05/01/24 第2回発達障害者支援に係る検討会議事録            第2回「発達障害者支援に係る検討会」           日時:平成17年1月24日(月)18:00〜19:45           場所:厚生労働省4F社会・援護局第2会議室  栗田座長  ただいまから第2回「発達障害者支援に係る検討会」を開催させていただきます。本 日は二つばかり先生方にお願いしたいことがございまして、一つは前回に引き続いて政 令で定める発達障害の範囲の検討ということであります。これについてはまた前回と同 様に活発な御意見をお出しいただければと思います。  もう一つは、発達障害者支援法にあります専門的な医療機関の確保について、これを 検討していただければと思っております。後半に関しましては市川先生の方から少し資 料などを御提示していただいて議論をするという形ですが、それぞれの先生方の活発な 御意見をいただいて、事務局の方でおまとめいただくということになっております。そ れでは事務局の方から資料についての御説明をお願いします。  事務局  それでは事務局の方から資料の御説明をさせていただきたいと存じます。まずお手許 の資料の確認と、一部は差し替えをお願いしたいと存じます。封筒の中に本日の資料、 次第から始まります検討会の資料が入ってございます。検討会の次第がございまして、 委員の皆様の名簿、座席表ということで、資料1は発達障害の定義についての考え方と いうのが一つございます。  次の資料2は、発達障害者支援施策の意見の募集についてというのがございますが、 こちらにつきましては袋の上に同じ体裁の資料2という「発達障害者施策の意見の募集 について」というのを置かせていただいております。若干文面が変わっておりますの で、こちらに差し替えて御覧いただければと思います。パブリックコメントの概要につ いてというところ、差し替えの方にはついておりませんが、前2枚の新しい方で見てい ただければと思います。  あとは参考資料1としまして前回第1回目の意見の概要案ということで事務局でまと めさせていただいたものでございます。あとはパワーポイントをプリントアウトをしま した発達障害支援法をめぐってというのがございます。これは市川委員の方から御提出 をいただいた資料でございます。後ほど委員の方から御説明をいただければと考えてご ざいます。  あとはもう一つ、緒方委員より御提出いただきました特別支援教育士養成プログラ ム、これも後ほど委員の方から御説明を賜れればと存じます。それからオレンジ色の資 料でございますが、こちらは杉山委員から御提出をいただいたものでございます。あと もう一つ、16年度LD、ADHD、高機能自閉症児担当指導者養成研修という冊子がご ざいますが、こちらについては小塩委員から御提供をいただいたものでございます。  それでは資料の御説明をさせていただきたいと思います。まず参考資料の1として、 前回の意見の概要(案)というところから御説明をさせていただければと思います。前 回は長時間にわたりまして様々な御意見をいただきました。この発達障害者支援法の対 象とする範囲ということについて御議論をいただきましたが、その中の主な意見といっ たところを私ども事務局の方でまとめさせていただいたものでございます。紹介をさせ ていただきます。  まず、1番目に支援の観点というところから、発達障害ゆえに支援を必要とする人た ちを広くカバーしていこうというのがこの発達障害者支援法制定の趣旨である。そこか ら考えれば今回の検討も必要な対象者が広くカバーされる方向で検討することが大切で はないか、こういった御意見があったというふうに理解しております。  また、発達障害の方々の支援ニーズについては、そのライフステージや場面によって も異なることから、あまりに厳密に対象範囲を規定すると、様々な支援の場での運用に 柔軟性を欠くおそれがあるのではないか、こういった御意見があったのではないかと考 えております。  2番目としまして、脳機能の観点からということで御意見をまとめさせていただきま した。まず発達障害に共通な脳機能の障害の観点というところから、この対象範囲を考 えていけないだろうか。例えば言語能力や実行機能の障害といいますものは、自閉症や 学習障害、注意欠陥多動性障害に共通な脳機能の障害である。その他、記憶や注意など の機能が考えられ、そのような機能の障害という観点から検討したらどうか、こういっ た御意見があったと思います。  一方、対象となる障害の具体的なイメージをその支援に関わる方々の間で共有するた めには、ある程度確立した障害概念、例えば医学的に言えば診断名というようなことに なるのかもしれませんが、障害概念を例示していくことも必要ではないか。こういった 御議論もされたと考えております。  三番目につきましては、対象となる障害の範囲について、客観性、透明性を確保し て、対象範囲について共通の認識をどのように確保するか、その共通の考え方が示され たところでございます。  また、脳機能の障害といいました時に、脳の器質的な障害のみに限定するのではなく て、機能の障害として捉えていくべきといったところが、大体皆様の御意見の一致した ところかと思って承っておりました。  3番目といたしまして、個別の障害についてということで意見をまとめてみたところ でございます。てんかんにつきましては、認知障害が伴うてんかんの方もあり、発達支 援を考えていくということは重要ではないかといったような御意見があったと理解して おります。また、中枢神経系の疾患ですとか、脳外傷や脳血管障害の後遺症に伴って見 られる、自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害に類似の障害もこの法律の支援の対象 に含んでよいのではないかといったような御意見を紹介しております。  三つ目ですが、トゥレット障害を含むチック障害のように、幼・小児期に現れる行動 や情緒面の障害についてどう考えるかといったような御意見があったということで、ま だ正式な議事録等ができていない段階で恐縮ですが、事務局の方で第1回の意見の概要 をまとめさせていただいたものでございます。  続きまして資料の1について御説明をさせていただきたいと思います。前回御議論を いただいたわけですが、第1回目で私どもの最初の議論のお願いの時の法律の考え方の 御説明のところが若干足りなかったかなと伺っていて思うところがございまして、その 辺を少し補足というような意味で、改めてという面もありますが、定義についての考え 方というものを整理させていただいたものでございます。  最初のパラグラフはこの法律の制定の目的ということで、これまで支援が行き届かな かった全ての発達障害者の自立と社会参加を支援するという理念を示すことによって、 個別の施策や制度の充実を図ることが目的であるというところでございます。  そのため、政令で定める「定義」については、これから先「制度の谷間」を生まない ように、できるだけ広くとることが必要ではないかと、私どもも考えているところでご ざいます。  法律で定められております発達障害につきましては、以下の3つの障害、広汎性発達 障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、この3つの障害については法律そのもので対象 ということで規定しておりますので、この3つの障害はそのままこの法律の対象となっ ているところでございます。  この3つ以外に、通常低年齢で発現するこの3つの障害に類する脳機能の障害といっ たところを政令で定めていくという法律の書き方になっております。よって真ん中の下 線のところですが、政令では、これら3つの障害と同様に日常生活上の制限を受ける脳 機能の障害のうち、通常低年齢で発現するものを定めることが必要ということでござい ますが、この3つの障害と同様にというところでありますが、その下に参考ということ で、法律の条文を記載しておりますが、第2条の2項というところがございます。  こちらで、この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活 または社会生活に制限を受ける者をいうというふうになっておりまして、ここで言う同 様にというところにつきましては、この広汎性発達障害や学習障害、注意欠陥多動性障 害と同様に日常生活上の制限を受けていて、同じような支援が必要であるというような 脳機能の障害のうち、通常低年齢で発現するもの、これを政令の方で定めていくという ところでございます。  この辺を少し絵にしましたものが次の頁でございまして、「発達障害」ということで 少し黒く塗りました大きな四角があると思います。その下に論点ということで吹き出し をつけておりますが、政令ではこの四角の枠内、この範囲について定めていただけれ ば、ただし中に3つ、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥性多動性障害と書いてござ いますが、これは法律で書いてございますので、法律的には政令で定める範囲からはこ の3つの楕円は除かれるということになりますが、この3つの障害を含む発達障害のこ の四角の枠組について御議論をいただければと思います。  この四角の枠組につきまして、法律で規定している要件というのは2つございまし て、1つがその他これに類する脳機能の障害、これというのはこの3つの広汎性発達障 害、学習障害、注意欠陥多動性障害でございます。これに類する脳機能の障害であっ て、通常低年齢で発現する者というところでございます。  ですから本日こうした観点から、1つはこういったものに該当する、先程の御意見の ところでいいますと、具体的なイメージをある程度確立した障害概念としていくつか例 示的にあげることができないか、この広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害 以外にこの法律の対象とすべき障害の概念をいくつか例示であげるとすればというとこ ろを少し御議論をいただいて、あとはまた障害の内容といいますか,種別といいます か、言語とか実行機能ですとか、そういったところがあるわけですが、そういったもの についてもこの3つの障害と同様の日常生活上の制限を受けて、通常低年齢で発現する という観点からどういったことがあげられるのか、この辺を御議論いただければという ふうに考えております。  続きまして資料2について御説明をさせていただきたいと思います。第1回目にこの 法律の施行に向けて、特に対象の範囲の政令についてパブリックコメントということで 広く国民の皆様の御意見を伺っていく手続きを考えていますと申し上げたところでござ いますが、資料2はそのパブリックコメントを募集します時の募集の進め方の案といい ますか、考え方でございます。  まず1枚目に考え方を書いておりまして、昨年12月3日にこの法律が成立をした、今 後4月1日から施行していくというところでありますが、厚生労働省といたしましても 文部科学省さんと緊密な連携をとりまして、法律の趣旨を実現するように努めてまいり たい。 2番目のところで、法律で定められた定義と政令の範囲ということで今御説明 しましたようなところですが、その辺を書いております。  3つ目でこの政令で定める発達障害の範囲について、国会の審議についてもパブリッ クコメントを求めていくということをされておりますので、この考えにつきましては別 紙の通りというところでありますが、この別紙については本日の御意見もふまえまし て、また事務局の方で整理をさせていただきたいというふうに考えております。  やはり政令の案ということになりますと、この内容については医学的なところ、ある いは教育的なところ、福祉的なところといった考え方と、あとはどうしても法律的な考 え方、法律として書けるかという部分が出てまいりますので、その辺のところは事務局 のところでも考えさせていただきましても、今日いただいた御意見をもとに法律的なと ころを事務局で考えさせていただいて、また、この別紙案を作成して委員の皆様に、場 合によっては個別にお諮りをさせていただきたいというふうに考えております。  なお、4点目ですが、このパブリックコメントにつきましては、この範囲のところだ けではなくて、いずれも新しい施策を進めていくわけですので、いろいろな施策の進め 方についても広く御意見を伺ってはどうかということで考えております。  2枚目につきましては募集の要項というようなことで、期間としては2月上旬から大 体概ね1カ月間でやることになっておりますので、その辺を書いております。内容につ いては発達障害の定義というのが1番目で、2番目はその他の具体的施策ということに ついても伺おうと考えております。郵送ないしはEメール等々で受け付けますので、E メールの宛て先は専用の宛て先を設定いたしますので、本日はまだ決まっておりません が、募集までには確定したいと思います。  以下、書いております1〜4の資料、このうち2番の政令で定める範囲の考え方とい うのが今申し上げましたように別紙になるわけですが、本日の御意見をふまえまして、 私ども事務局の方で整理させていただいたものを添付して進めてまいりたいと思いま す。ということですので、この範囲につきましては、具体的な障害の例がもしあげられ るとすれば今日御意見をいただきたいのと、その障害の内容というようなことについ て、障害の内容の書き方といいますか、何とかの障害といったようなところについて御 議論をいただければと考えております。  栗田座長  どうもありがとうございました。事務局から丁寧に御説明をいただきましたが、最初 に発達障害の政令で決める範囲について、引き続き御意見をいただきたいのですが、た だいまこの発達障害者支援法につきまして大変御尽力をいただきました福島議員がオブ ザーバーでお見えでございますので、福島先生に御挨拶をお願いいたします。  福島議員  ただいま座長から御紹介をいただきました衆議院議員の福島豊でございます。昨年の 臨時国会におきまして、橋本龍太郎先生を会長とする「発達障害の支援を考える議員連 盟」として立法化の作業に全力で取り組みまして、各党の御協力をいただいて12月3日 に成立をさせていただくことができました。関係者の方々の昨年大変な御努力によりま してこの法律ができるに至ったと思っておりまして、この場をお借りしまして改めて御 礼を申し上げたいと思っております。本当にありがとうございました。  そしてまた議員立法ですので、また内閣委員長提案という形になりましたので、本来 は質疑というのがないというのが一般的なのでありますが、ぜひともその内容について 質疑をということで、衆参両院におきましていろんな議論がなされました。もちろん各 党の法案の審査にかかっても議論がなされたわけでありまして、一つはこの発達障害の 定義をどうするんだというような議論、これが多くの方から指摘がありました。  そういったこともありまして、本検討会におきまして政令を定めるにあたりまして、 多くの方の御意見をお聞きして、適切な形で対応していただくということが大切ではな いかというふうに思っております。もちろんその定義の問題だけでありませんで、具体 的にどのような支援を進めていくのか、こういった点についても様々な意見がありまし て、立法を進める立場として先生方にお願いをいたしたいことは、この法律ができて良 かった、施策がさらにだいぶ前進をしたと言っていただけるような、そういう方向性を ぜひともお示しをいただければというふうに思っております。  座長の栗田先生はじめ、どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうござい ました。  栗田座長  福島先生、どうもありがとうございました。それでは最初の発達障害の範囲につい て、前回に引き続きまして活発な御意見をお出しいただきたいのですが、杉山先生、い かがですか。  杉山委員  オレンジ色の資料を持ってきました。オレンジ色の紙を使った理由は特にないのです が、自閉症の方の一部が白に黒では読みにくいというのがありまして、こんな方が多分 見易いのではないかということと、もう一つは目立つためです。  これはどういう経緯でこういうものが作られたのかといいますと、発達障害というも のを一般の親に説明する時にどのぐらい砕くとわかりやすいかということで作った一覧 なんです。発達の領域、前回内山先生から出ていましたが、それを分けていって、そし てそれについてその内容を説明して、そして医学的な診断名を、ここではDSM−IVを 使っています。  これでいきますと、従来の法律ですでにカバーされていたのは認知の発達と運動の発 達の領域の障害だ、そしてこの発達障害者支援法に書かれているのは、今、御指摘のあ ったように学習障害と広汎性発達障害と注意欠陥多動性障害が書かれている。そうする と残りで書かれていないのが言語能力の発達の部分と、発達性協調運動障害になるんで すね。  おそらくこの2つを加えると、まず一つは文科省の学習障害の定義をカバーします。 それから前回問題になっていた、たとえばてんかんですが、てんかんで認知障害があっ た場合には、これは必ずや学習障害にひっかかるか、あるいは注意欠陥多動性障害にひ っかかってきます。それから例えばウイリアムズのような場合にも、これはおそらく学 習障害、あるいは注意欠陥多動性障害にひっかかってきますね。これでカバーできない 部分がどこにあるかというふうに考えますと、高次脳機能障害としての感覚器障害、例 えば後頭葉症候群なんかがこの定義から全く抜けています。  ただ、その後頭葉症候群も臨床的にはおそらく学習障害の臨床像を呈してくる以外に はちょっと考えにくいので、大体こういう形で文科省の学習障害の定義と、それから今 回の政令とのすりあわせができるのではないかということと、一般的に世界で使われて いる診断基準に合致したものとして、少なくともこの発達性言語障害と発達性協調運動 障害を加えておくと大体カバーできるのではないかなというのがこの表を作ってみた理 由であります。  栗田座長  どうもありがとうございました。今、杉山先生の方からオレンジ色の紙について御意 見があったのですが、いかがでしょうか。特に診断名ということに限らず、その他の観 点で、例えば機能的なレベルとか、そういうものでもよろしいんですが、いかがでしょ うか。もちろん先程事務局からも御説明いただいた通り、診断的なカテゴリーが1つの たしかに次元としてあり得るでしょうし、それからすでに前回内山先生の方からお出し いただいたような機能的なレベルで範囲をさらに明確にしていくという、そういうこと がございますが、いかがでしょうか。  杉山先生、発達性言語障害というと、DSMだとコミュニケーション障害という、も うちょっと幅広いカテゴリーがありますね。その中の1つの障害なんですが、コミュニ ケーション障害の中の他の例えば発音の問題だとか、そういうのはどうお考えになりま すか。  杉山委員  コミュニケーション障害に代表させてもいいんだと思いますが、コミュニケーション 障害であげているものというのは結局3つありまして、構音障害と運動性の障害、表出 性言語障害と、受容表出混合性言語障害の3つですね。それで構音障害の方はごく一部 を除きますと年齢が上がってくると自然に改善してくるものが大多数です。それから表 出性の発達性言語障害の方も年齢が上がってくると自然に良くなってくるものが大多数 で、おそらく問題が残るというか、不適応を伴う形のものというと受容表出型の発達言 語障害が残ってきます。そういう意味で具体的には発達性言語障害という具合にしても いいのではないかと思います。  栗田座長  どうもありがとうございました。引き続き御意見をいただきたいのですが、杉山先生 の方から具体的には発達性言語障害を加えること、それから発達性協調運動障害、非常 に不器用で適応上困難をきたすという状態ですよね。それを追加してはどうだろうかと いう御意見ですが。それぞれ有病率はかなり高いものですので、カバーされる範囲が広 がるという点では結構なことだろうとは思います。  遠慮なくいろいろ御意見をお出しいただいて、事務局の方できちんとまとめていただ けるという約束になっておりますので、せっかくお集まりですのでいろいろ言っていた だければと思いますが。特に教育的な観点からいかがでしょうか。  緒方委員  とてもわかりやすいと思うのですが、本当に基本的なことで申し訳ないんですが、こ の場合の精神遅滞というのは、発達障害のこの枠のどこに入るのですか?  杉山委員  従来、法律でもうすでにカバーされているものは、この法律では入っていないもので すから、ですから精神遅滞とか、それから肢体不自由、それはここの中には入れていな いです。それから純然たる感覚器障害、盲・聾等もここの中には入れていません。  緒方委員  そうすると前回も栗田座長さんの方(削除)からお話が出た、いわゆる境界線ぐらいの お子さん、知的な状態では精神遅滞には一応入らない、でも基本的に標準的な知能の範 囲の下の方といったようなお子さんたちにとっても支援ニーズは高いと思うんですね。 単に(削除)自閉症のお子さんだとか、知的に高い(削除)学習障害のお子さんでも学習面 の遅れをもち、多様な支援ニーズがあるお子さんたちがいるわけですが、その子たちは 知的な遅れの範囲というか、その辺をどういうふうに、ここに類するに入れていいんで しょうか(削除)どこにはいりますか?  杉山委員  臨床的には学習障害の中に含まれてくるんだと思います。特に文科省の学習障害定義 とすり合わせをしていくんだとすると、文科省の学習障害の定義というのはかなり広 い、スペシャルニードのある子の全体というようなものに近いんじゃないかと思うんで すね。具体的に結局境界知能の問題が問題になるというのは、そこに不適応が生じた場 合ですよね。そうすると結局それは学習障害の形になっていくと思うんですが。  緒方委員  あの子たちの特異な学習障害というんですか、例えば読み書きというよりも、割と全 般的な場合がありますよね。その場合は?  杉山委員  いえ、学習障害というのは、全体としては横断的な学習障害が多いんですよ。例えば 未熟児が典型なんですが、結局未熟児脳というのは何かということを考えてみると、白 質の未熟なんですよね。一つの領域と別の領域を一緒に動かすところが遅れてくるんで す。そうすると横断的な学習障害の形をとってきて、ある部分だけのスパンという谷間 を作るのとは違うような形の学習障害がむしろ多いんだと思います。  緒方委員  そういうことがこの学習障害の部分で、杉山先生が言われているようなことがはっき り示されると、一安心かなという気がします。  栗山座長  ありがとうございました。ちょっと座長の方から補足をさせていただきたいのです が、杉山先生がここにお出しになったのはDSMでいう学習障害ですよね。そうします とかなり狭いので、読み書き計算ですよね。ですから緒方先生が今言われたのは、もっ と広い意味での、いわゆる境界知能ですので、IQで言うと70を超えて85未満という、 要するに平均から標準偏差差下の部分の人たちですよね。理論的には、子供でも大人で もいいですが、十数%ですよね。  ですから非常に有病率は高くて、しかも多分ADHDの一部の人は境界知能レベルに なります。ですからその人たちはADHDだからここでカバーされている、あるいは高 機能の自閉的な人はかなりそういう人が多いのですが、それはカバーされる。それから 学習障害の中でもたしかに全体的なIQは境界知能レベルで、だけどその中で非常に読 み書き計算の力は落ちているという人はいますよね。これは学習障害のDSMの定義に なるわけですから、そうしますとただ実際にその理論的に十数%いる人の細かいデータ は私にはちょっとわからないのですが、多分半分以上はいわゆるADHDや学習障害で もないし、高機能の自閉的な障害でもないという、つまり外見的にはごく自然な感じの 少年少女、だけれども勉強すると平均的な子供たちについていくのはかなり困難で、学 校その他ではうまく適応ができなくなることが大いにあり得て、学校を出た段階で就労 できる可能性というのもかなり狭まってきて、だけれども成人しても知的障害ではない ので手帳は出ないというような、それで困っている人たちというのはたくさんいるわけ ですよね。だから多分その辺のことを少しお考えていただけるといいのかなというふう に思うわけですが。  少し余計なことを言いましたが、境界知能のレベルの人たちの問題というのは、もち ろんその人たちが、格別困ってない、ちゃんと親御さんの手伝いをして、それなりに満 足した生活を送ってらっしゃればいいんですけれども、実際仕事にも就けない、なかな かうまく社会で活動できないということで困難を感じていた場合には、多分この法律で カバーできるというところが何らかの形で示されないと、やはり大事なサービス対象を 積み残してしまうということになるのではないかというふうには思いますが。  宮崎委員  杉山先生に教えていただきたいのですが、先だっての内山先生のお考えを整理してい ただいて、非常にわかりやすくなったのですが、実は全国の小・中学校の担任の先生方 が、教室にいる子供で非常に困っているケースの中に、行為障害の問題があります。不 登校、その後のひきこもりといったようなことに関連して、だいぶ御苦労をされている ところがあるようですが、例えばICD−10で言っている行為障害等などについては、 ここではどう考えたらいいのか。おそらく関連する障害を持っているというようなこと もあるので、このあたりについてはどういうふうにすればいいのかというのがちょっと 気になったところなんですが。  杉山委員  行為障害の子たちが学校で不適応を起こした場合には、これは必ずや学習障害の形を とってきます。それから不登校なんですが、不登校も今教育サイドでほとんどの対応が できるようになっていて、そこでうまくいかないと我々のあいち小児センターでは不登 校外来というのを持っているんですが、そこの発達障害の割合がだんだん高くなってい るんですよ。  最初から1年半の時が不登校外来に受診した方の発達障害の割合が32%でした。とこ ろが昨年のデータでは50%です。そのうちの約40%までが広汎性発達障害、高機能広汎 性発達障害なんです。結局、今の学校の体系の中で、特にスクールカウンセラーの方々 の活躍でうまくいかないケースというのは発達障害が絡んでいるわけで、それもこの中 にどこかにひっかかってくると思います。  それから前回少しお話した虐待事例も、ことごとく境界線知能、もしくは学習障害を 持っていて、学習障害の発生率がやっぱり7割を超えるんですよ。これもおそらく本当 に不適応を起こすようなタイプの問題というのは、この学習障害の中に入ってくるんじ ゃないかと思います。たしかにDSM−IVの本来の学習障害というのは狭いんですが、 その狭い定義をとっても不適応を起こすタイプの問題というのは拾えるんじゃないかと 思うので、そういう意味ではあえて文科省の学習障害の定義とすり合わせるような形で 学習障害をとらえていけば矛盾はなくなるんじゃないかという具合に考えています。  栗田座長  どうもありがとうございました。先程から議論が出ておりますが、文科省の定義の学 習障害の中に、例えば境界知能的な問題とか、あるいはいま議論になっています行為障 害的な問題というのは含まれるというふうに考えてよろしいんでしょうか。  文部科学省  LDとADHDと高機能自閉症について、すでに定義を出しておりまして、LDにつ いてはもう皆さんお読みになってらっしゃると思いますが、ちょっと読んでいますと、 基本的には全般的な知識発達に遅れはないんですね。その上で聞く、話す、読む、書 く、計算する、または推論する能力のうちの特定のものの修得と使用に著しい困難を示 すということで定義しております。  ですから基本的には知的発達に遅れがないというところで切っております。それで知 的発達に遅れがあるかないか、どう見るのかということは心理検査だとか、観察だと か、多様なもので見ていくということで、明確な何らかのものでここから上とか下とか というようなものを出しているというわけではないわけですね。境界線は入っていると か、入ってないということは明確には言っていない状況です。  栗田座長  ありがとうございました。むしろDSMの考え方にわりと近い定義になっていますよ ね。ICDでもいいんですが。  加我委員  医学的な学習障害の範囲というのは明確なものだと思います。ただこの支援法では具 体的な支援をするという立場から、本来の定義よりはあえて広げるという前提が共通の 認識になっていると理解すべきだと思っています。  行為障害自体については勉強会の時も話題になり、ディスカッションもしたと思いま す。その際、今回の法律に関しては、行為障害自体を前面に出さず背景にある発達障害 から派生してきた問題という立場で支援をした方がよいという結論だったと思います。  栗田座長  どうもありがとうございました。内山先生、何か御意見をいただければと思います。  内山委員  LDの定義に関する議論があったと思うのですが、あまり狭くとらえて厳密にとらえ ちゃうと、支援の対象が狭まっちゃいますし、別にいつも医師が正確に診断するわけで はないので、この法律の対象としては文科省のLDの定義、その範囲で、それに準じて いいんじゃないかなというふうに考えています。  それとアスペルガー、ADHD、高機能自閉症に関しても、それぞれ医学的な定義を 引用していいと思うんですね。いわゆる鑑別にあまりこだわらないで、どれかの範囲に 入れば支援の対象とするということが現実的には、実際的には有効に働くんじゃないか なという気がしています。  栗田座長  どうもありがとうございました。  小塩委員  学習障害が定義されたのは11年なんですけど、その前に7年の時に中間報告が出てい まして、11年に出た時にはそれを明確化したという形でした。ただ、その間にいくつか 落ちたものがありまして、それが行動調整の事柄と社会性の困難です。定義が明確化さ れ範囲が限定されて、ある意味ではスッキリしたんですが?という気も実はしていまし た。現実には小中学校ですごくいい学校なんですが、校長先生が頑張ってやっていらっ しゃるようなところですと、別にLD、ADHD、高機能自閉だけにとどまらず、そこ で問題になっている子供たちは全てあげますよという姿勢で現実には校内委員会は動い ていますので、これだけのものが含まれれば杉山先生の整理された案、これでもう特別 支援教育の方も多分十分いくんだろうな、学習障害の支援対象が広がることになると思 いますが、現実にもう事実は先行しているんだろうなという気がしております。  栗田座長  どうもありがとうございました。それでは前回からも議論が出ていましたが、先程事 務局からの説明でもあったんですが、チック障害に関してはどのようにお考えでしょう か。チック障害というのはかなり幅広いので、トゥレットは実際重症型であるわけです が、いかがでしょうか。  加我委員  通常のチックでも困ると言えば困りますが、上手な対応をすればこじれないですぐに 良くなる方が圧倒的に多いので、あえて対象にしなくてもいいのではないかと思いま す。トゥレット症候群の方は良くなったり悪くなったりするにしても、相当長期間、そ れこそ生涯にわたって何らかのお困りになること、支援が必要になる場合が多いので、 場合によっては対象として考えていただいてもいいのかもしれません。  栗田座長  ありがとうございました。今までの議論の中では具体的にいくつか御提案がありまし て、少し簡単に整理させていただくと、杉山先生のオレンジの紙の中で明示されており ますもので加えるべきと御提案があったのは、発達性言語障害と、それから発達性協調 運動障害ということで、残りはすでに法律の文言で書かれているものと、それから他の 法律でカバーされているものは対象としないということですね。それからあとはやはり 不適応、あるいは適応上の困難を呈している境界知能レベルの方はやはり対象にした方 がいいのではないかというようなことがあったと思います。  それからただいまのチックの中でも重症型のトゥレット症候群、この方々が対象にな るのではないかということだろうかと思うんですが、加我先生、たしかに一過性のチッ クといって、1年以内で治ってしまう軽症のものはもちろん多分対象にならなくていい と思うんですが、トゥレットというふうには診断されないけれども、慢性の運動性チッ クで結構延々と長きにわたってチック症状を出す方はいらっしゃいますよね。その辺は どうですか。トゥレットだけに絞ってしまうのか、それとも慢性の運動性チックまで取 り上げるんでしょうか。  加我委員  法律の考え方として支援の対象が広がるのはありがたいことですから、排除しなくて もいいとは思うのですが発達障害の考え方についての方向性は少し違ってくると思いま す。つまり前回まで発達障害については、なんらかの認知の障害がある方を対象のベー スにすべきだと議論されてきたと思うのです。運動性チックの方に認知の障害があるか と言われると、ちょっと違うと思います。ですからこれは発達障害ではないけれど、困 っている人はとにかく支援するという立場であれば対象として考えるということになる のではないでしょうか。  栗田座長  ありがとうございました。いかがでしょうか。もう少し御意見がいただけるといいか なとは思うんですが。それでは一応今回の会では2つ使命がございまして、1つは政令 で定める範囲ということですが、すでに前回から引き続いていろいろ御意見をいただい たので、今日もうすでに出たもので具体的なものがいくつかございますから、とりあえ ず事務局の方でまたそれをおまとめいただくとして、もう1つの重要なポイントである 専門的な医療機関の確保ということにつきまして、後半の議論の時間をそちらの方に向 けたいと思います。それではまず市川先生の方から資料の御説明をいただけないでしょ うか。  市川委員  それではお配りしたプリントを使ってお話をさせていただきます。実はこれは一昨 日、発達障害療育研究会というところで使った抄録ですが、そこで発達障害の話をしま した。発達障害の医療についての現状の報告が中心です。  精神科の先生と小児科の先生が子供さんの場合は対応しています。精神科の中心的医 療は、代表的な精神疾患である精神分裂病と言われていた統合失調症、あるいは気分障 害を対象とする医療でした。精神科の中で子供さんを担当している医師は極めて少数で す。精神科の中で、児童青年精神科という標榜で行っております。  以前は児童青年精神科の先生が多かったのですが、最近は小児科の先生方もこの分野 に増えてきております。小児科の場合は身体の治療が中心だったと思うのですが、小児 神経科の先生を中心に発達障害に重点を置く先生方が増えてきております。おそらく小 児科全体から見ると少数派であろうと思います。  大人になってこの発達障害を専門に見る医師は、専門科的にはいらっしゃらないの で、多くの方が子供の精神科担当の先生、あるいは小児科担当の先生にそのまま見てい ただいているというのが現状だと思います。  私自身が児童青年精神科に所属しておりますので、そちらから見た問題点について述 べます。長らく医師の養成は大学の医学部を中心に行われてきたわけです。私が知って いる限りでは、長らく待望されながら現時点でも、医学部の中に児童青年精神科という 講座はないと思います。  そのことは大学で育てる場が非常に限られていたということだと思います。現在、抄 録にいくつか大学名を書いてありますが、標榜科という形で診療を行っているところで いくつか出てきています。今後育ってくる可能性はあるかもしれませんが、非常に厳し い状況ではないかと思っております。   それ以外に、児童青年精神科医療施設という、入院ができる児童青年精神科の医療施 設がございます。ほとんどが国公立のもので、民間のものはほとんどありません。その ことは経済的裏付けがなかなかとりにくい部分であるということです。最終的には専門 医が絶対的に不足してくるということにもつながっていくわけです。  なぜ経済的に苦しいかというと、人手が多数必要であり、多職種が必要であるという ことです。お薬を飲んでいただければ解決するというわけにもいきませんし、手術すれ ば治るというものでもありません。残念ながら、今の医療保険制度の中ではそういうこ とに対する保険点数は決して高いとは言えない状況です。手間と時間がかかるが、見返 りがないと言ってもいいかもしれません。  厚生労働省でも平成14年から精神科として医療を行っている医療施設については、20 歳未満の入院及び外来について加算を行い、入院については1日350点、外来については 半年に限って一回に200点が加わります。  小児科として治療をしている施設にいては、外来につい別の加算がありますが厳しい のが実情です。入院については療養型病棟という形である程度加算をつけています。ほ とんど民間医療機関が関わっていないということは、これでも経済的裏付けが不足して いるという事実を示しています。  私の施設が都内にありますので、都内の様子を中心にお話をさせていただきます。発 達障害を対象とする医療機関では、かつては“発達障害”を看板に掲げても成り立たな いと考えられていました。最近は発達障害という看板を掲げる医療機関が増えてきてお ります。4〜5年前まではおそらく4〜5カ所でしたが、今は十数か所が発達障害の看 板を出しています。ただし、他の疾患を診ていて、その片手間に発達障害を診ていると いうところが多いのかもしれません。  精神科の医師だけではなく、小児科の医師も参加しています。私どもの病院で発達障 害を看板に出している医療機関に呼びかけをしたところ、14〜15カ所ぐらい来てくださ いました。そのうちの3〜4カ所は小児科の先生方でした。療育は医療機関以外で行っ ているところが多いのですが、医療機関で行っているところも都内にはおそらく4〜5 カ所あります。そういう点で言えば治療に対する手厚さも少しずつ増してきていると思 います。  ただ、入院ということになりますと、私どもが把握している限りでは、子供さんの精 神科、これは20歳未満と考えていただければ結構ですが、精神科専門病床は全国に800 〜900ぐらいと言われております。大人の精神科の病床が約33万床で、多過ぎるので減 らす方向にあることを考えますと、800から900というのはいかにも少ないと思います。 アメリカなどは、治療システムや医療保険制度が違いますが、大体12,000床と言われて おりますから、人口が日本の2倍であることを考えてもかなり少ないと考えられます。  大人の場合の発達障害の治療はどこで行っているかという話になりますと、全国の国 公立の精神医療機関にはそういう病棟がいくつか用意されていたわけですが、現在はほ とんど機能してない状況だと思います。医療機関は退院者が出ない限り入院は出来ない わけで、退院する方がいないため、長期入院者で占められていると思います。  卑近な例ですと、都内には松沢病院に発達障害の病棟が男子と女子1つずつあります が、入院している方は10年〜20年〜30年という方が中心ですから、おそらく入院したく ても入れない状況だと思います。したがって入院治療については医療以外のところでも 担当しなければいけない状況になってきていると思います。  こういうことを考えますと、発達障害の入院治療は行動上の問題を中心に考えていけ ば、短期の入院治療を大前提にしていかない限り、病棟が機能しなくなると思います。 例えば不眠、自傷、他傷、極端なこだわり、拒食などの入院については、精神科病床が 担当するのが原則ですが、必ずしもうまくいっているとは言えません。  私どもの経験でも、非常に悲惨な例があります。大人あるいは思春期以降の方が、あ る県で入院を希望したところ入院できたのは大人の精神科の病棟でした。統合失調症や 躁鬱病の方とは症状が全然違いますので、一晩中寝ないで騒いでいたということでし た。最終的には病院で対応しきれないということで、私どもの病院に転院してきました が、その時点ではで全身にタバコの火をつけた跡が残っていました。  おそらく同じ病棟の入院者が、夜間あまりにうるさいので、みんなでタバコの火を当 てたのではないかと思います。ほとんど言語がない方でしたので、どうしてそういう状 況になってしまったか詳細は分かりませんでした。それ以外にも、私どもに転院された 方で排泄が十分できない方がいました。喋ってくれないので詳細はわかりませんが、お そらく肛門にピンポン玉大の異物を詰め込まれて、それが出なくなって、外科で肛門を 切開したため、排泄が難しくなっていました。両方とも、お家の方は病院からはっきり した説明を受けていませんでした。これはだいぶ前の患者さんですが、このようなこと が現実には起きております。  外来での話になりますと、都内は非常によく医療機関が発達しているはずですが、正 面きって、「うちの子は自閉症ですがなん、診察してもらいたい」と言った時に、「ど うぞどうぞ」という医療機関はほとんどありません。いろんな口実をつけて断られてし まうのが現状です。特に合併症の治療については、本人が症状を訴えなかったり、治療 を求めていない場合でも治療が必要なことがありまが、これについての対応が非常に不 十分だと思います。  本来は精神科の合併症を担当する病院が対応することになっています。例えば東京都 が認定している医療施設は3カ所ありますが、発達障害者がすぐに入院できるという状 況ではありませんし、そういう医療施設がない県もございます。精神科病床の中にお預 かりして、他科の先生に診ていただけるとよいと思いますが、なかなかそういう状況に はありません。  そもそも受診の段階で断られてしまうことが現実に起きているわけです。ですから多 くの場合は発達障害を告げないで、直接救急車で受診するわけですが、それでもなかな かうまくいきません。例をあげると、言語のない自閉症の成人男子で、いつも奇声をあ げて走り回っている方です。数日間うずくまって唸っているという状況で、お家の方が 心配して医療機関を受診しました。電話して「うちの子は自閉症で大変です」と言う と、「今日はちょっとやめてください」と受診を断られてしまいます。救急車で運べば 診てくれますが、一通りの血液検査をして、「何ともありませんからお帰りください」 という話になりました。家へ帰ってきてもやっぱり唸っていて、家族は「放置しておけ ない」状況でした。救急で診てくださる先生は普段の状況がわかりませんから、そうい う可能性もあります。結局、主治医の個人的な伝手で総合病院の精神科にお願いしまし た。その方の場合は、全身を調べてもらった結果、血液疾患が見つかり、ステロイド治 療を行って命はとりとめました。一般の方でもそうかもしれませんが、本人が訴えられ ない場合は、手遅れになりやすいと状況があります。  福祉では、行動上の問題がある発達障害者に対しては、強度行動障害への対応という ことで、3年かけてこれに対応をするということがあります。対応としてはいかにも長 いと前から思っており、医療で短期的に対応するべきだと考えています。しかし、極め て限られた医療機関でしか対応できないし、専門的な医師が非常に限られているという ことも現実です。  発達障害者支援法ができたら、私が一番期待しているのは、専門医療機関をぜひ各都 道府県に設置していただいて、短期の医療をぜひ実施していただきたいということで す。法律の中にも書いてありますが、専門的な知識のあるドクターを増やしていただけ たら一番ありがたいと考えています。  ノーマライゼーションというのであれば、発達障害があってもなくてもやはり同等の 医療を受けられるべきだと思いますし、そのためにはここに書いておいたようなことを 私はあげてみました。日常の医療で経験したこと、あるいは感じていることをまとめて みました。  栗田座長  どうもありがとうございました。資料にそって詳細にわかりやすく解説していただき ました。あとは緒方先生と小塩先生の方からも資料をいただいておりますので、御説明 をいただきたいと思います。最初に緒方先生の方からお願いいたします。  緒方委員  特別支援教育士(LD・ADHD等)養成プログラムと書いてある資料を御覧くださ い。これは日本LD学会で認定している資格です。それで2001年からたしかこの養成セ ミナーが始まったと思うのですが、主に通常の学級の担任の先生、それから民間の支援 機関のスタッフの人たち、それから現在では特別支援教育コーディネーターを各校で指 名するということになっていて,その指名を受けた先生方、ですから養護教愉の方もい らっしゃいますし、通常学級の先生も特殊学級の先生も、それから地域のコーディネー ターということで養護学校の先生もとても増えてきています。そのような先生方が対象 です。  ここで概論、アセスメント、指導、特別支援教育士の役割、実習ということで、各領 域でこれだけ(削除)全部で36ポイント、1ポイントは3時間の講義を受けて、そのあと テストを行って、それに合格して初めてとれるというポイントなんですが、36ポイント 合格して資格取得ということになっています。  また、これは東京と大阪2カ所でやっているのですが、それだけではいろいろな地域 の方が参加できないということで、都道府県で行っています研修会のポイントだとか、 それからあとは小塩先生からもお話があると思いますが、久里浜の研究所の研修会のポ イントも半分18ポイントまで認めるということになっています。昨年4月の段階で463 名が資格をとっています。それで現在受講生が1,700名受講中ということです。概略は このようなことです。  栗田座長  どうもありがとうございました。それでは小塩先生お願いいたします。  小塩委員  冊子になったものを御覧ください。16年度の指導者養成研修といわれるものです。平 成7年度から、以前は講習会と言っておりますが、開催しております。  先程言いましたように、平成7年3月に学習障害の指導についての中間報告が出たと いうことがきっかけで、さらにはうちの研究所で平成3年度から学習障害に関するプロ ジェクト研究を立ち上げていまして、隣にいらっしゃる緒方委員が先頭になって進めた ものですが、ちょうどそれが4年間を1サイクルとしまして、ちょうど1サイクルが終 わったのが平成7年でした。それをきっかけにこの講習会が始まったということです。  7年度は文部科学省とうちの研究所が共催という形で1日だけの講習会でした。8年 度からは研究所だけの単独開催で、1週間の開催期間でした。平成11年度に学習障害児 の指導についての最終報告が出たことをきっかけに、そこの中で専門家チームというの が実は定義されまして、その専門家チームの教育に関わる専門家を養成する必要がある ということから、もう少し長い期間でできないかということが検討が始まって、実際に は平成14年度からこの4週間のプログラムにしたわけでございます。  昨年度平成15年度までは、現在はLD、ADHD、高機能自閉症と言っております が、学習障害児等という言い方をしておりました。今年度16年度からLD、ADHD、 高機能自閉症という、全ての研修になっております。19頁を御覧いただければ指導実施 要項というのがございますが、目的としては書かれておりますが、LD等の子供たちを 直接指導するわけではなくて、直接指導をする方たちをまた養成する、そういう意味で 指導者養成講習だということでございます。  5番目の研修員の推薦等で、研修員の参加資格というのがございますが、小学校、中 学校及び盲学校、聾学校、養護学校の教員または教育委員会、特殊教育センター等の教 職員でLD、ADHD、高機能自閉症のある子供の指導相談に携わり、自己の指導事例 を発表提示が可能な者とするという条件をつけています。ですから未経験な方は、御遠 慮申し上げています、  でもなかなかそれが大変で、今年度は私としては少し関わりが薄かったのですが、昨 年度を見ますとダウン症の子供の事例が出てきたり、とんでもないところがないわけで はないわけです。終わりの方に受講者名簿がついております。定員は60名ですが、実際 には63名、都道府県政令市あわせて1人づつというのを目算にしておりますので60名、 ただ申し込みは実はもっとたくさんありまして、70、80ということなんです。  経験年数を書いてもらっていますが、経験年数ゼロと堂々と書いていらっしゃるの で、そういう方はまずはちょっと話し合いまして、教育委員会の方に電話をいたしまし て、ちょっと趣旨とは合いませんということですね。そしてさらにレポートが来ます。 レポートが来た段階でもとんでもないというのがありますので、その差し替えをお願い したり、いろいろします。それで数としては減って、今年度は63名ということでござい ます。  前の方に戻りますが、2頁目が日程表になっております。こういう形で4週間、ここ にいらっしゃる方々も何人か講師としてお迎えしております。  次の3、4頁がその講義等の内容でございます。7頁に事例協議と書いてあります が、日程の中で5コマあるんですね。それぞれの受講者の方が提示される事例に基づい て、3時間で2事例ずつ話し合いをして、最後それをまとめる、こういうのは全部講義 を受けた後ですので、ここで狙いとしているのが、ちゃんと見立てができて、個別の指 導計画が書ける状態というのをイメージしております。  先程申しましたように、当初この研修の対象のイメージとして、専門家チームの教育 に関わる専門家ということをイメージしておりますので、どの程度ということなんです が、当初は県に1つぐらいしか専門家チームがなかったわけですが、各県のセンターあ るいは教育委員会等にどの程度の数が専門家チームとして各県必要ですかというような 調査を実はいたしておりますが、そこの中で多くは教育事務所単位ぐらいに専門家チー ムが必要であるというようなことです。  ですのでここで考えている専門家チームの数というのは、各県ハローワークの数ほど にはいきませんけれど、地域の職業センターよりははるかに多いというようなところ で、どうなるかわかりませんが、就業生活支援センターが目指すぐらいの数なのかなと いうようなイメージではおります。以上です。  栗田座長  どうもありがとうございました。それでは加我委員、お願いいたします。  加我委員  前回申し上げました国立精神・神経センターでの医師の養成研修の資料をお持ちした かったのですが、実は研究所ではここに来る直前の4時半ぐらいに届けられました。 今、資料を山崎さんにお渡ししましたのでいずれ見て頂けると思います。今年が第1回 の研修ということですけれども、今後は毎年実施する予定で計画を進めております。  3日間の研修で、対象は医師でしかも、発達障害の方たちの医療、支援の責任がある 立場の方たちです。原則として県ないし政令指定都市を通じて応募していただきます。 幸いこの領域の一流の先生方にお講義をお願いすることができました。医学的な診断治 療に関してはもちろんですが、ご参加の先生方が地域でグループの中心になって活動し ていただくことを想定して、どのような体制を作ったらいいかというような点にも注意 をして、講師の先生方には御指導をいただけるようにお願いをしております。  小塩委員  一つだけ追加させていただきます。受講者名簿のところで言い忘れたのですが、小中 学校の教員の方がやっぱり多いわけですが、センターあるいは教育委員会の指導主事の 方、さらには養護学校の教員の方も結構な割合でいらっしゃいます。大体去年から、実 は先程緒方委員が言ってくださったLD学会のポイントの振り替えをやっているのです が、去年今年と約6割から7割ぐらいの方がここでエキストラで試験を受けるわけで す。研究所でも試験を受けて、そのあとLD学会の方に入会していただいて、残りのポ イントをとるというような形で、さらに研修を進めている。ただまだ実際に申請された のは6〜7割なんですが、その方がみんな特別支援教育士をとれているかどうか、その 辺はまだ確認はいたしておりませんが、さらに進んでいるということでございます。  栗田座長  どうもありがとうございました。では藤村委員お願いします。  藤村委員  私は福祉の専門家として今責任の重みをひしひしと感じているところなんです。市川 先生に障害関係者はもっと声をというふうに最後に大きく書いていただいたので、声を あげるところなんですが、今皆さんに御説明をいただいたいろいろな研修は、お医者さ んを対象にしているものであったり、学校の教員を対象にしているものなんですね。  本当は我々福祉の現場にいる人間がこういう研修をきちんと提供すべき、また受ける べきものだと思うんです。それが十分にできていないのがこの発達障害者支援法が成立 した一番の原因だと思うんです。  今までの福祉の世界では対象にされてこなかった人たちがいて、その人たちはすでに 医学の世界では対象として認められていましたし、教育の世界でも徐々にその対応が十 分にされるようになってきていたんですが、福祉の世界だけが非常に遅れていて、そこ でされる研修で想定する対象者は、知的障害の人や、知的障害を伴った自閉症の人たち でしかなかったのです。  そう考えると、この法の支援の対象になる人たちが必要としている支援を作り出すの は、もちろんお医者さんが診断をしていただく、早期発見をしていただく、それから教 育の世界で学校教育がうまく進むように支援をしていただくということも大事なんです が、実際にその生活をする場面でどういう支援を作り出すかということが重要であり、 福祉の世界で人を育てていくことが必要になるのです。  市川先生が、例えば入院は短期入院でとおっしゃっている理由は、実際に生活をする のは地域で暮しをしていくことであり、その地域で暮しをすることを支えられるものが なければ生活はできなくなっていってしまうということをおっしゃっているのです。ま た、病院に入るとか、あるいはこれからもしかしたら発達障害を持つ人たちも施設に入 ることが起こってくるのかもしれないのですが、それを避けるためにもやはり地域で支 援を作り出していく必要があると思うのです。  今回、お医者さんの研修や学校の先生の研修について資料をお出しいただいているの ですが、この発達障害者支援法の求めている支援者の養成のプログラムというのは、今 までの福祉のフィールドで、そしてこれから地域で生活を支えられる新しい支援者を作 っていく必要があるということをお含みいただきたいと思います。  宮崎委員  自閉症スペクトラム学会という小さな学会があるのですが、LD学会が先行していま すが、ここでも昨年の学会の総会で支援士を養成しようということで具体的な計画が持 ち上がっておりまして、今計画段階です。一部は講座が設けられるというような動きに なってございますので、もう少し具体的になったらまたお知らせできるかと思います。  杉山委員  市川先生のおまとめいただいた内容で、今、愛知県の状況というのを少し説明させて いただきたいのですが、愛知県の場合、愛知県コロニーという、従来の障害者支援の枠 の中の子供達をカバーする障害者の総本山があって、そこに発達障害の専門病棟もある ことはあるのです。ここはただずっといるということはできなくて、2カ月とか3カ月 で問題行動だけ是正して地域に帰すということをやっていて、そこは成人の強度行動障 害に準ずる方もやっているんですね。  そういうものがあって、なおかつあいち小児センターが、主に軽度発達障害を対象に しようということでスタートしたわけです。そこの発達障害の待機が今3年を超えまし た。今まで早期発見、早期療育を謳ってきたものとしては本当に内心忸怩たるものがあ りまして、何とか自分たちの首を絞めるいろんなエキストラ外来をいっぱい作りまし て、どうなったかと言いますと、今職員がバタバタ倒れ始めていて、ちょっともうこれ はダメだ、方向転換をしようという具合に、少しエキストラ外来をこれから減らしてい くつもりなんです。  これは単純計算をするとわかるんですが、結局一次医療機関、二次医療機関で我々の あいち小児センターというのは三次医療機関なんですが、こと軽度発達障害に関しては 一次二次がないんですね。ですから一次も二次も全部こちらの方に流れ込んでくるとい う形になっています。これは軽度発達障害の罹病率を計算しますと1割を超えるわけ で、そのくらいの数になってしまうというのは、これは当然だと思います。  それで学校の方からの圧力も非常に強くて、1人受診をしてきますと、そしてその子 の対応をすると、実はもっと困った子がいるんですと言って、その子の外来の枠に別の 子が押し込まれてくるという、何か信じられないような状況が起きています。そういう 中で結局専門医をどうやったら増やせるかということは、これは診断、早期療育のため にも絶対に必要になってくると思うんですね。  1つ提案があるんですが、私自身は1977年に当時の厚生省の主催をしていた児童精神 科医臨床医研修会というものに参加しました。これは73年から77年まで5年間行われ て、そして消えてしまったんですね。東京で2年、名古屋で2年、大阪で1年やって、 私は最後の児童精神科医臨床研修会に参加したんですが、そこに集まった人間が今全部 地域でリーダーになっています。例えば岡山の中島先生、北海道の設楽先生、それから 今榊原病院にいる長尾先生、大阪の岡本先生、これは全部私の同級生になります。これ は3カ月研修なんですね。  結局、この領域をある程度カバーしようと思ったら、1週間2週間、あるいは1カ月 でも不足だと思うんですね。集中的にやるとすると厚労省が音頭をとって、少し長めの 研修というのをボーンといくつか開いて、集中的にこういう領域に興味のある人を育て るしかないんじゃないかと思うんですね。ということでぜひこの発達障害者支援法の施 行のバックアップになる形として、3カ月研修あるいは4カ月研修というのを厚労省で 作っていただけないかというふうに思います。  栗田座長  どうもありがとうございました。はい、どうぞ。  事務局  今の専門医の養成に関連しまして、雇用均等児童家庭局を中心に、この子供の心に関 する専門医の養成確保についての検討会を予定しておりまして、特に資料は用意はして いないのですが、お許しいただければちょっと御説明をさせていただければと思いま す。  雇用均等児童家庭局母子保健課 雇用均等児童家庭局母子保健課からまいりました齋 藤と申します。先程まで母子保健課長がおりましたが、所用につき退席をさせていただ きました。大変失礼いたします。  せっかくの機会ですので御紹介をさせていただきたいのですが、年度内に子供の心の 診療に携わる専門の医師の養成に関する検討会ということで厚生労働省の方で検討会を 開始させていただく予定でございます。できれば2月下旬、遅くとも3月の上旬には第 1回目を開催させていただきまして、年度内にはこの問題に対してその専門の医師の養 成確保をどのような形で進めていくのかということを専門家の方々にお集まりをいただ きまして御議論をいただいて、実質的なプログラムにつながるような形で対応を進めて いきたいという予定でございます。  この検討会のメンバーなどにつきましては現在調整中でございますが、国立精神・神 経センター、それから国立成育医療センター、精神科、小児科の関連の学会の代表者の 皆様にお集まりをいただきまして、具体的に研修を必要とするような専門分野の特定で あるとか、それから実際の研修の進め方等について御議論を、またそれに伴いましてい ろいろな形で専門家確保後の、例えば活躍の場ですとかインセンティブのあり方といっ たものを含めまして御議論を頂戴する予定でございます。また詳細が決まりましたら、 こちらの検討会の方に情報提供をさせていただきたいと存じます。ありがとうございま す。  栗田座長  どうもありがとうございました。厚生労働省の方でも専門医の研修などについての体 制が進んでいるというお話でしたが、いろんな専門領域の専門家の養成の活発な現況が 紹介されたと思います。後半は専門的な医療機関の確保ということで考えておりました ので、市川先生の方からかなり具体的なお話とか課題なんかをお出しいただいたのです が、専門的な医療機関の確保ということに絞って、若干御意見をいただければと思うん ですが、いかがでしょうか。  内山委員  私は民間の立場で現在発達障害専門のクリニックを運営しておりますが、単純に言え ば非常に経営が苦しいというか、やっぱり元来の保険制度では難しいですね。現在私の クリニックは初診料が20万です。それで1日かけてスタッフが最低2人診てアセスメン トしている。それで最初始める時に、そんなのでは人は来ないだろうと思っていたので すが、実は今3年待ちということで、現在は受付も中止しています。  何が言いたいかというと、それぐらいのコストがかかるということです。私のやって いるのはティーチとか、あるいはイギリスの例えばウイング先生のクリニックのモデル を踏襲して、似たような方法でやっているのですが、そうするとそれぐらいはかかる、 それでも足りないといった方がいいかもしれないですね。実際に例えば僕は大学の教員 もしていますが、そちらで給料を貰っているので何とかやっていけるという、そういっ た状態です。  そういうアセスメントする場合に、やっぱり公的な何らかの支援が民間のクリニック にもないと厳しいのかな、そういったことも少し視野に入れて、今は公的機関のことが 中心だったと思うのですが、民間のそういう医療機関も視野に入れて何か議論をしてい ただけると非常に有り難いなというふうに思っています。  20万というとものすごく非難をされることが多いんですね。何か非常に悪徳なことを しているように言われて、肩身も狭いのですが、じゃあやめるかというと、やめるわけ にもいかないような状況で、だんだんジレンマに陥って、まあやめてもいいかなと思っ ているんですが、そういうわけにもいかないですかね。  栗田座長  どうもありがとうございました。もちろん公的な機関以外で民間の医療機関で発達障 害に対応するってすごく大事なことだと思うのですが、かなり深刻な困難な状況がある というお話をしていただきました。  杉山先生のところは民間というわけではないんですが、やはりスタッフが次々と倒れ ていくというような悲惨な状態ですが、この辺を何とかしないと多分いけないんだと思 うんですが、杉山先生、何かもうちょっと具体的な御提案ってありますか。  杉山委員  だから一次医療機関のところである程度の発達障害に対するボトムアップがないとう まくいかないんだと思うんですね。ただ、それができるためにも、やっぱり専門家がも う少し今の倍どころじゃなくて、増えないといけないんだと思います。  先日アメリカのある論文で、アメリカには児童精神科医が6,000人しかいなくて、それ が非常に福祉政策の不足が大きな支障になっているという論文がありました。アメリカ と日本では人口でいきますと2倍なものですから、そうしますと日本では3,000人必要な わけですよね。3,000人でも足りない。ところが日本は児童精神医学会の認定医が今115 人ですね。やっぱり一桁数が足りないんだと思います。  それからそのボトムアップのためには小児科の先生方の協力が絶対に必要なんです ね。小児科サイドにどういう具合にこの問題というのはもう少しボトムアップをお願い できるのかということが一つ大きな議論になると思います。小児科の先生どう思われま すか。  加我委員  たしかに小児科医が今までとは比べ物にならないぐらいの数の発達障害の患者さんを 診ております。ただ、一次二次医療機関に振り分けて診療できるほどには医師の数が足 りないのだろうと思います。  現在、小児科学会でも小児神経学会でも発達障害関係の一般演題は数も参加者も著し く増えておりますし、特別講演や教育講演がありますと会場は毎回満員でございます。 会場に入りきれないぐらいのドクターが来られるということは、たくさんの小児科の医 師はこの領域をもっと勉強しなければならないというお気持がとても強いということを 表しているのだと思います。学会会場の先生方のご所属は一次医療機関から三次医療機 関までさまざまです。大学の先生も多いですし、開業の先生も多数御参加になります。 先生方の勉強しよう、勉強しなければならないという意欲はとても強いと思います。こ の先生方の意欲をもう少し組織化できると知識と経験を持った先生が増えて、本当は20 万円でも足りない発達障害の医療を、1万円以下でやらなければならないという事態を 解消できる方向に向かえるのではないかと思います。私たち小児科医、小児神経科医と してはぜひ小児科医がこのような領域の患者さんの少なくとも一次医療を担って頂ける ように、患者さんへの支援ができるようになる形での教育体制を築いていきたいと思っ ております。  栗田座長  どうもありがとうございました。このテーマに関しては非常に活発な御意見が出てい るのですが、もうちょっといくつかいただけるとまとめやすいのですが、よろしくお願 いします。  杉山委員  厚労省のサイドからすぐにできる提案というのを2つしたいのですが、1つは医師の 国家試験に発達障害関係の問題を出していただくということですね。そして2番目がス ーパーローテートの中に、この領域に関する研修を義務づける、これは小児科サイドで もいいし、精神科サイドでもいいので、それをしていただくと、おそらくそのスーパー ローテートの中で専門家の確保というのが大学の方で必要になってきます。それによっ てこの専門領域の人の働く場が広がるということがおそらくボトムアップにつながるん じゃないかと思います。  栗田座長  具体的な御提案をありがとうございました。  加我委員  実は発達障害のことをまだ十分には書いてない小児科の教科書が多いので、若い先生 方に発達障害の常識を知って頂く意味でも、小児科の教科書や参考書の著者となる先生 方に考えていただけるようにしたいと思います。  栗田座長  どうもありがとうございました。  市川委員  あまり自慢になる話ではないのですが、大学医学部の精神科の授業は15〜16時間です が、その中に子供の精神科の授業は1時間あるかどうかです。現実はそんなものなの で、医療の方も偉そうなことを言える状況ではないです。  発達障害を扱えば扱うほど、医療だけで完結できない、福祉や教育と連携しなければ なりません。場合によっては、司法関係とも、虐待の問題、非行の問題で連携していま す。各セクションでボトムアップをするのは大切ですが、いろんな分野が一緒に補い合 うニュアンスのものを作る必要があります。  先程宮崎委員がおっしゃった自閉症スペクトラム支援士の場合、教育だけでなく、福 祉、医療、心理の方も資格をとれるようになっています。連携と言う視点を広げていか ないといけないと思います。  宮崎委員  実は教員養成に関わる問題も一方でございまして、特別支援学校の教員免許状という か、今でも盲聾養護学校の教員の免許状の中に障害児の生理病理というあたりはお医者 さんに講義をしていただくのが圧倒的に多いというふうに思っていますが、このあたり についても発達障害のお子さんたちのことをやっぱり入れていただくということが課題 になっておりますので、そういった面からもお医者さんの養成ということでぜひ念頭に 入れていただくということは有り難いことだとは思いますし、大学で講師をお願いする 時にもかなりそのあたりに気を使い使い、いろいろ探しているというのも現実でござい ますので、そのことも合わせてお含みおきいただければと思います。  藤村委員  お医者さんの世界のことなので、僕が言うようなことではないのかもしれないのです が,先程の内山先生は御自分でやられているので「非難を浴びながらも俺はやるんだ」 というふうに言っていただいているんだと思うのですが、なかなか普通の人にそういっ た覚悟はできません。  もっと若いお医者さんでも発達障害を一生懸命やろうとしている人たちは、実はそん なに数少なくなくいるんですね。いろいろな民間の病院にいたり、あるいは施設に勤め ていたりという人が。ところがそういう人たちがどういうふうに扱われているかという と、上からは金にならないからやめろというふうに言われたり、あるいはもっと時間を 短くしろというふうに言われたりというような、そういう状況があるらしいのです。  僕は人から聞いた話なので、どこがどうという話ではないんですが、ただ、これは容 易に推測できることであり、若い人達の話を聞いて、「だからもっと一生懸命やりたい んだけれどもできないんだ」というお医者さんたちもたくさんいるという事情を御理解 いただき、お医者さんが診療のために必要なお金が得られる仕組み作りの必要性を、発 達障害に関していうと、丁寧な診療が必要で、それには時間がかかる、ということを御 理解いただければと思います。  僕の言う話ではなかったですね。  市川委員  言っていただいた通りで、私どもで研修プログラムを作りますと、他の科に比べる と、全国的に多くの希望者が来てくださいます。そういう方をトレーニングしたとして も、働く場所を確保しないと意味がありません。ですから働く場所を確保して、そこで また育ってもらわないといけないわけです。非常に現実的な話になりますが、経済的裏 づけをつけていただかないと、研修プログラムが終わっても行き場所がないという状況 になってしまいます。  塩田部長の方がよく御存知のように、「養成プログラムに入れて欲しい」と希望して も、医者の中でもいろんな考えがあり、皆が賛同してくれるわけではありません。しか し、これだけマスコミ等でも発達障害の医療の必要性が叫ばれているわけですから、ぜ ひ実現していただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  栗田座長  どうもありがとうございました。後半は皆さん困っている問題なので活発な御意見が 出て、非常に切実なお話だったと思うのですが、そろそろまとめさせていただきたいと 思います。  もちろん単に医療機関だけではなくて、より広い範囲での専門家の協力というのは絶 対に必要なものだというのは、先生方の十分な認識が得られていることだと思います が、とりあえず専門的な医療機関の確保というテーマに関しましては、具体的な、例え ば経済的ないろいろ体制を考えて欲しいとかということがありました。また医療機関と いうよりも、むしろどうやってそういう専門的な知識のある医師を育てていくという体 制が、ものすごく大事だという御意見が次々と出てきたように思いますので、その辺を ふまえて事務局の方も今後おまとめいただければと思っております。  それでは時間もかなり過ぎておりますので、今日の検討会は一応これまでということ にさせていただきます。次回の予定などについて、事務局より御説明をいただけないで しょうか。  事務局  どうもありがとうございました。本日の議題の前段、この法律の対象範囲につきまし ては、杉山先生にだいぶ整理していただいたものも頂戴いたしましたので、本日の御議 論を踏まえまして事務局の方でパブリックコメントへ掛けます案を作成いたしまして、 時間の関係でもう一回この形でお集まりいただいてというのがパブリックコメントを出 すまでは難しいと思いますので、座長先生はじめ各委員の方に直接御覧いただくような 形でパブリックコメントの方を2月初めを目途に掛けさせていただければと思います。  そしてこの範囲の話につきましては、パブリックコメントは概ね1カ月間ぐらいを予 定しておりますが、2月の末から3月の初めぐらいに、それでいただきました御意見と かも含めましてもう一度この検討会で政令の案というようなことで御議論をいただけれ ばというふうに考えております。  また後段の医療機関の確保、専門家の養成等についても、たくさんの御意見をいただ きましたので、次回の時までに整理をして、若干私どもからお出しできる資料があれば 出させていただいて、また引き続き御議論をいただければと考えております。本日は長 時間どうもありがとうございました。  栗田座長  どうもありがとうございました。以上で第2回検討会を終了いたします。 (問い合わせ先)   厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部     企画課障害認定係 西澤  TEL 03−5253−1111(内3022)  FAX 03−3502−0892