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資料3

医療計画における記載事項について(案)


1. 現状の記載事項
 現在の医療計画において、必ず記載しなければならない項目として医療法第30条の3第2項に規定している事項は以下のとおり。

事項 記載内容(医療計画作成指針より抜粋)
区域(二次医療圏及び三次医療圏)の設定に関する事項(医療法第30条の3第2項第1号及び第2号)
(1)二次医療圏の区域
(2)三次医療圏の区域
基準病床数に関する事項(医療法第30条の3第2項第3号)
(1)療養病床及び一般病床
(2)精神病床
(3)結核病床
(4)感染症病床
地域医療支援病院の整備の目標その他機能を考慮した医療提供施設の整備の目標に関する事項(医療法第30条の3第2項第4号)
(1)二次医療圏における地域医療支援病院の整備目標
(2)その他機能を考慮した医療提供施設の整備目標
   都道府県が必要とする疾病対策別の医療機能に関する調査結果に基づく整備目標
医療提供施設の設備、器械又は器具の共同利用等病院、診療所、薬局その他医療に関する施設の相互の機能の分担及び業務の連係に関する事項(医療法第30条の3第2項第5号)
(1)医療関係施設相互の機能分担及び業務連係
休日診療、夜間診療等の救急医療の確保に関する事項(医療法第30条の3第2項第6号)
(1)救急医療体制
 初期救急医療機関(在宅当番医、休日・夜間急患センター)、第二次救急医療機関(精神科救急を含む24時間体制の救急病院、病院群輪番制病院及び有床診療所)、第三次救急医療機関(救命救急センター)、救急医療情報センターの整備
(2)小児救急医療体制
(1) 通常の救急医療体制に加えて、特に休日・夜間などにおける小児救急医療について、地域の実情を踏まえた体系的な初期、二次、三次の救急医療体制の整備
(2) 子どもを持つ親をはじめとする地域住民や関係者に対して、小児救急医療体制に関する情報を提供するための方策
(3)病院前救護体制
 救急隊員の研修体制の充実強化や救急隊員の資質の向上、救急医療機関、消防機関及び行政機関における相互の連係強化等を含む病院前救護体制の確立についての方策
(4)大規模災害等、健康危機管理事案等発生時の医療提供体制の確保
(1) 大規模災害時における医療提供体制の確保
(2) 訓練計画や計画の管理体制の構築
へき地の医療の確保が必要な場合にあっては、当該医療の確保に関する事項(医療法第30条の3第2項第7号)
(1)「第九次へき地保健医療計画の策定について」に基づく、へき地医療の確保
医師及び歯科医師並びに薬剤師、看護師その他の医療従事者の確保に関する事項(医療法第30条の3第2項第8号)
(1)医療従事者の確保方策と必要に応じ確保の目標の設定
(2)医療従事者の資質向上のための方策
その他医療を提供する体制の確保に関し必要な事項(医療法第30条の3第2項第9号)
(1)保健・医療・福祉の連係
(2)医療情報システムの整備等


2. 記載事項として追加すべき項目(案)
 記載事項については医療計画の目的を達成するための具体的な数値目標として位置づけ、医療提供体制の整備に係る進捗状況の把握とその達成度の評価を実施できるよう、あらかじめ数値化できる適切な指標を選択し、導入しておく必要がある。
 平成18年の医療制度改革に向け、例えば以下の事項について、評価可能な形で医療計画に記載すべきものとして法令上明確に位置づけることを検討すべきである。

事項 記載事項とする理由
医療安全対策の推進
 
 
医療安全支援センターが行う活動
 身近な地域において医療に関する患者の苦情や相談等に迅速に対応する相談体制を整備し、患者・家族等と医療人・医療機関との信頼関係の構築に取り組んでいくため、都道府県並びに二次医療圏ごと、並びに保健所設置市及び特別区において医療安全支援センターを設置することとされており、医療政策上、医療安全対策が重要な課題となっていることを踏まえ、医療安全支援センターが行う活動について医療計画に位置づける必要があるのではないか。
医療機関における医療機器の保守管理
 医療機関で使用される医療機器の保守管理については、医療機関が自らあるいは委託により行うこととされているが、医療機器産業ビジョン(平成15年3月31日厚生労働省策定)においては、医療機器の保守点検について適正に行われていない現状が示されている。こうしたことから、医療機器の保守管理・適正使用をより効率的・効果的に行っていくために医療機関における医療機器の管理体制を医療計画に位置づける必要があるのではないか。
医師等の医療従事者の確保等に関する数値目標
 へき地を含む地域における医療提供体制の確保は、医療政策における重要課題となっている。特に、医師の地域偏在は依然として大きな問題であることから、厚生労働省、総務省及び文部科学省で構成された「地域医療に関する関係省庁連絡会議」により、「へき地を含む地域における医師の確保等の推進について」が取りまとめられ、医師等の医療従事者の確保のため、地域における医療対策協議会の開催が推奨されているところである。一方で、医師等の医療従事者の確保については、既に医療法に基づき、医療計画に記載することとされているが、今後は、臨床研修病院の指定状況やプログラムの内容、医療対策協議会の開催等を含め、医師の確保に関するより具体的な数値目標について医療計画に記載する必要があるのではないか。
 また、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の確保についても、都道府県においてそれぞれどの程度の人数が求められているのか、より具体的な数値目標について医療計画に記載する必要があるのではないか。
病院前救護のメディカルコントロール体制
 病院前救護体制の充実を図るためには、メディカルコントロール体制を構築することが必要であり、都道府県メディカルコントロール協議会及び地域メディカルコントロール協議会の適切な運用と、常時指示体制、事後検証体制及び再教育体制等の充実が必要である。救急救命士の業務の高度化と処置範囲の拡大が図られている中で、適切な病院前救護体制を確保するためメディカルコントロール体制の充実が課題となっていることから、その整備について、医療計画に位置づける必要があるのではないか。
災害医療
 自然災害や化学災害等その他の災害において、迅速で適切な対応をとることが強く求められており、多施設の医療機関間や、関係機関間の連携体制の確保や、防護、検査、訓練など様々な体制の整備が必要となっている。さらに、自然災害の脅威に加え、近年、テロリズムの脅威が認識されるようになり、NBC物質を用いたテロへの対応が大きな課題として挙げられていることから、テロ対応も含めた災害医療体制の整備を医療計画に位置づける必要があるのではないか。
 また、医療機関の施設設備における耐震性の確保は、震災後の災害医療提供の基礎となるものであり、これについても医療計画に位置づける必要があるのではないか。
母子医療
 
  ・小児救急医療を含む小児医療の推進  小児医療の高度化、患者ニーズの変化等に伴い、小児科医の相対的な不足が指摘されている。地域において小児医療体制を確保するためには、小児科医の数的な確保に加え、24時間体制の小児救急医療等、高度な医療の集約化と、診療所を中心とした初期救急等を地域で適切に対応できるように確保するとともに、これらの小児医療施設の有機的連携が図れるようネットワーク化を進めるなど、小児医療の基本構想の樹立と普及等をはじめとした総合的な対策が必要とされることから、これを医療計画に位置づけ、国においても都道府県による計画的な整備を促す必要があるのではないか。
・周産期医療の推進  妊産婦死亡、周産期死亡等の改善により安心して出産できる体制を整備するため、少子化社会大綱に基づく重点施策の具体的実施計画(子ども・子育て応援プラン)(平成16年12月24日少子化社会対策会議決定)により、各都道府県において総合周産期母子医療センターを中核とした周産期医療体制の構築を図るため、産科医師不足の是正を踏まえ、周産期医療ネットワーク(システム)の計画的整備と総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センターを医療計画に位置づける必要があるのではないか。
地域がん診療拠点病院の位置づけ
(その他主要な疾病ごとの診療ネットワークの明示)
 わが国において、がんによる死亡は1981年以降死亡の第1位を占め、がん患者数は毎年増加傾向を示している。このような状況から質の高いがん医療の全国的な均てん化を図るため、地域がん診療拠点病院を二次医療圏に1か所程度整備することとされ、かつ、その提供するがん医療の質について均てん化する必要がある。このため、今後も地域がん診療拠点病院の設置と質の高いがん医療を推進するため医療計画に位置づける必要があるのではないか。その他、糖尿病、急性心筋梗塞、脳卒中などの主要な疾病ごとの診療ネットワークの整備について、医療計画に位置づける必要があるのではないか。
重症難病患者に係る入院施設の確保対策の推進
 ALS(筋萎縮性側索硬化症)等における人工呼吸器装着患者のように看護や介護に多大の労力を要する患者が存在すること等の状況から、病状の悪化等により居宅での療養が極めて困難となった重症難病患者に対し、適時に適切な入院施設を確保等できるよう、地域の医療機関の連携による難病医療提供体制の整備を医療計画に位置づける必要があるのではないか。
エイズ治療拠点病院の整備推進
エイズ診療については、住民に身近な医療機関において一般的な診療を行い、地域の拠点病院において重症患者に対する総合的、専門的医療を提供する等、その機能に応じて診療することが必要であることから、これらエイズ治療拠点病院の整備について医療計画に位置づける必要があるのではないか。
在宅医療の推進
(訪問看護ステーションに関する数値目標と計画的な推進)
 わが国は、欧米諸国と比較しても少子高齢化のスピードが速く、介護を必要とする高齢者は、既に約390万人にのぼっている。難病患者、障害者等、医療ニーズの高い在宅療養者も増加している。これら患者のQOLの向上を図るため、できるだけ地域・家庭において日常生活を送ることができるよう在宅医療の推進が求められている。在宅での療養を可能とするためには、患者の病態に応じた医療と介護の両面からの支援が必要である。2000年度から介護保険制度が開始されているが、障害施策、難病施策にまたがっており、今後、医療と介護の連携を図る上で、医療計画に明確に位置づける必要があるのではないか。
 また、在宅医療を支える要の訪問看護ステーションの数値目標及び計画的推進について、医療計画に位置づける必要があるのではないか。
精神科救急医療の整備
 精神障害者の地域生活において、緊急時における適切な医療及び保護の機会を確保するため、病院群輪番制や地域基幹病院等による精神科救急医療体制の整備を一層進める必要がある。加えて、単独で24時間、365日急性期患者等を受け入れる(個室での手厚い医療の提供を行うことにより患者の早期退院を促す)ことができる特定の救急医療機関を中心とした精神科救急医療体制の整備を都道府県単位で図る。
 このため、これらの基本的な方針について、医療計画に位置づける必要があるのではないか。
精神障害者の退院促進
 精神科病院への入院患者数は、2002年時点で32.1万人であり、受入条件が整えば退院可能な者も約7万人存在するが、このうち、短期間で退院している患者群と滞留している患者群があり、この動態を各都道府県ごとに分析しつつ、その解消を10年間で進める必要がある。
 このため、今通常国会に提出された障害者自立支援法案に規定する都道府県障害福祉計画と相まって、都道府県単位で地域実態を正確に把握し、医療と福祉が連動した計画的な取組を進めるため、医療計画においても、障害者の動態等を踏まえた基本的な目標値を設定し、精神障害者の退院促進のための計画的な取組を進める必要があるのではないか。
医薬品・医療機器(医療材料)の提供体制
 (1)需要変動性のある医薬品や急性中毒発生時等に必要とされる医薬品の確保、また、(2)災害時、へき地、休日・夜間時に必要な医薬品・医療機器(医療材料)を必要時に迅速に提供することが必要であることから、これらについて、その需給や確保方策を作成し、患者に提供する体制の整備を医療計画に位置づける必要があるのではないか。
 また、処方薬を指示どおりに服薬しない患者が多いとの報告があるが、これは、医薬品の効能・効果を最大限発揮させるという観点からは好ましい状況ではない。このため、医療計画において服薬状況改善目標を設定する必要があるのではないか。
地域における治験推進体制の整備
 がん等の患者に最新の治療を受ける機会を提供するために、地域ごとに患者が治験に参加できる環境を整備する必要があるため、地域ごとに行う治験の実施環境整備について医療計画に位置づける必要があるのではないか。
公的病院等が提供する医療サービスの明確化
 地域における医療機関の機能分担と連携の確保については、医療計画作成指針において、公的病院等と民間の医療機関との役割分担を含め、医療に関する施設相互の機能分担及び業務の連携を踏まえたものを記載することとされているが、これまでは医療機関の提供する医療サービスの内容や患者構造について十分に検討が行われてこなかった。今後は、医療計画において、個々の公的病院等がそれぞれどのような役割を担い、その役割に基づいてどのような医療サービスを提供していくべきなのかについて明確化する必要があるのではないか。
認定された医療法人が提供する公益性の高い医療の明確化
 住民にとって望ましい医療であって採算性からみると提供に困難がみられるもの(救急医療、へき地医療、小児医療、治験の実施にみられる高度な医療など)については、これまで公立病院をはじめとした公的病院が主に担っていたが、今後は医療法人が主体である民間医療機関において中心的に提供されることが期待され、都道府県はこのような民間医療機関に対し公的な支援を行うことが求められる。このため、都道府県において認定した医療法人が提供する公益性の高い医療については医療計画において明確に位置づけることとし、これにより認定された医療法人の公益性を高め、そういう医療法人を住民が支えることができるようにする必要があるのではないか。

 ※ 「小児救急医療」、「病院前メディカルコントロール体制」及び「在宅医療の推進」については、医療計画作成指針により記載事項として例示している。


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