05/01/19 労働政策審議会雇用均等分科会第40回議事録            第40回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成17年1月19日(水)14:00〜16:00 2 場所: 経済産業省別館 827号会議室 3 出席者:    労側委員:岡本委員、片岡委員、篠原委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員    使側委員:川本委員、吉川委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員    公益委員:若菜会長、今田委員、奥山委員、樋口委員、横溝委員 ○若菜分科会長  それでは、「第40回労働政策審議会雇用均等分科会」を開催いたします。本日は公 益委員の佐藤委員と山崎委員が欠席です。  本日の議題は、「男女雇用均等対策について」、「その他」の2つです。本日は都合 により「その他」の議題から入りたいと思います。関係資料は資料No.3から資料No.5 までで、いずれも報告事項です。  最初に雇用保険法施行規則の一部改正関係資料について、事務局からご報告をお願い いたします。 ○生田職業安定局雇用保険課長  資料No.3により説明します。雇用保険法施行規則の改正は育児・介護休業給付の施 行に係る部分ですが、その経緯と結果について御報告します。この問題については、労 働政策審議会の職業安定分科会の雇用保険部会で今月12日と14日に議論がなされ、ま た、職業安定分科会で14日に議論をいただき結論を得ているところです。この際には、 この均等分科会で議論いただいた結果を雇用保険部会に伝えてほしい旨均等分科会の事 務局からお話があったことから、今月12日の雇用保険部会において、均等分科会の議事 録を配付し、これを念頭に置いて御議論をいただいております。  結論を先に申し上げますと、厚生労働省(案)がおおむね妥当と認めるという結論で す。諮問しました内容は、資料の4〜5頁にあります雇用保険法施行規則の要綱です。 ただ説明の便宜で、この要綱を横書きにして説明しやすくした資料があります。それが 6〜8頁で、これにより説明させていただきます。  この議論の前提として、育児・介護休業法の改正時に雇用保険法の改正をしており、 その雇用保険法の改正時の雇用保険部会、あるいは職業安定分科会の議論がありました ので、それを最初に説明します。資料は9〜12頁です。9頁に昨年1月8日の雇用保険 部会の報告書の概要がありますが、概要では分かりにくいところもありますので11〜12 頁の本体のほうで説明します。  本体の11頁、2つ目の○の所「今般労働政策審議会、雇用均等分科会において育児休 業制度及び介護休業制度について法的整備を求める報告が取りまとめられた」。これを 受けて次の○で「このような改正に伴い、新たに育児休業又は介護休業の対象となる場 合について、育児休業給付及び介護休業給付によって育児休業及び介護休業を取得しや すくし、その後の円滑な職場復帰を援助、促進する必要性もあるものと考えられる」 と、改正の必要性についてコメントしております。  その後、次の○で「一方、雇用保険制度は、当部会の昨年12月18日の報告書に基づ き、当面する財政破綻を回避するとともに将来にわたり制度の安定的運営を確保するた め、給付・負担の両面にわたる見直しを行い、本年5月1日から施行したところであ り、このような中で、今般育児休業給付制度及び介護休業給付制度の改正を行うに際し ては、「雇用継続を援助・促進する」という雇用保険制度の一環として制度化された制 度本来の趣旨を十分踏まえるとともに、改正によっても、基本的に財政的に中立となる ような配慮が必要である」という指摘があります。この部分は前回の法改正、これは一 昨年の5月1日から施行されておりますが、ここでは失業者に対する給付、中心が基本 手当ですが、それについて大幅な給付の削減を行ったこと。あるいは、高年齢雇用継続 給付、教育訓練給付の給付も大幅に削減をしております。その中で、育児休業給付と介 護休業給付のみが、一切手を触れずに残っている状態でした。一方では保険料の引上げ も行われたということです。  そうした中で、見直しを行うに当たりましては、保険料負担者のご理解を得ること、 他の給付とのバランスが非常に重要であることがまず念頭にあります。もう1つは、 「雇用保険制度の一環として制度化された制度本来の趣旨を踏まえる」とあります。こ れについては、育児休業給付制度あるいは介護休業給付制度自体が、雇用保険の体系の 中では雇用継続給付という整理になっています。雇用継続給付というのは、雇用保険は あくまで失業者に対する給付が中核であることを前提に、失業者に対する給付を出さず に済む、節約できると。雇用継続をしていただき失業者の給付を防ぐことが実現できる ものに対して、雇用継続給付を支給するというのが制度の考え方で、その中で整理をす る必要があるという意味です。そうしたことを前提に議論がなされました。  12頁は法律段階での議論ですが以下のように整理されています。4項目あり、(1) 育児休業給付の給付期間の延長の問題です。これについては育児休業期間の延長に合わ せて対応するとなっております。今日説明する中でも、保育所に入れない等特別の事情 がある場合、というのを雇用保険法施行規則で定めております。これについては、育児 ・介護休業法の内容と全く同じにするという整理を雇用保険部会でもしています。(2 )介護休業給付の受給回数の見直し。これは法律ですでに決着がついていますが、これ についても緩和されることに合わせて受給回数を見直すということで、全く同じ横並び の改正を雇用保険法の本体でしております。  (3)期間雇用者の適切な取扱い。これは(1)(2)と表現が違っており、育児・ 介護休業法の改正により期間雇用者に休業の権利が付与されることになるが、これに対 応し、そのような者のうち、「雇用継続を援助・促進する」という、雇用保険制度とし て制度化された制度本来の趣旨に適う者について給付が行われるよう必要な措置を講ず るという考え方です。つまり、雇用継続給付の趣旨に適う者に出すという整理です。こ の部分が今日説明する省令事項です。(4)端数期間の処理の見直し。育児休業給付あ るいは介護休業給付を月割りで出していますが、1カ月で切っていくと最後に端数が5 日とか3日とか出ます。従来は3日休んだ場合も1カ月分を出していましたが、これを 日割りにして3日分だけ出すという整理にしたものです。これも法律で決着がついてお り、今日説明するのは(1)と(3)に関わる部分です。  資料6頁に戻っていただきますと、1は育児休業給付の給付期間の延長です。これは 先ほど申しましたように、育児・介護休業法施行規則の改正と全く同内容です。これは 均等分科会で議論をいただいておりますので説明は省略いたしますが、こういう事項が 起きたときに、育児休業給付の給付期間も1歳半まで延長するという整理です。2は期 間雇用者の取扱いです。最初の4行は法律レベルでこの問題について決着したときの整 理の仕方で、その下の○の部分を、省令で書くことになっております。  読み上げますと、「労働契約の期間、期間の定めのある労働契約の更新の見込み、被 保険者がその事業主に引き続き雇用された期間等から見て、休業終了後相当期間の雇用 の継続が認められるものであること」。省令の書きぶりだとこのような感じになります が、具体的には次の7頁に「期間雇用者の具体的な要件について」ということで整理し ています。これは、業務取扱要項が雇用保険にあり、局長通達のレベルで記載する事項 です。具体的には次のいずれかを満たす場合について、期間雇用者に給付を支給すると いうものです。(1)育児休業終了後、同一事業主の下で労働契約が更新され、3年以上 雇用が継続することが見込まれており、かつ、休業開始時において同一事業主の下で1 年以上雇用契約の実績があること。(2)休業開始時において同一事業主の下で労働契約 が更新され、3年以上雇用が継続しており、かつ、休業終了後同一事業主の下で1年以 上雇用が継続することが見込まれること。  この点については8頁に図で分かりやすく示しています。この図で育児休業の範囲と の違いについて説明します。育児休業の詳しい説明は省略しますが、申し出前1年間雇 用されている、2歳まで雇用が見込まれることが要件になっています。育児休業給付 は、先ほど(1)(2)で説明したものを図示しており、上のほうは休業開始前1年間の雇用 継続の実績があって、休業終了後、職場復帰後3年間の雇用継続が見込まれるというも の。下のほうは、休業前3年間の雇用実績があって、休業終了後、1年の雇用継続が見 込まれるもの。この育児休業給付の支給要件は上のほうが基本になります。  常用雇用労働者の育児休業給付の支給要件は、休業開始時に1年以上の雇用実績があ ること、これは全く同じで、正確に申しますと、休業前2年間に11日以上働いた月が12 カ月以上あることが正確な要件で、それと同じ要件がこの要件です。職場復帰後は、常 用雇用労働者ですからずっと働くことが見込まれますが、期間雇用者については3年以 上見込まれることで支給しようという考え方です。  下のほうは上とのバランスで設定したもので、休業終了後1年間の見込みがある、要 するに育児休業の取得範囲と近い要件になるわけですが、正確に範囲を設定するのは難 しく、休業終了後という形になっております。休業終了後1年の雇用見込みがあるとき は、過去に3年間の勤務実績があれば、1年間の雇用見込みであっても更に継続する可 能性が高いだろうと、あるいは保険料面での貢献が高いだろうということで、こういう 者については対象にするという考え方です。このような要件にしたのは3つの理由があ ります。  1つは、雇用継続給付の趣旨そのものからくるものです。先ほど申しましたように、 失業して失業給付を出すよりは、雇用継続をして働き続けてもらったほうがいいだろう と。そのために、雇用保険制度の中では、相当手厚い育児休業給付を出しています。失 業給付は90〜330日出ますが、育児休業給付は、今回の改正で最大540日出ます。給付率 も、本体の給付が50%に落ちている中で、育児休業給付は40%です。社会保険料等の本 人負担の免除もありますので、雇用保険制度の中では、相当手厚い給付になりますが、 これを出す理屈として、失業給付を出さないで済むことが非常に大きいわけです。出さ ないで済むことをどこまで見るのかについて線を引く必要があるというのが最初の理由 です。  2つ目は、保険制度である以上、保険料を納めた実績、あるいは今後保険料を納めて もらう期待が要求されるということです。常用労働者は休業復帰後ずっと納めてもらえ る期待感があるわけです。期間雇用者は個々様々ですが、ある程度の方まで、やはり支 給対象にしないと期間雇用者の保護にならないということで、3年のところで線を引 き、それ以上の方は給付対象にするという整理です。  3番目には濫用の危険の問題があります。これは特に事業主側の委員からご主張があ った点で、仮に育児休業の範囲と同じように、2歳まで雇用がつながることを前提に給 付を設計することになると、育児休業給付自体は1年半、最大出ることになりますの で、1歳半まで30%の給付がずっと出ます。また、職場復帰して6カ月経ったところ で、復帰後給付が10%掛ける休業月数分出ます。1歳半まで休業給付を支給し、6カ月 経ったところ、2歳のところで復帰後給付を支給してすぐ辞める方に育児休業給付を出 すことになるわけです。これは労働者や事業主がどういう行動をとるかにもよります が、休業開始時点でもともと辞めるはずだった方が、休業ということにして休業給付の 支給を受け、即座に辞めることが制度上想定されてしまうので、それ自体を避ける必要 がある。この3つの理由から今回は、こういう形で整理されました。  3年については雇用保険の世界で、期間雇用者でどういう方について常用労働者に準 ずるような保護を図るかについて1つ基準があります。雇用保険法施行規則第35条第7 号に、雇用保険の失業給付については、倒産解雇は給付日数が多く、それ以外の理由、 期間満了や自己都合の場合は給付日数が少ないです。その仕分けをする際に、期間雇用 の方でも給付日数を手厚く出す、倒産解雇等と同じに扱う基準があります。要するに、 期間満了も常用労働者の解雇と同じように扱うという基準があり、その基準は「期間の 定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において、 当該労働契約が更新されないこととなったこと」です。これに該当する場合は、倒産解 雇等と同じように扱うというものです。この3年を援用して、職場復帰後3年程度雇用 の継続が見込まれればいいのではないかとするものです  この議論をした際に、やはり労使公益委員からいろいろなご意見があり、最終的に雇 用保険部会から職業安定分科会に報告する際に、雇用保険部会の審議の経緯を併せて報 告することになりました。それが13頁の資料です。これは雇用保険部会の最終段階で諏 訪部会長にまとめていただいた内容そのままのものです。「育児休業、介護休業等、育 児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う 雇用保険法施行規則の一部改正については、本年1月12日及び同月14日の当部会の審議 の結果、省令案要綱として、別添の厚生労働省案がおおむね妥当であるとの結論を得 た。また、当部会としては、育児休業期間中等の所得保障の在り方について、雇用保険 制度以外の制度で対応することも含め、関係部局において検討することが適当であると いうことで意見の一致をみた」とあります。  この「また」書きの部分は、公労使の委員とも、育児休業期間中等にいろいろな事態 が想定されるわけですが、それらについてすべて雇用保険で対応しろと言われてもなか なか難しい面がある、そういう実態にあることを十分理解してほしいという気持が整理 されたものと考えています。また「なお」書きは、「質疑において事務局回答により以 下の事項が確認された」ということで、2つのことをすることになっております。1つ は上の○で、「本来育児休業給付の支給を受けることができる育児休業取得者につい て、その支給が阻害されることにならないよう、支給申請に係る様式等の関係手続につ いて工夫するとともに、その周知徹底を図る」ということです。これについては「3年 の雇用見込み」ということが重要ですが、これは雇用の可能性があるということで整理 しています。このことについて正確な事実を事業主に知っていただくことを前提に、簡 単な手続で支給が受けられるようにしようと考えています。  それには3つの工夫があり、1つは、先ほど説明した2つの要件を様式の中に書い て、それで事業主の方にどちらかに○を付けてもらう。その中身は先ほど申した3年の 雇用見込みがある、あるいは1年の雇用見込みがある、これに○を付けていただくとい うことです。2つ目は、休業前の状態がおおむね継続することを前提とした記述を事業 主の方にしていただく。休業前の状態がおおむね継続するというのは、事業所の経営状 況、労働者本人の能力や勤務態度が継続することを前提に○を付けていただく。それが 変われば雇用が継続しなくても事業主の方は約束違反をしたことにならないので、事業 主の方は安心して手続ができるだろうということです。3つ目は、雇用見込みは労働契 約と直接リンクしないことをはっきりする。対象労働者の雇用継続を保証するものでは ないことをはっきりと様式の中に書く。これは労使委員の方両方とも、そうしたほうが いいというご指摘でしたので、そういう形で整理しました。これが最初の○です。  次の○は見直しをするということです。期間雇用者に係る育児・介護休業給付の施行 状況を的確に把握するとともに、これに基づき速やかに必要な見直しの検討を行うとい うことです。ひとわたりの状況が把握できれば、速やかに見直しの検討をしたい。期間 雇用者の育児・介護休業自体がどうなるかがそもそも見えない中で、給付自体がどう行 われるかが同様に見えない訳ですから、ある程度わかったところで早急に見直しをやろ うということです。 ○若菜分科会長  いまのご説明について、ご質問がありましたら、どうぞ。 ○吉宮委員  前回の均等分科会で私から、労側全体が育児・介護休業の制度が適用される方に、そ のまま給付金が出るようにしてほしいということで、そのところを踏まえて雇用保険部 会で議論していただくよう、当分科会が要請していただきたいということでやった結果 がいま課長から報告された内容で、私自身は非常に、結論についていろいろ意見がある ところです。それは別にして13頁の審議経緯の所について意見というか、1つ申し上げ たいのです。  どちらにせよ、育児・介護休業制度に伴う給付と違う基準で雇用保険で適用するとい うことは、雇用保険財政などを考慮して、そのようにしたというのが理由にありまし た。その上で審議経緯を見ますと、雇用保険制度以外の制度で対応することも含めて、 関係部局において検討することが適当であるということで三者一致したと。私も前回の 分科会で育児休業給付制度の在り方について、以前からも申し上げてきたし、今後も検 討するようにと言ったのですが、その意味合いは、お金がなくなったから適用対象者を 狭めるとか、新しい制度を作ってもですよ。あるいは、40%の水準を下げるとか、そう いうことの見直しでは3者一致という、少なくとも労働側の雇用保険部会の委員は、40 %を下げたり、あるいは、休業給付制度が別の制度ということでもう知らないよと、そ ういう見直しではないと思うのです。  検討案が適当であるということは、仮に新しい制度ができない場合は、雇用保険の財 政で引き続き、現行の仕組みで維持するということだと私は思います。そういうことが ここでは見えないので、私は最近の政府の少子化対策等を考えますと、当然所得保障は 欠かせない要件ですので、政府は雇用保が大変だから知らんよ、ということにならない ように私はしていただきたい。 ○若菜分科会長  ほかには、ご質問、ご意見はありますか。特になければ、あとの議題もありますの で、この件についてはこれまでとして、次の議題に移らせていただきます。  次は、平成17年度雇用均等・児童家庭局予算(案)の概要及び子ども・子育て応援プ ランについて、ご報告をお願いします。 ○高井総務課長  資料4と資料5です。まず資料4は、平成17年度の雇用均等児童家庭局予算(案)の 概要です。「次世代育成支援対策の更なる推進と公正かつ多様な働き方の実現」という 見出しを付けております。内容はこの2つですが、2頁に局予算の総額が書いてありま す。来年度、局合計で1兆1,170億円、6%の伸びになっております。今回の予算では、 いわゆる三位一体の改革、国と地方の補助負担金の見直し等を含む三位一体の改革によ る補助負担金の再編をいたしております。その中で大きいものは、3頁の次世代育成支 援対策交付金(ソフト交付金)の創設です。補助負担金の改革として、いろいろな事業 に対する補助金を再編整理しました。「地域の特性、創意工夫を活かした子育て援助事 業、その他の事業に支援する」という形の交付金に幾つかの補助負担金を再編したとい うことです。  5番の「重点配分となる事業」は、子育て関係の、つどいの広場事業、ファミリー・ サポート・センター事業等、あるいは保育所の延長保育について、この中で対応するた めに再編したものです。4頁はいまの内容の絵です。5頁は、同じような交付金で保育 所等の施設を整備する交付金を作りました。二重括弧の中にありますように趣旨は大体 同じです。整備費について、地域の実情に応じた対応ができるようにということで作っ たものです。  趣旨は違いますが7〜9頁は細かいですので見出しだけをご覧いただければと思いま す。同じく補助負担金の再編合理化ということで、児童虐待、家庭内暴力、DVの関 係、母子家庭の問題、母子保健医療の関係です。これは従来の補助金を大括りして地方 の使い方をしやすくする、いわゆる「統合補助金」と呼んでおりますが、そういった形 で大きく3本の事業に組み直したものです。  10頁以降は分野別の内容です。10頁は地域の子育て支援で、ソフト交付金の中で、つ どいの広場、ファミリー・サポート・センター事業を支援していくという内容です。11 頁は、放課後児童クラブの拡充をする内容です。12頁は、従来も進めております多様な 保育サービスの推進で、保育所の待機児童の解消に向けた受入児童数の拡大、5万人増 や延長保育等の多様な保育を進める内容です。13頁は、子育て生活に配慮した働き方の 改革です。(1)男性も育児参加できる職場環境の実現で、トップリーダーからなる有 識者会議のほかに、モデル的取組みを行う企業への支援等を行うということで、こうし た職場環境の実現を進めようということです。  (2)次世代育成支援対策推進法に基づく事業主行動計画の策定をサポートするとい うことで、引き続き予算を計上しています。(3)は新しい事業で緊急サポート・ネッ トワーク事業です。ファミリー・サポート・センターについてはソフト交付金のほうで 対応いたしますが、突発的な病気や急な出張等に対応できるように専門技能を有するス タッフを登録斡旋して、両立を支援するという内容のものを創設をするものです。14頁 は児童虐待関係。16頁は母子保健医療関係。18〜19頁は母子家庭対策です。母子家庭対 策の関係では、これまでも母子家庭の自立就業に主眼を置いて進めてきております。19 頁の上にありますように、母子自立支援のプログラムの策定事業、母子家庭に対するプ レ訓練付きの職業訓練の実施を新しく計上しました。  21頁は、公正かつ多様な働き方の実現です。多様な働き方を選択できる環境整備とい うことで、(1)パートタイム労働者と正社員の均衡処遇の推進です。今回はコンサル タント派遣の拡大を行うという内容になっております。(2)在宅就業対策の推進は、 これまでもe−ラーニングによる能力開発を進めておりますが、来年度は、到達度ある いは仕事の適性を自己確認できる評価システムを開発していく、さらに情報提供、相談 援助を行うという内容です。(3)多様就業型ワークシェアリングの普及促進は、その 普及啓発に努めるということです。2は、男女雇用機会均等確保対策の推進です。(1 )はこれまでと同じように引き続きコース別雇用管理の適正な運用に向けた周知徹底と 行政指導ということです。(2)はポジティブ・アクションの促進で、情報提供あるい はセミナーの開催等により、一層の普及を図るという内容です。  資料5は、少子化社会対策大綱に基づく計画で、昨年12月24日に、すべての閣僚が入 っております「少子化社会対策会議」で決定したものです。子ども・子育て応援プラン の概要は、昨年6月の少子化社会対策大綱に掲げる4つの重点課題に沿って、平成21年 までの5年間に講ずる具体的な施策内容と目標を掲げたものです。併せて更に10年後を 展望した社会の姿を掲げ、こういった形で具体的な施策の進み具合い、その効果を評価 できるように工夫したという内容です。  その下に「4つの重点課題」とあります。少子化社会対策大綱もそうですが、これま で少子化関係、エンゼルプラン、新エンゼルプランと進めてきましたが、その評価・反 省点ということで、昨今言われておりますが、若者の自立、働き方の問題、仕事と家庭 の両立、子育てをもっと支援していくべきではないか、ということを掲げております。 この対応としては、若者の自立では若年者トライアル雇用等の積極的活用。たくましい 子育てでは、小・中・高におけるいろいろな体験活動を進めていこうという内容です。 仕事と家庭の両立の支援あるいは働き方の見直しでは、企業の行動計画の支援、好事例 の普及、労働時間の設定について個々人の生活に配慮したものにしていく、というよう なことを5年間の目標に入れており、例えば、育児休業については、これまでも出てお りますが男性10%、女性80%を目指していこうではないか。あるいは、男性も家庭でし っかり子どもと向き合う時間が持てるようにしていこうではないか。具体的には、ほか の先進国並みに、育児期の男性の育児等の時間が取れるようにしていこうと。あるいは 働き方の見直し、多用な人材の効果的な育成活用によって、労働生産性が上昇して、育 児期にある男女の長時間労働が是正していくという目指すべき社会の姿を作るというこ とです。  1頁は趣旨で、2頁から具体例になっております。具体例は省略しますが、2頁の2 −(1)で、若者の自立とたくましい子どもを育てるということで、キャリア対策の関 係、トライアル雇用の関係について目標値を設けております。3頁では、目指すべき社 会の姿を掲げています。6頁からが仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しです。(1) 企業等におけるもう一段の取組みの推進ということで、一般事業主行動計画の策定支援 について目標値を掲げて取り組んでいただく。(2)育児休業制度についての取組みの推 進。(3)男性の子育て参加の促進。(4)仕事と生活の調和のとれた働き方の実現というこ とで、7〜8頁にかけて、働き方あるいは長時間にわたる時間外労働の是正なども入れ ているところです。  9頁の(5)安心して妊娠・出産し、働き続けられる職場環境の整備、(6)再就職等の促 進という形で、入れられるものは目標値を入れて今回作ったものです。11頁以降は、生 命や家庭の問題、あるいは子育てに関するものです。時間の関係もありますので、後ほ どご覧いただければと思います。 ○若菜分科会長  ただいまの事務局の説明について、ご質問等がありましたら、どうぞ。 ○吉宮委員  最後の閣議決定された新々エンゼルプランの中の3枚目、子ども・子育て応援プラン の概要で、このプランは2つ目の○に、「おおむね10年後を展望した目指すべき社会の 姿を掲げて、それに向けて内容や効果を評価しながらこの5年間に施策を重点的に実施 するものである」と書いてあります。例えばここにパートタイム労働者の均衡処遇が書 いてありますが、つまり、いまの姿勢、法律はそのままにして指針を周知すると。5年 間にこれを重点的にやるというわけですから、それ以上でも以下でもないと読むのか。  もう1つは、若者の自立政策は大事なことなのですが、例えばいま非正規社員や有期 契約労働者が非常に増えている、雇用が非常に不安定です。その方々が将来設計が立た ずに、いつ結婚しようか、いつ家庭を持つか、非常に不安な状況になるわけです。それ が少子化の原因だと私などは認識しているのですが、5年間にやることを書いています から、そんなことは後回しよという意味なのか。私はこのプランが、全然現状にマッチ していないというか、ある意味では、現状の施策を引き続き5年間やりましょうという だけの話であって、本来もっと検討すべき事項があるべきだと思うのです、このプラン の中に。それが全く載っていないから、私は、相変わらずだなと思うのです。5年間の 施策というのは、どう理解していいのですか。全く修正せずに、現行のやり方でいきま すよと。 ○高井総務課長  3つほど申し上げたいと思います。言われますように、このような5年間の具体的な 目標を作るときには、政府の者としては、現在やっております事業がまず中心になるこ とが多いです。そういう意味では、ここに書いてある事業は、できるものは5年間の目 標を作っております。これまでもそうでしたが、それによってどう社会が変わってくる のだろうか、あるいは、さらにその先をどう見込んでいるかを併せて今回作ることによ り、少し先を見据えて、もう少し幅広めの考え方を伝えられないだろうかと。例えば2 〜3頁ですが、こういった若者の自立ということで具体策を打つわけですが、方向とし ては3頁の上にありますように、若年失業者の増加傾向を転換する。これは抽象的です が、方向性を各所に打ち出すことによって具体的な施策、これは数値目標に拘束される ところもありますので、書けないようなところをもう少し先をにらんだ形で書きたいな ということです。10頁をご覧いただきますと、例えば両立の形で「社会の姿」というこ とで書きましたが、育児休業もさることながら、男性もしっかり子どもに向き会う時間 が持てたり、育児期にある男女の長時間労働が是正されたりということで、目標を掲げ て社会を変えていく方向性、あるいは、これに照らして進み具合いはどうだろうかを見 れるようにしました。  2点目ですが、これはプランの上の「少子化社会対策大綱」に書いてあるわけです が、毎年実施状況をフォローアップしていこうということになっております。そういう 中で進み具合いによっては、またいろいろと議論が出てくるのかなと私は思います。  3点目は、これは先ほど申し上げませんでしたが、27頁に大きな位置づけとして、い ろいろな方策について更に検討すべき課題があるのではないか、地域や家族の多様な子 育て支援、働き方に関わる施策、児童手当等の経済的支援など、多岐にわたる次世代育 成支援策について総合的かつ効率的な視点に立って在り方を幅広く検討する。これはプ ランの段階においても政府で、検討課題という意識を持って進めていくこともしており ます。答えになっていないかもしれませんが、いろいろなレベルで考えていかなければ いけないと思っているところです。 ○片岡委員  予算のことで1点質問します。今回の改正育児・介護休業法に関わって、例えば短時 間労働者の適用対象者であるということや、新たに有期で適用になったことに変わった 周知徹底など。これは有期で働く当事者の方が、変わった内容を理解することがとても 大事だと思うという点と、これは本当に納得いかないのですが、休業給付のことも、当 然当事者の方がどういう仕組みであるかを知ることはとても大事だと思うのです。行政 でいう周知というのでしょうか、そのことというのは、この予算の中では具体的にどこ に当たるのでしょうか。 ○麻田職業家庭両立課長  資料No.4は局予算の概要で、局で取っている予算を網羅的にお示ししたものではあ りません。大きなものとか、新規のものを中心にまとめたものです。実際に改正育児・ 介護休業法の周知も今年度から始まっておりますし、今年度、来年度、併せて周知のた めに人も、お金も投入していくということになっております。ただ、このまとめの中に は出てきていないということで、しっかり取り組んでまいりたいと思います。 ○岡本委員  資料No.5に関連するのですが、是非、今後の検討課題として各関連省庁に、こうい った意見があったということを伝えていただければと思います。次世代育成法も保育所 の充実が非常に謳われています。企業も事業内保育、託児所の整備などが議論されてい ますが、そのときに問題になるのが、どうやって職場に近い所に子どもを連れていくの かということが、私たちで常に議論されることなんです。特に首都圏の場合は、大変な ラッシュの中で幼児を連れて行くということはなかなか難しい。そうなっていく中で、 どうしても保育所が限られてしまうということがあります。  応援プラン概要の子育ての新たな支え合いと連帯という所に、「公共交通機関のバリ アフリー化」と書いてあります、この議論の中で、例えばいま女性専用車両がありま す。大阪では1日そういう交通機関で女性の専用車両を設けています。もちろん1日で なくても、ラッシュアワーのときに、どうしたら子どもたちを連れて電車に乗って行く ことができるかを是非検討していただきたいと思います。本来で言えば、そういったと ころも支え合って受け入れるのが本来の社会だと思いますが、いまの実情からまいりま すと、とても殺気立ってそういうようなことは言ってられないだろうと思いますのでそ ういった議論も今後の課題にしていただけると、非常にソフト面の充実になるのではな いかということを申し上げたいと思います。 ○樋口委員  21頁の「公正かつ多様な働き方の実現」で、これから議論しようとする男女雇用機会 均等の予算が15億から11億に削減されました。昨年もほぼ同じような額が削減されたの ではないかと思いますが、これは何が削減されているのか項目を教えてください。 ○石井雇用均等政策課長  昨年については大変大きな金額が削減されておりますが、今回は、ここに載せている ものは全体像を示しているものでない関係上、実質的にはこれほど大きな削減になって おりません。実質的に削減になっておりますのは7,000万強です。具体的に何が落ちた かと申しますと、実はポジティブ・アクションの促進の所に記載がありますが、個々の 企業がポジティブ・アクションを推進するための目標を設定する際に活用できるように するベンチマーク事業、この事業は昨年度からスタートしておりますが、そのプログラ ム開発の経費が要らなくなったこと、あるいは、セクシャル・ハラスメントのセミナー 等の開催の仕方を変えたとか、そういう類のものでして、実質的な中身において今回、 来年度に向けて大きく落ちたというものではありません。 ○樋口委員  これ以外に何かあるということですか、男女雇用機会均等関連の予算が。 ○石井雇用均等政策課長  そうです。今回、数字を計上する整理の関係で、今年度計上しつつ、来年度に載せて いないものが入っている関係で、見かけ上数字が落ちています。 ○樋口委員  昨年ほどは落ちていないという話ですか。 ○石井雇用均等政策課長  はい。 ○篠原委員  予算資料21頁の所に、(1)パートタイム労働者と正社員との均衡処遇の推進という 項目があります。併せて、資料No.5、冊子のほうになりますが、ここの8頁の四角の 4つ目、パートタイム労働者の均衡処遇の推進という項目があります。資料5のほうの 具体的な取組みの部分についてのこの項目が、今回予算建てした(1)に相当するもの だとみてよろしいのでしょうか。 ○谷中短時間・在宅労働課長  資料No.5のほうが今後5年間にやっていくというものです。まず来年度やっていく 予算上の取組みということで21頁の(1)があります。したがいまして、5年間の取組 みの中の1つとして21頁の(1)を考えていただければよろしいかと思っております。 ○篠原委員  ということは、予算のほうの資料をまずやってみる、という感じのイメージですね。 ○谷中短時間・在宅労働課長  はい。 ○若菜分科会長  ほかにはいかがでしょうか。特になければ次の議題に移りたいと思います。  次の議題は、男女雇用均等対策についてです。まず資料の説明からお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  資料No.1は論点整理(案)です。これまでの議論を踏まえ、今後の男女雇用機会均 等の更なる推進方策の議論を進めやすくするために事務局で作成したものです。大きく 3つの柱からなっており、1番目は、男女雇用機会均等の促進についてということで中 項目といいましょうか、項目を6つ掲げております。このうち(1)(2)(3)及び (5)については、すでに男女雇用機会均等政策研究会で取り上けた論点です。これに 今回、(4)と(6)を加えております。いずれもこれまでの議論の中で、検討すべき 事項としてご発言のあったものを踏まえたものです。  2番目の柱は、男女雇用機会均等の実効性の確保についてです。これについても、こ れまでの議論の中で、迅速な解決に向けた差別救済のあり方を取り上げる必要があると いうご発言がありましたことを受けて設けたものです。  3番目の女性保護、母性保護については、このいずれの問題についても、医学的、労 働衛生的な見知から、すでに専門家会合を立ち上げることになっておりますが、政府の 規制改革要望に坑内労働禁止規定の緩和が上がったこともあり、議論が必要と考えてい るところです。論点項目(案)としては以上です。 ○若菜分科会長  資料No.1の論点項目について、ご意見、ご質問ありましたら、どうぞお願いします。 ○吉宮委員  いま課長から、これまでの議論を踏まえて論点のまとめをされましたということです が、確認的にお尋ねします。均等促進についての所で、(1)の男女双方に対する差別 の禁止とあります。私ども現行均等法の目的の所を少し検討していただきたいという か、男女の均等待遇というか促進を、要するに法律案の目的ですが、もう一方で、仕事 と生活の調和というのですかね、それは家庭を持とうが持たないが、それぞれ人間であ る限り個人生活も含めて、働き方の問題と仕事を調和しながらということが大きな目的 になるので、そのところは、これから言いますと1番目で議論していいのかなという感 じがするのです。これが1つです。  (4)は「差別禁止の内容等」ということで、各現行のステージごとのところを検討 しろということなのでしょうけれども、私どもとしては、1つは募集・採用に当たっ て、現行の書き方は「機会を与えなければならない」という書き方をしていますが、機 会を与えればいいということでもないしやはり差別的な扱いをなくすことが入るとすれ ば、その辺のところも検討いただきたいと思います。2つ目に、厚生労働省の研究会に 基づく調査結果、あるいは私どもの調査なども見ますと、仕事の与え方というのは、男 女が非常に異なることに伴うさまざまな課題が残っていて、それが現行では労働条件に 入らないという解釈でやられていることなので、そのところをどのように考えるかも、 私どもは労働条件に入れ込んで検討してはどうかと思っています。そのところについて は(4)の「差別禁止の内容等」という所に、「等」の中に入ればいいのですが、その ところを確認的に議論いただきたいと思います。  もう1つは、雇用管理区分です。現行は指針になっており、同一雇用管理区分でない 限り男女の比較は駄目だよ、というのが現行の解釈になっていますが、私どものシンク タンクというか連合総研などの最近の雇用管理区分という実態調査は、そんなきれいに 分かれる話ではないというデータもあります。そうしますと、今の考え方では果たして 男女のいろいろな場面の比較は、そんなにすっきりいくのかと。そういうことからする と、現行の雇用管理区分という指針レベルの考え方も一度、きちんと検討していただき たい。これも「差別禁止等」の「等」に入るということであればいいのですが、その辺 はどのように考えられているのかお聞きしたいと思います。  それと、男女間の賃金格差問題に関する研究会を厚生労働省がやりまして、いまその ことを事業主を含め各方面に周知徹底しています。ここでは特段、均等法がどうのこう の、基準法がどうのこうのというのは一切言及していません。とは言うものの国際的な 機関が、日本の男女間賃金格差が非常に大きいではないか、その原因は何かと。差別の 範囲が狭いとかと言っていましたが。もう一方で、現在の基準法の第4条に男女同一原 則とあります。これが刑罰法規になっていますから、ILO第100号条約で、同一価 値労働同一賃金と。価値が同じであれば同じ賃金ということで、価値はどうなのかとい う議論が基準法でもありますが、それもなかなか難しく、裁判例も少ない。  現実には男女間賃金格差があり、労働基準法第4条は機能していない。そうすると、 均等法でもう少し、罰則付きでないところでもう少しいろいろな議論することによっ て、実質的な男女間格差を、確保みたいなことができないのかと私は問題視していま す。また、第3条は均等待遇ですが性別は入っていません。それは多分、基準法の他の 母性保護規定との関係があるのかなという気はしているのですが、男女双方ということ からすると、その辺の均等待遇、第3条、第4条の関係が刑罰法規であるが故になかな か機能し得ない。行政的な救済の中でもう少し機能するようなことができるように均等 法に、男女同一賃金を書き込めないのかと私は思っています。もし議論するとすれば (1)なのかどうか、あるいは(4)の「差別禁止の内容等」の「等」に入るのか、そ こをお聞きします。 ○石井雇用均等政策課長  順次お答えいたします。1点目は法律の目的について議論したいが、これについては どこで読むのか、1の(1)の男女双方に対する差別の禁止でよろしいのかということ であったと思います。実は今日この論点項目(案)、これでよろしいということであれ ば、時間があれば、早速男女双方に対する差別禁止の問題に移っていただきたいと思っ ております。この問題、男女雇用機会均等政策研究会で取り上げた際に、仮に女性に対 する差別禁止を男女双方に対する差別の禁止とするとすれば、これは法律の目的とか基 本的理念に関わる問題であるという指摘もされているところです。前の均等法改正の際 に、性差別禁止を明確に打ち出すということで、目的、理念など相当改めていますの で、1の(1)に当てはめて、その際にご議論いただいてよろしいのではないかと思っ ています。  2点目は、募集・採用に当たって機会を与えているという今の規定ぶり、あるいは仕 事の与え方といったようなことについて、どこで読むのだろうかというご指摘でした。 とりわけ仕事の与え方については、たしか10月の分科会でご意見があったと思いますの で、実はそれを念頭に、1の(4)の「差別の禁止の内容等」という項目を起こしてい るもので、いずれもそこで読むことができるのではないかと思っております。考え方と して、(1)〜(4)までは、いわゆる差別の禁止に関する問題であり、(5)(6) はポジティブ・アクション、セクシャル・ハラスメントということで、いささか政策的 な話にもなるようなこと、グルーピングとして大きく2つは性格が違うイメージで捉え ております。(1)〜(3)で読み込めない、読み取りにくいものは(4)の「等」の 所で、一応、含み得る形として想定しているところです。  雇用管理区分についてもお話がありましたが、これもたしか10月に、そのようなご指 摘があったかと思います。いろいろ問題はあろうかと思いますが、議論としてここに含 めることは十分可能ではないかと思っております。  さらに賃金問題、労基法の規定と同旨のものを均等法の中に置くべきという考えと受 け止めました。これもなかなか難しい問題ではないかと思いますが、賃金の差別をなく していくという観点での問題意識ということであれば、1の(4)で取り上げることは 十分可能かと思います。 ○若菜分科会長  ほかにご質問等はありますか。特になければ、今後の議論の項目は資料1のとおりに 進めていただくということにしたいと思います。その上で、資料2の説明をお願いしま す。 ○石井雇用均等政策課長  ありがとうございました。資料2をご覧いただきたいと思います。ただいまご了解い ただいた論点項目のうち、1の(1)の「男女双方に対する差別の禁止」に関する資料 でございます。本日、3つの資料を用意しています。  まず1つ目、資料No.2−1ですが、「男女雇用機会均等政策研究会報告書」のうち、 この項目にかかる部分を抜粋したものをお手元に用意しました。既に、全体については 昨年の9月に説明をしていますので、簡単にポイントだけご紹介するにとどめたいと思 います。現行の男女雇用機会均等法はご案内のとおり、女性に対する差別を禁止するこ とによって、雇用の分野における男女の均等取扱いを確保しようという法律です。女性 差別を禁止した法律であるわけですが、実は平成9年の改正でそれまで許容しておりま した女性優遇を原則禁止とした結果、反射的な効果として男性差別も禁止することにな っています。しかしながら、男性労働者が受ける男性差別に対する法的救済措置を設け た規定はありません。あくまで、女性差別という観点から規定が作られています。  一方、諸外国の法制、先進諸国では概ね男女双方に差別を禁止している状況にありま す。男女共同参画社会基本法、あるいは廃案になっていますが人権擁護法案などでは男 女双方が対象となっている状況にもあるわけです。下から5行目あたり、先ほど吉宮委 員の質問にお答えをしたところですが、「女性に対する差別の禁止にとどまらず、男女 双方に対する差別を禁止するかどうかという問題は、現行の均等法が女性に対する差別 を禁止することを目的とするものであることから、法の基本理念に直接関係する問題で あり、法体系全体に影響を及ぼすものである」ということを記しています。そのよう な、大きな問題であるという認識に立った上で、これをどうするかというのがこの論点 であるわけです。  2頁にありますが、この研究会では女性に対する差別禁止を男女双方に対する差別禁 止とする意義として、3つほど整理をしています。1点目ですけれども、女性に対する 差別の禁止というのはそもそも、女性という属性に基づく不合理な差別を禁止するもの である。ところが、女性に対する差別の禁止のみである限りはやはり女性のみについて の保護という、福祉的な色彩が残ってしまう。それから脱却をして、職業上の能力な ど、他の合理性のある根拠に基づき処遇するという考えを明確に打ち出すというのが、 まず1つ意義としてあるだろうということです。  2点目としては「男女間の職域分離の是正」を挙げています。双方、等しく性差別に 関する救済措置が適用されることになればお互い参入しやすくなる。その結果、男女間 の職域分離の是正が進むとともに、賃金を含む男女間の格差の縮小が図られることが期 待されるとしています。  3つ目は男性の側から共感を得られやすくなる。そのことによって、差別の是正が促 進的になるのではないかということが期待されるというものです。こういう意義がある のではないかとして、研究会でまとめていただいたわけです。  その次にあります(3)「男女双方に対する差別の禁止と女性労働者にかかる特例措 置との関係」、ここについてはこの研究会報告では言わば課題というか、問題点の指摘 にとどめています。本日はこの点についてもご議論いただきたいと思っていますが均等 法の第9条では、事業主が雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障 となっている事情を改善することを目的として、女性のみ、あるいは女性優遇の措置を 行うことは法違反とならないとしております。過去の女性労働者に対する取扱いなどが 原因で、雇用の場で現実に男性労働者との間で事実上の格差が生じている状況を改善し ていくことが可能となるように、こういった措置を設けているものです。  仮に双方の差別禁止ということになった場合、この第9条の扱いをどうするか。すな わち、職種などで性の偏りがある場合には同様に男性もその対象とするのかどうか。次 にご説明したいと思いますが、男性に対する差別の例も最近では挙がってきています。 その多くは、女性が多い職種に男性が入っていこうとする場合に起こっています。その ような職種は性に偏りがあるということで、例えば男性を優先的に採用するということ などを認めることとするかどうか。このような問題提起でございます。  2つ目ですが、仮に男性も対象とする場合、特例措置として許容する範囲を現在、女 性に対して許容しているものと同じ範囲とするのかどうか。範囲についても検討する必 要があるのではないかとしています。  ちなみに、諸外国では性差別禁止法を持っている、男女双方に対して差別を禁止して いるという意味では概ね共通しているわけですが、この特例の扱いについては分かれて います。本文中にも記載がありますが、例えばEUやイギリス、スウェーデンでは男女 双方について、明文で規定し、許容している規定があります。その一方で、フランスや ドイツでは優遇措置は女性についてのみ認めるというように、在り方が分かれていま す。いずれにしても、いまの女性の置かれた状況をじっくり見極めて、それに十分留意 をした検討が必要なのではないかと思っています。資料No.2−1は以上です。  続いて、資料No.2−2をご覧いただきたいと思います。男性に対する差別の例とい うことで、6つほど並べています。これは研究会報告でも若干触れているわけですが、 都道府県の労働局などに寄せられた相談の中から例をお示しするものです。先ほど申し 上げたように、女性が多く就く職種に男性が就こうとするケースであるようです。1番 目が管理栄養士の例です。2番目が経理事務員、3番目が男性保育士の例です。保育実 習としては受け入れてもらえるけれども、採用してもらえないという例です。4番目が 訪問介護、登録ヘルパーとして働くことを希望する男性がユーザー側の事情で断られ、 採用してもらえないという事例です。5番目も類似、派遣労働者の例ですが、派遣会社 に応募をしてもクライアントの希望が女性であるということで断られ、登録もしてもら えない。最後の6番目は一般事務、比較的ここは男女差は少ないかと思いますが、求人 を見て電話をすると、企業の多くが「女性を希望している」という回答をして、なかな か採用されなくて困っているという事例です。  現状について申し上げれば、仮にこうした募集や採用があれば均等法違反ということ で、女性差別としての是正の指導対象となるわけです。しかしながら、当該差別を受け た男性が仮に救済を求めようとするとき、均等法上の個別紛争の解決援助の対象とはな っておりません。これは一般的に、さまざまな労働条件に関する紛争を扱います「個別 労働関係紛争解決促進法」に基づく救済制度の対象、その利用は可能ということであり ます。しかし、都道府県労働局長にかかるいわゆる助言・指導・勧告、均等法上はこの 3つを備えていますが、個紛法のもとでは助言・指導までで、勧告ということは対象に なっておりません。例えば、特定の行為を求めるという措置の対象にならないという違 いがございます。  続いて資料No.2−3でございます。説明は省略させていただきますが、先ほど特例 措置として均等法第9条のことを引用しましたが、第9条の条文、2枚目にはこれにつ いての関係する指針、そして3頁目から4頁目については通達についてお示ししていま す。こういう考え方で現在運用しているというものです。参考にしていただければと存 じます。説明としては以上です。 ○若菜分科会長  ただいまの説明について、ご意見、あるいはご質問がありましたらお願いします。 ○奥山委員  質問というか、教えてください。いまの資料2−2のご説明、現行均等法のもとでは 第9条の特例措置というのは女性を対象に、一定の要件下で認めるという形になってい るわけです。今度、双方向への適用ということを考えるとそれとの関連も出てくるわけ です。その場合、原則問題として、資料2−2に出ているように従来こういう形で、適 切かどうかわかりませんが、女性が多く就いていたところに男性がこれから新しく入ろ うというときに少し制約がある。その制約をどう考えるか。  現状の観点では、均等法上の調停の対象には当然なりませんが、このようなトラブル の1つの解決のあり方として、いま課長から「個別的労働関係紛争の解決促進に関する 法律」のもとで局長などの助言・指導が対象にはなり得るというようにお話いただきま した。もう1つ、これはわからないので教えていただきたいのですが、紛争調整委員会 におけるあっせん申請の対象にはなり得るとお考えですか。 ○石井雇用均等政策課長  男性に対する差別ということであがってきた時に、募集・採用を除く、配置・昇進等 であればあっせんの対象になります。ただ、募集・採用は調停と同様、あっせんについ てもその対象から除外されています。ここに挙がっている事例がすべて募集・採用の事 例だったものですから、説明を省略させていただきました。 ○奥山委員  わかりました。 ○吉宮委員  私としては前から、現行の均等法の片面性をなくすべきだという話をしてきました。 前回の改正もそうですし、前々回もそうだったのですが、目指すべき方向は男女双方に 関する差別禁止が本来あるべき姿としてずっと来ていた経緯があります。その後、ここ に研究会の考え方も示されていますが、特に男女共同参画社会基本法では「男女の人権 の尊重」が第3条に出ていますし、人権擁護法は廃案になりましたが、雇用関係につい ては使用者側も入った審議会等で雇用分野について議論した経緯があります。そのとき も多分三者一致だったと思います。  最近では例えばCSR、企業の社会的責任という面で、各企業が定めている倫理綱領 など、最近の例で言えば野村証券の和解のきっかけは、野村證券をイギリスの投資会社 が「あそこは女性差別をやっていた、投資をひかえよう」と言った結果、当該企業の倫 理綱領に性差別禁止が謳われました。最近では「社会的責任」という、企業の倫理等で も性差別が出ています。そういう意味では、男女双方に対する差別禁止が本来あるべき 姿ですし、そういう方向で行くべきではないかというのが第1点です。  2つ目に、先ほど私申し上げた目的の議論の中に「仕事と生活の調和」がありまし た。なぜ、そのことを言うのか。勤労婦人福祉法というところから始まっている均等 法、働く女性がある意味では特定分野で、もう一方では家庭生活は女性が担うものだと いうことを支えるような法律でした。その後育児介護休業制度、育児休業ができて、介 護休業ができて、それが男女双方に対して適用される。両立支援ということが目的にな っているわけです。それはまさに、仕事との継続を図る観点で仕事と家庭生活を両立で きる制度を作るということでした。  前回の均等法改正は、「仕事と家庭の調和を図る」という言葉を残したとき、女性だ けがそのことをやるという目的になってしまう、仕事との調和は男女双方だろう。その ことがあったこともあり、先ほど課長がおっしゃった性差別禁止の福祉的側面をなくし てというのがもちろんあったのですが、もう一方で片面性のある法律で調和を残すこと により、女性だけがそれを担うことになってしまう可能性がある。そこで削除したとい う経緯があると思います。  一方で、男女平等とは一体何なのかというとき、当時は基準法の女子保護規定があっ て、これは一定の条件でなくなったり、深夜業が解禁になったりしています。先ほどの 少子化対策ではありませんが、特に長時間労働において働き方の見直しがいま出ていま す。男女一緒というとき、男性が相変わらず固定的役割分担意識で仕事中心、そこに女 性を合わせる。形の上ではそれも男女平等かもしれません。しかし、良質な労働条件、 人間らしい生活ということからすると、平等というときにやはり人間には個人生活、家 庭生活もあるし、労働もあるわけですから、そのことをきちんと法律の目的に入れ込む ことが、例えば配置、あるいは仕事の与え方なり、常に男女双方が考えながらやるとい うことが企業運営として当然あり得るわけです。そのことを抜きにした平等というのは やはり我が国の大きな問題なので、そのことをきちんと目的に入れ込むことも今回、男 女平等とは何かという観点からするとそう考えます。そういう面での目的をきちんと整 備したらどうかという意味で申し上げます。先ほど、「仕事と生活の調和」ということ を申し上げました。具体的にどうなるかという意味では、法律の第1条、第2条1項、 第4条2項のところにもその分野を入れ込むことにより、本当の意味での男女平等とい うか、人間らしい生活という面を考えるという意味では必要かなと思っています。  それから、先ほど第9条でしたか、特例措置のところなのですが、目指すべきは「一 方の性への偏りをなくすという意味で分離、解消、あるいは固定的役割分担に基づくそ ういうものをなくす」という法律の目的からすると、男女双方が男向きの仕事、女向き の仕事というのではなく、個人個人に着目をした仕事の配置、あるいは訓練されること を目指すべきだと思います。  とはいうものの、いま女性の職域拡大はどれだけの進展があるか。確かに、従来見ら れない分野へ女性の仕事は拡大しています。しかし、相変わらず「雇用管理調査」など を見ても、男女比を見ると従来とあまり変わらない現状があります。女性の職業がどん どん拡大しているならいいのですが、進展が弱い中で男女双方にと言っても、男性にも 保育士をどんどん増やそうかとか、従来から女性のところに積極的に男性を拡大してい くための訓練をするというのもどうなのか。そういうことからすると、研究会が「我が 国の女性の置かれた状況、特に男女間の格差の現状に十分留意して検討を進めるように 」と書いてあります。まさにそのとおりで、目指すべき方向だから「さあ」というわけ にはならないのかなという気がします。ある程度暫定期間ですので、ある期間そこをや っていくことが必要かなと思いました。 ○若菜分科会長  ほかにご意見、ご質問はありますか。 ○川本委員  いま、いくつかご指摘がありました。そのうち特例の話、第9条の話からさせていた だきたいと思います。片方に対する優遇措置ということなのですが、資料2−2の中に 男性を優遇するかしないか、こういう困った事例が出てきているというのも事実として あるのかなと思います。男女双方ということになれば、やはり理論上はなるべく実態と しても片面性をなくしていくということになりますので、例えば女性ばかりの職場に男 性が入りたいということがあれば、機会としては均等に図っていく必要性は本来あるの かなと思います。  しかし、一方で、いま実際に働いている職場における男女の偏りという実態が、一般 的なことから言うといま吉宮委員が言われたようなご指摘もありということになる。実 は理屈と現場の実態、本来すべて踏まえて議論しないといけないことかなと思い、この 問題については少し慎重な議論を行ったほうがよろしいかと思います。実は私どもも、 この辺の声というのは現場の方々から伺っていませんので、どういうニーズがあり、ま た現場としてどういう管理ができるのか、難しいのかも含め、1度声を拾ってみたいと 思います。いずれにしても、少し慎重な議論が必要かと思います。  もう1つ、家庭と仕事の両立・調和という観点ですが、私が思うには逆に非常に多様 化が進んできたのかなという感じがします。これは男女という性差の問題ではなくて、 言い方が難しいのですが、両者ともに「仕事人間」と言われるような、仕事をバリバリ やりたいという方もいらっしゃる。また、自分の生活との調和を図った働き方をしたい という方もいらっしゃる。むしろ、家庭重視でいきたいという方もいらっしゃるという ことで、非常に多様化してきているのが現状なのではないか。  したがって、性による差があってはいけないのは事実なのですが、この家庭と仕事の 調和については画一的に論じるのではなくて、やはり多様化の切り口で考えていくべき 問題ではないか。今日的に言うと、少し実態にはそぐわない議論になる可能性があるか なという気がします。今回、男女双方に差別禁止という切り口でいった場合も、仕事と 家庭の調和という切り口はむしろ理念に入れないほうがよろしいのではないか。そぐわ ないのではないかと思った次第です。  ちなみに、今日いただいた資料、いちばん下に資料No.5があります。7頁のところ、 「仕事と生活の調和の取れた働き方の実現」という点があります。少し解説が載ってい ますけれども、ここでも時短促進法と言われた臨時措置法について内容の改めがあっ て、見出しに出ているように「労使の自主的取組み」とあります。これもある意味では 画一的な管理よりむしろ、多様性の中でどうするかという実態を踏まえながら、労使の 枠組みで考えていったらいいのではないかという方向だと受け止めています。今回、性 差に関係なく機会均等を図っていくという理念からすると、ここに「生活と調和」とい う理念を持ち込むと非常に複雑な議論にもなり得ますし、合わせて時代にちょっとそぐ わないのではないか。社会の流れにそぐわないかなという気がします。うまく申し上げ られませんでしたが以上です。 ○若菜分科会長  ほかにご意見はありますでしょうか。 ○片岡委員  吉宮委員と同じ趣旨になってしまうのですが、今日の議題なので発言します。いま、 川本委員からも意見があった法律の目的について、連合要求を作る段階でいろいろ議論 に加わって学習をしたという結果もあって、是非これは入れたほうがいいと考えていま す。  それを目的に入れるという効果は、先ほど吉宮委員がおっしゃったことと同じなので すが、実はこれもまだ始めたばかりなので多くないのですが、職場で均等法ができて、 女性がその法律を活かした職場でどのように働き方が変わってきたか、自分たちが受け 止めている評価について一旦話し合いました。その中で、大変率直な意見だなと思った のは、やはり男女平等は実現したいけれども、男性並みに働くことをベースに男女平等 だと言われても、それ自体には無理があるという点で選択肢というか、多様化が本人の 意思とはまた別のところで動いている。そうすると、結果として正社員、残業もできる という働き方を前提にしないと駄目だとすれば、違う働き方を考えなくてはいけなくな るのではないか。そのような、少し率直な意見が出ました。  私はそのとき思ったのですが、やはり男性が子育て、自分自身が充実する社会とのか かわりの時間を持てないような働き方がまず是正され、それと同じような意味合いで実 質的に男女平等を目指すというのが次の段階では必要だと考え、その意見を聞いた経過 があります。  そのような意見を少しご紹介して、先ほど吉宮委員がおっしゃった点と同趣旨です が、今回の男女平等が本当に自主的に実現する際には、いままでの男性を働き方として はベースとする。あるいは、それが1つの労働者像として、男女平等を実現する改正議 論ということでなく、男性の基準ではない、男性も女性も両立が可能な、調和が図られ る働き方を前提に男女平等を進めることを目的の中に入れていく必要があると思いま す。 ○吉宮委員  川本委員がおっしゃった多様化というのは当然あると思います。おっしゃったように 自ら選択した多様化、逆に選択を迫られてしまうという両面がある。ならば、なぜ、い まパートなり派遣労働が特に女性について増えているのだろうか。自ら選択して、仕事 と生活を調和したいから短時間労働タイプを選ぶという方が増えているというのは確か に言えますが、これだけ急速に増えているというのは、逆にいまの男性の仕事では仕事 ぶりが企業へのいろいろなモチベーションがあまりに強過ぎてしまう人が一方にいる。  経営者としては、仕事、産業によって違いますけれども、どちらの方を戦力として考 えるかといったら、当然あまり家庭のことを考えない男性の雇用管理を考えるだろう。 そういうことからすると、これが平等だとなるとやはり各ステージごと、特に配置等に おける仕事などの問題について本当に平等になり得るかというと、その結果、派遣労働 やパート労働となっていく。ここが背景にあるような気がします。  実質的に、フルタイム正社員とパートの二極分化をするとき、均等法というのは機能 するのか。ましてや、同じ形態ごとで比較しなければまずいなどと言われたら、男性は 確かにパートタイム労働が増えていますが、まだまだ正社員フルタイムが多い。女性は パートタイムなので比較できませんと言われたら、いくら立派な均等法を作っても阻外 されてしまう。  そういう意味では、まさに日本の社会というのは固定的役割分担が非常に強い社会シ ステム、企業も含めてそうです。そのことを改善していくのが法律の目的であることに よって、やはり関係労使がそのことをもとにして目指していくということはあるわけで す。そのことは育児介護休業制度があるからということではなくて、まさに本体の均等 法、男女双方の法律の中に取り込むことが逆に言うと求められているのではないかとい う感じがします。 ○樋口委員  法律の専門ではないから教えていただきたいのですが、職業生活と家庭生活の両立を 目的とする労働法というのは、育児介護休業法の中には第1条にあります。それ以外 に、これに関して書いてあるものというのは存在するのでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  ちょっと調べたいと思います。確かにかつての勤労婦人福祉法、それから改正前の均 等法は、まさに目的規定にそのような規定を設けていたのが前回の改正で削除されまし た。そしておっしゃるように、育児・介護休業法の中にその目的を入れ込んでいます。  あるとすれば労働時間の関係、あるいは保育の関係であるかなというところなのです が、ちょっと調べたいと思います。ただ、私どもが通常念頭に置いている最たる法律 は、何といっても育児・介護休業法で、非常に重要なものは育児であり介護であると考 えます。現在の段階でメインに置かれているのは育児介護休業法ではないかと思ってい ます。 ○樋口委員  次世代育成はもちろん入っていますか。要するに2つ柱があって、両立支援と働き方 の見直しがある。両立支援のほうに具体的な政策として入るのではないかと思います。 もし大変でしたら、次回でも教えていただければと思います。そういう政策を取ってい るわけですから、どこかに法的根拠があるはずですよね。 ○石井雇用均等政策課長  ちょっと補足すると、男女共同参画社会基本法の第6条、総則の規定ですけれども、 目的規定ではございません。その中で、「家庭生活における活動と他の活動の両立」と いう規定が設けられています。 ○樋口委員  1つの理念の中に1つですよね。だから、労働関係法規の中では、それを目的の中に 入れているのはないのではないでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  従前、そういうことを特に必要とする存在は女性でした。ですから、おそらく勤労婦 人福祉法にまずそういうものが入り、その系譜を引く中で純化していったというか、そ ういう経過をたどっていったのではないかと思います。 ○樋口委員  逆に前はあったわけでしょう。それが育児介護休業のところにシフトして、それ以外 に関連するものではなくなったということですか。 ○石井雇用均等政策課長  正確に申し上げますと、育児介護休業法ができたあとの平成9年改正までは目的と理 念規定に残っていました。職業講習の中で、職業生活と家庭生活の調和に資するための 講習をするという実体規定が第29条の中に設けられていました。それが残っているとい うことが1つ理由だったかと思います。その規定もなくして、目的・理念からもなくし たのが前回からの改正という経過です。 ○樋口委員  わかりました。 ○奥山委員  目的・理念の中に仕事と生活の調和を含めるということ、吉宮委員のご発言等を聞い ていて、いまは感想でしかないのですが、お聞きして感じたことを簡単にお話します。 吉宮委員もその他の方もご承知だと思いますが、男女雇用平等を法の枠の中でどう実現 していくかということについて、いまおっしゃった男女双方にとって仕事と個人生活、 家族との生活の調和が必要だというのは私も重々認識して、そういうところの認識を図 っていかなければいけないと個人的には考えています。  問題ではないのですが、もう1つの考え方は職場での男女雇用平等を法制面でどのよ うに実現していくか。その枠組みと具体的な手法というのは、もちろん国によっても違 うでしょうし、一国の中でもいろいろな立法政策の中で考え方はあり得るのだろうと思 います。  私の理解しているところでは、日本の中で職場での男女平等を法制的に整備し、進め てきた流れとしてはご承知のとおり、昭和47年に「勤労婦人福祉法」がありました。こ れは言わば仕事と家庭の両立、それから職業指導ということで訓練、紹介というところ の充実を図ろうという法律だったわけです。そのような基本的な性格は言わば、その当 時も書かれていましたけれども、女性労働者の福祉の増進がいちばんのメインだったわ けです。それが良かったかどうかは別にして、昭和60年に均等法を制定したときには、 勤労婦人福祉法がもともと持っていた2つの大きな柱に、職場での男女の均等な機会と 待遇の確保という、我々が現在議論している職場での男女の平等、差別の禁止を継ぎ木 したような形で均等法が制立したわけです。言葉は悪いかもしれません。そういう立法 が良かったかどうかはいろいろ議論があるだろうと思いますが、そういう形になった。  平成9年にもやはり、「女性労働者の福祉の増進」というタイトルは付いていたわけ です。どうしても、イメージとしては女性労働者の福祉の増進だけの問題となって、平 等というイメージが人によってさまざまなものになって、シャドウになったりグレーに なったりする。ご承知のとおり、平成9年に機会均等、待遇の平等ということを中心に 均等法の改正をし、あとの2つ、「勤労婦人福祉法」が担っていた2つの役割を一方で 育児介護休業法に特化し、職業指導・援助のところは職業能力開発促進法のほうにある 意味では特化し、それぞれの目的をそれぞれの立法でより充実をしようという格好で進 めてきたわけです。  そういう流れの中では、9年改正均等法は私どもも論文に書きましたが、福祉法から ある意味では女性差別へ変える。今回の議論を私なりに理解すると、おそらく女性差別 法からさらに性差別法への動きとして一応位置づけることができるのではないかと思い ます。そういう観点からすると、男女雇用平等を進めていくときの我が国の立法の大き な柱としては、1つは均等法の立場、育介法の立場、もう1つはパートなどです。これ は純然たる男女の問題ではないですが、正規、非正規という図式が我が国の場合は男性 正規、女性非正規という枠組みの中にもあるものですから、パートの公正処遇が女性労 働者の働きの見直し、男女雇用均等につながるという点では、パート法も1つの雇用平 等の柱の法律だと考えていいかと思います。  もう1つ、今年4月1日から適用される「次世代育成支援法」、メインは少子化対 策、働く男女等が安心して子供を産み育てる環境づくりをしようということですが、中 身はやはり働く男女にとって子育てが大きな負担であるということならば、やはり女性 にとっての仕事の遂行につながっていかないということが考えられる。そうすると、こ の次世代支援育成法も広い意味では男女の雇用平等の実現に大きくコミットする法律だ と考えています。  そういう点ではこの4つ、ほかにもあるだろうと思いますが、4つの柱の中でトータ ルに男女雇用平等の実施化を図ろうというものです。そういう点では、今度均等法の目 的を付けますと、私の認識では折角平成9年の改正のときに、均等法の貴重な理念とし て女性差別禁止、さらには性差別禁止へ持っていこうとするときに、またここに仕事と 家庭の両立が入ってくるとちょっと違和感を感じるわけです。福祉法に先祖帰りすると までは言いませんが、少しまた違った形で考えていかないといけない。  それ自身は大事なことだと非常によく理解していますが、それぞれ法の持つ役割と機 能からすると、仕事と家庭の両立は夫婦だけの問題ではなく、個人の人が個人生活をど れだけ充実させていくかという問題にも育介法はかかると思います。そこの部分で充実 していくことが1つ、法の適用解釈の性格からするといちばん収まりがいいのかなと感 じています。改めて、既存の中から持ってくるというと、ある意味では解釈の柱として 実際上考えることは大事だけれども、規定自体として置くことはいままで皆さんの一生 懸命の努力の中で、折角あるべき方向に流れていくべきものがちょっと後ろを向いてし まうのではないか。これは感じだけですが、聞いていてそう思いました。もう少し、こ れから考えていきたいと思いますが、結局そういうことを感じました。 ○横溝委員  私が申し上げようとしたことをほとんど言ってくださいました。ちょっと古い話で恐 縮なのですが、皆さんご存じのILOで1965年に第123号勧告というものが出ています。 それには「家庭責任を持つ婦人労働に関する勧告」と言って、ちょうどそのころ、産業 界に世界的に女性がどんどん進出してきたころ、婦人労働者が家庭責任と仕事責任で非 常に過酷な状態にある。そのような婦人労働者を保護しなければいけないというので、 「第123号勧告」というものを出しています。あのILOでさえそういう時代があった のです。  それが1981年、日本で言うと昭和56年ですか、ILOが第156号条約と第165号勧告と いうものを出しています。それは家庭責任を有する男女労働者に関する勧告であり、条 約になっています。そのときに、ILOも女性労働者だけではない、家庭責任と仕事責 任は男女両方が持たなければいけない。その両立を図るための勧告、条約を昭和56年に 出して、先ほどおっしゃった「勤労婦人福祉法」が昭和47年にできたのはILOの第123 号勧告の延長線にあるような、女性労働者の福祉的な感覚が非常にありました。  そういう社会の情勢と歴史的な動きの上に、社会の現状とこれからのあるべき姿を反 映して法律というのはできていくと思います。そういう流れの中で、先ほど奥山委員が おっしゃったような両立の法律になり、平成9年に家庭責任、職業責任の両立というの は削って、本当に骨格だけの法律になった。そういうように理解すると、皆さんおっし ゃるようにこの両立というのは非常に大事なことです。社会のシステム全体としても、 個々人の生活においても非常に大事なことですが、労働権を男女平等に均等に確保する ための法律としては広い分野のものを入れてしまうと、特化せずに曖昧さが残るという 恐れがなきにしもあらずです。この法律の役目から見ると、やはり特化してそれに絞っ たほうが明確というか、機能しやすいことになる。極端な言い方ですが、歴史の流れや 社会の在り様、社会の哲学に逆流してしまうような感じがします。よくわかりますけれ ども、そういう事も視野に入れて考えていったほうがいいのではないかと思います。 ○吉宮委員  「逆行する」と言われてしまうと。 ○横溝委員  「逆行」は申し訳ありません。 ○吉宮委員  前回の改正の際、労側も職業生活と家庭生活の両立の点には反対していません。反対 して言っているならば、いま言われるように「流れに逆行する」というのも言えるので すが、私どもはILO条約の第156号と勧告を踏まえつつ、両立支援法も大事というこ とで「男女双方」といたしました。  一方、改正均等法ができたとき、そのことを残した場合はどうなるかというとき、女 性だけが仕事との調和を図るというのは非常に不公平ではないですか。だから、あの条 文の改正があったわけです。  もう1つ、労働というのは抽象的ではなくて具体的なわけです。配置や教育訓練と か、場面に現れてくる。我が国の地位は残念ながら、他の国の男と女の差があります が、特に何が激しいかといったらいま言った問題が逆に言うと男向きの仕事、例えば鉄 道業、建設業といったところはほとんど、ある国では女性は基準法で深夜業を入れなか ったということもありましたが、他の国で女性が社長になってみたりということがあり ましたが、女性の場合は特になかった。まさに家庭生活の関係の固定的な部分が強いが ゆえに、仕事の与え方も企業の雇用管理もそういうようになっているわけです。それを どのように改善するかというのは、単に家庭生活との両立があるからというだけではな くて、日々の場面場面のやり方について男女平等というのはそういう観点、仕事、個人 生活の両立は常に配慮されなければならない。そのような統一理念を持つことがなぜ、 福祉法というように逆行させるのかがわからない。  我が国が抱えている少子化問題も、まさに6,000万という雇用分野において多数なの ですから、ワーク・シェアリングの議論もされているではないですか。個人生活、まさ に多様性というものを労使自ら選択できるという意味のことをするためには、そういう ことも含めた理念をきちんと出すことが男性の働き方も変えていく、企業の皆さんも努 力してくれるというようにつながっていると思います。これが福祉法になるというのは 逆に言うと現状に合わない、従来型の効率論だけを考えた言い方ではないかと思いま す。 ○横溝委員  福祉法になるというのではなくて、第123号や「勤労婦人福祉法」の時代は福祉的な 考えが多分にあったけれども、いまは労働権も男女平等に、均等に確保するという法律 の精神から言うと、それはもう入れなくていいのではないかということを申し上げまし た。福祉法になるという意味で言ったのではありません。両立が大事だというのは誰し も、日本全体の共通理念になっているわけですから、それをいかに労働権を均等に確保 するかという法律の役目から言えば、そこに絞ったほうがいいのではないかということ を申し上げました。福祉に逆行するという意味ではないのです。 ○奥山委員  我々はやっている仕事の中身から、ついつい法律の適用解釈みたいな、理屈っぽい話 で考えていくのですが、例えばいま吉宮委員がおっしゃったように、均等法の中でも個 々の働く場によって、仕事と家庭の両立がやはり整っていかないと、実質的な男女平等 になっていかないというのはおっしゃるとおりだろうと思います。それは個人的に十分 認識し、理解をしているつもりです。  例えば、それをどこかの法律で明確にしなければいけないということになるかという と、現行でも育介法で配置についての家族責任の配慮の規定があります。第26条だった でしょうか。そういうところで、育介法の中でも平等の理念みたいなことが規定の中に 盛り込まれている。  逆に今度、均等法の中で言うと、目的や理念の中には明確になくても、吉宮委員がお っしゃったように女性については家庭責任があるからこういう仕事に就けない、採用し ないというものが仮にあったとしたならば、いまの均等法の現行法規の中でも第5条違 反、第6条違反だったり、解釈としてはやっていけるわけです。そういう点では、お互 いがある意味で仕事と家庭の両立を解釈の中で実質的に運用を適用していくべきだろ う。  そのとき、やはりそれぞれ射程を持った法律があるわけですから、その法律の中でい まのような目的をさらに理念として高めて進めていくのも1つの方法だし、そのほうが 個人的には法律の実効を持たせる点ではよりベターではないかと考えています。 ○吉宮委員  矛盾するのですか。 ○奥山委員  いや、矛盾はしません。 ○吉宮委員  矛盾しなければ、確かに。 ○奥山委員  つまり、立法の基本理念や目的にそういうものを謳ったときに、やはり大きな影響が ある。その法律の目的・趣旨は何かといったときに、仕事と家庭の両立といったことが 出てくると。 ○吉宮委員  「仕事と生活の両立」です。 ○奥山委員  ごめんなさい。個人も含め、「仕事と生活の調和」と出てくると、どうしてもそちら の理念というものが機会均等、待遇の確保ということ以上に出過ぎるのではないかと思 います。理念というのは、やはりそういう点ではその法律をどのように解釈して、実行 していくかという大きな基礎になるわけです。 ○吉宮委員  多様性というのは、多分ライフスタイルなどで。家庭を持つだけではなくて、個人生 活の多様性、あるいはライフスタイルの多様性が人生の中であるのではないですか。そ のことを雇用の分野でどう考えるか、という意味で捉えています。  育介法は家庭生活の両立で、まさに先ほどおっしゃった156号条約は家庭生活がメイ ンになっています。だから、日本で第156号条約を批准できたわけでしょう。家庭だけ ではなく、個人を含めたいろいろなジェネレーションというか、世代を含めて行うため には、男女双方にすることをきっかけに、きちんと持ち込んだほうが言わば労働者個人 からすると労働であるし、企業からすると多様性を認め合う雇用管理をすることが生ま れるのではないかと思います。別に矛盾しているわけではありません。 ○樋口委員  皆さんのお話を聞いていると、職業生活と家庭生活の両立支援が必要ということにつ いては、大多数の人は賛同しているのだろうと思います。それをどのように実効性を上 げるか。どこの法律の中で書いたほうがいいのか、書かないほうがいいのか。お2人の 先生は、均等法の中では逆に焦点がボヤけてしまうのではないかというご意見だと思い ます。だとすれば、逆に両立支援をどこで扱ったらいいのだろうかという問題提起をし たいのですが、いかがでしょうか。 ○奥山委員  吉宮委員の今のお話の中身を忖度すると、現行の育介法というのはなるほど、働く男 女の職業生活と家庭生活の両立という格好になっています。言わば、家庭生活を持って いる男女の両立支援というようにかなり限定された形になっている。規定の多くがその ような形で、育児介護休業を中心にかかわっているものですから、そのような理解は決 して間違いではないと思います。  むしろ結婚していない、個人の生活との両立もと考えられるのでしたら、均等法の中 でそれを謳うよりは、育介法でそういうものの射程を広げるようなことを考えたほうが 立法政策的にはいいのではないかと思います。感想だけですが以上です。ちょっと、そ ういう感じを持ちました。 ○今田委員  仕事と生活の両立とか、調和という問題と、育児や介護を直結させるというのは、や はり法律の枠組みとしてはまずいと思います。育児・介護は育児・介護、みんな出産し なさい、介護しなさいという法律は別問題ではないでしょうか。おっしゃったように、 別立てのほうがいいと思います。  そのとき、私は「吉宮意見」に比較的近いのですが、やはり男女雇用均等を実現する 基本的枠組みづくりというか、そこに仕事と生活の調和という問題がある。そこは皆さ ん、大きくは異論はないだろうと思います。そのとき、それを同じ法律に入れるという 根拠が大きな、福祉的法的なものを排除して、ピュアな差別法に規定するという推移か ら言って逆行だという議論が1つあります。  もう1つ、そうした2つを同列に並存させることによって、法律のクリアな規制力な どがなくなる。先生方はこれら2つを並行しておっしゃっていて、どちらなのかという 議論が私にははっきり落ちません。  それよりも、吉宮委員がおっしゃっているように女性だけの法律ではなくなって、男 女双方の法律になってくる。衣替えという枠組みの中では、むしろそれを復活させるこ とは問題ないのではないか。かつてのように、女性だけということになったら女性だけ 負わせればいい、それはまずいということで排除したければ、双方のニュートラルな法 律として衣替えされる。それが前提とされるならば、その基礎となる「労働と生活の調 和」を法律の哲学の中にきちんと射程するということは、いまの時代において必要なの ではないか。法律論的に云々があるのかもしれませんが、説得力があるというか。 ○奥山委員  ここにいらっしゃる方のまずすべては、吉宮委員がおっしゃっている、職場での男女 平等を進めていこうといったときに、やはり1人1人の働く男女にとって仕事と生活を 両立させることは、平等を実現するための基盤になるということは誰しも異論のないと ころだと思います。その上で、それをどういう立法の中に政策として打ち出すかという とき、1つには手法の問題ではないかと思います。そういう手法で考えていったとき、 育児介護休業というのは働く男女にとって子供を産み育て、また両親の安心した介護、 家庭のことを確保し打ち込んでいける、ということで能力を発揮できると考えて作って いる法律です。  そのときに、私が法律に射程した場合に育児介護だけに限定するのではなく、むしろ もう少し広く個人の場合、結婚して、子供や両親がいない、個々人としての若い世代で もかまいません。個々人としても、仕事と育児介護も含んだ家族生活、さらに延長での 個人の生活を充実させる方向へと結ぶ。むしろ、いまの話をするのだったら、その法律 のほうの射程で考えていったほうがいいのではないか。昭和47年と49年、女性だけに認 めていた育児の権利というものをなくして、男女平等にしたということは法律の力だと 思います。それを「福祉法的から女性差別法的」と言うならそれでいいのですが、それ だけに限定しているわけではない。均等法は福祉法から差別禁止法に変わったから、福 祉法に戻すなということを言おうとするわけではなくて、福祉法とは関係なく、平等法 の中でも均等法の持っている役割がむしろ、職場での募集・採用や配置という形で出て いくものをはっきりつかまえて、それに対して言わば規制をかけようとしたほうが法律 の枠、目的からすると非常に明確に出るのではないのでしょうか。 ○吉宮委員  新々エンゼルプランで男性の10%が育児休業としている。促進しましょうと言ってい るがなかなか増えない。よく言われるのは職場環境である。上司の理解がないとか、未 だにそこに戻るわけです。例えば、営業職などでそういう慣行がある。女性が少なくて 男性だけ、男性は「育児休業、何を言っているのか」となる。そのような日々の仕事の 積み重ねが男性に育児休業がありながら、残念ながら権利がありながら取れないという 状況の上にある。盛んに言っているのは、まさに雇用の分野が大事である。そこがなぜ 矛盾するのかという。 ○奥山委員  雇用分野が大事だからと言いますが、均等法だけではないのです。 ○吉宮委員  そうですけれども、均等法がメインで、男女双方にしましょうと言っているわけです から。片面性や両面性といったとき、まずそのテーマが我が国が抱えている課題なの で、言わば個人のダイバーシティというか、多様性と企業管理、雇用管理も十分配慮し てやってもらうということがいま問われているのではないかと言っているわけです。そ うしたら、目的にそのことを明記したほうがいいと思います。将来的には、育児介護休 業制度の運用に寄与するのではないかということを申し上げたいと思います。 ○若菜分科会長  重要な問題ですから今後も議論いただいて。 ○石井雇用均等政策課長  先ほどの樋口委員のご質問に対して、また補足させていただきたいと思います。ぴっ たり「仕事と生活の調和」という目的ではないのですが、いわゆる時短法の目的の中で は「労働者のゆとりのある生活の実現」という言葉が入っています。考え方としては、 もっと広い形で表現をしているかと思います。  そしてご案内のとおり、昨年12月17日に労働時間対策の報告、建議が出ています。時 短法の改正が現在論議されている中で、今度新たに指針を作るということも報告の中に 盛り込まれています。その指針の内容として育児・介護・地域活動・自己啓発などを行 う、労働者の実情に応じた労働時間等の設定の開示に関する事項という形、いま目的と 手段という話が出ていましたが、より深く踏み込んだ、内容にかかわるような法案がい ま検討されている状況にあることを報告したいと思います。 ○若菜分科会長  議論は尽きませんが、時間がまいりました。非常に貴重なご議論をいただいたと思っ ています。 ○佐藤(孝)委員  これからの進め方なのですが、今日は(1)の議論でした。次回、何回か予定されて いると思うのですが、これからの議論の進め方はどういう感じで行くのか。イメージが あったら教えていただきたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  論点項目に沿って、順次進めていきたいと思っています。 ○若菜分科会長  本日は以上で終わります。署名委員は岡本委員と吉川委員にお願いします。次回の予 定について事務局からお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  次回は2月9日(水)、午前10時から開催いたします。場所については調整中ですの で、決まり次第ご連絡をさせていただきます。 ○若菜分科会長  本日の分科会は以上で終了します。どうもご苦労様でした。 照会先:雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 法規係 (内線:7836)