05/02/09 第3回結核医療に関する検討小委員会議事録           第3回厚生科学審議会感染症分科会結核部会              結核医療に関する検討小委員会   第3回厚生科学審議会感染症分科会結核部会結核医療に関する検討小委員会議事録 1 日時 平成17年2月9日(水)14:00〜16:00 2 場所 経済産業省別館1014号会議室(10階) 3 出席者 (委員)   加藤 誠也、坂谷 光則、重藤 えり子              雪下 國雄(敬称略)       (参考人)  森光 敬子、吉山 崇(敬称略)       (厚生労働省)岡島審議官、牛尾結核感染症課長、              滝本感染症情報管理室長、塚本課長補佐、              前田課長補佐、新課長補佐 ほか 4 議題  (1)発病前治療について       (2)結核患者の入院基準について       (3)結核病床数の考え方について       (4)その他 5 内容   次葉以下に記載 ○事務局  定刻なりましたので、ただいまから第3回「厚生科学審議会感染症分科会結核部会結 核医療に関する検討小委員会」を開催いたします。  本日は、阿彦委員、青木委員、山川委員が御欠席との連絡をいただいております。な お、前回まで委員長を務めていただいた森結核研究所長は10年の任期が終了いたしまし た。かわって新しく委員に就任された先生を御紹介いたします。結核研究所研究部長兼 結核対策部長加藤誠也委員です。更に、本日は参考人としてお二方御出席いただいてお りますので、御紹介いたします。独立行政法人国立病院機構医療課長森光参考人。それ から、結核予防会複十字病院第一診療部付部長吉山参考人です。  開催に当たりまして、牛尾結核感染症課長よりごあいさつを申し上げます。 ○牛尾課長  先生方にはお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。先ほど御 紹介申し上げましたように、本日は新しい委員もいらっしゃいますので、これまでの経 緯等について若干御説明させていただきたいと思います。  この結核医療に関する検討小委員会でございますけれども、結核患者に対する適切な 医療提供の在り方、化学予防の対象の見直し、入院期間や結核病床の在り方などのテー マを、この上位の組織でございます厚生科学審議会感染症分科会結核部会より与えられ まして、御議論いただいてまいりました。本日で3回目を迎えるわけでございます。  第1回目では、主に治療中断者や治療に非協力的な者に対しての医療提供の在り方及 び結核病床について。  第2回目では、主に化学予防の対象の見直し、入退院基準、結核病床について非常に 活発な御議論をいただいたところでございます。  おかげさまで前2回の委員会で与えられた命題について、一通りカバーできたと、結 果として大部分のテーマについてはおおよその方向性が見えるところまで来たのではな いかなという印象を持っています。  そこで、本日第3回目で予定としましては、最後の委員会とすることに考えておりま すけれども、第1回目及び第2回目での主な意見を整理した上で、入退院基準の学会の 見解、それから国立病院機構の退院基準、更に結核に関する必要病床数の算定の考え方 を先生方に御発表いただくとともに、関連するテーマに関する事務局の考え方をお示し しまして、最終的な御意見をちょうだいしたいというふうに考えております。  なお、当初一番議論になりました入所命令に対して強制力を持たせるかどうかという ことでございますけれども、これにつきましては、さまざまな議論をいただきました が、結核が感染症法で言うところの二類感染症以上に法制的に強制的な措置を必要とす る疾患かどうかという見地からの政策判断が必要でありますし、また同時に、こうした 強い人権制約を伴う措置を規定するためには、社会防衛、医学上の必要性と同時に人権 との調和という観点からも、整理がついている一般法である感染症法等を用いて行うこ とが必要でございまして、すなわち、今後、感染症法との統合ということが前提になる のではないかなというふうに我々としては考えているところでございます。  以上、今回も先生方から忌憚のない御意見を賜りまして、活発な御議論となることを 期待いたしまして、開催に当たりましてのごあいさつとさせていただきます。どうぞよ ろしくお願いいたします。 ○事務局  初めに新しい委員長ですが、事務局の方から国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 長の坂谷委員を推薦したいと思いますが、いかがでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○事務局  それでは、坂谷委員に委員長をお願いしたいと思います。この後の議事の進行につき ましては、坂谷委員長よろしくお願いいたします。 ○坂谷委員長  承知いたしました。ただいま委員長に指名を受けました坂谷でございます。今後とも どうぞよろしくお願いをいたします。  それでは、本日の議事を進めてまいることにいたしますが、まずは、事務局の方から 資料の確認をどうぞよろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは、資料を確認させていただきます。  まず初めに、資料1といたしまして、「第1回及び第2回結核医療に関する検討小委 員会議論の要旨」。これが2枚紙でございます。  資料2、「潜在結核感染者に対する発病前治療について」。これも2枚の資料でござ います。  資料3といたしまして、「結核の入院と退院の基準に関する見解(日本結核病学会) 」。こちらは日本結核病学会の見解でございます。  資料4といたしまして、「国立病院機構における結核患者の退院基準について」。  資料5といたしまして、「国立病院機構における結核患者の退院基準に関する取り組 み」がございます。  資料6といたしまして、「入所命令の対象及び命令入所の期間について(処理基準) (案)」。事務局の資料でございます。  資料7といたしまして、「結核病床数算定の基礎」。これも2枚の資料でございま す。  資料8といたしまして、「医療法上の結核基準病床数の位置づけ(今後の展望)」。  資料9といたしまして、「都道府県における結核病床数算定式について(技術的助言 )(案)」。  最後に参考資料といたしまして、『結核』に掲載されました吉山参考人の論文がござ います。  以上でございます。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  さて、本日の会議の進め方でございますが、まず初めに、事務局から本日までの第1 回と第2回のこの検討小委員会の議論のまとめについてプレゼンテーションいただきま す。それからこれについて御意見を皆様から伺います。  そうしまして、引き続き3つの本日の課題、すなわち1つ目が化学予防。2つ目が結 核患者に対する適切な医療提供の在り方、とりわけ入退院の基準及び入所命令につきま して。それから3つ目といたしまして、結核病床について。この3つの課題につきまし て、それぞれプレゼンテーションをいただきます。質疑は、各議題ごとにプレゼンテー ションの後受け付けたいと、こういうことにいたしたいと思いますので御了承くださ い。  それでは、まず最初に、事務局から第1回と第2回の検討小委員会の議論のまとめに つきまして、プレゼンテーションをいただきます。どうぞよろしく。 ○事務局  それでは資料1「第1回及び第2回結核医療に関する検討小委員会議論の要旨」をご らんください。  こちらには前2回の議論の主な御意見をまとめているものでございますが、テーマに つきましては、主に「入所命令制度」それから「結核審査協議会の診査事項」、「公的 関与に基づく治療支援」、「化学予防」、「入退院基準」、「結核病床」及び「モデル 事業」の評価といったテーマにつきまして御議論をいただきました。  それでは、個別に見ていきたいと思います。  まず「入所命令制度」についてでございますが、御意見としましては命令に強制力が ないために苦慮する事例がある。ただし、すべての結核患者に対して強制力を行使する 必要はないので、入所の勧告を前提とした制度とすべきと。  それから、入所命令期間については、最近の検査技術の進歩を踏まえた見直しが必 要。  また、長期排菌患者に対しては、強制力を持って入院とさせなくても、自ら納得して 入所に応じる方法を検討する方法もある。感染に関する注意を守った上で、家庭で問題 なく過ごしているケースもあるといったような御意見をいただいております。  続きまして「結核診査協議会の診査事項」といたしましては、入所命令の適否の診査 は、結核患者の入院後に実施される例が多く、個別の事前診査ができないといったよう な御意見がございました。  また、命令入所中の結核医療の質の診査に関する権限がない。  入退院基準、適応の方法を診査の対象とすべきといったような御意見もちょうだいし ております。  続きまして「公的関与に基づく治療支援」といたしましては、塗抹検査の結果にかか わらず、治療中断の防止を目的とした公費負担制度が必要といった御意見をいただきま した。  続きまして「化学予防」ですが、発病前治療と発症者に対する治療が混同されること もあり、呼称を工夫すべき。  それから最近の感染者については年齢の上限を設けずに、化学予防の対象とすべき。 また、既感染で未治療の方で、発病リスクの高い方についても、化学予防の適応を拡大 すべき。  化学予防の適応を拡大する際には、メリットとデメリットをきちんと検証し、最終判 断をすべき。  真のハイリスク者特定のための検査精度が向上すれば、副作用の弊害は相対的には減 少する。  線維化した古い病巣に対するINHの効果については、1970年代の研究により証明さ れているというような御意見もいただいております。  続きまして「入退院基準」ですが、まず入院基準として必要な条件は感染性が高い状 態であること。そして、適切かつ確実な医療提供のために入院が必要であることが条件 として挙げられる。感染性が高いと考えるべき状態は、未治療の喀痰塗抹陽性肺結核患 者、または喉頭・気管支結核の塗抹陽性の患者さんで、その生活環境、行動から他者に 結核を感染させるおそれの高い状態である方。適切かつ確実な医療提供のために入院が 必要の場合とは、重症度や合併症の状態により入院治療が必要と判断される状況及び治 療中断が予測され、再燃、薬剤耐性かを来す可能性が高いと判断される場合を言う。  感染性の消失と退院後の治療の継続性が確保できれば、結核治療のための入院は不要 となる。感染性の消失は、塗抹陰性化または菌量の減少、自覚症状の消失、その他の検 査所見の結果の総合的な判断による。ただし、多剤耐性の場合はこの限りではない。ま た、退院後の生活の場が集団生活である場合などには、2週間に1回以上の塗抹検査ま たは培養検査で連続2回以上陰性であることが望ましい。  そして入院治療を考える際には、入院だけではなくて診断、通院治療もセットにして 考えるべきと。退院の早期化が、治療の完遂を妨げる結果となってはいけない。  また、多剤耐性化を防ぐために、これが予想されるケースについては、公費負担を前 提とした強制的な治療介入を制度として確立するべき。  職業にもよるが、退院許可が必ずしも就業禁止解除を意味しないことを明記するべき かもしれないといったような御意見をいただいております。  続きまして「結核病床」についてでございますが、全国一律の病床数算定基準を廃止 し、新規感染性結核患者の感染性消失までの入院に要する病床数及び慢性排菌等長期の 入院に要する病床数等、公衆衛生上必要な病集数を都道府県知事が定めることとする。  結核病床、入院期間、入退院基準はいずれも相互に関連のある課題であり、入退院基 準を整理して、適切な入院期間で退院することとなれば、更に空床が増えるのは自明で あり、並行して地域差を勘案した適正な結核病床数及び配置を早急に検討すべきとの御 意見をいただいております。  そして平成4年から実施しております「モデル事業」を一たん評価をしようというこ とで、第2回で御議論いただきました。「モデル事業」は現在、平成16年4月1日現在 で54施設274 床において実施されております。  先日アンケートを取りまして、実施医療機関の御意見といたしましては、施設要件に ついては、陰圧及び二重扉であれば、引き戸である必要はない。それから独立換気、陰 圧設備は必須事項ではないか。病室内の殺菌設備の設置は、除菌や安全確保面からは効 果的ではない。また、患者管理の要件としましては、排菌がある間は通常のマスクでは なく、外科用マスクを着用すべき。そして単科精神科などでは、経験を有する内科医の 非常勤併任で十分ではないか等の御意見をいただいております。  また、総合的な事項としまして独立換気の個室を多くの病院で備えることにより、結 核に限らず空気感染をするあらゆる疾患対応可能となり、院内感染対策にも資するもの であるといったような御意見をいただいております。  以上でございます。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  ただいまのがこれまでの2回の検討小委員会の議論のまとめでございます。事務局が まとめましたこれにつきまして、御意見をちょうだいしたいと思います。どうぞ。何か ありませんでしょうか。  よくまとまって、ポイントをついて記載をされているとは思いますけれども。よろし ゅうございますか。まとめとしては、これで御異存ございませんか。  ありがとうございます。それでは、これをもって今までの2回の議論の要旨というふ うに決定をさせていただきます。  続いて、本日の本題に入らさせていただきます。まず最初に、化学予防につきまし て、事務局よりプレゼンテーションをいただきます。どうぞよろしく。 ○事務局  それでは、資料2「潜在結核感染者に対する発病前治療について」をごらんくださ い。  まず初感染結核というふうに今まで言われておりましたが、結核に感染はしているけ れども発症はしていないような患者さんの治療についてでございますけれども、平成元 年の通知によりましてINHへの単剤投与の対象が29歳以下の方について行うというこ とが基準とされておりました。しかし、第2回の結核医療に関する検討小委員会で重藤 委員の方から御発表いただきましたが、日本結核病学会の予防委員会の見解といたしま して、より化学予防を積極的に、メリットがある方については適応を拡大するべきでは ないかといったような御意見を踏まえまして、こちらに事務局として整理したものを提 示させていただいております。  まず、INHの内服により発病を予防できる方というのが、必ずしも29歳以下のいわ ゆるマル初の方に限るわけではなく、より対象を広げるという意味で、従来の初感染結 核で特に軽度の症例といった適応対象に替えて、潜在結核感染者で医師が特に必要と認 めた症例と、まず大枠を広げて、その上でその詳細については、資料2の中段から以降 にございますが、下記のア、イ、ウのいずれかの条件を満たすもの、かつ医師が特に必 要と認めたものについては、INHの単独投与を34条の下で認めてもいいのではないの かというようなことを考えております。  その詳細についてでございますが、まずアといたしましては、これは従来どおりの最 近の感染という概念でございますが、これの年齢制限を撤廃したものでございます。感 染性結核患者と最近6か月以内に接触があり、ツ反等の検査結果から、医師により、感 染を受けたと判断された者。  そして、続きましてイでございますけれども、これは結核のツ反ですとか、あるいは レントゲンの所見ですとか、そういった検査の結果から、結核の既往がどうもありそう だけれども、治療の既往がないもので、かつ最終的には医師の判断になりますけれど も、INHの投与によってメリットを受けられるというような見込みが強い方につい て、を規定しております。  そしてウですけれども、こちらは医学的な結核発病リスク要因を持った方であって、 またこれも最終的には医者の判断になりますけれども、読まさせていただきますが、ま ず(1)といたしましては、ヒト免疫不全症候群ウイルス感染者及びその他著しい免疫抑 制状態の者については、感染性結核患者との最近6か月以内の接触歴、またはレントゲ ンあるいはツ反等の総合的な検査の結果で、結核感染が強く疑われ、かつ結核治療の既 往がない方。  そして(2)といたしましては、免疫抑制作用のある薬剤、これは注1というのが資料 1の2ページ目にございますけれども、こういった薬剤を使用している方については、 ツ反、あるいは胸部レントゲンの所見にて結核感染を疑わせるような所見が得られてい る方、かつ結核治療の既往がない方。  以上が、特に免疫抑制状態にある方についての規定でございます(3)といたしまして は、じん肺、糖尿病、人工透析治療中など必ずしも強い免疫抑制状態ということには限 らないけれども、結核発症リスクが高いとされている方々については、ツ反あるいは胸 部レントゲン上の所見から結核感染を強く疑われ、かつ結核治療の既往がない方につい ては認めるというような記載でございます。  そして、このINHの単独投与の実施に際して幾つかの留意事項を資料2の2ページ 目のア、イ、ウ、エに記載してございます。  まずアといたしまして、対象者の選定に当たっては、投与により得られる利益及び起 こり得る副作用の影響等を十分に考慮した上で、はかりにかけてメリットの面が十分大 きいと考えられる場合に限って行うということ。  そして、INHの高齢者に対する投与は、若年者よりも肝障害の出現が頻度としてよ り高いということが言われておりますので、肝障害の出現を注意深くモニタリングし、 実施すること。  そしてウといたしまして、INHの単独投与ですので、活動性の結核患者さんに行っ てしまっては単剤治療となってしまいますので、必ず潜在性、発症していないことを確 認して行うこと。  そして、中途で服薬を中断しないように、服薬状況を確認しつつ実施することとして おります。  以上です。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  いかがでございましょうか。この資料2につきまして、御議論願いたいと思います。  加藤委員は初めてでちょっと戸惑っておられるかもしれませんけれども、今の事務局 からの御説明、この文章はいかがでございますか。何か御意見がありましたら。 ○加藤委員  ちょっとふなれで申し訳ありません。  INHの予防投与中に発症するという例も中になくはないと思うんです。そういう辺 りの配慮を入れておく必要は、いかがでございましょうか。 ○坂谷委員長  重藤先生どうでしたか。何か話題には出たような記憶はありますね。 ○重藤委員  発症されたのが、まず留意するのを、活動性結核患者を対象として選定しなしように というのがまず一番大事な事項であろうと思います。勿論、活動性が否定できて、発病 前治療をしていても途中で発病することはあり得るわけですけれども、それを改めてこ こに明記して挙げるかどうかというのは、ちょっと私も記憶にありません。治療する医 師の、医療側の方の当然の注意ではあろうと思います。ですから、挙げておけばそれに こしたことはないであろうと思います。 ○坂谷委員長  そうですね。思い出しました。そういう議論であったと思います。  雪下委員、御議論ございませんでしょうか。 ○雪下委員  専門の先生方からの意見を聞かせてもらってと思っておりますが、子どもたちの学校 内でのツ反、BCG検査を廃止したときに、以前にBCGを1回でもやっている場合に は、その後のツベルクリン反応というのは全く当てにならないということで、廃止した ようにも思っているんですけれども、ここを見ますとツベルクリン反応というのがかな り重要な地位を占めているということ。これについてちょっと専門的な先生方からの意 見を聞かせてもらえればと思っております。 ○坂谷委員長  重藤先生、いかがですか。 ○重藤委員  ツベルクリン反応というのが全く当てにならないというわけではなくて、その状況に よりかなり信頼できる場合もあるしということです。ですから、学校におけるというの は感染の機会があるかないかということで言えば、感染の機会がないのを前提にした状 態でツベルクリンをして、それからかなり過剰な予防内服というのが挙がってきていた わけですけれども、そういうものと本当に感染をしてひっかかってくる子どもとてんび んにかければ、もう過剰な方が非常に多かったからということだったと思うんです。  この場合のツベルクリン反応というのは、確かに問題はあると思うんですけれども、 ほかに適切な方法がない。何かリスクが高いというのを特定しようとすれば、まずこの ツベルクリン反応でしょうかと。勿論、陰性になりやすいような方々が対象になります ので、陰性でも否定できないけれども、ツ反がかなりの反応があれば感染している可能 性が高いということで、ここに入れてあるということになると思います。  もう一つ、学校でのツ反について言いますと、繰り返しツ反をしていますと、いつま でも強いわけですけれども、乳幼児期にBCGをした後、ツ反をずっとしなければ10年 も経てばかなりツ反は今よりも信頼できる状態になるというふうに考えています。 ○坂谷委員長  課長どうぞ。よろしくお願いいたします。 ○牛尾課長  雪下先生の御指摘はもっともでございますが、ここにツ反等と書いてございますが、 実は若干意味がございまして、間もなくBCGの要因を排除できるクオンティフェロン が承認の見込みとなっておりますので、それを用いればBCG以外によるものという判 定が可能になるということになりますので、ツ反等という表現で、今の段階でまだ承認 されていないものですから、そこは書いてございませんが、そういう意味合いを含んで いるというふうに御理解いただければと思います。 ○坂谷委員長  ということでございます。雪下先生よろしゅうございますか。 ○雪下委員  わかりました。 ○坂谷委員長  今、課長が申しましたようにすべてツ反の後には、「ツ反等」と全部「等」の字が入 っております。それで、私の前任者の、加藤先生の前任者の森先生が中心になって今、 精力的に新しい検査法につきしましては、認定に向けて動いておりますので、いずれあ れが採用されました暁には、ツ反に取ってかわる可能性が随分ある、精度も高くなる と、こういうふうに理解しております。  それから蛇足ですけれども、ツベルクリン反応も特に接触者健診のときには、接触者 すぐの、まだ値が上がっていない時期のコントロールをとりまして、それから2、3か 月後に改めて陽性か、影響が出てきた時期にもう一度はかって、それでその間の差をと ってという方法もここには書かれていませんけれども、適応した上での話というふうに 理解してもよかろうかと、こういうふうに思っております。  ほかにいかがでしょうか。委員の方々から御意見、御質問、それからその他のことご ざいましたら、お願いしたいと思います。重藤委員どうぞ。 ○重藤委員  これは、ここのア、イ、ウの中のアと一部イについて今まで公費負担制度で申請をし て認められていたということですけれども、ウについても同じように扱うということで すね。 ○事務局  さようでございます。ただし、こちらは公費負担で費用は34条で見るのではあるんで すけれども、ただ、副作用に対する治療が必要となったような場合には、それは公費負 担で見るわけではないということは、通常の医療で医師が薬を使うのと同じような扱い になるというふうに御理解いただければと思います。 ○坂谷委員長  よろしゅうございますか。  ほかにいかがでしょうか。吉山参考人どうぞ。 ○吉山参考人  これは、イソニコチン酸ヒドラジドについて書いてありますけれども、イソニコチン 酸ヒドラジド耐性結核の接触者に対するリファンピシンなどについては、何も記載がご ざいませんけれども、それについては30歳以上については今後も対象としないというこ とでしょうか。 ○坂谷委員長  事務局の方からいかがでしょうか。 ○事務局  従来、結核医療の基準の告示のところに、ただし、INH耐性の場合はリファンピシ ンの単剤も認めるというような記載があったんですけれども、これについても、両方と も耐性ということもありますでしょうし、見直しが必要というふうには思っておりま す。こちら一般的な多くのケースについて、こういうふうしますということで、その例 外的な部分については少し検討する必要があるというふうには思っております。 ○坂谷委員長  よろしゅうございますか。  リファンピシンに関しても、同等の扱いというふうにおおむね理解をしておるわけで す。  その他ございませんでしょうか。  ありがとうございました。それでは、この件に関しましてしは、御議論が出尽くした ように思います。  続きまして、入退院の基準に関しまして、まず重藤委員から結核病学会の見解につい てプレゼンテーションをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○重藤委員  学会としての「結核の入院と退院の基準に関する見解」というのを学会の3委員会で 合同でまとめまして、治療委員会の委員長ということで私が最後のまとめをしておりま す。御説明いたします。  まず前文ですけれども、隔離を目的とした入院治療ということについては、入院期間 の短縮が必要であろうと。それから、それだけではなくて治療成績、それから院内感染 の問題、そういうものも考慮した上で今までの入院治療というのを見直しましょうとい うことで、I以下の項目を細かく規定いたしました。  前文の後半の方に「医療経済上の配慮」という言葉があるんですけれども、これは例 えば、治療を継続させるためのDOT、それをきちっとできるような体制でありますと か、例えば細かいことでは菌検査を少なくとも2週間に1回以上という場合に、保健診 療所がそれを認められるようにとか、そういうことも配慮していただきたいということ で、その文章が入っております。  まず「入院の基準」ですけれども、そこに3項目挙げておりまして、1番の「結核と しての感染性が高い状態」。もうこれはこれまでどおりの入院の要件ということになり ます。注の1で肺結核または喉頭、気管支結核でおおむね2週間以内喀痰で抗酸菌塗抹 陽性で、数回したうちで1回以上得られていればいいということで、しかも、その生活 環境、行動から他者に結核を感染させるおそれが高い。これは、今までのいわゆる命令 入所の基準とほぼ同じだと考えております。  2番目がかなり今回入れたいと思って入れた項目でして、結核の場合には長い目で見 ますと、だんだん治療不能になっていくということがありますので、それを防止すると いう、かなり予防的な側面があるんですけれども、現時点での感染性は1ほど高くはな いけれども、入院治療を行わなければ、将来、特に多剤耐性結核となる可能性が高く て、今、押さえておかなければ将来感染性になるだろうという条件を入れております。  それから3番目は、もうこれは医療提供が、患者さんの状態が入院治療が適切である と。しかも、一般病棟よりも結核病棟の方がよろしいでしょうと、適切でありましょう と、そういう条件です。  2番目につきましては、かなりいろいろ議論というか問題はあるとは思うんですけれ ども、注の2で1、2、3、4、5、6と掲げております。  1番は「外来治療中の再排菌」。これはもう治療中の悪化ですので、当然治療の見直 しが必要ですし、耐性菌になっている確率が高い。  2番目も同じです。再発であって、以前に薬剤耐性があった、もしくは不規則治療が あった方。  これも一部問題はあるかとは思いますけれども、多剤耐性の方から感染を受けた可能 性が大きい。これも多剤耐性菌であって、治療が難航する可能性が高いということで す。  本来は、この4番目を私は強調したかったんですけれども、外来治療で服薬の継続性 が確保できない場合に、やはり入院していただかないと今までのDOTでは治療の継続 が確保できない方がどうしてもある、ということでここに入れております。  3番目ですけれども、これは医学的に入院治療が必要と。ただし、後半ですが、喀痰 以外の検体で結核菌陽性の場合、あるいは肺結核であっても喀痰抗酸菌塗抹連続3回陰 性の場合、これは感染性がほぼない、非常に低いと考えられますので、その患者さんの 状況により一般病床での治療も可能であるというふうに明記いたしました。  それからIIが、「退院の基準および外来治療」です。これは、入院が必要になったら 退院すればいいというのではなくて、退院をするということは外来治療に引き継がれる ということですので、「および外来治療」というふうに記しております。  その条件としまして、まず「感染性が消失したと考えられる」こと。  2番目に「退院後の治療の継続性が確保できる」。すなわち外来治療が継続できると いうことです。  注の方ですが、1番の「『感染性が消失したと考えられる場合』とは」まず薬剤感受 性を考慮したものであって、適切な治療が行われている。それから、そこにまたはまた はまたはとありますけれども、かつそのまたはのいずれかを満足して、総合的に改善し ていると判断できればよいという文章です。現実的には、臨床科としては大体2週間か ら2か月程度、こういうことを確認するのにはかかるのではないかなというふうに記載 しました。  退院後の生活の場が、病院、施設など集団生活。また、新たに乳幼児、免疫不全状 態、要するに、感染を受けた場合に発病の危険性が非常に高い場合、しかも、新たに同 居するという場合には、感染性について少し厳しく考えなければならないということで 菌検査の条件として、2週間に1回以上の喀痰抗酸菌塗抹検査で連続2回陰性と。また は、これは塗抹陽性が続く場合もあるので、培養連続2回陰性という条件も入れており ます。これは、職場等で乳幼児、免疫不全状態の者と接触する機会が多い場合には復職 の基準ということになると思います。  ただ、以上の条件というのは、多剤耐性結核で入院していただいた場合には、該当さ せないと。多剤耐性結核の場合には、より厳しい基準で退院していただかなければ難し いであろうということを記載しました。  2番目に「『退院後の治療の継続性が確保できる場合』」というのはDOTS、そち らの方に引き継がれて治療の継続性が確保される、最後まで治療が続けられると予測さ れる場合。ですから、これはある意味逆に言えば、退院後のDOTが全く体制が整って いないのに、退院させると問題がありますよという意味になります。  III に、「治療後の経過観察等」ということなんですけれども、これは包括的見直し に関する提言におきまして、保健所における管理健診の必要性は乏しいというふうにさ れておりますので、それに準じてという形で、標準治療をきちんと完了したものについ ては、その後の、これは保健所における観察という意味になると思いますけれども、観 察は原則として不要である。  ただし、それ以後の治療終了時、患者には再発の可能性について十分説明し、具体的 にこうこうこういうような症状があった場合には受診するように、それから定期健診も できるだけ受けるように、というふうな注意をしておくことということです。  治療の中断や副作用、それからリファンピシン耐性、これは日本においてはもうほぼ すべてが多剤耐性になると思いますけれども、こういう方で再発の可能性が高い場合に は、やはり2年間はきちんとしたいわゆる管理健診のような形のものが要るのではない かというふうに記載いたしました。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  御議論はもう一つの基準も説明が済みましてから、行うことといたします。  重藤先生ありがとうございました。  続きまして、本日の森光参考人より国立病院機構の退院基準策定に至る経緯につきま して、御説明をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○森光参考人  私国立病院機構本部医療課の森光と申します。本日は国立病における結核患者の退院 基準ということで、策定をさせていただきました。その経緯を私の方から御説明させて いただきまして、中身につきましては専門家であります坂谷先生の方からお願いをした いというふうに思っております。  国立病院機構ということで、昨年4月に独法化をいたしましてスタートいたしました けれども、その中でやはりこれまで政策医療という形で担ってきました結核ですとか、 ジュシシスとか筋ジスといった分野につきまして、医療面それからハード的な面につき まして、いろいろな見直しをしていこうということで、昨年旧療養所型病院の活性化方 策に関する検討会ということで、その方向性について検討を行ってきました。その中の 結核部会ということで、9月に中間まとめということを出させていただきました。そこ では、今後どういうふうに医療の質を上げていくかというようなことですとか、それか ら勿論ハードをどういうふうに変えていくかといったようなことを方向性として出しま したけれども、その中でやはり均一医療の提供ということで、退院基準ということをき ちっとまとめようということを打ち出しまして、その後、結核部会というところで勿論 結核予防学会の見解を横目で見ながら、それと整合性が合うような形で、かつ具体的に 医療現場で使えるようなものをということで議論を重ねてきたということでございま す。そのようにして結核患者の退院基準ということをつくらさせていただいたところで ございます。  中身につきましては、済みません、坂谷先生お願いいたします。 ○坂谷委員長  森光先生ありがとうございました。  それでは、私当方から資料4と資料5を使いまして、国立病院機構の退院基準及びそ の憲章につきまして御説明を申し上げたいと思います。  資料4の2ページを開いていただきますと、学会のものよりは短いんでございます が、前文が書いてございまして、特に学会の基準と整合性を持たせなければならないと いうところ、その作業に苦心をしたということを特記してございます。  Aの部分で「退院基準作成の背景と見解」については、今、森光参考人の方から御説 明もございましたが、特にこの2つに視点を置いてつくったのであると。  現在の感染対策としての退院基準に合理性が乏しく、諸外国と比べて非常に入院期間 が長くなっております。その大幅な短縮が世界的に見ても我が国で行うということが望 ましい。  2つ目としまして、同じようなことですけれども、病院及び主治医ごとに退院基準が まちまちであって統一されていない事実がございます。今後は、日本の結核医療の大部 分を担っております我々国立病院機構として、一体性を打ち出していく必要がございま す。これに基づいてつくりました、ということなのであります。  医学的な考え方につきましては、2ページの下の部分に書いてございます。世界的な トレンドといたしましては、入院が最も大事なので隔離が大事なのではないと。本人の 治療を完遂することが一番大事であって、それが周囲への感染対策にもなり、地域の患 者の罹患率の減少にも結びつくのであろうと。それがやりやすい外来DOT、これが世 界的なトレンドになっておると。日本もその流れに乗ろうと、こういうことなんでござ います。  次に3ページを開いていただきますと、基本的な方針を以下の2つに書かさせていた だきました。  「結核病学会案に沿ったものとする」。矛盾がありましてはいけませんので、これは 厳密に考えましょう。  それから、学会案というのは原則論でありますので、それをより具体的にわかりやす くさせていただくと。  この2つを考慮すべき点と、こういうふうに考えました。  3ページの下半分に、文章で書かれておりますけれども「退院基準」を策定したとい うことであります。それのポイントといたしましては、まず感受性菌によると思われる 一般的な退院基準。  重藤先生の御説明にもありました退院のときに、集団施設へ入所される方向への退 院。  新たに新生児とかBCG未接種の乳幼児、または免疫不全状態にある者と同居をし て、新しく患者をつくるおそれのある退院の仕方の場合はちょっと考えましょう。  副作用とか何かしらの薬剤耐性で標準化学療法ができない場合の退院の場合と。この 2つに分けました。  勿論、MDR、多剤耐性結核の場合は論外といいますか、これは全く別立てでござい ます。一般的な単位、それからちょっと特殊な単位、この2つに分けで考えましょう と、こういうことであります。  4ページを見ていただきますと、まずほとんど問題のない「<一般的な退院基準>」 でございますが「標準化学療法が副作用なく2週間以上実施されている」。これは、学 会基準にもございました。  「咳や発熱等の臨床症状が改善している」こと。これも学会基準にございました。  「臨床的に多剤耐性の可能性がない、または薬剤感受性検査で多剤耐性が否定される 」、この条件を付けました。  学会案にもありました「保健所との連携がなされ、DOTS等のシステムにより服薬 継続が保障されている」こと。  次の基準に当てはまるようなものは、これには含まない。すなわち「新生児やBCG 未接種の乳幼児、または免疫不全状態にある者と新たに同居しない」という条件の下の 場合には、割合早く帰ってもらって結構です。こういうことなんです。  ちょっと特殊な退院の仕方の場合には、別のこの5つの基準を守っていただきたい。  「1)有効な化学療法が副作用なく実施されている」こと。  「2)咳や発熱等の臨床症状が改善している」こと。  「3)薬剤感受性検査で多剤耐性が否定されている」こと。  菌の条件としまして「4)異なった日の検査において、連続2回塗抹陰性または連続 2回培養陰性」であることを確認しておくこと。  「5)保健所との連携がなされ、DOTS等のシステムにより服薬継続が保障されて いる」こと。  これは何遍も申しますけれども、多剤耐性の結核では除く2つのことであります。  一番最後の5ページにこの案を策定しましたメンバーが書かれておりますが、実は全 員が結核病学会の会員でございますし、半数以上が先ほど重藤先生がおっしゃいました ように、学会の方の基準案をつくった方のメンバーにも入っておりまして、あっちとこ っちで作業をさせていただいたと。同じ1枚のものの裏と表をつくらさせていただいた と。こういう次第でございます。  続きまして、検証についてという話をさせていただきます。資料5をお手元に見てい ただきますと、よろしいかと思います。こういうものを学会案であろうが機構案であろ うがつくりましたら、それが適切に運用されているかどうか、そしてそれがよい効果を もたらしているのかどうか、運用しやすい適用しやすいものであるかどうか、それから よい効果が実際出ているかどうか、それを検証しなければならない。これは当然のこと であります。  機構側といたしましては、今回作成しましたこの基準を適切に実施するために、以下 の取り組みを行うということを予定をしております。大きく3つに分けました。  「『結核患者の退院基準』の検証」とまず書いてありますけれども、これを適用する にあたりまして、本基準の適切な実施及び適用の効果を確認する観点から、検証作業を 行う予定でございます。  具体的な内容につきましては、先ほど言いました一般的な基準であるか、その他の基 準であるか、いや多剤耐性であるよというようなことのどれに当たるかというようなこ と。  個々の例につきまして、入院期間がどのぐらいであったか。  退院基準のそれぞれの5項目を満たしているか、満たしていないか。  それから、満たしたのに退院していないのはなぜか。満たさなくて、早々と退院され る人もあるわけですけれども、それはなぜであるか、そういうふうなことを検証してい きたいと、こういうふうに考えてございます。  資料5の2でございますが、この基準を敷衍するために「結核医療に関する研修会の 実施」を予定してございます。  結核病床を有する国立病院機構の病院の職員を対象にいたしまして、結核医療に関す る研修会を2月21日月曜日の午後に機構本部の講堂を使いまして、お集まりいただいて 基準の御説明と、それを敷衍させていただきたいと、こういうふうな研修会を予定をし ております。  対象者は、先ほど申しましたように結核病床を有する病院の結核担当医師並びに結核 病棟の看護師長などでございます。  内容といたしましては「『結核患者の退院基準』について」御説明を細かく申し上 げ、それからその後の検証につきまして、あるいはこういうことを機構病院群といたし ましてはいたしますよということを、地域の医師会や行政関係、保健所さんに対して御 説明を申し上げなければいけませんので、その連携の方法について研修会を持ちたい と、こういうふうに考えてございます。  3番目「結核患者向け『結核患者の退院基準』の手引き」と書いてございますが、医 者向け、看護師向けの退院基準のほか、継続服薬の重要性を結核患者さんにも十分認識 していただかなければなりません。そういうふうな目的を持ちまして、十分に理解して もらうように、結核患者向けの手引を作成する予定でございます。  機構病院群、統一した案をつくりますけれども、それが各施設で使われるのが好まし いと思いますが、それを参考にしていただいて、より精緻な使いやすいものを各施設で つくっていただいてもよかろうかとは思います。しかし、統一のものというものをまず 考えまして、3月までに約一万部を作成しまして、病床を有する病院に配布を予定して ございます。  以上が検証に関するあるいは基準の敷衍に関する御説明でございました。  2つの退院基準、それから検証のことにつきまして、簡単に御説明を重藤委員、森光 参考人、それから私から申し上げましたが、この件に関しまして、どうぞ御議論、御質 問たくさんおありになろうかと思いますけれども、始めていただきたいと、こういうふ うに思います。いかがでございましょうか。  こちらからの御指名で誠に申し訳ないんですけれども、また加藤先生ありましたら、 どうぞよろしくお願いいたします。 ○加藤委員  感受性の菌のものにつきまして、私もう全く異存はないんですけれども、耐性菌の場 合について、もう少し丁寧に扱う必要がないのかなと、ちょっと懸念がございます。  実は、私ども昨年6月にロンドンに行ってまいりまして、向こうの入院事情をちょっ と聞いてきました。確かにロンドンでも大体2週間ぐらいで退院するということなんで すけれども、退院に当たって耐性の問題をどう扱っているか聞いてみました。そうする と、一部は遺伝子の検査をして、耐性のないことを確かめているという話なんですけれ ども、これは私の知識の中ではリファンピシンについては可能ですけれども、ほかのも のではないのではないかと思うんです。そうすると、2週間だけの入院ですと耐性があ る者が退院している可能性があるんです。  では、これを現場の方ではどういうふうにしているかというのを、ロンドンには結核 ナースがおりますので聞いてみました。そうすると退院に当たって、患者に対して感染 予防に対する教育をするという話なんです。これをもう少し考えてみますと、これは皆 様最終的に耐性のものが感染したらどうするかというのが一番の懸念なんですけれど も、起こった場合の責任は恐らく教育を受けて、それを守らなかった患者ということに なるのかなということをちょっと思ってしまいます。  同じことを日本の中で考えた場合、もしそういうことが起こった場合、一体どこの何 が問題で何の責任であるかということを、もうちょっと明確にする必要があるのかなと いう気はします。  日本の耐性菌は今、全体で97年データで0.8 %ぐらいですので100 人に1人ぐらいは あり得るわけです。ここら辺について、勿論配慮されているのはよく理解していますけ れども、例えば、この基準の中で耐性の可能性がないとされたものは、これは私、臨床 余り詳しくないので、むしろ先生方の御意見をいただく必要があるんですけれども、こ れで本当に間違いないだろうかということだけをちょっと確認をしていただければとい うふうに思います。 ○坂谷委員長  どうしましょうか。重藤先生、どうぞ。 ○重藤委員  それにつきましては、十分考慮したつもりではあるんです。ですから、薬剤感受性検 査については、どういうふうに記載をするかということでいろいろ苦労しまして、薬剤 感受性検査で耐性がないことが確認される必要があるとは明記したんですけれども、そ れを確認されないと退院できないとすると、非常に日本の場合長くなりますので、そこ のところをまず大丈夫だろうという条件で退院の基準、感染性がほぼ消失したと考えら れる場合として挙げたわけです。  薬剤感受性を考慮した適切な治療であると判断するには、耐性がないことを確認する 必要があるけれども、確認は退院後でもいいと。  それから、国立病院機構の退院基準についても、薬剤耐性が確認できるまで、入院し ていた病院で最後まで責任を持って診なさいと。感受性が確認されてから、近くに紹介 してもいいですよというような表現になっていたと思います。  あとは、経過が非常に良好で、退院してしまってから一剤に耐性であったということ は確かにあり得るんですけれども、その場合にはやはり臨床経過が順調だったわけです から、退院時点ではほぼ感染性はなかったと考えております。 ○坂谷委員長  ありがとうございます。  機構側も同じような考えでおりまして、まず全例を2週間で退院させようなんてだれ も思っていないんです。国際的に考えて、今の非常に長いものを少しでも短くしよう と、そういうことだけでありまして、2週間にしてしまおうなんてだれも考えておりま せん。だから、可能性がある患者を2週間で退院させるなんていうことは、どこにも書 いておりませんし、少しでも疑いがあって、これは危険であるというものは遠慮なく入 院のままで結構だと思います。  それから退院させる場合も、機構側の基準で書きましたように、今までお住みになっ て付き合いのあった人たちの中へ帰るということだけでありまして、新たな感染者をつ くるおそれのあるところへ帰る場合には、MDR、感受性検査を確認した上で帰ってい ただくというふうに明記しておりますし、もし一剤ないし二剤、MDRではないけれど も、少数のマイナーな薬剤に耐性であることが、その後わかったといたしましても、そ れは回復、薬剤の変更は外来でも可能であろうと。  不完全な治療かもしれませんけれども、入院の期間中に症状が改善し、排菌量も減少 しているということがあるということは、その治療でも一応の効果がありつつの退院で あると。それで結果、後追いで使っていた薬に少し耐性があるということがわかりまし ても、適切な薬剤の変更は外来治療の段階で可能であろうと、こういうふうに考えてい るわけです、二重、三重に一応予防線は張っているつもりなんですが、基準の読み方に もよろうと思うんです。別に加藤先生がそうだということでなくて、悪意を持って読み ましたら、それなりの読み方、それはできるわけですけれども、だけれども、そういう ふうなつもりで書いておりませんで、非常にストリクトに、あるいは厳密にどこを押さ えてもぼろが出ないようにするのは非常に難しいわけですし、それをやればやるほど入 院期間が逆に今、以上に延びてしまったりすることがあろうかと思ったりはしているん です。最後の話はちょっとよけいでございます。  いかがでございましょうか。 ○加藤委員  先生の最後のお話の中に重要なポイントがあると思ったのは、すべての患者さんがそ のまま新たな感染を起こすところに行くわけではないというのが1つ大事なポイントの ような気がします。そこは、だれかが、例えば主治医がちゃんと説明するなり、責任を 持つという辺りは、ある程度明確にしておくぐらいの配慮はあってもいいのかなという 気がします。 ○坂谷委員長  おっしゃるとおりです。ありがとうございます。  ということで、最後の3分の1で申し上げましたように研修会、それから検証の段階 で患者向けの十分な説明のための材料はつくって差し上げようと、どういうふうな言い 振りで患者さんたちにきちっと説明するかと、その辺まで配慮をしたいと、こういうふ うに思っております。  吉山参考人、何か御意見ありますでしょうか。 ○吉山参考人  私も結核病学会の方には参加したものなので、特にこちらの方についてはこれでよろ しいのではないかなというふうに考えております。  国立病院機構の退院基準についてという、こちらの方では多剤耐性結核については、 これは基準はつくらないで個々で判断するというふうな意味というふうに了解してよろ しいのでしょうか。 ○坂谷委員長  はい。これはこれでまたこのマニュアル基準以上の基準をつくらないといけないと思 うんです。ですけれども、それは別のことといたしまして、MDRを早期退院させると いうふうな考えは少しも思っておりません。現状を整理する必要はあろうかと思ってい ますが、それはまた別の機会にと、こういうふうに考えておる次第で、まずは感受性菌 である結核患者さんの今までよりは早期の退院を目指しての基準であると、こういうふ うにお考えください。そういうことなんです。  それから、専門施設で治療しました後、めでたく退院をなさいまして、ある部分は御 紹介の方へお戻しをするというふうなことになろうかと思います。その患者さんたちを 引き受けていただきます医師会の先生方を代表してということになりましょうか、雪下 委員の方から何か御質問、御議論ございますでしょうか。 ○雪下委員  今、言われたことを含めてちょっと2点申し上げますけれども、これは1回のときも 申し上げたつもりですけれども、入院、退院の基準は専門家の先生がつくられたこと で、それでいいのではないかというふうに私も思います。しかし、その言うことを聞か ない人をどうするかという問題。これは入所命令制度のところで1回目、2回目まとめ たのが出ておりまして、入所の勧告を前提とした制度とすべきとしてあります。確かに 結核患者全部を強制的に入院させたり退院させたりすることはできないという意味はわ かるんですけれども、実際、例えば多剤耐性の患者とか、あるいは排菌者が言うことを 聞かない場合現場でどうすれば良いのか。それをお聞きしたいと思います。  もう一つは、退院させた後のいわゆる外来のDOTS、通院DOTSみたいな形でそ れを受けてくれる施設自身は体制が整っているのかどうかということ、その2点を教え ていただきたいと思います。 ○坂谷委員長  雪下委員から2点御質問がありましたけれども、まず第1点目、いかがでしょうか。  私、検証のところでちょっと申し上げましたけれども、それからほかの委員からあり ましたが、まず多剤耐性で退院していただくのは、もしかしたら危険かもしれないとい うのは、現在のところ新発生の0.8 。最新のデータは0.6 %ぐらいございます。その人 たちをどうするか。それから、その人たちの中で特に言うことを聞かないで自然に自己 退院してしまう患者をどうするかと、そういうことなんですけれども、その人たちの数 もしっかりいまだ把握されてはいない。検証の段階で把握をしないといけないというこ とが1つございます。その患者が出た場合に、どうするかということについては今まで 2回も議論を重ねてきたんですけれども、結論が出ていないわけです。何か委員の方か ら、あるいは事務局の方から雪下委員の御質問に対してお答えというか考え方を御披歴 いただくことができますでしょうか。  課長どうぞ。 ○牛尾課長  雪下委員の御指摘でございますが、これは実際にそういう課題があったということで 非常に当該医師会、あるいは都道府県では対処に苦慮されたということで記憶しており ます。  それで、今日のごあいさつの中でも申し上げましたが、現行の結核予防法の中では、 やはり入院の対しての強制力を付与することはできないというのが我々の事務サイドか らの結論でございまして、これを行うためには結核予防法という個別法ではなくて、一 般法でございます感染症法の中に規定しないとできないというふうに理解しておりま す。  勿論、今回の入院力に対して強制力を付与するという問題を当初の議論の中に持って きましたのは、そういう問題もあるからという認識はしておるわけなんですけれども、 委員長の方からもございましたように、ほとんどの人は入所命令に従っていただいてお りますし、ああいう事例があったとはいえ、極めてレアなケースでございますので、法 的にはその措置というのは現状では難しいというのが我々の検討での結論でございま す。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  吉山参考人、どうぞ。 ○吉山参考人  ただいまレアなケースであるというふうに御指摘あったんですが、アメリカでも非常 にレアなケースです。ニューヨークなどでもそういう制度は持っているけれども、実際 にそれが行使されるのは非常にまれであると。ただ、そういう制度があるがゆえに、強 く対応できるから、そこまで伝家の宝刀を抜かなくても済むというような場合もござい ますので、レアだから要らないというふうなことについてはちょっと問題があるのでは ないかなと私は思います。  やはりそう言いましても、結核予防会複十字病院でも多剤耐性患者さんの自己退院例 というのはございます。多剤耐性結核100 人中1人ぐらいで、確かにそれもレアだとは 言えますけれども、塗抹陽性のまま、かつその比率というのは、感受性結核に比べて高 いというわけではないんですけれども、その与える影響などを考えますと、何らかの対 応は必要ではないかというふうに考えます。 ○坂谷委員長  ありがとうございます。  雪下委員、どうぞ。 ○雪下委員  感染症法の中には、72時間の強制入院の拘束があって、それを延期する場合には委員 会をつくって、そこの中で決めていくというような決めがあるんですけれども、それと 同じぐらいな形の拘束力というか、それを持ったものというのが結核予防法の中にはで きないのかどうか、それは違いがあるのかどうか、その辺のところはいかがでしょう か。 ○坂谷委員長  これは課長からお答えいただきます。 ○牛尾課長  若干、繰り返しになってしまいますけれども、今、結核予防法というのと感染症法の 何点かの違いはあるわけなんですけれども、雪下委員の御指摘の言わば強制力を持たせ た入院措置というものを結核予防法の方に、時間的には急性感染症ではございませんの で、もう少し長いタームでみなければいけないとは思いますけれども、同じような規定 を付けますと、そもそも結核予防法という単独の法律を有する必要がないという議論に なるわけでございまして、一般法の中に結核というものを入れた法律論としなければな らないが、今の時点では時期尚早ではないかというのが結論でございます。  確かに、雪下委員のおっしゃるように結核予防法を再度改正して、そういった入院規 定を入れるということは、限りなく感染症法の規定、さまざまな規定に近くなってしま いますので、結核予防法自体を残しておくことの必要性、必然性というものが非常に希 薄化してしまうということになりかねないというふうに理解しております。 ○雪下委員  そうしますと、この開催の初めの議論の中にも結核予防法の改正の議論で感染症法と 一緒にしたらいいのではないかというような話もあったと思うんですが、結核予防法を 独立させておくために、そこが感染症法に類似するから、それができないんだというの は、何か理論的にどうかなという感じがするわけです。  例えば、昨年現実にあった例では結核予防法ではどうにもならないから感染症法に準 じてやるしかないと思っていたわけですが、感染症法の今の拘束規定みたいなものを準 用して使ってもいいのかどうかということも教えていただきたい。 ○牛尾課長  残念ながら、その準用はできないです。私の説明が十分ではなかったかもしれません が、確かに結核予防法を残すためという意味合いはございません。我々も将来的には、 結核が1つの感染症という時代になったときには、当然のことながら感染症法の中に結 核も盛り込むべきだというふうに思っておりますし、審議会での御意見もそういうふう だったというふうに記憶しております。  ただ、結核予防法という法律の今の成り立ちを見ますと、感染症法では規定していな い患者管理、あるいは公費負担医療制度等々さまざまな結核独自の体系を今まだ生かす ならば、結核予防法というものを現時点においては、残した方が結核対策上、有効だと 思い、今の段階では統合しなかったというふうに御理解いただければと思います。 ○坂谷委員長  雪下委員の御質問はもっともでございますが、新たに出てくる問題ではないというふ うに理解をしております。現状でも存在する問題であって、今回の退院基準の中には十 分なことが確かに書かれていないわけですし、結核予防法の改正の中でも解決はできて いないんですけれども、今回の退院基準ができたことによって新たに生じた問題ではな いこと、それからその問題は目立ってはくるとは思いますけれども、その問題が比率的 には大きくなるでしょうけれども、絶対的にそのような症例がこれから増えてくるとい うことにはならないと。かえって一般の患者さんに対して行われる医療資源の適用が少 なくなりますから、その分だけ今、問題になっているような患者さんたちに対して集中 的に医療資源を投じることが可能になるかもしれません。  しかし、どこかの場で引き続き、この問題の解決に向けて議論が深められ、あるいは 何かの動き、アクションがあるように残された問題であるというふうには当然皆さん理 解されていることと思いますし、そういうふうにとりまとめをいたしたいと、こういう ふうに思う次第です。  今度の退院基準ですべてが解決できた、できるとはとても思われないわけで、まさし く雪下委員の今おっしゃったところは、大きな問題点として残るのは間違いないと、こ ういうふうに認識をしてございます。  いかがでございましょうか。 ○坂谷委員長  それから専門病院ではいいですけれども、この退院基準の一般的な医療機関への普遍 でありますとか、それから担保でありますとか、そういうことに関してですけれども、 いかがでしょうか。これはだれからお答えをすればよろしいでしょうか。  1つは、先ほど私が検証の段階で言いましたけれども、これを医師会さんであると か、それから保健所さんに機構病院群としては御説明にまいりたいと、こういうふうに 考えてございます。それで、それをしっかり認識をしていただく。その点につきまして は、議長がこういうことを突然申し上げては何かとは思いますけれども、お国の方、厚 生労働省さんの方といたしましては、御説明にまいる具体的な作業といたしましては、 各端末の施設がいたしますけれども、本省の方から自治体の方、保健所の方に、あるい は医師会さんの方にこういうふうに機構病院群の担当者が御説明に参る、あるいはある 意味で研修会的なものを開くと、こういうことをいたしますので、協力をしてやってほ しいと、こういうようなことを本省の方から少し前もって根回しをしておいていただけ れば、機構病院群としてもやりやすいと、こういうふうに考えておりますが、いかがで ございましょうか。  雪下委員のおっしゃったこともまず第一に説明からまいると。それで納得していただ いて、日本も諸外国に負けず同様のことで外来治療を中心にしてやると。勿論、専門病 院が中心になってやることではありますが、一部分、危険のない範囲で一般医療機関さ んにもご参加を願い、御協力を願うと、こういうことだろうと思います。すべて危険な 例であるとか、ややこしい例をすべて、皆さん引き受けていただくと、こういうことで はなかろうかと考えております。 ○雪下委員  今の現場の状況として、外来の先生方に退院後の患者をお願いしておられるんだと思 いますが、外来DOTSにつなぐ体制として、実際に困っておられるのかどうか。又 は、大体それは間に合ってやっておられるのかどうかという点をちょっと教えていただ きたいと思います。 ○坂谷委員長  地域や施設によって違いますけれども、私ばかりで何なんで重藤先生御解説、御返答 がありますか。 ○重藤委員  DOTSというのは、大体は一番根本的な責任者というのは、保健所、行政の方では なかったかと思いますけれども、私の方の地域では、例えば行政が講演会なんて私が行 って話していますので、もう連携が初めからできているような部分があります。だか ら、かなりうまくいき始めているとは思いますけれども、やはり人的な問題とか不足、 やりたくてももうちょっと何とかならないかなという部分があります。  それから、あちこち話しに行きますと、ここの地域はまだDOTSなんて全然知らな いんだけれども、どうしたらいいんでしょうかという地域もありますので、まだまだ今 からだと思います。  ですから、国立病院機構が協力体制をつくっていけるようなところと、そうでないと ころとあるかとは思います。ですから、そういう場合には、やはり国立病院機構も頑張 るんですけれども、行政側からのいろんな働きかけが必要だと思います。 ○坂谷委員長  ということでございます。  では、加藤委員どうぞ。 ○加藤委員  御承知のとおり、新しい改正法の25条、26条にこれについての規定がございますの で、全国の都道府県で今それに向けての準備を進めるために私も研修会に随分招かれま すけれども、DOTSの話を必ず言っております。現場での反応も法律に書き込まれた ということで、非常に前向きに進んでいるというふうに今、思っています。勿論、すべ ての地域ではないですけれども、法律施行に向けて準備が進んでいるというふうに理解 してよろしいかなと今、考えてございます。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  先ほど重藤委員が申されたように、やはりキーパーソンと言いますか、キーになるオ ーガニゼーションがやはり保健所さんだと思うんです。保健所さんが中心になってかな りの作業量が増えるかとは思いますけれども、今度の改正された予防法にも書かれてお りますように、きちっとそれを実行に移していただくこと。それから、それがきちっと 行われているか検証していただけるように頑張っていただくと。そういうことをお願い したい、申し上げたいと、こういうふうに思います。  2番目の点に関しましてのこれからの課題ということも含めまして、御回答が皆さん からあったと思いますが、雪下委員よろしゅうございますでしょうか。 ○雪下委員  ありがとうございました。 ○坂下委員長  こちらこそありがとうございました。  それでは退院基準、両基準及びその検証についての議論は深まりましたが、この辺で 終わりまして、続きの議題に入りたいと思います。  続きまして、事務局の方から命令入所の処理義基準に関しまして、プレゼンテーショ ンをしていただきます。どうぞよろしくお願いします。 ○事務局  資料6「入所命令の対象及び命令入所の期間について(処理基準)(案)」をごらん いただきたいと思います。  先ほど重藤委員の方から学会の入退院基準について御発表いただきまして、入院、治 療が望ましいケースということで3点挙げられておりましたけれども、この入所命令に 関しましては、結核予防法第29条の方で「都道府県知事は結核患者がその同居者に結核 を伝染させるおそれがある場合において、これを避けるため必要があると認めるときは 」という形で適用を限定しておりますので、その観点から学会の案よりは狭まった範囲 ではございますが、こちらに記しておりますのが、事務局の入所命令の対象及び命令入 所の期間についての処理基準案でございます。  まず「入所命令の対象について」でございますが、入所命令の対象とする患者は、肺 結核または喉頭、気管支結核で、最近2週間以内に喀痰結核菌塗抹陽性の所見が1回以 上得られた者であって、かつその居住環境等から判断して他者に結核を感染されるおそ れのある者としております。  そして「命令入所期間について」でございますが、こちらの1番、まず基準といたし ましては、入所命令の解除は、薬剤感受性を考慮した適切な治療が行われ、かつ喀痰結 核菌塗抹検査結果の陰性化、その他の検査所見の改善等総合的な評価により、感染性が 消失すると認められるときという形で、学会の退院基準を準用したような形になってお ります。そして、入所命令を解除する際においては、医療機関あるいは保健所との連携 等、入所命令解除後の治療支援体制の確保に努めることとするとしております。  命令入所期間の上限ですけれども、これは2週間に1回程度喀痰塗抹または培養によ る結核菌検査を行い、2回連続陰性であることを確認するまでの期間と、学会の方で言 いますと、多剤耐性の患者さん、あるいは集団生活や乳幼児、例えばBCG接種前です とか、そういった乳児のお子さんがいらっしゃるような場所が生活の場であるような方 に対する退院基準を準用しているような形としております。  3番としては、これは当然のことでございますけれども、結核でなかった場合には、 その時点で命令は解除になりますということでございます。  以上でございます。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  事務局の方から処理基準につきまして、案でございますが、御提示、御解説をお願い しました。これについての御議論をお願いいたします。いかがでしょうか。重藤委員、 どうぞ。 ○重藤委員  まず2番で、喀痰塗抹または培養ですので、状況により塗抹をとったり培養をとった りということですね。ですから、多剤耐性の場合には、もうこれは培養でないといけな いと思うんですけれども、そのような書き分けをする必要はないですか。 ○坂谷委員長  いかがでしょうか。 ○事務局  ありがとうございました。検討させていただきます。 ○重藤委員  それから、これは希望ですけれども、治療支援体制の確保に努めるという場合に、そ の確保がかなり危ない場合、余りしっかり確保できない場合、しかも非常に多剤耐性に なりやすそうな状況の人に関して、これが一番現場では悩んでいるところなんですけれ ども、その場合に命令入所という形をとらないとほぼ必ず脱落するというか、医療の問 題も出てきますので、さっさと自己退院みたいな形で帰ってしまって、多剤耐性になる 可能性の高い人が、この枠の中から出てくると思うんですけれども、その部分を許容す るかどうかということになるかと思います。 ○坂谷委員長  ということでございますが、この意見も現場に同じくおる者としては、今の重藤先生 の御発言は理解できます。  ほかの委員、いかがでしょうか。  特に2番に関しては、超えてはならないですから、その条件が満たされていなければ 命令入所は継続すると、こういうことだと思います。 ○重藤委員  ですから、こういう条件を確認した場合には、もう解除しなければならないというこ とですね。 ○坂谷委員長  そうです。 ○重藤委員  ですからその場合に、例えば一応塗抹連続2回陰性で、多剤耐性ではなさそうだけれ ども、これで例えば糖尿病のコントロールが非常に悪くて、帰ったら飲酒をしてしまっ た脱落の危険性が非常に高いような人で、これで帰っていいという条件、命令入所解除 されましたと言われたら、これは多分帰られると思います。医療費がかかり出しますか ら、そういう意味です。 ○坂谷委員長  1と両方絡めてですね。そういうことです。  その場合にも老人で老人医療費でほとんど本人の負担がない場合、別の救いがある人 はいいですけれども、若い人で元気な人でぷいっと出てしまいそうな人が、これから漏 れるであろう。 ○重藤委員  一番危ないというか、将来危ない人たちです。 ○坂谷委員長  そうですね。  先ほどもう幕を閉じてしまいましたけれども、雪下委員が第1番目に御質問をおっし ゃった問題症例なんかも、ここへ入ってくる可能性があるんです。 ○重藤委員  ですから、それができてしまってからでは遅いから、もうつくらないより仕方ないの ではないかということで、現場は非常に努力したり、頭を悩ましているわけなんです。 ○坂谷委員長  ただ、それを数値化というか判断基準が法令的に書くと非常に難しいわけです。その 問題があるために、こうなるんだと思うんですけれども、それはだれが判断するか、そ の判断基準はどこか。 ○重藤委員  ですから、その判断基準に関して結核審査協議会の役割というのは、どうなるのかな というふうに私は考えているんです。 ○坂谷委員長  ほかの委員、吉山参考人、あるいは加藤委員から何か御意見がございますか。  吉山先生、どうぞ。 ○吉山参考人  今のことについて言いますと、保健所との連携など命令入所の解除後の治療支援体制 の確保に努めることとするではなくて、保健所は確保すると言ってしまえれば、それは 非常にいいことなんですけれども、確保しなければならないとかだと思います。  それから1の「命令入所の対象について」。これは結核病学会委員会案と大きく異な るのが、現在、感染性は特に高くない多剤耐性結核などの塗抹陰性培養陽性例などをす べて除いているということです。塗抹陰性培養陽性の人の感染性については、菌の量か らいくと塗抹陽性の人の10分の1以下であることは明らかなわけなんですけれども、R FLPのスタディーなどを見ますと、やはり塗抹陰性培養陽性からの感染結核というの も相当数、全結核の新たな感染の中の2割ぐらいは、そのようなものから感染なのでは ないかと。  なぜ、そうなるかというのは、恐らく塗抹陰性培養陽性の人の有病期間が長ければ、 さまざまな接触の機会がある場において、そんなに近い接触者でない人であっても感染 させている例があると。そうすると、多剤耐性結核の人、あるいは塗抹陰性培養陽性の 人の近いところの接触者での感染率はそれほど高くないということが、塗抹陰性培養陽 性の人の感染性の高さとするほど結び付かないと思うんです。  全薬剤感受性であれば、治療を始めれば速やかに菌は止まりますから、それは命令入 所の必要性はさらさらありませんけれども、塗抹陰性培養陽性程度の多剤耐性結核の患 者さんの長期排菌時の感染性については、実はよくわからない。恐らくRFLPでわか っている塗抹陰性培養陽性からの感染者と思われる人が多いということの方が、むしろ 長期排菌している塗抹陰性培養陽性の人の感染性については、反映しているのではない かと思いますので、そういった人を全く除いてしまう、この1番については私としては 賛成できかねると思います。 ○坂谷委員長  ありがとうございます。  2番ですね。菌の話は先ほど重藤先生から出ましたけれども、検査はどちらかで、結 果として両者ともに2回連続陰性というふうな言葉に少なくとも直さないとと思いま す。  それから、1番に関する問題。保健所さんは支援体制の確保に努めることとするとな っていますが、努めなければならない程度に強く書いたらどうかと、こういうふうに意 見なんですけれども、事務局としてはお答えになりますか。あるいは、支援体制を確保 するというふうに止めるか。あるいは、確保に努めなければならないとするかと、こう いう強い意見が出ました。 ○事務局  この場合の入所要件の要件は、法定受託事務の処理基準ということですので、努める こととするという記述であっても、努めなければならないという表現をしても、いずれ にいたしましても訓示規定になりますので、法的な効果は同じですので、文言の方は調 整させていただきます。 ○坂谷委員長  ということです。中身としては吉山参考人のおっしゃったことが含まれているという ふうに理解できると、こういうことみたいです。  ほかにいかがでしょうか。雪下委員、どうぞ。 ○雪下委員  二の2のところですが、2回連続陰性であることを確認するまでの期間を超えてはな らないということが何かちょっと理解できないんです。2回連続陰性であることを確認 するまでの期間を超えてはならないというのは、2回連続陰性でなければいけないわけ ですね。そうではないんですか。 ○坂谷委員長  では、事務局から答えていただきます。 ○事務局  申し訳ございません。結局、最初に重藤先生の御案内にありましたように、確実に菌 陰性を確認しなくても退院は基準を満たすわけでございますけれども、その上限といた しましては、もう2回目に陰性であることを確認したら、もうそこからは解除ですよと いう、そういう上限ということでございます。ですから、書き振りお任せいただきたい と思うんですけれども、2回連続陰性であると確認できた時点を超えては入所命令は継 続できないといったような意味でございます。 ○雪下委員  そうですよね。そうすると、この文はちょっとおかしくないですか。 ○坂谷委員長  文章の書き振りということです。 ○雪下委員  2回連続陰性であることを確認するまでの期間ということは、どういうことですか。 2回連続検査する前ということになるのではないですか。2回目を確認する前というこ とになるのではないですか。 ○事務局  2回目を確認して、結果が出てということです。 ○雪下委員  結果が出てということですか。 ○事務局  結果が出た後ということでございます。 ○坂谷委員長  多分、こういうことだと思います。公費負担申請書と、今、命令入所とリンクしてお りますから、初回の命令入所の期間が過ぎた次回の申請をするときに、直近の検査結果 が2回連続マイナスの結果が出ているのに、続けて35条の申請をしても通りませんよ と、こういうことです。 ○雪下委員  意味はわかるんです。 ○坂谷委員長  書き振りですね。ちょっと事務局の方で文言については、雪下委員とも御相談をなさ って、ちょっと書き振りを御検討願います。  この件に関しまして、そのほかの部分ではいかがでございましょうか。加藤委員、ど うぞ。 ○加藤委員  先ほど重藤委員のお話の中と関連することなんですけれども、学会の治療委員会の中 の任意については、これは将来薬剤耐性になる可能性ということは、公衆衛生自体の視 点からすると、そういう患者をつくることは非常に公衆衛生的に問題であるという視点 がここに入っているんですけれども、ここの入所命令の対象というのは、他に対する感 染性しか含まれていないんですね。ここは、きっちと議論する、この違いはきちっと明 確にして、この時点で本当にこれでいいのかということは、もう少し明確にしたいな と、私はそういう気がするんですけれども、いかがなものでしょうか。 ○坂谷委員長  いかがですか。事務局の方から何か御意見がございますか。やはり社会的要因での命 令入所があり得るだろうと、こういう話かと思うんです。 ○事務局  御指摘の点は、法律を改正するテーマというか議論として非常に重要なことだと思い ます。私どもがお示ししております資料6につきましては、現行の法律の下で地方自治 体がこれに従って処分、処理をするという基準ですので、現行法制上は感染性の消失と いうのは、入所命令の解除条件でありますので、この時点で解除をする。その内容につ いては、1番、2番に示したような要件であるという具体化をしているということです ので、当然将来の公衆衛生をおもんぱかっての公権力の行使というのは、今の法律では できませんので、それを前提としてつくらさせていただいたという趣旨でございます。 ○坂谷委員長  吉山参考人、どうぞ。 ○吉山参考人  ただいまの加藤委員からの御意見とも関連するんですけれども、私の先ほどの命令入 所の対象としての多剤耐性結核の塗抹陰性培養陽性につきましては、これは現在感染性 が特に高くはないということについては、本当にそれでいいのかと。塗抹陰性培養陽性 が長期間排菌している場合、これは感染性が高いというふうに判断すべきではないかと いうふうに考えての議論ですので、塗抹陰性培陽性の多剤耐性結核患者も入所命令の対 象とすべきではないかというふうに考えます。 ○坂谷委員長  もう一度戻りまして、一の「入所命令の対象について」のところです。  お答えありますか。 ○事務局  吉山参考人がおっしゃることは、つまり普通の感受性の結核の場合ですと、どんどん 感染力が落ちていって、喀痰塗抹が陰性で、培養が陽性という期間は、そんなに長くは 続かないけれども、多剤耐性の場合だとある程度菌量が落ちて、塗抹では陰性だけれど も、培養では陽性。微妙な菌量の時期というのが長く続くもので、長期のそういう状態 において、感染させる患者が結構いるのではないか。感染性が高いと判断するべきでは ないかといった御意見でございますでしょうか。  逆にちょっとお聞きしたいんですけれども、そういった患者さんからRFLPなんか で解析をして実際に普通の塗抹陰性培養陽性の患者さんよりも感染性が高いというよう なデータというのはあるんでしょうか。 ○吉山参考人  塗抹陰性培養陽性よりも個々の時点の単位時間当たりの感染性は同じだと思います。 しかしながら、時間が長いがゆえに感染性が高いというふうに判断すべきではないかと 思います。  だから、塗抹陽性培養陰性の患者さんというのは、2週間、3週間もすればもう感染 性はほとんど100 分の1になる。そういった人を見比べて、多剤耐性結核で塗抹陰性培 養陽性の人は、治療によっては全然感染性は減らない。減らないままずっと長期間いる という場合、これであるならば無治療の塗抹陰性培養陽性の人の感染性とほぼ同じよう な感じというふうに考えてといいのではないか。そうすると、結核患者さんの新たな感 染のうちの十何%は塗抹陰性培養陽性の患者さんによる感染であろうというふうにRF LPで一般論として考えられている。  これは感受性であろうと耐性であろうと、それは全部ごっちゃにしてです。十何%と 結構高い。これは、塗抹陽性の患者さんが塗抹陰性の患者さんによって10倍以上菌の量 が多いのに比べて、10倍以上の菌の多い人からが9割で、10分の1の人から1割という のは高いではないかと、かつ新たに見つかる患者さんの中で塗抹陰性培養陽性というの は、塗抹陽性培養陽性よりもはるかに少ない。半分ぐらいしかいない。なのに、そんな に十何%もいるのはなぜかというと、それは塗抹陰性培養陽性である期間が長いがゆえ に多くの人に感染させているのではないかと。感受性の患者さんだったらすぐに感染性 がなくなるからいいけれども、多剤耐性の人は感染性が長いという意味では、未治療の 塗抹陰性培養陽性の人の感染性と同じように考えるべきではないかとすると、感染性が 低いということは必ずしも言えない。  以上です。 ○坂谷委員長  感受性菌患者さんと多剤耐性菌患者さんと一緒して入所命令の対象とくくるのは、ち ょっと乱暴かもしれないと、こういうふうにとってもいいですね。だから、多剤耐性結 核患者に限っては、喀痰結核菌の培養が陽性だけでも命令入所の対象にしたらどうか と、こういうことです。というふうな附帯の御意見ですね。  重藤先生は、どう思いますか。 ○重藤委員  いわゆる法律的な解釈から全く離れまして、現場にいるものとしてですけれども、多 剤耐性で塗抹陰性培養陽性という場合に、かなり経過が長いから、そういうことがわか るわけです。その場合に、実際に私がどうしても入院してくださいというのは治療の可 能性がある場合なんです。その場合には、本当に命令入所にしてでも入院していただき たい。どうしようもない、治療の可能性がない患者さんの場合には、感染に対する注意 をしっかり、いわゆる教育をして、入所命令をしても仕方がないということなんです。 だけれども、本当に治療したい患者さんに関しては、やはり入所命令という形はとって いただきたいというふうに、もうこれは現場にいる者の切実な願いとして言っておきた いと思います。 ○坂谷委員長  ありがとうございます。  事務局の方からちょっと今のとりまとめについて、意見の結論めいたことについて何 か御意見お願いします。 ○事務局  結論というものではないんですけれども、先ほど重藤委員がまさにおっしゃったとお りで、そういった患者さんに、経過が長い間に感染させる可能性があるから、要は隔離 といった観点から入院していただくということですと、ゴールが見えないわけです。そ ういった患者さんをそういうふうな形で、命令、強制力云々のお話はさておいて、命令 入所によって、かなり長期にわたる入所を正当化できないというふうには考えます。 ○坂谷委員長  ということであります。これがすべての患者さんを規定に普遍される基準になるわけ ですけれども、それから外れる対応というのもあり得ていいかと思うんですけれども、 こういう意見が出たということを記録にとどめていただきまして、親委員会の方に任せ るといいますか、そういうふうなことでとりまとめをしたいと思います。今のところ は、これを一応の基準として当小委員会としては今、言いました附帯意見を付けてとり まとめると、こういうふうにさせていただきいと思いますので、御了承を願いたいと思 います。  ありがとうございました。  それでは、ちょっと時間が足りなくなってきたかもしれませんが、次に進みたいと思 います。  引き続きまして、本日御参加の吉山参考人の方から結核病床の算定式の考え方につき まして、御発表、御提示、プレゼンテーションをいただきたいと思います。よろしくお 願いします。 ○吉山参考人  資料7と事務局の方でつくっていただいた資料9を両方見ながらやっていただけると 見やすいかと思います。  結核病床につきましては、感染性の患者さんについて「急性期」それから多剤耐性で 菌が出続けている「慢性排菌」。実際にはそのほかにDOTのために入院している患者 さんなどもいますけれども、そういったDOTのために入院している患者さんは除きま して、感染性の結核患者さんのために必要な病床数を計算をしました。計算した最終的 な結果を、この参考資料にあります「日本における結核必要病床数算定についての検討 」なんですけれども、そのサマリーが資料7でございます。  「急性期」の病床としましては、考え方の基本としては年間発生患者数掛ける患者さ んの在院期間が、ある一定の時点で入院している患者数、つまり、必要な病床数となり ます。  具体的に言いますと、例えば年間1万人の患者さんが発生すると。その患者さんが3 か月間入院している必要があると。そうしますと、年間1万人で3か月間、つまり12分 の3年ですから、1万掛ける12分3で2,500 人がある一定の時点で入院していると。だ から、2,500 ベッド必要であろうという計算となります。  しかしながら、それプラスαの部分が必要となります。資料9にあります数字でいき ますと、1万掛ける12分の3というのはA掛けるBの部分になります。  資料7の方に戻ります。では、これに加えて何を加える必要があるかと言いますと、 塗抹陽性ではない結核患者さんの入院。これは命令入所の対象となるならないというの は全く関係なしで、一般病床で命令入所にならないからといって全員が一般病床に入院 できるわけではありませんので、そういった方も含めまして塗抹陽性ではない結核患者 さんの入院も考慮する必要があると。  それから、次に患者さんの発生の変動が起こる。変動につきましては、季節変動で4 月から6月の結核の患者さんが割と多いということと、それから患者発生数と在院期間 のランダムなばらつきがあると。発生数が非常に多ければ、どの日時にも同じ程度の患 者さんが発生すると想定されますけれども、人数が少なければばらつきが発生する。よ って、余裕を持って病床を確保する必要がある。  患者発生の分布につきましては、ポアッソン分布で患者発生すると。これは、実は感 染症では正しくなくて、感染症、結核であれば、ある患者さんがあれば、その患者さん から感染を受けたら、次の患者さんが発生しやすいので厳密にはポアッソン分布を呈し ませんけれども、ただ、今の日本では内因性再燃の患者さんが多数を占める。7、8割 は占めるということで、多くはポアッソン分布を持って発生したというふうな想定。  それから在院期間につきましては、平均日数何日の対数正規分布をとるというふうな 仮定をして、モンテカルロシミュレーションで、ある一定のときに存在している患者数 を99%でカバーする範囲というのを計算しました。  そのほかに非結核患者数の非結核で、非結核性抗酸菌とわかったらその時点で結核病 床から出ますけれども、やはりある程度入院する時点では考慮しないといけないという ことで計算しましたところ、日本全国で今1万何千人いる塗抹陽性患者さんが90日、塗 抹陰性患者さんのうち43%の患者さんが60日入院するとすると、必要病床数は6,413 床 となると。  その次の占拠率ですけれども、季節変動とランダムなばらつきがあるがゆえに、6,413 床あったとしても全部埋まっているわけではありませんで、やはり28%ぐらいは埋ま らない部分があると。済ません、これは6,413 というのは各県ごとで99%カバーする範 囲というのを計算して、それを全部足すと6,413 となるということです。ですので、例 えば患者数の非常に少ない県ですと、一定の時点で20床ぐらいしか必要ないとしても、 ばらつきは大きくなりますから、30何床必要となると。そうすると、占拠率は当然低く なると。そういったものを全部足しますと、72%の占拠率になります。入院日数が半分 になりますと、では本当にその時点、その時点で入院している患者さんは半分になりま すけれども、ばらつきが大きくなりますので、必要な病床数は3,709 床で、逆に空床の 割合が高くなるということになります。  これを事務局の方では、Cとしては、私の計算の3の部分のランダムなばらつきを係 数というふうに換算されています。3の部分をCに換算しています。患者発生数が少な いところでは、高い倍率を掛ける必要があるし、多いところでは、そんなにばらつかな いので1.1 とか1.2 倍ぐらいという低い係数を掛けるだけでいいというふうに計算して おられます。  更に、私の1、2、4の部分を一定の係数というふうにして事務局の方ではDという ふうにして、A掛けるB掛けるC掛けるDで、1万人の患者さんが3か月間入院すると 2,500 床だけれども、それ掛ける1.2 掛ける、その件に応じた実情で1ないし1.5 を掛 けるという数字ではどうかというふうに事務局の方では計算されております。この部分 が「急性期」のために必要な病床数です。  慢性期につきましては、慢性排菌患者数として2002年の時点で853 人の2年以上登 録、かつ最近1年以内に菌陽性という患者さんがおられます。そのうち約半分が入院し ております。この慢性排菌患者さんというのは、極めて急速に減少しております。1980 年代から2002年まで毎年10%、特に98年から2002年までは14%ずつ減少しています。こ れは、今後このように急速の減少するとは思いませんけれども、この程度の慢性排菌患 者さんがいると。  入院されている患者さんが2002年の時点で346 人ですので、それなりに3桁の病床数 が全国でいるのではないか。ただ、急性期に比べるとその10分の1以下というふうに考 えております。  以上です。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  引き続きまして、事務局の方から結核病床に関する今後の考え方につきまして、プレ ゼンテーションをお願いいたします。 ○事務局  資料8「医療法上の結核基準病床数の位置づけ−−今後の展望−−」というのをごら んください。  まず「【背景】」の方から申し上げますと、結核に係る基準病床数は、医療法の施行 規則に規定されている算定式に基づき、これが資料8の真ん中にあります「【現行の基 準病床数の算定】」でございますけれども、これに基づきまして、都道府県医療計画に 記載することとなっております。しかし、昨今、結核患者の新規発生率の低下、退院後 の治療支援の推進等をこれから進めていくわけですが、早期退院に向けた努力による入 院期間の短縮により、結核入院患者数が著しく減少しており、同算定法による結核病床 数が必ずしも現状を反映していないということで、算定方法の見直しの必要性が指摘さ れているところであります。  そして、これはもうよく皆様御存じかと思いますが、現行の式でございます。  今後、これをどうしていくかということで、こちらは事務局の案でございますけれど も、まず医療法施行規則の結核病床数を都道府県の区域ごとに、結核の予防及び結核患 者に対する適正な医療の提供を図るため必要なものとして、都道府県知事が定める数と する。これは、どういうことかと申し上げますと、まず結核予防、つまり結核の蔓延の 防止のために必要な病床というのがございます。そして、適正な医療、患者が適切な水 準の医療を受けて治療を果たすための病床という意味もございまして、こういった公衆 衛生上最低限必要な病床数は都道府県が計画的に確保するべきだろうということで、最 低限の病床は必ず確保していただくということを前提に、都道府県が数を定めるという ふうなアイデアでございます。  その上で、喀痰結核塗抹陽性患者あるいは公衆衛生への影響を無視できない結核患者 の感染性消失までの期間の入院治療に必要な最小限の病床数の算定方法を技術的助言に て示すということを考えております。  それが、先ほど吉山参考人の方から一緒に説明していただいた資料9というのが事務 局の案でございます。  そして、この結果資料9にございます事務局の案に基づいて計算いたしますと、全国 で必要な病床数はおよそ2,600 から3,500 程度となるわけでございますけれども、結核 患者の減少に伴いまして、必要病床数が著しく減少しておりますので、中長期的には結 核病床と感染症病床の概念を統合して、感染防御のための一定の施設要件を満たす病床 として位置づけることや、あるいは複数の都道府県にわたる病床の確保についても検討 する必要があるだろうというふうに考えております。  以上でございます。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  文章はともかく、計算式なんかは非常に専門的な部分がありまして、わかりづらいと ころもあるんですけれども、どうぞ御議論、御質問ありましたらお願いしたいと思いま す。いかがでしょうか。  吉山先生、現在日本全体で幾らあるんでしたか。 ○吉山参考人  結核病床数はどんどん減っているんです。論文を書いた時点では、1万7,000 という ふうに書いたんですけれども、その後の翌年には一万四千何百床というふうになってい ますので、急速に減っております。 ○坂谷委員長  ですけれども、それを基準にしましても、先生の御計算ですと更に半分以下というこ とですね。 ○吉山参考人  そうです。 ○坂谷委員長  いかがでしょうか。加藤先生、どうぞ。 ○加藤委員  質問なんですけれども、区域ごとというのは、どういう区域を想定していらっしゃる んですか。都道府県の区域ごとにとありますが。 ○事務局  都道府県ごとということです。 ○加藤委員  都道府県ごとということですか。 ○事務局  都道府県の区域全体という意味です。 ○加藤委員  全体という意味ですが。2次医療圏とか、そういう意味ではなくて、都道府県だけて 決めるということですか。 ○事務局  はい。 ○坂谷委員長  今の規定では、知事が定めることになっていますから、そういう意味です。  よろしゅうございますか。  ありがとうございました。かなり専門的なところですけれども、御議論はこれでおし まいだと思います。  よろしいですか。  まだまだ御意見はあろうかと思いますけれども、終了の予定時刻が近づいてまいりま した。この辺りで議論を閉じたいと思います。  ここで、これまでの議論を振り返ってみますと、化学予防、入退院基準、結核病床に ついては、かなり附帯の意見は付きましたけれども、おおむね委員会としての方向性が 固まった、そういうふうに思います。また、これまでの議論を踏まえまして事務局の方 で、行政対応もしていただけると、こういうことでございました。  さて、しかし、主に第1回の検討会で議論されました強制力を持った入院制度など、 治療に協力的でない患者に対する医療提供の在り方、これにつきましては、先ほど来議 論が出ておりませんので、とりまとめには至っておりません。しかし、論点は出尽くし たのではないいかと、こういうふうに思います。  そこで、冒頭、牛尾課長からも御発言がありましたように、今回で当委員会の議論を 終わりにしまして、当委員会の意見、これを親部会である結核部会に報告することとい たしまして、行政対応は当局で判断いただきたいと、こういうふうに考えますが、いか がでございましょうか。よろしゅうございますか。ありがとうございます。  それでは、本日をもって「厚生科学審議会感染症分科会結核部会結核医療に関する検 討小委員会」を閉会いたしたいと思います。報告書につきましては、議長であります私 と事務局に御一任をいただければと思います。  事務局の方からまとめの御発言をお願いいたします。 ○健康局長  3回にわたりまして、小委員会に先生方大変お忙しい中お付き合いいただきまして、 ありがとうございました。おかげさまで大体問題点、非常にうまく整理していただきま して、先般の結核予防法の改正で取り残したというか、十分整理し切れなかった問題に ついて、ある程度具体的な方向づけというのがいただけたのではないかと思っていると ころでございます。これを踏まえまして、今後の結核対策を推進してまいりたいと考え ております。  具体的には3月の下旬を目途に結核部会を開催する予定としているところでございま して、その中でこの小委員会でおまとめていただいた案をもう少し事務局の方で整理さ せていただいて、御提案をさせていただきたいというふうに考えております。大変お忙 しいところ、3回にわたって御参集いただきまして、御議論いただきました大変ありが とうございました。 ○坂谷委員長  ありがとうございました。  それでは、これで第3回「厚生科学審議会感染症分科会結核部会結核医療に関する検 討小委員会」を閉会いたします。活発な御議論、大変ありがとうございました。お疲れ 様でした。                                    (終了) ● 照会先:厚生労働省健康局結核感染症課結核対策係 ● 電話 :03−5253−1111(内線2380,2933)