05/01/14 予防接種に関する検討会第4回議事録            第4回 予防接種に関する検討会 議事録                           平成17年1月14日(金)                             13:30〜16:30                          於:厚生労働省共用第8会議室                   議事次第        1. ポリオの予防接種について        2. その他 ○江崎課長補佐  それでは、これより第4回「予防接種に関する検討会」を開会させていただきます。 参考人の皆様、委員の皆様、本日御多忙の中御出席をいただきまして誠にありがとうご ざいます。  本日は、岩本委員から欠席の御連絡をいただいております。  また、本日は参考人として2名の専門家の方に御出席を願っております。簡単に御紹 介をいたします。  国立感染症研究所ハンセン病研究センター長の宮村参考人でございます。  国立感染症研究所細菌第2部長の荒川参考人にいらしていただいていますが、本日が 2回目の御出席となっております。  よろしくお願いいたします。  それでは、開会に当たりまして、牛尾結核感染症課長よりごあいさつを申し上げま す。 ○結核感染症課長  委員の皆様方、そして、参考人の先生方、お忙しいところありがとうございます。ま た、本年もどうぞよろしくお願いいたします。  この検討会の一番当初に御案内申し上げましたが、まず、個別のワクチンについて御 議論をいただきたいという趣旨で、第2回目では麻しん、風しん、そして、前回の第3 回ではDPT、インフルエンザ菌b型等について御議論をいただきました。  今日の議題を見ていただきますと、第2回、第3回のまとめと書いておりますが、半 年、あるいは1年後に、先にまとめをするよりは、まだ皆様方の記憶の新しいうちに第 2回、第3回目のまとめについて確認していただきたいという趣旨でございます。改め て議論をするということではなくて、まだ何か疑問があるのか、更に検討しなければな らないのか、あるいは皆様方の意見がまとめに反映されているか、その辺の整理をして いただきたいという趣旨が議題の一つでございます。  それから、本日の議題のポリオの予防接種でございますが、これは既に「ポリオ及び 麻しんの予防接種に関する検討小委員会」の提言をいただいておりまして、基本的には 我々として全くそれを尊重する立場にございますので、その方針に変化はございませ ん。  ただ、提言の取りまとめからもう1年半ぐらい経ったわけでございますので、その間 におけるポリオのさまざまな進展状況、あるいは国際的な動向について宮村先生の方か ら御紹介いただきたいというふうに思っている次第でございます。  ポリオにつきましては、既に根絶に近づきつつあるわけでございますが、まだ若干の 課題も残されておるわけでございます。予防接種としては、種痘に続いて有効性が証明 されたものでございます。  3番目の議題としまして、「(3)0歳・1歳時の接種スケジュールと課題」という ふうに書いてございますが、これはさまざまなワクチンが使用されておりますが、接種 スケジュールが非常にタイトになっていることを考えますと、特にターゲットとしてお ります0歳・1歳時の子どもに対してどのように予防接種を今後していくのか。今日一 回ではなかなか終わらないかもしれませんが、これについても御議論をいただきたいと いうふうに思っております。  とりわけ、海外では多価ワクチンというさまざまなワクチンが一緒になったものも接 種されているわけでございます。我が国ではまだ、DPT以外にはそういったものが導 入されていないわけでございますけれども、安全性の観点から問題がなければという前 提でございますけれども、利便性等も考えると、そういったものの導入も考えていかな ければいけないのかなというふうなことでございます。これも、今回一回では終わらな いかもしれませんが、今日、皆さんの御意見をいただければというふうに思っておりま す。  本日も、どうぞよろしくお願いいたします。 ○江崎課長補佐  それでは、加藤座長、議事の進行につきまして、よろしくお願いいたします。 ○加藤座長  それでは、本日の議事を進めさせていただきますが、今、牛尾課長からお話いただき ましたように、かなり激しく議論をいたしますと時間が足りなくなるほど議題はござい ますけれども、適時、時間を区切りまして御検討いただきたいと存じますが、開始の前 に事務局の方から資料の御確認をひとつお願いいたします。 ○予防接種専門官  それでは、資料の確認をさせていただきます。  まず「議事次第」と書いた紙、次のページに委員、参考人の名簿がございます。  それから「資料一覧」と書いた紙がございます。これは資料1から資料6までをホチ キスでとめさせていただいております。  なお、資料3につきましては次の別刷り、宮村先生の発表についての資料がございま す。  宮村先生から配布いただいた資料で、雑誌『綜合臨牀』の論文のコピーを、不活化ポ リオワクチンに関して準備をさせていただいております。  参考資料1といたしまして、平成15年3月にまとめられました「今後のポリオ及び麻 しんの予防接種に関する提言」。  それから、この検討小委員会で配布されました資料でございますが、参考資料2とい たしまして、日本ポリオ根絶等委員会の報告書。  参考資料3として「ポリオワクチンに関する追加報告」。  以上を準備させていただいております。  なお、傍聴者の皆様におかれましては、参考資料は印刷の都合上省かせていただいて おりますので、御了承いただきたいと思います。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。資料の御確認、よろしゅうございましょうか。  それでは、議題に入らせていただきます。  先ほど、課長からお話がありましたが、議題の1番は第2回、第3回の検討会のまと めですが、まだ記憶が新しいうちにまとめをもう一度見ていただいて御確認いただき、 そして、整理をしていただくということでございまして、何かその間で質疑がございま した場合にはよろしくお願いいたしたいと存じます。  それでは、資料1と2に関して、事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○予防接種専門官  それでは、まず資料1でございます。これは「第2回検討会のまとめ」と書いた紙で ございます。  これは第2回検討会、11月24日の検討会では麻しんと風しんについて御議論いただい たところでございます。その第2回の検討会で先生方にいただいた意見を、座長と相談 の上、まとめさせていただいたものが資料1でございます。  順番に、ざっと説明させていただきます。  最初に「1.麻疹について」でございますけれども、今後の我が国の対策の目標とい たしまして、麻しんのエリミネーション、排除を目標とする。麻しんの排除のために は、麻しんの予防接種の2回導入を行い、より強固な集団免疫の獲得を目指す必要があ るということでございます。  「(2)2回接種が必要な理由」ということで、一般的には「Aprimary vaccine failure 対策」「Bsecondary vaccine failure 対策」「C接種機会の確保」という 3つの目的が指摘されておりますけれども、いずれも不可分のものであり、これらが相 まって2回接種により強固な集団免疫の確保が可能になるであろうということでござい ます。  「(3)接種時期について」でございます。  「A1回目の接種時期」につきましては、現行どおり、1歳直後に接種するのが妥当 ではなかろうかということでございます。1歳未満児への接種についても御意見がござ いますけれども、有効性及び安全性に関する知見が不十分であるということで、定期接 種として実施することは不適当ではないかというまとめであったところでございます。  「B2回目の接種時期」ということでございますけれども、現状では抗体価が5年を 過ぎると減衰し始め、今後は自然流行の減衰により、野生ウイルスによるブースター効 果がほとんどかからず、抗体価の減衰が更に早まることが予想され、接種率の確保の観 点からも就学後よりは就学前が有利であるということから、就学前の時期に実施するの が適当ではないかということでございます。  この場合の留意事項でございますけれども、2回接種を導入した場合にあっても、1 回目、1歳代での接種率が低くなってしまうと、結局、低年齢層での蔓延を防止できな いということから、2回接種の導入に当たっては、1回目の接種率を高く維持すること が大前提であると。  それから、接種歴の確認を、1歳半健診や3歳児の健診、入園時、あるいは就学時の 健診で確認し、未接種者には接種を勧奨することが重要だということでございます。  続きまして「2.風しんについて」でございますけれども、風しんにつきましても、 対策の目標といたしましては麻しんと同様、我が国においてエリミネーション、排除を 目標とするということでございます。  風しんにつきましては、先天性風しん症候群の発生阻止ということが最重要課題でご ざいますけれども、流行の発生を阻止すること、すなわち、風しんウイルスの排除が不 可欠であるということでございます。そのためには、風しんの予防接種の2回接種を導 入し、より強固な集団免疫の獲得を目指す必要があるということでございます。  「(2)2回接種が必要な理由」につきましても、麻しん同様、「Aprimary vaccine failure 対策」「Bsecondary vaccine failure 対策」「C接種機会の確保」と、そう いったことから2回接種が必要だということでございます。  接種時期についての考え方でございますけれども、「A1回目の接種時期」について は、現行どおり、1歳代で接種をする。  「B2回目の接種時期」でございますけれども、1回目の接種後、抗体価が低下を始 めるのは7〜8年、あるいは9年以降であるということから、就学後の時期に2回目を 接種するという考え方もございます。  しかし、就学期に接種時期を設定した場合、高い接種率が期待できないということも ございますので、就学前の時期に実施するのが適当ではないかという意見でございまし た。  「(4)留意事項」でございますけれども、風しんの排除が達成されれば、先天性風 しん症候群の発生もなくなると期待されるが、2回接種を導入した後も排除されるまで の間、今後、数年から10年程度は風しんの局地的流行の発生の懸念が残ると。このた め、20代、30代で接種率の低い年齢層が存在することにかんがみ、当分の間、妊婦の風 しん罹患を防止するための対策、例えば、未接種の妊娠希望者等に対する接種勧奨を行 うことが重要である。  それから、補足的意見といたしまして、就学前に2回接種したワクチンの免疫効果 が、妊娠期間まで持続するかどうか若干の懸念があることから、女性に限定して3回接 種の必要性を指摘する意見があるということでございます。  「3.麻しん風しん混合ワクチンの有用性」ということでありますけれども、風しん の排除のためには、高い接種率を維持することが必要。しかし、麻しんと比較すれば、 接種率も低いのが現状である。このため、麻しんワクチンと風しんワクチンを同時接種 することにより、風しんの接種率の向上を図ることが可能。  麻しん・風しん混合ワクチンが認可された場合には、これを使用することは、「被接 種者の利便性(受診回数の軽減)」「コスト面(接種費用の軽減)」等の観点から有用 である。  以上が、2回目のまとめということで整理をさせていただきました。 ○加藤座長  ありがとうございました。  ただいま、事務局からの御説明がございましたけれども、2回目の討論会のおまとめ でございますけれども、このおまとめについて何か御質問、御意見ございましたらば、 どうぞ。  中には、ちょっと岡部先生の御発言が前回あったと思いますけれども、麻しんは確実 にここ1〜2年、当初は10万人から20万人いたというところが、1歳代ですぐに接種し ようというキャンペーンが実って、数万人に減少しつつあるというコメントをいただい たというように記憶しておりますが、それでも、なおかつ、とどめを刺す意味で2回接 種をする必要があるかどうかというような御意見もあるかとも思いますが、岡部先生、 いかがでしょうか。 ○岡部委員  以前といいますか、最近では2001年前後ぐらいのときのはしかの発生数が非常に多い ということが臨床的にも、あるいは一般の方にも認識されて問題であるとなりました。 これは合併症の多さなんかも含めたんですけれども。それで1歳過ぎて、早くワクチン を接種するということが広く受け入れられ、その結果発生数は2万人、3万人のレベル までは下がってきている。  ただ、そこで現状の容認といいますか、数万人レベルで抑えておけばいいのであると いうならば、今ぐらいの予防接種率の維持でいいわけですけれども、数万人あればかな りの患者さんがやはり入院をする、あるいは肺炎その他での合併症で苦しむ、また、1 万人あれば0.1 %、日本ではもうちょっと低いわけですけれども、そのぐらいの致死率 のある疾患であるということを考えれば、我が国からもっともっとはしかという病気は 少なくしてもいいのではないかという意見を申し上げたと思います。  そしてそれは国内の問題ですけれども、一方、確かに全世界的に見ればはしかが発生 している国はまだまだ途上国を中心にして多いわけですけれども、欧米諸国、いわゆる 先進国でははしかという病気を子どもに対して大きな健康被害の及ぶ代表的な疾患であ るということで、エリミネーションを目標にしている国も増えているのですから、これ も世界でのレベルを合わせながら一緒にやるということも必要でしょう。WHOのWP ROではまだ宣言はしていないわけですけれども、方針を出しているということに日本 も深く協力すべきではないかというふうに思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかに、何か御質問ございますか。  どうぞ。 ○竹本委員  日本小児科医会の調査では、はしかのワクチンについて、金銭的な面ですが、まだ無 料化がされていない市町村が数十か所残っているということです。  この予算に関しては市町村に任されている訳ですけれども、本当に日本でこの麻しん あるいは風しんで、沖縄の悲劇みたいなことを繰り返さないために排除するのであれ ば、むしろ一般財源ではなくて、これに関しましては老人保険と同じように、はしかに 限って予算立てをするとかの形にしていかないと、なかなか排除するということはでき ないのではないかと思います。  小児科医会が、今、各県でいろいろ相互乗り入れをしておりますけれども、有料であ るところではやはり接種率は下がるのではないかと思いますので、その辺も考えていた だければと感じます。 ○加藤座長  ありがとうございました。有料化されているところもあるので、財源の問題について も御考慮いただきたいという御発言でございました。  ほかに、はしか、風しん、全体的にいかがでしょうか。  荒川先生、宮村先生、特に何か御意見ございましたらいただきたいのですが。 ○荒川参考人  特にございません。 ○加藤座長  宮崎先生、CRSが防止するという意味で、2回接種をすることによってそれを強力 にするということだと思いますけれども、それに間に合わなかった方、または漏れてし まった方、接種しても付かなかった方等が出てくる可能性もあります。  平成16年にはCRSが10人出ているというふうに聞いておりますが、成人の風しん のワクチンに関しても、前回、ちょっと産科側の委員からの御意見もありましたが、そ の辺も兼ねて、子どもたちというよりも成人でまだ抗体のない方々に対する対応につい て、いかがでしょうか。 ○宮崎委員  流行を抑え込むことによってCRSをなくそうと。それで、2回接種に持っていくと いう基本はいいんですけれども、今から受けていく子はそれで本当に守られますが、 今、先生が言われたように、かなりの数の感受性者が残っているというのが風しんの弱 点の一つであるわけです。そこに関しては、こういう予防接種法の範囲をどこまでカバ ーするか。  例えば、2回目をここでやった方がいいという原則、プラス、もう少し法的にカバー できる枠を広げられないかどうかということと、法の範囲外でも別個のキャンペーンな り指導なりをやっていくという2本立て、3本立ての対策が必要になって、これを実現 するには、産婦人科、ないし内科等の御協力なしではいかないのではないかというふう に思っております。 ○加藤座長  ありがとうございます。  これらの対象者に対して、果たしてキャンペーンをすることだけで事足りるかどうか ということが一つの問題であると思われまして、国の対策として、ただキャンペーンを 張ればよいかどうかと、さもなければ、もう少し違う手当ても検討していく必要が十分 にあるであろうと。こういうことでよろしゅうございますか。 ○宮崎委員  よろしいです。 ○加藤座長  ほかに、何か御意見、御質問ございますか。  どうぞ。 ○江崎課長補佐  専門家以外の立場という観点から御質問したいんですけれども、麻しん、それから、 風しんの予防接種の2回接種の有用性については、この検討会でいろいろ御意見を伺っ たところなんですけれども、例えば乳幼児に1回、それから、就学前に1回やることに ついて、例えば2回目に副反応といいますか、そういうものが多く発生するような、そ ういう注意すべき点というのは今まで事例がないんでしょうか。 ○加藤座長  今の課長補佐からの御質問は、1回接種の経験は日本ではあるけれども、2回接種を ルーチン化してきた場合に、2回接種によって効果は十分に上がるだろうと思われるこ とは確かだが、副反応に関してはいかがでしょうかという御質問なんですけれども、岡 部先生、いかがでしょうか。何か御意見ございますか。 ○岡部委員  1回目を接種することによって起きる副反応の多くは、軽微なものも含めて、多くの 場合ははしかが生ワクチンであることによる副反応。それが熱であり、発疹であると。 それから、熱によって誘発される熱性けいれん。それから、ウイルスが増殖するかもし れない、例えば、急性脳炎のような形まで含まれるわけですけれども、多くの場合はワ クチンが増殖することによって起きるわけですから、2回目の接種はむしろそういうも のについて多少の免疫があるのであれば、初期にウイルスが増えるということではない ので、それによる反応が増えるということはないだろうと思います。  ただ、同種のものを入れることによる過剰反応といったようなことも不活化ワクチン ではあるわけですけれども、生ワクチンではそういう反応がないということもあります から、少なくとも2回目の接種によって副反応の発生率が増加するというようなこと は、一応、理論的にはないだろうというふうに思います。  それから、これは日本製ということではないでしょうけれども、既に多くのところで は2回接種、MMRあるいは麻しん単独というような形で2回接種をやって、その2回 接種であるがゆえに何らかの反応が多く出ているというレポートは今のところないので はないかというふうに思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  宮崎先生、風しんに関してはいかがでしょうか。 ○宮崎委員  今、岡部先生がおっしゃられたとおりかと思うんですけれども、日本では2回打つと いう経験が余りないので、そういう意味では国内データはほとんどないと言ってもいい わけです。  風しんワクチンは生ワクチンですけれども、1回目接種後の発熱や発疹の率ははしか よりははるかに低いということで、1回目で抗体ができてしまっている人は2回目は逆 にほとんど臨床反応を起こさないだろうということで、はしかと同様に、一般的に言う 副反応の発生率はむしろ下がる可能性の方が高いと思うんです。  あとは、ワクチンに含まれるいろんな成分が2回打つことによって多少過剰になるか どうかですけれども、幸いにして、例えばゼラチンなどの添加物の問題がかなり生ワク チンでも整理されてきましたので、私は余り懸念はしていないんですけれども、実際に やるということになれば、やはりモニターをしていくということになると思います。  諸外国では、特に風しんに関しても問題になっていないと思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  宮村先生、ウイルスの立場からいかがでしょうか。 ○宮村参考人  私の経験はポリオの話です。後でお話をいたしますが、ポリオは生ワクチンで2回や るというワクチンです。  ポリオワクチンの副作用には圧倒的に初回の免疫のときに出て、そのメカニズムはま だよくわからないわけですが、ほとんどがホストの方の反応であるとされています。そ うすると先ほど岡部先生が言われたような麻しんや風しんに関してもこの考え方が適用 されて、ポリオではそれが実証されているというふうに思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  今の課長補佐からの御質問には3人の委員から御返答がございましたけれども、日本 では経験はないけれども、他の国ではワクチンは異なるけれども、そういう経験はあっ て、特に問題は今のところ起きていないということとか、あとは、最初のワクチンの方 がより強い反応が出てくる可能性があるであろうということが推測されるということで す。  それから、宮崎委員の御意見もそのとおりでして、結局、2回接種を行うために新た な研究をするというよりも、むしろ、2回接種を行うことによって病気そのものを排除 するということを優先的に考えて進行しつつ、ワクチンの安全性というものは、新しい ワクチンであれば市販後調査ということになると思います。それに似たような施行後の 調査を通じて、副反応が出ないであろうということを証明していく以外にないのではな かろうかという御意見だと思いますが、よろしゅうございましょうか。 ○江崎課長補佐  はい。 ○加藤座長  ほかに、御意見ございませんか。  それでは、ないようでしたらば、その次に第3回の検討会のまとめをお願いいたしま す。 ○予防接種専門官  続きまして、資料2「第3回検討会のまとめ」でございます。これは12月22日に開催 されました第3回の検討会で、ジフテリア、百日咳、破傷風、それから、Hibについ てのまとめでございます。  まず、最初に「1 ジフテリア、百日咳、破傷風について」でありますが、我が国で は、ジフテリア、百日咳、破傷風については、DPTワクチン、あるいはDTワクチン の接種により、おおむね発症は阻止されています。ただし、疾病の性格上、ワクチン接 種率が低下すると、再び患者数の増加が予想されるため、引き続き、ワクチン接種の持 続・強化が必要である。  百日咳については、最も重症化しやすい1歳未満の患者が圧倒的に多いが、現在DP Tワクチンの接種率はこの年齢層を十分に守れるようには行われていない場合が少なく ない。このため、対象年齢、生後3か月に達した後、可能な限り早く接種を行い接種率 向上を図ることが重要である。  百日咳については、相対的に患者数増加が指摘されております青少年、成人の患者か ら、乳幼児に対し家族内感染を起こしている事例が報告されている。また、海外では青 少年・成人に対し百日咳ワクチンを含むDPTワクチンの接種を勧奨している国があ る。このため、我が国でも、現行DT2期接種に代わりDPTを導入すべきではないか という意見がございました。  これにつきましては、2期接種としてDPTを導入した場合の中・長期的な効果等に ついては知見がまだ必ずしもないということでございますので、定期予防接種としてど うするかということについては、引き続き検討が必要ではないかというふうなことで考 えております。  破傷風は、主として40歳以上の年齢層で発生しているが、このことは乳幼児への破傷 風ワクチンが導入される以前に出生した年齢層である40歳以上の者において破傷風の抗 体価が低いというデータと一致をすると。そのようなまとめであったかと考えておりま す。  続きまして、「2 インフルエンザ菌b型について」でございます。  インフルエンザ菌b型、Hibは、乳幼児の全身感染症の起炎菌であり、乳幼児にお ける細菌性髄膜炎の主要菌である。我が国では年間500 〜600 名程度のHib髄膜炎が 主として5歳未満児に発生しており、15%程度は予後不良である。  海外では、Hibワクチンを導入する国が増えており、我が国の小児科医の間でHi bワクチンへの期待が高まっている。しかし、一方で、海外で生産されているHibワ クチンは、他の国産ワクチンと比べエンドトキシン量が多いなど、安全性についての若 干の懸念があるということでございます。  Hibワクチンの定期予防接種への法律上の位置づけということにつきましては、今 後、有効性、安全性、費用対効果等のデータを収集した上で、引き続き検討が必要では ないかと。このようにまとめさせていただいております。 ○加藤座長  ありがとうございました。  この細菌性ワクチンについて、このようにまとめていただきましたけれども、何か委 員の間で御意見、御質疑ございましたら、どうぞ。 ○荒川参考人  5ページ目の2つ目のパラグラフの3行目の辺りなんですけれども、「年齢層を十分 に守れるようには行われていない場合が少なくない」という表現で、否定が2回続くの で少しわかりにくいかなと。「守られるように行われているとは言い難い」とか、「行 われているとは必ずしも言えない」とか、そういう表現の方が、この「行われていない 場合が少なくない」という表現よりも理解しやすいのではないかというふうに思いま す。  もう一点は、6ページの2行目、海外で生産されているHibワクチンの中には、他 の国産ワクチンと比べエンドトキシン量が多いものが一部にあるなどというふうに、す べて海外のものが高いかどうかはわからないです。調べたものは一部ですので、海外で 生産されているHibワクチンの一部には、他の国産ワクチンと比べエンドトキシン量 が多いものがある、などというような表現に変えていただければよいと思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。そんなように、まとめの中で語句の訂正をさせていただき ます。  いかがでしょうか。ほかに御意見ございませんか。  DPTに関しては、成人の百日咳の関与の仕方をかんがみたときに、第2期にDPT を導入するかどうかということを今後検討すべきであろうということが加えられまし た。  また、Hibワクチンに関しては、先進国においてはどこでもやられているワクチン であって、前回の御発表にもありましたとおり、なぜ日本でこれが導入されていないの かが不思議であるというのが国際的な意見であって、日本という国に対する世界の目は そういう目で見られているということは現実であるという御発表が前回ありました。  しかし、このワクチンに関しては、今、荒川先生からも御発表がありましたけれど も、とりあえず治験が終わっておりまして、これは今、審査を待っている段階でありま すので、適切な治験が行われているとすれば迅速な審査を行っていただきたいというの が、この検討会からのお願いだということになろうかと思いますけれども、何か御意見 ございましょうか。よろしゅうございますか。  どうぞ。 ○雪下委員  前回、私、休ませていただいたんですけれども、ちょっとお尋ねしたいんですが、破 傷風のところで40歳以上の年齢層で発生しているということで、これは乳幼児期に破傷 風ワクチンの導入される以前の人たちだということですが、これは乳幼児期にやった破 傷風のワクチンというのが40歳くらいまで抗体が維持されていると考えてよろしいのか どうか。  私は外科なんですけれども、汚い傷に対しては破傷風のトキソイドを接種するという ことが割合、普通に行われているんですが、その辺のところをちょっと教えていただけ ればと思います。 ○加藤座長  これは、私ども臨床家と、荒川先生のところのジフテリア班の感染研の先生方と共同 で研究をした結果を前回お出ししていただいたと思いますけれども、ジフテリアの場合 には抗毒素量が年齢が経ってもずっと維持されているという、きれいな抗毒素量が出て まいります。そのことは恐らく、前回も御発表になったとおり、地上にはまだジフテリ ア菌がたくさんいて、自然のブースターがかかっているからにほかならないだろうとい うことで、逆を言えば、ジフテリアに関してのワクチンを中止することは危険であると いうことの裏返しになるだろう。こういうふうに感じます。  また、一方で破傷風は人から人への感染がございませんので、雪下委員がお話しにな ったとおり、破傷風の抗毒素量は30歳後半に明らかに低下しています。破傷風はジフ テリアと異なり自然のブースターが期待できませんので、この事実はワクチンによって 維持される流血中の抗毒素量の推移を示しているものと考えられます。親からもらった 抗毒素量はそこまではもちません。私の経験では1か月か2か月でなくなりますので、 したがって、外から与えた抗毒素量の維持が大体35年間ぐらいは続いていたのであろう というふうに考えざるを得ないということでよろしいのかと思いますが、よろしゅうご ざいましょうか。 ○雪下委員  そうすると、やはり35か、それ以上の人については破傷風の感染の疑いのある場合に はやはり接種していい、接種すべきだということでよろしいのでしょうか。 ○加藤座長  接種しなければいけないというふうに考えております。これは私の独断の意見ですけ れども、全体的にすべての不活化ワクチンに関しては、不思議なことに、すべての抗体 がなぜか9年経ちますと下がってまいります。したがって、10年ごとに不活化ワクチン を接種しましょうという動きが米国等にありますけれども、その理論が裏づけされてい ます。  Stanley Gottlieb はジフテリアの抗毒素量の研究結果から抗体は追加接種後4年 まで徐々に低下して行き、その後はプラトーとなると発表しています。私の研究結果に よれば9年後に有効血中濃度を下回る例が出てまいります。ブースター後の抗体量と比 例してくるんですけれども、なぜか9年後になくなってくるということは事実のようで ございます。 ○雪下委員  ありがとうございました。 ○加藤座長  いかがでございましょうか。ほかに、何か御意見ございますか。  どうぞ。 ○荒川参考人  40歳ぐらいから抗体が下がる理由として、ワクチンを打ってから期日が経って下がっ てきているということと、もう一つはやはり、この表現が少しあれですけれども、ワク チンが導入される以前に出生した方というのは多分、今、年齢的には50ぐらいか、もう 少し上ぐらいかなと思うんです。ですから、この「ワクチンが導入される以前に出生し た年齢層である40歳以上」という表現はちょっと正確性に欠けるかなという気がしま す。  ですから、この「40歳以上」というところを少し直されるか、あるいは文章を少し補 足していただいた方がよろしいかなという気がします。 ○加藤座長  荒川先生の御発表は、明らかに大体35歳から40歳ぐらいで完全に抗毒素量が減ってお りますので、それがワクチンが導入される以前かどうかということと直接関連はないの で、その部分だけ消すということでよろしいでしょうか。 ○荒川参考人  はい。 ○加藤座長  それでは、ワクチンとの関係という言葉は消しまして、事実関係だけを書くというこ とでよろしいでしょうか。 ○荒川参考人  はい。 ○加藤座長  それでは、そのように訂正させていただきます。  ほかに、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。  どうぞ。 ○宮崎委員  荒川先生にお聞きしたいんですけれども、一部のHibワクチンにエンドトキシンが 少し多いものがあるということですけれども、こういう懸念を払拭するためには臨床で データを固めるしかないのか、またはこれぐらい含まれていても大丈夫というのをラボ 的に確認できるかという、検討の方法論としてはどう考えたらよろしいでしょうか。 ○荒川参考人  まず、この前もお話ししましたように、Hibワクチンというのは成分が多糖体です ので、完全にそこからLPSを完全に除去するというのは技術的には可能なんですけれ ども、多分、それをやりますと非常にコストにはね返ってきます。ですから、許容され る範囲でできるだけ下げるということが必要だと思うんです。  今回、治験に用いられたロットについて、一応、感染研の方でエンドトキシンのレベ ルを測定しました。ですから、少なくとも今回の治験の範囲では、ワクチンを受けた方 々の中に重篤な副反応があったという方はおられないようなので、少なくとも日本に輸 入されるワクチンについては、治験に用いられたロットのエンドトキシンレベルと同等 か、あるいはそれよりも低いものを選んで日本に入れてもらうように輸入メーカーに求 めていくというようなこと、例えばそういうようなことを求めたり、あるいは、やはり Hibワクチンというのは、どうしても現行のDPTよりは一味違うワクチンである可 能性がありますので、そのことをお母さん方に十分に理解していただいた上で使ってい くというような、一方でリスクコミュニケーション的なキャンペーンみたいなことも必 要かなというふうに思いました。 ○宮崎委員  ありがとうございました。 ○加藤座長  荒川先生、御専門なので1つだけお聞きしておきますけれども、以前、日本で使われ ていたホールセルの百日咳ワクチンのエンドトキシンレベルと比較して、このHibは いかがですか。 ○荒川参考人  ホールセルと比較しますと、平均しますとかなり低いところにあります。  ただ、これまでもお話ししましたように、幾つかのロットを調べてみますと、このエ ンドトキシンの量のばらつきが非常に大きいです。非常に高いものも中にあるし、ホー ルセル並みのものもあるし、あるいは比較的低いものもあります。ですから、多分、こ れは製造工程の処理のほんの少しの違いによってそういう差が生まれているというふう に思うんですけれども、中にはホールセル並みのエンドトキシンが含まれているものが 混じってくる可能性が十分ありますので、そういう点については、やはりそういうこと があり得るんだということを十分理解した上で行政的な判断をしていただく必要がある のではないかというふうに思います。 ○加藤座長  どうぞ。 ○岡部委員  日本で使用するワクチンなので、当然、日本のミニマムリクワイアメントに一致した ものでないといけないと思うんですけれども、このエンドトキシンのレベルは、日本で はたしかチェック事項としてリクワイアメントに入るんですね。今回のデータはそれを 超えたものがあるのかどうかという質問と、海外においては、そのエンドトキシンを測 定するということは、ワクチンに関するミニマムリクワイアメントとして入っているの かどうか、教えてください。 ○荒川参考人  まず、最初の御質問に対するお答えですけれども、少なくとも感染研で取り寄せて、 あるいは入手して調べたHibワクチンのエンドトキシンレベルは現行の国内基準を超 えます。  もう一つは、2つ目の御質問ですけれども、エンドトキシンの、ちょっと先生の御質 問の意味がわからなかったのですが。 ○岡部委員  安全性基準の中に、エンドトキシン測定は海外のワクチンにおいては海外で行われて いるかどうかという質問です。 ○荒川参考人  一応、試験法は設定されていますけれども、基準を設定されていない場合はありま す。というのは、やはり先ほど申しましたように、基準を設定してしまいますとそれで クリアーできないものが混じる可能性がありますので、多分、そういうことで設定して きていないのではないかと。  それで、現在の生物製剤基準、もし、日本にこれを導入するということを想定してつ くられた生物製剤基準案がありますが、その中には、私の知っている限りではエンドト キシン試験法と、その基準値は設定されておりません。  海外については、先ほど申し上げましたように、試験法はありますけれども、これは 日本の局方と同じような、そういう試験法は設定されていますけれども、このHibワ クチンについては、基準値については定められていないものが多いというふうに理解し ています。 ○宮崎委員  もう一つ、追加で関連で。  そうしますと、日本に入ってきて、検定を受けて、市場に出てくるものはより安全で あるというふうに理解してよろしいですか。 ○荒川参考人  いえ、日本でもしHibワクチンの検定基準あるいは生物製剤基準に、エンドトキシ ン試験とエンドトキシン値の基準値を設定しないということになれば、これを国内で試 験することはできませんので、安全かどうかということについては、検定ではエンドト キシンについてはデータを得ることができなくて、判定の対象外ということになりま す。 ○加藤座長  いろいろ議論はあると思いますけれども、Hibワクチンに関しては、エンドトキシ ン等の問題はあるにせよ、日本においては5歳未満の子ども10万人について約十人、年 間に600 人の子どもたちが重症な化膿性髄膜炎に罹患している。私どもの行った疫学調 査では27.9%に重大な後遺症、難聴が見られました。このような病気であるところ から、全世界で先進国では接種されているわけでございます。  したがって、ワクチンのエンドトキシンのよしあしはまた違うところで論じていただ くとして、この検討委員会としては、Hibワクチンは日本においても必要なワクチン であるということは、皆さん、総意として御賛同いただけると考えますが、よろしゅう ございましょうか。                (「はい」と声あり) ○加藤座長  それでは、そういうことで、いろいろ議論は尽きないと思いますけれども、今日は先 が詰まっておりますので、先に進ませていただきます。  次の議題でございますけれども、今までの議論でいろいろありましたけれども、報告 書のまとめの段階で再度議論をする機会もあると思いますので、そのときにまた議論さ せていただきますが、議題の「(2)ポリオの予防接種について」というところに移っ てまいります。  ポリオの予防接種の在り方に関しましては、今日配布されてございます平成15年3月 にとりまとめられました「今後のポリオ及び麻しんの予防接種に関する提言」というの が出されておりまして、この中で不活化ポリオワクチン、IPV導入の方向性が明らか にされております。しかし、残念ながら、IPVの導入が遅れているのが現状でござい ます。  しかし、一方、国際的にはポリオの根絶計画が進捗中でございまして、根絶後のワク チンの戦略についての議論がWHOで活発化していると伺っております。  まず、議論に先立ちまして、事務局の方から提言の内容を簡単に御紹介いただいた後 で、宮村先生から最近の国際的な動向、ポリオ根絶計画の動向について話題提供をして いただくという予定にいたしておりますので、まず、事務局の方からお願いいたしま す。 ○予防接種専門官  それでは、参考資料1に基づいて御説明させていただきます。「今後のポリオ及び麻 しんの予防接種に関する提言」です。  最初の方は麻しんについてまとめられておりますが、5ページの真ん中あたりからポ リオについて記載がございます。  「2.ポリオ」の「(1)現状認識」の「2)患者発生状況」でございます。  我が国のポリオ患者数は、かつては年間1,000 人以上の患者が発生していたわけでご ざいますけれども、ポリオ生ワクチンの導入後は激減しているということであります。 1980年の1例を最後に、我が国では野生株のポリオウイルスによる患者は発生していな いということであります。  「3」ワクチンについて」でありますが、ポリオワクチンにはOPV(生ワクチン) とIPV(不活化ワクチン)があります。  生ワクチンは、感染性のある弱毒化ポリオウイルスを経口的に投与し、血中抗体だけ でなく腸管免疫が付与されること、免疫の持続が長時間であること、投与法が簡易であ る、注射器材などを用いないで廃棄物処理の懸念もない、値段も安いということで、途 上国で中心に世界中で利用されているということであります。なお、生ワクチンを使用 している場合には約四百四十万人に1人の割合で麻痺が起こると。あるいは、2次的な 感染が約五百八十万人に1人の割合で発生するという状況であります。  一方、不活化ワクチンの方は、接種方法はその他の多くのワクチンと同様、感染性を 失わせたウイルスを皮下接種する。したがって、腸管免疫は導入できないが、血中抗体 を上昇させることができる。被接種者に麻痺を引き起こすことなく、かつ、接種者の周 囲に感染を起こすことがないという特徴があります。  「4」世界の状況」については、後ほど、宮村先生から最新の情報を提供いただける かと思います。  次の「(2)今後の方策」であります。平成15年3月にまとめられた提言でございま すが、ポリオワクチンの不活化ワクチンへの変更についてであります。  まず、現在、世界的な根絶の計画が遅れている状況で、今後のポリオの予防接種を中 止する期日も明確化されていないという状況で、ポリオの予防接種を中止することはで きない。しかし、ポリオ生ワクチン(OPV)を使用し続けると、頻度が非常に低いと はいえ、ワクチン由来のポリオ麻痺の発生する可能性が続くこととなる。したがって、 我が国において、ポリオワクチン接種の継続は必要であり、生ポリオワクチン由来によ る麻痺を防止する方策として、不活化ワクチンの導入の導入が必至である。  そこで、近い将来、我が国におけるポリオの予防接種を生ワクチンから不活化ワクチ ンに変更することを前提とし、円滑な移行が行われるように具体的な準備を早急に始め るべきであることを提案する。  しかしながら、いまだ我が国で認可されている不活化ポリオワクチンは存在しないた め、安全性、有効性が高い不活化ワクチンの早期の導入と安定供給体制が取られるよう 関係者は努力する必要があるということであります。  次の「Bポリオワクチンによる2次感染者に対する救済について」であります。  これは2次感染者の発生について救済が必要ではないかということでありますが、こ の提言を踏まえまして、平成16年度から予算措置による2次感染者救済事業をスタート しております。  続きまして、「2)導入すべき具体的ワクチンとその接種時期についての提言」であ ります。  A単味ポリオ不活化ワクチンが導入された場合には、高い接種率を保持するように利 便性を勘案し、現行では医師が必要と認めた場合に行うことができる複数のワクチンの 同日接種を、不活化ポリオワクチンとDPTにおいては積極的に推奨する。  B接種率の向上を図る方策として、今後、DPTワクチンと不活化ポリオワクチンの 混合ワクチンの導入が望ましい。  C同日における単独・混合接種いずれの場合でも、現在のDPT接種時期を変更する ことなく行えることが理想であるため、フランス、ドイツ等のヨーロッパ諸国で使用さ れている方法に準じて、以下の方法で行うことを希望するということでありますが、1 回目、2回目、3回目については標準的には生後3〜12か月未満で、4回目は、3回目 を行った後、12〜18か月以降に行うというスケジュールが推奨されております。  「3)導入する場合の留意事項」でありますが、上記方策でポリオの不活化ワクチン を導入するためには、予防接種率を現在の高い状態で維持する必要がある。また、不測 の流行対策のため、不活化ワクチン導入後も、当分の間、生ワクチンを備蓄することに ついて検討する必要がある。  「(3)今後しなければならない研究・調査課題」といたしまして、今後は、上記施 策実施のため、A国内でのポリオ由来麻痺発生状況についてのサーベイランス、ポリオ ウイルスの発生のサーベイランス、更には抗体保有状況のサーベイランスを強化し続行 する、B不活化ワクチン導入後の効果・安全性について継続して監視を行うことが必要 と考えられる、ということが提言でまとめられております。 ○加藤座長  ありがとうございました。  この提言は、1年半ほど前に出されたものでございまして、特に御質問はなかろうか と思いますので、引き続いて宮村先生から本日のプレゼンテーションをお願いいたした いと思います。よろしくお願いいたします。 ○宮村参考人  それでは、ポリオ根絶計画について、国際的動向を中心に現況を述べさせていただき ます。1年半前のことから相当変化が、予想どおりの変化と、予想もしなかったことが あります。こういうことを踏まえて、それぞれの国はそれぞれこの状況を踏まえた上 で、自分たちのワクチン対策を確立することが必要だということを詳しく述べたいと思 います。 (PW)  今日は、まず第一に、皆さん御専門ではありますが、ポリオの対策を考えるときにほ かの感染症と違ってどうしても念頭に置かなくてはならないことが2つ、3つあります ので、そのことを述べます。  それから、WHOが1988年から世界ポリオ根絶計画を立てまして、一応は、いろんな 紆余曲折を経ながら進行しています。しかし、ここへ来まして、大きな問題点が2、3 出てきたことをお知らせいたします。  そういうことを踏まえて、それぞれの国がどういう立場で、何を考えて最善の方策を 立てているか。  その1つは、IPVの導入でありますが、その現況と問題点。  それから、私たちは世界のポリオ根絶計画、ポリオウイルスは確かに着々と地球上か ら減っていますが、最終的には天然痘に次いで野生株ウイルスを世界からなくしてしま う。野生株ウイルスどころか、ポリオウイルスと名の付くものすべて世界のフィールド からなくしてしまう。これが達成されれば同時にワクチンをやめてもいいということに はなると思います。それが究極の目標ですが、そこへ行く過程にはどういうステップを 踏んでいったらそれができるかと。そこには今までと違ったワクチン戦略が必要ではな いかということを提言したいと思います。 (PW)  まず第一に、釈迦に説法ですが、ポリオのことを申し上げます。これがポリオの教科 書に書いてある最大の特徴です。  ポリオウイルスに感染した人のほんの1%か2%、あるいはもっと少ないかもしれな い、そういう人たちだけが麻痺という症状を起こします。大半は症状を起こさない、起 こしてもかぜ様の症状を起こす人たちです。  しかし、このような感染者にも同じようにウイルスは増えます。増えたウイルスは糞 便中に排泄され、一般に考えられるよりも長く排せつされ続けます。 (PW)  このように、一番左のカラムは「Acute flaccid paralysis 」。一番左のこのカラム は、麻痺を起こした患者で100 人に1人ぐらい。そして、マイナーなかぜ様の症状。ほ とんどは感染をしても「Asymptomatic」な経過をとるという、これがポリオウイルス感 染の最大の特徴です。 (PW)  もう一つの特徴は、急性の弛緩性の麻痺を起こすのはポリオだけではないということ です。ポリオウイルスだけではない、ポリオウイルスと同じグループに入ります 「Coxsackie virus 」というエンテロウイルスは、その頻度は少ないけれども、ポリオ と同じような麻痺を起こすことがあります。コックサッキーやポリオ以外のほかのエン テロウイルスでも麻痺を起こすことがあります。  このように、ポリオだけがAFPを起こすわけではありません。ウイルス疾患以外に も非ウイルス性の「Guillain-Barre Syndrome 」とか、「traumatic neuritis」とか、 「transverse myelitis 」という外傷性の理由によって同じような「Acute flaccid paralysis 」を来します。  WHOの根絶計画ポリシーは、この「Acute flaccid paralysis 」の患者を見つけ て、その中でポリオウイルスが見つかった数をゼロにしようという目標でありますか ら、この「Acute flaccid paralysis 」を世界中でなくすわけではありませんし、 「Acute flaccid paralysis 」をなくす手段はポリオ以外にはないのであります。 (PW)  そういうことを踏まえたままで、1988年にこの計画がスタートをしたわけです。  1988年には、少なく見積もっても世界中で35万人のケースがあり、そのポリオがまだ 国として蔓延している国は125 か国あったわけです。それが、2004年には去年1年では 1,170 ケース。そして、125 から6ヵ国に減りました。 (PW)  WHOでは、毎週、分離されたポリオのウイルスの状況を世界中に配布しておりま す。  これは去年の5月25日の時点で、おととし、2003年5月26日からの1年間にこれだけ の国々で、赤い丸は1型野生株、ブルーのウイルスは野生型の3型のウイルスが分離さ れた患者一人ひとりについてこのようにドットで表しまして、配布していきます。1年 間でこれだけあるということです。  これが、2004年、去年5月にその前の1年間から発生したもの。それで、こういうふ うに着々と減ってきたわけであります。 (PW)  これは今朝送られてきた2005年1月4日から2004年1月5日まで、この1年間のスポ ットであります。  先ほどの地図と比較してみますと、話は逆になっているわけです。先ほどのケースで は6か国でありましたが、もはや6か国ではなくて、もっと感染が拡大しています。数 が増えているだけではなくて、ポリオ患者を出している国の数が増えているのです。ア フリカでのホットスポットはナイジェリアとニジェールのここの一部です。ここの株が 周辺国に流入してポリオ麻痺を起こしています。  先ほどから申し上げているように、これは麻痺を起こした人から分離されたウイルス でありまして、この麻痺患者1人の周辺には100 人から1,000 人以上の非麻痺性の感染 者がいるというふうに考えられる。氷山の一角を見ていてさえも、こういうことになっ ております。 (PW)  この表は毎週送られてくるわけですが、これがそのまとめであります。  ちょっと見にくいかもしれませんが、必要な方は後でこれを配布いたしますけれど も、この濃いイエローのところは、先ほどから言っています6か国に絞られた、その6 か国であります。大きく分けて、この6か国はサハラ以南のアフリカの地域とインドの 地域に分かれます。  インドの方は、2002年に大流行がありました。それまでずっと減っていたんですが、 1,600 、200 台、200 台とこうして減っていたんですが、2002年にポリオの大流行があ りまして、1,600 人に達しました。これが2002年には根絶計画の大問題になりました が、その後、2003年には減りまして、インド、パキスタン、アフガニスタンという、こ のインド大陸の数は幸いにも2004年は2003年に比べて減りまして、ここは一応、減りつ つあるという方向に向かってきました。しかし、この間にアフガニスタンといろんなコ ンフリクトのある地域が含まれていることは忘れてはなりません。  それで、問題は、このナイジェリアであります。ナイジェリアは2000年に28例、2001 年に56例、2002年に202 例、2003年に365 例、2004年に700 例と、倍倍倍と、ぐんぐん 増えていくという、これはほかの地域では考えられないような発生状況です。  その中心は、ナイジェリアとニジェールの国境を接しています特定の地域でありまし て、そこはいろんな理由でワクチン接種率が非常に低いとされています。9.11の後の一 つの影響と考えられてもいるのですが、ワクチンの接種率が非常に悪いところがあるの です。それが大きな理由となりまして、ナイジェリア全体としては、これは大きな流行 と言っていいぐらい増えております。  その余波を含めまして、このスライドはいろんなことを物語っています。その近隣国 でありますニジェールもナイジェリアと同じように倍倍で増えている。それどころか、 その周辺、今まで0であったスーダンとか中央アフリカ共和国とか、ほかの国へもこの ウイルスが伝播して、麻痺患者が出ているということで、現在、チャド、コートジボア ール、ギニア、マリー、ブルキナファソ、ベニン、トータル合わせてまだ17か国、去年 は13か国に減ったと言って喜んでいたのが、17か国に増えているということでありま す。  これが現状で野生株がまだ完全に駆逐されていないどころか、患者の数は増えている ではないかということにここ1〜2年でなってきたわけでありますが、ただし、このこ とをポジティブに考えるならば、先ほどのナイジェリアを含めて、ナイジェリアには、 今、WHOが最後のむちを入れておりまして、非常にイクステンシブなワクチネーショ ンがなされております。  それから、もう一つ大きなことは、これらの国々で分離されるウイルスの遺伝子の塩 基配列をCDCと感染研と南アフリカ連邦の国々と国際協力をいたしまして、すべて決 めております。  その結果、わかったことは、我々がまだ知り得ていないような新しい株、クローンと いうのは存在しなくて、今まで既に存在していたウイルスがそのまま完全に駆逐されず にまだ残っている過程にあるとのだと言うことができます。それは言い換えれば、サー ベイランスとワクチネーションの2本柱をより徹底していけば、これからだんだん数が 減っていくことが想定されるわけです。この現況を非常にネガティブに取るか、希望が あるのだというふうに取るか。WHOは、当然のことながら、非常にポジティブに考え まして、あと一息だと頑張っているわけです。 (PW)  ところでWHOの世界はアフリカ領域、アメリカ領域、イースタンメディタレニアン 領域、ユーロピアン領域、サウスイーストエイジャン、ウエスタンパシフィックという 6つの領域に分かれております。  御案内のように、アメリカでは1994年に、ヨーロッパでは2002年に、我がウエスタン パシフィックでは2000年にそれぞれの地域での根絶宣言が出されまして、2003年、2004 年に至りましても野生株によるポリオの発生は、世界の6つの領域のうちの3つの領域 で0、ポリオフリーの状態が保たれているわけです。  そこの問題は、こういうポリオフリーの領域と、ポリオフリーでないところとの領域 とが混在しているわけであります。アフリカの方を見ますと、アフリカではまだ2003年 から2004年に増えているという領域があります。イースタンメディタレニアン地域で も、また増えているのであります。  最後まで残ると思われていたインドでも、むしろインドを含むサウスイーストエイジ ャン地域では戦争にもかかわらず、だんだん減ってきております。世界全体から見ると 野生株がまだ残っているところと、ポリオフリー状態を維持しなければならない領域と が混在しているということが、ただ野生株が残っているということ以上に大きな問題で あります。というのは、このポリオをフリーに保つのは結果としてただフリーに保って いるわけではありません。それは徹底的なワクチネーションを維持して初めてこの目標 が達成されているのだということを強調したいと思います。 (PW)  これが野生株ポリオの根絶状況の現状の一面であります。もう一つ、最近わかった大 きなことは、ポリオ根絶の最終段階での課題は、ワクチン株、変異をしたワクチン株が ポリオを起こすという現象が世界のあちこちでわかってきたことです。  一番初めにあったのは、エジプトにおけるタイプ2の流行であります。これはエジプ トは依然として野生株の存在する国でありますが、その野生株とは別にだらだら続くポ リオの流行がありました。  前から不思議だと思っていたんですが、最近わかったことですが、ここで取れたウイ ルスは野生株ウイルスではなくて、ワクチン由来株であるということがわかりました。  それから、有名なハイチ、ドミニカのヒスパニオラ島のケースであります。これは本 当に大きな流行と言って過言ではない。  それから、私たちが見つけましたフィリピンのケースであります。  それから、マダガスカルのケースと。  今、パブリッシュされている大きな流行としては、2000年近辺からこの4つのケース が報告されています。現在、中国の貴州省でも報告されており、またベトナム、ラオス 等で完全にワクチン由来株の流行ということが否定できないケースがあります。 (PW)  ここで問題となるのは、これがなぜ起こってきたかというメカニズムの問題です。こ れはどこでも起こり得ることなのです。ドミニカ共和国ハイチの辺りで詳しく調べてみ ます。(PW)  例えば、このハイチのケースでありますと、87年、88年についてわずかばかりのポリ オの患者が出ましたが、そのときにはワクチン接種がなされている。ここで根絶宣言が されまして、ポリオの発生は全くなくなりました。その後も完全にポリオは一掃された 状態がずっと維持されていました。  ところが、この間、ワクチンの接種率というのは本当にミゼラブル、惨憺たるものと なっていたのです。統計さえない年、それから、あっても50%しかないような状態が続 いていたのです。  後から述べますが、生ワクチンのポリオウイルスの変異株というのはどういう状態で も起こり得る。この変異したポリオウイルスが増えることによって、社会で広がり、新 たなアウトブレイクになるか、それを抑え込むか、これはひとえにワクチンをいかに徹 底するかによって決まるわけであります。  このようなワクチン・アソシエイテド・ケースを起こすのも生ワクチンだし、これを コントロールして流行を抑えているのもまた生ワクチンであります。 (PW)  そういうことで、ポリオ根絶計画の最終段階に来まして、ウイルス学者は改めて次の ようなことを知りました。生ワクチンというのは、その接種者に強固な免疫を施します が、それはウイルスが体内で増えるからであります。増えたウイルスは糞便中から周囲 に排泄され、直接、間接に別のよく感受性のある人にも感染することが可能なわけであ ります。 (PW)  これはハイチ、ドミニカのケースですけれども、分離されたワクチン変異株の塩基配 列を決めまして、こういう変化がいつごろから起こったのかということを想定いたしま す。これは、2002年1月に分離されたウイルスでありますけれども、このウイルスの変 異はいつごろから始まったのかというと、その3年ぐらい前から始まっていて、そし て、流行を繰り返すうちにその変異が蓄積されてきて、今回の2002年の1月のウイルス となっています。 (PW)  ここまでワクチン株ウイルスについてのウイルス学的特徴を述べました。  頭の中に置いていただきたいのは、ポリオ生ワクチンを使えばワクチンによって子ど もたちを免疫することができます。一方でそこから変異したウイルスを含む子孫ウイル スが排泄されるのも当然のことです。  しかし、ワクチンウイルスが変異するということは、変異が蓄積することによって、 ウイルスの病原性に関わるような特定の塩基について、その変異がヒットしたときに初 めて病原性が変わるわけで、変異したウイルスがそのまま病原性を獲得したということ にはなりません。  それより、もう一つ大きなことがわかりました。 (PW)  これはハイチ、ドミニカのケースですけれども、ワクチン由来の株と分離株を比較し てみますと、ここで非常にユニークなことが起こっていることがわかりました。これは 組換えウイルスであると考えられます。  病原性を規定するセイビン由来のポリオウイルスは左側半分だけでありまして、残り の半分は、別のエンテロウイルスと組換えを起こしていると考えられます。その相手が どういうエンテロウイルスかというのはまだわかりません。  このように遺伝子の塩基が変異しているだけではなくて、こういう組換えが起こって いるということがわかりました。これはハイチ、ドミニカで分離されたウイルスの例で ありますが、フィリピンで起こっているケースでも同じようなところで組換え体が起こ っているということがわかります。  ポリオウイルスは、こういうことで変異と組換えを繰り返しながら社会の中でサバイ ブすることをねらっております。ワクチンと激しいせめぎ合いがなされているというこ とができます。 (PW)  WHOは1988年に、2000年までにポリオの根絶をするんだということで計画をスター トいたしました。  シナリオの模式図です。  2002年には、すべての国で野生株ポリオウイルスによるケースがゼロになるというこ とを達成したいと。それまでの間を、プレ・グローバル・エラディケーション・フェー ズと名づけて、それに対応するようなワクチンストラテジーでいこうと。  これから3年経ちまして、この間、ワクチンのストラテジーを2002年の状態と同じ状 況か、それ以上のワクチンのストラテジーとサーベイランスのエフィシェンシーを保っ て、なおかつ、3年間フォローする。  なぜ3年間フォローしなくてはいけないかというと、先ほど言いましたように、我々 が調べているのは実際の麻痺患者からポリオウイルスを分離した、そういうケースがゼ ロになるということでありますから、その周囲にはまだ、野生株には感染しているけれ ども、発症していない人もいるはずです。それについてのデータは全くないわけですか ら、そういうものが3年間もフォローしていくことによって、それが依然としてゼロで あれば、初めてグローバルなレベルでポリオをエラディケーションしたということを確 認できる。それは1999年のころ、2005年、今年の1月、こういうことができるという、 そういうふうにシナリオを立てていたわけです。  それで、2002年にはこういうこと、2005年にはこういうことで、このシナリオは早く も崩れておりますが、このときに考えられていたことは、こういうふうにこのシナリオ が完成して、2005年にグローバルな根絶宣言がなされたならば、そのまた5年、このエ フィシェンシーを依然として保ちつつ、2005年から2010年、あるいはこの当時で既にい ろんな議論がありましたが、2005年では足りないのではないか、ここを10年ぐらい経っ たら、世界じゅうで本当にポリオウイルスはいないわけだから、ポリオウイルスのワク チンをやる必要がない。OPVであろうが、IPVであろうが、グローバルにワクチネ ーションをやめることができる。これこそが真のポリオ根絶の達成です。  この段階にきてOPVに問題があることがわかってきたわけです。これは非常に不思 議なことですが、WHOはOPVについてはいろんな勧告を出していますが、IPVに 関しては全く触れていないわけです。IPVをやりたい国はどうぞおやりください、し かし、ここまで来たらOPVをやめることができない。止めるならOPVをグローバル に、一気にストップしましょうというストラテジーを立てていたわけですが、御案内の ように、今、このストラテジーの再検討が必要となってきました。そもそも野生株は増 えている。 (PW)  それから、OPVを使っている国は、これはこの間の検討会の直前に出したスライド ですが、いくつかの国で既にIPVへの切り替えが終了。あるいは切り替えが進行して いる。その後も変わったところがあります。オーストラリア、ニュージーランドはOP VからIPVに切り替えが終わっています。  こういうふうに世界はまた大きく二極化しているということができます。北側のOP VからIPVに変わった国々と、大半を占めるまだOPVを続けている国と、そういう 大きく2つに分かれているのがポリオの対策です。  それでは、パワーポイントによる説明は終わりまして、皆さんに配布しました、最後 から3番目の表をごらんください。  これは、日本の生ポリオワクチン副反応ということで、1970年から去年に至るまでの リストです。これは全部、ワクチンの副反応として考えられる例であります。年、地 域、年齢、性別、実際に発症された方が、これは皆、麻痺例でありますが、ワクチンを したことがあるか、あるいはワクチン歴がないかあるいは不明であるか、取れたウイル スがポリオの1型か、2型か、3型か、について整理しています。  おわかりのように、ワクチン関連のケースというのはほとんどが初回免疫の人たちで あります。それから、圧倒的に男の子が多い。それから、最近目立っているのが年長者 の人たちであります。それから、ポリオウイルスから言うと、2型、3型が取れている と。  私の感触では1970年ごろというのは日本にまだ野生株があったわけでありますけれど も、そのころからも実際にすべての麻痺患者からウイルスが分離されているわけではな くて、相当数、ワクチン株ウイルスが取れていたのではないかと思います。 この中で 1つ強調したいのは、ワクチンを飲んだ子どもたちからは、最初のスライドで申し上げ ましたけれども、ワクチンウイルスが分離されるのは当たり前のことであります。生ワ クチンウイルスというのは接種者の腸管で非常によく増えるわけで、仮に麻痺を起こし ても起こさなくても、その人からは1か月ぐらいはウイルスが排泄され続けているわけ ですから、麻痺を起こそうか起こすまいが、ワクチン接種者からは、ウイルスが分離さ れます。1か月、あるいは必ずしも1か月とは限りませんで、免疫状態の低下した子ど もからは長くウイルスが排出され続けられるということがあります。免疫状態が非常に 悪化した低ガンマーグロブリンの人からは20年間ウイルスが分離され続けているという 例も報告されています。  この表はAFPを起こした人たちから分離されたケースであります。これは従来から 知られていることで、1年に起こっても1人か2人、生ワクチンを使う以上これはやむ を得ないことだというふうにして、今まで来ました。  そこに、今、皆さん方のところに配布されているのは2000年までのものだと思います が、ここでつくってきたのは2001年、2002年、2003年のものがあります。2001年、2002 年は0、0であります。ところが、2003年には3例の報告があります。  1人は8か月の男の子であります。彼にはワクチン歴があります。その男の子からポ リオの3型とコックサッキーのA16型ウイルスが分離されました。  2人目は山口の男の子で、8か月、やはりワクチン歴があります。それで、ポリオの 1型と2型が分離されました。これらは糞便から分離されました。  2003年の最後は、愛媛の37歳の男の人であります。この人はワクチン歴は不明であり ます。むしろ、不明というよりはワクチンをしていない可能性が強い。その方からポリ オの3型が糞便から分離されました。  1番目の大阪のケースを含め、この3例ともその年の日本のポリオ根絶等委員会とい うところでケースの検討会をいたしました。岡部先生始め、中国で実績のある小児科の 千葉靖男先生、小児科のポリオの生き字引の平山先生を始めとする臨床のエキスパート によるカルテの検討と、担当されたお医者さんと、私どもウイルスの解析をやった者と で検討いたしました。  最初の大阪のケースは、ポリオの3型ウイルスが分離されましたが、同時にコックサ ッキーウイルスのA16が取れたということと、それから、麻痺は非常に軽かったという ことです。これはポリオワクチン株によるAFPであったということを完全に否定する ことはできない、そういうケースと議論されました。ワクチン接種によるポリオケース とはちょっと一線を画した、そういう報告であります。  下の2人は、今までの上の表の2002年までと同じレベルでポリオワクチンに関連した ポリオケースと認定されまして、WHOへの報告を済ませております。  2004年に関しては、1例、似たようなケースがありますが、それは今、ウイルス学的 な検討とフォローアップをやっております。まとめますと、日本においては生ワクチン によるポリオコントロールは、世界でまだ野生株がこのように残っている現況では、十 分な根拠があると言って良いと思います。  しかし、ここで出てくる、特に年長者の2次感染ということについては個別のケース としても深刻であるし、この1年に1人、あるいは2人出ていくというペースが保たれ 続けているという点でも深刻です。  これから、もう一つ、プリントが配布されますけれども、これは加藤先生の加藤班で やらせていただいた仕事であります。  日本においてはポリオの生ワクチンに対する信頼度といいますか、接種率というのは 非常に高いものだというふうに認識されています。その接種率というのは従来、どうや ってきたかというと、全国市町村で実際に投与されるポリオのワクチンの数を、そのと きに接種を受けるべき人口動態統計によって調べられた対象年齢者の数で除したもので あります。  時によっては、100 %超えるあるような統計であります。これを加藤班の研究で、麻 しんの高山先生と一緒に、実際の3歳児健診に訪れられた人たちに実際に何歳と何か月 のときにポリオのワクチンを服用いたしましたかというアンケートを取り、ポリオワク チンの累積接種率を算出いたしました。  そうすると、まず36か月までに少なくとも1回のワクチンを受けたという人は96%ぐ らいと非常に高いことであります。これは、世界でも類のないデータであります。  その次に出てくるのが、この36か月の間に2回の投与を受けましたという人の数で す。これも非常に高い率でありまして、ほぼ90%になっているという、つまり、ポリオ の生ワクチンというのは皆さんの間で非常に高い信頼を受けていて、3か月から18か月 の間にほとんどすべての人がワクチンを受けているということがわかります。  ここでわかったことが、もう一つあります。同時に同じ個体の人たちについて、麻し んのワクチンの接種率も同時に調べられたのです。  ポリオも大事な病気ですけれども、麻しんも非常に重要な病気であります。特に麻し んの初回免疫といいますか、1歳前後の麻しんのワクチンの接種率というのは非常に大 切なことであります。ポリオのワクチンは信頼度が高くて、赤ちゃんたちはまず、ポリ オのワクチンを受けるのではないか。そのあと麻しんのワクチンを受けるのではない か。ポリオは3か月からスタートするわけで、そのことが麻しんのワクチンの接種率を 下げているのではないかというようなことを高山先生からは指摘をされておりますが、 これは検討課題であります。 ちなみに、もう一つポリオ副作用の表を見ていただきま すと、ワクチン暦ありというところからは何か月の赤ちゃんがといいますと、3か月、 4か月、5か月という年少の赤ちゃんからは、このワクチン関連症例は少ないのです。 ほとんどが6か月以降の赤ちゃんであるということはここに一つのデータとして出てま いります。  話題提供ということで羅列をいたしましたが、まとめてみますと、世界の野生株ポリ オ根絶状況は最終段階に来ました。ワクチン接種率、戦争、災害、そういういろんなこ とを全部含めて、必ずしも予定どおり進行しているわけではないが、しかし採られた野 生株はきちんと分析されていることによって、世界でまだ残っている野生株ウイルスと いうのは本当に限局されてきているということであります。  こういう状況で日本はどうかというと、日本はイギリスとともにまだ唯一生ワクチン だけでやっている、その生ワクチンの接種率というのは非常に高い、信頼されている安 全なワクチンであると言うことができます。  ワクチン関連麻痺症例というのは生ワクチンである以上、統計学的に200万回、ある いは400万回に1回というのは避け難い。ほとんどは宿主側の理由によることが多い。 決して最近、ワクチン関連麻痺症例が急に出てきているわけではないが、世界ポリオ根 絶計画の最終計画では非常に重要となってくるということであります。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。それでは、宮村先生にはお席に戻っていただきまし て、少しポリオのワクチンについて討議をしていただきたいと思います。  各委員から、何か御意見、御質問がございましたら、よろしくお願いいたします。  どうぞ。 ○岡部委員  一つだけ確認なんですけれども、配られた資料で、2003年の愛媛では37Mとなってい ますけれども、これは37Yだと思います。  それから、1つは質問なんですけれども、年少乳児者の場合のワクチン・アソシエー テド・パラライス、VAPPがないというようなお話があったと思うんですが、ポリオ ワクチンの投与が必ずしも日本で0〜3か月とか、0〜6か月に行っていないので、年 少乳児者であるから少ないというのはこのデータからは言えないのではないかと思うん です。 ○宮村参考人  おっしゃるとおりです。これはもう少し詳しく解析いたしまして、実際、これはAF Pがあって、そこからウイルスが分離された人のリストであります。したがって、ほと んどの人は3か月ぎりぎりからワクチンをしているとは限らない。実際にワクチンの投 与を受けた人たちが累積、月によりますワクチンを受けた数という母数がわかっており ますので、これは最後に出たVAPPの患者の年齢ディストリビューションです。 ○加藤座長  よろしゅうございますか。  ほかに、何か御質問、御意見ございましたら、どうぞ。 ○岡部委員  今のに関連するので申し訳ないんですけれども、そうすると、ポリオのワクチンの指 摘年齢、なるべく早い方にという考え方もあるんですけれども、このデータからだけで は早い方がいいとは必ずしも言い切れないと思うんです。海外だと、何かそういうよう なデータはございますか。海外の方が早いので、年齢から言うと早い方に移ってしまう のではないかと思うんです。 ○宮村参考人  いい御指摘なので、調べます。 ○加藤座長  どうぞ、宮崎先生。 ○宮崎委員  最後に宮村先生がお配りになった累積接種率曲線の上がり方を見ると、基本的にはま だ3〜4か月までは皆さん余りワクチンを受けていなくて、それ以後、急速に5か月ぐ らいから10か月ぐらいまでにかなり接種が集中しているというのもこういうところにち ょっと反映しているかなと思いますし、理論的に言えば生後0〜3月あたりはお母さん の免疫です。移行抗体もあるので、勿論、やはり起こりにくいという両方の側面がある のではないかというふうに思いました。 ○加藤座長  ありがとうございます。ほかに、御意見いかがでしょうか。  どうぞ。 ○廣田委員  先ほど、生ワクの副反応のところの表でございますけれども、この中でワクチンの接 種なしを除いた分を考えますと、例えば、この年の接種者の性、年齢構成、人数構成の 中で、通常のポリオ、ノンポリオAFPがどの程度起こるかというような期待値みたい なものは何かあるんですか。 ○宮村参考人  再三申し上げておりますように、これはAFPを起こした人から、しかもウイルスが 分離されて、そして、その分離されたウイルスが野生株ではなくてワクチン株であっ て、そして、最近のケースではワクチン株からどれくらいの変異をしているかというも のを年度ごとに報告したものをまとめたものでありますので、先生のおっしゃるような 解析をしたことがありません。 ○廣田委員  わかりました。  もう一点でございますけれども、接種後にAFPを起こして分離されたということで すけれども、分離されなかった数とかは情報はあるんでしょうか。 ○宮村参考人  岡部先生、それもどうでしょうね。 ○岡部委員  感染研への報告としては、恐らく出てこないだろうと思うんです。その症状の疑いが あり、多くの場合は地方衛生研究所でやって、そのウイルスが取れて、それでポリオウ イルスの更に詳細な分析が宮村ラボにというシステムだろうと思います。  あるいは、症例報告ではポリオの麻痺をしたけれども、結果としては例えばCA16 で、またはEV71である。そういう症例報告があるのではないかと思いますけれども、 宮崎先生、いかがですか。 ○宮崎委員  ポリオワクチンを飲んだ後、ある一定期間に麻痺を起こして、しかし、ウイルスが取 れなかったというケースの報告があります。そういうケースはここには載っていません けれども、健康被害救済がなされたケースがあるというふうに理解しています。 ○加藤座長  ほかに、いかがでしょうか。  どうぞ。 ○竹本委員  聞き漏らしたのかもしれませんけれども、現在、1回目の累積曲線とか、2回目の累 積曲線がありますけれども、現在、ポリオワクチンが保健所でやられている以上は3、 4か月健診でBCGをやって、それを過ぎて6か月から個別に通知を出すので、6か月 以内に接種率が低いのは当然だと思うので、そういうデータは出ないのではないかと思 います。ちょっと水を差すようで申し訳ありませんが、先ほど信頼度がすごい高いとい うことでしたけれども、通知が行く、これは早く行かなくてはと思って、皆さん行くん です。だから、1歳になってはしかを早くやってもらいたいんですけれど、通知が来た から、是非、こっちに行かなければいけないという考えでそちらの接種に赴いて、はし かの接種はポリオの接種を優先するために1歳半健診でもまだやっていない人が随分出 てくるということになっていってしまっています。  つまり、その通知の仕方にも問題があって、はしかの接種率にも絡んでくるのではな いかと思います。 ○加藤座長  どうぞ。 ○澤委員  勿論、通知もそうなんですけれども、ポリオは今、集団接種でやっておりまして、 春、秋、2回しかやっていません。やはり、そういうことが大きな影響を及ぼして、こ の時期しかできないみたいなもので、これを先にやるということでそういうふうな流れ になっていくのかなという感じには思います。  また、3か月間できるといっても、5か月くらいにしか通知は出しませんので、やは り最優先がBCGということになっているのも一つですけれども、その2つの原因では ないかというふうには思います。 ○予防接種専門官  今の件で1点申し上げておきたいと思います。  平成6年の法改正により、原則的に集団接種から個別接種に移行が図られたわけなん ですけれども、ポリオについてはOPVという性格上、集団接種を原則として平成6年 以降も実施されてきたんですけど、昨年の予防接種ガイドラインの改定時点におきまし て、専門家の先生方に議論いただいたんですけれども、やはりポリオについても、今後 はかかりつけ医の下で個別接種を原則としていくべきだろうと。その場合には、やはり 地域の皆さん方が同じ時期に接種するということで、1か月の間隔の中で個別接種でや っていくという方針を進めていくべきだという議論をいただいております。  それを踏まえまして、予防接種実施要領も近々改訂するんですけれども、その中では OPVについても個別接種を原則としていくと。やむを得ない事情がある場合において は集団接種も認めるというふうに、個別接種の方向を今後、OPVについても打ち出す 予定でございます。  その場合に、また専門家の先生方にちょっとお伺いしたいんですけれども、これまで は集団接種をやる場合には春と秋の時期に限定してやるという方針だったんですけれど も、個別接種を打ち出していく、個別接種をメインにやるという場合においても、やは り春、秋を中心にやるのがいいのか、それとも、夏、冬であってもいいのか。その辺り について、御意見、いかがでございますでしょうか。 ○加藤座長  今の個別接種にしたときの接種時期についてですが、今のところ、予防接種施行の中 ではシーズン性は持たせないということが基本的な接種方式になっていますけれども、 ポリオに関してはどなたか先生、御意見ございますか。どうでしょうか。  どうぞ。 ○宮村参考人  2つコメントしたいと思います。  1つは、集団接種がプラクティカルに効率がよかったこと以外に大切なことがあった と思います。同じ集団でワクチンをした人としない人というのが混在しているというこ とは、今、私がポリオの世界の現況と、ポリオウイルスとポリオの病気の性質を言った ときで一つの答えが出ていると思うんです。集団でもあるいは個別にしても春、秋とい う形で、接触する機会のある一定の集団の子どもたちが期を一にしてシスマルタイネス に免疫をするということは非常に深い意味があったことではないかと思います。  もう一つ、夏に関しましては一般に言ってやはり腸管で増えるほかのエンテロウイル スが冬に比べれば感染効率が高まるということであります。生ワクチンに関する限り、 生きたウイルスの干渉を考えるならば、夏を避けた方が効率のいい抗体獲得を期待でき るのではないでしょうか。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかに、いかがですか。 ○岡部委員  春、秋だけしかやらないということが強調されると、今でもそうなんですけれども、 夏にやるのはよくない、副反応が起きやすいとかそういう誤解があるので、そこら辺は 避けた方がいいと思いますけれども、例えば、熱帯では暑いときに年がら年じゅうやっ ているわけですから、夏、暑い時期であるから副反応が強いということはないと思いま す。ただ、宮村先生おっしゃったように、エンテロウイルスの紛れ込みによる判断の難 しさを避ける意味では、夏は避けた方がいい。  そうすると、今、個別、集団の話が出ましたけれども、ポリオ生ワクチンについて は、基本的には、本当は私は集団接種に近い形で、ある地域の人が一斉に受けていただ いた方が免疫の上昇と周囲への影響ということではいいと思うんですけれども、利便性 というようなことを考えて個別接種でそれを補うような形であるならば、フルシーズン でいった方が、つまり、夏でも、個別の先生のところではやってもらえるといったよう な方が、接種率つまり免疫効果を上げるという意味ではいいのではないかと思います。  ただ、その場合には個別と集団と両方でやっていかなくてはいけないのがあるので、 どっちにするかというようなことの議論も必要だと思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかに、いかがですか。  平成6年のときに、個別接種化を順次進めていって、ポリオもそうだということでし たけれども、たしか文書にはなっていませんけれども、とはいえ、ポリオに関してはだ らだらと12か月続けてぱらぱらとやるのはやめようかなというような議論がなされたと いう事実はございます。  それから、保健所等でやられている時期を挟んで、前後1か月間の間に個別接種をす るとか、そういう知恵を出し合いながら個別化に移行していこうかなというような議論 があったということは、実際上は行われているものであろうかというふうに考えます が、いずれにいたしましても、今日、この後の方で議題になってきます0歳時・1歳時 における予防接種のスケジュールの考え方というようなところにもこのお話は関連して くると思いますので、その話はまた後ほどに移すとします。  ポリオのワクチン自身について、既に先ほどお話ありましたように、1年半前に提言 がなされて、それが現在もまだ実行に移されていないところでありますけれども、日本 においてIPVを是非進めていただきたいということは提言済みでありまして、それか ら、先ほど宮村先生がお話しになったように、世界の情勢は逆の方向に進んでいるよう ですが、少なくとも日本の場合には2000年に西WHO地域が根絶宣言をされているとい う現状を踏まえたときに、日本ではもはや、先ほどのワクチン由来の麻痺を、数は少な いにせよ、先ほど宮村先生のお話の表でも出てまいりましたが、疑い例をひっくるめま すと、2003年では3例、ほぼ確実例が2例ということですから、あるという現状を踏ま えた上で、日本ではIPVを導入していただきたいということは既に提言がされている ところです。  しかし、いまだ、なお、それが前進していないというのが現状ですが、つい先週、日 本小児科学会の委員会でもこの問題が取り上げられまして、議論がされておりますの で、知り得る限りにおいての情報を宮崎先生か岡部先生に、日本のIPVの進捗状況と いいますか、どんな状況になっているか、ちょっと御説明を、どちらも委員で御出席な ので、情報源としてほかの委員に提供いただけますか。 ○岡部委員  それでは、小児科学会の委員会の方は私が委員長をやっていますので、その立場で発 言します。そのときにポリオ研究所の先生においでいただいて、いろいろな御説明を伺 っております。  それで、実際には一度、IPVについて申請を出しているんだけれども、その治験内 容に問題がある。安全性、その他にその時点で問題があるということではないんですけ れども、治験のデザインそのものに問題があるといったようなことから、再度、治験を 行うというようなことが決まっていると伺っています。  以前も小児科学会の方ではIPVの必要性というのは非常に強く討議されていまし て、委員会、あるいは小児科学会の意向としてIPVの導入を求めるというようなこと が基本的な方針になっていまして、治験にも協力するような形になるわけです。伺った ところの話では、本来、治験は昨年にスタートするはずだったのですけれども、幾つか のやりとり、あるいはデザインの変更等があったので、これを治験を管理する業者に委 託するような形で治験を始め、たしか、4月ぐらいからスタートすると伺っておりま す。それは不活化ワクチンの単独接種についてスタートするであろうと。  しかし、小児科学会の方の要望としても、子どもさんへの利便性というか、なるべく 接種が十分行われ、なおかつ、負担がかからないという点では、IPVは注射方式です から、注射をするという回数が多いのは、やはりそれ自体が負担ですので、できるだけ 減らすという意味ではDPTプラスIPVのトライアルも進行してほしいという要望を 小児科学会の方でも出しております。実際はIPVの単独の接種から遅れるような形 で、あるいは一部分同時並行というような形でそれがスタートするだろうと伺っており ます。  しかし、それにしても、全部が完成してくる、治験が終了するのにたしか平成18年の 夏いっぱいぐらいはかかるのではないかと言っておられました。それからいろんな申請 手続をやるので、実際にライセンスがうまくおりるとして、平成18年以降、平成19年に ずれ込むのではないか。そういったような話を伺っております。  ただ、依然、日本のIPVは現在、海外で行われている野生株を基本とした不活化ワ クチンと異なって、ワクチン株を不活化して製造しているという、製造上の安全性の問 題から言うと有利であるというような説明もそのときに受けています。  以上です。 ○加藤座長  ありがとうございました。  宮村先生にちょっとお聞きしたいんですけれども、海外ではIPVが、先ほどのスラ イドでも米国等を始めとして使用されているということですが、それと、今、日本で、 実際には行われているはずだったものですが、これから行われるであろう日本製のIP Vとの違いについて、ちょっと具体的に御説明していただけますか。 ○宮村参考人  私が知っている限りでは、諸外国で非常に実績があり、使われているものは、すべて 野生株ポリオウイルスを大量に増やして、それを不活化するというものが共通です。  それから、今、日本で開発されて、検討されて、実用化の近いものは、生ワクチンで ありますセイビン株を大量に増やして、それを不活化するものでございます。安全性に ついては問題ないと単純には言えません。全く新しい、未だかつて世の中に存在しない ワクチンでありますから、製造上の安全性を含めいろんな確認をするのか必要だという ことだと思います。海外でのワクチンと日本のワクチンの根本的な違いは、出発材料が 違うということであります。  そこで考えなくてはいけないのが、世界ではポリオ根絶計画が少し遅れておりますけ れども、やがて野生株ポリオウイルスは地球上からなくなるということです。そうする とこれからは野生株ポリオウイルスというのは研究のための研究室か、あるいは不活化 ポリオウイルスをつくる施設にしか存在しなくなる。そうすると、野生株ポリオウイル スを今のところはワクチンをつくるという施設としてやってきたわけだけれども、バイ オセーフティーレベルを考えて、非常に厳密な管理が必要とされます。  実際、ポリオの2型というのは世界中からすでに駆逐されていて久しいわけだけれど も、2年前にインドで2型のポリオウイルスの流行がありました。それは生ワクチンの 中に不活化ワクチンを作るのに用いられるタイプ2ウイルスが含まれていたということ がわかっています。  そういうことから、野生株を用いたポリオワクチン製造過程の厳密な管理ということ が世界レベルで要求されるのは必須であります。それは、最終的にはワクチンの安定供 給とか価格というものに影響することは考えられます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  そうすると、バイオセーフティーレベルという方面から考えると、セイビンの場合に は、今、先生がお話しになったような世界環境になっても、バイオセーフティーレベル は現在のままで保たれる可能性があると考えてよろしいんでしょうか。 ○宮村参考人  それは非常にいい御質問で、今、セイビン株と野生株というふうに2つに分かれてお りますが、世界根絶計画の最終段階では幾つかのセイビン株由来の強毒株というのも存 在するわけですから、ここで野生株由来の製造過程と、セイビン株由来の製造過程をど こで線を引くかが問題です。  線はもう引かないでいいのではないかという考え方もありますし、それはきちっとし たIPV安定供給のために製造上の安全性を保つということがIPVの最大のポイント でありますので、それを保持するために製造過程のレベルの差を付けるべきであるとい う考えも両方ありまして、今、グローバルには非常に大きな論争点です。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかに、ポリオのワクチンについて何か御質問ございませ んか。  先ほどの先生のスライドですと、IPVはまだ全世界的に見ると、パーセントからい くとまだIPVのみをやっている国の方が少ないのでしょうか。 ○宮村参考人  いえ、先進諸国ではほとんどIPVであります。  それから、ほかの超大国でありますインド、インドネシア、中国も近い将来、IPV への変換を真剣に考えているというふうに伺っています。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかに、何か。  どうぞ。 ○廣田委員  OPVからIPVに切り替えたときに、接種回数はどのように対応しているのかとい うことを、例えば、先ほどのお話ではDPTと一緒に打つということを考えた場合、接 種回数の調整というのは可能なのかどうかということです。 ○宮村参考人  今、先生がおっしゃるのはコンバインドですか。単味のですか。 ○廣田委員  例えば、OPVを2回打った後、IPVを何回打つのかということです。 ○宮村参考人  それに関しましては、不活化ワクチンの申請のときのスケジュールを含めた検討がな されているんだと思いますが、これに関してはそんなにサイエンスベースドで幾つかの 条件を考慮して、幾つかのチョイスで検討するということは現実的には難しいです。例 えばDPTとコンバインしてやることを想定して、DPTの接種スケジュールに合わせ たりということが実際に行われていて、諸外国でなされているケースはほとんどそれに のっとっています。これで十分な抗体誘導がなされているので、これをあえて変える根 拠はないというふうにされているのがほとんどだと思いますが、諸外国でやられている IPVの3回目ぐらいについては、接種時期に2〜3か月ぐらいの違いがあります。  しかし、それがどういう根拠に基づいてやっているのか、それぞれ幾つかの接種方法 をやった上でのサイエンティフィックな抗体の獲得に基づいて決まったのか、それと も、ほかのファクターで接種のスケジュールを現実的に変えていったのか、それについ て、私にはちょっと情報がありません。 ○加藤座長  私が実際に臨床家として、以前に、先ほどお話に出ました治験が崩れたわけですが、 その当時の治験のスタディは不活化を2回やった後で次に生ワクチンを2回接種すると いうスタディでスタートしたわけで、その当時、米国がそういう接種方法をしていたと いうことにならってそういうスタディを組んだわけですけれども、今後、組まれるスタ ディは恐らく、OPVは入ってこないと思います。  それから、実際に提言では、先生のお手元にあります提言の中に、実際にもし、不活 化ワクチンができた場合にどのようなスケジュールで不活化ポリオワクチンを接種して いただきたいかということは、この提言の中の7ページの表の中に組み込められており まして、現在のDPTワクチンと全く同じ計画の中で同時接種を進めていただきたい と。  または、そのときにDPTワクチンとのコンビネーションワクチンができていれば、 そのスタディで、DPTワクチンのスケジュールを崩さずにポリオを組み入れていただ きたいという提言はしているというところでございます。  ほかに何か、ポリオのワクチンについて御質問、御意見ございませんか。  どうぞ。 ○宮崎委員  個別接種の話が先ほど出ていましたけれども、ワクチンの供給側の問題、例えば今は バイアルが二十人分ですが、一人用ワクチンの供給のことは、現実的には議論されてい ないですね。 ○加藤座長  生ワクチンですね。それは大分前から研究班でも話題になっておりましたけれども、 一向にならないです。  ほかに何か、御質問ございますか。  どうぞ。 ○岡部委員  たしか、OPVについてはプレフィールドを研究開発だったですね。 ○加藤座長  まだ出ていないです。  ほかに、いかがでしょうか。  先ほどの宮村先生のお話にもありました、海外でもIPVは広く行われていると。勿 論、それはセイビンによる不活化ワクチンではないということなので、宮村先生、可能 性としては、日本に海外からのIPVを導入するということも理論的というか、学問 的、または臨床的、疫学的には有効であろうかという考えでよろしいわけですか。 ○宮村参考人  はい。 ○加藤座長  そういうことで、海外でもIPVは勿論、使われているところが増えてきたというと ころですが、先ほどのHibのワクチンと同じでして、海外にあるワクチンを日本に導 入する場合も、恐らく今までどおりでいきますと、セイビンのワクチンをフィールドト ライアルすることと同じように治験というものが行われなければならない。  世界各国で広く行われているワクチンであるから、すぐ国内でも明日から使ってもよ ろしいということは日本では絶対に起きないのが現状でございまして、私の頭の中で考 えてみましても、今、例えばここの委員会で海外からのIPVの導入を強く勧めたとい たしましても、これはかなりの時間を要しまして、恐らくセイビンの治験と同じか、む しろ、それよりも遅れるであろうということが推測されるというところでして、いずれ にいたしましても、それが日本の現状でございます。  どちらのワクチンを導入するにせよ、いずれにしても日本ではポリオはエラディケー トされているということで、だけれども、2次感染が存在するということは捨て難いこ とであろうというところから、IPVを是非、導入していただきたいという気持ちは変 わりないことであろうと思われますが、是非とも、いずれのワクチンにせよ、治験とい うものが迅速に、かつ、正確に行われまして、迅速な審査というものが行われることが 望ましいということに関しては各委員の方々、御異論ございませんでしょうか。                (「はい」と声あり) ○加藤座長  それでは、そういうことで、ほかに御質問がないようでしたらば先に進ませていただ きますが、よろしゅうございますか。                (「はい」と声あり) ○加藤座長  ありがとうございました。  それでは、次に議題3に移らせていただきます。「(3)0歳・1歳時の接種スケジ ュールと課題」について、まず、事務局から御説明をお願いいたします。 ○予防接種専門官  それでは、資料4に基づいて説明をさせていただきます。  この検討会におきましては、これまで麻しん、風しん、DPT、ポリオと、0歳・1 歳の時点で実施される予防接種について御議論いただいてきたところでございます。  この0歳・1歳の時点というのはワクチンの対象疾患の数が多く、接種回数もブース ターをかける必要性から複数行うものもございまして、この短期間の間に多数のワクチ ンを接種しないといけないという状況でございます。そのため、接種スケジュールをど のように定めていくかというのが重要な課題になることから、この前の議論を踏まえて 整理させていただきました。それぞれのワクチンごとに、接種時期についての考え方を 記載させていただいております。  まず、「1.DPTワクチン」についてですけれども、これも最初の資料2の説明の 繰り返しになりますけれども、1歳未満の乳幼児における百日咳の発症リスクが高いと いうことを考慮した場合に、なるべく早期にDPTワクチンを接種する必要があるので はないかということでございます。現行、政令において接種対象者は生後3か月以降の 者と定められておりますので、生後3か月になれば可能な限り早くDPTの1期の初回 接種を行い、その後おおむね1か月の間隔で、1期の2回目、3回目を行う必要がある のではないかということでございます。  2つ目として、「2.ポリオ経口生ワクチン(OPV)」でございます。これもIP Vが導入されると考え方が変わってくると思いますけれども、OPVが使われている現 時点での考え方といたしまして、臨床の先生方の間では、現在日本では野生株が存在し ないということで、ほかのワクチンを優先するという観点からOPVは後回しになって いいのではないかといった議論も一部にあるやに聞いてございます。しかしながら、先 ほどの議論に関係するんですけれども、ポリオの発生した場合の社会的影響は極めて大 きいこと、また、仮に大幅に接種率が下がった場合には途上国で発生しているような問 題が生じてくるおそれもございますので、原則として1歳までにOPVの2回接種を終 了するというスケジュールが必要ではないかと考えております。  それから、「3.麻しん及び風しん」ということでございますけれども、両疾患の 「排除」、エリミネーションを目指すという観点からはなるべく早めに接種をしていた だく。  麻しんについては生後12か月〜15か月ということで、現在、標準接種年齢を定めてお りますけれども、可能な限り生後12か月目、生まれた誕生日の月に実施していただく。 遅くとも15か月までと。  また、風しんについては、可能な限り麻しんワクチン接種の1か月後に接種をしてい ただく。ただし、風しんの流行が認められるような地域においては、風しんと麻しんを 入れ替えて、先に風しんを実施して、その後で麻しんを実施するというやり方もあるの ではないかということであります。  また、麻しん風しんの混合ワクチンが承認されて、これを使用する場合には、可能な 限り生後12か月目、遅くとも15か月までに接種をするという考え方がどうだろうかとい うことであります。  それから、「4.BCG」については、根拠法が違いまして、結核予防法に基づき実 施されているものでございまして、この検討会における直接の検討課題ではございませ んけれども、先の法改正によりまして、平成17年4月からは、直接のBCGワクチン接 種、ダイレクトBCGが導入され、生後6か月までの期間に行うことと定められており ますので、それに従っていただく必要がございます。  このようなスケジュールを考えた場合、今後の課題ということなんですけれども、繰 り返しになりますけれども、0歳・1歳の時点には、対象疾患や接種の回数が多いと。 また、予定された接種スケジュールどおりの接種ができるようにするという観点で、利 便性を高めるという観点からは、次のようなことを検討する必要があるのではないかと いうことで記させていただいております。  「(1)対象年齢・標準接種年齢の見直し」ということでございますが、例えば、麻 しんにつきましては従来の生後12〜24か月という標準接種年齢をなるべく早期に打って いただくという観点から、12〜15か月と前倒しにしたというふうなこともございます。  あるいは、場合によっては政令での対象年齢を前倒しにしていく、あるいは現在は90 か月までということで定められているものが多いんですけれども、もっと対象期間を狭 めていくという方向も一つにはあり得るのかどうかということが検討課題としてあろう かということでございます。  「(2)複数のワクチン製剤の同時接種の推進」。現在、我が国では、医師が必要と 認める場合にのみ行うことができるという消極的な記載になっておりますけれども、短 期間に接種率を上げるという観点からは同日に複数のワクチンを接種するという方法の 推進ということもあろうかということであります。  それから、先進国では多価ワクチンの導入が積極的に進められている国も多い状況で ございますけれども、多価ワクチンの開発・導入を積極的に推進することはいかがかと いうことであります。  「(4)より多くの接種機会の提供」と、そういったようなことについて御議論する 必要があるのではないかということで、資料を準備させていただいております。 ○加藤座長  ありがとうございました。  予防接種のスケジュール、先ほど来、話題になっておりますけれども、どのようなス ケジュールでやるのが一番接種率を高め、しかも、好発年齢前に予防接種を終了するこ とができるかという大きな問題であると思いますけれども、本日、結論が出るという種 類のお話ではございませんので、どうぞ、フリーディスカッションですので、御意見の ある委員の方は、どしどし御意見をお願いします。  どうぞ。 ○澤委員  今日の検討会を前に、現場で仕事をしています保健師とちょっと話をしたんですけれ ども、やはり今回、BCGが6か月というところでかなりの縛りが来ましたので、これ を考えますと6か月までにほかのポリオとかDPTとか組み込んでいくのは非常に厳し いものがあるということがありますので、やはり多価ワクチンにするとかいろいろな考 え方を導入しないと、むしろなかなか現場としては大変かなという思いがあります。  それと同時に、区の方では接種表を配布しているわけですけれども、一々そういうふ うに1回ずつ渡すのではなくて、まとめて渡す方式が多分、こうなると入ってくるのだ なというときには親の判断というのがかなり必要になってきますので、打たれる接種医 の先生も勿論ですけれども、やはりいろんなことも含めて親への普及啓発をきちっとや っていかないと、むしろ接種率が落ちていく可能性もあるのかなということがちょっと 危惧されますので、その辺のことを加味しながらいろいろ行っていっていただければと いうふうに思います。 ○加藤座長  ありがとうございます。ほかに、いかがでしょうか。  どうぞ。 ○蒲生委員  私共の『ひよこクラブ』という育児雑誌には、毎月36万人の読者がいらっしゃいまし て、現場のお母さんたちの声というものをかなり伺っています。 中でも予防接種に関 しては皆さんが非常に高い意識を持っていらっしゃいます。ただ、1歳までの間に受け なくてはいけないものが非常に多いことと、それから、勧奨接種だったり、任意接種だ ったり、集団だったり、個別だったり、それから、ワクチンの種類によって4週間空け るのか、1週間でいいのか、とても混乱してしまっているのが現状で、6か月の間に何 と何をということ自体がわからない状況にある、非常に困っていらっしゃることを実感 しています。  今、澤先生からお話がありましたように、勿論、病気を予防するためになるべく早く というお考えも大切なんですけれども、期間が短くなればなるほど、小さい赤ちゃんを 連れて受けに行くこと自体がとても困難であるということ、現実のお母さんたちの生活 をふまえた上でスケジュールの立て方を相談できる場所、また赤ちゃんがいつも調子が いいとは限りませんので、スケジュールが狂ったとき、どこか相談できる場所というの を是非つくっていただきたい。  私どもに寄せられる質問で一番多いのは、スケジュールの立て方がわからない、モデ ルケースが欲しいということです。生まれ月別のモデルケースを監修の先生と御相談し て、特集の中でご紹介したりしています。10月生まれなのか、3月生まれなのかでも全 然スケジュールが違いますし、今、ポリオが春と秋しかないので、それをどう組み込ん でいくのかも大きな問題です。それから狂うことも前提になっていますので、スケジュ ールが狂ったときにはどうしたらいいかのご質問にも答えています。スケジュールに関 してお母さんたちは相談できる場所が欲しいのです。その声に是非、答えていただきた いということは常日ごろ、お母さんたちと接していると強く感じています。  今、「今後検討すべき課題」というところの(1)のところに、年齢をどうするかと いうお話がありましたが、狭めれば狭めるほど受け損なう方が多くなるということはち ょっと検討の中に入れていただいて、例えば2段階ぐらい、一番いいのはここです、で も、受け損ねてしまったら、ここまでは大丈夫ですというようなやり方をしていかない と、澤先生もおっしゃったように、受けられない人が増えるのではないかということが 危惧されるかと思います。 ○加藤座長  どうもありがとうございます。  蒲生委員がまさにお話しになったこと自体がこの検討委員会でもって決めなければい けないポイントでして、できれば、時期的には余り長くはありませんけれども、この検 討委員会の中で蒲生委員をひっくるめた上で、ある程度の接種の計画のモデルというよ うなものもつくれればよろしいかなというような期待を持っております。  ですから、そういうような観点で御意見をどんどん述べていただきたいと思います が、ほかに何か御意見ございますか。  どうぞ。 ○岡部委員  今の蒲生委員と同じ部分があるんですけれども、年齢の幅が90か月に設定されたとい うときの経緯は、できるだけ早くやってほしいけれども、そこからずれた人たちに対し ても定期接種としてできるだけのチャンスをつくっておいた方が、子どもたちのワクチ ンをきちんと行えるという意味での効果がある。それからまた、そうすることによって 病気が守れるのではないかというつもりでスタートしたはずなんです。  しかし、それが一部、90か月までにやればいいんだという誤解があるところに少し問 題が生じてきたので標準年齢というものが設定されてきたんですけれども、そこのとこ ろをもうちょっと、標準年齢を強調し、90か月という年齢がいいかどうかというのは別 問題なんですけれども、できればある程度の幅を持って余裕があるようにしておいた方 が、それこそ病気でやり損ねたとか、あるいは用事でやり損ねたという子どもさんたち にとって有利になるのではないかというふうに思います。  それから、90か月という月齢を設定したのは、私、そのときは委員ではありませんけ れども、小学校に入る前にきちっとチェックをすれば、入った直後ぐらいに忘れたもの を定期接種という形できちんとできるというためで90か月という線が引かれたのではな いかというふうに聞いていますから、そういうことを是非、生かしていただいた方がい いと思います。しかし、あくまでなるべく早くやった方が病気を防ぐという意味ではい いのでありまして、その辺は是非、強調する必要があると思います。  この場で言うことではありませんけれども、BCGについても、その辺を是非、本当 は考慮をしていただきたいというふうに思います。 ○加藤座長  ありがとうございます。ほかに、いかがでしょうか。  蒲生委員、幅を少し広げていただきたいという読者の声が多いということはよくわか りますけれども、例えば麻しんに例えてみたときに、12か月から15か月という、12、 13、14と3か月の幅があるんですが、この幅もきついという取り方でしょうか。 ○蒲生委員  お母様たちにとっての幅は1歳前の話で、1歳になるとほとんどの接種が一応終わっ ていて、接種すべきことが少なくなってくるし、出かけるのも楽だし、赤ちゃんの体調 も安定してきますので、1歳過ぎに関してはそれほど時期が短いという声は直接はいた だいていません。  1歳になったら、私どもの雑誌などでは1歳のお誕生日のプレゼントに麻しんの予防 接種を受けに行きましょうみたいなことを言っている、そういう雑誌を読んでいる読者 ということもありますので、1歳になったらとにかく早く麻しんを受けなくてはという ような意識はあるかと思います。 ○加藤座長  そうすると、1歳前の方のスケジュールを、もう少しモデルをつくっていただきたい ということですか。 ○蒲生委員  そうです。そこがまるっきりわかっていないので。 ○加藤座長  私の頭の中では、比較的1歳前の方が、お母さん方はワクチンに対してまだ興味がか なりあって、まだ情熱があるんです。接種しようという気分を持っておられる。1歳を 過ぎてしまうと、何となく忘れてしまうという方が急に増えてくるんです。  ですから、そういう意味で、蒲生委員がお話しになったように、この検討委員会の中 で1歳前の方々の一つのモデルというものを幾つか、頭の中にイメージしてつくってい ただいて、それを検討委員会として見解を出すというような方向でいきたいというふう に考えていますが、何か御意見ございますか。  どうぞ。 ○岡部委員  ちょっと一つだけ、質問よろしいですか。たびたび済みません。  蒲生委員にお尋ねしたいんですけれども、私も考えとしては1歳前ですと育休や何か が取れるので、比較的堂々と医療機関に行けるのではないか。1歳を過ぎると育休もな くなってしまうので、むしろかえって行きにくくなるのではないかというふうに思った んですけれども、今の御意見ですと、1歳過ぎの方が行きやすいような読者の方の反応 というふうに聞いたんですけれども、その辺はいかがでしょうか。 ○蒲生委員  お話ししたのは、スケジュールに関して余りにも接種するべきものが多く、それが煩 雑であるためにどうやってスケジュールを立てていいかわからないのが1歳までなの で、そのモデルが欲しい、欲しがっているということと、ちょっと関連するんですけれ ども、働くお母さんはとにかく復帰をしますと全く受けに行けなくなってしまうので、 会社を休まなくても予防接種が受けられるようなシステムを是非つくっていただかない と、とにかく働いているときに子どものことを理由に休むのは非常にまだ肩身が狭い、 まして予防接種で休むわけにはいかないという方が大半ですので、それで受け損なって しまうというケースは多いかと思います。  ですので、スケジュールの立て方がわからないというのと、働いているお母さんに対 してどうするかということはまた別の問題かなと思います。 ○加藤座長  それでは、日本医師会で雪下先生と竹本先生に、その件についてお一人ずつ御意見を 伺おうと思います。 ○雪下委員  今、一番後の質問、働いているお母さんたちのためにということで、3月1日から1 週間、子どもの予防接種週間をつくりましたので、それを大いに活用していただきたい と思います。  それで、1歳までということになると、三種混合と生ワクがあり、今度6か月までの ダイレクトBCGが入ってきますけれども、それは少し努力していただければできるの ではないかと思うし、やはり1歳までは、特にかかりつけの小児科の先生をつくって、 その子に合った計画を立ててもらうというようなことでやってもらえればと思います。  私も現場でやっていて一番混乱を起こしているのは、例えば三種混合を1回受けたけ れども、間が空いてしまって2回目をどうしたら良いか等の問題が多いのです。それは かかりつけ医に聞けば、割合、簡単に解決することであって、だから、なるべくかかり つけの先生を持つことが一番大事なのではないかというふうに思っております。 ○加藤座長  それでは、小児科医会の竹本さん、お願いします。 ○竹本委員  これも何年か前に厚生労働省がプレネータルビジットを立ち上げて、それに対して日 本医師会も、雪下先生がちょうど担当理事で、全国に展開したことがありました。  出生前に小児科医を決めましょうという形でやったので、今、大分県が全県、それが 残って県単独でやっています。この事業では産科の時代にこの子が生まれたらどこの小 児科医にかかろうかなという形でまず先生を決めていただいて、出生したら、その先生 のところに行って、今後の予防注射の計画をどういうふうに立てたらいいでしょうかと お伺いになれば、小児科医はそれはすぐ答えてくれると思います。それがかぜをひいた り何かしてずれたとしても、かかりつけの先生ですから、予定が2回目だけれども、 今、かぜをひいたんだから、これが治ってから何日後に2回目ができるとかそういうこ とは言ってくれると思いますので、かかりつけを持つということが大切なのではないか と思います。  ただ、もう一つは、ガイドラインで診察時間に予防注射をしてはいけないとかいろい ろ規定があります。あれが現場ではちょっと、その日は接種できる人数が限られてきて しまうということを現場の先生たちには言われているので、その辺のところをもう少 し、何かガイドラインの方を考えていただければ、ずれた人数もこなしていけるのでは ないかという感じもするんです。 ○加藤座長  ガイドラインといいますか、予防接種は、極端に言いますと、予防接種専用の日にち を設定し、一般の診療と違う時間帯、または部屋で接種することということになってい るわけですが、先生のおっしゃるような御意見を時々伺いますけれども、私がいつもお 答えしていることをたとえて言いますと、一般診療と予防接種を希望されている方等を 混在させますとこういうことが起きる可能性があると。  例えば、はしかの予防接種を受けに来た患者さんの隣にはしかの患者がいたらどうす るかということなんです。すごく簡単でわかりやすいです。自分ははしかにかかりたく ないのでワクチンを受けに来たのに、隣にはしかの患者がいてはしかをもらってしまっ たということが起きますというときに、先生、責任持てますかというところから発した ことでして、余り深い意味はないんですけれども、単純に考えていただければそういう ことなんです。 ○竹本委員  わかるんですけれども、そういう場合、それがやはり接種のネックになっているとい う感じはするんです。 ○加藤座長  どうぞ。 ○宮崎委員  多分、標準的なスケジュールなりモデルなりをつくってもそれが崩れてくるので、や はりそのバックアップはかかりつけ医しかフォローできないだろうと思います。やはり 2段階で考えた方がいいだろうと思います。  もう一つは、昔、集団接種が主にやられていたときには月齢でのリコメンデーション が出せなかったわけです。行政に子どもを合わせていたわけで、平成6年改正でかなり 個別接種が導入されてきて10年ぐらい定着してきて、やっと月齢という指示が日本でも できるようになったかなと思います。  そうすると、あと、ポリオとBCGがどういう形で集団で残るのか、個別に完全にな るのか、あるいは集団的個別、例えば3か月健診のときにやるのであれば、形としては 集団だけれども、月齢は合っていますから、ある意味では個別的な対応という、こうい うところの工夫を組み合わせて、各市町村がどう対応されるかということがちょっと気 になるところなんです。一つのリコメンデーションになるか、少しバリエーションも出 てくるかという議論になるのではないかと思っています。BCGがちょっとタイトなの で、BCGとDPTの関係性を決めて、あと、ポリオは現状の中では、「1歳までに」 と書いてありますが、もうちょっと余裕を持ってもいいかなと私は思っているんです。 ○加藤座長  ありがとうございます。ほかに。  どうぞ。 ○岡部委員  モデルをある程度決めるのは大賛成なんですけれども、行政といいますか、国が、例 えばあるモデルを示すと、非常に日本の方はまじめですから、そこから外れるともうや ってはいけないとかそういう誤解になりかねないことがあります。アメリカのCDCは モデルの表をつくっているけれども、実際はそれをもとにして個別にそれぞれのかかり つけのホームドクター、あるいは地域の先生方と相談して実施されていると思います。  ですから、応用問題ができるような形での標準案はつくっていいと思うんですけれど も、余りそれが基準案というような形で独り歩きすると、先ほどのずれたらどうしよう という話になってしまって、結局は外れるやらないで終わってしまう可能性があるんで す。この委員会でモデル案をつくるのは賛成なんですけれども、それが余り独り歩きし ないようにというふうなことはきちんとしておいた方がいいだろうというふうには思い ます。 ○加藤座長  どうぞ。 ○澤委員  申し訳ありませんが、モデル案は保健所とか保健センターでもかなりつくっているん です。ですので、やはり、今、混乱されたときに相談していただけるようなPRが足り なかったのかなという反省が一つです。  もう一つは、今日、次世代育成計画の中間報告を出してあるんですけれども、それで 区民の皆様に意見を伺ったら、保健衛生のところではただ一つしか出てこなかったんで すけれども、予防接種を休日にやってほしいということでした。  私たちは、今、集団でやっていることの予防接種は何とか少し考えて、そちらの方向 に持っていかなくてはいけないかなというふうには思っているんですけれども、個別の 接種を3月にはやっていただけるんですけれども、拡大するとかそういうことはあり得 ないんでしょうか。 ○雪下委員  特に、保健所並びに予防接種センターというのがあります。そういうところで足並み をそろえていただいて、私たちは3月1日から1週間ですけれども、毎月1回とか2 回、夜間あるいは休日にやっていただくというようなことを拡大していきたいと思って います。これは小児科医会の方にも言われておりますし、私たちの方からもそれを新た に進めていこうと思っております。是非ともそれをお願いしたいと思います。  それと、例えば、今、ここで決める場合、いわゆる標準の接種期間というか推奨期間 にできるだけやっていただきたいというのと、いつまで法的にやれるかということとは 違うので、その辺はやはりお母さん方によく理解してほしいと思うんです。ほとんどは 90か月まではできるわけですから、そうすると、6か月、1歳半とか、3歳の検診時と か、あるいは就学時とか、そういうときに接種歴をチェックしてもらえれば、かかりつ け医のいない人でもそこでチェックされるかなというふうに思います。しかしできれ ば、特に1歳前後までは、先ほど先生言われたように、プレネータル・ビジットでもそ れも全国的に進めておりますので、産婦人科の先生にお産のときから帰ったときに近く の小児科のかかりつけの先生を選んでもらって、産前・産後みてもらうということが必 要だと思います。それが子どもの虐待の防止にもなるんだということで、それを推奨し てきたわけですけれども、余り現状としてはなかなか進まないのはちょっと残念に思っ ております。 ○加藤座長  どうぞ。 ○蒲生委員  先生方を前にして本当に申し訳ないんですけれども、実際の読者の方たちからのアン ケートで、今日は数字は持っていないんですが、私どもの対象の月齢の方は0か月から 一応、1歳ぐらいまでの方たちなんですけれども、かかりつけの小児科医の先生がいな いという方が一番多くていらして、だから、相談できないとか、今のキャンペーンがな かなか浸透していないということかと思うんです。  しかし、かかりつけの先生に相談するのが一番いいということはお母さんもわかって いる。でも、それができない現状があるので雑誌の方に相談をしてくるというのが本当 に現実の姿ですので、何か電話相談でも、また、個別のかかりつけの先生方というのも 小児科の先生方が減っていらっしゃることもあるのか、なかなか時間がスケジュールま でに関して時間を取っていただけないという現状もあるのか、もし、かかりつけの先生 との相談でうまくいくのであれば、あれだけ私たちのところにお手紙は来ないだろうと いうのが私の実感です。なので、本当に申し訳ないですが、何とかしていただければと 思います。 ○加藤座長  わかりました。  多分、まだ0歳児、6か月以前の子どもはまだ余り病気をしませんので、まだかかり つけの先生がいないんだろうと思います。是非、マスコミを通じて、予防接種をきっか けにかかりつけ医をつくりましょうというようなことでキャンペーンを張っていただく と、両方ともの意見が合体するのではなかろうかというような気がします。  もう一つは、休日の接種日を設けていただきたいという御意見がございました。この 件は、今日もここに書いてありますけれども、麻しんとポリオの提言の中で特に私が発 言をいたしまして、診療所の先生に是非、毎週とは言わないから、年に数回、休日にワ クチンの日をつくっていただきたいという要望をこの提言で出しました。  そのときに、雪下先生は当初は非常にお困りになって抵抗勢力だったんですけれど も、最終的には医師会に対して、医師会に相当反感を買ったというふうに聞いておりま すけれども、非常に説得していただきまして今日に至っておりますが、ただ、これも、 竹本先生の方が詳しいと思いますけれども、全国レベルでは、初年度でしたので余りコ マーシャル不足でした。ちょっと現状だけ簡単に、日曜日のワクチンデーの利用率を。 ○竹本委員  私は去年からこの担当になって、今年、2回目の予防接種週間を迎えることになりま すが、数値的には雪下先生が把握していらっしゃるのでお願い致します。 ○雪下委員  私の方から申し上げます。  協力してくれた医療機関は7,500 くらいです。実績は、1万3,000 件です。初年度で すから、PRが余り十分ではなかったと思いますが、今年も新聞にも広告も出します し、いろんな方向でPRさせていただくとともに、小児科医会や厚生労働省の全面的な 協力を得て実施していきますので、お母さん方もそういうのをちゃんと利用していただ いたら良いと思います。  また、子どもの電話相談等についてもいろんな相談もありますし、また、いろいろ緊 急を要する場合の#8000番なんていうのも、今、つくっておりますので、そういうのを 活用していただければというふうに思います。  やはり、自分の子を守って、予防接種をしっかり受けていこうという考えがあるなら ば、かかりつけ医の先生をつくって良く相談することが最良の方法だと思います。それ を探すことはそれほど困難なことではないと思いますので、よろしくお願いしたいと思 います。 ○加藤座長  それでは、その休日に是非という答えに対しては、蒲生委員のところは36万人の読者 がいるそうですので、大体、5人に1人の1歳未満の方の母親たちが見ていくと思いま すので、そういう日を設けているということも是非アピールしていただきたいと思いま す。 ○蒲生委員  去年も今年も掲載しております。 ○加藤座長  診療所の先生に代わりまして、御礼を申し上げます。  お時間もありませんので、先に進ませていただいてよろしいでしょうか。                (「はい」と声あり) ○加藤座長  それでは、資料5について事務局から御説明をお願いいたします。 ○予防接種専門官  資料5「同時接種についての考え方」ということで、御説明をさせていただきます。  複数のワクチン製剤を同時に接種すること、いわゆる同時接種につきましては、これ をルーチンに実施するという考え方と、差し迫った事態が控えている状況で緊急に、あ るいは臨時に実施するという、大きく2つの考え方があると考えられます。多くの発展 途上国あるいは先進国の中でも米国や英国を始め、この同時接種をルーチンに実施して いる国があるわけでございます。  一方、我が国におきましては、予防接種実施要領におきまして、原則は生ワクチン接 種後は4週間あける。不活化ワクチンを接種した後は1週間の間隔をあけることとされ ているんですけれども、「混合ワクチンを使用する場合を除き、二種類以上の予防接種 を同時に同一対象者に対して行う同時接種は、医師が必要と認めた場合に限り行うこと ができること」と、そのような記載が通知でなされております。  我が国では同時接種がルーチンには実施されていないということなんですけれども、 同時接種の利点にかんがみて、これを積極的に推進すべきではないかという意見も臨床 の先生方からはなされております。  同時接種の利点というようなものを考えた場合に、一般的には接種の回数、受診の回 数を減らすことができますので、被接種者あるいは同行する家族の手間や、時間的・経 済的な負担を軽減できる。  あるいは、必要なワクチンの打ち忘れ、あるいはやり残しを防止できる。  あるいは、適切な時期の接種が促進でき、疾病の予防に有効性があるということの利 点があるわけなんですけれども、一方で問題点もあるのではないだろうかということで ございます。  海外で広く行われておりますし、その組み合わせについての安全性、有効性について の知見もかなり国際的にはデータが蓄積されてきているというふうには聞いてございま すけれども、我が国では一部の熱心な先生方においては実施されているんですけれど も、十分な論文報告がないという状況であります。ワクチン効果の減弱や副反応の増 強、同時接種をやった場合の有効性やら安全性についての検証が必要ではないかという ことでございます。  一般的には、諸外国における知見という観点からは、コレラと黄熱ワクチンの同時接 種をやった場合には抗体産生が悪化するだろうと。あるいは、OPVを使った場合にウ イルス間の干渉があるのではないかと。あるいは、コンジュゲートワクチンを含むワク チンの同時接種をやった場合に、その免疫反応が変化するのではないかと。そういった ことが文献で報告されているんですけれども、それ以外の組み合わせについては一般に は問題ないだろうと考えております。  副反応の増加の可能性については、同時接種したワクチンのそれぞれからの副反応が 発生する可能性があるということですので、その総和という意味での見かけ上の発生件 数は増加するのではないか。その可能性はあるということが言われております。  しかし、ワクチンは生物学的製剤ということであり、想定外の生体反応のリスクが完 全にはゼロではないと。理論的にはその可能性は極めて低いということであるんでしょ うけれども、特に安全性についての検証は、いま一度、必要ではないかということで整 理をさせていただいております。  それで、「4.考え方」という繰り返しのまとめになるんですけれども、我が国で定 期接種で使用されておりますワクチン製剤を同時接種した場合の免疫反応、相互作用や 干渉、あるいは副反応について文献上の十分な報告はなされていないという状況の中 で、このルーチンに積極的な推進をするのはいかがなものかということなんですけれど も、海外では同時接種が広く行われている国があると。多くのワクチン製剤の同時接種 の組み合わせが海外では安全性が確認されていると。成人も含めると国内では同時接種 の経験を有する医療機関が少なくありません。例えば、特にトラベラーズワクチンとい うことで、海外に旅行をする前に検疫所、あるいは医療機関で同時接種を受けた方の免 疫反応などについて幾つか報告もあります。  そういったことから、同時接種は我が国でも安全かつ有効に実施し得ると考えるのが 妥当ではないだろうかということなのでございまして、今後、想定されるワクチン製剤 の組み合わせごとに、同時接種した場合の具体的なデータ、エビデンスを収集した上 で、有効性及び安全性に留意して、ルーチンの同時接種を勧めていく、あるいは選択肢 としてそういう勧奨をしていくということも考えられるのではないだろうかということ であります。  一方で、同時接種が必要なワクチン製剤の組み合わせが特にある場合には、多価・混 合ワクチンの開発・導入を図るべきではないかという考え方もございます。ただし、現 時点においては我が国の定期接種のスケジュールを考慮すれば、DPT−IPV以外に は多価ワクチンの開発の必要性が現時点ではさほども高くないのではないかというふう なことで書かせていただいております。  参考として、現時点において想定されるようなワクチン製剤の組み合わせの例を示さ せていただいております。  次のページは、「レッドブック2003年版」の該当する部分の訳を書かせていただいて いるんですけれども、インターチェンジアビリティー、互換性というようなことで、例 えば、「同じ種類のワクチンでも異なるワクチンメーカーで製造されている場合には、 その内容や製造方法が異なっており、したがって異なる免疫反応を誘導することがある 」と。可能性があるというレベルの記載なんですけれども、それを個別に検証した上で 一般的には問題ないだろうということで、下の方の「複数ワクチンの同時接種」という ことが米国では推進されております。  次に資料6で、ワクチンの同時接種と多価ワクチンについての世界的な動向をまとめ させていただいております。  WHOの予防接種拡大計画事務局においては、推進するという姿勢をいただいており ます。米国も事情を書いておりますし、また、イギリス、オーストラリア、ニュージー ランドなどにおいても定期的・標準的な予防接種として同時接種が推奨されているとい うことをまとめております。  それから、次の13ページでございますけれども、「多価ワクチンについて」。国際的 に多価ワクチンの開発や使用が広がっているということで、先生方の資料では15ペー ジ、16ページに、米国またはヨーロッパでどのような多価ワクチンが開発されているの か、あるいは現在開発中なのかということを整理させていただいております。  また、16ページにおいては主要先進国でどのような多価ワクチンが導入されているか ということを示させていただいております。例えば、ドイツにおきますとDTP、Hi b、IPV、HBの6種混合ワクチンが導入されて、ドイツの場合はこの6種混合ワク チンとMMRの2種類しかワクチンをルーチンには使っていない、こういう考え方もあ るんだということで整理をさせていただいております。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  先ほどのスケジュールにもやがては関連してくることと思いますけれども、予防接種 を接種機会をとらえてなるべく効率よく接種するには同時接種、または、すぐには無理 ですけれども、コンビネーションワクチンの開発といったようなものも期待されるので はないかという事務局からの参考意見を伺いましたけれども、これらについて何か御意 見、御質問ございましょうか。  宮崎先生、今の事務局の御説明ですと、この同時接種について今よりももう少し緩め た形で少し幅広く公用したらどうかというような御意見に聞こえましたが、いかがです か。 ○宮崎委員  現在、各地に予防接種センターというのが曲がりなりにもできてきて、海外渡航前の 相談によく受けられていると思うんですけれども、そういうものがまだ整備されていな かった時代は、私も海外渡航前の赤ちゃんから大人まで短期間に多数のワクチンを接種 するという経験をかなりしてきました。  例えば3か月ぐらいの赤ちゃんにDPTと、日本脳炎と、B型肝炎と、ポリオの生ワ クチンというような組み合わせでさせていただいた経験もあります。基本的には副反応 はその間、全く特別なことはありませんでしたけれども、残念ながら抗体価の評価にな りますと、皆さん海外に行ってしまわれるのでデータの蓄積がないんです。 現在、予防 接種センターというようなところができてきましたので、海外渡航以外のいろんなケー スも含めてデータが国内にあった方がいいかなと思うんですけれども、経験的には同時 接種をもう少し進めてもいいのではないかというふうに私は思っています。  前回のとき、もうちょっと強く出してもいいかなと思ったんですけれども、まだ、と にかくそういう経験が日本になかなかないということでしたので、平成6年のときには かなり控えめの表現でいったかというふうに思っています。 ○加藤座長  ありがとうございます。ほかに、御意見ございますか。  荒川先生と宮村先生、臨床の先生でない立場から先ほどのスケジュールとか同時接種 について、大変な失礼な言い方をして失礼ですけれども、素人的な立場で結構ですの で、御意見をいただきたいと思います。 ○荒川参考人  私は子どもが3人いまして、ワクチンには大分悩んだ経験があるんですけれども、実 際、ここにありますように、同じ時期に同時に打つとか、あるいはいろんなコンビネー ションのワクチンができてくることは、非常にそういう問題を解決する上で重要なこと なんです。  日本の現在のDPTと、例えば開発されつつあるIPV、こういったもののコンビネ ーションについての、あるいはそれを同時に打つとか、そういうことについては多分、 根拠はありませんけれども、大きな問題はないと思います。  ただ、海外のものを日本に導入して、そういうものと日本の今のものを混ぜて使うと いうことになると、副反応の面でいろんなことが起きるのではないかということを危惧 しています。  日本のDPTの場合は、今、5社がつくっていますけれども、おおむね91年ごろに更 にもう一段、ブラッシュアップしまして、副反応が非常に出にくいものが今、使われて いますので、それと同じものを海外のものに期待した場合に、果たして本当にそれが期 待できるかどうかという心配は残ります。  あと、もう一つはいろんなものを混ぜた多価ワクチンをつくった場合に、それを国内 で治験をするフィールドとかそういうものが問題になってきますので、治験のルール、 あるいは方法、そういうものについても、やはりそういうことが実施しやすいような配 慮をしていかないと、結局、既に使用されているワクチンに代わるようなワクチンを新 たに導入しようと思ったときに、そういうものといろいろ影響を及ぼして、なかなか評 価しにくい。治験のプログラムとか、治験のスケジュールが立てにくいとか、実際、実 施できないとか、いろんなことが起きてきますので、そういうことも行政的には検討し ていっていただきたいというふうに思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。失礼しましたが、非常に専門的な御回答をいただきまし て、感謝を申し上げます。  治験と、そのルールづくりとか、治験のガイドラインづくりというのは非常に大切な 問題でして、この検討会ではちょっと検討するのは領域を超えているのでなかなか難し いところとは思いますけれども、また事務局と相談いたしまして、検討する機会があっ たら検討させていただきたいと思います。  宮村先生、何か御発言ございますか。 ○宮村参考人  それでは、素人的に。  いろんなワクチンの安全性、有効性を考えるときに同時接種、あるいは接種のスケジ ュールを含めて既に進行している抗体がある人も含めて、その制約の中で新たなチェッ クをするというのは実は非常に難しいことをやっているんだと思います。できるだけ余 裕を持ったスケジュールができて、そして、そのスケジュールの中で接種率を高めると いうことが一番大事だということを申し上げたいと思います。  それから、専門的に言えばポリオのケースですが、不活化ワクチンの場合はそれほど 問題にはならないかもしれないけれども、生ワクチンの場合はほかのウイルスとの干渉 作用が問題となります。更にポリオに特化した問題というのは、さっき申し上げました とおり、生後数か月はお母さんからの移行抗体があるか、それから急に感受性の高い状 態になるわけです。  だから、その後、すぐ、特に多数の人が集まるような育児所とか保育所というところ で、ある赤ちゃんは昨日、生ワクチンを飲んできて、私のところは都合によりまだワク チンを受けていないというようなことは、ポリオの性格からすると非常にまずいことに なります。 ○加藤座長  宮村先生、もう一つだけ、先ほどのことと関連して御質問しますけれども、スケジュ ールについてですけれとも、当分、このまま経口接種が続いた場合に、今、日本にポリ オはないという現状を考えたときに、ポリオのワクチンを後ろに反らせるということに ついての御意見はいかがですか。  例えば、先ほどもお話に出ましたけれども、後日、これはまたやると思いますけれど も、ポリオのワクチンがどうもはしかのワクチンの接種率を下げているのではないかと いう、高山さんの意見はそうなんですけれども、それでは、ポリオは今、病気がないの で、思い切って2歳以降にしてしまったらどうかとか、わざと極端な意見を言っている んですけれども、そういう議論に対してはどうでしょうか。 ○宮村参考人  2才以降というのは論外だと思います。少なくともはしかのワクチンの接種率に影響 を与えないような形で、ポリオのワクチンはお母さんの移行免疫が成立しないときが始 まった限り、できるだけ早くやるのが大原則だと思います。 ○加藤座長  そうすると、先生がお調べになった累積表がかなり理想的で、あれを維持したいとい うことですか。 ○宮村参考人  はい。 ○加藤座長  ありがとうございました。  どうぞ。 ○岡部委員  そうなると、多価ワクチンとは別に同時接種がまた問題になってくると思うんです。  例えば、これは途上国でも先進国でも、多くの国の場合はDPTとOPVを早くやる ということで、DPTやOPVは少なくともルーチンにやっているという実績はあるん です。両方ともきちんとやる意味では、私はDPTやOPVは理論的には同時接種は全 く問題ないと思うんですけれども、そういったような方法があれば両方ともきちっとで きるというふうに思います。 ○宮村参考人  DPTとOPVの同日同時接種というのは、何の問題もないと思います。非常にプラ クティカルですし、接種率がお互いに高まることだと思います。 ○加藤座長  そのようなことがちょうど、第3番目の議論をコンバインドさせた形で、同時接種と 予防接種のスケジュールというところでいろいろな案が出てくることと思いますけれど も、今日一日ですべてよい案が出るというわけには参りません。  また、今日初めてこの資料をごらんになる先生、委員の方々も多いと思われますの で、一度、お帰りになっていただいた後、資料をゆっくり読んでいただきまして、各先 生方、各委員の中で、3番目の議題について、スケジュールと同時接種というようなこ とについて頭を整理していただいたり、または、例えば竹本先生の小児科医会であれ ば、小児科医会としての予防接種のスケジュールというような案、または、雪下先生の 日本医師会であれば、日本医師会としてのスケジュールのような案、それから、岡部先 生の小児科学会であれば、小児科学会としてのスケジュールの案というようなもの、そ れから、蒲生委員のような一般の方々を対象として質問が多いような状況の場合におい ては、そういう方々の質問をまとめたような形での一つの疑問点、または案というよう なものを是非、事務局に提出していただきまして、事務局はそれをまとめた上で、また 後日、これらについて討議をして、何らかの有益なお答えを出していきたいというふう に考えておりますので、御協力をお願いいたします。  余り先になってしまいますと忘れてしまいますので、各団体とも、いろんな委員会は 限られていると思いますけれども、後日事務局の方に、今、お話ししたような案を出し ていただければと思いますが、ひとつ御協力を。  事務局、大体、そんなぐらいでよろしいですか。 ○予防接種専門官  よろしくお願いいたします。 ○加藤座長  それでは、そんなようなことで、是非、積極的に、澤先生の方も勿論、保健所で御意 見がおありと思いますので、よろしくお願いいたします。  大体、予定いたしましたお時間が参りましたので、今日はこの辺のところで収めさせ ていただきますが、事務局の方から何かございますか。 ○予防接種専門官  それでは、次回の日程の確認をさせていただきます。  次回は、2月2日水曜日の13時半から、同じこの場所で開催させていただきたいと思 います。  それから、次々回以降の日程につきましては、本日、日程調整表を配布させていただ きましたので、先生方の日程の都合について記載していただいて置いていただくか、ま たは後日、ファクスでお送りいただければと考えております。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。  本日は、長時間にわたって活発な御意見をいただきまして、どうもありがとうござい ました。今後とも、何とぞ御協力のほどをよろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。                              照会先                         健康局結核感染症課予防接種係                         TEL:03-5253-1111内線(2385)