05/02/25 薬事・食品衛生審議会化学物質安全対策部会 平成17年2月25日議事録       薬事・食品衛生審議会 化学物質安全対策部会 議事録 1.日時及び場所   平成17年2月25日(金) 10:00〜   法曹会館 高砂の間 2.出席委員(13名)五十音順    安 藤 正 典、○板 倉 ゆか子、 井 上   達、◎井 村 伸 正、    沖   幸 子、 神 山 美智子、 岸   玲 子、 黒 川 雄 二、    竹 居 照 芳、 土 屋 利 江、 新 村 眞 人、 安 田 峯 生、   渡 部   烈   (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(5名)五十音順    植 田 和 弘、 内 山 巌 雄、 佐 野 真理子、 中 西 準 子、    百 濟 さ ち                   3.行政機関出席者   成 田 昌 稔(化学物質安全対策室長)  他 4.備考   本部会は、公開で開催された。 ○事務局 定刻になりましたので、ただいまより平成16年度第1回化学物質安全対策部 会を開催いたします。まず、化学物質安全対策室長よりごあいさつ申し上げます。 ○化学物質安全対策室長 先生方におかれましてはお忙しい中を化学物質安全対策部会 に御出席いただきまして、ありがとうございます。また、先生方には本年1月から引き 続き2年間委員をお引き受けいただいておりまして、どうかよろしくお願いいたします。  本日のこの部会はほぼ1年ぶりの開催ですが、この間の化学物質安全対策の動きとし ては、前回のこの部会で御審議いただいた「有害物質を含有する家庭用品の規制に関す る法律」に基づいて、クレオソート油関連製品中のベンゾピレン等の規制、繊維中のホ ルムアルデヒドの試験法の見直しについて、昨年6月から施行させていただいておりま す。また、本日御審議いただく関係の「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化 審法)」に関しては、昨年4月に施行されております。この改正化審法の中では、一番目 としては環境中の動植物への影響に着目した審査規制制度を導入する、二番目として難 分解・高蓄積性の既存化学物質に関する規制を導入するという改正が柱になっておりま す。これらの改正の施行状況については、後ほど御説明させていただきます。  また私どもとしましても、引き続き国際的な化学物質対策の動きを踏まえつつ、化学 物質の安全対策、化学物質の管理の充実に努力したいと思っております。  本日の部会においては化審法における第一種特定化学物質として、2物質を追加指定 することについて御審議いただきたいと思っております。また、化審法の施行状況につ いても、監視化学物質の審査状況を御報告したいと思っております。先生方の忌憚のな い御意見、御議論をいただきますよう、よろしくお願いいたします。 ○事務局 続きまして、化学物質安全対策部会に所属する委員の方々を御紹介させてい ただきます。本年1月に委員の改正がありましたので、アイウエオ順に御紹介させてい ただきます。武蔵野大学薬学部教授の安藤正典先生。独立行政法人国民生活センター商 品テスト部調査役の板倉ゆか子先生。国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究セ ンター長の井上達先生。財団法人日本薬剤師研修センター理事長の井村伸正先生。なお、 井村先生は本年1月31日に当部会の座長に選出されたところでございます。次に、京都 大学大学院経済学部研究科教授の植田和弘先生と、同じく京都大学大学院工学研究科環 境工学専攻教授の内山巌雄先生は本日御欠席です。フラオ グルッペ株式会社代表取締役 社長で生活評論家でもいらっしゃる沖幸子先生。弁護士の神山美智子先生。北海道大学 大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野教授の岸玲子先生。財団法人佐々木研究 所理事長の黒川雄二先生。主婦連合会事務局長の佐野真理子先生は本日御欠席です。富 士常葉大学流通経済学部教授の竹居照芳先生。国立医薬品食品衛生研究所療品部長の土 屋利江先生。独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター長の中 西準子先生は本日御欠席です。臨床医薬研究協会代表取締役の新村眞人先生。東京都多 摩府中保健所長の百濟さち先生は本日御欠席です。広島国際大学保健医療学部臨床工学 科教授の安田峯生先生。日本薬科大学薬学部教授の渡部烈先生。以上18名の先生でござ いますが、本日の部会については委員数18名のうち13名の先生に御出席いただいてお りますので、薬事・食品衛生審議会令の第9条の規定に従って、定足数に達しているこ とを御報告申し上げます。  公開と非公開の別については、委員の自由な発言が制限され公正な審議に支障を及ぼ すおそれ、あるいは個人の秘密等の開示によって特定の者に不当な利益又は不利益をも たらすおそれは、いずれもないと判断されたことから、本部会は公開ということで開催 しております。  それでは井村部会長、司会進行をよろしくお願いいたします。 ○井村部会長 まず、議事に入る前に事務局の方から資料の御説明をお願いいたします。 ○事務局 資料の一番上の1枚紙は化学物質安全対策部会議事次第で、本日の議題が記 載されています。その次にまた1枚紙で座席表があります。次に資料1として、厚生労 働大臣より薬事・食品衛生審議会へ、今回2物質ですが、「第一種特定化学物質に指定 することの可否について」ということで、意見を求める諮問書がございます。資料2-1 として、「2,2,2-トリクロロ-1,1-ビス(4-クロロフェニル)エタノールに関する調 査報告書」がございます。資料2-2としては、「ヘキサクロロブタ-1,3-ジエンに関す る調査報告書」です。資料3-1は報告事項です。「化学物質の審査及び製造等の規制に 関する法律に基づく新規化学物質及び既存化学物質の審査の状況について」という2枚 紙です。資料3-2は「既存化学物質の審査の状況について」という、A3のものを二つ 折りにしたものです。こちらは第一種監視化学物質の指定に関するものです。資料3-3 は「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく既存化学物質の審査の状況 について(物質ごとの審議の概要)」。資料3-4はまた同じく、「化学物質の審査及び製 造等の規制に関する法律に基づく新規化学物質の審査の状況について(物質ごとの審議 の概要)」です。  それから参考資料として四つあります。参考1として、「化学物質の審査及び製造等 の規制に関する法律(化審法)における第一種特定化学物質の取扱いについて」。参考2 としてA3の紙を二つ折りにしたものですが、「化学物質の審査及び製造等の規制に関 する法律における第一種特定化学物質に関する人健康影響一覧」というものがあります。 参考3としては「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部改正について」 ということで、改正法の主な内容を御紹介する資料です。参考4として「監視化学物質 への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準」ということで、参考に配付しており ます。  以上ですが、特段ないもの等ございましたら事務局の方までよろしくお願いいたしま す。資料3-3及び資料3-4ですが、本日報告する化学物質が告示前のものですので、本 資料は部会の委員限りとして、会議終了後回収という扱いにさせていただきます。 ○井村部会長 次に先ほど御説明がありましたように、この1月に薬事・食品衛生審議 会の委員の改選がありましたものですから、この部会の最初にしなければならないこと は部会長代理の選出です。審議会令によると部会長代理の指命は部会長がすることにな っておりますので、恐れ入りますが、引き続き板倉委員に部会長代理をお願いしたいと 思うのですが、いかがでしょうか。それではよろしくお願いいたします。 ── 板倉委員、部会長代理席へ移動 ── ○井村部会長 次の議事に入ります。議事次第ですが、審議事項の議題の1です。2, 2,2-トリクロロ-1,1-ビス(4-クロロフェニル)エタノール、別名ケルセン又はジコ ホルの取扱いについて、先ほど説明がありました厚生労働大臣からの諮問書のとおり、 このケルセンと次の議題2で話題になるヘキサクロロブタ-1,3-ジエンという、この二 つの化学物質については、平成17年2月4日に厚生労働大臣から薬事・食品衛生審議会 に対して諮問がなされて、審議会長から本部会に付議されております。ケルセンについ てはこの本部会といわばパートナーである化学物質調査会において審議がなされてい て、その審議結果の報告が出てきております。本日それについて議論させていただくわ けでございます。それでは事務局からまず御説明をお願いいたします。 ○事務局 まず、参考資料の方から御説明させていただきます。参考1の「化学物質の 審査及び製造等の規制に関する法律における第一種特定化学物質の取扱いについて」で す。第一種特定化学物質の特性ですが、これは指定の要件ともなっておりますけれども、 まず難分解性(自然的作用による化学的変化を生じにくい)ということ。次の条件として、 高蓄積性(生物の体内に蓄積されやすい)ということです。それから長期毒性(継続的に摂 取される場合に人の健康を損なうおそれがある)、又は、これは今度紹介いたします平成 16年の化審法改正で新たに追加された事項ですが、(高次捕食動物の生息・生育に支障 を及ぼすおそれがある)ということ。この三つのものについて、第一種特定化学物質とい う厳しい規制が課せられるところとなっております。  これまでに第一種特定化学物質に指定されているものですが、これは法律上政令で指 定することになっております。ここにあるポリ塩化ビフェニル、アルドリン、ディルド リン、DDTなどの物質がこの三つのクライテリアに合致するということで指定されて います。  厳しい規制と申し上げましたが、実際どのような規制がかかるかということで、三つ 目の○を御覧ください。規制措置としては製造・輸入が許可制になります。原則的に禁 止されていて、基本的に今まで許可された事例はありません。二番目にこういう物質を 使用している製品の輸入を禁止することになっております。三番目として使用の制限と いうことで、閉鎖系のごく限られた用途以外の使用禁止になっております。四番目に指 定されたときですが、市場にあるものなどは指定に伴って回収などの措置命令がかけら れることになっております。  参考2ですが、先ほどの13物質にどのような毒性があったかという概要になっており ますので、御参考に配付しております。2枚目の右の方にはジコホル、ヘキサクロロブ タジエンについても掲載しております。  それでは資料2-1に基づいて、ジコホルの簡単な概要について御説明申し上げます。 まず2枚めくっていただいて、化学構造が書いてあるページを御覧ください。別添1と いうところです。ジコホルですが、これはDDTの誘導体ということで、先生方はよく ご存じのとおり、真ん中のOHの部分がHになって酸素がないものがDDTです。この 用途などについては防ダニ剤ですが、農薬で使用されているものです。こちらは安価で 有効性が高いことから、かなり使われてきました。  次に1ページめくっていただいて、この物質の分解性、蓄積性について御説明いたし ます。こちらは同じく枠の中に構造式があり、真ん中辺りのカラムに分解度試験が二つ あります。2回試験を行っていますが、どちらの試験においても難分解という判定です。 BODが0%ということで、ほとんど分解しないということです。  1枚めくっていただいて濃縮度試験です。濃縮度試験も実は2回行っています。これ はOECDのガイドラインに基づいて行ったところですが、昭和53年に実施したときに は1万倍を超えないということで、「中濃縮性」という判断をされております。中濃縮 性ですと第一種特定化学物質の指定の要件には合致しないということで、このときは特 段だったのですが、平成14年までの間に蓄積性に関する判定基準が見直されておりま す。その結果、再度試験を行ったところ、真ん中の「濃縮倍率」というカラムを御覧い ただくと、倍率が大体6,000倍、6,200倍、8,000倍とか、最終60日後の一番右のカラ ムですが、新しい判定基準である5,000倍を超えているということで、高濃縮性と判断 されたものです。  このことから毒性の審議も昨年の調査会で御審議いただいて、資料の2枚目に戻って いただいて、「ジコホルについて(案)」というものですが、分解性は難分解性、蓄積性 については高蓄積性である。それから人への長期毒性についてもこのときに御審議いた だいて、「第一種特定化学物質に相当する長期毒性を有するものと考えられる」と、調 査会の方で御判断いただいたものです。 ○事務局 それでは資料2-1を5枚ほどめくった、別添3の「有害性情報調査報告書」 に従って、人への影響について報告いたします。1には、主な物性が示してあります。 2以降、動物実験の結果及び、さらに6枚ほどめくった3に、ヒトでの症例報告が示し てあります。本物質に関しては、動物実験の急性及び反復投与毒性、またヒトにおける 症例報告より、神経行動学的な影響が認められております。  急性毒性試験における半数致死量はラット、マウスでおおよそ体重1kg当たり600mg 程度となっております。それ以降反復投与毒性試験に関しては別添3の2枚目、3枚目 に示すような試験がなされており、肝臓や副腎及び精巣、甲状腺、腎臓に対する広範な 影響が報告されております。13週間の反復投与毒性試験におけるNOAELは、マウス、ラ ット、イヌにおいてそれぞれ1.6、0.07、0.29mg/kg/dayと報告されております。  また、別添3の3枚目以降、長期の毒性試験及びがん原性試験における結果から、マ ウスでは肝腫瘍の増加が報告されており、ラットの24か月反復投与毒性試験における NOAELは0.22mg/kg/dayと報告されております。変異原性試験に関してはin vitro、in vivo系、いずれにおいても陰性でしたが、ヒトの疫学調査においてはジコホルへの暴露 と前立腺癌リスクの上昇との関係が報告されております。  別添3の4枚目になりますが、ラットの2世代の繁殖毒性試験において、卵巣におけ る間質細胞肥大等の影響が認められ、また児動物に対する影響も報告されております。 さらにウサギでは流産の誘発など、生殖系への影響が報告されております。  資料の6枚目ですが、体内動態については体内に吸収されたジコホルは未変化体とし て脂肪組織に蓄積されやすく、体内半減期が最大で7日間と報告されております。  本物質に関しては、IARCではGroup3(「ヒトに対する発がん性については分類で きない」)とされております。また、WHOではラットの24か月反復投与毒性試験にお けるNOAELの値を基に、ADIを0〜0.002mg/kg/dayと算出。またEPAではジコホル の慢性のリファレンスドーズを0.0004mg/kg/dayと算出しております。  以上の結果より、本物質は継続的に摂取された場合にはヒトの健康を損なうおそれが あり、また、長期毒性の発現の程度は既存の第一種特定化学物質と比較してほぼ同程度 であり、第一種特定化学物質に相当するものと考えられます。 ○井村部会長 ただいまの説明について、委員の皆様方の御意見、御質問を頂きたいと 思います。その前に、調査会の委員の先生方がここに3名いらっしゃいます。井上委員 と安田委員と渡部委員ですが、何か追加すること、あるいは補足することがありました ら、どうぞ御発言ください。よろしゅうございますか。では御意見、御質問をどうぞ。 ○神山委員 ケルセンは、農薬問題をやっておられるような方からは、随分昔からDD Tを含んでいるとか、有害性があるということをずっと言われ続けていて、第一種特定 化学物質指定というのは当然だと思いますが、どうして今なのか、なぜもっと早くしな かったのかということが非常に不思議だということ。それからもう一つ、農薬として作 ダニ剤というのは分かりますが、化審法は農薬適用対象外ですから、農薬以外の使用例 というのはどういうものなのか、教えてください。 ○事務局 まず一点目、指定の件と指定の時期については、先ほど申し上げましたよう に濃縮性の判定が出たのが平成15年で、それから審議をして現在指定するというもので す。二点目の農薬以外の用途については、例えばシロアリの駆除とかを検討されたと聞 いておりますが、ほかに使用されておりませんので、今般化学物質自体の規制という点 で、第一種特定化学物質に指定の御審議をお願いするということでございます。 ○板倉部会長代理 農薬として使われるということですが、そうすると食品の規制との 関係についてできれば御説明いただければと思います。 ○事務局 こちらはやはり農薬に使われるということで食品に残留する可能性があり、 現在ADIと食品への残留の基準が定められております。ただ今般の指定にも絡んで、 既に今年の2月に食品安全委員会の方に見直しの御審議をいただくように諮問がなされ たところで、今後食品安全委員会の方でADIの見直しについての御審議がされると聞 いております。 ○井村部会長 つまり、それでADIが変われば残留基準が変わるということですね。 ほかにございませんか。 ○安藤委員 この調査会の段階でどういう議論がなされたか伺いたいのですが。非常に 基礎的な、この表です。分解度試験で、BODが0となっています。細かい話で申し訳 ないのですが、殺ダニ剤ということは殺菌作用もあるかなという想像もできます。そう すると、このBODが0というのはどうだったかという議論はなされたのか、そこをお 伺いしたいのですが。 ○井村部会長 つまりバクテリアに対する毒性が出て、こういう結果になっているので はないかという御質問だと思いますが、いかがでしょうか。 ○事務局 こちらの説明が不十分で大変申し訳ございません。BODによる平均分解度 0ということで、これは汚泥の中での分解度を計測しているところですが、汚泥の中に 入れて細菌による分解様式を見ているのですが、それでも全然分解しなかったというこ とで、毒性が出ているのではという話もありますが、特段汚泥の中に含まれるBODの マイナスも出ていませんので、特に細菌の活動を阻害してはいないという判断です。 ○井村部会長 ほかにいかがですか。 ○神山委員 農薬としてはいつ失効したのでしょうか。それから回収もきちんとしてい るのでしょうか。 ○事務局 農薬の登録は平成16年3月に失効しております。そのときにメーカーの回収 が行われていると聞いております。 ○土屋委員 農薬としての有効作用濃度と、動物での毒性作用度の濃度域には、どのく らいの差があるかということは分かっているのでしょうか。 ○井村部会長 調査会でそういうデータは出てきていますか。 ○土屋委員 手元になければまた後でもいいですが。 ○事務局 農薬の登録のときにそこら辺のことは審議されていると思いますので、また 後で委員に御説明したいと思います。 ○土屋委員 全体として第一種特定化学物質にするという方向性については賛成なので すが、やはり先ほど安藤委員が言われたような基本的な微生物に対する作用とか、それ は当然どこかにデータがあると思いますので、先ほどやはりBODは例えばシュードモ ナス等で多分分解性が見られていると思うのですが、そういう菌に対する殺菌効果とか、 そういうものを見て評価していかないと、後々そこはどうなのですかと言われたときに クリアに回答できないと、ちょっと科学的におかしいなと思います。 ○事務局 先ほど申し上げるのを忘れてしまって恐縮ですが、Amesの試験で細菌を 使って行っておりますが、そのときに細菌に対する毒性が出ていませんので、先ほど申 し上げたBODコントロールと比較してもしその物質に殺菌とか制菌の作用がある場合 は、その汚泥中の他の有機物自体も分解がされませんのでマイナスの値になります。ゼ ロということは菌に対する影響もなかったという判断です。その両方の見地から細菌へ の作用がなかったものと判断しています。 ○井村部会長 今のお話は、Amesの方は直接その証拠には到底ならないだろうと思 うのですが。でも、一応BODを測るときは当然そのような試験は行われていると私は 思うのです。そうでないと何も言えないことになりますから。ほかにいかがですか。も しよろしければ皆さん方の議論も大体済んだということにさせていただいて、このケル センについては化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の第2条第2項に規定す る、第一種特定化学物質として指定することが適当であると、この場で決議させていた だいてよろしいでしょうか。それでは指定させていただくことにいたします。  次に議題2に移ります。ヘキサクロロブタ-1,3-ジエンを第一種特定化学物質として 指定する件についての諮問に対して、調査会からの報告が上がってきております。これ についてまず事務局から御説明をいただきます。 ○事務局 資料2-2、「ヘキサクロロブタ-1,3-ジエンに関する調査報告書」の3枚目 です。こちらに構造式がありますが、ブタジエンの水素をすべて塩素で置換した物質に なっております。分子式などについては御覧のとおりです。こちらについては溶媒など に使われていましたが、現在のところは製造・輸入の実績はありません。ということで、 指定しても実質上は今後これが使用できなくなるということです。  1枚めくっていただいて、こちらに分解度試験の結果があります。BODは24%で分 解されずにほぼ残っています。  次のページに濃縮度試験がありますが、平成14年末から平成15年にかけて行われた 試験で、こちらは大体6,000〜7,000倍ということで、こちらも高濃縮という判断がなさ れているところです。  2枚目に戻っていただいて、「六塩化ブタジエンについて(案)」です。こちらについ ても、既存化学物質であり、経済産業省が実施した既存化学物質の点検結果、先ほど申 し上げた平成15年のものですが、1の分解性については難分解、2の蓄積性については 高蓄積性という結果になりました。三番目の人への長期毒性ですが、こちらもケルセン と同じときに調査会の方で御審議いただいているところです。 ○事務局 それでは先ほどと同様に別添3に従って、有害性情報の調査報告をさせてい ただきます。1枚目の1に主な物性が示してあります。2以降に動物実験の結果が示し てありますが、本物質に関してはこのものの代謝活性化体が毒性を示すということから、 動物実験の結果においては種差や性差及び幼若動物で強い毒性が示されております。急 性毒性における主な標的臓器は腎臓で、また肝臓にも毒性が示されております。マウス では感受性が高く、半数致死量は体重1kg当たり60〜80mg程度、ラットではその4倍程 度となっております。  別添3の1〜2ページ以降に反復毒性の結果を示しておりますが、反復毒性において も主な標的臓器は腎臓で、腎臓では重量の増加、尿細管上皮の変性などが認められ、そ れ以外に肝臓や精巣などへの毒性影響が認められております。また、マウスにおける13 週間の反復投与毒性試験において、NOAELは0.2mg/kg/dayと報告されております。  3枚目の中段に示します長期投与毒性試験及びがん原性試験においては、ラットで腎 臓の尿細管における腺腫・腺癌の発生が報告されており、NOAELは0.2mg/kg/dayと報告 されております。  その下の生殖毒性試験においては出生時及び新生児の体重低下、また受胎率の低下や 着床阻害など、生殖毒性が報告されております。  さらに1枚めくっていただいてページの下側、(5)の変異原性試験においては、通常 の変異原性試験においてこの物質は変異原性を示さないものですが、腎臓のS9ミック スを用いて代謝活性化体を作った試験においては変異原性が報告されております。最初 に述べたように本物質は代謝活性化体が毒性の本体であり、腎臓への影響もこれによる ものと思われます。  次のページになりますが、放射標識された本物質を投与した体内動態の試験では、そ の半減期が72時間以内と短いものが報告されておりますが、本物質のシステイン抱合体 が主に腎臓に蓄積されるということも報告されております。がん原性については、IA RCでは本物質をGroup3(「ヒトに対する発がん性について分類できない」)としてお ります。アメリカのATSDRでは、マウスにおけるLOAELを基にヒトにおける最小リスク レベルを0.2μg/kg/dayと算出しております。  また、WHOにおけるEHCでは、マウスにおける13週間反復投与毒性試験の結果及 びラットにおけるがん原性試験の結果を基に、ヒトにおけるNOAELを外挿していて、そ の値は0.03-0.05mg/kg/dayとしております。  以上のように、本物質について継続的に摂取された場合にはヒトの健康を損なうおそ れがあるものと考えられ、また、その長期毒性の発現の程度は既存の第一種特定化学物 質と比較して同程度かそれ以上であるということから、第一種特定化学物質に指定する のが相当ではないかと判断されました。 ○井村部会長 それでは調査会に御出席の委員の方から何か追加、補足がございました らお願いしたいのですが、ございますか。ないようでしたら、ただいまの説明について 御質問、御意見ございましたら、お願いいいたします。 ○神山委員 今、製造・輸入などの実績はないというお話だったと思うのですが、「用 途等」というところに「溶媒」とありますが、いつごろまで製造されたり使われたりし ていたものか、分かりますでしょうか。 ○事務局 本物質はこの化審法制定当時の既存化学物質ということでリストされており ますので、その当時は使用の実績があったのではないかと思うのですが、その後は使用 されていないということでございます。 ○板倉部会長代理 海外で何か使われているという報告はございますか。 ○事務局 海外でも特に使用の実績はないようです。 ○板倉部会長代理 そうすると、いずれにしても規制はしてあるけれども、今後そうい うものが使えないようにするための規制ということですね。 ○事務局 今後、製造・輸入ができなくなるということでございます。 ○竹居委員 既に使われていないというのは、過去に既に何か問題が起こって使われな いようになったのですか。その辺りを教えてほしいのですが。 ○事務局 こちらの指定をするに当たって、海外の方にもどういう使用をしているか、 あるいはどういう汚染があったかという調査を行ったのですが、特にそういった汚染が あったという回答があった国はございませんでした。 ○井村部会長 ほかにありますか。もし御意見がなければ、ただいま説明のありました ヘキサクロロブタ-1,3-ジエンについて、先ほどと同じように化審法の第2条第2項に 規定する第一種特定化学物質として指定することが適当であるというふうにしてよろし いでしょうか。見るからに心配そうな顔をしている化合物ですが、それではこの物質に ついて、化審法の第2条第2項に規定する第一種特定化学物質として指定することを決 議させていただきました。ありがとうございました。  それでは事務局の方から、この二つの件に関してここで決議をして認めると今後どう いう処理が行われるかについて、御説明いただきたいと思います。 ○事務局 本件については薬事分科会長に御報告の上、必要な措置をしていきます。議 決内容については3月17日に開催予定の薬事分科会に報告する予定です。それから答申 のために必要な手続がその後行われて、厚生労働大臣への答申があった後、厚生労働省 としては速やかに化審法の政令の改正、つまりこの指定ですが、その手続をとることに しております。改正の時期については、化審法は経済産業省と環境省の共管法律となっ ておりますので、関係省庁と連絡をとりつつ、早期に実施していきたいと考えておりま す。 ○井村部会長 ただいまの説明について、何か御質問、御意見ございますか。そういう ふうに処理されるそうです。よろしいでしょうか。  それでは議事次第の4の報告事項に移ります。議題1の「化学物質の審査及び製造等 の規制に関する法律に基づく新規化学物質等の判定結果について」、これを事務局の方 から御説明いただきます。 ○事務局 まず資料3-1です。こちらに表になっておりまして、前回御報告させていた だいてから今回までの間に審議が行われた物質についてまとめたものでございます。平 成15年度の第5回のときは新規が36物質、それから6、7、8、9、10回と審議され ています。次のページには平成16年度の分をまとめております。第1回から第9回まで です。平成15年度については220物質、平成16年度については第9回までですが、303 物質が審議されているところです。既存の化学物質については既存化学物質名簿に入っ ていたものですが、平成15年度が44物質、平成16年度が73物質、審議しているとこ ろでございます。  この中で、平成15年度の方を見ていただきますと、指定化学物質相当とされた物質の 数が新規では34、既存では41となっております。次のページで、平成16年度の第1回 からの方を御覧ください。今までは指定化学物質と特定化学物質という制度でしたが、 化審法の改正に伴って、第一種監視化学物質、第二種監視化学物質、それから環境への 影響の観点で第三種監視化学物質ということになりまして、第一種監視化学物質とされ たものが22物質、第二種監視化学物質とされたものについては新規が8、既存が17、 第三種化学物質として判断されたものについては新規が5、既存が52となっているとこ ろです。  これらのうち、資料3-2が第一種の監視化学物質と判断された物質、資料3-3が既存 化学物質のうち監視化学物質と判断されたものの調査概要です。資料3-4については新 規化学物質ごとの概要です。以上報告させていただきます。 ○井村部会長 ただいまの報告について、御意見、御質問ございましたらどうぞ。 ○事務局 資料3-2、3-3、3-4については個々の物質については告示前ということなの で、名称ではなく物質番号での御発言をお願いいたします。 ○井村部会長 物質名をおっしゃらずに番号でお願いするということですが、いかがで しょうか。一番最初に成田室長の方から、本年は第1回というお話がありましたが、年 度末で第1回ですから各年度に1回ぐらいしか開いていないわけですけれども、調査会 の方はかなり何回も開いていただいて審議をしてくださっているようです。いかがでし ょうか。 ○神山委員 非常につまらないことですが、資料3-4の資料の書き方について、例えば 96ページの35というところでは区分として「特例(低生産量)」と書いてあって、36は 区分が「通常」と書いてあるのですが、それより前のものには「区分」という欄そのも のがないように思うので、この区分というのは何の区分なのかということと、通常とい うのは何が通常なのか、教えていただきたいと思います。 ○事務局 こちらについては化審法上の取扱いの区分で、生産量によって当然環境への 影響等も変わってきますので、このような区分を設けているところです。10トン以上生 産しているものについては通常の審査。10トン以下のものについては、この区分に従っ て必要なデータに基づいて審査をお願いしているということです。区分が書いていない ものについては化審法改正前の審査です。 ○井村部会長 よろしゅうございますか。ほかに御質問、御意見ございませんか。調査 会の方から何か追加、補足がございましたら。井上先生、よろしゅうございますか。区 分については今の説明でよろしいわけですね。 ○井上委員 全く事務局の御説明のとおりなのですが、10トン以上問題と申しまして、 従前の量的な規制が改定になって変わりまして、10トンを低生産量としてその審査を新 しい方法でしておりますので、これについてはこのリストを御覧になると毒性データが ないのですが、それについての区分です。 ○安藤委員 ちょっと教えていただきたいのですが、たしかこの法律は生態毒性が入っ たかなと思います。この資料3-3、3-4を見せていただくと生態毒性が書いてあるという ことになりますが、具体的にどういうことで生態毒性は評価されて、ネグリジブルでい いとか、あるいは考えなければいけないとか、そういうシステムがあると思うのですが、 それを簡単に御紹介いただけますでしょうか。 ○井村部会長 例が今日の資料2-1辺りにありませんでしょうか。 ○事務局 こちらについては参考4を御覧いただければと思います。3ページの(4)に 「生態毒性試験」の記載がございます。これは主に三つありまして、藻類生長阻害試験、 これは藻の阻害試験、それからミジンコの遊泳能力の阻害試験、魚の急性毒性試験、以 上の3点です。 ○安藤委員 そうすると例えば資料3-2で一番右の「環境省モニタリング情報」という のは、今までやった情報ということになるのですか。 ○事務局 こちらについては毒性の情報ではなくて、環境中のサンプルを採ってきて、 その中にこの物質が含まれているか、含まれていないかを検出するというものです。俗 に黒本と呼ばれているかと思います。 ○井村部会長 先生、測定なさったのではないですか。ほかに御質問ございませんか。 ○神山委員 質問ではなくてお願いなのですが、資料3-3が厳重管理で全部回収という ことになっているのですが、一番後ろの3枚は通知のような文章なのです。多分これに 指定予定物質の一覧表が付いているために、これ全体が厳重管理になっているのだと思 うのですが、この通知のようなものは全然厳重管理でも何でもないと思うので、この表 を切り離してコピーして、私頂きたいのですが。 ○事務局 後で対応させていただきたいと思います。なお、今後既存化学物質について の審議は公開で行うことを検討させていただきたいと思っておりますので、よろしくお 願いいたします。 ○井村部会長 ほかにございませんか。よろしければ今説明のありました報告事項につ いて、ここで了承したということにさせていただいてよろしゅうございますか。ありが とうございました。  次の議事は5のその他です。事務局の方からその他に該当する議題がありましたらお 出しいただきたいのですが。 ○事務局 特段連絡はございませんが、次回の薬事・食品衛生審議会、こちらの部会に ついては開催日程は今のところ未定ですが、追って日程の調整をさせていただきますの で、よろしくお願いいたします。なお、先ほど申し上げましたとおり、資料3-3、3-4及 び、資料3-2ですが、こちらについても、本日回収とさせていただきたいと思いますの で、机の上に置いておいてくださるようお願いいたします。 ○井村部会長 成田室長、何かございますか。 ○化学物質安全対策室長 本日はどうもありがとうございました。先ほど神山先生から も御指摘がございましたが、既存化学物質については3省共管で、今どのような形で公 表させていただくか検討中ですので、できるだけ早く3省ともフォーマットを合わせて、 既存化学物質については公表する方向でさせていただきたいと思っております。 ○井村部会長 連絡事項が先にきてしまいましたが、今日全体を通して何か御要望なり 御意見なりございましたら。よろしゅうございますか。それでは以上をもちまして、平 成16年度の第1回化学物質安全対策部会を終了させていただきます。御協力ありがとう ございました。   ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 化学物質安全対策室 室長補佐 江原(内線2426) - 1 -