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資料 2

食品期限表示の設定のガイドラインについて


1.目的
 厚生労働省が所管する食品衛生法及び農林水産省が所管するJAS法に基づき表示すべき食品の期限について、その設定に関する食品全般に共通したガイドラインを策定する。

2.経緯
 平成16年2月に厚生労働省及び農林水産省が共同で「期限表示設定のガイドライン策定」検討会を設置。(メンバーは別紙1参照)
 その後、業界団体等が作成したガイドラインやそれらの業界団体等からのヒアリング等を参考にしつつ、計5回の検討会において検討を重ね、平成16年12月に本ガイドライン(案)を策定した。

3.今後の予定
 本共同会議における議論を踏まえた後に、厚生労働省及び農林水産省の共同で、都道府県や業界等に通知する予定。


食品期限表示の設定のためのガイドライン(案)

平成16年12月
食品期限表示の設定のためのガイドライン策定検討会

1.背景・目的
 食品の日付表示に関しては、平成7年4月から製造年月日等の表示に代えて、消費期限又は賞味期限(品質保持期限)の期限表示を行ってきている。また、平成15年7月には、食品衛生法及び農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(以下「JAS法」という)に基づく表示基準を改正することにより、「賞味期限」と「品質保持期限」の2つの用語が「賞味期限」に統一されるとともに、「賞味期限」及び「消費期限」のいずれについても、それらの定義の統一が行われた。

 期限の設定については、厚生労働省(「期限表示の設定は、食品の特性等に応じて、微生物試験や理化学試験及び官能検査の結果等に基づき、科学的・合理的に行うものであること」等)及び農林水産省(「食品に表示される「賞味期限」等の期限は、その食品の品質保持に関する情報を把握する立場にあり、当該製品に責任を負う製造業者等が科学的、合理的根拠をもって適正に設定すべきものである」等)において示されている他、一部の業界団体等において自主的にガイドライン等が作成されているところである。しかし、食品全般に共通した期限表示の設定に関する科学的なガイドラインを示す必要性が指摘されてきた。

 このため、平成16年2月、厚生労働省と農林水産省が共同で設置した「食品期限表示の設定のためのガイドライン策定検討会」(食品衛生学、化学、微生物学の専門家、期限表示の設定経験を有するもの(業界関係者)等から構成)において計5回の検討(平成16年3月〜16年11月)を行い、食品全般に共通する客観的なガイドラインを作成した。(メンバーについては別紙1参照)

 当ガイドライン(案)は、これまでの研究結果、業界団体等が作成した既存の自主基準やガイドライン、業界団体等へのヒアリング及び諸外国における期限表示の設定根拠等を基に、本検討会において検討した結果をとりまとめたものである。

 また、当ガイドライン自体が期限設定の際に役立つことはもとより、業界団体等が自主的に個別食品に係る期限設定のガイドライン等を作成する際の礎となることを期待する。

2.期限表示設定の基本的な考え方
 (1)食品の特性に配慮した客観的な項目(指標)の設定
> 期限表示が必要な食品は、生鮮食品から加工食品までその対象が多岐にわたるため、個々の食品の特性に十分配慮した上で、食品の安全性や品質等を的確に評価するための客観的な項目(指標)に基づき、期限を設定する必要がある。

> 客観的な項目(指標)とは、「理化学試験」、「微生物試験」などにおいて数値化することが可能な項目(指標)のことである。ただし、一般に主観的な項目(指標)と考えられる「官能検査」における「色」、「風味」等であっても、その項目(指標)が適切にコントロールされた条件下で、適切な被験者により的確な手法によって実施され数値化された場合は、主観の積み重ねである「経験(値)」とは異なり、客観的な項目とすることが可能と判断される。

> これらの項目(指標)に基づいて設定する場合であっても、結果の信頼性と妥当性が確保される条件に基づいて実施されなければ、客観性は担保されない。

> 各々の試験及び項目(指標)の特性を知り、それらを総合的に判断し、期限設定を行わなければならない。

> なお、食品の特性として、例えば1年を越えるなど長期間にわたり品質が保持される食品については、品質が保持されなくなるまで試験(検査)を強いることは現実的でないことから、設定する期限内の品質が保持されていることを確認することにより、その範囲内であれば合理的な根拠とすることが可能であると考えられる。

 (2)食品の特性に応じた「安全係数」の設定
> 食品の特性に応じ、設定された期限に対して1未満の係数(安全係数)をかけて、客観的な項目(指標)において得られた期限よりも短い期間を設定することが基本である。
 なお、設定された期間については、時間単位で設定することも可能であると考えられることから、結果として安全係数をかける前と後の期限が同一日になることもある。

> 例えば、品質が急速に劣化しやすい「消費期限」が表記される食品については、特性の一つとして品質が急速に劣化しやすいことを考慮し期限が設定されるべきである。

> また、個々の包装単位まで検査を実施すること等については、現実的に困難な状況が想定されることから、そういった観点からも「安全係数」を考慮した期限を設定することが現実的であると考えられる。

 (3)特性が類似している食品に関する期限の設定
> 本来、個々の食品毎に試験・検査を行い、科学的・合理的に期限を設定すべきであるが、商品アイテムが膨大であること、商品サイクルが早いといった食品を取り巻く現状を考慮すると、個々の食品毎に試験・検査をすることは現実的でないと考えられる。食品の特性等を十分に考慮した上で、その特性が類似している食品の試験・検査結果等を参考にすることにより、期限を設定することも可能であると考えられる。

 (4)情報の提供
> 期限表示を行う製造者等は、期限設定の設定根拠に関する資料等を整備・保管し、消費者等から求められたときには情報提供するよう努めるべきである。


(参考1)代表的な試験について
 
理化学試験
   食品の製造日からの品質劣化を理化学的分析法により評価するものである。食品の特性に応じて各食品の性状を反映する指標を選択し、その指標を測定することにより、賞味期限の設定を判断するものである。
 一般的な指標としては、「粘度」、「濁度」、「比重」、「過酸化物価」、「酸価」、「pH」、「酸度」、「栄養成分」、「糖度」等があげられる。これらの指標は客観的な指標(数値)として表現することが可能であり、食品の特性に応じて、合理的・科学的な根拠として有用となると捉えられる。これらの指標を利用して、製造日の測定値と製造日以後の測定値とを比較検討することで、普遍的に品質劣化を判断することが可能である。

微生物試験
   食品の製造日からの品質劣化を微生物学的に評価するものである。その際、食品の種類、製造方法、また温度、時間、包装などの保存条件に応じて、効果的な評価の期待できる微生物学的指標を選択する必要がある。
 一般的指標としては、「一般生菌数」、「大腸菌群数」、「大腸菌数」、「低温細菌残存の有無」、「芽胞菌の残存の有無」等が挙げられる。これらの指標は客観的な指標(数値)として表現されることが可能であり、合理的・科学的な根拠として有用であると捉えられる。
 しかしながら、この場合には、食品の種類等によって許容可能な数値は異なることを考慮する必要がある。

官能検査
   食品の性質を人間の視覚・味覚・嗅覚などの感覚を通して、それぞれの手法にのっとった一定の条件下で評価するものである。測定機器を利用した試験と比べて、誤差が生じる可能性が高く、また結果の再現性も体調、時間帯などの多くの要因により影響を受ける。しかし、指標に対して適当な機器測定法が開発されていない場合や、測定機器よりも人間の方が感度が高い場合などに、有効利用され得る。得られたデータの信頼性と妥当性を高くするためには、適切にコントロールされた条件下で、適切な被験者による的確な手法によって実施され、統計学的手法を用いた解析により結果を導くように留意しなければならない。




(参考2)業界団体等がとりまとめたガイドライン及びヒアリング結果の例示
 
例示1 冷凍食品(比較的期限が長い製品)
冷凍食品を製造販売している企業が参加している(社)日本冷凍食品協会によってガイドライン「冷凍食品の期限表示の実施要領」が作成されている。指標としては微生物学的基準、理化学的基準、官能的基準の3つからなり、それぞれ微生物試験、理化学試験、官能試験によって評価を行うとしている。期限設定の際には、流通実態に応じた保存試験を行い、試験期間(区間)を設定している。また基準に見合った検査方法、各試験の評価方法、期限設定を行う者や期限表示の方法が決められている。また協会が得た試験結果や海外事例も、参考までに例示している。

また、「冷凍食品」を製造販売している企業にヒアリングを行ったところ、製品の種類やタイプに応じて、指標や検査方法、評価方法が上記ガイドラインとは異なっている部分もあった。指標としては、全体として微生物学的基準、理化学的基準、官能的基準の3つを設定していた。微生物学的基準の指標としては、一般生菌数や大腸菌群数など、化学的基準の指標としては、脂肪の変質やビタミン類の分解などをあげていた。官能的基準の指標としては、香味や色調などであった。また、保存・流通上の環境因子を考慮し、想定される流通・保管温度での試験に加えて、保存温度を設定温度より高めに設定する加速試験も実施していた。安全係数は、商品価値限界に至る期間の7/10で設定されていた。また、期限設定については適宜見直しを実施していた。

事例2 パン(比較的期限が早い製品)
「パン」製造業では、(1)品質の保持される期間が製造日を含めておおむね5日前後以内の劣化速度が速い製品と、(2)品質の保持される期間が製造日を含め5日を十分に超える製品の、両方を製造しているのが特徴であった。(1)は消費期限の、(2)は賞味期限の表示対象となる。(社)日本パン工業会では「日付(期限等)表示管理マニュアル」を作成し、この消費期限と賞味期限の表示対象製品事例を提示していた。消費期限表示対象製品は、食パン、菓子パン、パン、ドーナツ、その他の、5つの製品群に分けられていた。期限表示の指標としては、主として微生物学的基準と官能的基準が使われていた。微生物学的基準の指標では、生菌数、大腸菌群、黄色ブドウ球菌が、官能的基準の指標では、味、色、香り、形状、触感、カビ・酵母が設定されていた。また、期限設定のための検査については具体的な商品を例示しつつ、(1)品質の保持される期間が製造日を含めておおむね5日前後以内の劣化速度が速い製品では、毎日実施することとしていた。この場合、安全係数として、消費期限設定対象製品については「保存可能期限−1日」等の設定が例示されていた。また、検査結果のデータについて、当該製品の販売期間中保存することとしていた。

また、「パン」を製造販売している企業にヒアリングを行ったところ、消費期限については、期限の期間が3〜4日であるため、安全係数が結果として日付まで影響を及ぼす事例は少なく、また、調理パンのように製品によっては製造時間の影響も考慮する必要があるものもあることから、製造時間の表示も同時記載しているとのことであった。


別紙1

食品期限表示の設定のためのガイドライン検討会委員名簿


座長 米谷 民雄 国立医薬品食品衛生研究所 食品部長
 山本 茂貴 国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部長
 穐山 浩 国立医薬品食品衛生研究所 食品部第三室長
 工藤由起子 国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部主任研究官
 堀口 逸子 順天堂大学医学部公衆衛生学講座助手
 門間 裕 (財)食品産業センター企画調査部長
 大木 晃夫 (独)農林水産消費技術センター表示指導課長


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