05/03/04 第6回社会保障審議会医療部会議事録について              第6回社会保障審議会医療部会                        日時 平成17年3月4日(金)                           16:30〜                        場所 厚生労働省専用第15会議室 ○企画官  ただいまから、第6回社会保障審議会医療部会を開会します。皆様方におかれまして は、お忙しい中ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。  初めに、本日の委員の出欠状況について、ご報告申し上げます。本日は、野呂昭彦委 員からご欠席の連絡をいただいています。なお、野呂委員の代理として三重県健康福祉 部医療政策監池田千絵子参考人にご出席をいただいています。また、見城委員が遅れて いますが、特に連絡はありませんので、いずれお見えになると思います。ご出席いただ いている委員の皆様方は定足数を越えていますので、会議は成立しています。  お手元の資料の確認です。座席表と議事次第のほかに、資料1と資料2はホッチキス 止めで、資料3は1枚紙です。あとは参考資料1、参考資料2、参考資料3です。落 丁、乱丁等がありましたら随時ご指摘をいただければと思います。  以降の進行につきまして、部会長よろしくお願いします。 ○部会長  本日は、お集まりをいただきましてありがとうございます。議事に入る前に、本日欠 席の野呂委員の代理としてご出席いただいている三重県健康福祉部医療政策監池田千絵 子参考人の出席について、ご異議はありませんか。                 (異議なし) ○部会長  ありがとうございます。早速議事に入ります。本日の議題は、「患者・国民の選択の 支援」及び「医療計画」です。これらの議論に入る前に、前回、皆様方にお配りしてご 議論いただいた「医療提供体制の改革に関する主な論点」について、前回の議論を踏ま えた上で修正を行っていますので、その内容と併せて資料3の「社会保障審議会医療部 会の今後の進め方」について事務局からご説明をお願いします。 ○企画官  1枚紙の資料3と参考資料3をご用意ください。まず、参考資料3は論点の資料で す。前回は横向きの資料で、論点と、各委員の皆様からのこれまでのご意見等を整理し た資料でご議論をいただきましたが、前回のご議論を踏まえて、左側にあった論点部分 を若干修正をして整理をしています。追加等をした部分ですが、具体的に2頁の(4)の 2つ目に「情報の理解を支援し、主体的に考える環境整備」の論点を追加しています。 また4頁の下から5頁にかけての論点について、4頁のいちばん下のタイトルと、(2) に母子医療に関する記述を追加して、(6)に精神科救急医療に関する記述の追加と若干 の文言整理をしています。これに関連して、6、7頁の(4)医療計画に小児医療、周産 期医療の話や精神科の関係の記載を追加しています。  8頁の上は、医療機能の分化・連携の箱になりますが、いちばん上の箱の下から2つ 目の○で、前回、特定機能病院、地域医療支援病院の要件の見直しだけではなくて、追 加は考えないのかというご意見がありましたので、その記述を追加をしたのと、その下 のかかりつけ医の普及、定着の論点については、前回は在宅医療のところにだけ書いて あったのですが、在宅医療のところにはそれはそれで残して、医療機能の分化・連携の ところにも書きました。11頁は、医療法人の改革のところになりますが、(2)の2つ目 の○に人材育成の論点を追加しています。  なお、全体を通じて前回は「○○検討会で検討している」という記述がありました が、そういったものは今回全部消去しているほか、誤字の修正等も行いました。以上が この参考資料3の主な論点整理表についての前回からの修正をして、こういうふうに整 理をしましたという報告です。  この論点の整理を踏まえて、1枚紙の資料3で今後の「夏までの進め方(案)」をお 配りしています。本日は第6回ですが、前回にご報告したとおり、論点表の2.「患者 ・国民の選択の支援」と、論点表の5頁の5.「医療計画制度」のご議論をお願いした いと思います。次回は、論点表の3.「医療安全対策の総合的推進」と、4.「小児を はじめとした救急医療体制等の在り方、小児医療や周産期医療といった母子医療の推進 」についてということで、いわば安全、安心という回です。その後4月前半の第8回で は、7.「医療機能の分化・連携、医療施設体系及び医療施設に係る規制の在り方」と 「在宅医療の推進」、論点表上は4.のグループにある「災害医療提供体制」について です。4月後半の第9回では、法人を含めた「人」の回になりますが、論点表の12頁の 10.「医療を担う人材の確保と資質の向上」、また「へき地医療提供体制の確保と人員 配置標準」が議題の1つと、「医療法人制度の見直し」をご議論いただくスケジュール 案です。  これで一応、論点整理表全体を4月で一巡するということになりますので、その後の 議題等はそこまでの審議経過や検討状況を踏まえて、夏までに中間的取りまとめをいた だくことに向けた5月、6月の回の持ち方を、また改めてご相談させていただきたいと 考えています。以上です。 ○部会長  ありがとうございました。ただいまの説明について特段のご意見がありましたら、ご 発言をお願いします。よろしいですか。それでは、今後はこのような進め方でまいりた いと思います。  最初の議題は、「患者・国民の選択の支援について」をただいまから約1時間ほど議 論をお願いしたいと思います。事務局から資料1「患者・国民の選択の支援について」 のご説明をお願いします。 ○企画官  ご説明します。先ほどの論点整理の1〜3頁に当たりますが、広告規制の論点、積極 的な情報提供の論点、インターネット、診療情報の提供、EBMなどについていくつか の論点を挙げていますが、各論点相互に関係し合ったりしますので、全体をまとめての 資料で作っています。使うのは、本体資料として資料1という横長のものと参考資料1 が関連資料としてありますので、その2つをご用意いただければと思います。  まずは本体資料の資料1「患者・国民の選択の支援について」の1頁をめくると、 「患者・国民の選択の支援について」という標題が付いています。これが、このテーマ の全体を俯瞰した資料で、左側に現行制度の枠組みの下で医療機関は一定事項の広告を 行い、また院内掲示で情報提供し、患者にはその診療情報の提供ということを行い、医 療機関によってはインターネット等による広報を行っています。また、都道府県におい てWEB上での医療機関情報の提供をしたり、国や福祉医療機構、第三者機関なりによ る情報の提供などもされているということです。  医療機関等が広告や院内掲示がで きる、やっているということを申しましたが、具体的にどういう広告ができるかという ことで参考資料1の1頁をめくると、現在広告が可能な事項ということを平成14年に大 分拡大したということで、現在参考資料1−1に書いてあるような事項は、既に広告可 能な事項になっているということです。なお、2頁の参考資料1−2については、院内 に掲示する事項。「医療法」において掲示が義務づけられている事項がいくつか、また 保険医療機関として、保険のルールとして院内に掲示が求められている事項、ここに掲 載しているようなものが院内掲示事項として定められているのが現在の状況です。  本体の資料1の1頁に戻りまして、こういった現状の下、1頁の上の点々で囲まれて いるところにあるように、医療に関する情報についての量、質、信頼性、分かりやすさ といったことのさまざまな情報ニーズの高まりを背景に、今後考えられる対応案として 医療機関の関係についていえば、広告できる事項の一層の拡大や、患者に対する適切な 情報の提供等々、右側に4つほど四角で囲んである、ここにあるような対応が考えられ るのではないかということで、2頁以降の各々の資料でさらに整理しています。また、 都道府県も現在WEB上での情報提供を行っていますが、これらもより一層の取組が必 要ではないかということで右側の四角に書いてあります。また全般に通じることです が、患者の視点を尊重した取組の一層の推進を図る必要があるだろうということで、い ちばん下の行に左右の矢印の箱で書いてあります。  では、2頁以降の資料1−1以下についてご説明します。資料1−1から資料1−4 までが一かたまりで、広告規制に関する資料です。資料1−1は、現行のポジティブリ ストによる広告規制の考え方を整理していて、Iの(1)の(1)で、医療は人の生命・身 体に関わるサービスで、不当な広告で誘引をされて被害を受けますと、他の分野に比べ てそれが著しいだろう。(2)で、極めて専門性の高いサービスですので、受け手が質に ついて事前に判断することは非常に困難だというような考え方の下、(2)の1つ目の ○で、より慎重に利用者保護を図ることができる仕組として、ポジティブリスト方式を 採用しています。3つ目の○で、「客観的で検証可能な」ものとして個別に定められた 事項のみ、広告できる。ただし、事項としては可能なものであっても虚偽、比較、誇大 なやり方をしてはいけないということを医療法に定めて、罰則が定められているのが現 在の仕組です。  3頁は、講学的な意味でポジティブリスト方式の性質を整理すると、原則禁止である 行為に対して「特例的かつ個別に禁止を解除するもの」ということですので、医療機関 が適切に広告して規制を適切に行う観点では、リスト化をした際に各項目の範囲につい て罰則がありますので、「曖昧さを残してはならない」ということが求められるかと思 います。IIIとIVで、この方式のメリット、デメリットを書いていますが、メリットは ここまで掲げた医療の性格を考えると、利用者保護を図るという点でポジティブリスト 方式が優れているわけですが、一方でデメリットとして今後も広告規制の緩和が必要だ と考えられる中で、以下に問題点として3点整理しています。この3点について、4頁 以降で各論点の具体的な例を挙げています。  1点目の問題点として、「新たな追加事項への対応にかかる問題」です。さまざまな 医療機能の技術の進歩、機能の分化に伴いまして専門性を表わす事項の増加が予想され ますが、ポジティブリスト方式では柔軟かつ迅速にリストを増やしていくことが難しく て、したがって、既に認められている事項との整合性を常に確保し続けるのは難しい面 がある。これは、実際に広告できる事項の追加をこういった形で審議会で議論いただい て、ある程度まとめてやるのが通例になっていることが背景です。その結果、あれがよ くてなぜこれが駄目なのかという説明困難な事項のグループがあって、それに対してリ ストに載っていないからという説明しかできないような事態が生じるということで、具 体的事例としては地方中核がん診療施設を挙げています。端的にいうと、2行目にある エイズ治療拠点病院というのは前回の広告規制緩和の際に追加をしたわけですが、がん の拠点診療施設、次のポツにある循環器病の中核センター、難病の病院等については現 在広告ができないことになっています。医政局以外の関連制度も多くて、なかなかフォ ローしきれていないのが現状です。  5頁に、次の問題点として、「広告できる内容の不十分さ、硬直性、表現の難解さ」 と書いてあります。ポジティブリスト方式での広告規制について、表現方法の制限等で その内容の範囲を明確かつ厳格に定めるために不十分で、硬直的になって、結果、その 表現が患者にとってわかりにくいものとなってしまうことが多い。  具体的な事例は、現在「治療の方法」については広告できることになっています。た だし、客観性の担保という観点から診療報酬点数表に規定するものに限るという形で限 定をしています。このため、解釈通知で書いているのも含めていますが、点数表に記載 されている語句を一字一句違わずに用いること以外は認めないという限定的な解釈・運 用を行っているために、例えば一般用語である「人工透析」は使えず、「人工腎臓」、 「血液透析」または「血液透析濾過」という言葉しか使えないことになっている。ま た、点数表に記載されるまでもないような一般用語は書けないという話になって、そも そもまた点数表や通知は専門家向けですので、それ自体が難解だったり片仮名でわかり にくかったりするという状況。  下のほうは点数表自体が変わることもあるということですし、いちばん下は保険点数 表に規定するものに限定していますので自由診療、特に美容整形等一般に普及している 医療であっても、その医療あるいは医療機関の広告という形では点数表に記載されてい ないため、全く広告できない形になっています。なお、例えば女性雑誌の後ろのほうは 美容整形の広告ばかりではないかという指摘もありますが、これはケース的には医業・ 医療機関の広告でなくてもビデオの広告、書籍の広告、CD−ROMの広告と形式的に はそういう形をとっているので、不本意ながらそういう現状になっています。  6頁は、広告規制直接ということではないのですが、「医療機関の名称」です。この 名称については名称自体が広告可能ということと、名称自体が不特定多数に伝わる看板 に使われるものですので、明文上の規定はないですが行政指導として、広告規制の範囲 内で名前の付け方を認めているということです。このため、具体的には医療法施行令で 定めている診療科名以外の点数表に書いていない治療方法や技能といったもの、例えば 漢方、ペインクリニックといった名前、疾患の名前、疾患の部位、診療対象者は現在、 特定のもののみ広告できるとしている標榜診療科名と紛らわしいという観点から、名称 としては使用しないよう行政指導を行っています。しかしながら、現実には必ずしも徹 底されていません。現実に、こういう名前の病院を見たことがある方もおられるかと思 います。  このように、医学的・学術的観点から、標榜診療科名の範囲に限っている関係から、 本来は一般的な性格を有する名称というものについても、広告規制とのバランスを念頭 にそういった行政指導を行っていること故ではありますが、必ずしも患者の選択を不当 に惑わすようなものでないものまで名称として使用できない現状になっています。な お、女性クリニックという名称については一般の方から、そういったものもあってもい いのではないかという苦情の形で総務省に来ていて、そういった指摘も別途されている ところです。  7頁は、問題点の3つ目です。「規制の実効性・あいまいさに係る問題」ということ で、リスト化した際にその範囲に曖昧さが残ってならないわけですが、限定的な項目に ついてネガティブ化する方式に比べて、ポジティブリスト方式では範囲を明確にすべき 事項がはるかに多い。先ほどの参考資料1−1の項目すべてが範囲を明確にしておく必 要があることになりますので、そういった曖昧さが残ってはいけない問題が大きいわけ です。とはいえ、各事項の定義に曖昧さを全く残さないのは事実上不可能であること と、監督庁である都道府県内での取扱いに差が生じて罰則がある制度であるにもかかわ らず、規制の実行に限界があるということで、例えば相談窓口に関して現在、「当該医 療機関内に患者からの相談に適切に応じる体制を確保している旨」ということが報告で きるとしていますが、一定の解釈は示していますが、具体的にどういう人がいる、何人 いるといったことを広告していいかどうかは明文化していません。どこまで明文化、通 知等で書くかというのもありますが、それをしていませんで、問合せがあれば一定の回 答はしていますが、なければその取扱いの差が出てしまう。同じように、「安全管理の ための体制を確保している旨」というのは広告できるとしていますが、どのような体制 を取っているか、具体的なことをどの程度やるかについての完全な統一はなかなか難し いのが現状です。3つの問題点について、こういった現状にあることをご報告しまし た。  8〜11頁までは、ポジティブリスト方式の下でこのポジティブリストに追加すること について、これまでの並びから当確になりそうなものもありますし、議論を要する事項 がさまざま混ざっているし、網羅できるわけでもないですが、前回の医療部会の意見 書、規制改革検討会での指摘、規制改革・民間開放推進3か年計画、平成14年2月に 「保険者機能を推進する会」というところがアンケート調査をされまして、平成14年の インターネット検討会でも紹介させていただいたことがありますが、どういった情報が ほしいかというアンケート調査の結果、あるいはその他考えられる事項として事務局で 考えたものといろいろなものが混ざっていますが、それぞれのグループごとに8〜11頁 まで掲載しています。こういったものも、さらに検討になるのではないかということで 掲載をしています。以上が資料1−1です。  12頁の資料1−2、「評価を伴う医療の実績(アウトカム)に関する情報の広告規制 について」です。患者や国民の関心の高い生存率(治癒率)、死亡率等の評価を伴う医 療実績情報の広告についての資料ですが、こういった情報は選択の支援のためには提供 されたほうが望ましいとは思うわけですが、(1)、(2)に書いてあるように重症度などの 違いを補正して、比較可能なものにする手法が確立されていない。それなしに提供され ますと、医療提供への悪影響の可能性もあるということで、考えられる対応(案)とい うことで、まずはその選択肢情報を理解するためのかかりつけ医に相談する体制づく り。それと同時に、第三者の評価の仕組というものを作っていくことが必要であろうと いうことです。こういったルールがなければ、ポジティブリストであれば事項として追 加されないし、ネガティブリストだと、それは駄目だということになる整理になるので はないかと思います。いずれの方式にも共通する課題だということで、1−2の資料を 用意しました。  具体的に考えられる対応案は13頁ですが、これについては検証ができるものから順番 にやっていく。そのための手法の開発をしていくのがア)です。その際には広告ができ るようにするにしても、根拠をしっかり示す。ホームページに掲載するなどの根拠を示 すがイ)です。ウ)で根拠を示さずにやっているようだったら、名称公表というペナル ティーを含めて制限をする。いずれにしても、国がしっかり評価のための支援をしてい く必要があるのではないかとしています。  14頁からは資料1−3で、「広告規制のネガティブリスト化について」です。14頁に もありますように、この医療部会からも3か年計画や規制改革検討会からでも、ネガテ ィブリストを検討すべきということが従来から指摘されていますので、資料を用意して います。ネガティブリスト化した際に広告され得る内容としては、15頁の2の1、客観 的で検証可能な事項については既に広告可能。2、客観性又は検証可能性が十分に明ら かでない事項ということで、(1)は先ほどのアウトカム情報の話です。(2)は客観 的で検証可能であるとしても、必要以上に競争惹起する恐れがあるので問題があるかも しれないというものです。(3)以下、客観的事実だとしても検証困難又は不能なもの もあるだろう。医療の質と関係がないものもあるだろう。また、客観的事実にないもの もあるだろう。また、そもそも態様について問題があるというものもあることを16頁で 整理しています。  17頁の3に、ネガティブリスト化した際に論点の内容による事例ということで、ある 「”物質A”を使った治療をしている」。この物質Aは、別に人体に影響もないような ものだけれども治療効果もない。立証されていないものを使っていますという事実であ るとしても、そういう広告可能とした場合にこれで入院された患者が、金銭的負担ある いは適切な医療を受診する機会を逃すおそれがあったり、将来に何か危険が発生すると いったことを自己責任だからしょうがないという話にするかどうかが、規制方式をどう 取るかによって右、左分かれることになろうかと思います。  ここまで申しましたことに関して、18頁の1−4に、イメージ図の右側の3分の1の 白い部分、あるいは左側のいちばん下の箱のところは、方式がどうあれ広告は不可とい うことだろうと思います。また、左側の下から2つ目の箱は、どちらの方式であれ条件 整備が必要である。上の色が付いているところは現在でも可能な部分ということで、左 側の上から2つ目のブロックをどう考えるかになろうかと考えています。ここの部分を どうするかという話かと思います。以上が、広告規制に関する論点についての資料で す。  19頁の資料1−5というのは、広告以外の「適切な情報提供・支援の推進について」 ということで、現行制度の下での患者を対象とした情報提供の枠組みがありますが、真 ん中に、情報提供推進の必要性ということで、様々なニーズの高まりと、社会福祉の分 野や介護の分野等では参考資料1−3に、「社会福祉法」の条文が書いてありますが、 社会福祉法第75条には事業経営者は情報提供を積極的に努めなければならないという条 文が置かれたりしています。今後患者に対する分かりやすい医療情報の提供等の推進と いうことで、本体の19頁で、サービスの提供開始時等における分かりやすい情報の提供 や苦情体制の整備等を図っていく必要があるだろうということを書いています。  20頁、「医療機関による適切な広報について」ということで、前回もインターネット の話で大変なご議論がありました。インターネットの情報提供については、平成14年12 月のその専門の検討会の報告で一定の整理があるわけですが、基本的には広報であって 広告でないので、広告規制と同じような規制はしない。しかし信頼性確保が必要で、民 間団体による取組が期待されるのが大まかな整理でしたが、なかなか現実に、さまざま なインターネットを通じた情報が氾濫をしていること。また、民間団体での自主的な取 組といってもなかなか進まない現状がありまして、22頁の3で、考えられる対応(案) として、(1)でインターネットを含む広報については、これまでと同様、広告規制と同 じような規制の対象とはしないが、(2)で著しく不適切な内容が出されているようであ れば、これは規制するという根拠規定を設ける必要があるのではないか。(3)の信頼性 確保に関してはガイドラインということですが、国の一定の関与の下で作成をして、関 係団体等の協力を得て普及することが必要ではないかを、インターネットの関係では平 成14年12月の報告書より若干踏み込む必要があるのではないかということを整理してい ます。  23頁の資料1−7は、ここまでの話も含めて患者を含めて国民一般に対する医療機関 に関する情報提供の一層の推進ということで、左側に「現行制度」があり、真ん中に、 「現行制度でやっているもの」がありまして、現行制度の課題ということで広告等につ いては情報量の不足がある一方、インターネットの広報では情報の質の不足といったも のがあるということで、右側に「考えられる対応(案)」ということで、ここまでご説 明したようなものもありますが、考えられる対応(案)のいちばん上に医療機関による 積極的な情報提供の推進について、先ほど社会福祉法を紹介しましたが、努力義務規定 を置くことが考えられるのではないか。また4つ目、5つ目にありますが、医療機関に 関して一定の情報を都道府県に届け出をしていただいて、都道府県で集積をして、住民 に分かりやすく提供する。広告をしたいものだけの報告ではなくて、選択が必要なよう なものについては都道府県がまとめて公表して、選択するような仕組を作ることが考え られるのではないかということを整理しています。  関連して、参考資料1−3の10頁に、今国会に「介護保険法の改正案」を出していま すが、介護サービス事業者にはそういった規定が今回は置かれていることを紹介しま す。  24頁以降の資料1−8で、「患者の視点を尊重した医療提供体制の構築」ということ で、現状はどのような制度的な対応となっており、何が課題となり得るかを見ていただ くために、標準となる1981年の世界医師会のリスボン宣言の内容への、我が国における 取組状況を整理しました。25頁にありますようにリスボン宣言では11の項目がありま す。ほかにもいろいろと宣言がありますが、大体似たようなものであるのと、これがよ く取り上げられること、また、ほかの宣言はさらにこれを細分化したようなものだった ということで、これを例で取り上げました。リスボン宣言自体は別冊資料に付けていま すが、その中で主なものについて26頁以下に現在、我が国における取組状況はどうなっ ているか。医療法の第1条の2や第1条の4の条文が置かれていたり、個人情報保護法 ができた診療情報の提供等に関する支援でルールが定められている現状など、駆け足で 恐縮ですが各項目についての現状を整理しています。長くなりましたが、資料1の説明 は以上です。 ○部会長  どうもありがとうございました。ただいまのご説明あるいは資料1に関する質問も含 めて、ご自由に意見交換をお願いします。 ○土屋委員  まず、総論としてこの広告の規制について意見を申し上げます。医療法や医師法は本 来、規制法というか取締法です。なぜ、そういうことが必要であるか。これは国民の身 体、生命、健康を守らなければならないという前提に立って、こういう法律があるわけ です。したがって、これから議論されるのでしょうが、この広告の規制についても何で もありということは絶対にあり得ないと思います。ですから、いままでポジティブリス トなるものできた最大の理由はそこにある。未だ、その安全性・有効性が検証されてい ないものも含めて嘘、偽りでなければ何でもいいという考えに立つとするならば、医療 法、あるいは医師法も必要なくなるわけです。  我々は規制されるほうです。規制されるほうが規制してくれと言っているような話 で、我々自身が1つの内部矛盾を抱えているようになりますが、それは前段に申し上げ たそういう大前提があるからで、この法律を遵守するように指導、監督する立場にある お役所の皆さん方が、広告規制を無くし、何でも結構ですよと、みんなの意見だから同 意するとなれば、それは皆さんが職務を放棄してきたことになる。したがって、我々が 規制をもっと強化してくれ、ネガティブリストではいけないというのは、一に国民の生 命、身体、健康を守らなければならないということを我々が十分に理解し、納得してい ることを前提に、これを議論していただきたいと思います。 ○福島委員  2つほどお聞きしたいことがあります。まず全体としては、いまの土屋委員の何でも ありではまずいということは、まさしくそのとおりで賛成ですが、ここでいまから論議 していこうということは、何でもありにするかどうかという規制の範囲の問題ではなく て、広告規制のアプローチの仕方というか、どういう方式で規制していこうかという話 ですので、規制の内容の問題とやり方の問題、やり方の問題ですが、私はこう思いま す。  資料の全体を見てみると、いままでに比べて大変よく整理されてわかりやすくなって いると思います。ポジティブにしてもネガティブにしても、どういうアプローチ上の問 題があるかも非常によく整理されていて、極めてわかりやすくなっているのではないか と思います。規制の内容については突き詰めて考えると、どちらの方法からアプローチ しても問題にそう大差はないところまできている感じがします。したがって、私の考え 方でいうと、これまでどおり評価の方式や問題がないような評価制度ができるまで、ポ ジティブ方式のまま内容を拡大していくことには反対です。  8頁から11頁に今後検討していく問題もありますが、ポジティブ方式では技術的にも 限界がきて、リストが何頁にわたるかわからないところまできているのではないかと思 います。要するに、非常に問題がある内容についてはここの会議の中で議論をしていけ ばいいし、例えばそれは不安だけれども広告してもいいのではないかということで、大 体皆さんのお考えも一致しているところが多いもので、方式をネガティブにするといま の時点では何が問題か。まだ広告は危ないというところがあれば、それはここでどんど ん論議していけばいいと思うし、いろいろな条件整備ができるまで待つとなると、おそ らく3年後にも5年後にも、この辺の条件整備はどうしていくのだという論議をしてい くことになるのではないかという気がします。  若干問題があるのは、18頁に「ポジティブリスト方式とネガティブリスト方式の対応 で異なる部分」というところがありますが、例えば、具体的にこの辺は方式によってど うしても埋められない問題は、どういうものがあるのか。どのぐらいあるのかという量 的な問題もありますが、質的な問題と併せて教えていただければありがたいのと、前段 の基本の問題では、こういう認識ということです。以上、意見を申し上げました。 ○総務課長  福島委員のご質問ですが、ネガティブ方式にした上で問題があるものを個別に除外を していく、禁止をしていく方向が考えられるのではないかというご提案だと思います が、実は問題があるものというのは世の中にたくさんあって、それを予めどれが問題か をなかなかリストアップできないのが悩ましいところです。18頁の図をご覧いただきた いのですが、ご質問があった上から2段目の欄の「対応が異なる部分」でどういう例が あるかですが、先ほど企画官が17頁の”物質A”という例で申し上げました。この”物 質A”を例に取って申し上げますと、ネガティブリスト化した場合は”物質A”をただ 使っていますということであれば事実ですから、”物質A”は駄目よと除外をしない限 り、ネガティブリスト化した場合は全部セーフになると思います。世の中にはB、C、 Dもあるかもしれません。それがわからないではないか。ネガティブリストを否定する 考え方からすれば、そういう心配がある。  ”物質A”を使ったら、例えば病気が早く治るみたいな広告であれば、18頁の左側の いちばん下の欄、いわゆる「主観的判断」、根拠に基づかないような判断が伴いますか ら、そういうものは駄目だよと。主観を伴うようなものは駄目と書けば、多分ネガティ ブリストでも除外はできると思いますが、”物質A”をただ使っていますという広告が ネガティブリスト化によってすべてセーフになってしまう。ここをどう考えるべきか。 患者から見たときに、医療機関を選択する際に情報の幅がはるかに広がって、それはい いではないかと考えるか、その情報を信じて選択した結果、17頁の3の問題に掲げたよ うなことがでてきて、結果的に患者に問題が生じた。そのデメリットをどう考えるかと いう問題ではないかと理解しています。 ○福島委員  ありがとうございました。よくわかりました。それと全体に関連することですが、い まは国民、患者のほうもかなり情報はあるし、賢くなっていることが1つの前提でいろ いろと論議を進めればいい気がします。以上です。ありがとうございました。 ○渡辺委員  私は前回の会合で、基本的にはネガティブリスト方式に移行するのは望ましいのでは ないかという趣旨で申し上げましたが、土屋委員もおっしゃったように、基本的に医療 法あるいは医師法も規制法であることは私も賛成ですが、かといって100%規制のまま で今後は通用するとは思っていません。例えば、総理大臣の諮問機関の規制改革・民間 開放推進会議で出されている医療に関する規制緩和は、株式会社の問題にしても個人的 には反対だということはここでも申し上げました。  つまり、ああいった規制改革は1つの流れかもしれませんが、非常に危なっかしいも のを相当含んでいる。だからといって、医療の部分は規制を緩和すべきではないといっ たこともまた通用しないと考えています。これからポジティブリストからネガティブリ ストの移行に当たって、福島委員もおっしゃいましたが、どういう規制緩和をしていく のがよりよいのかといったことを、まさにこの医療部会で議論すべきであると考えてい ます。そういった意味で違った規制改革の姿を、特に医療の分野で、規制改革・民間開 放推進会議と違った規制改革の仕方をここで議論するべきだと思いますので、そういっ た意味ではネガティブリスト方式を否定すべきではない。その前提に立って、具体論を ここで議論すべきだと考えています。とりあえず以上です。 ○見城委員  伺いたいのは、ここではポジティブとネガティブの2つの中から選ぶということにな るのですか。基本のスタートがわかりませんとポジティブで問題点だけを出していっ て、それに関して守る規制の部分を入れてネガティブにすればいい方向でいきたいな ら、それなりにいろいろな意見が出てくると思います。これが1つ目です。  広告と情報のことで確認したいことは、利用者側としては情報が欲しいのです。情報 も広告も一緒にされると困ります。情報というのは客観的な事実で、欲しい情報です。 しかし広告というのは、広告主が自分のところをどうしても受け入れてもらおうという アピールですから表現も違ってきますし、全く情報と広告を一緒に論じていって規制の 話までされると本当に混乱すると思います。これが2つ目です。例えば広告と言われた ときに、コストが必ずかかるわけですから、利用者側、患者側としては結局そのコスト はどこへかかってくるかを考えます。ですから、最初にすべて情報を広告ありきという ことで始めると、結果としては利用者である患者側がその広告費をコスト負担していく 形になるわけです。それも踏まえた上での広告規制論議であってほしいと思います。  情報ということでは、先ほどの中に、例えばその地域の病院や診療所の情報が地域に まとまって情報が来て、地域から情報として発信される方式がありましたね。そういう ことには、非常に利用者としてはありがたいです。ですから広告が悪いのではなくて、 同時にシステムとして、そういった情報がその地域の人に情報として発信されるもの と、よりその情報には乗らない部分が広告としてどう出せるかを理解した上での論議を 進めるべきだと思います。 ○総務課長  全くそのとおりだと思います。広告規制についてネガかポジかということが前回の部 会からずっと大きな議論になっているものですから、そこから議論に入らせていただい ていますので、やや何か広告だけを議論している印象を与えているのかもしれません が、患者にどう質の高い情報をたくさん提供するかが大命題で、そのための手段として 1つは広告がある。これは、あくまでも医療機関がお金を使って任意に広告できるとい う世界の話です。2つ目はインターネットを代表にしますが、いわゆる広報です。これ は不特定多数の方に見せるのではなくて、患者のほうからアクセスをしてその情報に接 する意味で広告とは違います。しかし、医療機関がこれも任意にどういう情報をアクセ スしてきた患者に提供するかという意味では、同じ問題があります。これが最近、イン ターネットが普及していろいろと情報が氾濫をしているという、いい面もありますが問 題もあるのではないかという問題提起をしました。  3つ目は、情報開示という言い方がいいかどうかはわかりませんが、医療機関が情報 提供することについて任意ではなくて義務化というか、求めがあれば、求めている人に 対して開示をすることが大事ではないかと考えて、今回問題提起として出しています。 大きな流れとしては情報提供をいかに進めるかの中で、この3つについて具体的にどう いう対応をしていくかを是非ご議論いただきたいということです。 ○杉町委員  規制緩和ということが叫ばれて、ずいぶん時間が経ちますが、この広告についても広 告規制という言葉がいまの国民にはなかなか受け入れ難いというか、「また規制するの か」という印象を受けるでしょうから、おそらくこの会でも広告規制云々ということで はなくて、むしろどこまで情報提供をするかのポジティブなほうでのディスカッション をしていったら、非常にスムーズにいくのではないかと考えています。その中で特に私 が気になるのは、例えば私自身が胃がんになったとします。そうすると、この病院では 80%ぐらいで助かるだろう、この病院では50%だろうと。本当は、そういうアウトカム がほしいのですが、アウトカムを公表することはここにも書いてあるように、なかなか 問題があります。  しかし、現実的に国民あるいは病気になった場合にいちばん知りたいのは、アウトカ ムだろうと思います。ですからアウトカムも開示するのではなくて、その次の段階とし て病院に求めた場合にはその動向とか、2段階的な開示をしていただきたいと思いま す。誰でも見られるような開示ではなくて、どうしても知りたい人には自分が病気にな った場合には、それを教えてもらえるとか、そういうことがいちばん知りたい。本当に 病気になった方は、どこに懸ればいいか、どういう治療を受ければいいか、どういう手 術を受ければいいか、どこで受ければいいか、誰に受ければいいかが現実問題として国 民としては、病気になったときはそういうのをいちばん知りたいわけですから、そうい う情報も国民が希望すれば知ることができることも考えていただきたいです。 ○大橋委員  私は、見城委員が言ったことと同じで、広告と情報とは別個ということの回答を課長 からもらったわけですが、そのとおりで基本的には広告は医者がすべきではないと思っ ていますから、18頁の虚偽を含むもの、誇大なものはここでもちゃんとできているのだ から、広告はあまり必要ないのではないかと思います。  情報提供はいちばん大事なことだと思いますので、それを討論していただければと思 います。6頁に女性クリニックがありましたが、女性クリニックという問題はどうか。 これはいろいろ討議してもらい、私の主張として議会でも女医による相談診療をしても らいたいという意見が出ています。女性の議員からでしたが、更年期や何かで相談を受 けるのに男の先生では言えないところがある。是非、女医による診療科目を作ってほし い、相談診療科を作ってほしいという意見で、私もそうではないかと思っているし、こ ういうことは大事だと思います。ただ、女性クリニックという名前は男性がやるのでは 問題があるのではないかと感じています。以上です。 ○堀田委員  この問題を患者の立場から考えますが、患者としては情報は多ければ多いほどいい。 広告と情報提供といいますが、広告も情報提供の1つの方法であって、ただその情報を 出す動機が若干違うだけのことで、患者にとっては広告を見てまず大まかに振り分け、 さらに知りたいことについてその次の情報提供を求めていくことがよくあるわけですか ら、広告も基本的に情報提供の手段として考えるべきだろうと思います。そういう点か ら見ると、患者としては情報は多ければ多いほどいい。一方、広告ないし情報を出すほ うも自分のところがいいということを知らせたい動機があるわけで、これも可能な限り 知らせることができるような体制がいい。憲法を持ち出すのは議論が堅くなりますが、 表現の自由というのは本来は保証されていて、何を言ってもいい、それを制限するには 相当な理由がなければいけない。憲法に規定はありませんが「知る権利」というのがこ のごろ非常に強く言われていて、患者側からしても知りたいことをなるべく知ることが できる。そういうことを言ってはいけないという規制よりも、たくさん知ることができ るほうがいい。それがいちばん基本であろうと思います。  あとは、それをポジティブでやるかネガティブでやるかの問題で、これは規制の仕方 の問題になりますが、私は基本的に情報はたくさんあったほうがいいという観点から、 ネガティブリストのほうがいいだろう。もう1つネガティブリストが政策的にいい点 は、ネガティブにするためには、いまの表現の自由、知る権利を制限する理由、なぜこ れを規制するかという理由をいちいちはっきりつけていかなければいけない。だから、 国民の側から見ても、それならば制限してもいいということがいちいちわかるわけで す。そういう点で、規制の根拠がわかりやすい。そんな理由で、それを制限するのはお かしいのではないかという議論も十分することができる。  これをポジティブリストにすると、そこの議論ができないので、例えばいまの制度で すと女性とおっしゃいましたが、「婦人科」と言わなければいけない。「女性科」と言 ってはいけないことになっている。これは行政苦情救済推進会議でも議論しましたが、 なぜ女性科と言ったらいけないのか。多くの患者は婦人科というと非常に入りにくいけ れども、女性科というと入りやすいので、是非女性科にしてほしいと言っているのに、 それは駄目だという。しかし、その駄目だという積極的根拠はそこでは出てこないので す。なぜ出てこないかというとポジティブリストだから、ともかくポジティブで入って いないのは全部駄目だから駄目だという理屈しか立たない。  そうすると、それはポジティブにしてもいいのに理由がないのに制限されてしまって いることになる。それでは変えてもらおうと思って、例えば女性クリニックをOKと言 ってもらおうと思ったらいちいち大議論をして、そしてここの医事課に持ち込んで医事 課でまたいちいちやられて、いいとか悪いとかにされる。そういう事項が山ほどあって 医事課もとても持たないだろうと思うし、そんなにたくさんのことを禁止しておく合理 的な理由がない。だからこの際ネガティブリストにして、なぜ規制するかを明白にし て、それによってその規制が正しいかどうかをしっかり見極めて、正しいもののみ残し ていく。今後とも、そういうやり方をするのが規制の実情にも合っている、国民にもわ かりやすいことになるのではないかと思います。 ○三上委員  医療に関する広告規制について、ポジティブかネガティブかが問題になるのは、1つ は先ほど福島委員が言われましたが利用者、患者側が非常に賢くなってきたので、自分 で判断できるのではないか。だから全部情報を出せばいいのではないかということだっ たのですが、医療に関することに規制が必要であるということは、情報に非対称性がい つまでも付きまとうものである。医師自身が考える場合と医師でない人たちが見た場合 とで、判断の仕方が全く違う。そしてその情報が間違えば命に関わるものであるという ことで、その規制が必要なのだと。ポジティブリストが優れているのは、ポジティブリ ストで広告できない事項があったとしても、それはそれほど罪が深くないわけですが、 ネガティブリストでこれは駄目だということを決めるまでは原則OKなわけです。そう なると、不都合な情報は何か不都合の事態が起こるまで、ずっと野放しになった状態で ある。これが起こってからネガティブリスト方式で規制をしていくのは、国としても非 常に無責任ではないかと思います。広告は一応顧客誘引のために、患者にたくさん来て もらいたいということが動機となって出されるものですから、広告の中の情報は、ある 程度事前にチェックをされて、精度が担保されていなくてはならないわけです。  が、一方広報は、インターネット等で流す情報については知りたい情報、患者は当然 いろいろなことを知りたいと思ってホームページにアクセスしたり、電話で聞いたり、 直接伺ったりなどして聞くわけですが、その場合にはネガティブリスト方式で、個別の 問題ですし、それはいわゆる公の機関、あるいは一定の基準でチェックされたものでは ないもの、直接話を聞いたが、これは絶対に正しいかどうかまだわからない、虚偽かも しれないけれど、そういったものを聞く。それを実際に担保するには、先ほど情報の非 対象性と言いましたが、専門家に聞いてもらうというのがいちばんいい方法で、我々が いつも言っている「かかりつけ医に聞いてください。そこで情報を担保してください」 というようなことを申し上げているわけで、ネガティブリストで何か事があってからチ ェックをすればいいというのは、医療に携わる者としては非常に無責任ではないかと感 じております。 ○龍井委員  まず規制の在り方について、いくつか前提の要件の議論がもう少し必要かなと思いま す。それは、情報提供にしろ広告にしろ、得てして我々患者側の知りたい情報と、先ほ どアピールと言われましたが、発信をしたい情報が1対1に重なればハッピーなわけで すが、そうでないこともあり得るという意味では、もしもこういう具体的なリストの話 になっていくとすれば、患者がどういう情報を求めているのか、これはアンケートで取 ればというような簡単なものではないのですが、そういう把握の作業が必要であり、こ れは議論の前提条件として持っています。  もう1つは、リストの是非という境界線の話は、提案されていますようにネガティブ リストにした上で段階的にしていくと考えた場合に、いまご指摘があったようなフォロ ーアップやチェックの体制をどれだけ整備していけるかということと、たぶんセットに なってくるのだろうと思うのです。そうなると、例えばアウトカムの情報のところで提 起されている12頁の考えられる対応で、「かかりつけ医に相談し、あるいは第三者によ る評価の仕組が講じられたものから」というのが、本当に実行性あるものになっている のか、あるいはなる施策ができるのかということが、これはお聞きしたいと思います し、関連して19頁の考えられる対応の、「患者及びその家族からの相談や苦情を受ける 体制整備」、これが本当に、いまそれに対応するものが機能しているのか。医療安全支 援センターなどもありますが、これが本当に苦情からそのフォローアップまで、場合に よったらそれは被害者救済までいけるような仕組になっているかどうか。やはりそこと の関連というか、セットでこの問題を論じる必要があるのかなと思っています。  もう1点、広報の論議の中で、22頁に「ガイドライン」という提起がされています。 先ほど申し上げた情報のニーズが違うという中で、どういうふうに示していくかという ことはとても重要な提起だと思っています。ただここで、今日の議論でもそうですが、 規制ということと自主ということが、どうも対比的に言われているように見えますし、 「国の一定の関与」という言い方も私どもは少し曖昧だと受け止めています。これは医 師会の皆さんのお考えがあったらあとで教えていただきたいのですが、私は「業界ルー ル」というのがあり得ると思っているのです。ですから規制といっても自主規制であ る。だからこういうものについては、あってはならないし、お互いにそれはチェックし あっていくということです。例えばそういう努力について、もしもここで国の関与とい うことがあるとすれば、そういう意味でのバックアップなり、支援なりをしていくとい うことであれば、あり得るのかなと思っています。ですからそういう、穴をもう1つこ じ開けるような方向の提起を前向きにしていただければと。これは私どもの希望です。 ○部会長  いまのご意見には家族からの相談とか、そういうことに対する体制整備がどうなって いるかという質問を含んでいましたね。お答えはできますか。 ○龍井委員  支援センターと関係するのでしょうか。 ○総務課長  12頁のアウトカム情報の所の「かかりつけ医」については私ども、医療提供体制の行 政を進めていく上で、この普及を図るということで日ごろから心掛けているつもりです し、診療報酬などでもそうした評価をしていると考えております。ただ、十分かどう か、国民一人ひとりが必ずかかりつけ医を持っている状況にあるかと言われたら、それ はまだだいぶいっていないなと。これは私の個人的な感想かもしれませんがそう思いま す。しかし基本はやはり、かかりつけ医を持ってもらうことが大事ではないかと厚生労 働省としては考えております。  その次の(2)の「仕組」の所は、例えばクリニカルインディケーターと言います か、生存率とか死亡率といったアウトカム、結果だけを見てしまった場合、12頁の1の (1)、(2)のような問題が出てくるということで、そこを例えば患者の重症度とかそうい うものを評価、分析しながら客観的な情報として、患者の皆さんに受け止めてもらえる ような手法があるということですが、残念ながらまだ研究段階と言いますか、トライア ルの段階で、一定の成果までは生んでいませんが、国立病院機構においてそうした取組 が現に行われていますし、私どもでも、厚生科学研究費の補助金でも補助して取り組ん でもらっている段階にありますので、今後ともそういったものを積極的に進めて成果を 出していきたいと考えております。  患者の相談とか苦情の所は、委員のほうからもちょっとありましたように医療安全支 援センターというのを、いま各都道府県ごとに設置しておりますし、今度はそれを二次 医療圏ごとにも広げていきたいと考えておりまして、1つは、そういうものをより機能 強化していくということではないかと思います 。医療安全支援センターはもともと医 療事故等の相談というようなことでスタートしたのですが、実際の相談は、聞くところ によると例えば医療機関の情報、どこの医療機関はどうだとか、あるいは医療の内容に ついての質問とか、そういうのが非常に多くなっているそうで、そういう意味ではまさ にここにあるような、体制整備の1つの手段としては使えるのではないか。あるいはそ れ以外の方法もあろうかと思いますので、是非委員の先生からも具体的な提案をお願い したいと考えております。 ○佐伯委員  先ほど、国民が少し賢くなってきている、けれども情報の差は非対称であると。だか らこそその支援センターとかいろいろなことが必要なわけですね。もうすでに透明性や 説明責任に背を向けていくことはできないわけですから、すべて持っているもの、これ だけできます、これはできませんということを予め出していただかないと、こちらはか かりつけ医を選ぶことすらできないのです。かかる前に選んでおきたいという気があり ます。一度かかってしまうとなかなかそこを替えたりということはできませんので、是 非それはきちんと出していただいて、かかった上でまたさらに深くあるいは、そこで分 からなかったら別の所に行ってというような、何段構えかでもいいのですが、利用者保 護とかいろいろな言葉が空洞化しないように、是非、誰のための医療ということをきち んと考えてやっていただきたいと思います。 ○松井委員  広告規制の問題と情報提供の問題とは別だという整理になっていますが、堀田委員が おっしゃられたように、広告の問題もやはり情報提供の重要な手段の1つであろうと思 っております。いわゆる患者の立場に立ちますと、こういう情報提供の範囲は広ければ 広いほどいいと考えています。現行のポジティブリストの方式に対してどのようなもの が追加されるのかというこの資料を見ますと、そういうものをいちいち立派な先生方を 集めてリストアップしていくことが、いまの情報化が早く進展している中で本当に機能 し得るのか、その点は私としては大変疑問に感じています。したがってネガティブリス ト方式として、本当にやってはいけないことを明確にして、その中で進めていくことが 重要なのではないかと思っています。  これは後段で議論する医療計画の在り方とも関係してくると思いますが、患者の立場 に立てば、どこにどういう診療科があって、そういう所での実績はどのようになってい るのかは大変知りたい情報ですので、それがきちんと進められる仕組も合あわせて考え ていただければと思っております。  広告の仕組の中では、例えば、資料では高度な医療機器を導入していることが必要以 上の競争を惹起する、というような書き方がされていますが、具体的にどこどこのこう いう機械も入っているよとかいうことは、患者としては、そのような機器があるならあ る程度大丈夫だろうという安心感にもつながります。それが無駄な診療検査につながる ということではなくて、情報は医療機関から積極的に出してもらえる方がよい。そして もし、エビデンスが十分でないものは出せない、いわゆるアウトカムがなかなか出せな いというようなお話がありましたが、アメリカなどではすでに十分行われていますの で、そういう研究を早めに進めていただいて、情報を積極的に出していただくようにお 願いしたいと思います。以上です。 ○部会長  古橋委員に先に。もう1つでおしまいにしたいと思います。 ○古橋委員  広告の規制緩和のことを考えますと、不特定多数の方々に目と耳から、好むと好まざ るにかかわらず入ってくるとされる広告も、やはり情報の1つだと思います。先ほど龍 井委員からもありましたが、この問題はやはり利用者にとってどんな情報が必要かとい うこと、根幹的にそこをしっかり固め、整理をしておくことが大事だという気がしてな りません。例えば、私どもの病院では患者さんから、待ち時間はどのくらいですかとい うようなことも必要情報として聞かれますし、医療相談室は公正中立に相談にのってく れるのですかとか、そういうようなことも尋ねられるわけです。やはり患者の側からす れば治療成績や治療方法、その種類とか、その医療機関の安全性、総論的で恐縮です が、安心で誠実な対応がなされて、サービス性に富んでいるか。そういうようなことが 知りたい情報だろうと思うのです。そういう点ではやはり改めて患者、利用者側が必要 としている情報は何かを、もうちょっと洗い直す作業がいると思います。  現行の、このポジティブリストと言われながらなされている広告は、本当に患者の役 に立っているかというと、例えば、施設基準を表示しなさいという義務があります。そ れはどんな病院にも出されていますが、あれはほとんどの患者さん方には難解すぎてわ かりません。今日いただいた資料でも、硬直性とか分かりにくさという点があります が、そういう点では分かりやすい広告、病院・医療機関にとっても分かりやすい広告に 向け、限りなく緩和されていく必要があるのではないかと思います。  現行の事態の中では、かなり乱れてきているのではないでしょうか。医療機関だって 新しいものが導入されれば地域の新聞に、お金を払って記事にして載せていくというよ うなこともありますし、いろいろな点でこの情報提供、広告も含めた情報はかなり、規 制があとから追っかけるぐらいに広がってきてしまっている。そういう点では、出して はならない広告というのを明らかにしておくこと。それは数多くなるかもしれません が、その発想のほうが、患者、国民に応えることになると考えます。いままでのように 小出しにしながら扉を少しずつ開けていくという手法では、国民のニーズに対応してい けないのではないかと思っております。 ○部会長  短くお願いします。 ○三上委員  患者がたくさんの情報を知りたいというのはよくわかっていますし、おっしゃるとお りだと思います。インターネットでは情報が氾濫した状態で、どれが正しい情報かもわ からないというようなことなんですが、現在広告できる事項というのは参考資料1−1 に書いてありますように、かなりたくさんポジティブとしてリストアップはされている わけです。皆さんのお話を聞くと知りたい情報というのは、おそらくアウトカムに関す るものがいちばん大きいだろうということです。これはまだ、現在の日本の状況では担 保できない、研究中だということで、我々もポジティブリストとして、広告できる範囲 の拡大ということを早急にやるべきだとは思っていますが、この部分については是非か かりつけ医を利用していただいて、どこの病院がいいのか、どの先生にかかったらいい のかというような情報はかかりつけ医の先生、あるいは医師会の窓口、厚生労働省の窓 口等で聞いていただいたらと思っております。 ○小山田委員  この前の、平成14年のこの同じ部会で同様の議論があったときに、私は医療を受ける 側として、何がほしいのか全部書いてほしいと言って全部提出していただいたのです が、それは全部あります、すべての情報ですね。経歴から、経営状況までも知りたい。 その中で私ども医療をする側が、こぞってこれだけは駄目だというのが、このアウトカ ムについてであったのです。ところがいまもそれは、先ほどから言われているような理 由で広告はまだできる段階ではない。ですが情報の場合に、インターネットの場合に、 これも関わることですが、実際はどうしているかと言いますと、私の病院に来ますと、 例えば、「胃がん」だったら何例やっていますか、そしてどのくらい死んでいますか。 私は心臓ですが、この「弁膜症」で何例やっていますか、何例死んでいますかと。必ず 教えます。そうでなければその患者さんは安心しないのです。しかしそれをインターネ ットでやっていいかどうかとなると、これは病院間とか、いろいろな問題が出てきて難 しいのですが、現実には個々に、信頼する患者のために全部教えているのです。ただ、 これをオープンにしていいかどうかということが、いま問題だと私は考えています。以 上です。 ○山本(信)委員  情報と広告を分けるということについて私も賛成です。そうは言いながらも正しい情 報と、消費者あるいは患者がそれを見て正しく判断できるような、より多くの情報が出 されるということももちろん必要だと思います。ただ、その一方で、少し診療情報と離 れてしまうのですが、これからの情報化を考えますと、やはりインターネットのことを 無視するわけにいかない。先回の議論でも、インターネットに使う情報をどうするかと いう議論がずいぶんあったと思うのですが、例えば、インターネット上での「医薬品の 売られ方」を見ていますと、かなり乱暴なということがあります。したがって、医療提 供体制の中での医薬品をどうするかという議論がこのあと出てくるわけですが、そうし た中での考え方としては、ガリガリと縛ってしまうのは問題があろうと思いますし、ポ ジティブかネガティブかという議論はもちろん大切です。この22頁を見ますと、前回も そうでした。インターネットにアクセスするほうの問題なので、広く知られるものでは ないからあまり規制することはないのではないか、というようなご意見があったように 記憶しているのですが、それではやはりまずいのではないか。個人が意志を持ってそこ にアクセスするにせよ、やはりそこに出される情報については、どの程度まで公表すべ きか、あるいは書くべきかについて一定の規制をすべきではないかと考えます。 ○部会長代理  意見をたくさん伺っていますと、その、立場立場でポジティブから入るかネガティブ から入るか、しかし本質は一緒のようなことをおっしゃっておられるのだと思うのです ね。ポジティブでもこの5頁、6頁にあるような問題があって変えなくてはいけない、 ネガティブでも何らかの規制を。そこで先ほども出ていましたように、ポジティブ、ネ ガティブの入る議論はもうやめて、医療広告の在り方ということで大きな虚偽、誇大、 エビデンスのないもの、患者を誘うようなもの、そういったものの枠を、医療広告の在 り方としてまとめていただくことになったらいいのではないかと思うのです。そのポジ ティブ、ネガティブという形を、以前の法律があるからそれを変える必要が出てくるの ですね。そのあたり、いまはポジティブになっていますね。そのポジティブの法律を変 えて、ネガティブもポジティブもなくて、新しい医療広告の在り方とするのは大変難し い作業なのでしょうか。 ○総務課長  先ほど言いましたようにポジであってもネガであっても、これは広告してはいけない というものがあるはずなのです。皆さんもそれはちゃんと規制すべきだと。そのとき に、どの範囲を駄目だというのかというところの議論が意味のある議論であり、そこを 議論しなくてはいけないのだと思うのですが。 ○部会長代理  旧法律をやめることはできるのでしょう。ポジティブできているやり方の規制を中止 して、新しい広告規制にすることは。 ○総務課長  要するに規制の仕方の話で、条文の書き方の問題なのです。だからおっしゃるよう に、何を認めて何を認めないのかという実態的な議論がまずあって、それを法律上担保 するためにはネガティブな書き方のほうがいいのか、ポジティブな書き方がいいのか、 どちらのほうが適切なのかという議論だろうと思うのです。ですから何が駄目かという 議論をしてもらわないと、どちらがいいかという判断はできないという、簡単に言えば そういうことだと思います。 ○部会長  すみません。もう1つ議題があります。いろいろご意見を頂戴して、委員の間で概ね 方向性が 一致している論点と、まだ意見が非常に分かれている論点がありますが、こ れについてはまた改めて事務局のほうで論点整理をしていただいて、もう一度議論する 機会を設けていただきたいと思いますが、よろしいですか。 ○見城委員  いままで出てこなかったことで。放送に関して、例えば広告とかいろいろあったと き、精査していく方法はいろいろあるのですが、この医療機関に関して、それはどのよ うなことがあるかということも是非論点の中に入れてください。BRCというのです が、放送の場合、例えば、子どもに見せてはいけないような広告がこういう時間帯に流 れているというような聴取者からの意見を論議して、精査して、例えばテレビ局や制作 者を呼んで、そういうものを改めていくというようなそういう機関が、全く国ではなく てあるのです。放送と青少年に関する委員会とか、人権に関する委員会。そういう感じ でこの病院に関する広告も、例えば、医道審議会にそういうものが持ち込まれるのか。 非常に人を傷つけるものがあった場合には、それは医道審議会のほうから行政処分がく るのか。広告をどうするかということの中にそういうものを入れてください。国がやる のではなく別な機関として。チェック機構ですね。これを是非一緒にお願いします。 ○部会長  ありがとうございました。それでは次に医療計画という議題に入らせていただきま す。まず事務局から資料2「医療計画について」の説明をお願いします。 ○指導課長  資料2は大きく資料2−1と資料2−2に分かれています。1頁は、資料2−1の1 頁から25頁までのエッセンスを簡単に1枚にまとめたもので、そこから入らせていただ きたいと思います。  「平成18年の医療制度改革を念頭においた医療計画の見直しの方向性」というタイト ルですが、私どもの今回の医療計画の見直しのねらいを非常に平たく言うと、ここに書 いてあるような形で考えております。すなわち、住民にとって、自分が住んでいる地域 の個々の医療機関で、現在どういった診療が行われていて、自分が仮に病気になったと きにどのようなレベルの治療が受けられ、どのように日常生活に復帰できていけるか。 また、その地域全体の保健医療提供体制の現在の姿はどうなっていて、将来の姿はどの ように変わっていくのだろうか。また、変わるためには具体的にどのような改善策が必 要なのだろうかということを、今後、都道府県が作成する医療計画において、住民や患 者の視点に立ってわかりやすく示していただく。これが狙いではなかろうかと考えてお ります。  そのために、新たな医療計画に盛り込むべきではないかと考えている内容として、都 道府県は、原則として、ここでは日常医療圏と書いてありますが、我々のイメージの中 では現実の二次医療圏とかなりダブるエリアとしてとらえております。二次医療圏とい う言葉があまりよろしくないという意見がありましたので、仮に日常医療圏という言葉 を使っていますが、実際には二次医療圏とほとんどオーバーラップするとご理解いただ ければと思います。その中で、保健医療福祉サービスが完結できるように主要な疾病ご とに診療ネットワークを構築することによって、その地域の医療機関相互の連携という ことを前提にしながら、急性期から回復期、また在宅療養に至るまでの適切なサービス が切れ目なく提供できるようにするために、期待される保健医療提供体制水準の数値目 標とか、その達成のための具体的方策といったものを、医療計画において明らかにして いただきたいと考えているわけです。  その際に国が行う支援ということで考えていくと、都道府県が医療計画を作ったり実 施したり、また評価を円滑に確実に行うことができるように、国として以下のことをす べきではないかと考えているわけです。第1に、県が医療計画を作成するために、現在 の医療水準を示す各種のデータというのがどうしても必要になってくる。そのデータベ ース構築のために、国として全国の医療機能調査をしたり、その結果を公表したりとい うプロセスがまず必要だろう。2番目は、県のほうで数値目標を立てるに際しても、ど ういう指標を基にすればいいのだろうか。県ごとにバラバラでやると確かに困ると思い ますので、国として、県が考える際の共通指標みたいなものもお示しする必要があるの ではないかということも考えております。3つ目として、県のほうで計画どおりちゃん と進めているのだろうか、効果は上がっているのかということを見るために、客観的な 評価の物差しといったものを国のほうでちゃんと持った上で、各種の財政的支援を都道 府県に対して行うべきではなかろうかというのが基本です。こういったことの中身を2 頁以降に細かく記載しております。  2頁は、理念の焼き直しみたいなもので恐縮ですが、「方向性」という形で、このペ ーパーのベースとして基本的に、厚生労働省で平成15年8月に出した「今後の医療提供 体制の在り方ビジョン」の中の柱を置いているとご理解いただきたいと思います。まず (1)として、住民・患者に分かりやすい保健医療提供体制を実現していこうというこ とで、それを具体的に言えば、主要な疾病又は事業。がん、脳卒中、小児救急とか書い てありますが、こういったものについてどのような対策が講じられているのか、住民・ 患者に分かりやすいものとしてその内容を明らかにするとともに、提供者と住民双方が 情報を共有して、客観的に評価できるような方法を検討すべきではないか。都道府県が 主要な疾病ごとに、医療機関の連携による診療ネットワークが構築できるように改革し ていこう、というように考えているわけです。  (2)として、質が高く効率的で検証可能な提供体制の構築。それはとりもなおさ ず、数値目標と評価の導入による実効ある医療計画ということになるのですが、計画の 作成から実施にいたる一連の政策の流れを、1つ目として疾病ごとの医療機能の把握。 2つ目として適切な提供体制の明示、これは数値目標の設定のことです。3つ目として 医療計画の立案。4つ目として見直し。一連の流れという形にちゃんとビルドアップで きるようにしていくべきではないかということです。要するに、抽象的で作りっ放しと いうことのないようにしていこうということです。(3)として、都道府県が自主性・ 裁量性を発揮することによる地域に適した保健医療提供体制の確立ということですが、 これは日常医療圏における医療機能の把握とか、各医療機関の医療機能の内容に関する 住民への情報提供といったことを行う上で、医療計画の作成・実施にあたって、都道府 県の役割をもう少し強化してもいいのではないかと考えていまして、国はそういった都 道府県の新しい役割を支援するために制度上、もしくは財政上の支援を実施していこう ということです。  下のほうに書いてある基準病床数制度というのも、医療計画のこれまでの大きな柱で した。これは専ら量的な規制ということで、実は、これがほとんどであるというように 誤解を受けていたのですが、本来はそうではなくて、いままで申し上げてきたような質 的な充足、こういったものも医療計画ではものすごく大事な側面ですので、本当はこち らのほうをもっとしっかりやっていこうというのが今回の改正の趣旨だとご理解いただ きたいと思います。ただ、病床規制も現時点ではまだ、効果としては必要だろうと思っ ていますので、今後、医療計画の見直し等に関する検討会という場で、この辺の問題に ついては議論していただくことになりますが、現時点では、事務局としては必要なもの ではないかと考えているところです。  1枚めくってください。これまで申し上げてきたその方向性ということを受けて、具 体的な手順として県が医療計画を作成するとしても、国として提供体制の全国ビジョン を示さないと、県ごとにバラバラだというようなことでは確かに困りますので、一定の 枠を設けるという意味で、国が提供体制のビジョンというのをまず作らせていただい て、それを提示しようというのがこのペーパーです。  下のほうからいきますが、国として、全国規模の主要な疾病ごとの医療機能調査の実 施を考えております。それによって主要な疾病ごとに必要な医療機能というのが明らか になりますので、その結果として、いちばん下に書いていますが、客観的なデータに基 づく保健医療提供体制の構築ということに結びつくのではないかと考えているわけで す。そういう調査をして、その結果を明らかにするというプロセスを経て、次は、主要 な疾病ごとにその指標を提示していかなくてはいけないのではないか。都道府県が自分 の県の医療資源を把握しやすいように、国が調査に基づいた全国共通の指標を提示させ ていただく。その調査、指標によって全国状況は把握できるので、それを踏まえて国と して望むべきというか、今後日本として求めていくべきビジョンを示していこうという ことです。例えば、「がん」ならその罹患率と死亡率を激減させようとか、「脳卒中」 なら健康増進、予防、入院治療から在宅復帰までの医療を日常医療圏に構築することと か、極めて理念的ではありますが、少なくともビジョンを示していくことを国としてや らせていただきたい。それを踏まえて次の頁。都道府県のほうでいよいよ医療計画の策 定に入っていただきたいということです。  今度は都道府県ごとに、自分たちの県における医療機能調査をやっていただく、とい うことがまずスタート地点にあります。その調査結果を基にして、都道府県が日常医療 圏ごとに必要な医療資源を把握して、主要な疾病ごとの診療ネットワークを構築してい ただけるのではないか。さらにそういうことを踏まえて、県独自の目標値を立てていた だくことが可能になるのではないか。例えば、「がん」について言えば死亡率を何パー セント自分の県は改善しましょうとか、「脳卒中」について言えば在宅復帰率を何パー セント増加させましょうとか、何でもよろしいと思うのですが、そういったものを県独 自で考えて立てていただけないだろうかということです。そういうことによって、医療 機構の中で実際に効率的な医療提供体制の構築が可能になるのではないかと考えている ところです。  5頁は、2頁から4頁まで述べてきたことをざっとまとめた頁で、(1)から(5) まで書いてあります。(1)、国として提供体制のビジョンをまず示して、都道府県が 当該日常医療圏に必要な医療資源を把握できるように、患者の疾病動向等に関する共通 の指標も提示させていただく。(2)、都道府県はそれを踏まえて指標を基に医療ニー ズと既に有する医療資源を把握して、状況を公表し、あわせて数値目標を医療計画に明 示していただけないか。(3)、県は達成に向けた具体的な方策を医療計画で立案し、 住民に公表していただく。(4)、国は県が作った計画等を勘案して、客観的な基準に 沿って県に対する各種支援を実施していってはどうか。(5)、それをフィードバック して、それが見直しのときに役に立つのではないか。下は、申し上げてきたようなこと を表しただけですので省略します。  6頁は、若干切り口を変えて行政という視点から見た場合、今回の見直しで何がどう 変わるのかということを示したペーパーです。基本的に、タイトルの2行目に書いてあ りますが、都道府県の裁量性の向上と国による支援の2つを両立させようということ を、行政の視点ということから考えておりまして、左側に、現行の国と都道府県の関係 が書いてありますが、医療法の第30条の4で、大臣は、県が医療計画を作成する際に必 要な助言をすることができると書いてあります。ですからやってやれなくはない。いく らでもできるのですが、残念ながら理念的な面から考えて、国の役割の1つの課題とい う形で問題点も指摘されています。例えば、国の責務に対する具体的な役割というのが 不明確であるというようなことも指摘されています。したがって、その下に書いてあり ますが、国の基本的な政策を法律上明確にする必要があるのではないかという指摘もあ ります。そういう意味からすると、今後はやはり法律上で明確な位置づけをちゃんとし た上で、透明性の高い客観的な政策誘導を行うべきではないかという考えが1つ出てき ているわけです。  具体的に申しますとその下ですが、医療計画について言えば、主な疾病ごとに医療機 能が明示されていない、住民の方々に対して中長期的な目標と手順を示したものになっ ていない、住民の方が評価できるようになっていない、というようなことが具体的に考 えられますので、そういったことを踏まえて、右側の方ですが、まず国と県の関係で言 えば、国のほうでは大臣が法律の中で基本的な方針を定めて、これは国が示すビジョン のことだとお考えいただいていいかもしれません。こういったことを踏まえた上で、都 道府県が医療計画を定めて、その中で都道府県の役割というのが、(1)から(3)まで書い てありますが、具体的な数値目標の設定と政策評価によって、実行性・透明性の高い医 療提供体制の構築が期待できるのではないかということ。(2)に書いてありますが、医 療機能の分化・連携を通じた効率的で良質な保健医療提供体制が構築できるだろうとい うこと。さらに、今後三位一体改革で、補助金が交付金とか統合補助金になりますの で、そういったものを通じて、都道府県の裁量性というものを今後発揮していただける のではないかと考えているところです。  具体的なことについて申しますと、先ほどから申し上げた主要な疾病ごとの医療機能 についての状況把握、提供体制の量的・質的な数値目標の設定、達成状況に係る政策評 価の実施といったようなことについて、かなり具体的な成果を上げられるのではないか と考えているところです。  次の頁には、例えば「がん」を念頭に置いた場合の、医療提供体制の実現に関する国 と県の役割のイメージを書いております。いちばん下に、例えば国のほうで示すがんに 係るビジョン、これは「健康フロンティア戦略に基づくがんに係る国のビジョン」とい うことで明示しておりますが、こういったものをちゃんとお示しをした上で、がんとい う病気を考えてみますと、検診というような予防の段階、治療の段階、治療後のリハビ リの段階などいろいろなフェーズがありますので、それぞれのフェーズに応じたさまざ まな指標、クリニカルインディケーターと言っていいのかもしれませんが、そういった ものが考えられますので、国としてできるだけそういったものを都道府県、国民の皆さ んにお示しをして、その中で、県のほうで必要な指標をちゃんとピックアップしていた だいて、都道府県に見合った形でそれを使うことによって、都道府県が医療計画の中で それぞれ適切な数値目標を定めていただけるのではないか。例えば県民のがんの死亡率 を何パーセント改善しよう、という形に目標を定めていただいても結構ですが、その際 にさまざまな指標を使っていただければいいのではないかと考えているところです。  8頁にいって左のほうですが、基本的に住民の方が求める医療提供体制という視点か らは、やはり予防と早期発見の推進ということが求められるでしょうし、地域の医療機 能が主要な疾病ごとにわかりやすく把握できること、ということがリクエストとしてあ るでしょうしという視点から、今後医療機関に求める役割とか、国が目指すべき提供体 制ということも少し書いてあります。そういったものを総合的に踏まえて、真ん中の所 ですが、ある県におけるがんに関する提供体制の制度面と財政面の推進方策として、1 番の「制度面」の支援であれば、がん診療の、ここには拠点と書いてありますが別に拠 点という意味にはこだわっていませんで、核となるというか、中心的になるというか、 どちらでも結構です。そういった医療機関を日常医療圏ごとに指定して、ネットワーク として中心的な役割を持っていただくようなことができないだろうか。医療機関におい てがんの検診・診療・介護ネットワークというのをはっきり書いていただくというこ と。県のレベルで、自分たちの県はこういうことをちゃんとやりたいということで、そ ういうことに賛同し協力していただけるような医療機関、医療法人を中心とした診療グ ループを構築していただくということも、あり得るのではないかということを考えてお りまして、それを制度的に仕組めないだろうかということ。  「財政的な面」からすると、国が示す指標に基づいた質の高い提供体制を構築すると いうことで、国のお金も使っていただくということです。次に、同じようなことを書い ていますが、指標に基づいた透明性の高い基準による各種支援とか、評価によって行政 の政策を見直すことなど、こういったことはすべて交付金、統合補助金という新しい仕 組の財政支援の中でサポートできないだろうか、というようなことを考えているわけで す。その結果としていちばん右、県にとって望ましい将来の姿というのが、具体的な形 で明らかになってくるのではないかと考えているところです。  9頁は参考です。悪性新生物による死亡率と言っても、各県でこれだけ格差がありま すので、各県ではこういった資料も参考にしながら、自分たちはどれだけの目標を持て ばいいのかというようなことを、これまで申し上げてきたツールと言いますか、考え方 の下に、それぞれの医療機関の中で目標値を立てていただければいいのではないかと考 えているところです。以下脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、小児救急を含む小児医療といっ たようなものを例示しておりますが、時間の関係で省略させていただきます。  22頁以降は、医療計画を見直すその目玉である診療ネットワークのイメージを書いて おります。左側が現行のイメージで、現状の医療提供体制の課題として、医療機関それ ぞれがどのような医療機能を持っているのか、なかなか住民の方に分かりにくいという こととか、どうも医療機関の方々は、すべての疾病に対応した医療資源を持たなくては いけないと考えがちだと思います。これが医療機関にとってもかなり負担になっている のも事実ですので、限りある医療資源の有効利用、確かに非効率という面もありますの で、この点が課題だという指摘、あるいは(3)として、専門医が不足して、結局1人 の医師にかかる労働の負荷が課題になっているということも指摘されております。  右側にいきまして、こういったことを今後の話として、これは都道府県の役割強化と いうことが前提になりますが、基本的に疾病ごとに診療のネットワークというのを、医 療機関の連携の下に構築していただいて、先ほど申し上げた課題に対応という形を取っ ていただけないかということです。これによって医療計画で、主要な疾病ごとに医療機 関が有する医療機能が一元的に分かるだろうということとか、重点的に強化すべき医療 機能というのが明確になるだろうとか、医療機関の専門性が高まって専門医の獲得、医 療の質の向上に寄与するだろうというようなことが、期待されるのではないかと考えて いるところです。  23頁以降は、疾病ごとと言いますか、そういったもののネットワークのイメージで す。「脳卒中」で申しますと、普段は健康管理も含めてかかりつけ医にかかっていると 思いますが、一旦発症すると急性期の処置をしなくてはいけないので、地域の核となる 病院に入院するというようなことが一般的だろうと思います。その後、退院する場合も あるかもしれませんが、多くはリハビリが必要ですので、リハビリ病院に移っていただ くこともあるかもしれません。慢性期になれば療養病床の医療機関に移るということも あるかもしれません。そういった医療機関が機能別にとにかく連携を持って、いわば地 域的なクリティカルパス、病院ごとのクリティカルパスではなくて、地域ごとのクリテ ィカルパスといったものを形成していただけるような、そういうネットワークが組めな いだろうかというようなイメージです。「小児救急」は若干違いますが、基本的な考え 方は同じようなものです。  最後に25頁は、県の医療計画の制度を今後、財政的にどのようにサポートするかとい う視点での資料で、交付金、統合補助金といったものを使ってうまくできないかという ことです。詳細はここに書いてあるとおりですので省略します。後ほどご覧いただけれ ばと思います。  続いて資料2−2に移って26頁。現行の医療計画制度において、どうしてもこれだけ は記載しなくてはいけないというものが、「医療法」にも規定されていまして、それが 26頁と27頁の上3分1ぐらいに書いてあるものです。項目として8つぐらいあります。 これだけでは今後の医療提供体制をはっきりさせるという意味ではまずかろうというこ とで、「医療計画の見直しに関する検討会」のほうでもご議論いただいていますが、27 頁以降、さまざまな項目についてご意見をいただいているところです。こういったもの についてまた今後ご議論を進めさせていただいて、できるだけ新しい医療計画の見直し の中に溶け込ませて反映させていきたいと考えております。  議題2についてのメインは以上ですが、参考資料の2の中に、報告事項として説明さ せていただきたいところがあります。医療計画というのは、これまで病床規制の問題ば かりが取り上げられてきました。確かにこれも大事な話の1つです。前回の医療法改正 の中で、一般病床と療養病床に分けるということがなされましたが、分けただけで、そ れぞれの「病床の算定式」というのは決められていませんでした。その点について検討 会のほうでご議論いただいて、今回、このように算定式を定めてはどうかという、一応 結論をいただいて了解いただきましたので、それを参考資料に付けさせていただいてい るというものです。「結核」、「精神」のほうも、考え方をそれぞれの検討会のほうで 議論していただいて、それぞれの考え方をこの参考資料に載せておりますので、後ほど ご参照いただければと思います。以上です。 ○部会長  どうもありがとうございました。ただいまの医療計画に関する説明、資料2に関する 質問を含めて意見交換をお願いしたいと思いますが、ほぼ30分ぐらいでしょうか。でき るだけ大勢の方に。では新しい方。村上委員。 ○村上委員  8頁の、「医療法に基づく制度的な支援」の所で、3番目に「都道府県が認定する医 療法人(民間)を中心とした保健医療福祉の提供グループの構築」。この説明がよくわ からない。いま説明されなかった。これは要するに、1つの医療法人がやるということ ですか。それとも、医療法人がグループをつくってやるということですか。この辺のと ころをちょっと説明をと思います。 ○指導課長  1つでも複数でも、我々としてはそれは全然構わないと思っております。 ○村上委員  これは、これからやろうとする認定医療法人を中心としたネットワーク化、アメリカ でいういわゆるIHNを考えて言われていることですか。 ○指導課長  基本的には、省略しましたが、認定医療法人を含めて、医療法人改革をいま別の検討 会でご議論いただいていまして、そういった中で、望ましい医療法人体系ができるので あれば、そういったところに将来的な医療提供体制を、従来のような、はっきり言えば 官公立中心のものではなくて、民間でちゃんとした所ができるのであれば、そういう所 にお願いしたいという願いを込めております。 ○龍井委員  非常に前向きの提案だと思っているのですが、大きく2点質問です。1つは8頁、9 頁あたりの、つまり数値目標というものの性格と、データの読み方に関する質問です。 ちょっと揚げ足取りになるかもしれないのですが、例えば、9頁の都道府県別のデータ をどう読むかということです。その前の頁にあるような検診なり治療なりリハビリな り、医療提供体制全体が、遅れているというか、死亡率の高い所がその体制が不十分 で、低い所はそれが整っている、そういう因果関係というか相関関係があって、これこ れの施策を講ずれば数値目標の結果につながっていくという、そういう読み方が可能な のかどうか。私はもちろん100%それとは期待していませんが相関関係があるのか。と いうのは、結局これは最終的には6頁にもありますように、達成状況に対する政策評価 をするわけです。ということは、そもそも数値目標を立てたその目標自体の妥当性とい うのがあるわけですよね。それは、とにかく掲げてみましょうというものではなくて、 検証可能になっていくためには、やはりその裏付けというのが必要なのではないかと思 います。その点についてどういうふうに理解したらいいか教えてください。  2点目は、このネットワークづくりも非常に分かりやすいし、前向きの提案だと思い ます。ただ問題は、ここで想定しているような、例えば医療の機能分担とか専門性の問 題というのは、必要条件は分かります。でも、こういうふうになっていくことを担保す るための仕組をどう考えるのか、ということを教えていただきたい。というのは、そう でないとここでいつも問題になっているような、小児救急は入っていますが、小児科医 や麻酔医の配置の問題や、重点化していった場合のへき地の扱いや、あるいは、いま進 んでいない高額医療機器の共同利用が進むかどうかといった個々の論点が、こうした計 画をつくったことによって、必ずそちらのほうに向かっていきますという意味の仕組が ないと、単なるネットワークから先へ行かないだろうと思います。その辺でお考えがあ ればお聞きしたいと思います。 ○指導課長  まず数値目標についてのご質問ですが、私どもも、例えば9頁のがんの死亡率の差 が、いまご指摘のような検診・診療・介護ネットワークの、どこかの差によって説明で きるかと言われると、100%それで説明できると思っていません。もちろん社会経済要 因とか、そういったものが影響してくる可能性は当然ありますので、それをすべて説明 するつもりはありませんが、基本的に、冒頭から申し上げていますように、医療状況調 査を行った上で、さまざまなクリニカルインディケーターと言うのですか、指標みたい なものをとにかくリストアップしていこうという中で、それぞれの県で、自分たちの県 にはこういう要因がいちばんの寄与因子としてあるんだなということを見つけていただ いて、それに対する対応、こういうことを直すという意味で目標値を立てていただけれ ばいいのではないかと考えているものですから、こうしなさいというような形での、何 と言うんですか、例えば死亡率の提示とかいう形のことを考えているわけでは決してあ りません。それが1点目のお答えです。  2点目は、機能分担をちゃんと担保する仕組みというご質問ですが、これもはっきり 言いまして100%の回答はなかなか難しいという認識を私も持っています。ただ、地域 の実情というのは当然ありますので、その地域の実情に応じてやっていただくというの が、優等生的な答えだろうと思いますが、そうも言っておられませんので、できるだけ 地域でうまくいっているような事例を探し出して、モデルをいくつかお示しして、その 中で自分たちがどのモデルに当てはまるということが分かっていただければ、それだけ でも大分参考になるのではないかというぐらいの感覚は持っています。ただ、この辺に つきましてはまた医療計画の見直しの検討会のほうで、より細かい議論をしていただき たいと思っています。 ○池田参考人(野呂委員代理)  この件につきましては、全国の知事会の全部の県ではなく、意見を集約しているわけ ではありませんが、いくつか各県から意見をいただいておりますので、ちょっと短く済 ませますのでご紹介させていただきたいと思います。  基本的には都道府県の役割を拡大し、強化していただくという方向だというように思 っておりますので、歓迎すべきだというように考えておりますが、ただ、各県から聞い た調査を見ますと、やはり各県少し戸惑いがあるのかという気がしています。こうした 形で質の担保をすることを都道府県のほうに求められた場合に、まずこういう形を起こ す前提として、国のほうでもおっしゃっていますように、国と地方の役割分担と連携体 制の再整理をしていただいて、そして国が整備主導すべき分野については体系的な計画 を策定して、医療機能等の適正の整備を達成するための誘導策の創設というものをして いただかないと、実際には実効性のあるものに結び付かないのではないかという意見が あります。特にこうした数値目標を立てると質を担保することについては、もちろん前 向きに考えているし、いいことだと思っていますが、これがもし達成できないとすると そのネックになるのは、おそらくいま考えている医療計画の中で都道府県に権限と申し ますか、ツールのない分野、特に従来からここの会議でも話題になっている人の配置の 問題、先ほど龍井委員がおっしゃったような県内だけでなく分野ごと、あるいはほかの 県との関係での人の問題、それから過剰整備された部分についての抑制策、この2つが ツールとして県におそらくありません。この部分については、国のほうで検討していた だく必要があるのではないか、おそらく各県の意見をまとめるとそういうことになるか と思っています。  国の役割として基本計画を策定するという形で示されていますが、この中にもしかし たらそういうものが入っているのかもしれませんが、いま入っているようには読めない ので、それについてご検討いただければと思います。特に人の部分については、おそら く4月末に議論する所でも関わってくるのかと思いますが、人の担保がないと、数値目 標を作っても実効性は担保されないだろうと考えています。以上です。 ○土屋委員  それぞれの疾患について拠点となる医療機関を指定するとなっていますが、この際に いちばん頭に置いておかなければいけないのは、例えば国立がんセンターのようにがん 診療拠点のナショナルセンターであるとなると、そこに患者さんは集中するのです。い ま千何百人の待ちがあると言われています。あるいは小児救急にしても、これが小児救 急のセンターであるということになると、初期救急から何からそこに集中してしまうわ けです。本来のセンターとしての専門的な機能を発揮できないという状況が起こってき ます。そのようなことを考えますと、資料22頁に診療ネットワークというイメージ図が ありますが、いちばん大事なことは、この地域における日常医療圏という言葉を使って いますが、地域の医療資源を最大限に活かして、拠点病院に指定された所は、原則とし て紹介患者以外は診ないというぐらい徹底したネットワークを構築しない限り、何とは なしにイメージだけでこれを進めますと、また国民、住民をミスリードしてしまう恐れ があるということを申し上げたいのです。  そういう意味では、22頁の真ん中に、都道府県の役割強化という吹き出しがあります が、○の2番目に、「主要な疾病ごとに拠点となる医療機関を指定」と書いてあります が、これは逆に診療ネットワークの構築ということがまず頭に来なければいけない。そ の上で「拠点病院を指定する」というぐらいにしておかないと、拠点病院を指定するこ とが今回の医療計画の主要な論点になってしまう。ですから、地域の医療資源を最大に 活かしたネットワークを構築するということを大前提に、これを進めてもらうという表 現の仕方もお願いしておきたい。  付け加えて、日常医療圏なるものについて、最初は医療計画の見直しの検討会に突 然、出て来た話ですが、これは二次医療圏とたまたま合う所があるかもしれないが、そ うではないという具合に説明されていました。ところが、いまやこれが全国でも走って いまして、二次医療圏がこれになると。医療計画における記載事項にも関わる話ですの で、この辺をいまどういうお考えなのか、あるいはそういう具合に持って行こうとなさ っているのか、ちょっとご説明いただきたいと思います。 ○指導課長  時間が足りなくて、どうも言葉が先走りしまして大変失礼しました。基本的にそもそ も二次医療圏の話が出たものですから、それを中心に置いて考えていることには間違い ありませんが、疾病によりそれぞれ完結できる医療圏と多少違いがあるだろうと、私ど もも考えております。  事例が適切かどうかはわかりませんが、「糖尿病」ですとできるだけ狭い医療圏でや ったほうが多分いいのではないかという気もしますし、極論すれば、「臓器移植」など は県ではとても納まらないし、ブロックというか、ひょっとしたら日本全国1本かもし れません。それぐらいの感覚はやはり必要だということですので、ご指摘のように必ず しも二次医療圏にすべて完結をさせることはこの前の検討会でもご指摘をいただきまし たので、私どももその辺は認識として基本的には持っているつもりです。具体的にどう すればいいのかというのは、今後検討会でまた、その辺を委員の方々のご意見をいただ ければと考えています。 ○土屋委員  それからネットワークのことについては。 ○指導課長  ネットワークにつきましても、基本的にまず医療機関が存在している圏域の中で、で きるだけ限られた資源が有効に使われなければいけませんので、それによってはここも 含むことがまず前提であるということは、確かにそのとおりです。ですからその中でそ れぞれの、「脳卒中」でいうと急性期の、またリハビリの核となれる医療機関もあるだ ろうし、中心となる医療機関をそれぞれ選定するということが次にあると認識をしてい るところです。 ○村上委員  いまの土屋委員のご意見で、そこのネットワークを重視しろというのは私も賛成なの ですが、紹介患者だけに限れということは、各地域によっていろいろ差があるというこ とを、やはり申し上げておきたいのです。  例えば私の地域は、紹介患者をしてくれる診療所がありませんし、うちの病院が拠点 としてやって行かざるを得ない。そうしないと地域の医療を守れないという状況がある わけで、これは私どもだけではなくて、佐久総合の辺りもそうだろうと思います。そう いうことがあることを知っておいていただきたい。だからすべて紹介患者に限るという 考え方は、地域の病院の立場として抗議を申し込みたい。  二次医療圏について、これは日常医療圏にするということは、これも私どもの病院を 例にしますと、千葉県の東北部だけではなくて、茨城県の南を診ていますので、二次医 療圏だと県単位になっていますので、私は日常医療圏というのは、非常にいいことだと 思っています。 ○部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○松井委員  こういった形で医療計画を見直していこうという方向性については、私は賛成です。 土屋委員もおっしゃられたように、既存の医療資源を最大限効率よく使って、それが住 民にとって大変いいものになる、そういう方向性を目指していただきたいと思います。  先ほど土屋委員が懸念を示されたことは、おそらく患者さんに対する情報の提供の仕 組みをもう少し具体的に整備をして、すぐ拠点病院に行かなくていいのだということを 十分周知をする取組によって、解消していく方向が、もっと強く打ち出されなくてはい けないと思います。したがいまして、医療計画を作るときにも、現在どれだけ一般的な 患者を代表するような方が参画しているのか私は十分承知しておりませんが、そういう 方々の参画も十分念頭に入れて、そしてでき上がったものを地域の人たちがわかるよう な取組を、より進めてもらいたいと思います。  国によっていろいろなデータを集めるということが、資料に書いてありましたが、こ れは具体的にはどのようなやり方をいま想定されているのか。また既にレセプトや、い ろいろなものがすでにあるので、お金の流れということでは大体わかると思うのです が、こういうことをやるために新たなものではなくて、いまあるものをうまく活用す る。それと医療のIT化と関係すると思うのですが、そういうことをより進めながら、 既存の仕組をうまく利用して医療計画が作られていくような方向性を検討してほしいの ですが、どのように考えておられるのかだけ、ちょっと教えていただければと思いま す。 ○指導課長  まだこれもフィックスしたわけではありませんが、現段階では確かにご指摘のように 国のレベルでもかなりいろいろな調査もしております。レセプト関係の保険局の調査も そうですし、私どもとしても患者調査や医療施設調査、医師、歯科医師、薬剤師調査、 いろいろなものがあります。そういったもので当然役に立つものはすべて拾い上げて、 なおかつ医療計画として県が定められる際に、これはちょっと足らないかもしれないと いうものをできるだけ探して、そういったものについてはできるだけ平成17年度に早 く、研究費になるか調査費になるかわかりませんが、そういったところでの全国サーベ イというものを、できるだけ早くやらせていただこうと考えているところです。 ○部会長  ほかによろしいでしょうか。 ○山本(信)委員  資料の22頁から、全体のネットワークのイメージ図がはじまるわけですが、その中で 特に在宅の医療について、これから重要であるという指摘がされています。資料2−2 の30頁を見ますと、在宅医療の推進という中で、具体的に訪問看護ステーションに関す る数値目標を作れという指摘がされています。そこで、例えば患者のQOLを向上され るというような目的を持ったり、あるいは具体的にどれほど疾病の治癒率を上げるかと いうように数値目標を上げていった場合に、例えば、「がん」で言いますと麻薬のコン トロールは当然必要なことだと考えます。入院患者であれば院内の薬剤師が関わるわけ ですが、在宅医療になりますと、訪問看護ステーションだけでそうしたものを供給でき るかというと、容易ではないと思います。医薬品の供給体制そのものが大きな議論にな っておりますのに、そのことの関わりが少し見えにくい、また糖尿病で見られるよう に、特に自覚症状がないような患者さんを考えてみますと、私ども日薬の調査でも、国 の調査でもかなりの方々が正しく指示通りに服薬していないという結果が出ています し、あるいは約10%の薬が捨てられているといったような実態もあります。  そこで、二次医療圏が日常医療圏というように形を変えて、よりわかりやすくなった わけですので、そうした中で麻薬が供給できる拠点を現在より30%増やそう、あるいは ノンコンプライアンス、薬を飲まない患者さんをいまの半分にしようといったような具 体的な数値目標も、こうした中に書き込んでいかないと、当初の国の役割として上げら れた予防、あるいは治療、そうしたものが十分に担保できないのではないかというよう に考えていますので、是非そうしたことも具体的な数字として書き込んでいただきたい と思います。 ○部会長  ほかにはよろしいですか。 ○松井委員  今回示された医療計画の作り方には、政策評価という項目が入っております。医療計 画の見直しは大体いままで5年に一度くらいのような考え方になっていると思うのです が、政策評価をしたあとに毎年見直していくといった考え方に立っているのか、目標の 設定の仕方についても5年でやる、単年度でやるなど、いろいろな考え方があると思い ますが、それは地域における自主性を尊重するということなのか、その辺はどんな議論 が検討会の中で行われているのかを、教えていただければと思います。 ○指導課長  まだそこまでの細かい議論には立ち至っておりませんで、今後の検討課題です。 ○龍井委員  1点だけ質問です。財政的措置のほうも客観的な基準という言葉が出て来るのです が、これについて、もしもいまの段階でわかる考え方があったら教えてほしいのです が。 ○指導課長  この点につきましても、実は概念的にはご提示を申し上げていますが、具体的にどう するかは大変いま頭を悩めているところでして、これも今後の検討課題です。 ○部会長代理  病院の機能分化と日常医療圏、あるいは二次医療圏で完結、これは大変素晴らしいの ですが、都市部の問題なのかもしれませんが、病床の規制はあっても診療内容、診療の 種類の規制は別にないようで、特定の収益の高い所はもう過当競争、患者の取り合いと いうか、新患をいかに獲得するか各病院が競ってやっているという、何というか過剰診 療も起こりかねないような、競争的に位置付けられている病院がどんどん都市部に集ま っている話も聞きます。  例えば1つの市、町に、心臓外科の施設が7つある。そこで一種の過当競争に置かれ ている。こういったものはいろいろな経済面も明らかに医療費の増大にもつながるであ ろうし、新しい若い医師の教育の問題にも大きな影響を及ぼしてきている実情があるの です。こういった診療の部門別の二次医療圏における適正な配分というようなものに対 しては、どのようにお考えでしょうか。非常に難しい問題だとは思いますが、単なる病 床規制だけではとてもできませんし、そういった問題をどのようにしていったらいいの かというのは、我々は新しい医師の教育を考えても、症例が分散しすぎてしまっていま す。自然に倒産してくれるのを待つというのはおかしな言葉かもしれませんが、そうい うことは皆さん巧みですから、それを続行されておられるわけですが、そういった規制 というのは難しいのだろうと思いますが、各二次医療圏における病床規制ではなくて、 診療内容はここで足らないのです。がんや脳卒中の重要な拠点、あるいは小児救急、こ れはわかるのですが、今度は逆に、過剰になりすぎているという問題も同時にあるとい うことを、ちょっとまた考えていただきたいと思っています。 ○部会長  この場ではお答えは無理ですね。今後お考えいただくということで。  そろそろ時間ですが、私も一言いわせていただきます。今回は、小児のことが相対的 に大きく取り上げられていまして、それはありがたいと思います。実は私は、医師、看 護師の研究班をお世話させていただいておりますが、小児科よりも産科のほうが、はる かに事態が深刻なのです。これは診療科のエゴイズムということではなくて、前回の会 議でも子どもというのは国の宝であるというご発言がありましたとおり、生命の誕生に 関わる診療科というものを、是非子どもと一緒に大事に次世代育成ということでお考え いただきたい、それだけ申し上げておきたいと思います。  そろそろ時間になりましたので、医療計画については検討会のほうでも引続き議論を なされるようですし、本日は大変いろいろ貴重なご意見も頂戴しましたので、それを踏 まえてまた、検討会のほうでもさらに議論を進めていただくとして、事務局のほうでま た論点の整理をしていただいて、改めてまた議論をする機会を設けたいと思います。一 応本日の議論はこの辺で終わりにしますが、何かほかにございますでしょうか。ないよ うでしたら、今後の日程等について、事務局からご説明をいただけますか。 ○企画官  本日ご議論いただきました2つの論点につきましては、鴨下部会長からご指示があり ましたとおり事務局のほうで整理しまして、今後改めて議論をいただく際に、追加資料 も含めて準備をさせていただきたいと思います。  また前回申し上げましたとおり、参考資料3の「医療提供体制の改革に関する主な論 点整理」については、今後速やかに厚生労働省のホームページに掲載して、一般の方か らの意見募集を行いたいと考えています。  また次回以降の日程ですが、次回は3月24日(木)の午後3時半から、本日と同じ専 用15会議室で開催する予定ですので、ご出席いただきますようお願いします。次回の議 題は、「医療安全対策の総合的推進」と「小児をはじめとした救急医療体制の在り方、 小児、周産期医療といった母子医療の推進」です。  4月以降の日程につきましては、すでに一度日程調整させていただいておりますが、 新年度ということですので、またもう一度皆様のご都合を確認させていただきますの で、机の上の日程調査表のほうにご記入いただいて、机に残していただくか、来週中に 事務局のほうにファックスをいただければと思っております。よろしくお願いします。 ○部会長  それでは、今日は大変遅くなりましたが、これで閉会させていただきます。大変お忙 しいところ長時間にわたってありがとうございました。