05/02/02 第14回社会保障審議会福祉部会議事録                第14回福祉部会議事録 1 日時:平成17年2月9日(水)14:00〜15:36 2 場所:東海大学校友会館「望星の間」 3 出席委員:      岩田部会長、大石委員、小島委員、佐口委員、佐々木委員、      高岡委員(代理:財前氏)、京極委員、高原委員(代理:松井氏)、      新津委員、福間委員、松浦委員、松尾委員   欠席委員:      福原委員、掘田委員、村田委員 4 議事 (1)岩田部会長による開会あいさつ (2)事務局による委員及び事務局の出席状況・資料確認 (3)事務局による資料の説明 (4)審議 5 審議内容 (松浦委員) ○ 17年度の予算では、生活保護の国庫負担を2分の1に変えるということはないの  か。 (保護課長) ○ 17年度の予算は4分の3で計上してある。 (松浦委員) ○ この点は大いに気になるところ。自立支援プログラムを行うため、地方の生活保護  についての負担が増えるから税源移譲して国庫負担を2分の1に減らすという理屈が  あるようだ。 (保護課長) ○ この問題は、国、地方との協議機関を設けてそこで検討することになっている。 (京極委員) ○ 「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」については、生活保護全般に  ついてきちんとまとめたものが戦後、特にこの10年あまりないので総合的見直しの1  つの材料になるのではないか。すぐ制度に結びつくかということや、三位一体論など  もあるが、起草委員の岩田先生以下データに基づいてきちんと議論しており、憶測や  イデオロギーで書いたものではないので私は評価している。 (福間委員) ○ 自立支援というときに、実際の自治体の職員数は不足しており、経験のない人が26  %いる。アウトソーシングや連携といったものがあるが、おおもとのケースワーカー  の体制がどう具体的に強化されていくのか。職員不足そのものは自治体の判断かもし  れないが、社会福祉主事の資格だけなので、専門性と人材確保の両方をどう計画的に  していくのかといったことがないと、プログラムはあっても心配。 (保護課長) ○ ケースワーカーの配置は、社会福祉法で標準数が定められており、被保護世帯80世  帯に対して1人となっている。これは平成12年の地方分権で、従来法定の最低数字だ  ったものを標準数に変更したのだが、自治体の方には監査などで標準数を確保するよ  うにお願いしている。 ○ ケースワーカーを確保することは最低限必要だと思っているが、それ以外にも就労  支援の専門家を非常勤職員として雇ったり、アウトソーシングを活用したりすること  により、もう少し厚みを持った実施体制をつくっていくことが必要ではないかと考え  ている。  そのため、セーフティネット統合補助金という形で従来の生活保護費補助金を拡充し  ている。 ○ また、ハローワークについては、自治体における取組を支援するような形で関係部  局にご尽力いただいている。 (福間委員) ○ プログラムをつくるワーカーもアウトソーシングしてもいいのではないか。 ○ 介護保険との関係で、個室ユニット型の特別養護老人ホームが標準的なものとして  示されてきているが、個室ユニットの居住費(ホテルコスト)が発生するときに、生  活保護の人が新規で入ることは認められないが、現に生保の人が入っている場合は、  建物が変わっても継続されるということが生活保護の方の判断であった。介護保険法  の改正で、全施設が基本的な居住費用を設定する仕組みになるので、生活保護の状態  のままで要介護状態になると、今度は介護扶助+住宅扶助となると思うが、そこがき  ちんとされていくのか。ボーダーラインから上の人にはいろいろと措置があるが、生  活保護そのものの世帯について関係者は心配しており、生活保護制度と介護保険制度  とがうまくつながるようにしていただきたい。 (保護課長) ○ 生活保護は最低生活を保障するという趣旨であり、一般低所得者とのバランスを考  え、基本的には個室ではない形でご利用いただくという整理をしている。ただし、個  室に入っていて、途中で生活保護を受けざるを得なくなったがほかに代わる施設がな  い場合のように、やむを得ず生活保護の方が個室を利用する場合は認めるという形で  考えているが、個室型特養の整備状況を見ながら、必要に応じて見直しを考えていき  たい。 (岩田部会長) ○ 生活保護というのはあくまで補足的な位置にあるので、そのような一体的な見方が  大切。介護保険は、結果的に補足するのではなく組み合わせでやるということを一番  はっきりと示していて画期的なあり方だと思うが、こういう変化の中で、ホテルコス  トはどこがどう負担するのかという問題が出てくる。それを切りわけるとすると、住  宅扶助の有り様が変わってくるので今回の報告はそこまで踏み込んだ議論はしていな  い。しかしながら、今後の課題として若干取り上げて、探求的な方向、あるいは別制  度として、日本でもできないこともないというような含みの発言はある。 ○ 今回の報告は生活扶助と生業扶助が中心であり、住宅扶助や医療扶助の在り方とい  うのは他の社会保障や福祉サービスとの関係が非常に強く、今後大事な課題になって  くると思われる。 (佐口委員) ○ この報告書は、貧困の多様性と、貧困世帯の増加に対応したものだというのが第一  印象。しかし、現在どれぐらい緊急度があって、深刻なのかということに関してもう  少し掘り下げてもよかったのではないか。 ○ 今、膨大なフリーターが存在し、母子世帯やワンペアレンツファミリーも増加しつ  つある。フリーターから母子世帯になり、そこに教育の階層制が付け加わってくれ  ば、そうした再生産がどんどん積み重なっていく可能性があり、これまで日本の社会  が経験もしなかった意味での貧困やワーキングプアの問題というのが出てくる。そう  いう深刻さについてはこれからの課題という気がした。この報告書は、非常に大事な  ポイントが押さえられているが、それが本当に実現可能なのかということに関して、  もう少し議論していく必要があるような強い印象を持った。 ○ 就労支援の話になるが、ワークフェアの問題について非常に大事な点は、どういう  ワークかということ。ある種のジャンクジョブというものであればまた戻ってきてし  まい、別の社会的コストを発生させてしまって、政策効果が上がらないという可能性  がある。この問題に関しては、マッチングをどれぐらいできるかとか、実際の仕事の  モニタリングをどれぐらいできるか、というところに踏み込んだ議論をしなければい  けない。 ○ 国の政策としてやるので当然ハローワークでということになるが、今のハローワー  クの状況を若干知っている者からすると、本当に地域でハローワークがこういう問題  に関して対応しきれるのかという感想を持たざるを得ない。ハローワークだけがやる  ということではないと思うが、いろいろな省庁がいろいろな施策をやっているわけな  ので、少し整理をして、重複がないように、非常に効率的で意味のある政策にしてい  くことが大事な課題。 ○ カウンセリングの問題で、例えば、いろいろな資源が提供されても、それを利用し  ていく能力に欠けてしまっている人として、ニートと言われている人たちなどがい  る。彼らにどのような支援をしていくかということが非常に重要になっており、カウ  ンセリングということに少しずつふれられているが、どれぐらい実現可能性を持って  考えて行っていくのかということが、これから支援策を具体化していくところでは詰  められていかなければいけない。 (岩田部会長) ○ 非常に大切な点だが、現実の生活保護制度がそこに十分手を伸ばしきれておらず、  家族の中に埋もれてもいるので、生活保護対象としてくっきり出てこない。したがっ  て、7割を超える単身世帯の多くが高齢あるいは傷病世帯であるが、はっきりワーキ  ングプアとして出てきているのは、元ホームレスの50代と母子等世帯ぐらい。日本の  貧困の問題が施策の上でも若年型の形を十分取りきれていないため、労働との組み合  わせがはっきりしてこない。その点で、入口のところをあまり慎重にやり過ぎない  で、ワーキングプアを拾うのだという意識を持って、取り込んだときに初めてこうい  うものが生きてくる。そういう意味で、まだ言葉だけという感じのところがある。 ○ そのため、地域によってはうまくいく可能性のあるところもあるだろう。ただ、現  場からの反応を聞いた中では、今後その問題はもっと大きくなるだろうという声もあ  り、そうなると、一般扶助の形でずっとやっていけるのか、稼働層と非稼働層をある  程度仕分けして制度設計をせざるを得ないのではないかという予想される。ただ、今  回はそういう基本原理、原則のところは一応現行のものがいいという前提で、そこに  踏み込まないでやっている。その辺はまだ過渡期であるが、短期間に変わっていく可  能性はあるので、そういう意識を持っておいた方がいい。 (大石委員) ○ 状態別のセグメントとして、基本的な能力や条件的に非常に自立が難しい人、周辺  環境を整えれば自立できる人ということや、本人がどの程度やる気になるのか、自立  までに何をしなくてはいけないか、もしくはどこの部分が欠けているのかというとこ  ろをとった統計はあるか。もしもないのだったら、今後、本人がどうしてもやる気に  ならないという人が増えてくる可能性が高いのであれば、そういう数字をとっていく  必要があるのではないか。 (保護課長) ○ 現状ではまだ十分そういう視点で見てないので、どういう基準でというのが確立し  ておらず、現状ではそれを把握するような数字はない。 (岩田部会長) ○ 自立支援プログラムをやることによって、その結果、その数字が積み上がってくる  と思う。プログラムそのものが、何をやればいいかということを考えて、個別につく  っていこうというもの、その前提として、例示的にいくつかのパターンを出したわけ  で、各地域で、地域の実態に根差したあるパターンでできてくると思うが、それを全  国的に集約していくということはある程度可能。 (大石委員) ○ このプログラムをやるのなら、そういうものも考えると将来的な指針になる。 (岩田部会長) ○ プログラムの評価も含めて、そういうものを積み上げていくということを実施体制  の中で生かしていけたらと思う。 (松井氏) ○ 今回の報告書は、経済的自立支援だけでなく、自立支援を広い意味でとらえた方向  性を示したことで大変有意義だと思っている。 ○ 様々なプログラムを提供するならば、被保護対象でなくても、生活保護が適用され  る前などにプログラム参加を勧奨・助言していくという利用の仕方もあり得るのでは  ないか。この報告書にも、最後のセーフティネットという形で書かれているので、あ  る程度原則は維持しつつ、その前段階で救える人たちを支援していくことが望まれ  る。 ○ 現状のケースワーカーが、ここまでのコーディネーション能力があるかどうかは疑  問である。職安にコーディネーターをつけるといっても、どういう人材を活用しよう  と考えているのか。職安のOBを使うのでは対応できないと思っている。 ○ 民間企業やNPOでカウンセリングマインドを持った人など、そういう人が仕事の  マッチングのために何が必要なのかということを教えるとか、あるいは民間企業が職  安の一部の業務を請け負うとか、いろいろな取組があるので、現実に機能する仕組み  をつくらないといけない。紙の上ではうまく書けるが、本当に機能する仕組みを十分  検討してほしい。 (保護課長) ○ ハローワークに配置されるコーディネーターについては、職業安定局で人選される  のでどういう形で人選されるかは詳しく承知していない。現状での取組としては、今  でも一部の実施機関において、ハローワークのOBや労働関係での仕事の経験のある  方を非常勤の就労相談員という形で雇っているケースがある。その人とケースワーカ  ーが連携しながらいろいろな取組をしていくということでかなり成果が上がっている  という報告例はいくつかある。 ○ 福祉事務所ではなかなか就労に直接結びつかないので、例えば履歴書の書き方や面  接の仕方をしっかりやることによって就労につながりやすいとか、そういう取組がは  っきり見えてきており、これからノウハウを積み上げていくということが必要ではな  いかと考えている。 (松井氏) ○ 障害者についても自立支援を目的に、新たな法案が今国会に提出されている。生活  保護の被保護者だけを対象にするという考え方があるのかもしれないが、就労支援コ  ーディネーターが全体で100名だけでは全国の職業安定所に配置できないという問題  もあるので、既存の枠組みや新たな枠組みの中で、活用できる社会資源は共同して使  うことを考えていく必要がある。 (岩田部会長) ○ 利用しやすくするということで、ほかの制度の低所得対策自体を充実させてはどう  かという話は大分出た。報告書にも若干ふれている。 ○ 利用しやすくというのは、早く来てもらって早く出てもらうというニュアンス。あ  まり悪くなってから来ると時間がかかるので、あまり生活がこわれきってないうちに  相談に来てもらい、できれば前の段階で済めば一番いいし、そうでなければ逆に早く  自立支援プログラムにのせていけばいい。 (小島委員) ○ 今回の報告書は、基本的な見直しの視点として利用しやすく自立しやすい制度とい  うことであり、単に就労促進ということだけではなく、就労能力のある方に対する支  援、精神障害者に対する支援、高齢者に対する支援など広い意味での自立支援という  方向性であり、基本的に評価したい。 ○ 問題は、稼働能力のある人への就労支援をどう具体的に可能にしていくか。それに  はケースワーカーがどれだけ個別の自立支援プログラムをつくれるかということが重  要。そこは本人の意向ややる気をどう引き出すかということになるので、きちんと対  応できる人、まさにプログラムをつくる人をどう育てるかということが重要である。 ○ 今までもケースワーカーの人員不足ということが指摘されており、窓口で働いてい  る人たちの意欲も低いという実態がある。自らが生きがいを持って初めて被保護者に  対する自立を促すということになってくる。その接点をどうしていくかがまさに人材  の問題。これは自治体の仕事だということでは済まされず、国の大きな責任というこ  とになっているので、人材の育成・確保について、どう自治体をサポートできるかが  重要。統合補助金という新しい補助金をつくったことだけで十分なのか。 ○ 検討項目のところに、第三者の評価も課題として挙げられているが、自立支援プロ  グラムを実施に移していくといった場合、実施状況に対する評価、点検というものを  各自治体でつくることが必要。また、福祉部会か専門委員会で、実施に移した後の検  証を恒常的にやっていく必要がある。ここはきちんと体制を早急に詰めておく必要が  ある。 ○ また、医療保険と生活保護の関係について、生活保護を受けると国保から外れると  いうことで、補足性の原理がここだけ例外となる。ここは早急に検討をすべき。 ○ 母子加算の問題で、子どもが16歳以上のところはなくし、それに代わり高校の授業  料等の費用を新たに加算するということだが、その水準は妥当なのか。 (保護課長) ○ 高校就学費用については、通学費、授業料、入学料等は、基本的には実費という取  扱い。授業料は私立高校に通う場合かなり高い授業料も想定されるが、最低生活を保  障するという観点から、公立学校の授業料相当額を目安にして支給するという取扱い  にしている。また、学用品、学級費については、文部科学省の統計資料などをもとに  して設定している。 (岩田部会長) ○ 今度の予算では、1類の年齢区分と多人数世帯の適正化ということと、加算と就学  費用が出ている。1類と2類の組み合わせの問題や単身世帯の単独モデル化というこ  とを報告書で盛り込んだのだが、予算との関係ではどんな感じなのか。 (保護課長) ○ 単身世帯については今年度は手当てをしていない。単身世帯というのは中高年の方  が多いので、今回の老齢加算の関係で、基本的には改正されているので、来年度の中  で老齢加算と70歳以上の方の基準をどうするかということも含めて検討したいと考え  ている。 (小島委員) ○ 高校の就学費用の加算について、専門学校や専修学校については出ないのか。 (保護課長) ○ 高等学校に準ずると考えられている専門学校等については同じ取扱いである。 (京極委員) ○ この報告書は膨大な専門委員会の議論の上に立っているが、専門委員会の議論の中  には、委員の方からご指摘や将来法改正をやる場合に参考になることがたくさんある  が、議事録等を参考にすれば、これがそういう中の1つだということが見えてくる。 ○ 厚生労働省においても労働サイドと厚生サイドとの議論がやっと始まり、今後、ハ  ローワークの在り方について相当大きな議論が広がっていくのではないか。外国人労  働者やホームレスの問題も含めて、今回はここまでで終わりとなっている。 (新津委員) ○ 自立支援プログラムは今までもあることはあっただろうと思っているが、それをあ  えてここに入れたということは非常にしっかりやれということと、難しいという意味  合いがあるのではないかと思っている。組織的な取組のところに専門家集団等のグル  ープをどのように巻き込んでいくのかというようなことが一言ふれられていると、時  期尚早の話かもしれないが、自立支援プログラムが実施できていくのではないか。 (岩田部会長) ○ 専門性や人材の問題はいろいろな議論があり得る大変難しいところ。標準数はクリ  アーしろということは一致するが、実際上どう考えていくかというのは、今後行政内  部の福祉職についてもっと議論していかなければいけない。 (小島委員) ○ 今回の社会福祉法人の施設職員の退職手当共済制度の改正法案の中身で、通算制度  については、私が何度か発言したものが具体的にこういう形で盛り込まれたことは評  価したい。公費助成をなくすと、新規採用者からこれを契機にこの共済制度から加入  しないということになりかねないので、共済制度の趣旨を十分に施設者の方に周知徹  底することが必要。また、脱退する場合には職員全員の同意が必要だということの趣  旨を徹底していただきたい。 ○ その関係で、中退金制度への移行の問題も検討中とあるが、中退金制度への移行と  いうことができるのであれば多少は担保になると思うので、ここも早急に詰めていた  だきたい。 (岩田部会長) ○ 本日の議論はこのあたりで終了する。 (総務課長) ○ 今後のこの部会の進め方については、現在のところ次の議案が定まっていないの  で、ご意見をいただくべき事項、あるいはご報告すべき事項があった場合に、部会長  と相談の上、改めて事務局より連絡することとする。 (岩田部会長) ○ 以上で、本日の部会を終了する。 (照会先)  厚生労働省 社会・援護局 総務課 企画法令係   03(5253)1111(内線2815)