05/01/13 第1回「院内感染対策中央会議」議事録            第1回「院内感染対策中央会議」議事録 1.日時   平成17年1月13日(木) 15:00〜17:00 2.場所   厚生労働省専用第17会議室 3.出席者  (構成員)  荒川 宜親、大久保 憲、岡部 信彦、賀来 満夫、               木村  哲、切替 照雄、倉田  毅、倉辻 忠俊、               小林 寛伊、武澤  純(五十音順、敬称略)        (厚生労働省)谷口医政局指導課長、梶尾大臣官房企画官、               針田医療計画推進指導官ほか 4.議題  (1)院内感染対策中央会議の趣旨について       (2)「院内感染対策有識者会議報告書」について       (3)院内感染対策地域支援ネットワークについて       (4)第1回院内感染対策中央会議の「提言」について ○針田医療計画推進指導官  定刻を過ぎましたので、ただいまから第1回院内感染対策中央会議を開催させていた だきたいと思います。私は医政局指導課の医療計画推進指導官の針田でございます。座 長選出までの間、議事進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたしま す。  構成員の皆様方におかれましては本日、大変お忙しい中お集まりいただきまして、誠 にありがとうございます。開催に当たりまして、最初に指導課長の谷口隆からご挨拶を 申し上げます。 ○谷口指導課長  医政局の指導課長の谷口でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。先生方 には大変ご多忙のところ本会議にご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。ま た、院内感染対策の推進につきましては、日ごろより大変ご支援、ご協力を賜っており ますことを、この席をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。  さて近年、院内感染対策につきましては適切な医療を提供していく上で、安全・安心 という視点から最低限求められる要素として、重要な課題となっていると私どもは理解 をいたしております。国民の関心を集めているテーマでもあるということでございま す。  厚生労働省におきましては、こうした問題につきまして、幅広い視点からこれまでも 検討を進めてまいりましたけれども、より一層の充実強化を図りますために、平成14年 4月に「院内感染対策有識者会議」を設置させていただきました。15年9月にはその報 告書が取りまとめられまして、医療機関、自治体、国、学会等が、それぞれのお立場 で、今後取り組むべき課題というものが示されたところでございます。  それを受けまして、私どもでも院内感染対策の取組といたしまして、医療機関からの 技術的な相談を受け付ける相談窓口事業でございますとか、医療従事者に対する講習会 事業、さらには薬剤耐性菌の発生動向調査事業と、各種の院内感染対策関連施策という 従前からやってきているものも含めまして、新しいものを取り混ぜて実施をしていると ころでございます。しかしながら、依然として院内感染事例が各地で発生いたしており ます。また、大学病院等の大規模な医療機関におきましても死亡事例が見受けられるな ど、院内感染対策については、まだまだ予断を許さないという状況にあるのも、これま た一面の事実であろうということでございまして、今後もなお一層の院内感染対策の強 化が必要となっているところでございます。  こうした背景から、院内感染対策有識者会議の報告書で示されました各種の総論的な 課題を踏まえまして、その実現に向けた技術的な検討を行うことを目的にしまして、院 内感染対策のご専門の先生方にお集まりいただき、院内感染対策の中央会議を開催する 運びとなったところでございます。  折しもノロウイルスによると思われる感染性胃腸炎の集団発生、これは食中毒という 面も一面であろうかと思いますが、そういったものも発生しているという意味からいた しまして、絶妙なタイミングではございますけれども、こういったことも踏まえまし て、本日お集まりいただきました先生方によるご活発な議論を通しまして、今後のわが 国における院内感染対策がますます充実していくことを期待いたしまして、簡単でござ いますけれども挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○針田医療計画推進指導官  本日は第1回の会議ですので、はじめに構成員のお名前を五十音順にご紹介させてい ただきます。  国立感染症研究所細菌第二部長の荒川宜親構成員、NTT西日本東海病院外科部長の 大久保憲構成員、東北大学大学院医学系研究科教授の賀来満夫構成員、国立国際医療セ ンター研究所感染症制御研究部長の切替照雄構成員、国立感染症研究所所長の倉田毅構 成員、国立国際医療センター研究所長の倉辻忠俊構成員、NTT東日本関東病院名誉院 長の小林寛伊構成員、名古屋大学大学院医学系研究科教授の武澤純構成員です。その 他、国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦先生及び、国立国際医療センタ ーエイズ治療・研究開発センター長の木村哲構成員は後ほどご紹介させていただきたい と思います。  引き続きまして本会議の座長の選出をお願いしたいと思います。選出の方法につきま しては構成員の互選ということにいたしたいと思っております。事前に一部構成員から ご連絡がありまして、前回、旧院内感染対策有識者会議の座長をお願いしておりました 小林先生にお願いをしたらどうかというご意見を伺っております。もしご異議がなけれ ば、この会議も引き続き小林先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。                 (異議なしの拍手) ○針田医療計画推進指導官  ありがとうございます。皆様方のご賛同をいただきましたので、小林構成員に本会議 の座長をお願いしたいと思います。小林座長、座長席へお願いいたします。ただいまか ら議事のほうを小林先生にお願いいたします。 ○小林座長  ただいま「院内感染対策中央会議」の座長にご指名いただきました小林でございま す。いろいろな問題を含んでおりますけれども、構成員の皆様方のご協力によりまし て、この検討会が円滑に運営されてまいりますことを心から願う次第でございます。大 変いろいろな問題を抱えた中で大役かと緊張しておりますが、どうぞ皆様方のお力添え を賜りたいと存じます。  先ほど谷口指導課長のお話にもございましたように、有識者会議の1年間にわたる検 討結果を、一昨年の9月に答申をさせていただいたわけでございます。その中の非常に 重要な課題として答申されたことの1つとして、この会議のことが触れられておりま す。後ほど事務局から内容についてはご説明があるかとは思いますが、近来、日本にお ける病院感染、院内感染対策の体制は非常に進んできたと私は受け取っております。  そういう中で1つ大きに役に立っていますのは、現在16学会、3研究会、計19の学術 団体によって構成されていますインフェンクション・コントロール・ドクター認定制度 というのがございます。ここでインフェクション・コントロール・ドクター(ICD )、認定インフェクション・コントロール・ドクター(CICD)となっていますの が、現在4,339名ございます。こういう方たちの活動状態を有識者会議の答申を受けま して、昨年度末に調査させていただきましたが、多くの方が現場で大変アクティブに活 動をしてくださっております。そのようなことが現状における日本の感染対策の前進 に、大きくつながっているのではないかと思います。  また、感染対策の前進につながっている証拠として、同じく有識者会議の答申を受け まして、厚労省の援助を受けて、昨年度末に、日本におけるMRSA感染症、病院の中 におけるMRSA感染症(これは分離頻度ではありません)の症例の推移を調査いたし ましたが、有意な増加はございません。ということで、英国・アメリカ辺りでは最近さ らに大きな問題になっていますが、日本の感染対策は、一応成功していると考えていま す。ただ、平均しまして、まだ0.7から0.8%、1%弱のMRSA感染症が急性期の病院 で見られていますので、これはより減らす努力が必要なのも事実でございます。  そういう中におきまして、先ほども今回のノロウイルスによる問題もお話に出てきま したが、これも本当に病院内でのクロスインフェクション(交差感染)によるものなの かどうなのか、その究明が必要なことでありましょうが、今年はまだ流行していません が、インフルエンザのほうがより大きな院内感染、病院感染の問題としてその対応。特 にインフルエンザは予防接種という方法があるわけですので、これもやはり大きな問題 であります。  ICDの調査の中でわかったことですが、そういう専門のドクターがおられるのは大 きい病院に偏っております。人数としては全国的には200床、300床以下でこの資格を取 っておられる方が多いのですが、病院当たり、施設当たりにしますと非常に数が少な い。例えば200床以下ですと8施設にお1人ぐらいしかおられないという状況で、中小 の病院をどうサポートしていくかが課題になるわけです。それが有識者会議での1つの 大きな課題としての答申であったわけです。  それを受けてこの中央会議がもたれたわけです。これからどういう形で検討をする か、また本日どういう提言をするかということが検討されるわけですが、そういう病院 をいかにサポートしてより患者サービスの向上、感染率の低減を図っていくかというこ とが、これからの更なる課題であると考えておりますので、構成員の皆様方のお力添え によりまして、より有効な提言ができますことを切に願って、挨拶とさせていただきま す。どうぞよろしくお願いいたします。  早速議事に入らせていただきますが、議事に入る前に、当検討会の議事や資料の公開 の取り扱いにつきましてのルールを確認しておいたほうがいいかと思いますので、事務 局よりその点についてご説明を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○針田医療計画推進指導官  運営に関しましては、あらかじめお断り申し上げますが、本中央会議につきましては 公開で行いまして、議事録につきましても事務局でまとめたものを各構成員のお目通し をいただいた上で、厚生労働省のホームページに公開する予定になると思いますのでご 了解いただきたいと思います。なお、写真撮影等につきましてはここまでとさせていた だきたいと思います。 ○小林座長  続きまして本日の議事の資料に関して、事務局からご説明とご確認をいただければと 思います。 ○事務局  資料の確認をいたします。資料の欠落等がありましたらお申出ください。資料1「院 内感染対策中央会議について」という1枚紙です。資料2「院内感染対策有識者会議報 告書」です。資料3「特定機能病院等における院内感染対策専任者の配置について」と いう2枚紙です。資料4−1「院内感染対策地域支援ネットワークについて」という1 枚紙です。4−2が地域支援ネットワークの「各地域における取組の状況」ということ で、取りまとめたものです。資料5「院内感染対策中央会議の『提言』について」とい う2枚紙です。以上が資料です。参考資料1として「院内感染対策関連施策の概要」、 これは平成16年度現在です。参考資料2は「院内感染に関する厚生労働科学研究」とい うことで研究班の一覧です。  その他ご参考までに、健康局の結核感染症課から公表されました、今回のノロウイル スによる感染性胃腸炎の関係資料がございましたので、構成員の先生のお手元には別途 置かせていただいています。昨日の午後現在でまとめられました全国のノロウイルスの 感染者の発生状況ということだそうです。ご参考にしていただければと思います。な お、この資料は厚生労働省のホームページ上に既に公表されているということです。以 上です。 ○小林座長  それでは議事に入りたいと思います。本日の進行については、まず、事務局から本日 の議題に関して説明をしていただき、その後で、それぞれの議題に沿いまして、院内感 染対策に関する認識やお考えなどについて、各構成員の皆様からご意見をいただいて、 議論をしていきたいと思います。事務局の説明資料に関する質疑につきましても、その 説明の際によろしくお願いしたいと思います。  議題1「会議の趣旨及び議論の方向性について」に入りたいと思います。事務局から 説明をお願いいたします。 ○事務局  資料1の「院内感染対策中央会議について」をご覧ください。本日は第1回の会議で すので、はじめにこの会議の趣旨について説明をさせていただきます。  開催の趣旨として、先ほど座長からお話がございましたが、厚生労働省におきまし て、院内感染対策についての幅広い視点からの見直し、一層の充実・強化を図ることを 目的に、平成14年7月に技術総括審議官の下に「院内感染対策有識者会議」が設置され まして、7回にわたる議論を重ねられた後に、『今後の院内感染対策のあり方について 』という報告書が取りまとめられています。この報告書は後ほど説明したいと思いま す。  報告書の提言としまして、医療機関、自治体、国などがそれぞれの立場で今後取り組 むべき課題が示されたところです。この報告書の提言を受けて平成15年11月に医療法施 行規則の改正等が行われまして、特定機能病院等に院内感染対策の専任者の配置。平成 16年度からの事業ですが、地域における院内感染の取組ということで、地域支援ネット ワーク事業が開始されました。しかしながら、依然として院内感染事例が全国で発生し ている状況を踏まえて、院内感染中央会議、今回の会議を設置しまして、前回の有識者 会議で取りまとめられた報告書に示されたような総論的な提言を踏まえた、今回は専門 家の先生による各論的な実質的な検討をお願いする会議ということで事務局としては考 えております。  主な検討内容ですが、これからおよそ年に1、2回程度の頻度で開催することを予定 しています。そちらのほうでわが国における院内感染対策に関する各種の技術的検討を お願いしたいと思っております。後ほど詳しく説明をしたいと思いますが、各回ごとに 会議における先生方の発言等を踏まえた「提言」というものを簡単に取りまとめたいと 思いますが、こちらも後ほど説明したいと思います。資料1の「院内感染対策中央会議 について」の説明は以上です。 ○小林座長  ただいまのご説明の、会議の趣旨及び議論の方向性についての総論的な問題に関し て、何かご意見またはご質問、コメント等がございましたら、ご発言を賜りたいと思い ます。よろしいでしょうか。ただいまご説明いただいた方向性に沿って、院内感染対策 中央会議を運営してまいりたいと思います。今後は構成員の皆様方のご活発なご検討に よりまして、有意義な結果に至りたいと考えています。  議題2に進ませていただきます。「院内感染対策有識者会議報告書」についてです。 これも事務局からご説明をいただきます。 ○事務局  資料2の「院内感染対策有識者会議報告書」です。冒頭でも説明いたしましたが、平 成14年7月に開かれました「院内感染対策有識者会議」の報告書が平成15年9月に今後 の院内感染対策のあり方についてということで、取りまとめられたものがこの資料で す。この報告書につきまして構成員の皆様方もご承知のことかと思いますが、この場を お借りしまして概要のみを簡単に説明させていただきます。  第1章は「はじめに」ということで問題提起がされています。  第2章は「わが国における院内感染対策」ということで、厚生労働科学研究班との連 携によりまして、わが国の医療機関における院内感染対策の取組について現状把握等が 行われていまして、その調査結果の数字などでまとめられています。わが国の医療機関 における院内感染対策の現状、課題といったものが示されています。  第3章は「新たな院内感染対策のグランドデザイン」ということです。第2章までの 現状把握を踏まえて、関係者が共有すべき目標とか、今後目指すべき新たな院内感染対 策についての具体的な将来像のイメージといったところが示されています。  「目標」としては3つ記載しています。1)医療機関内における感染症の新たな発症 を防止し、安全かつ確実に治療をすることができる体制としていくこと。2)アウトブ レイク及び重大な院内感染発生時に被害を最小化するための医療機関及び地域における 体制としていくこと。3)医療機関、自治体、国及び関係団体・学会が、それぞれ必要 な対策を科学的根拠に基づいて確実に実施し、適時、見直しを図る体制としていくこ と、という3点が示されました。「具体的な将来像のイメージ」として、これらの目標 を実現するために、医療機関、自治体、国、関係団体・学会が、それぞれどういったこ とを立場として実行することをこれから考えていくかといった将来像が、それぞれ示さ れています。  これらの将来像に基づいて、第4章の「当面必要な取組」ということで、それぞれの 立場で取り組むべき課題が示されています。これが資料2の有識者会議の報告書です。  この報告書において示された提言に基づいて、厚生労働省の施策として反映された事 項の1例を事務局から説明いたします。  資料3「特定機能病院等における院内感染対策専任者の配置について」です。「改正 の趣旨」とありますが、有識者会議の報告書の中で示されました「当面必要な取組」の 中で、特定機能病院だとか、第一種感染症指定医療機関の院内感染対策を担当する専任 者の配置を義務づけるということが提言されました。これに基づいて医療法施行規則が 改正されまして、平成16年1月1日から施行されました。  第一種感染症指定医療機関についても、平成16年3月の告示の改正によりまして、専 任の院内感染対策担当者を配置することが義務づけられたところです。院内感染対策専 任者というのはどういった者かと申しますと、それぞれの病院における院内感染対策を 行う部門の業務に関する企画立案及び評価、職員の意識の向上や指導といった業務を行 う者ということで、医師、歯科医師、薬剤師、看護師の資格を有している者で、院内感 染対策に必要な知識を有している者を、院内感染対策の専任者ということで、現在特定 機能病院と第一種感染症指定医療機関に設置が義務づけられたところです。  資料4−1「院内感染対策地域支援ネットワークについて」、こちらも有識者会議の 報告書に基づいて新たに平成16年度から開始された事業です。簡単に説明しますと、院 内感染対策の取組が多少遅れている所、例えば小規模な病院などにつきましては、地域 における支援体制の整備を図るために、地域それぞれに抱えている専門家から構成され るネットワークを構築して、中小の医療機関が速やかに相談や助言をもらえるような体 制を整備する事業ということで、全国8都道府県において、今年度よりモデル事業とし て整備されているものです。  内容としては、地域の医療機関から寄せられた院内感染に関する相談を受けて、技術 的な助言を行うなどの対応をしていただいたりします。そういった相談の内容を相談事 例ということで解析や評価を行い、その結果を医療機関に還元したりすることで、地域 における予防対策に反映させるという内容です。  厚生労働科学研究班との連携によりまして、より高度な技術的知識が要求されるよう な事項について、相談をやりとりしているようなこと。それぞれネットワーク独自の取 組として、例えばいろいろな会議、研修会などが行われています。現在、院内感染対策 地域支援ネットワークの補助事業ということで実施されているのが青森県、埼玉県、静 岡県、富山県、滋賀県、岡山県、香川県、鹿児島県ですが、これらのほかにも報告書の 提言を踏まえて、一部の自治体において独自の財源等により、同趣旨の院内感染対策の 地域支援に対して、こういったものを構築していると聞いています。細かい中身につい ては後ほどの議題で説明をしたいと思います。 ○小林座長  ただいまの院内感染対策有識者会議における報告書は、既にホームページにも公開さ れていますし、皆様ご覧になっておられると思うのですが、ただいま説明のありました 内容に関しまして、何かご意見等がございましたらお願いいたします。 ○木村構成員  資料3で、院内感染対策の専任者を置くということが、特定機能病院を中心に昨年の 1月から施行されているということですが、実際にその専任者を置いている率といいま すか、該当する病院の中で、それがきちんと行われているのはどのぐらいでしょうか。 ○事務局  対象となる医療機関に全て配置することになっていまして、既に専任の方がおられる と聞いております。 ○小林座長  よろしいですか、ほかにいかがですか。この通知といいますか改正も答申を受けて厚 労省が速やかに対応してくださったことでした。それによりまして、いまご説明のあり ましたように、特に大きな病院または特定機能病院等においては、専任者が配置され て、そういう方たちが積極的に動いてくださっているということは、大きな前進につな がっていることではないかと思います。ほかに何かございますか。内容的なことに関し ては後で重複して出てくるかと思いますので、次に進ませていただきます。  議題3「院内感染対策地域支援ネットワークについて」の本題の所に入っていきたい と思います。お手元に資料がありますが、このことに関して事務局から説明をしていた だきます。 ○事務局  議題3の「院内感染対策地域支援ネットワークについて」ということで、資料4−2 です。議題2で説明しました有識者会議報告書において説明された提言に基づいて、平 成16年度より地域支援ネットワークの事業が開始されまして、今年度は8都道府県、そ れから独自な事業も加えますと、事務局として把握しているものが10の都道府県です が、こうした取組が行われているところです。また、これらの各地域における取組につ いてまとめたものが資料4−2です。各都道府県からそれぞれの地域支援ネットワーク の状況ということで資料をいただいたものです。  最初に北海道の取組事例を説明いたします。北海道の感染症対策地域支援モデル事業 ということで、4頁の図を見ていただくとわかるのですが、北海道立衛生研究所を中心 として取り組まれているということです。細かい事業内容としては、1として、ICD を中心とした5名のコンサルタント医師による推進委員会の設置。2として、道内でモ デル地域の医療機関を選定していろいろと積極的な事業を行っている。3として、地域 における感染症対策会議。4として、感染研、国際医療センターなどの専門の先生がお られる機関との打ち合わせであるとか、院内感染対策の先進地の実地調査を行っていま す。5として、インターネットの掲示板を用いた情報交換システムをつくっていまし て、その推進の打ち合わせ会議も開いていたり、地域における研修会の実施で、医療従 事者を対象とした感染症対策研修会を開催しています。  次は青森県です。青森県の医師会に事務局を置きまして、県が医師会に委託する形で 各種の事業を行っているということで、院内感染の相談窓口であるとか、看護職員の研 修会を行っています。9頁では、院内感染相談窓口事業ということで、具体的に相談の 内容であるとか、相談の方法としてはメールやFAXで事務局とやりとりをして、返答 がいただけるということです。13頁では、看護職員の研修会ということで、青森会場、 八戸会場、弘前会場で3回実施しており、それぞれ専門の先生方をお呼びして研修会を 行っているということです。  次は埼玉県です。埼玉県の事業の概要は、埼玉医科大学病院に事務局を設置しまし て、相談窓口を設けています。相談対象が病院や診療所のような医療機関、それから介 護老健、特養等の社会福祉施設といったところの施設管理者の承認を得た後に、施設と して相談窓口にいただく形になっているようです。こうした相談窓口に関しての資料が 続いています。20頁では、その他の取組ということで、院内感染対策指導者養成研修の 実施ということで、県内の医療関係者を対象とした研修、感染症危機管理に関しての講 演会を実施しています。  次は23頁、富山県です。こちらは富山医科薬科大学に相談窓口を設置しまして相談事 業を行っています。院内感染の発生のあった医療機関に対しても、協議会の会員による チームが外部から事後検証を行うような取組を行っています。例えば、院内感染対策協 議会の総会であるとか、院内感染スペシャリスト研修会、院内感染対策協議会公開研修 会といったものを実施しているそうです。  次は27頁、静岡県です。静岡県の病院協会に事業を委託して実施しているということ で、FAXと電話による相談システムがあります。院内感染の地域支援委員会を感染症 の専門の先生で構成していろいろ行っています。それから、院内感染対策セミナーを開 催しているということです。  次は29頁、滋賀県です。滋賀県病院協会に委託ということで、相談窓口を開設してい ます。ホームページを用いて相談事業を行っています。院内感染対策検討会の実施。巡 回指導チームを設置して、病院や病院以外の、集団で生活をしているような場所、施設 に対する指導を行っています。研修会ということで既に1回実施していまして、あと1 回予定しています。それから看護研修会も開催するということです。パンフレット、リ ーフレットを作成しているということです。  次は35頁、岡山県です。岡山県の医師会に事業を委託して、相談窓口の設置であると か、院内感染対策連絡会で、情報交換、意見交換を進めています。  次は37頁、香川県です。香川県立中央病院に事務局を置きまして、相談センターとい うことで県内医療機関からの相談への対応。(4)で新たな知見とか、情報の県内の医療 機関への提供。大学病院、環境保健研究センター、医療機関、保健所、医師会、衛生検 査技師会、看護協会、薬剤師会と連携を密に行ったりしています。それからワークショ ップを開催して、院内感染防止に関する理解を深めるための講演会、研修会を開いてい ます。41頁に講習会ということで書いています。  次は43頁、鹿児島県です。鹿児島県医師会に委託をして事業を行っています。院内感 染対策協議会を設置して、例えば県内の院内感染対策推進の方策の検討であるとか、相 談窓口への助言。それから、相談窓口の設置ということで、それぞれ院内感染に対して 専門知識がある医療関係者を配置して、日常的な対応を行っているということです。 46、47頁に細かい事項が書いてあります。48頁の「その他事業の活動実績」で、危機管 理体制の構築、支援チームの派遣、講演会、意見交換会の実施、保健所職員に対する研 修会の実施など。先進事例の紹介などをホームページで行うなどの事業を行っていま す。  次は55頁、北九州市です。56頁の図を見ますと、市のほうと北九州感染症対策支援ネ ットワークといった医療関係者、専門家によって構成されるKRICT(北九州地域感 染制御チーム)を中心とした、地域における支援体制を実施しているということです。 55頁の「活動の内容」では、院内感染対策への助言及び技術的支援、研修会の実施。そ れから専門家からの助言、学問的支援。ガイドブック、ビデオの作成などをしていると いうことです。  これら10の都道府県のほかに、宮城県でも地域のネットワークが構築されているとい うことで、机上配付で資料を置かせていただきましたが、賀来先生からご説明をいただ ければと思います。 ○賀来構成員  お手元の資料に概要を記載させていただきました。このネットワークは1999年の末か ら開始しており、東北大学にキーステーションを置きまして、感染対策情報の共有化、 感染管理の協力、バックアップ体制という3つのアクションプランです。詳細はパワー ポイントの資料を見ていただきたいと思いますが、県内で共同で講習会を年に4、5回 行っていること。あるいは、これはSARSのシュミレーションのビデオガイドライン ですが、DVDのガイドラインをネットワークとして作成して、それを地域に配ってい ます。  協力としてはインフェクション・コントロールのラウンドと言いますか、東北大学の スタッフと現地のスタッフが共同で約2時間かけて回っていまして、現在、50施設を回 っています。また、共同での作業ということで、このような地域での抗菌薬のガイドラ インを作りまして、これを参加施設に配っています。また、これのCD−ROM版が先 月出来まして、こういったものも施設の方々にお配りしています。  また、共同で行う耐性菌のサーベイランスを、特に薬剤耐性菌の緑膿菌のサーベイラ ンスを行っています。これは国際医療センター、あるいは感染症研究所の先生方のご協 力もいただいて、非常に興味深いデータが出てきています。また、地域の方々に「キッ ズかんせんセミナー」、あるいは小学校に出向いてセミナーを行っています。簡単です が以上です。 ○小林座長  どうもありがとうございました。有識者会議の答申として、地域支援ネットワークを 作ってはという議論が出ましたそもそもの始まりは、それぞれ地域の行政は保健所が管 轄するような形になっていますが、そういう地方の方々がそこへ報告をすると、それが すぐマスメディアに公開されてしまって、異常発生ではないものが異常のように報告さ れると。これではみんな報告をしなくなってしまうので、何とかそこを本当に有効な対 策につながるような組織が作れないかというご意見がたくさん出ました。それをまとめ たものが地域支援ネットワークです。本日ご出席のマスメディアの方々も是非、地域支 援ネットワークをそういう形の患者サービスの向上に本当につながる形で活かす、そう いう方向でお受け取りいただければ、大きな前進につながるのではないかと思いますの で、どうぞよろしくお願いいたします。  そういう意味におきまして、地域支援ネットワーク事業は、今年から施行と言います か取組が始まったところです。ここに手を挙げてくださった各都道府県は、ご自分の所 のある部分は恥をさらすことをあえて覚悟して、その地域の発展のためにご尽力、ご協 力をくださっているわけですので、ここで議論をしていく上でも、そういった試行錯誤 の中で、できるだけ良い点を取り上げて議論の対象として、こういう点は是非、次のネ ットワークの活動につなげてもらいたいというような点を、できれば強調した議論にし ていただければと思っております。短時間での説明ですし、資料も短時間で見ていただ いているので、十分なご理解をいただけないところもあるかもしれませんが、また後で のこの会議の今日の提言の所にも、その検討内容にもつながるところなので、まずはた だいまの事務局ならびに賀来先生からのご説明の中で、ご意見なりコメントがございま したら、どうぞご発言をいただきたいと思います。 ○大久保構成員  ただいまの事務局からのご説明をお聞きしまして、感じたことを2つ述べさせていた だきます。1つは、座長が言われましたように、ネットワークの設立の趣旨が、各都道 府県の対応を見ますと、院内感染対策地域支援ネットワークの設立の趣旨から少しずれ ている自治体があるという感じがします。今まで地域には保健所が存在したわけです が、保健所に対しては義務を含めて院内感染事例の報告をする。その報告に対して保健 所から指導が行われるという、これが基本的な流れであったわけです。それではいろい ろな対応がうまくいかないということで、報告ではなくて、相談に対して支援を受け る。助言ですね。そういう別の流れを作ろうというのが基本的な考え方であったと思う のです。  いまの8カ所の中身を見せていただくと、ところどころ活動内容に「指導」という言 葉が入っている地区があるのです。ある県では、全てに対して「指導」という句ぶりが 付いていますので、少しその辺をはき違えて活動をしておられると、このネットワーク 設立の趣旨とは異なるのではないかなという気がします。それを1つ申し上げたいと思 います。  もう1つは、賀来先生が述べられましたが、サーベイランスに対しての支援といいま すか、それをどの程度、今後このネットワークが関与していくべきかという点を、もう 少し議論をしていく必要があるという気がします。 ○賀来構成員  先ほどの宮城県で行っている支援について、1つ付け加えさせていただきます。感染 症の相談窓口も併せて行っております。先ほど小林座長が言われましたアウトブレイク とは違うのですが、さまざまな相談が寄せられています。これも小林座長のお言葉と全 く同じ意見なのですが、やはりこのネットワークの基本的な考え方は、感染症はいつで もどこでも発生し得ますし、大病院であっても中小病院であっても同じようなリスク、 特に大病院はリスクが高いわけですが、そういうものを、いかにお互いに協力をしてお 互いにサポート体制をとって、少なくしていくかが基本だろうと思います。  その意味では情報をいかにきちんと守れるか、お互いにそういった基本的なことを守 って、そして相互にサポート体制をとっていかないと、ネットワークを構築しても、そ れに参加してくる施設は非常に少ないだろうと思います。そういったことをまず基本的 な大前提とします。これは大久保先生のご意見とも重なりますが、そういったことを是 非守っていただきたい、そういったものを基本にしていただきたいと思います。 ○小林座長  貴重なご意見をありがとうございました。最初に申し上げるべきだったのかもしれま せんが、現在の医療技術の水準では、病気の種類によっても、病院の規模によっても違 いますが、数パーセントから10%近くに院内感染、病院感染が起こってきている。これ は事実であるし、現状であるわけです。これを踏まえて是非議論をしていただきたいと 思うのですが、それを少しでも低減していこうというのが各都道府県のこのネットワー クの努力でもあり、我々の目指すべき方向でもあると思うのです。ゼロが当然だと思っ ては間違いでして、現状ではそのくらいの率では必ず起こってきていると。それを踏ま えての議論をお願いしたいと思います。 ○倉辻構成員  このネットワークの本来の趣旨は、大きな病院には院内感染対策の専任者を配置し て、その中でうまく安全な医療を届けられるようなシステムができるわけですが、そう いう専任者が配属されない、置くことのできない中小病院やいろいろな施設に関して も、そこが気軽に相談して、それに対してどのようにしたら良いか、という支援をする のが一番の趣旨です。そのためには、1つは医療の従事者あるいは医療の管理者に対す る支援もそうなのですが、もう1つ、これは先ほど説明がありましたように、現在の医 療の技術・知識では、ある頻度で感染症は発生するという事実を市民あるいは国民全体 が共有するチャンスを提供したい。そのために、いま賀来構成員が示されました市民講 座あるいは「キッズかんせんセミナー」のような、一般の方々にもわかりやすく理解あ るいは相談できるプログラムも入れたいと思っています。 ○小林座長  貴重なご意見をありがとうございました。ほかにいかがですか。構成員の皆様方それ ぞれご専門のお立場で、何かこの問題に一言ずつお触れいただければと思います。 ○切替構成員  賀来先生が、適切な患者の情報をきちんと守って、なおかつその事例を皆さんに共有 していただくようなシステムを、どのように模索するかということを言っておられたの ですが、患者だけではなくて病院、特に小さな病院の場合、病院の匿名性をきちんと守 って相談に乗ってあげて、適切な方に適切な助言をいただくシステムを作っていく。そ ういうシステムをきちんと構築するのが非常に重要になってくるのです。いままでです と、患者情報だけでしたが、やはり医療施設の情報をどのように守っていくかというこ とも重要だと思います。 ○小林座長  貴重なことだと思います。ありがとうございました。 ○武澤構成員  院内感染は基本的には医療事故と一緒で、日本語で言えば危機管理になると思うので すが、基本的には2つに分かれていて、プリベンション(予防)というリスク管理とク ライシスマネジメントという、起こったときの対応。この2つに分けられると思うので す。この両方に対応するにしても、情報の共有はとても大事ですし、そのためのインフ ラを作ることが、さらに大事なことだと思うのです。  まず、今回のは、起こさないように、つまりプリベンションのほうに向けて教育ある いは情報交換をするというところに、この案はあると思うのです。実際にアウトブレイ クが起こったときにどうするかという相談も、きっと賀来先生のところにあったと思う のですが、それへの対応システムはまだ出来ていないのでしょうが、そこを切り分ける ということが必要です。  実際にこういうネットワークシステムが出来たときに、本当に機能しているかどうか を評価しないといけません。どのぐらいの財源があるかはわかりませんが、ネットワー クを作ることは行政的には簡単なわけです。問題はどういうような意味のある情報がそ の中に飛び交っていて、その結果、院内感染をどれだけ防ぐことに貢献しているかとい うようなことまで結び付けてこのネットワークの評価をしなければいけません。  最初に必要なことは、どのような内容の情報が収集できているか。特にこういう情報 はマスコミの問題もありますので、セキュリティをちゃんとしなければいけないですよ ね。これがもし、どこかに漏れてしまうことがあれば、それ以降は誰も報告はしないこ とになりますから、マスコミの方にもきちんと説明をして理解をしていただくことが必 要です。データの中身については必ずネットワークが責任をもって、管理をするという ことで情報を集めて、その情報数で評価することが必要です。  鹿児島のネットワークを見ますと1カ月に1件とかと出ていますから、これで果たし てネットワークが機能しているのかということに関しては、検討する余地はあると思う のです。それも含めて情報の中身と頻度をモニターしていかないと、作ったのはいいけ れども、実際にはほとんど大した医療情報が流れていないネットワークもあるわけで す。そのようになってはいけないので、ちゃんとした情報が飛び交っているということ を確認した上で、最終的にはその地域の院内感染がどれだけ減ったのか、増えていない のかという評価が必要です。クライシスマネジメントはまた別のネットワークでやらな ければいけないですが。 ○小林座長  大変的確なご意見をありがとうございました。リスク管理という観点から見ても、も ちろん感染そのものを見ても、やはりプリベンション(予防)と、コントロール(多発 したときの制圧)をどうするかという問題を分けて考えていかなければいけませんでし ょうし、これは次の提言のところでもう一度議論をしていただかなければならないこと だと思います。私もいま武澤先生が言われましたように、アウトカム評価ということが なければ何が効果であったかということにつながらないわけです。これもリスク管理 上、非常に重要なことだと思います。これも後ほどの提言のところにつながる議論にな るかと思いますのでよろしくお願いしたいと思います。  また、データベースを構築していくという面では、倉辻先生がいままでにもいろいろ ご苦労をされているかと思うのですが、何かご意見がございますか。 ○倉辻構成員  データベースの目的について、相談の事例を1つずつ蓄積して、それから1つのエビ デンスをきちんと創出して、それを標準化してどんな対策を講じたらよいのかという提 言をしていかなければいけないわけなのです。相談事業のいちばん最初の時点での各施 設での問題がございます。いままでFAXあるいは電話、eメールといろいろな方法で したが、来年4月から施行されます個人情報保護法や何かと関連しまして、いまその辺 手直しをしています。  私どもの所に来るデータは、各施設から直接でなく各地のセンターを介して来ていま す。  もう一つのデータは現在、私どもの所でホームページに院内感染対策で出しているエ ビデンスに基づいての院内感染対策の資料、あるいは手順書、そういうものに対しての いろいろな意見・質問から作成しています。現在まだ全部集計をしていませんが、2月 中ごろに1度それを集計する予定になっています。いまそういう点でプライバシーの保 護を再検討していまして、方式は少し変えるかもしれません。 ○小林座長  これも後ほどの提言の所につながると思うのですが、セキュリティー、プライバシー の問題。これは個々の情報と同時に、先ほどもお話に出ました、特に小さな病院のプラ イバシーを考えてあげなければいけないというのが、このネットワークをより有効に活 用していく大事な点になるのではないかと思いますが、ほかにご意見はございません か。それぞれ大変重要な点をご指摘いただいていると思います。 ○倉田構成員  私はこの院内感染そのものに直接かかわってきたわけではないのですが、この歴史は かなり古いのです。川名林治先生が院内感染対策シンポジウムを八幡平で10年間やられ て、そのスタートからもう20年ぐらいになると思うのです。ガイドラインも山ほど出来 た、マニュアルも山ほど出来た。しかもいろいろなレベルのものを、厚生省、自治体あ るいは病院が作成してきたと思います。それはいいのですが、例えば新しい病院で感染 症対策の専門家が大勢おられる所では院内感染というのは極端に減ってきているのかど うかとか、建物が古いことがその原因になっているのかどうか。問題はいろいろあると 思うのです。  Hospital Infectionの本を見ていますと非常に面白くて、ベッドが増えて対策の専門 家がいればいるほど減るかというと、そうではなくて、逆に増えているとか、いろいろ 面白い数字とグラフがあります。  そのような観点で実際にこの対応をされている先生方から是非お聞きしたいのは、い ままでの20数年間の対応というのは効果があるほうにいっているのか。本当に減ってき ているのかどうかですね。そういうことの分析というのはどこかに数字として病院レベ ルで出てきていますか。 ○小林座長  残念ながら、そういう意味でのサーベイランスが非常に遅れている部分であるわけで す。最初に申し上げましたとおり、MRSA感染症に関しては、私が中心になってやり ました全国的なナショナルサーベイランスの基になりましたのが1995年ぐらいからなの ですが、その辺からMRSA感染症に関してはステイブル、むしろアメリカとか連合王 国では増えてきて問題になっていますが、それに対して、日本でステイブルだというの は、それはそれなりのシステムが効果を上げているのではないかと私は評価しておりま すが、いま全病院的な感染率の評価をするサーベイランスは、改善につながらないとい うのが世界的な考え方でして、これは武澤先生にまたご発言いただければと思います。 ICUなどのハイリスクの場所でのサーベイランスによって、そこでの感染率を低減し ていくことにつなげる。これはこの何年か武澤先生を中心にやられている中で、そうい うデータもだんだんに積まれてきて、私の所の病院などでも、サーベイランスを行って 改善をやることによって感染率を下げるという数字を出していますので、やはりそうい う意味でのサーベイランスを行って、それにつながる改善を次の目標にしていくことに よって、徐々にそういうことはなされていると思います。ただ、問題は次から次へ起こ ってまいりますので、そういう意味で全体的に見たときには、いろいろと新しい問題が 起こってきているのも事実かと思います。武澤先生、ICUに関していかがですか。 ○武澤構成員  いま先生がおっしゃったとおりです。ただ、厚生労働省の院内感染対策サーベイラン ス事業の中にICU部門があって、NICU部門は一昨年に始まっています。特にIC U部門に関しては2000年から始まっていて、MRSA感染に関して増加は見られていな いのです。それから人工呼吸器関連肺炎に対しても実は下がっていますが、ICU部門 にはあくまでも院内感染対策に熱心な施設が入っているわけで、一部の国立大学の中で はアウトブレイクが起こっていますから、そういうことを考えると、おそらく病院によ る格差がかなりあるのだろうと思います。  十何年前の名古屋大学では、ICUには必ず3人ぐらいMRSAの患者がいました。 いま1年間でICUの中で発生するMRSAの患者はほとんどいません。病棟で感染し て入室する患者はいますけどね。ですから、おそらく病院によってかなりの差がって、 一部の病院ではかなり感染率は減っていると私は思っています。  ところが、他では逆に増えている所があって、オーバーオールで見ると果たしてどっ ちに動いているかというのはよくわからない。厚労省の岡部先生のところで実施されて いる定点観測では、MRSA感染はそんなに下がっていないようです。先生がおっしゃ ったように、全体がどうなっているか把握するシステムができていません。一部の病院 は一生懸命頑張ってサーベイランスをやって改善されている。すべての医療施設がそう いうことをやれば、おそらく改善の方向にいくのだろうと思いますが、残念ながら現状 は病院による格差がかなり大きいのではないかと思っています。 ○小林座長  そういう意味では、ナショナルサーベイランスを行ってベンチマークになるような数 値を出して、それに対して自分の施設が高いのか低いのかということをやることが、改 善につながっていくことだと思います。Surgical Site Infectionも厚労省の事業とし て既にスタートしていますが、それに先行して日本環境感染学会の事業としてスタート して、その中心的な活躍をされておられる大久保先生から、SSIを通しての、そうい う効果等についてご発言いただきます。 ○大久保構成員  SSIのサーベイランスは、日本では1998年11月から8つの施設が参加して始まりま した。現在は50幾つの施設が参加していると思います。1年あるいは1年半ぐらいでと きどき感染率の集計を出しているのですが、当初は6.4%、その2年後には6.7%、その 次がまた6.4%で、現在、最終的な集計は2003年末の値で6.7%です。整形外科、消化器 外科等、すべての手術を含めた感染率がいま6.7%という状況なのです。  そういうところで疾患別に見ますと、例えば食道の手術では23%、結腸、直腸、小 腸、肝・胆・膵手術などの消化器手術では通常10〜16%となっていますが、全体的な感 染率の推移から見た場合には数字としては変わっていない状況だと思います。  サーベイランスの効果としましては、見張り効果を含めまして、感染率の低減につな がります。感染を減らすための介入のアウトカム評価の判定にも使用できます。 ○小林座長  荒川先生、検査というか分離頻度のほうからご覧になって、何か特別目立つことがご ざいますか。 ○荒川構成員  私のところでは、厚労省の研究費あるいは感染研の研究事業費等で、全国のいろいろ な医療機関から耐性菌の解析等を引き受けて、研究費の範囲で支援させていただいてい ますけれども、MRSAとか既にかなり多くの方が認識しておられるような耐性菌に加 えて、さまざまな耐性菌が出てきて、あるいは院内感染らしい分類のされ方をしてい る。  先ほど倉田所長もおっしゃっていましたが、25年前と今の現状はかなり状況が違うと いうのも事実なのです。医療現場におけるいろいろな感染症あるいは耐性菌に関する知 識のアップデイトが、なかなか菌の変化に付いていけていないというのが実感です。  今回の支援ネットワークというのは、こういう状況を踏まえて、地域ごとにその専門 家の方々が、その地域で協力していただきながら、病院と行政の関係というのは指導す る、指導されるという関係ですが、そうではなくて、相談に乗って支援するという関係 の組織として、こういった支援ネットワークが、いまパイロットとして進められてい る。その機能を強化していかなければいけない。  その中には、感染症の診断あるいは病原体の診断といったものを、きちっとできるよ うなインフラの整備をしていかなければいけない。感染研でできる範囲は非常に限られ ていますので、日本中の病院をすべて支援することは物理的に不可能なのです。ですか ら地域支援ネットワークの中にも、レファレンス的な業務でいろいろな菌が分類されて いる。あるいはそういったものが院内感染として広がっているのか、そうではないのか をきちっと把握できるようなインフラの整備をしなければいけない。  1つは地域の行政的な研究所があります。地方衛生研究所とか、あるいは大学等でそ ういう技術や能力を持っている所に、そういうことを担当していただくことも必要かも しれません。そういった地域ごとに相談だけでなく、それに加えて菌の解析側の支援シ ステムの強化、充実をしていく必要が出てきているのではないか。  ただ、日本の医療機関の現状は、欧米に比べるとレベル的にはかなりいい方向にはあ ると思います。ですから、それをもう1段積み上げれば、日本は欧米よりも優れたシス テムができるのではないか。その中心的な所は国際医療センターであり、菌の解析につ いては感染研がさらにバックアップしていく全体の構造ができれば、非常にいいものが できてくるのではないかと思っています。 ○小林座長  木村先生、岡部先生、それぞれのお立場で、ウイルスを中心にした問題に関しては、 今日はこの中にあまり出てきていませんけれども、いかがですか。 ○岡部構成員  感染研の岡部です。雪のために遅れて失礼しました。院内感染のときはこの前のガイ ドラインでしたか、有識者会議のときも申し上げたのですが、中心になるのは耐性菌か ら発生した細菌による感染症が非常な問題だったわけです。それと並行してB型肝炎の ほうはかなり耐性化は取れてきたけれども、その他のウイルス性疾患、例えば院内にお けるインフルエンザとか麻疹とか水疱瘡などは見過しがちですが、院内において発生す る感染症というのでは無視できないのではないかということを申し上げました。  一方で、例えばインフルエンザの高齢者に対する接種ですが、院内においてスタッフ と患者さんの相互的な関係の感染を防ぐために、かなり医療機関内で関心を持たれてき ました。麻疹に関しては、直接こういうところの院内感染対策ではありませんが、小児 科学会といったところでのアンケートあるいは提案によって、大学病院などでの実習に おけるチェックとか、いろいろ進んでいる面もあるのではないかと思います。  ただ、一方では院内感染対策という広い意味の中で、今回のものがこれに入るかどう かは微妙なところもあるわけですけれども、巷で流行しているものが施設に飛び火する こともあり得るので、それがどの程度のものであり得るのか。これもベースラインづく りが必要になってくるだろうと思います。そういう意味でかなり進んできているところ もありますが、今後、やっていかなければいけないところもあると思っているところで す。 ○小林座長  いま、岡部先生がご指摘になった市井と病院内との関係というのも非常に重要なこと で、アメリカやイギリスでは最近、院内感染という言葉に代わって医療関連感染の Health Care Associated Infection(HCAI)という言葉が使われるようになって きて、病院内と市井とが非常に密接な関係を持っているので、そこを切り離しては対策 は考えられないという新しい考え方が浮かび上がってきています。その点をご指摘いた だいた非常に貴重なご意見だと思います。木村先生、いかかですか。 ○木村構成員  ウイルスに関しては岡部先生がお話になったのと別の観点から意見を申し上げたいと 思います。私は感染症学会の理事長をしていますが、感染症学会として厚労省から委託 を受けて院内感染の相談窓口をやってきて、毎年100から100数十の質問があり、それに 対して複数の人からの回答をもらってフィードバックする形で行ってきました。これが 地域ネットワークがうまく機能していけば、だんだんそちらのほうに移行していくこと が望ましいのではないかと思います。  そのときに、2つ考えておかなければいけないことがあると思っています。1つは、 例えばそれをどのようにして広げていくか。ここにあります10のリスト、それに宮城を 見てみますと、例えば人口の多い東京都、神奈川、千葉あたりの取組がどうなっている のか。名古屋もおそらくやっていらっしゃると思いますが、名古屋、大阪というところ が出てきていないので、そういう医療機関の多いところへ、これをどのように広げてい くか。  全国的な広がりをどう展開していくかという問題と、もう1つは、その中身、クオリ ティをどうしていくかという点です。先ほどお話があったように対策の評価が大事だと 思いますが、評価をやるには、どうしてもサーベイランスが必要だろうと思います。中 小の病院でサーベイランスをやるのを、どうやって支援していくか。また各地域で出さ れた回答の中身のバリデーションと言いますか、クオリティ・アシュアランスをきちん としていくことも必要だと思います。ある程度回答も標準化していく必要があります。 その辺のシステムをどのようにしていくかといった問題点を、今後、考えていく必要が あるのではないかと思います。 ○小林座長  大変重要なことだと思います。当初、私も感染症学会のQ&Aに関与していました が、木村先生の時代になり、これも厚労省の援助を得て大変立派なQ&Aといいます か、その事例集が既に出来上がっています。これは、いま木村先生が言われたようにい ろいろな質問が出てくるのです。いろいろな所で同じ質問が繰り返されていますので、 これをどう整理して有効に活用していくかということで、私もそういうことがあります ので、いろいろな方のお力を借りてQ&A集を作って、ついこの間、それを改訂して、 ほぼいろいろな所で出てくる問題は網羅されていると思っていますが、それを見た上で も、まだまだ新しい質問が出てきています。  倉辻先生の事例のデータベースの中に、何かそういうものを取り込んでいける余裕が あって、そういうものが現場にフィードバックできるか。この間も話に出ていたのです が、ネットワークを作って、いろいろな指針なりマニュアルができても、それをどうや って末端まで徹底させていくかということが、いま木村先生がご指摘になった重要な点 ではないかと思います。  次の「提言」につながるご意見がたくさん出てきましたので、この辺で4番目の議題 の第1回院内感染対策中央会議の今回の「提言」に移らせていただき、ここで少し本日 のまとめを考えながら、いまの議論を続けていただきたいと思います。この提言の方向 性に関して事務局からご説明いただければと思います。 ○事務局  議題4の「第1回院内感染対策中央会議の『提言』について」ということで入りたい と思います。資料5をご覧ください。院内感染対策中央会議における技術的検討の一環 として、医療機関における院内感染対策において留意すべき具体的な事項とか、先生方 からの技術的助言等についての議論の結果を踏まえ、提言に取りまとめることを検討し ています。  「提言」というのはどういったものかというと、原則、各会議の回ごとに取りまとめ る形を考えています。テーマは座長の先生とか構成員の先生方からの提案を含め、第2 回以降は開催の事前に提言のテーマを決定するというように考えています。提言も(案 )ということで、各回の構成員の先生方の発言を基に、事務局において取りまとめるこ とを考えています。その後、座長の先生、構成員の先生方の確認、修正をいただいた後 に、ホームページ、その他の方法において、この「提言」の取りまとめたものを公表す ることを考えています。  各開催ごとに取りまとめる「提言」ということですので、例えば先ほどの有識者会議 の報告書などのように厚いものというより、せいぜい数枚程度に集約されるような総論 としての提言になるのではないかと考えています。今回は第1回の会議ですので、事務 局から第1回のテーマを提案させていただきたいと考えています。  昨年度以降の各地の医療機関等において、いくつかの集団院内感染の事例の発生が確 認されていることは、先生方のご記憶に新しいところだと思います。第1回のテーマと して資料5にも書いていますが、「医療機関における集団院内感染の発生に際する対応 のあり方について」ということで、専門家である構成員の先生方からご意見やお考え、 医療関係者、自治体関係者等に対するアドバイスなどをいただければと考えています。 多少漠然としたテーマではありますが、先生方のご了解を後ほどいただけるようでした ら、このテーマでご議論をお願いしたいと考えています。資料5の2頁目に、甚だ恐縮 ながら事務局で作成したメモがございますので、議論の際のご参考にしていただければ と考えています。説明は以上です。 ○小林座長  いかがですか。こういう方向で本日の提言を検討させていただいてよろしいですか。 次回はおそらく次年度になると思いますので、第1回のこの会議の提言ということで、 先ほど来議論になっている地域支援ネットワークの実例を踏まえながら、議論を進めて いただきたいと思います。  限られた時間ですので、先ほど来出ていましたご意見の内容を私なりに整理してみま した。「医療機関における集団院内感染の発生に際する対応のあり方」ということです が、集団発生が異常かどうかの特定をどうするかが、まず問題になるかと思います。特 定をするためには疾患別の定義がないと、異常発生かどうかの特定ができないことにな るだろうと思います。その上で対応となるのですが、これは先ほど武澤先生が整理して くださったように、プリベンション(予防)と、本当に多発が起こってしまったときの コントロール(制圧)をどうするかという問題です。この一連のことに関して病院の匿 名性というか、個々の症例の匿名性、セキュリティの問題、それからQ&A的なものを 含めての教育、啓発をどうしていくかという問題、データベースをどのように構築し て、これを活用していくかという問題、このようなところがいろいろ出た項目ではない かと思います。  今日は第1回ですので、提言として、こういう総論的なことをどういう方向で考えて いくかということでご意見を賜って、これをまとめて第1回の提言とさせていただいた らと思いますが、いかがでしょうか。よろしければそういう方向でご意見を賜りたいと 思います。30分ほどになるかと思いますが、ご遠慮なくご意見を賜りたいと思います。  この特定をどうするか、異常発生か正常範囲かということは、これも有識者会議の答 申を受けて行われた厚労省の厚生労働科学研究の中で、大久保先生が中心になって事例 集的なものをまとめてくださっていますが、その点に関して大久保先生、何かご意見を いただけますか。 ○大久保構成員  その研究の主なテーマは、「微生物別、感染部位別院内感染発生時の報告のあり方に 関する調査」でした。各医療機関が院内感染のアウトブレイクが発生したと推測した時 に、それに関する報告あるいは相談を行政に対して行うための指標を作成することを目 的としました。具体的にはアウトブレイク事例の定義付けを微生物の稀有さ、病棟特 性、重症度、発症人数などによりおこない、将来的には院内感染地域支援ネットワーク への相談/報告の必要性の基準を作成することを目的としています。通常起こっている ようなMRSA感染などは、通常の発生頻度の二倍以上、通常では見られない症例では 複数例の発生、無菌領域からの同一の微生物の検出が複数例発生、常在菌以外の特異的 微生物が複数例に検出などのカテゴリーに分けてみました。いずれにしましても、アウ トブレイクの定義の目安をまず決めるべきだと思います。 ○小林座長  岡部先生、先生がお出でになる前に私も最初に申し上げたのですが、ノロウイルスが 問題にはなっていますけれども、それ以上にインフルエンザのほうが大きな問題だし、 これによる死亡なども病院内の問題としてはあると思います。今回の問題も含めて、本 当にクロスインフェクションとして起こってきたかどうかという、ウイルス疾患の特定 をしていくことは決して容易なことではないと思います。その辺、今後の進め方という か提言としては何かございますか。 ○岡部構成員  1つは、院内感染というのは結果として起きた、発症した方のサーベイランスである ことが多いわけです。院内感染サーベイランスのほうでも一部やっていますけれども、 ベースになっている菌なりウイルスなりの通常の動向というのは、定義を決める、ある いはアウトブレイクになったのだというときに、重要になってくるのではないかと思い ます。  おそらく前半の話で出たのかもしれませんが、通常でも例えばノロウイルスとかが起 き得るわけですし、インフルエンザウイルスが絶対に医療機関に入り込まないというこ とはできないわけです。それに基づくベースラインがどのくらいあるのかというのは、 結局、よくわかっていない部分があると思いますので、そういう意味で患者さんが発生 したときだけでなく、通常の状態の感染症の発生動向というのが、医療機関内において も、そこを意識しての把握が必要だろうと私は思っています。 ○小林座長  武澤先生、ICUというお立場で先ほどもおっしゃっていただきましたが、ICUの 中での感染率にいろいろ差があり、それも結局、ベンチマークがどこかになければいけ ないわけですが、それと同時に、ICUというハイリスクの場所でのプリベンションと コントロールの問題、その辺について何かございますか。 ○武澤構成員  おそらくICUの患者というのは、私たちが日本でのデータではハイリスクではない のです。アメリカのICU患者はハイリスクですけれども、日本はむしろ一般病棟のほ うが本当は危ないというのが、私たちが国立大学病院でのサーベイランスがやった結果 なのです。  元の話に戻して、対応の仕方ですけれども、医療事故の場合には医療機能評価機構に 報告するシステムがあります。これは事故か事故でないかという判断はしないことにな っています。患者に対して何らかの悪影響を及ぼしたものに関しては、事故という括り ですけれども、医療機能評価機構に報告するという整理がされたと思います。  院内感染に関しては、医療機能評価機構でなくて地方の自治体のほうに権限が移譲し ているので、感染症予防法ではそうなっていますね。そことの整合性を一体どうやって 取るのか。地方行政機関にアウトブレイクが起こったときの対応に対する権限があると はいえ、その能力があるのか。よくわかりませんが、医療事故に関しては、もう少し中 央のほうにシフトした形での行政的な仕組を作ろうとしていると思います。院内感染は どちらかというと地方分権のほうにいっているように見えます。  アメリカでは、院内感染は医療事故の1つだという括りで整理されています。日本は それが分かれて対応がされているので、それでよいのかどうか。地方自治体のほうに情 報を提供して、どのようにアウトブレイクへの対応ができるのか、できないのか。大学 病院が中心になるのかよくわかりませんが、その辺ももう少し考えたほうがいいと思い ます。片方は医療機能評価機構、片方は県の衛生部に行かないといけないということに なり、医療現場は混乱すると思うのです。その辺も本当はルートを一本化したほうがい いのかなという気もするのです。 ○小林座長  ただ、先生、どうでしょうか。イギリスにしてもアメリカにしても、セントラル・パ ブリック・ヘルスラボラトリーなりにCDCがあって、しかし、リージョナルオフィス があって、そこが普通の状態では動いていて、全国的な問題になれば中央が動く。また は特殊な問題は中央が動くというシステムになっていると思いますので、インシデン ト、アクシデントに対して、どういうシステムになっているのか私は十分わかりません けれども、そういう意味における中央とのつながりを持ったネットワークというふうに ご理解いただければ、あまり地方分権のような形になっているということではなくて、 それがないように実はこの中央会議をもって調整を図っていく必要があるというのが、 有識者会議のときの答申の1つのポイントであったのですが、ご指摘のような形になっ てしまうとバラバラになるので、これを持とうということなのです。今日は第1回です ので、そこまでとても進まないかと思いますが、それを含めた提言というふうにご理解 いただければと思います。 ○武澤構成員  情報の共有化を図るときに地域だけで共有化しないで、全国で共有しなければいけな いと思うのです。それが地域分権になっていったときに、どうやってそれを統合したも のにするか。ネットワークのさらにネットワークを作らなければいけなくなりますの で、その辺の情報の共有方法を考えたほうがいいかもしれません。 ○小林座長  重要なことかと思います。 ○岡部構成員  CDCあるいはPHLSのシステムの話が出ましたが、これを言ってもしようがない のかもしれませんけれども、いずれもそういう所は院内感染に対してヘッドクォーター があるのです。そこを総合的に考えてサーベイランスをやるなり病原体をやるなり、あ るいは例えばアウトブレイクのレスポンスがあるならば、それは別のチームを派遣する という形ではありますけれども、そういうヘッドクォーターがある。残念ながら我が国 ではそれがない。ですから、もう少し中長期的あるいは大きい意味で言うならば院内感 染対策というのは、1つのヘッドクォーターの組織が必要だと思います。 ○小林座長  そういう意味で倉辻先生には、ここのところいろいろ頑張っていただいているわけで すが、先生、いまの問題に関しては何かございますか。 ○倉辻構成員  統合して考えていくことが非常に大切だと思います。それで私どもの所の臨床と感染 研と協力して行っています。感染研のいろいろな全国サーベイランス情報や耐性菌情報 を基にしてこちらが臨床的に対応していくということになっています。しかし今後事業 として行うときは、協力関係ということより、むしろ組織としてヘッドクォーターがあ ることが私は大切だと思います。そうすると常時、どんな形で来ても対応し展開できる と思います。  先ほど言いました、例えば感染研の指導の下に地衛研があって、その地衛研でいろい ろな対応も、ある程度できるようになっていますから、そういうもののヘッドクォータ ーとして感染研があるわけですから、院内感染としてのヘッドクォーターというのは大 切で是非あればいいと思っています。 ○小林座長  切替先生、いかがですか。 ○切替構成員  ヘッドクォーターを作らなければいけないというのは、実際、本当にどこが院内感染 をやっているのかというのが見えないところがあるので、長期的には必要だと思いま す。  もう1つ、今度は逆なのですが、もともとネットワークというのは、いままで院内感 染のことをあまり考えておられないような小さな病院に、どう参加してもらうかだと思 います。私たちもICT(Infection Control Team)みたいな活動をしますと、最初は つまらないと言ったらおかしいですが、非常に不特定多数の問題が出てくるのですけれ ども、だんだん参加してくる人たちがエデュケーションされてきて、非常に質の高い問 題点が浮かび上がってくるということは、おそらく宮城みたいな先進県で、賀来先生の 所などはよく経験していると思います。  何かシステムを作って、例えば医師会でもいいですし、例えば老健施設のような所も 参加してメリットがあるような、つまり相談してメリットがあるところを作っていけ ば、いちばん最初に倉田先生が言っておられたように、20年間全然変わっていないので はないかというのでなく、病院内の環境がどんどん変わっていますから、実はターゲッ トがひょっとすると変わっているかもしれないわけです。いままでMRSAだけ見てい ればよかったのが緑膿菌かもしれないということが、たぶんこれから起こってくると思 います。何かそういう上のヘッドクォーターと、下の人たちが自由に参加できるような システムが作れないかと思います。 ○小林座長  倉田先生、このヘッドクォーターというかセンターの問題は、先生の前任者の吉倉先 生の時代から議論の対象になっていましたけれども、先生、何かございますか。 ○倉田構成員  将来の姿を、ほかの感染症すべてに関わりますから、たとえばCDCでは行政と現場 が一緒になっているヘッドクォーター(HQ)というように、院内感染についていえば ラボの経験者及びマネジメントの経験者を含めて150人ぐらいの方が現在はおられます が、パラメディカルを含めて全部医療関係です。そういうシステムがあって、さらにそ こから疫学の専門家が各州に出ている。予防接種の専門家も出ている。州にHQから多 数の人が出て、中央に直結しているということです。  でも、現在日本では、感染症対策そのものすべてそうですけれども地方に投げられて しまっている。地方の人はそう言うのです。中央は何でも下ろしてくる。しかし、先ほ どの地方衛生研究所は我々はよく知っていますから、検査の関係から言うと、インフラ という意味でハード面は非常に貧しい。人の面でも非常に乏しい。そんなものいくら下 ろしてきたってできるかということです。場合によっては全部、民間の検査センターに やってしまう。そういうことが現実に起きているわけです。  そういうことをわかりつつ、厚生労働省はそれを現場に下ろす。それは法律上はそう なっているのですが、米国はあれほど州の独自性を発揮しながらも、感染症の問題につ いては全くそうしていない。中央直結で全部やっている。  地方と言うと叱られるかもしれませんが、地方というのは県のレベルの話あるいは政 令指定都市の話になってきますけれども、もちろん個別に見ていると、中央の対応より 良いものも地方にありますが、全体として見ると中央は命令指令だけするような格好で は、なかなかうまくいかないのではないかと思います。  先ほどマニュアルだ、ガイドラインだと皮肉ったのは、米国はマニュアルもガイドラ インもそんなにたくさんありません。CDCが中心となって専門家が集まって作ったも のを全部が共有して、その書いてあるマニュアルに従って何が問題かを解析する。例え ば私が専門としてきた天然痘にしたってマニュアルは駄目です。対応の仕方もみんな少 しずつ違っている。それでは本当は困るのです。  ですから厚労省としては、当該人の私がそういうことを言ってはいけないのですが、 こういう会議ですから言わせてもらいますけれども、きちっと1つのもので、それによ って専門家が全部、地方の人も含めてやるのでないとうまくいかないのでは? どこど この病院では既にすばらしいものを作られている。ところが、それが広がらない。ある いは厚労省が作ったものが末端まできちんと、それに従っていろいろなものが行われて いるか? そろそろそういうことをきちっとやらないと、この問題だけでなくあらゆる 問題が差がどんどん付いて、例えば東京・大阪周辺の所は、政府何するものぞ、とな る。金もヒトもあり、かなりの対応が可能ですから。1つの方向で全部を掌握すること を、そろそろ厚労省も考えておかなければいけない。別にHQと決めたら、全部下ろし ていくのでなく、あらゆる問題について本当のHQになるべきだと思います。そういう ことを感じています。 ○小林座長  有識者会議のときにも、短期的な問題と長期的な問題を分けて考えていこうというこ とで、長期的な問題はさて置いて、短期的な問題の1つとして今までいろいろ挙がった このネットワークを含めて、話題が取り上げられてきたわけです。保険絡みの問題であ るとか、いまのようなシステムの問題は長期的に解決していかなければならないことで しょうし、国立の感染研というものがある以上、ここもそういう方向を踏まえて考えて いただかないと、基礎的なことだけをやっていただくのでは困るわけです。岡部先生が いろいろやってくださっているわけですが、そういうことを踏まえて、これからの大き な問題として考えていただかなければならない1つの提言にはなるかもしれません。そ れはそれとして置かせていただき、本日のアウトブレイクといいますか、施設内の多発 ということに関するこの会議の提言として、残された時間でまとめさせていただければ と思います。 ○賀来構成員  宮城県での経験事例から言いますと、大久保先生が言われたようにアウトブレイクの 定義をまず決めていかなければいけませんが、そのときに、確実に相談できる所がある ということがものすごく重要だと思います。1つの事例ですが、クロストリジウム・デ ィフィシルという菌が多発して、これは実際には感染症のアウトブレイクではなかった のですが、この事例はたまたま保健所と私ども大学のほうに同時に連絡をいただいて、 私どもと保健所で同時にその施設にお伺いし、そしていろいろなご相談をして、やはり これは私どもの範囲を越えるというある意味での判断の下に、国立感染症研究所の荒川 先生のチームと岡部先生のチームに応援をお願いしました。  実際に地域で、どの段階でアウトブレイクと判断するかというのは、先ほど言ったよ うにいろいろな問題がありますけれども、少なくとも何かあったときに、何かおかし い、通常と違うと気づいたときに、それを気軽にと言いますか、電話あるいはメールで もいいのですが、とにかくどこかがそういった窓口になることが、対応のあり方につい ての第一段階としてあると思います。そのときに気軽にということと、中小病院もとい うこと。  そこが窓口になって、いまも議題に出ましたけれども、中央のいろいろなバックアッ プ体制で地域で取れない部分については、中央と常に連動していろいろ応援体制を取っ ていただいてやっていく。そこの流れが少しできてくれば、かなり違ってくるのではな いかと思います。これは私ども宮城の中での経験からそのように感じます。 ○小林座長  ほかに何かございますか。 ○倉辻構成員  厚労省の研究班から始まったサーベイランスシステムが現在まで5つ走っています ね。全病院、全疾患に対してのサーベイランスについては、現在、120ぐらいの施設が 参加しているわけですが、例えば地域ネットワークのシステムでそれをどのように利用 するかという問題、院内感染防止に結び付けるには、都道府県の所の施設は、できるだ け多くこのサーベイランスに追加参加していただくことが必要になるのではないかと思 います。  感染症発生が通常と比べて多いか少ないかは、最初は感覚的なものになりますけれど も、きちんとしたデータが出てくれば、これは数としてリアルタイムにそれが異常なの かどうか判断でき、応用可能になると思います。そういうものでこのサーベイランスシ ステムに、少なくともいま施行している11の政令都市、あるいは県にできるだけ多く参 加していただくことを提言したいと思います。 ○小林座長  そういう意味ではサーベイランスのデータの質というのが、そろそろ問われてこなけ ればいけないと思います。その点でまだ日本のサーベイランスは数が増えてしまうと質 が落ちる危険性があります。その辺のオーディットをどのようにお考えになりますか。 ○倉辻構成員  1つには疾患の定義だと思います。標準化をしていかなければいけないので、その点 は感染症学会や環境感染学会などの指導と協力を得て、ある程度の質を保つようにして いったらいいのではないかと思っています。 ○小林座長  定義は一応JANISでできているわけですが、それを実際に現場で質をちゃんと評 価できる人材がいないと、このデータが上がってきたときに低めの結果が出てきて、こ れはベンチマークにならないことになるので、その辺を、そうすると誰かがオーディッ トしていかなければいけないことになるかと思います。 ○荒川構成員  データの信憑性とか評価は、最初に小林先生がおっしゃったように、いまICDとい う立場の方が多く登録されていますので、そういう方々が各病院で感染症かどうか迷う 事例について、きちっとカルテを見ながら判断することをしていただければ、かなり質 は上がっていくのではないかと思っています。ただ、全国共通の基準を作るというのは 非常に難しいところがありますので、病院ごと、あるいは地域ごとにそういった方をき ちっと育てて、そういう方々の活躍する場を充実していくということではないかと思い ます。 ○武澤構成員  そういうきちっとしたサーベイランスをやろうと思ったら、アメリカがやっている250 人に1人のICNを雇用しないとできない状況があります。個々の病院が感染症の診断 と治療にどのように対応しているかということも大事ですが、この会議としては、一体 日本で、どこの部署でどのぐらいの感染が起こっているのか。その増減をあまり人手や 金をかけずにデータが取れるような仕組を作る必要があると思います。  私たちが今考えているのは、包括評価の中から院内感染に関するデータを自動的に取 ってきてしまう。例えば平均在院日数を超えて、1SDとか1.5SDの患者さんがどのくらい いるのか。そのうち抗生物質を使っている人数を調べると、尿路感染だろうが肺炎だろ うがSSIだろうが、少なくとも在院日数を超えて、そこに抗生物質を使っている患者 さんがいるということがわかります。そのような院内感染を獲得した患者さんがどのく らいいるのか。そのために包括の平均在院日数を超えてどのくらい病院に入院したの か。使ったお金が幾らなのかと考えれば、政策的に院内感染がどれだけ重要な問題なの かということのアウトラインがつかめると思います。木村先生がおっしゃらないので、 私が代わりに言いますが、ある大学で木村先生がお調べになったデータで年間1兆5,000 億円が院内感染のために余分に払っている医療費なのです。 ○木村構成員  日本全体に換算すると、そうなります。 ○武澤構成員  年間1兆5,000億円、院内感染で損をしているという歴然たるデータがあるわけです。 おそらく包括評価でもそのような数値は出てくると思います。医療機関は院内感染を起 こしただけ損するわけです。国民も損します。アウトブレイクを予防して、起こした場 合も広がらないようにしなければいけないというみんなの合意が取れるわけです。そう いうデータをバックにして、なおかつ国のヘッドクォーターをちゃんと作る。これはア メリカではナショナルプロジェクトとなっています。医療の質と安全はアメリカのナシ ョナルプロジェクトだとクリントンも言ったわけで、それに従ってやってきたわけで す。  私はこういうことを言うのはやめようと思いましたが、倉田先生がおっしゃったから 言ってもいいのかなと思って言ってしまいますが、やはりこれは国の事業なんだという ことをもう少し考えていただかないと、地方はかわいそうです。お金も権限も与えられ ていなくて相談だけされたって、どうしようもありません。ですから、もう少しこの会 で提言して、国が主導権を持って率先して院内感染対策をやるべきだという提言を、入 れていただけるといいのではないかと思います。 ○荒川構成員  いま、地域支援ネットワークの充実ということを厚労省が考えておられる背景には、 国として地方へきちっとした人的、経済的な支援をすることを前提に、そういう方針を 出しておられるのだと私は理解しています。それがあればそういう制度は確かに動くと 思います。アメリカの場合、感染症対策というのは国防の一環なのです。日本は少なく とも現時点では国防という認識にはなっていないのです。個々の病院における自助努力 目標というレベルの対策として求められているのです。アメリカはテロの問題などがあ ったりしますので、国防の視点から感染症対策というのを組織化しています。  ですから、アメリカの方式がいいのか日本の方式がいいのか、よくわからないところ がありますが、少なくとも機能を中央に置くにしろ地方に置くにしろ、それだけの予算 と組織が必要なのです。それを十分に機能させなければ、こういう問題というのはいつ まで経っても改善されていかないと私は思います。院内感染も含めて、これは細菌だけ でなく今回のノロウイルスとかSARSみたいなものも含めて、そういうものをきちっ と統括できるようなヘッドクォーターを、本当は日本のような医療先進国は、きちっと どこかに位置づけて組織を作らなければいけないと私は思います。  これは全体的な話ですが、サーベイランスに絡んで言いますと、私の所にいろいろな 相談がきて、いろいろな所へ調査に行ったりするのですが、実際には多くの病院でもう 既にサーベイランスのデータは持っているのです。ところが、少し特定の耐性菌あるい は特定の感染症の患者さんが増えた段階で、一部の人はそれを「おかしい」と気がつい ているのですが、それが結局、その施設の共通の認識になっていなくて、アウトブレイ クになってしまってから問題化するのです。だからアウトブレイクになってしまってか ら対策を立ててもあまり意味はないので、その立ち上がりの段階できちっとそれを検出 して、アウトブレイクに至らないようにしていくことが、本当に院内感染を減らしてい くことではないかと思います。  ですから、アウトブレイクをいかに検出するかではなくて、アウトブレイクの予兆を きちっと捉えて、本当のアウトブレイクにならないようにしていくための各医療施設に おける院内感染対策、それを支援する地域のネットワーク、さらにそれをサポートする 国ないし感染研も含めて、そういったところの組織づくりをしなければいけないのでは ないかと思います。 ○武澤構成員  実際に国立大学でアウトブレイクが起こったときに、私たちは調査で現場に入るので すが、先生がおっしゃることは実はできていないのです。現場の医療従事者は院内感染 を起こして心を痛めているわけです。それを例えば中央に報告しようというときにすご いバリアーがあるわけです。おそらく県でもそうだと思います。隠そうと思う人がいる わけです。そうでなくて、自動的にデータ収集ができるシステムとか、あるいはそうい うことをしたら病院が損をするということが客観的状況としてない限り、なかなかアウ トブレイク報告が出てこないと思います。  ですから先生がおっしゃるとおり、アウトブレイクが発生して患者さんが何人も亡く なって、問題化するわけでしょう。その後に報告がくるわけです。実際に現地調査をし たら、賀来先生も行かれていると思いますが、かなりの問題があるのです。それは権限 の問題とかいろいろとあるのです。とにかく専門家集団が現場に行って、そこでいろい ろ現場を見て分析をして提言しないと、なかなか改善できません。  いちばん大きな問題は、私は権限の問題だと思います。感染対策をやっているICT のトップが病院長直属で、彼が言ったことに皆がすべて従うというところまで権限が与 えられていないのです。病院長が経営的あるいは政治的判断で抑えてしまうことはいく らでもあるわけです。そこを工夫して、せっかく作ったネットワークが機能するよう に、情報が出て行きやすいようにする。そうしないと病院は損をするという形の仕掛け を周りで作っていかないと。こうすべきだというのは大体みんなわかっているのです。 ところが実際にはそのように動かない。そこが問題だと思います。 ○小林座長  おっしゃるとおりで、ICDがいても、それが病院長直属のラインとして機能してい なければ良い仕事はできないのです。ただ、そういう人がいない中小の病院をどうする かという問題がありますが、大きな病院に関してはご指摘のとおりで、それは私も全く 同感です。経済的な評価というのは木村先生がひところやりました。その前の1990年代 にMRSAだけに限ってやって、それを1ベッド、1日に全患者に平均すると172円で、 アメリカで出している数字と大体変わらないのです。それを1年にすると膨大な数にな ります。全国的にすると膨大な損失につながるわけです。これを基に、1996年4月の対 策がきちんとしている所は、1日、1ベッド50円を付けるという、つまり3分の1減れ ば、それは有効に活用されるという1つのデータにもなったわけです。  ご指摘のように、感染が起こればいかに損をするかということは、このネットワーク の中でも取れれば是非収集して、それを病院の管理者に理解してもらって感染対策に力 を入れて、いまのような然るべき実行力のあるICDなり組織づくりをしてもらうとい うことは、提言として非常に重要なことだと思います。 ○切替構成員  先生がおっしゃったこととほとんど同じなのですが、具体的に小林先生が最初のほう で言われた200床以下のベッド数の病院では、8病院に1人しかICDがいない。だか らICDがいなければ正直な話、本当に患者さんがバタバタ亡くなるようなアウトブレ イクが起きた時点でしか対応しないはずなのです。だからICDという必ずコアになる 人が動くしかないので、コアになるようなICDの人口を200床以下の病院で増やすと いうのが、現実的な対応になるのではないでしょうか。 ○荒川構成員  現在、この後ろのほうの資料にもありますように、中小病院に対してアウトブレイク が起きかかっているのを検出するシステムを作る研究を、東邦大学の山口教授が17年度 まで3年間でやっておられます。これはどういうものかというと、中小の病院というの は検査センターに検査を依頼しますね。ですから検査センターのデータを活用して、い わゆる経時的に何か変動があるか。あるいは病棟ごとに変動があるかどうか。そういう 常日ごろのベースラインと違うような事象が現れたときに、それをピックアップして病 院に対して、ただ単に細菌検査の結果だけでなく分離率とか、そういうトレンド解析み たいなものも返していきながら、専門家のいない中小病院でも、そういうことについて 早く検出できるシステムを、いま作っていただいています。それも1つ、そういう目的 に役に立つのではないかと思います。 ○小林座長  それは両方の面があると思いますが、切替先生がおっしゃったように、それは分離さ れた菌を基にしてサーベイランスというか、現場に介入しなければ絶対改善につながら ないと思います。それをできる人材をどうするかということで、木村先生、このICD の制度を作った当初は、300床または200床に1人の認定ICDを作るということで、い ま4,948名ですから数の上ではほぼ200床に1人の数になっていますが、今後の200床以 下の病院への比率を増やすことに関して、いかがですか。 ○木村構成員  数年前に小林先生と2人で始めたICDの制度ですが、当初、1,600名程度、ちょう ど300床以上の医療施設の数が全国で1,500〜1,600ということだったので、そこを目標 として認定を始めましたが、いま小林先生が言われたように、4,000名を少し超える程 度のICDが認定されるようになりました。非常に関心が高まって、ICD制度ができ た後、あちこちでサーベイランスも始まったし、ICTが活動を始めたところも多く、 効果は非常にあったと思います。 ○小林座長  3,948です。 ○木村構成員  今年の1月1日の認定で、また増えまして4,339になりました。ですが地域差とか施 設間の差があってICDのいない施設も多い。特に中小施設ではそうだろうと思うの で、ICDの質を高めていくことを、いま重点的にICD協議会でやっていますが、で きれば数ももう少し中小病院までいくような形にしていくほうがいいだろうと思いま す。  それと同時に、切替先生も言われましたが、極端なことを言いますと、施設の設置基 準みたいなものの中に、特定機能病院にやったように、こういう感染対策を担当する人 を置くべきであるという方向へ持っていったらいいのかなと思います。ICDを置けと 言うといろいろと問題もあると思うので、それに準ずる能力・技能を持った人という形 で、例えば50床以上には1名置くとかはどうかなと思います。 ○小林座長  それは非常に大事な提言だと思います。ネットワークの対象となる200床以下、100床 以下の中小の病院で、専任でなく併任であっても担当する責任者を置くことは、ずいぶ ん良いほうの変化を来すのではないかと思います。これはこの中央会議としての1つの 提言にできるのではないかと思います。そろそろ時間が迫ってまいりました。どうして もというご発言があればお1人だけ伺いますが、いかがですか。よろしければ、今日は 第1回ですので、いろいろな角度からいろいろな問題が提示されました。これが今後の この会議のひとつの方向性を考えていくための提言と受け取ることができると思いま す。  たまたまこの時期にノロウイルスの問題が大きく報道されましたが、むしろ、これは まだまだ病院感染としてはいろいろ問題があることであり、それ以上にいろいろな問題 があるし、そういうことをすべて包含した感染対策というものが、中小の病院でも考え られていかなければいけないし、大きな病院がすべていいわけではなくて、ここにもま だまだ問題は残っているわけです。このネットワークを介して、そういう大きな規模の 病院に対してもプラスの効果があるような方向で、今後、検討を進めていかなければな らないと思います。  このようなことで一応、今日の提言に関する議論に終止符を打たせていただきたいと 思います。よろしいですか。議事としては以上で終わります。今日出ましたいろいろな ご意見の中から、ひとつの提言をまとめさせていただき、また構成員の先生方のお目通 しをいただいて、まとめるという方向で進めさせていただきたいと思います。今後の動 き等について事務局からございますか。 ○谷口指導課長  ありがとうございました。大変長時間にわたり、熱心にご討議を賜りまして感謝申し 上げる次第でございます。じっと拝聴いたしておりまして耳の痛いご意見を賜りました ことを重ねて御礼申し上げたいと思います。  その中で1つ、私どもとして悩んでいるところということで、地方がそもそもこうい った問題についてイニシアティブを取るのか、国に一本化した形で率先した施策を取る のかについては本当に難しい問題です。私どもは指導課ですが、指導課というのは救急 医療も担当しています。救急医療というのは非常に時間の制約を受ける医療で、生命に 直結するというところもあります。そういったところの問題についても、迅速さが求め られるものについては、その地域、地域において完結しなければいけないというポリシ ーの下にやっています。  そういうことを引き移して考えますと、感染症も基本的には似たようなところが実は あるなと、私どもとしては考えていた趣がございます。できるだけ初動の体制で完結で きるものは地方にやっていただいたほうがいいというのが、我々の基本的なポリシーで すが、然は然りながら今日の議論に出てまいりましたように、地方で能力を超えるよう なものについてどうするのかについては、私どもとして、正直言いましてまだ完結した 答えを持っているわけではありません。その辺のところ、どこからどこまでが地方で対 応でき、また国としてそれ以上は対応するのかといった整理も、今後、必要なのかなと いう感じを持ちながら聞かせていただきました。  そういった点も踏まえて、座長の先生と今日のご提言を踏まえて、貴重な議論に対す る我々の考え方の整理もしていきたいと考えています。今日は時間が足りなくてご発言 いただけなかった先生方におかれましても、1週間ぐらいの間で追加のご発言、言及し 損ねたところがございましたら、FAXでもメールでも何でも結構ですので、事務局の ほうにいただきましたら提言の中に、場合によりましては座長と相談の上、盛り込ませ ていただく措置も取りたいと考えています。  今日は第1回目でございまして、さまざまな議論が出たところですが、いろいろな視 点から今後、2回目、3回目という形で議論を進めさせていただき、地域におけるネッ トワークへの反映も踏まえ、院内感染対策を充実してまいりたいと考えていますので、 今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。本日は大変ありがとうございまし た。  次回以降の日程につきましては、まだ具体的には未定ですが、先生方はお忙しいと思 いますので、座長とご相談の上、できるだけ早く日程度の調整をさせていただき、2回 目以降のことについてもご連絡をさせていただければと考えています。よろしくお願い 申し上げます。 ○小林座長  よろしいですか。以上をもちまして第1回の中央会議を終了させていただきたいと思 います。貴重なご討論をありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。 (以上) 照会先:厚生労働省医政局指導課     院内感染対策担当(片岡、溝口) 電話 :03-5253-1111(内線2771)