審議会議事録  厚生労働省ホームページ

第1回 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)見直し検討会 議事録


1.日時 平成17年2月9日(水)14:00〜16:00

2.場所 経済産業省別館846会議室

3.出席者
(委員)池上千寿子、市川誠一、大平勝美、木原雅子、木原正博、木村哲、島宮道男、白井千香、藤井久丈、前田秀雄、南砂(以上11名、敬称略)
(厚生労働省)関山健康局疾病対策課長、荒木課長補佐、他

4.議題
(1)座長選出
(2)エイズ予防指針の見直しについて
−1 見直し検討会について
−2 全体スケジュールについて
−3 エイズ予防指針の見直し(第1回)

5.内容


(照会先) 健康局疾病対策課
電話:03−5253−1111(内線2354)


− 以下、別添ファイル参照


第1回 エイズ予防指針見直し検討会 議事録


  発言者 発言要旨
1 事務局
開会
2 課長
挨拶
3 事務局
委員紹介(名簿・座席図の配布をもって代える)
座長選出(委員の互選により、木村委員が座長に選任)
4 座長
挨拶
5 事務局
説明(資料確認、検討会の要領について、検討会の位置づけについて、議論の進め方について、スケジュールについて)
6 座長
今の説明について、ご意見はあるか。
7 大平委員
現行指針が機能したかどうかの検証を行って、全体として把握した上で進めていくことが必要。その上で、何故増加しているのか、等の個別の議論が必要。
現行指針で、うまくいった点が何で、うまくいかなかった点が何で、などを把握しておく必要。そうした問題点を、この検討会の前に作業部会で確認して、呈示してもらってから、本日の会議に入った方が分かりやすかったと思う。
8 課長
この会議が作業グループのようなものである。事務局としては当然問題意識をもっているが、あまり呈示してしまうと一方的な議論になってしまう懸念がある。ただ、資料5のように議論の視点を呈示しているところ。この検討会で、この視点をどんどん増やしていってもらって構わない。
現状の指針についての現状について認識の共有をはかりつつ、必要な資料等があれば事務局で準備していく。
9 池上委員
今の説明で、この会の位置づけがはっきりしてきた。
現在の予防指針を作成する会を傍聴させてもらったが、その時にはHIV陽性者、特に性感染による委員が複数おられて、活発な議論ができていた。そのような当事者の方々の評価も必要ではないか。
現在の指針を作成した委員等を呼んで、ヒアリングをしてはどうか。
10 課長
紙ベースで意見提供してもらうのか、実際に呼んでお話をうかがうのか、も含めて、座長と相談して決めていきたい。
もしよろしければ、適当な方をご推薦いただきたい。
11 座長
候補の方を、事務局に推薦してもらう、ということでよろしいか。
12 市川委員
HIV感染者の中で男性同性間感染の占める割合が高く、報告例が増えている。
陽性者との共生が指針で謳われているが、実際にこれらの方々の声は社会の中で聞こえてこない。
対策をとるべき少数者の意見を踏まえて対策をとっていかないといけない。
このような方から直接意見を聞く場が必要ではないか。
13 座長
これについても、推薦された方のご意向を踏まえ、資料提出してもらうか、ヒアリングをお願いするか、ということにしたい。
14 池上委員
可能なら、直接話し合えた方がいいと思う。
15 木原正委員
スケジュールでは、この検討会は4月頃まで、ということだが。
16 課長
この後、厚生科学審議会などに上げていくための時間が必要。
また、いい意見があれば予算化していく必要性なども検討していくことも念頭においている。指針を見直しをして、次のステージにうまくつなげるには予算が必要であれば、そうした動きも念頭に入れておく必要がある。
17 座長
それではスケジュールにそって進めていく。
事務局から説明を。
18 事務局
説明(参考資料:エイズの現状について、資料5:議論の視点について、第1回資料について)
19 座長
今回は個別施策層の中でも、男性同性間のHIV感染対策(MSM)と青少年に絞って議論していく。
まず男性同性間のHIV感染対策について、市川委員より説明を。
20 市川委員
ここ数年で男性同性間のHIV感染が過半数を占め、増加傾向にある。特に若年層の同性間感染が増えていることもあり、この原因としてHIV予防の必要性が生育過程で啓発されていないことが考えられる。
学校教育の中ではセクシュアリティの話ができていない。こうした点も含めた予防対策をしっかりとるべきである。
同性愛者にとってHIV検査の利便性をあげることも必要であるが、陽性者が医療機関につながるようにすることも大切である。
東京での報告が多いが、大阪や名古屋もHIV感染状況は似たようなもの。検査をただすればいいだけじゃなく、いかに不安をもつ方に対して必要な検査をより受けやすくすることを考えなければ。
予防啓発はコンドーム配布や検査イベントを単独に実施するだけでなく、バー等とのコミュニケーションづくりや、コミュニティ全体に対して複合的にプログラムを実施することが有効であることが研究班の成果から示されている。
予防対策は研究班と事業との役割を明確にすべき。恒常的な事業として効果的な啓発プログラムを事業化して実施し、それを評価するのを研究班が担うなど、整理する必要がある。
コミュニティセンターではコミュニティへの活動を浸透させる効果が期待される一方、そこで中心となるボランティアへの支援等の対応も考えるべき。
21 座長
東京だけじゃなく大阪でも同じように増えている、また1つのプログラムだけではダメで複合的なプログラムが必要であること、研究班の活用だけでは予算の制約などもあるのできっちり事業化する必要があること、などの話があった。
現在の指針は総論の話が多い。
なるべく具体的に指針に盛り込んでいってもいいのではないか。
22 白井委員
全般的な話だが、1,000人を超えたというが、これは、感染者は増えていると考えるのか、それとも検査によって補足率が上がったと考えるのか、どういう状態になったら、増えている、という状況を脱却してフラットになったといえるのか。この数字を減らしていくことができるのか。男性同性間でのコンドームの使用率がアップしたという話があったが、そういう数字をどう考えていくのか。難しいとは思うが。
また、男性同性間のHIV感染対策について、実施すればお金をつける(補助金)とはいっても、何をすればいいのか分からない。パンフレットを作っても、どこに配って良いかわからない。自治体として事業化できるような形で、モデルを示して欲しい。
23 市川委員
エイズ患者の報告例が増えているが、感染経路の不明例が多い。
男性同性間の感染であっても、医師にそのことをいいづらい、ということもあり、男性同性間感染は実際にはもっと多いと考える。
エイズ患者の発生を少なくするには早期検査、早期治療を進める必要があるが、HIV検査をただ受けやすくすればいいということではなく、医療にちゃんとつなげられるような体制をしっかりとしておく必要がある。
同性間感染では、若い年齢層で感染することが続いている。アメリカのCDCの報告でも、若い黒人の同性間感染は感染率が上昇しているというデータがある。これらの層に予防の情報がうまく届いていないことが原因と考える。
24 木原正委員
検査率が上がっているが、検査陽性率や献血における陽性率の上昇も考えると、1999年に予測したとおりに流行は広がっている。
25 市川委員
保健所とCBO等の関係機関との連携について、指針では総論的なことしか書いていない。具体的にどのように取り組むのかが示されていないので、保健所でも分からないのが現状ではないか。
保健所からは、「実際に男性同性愛者に会ったこともないので、どういう相談をしたらいいのか分からない」という話を聞くことがある。指針で、ある程度具体的に示していく必要があるのではないか。
男性同性愛者の状況は地域によって異なる。地方ほど、男性同性愛者が相談できないでいるということ言われており、東京や大阪と同じようにすればいいというのではなく、地域にあった取組みが必要。
研究班では、当事者のNPO、CBOと一緒に考えて取り組んでいる。
26 池上委員
最近、予防教育について、数年前にはできていたことが困難になる傾向が見られる。
東京都で昨年改訂された中学校の「性教育の手引」では、具体的な予防方法は集団では教えないことになっている。
学校現場(中学校)ではコンドームを示すのは「過激な性教育」というレッテルを貼られかねないし、保健所が企画したエイズデーイベントで高校生が自発的に地域でコンドーム配布ボランティアをしようとしたら教育関係の反対にあってできなかったという例もある。
厚生労働省と文部科学省の連携が指針でうたわれているが、連携の実態はどうなっているのか。むしろ逆方向を向いているのではないか。
一般に性感染を風俗とだけに結びつける傾向があるが、この傾向は全く変わっていない。「だれにでも感染の可能性がある」という情報が明瞭に伝わっていないので、いつまでも「他人事」である。性感染は「ふしだら」というようなイメージは、予防の意識や態度、行動を促す上で障害になるし、感染者への偏見や誤解を助長してしまう。
27 木原正委員
男性同性間のHIV感染対策の成功例として、オーストラリアやアメリカでは、コミュニティ組織がしっかりしていて、行政もサポートしていて、うまく機能している。
日本の男性同性間のHIV感染対策でも、こうしたコミュニティ開発が必要。akta、distaなどは一歩踏み込んだ対策といえる。
ボランティアに頼っていると、いずれきつくなる。
28 大平委員
個別施策層に限らず、情報共有の場が全体的にない。
エイズに関する情報を、若い人が気軽に入手できる公共の場が必要。情報共有施設を作る必要がある。
その場合、提供する情報として、セーフセックスだけではだめ。感染すると、治療が大変で一生治らない、といった病気についての知識も提供していくことが必要。
病気を知ることが、病気にかからない契機となる。予防の方法や外国の取り組みを積極的に紹介するのもよい。
また、連携機関として、文部科学省との間の壁が厚い。国全体でコーディネイトして欲しい。
29 座長
発生動向の数字を見ても、都道府県でいろいろ差がある。
例えば、大阪では、HIV感染者の数が多く、AIDS患者の3倍くらい。東京も2.5倍くらい。でも逆にAIDSの方が多い県もあったりする。
30 市川委員
個別施策層対策として、男性同性間におけるHIV感染対策を進めていく場合、どこが中心になって対策事業をやるか、ということを明確にしないと、対策事業は進んでいかない。
例えば、既存のNPOとエイズ予防財団が一緒にプログラムを作って、人材育成まで含めてやっていく、とか。
医療体制のように、普及啓発事業においても体制を整備してやっていくことが必要。
事業をどうやって進めていくのか、3年から5年計画で実施して、人材の確保や育成なども取り組んで、その結果を評価しつつ進めていくことが必要。
これは、男性同性間のHIV感染対策に限らず、セックスワーカーにしても、学校教育にしても同じ。
31 座長
研究班に止まらず、きっちり事業化して、責任を明確にして進めていくことが必要。
32 前田委員
男性同性間のHIV感染対策のやり方について、研究班等での方法を取り入れることに関しては、地域の問題点や対策がどこまで実効性があるかについて考えると、エイズの疫学的状況は地域によりかなり異なることから、各都道府県が自分の頭で考えてやるのがよい。
先ほど来、指針にある程度具体的に書き込むという話が出ているが、果たして指針でどこまで具体的に書けるのか、というところはある。例えば、感染症予防指針のように、指針に基づく行動計画を都道府県で作成するよう規定するといった考え方もある。
33 座長
男性同性間のHIV感染対策はまた次回に引き続き実施するとして、青少年対策に入る。木原雅子委員から説明を。
34 木原雅委員
エイズ予防教育の特徴としては、(1)事前の調査と評価を入れる、(2)発達段階によって啓発普及の方法(パンフレットなど)を適切なものとする。
青少年の現状としては、性の早期化、多様化。ネットワークを作っている。HIVのみならず、性感染症や中絶が増えている。
予防教育は地域性を考慮する必要がある。
子供達の行動段階をとらえる必要がある。コンドームの装着方法を教えるについても発達段階によって状況は変わる。(容認のメッセージと間違える可能性がある)。
教育にコンドームを取り入れても取り入れなくても効果は変わらない。コンドームを取り入れないということになると参加校がぐっと増える。効果的。
パンフレットの活用は高校生には有効。関心層には詳しいメッセージ。無関心期の青少年に対してはリスクの認知(自分にもリスクはある。)
学校、保健所の役割分担を行う。学校では、保健師から知識を学んだ学校の養護、保健体育の先生が生徒を教える。保健所では、さらに段階の進んだ生徒に対しての相談窓口を設定する。
保健所の役割は、「ハイリスク層の受け皿」「地域の予防啓発」「学校教育の側面支援」。
子供達は学校内では養護教諭(保健室)で情報を得ている。親にはいえないという子供達の実情を親は知るべき。
性関係を焦っている印象があり、時間をかけて関係を作っていくことの重要性を参加型のグループワークを通して学んでもらう。地域の教育委員会とPTA連合の協力を得て、実施していくことも重要。全国PTA連合により1万人の全国調査をしており、その結果が集計中。
35 座長
行動段階、行動時期を踏まえる必要性などについてコメントがあった。
36 藤井委員
高校の中でのSTD、性、エイズ教育は、緩んできてはいない。しっかり対応している。
東京都は、これまで活発だったものがややトーンダウンしているところはあるが、それ以外の地区ではしっかり対応している。
特に養護教員が熱心で生徒が養護教員に個々に相談していたりする。
昨年、HIV感染が若年化しているということで、10,000人を対象にアンケートを行った。
今の高校生は、知識として聞いても、行動には結びつかないのではないか。知識の教育のみではダメ。
高校2年生の17歳では、セックスすることについて、70%が認容している。STDについては知識だけでは防御できない。知識のみの啓蒙ではなく、多面的なアプローチ、オープンな啓蒙活動が必要ではないか。
37 島宮委員
学校では授業でエイズ知識はしっかり教えている。
今では高校進学率が90%を超えているところで、ここでの教育は非常に有効。
ただ、学校ではどう教育したらいいのか、といったところが充分マニュアル化されていない。教育内容を決めていくには、実態を踏まえて、という考え方と、今のままでいいのか、という出発点から考えていく方法とあるが、性教育についてはどちらなのか、といったことも混沌としている。学習指導要領に書き込んであれば明確ではあるが、そういう状況でもない。
教育委員会やPTAからクレームがあって、前にできたこともできないということがあったり、大きく踏み込んでいけない。これらとの合意をどうとりつけていくかが課題。
38 前田委員
現在、東京都では性教育について議論が加熱気味であるので、もう少し冷却時間をおいて冷静に議論する必要がある。むしろ、これを機に、学校や保護者などが地域で議論する機会を作って欲しい。
39 座長
今回の議論について、事務局で整理した上で、またフィードバックさせてもらい、次回もMSM、青少年を含めて、普及啓発について議論していく。
― 以上 ―


トップへ
審議会議事録  厚生労働省ホームページ