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委員提出資料

「医師の需給に関する検討会」において検討の出発点で
検証されるべき主な論点と審議の進め方についての意見

平成17年2月25日
委員
(社)全国自治体病院協議会
会長 小山田 惠

 現在、各地の病院は医師不足、地域偏在、部門偏在という環境下にあり、自治体病院においても極めて深刻な事態に直面し、日夜苦悩しているところです。審議に当たり、以下の点に是非ご配慮賜りたいと存じます。


審議に当たっては、単に審議内容を公開するというにとどまらず、下記の点について、その根拠、考え方、実態等について十分な検証を行うとともに、その情報を患者国民にわかりやすく開示しながら進めるべきこと。




1.医師需給の算定方法
 これまで数次にわたり検討会が設置され検討が行われてきたが、これまで用いてきた算定の方法及び今後用いようとする方法いずれについても、算定の根拠が医療提供体制の観点から妥当なものであるかという点について、まずは検証されるべきこと。
 この場合、少なくもOECD諸国における最近の医師総数等に対する考え方、将来にむけてのスタンスなどについても、比較検討が行われるべきこと。

2.医療法に定める医師数の算定基準
 昭和23年に定められたこの基準が、患者数等に対する医師数の妥当性など、病院において、現実の医療を遂行していく上で妥当なものであるか、について、現在において、さらに将来の疾病動向を勘案した上で、検証されるべきこと。
 この点、上記1も含め、一義的には、実証的、科学的に医療提供の観点から追求されるべきであり、国民経済上の観点と医療費との関係については、それを踏まえた上で別途、その重要性にかんがみ適切に検討、勘案がなされるべきであること。

3.全国の将来必要医師数の診療科別等推計
 以下の視点について推計されるべきこと。
 (1)各診療科別必要医師総数
 (2)病院の規模による必要医師数
(「1診療科に1人の医師」という考えは、診療科によっては、生命を預かる観点及びその勤務実態からは、「暴論」という指摘もあること。)
 (3)二次医療圏など地域ごとの診療科ごと必要医師数
(人口構造、疾病構造等を勘案すべきこと。この場合、地域の面積と住民分布の実態など単に人口を指標としただけでは計測できない医療事情が勘案されるべきこと。)

4.勤務医の労働時間
 現実に、病院で救急医療への従事も含め、「燃え尽き」るまで診療し、結果、開業してしまう実態があることについては、今日要請されているインフォームドコンセントへの対応など、かつてとは比べものにならない診療時間、当直回数、日直回数、時間外勤務等の観点から必要医師数の算定上十分勘案されるべきこと。
 (そもそも、24時間の医療を担う病院において、1病院につきどれだけの医師配置によって病院としての医療提供が、労働法令及び医療安全の見地から成り立つか、という極めて基本的な視点が見失われてはならないこと。)

5.開業動向
 いわゆる新設医大の卒業生(第一期生、第二期生など)が「開業年齢」に達してきたといわれている中、上記4のような勤務医の勤務環境(収入の比較含む)も相まって、開業者の数が急増してきていることを踏まえ、今後このような傾向が、我が国の医療提供体制の体系上の根本にかかわる病院勤務医の充足そのものに及ぼす影響等、今後の見通しが明らかにされるべきこと。

6.女性医師の就労特性の尊重
 女性医師の就労特性を勘案した医師必要数の考え方を究明すべきこと。
 (一旦、医療現場から離れた女性医師の再研修の実施や処遇改善を図る等、女性医師の生涯にわたる医療貢献が可能となるような施策が現在、整備されていないことを勘案すべきこと。)

7.麻酔科医師の確保
 このたび、(社)日本麻酔科学会から「麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言」(2005年2月9日)が公表されたが、当面、学会としてどのような取組みを行おうとするのか、この際、関係者が協力して改善策を構築できるよう、学会が具体の取組みについて見解を披瀝する等、病院関係者が待ち望む実践方策が示される機会を設けるべきこと。
 この場合、今日の麻酔科医師の就業、離職、開業の動向と開業医師の報酬の市場価格(値決め、相場)が、我が国の病院における患者の診療、手術、その後のケアに至るトータルかつ極めて重要なプロセスの根幹に大きな影響を及ぼすことから、この動向を明らかにし、併せて開業医の報酬に関するデータも提示されるべきこと。

8.大学医学部入学時から卒業時までの診療科選択の機会
 地域の病院等で活躍する医師のうち、麻酔科、小児科、産科など今日不足が著しく深刻な部門に従事する医師を養成するに当たっては、診療科別入学・養成及びいわゆる講座別定数の設定等、地域の必要医師の充足に貢献できる運用方法などについても十分な検討がなされるべきこと。
 この場合、こうした方法が、専門医制度と医師評価のあり方を含め、医学生及び医師となった者の資質を確保し、かつ持続可能な方法となるための条件についても真剣な検討が行われるべきこと。

9.医療提供体制と医療費分布のあり方
 医師需給の適正を期するためにどのような方途を講じようと、最終的には、限られた報酬や財政上の措置がどのような分布にあるかによって、その行方が規定されることは明らかと考えられる。
 したがって、我が国において、医師の開業、勤務の形態のいかんを問わず、それぞれが社会的共通資本としての役割を全うすることが、患者国民が納得し医師と病院による持続可能な医療提供に結びつくような体系のあり方について、この機会においても是非検討の対象とされるべきこと。

10.法令等に基づき施策を総動員する必要
 上記のような諸課題とともに、医育機関の教育態勢の厳しい現実についても承知しているが、医師の不足・偏在の改善が遅れることとなれば、いずれは多くの地域で、「医師の不足」にとどまらず「医療の不在」と呼ぶべき事態を招くと考えられる。
 今や、医師の需給に関し、診療科、地域、病院・診療所施設ごとの不足・偏在を改善、解消の実現性を担保していくためには、上記の一連の検討を経た上で、この際、「閣議決定」の一部運用の改善が検討されるとともに、取組みの内容によっては「医師の診療科、地域別配置及び養成の適正化に関する特別措置法」を制定するなど、法令等によって国の意思が明確に示されるべき段階に立ち至っているとも考えられること。


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