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へき地を含む地域における医師の確保等の推進について

平成16年2月26日
地域医療に関する関係省庁連絡会議

 へき地を含む地域における医療提供体制の確保は、医療政策における重要課題であり、これまでもへき地保健医療対策の推進、医療計画の導入等により、各都道府県等における計画的な取組を求めるとともに、これを支援してきたところであるが、関係者の努力にもかかわらず、医師の地域偏在は依然として大きな問題であり、へき地を含む地域での医師の確保は相当の困難が伴うものとなっている。

 このような中、医師名義の貸し借りが大きな社会問題となっている。医師名義の貸し借りは、医療や大学に対する国民の信頼を裏切る重大な問題であり、これを根絶し、再発防止を徹底するとともに、大学と地域の医療機関との関係のあり方を見直し、国民の信頼を回復することが急務である。また、医師の臨床研修の必修化は、平成16年度から実施されることとなっており、中長期的には地域の医師確保にも資するものと期待される一方で、研修体制の整備等に伴う当面の地域医療への影響も指摘されている。

 このため、厚生労働省、総務省、文部科学省においては、へき地を含む地域における医師の確保等について、関係省庁が十分に連携して更に積極的に取り組み、都道府県等を支援していく必要があるとの認識の下、昨年11月に本連絡会議を設置し、へき地を含む地域における医師確保対策、地域における医師確保のための大学・地域の医療機関・都道府県等の連携のあり方、地域における医師確保のための医師の養成のあり方、病院における医師の勤務実態の把握と配置のあり方等を当面の課題として、4回にわたり関係者からのヒアリングを行い、意見交換を行いつつ、検討を行ってきた。

 関係省庁においては、これらを踏まえ、地域における関係者の連携の促進、地域医療を担う医師の養成・確保の推進、医療提供体制の再編・合理化・連携の推進等を図るため、下記の1に掲げる施策に当面緊急に取り組むこととする。更に、今後、中長期的に総合的な対策を推進するため、引き続き、本連絡会議を通じて連携・調整を行いながら、下記の2に掲げる事項について検討を進め、地域における医療を確保するための必要な措置を講じるものとする。




1.当面の取組

(1) 地域における医療対策協議会の開催の促進
 都道府県における、医師会等の医療関係団体、地域の中核的な病院、当該都道府県内の医科大学・大学医学部等を構成員とし、医師の確保が困難な地域について、医療提供体制の整備状況についての地域・診療科ごとの分析等を踏まえ、医療機関の機能分担や連携の推進、必要な医師の確保や医療機関への配置、地域医療を担う医師の生涯を通じた教育研修体制の整備等について協議を行い、対応策を推進する協議会の開催を促進する。(別添参照)

(2) 医療提供体制の再編・合理化、連携の推進

(1) へき地等の病院における医師確保等の支援のための特別措置の導入
 臨床研修必修化に伴う当面の影響等に対応し、へき地等を含む地域の医療の確保に不可欠であって医師の確保が特に困難と認められる病院について、医師の確保や病院機能の見直し等の計画的な取組を促進・支援するため、医師配置標準の取扱いも含めた特別措置を早急に検討し、導入する。

(2) 自治体病院の再編・ネットワーク化などの改革の推進
 自治体病院が、良質な医療をどう効率的・継続的に提供していくかという観点に立ち、中核的病院と関係病院の機能分担を進め連携を強化する等自治体病院の再編統合、ネットワーク化など地域における医療提供体制の抜本的な見直しを行うことが重要である。地域におけるこうした取組みを促進するため、地方公共団体や関係機関(全国自治体病院協議会等)との連携の下、自治体病院における再編統合のあり方等について検討するため検討会を設置する。

(3) 医療機関相互の連携による地域の医療機関の支援
ア. 大学病院による地域医療の支援
 大学に対して、地域医療機関や自治体等と連携し、機能分担による病病・病診連携の推進、遠隔医療によるへき地医療支援、地域の医師、看護師等の生涯教育の提供などを行い、地域の中核病院として地域医療の水準の向上に努めるよう要請する。

イ. 地域医療支援病院の承認要件の見直し
 地域医療支援病院の普及を図り、医療機関の機能分担と病診連携を促進する観点から、平成15年度中を目途に地域医療支援病院の承認要件の見直しを行う。

ウ. 遠隔医療システムの整備の推進
 へき地における医療を確保するため、遠隔医療システムの整備を推進する。

(3) 地域医療を担う医師の養成・確保の推進

(1) 大学の医師養成課程における地域医療に関する教育の充実
 地域の医療機関や保健所等との連携を図り、地域医療の現状や課題等について認識を深めるとともに、全人的に患者を診ることができる幅広く質の高い臨床能力を身につけた医師を養成する観点から、各大学における「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づく医学教育改革の取組みをさらに推進する。

(2) 地域医療を担う医師養成のための臨床研修の推進
 平成16年度からの医師臨床研修の必修化において、プライマリ・ケアを重視した研修目標等を設定するとともに、地域の臨床研修病院での研修機会の拡大や臨床研修病院の質の確保に取り組んできたところであり、引き続きこうした取り組みを推進して、研修医の地域への定着を図る。
 平成16年度予算案に計上された臨床研修に係る補助を活用し、医師不足地域での研修に支障が生じないよう、臨床研修病院を支援する。

(3) 大学における医師紹介システムの明確化及び決定プロセスの透明性の確保
 大学に対して、地域医療機関との関係や医療のニーズなどの地域の実情を適切に踏まえた上で、医師紹介が公正・円滑に行われるような医師紹介システムを構築するとともに、当該システムにおける一連の決定プロセスを関係医療機関に周知するなどにより、透明性の確保に努めるよう要請する。


2.今後の検討課題

(1) へき地医療等の確保の計画的推進

(1) 第10次へき地保健医療計画の策定
 へき地保健医療対策全体の見直しについては、平成16年度中に検討会を開催し、検討を進め、平成17年度中に第10次へき地保健医療計画を策定する。

(2) 医療計画の見直し
 医療計画制度については、その見直しに当たり、地域における医療提供体制の整備の実効性をより高める方策を検討し、平成17年度から新制度を実施する。

(2) 医師需給見通しの見直し
 医師の養成・就業の実態、地域や診療科による偏在等を総合的に勘案し、平成17年度中を目途に医師の需給見通しの見直しを行う。

(3) 地域医療を担う医師の養成のあり方の検討

(1) (2)の医師需給見通しの見直しを踏まえた大学における医師養成のあり方の検討
 地域医療を担う医師の養成や地域への定着を推進する観点から、平成17年度に向けて、自治医科大を含む医科大学、大学医学部の医師の養成システム(奨学金制度の構築、地域枠の設定を含む入学定員のあり方等)ついて検討を行う。

(2) 臨床研修病院のあり方の見直し
 臨床研修病院の指定基準については、地域医療に与える影響を懸念する指摘に対応し、研修医数等について平成19年3月31日までの間の暫定措置を講じているところであり、この取扱いについては、同年4月1日以降も当該取扱いを継続するか否かを含め、再検討を行う。
 更に、臨床研修病院の指定基準等については、必修化の施行後5年以内に見直しを行う。

(3) その他
 地域医療を担当する医師の育成のあり方、大病院等を定年で退職した医師等について地域医療を行うことができるようにするための再教育プログラムの構築について検討を進める。

(4) 地域における医師確保のための新たなシステムの検討
 平成17年度に向けて、円滑な医師の配置が可能となるよう、例えば都道府県を主体とする医師確保体制など地域における医師採用・確保のための新たなシステムの検討を行う。

(5) 医師の配置を含めた医療提供体制のあり方の検討
 へき地を含む地域における医療サービスの確保・向上を図る観点から、医療機関の機能分化と連携、医師の配置等の医療提供体制のあり方について、医師の充足状況や病院における医師の勤務実態を勘案しつつ、検討を進める。


(別添)

地域における医療対策協議会の例



【名称】

  「○○県医療対策協議会」


【構成員】

  ○ 都道府県の医政担当部局長、関係保健所長
  ○ 都道府県医師会の会長
  ○ 当該都道府県内の医科大学の学長、大学の医学部長、大学附属病院長
  ○ 地域の中核的な病院の院長
  ○ 関係市町村長
  ○ 医療を受ける立場にある住民 など


【協議・検討事項】

  ○ 医療提供体制の整備状況についての地域・診療科ごとの分析

  ○ 医師の確保が困難で適正な医療提供に支障が生じている医療機関についての対応

  ○ 医師の効果的な確保・配置対策の推進
 地域医療を確保するための大学による医師紹介のあり方
 へき地等の医療機関・医師の支援

  ○ 医療機関の機能分化・重点化・効率化と連携の推進

  ○ 地域医療を担う医師の養成の推進
 地域医療を担う医師養成のための大学教育の推進
 生涯を通じた教育研修体制の整備


【事務局】

  ○ 都道府県の医政担当部局


  ※ 上記は、都道府県単位で設置する場合の例であり、医師の確保が困難な二次医療圏ごとに設置することもあり得る。


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