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臨床的脳死の診断及び法に基づく脳死判定に関する評価
本症例は10月16日19:25提供病院に搬送され、CT所見で視床の小出血を認めたため、降圧剤(Ca拮抗薬)による血圧管理が行われた。20:00頃より意識障害が出現し。21:20にはCTで血腫の増大を認めたため手術を行うこととした。しかし21:50には瞳孔不同が出現し、22:30には両側瞳孔散大、対光反射消失が認められ、呼吸障害も出現したため手術の適応なしと判断された。
10月17日0:00頃に家族に病状を説明し、その後家族より臓器提供意思表示カードが提示された。3:30頃自発呼吸が停止して臨床的に脳死が疑われ、17:20に臨床的脳死と診断された。約11時間後の10月18日4:17に第1回法的脳死判定開始(終了6:06)、約9時間後の14:46に第2回法的脳死判定を開始した(終了16:28)。
本症例は、上述の経過概要にあるように、脳死判定の対象としての前提条件を満たしている。すなわち
1) |
10月17日3:30から深昏睡、呼吸停止状態であり、同様の状態が14時間続いた後に臨床的脳死と診断された。 |
2) |
臨床経過及びCT所見より、脳の一次性、器質的病変であることは確実である。 |
3) |
診断、治療を含む全経過からすべての適切な治療を行っても回復の可能性は全くなかったと判断される。 |
〈検査所見及び診断内容〉
検査所見(10月17日16:30から17:20まで)
体温36.7℃ 血圧90/54mmHg
JCS:300
自発運動:なし 除脳硬直・除皮質硬直:なし けいれん:なし
瞳孔:固定し、瞳孔径 右5.5mm 左5.0mm
脳幹反射:対光、角膜、毛様脊髄、眼球頭、前庭、咽頭、咳反射すべてなし
脳波:平坦脳波(ECI)に該当する(標準感度 2μV/mm記録、高感度10μV/mm記録)。
聴性脳幹反応:なし |
施設における診断内容
以上の結果より、臨床的脳死と診断した。 |
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平坦脳波(ECI)に相当する(標準感度 2μV/mm記録、高感度10μV/mm記録)。
平成15年10月17日(16:30−17:00)に行われた脳波の電極配置は、国際10-20法のFp1,Fp2, C3, C4, CZ, T3, T4, O1, O2, A1, A2で、記録は単極導出(Fp1-A1, Fp2-A2, C3-A1, C4-A2, O1-A1, O2-A2, T3-A1, T4-A2, A1-Cz, Cz-A2)、双極導出(Fp1-C3, Fp2-C4, C3-O1, C4-O2, Fp1-T3, Fp2-T4, T3-O1, T4-O2, T3-Cz, Cz-T4, Fp1-O1, Fp2-O2)とで行われている。さらに心電図と頭部外(前腕内側部)導出による同時モニターも行われている。刺激としては呼名刺激と顔面痛み刺激が行われている。心電図が重畳し、T3に僅かな筋電図が混入しているが、判別は容易である。30分間の記録が行われているが脳由来の波形の出現はなく、平坦脳波と判定できる。
I波を含むすべての波を識別できない。
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〈検査所見及び判定内容〉
検査所見(第1回)(10月18日4:17〜6:06)
体温36.2℃ 血圧250/128mmHg 心拍数102/分
JCS300
自発運動:なし 除脳硬直・除皮質硬直:なし けいれん:なし
瞳孔:固定し、瞳孔径 右6.5mm 左6.5mm
脳幹反射:対光、角膜、毛様脊髄、眼球頭、前庭、咽頭、咳反射すべてなし
脳波:平坦脳波(ECI)に該当する(標準感度 2μV/mm記録、高感度10μV/mm記録)
無呼吸テスト:陽性
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開始前 |
3分後 |
5分後 |
PaCO2(mmHg) |
42 |
64 |
73 |
PaO2(mmHg) |
142 |
85 |
82 |
SpO2(%) |
99 |
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94 |
血圧(mmHg) |
236/143 |
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249/130 |
聴性脳幹反応:I波を含むすべての波を識別できない。 |
検査所見(第2回)(10月18日14:46〜16:28)
体温38.1℃ 血圧195/107mmHg 心拍数125/分
JCS300
自発運動:なし 除脳硬直・除皮質硬直:なし けいれん:なし
瞳孔:固定し、瞳孔径 右7.0mm 左7.0mm
脳幹反射:対光、角膜、毛様脊髄、眼球頭、前庭、咽頭、咳反射すべてなし
脳波:平坦脳波(ECI)に該当する(標準感度 2μV/mm記録、高感度10μV/mm記録)
無呼吸テスト:陽性
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開始前 |
3分後 |
5分後 |
PaCO2(mmHg) |
39 |
55 |
61 |
PaO2(mmHg) |
69 |
56 |
56 |
SpO2(%) |
95 |
85 |
82 |
血圧(mmHg) |
180/97 |
168/86 |
165/84 |
聴性脳幹反応:I波を含むすべての波を識別できない。 |
施設における判定内容
以上の結果より、第1回目の結果は脳死判定基準を満たすと判定
(10月18日 6:06)
以上の結果より、第2回目の結果は脳死判定基準を満たすと判定
(10月18日 16:28) |
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第1回法的脳死判定
平坦脳波(ECI)に相当する(標準感度 2μV/mm記録、高感度10μV/mm記録)。
平成15年10月18日(5:05−5:35)に記録されており、記録条件は臨床的脳死判定時と同条件である。刺激としては呼名刺激と顔面痛み刺激が行われている。心電図が重畳し、左側頭部と頭蓋外導出に僅かな筋電図が混入しているが、判別は容易である。30分間の記録が行われているが脳由来の波形の出現はなく、平坦脳波と判定できる。
第2回法的脳死判定
平坦脳波(ECI)に相当する(標準感度 2μV/mm記録、高感度10μV/mm記録)。
平成15年10月18日(15:05−15:35)に記録されており、記録条件は臨床的脳死判定時と同条件である。刺激としては呼名刺激と顔面痛み刺激が行われている。心電図が重畳し、左側頭部と頭蓋外導出に僅かな筋電図が混入しているが、判別は容易である。30分間の記録が行われているが脳由来の波形の出現はなく、平坦脳波と判定できる。
臨床的脳死判定・法的脳死判定(1,2回目)のいずれにおいても、I波を含むすべての波を識別できない。
本症例ではPaO2が一時的に低いレベルになり、特に第2回法的脳死判定時にはSpO2も低下した。テスト前のSpO2は95〜99%で循環は比較的安定していたが、テスト開始前のPaO2は第1回法的脳死判定時が142mmHg、第2回法的脳死判定時が69mmHgであった。なお1回目、2回目ともPaO2が低下傾向にある理由は、誤嚥性肺炎に合併した無気肺によるものと考えられる。本症例では、テスト中は麻酔科専門医により慎重な観察がなされ、テスト中に何らかの有害な現象が生じた場合はいつでも中止することとしてテストが行われたが、血圧低下や不整脈は認められなかった。テストは2回とも5分以内に終了している。
低PaO2の症例に関しては今後も専門医における慎重な観察と対応を行う必要がある。
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本症例の脳死判定は脳死判定承諾書を得た上で、指針に定める資格を持った専門医が行っている。法に基づく脳死判定の手順、方法、結果の解釈に問題はなく、結果の記載も適切である。以上から本例を法的に脳死と判断したことは妥当である。 |