へき地保健医療対策検討会 参考資料1
第3回(H17.3.31)


北窓委員提出資料



平成17年3月29日


へき地保健医療対策検討会
 座長 高久 史麿 殿


青森県健康福祉部長 北窓 隆子


へき地における医療確保についての意見について


 平素より本県のへき地保健医療対策の推進につきましては、ご理解ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、「第3回へき地保健医療対策検討会」のご案内をいただいておりましたが、業務が重なり、出席することができなくなりました。
このため、本県のへき地保健医療の現状や課題、今後の具体的な対策をまとめた意見書を提出させていただきますのでよろしくお願い申し上げます。



平成17年3月29日


へき地における医療確保についての意見

青森県

<現状と課題>
 巡回診療について
 本県の無医地区等は、平成16年7月現在27か所となっているが、道路整備や自家用車の普及により、近年は医療機関までの移動が容易になっており、その数は減少の一途を辿っている。
 また、巡回診療は、平成15年度における1回当たりの平均で8.9人となるなど利用患者数が年々減少傾向にあるほか、へき地医療拠点病院側の意見として、巡回診療の診療行為に限界があること及び拠点病院のマンパワ−不足などにより、事業の効率性や効果性に問題ありとの指摘を受けているところである。
 本県のへき地医療対策は、従来から自治医科大学卒業医師の養成・市町村派遣及び無医地区等の巡回診療事業がその中心であったが、近年、診療所や拠点病院の医師を確保することすら難しい状況になってきているため、巡回診療事業の見直しを図り、必要に応じて、市町村の患者バスを導入・運行したり、診療所勤務医師の確保とそれをサポ−トする体制づくりを整備していく必要がある。
 一方、へき地を抱える町村部は高齢化が著しく、その医療は慢性疾患が中心であり、また保健指導、介護予防及び要介護者の療養等のウェイトが高まっている。したがって、へき地等における医療ニーズは、医師でなければ不可能な、刻々と変化する症状への適切な対応(診断・治療)とは次元が異なるものになっていることに留意する必要がある。
 また、本県は広大な県土に人口が分散しているが、一方では道路事情の改善、高い自動車保有率などによって、高齢者を除けばへき地であっても医療機関へのアクセスは容易になっている。しかし、積雪寒冷地という気候的制約は大きく、冬季においては医療機関への到達時間が他の季節の2倍から3倍に及ぶということも珍しいことではない。
 このようなことから、青森県のへき地における医療の確保は、保健医療に対するニーズ変化と冬季における医療の確保ということに対応するものでなければならないことが指摘できる。

 自治医科大学卒業医師の養成・派遣について
 県は、昭和47年から毎年自治医科大学卒業医師を養成(平成16年5月現在、県職員として33名が在職)し、医師確保が困難なへき地優先しながら診療所中心の派遣を行ってきた。
 しかし、近年、大学の医師引き揚げによって、市部とへき地をつなぐ、地域の中心病院が医師不足に陥るなど自治医大医師の派遣ニ−ズが高まり、すべての要望に応えきれない状況になっているほか、自治医大医師個人の志向が総合医療から専門医療と幅広いものとなってきているため、専門研修ができる病院への配置を検討する必要が生じている。
 このため、県は、従来の市町村単位の派遣をあらためて、配置基準なるものを新たに設定し、地域の中心病院が診療所と医療連携を行える「地域」に対して派遣することにしたが、今後は、従来から自治医大医師を派遣している診療所においても常勤医師を配置すべきかどうかの十分な検討したうえで派遣先を整理しながら、診療所勤務医師の研修機会を確保し、地域で効率的に医療確保ができる体制づくりを構築していかなければならない。

 へき地医療拠点病院の状況について
 以前は、無医地区等から医療機関までのアクセスが悪く、へき地住民の受診機会の確保を図るために巡回診療を行ってきており、へき地医療拠点病院は、無医地区等の分布状況と医師の移動距離を考慮して、現在の4病院を指定しているところである。
 本県においては、医師不足の深刻化に伴い、へき地等を抱える町村部医療をいかに確保するかが喫緊の課題となっているが、大学による退職医師の不補充や医師集約の動きは、町村部におけるへき地医療拠点病院に大きな影響を与えようとしており、巡回診療の実施すら危ぶまれる状況となっている。
 現へき地医療拠点病院は、平成14年及び平成15年の医師充足率が60%台で推移しているが、いくつかの病院では、平成17年度に標欠に陥る可能性もあり、拠点病院のマンパワ−不足が大きな問題となっている。
 今後、いくつかの拠点病院では、指定を継続していくことが困難になることも予想されるが、指定を取り消した場合、以前交付したへき地医療拠点病院施設・設備整備費補助金の返還義務が生じるという問題点もある。
 このため、現拠点病院の状況と地域における医療連携の状況を考えながら、効果的にへき地医療を確保できるように拠点病院の再編成を進めていく必要がある。


<具体的対策>
 へき地等における医療を確保していくためには、巡回診療が時代に対応しなくなっている現在、へき地医療拠点病院に医師を集約しつつ、当該病院を中心とする地域全体の医療体制を構築していくことが求められる。これについては、医師全体が不足している中、医師派遣等を行い得る集約は容易ではなく、その最大限の活用を図る方策を取る必要がある。

<まとめ>
 へき地医療支援を行い得る病院を追加指定するなど、へき地医療拠点病院の再編成を行う。
 自治医大医師を効率的に配置及び派遣先を整理縮小し、地域における医療連携(代診・診療支援など)を促進する。
 巡回診療事業を見直し、整理・縮小する。
 へき地医療拠点病院運営費補助を活用して、拠点病院からの医師派遣・代診医派遣を充実する。
 医師のマンパワ−が不足しているため、保健師を活用した訪問活動を強化する。
 一方、IT技術の飛躍的進歩により、遠隔での医療の可能性が大きく拡がっており、医師法の無診察治療等の禁止について「対面」を基本とすることの緩和余地がある。
 これについて、
1) 行為者
一定の医療機関勤務経験のある看護師・保健師
2) 要件
 医師が直近1月内に診療をした患者であって、症状が固定化していると診断さ れた者に限って、
 定められた診療手続きに沿って、看護師等が検査をしてそのデータを拠点病院 医師に送信し、
 医師は患者の状況をCCDカメラによりパソコンで確認し、データとともに判 断し、
 必要な措置を看護師等に指示し、看護師等が指示内容を実施する。
ことが考えられる。
 このことは、特に積雪寒冷地で威力を発揮するものと見込まれ、また介護予防等と連動することによる保健医療資源の有効活用が期待できる。

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