社会保障の在り方に関する懇談会に おいて平成16年12月8日(水)に とりまとめられた「議論の整理」を基 に厚生労働省の責任において作成 |
1. | 社会保障の一体的見直しの考え方 |
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(基本的考え方) |
○ | 個々の制度のみならず、全体を見通して、社会保障制度の一体的な見直しに取り組まなければならない。 |
○ | 個別の制度を見直し、積み上げた結果で社会保障制度全体の規模を論じるとする意見、社会保障給付の在り方と税・保険料を含めた負担の在り方について一体的に議論すべきとする意見、社会保障制度全体の規模を管理することにより持続可能な制度を作っていくべきとの意見。 |
○ | 居住費や食費の給付の重複調整など、各制度の役割や相互関係の調整が必要。 |
(潜在的国民負担率) |
○ | 持続可能という観点からは、社会保障給付全体の伸びを経済成長に見合う程度に抑制するなど潜在的国民負担率50%程度を上限として定めることが適当とする意見がある一方、まずは社会保障のあるべき姿や制度の効率化の議論をすべきであるなど、潜在的国民負担率50%程度という上限先にありきの議論は適当でないという意見。 |
2. | 公的年金一元化 |
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(一元化の意義について) |
○ | 公的年金制度の一元化は、将来的な選択肢の一つ。 |
(一元化の課題、議論の進め方について) |
○ | 国民年金と被用者年金の一元化における、被用者と自営業者等との相違点についての条件整備、専業主婦やパート労働者などの非正規労働者への年金適用の在り方といった問題。また、納税者番号制度を導入すべきという意見と、納税者番号制度は所得把握に明らかに限界があるとの意見。 |
(税方式と社会保険方式による基礎年金の在り方について) |
○ | 基礎年金を全額税方式に改めることについては、空洞化問題の解決や医療・介護保険制度の給付と負担、国・地方財政の状況も踏まえて検討する必要、といった意見がある一方、税方式では負担しない者へも給付を行うこととなり、不公平感を増す、保険料未納・未払い問題の解消のために税方式にするのは本末転倒といった意見。 |
3. | 介護保険 |
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(給付の重点化・効率化) |
○ | 介護保険制度については、給付を効率化、重点化し、制度を持続可能なものとすることが適当で、改革を早急に実施することが必要。 |
(被保険者・受給者の範囲) |
○ | 被保険者・受給者の範囲については、若者層の介護は保険に馴染まず、税で行うべき、障害者支援費制度が発足してから1 年半しか経っておらず、慎重に対応すべきといった意見がある一方、介護を真に必要とする人を国民全体で支える普遍的な仕組みに変えていくことが望ましいといった意見。 |
4. | 介護保険制度に関連する医療制度、中央社会保険医療協議会の在り方 |
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(介護保険制度に関連する医療制度) |
○ | 生活習慣病対策等、予防重視型システムへの転換や年金、社会的入院の解消に向けた医療と介護との分担・連携を進め、給付を効率化、重点化することが必要。 |
(中央社会保険医療協議会の在り方) |
○ | 中医協については国民の信頼を回復するため、改革に向けた取組が必要であり、中医協の委員の構成などその基本的な在り方について、第三者による検討評価を行うことが必要。これに関連して、そもそも当事者である中医協が在り方を検討するのではなく、第三者の目で早急に改革案を検討することが必要であるとの意見。 |
5. | 生活保護 |
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○ | 自立した生活を営めるような方向に向けた取組を進めていくことが必要。 |
○ | 年金とは、趣旨・目的が違うので単純な比較をすることは適当でない、生活保護を身の丈に合った形に見直す方向で議論することが必要といった意見。 |
6. | 少子化対策 |
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○ | 少子化の進展が社会保障制度はもとより今後の我が国の経済・社会全体に及ぼしていく影響は大変に大きなもの、雇用や経済を含めた幅広い社会経済環境の整備や高齢者関係給付の比重の高い社会保障制度の見直しをはじめとする少子化対策に取り組むことが必要。 |
1. | 社会保障の一体的見直しの考え方 |
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(基本的考え方) |
○ | 急速な少子高齢化が進む中で、年金、医療、介護、生活保護等の社会保障制度は、給付の面でも負担の面でも国民生活にとって大きなウエイトを占めてきており、家計や企業の経済活動に与える影響も大きくなっている。このため社会保障制度に関する国民の関心は高まり、また世代間の不公平の是正や持続可能性を確保することが重要になってきている。このような点を認識して、個々の制度のみならず、全体を見通して、社会保障制度の一体的な見直しに取り組まなければならない。 |
○ | 社会保障と経済・財政との両立を図る必要があるが、その際、個別の制度見直しと社会保障制度全体の規模やその負担との関係については、個別制度の合理化に関する見直しを積み上げた結果で社会保障制度全体の規模を論じるとする意見と、社会保障給付の在り方と税・保険料を含めた負担の在り方については一体的に議論すべきとする意見と、社会保障制度全体の規模をあらかじめ設定し、個々の制度の合理化に関する見直しを進めるべきとの意見や社会保障とマクロ経済との整合性を重視し複数年次を通して社会保障制度全体の規模を管理することにより持続可能な制度を作っていくべきとの意見があった。 |
○ | 社会保障制度の一体的な見直しを進めるに当たり、年金と介護等の居住費や食費の給付の重複調整、高齢者の社会的入院の解消に向けた医療と介護の役割分担など、各制度の役割や相互関係の調整が必要である。そのための基盤整備として、社会保障・社会福祉制度に共通する個人番号制と個人別勘定の仕組みを設けるべきであるとの意見があった。 |
○ | その際、可能な限り早く改革工程表の全体像を示し、消費税を含む税制の抜本改革の時期に合わせて改革に着手すべきであるとの意見があった。 |
○ | また、一体的な見直しを進めるに当たっては、地方の視点を意識すべきとの意見があった。 |
(自助・共助・公助) |
○ | 自助、共助、公助の組み合わせによって、我が国の福祉社会は形作られるべきものであり、その中で社会保障は大きな役割を果たすものである。この考え方に関しては、社会保障全体で政府が受け持つ分野と民間又は個人が受け持つ分野をきちんと確立し、自助を前提として、民間活力の活用による健康・福祉関連産業の発展・高度化等やシニア層の社会参画・就労機会の拡大等を通じて、民間又は個人で対応できる部分は自ら対応した上で、これを共助が補完し、公助はラストリゾート(最後の拠り所)として位置付けるのが適切との意見がある一方、まず公助を下支えとして共助の部分を拡大し、その上で自助の役割を考えるという意見もあった。 |
(潜在的国民負担率) |
○ | 潜在的国民負担率については、「基本方針2004」で「例えば潜在的国民負担率で見て、その目途を50%程度としつつ、政府の規模の上昇を抑制する」と閣議決定されている。 この点については、先進国間、先進国と発展途上国との競争が激化する中で、企業活動の海外シフトといったことにより日本経済の活力を損なうおそれがあること、また、持続可能性という観点からは身の丈に合った制度でなければならず、社会保障給付全体の伸びを経済成長に見合う程度に抑制し、社会保障の各制度を設計する必要があること、など潜在的国民負担率50%程度を上限として定めることが適当とする意見があった。 一方、給付を切り下げ過ぎると将来の生活不安を増長すること、潜在的国民負担率と経済成長との関係は実証的にも明確ではなく、潜在的国民負担率が50%を超えていても資本集約型から高付加価値型産業にシフトすることなどにより経済が安定的に成長している国もあり、まずは社会保障のあるべき姿、各制度の効率化、制度間調整の議論をすべきであることなど、潜在的国民負担率50%程度という上限先にありきの議論は適当でないという意見があった。 |
○ | 社会保障給付・負担全体の大きさをどの程度とすべきかは、国民選択の問題であるとも考えられ、いずれにせよ50%程度に抑制した場合の給付水準や自己負担がどの程度になるかなど「この程度の給付の場合はこの負担」という選択肢を、国民の眼に見える家計レベルの形で提示し、議論をすることが適当であるという意見があった。 |
2. | 公的年金一元化 |
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(一元化の意義について) |
○ | 公的年金制度の一元化については、財政の安定性、ライフスタイルに対する中立性、制度間の公平性、制度の利便性(分かりやすさ)並びに管理運営及び事務費の効率性などの観点から、将来的な選択肢の一つである。 |
(一元化の課題、議論の進め方について) |
○ | 国民年金と被用者年金の一元化に当たっては、高齢(退職)所得リスクの違い、所得形態及び納付形態の違い、保険料賦課基準所得の定義の違いといった被用者と自営業者等との相違点を解消するという条件整備が不可欠であるほか、自営業者等に所得比例保険料負担を求めることに賛同が得られるか疑問との意見、専業主婦(第3号被保険者)やパート労働者などの非正規労働者への年金適用の在り方といった問題があるとの意見があった。 |
○ | 被用者と自営業者等の所得把握に関して、納税者番号制度を導入すべきとの意見と、自営業者の所得把握に納税者番号制度は明らかに限界があるとの意見があった。 |
○ | 厚生年金と共済年金は給与所得者を対象とするなどの点で共通点があり、一元化は比較的容易と考えられるため、まず、これらの一元化を実現するべきとの意見があった。 |
○ | 共済制度は、年金一元化という観点のみで考えるべきではなく、公務員の職務や身分の特殊性に鑑みて、その独自性も十分に踏まえて検討していく必要があるとの意見があった。 |
○ | 一元化に際しては、職域あるいは地域が保険者機能を担うなど、ある程度の分立と拠出者や被保険者による自主的な運営を尊重しつつ、制度間調整によって負担・給付格差を是正するという分権的な一元化の手法を併せて検討するべきとの意見があった。 |
○ | 国民年金保険料の収納対策の徹底を図り、国民年金サイドでの一元化への基盤を整備することを急ぐべきとの意見があった。 |
(税方式と社会保険方式による基礎年金の在り方について) |
○ | 基礎年金を全額税方式に改めることについては、揺るぎない皆年金制度の確立は、空洞化問題の解決抜きでは図れないこと、少子高齢化が進む中でも維持可能な安定的な制度を確立する必要があることなどから導入すべきであること、また、その際の進め方について、被用者年金をまず一元化し、将来的には1階は消費税を中心とする税方式、2階は所得比例方式とするが、財源の在り方、移行時期などについては、年金制度だけでなく、医療・介護保険制度改革の給付と負担、国・地方財政の状況も踏まえて検討する必要があること、などの意見があった。さらにこれに関連して、厚生年金保険料率は15%を上限とすべきとの意見や、年金財政悪化時に給付で調整する方式を導入すべきとの意見があった。 一方、社会保険方式には負担・給付関係の明確性、被保険者の参加意識、自主自立の精神などを確保できるというメリットがあり、税方式では生活保護との違いが不明確になる上に負担しない者へも給付を行うこととなり、不公平感を増すことになること、保険料未納・未払い問題の解消のために税方式にするのは本末転倒であること、保険料の全廃と相当分の税率引上げは国民的な感覚として容易に受け入れられると思えないことなどから、慎重であるべきという意見があった。 |
○ | このほか、現行の国民年金の保険料の徴収については、地方税務当局との連携・協力が不可欠である、地方自治体にゆだねて国民健康保険料と一緒に徴収する制度に改めるべきといった意見がある一方、徴収率の低下を理由に地方税務当局が関与すべきとすることは適当ではないとの意見があった。 |
3. | 介護保険 |
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(給付の重点化・効率化) |
○ | 介護保険制度については、予防重視型システムへの転換や在宅サービスと施設サービスの間の負担の不均衡や年金給付との重複の是正といった観点からの施設給付の見直しを早急に進めることにより、給付を効率化、重点化し、制度を持続可能なものとすることが適当であり、こうした改革を早急に実施することが必要である。 |
○ | 介護保険の自己負担割合については、公の財源で負担すべき部分には制限があってしかるべきであり、現在の自己負担1割を見直すことを検討すべきという意見がある一方、利用者負担の上限がある現行制度の下では、利用者負担の一律引上げは施設志向を加速するおそれがあり、慎重に考えるべきとの意見があった。また、施設給付の見直しについては更に効率化の余地があるのではないか、給付の伸びについて明確な目標を設定すべきではないかという意見があった。 |
(被保険者・受給者の範囲) |
○ | 被保険者・受給者の範囲については、若者層の介護は保険に馴染まず、税で行うべきであり、また、国民年金と同様に保険料未納の問題が起きかねないこと、障害者支援費制度が発足してから1 年半しか経っておらず、その実績と内容を精査した上で考えるべきであること、対象年齢の拡大の前に徹底した給付の効率化をまず考えるべきであることなどから慎重に対応すべきという意見がある一方、年齢、原因等の違いを問わず、真に介護を必要とする人を国民全体で支えていく、という普遍的な仕組みに変えていくことが望ましいことなどから段階的に拡大を考えるべきという意見があった。 |
4. | 介護保険制度に関連する医療制度、中央社会保険医療協議会の在り方 |
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(介護保険制度に関連する医療制度) |
○ | 見直しに当たっての基本的な考え方としては、生活習慣病対策等、予防重視型システムへの転換や年金、社会的入院の解消に向けた医療と介護との分担・連携を進めることにより、給付を効率化、重点化し、持続可能なものを目指すことが必要である。 |
(中央社会保険医療協議会の在り方) |
○ | 中医協については国民の信頼を回復するため、改革に向けた取組が必要であり、中医協の委員の構成などその基本的な在り方について、第三者による検討評価を行うことが必要である。これに関連して、そもそも当事者である中医協が在り方を検討するのではなく、第三者の目で早急に改革案を検討することが必要であるとの意見があった。 |
5. | 生活保護 |
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○ | 生活保護の対象となっている世帯が生活保護から脱却し、自立した生活を営めるようになることは望ましいことであり、そうした方向に向けた取組を進めていくことが必要である。 |
○ | 具体的な見直しに当たっては、生活保護制度は、現下の多様な問題を抱える家族の増加に対応するための経験豊かな専門職員の人材育成が必要ではないか、保護率の地域格差が最大で10倍に上っていることを踏まえ、制度の構造的な欠陥があるのではないか、真に必要な世帯が保護を受けているのか検討が必要ではないか、施策の効果の検証も含めて各自治体での運営の適正化を促す必要があるのではないか、といった課題を検討することが必要である。なお、給付水準、制度設計は国の責任で行われており、今後もそうあるべきとの意見があった。 |
○ | 年金との関係については、その趣旨・目的、給付対象者が大きく異なっていることから給付水準について単純な比較をすることは適当でないことを理解する必要がある。ただし、給付額について、保険料を支払ってきた年金の方が高くてしかるべきだが、実際にはかなり接近しており、生活保護を身の丈に合った形に見直す方向で議論することが必要であるとの意見があった。 |
6. | 少子化対策 |
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○ | 少子化の進展が社会保障制度はもとより今後の我が国の経済・社会全体に及ぼしていく影響は大変に大きなものであり、少子化の流れを変えるため、雇用や経済を含めた幅広い社会経済環境の整備や高齢者関係給付の比重の高い社会保障制度の見直しをはじめとする少子化対策に取り組むことが必要である。 |
○ | 今後の少子化対策の在り方を検討する際の具体的な視点としては、出産後の職場復帰の促進や夫婦で子育てする環境の整備など幅広く働きながら子どもを生み育てやすい雇用・就労環境に作り変えるという視点を持つことが必要であり、子育て支援サービスや雇用の分野の取組のみならず、男女の役割分担に関する意識や子どもを産み育てていくことに生きがいを見出す価値観など、幅広く企業や国民の意識の改革といった様々な取組も必要である。 |
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平成16年7月27日 内閣官房長官決裁 |
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1. | 趣旨 社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくため、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行う必要がある。このため、有識者の参加を得つつ、「社会保障の在り方に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)を開催する。 |
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2. | 検討事項
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3. | 構成
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4. | その他 懇談会の庶務は、内閣官房において処理する。 |
石 弘光 | (税制調査会会長) |
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笹森 清 | (日本労働組合総連合会会長) |
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潮谷 義子 | (熊本県知事) |
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杉田 亮毅 | (日本新聞協会理事) |
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西室 泰三 | (日本経済団体連合会副会長) |
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(座長) | 宮島 洋 | (社会保障審議会年金部会長) |
[政府側] |
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内閣官房長官 |
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内閣府特命担当大臣(経済財政政策) |
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総務大臣 |
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財務大臣 |
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厚生労働大臣 |
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経済産業大臣 |
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