05/01/21 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成17年1月21日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成17年1月21日(金) 10:30〜   厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(12名)五十音順  ◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 折 笠 秀 樹、 神 谷   齊、   川 嵜 敏 祐、 後 藤   元、 土 屋 文 人、 早 川 堯 夫、  ○堀 内 龍 也、 三 瀬 勝 利、 溝 口 昌 子、 吉 田 茂 昭 他参考人3名 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(4名)   岡 田 義 昭、 守 殿 貞 夫、 木 村   哲、 田 島 知 行 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、 川 原   章(審査管理課長)、    平 山 佳 伸(安全対策課長)、   豊 島   聰(医薬品医療機器総合機構審査センター長)    古 澤 康 秀(医薬品医療機器総合機構審議役)、    森   和 彦(医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   赤 川 治 郎(医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   辻 村 信 正(医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、   國 枝   卓(医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)、 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、医薬品第二部会を開催させていただ きます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。当部会委 員数16名のうち現在12名の御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりま す。本日はちょっと議題が多うございますけれども、以後の進行を池田先生よろしくお 願いいたします。 ○池田部会長 今日は非常に議題が多いのですけれども、なるべく要領よくやりたいと 思いますので、御協力よろしくお願いしたいと思います。それでは審議に入る前に事務 局から配付資料の確認と資料作成に関与された委員の報告をお願いしたいと思います。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。資料1〜11までがあらかじめお送りした 資料でございます。それから今日の席上配付資料といたしまして、議事次第、座席表、 本部会委員の名簿、資料1-2としてアイソボリン注の新旧対照表、資料2-2は下の方に 重なっているかと思いますけれども、エルプラチン医薬品輸入承認申請書の写しの差し 替え版でございます。それから資料5-2としてナツランの新旧対照表、資料11-4-2、資 料11-6-1、及び資料11-6-2として抗がん剤の事前評価追加資料、資料12として「医薬 品第二部会審議品目の薬事分科会における取扱い、毒薬・劇薬の指定の要否及び生物由 来製品/特定生物由来製品の要否について(案)」、資料13として専門委員のリスト、資 料14として抗がん剤併用療法まとめを配付しております。  それから平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関係された委員 の確認でございますけれども、本日の議題については関与委員はいらっしゃいません。  また、本日のその他の議題のところで抗がん剤の事前評価をお願いしておりますけれ ども、その参考人といたしまして国立がんセンター中央病院から勝俣先生と牧本先生、 日本大学医学部附属板橋病院より陳先生にお越しいただくことになっております。それ から議題の関係で愛知県がんセンターの小椋先生にも今日御出席をお願いしていたので すけれども、所用のため御欠席ということでございます。以上でございます。よろしく お願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。本日は審議事項が8議題、報告事項が2議題、 その他の抗がん剤の事前評価についても先生方の御意見を十分にお聴きしたいと思いま すので、よろしくお願いいたします。それでは早速議題1について、機構の方から御説 明をお願いします。 ○機構 最初に本日の審議品目の全体像について御説明申し上げます。当日配付資料と してお配りいたしましたお手元の資料14を御覧ください。カラーコピーになっているも のでございます。こちらは抗がん剤併用療法検討会で検討された併用療法について、関 連する品目をお示ししたものでございます。上段の議題1〜6までが本日御審議いただ く内容で、下段の内容は前回御審議いただき分科会へ上程される予定となっているもの です。機構では設定された併用療法に関連する薬剤をまとめて審査を行い、審査報告書 を作成しております。したがいまして、機構の説明に際しては有効成分ごとではなく、 併用療法ごとに御説明させていただきます。議題1、3、4、5、6の5議題は、平成 16年5月21日あるいは8月27日の本第二部会において抗がん剤併用療法検討会より出 された抗がん剤報告書に関する事前評価を既に頂き、関係企業より承認事項一部変更承 認申請がなされたものです。いずれも提出された資料は抗がん剤併用療法検討会で作成 された抗がん剤報告書と同報告書中で引用された文献等の資料でございます。本申請に 対する機構での審査は厚生労働省から示された通知の方針に基づき、専門協議は実施し ておりません。なお御説明の順番としては、抗がん剤併用療法に関する議題1の後、議 題2として新有効成分医薬品のオキサリプラチンについての説明を行い、その後他の抗 がん剤併用療法に関する議題3〜6を説明したいと思います。  それでは議題1、資料1、5-FU注250協和の製造承認事項一部変更承認の可否、並 びにアイソボリンの輸入承認事項一部変更承認の可否について、医薬品医療機器総合機 構より説明させていただきます。本申請の内容について御説明いたしますので、資料1 の添付文書(案)を御覧いただけますでしょうか。開いていただきますと添付文書に黄色 く蛍光ペンで塗ってあるような部分があると思いますが、こちらが今回の大腸癌に関す る変更点、追加点でございます。  本申請は結腸・直腸癌に対して世界的に標準療法として用いられており、国内ではほ とんど用いられていないレボホリナート・フルオロウラシル持続静注療法にかかわるも のであります。本有効成分フルオロウラシルとレボホリナートカルシウムは国内では既 に結腸・直腸癌に対する効能・効果を有しております。現在結腸・直腸癌に対して承認 されている一方、用法・用量は急速静注法のみが承認されており、今回持続静注法であ るde Gramont療法、AIO療法、sLVFU2療法と呼ばれる3種類の用法・用量を追加す る内容が申請されました。海外ではこれらの療法に次の議題2で御審議いただくオキサ リプラチンを更に併用する療法が結腸・直腸癌に対する標準的化学療法の一つとされて おります。教科書やガイドラインの記載、多くの公表文献で世界的にこれらのフルオロ ウラシルとレボホリナートカルシウムの持続静注療法の有用性が示されているとする抗 がん剤報告書に示された内容に基づき、承認して差し支えないと判断いたしました。御 審議をお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは大腸癌のレボホリナート・フルオロ ウラシルの持続静注併用療法について、御審議をお願いしたいと思います。これまで急 速静注療法についてはそれぞれ承認が出ていたということで、持続静注併用療法という ことでございますけれども、いかがでしょうか。何か御意見ございますか。どうでしょ うか。吉田先生、何かコメントございますか。 ○吉田委員 この持続静注療法と急速静注法については既に欧米で無作為化比較試験の 成績が出ておりまして、血液毒性に関しては急速静注の方が非常に出やすいと。逆に下 痢の方は持続静注の方が出やすいという傾向がメタ・アナリシスでも示されております。 安全性に関しては、むしろ持続静注法の方がより安全に使えるということが示されてお ります。また有効性に関しても、無増悪生存期間が延長する、あるいは生存期間中央値 が有意差をもっていいなどということが示されておりますので、我が国でも是非導入す べきだと考えております。 ○池田部会長 ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。この持続静注併 用療法には添付文書(案)にありますように三つの異なった方法があるわけですけれど も、いかがでしょうか。特に先生方から御意見ございませんでしょうか。先ほど機構の 方からちょっと説明がありましたように、次にオキサリプラチンを併用するということ で更に一歩進んだ併用療法という格好でまた御議論いただくのですけれども、この件に 関してはよろしいでしょうか。恐らく持続静注療法によって併用するとどの副作用が出 やすいかというところが多少問題になるのかなと思いますけれども、それについても今 吉田先生がお話しになりましたように大きな問題にはなっていないということですし、 むしろ軽減するという報告もあるということですので、よろしいですか。特に委員の先 生方から御意見ございませんでしょうか。 ○堀内部会長代理 特にないのですけれども、結構だと思いますが、確認だけしておき たいと思います。ここの表現を見ると、結腸・直腸癌については持続静注療法と従来の 適用療法と両方が可能であると考えていいわけですね。結構だと思います。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。それではこの持続静注 併用療法については承認を可として、薬事分科会報告とさせていただきたいと思います。 それではこれに関連して議題2でございますけれども、これは医薬品オキサリプラチン のエルプラチン注射用ですが、この生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、 輸入承認の可否についてよろしくお願いしたいと思います。機構の方から御説明くださ い。 ○機構 まずこちらの販売名について補足させていただきますが、事前にお送りいたし ました諮問書では「エルプラチン」という販売名になっておりましたけれども、本日資 料2-2でお配りしておりますとおり販売名の変更がございまして、現在「エルプラット 注射用100mg」という名称になっていることを最初に御説明させていただきます。  それでは議題2、資料2について医薬品医療機器総合機構より説明させていただきま す。本薬の有効成分であるオキサリプラチンは白金錯体系の抗悪性腫瘍剤です。結腸・ 直腸癌は我が国では推定で年間約11万人が罹患しており、その化学療法が現在前議題で 御審議いただいた5-FU/ロイコボリンの持続静注療法でございまして、この持続静注 法に更に本薬オキサリプラチンを併用するFOLFOX4レジメンが欧米諸国では標準的な 治療として確立しております。欧州では1998年4月に5-FU/ロイコボリン療法との併 用の適用で承認されており、米国では2004年1月に化学療法未治療の切除不能又は再発 結腸・直腸癌に対する5-FU/ロイコボリンとの併用の適用で承認されております。一 方、国内の結腸・直腸癌の化学療法としては、5-FU/ロイコボリンの急速静注法が主 に行われており、世界的水準の治療とは著しくかけ離れているのが現状でございます。  今回申請資料として提出された臨床試験の成績は、治癒切除不能の進行再発結腸・直 腸癌に対して行われた二つの治験成績であります。その一つは本薬を単剤で用いる臨床 第I相及び第II相試験、もう一つは本薬と5-FU/ロイコボリン急速静注法の併用療法 を検討した臨床第I、II相試験でございました。機構では本薬の評価に当たって、本薬 の有効性並びに安全性を評価するための最小限の情報については国内治験において得ら れているものの、海外で得られている大規模の複数の臨床第III相試験の結果を考えると、 提出された治験結果は本薬を市販後に使用する際に想定される臨床的位置付けから乖離 しており、申請資料とされた国内治験のみによる評価だけではなく、外国での重要な複 数の臨床第III相試験の結果や公表文献の情報を含めて本薬の評価をする方針で審査を行 うことにいたしました。この審査方針は資料13に記載のある先生方による専門協議で御 指示を頂きました。結果、効能・効果を治癒切除不能な進行再発の結腸・直腸癌とし、 用法・用量は世界標準とされるFOLFOXレジメンを想定した本薬を含む併用療法の用法・ 用量といたしました。しかしながら、FOLFOX4レジメン、すなわち本薬と5-FU/ロイ コボリン持続静注法の併用療法施行に当たり、本療法では治療関連死亡も報告されてい ること、重篤な副作用が出現することが分かっているため、市販後には慎重な使用が必 要であります。また安全性情報の収集を徹底することが必要であるため、全例調査を承 認条件といたしました。さらに、世界標準療法であるFOLFOX4レジメンでの日本人での 至適用法・用量のさらなる検討、安全性の確認を目的として、これを治験として速やか に実施し、日本人での安全性を確認することを承認条件といたしました。なお今回の審 査において術後補助療法については有効性、安全性は確立していないと判断し、この旨 を添付文書に記載しております。  以上のとおり機構での審査の結果、本薬を治癒切除不能な進行再発の結腸・直腸癌の 効能・効果で承認して差し支えないと判断いたしました。また本薬は新有効成分含有医 薬品であることから再審査期間を6年とし、原体及び製剤は毒薬に該当すると判断しま した。また、生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しました。御審 議のほどよろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。このエルプラット、オキサリプラチンですけ れども、日本では新しい薬になるわけです。これを公知の事実として扱って、先ほど御 承認いただきました併用の点滴静注療法と組み合わせて使っていくというような考え方 になるわけですけれども、これについて御議論いただきたいと思います。 ○堀内部会長代理 ちょっと確認したいのですが、専門部会でも議論がされているよう に併用療法でしか認めないという形は珍しいことなのだろうと思うのですけれども、フ ェーズIIの国内試験においては有効率が8.何%ということですよね。ですからそれをど う評価するかということと、専門協議でも出ていたと書いてありますけれども、持続で きない場合にはどうするのかということについての見解をお聞きしたいのですが。 ○池田部会長 どうぞ。 ○機構 今先生がおっしゃったとおり本薬の単剤での試験では奏効率が8%台というこ とで、現在の結腸・直腸癌の海外で広くエビデンスのある治療法と比べると、奏効率だ けを比較してもかなり低いものであります。実際海外の状況を考えますと、現在単剤の 用法・用量で承認されている国は非常に少なく、主要な欧米諸国ではすべて併用療法の 形で承認されていることを考えて、機構は併用療法の形での用法・用量に設定しており ます。 ○新薬審査第一部長 補足いたしますが、先生が御質問になられたように併用で使って いくけれども、忍容性の問題があって全部の薬剤をそのまま併用するのは無理だという 状態になったときに本剤単独を使うという可能性についても専門協議では御議論いただ きました。その結果、それは恐らくあるだろうということでしたが、ただその場合の効 果についての保証はかなり危ういというか、余り大した成績ではないので、少なくとも 始めるときは世界標準療法であるFOLFOXレジメンを基本としてやっていただいて、患者 さんがどうしても耐えられない、特に5-FU系の薬剤による副作用がきつくて耐えられ ないという場合において、臨床家の判断として本剤単剤の治療に切り替わるということ はあるだろうということでした。しかし、用法・用量として単剤の使用が推奨されると はさすがに書けないという議論の結果としてこのようになっています。確かに先生がお っしゃったとおり治療の経過の中で単剤が使われるような展開になることは恐らくある だろうという御議論でございました。ただ承認の中に単剤使用が推奨されるとは書けな いということで、このような形にさせていただいたものでございます。これは先進国の アメリカ、ヨーロッパで、すべて持続静注法との併用に限るというような形で承認され ているというのも極めて特異な話でございまして、一般の薬剤でここまで限定するのは 非常に珍しいことなのです。その辺りも考慮して今回のような整理にさせていただいた という経緯がございます。 ○堀内部会長代理 それは分かるのですけれども、ただ例えば先ほどの単独で使うとい うケースが起こった場合には、今のこの添付文書の縛りになりますと保険上は通らなく なりますね。そうなると思います。ですから、要するに実際上は使えないということだ ろうと思うのですが。添付文書に書いてあるとおりの用法・用量でないと保険では査定 を受けるのが基本です。実際上そうやられています。ですからその辺のところが何か書 きよう等でできることはないのかということを考えました。 ○池田部会長 保険のことでちょっと非常に難しくなるのですけれども…。 ○新薬審査第一部長 そのようなことも考慮して議論はいたしましたが、今の添付文書 の記載としてそのようなことを分かりやすく書くのはとても困難だということでこのよ うな形になっております。何か工夫の方法がございますようでしたら、それは私どもも 取り入れるのは全然やぶさかではございません。 ○池田部会長 どうぞ。 ○土屋委員 併用療法に限るということを少なくともスタートの時点で、例えば警告の ところに…、警告の方で書いてあるものは今までよく使われてきた普通の文章そのもの でしかないので、そこに表現するとかそういうことはできないのでしょうか。 ○新薬審査第一部長 そのような御議論もあろうかと思いますし、それについても全く やぶさかではございません。私どもとしては、はっきり言いましてFOLFOX4レジメンで しか使ってもらいたくないという気持ちではございますが、そこまで限定的に書いた他 の事例が余りなかったということもございまして。ただエビデンスはFOLFOXレジメンで 出ているのだということは明確に書かせていただきました。それを限定という形まで書 くかどうかということについては、当部会での御審議も含めた御議論の中でそうすべき というお話があれば当然そのようにさせていただきたいというふうには考えておりまし た。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。どうぞ。 ○川嵜委員 このケースだけに限ったことではないと思うのですけれども、こういうふ うに国内でのこれまでの成績が比較的少ない場合に世界標準を基にやっていくというの はどうしても必要なことだと思うわけですが、その場合ここに条件として全例を登録す るとか、調査を行う、そして定期的に報告するということがございますね。結局それで 大切なのはやはりそのスピードだと思うのです。ですから、実際使われたときにその結 果がどれくらいの早さで厚生労働省なり何なりに把握されるような体制にあるのかとい うことが随分大切なように私は思うのですけれども、現状としてはその辺りはどのよう に御指導されているのかということをちょっと教えていただきたいのですが。 ○池田部会長 どうぞ。 ○新薬審査第一部長 このような形で承認を与えた薬剤というのがまだ例がないわけで はございませんで、ここ数年の間にリウマチの薬でインフリキシマブといういわゆる生 物学的製剤と言われるもの、あるいはレフルノミドという成分名の製品、この二つの薬 剤について全例調査をかけて、報告は毎週毎週上げてきております。基本的には有効性 がなかなか分からないのでほとんど安全性の情報になりますが、それらを定期的にアッ プデートして、毎月毎月ホームページに載せる情報を更新するというような格好で速や かに公開していくというようなやり方を採ってもらいました。これは現実に一応うまく 動いておりまして、それのおかげで一つの薬剤については間質性肺炎の発生がかなり早 い時期に捕捉され、それに対して全例を監視している中でそのリスク要因の分析を行え るような格好で対処がされたという事例がございます。  本剤についてもそれと同じ製品を納入する施設に対して、全例登録についてまず事前 にお約束いただいて、それで症例登録をしたところに物が渡るという形を採ってもらお うと考えております。上がってくる情報は、もともと重篤例については15日とかそうい う所定の報告期限内に出さなければいけないということになっておりますが、期限ぎり ぎりではなくて、分かったら速やかに報告してくださいということは指導しようと思っ ています。そうやって上がってくる情報については週ごとに集計し、月ごとにまとめた レポートにして公開していくということで、そういった先例に倣って私どもはこの薬剤 についてもフォローさせていただきたいというふうに考えております。今のところの考 えはそのような格好でございます。 ○池田部会長 ということは、事前登録制というようなことを考えていらっしゃるわけ ですか。 ○新薬審査第一部長 そのように考えております。 ○池田部会長 吉田先生、実際に切除不能の進行再発性の結腸・直腸癌を診る医療機関 というのはどのくらいの広がりがありますか。 ○吉田委員 大腸癌の化学療法というのは以前は外科を中心に行われておりまして、な かなか転移性の症例に関して集積が悪いということがあったのですけれども、最近は我 が国でも米国と同様に大分内科の指導力が強くなりまして、症例集積が非常に早くなっ ております。恐らくこのFOLFOXに関してもフェーズIIでございますので、極めて短期間 に半年ぐらいで症例はリクルーアルできると思います。 ○池田部会長 それはFOLFOX4のレジメンに乗った形の使い方を症例でどれくらい効 果があるかというふうに、日本人でデータを出すことはできるということですね。 ○吉田委員 ですから承認条件の中にありました国内の成績を示すというのは比較的ス ピーディーに対応できると思います。 ○池田部会長 それはできるということですね。恐らく堀内委員が心配されているのは、 特に今はこれは新しいお薬で経験がないということで、併用療法で始めると患者の状況 によっては併用療法ができないかもしれないからといって単独でまず最初にやってみよ うかという考え方をする医師あるいは医療機関があり得るかどうかと。その辺の議論も 専門協議ではあったのでしょうか。 ○吉田委員 堀内先生の御質問もそうですし、今の術後の問題、それから申請内容と違 うという点で幾つか議論がされました。ですから今までの慣例的にやってきたものと随 分違ったものですので、最初は非常に議論がありました。infusional5-FUに限るとい う点についても相当議論がありましたけれども、最終的には先ほど機構の方から提案が ありました案で落ち着いております。  その後は個人的な意見ですけれども、私も賛成なのですが、現在このオキサリプラチ ンというのは外国で標準的に使われていて非常に有効な薬だということがマスコミ等々 で知られていて、患者団体も強く期待しているということで、非常に期待値が高いので す。ちょうどイレッサと同じような状況が起きていて、このオキサリプラチンが出たぞ、 承認されたぞとなると、全国でどっと使われる可能性があって、その使われ方も恐らく 単剤ではなくていろいろな経口剤を持ってきたり、それから経験があると自負している 医者であればいろいろな独自の使い方をする可能性があるのです。FOLFOX4というのは 48時間の持続点滴をしないといけないということで、やる方からすると点滴の管理等々 が大変面倒な治療でありまして、逆に言うと専門医でないとできない。そうすると FOLFOX4で承認してやるということは逆に専門医集団にまずやらせるということにもつ ながるので、むしろ安全性を担保しながら承認条件を順次広げていくということであれ ば、初めはFOLFOX4に限って承認した方がトラブルが少ないのではないかと考えて意見 が一致しております。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。これは用法・用量のところに「レボホリナ ート及びフルオロウラシルとの併用において」という書き方で、特にこの使用方法、用 量については余り詳しく書いていないのですけれども、この辺については吉田先生は何 か御追加ありますか。 ○吉田委員 FOLFOX4だけではなくてAIOレジメンもありますし、先ほどの議題1に もありましたように持続静注法には幾つかタイプがありますので、余りかちかちに決め るのは難しいかと思います。警告なりここのところでFOLFOX4レジメンを推奨すると か、そういったような内容があれば自動的にそういう使い方になると思います。 ○池田部会長 これは持続点滴というふうに書いた方がいいのですか。あるいは持続点 滴でなくても併用と書いておく…。 ○吉田委員 この書き方だとオキサリプラチンの2時間点滴は書いてあるのですけれど も、「併用において」というのは、併用の相手がどういうような併用の仕方をするとい うのがちょっと読めないかもしれません。 ○池田部会長 その辺については機構の方で何か御追加はありますか。 ○機構 機構の議論の中ではレボホリナート及びフルオロウラシルの併用の部分で、持 続静注に限るという表現はしておりませんでした。市場に出た後に機構としてはFOLFOX 4レジメンを広く推奨したいのですが、実際には急速静注や、今吉田先生がおっしゃっ たように経口のフッ化ピリミジンなどと併用されてくる例もあるだろうというようなこ とをいろいろ考えまして、用法・用量では持続静注という規定はしていません。ただし、 機構としては世界的な標準療法、つまり生存期間においてベネフィットがしっかり証明 されているような治療をやってほしいということがありまして、用法・用量に関連する 使用上の注意の(1)の中で「静脈内持続投与法での併用療法(FOLFOX4 法)」という言葉 を出させていただきました。また、市販後の承認条件としてこのFOLFOX4レジメンの治 験を直ちに行うことや全例調査の中でこのFOLFOX4レジメンを推奨していくことは広 くやっていきたいと思っています。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。溝口委員、どうぞ。 ○溝口委員 今のことと少し関連するのでお伺いします。レボホリナートとフルオロウ ラシルの併用療法の方はきちんと時間をずらして投与するように書いてあるのですけれ ども、こちらはただ併用としか書いていないのです。まさか管を最後に一緒にして点滴 するようなことはないとは思うのですけれども…。これを伺いました理由はオキサリプ ラチンの方はアナフィラキシーショックが副作用として書いてあります。もちろん頻度 は少ないけれども、重篤だから書いてあるのだと思うのですが、何かほかのが一緒だと どちらか原因だか分からなくなるという心配があって伺いました。  それからもう一つは、ショックが起こりますと一応重篤ですから、ここには投与後数 分以内にと書いてありますので、点滴を始めたらしばらく見ていればそれで済むと思う のです。今までの報告でもし頻度が分かればそれを書いていただいた方がいいと思いま す。1回目、2回目だけアナフィラキシーに注意すればいいのでしょうか。何回か繰り 返して1か月に一回くらいの間隔で治療するようですので、後になっても起こる可能性 があるのかとか、その辺をちょっと伺いたいのですが、いかがでしょうか。 ○池田部会長 どうでしょうか。 ○機構 審査報告書の86ページを御覧いただけますでしょうか。86ページの真ん中の 段に「アレルギー反応(皮疹も含む)について」という項で記載しておりますが、アナフ ィラキシーショック及びアナフィラキシー様反応は本剤の初回投与のみではなくて、例 えば10回以上投与した患者にも生じ得る有害事象であることを確認しております。最初 の御質問の投与方法ですけれども、Y字カテーテルを用いて投与することを推奨してお ります。 ○溝口委員 Y字カテーテルとなりますと、両方一緒になる可能性があるわけですか。 ○機構 67ページの図2.1.3に実際のFOLFOX4レジメンの投与方法が書いてあります が、ロイコボリンと5-FUは時間的にはずれて投与しています。 ○溝口委員 分かりました。そうしますと、ちょっと1回、2回注意すればいいのかと いうふうに考えがちですので、毎回このアナフィラキシー様反応が起こる可能性がある というのは添付文書に書いていただいた方がいいと思います。何かつまらないことで使 えなくなるといけないと思いますので。 ○機構 御指摘ありがとうございます。そのようにさせていただきたいと思います。 ○池田部会長 どうぞ、折笠委員。 ○折笠委員 今回新しいオキサリプラチンとの併用ということで出ているわけですが、 併用療法に関して同じプラチナ製剤のシスプラチンとカルボプラチンというのは今どう いう状況になっているのか教えていただきたいのですが。 ○機構 実際にそのような検討はされているとは思いますが、臨床的なベネフィットが 証明されているようなレジメンはないというふうに考えております。 ○新薬審査第一部長 補足いたしますけれども、プラチナ系の薬剤は従来は大腸癌には 全く効かなかったものでございまして、類似化合物を合成していく中で初めて大腸癌の 培養系のものに効果が出ることが見付かったというのがこのオキサリプラチンでござい ます。したがって、本剤でこそ大腸癌に対する適応が考えられるという次第でございま す。 ○折笠委員 もう一つ、85mg/m2の用法・用量というのは外国で認められているものと同 じですか。 ○機構 同じものでございます。 ○折笠委員 後ろの方にも神経毒性が見られるという記載がどこかにあったと思うので すが、カルボプラチンのときなどでも200mgから225mgか250mgに上げたときに結構日 本人で出たと思うのですけれども、これは日本人に同じ用量でも大丈夫ですか。 ○機構 神経症状はDLTにもなっておりまして、ほぼ100%の患者さんに認められて おります。 ○折笠委員 外国と同じ用量でも重篤なものは大丈夫ですか。大丈夫であればいいので すけれども、一応確認です。用量依存的に神経毒性が出てくるというようなデータは、 海外でそれほど見られなかったということですか。 ○機構 現在得られている情報では重篤なものに関しては特に報告されていないのです けれども、頻度としては添付文書の6ページにもございますように100%認められてい るという状況でございます。 ○新薬審査第一部長 その点については審査報告書の78〜80ページのところにかなり 詳細に書かせていただいておりますが、いずれにしましても国内で実施した単剤での試 験でも全例に出ております。急速に出るものと持続的に出るものとそれぞれかなり注意 深く見ておりますが、これは避けられない副作用ということで経過を見ながらフォロー するしかないということです。実際に欧米と同じレジメンでないとサバイバルの保証は できないということなので、まず用法・用量としては欧米と同じセッティングをすると いうことにさせていただいておりますが、ただ日本人の患者さんでの使用経験が少ない ので、忍容性の問題が発生する可能性は当然想定されます。そのために現在設定してい る用量に忍容性の問題があるということであれば早期にそれが検知できるようにという ことで、一つは速やかに治験の形でやらせていただき、もう一つは、市販後全例登録を して症例の集積を分母が分かっている状態でやらせていただこうと考えております。神 経毒性も含めていろいろな毒性が恐らく出てきますので、それをこのような形で早いう ちにチェックしたいと考えて条件とさせていただいております。 ○池田部会長 後藤委員、どうぞ。 ○後藤委員 確かにこの薬剤は国内のデータがない段階で承認するという形になるわけ ですから、この承認条件が非常に大事だと思います。この報告書の89ページの一番最後 段の部分を見ましても、やはりかなりありますね。この申請企業については、こういう ことに関して必要な要件を十分に満たしているかどうかという疑問があるわけですけれ ども、そういう企業申請条件がきちんと遵守されるためには何らかの担保が必要ではな いかなということが一点。それから最近承認条件を付けて承認をすることがほとんどな のですが、ほかの薬剤も含めて実際に承認条件に関してはどの程度言及されて報告され ているのか、全般的な状況について二つお聞きしたいのですが。 ○池田部会長 非常に大事なところですけれども、いかがでしょうか。今二つ後藤委員 の方からございましたが。 ○審査管理課長 別に抗がん剤に限らなくてもということでございますか。承認条件で いろいろな市販後の計画を立てろということについては、確かに過去においては企業の 方がやりますと言っていても症例の集積がなかなか思ったようにいかないなどというケ ースが非常に多く見られたわけでございますけれども、最近はその辺の手法についても ICHなどの場を通じてかなり改善が図られてきていますので、今後はかなりきちんと した市販後の調査が行えるようになるのではないかと思っております。 昨日のイレッ サの話でも実際に日本で第III相試験の進捗状況がどうかということがございました。当 初承認した時点ではもう少し患者さんのエントリーとかエンロールがどんどんそんなに かかるのかというふうに思っていた部分もあるのですが、いろいろな情報とかニュース とかが流れますと実際にはなかなか現場としては患者さんのエンロールメントに苦労し ておられようなところもあって、実際に市販後の臨床試験のような場合には状況によっ てプロトコルを変えるというのも、これはまた後々の解釈が難しくなってきたりとか、 そういう点で非常に苦労している部分はあるようでございます。ですから今一概に申し 上げられない部分はございますけれども、少なくとも市販後の使用調査、特に先ほどの 機構の説明ですと、このものについては事前登録みたいなことを考えているということ ですので、そういう形であれば薬剤の納入等の関係で、その辺は方法論とかいろいろな ものも含め、かなりきちんと企業にフォローさせることはできるのではないかと思って おります。それから先ほどもございましたように、患者さんの方は全体のことがよく分 からずに話が来て、できるだけ早く恩恵を受けたいという気持ちで必ずしも専門でない 先生のところで治療を受けてしまうということになりますと、また先ほど出たような議 論の問題も出てくるかと思います。その辺のところは学会等にも御協力いただいて、こ の後の併用療法のところでも御協力いただいておりますけれども、そういうような形も 含めて市販後の調査や承認条件などを確実に実施してもらうような方向で今後も努力し ていきたいと思っております。 ○池田部会長 よろしいですか。どうぞ、後藤委員。 ○後藤委員 特にこの品目に関しては優先審査品目という形で指定されたにもかかわら ずそういう本薬の臨床的な位置付けを企業がきちんと対応しているかということを含め てきちんとした指導をしていただいて、なるべく早く臨床現場にフィードバックできる 体制をとってもらいたいと思います。 ○堀内部会長代理 関連していいですか。一般論として、当然抗がん薬の場合には治験 症例なども少ないケースが多いわけです。ですからイレッサの場合もそうですけれども、 何が起こるか分からないにもかかわらずフォローがされないということが起こるわけな ので、条件として原則としては一定期間なり一定症例、ここのところ1,200症例という のが出ておりますけれども、疾患によって大分違うとは思いますが、まず全症例をやる というのを原則ぐらいに考えていただいた方がいいのではないかと私は思います。この 場合だけが特例でやったのではなくて、これは大変スタートのいい例だと私は思うので すけれども、是非やっていただければと思います。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。このケースは本当に新薬をこういう形で扱 ったというある意味では今までにない例だと思うので、やはりそれだけ慎重に御議論い ただいた方がいいのではないかと思いますし、やはり医療機関も企業もそれだけの責任 を負っているというふうには思うわけですけれども、その辺も含めて更に…。上原委員、 どうぞ。 ○上原委員 今までの議論で言い尽くされていると思うのですけれども、全症例把握と いうよりもやはりこういう薬を世の中に出す責任を持つ企業が、ここの承認条件に書い ていますように臨床試験をやって、その成績に基づいて日本人の適切な用法・用量を決 めるということを先にやるのが企業の責任ではないかとちょっと思ったものですから、 そちらの指導をやはり十分にしていただきたいと思います。 ○新薬審査第一部長 これについては、総合機構の方で治験相談の制度の中で企業から の開発のポイントを的を外さずに正しく、本来使われるべき姿のもので臨床試験をやっ てエビデンスを作ってくるということに向けて、我々の方からも働き掛けをしてアドバ イスしていきたいというふうに考えております。ただ、この領域については実はオキサ リプラチン単独でできる話ではなかったという点が実は特殊な背景としてございます。 つまり併用の相方の5-FUやロイコボリンのレジメンが欧米に比べて日本での実情が はるかに遅れていて、一般的にはFOLFOXレジメンに対応する持続点滴静注で、かなり高 い用量の5-FUを使うというような使い方自身が一般の医療現場でほとんどやられて いなかった状況で、オキサリプラチンを開発する側だけの力でFOLFOXのレジメンの治験 を行うということが大変困難であったという事情があるということも少し書かせていた だきましたが、さはさりながら本来であればそのような形で治験が行われていれば日本 での本剤の導入はもっと安心してエビデンスを得て行うことができたであろうというこ とは大変残念でございます。  そういうこともございまして、これを一つの教訓といたしまして、私どもはできるだ け本来の姿に近づけた形で臨床開発が行われるようにやっていきたいというふうに考え ております。御指導大変有り難いと思いますので、そのように今後もさせていただきた いと思っております。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。これはFOLFOX4レジメンがこれだけの高い エビデンスを持って本当に使わなければいけない治療法であるということを実際に公知 の事実として知っている医師というのは、この当該疾患を診療する人の中で大ざっぱに 言うと何パーセントぐらいになるのですか。恐らくそこが問題になるのだと思うのです。 そういうことを公知の事実として知っている方が100%であれば恐らく余り問題はない と思うのですけれども、そのパーセンテージが低ければ低いほど問題になる可能性があ るのではないかと。その辺の議論は恐らくあったと思うのです。 ○審査管理課長 その関連で先ほどからちょっとコメントも出ておりますが、用法・用 量に関する使用上の注意にはinfusionということは書いてあるのですけれども、用法・ 用量はそこを縛っておりませんで、そこをどうするかという点と、それから原則 infusionalでやるのですよということを警告まで書くかどうかという話でございます。 今部会長が御指摘のところがポイントかと思いますが、ちょっと事務局側としましても そこは非常に争論になっております。 ○池田部会長 その話について、吉田先生はどうでしょうか。 ○吉田委員 池田先生の御指摘は全体として誠によく問題がとらえられていると思うの ですけれども、今機構も言われたように日本の大腸癌化学療法というのは周回遅れの状 況です。それでボーラスの5-FU/ロイコボリンというのは第一世代の、しかも否定さ れたレジメンが唯一保険収載上は要事的治療であって、それとCPTを加えたIFUL というワンショットとCPTと5-FUが使えないことはない。ただそのIFULも FOLFOXに負けてしまったという状況で既に1週遅れです。今外国ではもうアバスチンが FOLFOXに加えていい成績が出たということで、これで2週、3週遅れぐらいになってい る。この状況で確かに大腸癌化学療法を担える人はどれくらいいるかというと、恐らく 10%を切っているのではないかと思います。ただこの遅れを取り戻すためには、そこで 一回目線を合わせる必要がありますよね。少し政治的な発言かもしれませんけれども、 そういう意味でもFOLFOX4を一回日本の基本的なレジメンとして広く認知してもらっ て、みんながやれるということにしておけば、次にアバスチンが出たときもFOLFOX、ア バスチンにきちんとついていけると。ただ先進部隊だけが一生懸命がんばっていて、後 方の先生方は相変わらず経口剤と本剤を加えるなどの比較的イージーな、標準的治療に ならないようなことをやっておられると、いつまでたっても進まないのではないかと思 うのです。そういう意味でも、私はむしろ積極的にFOLFOX4レジメンで承認するという 方がはっきりしていていいと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員 先ほども申し上げましたけれども、結局こういう話を全然聞いていなくて 添付文書をそのまま読んだときに、先ほどから議論されていることは恐らく想像できな いと思うのです。やはり我々が薬剤師の立場で処方チェックしたりするときも、そうい うことはどこに書いてあるのだと言われたときにすごく弱いと。それがはっきりと分か るように書いていないと現実としてはなかなかチェックにならないのです。そうすると せっかく疑義照会しながらやはりそうですかということで沈んでしまうことが多々ある ものですから、前から言っておりますけれども、添付文書を熟読することなどを警告に 書くよりは、そういうことをきちんと警告に書いて、これは気を付けてやらなければい けないということがはっきりと分かるようにしていくことがやはり必要ではないかなと いう気がいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。エルプラットを審査する のにここに上がってきたプロセスも今までとは非常に違った画期的な考え方と言ってい るわけですけれども、添付文書の書き方もこれまでと違った形で、もう少し思い切って その方向が分かりやすいような格好で書けないかという御指摘のように伺いましたけれ ども、その辺はどうでしょうか。これは非常に画一的で、今までと同じような格好です よね。 ○新薬審査第一部長 御議論が極めて明解ですので、用法・用量について持続的点滴静 注ということをはっきり書かせていただくことは私どもとしては全く問題ございませ ん。その形に整理をさせていただきたいと思います。それで警告のところにそれを書く ということに関しては、従来ここに書くのは死につながるような問題のあることとか、 そういった安全性の観点で書いてきているというところがあるのですが、むしろ持続点 滴静注との併用というのはそれとは少し趣が違うのです。しかし、それは先例にとらわ れず一番目に付くところにしっかり書かせていただくことも検討させていただきたいと 思います。 ○池田部会長 いかがでしょうか。どうぞ、土屋委員。 ○土屋委員 従来やはりどうしても物の安全を中心とした添付文書になっていることは 事実ですけれども、今使用の安全ということがこれだけ言われているわけですから、そ ういう使う場面での問題などということもきちんと警告しないとやはり分からない。現 場ではそういうことでやはり現実として結構言われることが立場的にはあるものですか ら、やはりその辺が説明できればなという気がいたします。 ○池田部会長 どうぞ。 ○安全対策課長 土屋先生の御提言がありましたので、こちらの方でも十分検討させて いただいて、できればそういう方向性を出せるような対策を打ちたいと思います。 ○池田部会長 この部会の皆さんの御意見とすれば、基本的にはFOLFOX4レジメンでこ の薬を使うのだという格好でまずとにかく進めて、それをきちんと全例評価してその都 度その都度公表していくというようなことであれば、がんに苦しむ方たちを救う、ある いは日本の結腸・大腸癌の治療のレベルを早く国際水準に持っていくためには必要なス テップではないかというような御議論の結果だったように承ったのですけれども、いか がですか。三つのことがあったかと思うのですけれども、吉田先生、そういう格好で…。 ○吉田委員 はい。これから新しい薬が申請されたり経口剤が出たりするとは思うので すけれども、そのときにこのオキサリプラチンと加えたときに、例えばこのFOLFOX4に 勝つか負けるかという形で評価していかないといけないということになりますので、ど うしてもこのレジメンは広くみんなに浸透させておく必要があると思います。 ○池田部会長 そうするとこのレジメンで行った方がいいと。 ○吉田委員 その方がいいと思います。 ○池田部会長 先生方、いかがでしょうか。何か御意見ございますか。よろしいでしょ うか。堀内先生、どうぞ。 ○堀内部会長代理 添付文書の中の用法・用量のところにブドウ糖注射液で溶解すると いうことが書いてあるのですけれども、結局生理食塩水では安定ではないわけですよね。 ですから逆に塩化物の入っている溶液では不安定だというのはなぜか。こういう書き方 をするとブドウ糖注射液だから違うものでもいいだろうというように思ってやってしま うケースがあると思うのです。ですからこういう場合では不安定だということを明確に 書いていただきたいです。 ○新薬審査第一部長 それは一応適用上の注意の方に調整時の注意として、「本剤は塩 化物含有溶液により分解するため、生理食塩液等との塩化物を含む輸液との配合を避け ること」というふうに書かせていただいております。 ○堀内部会長代理 こういうところに書いてもなかなか読まないのではないでしょう か。やはり近くに書いておかないと読まないと思います。先ほどの議論ではありません が。 ○機構 先生のおっしゃるとおりだと思いますので、こちらの記載場所については検討 させていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員 ちょっと些末な話ですが、名前が変わったというのはプラチンが似ている からとかそういう理由なのですか。 ○機構 一般名が入っている販売名は駄目であるということで変更してもらいました。 ○土屋委員 それはそれでいいのですけれども、ちなみに頭とお尻が一緒になるという と「エルサメット」と「エルメサット」というものが我が国でございまして、剤形が違 いますのでエラーになることはないと思いますが、逆にそもそも「エルサメット」と「エ ルメサット」などというものが出ているのもちょっと問題なのですが、そういう意味で あれば分かりました。 ○池田部会長 ありがとうございました。 ○機構 今の点ですが、安全部の方にもちょっと協力を依頼して似た名称については検 討したのですが、「エルプラット」であれば大丈夫であろうという判断でしたので、一 応御報告させていただきます。 ○池田部会長 折笠委員、どうぞ。 ○折笠委員 つまらないことで申し訳ないのですが、今添付文書を拝見していると臨床 試験の成績というのは国内だけに限っていましたか。以外のことは何にも触れていない のですけれども、国外では有効性が認められていたというのは書けないのか書く必要が ないのか、何なのでしょうか。 ○新薬審査第一部長 添付文書の内容について先例にとらわれず工夫を凝らすという方 針をいただきましたので、基本的には海外での、しかも治験の成績ということではなく て公開文献になると考えます。一応予定としては、FOLFOX4に対応する主要な臨床試験 の公開されているペーパーを引用するような対応をしていきたいと考えております。 ○池田部会長 今FOLFOX4レジメンに従ってこれを使うということですから、やはりそ の情報を非常に分かりやすい格好で添付文書に書くというのは必要ではないでしょう か。そのほかいかがですか。ちなみにこれは申請者はヤクルト本社ですけれども、ヤク ルト本社は例えばこういう本当に全例を把握してきちんとそれに対応し、タイムリーに データをまとめて報告するという体制は本当に十分に採れていると。これに関与する人 数はどれくらいいるのですか。大丈夫ですか。 ○審査管理課長 そこは非常にきちんと指導しなければいけないと思いますが、この会 社自身は昔イリノテカンの開発のときに、市販後の対応についての体制が十分だったか どうかというのはいろいろ議論があるところだとは思いますけれども、一応経験は有し ておりますので、その辺も踏まえて、本省と機構が連携を図ってきちんとした体制で指 導していきたいと考えております。 ○池田部会長 やはり今までとはかなり違った形の体制を採ってもらわないといけない し…。 ○堀内部会長代理 イリノテカンで全症例フォローを1万数千例やっているのですね。 イレッサみたいにバッとやらないでということがありまして、私はそれを抗がん剤では 評価しているのです。ですからそういう体制は採れているのではないかと思います。 ○池田部会長 どうぞ。 ○吉田委員 今ちょっとお話を伺うとFOLFOX4に限定すると私がそう言ってしまった かもしれませんが、FOLFOX4、6とか7とか今考えられているのは先ほど言った神経毒 性を軽減する方法がないかということで、アンダートライアルな状況ではあります。 FOLFOX4レジメンは確かに最初に確立した方法ですけれども、FOLFOX4という形でがち がちにしてしまうとちょっと使いにくいかなと思います。持続静注法でいいと…。 ○池田部会長 持続静注法と…。 ○吉田委員 FOLFOXに準じてと、番号を入れないで。 ○池田部会長 そのほかよろしいですか。非常に重要な議題だということだったもので すから、先生方のお話を十分にお聞きしましたけれども、よろしいでしょうか。それで は今ここで先生方に御議論いただいたことを踏まえて、一応承認を可とさせていただい てよろしいでしょうか。それではこれも薬事分科会報告とさせていただきたいと思いま す。ありがとうございました。  それでは議題3に移ってください。機構の方から説明をお願いします。 ○機構 議題3、資料3、アドリアシン注、オンコビン注射用1mg、デカドロン注射液、 オルガドロン注射液、デキサート注射液の製造又は輸入承認事項一部変更承認の可否に ついて、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。資料3の添付文書(案) のところに各薬剤の添付文書が挟まれています。それぞれ網掛け部分あるいは黄色に塗 ってある部分が今回の変更点でございます。  本申請は塩酸ドキソルビシンン、硫酸ビンクリスチン、デキサメタゾンを併用する療 法である、いわゆるVAD療法にかかわる申請でございます。VAD療法は多発性骨髄 腫に対する標準療法として国内を含め世界的に用いられております。米国においては多 発性骨髄腫の効能・効果は承認されておりません。教科書やガイドラインの記載や多く の公表文献で世界的にVAD療法の有用性が示されているとする抗がん剤報告書に示さ れた内容に基づき、承認して差し支えないと判断いたしました。御審議のほどお願いい たします。 ○池田部会長 ありがとうございました。ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメ タゾンのVAD療法ですけれども、いかがでしょうか。御意見頂けますか。これは実際 にはもう臨床の現場でかなり長い間使われている治療法だというふうに私は理解をして おります。我々も実際今までにこれで患者さんを治療していまして、恐らく多発性骨髄 腫の患者さんを持っている血液の専門医でこの治療法をやったことのない人はいないの ではないかというぐらいにこれまで使われているものですけれども、いかがでしょうか。 何か御意見頂けますでしょうか。これは、例えばオンコビンは効能・効果で他の抗悪性 腫瘍剤との併用療法で多発性骨髄腫と書いてありますね。それでその下の用法・用量で はこのVADがスペシフィックに書いてあるわけですけれども、オンコビンの場合はほ かの組合せでもVCAPとかかなりいろいろ使われているものがありますけれども、そ ういうものはどういう位置付けになるのでしょうか。 ○機構 あくまでVAD療法についてということでしたので、機構としては用法・用量 の中でこの塩酸ドキソルビシン、リン酸デキサメタゾンナトリウムということで相手を しっかり指定することで…。 ○池田部会長 取りあえず今のところはこのVADだけでやりましょうということなの ですね。 ○機構 そのように考えております。 ○池田部会長 これについて専門者協議というか、何か特別な議論はございませんでし たか。 ○機構 併用療法委員会のものは通知に基づきまして実施しておりません。 ○池田部会長 ということはそれだけコモンだということ、特別に実施しないでという ことですね。よろしいでしょうか。特に御意見ございませんか。それではこれは承認を 可とさせていただいて、薬事分科会報告とさせていただきたいと思います。ありがとう ございました。  それでは議題4に移りたいと思います。機構の方からよろしくお願いします。 ○機構 議題4、資料4、5-FU注250協和の製造承認事項一部変更承認の可否につい て、医薬品医療機器総合機構より御説明させていただきます。資料の真ん中の方に頭頸 部癌に対する5-FUの添付文書がございますので、そちらを御覧いただけますでしょう か。  本申請は頭頸部癌に対する5-FUを含む抗がん剤併用療法、並びに5-FU単剤を用 いる療法にかかわるものであります。頭頸部癌に対するシスプラチンと5-FUを含む抗 がん剤併用療法などは教科書やガイドラインの記載、多くの公表文献で標準療法として 記載があり、国内でも使用されております。本薬の効能・効果は既に頭頸部腫瘍があり、 用法・用量については今回用量の増加、及び持続静注法を追加する内容が申請されてお ります。外国の承認状況についてですが、米国においては頭頸部癌の効能・効果は承認 されておりません。頭頸部癌に対して本薬の有用性が示されているとする抗がん剤報告 書に示された内容に基づき、承認して差し支えないと判断いたしました。御審議お願い いたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。頭頸部癌についての5-FUの承認ですけれど も、いかがでしょうか。実際には併用はシスプラチンになるわけですね。 ○機構 報告書を見ますとほとんどシスプラチンとのいわゆるFP療法になっているの ですが、ただ中にはほかのカルボプラチンの記載もありましたので、このような他の抗 がん剤という記載にしております。 ○池田部会長 これは特別に、例えばプラチナ製剤とかそういうような書き方はしなく ていいのですか。 ○機構 ワーキンググループの先生にも確認をしたのですが、このような形での使用で あるという御意見でございました。 ○吉田委員 これは議論があったかどうか知らないのですけれども、質問です。ここに 放射線を併用すると書いてありますよね。1,000mg/m2とシスプラチンの併用で更に放射 線を加えるということはちょっと一般的ではないような気がするのですけれども。 ○機構 放射線を併用した場合に毒性が非常に強く出るという懸念がありまして、特に 原発巣の場所なども考えるとかなり命にかかわるような重大な毒性、粘膜炎を契機とし た気道閉塞のようなことも起き得るということで、用法・用量に関連する使用上の注意 においては、放射線照射を併用する場合には適切に減量を検討していただきたいという 旨と、それから使用上の注意の重要な基本的注意の項に、副作用の増強が認められるの で、こういう緊急時の対応についてきちんと注意しておくことという旨を記載しており ます。 ○吉田委員 どこにその根拠が出ているのか分からないのですけれども。いわゆるFP 療法検討会の審査報告の7ページの…、B群は100mgですものね。例えばシスプラチン 1,000mgを4日間、5日間、更に放射線というのがいいというのはどこに書いてあるの かと思って探しているのですけれども、教えてください。8ページのB群ですか。 ○池田部会長 用法・用量は8ページですか。 ○機構 吉田先生、申し訳ありません。もう一度御質問を確認させていただきたいので すが。 ○吉田委員 通常5-FU1,000mg/m2ということは1.5gとか1.8gですよね。それにシ スプラチンを入れて更に放射線をかけるというのは普通やらないですよね。ですからど ういうエビデンスでこれを放射線併用でやるというふうに書かれたのかと思って、その 根拠を教えていただきたいという質問です。見ると8ページらしいのですが、1群が50 のランダマイズドトライアルでしか一応証拠がないということになると安全性が担保で きるかなというのがとても心配なのですが。 ○機構 機構からお答えいたします。恐らく減量が必要であろうということは理解して おりますが、ここに提出されている抗がん剤報告書の中から例えば減量の基準ですとか、 放射線併用時の適切なドーズの記載は認められませんでしたので、そういった用法・用 量の調節などに関する各情報は、こちらとしてはこの中には認められませんでした。た だし減量が必要であるということは考えられますので、注意喚起という形で書かせてい ただいております。 ○吉田委員 頭頸部癌はデータが少ないのは分かるのですけれども、要するにこれだけ しかないデータで公知と言えるかというと私は知らないと思います。このようなすごい 量で放射線化学療法をやるのは私も知りませんでした。 ○池田部会長 この書き方は5-FUとシスプラチンの併用と放射線ですよね。 ○吉田委員 放射線でなくて、例えば術前などのときにシスプラチンとの併用で高用量 の5-FUを使っていい成績が出るとか、あるいはダウンステージングを図るとかという ことはやられていると思いますし、それからある程度カイスイになったところをもう一 回大量にかけることによってサルベージ的に助けられる、緩和できるということも事実 だと思うのですけれども、私が唯一気にしているのは放射線と併用したときにこれをや ったら喉頭壊死とか、それこそ下手をすると血管破綻とかいろいろなことが起こりそう な気がするものですから、この量で公知ということで認定していいのかというのが非常 に疑問なのですが。 ○池田部会長 どうぞ。 ○審査管理課長 私からのコメントが役に立つかどうか分かりませんが、実際にはエビ デンスのデータは600とかそういう方がむしろ多いかもしれませんけれども、この抗が ん剤の報告書の案では最大1,000mgまでという形になっておりまして、機構の方で審査 していただいた形は1日1,000mgまでをというふうに書いてあります。確かに数字とし て1,000しか記載していないものですから、そういう点で使用上の注意には放射線など と併用するときには適宜減量が必要になるということは少し書いてあるのですけれど も、ちょっと用法・用量のところで例えば幅記載にするなどということがあった方がい いという御判断があれば、そこを修正していただくようなこともあり得るかと思います が。 ○新薬審査第一部長 もう一度ちょっと整理をさせていただきたいのですが、今回の承 認は基本的に他の抗悪性腫瘍剤との併用療法ということで用法・用量には書かせていた だいております。それに対応しましたのは抗がん剤の併用療法検討会報告書の7ページ の導入化学療法のところで、正しく吉田先生がおっしゃいましたシスプラチン100mgと 5-FU1,000mgを使ってその後に放射線をかけるという、そこのところの試験成績は本 当によく知られている、いわゆるNCCNガイドラインの指針の基礎となる有名な試験 を反映しているものでございます。これを基にして書いているのが基本でございます。 更にそれに加えて8ページにあるような同時に併用をかけてしまうようなケースがここ に書かれているということで、それが大変安全性上危険であるということを考慮いたし まして、用法・用量に関する使用上の注意と重要な基本的注意というところを同時に併 用する場合のことを想定した記述にさせていただきました。こういう格好になっており ますので、正しく御懸念に対する対応は採らせていただいているつもりなのですが、こ こで不用意に1,000mgを導入化学療法のところで下げるということについては逆にエビ デンスがないものですから、ここは基本的に抗がん剤との併用という部分での話として はこう書かざるを得ないということは御理解いただきたいと思いますが、いかがでござ いましょうか。 ○吉田委員 太い字で危ないと書いておいていただければ…。 ○池田部会長 そうですね。よろしいでしょうか。 ○神谷委員 今のことですけれども、吉田先生が言われるようにそこに一行入れるか入 れないかで…。臨床医は意外とそういうところを読み落としますから、やはり入れてい ただければそれがきちんと守られると思いますので、私も入れた方がいいと思います。 ○池田部会長 よろしいですか。そのほかいかがでしょうか。 ○新薬審査第一部長 今のお話は同時に放射線をかけてしまうときに大変危険であると いうことをより明記させていただくということで対応させていただきます。 ○池田部会長 化学療法と放射線の併用は非常にガンと減りますからね。よろしいでし ょうか。ではその点だけお願いします。そのほかよろしいですか。ありがとうございま した。それでは承認を可として薬事分科会報告とさせていただきます。  議題5に移りたいと思います。よろしくお願いします。 ○機構 議題5、資料5のナツラン、オンコビン注射用1mgの医薬品輸入承認事項一部 変更承認の可否について、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。添付 文書(案)を御覧ください。本申請は悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫に 対する硫酸ビンクリスチンと塩酸プロカルバジンの効能・効果、用法・用量の追加に係 るものであります。神経膠腫に対する世界的な標準療法としてビンクリスチン、プロカ ルバジンとロムスチンを含むいわゆるPCV療法というものがございます。国内でPC V療法を構成するロムスチンが未承認薬であるため、国内では他のニトロソウレア系薬 剤である塩酸ニムスチンに置き換えたPAV療法が行われているとの記載が検討会報告 書にございました。また、国内での使用実態としてPAV療法に関する学会抄録が記載 されております。PCV療法は教科書やガイドラインの記載や多くの公表文献で有用性 が示されている一方、PAV療法については世界的に使用されておらず、国内での使用 実態や有効性、安全性に関する情報はほとんど存在していないため、機構は市販後の一 定期間は塩酸プロカルバジン、硫酸ビンクリスチン、塩酸ニムスチンの3剤を併用する 抗がん剤併用療法を行った症例を可能な限り全例収集し、有効性及び安全性を検討する ことを承認条件とした上で検討会報告書に示された内容に基づき承認して差し支えない と判断いたしました。御審議お願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。神経膠腫という非常に頻度 の少ない悪性腫瘍ですけれども、それに対して塩酸プロカルバジンと硫酸ビンクリスチ ンと。御意見頂けますでしょうか。一応神経膠腫に対する化学療法というとまずこれを 最初に、一番レギュレーションが高いと考えてよろしいのですか。 ○機構 世界的な標準としてはPCV療法と言いまして、この2剤とCCNUと呼ばれ るロムスチンを含む療法に関しては世界的にエビデンスがかなり高いと。ただ日本では …。 ○池田部会長 日本ではニムスチンが使われているということですね。ちなみにCCN Uと塩酸ニムスチンでどのくらいの差異があるのですか。CCNUというのは文献には よく出てきて、我が国では使われていないわけですけれども。 ○機構 この2剤の差は、答えから言うとそのような情報は分かりませんでした。 ○池田部会長 余りないのですね。 ○機構 報告書の記載がないのと、こちらとしてもそのような情報は分かりませんでし た。 ○池田部会長 化学療法は今まで治療されていることが非常に少なかったものですけれ ども、これも承認条件として可能な限り全例を収集し、有効性、安全性を検討するとい うことで、いかがでしょうか。それぞれの薬剤はよく記載されたものですし、特に御意 見ございませんか。よろしいでしょうか。もし特に御意見ございませんでしたら、これ も承認を可とさせていただいてよろしいですか。ありがとうございます。それではこれ も承認を可として薬事分科会報告とさせていただきたいと思います。  それでは議題6をお願いします。 ○機構 議題6、資料6は注射用イホマイド1gについてでございます。この療法につ いては前回本部会で御審議いただきましたが、一部審査を保留した部分がございました。 具体的には前回の審査報告書、15ページの第一パラグラフに記載がありますが、悪性・ 骨・軟部腫瘍に対するイホスファミドの単剤投与時の最大投与量についてが保留となっ ており、その後に抗がん剤併用療法検討会で検討が行われました。その結果、イホスフ ァミドの単剤投与時の最大投与量は1コース当たりの総投与量として14g/m2であると 確認されました。これを踏まえ、機構は添付文書の黄色部分の改訂を行っております。 御審議お願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございます。イホマイドでございますけれども、いかがでし ょうか。骨・軟部腫瘍の治療に用法・用量…、どうぞ。 ○吉田委員 これは臨床腫瘍医にとっては公知の事実でありまして、教科書もメタ・ア ナリシスも全部済んでいるので問題ないと思います。 ○池田部会長 そうですか。用量の設定ですけれども、よろしいですか。ありがとうご ざいます。それではこれも承認を可として薬事分科会報告とさせていただきたいと思い ます。続きまして議題7です。 ○事務局 議題7、資料7でございますが、SOT-107を希少疾病用医薬品として指定す ることの可否についてということでございます。資料7の一番表に諮問書が付いており まして、その次にクリーム色で「報告書」という耳の付いた部分があると思いますが、 そこの2ページを御覧いただきたいと思います。  SOT-107というのは日本における開発コードでございまして、名称は修飾ジフテリア 毒素・ヒトトランスフェリン結合体でございます。対象疾病は神経膠腫、申請者は株式 会社そーせいでございます。事前評価の結果でございますけれども、1.対照患者数につ いては、提出された資料によりますと国内の神経膠腫の患者数は4,465人と推定される ということで、5万人未満というオーファン指定のクライテリアを満たしております。 2.医療上の必要性についてでございますけれども、現在神経膠腫の治療は第一に外科的 な摘出術が考えられるということですが、そこに記載がございますように全摘が困難で あったり、あるいは腫瘍が残存して再発を繰り返すことも少なくないということから、 術後に放射線照射や化学療法が行われておりますけれども、現在使用されているニトロ ソウレア系薬剤等の単独又は併用療法での全身投与では十分な治療効果が得られないと か、あるいは放射線照射についてもなかなか満足できる治療成績が得られていないとい う現状にございます。  その次のパラグラフでございますが、本剤はヒトトランスフェリンと修飾ジフテリア 毒素をチオエーテル結合させた製剤ということでございまして、この修飾ジフテリア毒 素の方は毒性を有するドメインを残したまま細胞結合能力を有するドメインを修飾させ ているため、正常細胞への毒性は数千分の一に減弱されていると。一方、トランスフェ リン受容体は分裂を終わった正常脳細胞にはほとんど分布していないけれども、分裂を 続ける悪性腫瘍細胞には多く発現しているということで、本剤を定位的脳手術法により 腫瘍内に直接投与いたしますとトランスフェリン受容体を発現している悪性脳腫瘍細胞 に選択的に取り込まれ、修飾ジフテリア毒素の細胞毒性によって抗腫瘍効果を示すとい う作用が期待されております。次のページでございますけれども、有効性に関しまして は米国の第II相臨床試験で奏効率が35%、生存期間中央値が37週であったということ が報告されております。安全性の面では一定のリスクがございますけれども、全身への 副作用の発現を軽減できるということが期待されておりまして、以上より本剤の医療上 の必要性は高いと考えられるということでございます。  最後に3.開発の可能性についてですけれども、本剤は2001年に米国で、2002年にE Uでオーファンドラッグとして指定されておりまして、米国において再発性又は進行性 の神経膠腫を対象とした多施設共同オープン第II相臨床試験が実施され、今評価されて いるところであります。また進行性、再発性、切除不能の膠芽腫患者を対象とした多施 設第III相臨床試験が米国及びEUにおいて開始されているということで、海外でも開発 が進んでおりますので、開発の可能性はあるだろうと考えられます。以上の評価の結果、 オーファン医薬品に該当するという報告書でございます。以上でございます。よろしく お願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。この薬剤をオーファン指定とすることについ て御議論いただきたいと思います。神経膠腫を対象にした修飾ジフテリア毒素とヒトト ランスフェリンの結合体で、腫瘍細胞にトランスフェリンの受容体が高発現していると いうことで直接腫瘍内に攻撃するというものでございますけれども、いかがでしょうか。 何か御質問ございますか。特にオーファンとして指定することについて、何か御質問あ るいはコメントを頂けますでしょうか。よろしいですか。それではこれはオーファンと して指定することを可とさせていただいて、これも薬事分科会に報告させていただきた いと思います。  次は議題8ですけれども、これもオーファン指定で、サリドマイドでございます。 ○事務局 次はサリドマイドを希少疾病用医薬品として指定することの可否についてで ございます。資料8-1とその分冊がございます。資料8-1の諮問書の次の次のページを めくっていただきますと同じように「記」で始まる報告書の本文がございます。名称は サリドマイド、対象疾病は多発性骨髄腫(既治療で効果不十分な場合に限る)。申請者名 は藤本製薬株式会社でございます。まず事前評価の結果でございますが、1.対象患者数 については、提出された資料から、年間の多発性骨髄腫の推定罹患数は1998年の報告で 3,332人であると。それよりも広いカテゴリーで見ても14,000人。本薬の投与対象は再 発例・治療抵抗例という縛りがかかっておりますので、この数を更に下回るだろうとい うことで5万人未満という基準は満たしていると考えられます。  2.医療上の必要性についてでございますけれども、現在の多発性骨髄腫に対する治療 は化学療法が中心で、一次治療としてはMP療法やVAD療法が多く用いられていると。 その他一次治療又は再発以降の治療としては自家造血幹細胞移植が行われておりますけ れども、これは大量化学療法を用いるために、それに耐えられない高齢者の方々や臓器 機能障害を有する患者さんは対象とならないということでございます。このような化学 療法を主体とする既存の治療法ではある程度の奏効率は得られるのですけれども、根治 が得られずに再発すると。これらの治療に抵抗性の患者に対する治療として有効な医薬 品は現在国内にはないという状況にあるということでございます。それから再発例・治 療抵抗例に対しては同種造血幹細胞移植が行われることがございますけれども、ドナー 確保の問題、あるいは治療関連死亡が多発するというようないろいろな問題がございま して、治療法として推奨するエビデンスは少ないと考えられます。ということで、この サリドマイドは多発性骨髄腫の再発・治療抵抗例に対して効果が期待できる医薬品であ ろうと考えられます。  次のページでございますが、有効性については米国において1999年に発表された報告 で既治療例の治療抵抗性多発性骨髄腫患者84例に投与したところ、32%で反応があった と。この報告の後欧米を中心に様々な検討が行われまして、その結果が報告されており ます。それから安全性については傾眠、便秘等が見られるほか、本薬はかつて妊婦の服 用により先天性の異常が出現する薬害が起きた医薬品でございますので、厳格な薬剤管 理と患者教育が必要であると考えられるということでございます。その次のパラグラフ の平成14年度厚生労働科学特別研究事業の清水直容先生の研究班の報告書によります と、サリドマイドの個人輸入がかなりの数行われているということが示されておりまし て、国内でも医療上の必要性も高いと思われます。  3.開発の可能性についてでございますけれども、現在EUにおいて未治療・治療抵抗 性多発性骨髄腫患者を対象とした臨床試験が進行中で、これは2005年3月までに終了予 定ということだそうでございます。それから米国では1998年にS.T.E.P.S.と呼ばれる 医療従事者・患者に対する教育プログラムの下で、適応はハンセン病に伴う結節性紅斑 でございますので多発性骨髄腫の効能・効果は承認を持っていないものの、多くの臨床 上の検討が行われておりまして開発が進んでいると。また国内におきましても池田先生 が中心におまとめいただきました「多発性骨髄腫に対するサリドマイドの適正使用ガイ ドライン」が昨年12月に出ており、本薬の適正使用の推進が求められておりまして、国 内においても安全性を重視しつつ開発が可能であると考えられるということでございま す。以上を総合いたしまして、希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているのではない かと考えております。  なおちょっと説明が不足していて申し訳なかったのですが、今の報告の本文中にもご ざいましたけれども、かつて薬害が起きた医薬品であって厳格な薬剤管理と患者教育が 必要であることから申請者の方でも国内の個人輸入のガイドライン、あるいは米国の安 全管理プログラムを参考にしてこういうことを考えているということで、別冊としてお 送りしております資料8-2はあくまで参考として出させていただいたものでございま す。これはまたこれから中身を詰めていく段階のものでございます。  さらにこの説明の前にお配りいたしましたA4の一枚紙がございますが、これは本日 守殿先生から頂きましたコメントでございます。先生のコメントの中ではこの別冊の資 料8-2の青い耳で「医師用ホルダー」というものがあると思いますが、その中に「医師 用冊子」という耳が付いている部分があると思います。そこをめくっていただきますと 3ページに「患者の誓約事項」という、必要な避妊方法としてAとBとどちらか選択し なさいということが書かれたページがございます。守殿先生の御指摘は、ここでは男性 についてはラテックス・コンドームの着用か精管切除術のどちらかを選択するというふ うになっているけれども、精子中にサリドマイドが含まれなければそれでもいいのかも しれないが、精液中に含まれていれば精管切除術だけでは防ぎ切れない可能性があると いうことで、コンドームの着用が絶対条件であるということでございます。これは今後 また日本における安全管理プログラムの内容を企業側も医薬品医療機器総合機構の相談 を受けながら固めていくと思いますので、こういうコメントも反映した形で完全なもの に作り上げていきたいというふうに考えております。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。難治性の多発性骨髄腫に対するサリドマイド の使用をオーファンとして指定することの可否ということで、御承知のようにサリドマ イドは非常にデリケートな問題をたくさん含んでおりますので、それについて御審議い ただきたいと思います。土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員 私も実は厚生科学研究を一緒にやりまして、そのときに現場を見に行って 管理のされ方とかアンケートをとると、見に行ったところは管理をとてもきちんとして いたのですが、それ以外のところではロッカーに入っているとか机の引き出しに入って いるなどという実態が結構明らかになったのです。これはオーファンのことはいいので すけれども、これをやることで今イギリスとかブラジルとかから個人輸入している人を 速やかにこういう管理体制にもっていくために何かやられるということは別途お考えな のでしょうか。結局報告が出て、今はあれよりは多少厳しく管理しているとは思います けれども、正直申し上げまして当時大学病院の薬剤部でさえ自分のところでそれを輸入 していることを知らなかった大学が結構あったのです。ですからそういうことから言い ますと、今回責任薬剤師とかそういうことも制度としては考えているという話もありま すが、やはり薬剤部による管理という、そこら辺が…。要するに表に出して我が国でき ちんと使えるようにしようというやり方だと思いますので、ほかから切り替えさせると かそういうことは何かお考えなのかということです。 ○池田部会長 いかがですか。 ○審査管理課長 そこは今後の治験の進め方とかそういったところの中身に入ってくる かと思いますけれども、実際には今医師の側面的なサポートを受けて個人で輸入されて 使っておられる方々は多発性骨髄腫以外の患者さんもいらっしゃいますし、多発性骨髄 腫の患者さん全体がまた治験のプロトコールへの一致とかいろいろな問題等もあると思 いますし、それから先行治療だとかいろいろな関係があると思います。ですからせっか くこういう形で治験が始まりますので、新規例のような人の場合はできるだけそちらに 協力いただくような形にはなると思いますけれども、既に個人で輸入されている方を全 部治験の方に入れ込むというのは恐らく実際上は難しいのではないかと思います。 ○池田部会長 そうですね。多発性骨髄腫に実際にサリドマイドで治療されている患者 さんは結構おりますので、恐らくエリジビリティという観点からはそういう患者さんは 外れてしまうのではないでしょうか。それからやはり固形癌の患者さんが結構いますの で全部加えるというわけにはいかないと思います。 ○土屋委員 管理の仕方、それから情報をとっているかどうかと言ったときに、結局ど ちらかというと輸入先を決めるのは何かというとお金の話が最優先で、あちらに比べて 5分の1ぐらいの値段だから輸入できるとか、やはり患者負担ということを非常に現場 の方がおっしゃっていたのです。そういうことから言うと、治験が厳格なところで行わ れるというのはとても重要ですし、それからあの例から見て全部が全部いくわけではな いというのは分かるのです。しかし、一方でこういうことがありながらある意味で我が 国の会社が治験を含めて製剤をし始めるというときに、要するに情報や管理の仕方が不 確かなものが出るという話のときに、それをどうするのかなというのは当時から話はし ていたのです。本当から言えばなかなか難しいことだと思うのですが、できればやはり そういうきちんとした管理体制などといったことでコントロールされた中で範囲外の話 もやれると、その方が結果としては全体としての安全が保てるのかなというのかなとい うのがちょっと懸念されたものですから。 ○審査管理課長 その意味では先ほどもちょっと説明いたしましたけれども、昨年12 月10日に池田先生等に御協力いただきまして、個人輸入のものを含めて管理のガイドラ インを作っていただいておりますので、そこの部分の安全対策は一応できているという 中で今回これが指定されますと企業も治験を進めていくわけですが、最低限そこのレベ ル以上のところで治験をやっていただくということになるかと思います。 ○池田部会長 S.T.E.P.S.を遵守しながらやるというかなりしっかりしたガイドライン を作って、実際にそのガイドラインがどういうふうに守られているかというところまで 仕組みを作るということで今やっております。それは血液学会が取り組んでいるのです けれども、ただ単に作りっぱなしではなくて、実際にどれくらいそのガイドラインが守 られているかということの検証をする仕組みを作りましょうということで今話が進んで いますので、少なくともそのレベル以上には企業としてはやっていただかなければいけ ないだろうというふうに思っています。これをオーファンとして指定するということに ついて、いかがでしょうか。溝口委員、どうぞ。 ○溝口委員 今のことに関連しまして。そうしますと今回の対象外の患者さんにも今の ガイドラインを配っていただける可能性があると考えてよろしいですか。 ○池田部会長 そうですね。 ○安全対策課長 昨年末にガイドラインを作りまして、それ以降の個人輸入のときには ECから約款証明の申請が出ますので、そのときにこのガイドラインのコピーを配って、 これに従って薬剤管理をしますという誓約書を取って個人輸入を許しておりまして、お 医者さんレベルにはこのガイドラインがすべて行っております。したがって、その中に は患者さん用の説明文書などが全部ワンセットで入っておりますので、あと医師にその ガイドラインを活用していただけるようになっております。 ○溝口委員 それはもちろん新しい人だけですね。既に使用している人でも大丈夫です か。実は私どもは個人輸入して使っておりますので、個人輸入といっても医師が輸入し てそれを差し上げるという格好になっておりますが。 ○安全対策課長 サリドマイドに関しましては、すべて医師のみに個人輸入の申請を限 っております。したがいまして、医師の方にその情報が必ず届くようになっております。 一般の方がフリーアクセスでサリドマイドを輸入されるということはありません。それ から個人輸入にしても大量に輸入することはできませんで、一回当たりの分量というの は決まっておりますので、必ずこの約款証明を取るという行為をしなければならないと いうふうになっております。 ○溝口委員 どうもありがとうございました。 ○池田部会長 よろしいですか。折笠委員、どうぞ。 ○折笠委員 この開発が既治療で効果不十分な場合に限るというふうに出ているのです けれども、ECのスタディーなどは未治療も含めているようですし、こういうふうに絞 って開発をされていくというのはどうしてかということなのですが。例えばそういう不 用意な使われ方をしてしまって奇形が出るとかそういう懸念があるから余り広げないで 最初はファーストラインでも駄目な患者に絞ったのか、その辺がもし何かお分かりでし たらお願いします。 ○審査管理課長 そこの部分についてはまだ詳しい説明を受けておりませんけれども、 これは一応予定される効能ということでございまして、本日こちらで御了解いただいて オーファンの指定を受けますと機構の方で治験相談が優先的に受けられるという仕組み がございます。そういう治験相談の中で治験の対象患者さんのグループとかその辺の議 論はしていただけることになるのではないかと思います。場合によりましては先生方に また御協力を頂くようなこと等になるかと考えております。 ○機構 機構より補足させていただきますが、今こちらから申し上げたように治験相談 の中で患者対象については議論していきますけれども、現時点では多発性骨髄腫に対す る第一次治療としてサリドマイドは標準とは考えられていないと思います。最初には先 ほど御説明したVAD療法ですとかMP療法といった化学療法が現在エビデンスがある という状態でありまして、池田先生が作成されたガイドラインの方でも未治療例につい ては十分なエビデンスがある状況にはないということになっております。また海外でも 初発からサリドマイドを入れていくというのはまだ試験段階であると考えますので、国 内ではまず最初はこういった第二次治療以降で開発するというのは現時点では臨床的位 置付けを考えると納得できるものであるというふうに我々は考えております。 ○池田部会長 よろしいですか。溝口委員、どうぞ。 ○溝口委員 今のことで患者相談で対応できるのかもしれませんけれども、この多発性 骨髄腫も池田先生の御専門ですからそういうことも考えられて決めたのだと思います が、今の有効性は副作用の方も考えてファーストチョイスではないということになった のでしょうか。高齢の患者さんが多いと思うのですけれども、副作用に関しましては今 高齢者ですと指定のことは余り問題になりませんし、ほかの副作用は比較的少ないよう に思いますので、その点に関しましてはもちろん議論があったのでしょうか。その辺も 教えてください。 ○池田部会長 そうですね。副作用だけではないです。やはりエビデンスとしてほかの 治療法に勝ってこれが位置付けられているということでは今ないだろうということだと 思います。よろしいでしょうか。それでは特にこれ以上御意見がないようでしたら、一 応サリドマイドをオーファンに指定することを御承認いただけるということで、薬事分 科会の方に報告させていただきたいと思います。ありがとうございました。  それでは次に報告事項に移りたいと思います。機構の方からよろしくお願いします。 ○機構 報告事項については、まず二つの議題を続けて御報告させていただきたいと思 います。まず議題1でございますが、医薬品パシル点滴静注液、パズクロス注の製造承 認事項一部変更承認申請についてでございます。資料9を御覧ください。本剤について はメシル酸パズフロキサシンを含有する注射用のニューキノロン系抗菌剤でございまし て、現在ブドウ球菌属等における感染症治療薬として承認されているものでございます。 今般富山化学工業株式会社及び三菱ウェルファーマ株式会社から、レジオネラ属の効能 ・効果追加について一部変更承認がなされたものでございます。本効能・効果の追加に ついては、日本化学療法学会よりレジオネラ属レジオネラ感染症に対する適応拡大の要 望が厚生労働省になされたことを受けまして、申請者において検討、開発が進められ、 平成11年2月1日付けの研究開発振興課長通知、審査管理課長通知の二課長通知と呼ば れる「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」に基づいて、医学薬学上公知 であるとして申請がなされたものでございます。総合機構における審査の結果といたし ましては承認して差し支えないと判断したものでございます。なお本剤については再審 査期間は特別に付けるということではなく、最初の承認の残余期間をこの効能について も付けるということになっているものでございます。  続きまして議題2、医療用医薬品の再審査結果について御報告させていただきたいと 思います。資料は枝番で三つありまして、資料10-1、10-2のファロペネムナトリウムの ファロム原薬、ファロム錠関係から、資料10-3のバクトラミン注までの三つの医薬品再 審査確認等結果通知書、及び審査報告書になります。これらの品目については市販後の 使用成績調査、特別調査の成績等に基づいて再審査申請が行われておりまして、それぞ れ審査の結果いずれの品目についても薬事法第14条第2項各号の承認拒否事由のいず れにも該当しないと。結局効能・効果、用法・用量等の現在の承認事項については変更 の必要はないカテゴリー1ということで、三つともそのように判定したものでございま す。  なお、資料10-1をめくっていただきまして9ページの注1、注2を見ていただきます と、本剤は承認時において注1の承認条件及び注2の調査会からの指導事項があるもの でございます。これについて申請者の方三つの調査又は臨床試験が行われておりまし て、、その結果については5ページから7ページの始めに報告されているものでござい ます。どちらにしましてもこの三つの再審査申請については特に効能・効果、用法・用 量等の承認事項について変更の必要はないカテゴリー1になったものでございます。以 上でございます。 ── 審査管理課長退室 ── ○池田部会長 ありがとうございました。ただいまの御報告について何か御質問ござい ますでしょうか。よろしいでしょうか。 ○堀内部会長代理 ちょっと一つだけ確認したいのですが、この再審査の結果が後ろに 付いている添付文書にすべて反映されていると考えてよろしいですね。 ○機構 再審査の結果については反映されているということです。 ○機構 3項目ともということでございますか。三つ目の効能・効果、用法・用量の読 み替えに関しましては再評価の方で既に出たものについてでありまして、これは添付文 書に反映されております。ただし注1については医療関係者に情報提供することとなっ ておりますので、既に再審査期間中に適宜情報提供がなされておりまして、添付文書に は特に反映されておりません。注2の方については(1)の高齢者の成績は添付文書に反映 させるようにと申請者を指導しておりまして、現在検討中でございます。(2)の抗菌力に 関しては今のところ…。 ── 審査管理課長入室 ── ○堀内部会長代理 分かりました。要するに添付文書に反映させるということになって いればそれで結構です。 ○池田部会長 そのほか御質問ございますでしょうか。神谷委員、どうぞ。 ○神谷委員 ファロペネムナトリウムですけれども、私もきちんと調べてこなかったの で教えていただきたいのですが、髄腔内移行ということについてはこの薬はどういうふ うになっているのですか。 ○審査管理課長 それは基の製造データなどを見まして、後日報告ということでよろし ゅうございますでしょうか。こういう効能を持っておりますので恐らく移行は良好なの だろうということは確認していると思いますけれども、調べた上で報告させていただき ます。 ○神谷委員 それで結構ですけれども、インフルエンザ菌のことが書いてあったので。 しかしこれには髄膜炎の承認はないですよね。それで今回このついでのときに一遍そこ のところはどうなっているのかと思いまして、それだけのことですからいつでも結構で す。 ○池田部会長 そのほかよろしいですか。ありがとうございました。それでは報告事項 については御確認いただいたものとさせていただきたいと思います。大変不手際で時間 が過ぎてしまったのですけれども、その他の事項として大切な事項がございますので、 もう少しお付き合いいただきたいと思います。それではその他の議題1に移りたいと思 います。この議題に関しましては冒頭に事務局から説明がありましたように参考人とし て勝俣先生と陳先生、牧本先生においでいただいております。よろしくお願いしたいと 思います。それでは事務局の方から説明をお願いいたします。大変申し訳ありませんが、 私ちょっと数分中座をさせていただいて、その間堀内先生に座長をお願いしたいと思い ます。 ── 勝俣参考人、陳参考人、牧本参考人着席 ── ── 池田部会長退室 ── ○事務局 それでは事務局から説明させていただきます。抗がん剤併用療法に関しまし ては、これまでいわゆる第1バッチと呼んでおります15の療法に関する報告書について 事前評価を行っていただき、これらの医薬品について既にアレディア注1品目について は承認が下りておりまして、残りの品目について現在審査が行われ、前回、今回の当部 会で御審議いただいたところでございます。今回事前評価をお願いいたしますのは昨年 平成16年11月24日に開催された抗がん剤併用療法検討会において了承された、いわゆ る第2バッチの五つの療法に関する報告書でございます。資料11-1〜11-5にそれぞれの 報告書を用意させていただいております。  それから資料11-4のエピルビシンに関する報告書でございますけれども、このものに 関してだけちょっと補足の説明をさせていただきたいと思います。資料11-4を御覧いた だきますと、1ページに予定用法・用量というのがございまして、ここにエピルビシン の用量として100mg/m2という記載になってございます。現在の承認が実は60mg/m2で ございまして、これはあくまでも今回乳癌のエビデンスを御評価いただきました結果、 100mg/m2について検討会の方でエビデンスが確認できたということでございますけれ ども、この申請企業といいますか、関係企業の方から100のみですと確かに効果は上が ることが期待できるのですが、同時に副作用の方も発現頻度が高くなるということで、 できれば用量については幅を持った記載にしてほしいという話がございました。そこの ところは後で勝俣先生からちょっと補足の御説明もいただきたいと思うのですけれど も、そういうポイントがございます。  それから追加資料といたしまして、本日配付いたしました資料11-4-2は今日勝俣先生 から御説明いただきますシクロホスファミドに関する補足の説明資料でございます。そ れから本日配付した資料11-6-1と11-6-2はメチルプレドニゾロンの資料でございまし て、これについては後で事務局の方から改めて説明させていただきたいと思います。よ ろしくお願いいたします。 ○堀内部会長代理 どうもありがとうございました。ちょうど部会長戻られました。 ── 池田部会長入室 ── ○池田部会長 大変申し訳ございません。それでは病気ごとに参考人の先生方から説明 をお願いしたいと思います。まず最初に小児領域について牧本先生、よろしくお願いい たします。 ○牧本参考人 小児領域は今回三つの報告書を上程させていただいておりますけれど も、私はシスプラチンとアクチノマイシンDで、日大の陳の方からカルボプラチンの報 告書(案)を上程させていただきます。時間も押しているようなので、できるだけ手短に いたします。まず私の方から小児癌のことについて若干の説明を加えたいと思いますの で、シスプラチン報告書の14ページを御覧ください。これは3報告書ともに載せてある データでございますが、表がございます。まず強調したいのは、小児癌というのは一ま とめにしても希少な疾患であるということを示すがためにこの表を取り入れてございま す。平成12年度の小児慢性特定疾患の事業というのがございまして、これは全国で発生 する18歳未満の小児癌であればほぼ80%以上の集積率があると思われるデータでござ います。これによりますと小児白血病とかリンパ腫を含んでも1年に合計3,000余りし か発生しないような疾患でございまして、それがまた更にいろいろな組織型に分かれて おりますから、なかなか大規模なスタディー、トライアルは困難であるという背景の下 に今回の報告書も眺めていただければと思っております。   二番目に、今回は三つの報告書(案)でともに小児悪性固形腫瘍の中のサブタイプを記 入してございますけれども、この表のうち肝芽腫と骨肉腫を除いては病理学的に小円形 細胞肉腫と言われるものでございまして、臨床的に使用される抗がん剤はかなり類似し ていると考えてくださって結構です。そしておしなべて抗がん剤の感受性が高く、放射 線治療、手術を併用して集学的治療を適切に行えば、米国などでは80%以上、日本でも 6〜7割以上の患者さんが長期生存されるという成績が出ている腫瘍でございます。し たがって、再発治療というのは残りのマイノリティーでございまして、予後不良ではあ るのですけれども、奏効率だけを見ますとセカンドラインの薬剤でも奏効いたしまして、 若干でも患者さんの利益を得られる可能性が高いと我々は理解しております。このよう な背景からほとんどの化学療法剤、古いものでカルボプラチン以前の世代のお薬はほと んど我々にとって使用経験のある薬剤と考えていただいて結構です。そこに書いてござ いますように、この表に対応する母集団は約2,500万人程度だと考えますので、固形癌 に限りますと2,000ちょっとということになります。1万人に1人ぐらいだということ です。第1バッチの方でも三つの薬剤を上程させていただきましたけれども、現行では 小児固形腫瘍というふうな適応が取れておりますものはビンクリスチン1剤でございま して、シスプラチン自体は神経芽腫という限定で付いておりますが、そのような薬剤だ けでこの小児固形癌を理想的に治療することは不可能でございますので、このような報 告書をお書きして、先生方の御意見を伺いたいと考えました。  シスプラチンの方に戻らせていただきます。1ページを御覧ください。今回はシスプ ラチンを含む多剤併用療法ということで、特に限定することなく書いてございます。予 定効能・効果といたしまして、小児悪性固形腫瘍(横紋筋肉腫、神経芽腫、肝芽腫その他 肝原発悪性腫瘍、髄芽腫など)と書いてございます。予定用法・用量としては、現行では シスプラチン90mg/m2を1日点滴静注というものが神経芽腫に対する効能として通って おります。ですから保険の範囲内でも小児の使用経験はありますし、神経芽腫というの は本当に0歳の赤ちゃんから10数歳、思春期まで発生し得る病気ですから、その辺の使 用経験は十分にあるものとお考えください。その上で現行使用量や文献的な考察を踏ま え、60ないし100mg/m2を1日点滴静注又は1日20mgを5日間、つまり全量を分割し て5日間投与ということで用量を設定しております。なお、投与量や投与日数は疾患、 症状及び併用する抗悪性腫瘍剤の投与量などに応じて適宜減量すること。また小児と申 しましても1歳未満、あるいは体重10kg未満というのはこの薬剤に限らず体重換算で計 算するような慣例になっております。それから未熟な腎に対しては腎障害がかなり強く 出ると経験されておりますので、1回投与量が80mgを超えるような例には3mg/kgなど、 投与量には十分配慮して行うということを付け加えております。  二番の公知の取扱いに移りますけれども、公表論文は上記に上げました4癌腫に関し ては十分にエビデンスがあるものと考えられる文献がヒットしております。先ほど申し 上げたように一つの国でも数年掛かって一つのトライアルというのがほとんどの場合で すので、全体の数というのは非常に少ないものですが、特にアメリカ、ヨーロッパでは 非常にデザインを工夫して統計学的にも十分に有意な、そして科学的にも重要な結果が 得られていると考えております。そして教科書とかレビュー等々に引用される論文も当 然この論文でありまして、ソースはほとんど全部同じだと考えてください。ですから同 じことを何遍も書いてあるような錯覚に陥るのですけれども、ソースがほとんどすべて 共有されているためで、教科書やNCIのPDQ、あとpeer-review journalの総説辺 りにほとんど同じことが書いてございます。要約いたしますと、肝芽腫に関してはシス プラチンとアドリアマイシンはファーストラインで標準治療として使われるお薬であっ て、その効果というのは長期生存あるいは治癒を得るというところを目指しております ので、まず問題ないところだと思っております。  それから横紋筋肉腫でございます。基礎的な実験、動物実験とかフェーズIスタディ ーにおいては横紋筋肉腫に有効であるということが分かっておりますけれども、米国の IRSというグループで精力的に調べられたのですが、このシスプラチンを使うことに 有意差はなかった。ただし、サブグループ解析において、特に泌尿器系原発の横紋筋肉 腫に関しては生存率のベネフィットがあった、あるいは膀胱の温存率が高まったという ような利益が報告されております。これは統計学的に有意に報告されておりますので、 サブグループ等々を考慮した場合にはこの横紋筋肉腫に対するシスプラチンが持つ意義 も高いと考えております。  髄芽腫に関しては、教科書的な記述としてシスプラチンというのは非常に重要なお薬 であるということと、また希少疾患でございますのでトライアルとして標準治療である とずばっと言い切れないところがございますけれども、すべての比較試験において必ず 使用される薬であることには間違いございませんし、実際に日本でも必要で欠くことが できない薬として使われております。  もう一つは神経芽腫でございます。これに関しては適用薬剤でございますのでそれほ ど強調することはございませんが、今のところ90mg1コースというのが上限でございま すけれども、ここを100mgまで上げていただきたいということで、これに関しては日本 からも英文誌に論文が出ておりまして、もう使用経験がある量でございます。実を申し ますとそれより多量のシスプラチンを日常で使っている例も多数報告されております が、報告書の中にはそこまで記載しておりません。日常では125mgを1コースで使うよ うな場合もございます。  本療法の位置付けをもう一度まとめますと、小児腫瘍というある意味がんの中ではち ょっと特殊な集団に対して、現行の承認薬剤のみではよい生存率を得ることは困難と思 われます。このような背景においては小児固形腫瘍の第一選択薬、あるいは第二選択薬 としてシスプラチンは非常に重要な薬剤でございますので、早急な適応取得が望まれる 薬剤の一つだと考えております。もちろん疾患において治療開発の方法も違いますし、 レジメンも変わってきまして一義にレジメンを決定することは不可能ですので、この報 告書においては幾つかの例を挙げるにとどめておりまして、併用療法を行っても先ほど 申し上げた用量の設定でほとんどすべての文献の用量の範囲に当てはまるものと考えて おります。これに関しては用量設定に関する記述を最後の7の投与量の妥当性のところ に書いてございますけれども、十分妥当性のある投与量だと考えております。  最後に安全性についてちょっと触れます。これは18ページの6の項に書いておりま す。これもまた冗長になっており申し訳ございませんが、大体多剤併用療法プラス放射 線、それから手術という強力な療法で治癒に持っていこうという目的で治療を行ってお りますので、ある程度の有害事象、あるいは副作用が出るのはやむを得ない前提で行う のが小児癌の治療でございます。そういう中で治療関連死亡というのは大体1%から高 いものでは5%、大体が1〜2%に収まっておりますが、報告されていると。それから 特にこのシスプラチンにおいては総投与量が増えましたら当然のごとく永続的な腎障害 が起こる可能性は否定できないということで、それを示唆するデータが書かれておりま すが、リスクとベネフィットの比をとりましたら全体としますと十分に相殺し得るもの と考えますので、あとは個々の小児腫瘍において十分経験を持った医師が使用するとい う限定を付け、さらに承認を頂いた後の市販後調査等々にも十分協力するという前提に おいて、適応取得に十分なデータであると考えております。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。続きまして陳先生、よろしくお願いします。 ○陳参考人 お手元の資料11-2を御覧ください。カルボプラチンの用量拡大ということ で説明させていただきます。予定効能・効果といたしましては、小児悪性固形腫瘍(神経 芽腫、ユーイング肉腫、網膜芽腫、肝芽腫、ウイルムス腫瘍、中枢神経系胚細胞腫)を予 定しております。初期治療としましては神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫、中枢神経系胚細 胞腫といたしました。ある程度治療法が確立されているユーイング肉腫、ウイルムス腫 瘍に関しては再発難治例といたしました。予定用法・用量ですが、ファーストラインと して使います神経芽腫、ユーイング肉腫、肝芽腫、更にセカンドラインとして使います ウイルムス腫瘍、中枢神経系胚細胞腫としましては、ICE療法としてカルボプラチン 635mgを1日点滴静注、又は400mg/m2を2日間点滴静注し、少なくとも3〜4週間休薬 する。なお、投与量及び投与日数は疾患や症状及び併用する抗悪性腫瘍剤の投与量など に応じて適宜減量するといたしました。さらに腎機能が低下している場合に関しては注 意して適宜減量すること。また年齢が1歳未満、若しくは体重が10kg未満の小児につい ては投与量に関して十分に配慮することといたしました。網膜芽腫に関しましてはビン クリスチンとエトポシド、カルボプラチンを併用療法といたしまして、560mg/m2を1日 点滴静注することといたしました。36か月以下の患児に関してはカルボプラチンを体重 当たり換算にするということにいたしました。  2の公知の取扱いに関しましては、(1)の無作為の比較論文、(2)の教科書に関して、さ らに4ページの(3)のpeer-review journalに掲載された総説、メタ・アナリシス、6ペ ージの(4)の学会又は組織・機構の診療ガイドライン、それぞれの疾患に関して使用され て有効であったというような報告がされております。総評としましては、以上の根拠か ら見てこれらの疾患に関して有効性、安全性は医学的な公知と判断できるとしました。  7ページの裏付けとなるデータでございますが、先ほど公知の取扱いの(1)に関して記 載いたしました論文を可能な限り副作用、合併症等も含めてそれぞれの疾患に関して記 載してございます。  続きまして15ページの本療法の位置付けでございます。先ほど牧本が申しましたよう に、小児の癌に関しては希少疾患でございますので十分な症例数の蓄積がございません が、本剤はほとんどの小児悪性腫瘍に関する第一ないし第二選択の併用療法に含まれる 薬剤と考えております。本剤が第一選択とならないユーイング肉腫、腎芽腫以外はいず れの疾患も複数の臨床試験によって本剤の有効性並びに安全性が確立されております。 ここにございます幾つかの論文に示しますように、本剤は第一選択療法で効果がない治 療抵抗例や再発例に対する効果も期待できる第二選択剤としても重要な位置を占めてお ります。更に本剤は同じ白金製剤であるシスプラチンと比較して治療効果は同等と考え られており、腎障害や聴力障害などの頻度は低く、治療蓄積毒性等でシスプラチンの継 続投与が困難な症例に関しても投与し得る薬剤と考えております。それぞれの疾患のカ ルボプラチンの位置付けに関して、16〜17ページにかけて記載させていただきました。 さらに18ページは国内における本剤の使用状況に関してですが、各疾患は希少な疾患で すので数例の症例報告等にとどまりますが、カルボプラチンの使用経験に関しては18〜 20ページに示しますように国内ではある程度十分使用されていると認知しております。  20ページの本剤に関する安全性の評価でございますが、やはり敗血症を始めとする重 症感染症などを合併する危険性が回避できない場合のみならず、合併症死による症例が 少なからず存在するため、本剤に関しては癌化学療法に十分な知識と経験を有する者の 慎重な観察が必要であると考えております。さらに再発例や難治例では以前にシスプラ チンなど腎障害性の薬剤が大量に投与されている患者さんもいらっしゃいますので、こ のような症例に関してカルボプラチンを使用する際には投与量、投与期間について十分 に留意すべきであると考えております。さらに本剤の排泄に関しては、GFRで既に報 告されていますように腎障害がある場合には本剤のAUCが高値となり、用量依存性の 血液毒性を招く可能性が十分に予想されますので、GFRによって本剤の投与量を決定 することが必要と考えております。安全性に関しては今20〜23ページにまとめて可能な 限り記載させていただきました。  25ページに行きます。本剤の投与量の妥当性に関してでございますが、海外でも代表 的な臨床試験のレジメンをここに記載させていただきました。26ページの上段の方に記 載してありますように、ICE療法としてフェーズI研究がアメリカのCCGで行われ ています。少量から始めまして、ICE療法におけるカルボプラチンの至適投与量をフ ェーズIで決定しております。中段になりますが、さらに別の群では年齢1〜17歳の腎 機能が正常な小児癌の患者さんについて本剤のAUCと体表面積当たりの投与量は直線 的に比例するというような論文も出ておりまして、体表面積当たりの投与量設定は科学 的に妥当であると考えております。  一方、米国のPOGというグループからも別のプロトコール、ICE療法でカルボプ ラチン635mgを2日間投与する方法でございますが、こういう研究も論文として出され ております。以上より、現在標準的に用いられている小児固形腫瘍に対するICE療法 としては、先ほど冒頭に述べましたように二つの用量を設定させていただきました。致 死的疾患である悪性腫瘍、並びに救命できる小児患者の割合を考慮し、報告されている ような治療合併死等の極めて低いことを考えますと、本剤の投与量は妥当と判断すると ともに、国内における本剤の使用状況をかんがみますと、適応拡大を行うことは妥当と 考えました。以上です。 ── 川嵜委員退室 ── ○牧本参考人 それでは引き続きアクチノマイシンDの方に入らせていただきます。資 料11-3を御覧ください。アクチノマイシンDに関しましては論文等々のエビデンスの状 況を見ますと、小児悪性固形腫瘍というよりはユーイング肉腫ファミリー腫瘍と横紋筋 肉腫、それからウイルムス腫瘍(腎芽腫)に限定されます。ウイルムス腫瘍に関しては現 在効能は承認されておりまして、こちらについては今回は用量の拡大ということでお願 いしたいと思います。ユーイング肉腫と横紋筋肉腫に関しては効能拡大ということが想 定された上でこの報告書を書いております。予定用法・用量でございますけれども、現 在の用法でウイルムス腫瘍に対する承認用量は下の分割投与法というものに一致するも のでございます。後で述べますようにユーイング肉腫ファミリー腫瘍や横紋筋肉腫、そ れからウイルムス腫瘍においても1回投与法というものが多用されておりますことか ら、今回この投与法を含めて効能としてはユーイング肉腫と横紋筋肉腫に拡大したいと いうふうな、ちょっと複雑な意味を持った報告書になっております。もちろん患者の状 態や併用薬、年齢等々によって適宜減量を行うということで記載しております。  2ページに移りまして公知の取扱いについてでございます。今度は3疾患のみでござ いまして、特にウイルムス腫瘍はこの用量に関した文献だけをとっております。ユーイ ング肉腫ファミリー腫瘍におきましては、既にアクチノマイシンDを含む抗がん剤がス タンダードレジメンとして使われている無作為化比較試験の論文もこのAの(1)のNew England Journal of Medicineに載っております。特に欧州、ヨーロッパの多施設臨床 研究でもう標準的な薬剤として使われており、その生存率のデータというのは先ほど申 し上げたように非常に良好なものでございますから、この薬剤の有効性に関しては疑い ようのない事実だと考えております。横紋筋肉腫に関しましても、「横紋筋肉腫と言え ばVAC療法」というのが抗がん剤の専門家であればだれもが覚えているレジメンでご ざいまして、ビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミドということで、 これもファーストラインとしてはゴールドスタンダードでございます。ウイルムス腫瘍 に関しましては既に保険の承認が取れておりますので、この用量に関しての検討になり ます。Cの(1)、(2)という論文は1回投与法と5日間投与法を比べますと、有効性と 安全性においては差はなかったけれども、前者の方がコストにおいてかなりの削減が見 込めたということと、それから当然入院期間が短くなりますのでQOLが高くなるとい うような意味合いの論文となっております。あと1回投与量の妥当性としては、ユーイ ング肉腫においても横紋筋肉腫においても同様の1回投与法というものが採用されてお りますので、この報告書において用量拡大と効能拡大のエビデンスを同時に呈示するこ とは可能だと考えております。先ほど申し上げたように教科書とかメタ・アナリシス、 peer-review journalに掲載された総説、それからNCIのPDQ等々におきましても 上記3癌腫に関しましてアクチノマイシンDというのはファーストラインで使われるお 薬ということが記載されておりまして、実際に論文にある投与量を見ましても先ほど呈 示いたしました予定用法・用量の範囲で収まるものであります。  ちょっと飛ばしまして、8ページの本療法の位置付けについてと書いてございますが、 9ページの方の真ん中より下の辺りでございます。アクチノマイシンDというのはユー イング肉腫、横紋筋肉腫に対して第一選択の併用療法に含まれる重要な薬剤であって、 早急な適応取得が望まれる薬剤の一つであると思われます。ウイルムス腫瘍においては 効能における承認はされておりますが、より効果的な治療のための用量拡大が望まれる と考えております。以上のようなことから、この薬剤はこの3疾患に関して非常に重要 な薬剤であるということは公知の事実だと考えております。当然のことながら国内にお いても広く使用されておりますが、残念ながら日本における小児癌のクリニカルトライ アルはいいものがなかなか少ないということがございまして、ほとんどがケースシリー ズ、あるいは1施設のレトロスペクティブ研究になっておりますけれども、記載からい たしましてもアクチノマイシンDという薬が日常的に使われているという状況を示して いると思われます。  6の安全性に関することも先ほどとちょっと重複いたしますけれども、3疾患とも非 常に良好な長期生存率を示す腫瘍でございますので、5%未満の治療関連死亡を報告す るものもございますけれども、国内で小児固形癌の十分な治療経験を有する医者に治療 されることによってそのリスクは最小化されると考えております。  そして、そこの12ページの「6.安全性に関する評価」に書いてございますが、これ が唯一の問題点かと思われます。既に保険承認が得られております腎芽腫の例等々にお きまして、肝中心静脈閉塞症を起こすという記載がございます。これは割合としてはご くまれな1%内外の発生率だと考えておりますし、またこれはシクロフォスファミドを かなり大量に使った例と併用した例に多く発生するという報告もありまして、その辺に おきましても、先ほどの十分に経験を積んだ医師に使用されることによってリスクが軽 減されると考えております。ただ、これは既にこの報告書以前に分かっていたものであ りまして、今回の使用に当たって新たな副作用、安全性情報があるということではござ いません。  最後に13ページの7でございますけれども、アクチノマイシンDのこの報告書に書い てございます予定効能の疾患、投与量の設定におきましては十分なエビデンスを持った 妥当なものと考えておりますので、御検討よろしくお願いいたします。 ── 川嵜委員入室 ── ── 折笠委員退席 ── ○池田部会長 ありがとうございました。ただいま牧本先生、陳先生からシスプラチン、 カルボプラチン、アクチノマイシンDに関して御説明いただいたわけですけれども、そ の御説明について特にエビデンスとして評価に足るかどうかを含めて御質問、御意見ご ざいますでしょうか。どなたか御質問ございますか。 ○堀内部会長代理 一番最後のアクチノマイシンDについては、併用療法と言っても単 独での申請と考えてよろしいですか。 ○牧本参考人 併用療法でございます。 ○堀内部会長代理 単独ではやらないという意味ですか。 ○牧本参考人 単独でやっている例はほとんどございません。経験上もございません。 ○堀内部会長代理 そうですか。予定用法・用量のところにはアクチノマイシンDの単 独の話しか書いていないのですが。 ○牧本参考人 これに関しては抗がん剤併用療法検討委員会の方で事前に検討されまし て、以前は予定用法・用量のところに論文のエビデンスから抽出されたものを幾つか挙 げておいたのですが、今回はちょっと後ろに移動させようということになりまして、8 ページの上の方に書いてございます。これに関してはその他の薬の用量設定とかいろい ろな問題がございまして、記載箇所を変更したということがございます。これはあくま で参考であります。 ○堀内部会長代理 実際に投与する場合にはこのVAC療法あるいはEE4A療法で行 うということですね。 ○牧本参考人 そうです。 ○堀内部会長代理 分かりました。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。どうぞ。 ○神谷委員 質問というわけではありませんけれども、これらの薬は小児科領域では十 分使われている薬ですし、今の御説明のように内容的にはいろいろなところである程度 使い方が違っておりますが、それをまとめていただいて今回御提案になっているこの内 容については私は非常に妥当だと考えますので、これでよろしいのではないかと思いま す。 ○池田部会長 ありがとうございます。そのほかの委員の先生方、よろしいでしょうか。 非常によくおまとめいただいて、今神谷委員からも妥当だという御意見も頂きましたけ れども、そのほか特にございませんか。特にないようですので、それでは牧本先生、陳 先生ありがとうございました。  それでは残りの報告書について、もうしばらく先生方にお時間を頂きたいと思います。 勝俣先生、お願いいたします。 ── 陳参考人、牧本参考人退席 ── ○勝俣参考人 私は最初にエピルビシン、乳癌のEC療法、CEF療法について説明さ せていただきます。療法名に関してはエピルビシン/シクロホスファミド併用療法(EC 療法)、あるいはシクロホスファミド/エピルビシン/フルオロウラシル併用療法、フルオ ロウラシルを追加したCEF療法とEC療法であります。未承認用法・用量を含む医薬 品名はエピルビシンで10〜60mgから1回量が100mg/m2にして3週間投与とするもので あります。レジメンに関しましては1ページに記載しておりますように、EC療法がエ ピルビシン100mg/m2とシクロフォスファミドを600mg/m2、CEF療法に関してはシク ロフォスファミドが500mg/m2、エピルビシンが100mg/m2、フルオロウラシル500mg/m2 です。  このレジメンを提案するに至った公知の取扱いについて、そこに論文を記載しており ますが、大きな論文といたしましては一番最初のLevine、Journal of Clinical Oncology に書かれた従来の乳癌の術後補充療法の標準治療とCNF、CEF療法を比較し、CE F療法が上回ったという論文であります。二番目のFrench Adjuvant Study Groupも Journal of Clinical Oncologyです。具体的には後ほど説明いたしますけれども、これ はCEF療法のエピルビシンの投与量50mgと100mgを比較した論文でありまして、 100mg/m2の方が生存率で優っていたというものであります。三番目は3群の比較試験で ありまして、これはEC療法の二つのドーズレベルとCMF療法を比較した論文でござ いますが、EC療法の100mgの方が60mg/m2を上回ったというものでございます。その 後書かれているのは、エピルビシンはアドリアマイシンと同じアントラサイクリン系の 薬剤でありますけれども、アントラサイクリン系の薬剤として十分にエビデンスがある ということで教科書、メタ・アナリシス、又は学会のガイドラインなどに示されて広く 知れわたっているということになります。  総評といたしまして、(1)としてCEF療法とCMF療法を比較した試験というのは 幾つかあり、一部の論文ではCMF療法よりも良好な成績も得られておりますが、EC 療法とCEF療法は従来の乳癌の標準治療とされておりますCMF療法に比べて大部分 は生存期間に有意な差は認められてはおりません。この結果からCMF療法と比べても 遜色ないデータであるということが考えられます。その後に、ではCEF療法、EC療 法のエピルビシンの投与量はどのくらいになるだろうかということで、これは先ほど御 紹介しました二つの大きな比較試験があります。その一つはCEF療法としてエピルビ シンの投与量50mg/m2と100mg/m2の比較試験がございまして、100mg/m2の方が良かった と。またEC療法でもエピルビシンの60mg/m2と100mg/m2の比較試験が行われて、 100mg/m2の方が良かったと。この二つのエビデンスレベルIの比較試験を基に、CEF 療法、又はEC療法を使用する場合にはエピルビシンの投与量は100mg/m2が妥当だろう と判断しております。3ページの裏付けとなるデータに関しましてはそれぞれの論文に 詳しく述べられております。  一つ懸念するところは安全性のところだろうと思いますけれども、100mg/m2とした場 合に毒性が強くなるというところでちょっと御説明したいと思います。後ろの方に行き まして、17ページの安全性に関する評価というところでありますけれども、やはりEC、 CEF療法でエピルビシンを100mg/m2にした場合には、悪心・嘔吐、脱毛、白血球減少 とか発熱性好中球減少が増加することが懸念されております。多くの論文で検討されて おりますが、確かに非常に重篤な有害事象は増加するわけでありますけれども、それで 治療関連死が増えるとか、非常に重篤な有害事象があってフィージビリティーがないと いう判断には達しておりません。またCEF療法100mg、EC療法100mgに関しまして は国内でも相当数の経験がありまして、がんセンター東病院、中央病院でもCEF療法 をかなりの数行っておりますけれども、有害事象が非常に多くてフィージビリティーが なかったという判断には至っておりませんので、CEF療法、EC療法100mgは日常診 療でも十分にやっていけるフィージビリティーがあると判断いたします。ただし、やは り従来のCEF療法、EC療法よりは有害事象が増えますので、化学療法を熟知した医 師がしっかりと管理を行うことが望ましいと考えられます。  エピルビシンに関しては以上ですが、補足資料といたしまして資料11-4-2に乳癌の術 後化学療法におけるシクロホスファミドの投与量についてというものがあります。CE F療法にした場合ECの600mg/m2が妥当であるという補足でありますが、このシクロホ スファミドを600mgとした理由に関しましては、もともと乳癌ではCN下と並んでもう 一つの標準的レジメンであるAC療法というものがございまして、AC療法におけるシ クロホスファミドの標準的投与量が600mgとされております。600mgと600mg以下の少 ない量での比較試験はございませんけれども、そこに記載してあります600mgと 1,200mg、2,400mgを比較した試験では生存率の改善は認められなかったということで、 AC療法でのシクロホスファミドの妥当な投与量は600mg/m2と判断されるに至ってお ります。そのようなエビデンスから、EC療法でもエピルビシンとシクロホスファミド にした場合にはエピルビシンが100mg/m2、シクロホスファミドは600mg/m2の組合せと した理由であります。CEF療法にした場合はフルオロウラシルが入ることもありまし て、シクロホスファミドが600mg/平方メートルではなくて500mg/平方メートルを通常用いております。以上で す。 ── 神谷委員退席 ── ○池田部会長 ありがとうございました。 ○勝俣参考人 もう一つデキサメタゾンに関して報告いたします。未承認効能・効果を 含む医薬品のデキサメタゾン又はリン酸デキサメタゾンナトリウムであります。予定効 能・効果は抗悪性腫瘍薬投与に伴う消化器症状であります。従来デキサメタゾンは消化 器症状の予防に対しては承認が得られておりませんでした。予定用法・用量といたしま しては、デキサメタゾン内服、注射とも1日4〜20mgを1〜2回分服する、又はその範 囲内で1日1〜2回静注ということであります。  2ページに行きまして、デキサメタゾンの抗がん剤に対する正当用法の無作為化比較 試験等の公表論文、以下教科書、メタ・アナリシス、ガイドラインに関して一番大きな エビデンスとしては5の総評に記載しております。これは5,613例、32の比較試験のト ライアルをまとめたデータでありますが、デキサメタゾン投与群とデキサメタゾン非投 与群を比べた比較試験の大規模なメタ・アナリシスです。これらを総合して見ますと、 デキサメタゾンを投与した群に関しまして制吐効果が上回っていたということでありま す。多くの論文では用法・用量がデキサメタゾンの内服、又は静注で1日量4〜20mgを 投与されております。国内の公表論文に関しましては5ページに記載しております。デ キサメタゾンは古いお薬ですので、国内でも昔からエビデンスがたくさんある良薬であ りまして、特にシスプラチンなど非常に吐き気が強い抗がん剤に関しましては広く一般 的腫瘍に行われている現状にあります。国内での比較試験もShinkaiらによって報告さ れておりますけれども、これはデキサメタゾン以前の従来の制吐剤でありますメトクロ プラミドとデキサメタゾンの比較試験であります。これはデキサメタゾンを1回投与前 に16mg、その後8mgを3回投与するという投与方法でありますけれども、この結果にお いてもデキサメタゾンはメトクロプラミドに比べて有効であったと報告されています。 また、同じ論文の中にShinkaiらはメトクロプラミド+プラセボ対メトクロプラミド+ デキサメタゾンの比較も行っておりますが、この結果でもデキサメタゾンを加えた方が 有効であったと報告されています。  最後の8ページに行きまして安全性に関する評価であります。抗がん剤と併用してい ることもありまして、デキサメタゾンのみの有害事象を引き出すことは非常に難しいと ころもあるのですが、また多くの論文で報告されているのは高血糖、眠気、頭痛、熱感、 悪感、口腔乾燥などがありますけれども、全体的に軽微であると思われます。しかしス テロイド投与による高血糖や消化器症状には十分注意を有する必要がありますので、コ ントロール不良の糖尿病や消化性潰瘍の既往のある患者は投与を避けるべきであると思 われます。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。勝俣先生からエピルビシンとシクロホスファ ミド、デキサメタゾンについて御報告いただきましたけれども、いかがでしょうか。た だいま御紹介いただいたエビデンスとしての評価はよろしいでしょうか。何か御質問ご ざいますか。事務局の方からお願いします。 ○事務局 エピルビシンの用量100mg/m2の部分でございますが、今の勝俣先生のお話の 中で副作用は増えるけれども、重篤な副作用や治療関連死が必ずしも増えているわけで はないというお話がございました。ただ現行の承認の用量は60mg/m2でありまして、今 回はそこから増やしていくという方向ではございますけれども、100mg1本のみでよろし ゅうございますでしょうか。その点だけちょっと御討議いただきたいと思います。 ── 後藤委員退室 ── ○池田部会長 いかがでしょうか。60mgから100mgの間の幅を持たせた方がいいのか、 あるいはドーズをある程度規定した方がいいのかということでございますけれども、吉 田先生、これはどうでしょうか。 ○吉田委員 これは5-FUのときも古いドーズは残していないですね。ですから上のド ーズだけでいいのではないですか。 ○池田部会長 そのほかの先生いかがですか。エピルビシンは古いのはほかでは60mg で承認されているのですか。 ○吉田委員 そうですね。 ○池田部会長 いかがでしょうか。余り幅を持たせなくてもよろしいということですか。 ○吉田委員 もし懸念があるのであればあとは企業の方で調べさせて、現状基準を考え るということでもいいかもしれません。 ○池田部会長 そういうことでしょうね。ではそのように企業の方と相談していただけ ますでしょうか。 ○審査管理課長 検討させていただいて、また上程のときに。 ○事務局 それはちょっと検討させていただきまして、それを抗がん剤併用療法の検討 会座長の黒川先生にも御相談をさせていただきたいと思っております。それを検討する ということを前提に今日は事前評価は通していただいて…。 ○池田部会長 そうですね。事前評価についてはよろしいでしょうか。ありがとうござ いました。勝俣先生、どうもありがとうございました。それでは事前評価については承 認いただいたということで、事務局の方から何か。 ── 勝俣参考人退席 ── ── 後藤委員入室 ── ○事務局 あと本日お配りしました資料11-6-1と11-6-2について、時間もございませ んのでポイントのみ御説明させていただきたいと思います。資料11-6-1は昨年の8月 27日に本部会で事前評価を頂きました悪性リンパ腫に対するシスプラチンの報告書で ございます。それから資料11-6-2は資料11-6-1の報告書中に記載されておりますメチ ルプレドニゾロンに関する補足の説明資料でございます。今回この二つの資料を追加で 御用意いたしましたのは、以前事前評価を頂きましたときには資料11-6-1のタイトルに もございますように悪性リンパ腫に対するESHAP療法のうちの特にシスプラチンに焦点 を当てて御議論、御確認いただいたということでございます。その1ページの下の方に CDDP療法において参考となる薬剤の組合せというのがございまして、メチルプレド ニゾロンというのが挙がっておりますけれども、これも実は悪性リンパ腫に関しては適 応外であったということが後で分かりました。それで昨年11月の抗がん剤併用療法検討 会におきまして、このメチルプレドニゾロンについてどの程度のエビデンスがあるのか、 いつごろから使われているのか、そういうところを再度御確認いただきました。その資 料が資料11-6-2でございます。  この資料11-6-2は愛知がんセンターの小椋先生に御用意いただいて、その検討会で御 説明いただいたものなのですけれども、上から二つ目のパラグラフですが、「本報告書 は、悪性リンパ腫に対する多剤併用化学療法の構成薬品としてmethylprednisoloneが使 用されている経緯、状況を、公表論文から調査したものである」ということでございま す。1.のパラグラフの一番下に「○ ESHAP療法が、Velasquez WSらによって公表され たのは1994年である」ということでございます。それから2以下にいろいろと文献の報 告をまとめていただいていますけれども、80年代からメチルプレドニゾロンの使用の報 告が様々あると。それから2枚目の6の下のところでございますけれども、「○ ESHAP の報告以後も、methylprednisoloneを組み込んだ、リンパ腫治療レジメンは幾つか報告 されている」ということでございまして、一番下ですけれども、ステロイド製剤は「抗 腫瘍効果を期待するとともに、その制吐作用、抗炎症作用を目的としてほとんどのリン パ系腫瘍に対するレジメンの構成薬として採用されてきている。methylprednisoloneも こうした目的で、1980年代から悪性リンパ腫に対する多剤併用化学療法の構成薬品とし て広く使用されてきた状況である」と。検討会の方ではエビデンスは十分にありますと いうことで御了承いただいておりますので、本日改めて部会の方にも御報告させていた だこうと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。特に御意見ございませんね。よろしいですか。 これは今までも慣例的に使われているということですので、メチルプレドニゾロンの使 用についてはよろしいですね。ありがとうございました。 ○事務局 ではこの分につきましても御了解いただいたということで、関係企業の方に 対しまして承認内容の一変申請をするように指導させていただきたいと思います。 ○池田部会長 どうぞそうしてください。それではただいま事前評価についてすべて御 承認いただいたということで、今後は関係企業から承認申請がされて、その後また第二 部会で取り扱われることになりますので、その際はよろしくお願いしたいと思います。 私の不手際で時間が大幅に遅れて大変御迷惑をおかけしましたけれども、事務局から何 か報告はございますか。 ○事務局 最後に新薬の承認について簡単に御報告させていただきます。昨年の10月8 日に本部会で御審議いただきましたアレディア注の乳癌の溶骨性骨転移の効能について は11月26日付けで承認しております。また11月26日に御審議いただきましたレクシ ヴァ錠とエプジコム錠については、12月24日付けで承認いたしましたので報告をさせ ていただきます。それから次回の日程でございますけれども、2月24日木曜日の14時 からとなっておりますので、よろしくお願いいたします。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。1時間ほど延長しまして大変御迷惑をおかけ しました。それでは本日はこれで終了させていただきます。長い間本当にありがとうご ざいました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734)                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      - 1 -