する ことによってドナーリンパ球を死滅させるという方法ですが、その治療法は、患者の自 由意思による同意を得て行っていたところ、ドナーリンパ球による病気が発生したの で、ガンシクロビルを投与したところ、その症状は和らいだのですが、原疾患が増悪し たことによって多臓器不全によって死亡したという事例です。  したがって、現在のところ、遺伝子治療が原因で亡くなったものではないと考えてお ります。引き続き大学において、この事例について調査研究していますので、何かあり ましたら報告いたします。なお、この事例については、予めこの施設の報告の時点で、 先生方にご一報申し上げております。 ○矢崎部会長  いまの2つの報告について、何かご質問ございますか。それでは、次の「遺伝子治療 臨床研究に係る生物多様性影響評価について」に移ります。 ○高山企画官  資料7−1と7−2です。資料7−2の2頁ですが、遺伝子組換え生物等が、野生生 物等に影響を与えないかどうかについては、生物多様性を確保する条約に基づく「カル タヘナ法」があり、その関係において影響を与えないことを評価しなければいけないと いう法律が平成15年に決まり、手続を定めて、その審査を行っていたところです。現 在、進行中の実施計画について手続を定めて評価を行ったところで、評価については科 学技術部会の下に、専門的検討を行う遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に 関する作業委員会(吉倉委員長)の下で、専門的に評価をいただいたものです。本日資 料7−1で報告するものについては、作業委員会での作業をいただいた結果です。そし て本日この部会に上程して、ご審議をいただき、了解いただければ次の手続をとるもの です。  報告の概要については資料7−1で、現在実施中、あるいは実施予定のあるものにつ いて5件評価をいただいています。この評価に当たっては、もともと遺伝子治療臨床研 究については、実施計画を作った段階で厚生労働大臣に意見を求めるという規定があ り、これらのものについては、その当時、手続に則って計画の審査が行われ、ご了解い ただいており、実施計画などはすでに公表されたものです。それに基づいて生物多様性 の観点での評価を行ったものです。  時間的に昨年の6月、7月ぐらいに作業委員会の設置が了解されて作業を行ってきま したが、評価に当たって記載の方法などが施設でまちまちなのがあり、記載整備や環境 省の事務当局と調整を行い、ギリギリまで資料が整わなかったことについて、事務担当 者の不手際はお詫び申し上げたいと思います。  その評価結果は2頁ですが、実際的には3頁に解放型で使うと。これはヒトに投与し ますので、ヒトは投与を受けたあと閉じ込めるわけにいきませんので、外へ出るという ときに、投与されるような微生物が外界に影響を与えないかという評価で、それの手順 については、第一種使用規程に基づく申請という形で、もともと組み換えたウイルスな どについては、どういう状態で、冷蔵庫保管、あるいは安全キャビネットの中で使う、 あるいは使った場合には廃棄物処理規程で処理する。患者については投与する段階で は、環境中への拡散防止処置を適切に行った個室、クリーンルームにおいて行って、体 液などの排泄物等について、いくつかの検査をした上で、投与後何日まで見て、確認さ れた段階で退室いただく。使った器具については、消毒などを行い、きちんと処理をす るという規程の下で使うことについて、生物多様性影響評価という形で、他の微生物を 減少させる性質、あるいは病原性有害物質の産生性、核酸を水平伝達する性質などにつ いて、個別に考察を行い、基本的には遺伝子を導入するために使われている遺伝子組換 えウイルスについては、増殖能を失っているというものが基本ですので、野生ウイルス との相同組換えを行わない限り、環境中で増殖することはあり得ないだろうなどが考え られますが、相同組換えを起こさないような措置ということで、先ほどのような措置を 行うことなどを考察しますと、第一種使用規程に基づく限り、例えば、他の微生物を減 少させる性質や病原性、有害物の産生性、核酸を水平伝達する性質について、生物多様 性に影響を及ぼす恐れはないとした申請者(大学側)の結論について、作業委員会とし ては妥当であると判断しています。  それらを踏まえて、第一種使用規程に基づいて使用する限り、生物多様性影響が生ず る恐れはないという結論は妥当であるということを導いています。2頁は北海道大学の 例ですが、筑波大学の事例、がん研究会の事例、神戸大学の事例、岡山大学の事例の個 別について、この整理を作業委員会の下で行い、どのような使い方をするかという内容 について、よく見た上で、これなら問題ないという結論を得たところです。  本日ご審議いただき、ご了解いただければ、どういう使われ方をするかという使用規 程については、公に示す必要がありますので、告示の手続をとらせていただきたいと考 えています。簡単ですが説明いたしました。 ○矢崎部会長  いまの説明でご了承いただけますでしょうか。 (異議なし) ○矢崎部会長  それでは、本部会でいまの検討結果を了承したということでよろしくお願いいたしま す。  それでは、続いて、「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員 会」の報告をお願いします。 ○高山企画官  続きまして、「医学研究分野における個人情報保護に係る検討結果」についてご報告 申し上げます。これは昨年10月に行われた第22回の部会で1度ご報告した後の取扱いで す。資料8−1と資料8−2ですが、資料8−1に検討の経緯があります。本年4月の 個人情報保護法の全面施行に向けて厚生科学審議会科学技術部会に、医学研究における 個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会(垣添座長)を昨年6月に設置し、昨年 12月まで10回にわたり議論を行い、資料8−2にある12月24日付で研究に関する指針の 見直し内容及び個人情報保護のための格別の措置について意見書をとりまとめていただ きました。  3頁に、対象とした指針がありますが、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」、「遺伝子 治療臨床研究」、「疫学研究」、「臨床研究」とあって、遺伝子解析研究は文部科学 省、経済産業省、厚生労働省の3省共同ですので、必要に応じて3省で合同委員会を開 催し、次の2つは文部科学省と厚生労働省の共同告示ですので、2省合同委員会を開 き、最後は単独で開催し、ご議論いただいたところです。  1頁に戻り、当面の方針としては、基本的には研究に関する指針について、個人情報 保護の観点から規定を抜本的に強化する見直しをする。2頁で、指針の実効性を担保す るための措置として、まず指針の改定を行い、それを周知することによって対応すれば どうかというご意見でした。  見直しについては4頁に各種指針の見直しの事項がありますが、すべての指針に共通 事項で、利用目的による制限や安全管理措置、第三者提供の制限、個人情報の開示に関 するもの。5頁でヒトゲノム・遺伝子解析研究については、研究の進展に対応するため に、併せて国内における複数機関による共同研究や透明性の確保について指針の見直し を行いました。  法制化についてもご議論いただき、意見書の7頁にありますが、「本委員会として は、個人情報保護の視点からの現行指針の見直しを行うとともに、その実効性を確保す るための、各種対策、改正後指針の遵守状況フォローアップ等を実施することで、個人 情報を保護するための格別の措置が講じられるものと考えて、現段階において、個人情 報保護法の全面施行に際し、ヒトゲノム・遺伝子解析研究において、別途個別法を創設 するなど個人情報保護の観点から別途の法制化の必要性はうすいものと考えられる。な お、既述のように、中長期的には法制化の課題も含めて検討する必要性があることも忘 れてはならない」という結論を得ているところで、この手続について、専門委員会での 状況を部会長にもご報告し、時間的に限られた中での検討でしたので、事務局で意見書 をいただき、すでに4つの指針については改正し、昨年12月28日付で告示し、関係機関 に周知を図っているところです。指針については本日は付けていませんが、事務局にご 指示いただければ送ることは可能です。手続については、すでに行ったことをご報告し ます。 ○矢崎部会長  4月1日の個人情報保護法の施行に向かって、短時間で見直しの作業をしていただい たわけですが、委員長の垣添委員から何かございますか。大変なお仕事ありがとうござ いました。 ○垣添委員  いまご説明いただいたとおりで、特にありません。 ○矢崎部会長  それでは、この報告を了承したということで。 ○金澤委員  基本的には分かりました。もうやむを得ないのだと思います。資料8−1の2頁の※ の所の整合性がよく分からないのですが、そこだけ教えてください。同じ学術研究であ っても、私立の大学などほかでは、個人情報保護法の適用除外になるのとならないのと の論理を教えてください。 ○高山企画官  まず個人情報保護法については、基本的には個人情報を取扱う事業者を対象としてい るものです。ただし、事業者の関係ですので、国や独立行政法人などの公的機関に対す るものとは少し違うのですが、審議の過程で学術研究については、憲法にも定められて いる学問の自由等がありますので、それについては一定の除外の対象としたらどうかと いう議論の中で、このような学術研究は対象除外とするという取り扱いがされていま す。  ただし、一方では厚生労働省という行政機関や独立行政法人何々研究所については、 公的機関という形での個人情報の保護に努めるという法律があり、行政機関に関する個 人情報保護法の関係、あるいは独立行政法人に関する個人情報保護法の取扱いがあっ て、私どももいろいろな規定に基づいて整備をしていますが、その法律の中においては 学術研究への適用除外はありませんので、行政機関や独立行政法人等は別の法律に基づ く個人情報保護の取扱いはしなければいけないということで、このような書き方をして いるわけです。 ○金澤委員  納得はしませんが、結構です。 ○北村委員  もうすでに各病院で、現場で4月に向けて混乱も起こってきているのですが、具体的 な例でお答えしていただけるかどうか分かりませんが、例えば、レトロスペクティブ に、たくさんの患者層から、ある特定の疾患と、ある特定疾患の関連を調べたいという ので、その2つか3つの病気を兼ね備えている人を、ずっとカルテから引っ張ってく る。それで何歳、女性・男性、この病気あり、この病気の程度はこのぐらい、別の病気 の程度はこのぐらいという一覧リストを作って、我々は若い時からずっと臨床研究をし てきたのですが、その一人ひとりの年齢、性別、疾患、これとこれを兼ね備えていると いう場合に、レトロスペクティブですから、すでに亡くなった方もおられるのです。そ ういう人から同意を得ることは実質的に非常に難しいし、それを取ろうとするとバイヤ スがかかってしまって、許可してくれた人だけで、死亡している人は返事が取れないか ら使わないとなると、データそのものが歪んでしまって使いものにならない。そういう レトロスペクティブの学術で、個人からの同意をどこまで取らなければいけないのかと いうことで、私どもの倫理委員会でも回答に困り始めてきています。その辺はどのよう に対応するのですか。 ○事務局  事務局からお答えさせていただきます。まずデータそのものが個人の名前があるのか どうかということで、名前が匿名化されていますと、匿名化情報というのは個人情報の 範疇から外れる可能性がありますので、まず匿名化されているのか、それともきちんと 名前があるのかどうかです。 ○北村村委員  医者のリストを作成するときには名前があります。ただ、論文として出来上がったと きには消えています。 ○事務局  そうしますと、名前がある状態の情報自体は個人情報ですが、個人情報保護法もそう ですが、死者の情報については外れています。というのは、死者の情報は同意の取り方 やいろいろな保護の問題があります。しかしながら、指針においては、その情報が勝手 に流出していくと問題があって、安全管理措置や、要するに個人情報が外に漏れないよ うにある程度きちんと管理をしてくださいという安全管理措置は求められるようになり ます。  一方で、指針ができる前にすでに実施されていた研究については指針の適用が外れて きます。だからといって、どんどん流していいということではありませんが、そこはあ る程度管理していただきながら、やっていくという形になろうかと思っております。 ○北村委員  病院のカルテには名前が付いているわけです。学術の目的で収集するという、そのも の自身は問題にならないわけですね。 ○事務局  完全に匿名化してしまって、匿名化した情報で他機関に提供すること自体は基本的に 問題ありません。 ○北村委員  研究者の中では匿名してないわけです。カルテから取っているわけですから、カルテ には名前が付いているわけです。 ○事務局  第三者に渡すときに匿名化された状態で渡すということになれば、この場合は外れて きます。また、目的の中で公衆衛生のために必要だとか、そういう必要性があると思い ますので、そうした中で外れてくる場合もあるのではないかと思っております。 ○北村委員  それは可能な範囲という回答と理解してよろしいですね。それはコンセントを取り直 す必要はないと。 ○上田厚生科学課長  補足しますと、どこまでが内で、どこまでが外かという1つの問題があります。先ほ どから議論が出ているのですが、まず北村委員の循環器病センターは国の機関ですか ら、国としての個人情報保護法がかかるという側面があります。それ以外にガイドライ ンがありますので、問題はなかなか難しいのですが、いまQ&Aを作っておりますの で、そこでできるだけお答えをしたいと思います。かつ、個別のことについては、ご相 談をいただければと思います。ただ、基本的に国や大学はそれぞれの個人情報保護法が かかるという前提で対処していただきたい。そのときに中と外というのはどこまでか と。その機関の中であればある程度のデータ処理をして、外へ出すときには匿名化をす るということで、大概の部分は免れると思いますが、ものによっては本人に承諾を取っ てないということがあった場合に、個別にどうするかというのは、なかなか微妙な問題 もあるということで、もう少し具体的にお聞きしないとお答えできない部分もあります ので、後ほど具体的にお聞きした上でお答えさせていただければと思います。 ○北村委員  それから他施設で集計調査する場合もたくさんありますので、名前そのものはいかな い(匿名化)のですが、その施設内では個人同定の過程で、カルテをもう一度見直して 補足のデータを足すとか、必要になることがあって、しかもそれを全部取ったほうがい いことは分かっています。しかし、そうするとバイヤスがかかってしまう。非常に重症 な人が全部回答をくれなかったとか、その辺をどう解決するのかというのが、私どもの 倫理委員会でも判断しかねているところです。 ○矢崎部会長  先ほどの金澤委員のご質問はもっともで、独立行政法人と言っても国立大学はみんな これになっていますよね。ですから、どういう意味なのか。私立大学なら除外されて、 国立大学は除外されないということにもなりかねないので、その辺は少し整理する必要 があるかと思います。これはあとで検討するということでよろしくお願いしたいと思い ます。  だいぶ時間が過ぎて、長時間にわたって、委員の方を拘束して申し訳ありませんでし た。以上で今回の議事は終了いたしましたが、何か事務局でございますか。 ○高山企画官  次回は、いまのところ特に予定していませんが、4月、5月がきますと、中長期の委 員会も進みますし、戦略研究等もありますので、別途目処がついた段階で日程調整をさ せていただいて、開催したいと思いますので、ご協力をよろしくお願いいたします。 ○松谷総務技術審議官  遅い時間で大変ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。時間いっぱいのご審 議をありがとうございました。個人情報保護法については、先ほど大変いろいろご議論 がありまして、いま提起された疑問も含めて、相当長時間かけて審議された結果ですの で、また個別のお話についてはご相談に乗りたいと思います。国立と私立の話も歴史的 な経緯があって、国の行政機関の持っているものに先に規制が入り、独立行政法人の制 度ができたときに、それに付いてできて、個人情報保護法はそのあとにできています。 個人情報保護法を作るときに、どこを規制するかというのがあったのです。その意味で あとから見ると、必ずしも整合性がとれていないということがあります。いずれにして も指針については全体についてかけてありますので、全体の整合性をとった形でご審議 をいただいたと認識しております。これに沿ってやっている限りは法律上、ほとんど問 題がないようになって、法律よりある意味では若干厳しめに作ってありますので、でき るだけこのガイドライン、指針に沿ってやっていただければと思います。本当にありが とうございました。 ○矢崎部会長  それでは、今日の検討会を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。                                     −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:志賀(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111    (直通)03-3595-2171