05/01/12 第21回職業安定分科会雇用保険部会議事録        第21回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録 1 日時  平成17年1月12日(水)9:00〜10:00 2 場所  合同庁舎第5号館(厚生労働省) 職業安定局第1会議室(13階) 3 出席者    委員  公益代表  :諏訪委員、中窪委員、林委員        雇用主代表 :相川委員、中島委員、原川委員、輪島委員        労働者代表 :栗田委員、豊島委員、長谷川委員、三木委員    事務局 大石職業安定局次長、生田雇用保険課長、田中雇用保険課長補佐、        戸ヶ崎雇用保険課長補佐、中村雇用保険課長補佐 4 議題  雇用保険法施行規則の一部改正等について 5 議事 ○部会長(諏訪)  ただいまから第21回雇用保険部会を開会いたします。議事に移る前に、委員の交代が あったのでご紹介いたします。労働者代表の中村善雄委員が辞任され、後任として、日 本労働組合総連合会雇用法制対策局長の長谷川祐子さんにご就任いただきました。ま た、労働者代表の久保直幸専門委員、雇用主代表の遠藤寿行専門委員が、それぞれ辞任 をされています。次に本日の出欠状況です。大沢委員、中馬委員、新谷委員、渡辺委員 がご欠席です。  議事に移ります。本日の議題は、「雇用保険法施行規則の一部改正等について」で す。昨年1月23日の職業安定分科会の答申を受け、国会に提出された「育児休業、介護 休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律」 が、去る12月1日に成立し、8日に公布されたところです。これを受けて、本日は同法 の施行に伴う、雇用保険法施行規則の改正についてご議論いただくものです。ご承知の とおり、本件については関係者等への周知期間を考慮し、できるだけ早い時期に検討結 果を省令等に反映する必要があります。そこで当部会においてはあらかじめ検討を行 い、その検討結果を職業安定分科会に報告し、速やかに審議会としての結論を得ること ができるようにしたいと考えています。まず事務局から説明をお願いします。 ○保険課長補佐  お手元の資料に沿って説明いたします。配付した資料ですが、資料No.1から資料No. 3まであります。資料No.1が「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案等の概要 」です。資料No.2は、「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱(案)」で す。 資料No.3が「参考資料」です。  まず、今回の制度改正について簡単にご確認いただきたいと思います。資料No.3 「参考資料」をご覧ください。昨年1月に当部会からいただいた報告書概要ですが、こ れに沿って今回の制度改正について説明いたします。1頁です。部会報告の概要で、見 直しの必要性については、育児・介護休業制度の見直しに合わせて、新たに育児休業又 は介護休業の対象となる場合について、育児休業給付及び介護休業給付によって育児休 業及び介護休業を取得しやすくし、その後の円滑な職場復帰を援助・促進するという必 要性に基づき、制度改正を行ったということです。その改正に当たり「雇用継続を援助 ・促進する」という雇用保険制度の一環として制度化された、制度本来の趣旨を十分踏 まえ、改正によっても基本的に財政的に中立となるよう配慮するという必要性の条件を いただきました。  見直しの方向性として4つあります。これに沿って法律案を提出し、成立したところ です。4つを簡単に言うと、1番目が育児休業給付の給付期間の延長です。保育所に入 れない等、特別な事情がある場合に限り、育児休業給付の給付期間を最大1歳半まで延 長するものです。この「特別な事情がある場合」というのが省令事項になっているの で、今回ご審議いただきたい事項です。  2番目が、介護休業給付の受給回数の見直しです。これも育児・介護休業法の改正に よって介護休業を取得できる回数の制限が緩和されることに合わせた改正です。3番目 は、期間雇用者の適切な取扱いです。これは省令事項で、今回ご審議いただく事項で す。育児・介護休業法の改正により、期間雇用者に休業の権利が付与されることになり ますが、これに対応して、そのような者のうち「雇用継続を援助・促進する」という、 雇用保険制度として制度化された制度本来の趣旨に適う者について給付が行われるよう 必要な措置を講ずるという報告をいただいています。4つ目は、端数期間の処理の見直 しです。休業日について日割りで支給するという改正です。省令事項としては2点あり ます。  資料No.1に戻ります。本日ご議論いただく省令案等の概要についてです。1頁をご 覧ください。省令案の内容は2点あります。第1点目は育児休業給付の給付期間の延長 です。先ほど申し上げたように、特別な事情がある場合には1歳半まで延ばせるという ものです。これは先般改正した育児・介護休業法施行規則の改正と同様の事項を、雇用 保険法施行規則においても1歳から1歳半までの延長の要件にしたいと考えています。  内容としては大きく分けると2点あります。どちらかを満たせばいいのですが、1つ の要件としては、保育所における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、お子さ んが1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない、保育所に入ろうと しているが入れない状態が1点目です。次の要件は、お子さんが1歳に達する日後の期 間について、常態として養育を行う予定であった方がそれをできなくなった場合、ここ には4つ掲げていますが、死亡されたとき、負傷や精神上の障害等により子の養育が困 難になったとき、婚姻の解消その他の事情により同居できなくなった場合、産前・産後 休暇に入った場合につき、1歳から1歳半までの延長ができる要件にしようとするもの です。  2番目の事項としては、期間雇用者の取扱いです。先ほど申し上げたように、雇用の 継続を援助・促進するという制度本来の趣旨に適った方にすべきという報告を受けてい ます。この報告に沿って、案として提示しています。考え方としては、1頁の下の3行 になります。雇用契約の期間、期間の定めのある労働契約の更新の見込み、被保険者が 引き続き雇用された期間、これらのことに鑑み、休業終了後相当期間の雇用継続が認め られる方々について、給付を認めていこうという考えです。  2頁をご覧ください。具体的にはそこに掲げている(1)、(2)のいずれかを満たす場合 であれば、相当期間の雇用継続が見込まれるのではないかと考えています。1番目の要 件として、休業終了後同一事業主の下で労働契約が更新され、3年以上の雇用継続が見 込まれ、かつ休業開始時において1年以上の雇用継続の実績があることが、(1)の要件 です。(2)として、休業開始時においてすでに3年以上の雇用が継続している方につい て、休業終了後、同一事業主の下で1年以上の雇用の継続が見込まれることとしていま す。こういう要件で雇用継続がある程度見込まれるのではないかと考えています。  3頁をご覧ください。いま申し上げた要件は下で、上の「育児休業」という四角で囲 ったところに書いている要件が、育児休業を取得できる権利の範囲です。育児・介護休 業法の改正により、休業取得の権利が与えられた期間雇用者の要件です。その下に書い ているのが、育児休業給付の要件案です。先ほど御説明した案です。育児休業給付につ いては、このいずれかを満たせばいいということで掲げています。資料No.1の説明は 以上です。資料No.2については、いまの内容を縦書きにしているものです。省令案要 綱の形式にしています。  最後ですが、資料No.3の参考資料の8頁以降をご覧ください。「第39回労働政策審 議会雇用均等分科会」の議事録を付けています。これは育児・介護休業法の改正に伴 い、育児・介護休業法施行規則等の改正をする審議を行った分科会ですが、この中で当 部会に関係する部分がいくつかあったので、この場を借りて情報提供ということで配付 しています。資料の説明は以上です。 ○部会長  ただいまの説明についてご質問、ご意見があればお出しください。 ○長谷川委員  有期の労働者について、なぜこういう条件をつけなければいけないかの理由をお聞き したいと思います。 ○保険課長  雇用保険制度において育児休業給付制度というものがあります。育児休業給付制度は 雇用継続給付という給付の体系の中に整理されていて、雇用保険制度の中で制度化され た趣旨は、雇用保険は本来失業者に対する給付を中心とした制度ですが、失業給付の中 核たる基本手当を失業して出すということではなく、雇用を継続していただいて育児休 業給付で安定的に雇用を維持していただき、失業しない状態を保っていただくための制 度が、雇用継続給付です。ですから、雇用継続給付ができたときには、保険料をどの程 度負担していただけるか、負担と給付との関係、あるいは他の給付とのバランスなども 考えながら設計されています。  従来、常用雇用労働者が育児休業給付の対象になっていたときは、支給要件として、 休業前2年間に1カ月11日以上働いた月が12カ月以上ある、簡単に言うと、休業前1年 間働いているということですが、そういった要件を満たした方については育児休業給付 を出すことになっています。支給期間については1歳までです。  この場合については常用雇用労働者ということですから、休業後の職場復帰後も相当 期間働いていただける、保険料を負担していただけるということで、失業給付を受け取 らずにそれ以降保険料を負担していただけるという期待も当然あって、そういう趣旨を 踏まえ、雇用継続を促すという趣旨から制度化されたものです。  今回、有期雇用者について新しく育児休業の対象になったということで変化がありま した。それ以外にも育児休業の内容について変化がありました。その中で、育児休業給 付でどこまでカバーするかという問題があります。  その場合に、期間雇用者が育児休業を取って、すぐに辞めるという蓋然性が見込まれ るケースについて、育児休業給付を出すことになると、雇用保険制度で制度化された育 児休業給付の雇用継続給付として、失業給付を受け取らずに雇用を継続していただくと いう趣旨からして、非常に問題になるケースが出てくるということがあります。その場 合に、どこまでの雇用見通しを採るのかが次の問題になります。  常用労働者しか認めないという考え方もあり得ると思いますが、私どもの今回の整理 の仕方は、そういう考え方は採らずに、雇用保険法の中で、基本手当の支給について特 定受給資格者と、それ以外の方に分ける考え方を参考にしています。特定受給資格者と は倒産解雇に該当するケースですが、基本手当の給付日数が手厚くなっています。期間 雇用者も含めたそれ以外の方については、特定受給資格者ほどは基本手当の給付日数が 多くない仕分けになっています。  期間雇用者であっても、特定受給資格者と判断するような基準が、雇用保険法施行規 則の中に明文化されています。雇用保険法施行規則第35条7号に、「期間の定めのある 労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において、当該労働契 約が更新されないこととなったこと」とあって、こういうケースについては、期間雇用 者の保護を図る観点から、雇い止めを常用労働者の倒産解雇と同じ扱いをする措置を取 っているところです。こういう3年間ということを満たせば、雇用をある程度継続した という判断ができるのではないかということで、今回2つのケースを要件として設けて います。これが資料No.1の2頁です。  3頁のほうがわかりやすいので、3頁の図で説明いたします。図の下のほうで、2つ のケースがあります。上のほうが、休業前1年間雇用されたという要件です。これは実 質的にいまの育児休業給付の支給要件と同じです。1年以上と書いていますが、休業前 2年間11日以上働いた月が12カ月以上あればいいという判断をします。その上で、職場 復帰後3年間程度雇用の継続が見込まれる方について、育児休業給付をお支払いしま す。失業をせず、保険料の面でも将来貢献していただけると考えられると整理して、こ ういうケースについては対象になるだろうということです。  下のほうのケースですが、3年以上の雇用継続の見込みについて、事業主に一定の報 告をしていただいて手続を取る考え方でいますが、事業主のご協力が得にくいケースも ありうるのではないかということに配慮したものです。仮にそういうケースがあるとす れば、過去に勤務実績がある程度ある方については、将来にわたっても雇用継続が見込 まれると判断できるのではないかということで、休業前に過去3年間雇用されていた方 については、職場復帰後1年間の雇用継続見込みでも対象とするということです。  期間のバランスとしては、上のほうは休業前1年間の雇用で、復帰後3年間の雇用見 込み、合計4年間です。それとバランスを取る形で、職場復帰後1年間の雇用見込みが あるケースについて、休業前3年間の雇用継続を要件としています。このいずれかのケ ースに該当すれば、雇用が継続しているというか、雇用保険制度全体のバランスを考え たとしても問題のない形で制度設計ができると考え、こういう制度にしました。  もう1つの理由が、法律レベルでの議論をいただいたときに雇用保険部会報告をとり まとめていただいておりますが、その内容に従うというものです。資料No.3の1頁に 概要がありますが、その後ろに報告書本体があります。2頁は鏡です。3頁に見直しの 必要性について整理されています。先ほどの概要はそこから抜き出したものです。その 中の下から2つ目の○ですが、雇用保険制度については先般法改正をして、相当激しい 給付の見直しをしました。特に失業者に対する給付である基本手当の見直し、高年齢雇 用継続給付、教育訓練給付、さまざまな給付について相当見直しをしました。それによ り財政破綻を回避したということです。それは一昨年5月から施行されています。この ような改正を施行した直後で、育児・介護休業給付制度の見直しをする際には、雇用継 続を援助・促進する雇用保険制度の一環として制度化された制度本来の趣旨を十分に踏 まえるとともに、改正によっても、基本的に財政的に中立となるような配慮が必要であ るというご指摘をいただいているので、こういった問題に対する配慮が前提としてあり ます。  もう1つは、4頁で各項目ごとにご指摘をいただいていますが、(1)の育児休業給 付の給付期間の延長については、育児・介護休業法の改正による育児休業期間の延長に 合わせて給付を延長するという整理になっています。ですから、育児・介護休業法の休 業期間の延長と同じような要件で延長するという考え方です。ここは雇用継続給付とい う趣旨と齟齬は生じないので、こういう整理になっています。  (2)の介護休業給付の受給回数の見直しですが、これは法律レベルで手当したもの で、今回の省令レベルでの手当とは直接関係しません。これについても、育児・介護休 業法により介護休業を取得できる回数の制限が緩和されることに合わせて回数を見直す ということで、これも育児・介護休業の改正内容と同じ内容で、育児・介護休業給付の 法律の内容を見直したところです。  (3)については、特別の整理になっていて、育児・介護休業法の改正により期間雇 用者に休業の権利が付与されることとなるが、これに対応し、そのような者のうち「雇 用継続を援助・促進する」という雇用保険制度として制度化された制度本来の趣旨に適 うものについて、給付が行われるように必要な措置を講ずるということで、冒頭に申し ましたように、そもそも雇用継続給付自体は、失業給付を受け取らずに雇用継続給付を 受給していただき、ある程度の期間雇用をつないでいただくことが大前提ですので、あ る程度の期間つないでいただけることが確保できる方には給付をするということが、雇 用保険制度の中でギリギリの整理かなということで、今回のような対応になったという ことです。以上です。 ○部会長  他にご質問、ご意見をお願いします。 ○三木委員  いま説明があって、雇用保険部会の昨年の報告書の中身も引合いに出しながら、特に 有期の場合の部分についての説明がありました。その場合、いま課長の言われることに ついては、1つは雇用継続の趣旨が基本で、もう一方として財政的な問題も含んでいる ということを言っているのでしょうか。その場合は財政にどういう影響があるという判 断でやっているのか、その点の説明をお願いします。 ○保険課長  今回の見直しにおいて、昨年の雇用保険部会報告の中で財政中立に配慮するというこ とを言われています。これは雇用保険財政について、一昨年の法改正直前に破綻寸前に まで追い込まれたことがあって、さまざまな給付制度について見直しを行いました。基 本手当について、給付と再就職賃金の逆転現象の解消という趣旨から、給付率を原則60 %給付から50%給付に落としました。上限額についても落とす改正をしました。高年齢 雇用継続給付についても、支給要件も若干厳しくなりましたが、給付率が25%から15% と改正をしました。教育訓練給付についても給付率を半分にする改正をしました。あら ゆる雇用保険制度の給付が見直しの対象になった環境があります。  そういう中で育児・介護休業給付については、あえて見直しをしなかった経緯があり ます。そういった全体を見直す中で、一切見直しをしなかった育児・介護休業につい て、今回育児・介護休業法の改正で休業自体が拡充されるということです。休業の拡充 に対応する場合に、どういう対応の仕方をするかが問題になりました。  全体的にそれほど恵まれた財政状況にあるわけではない雇用保険制度を見直す、雇用 保険制度の中での育児・介護休業給付を見直す際に、財政的に中立になるような工夫は 必要ではないかということが言われました。  資料No.3の4頁ですが、(1)の育児休業給付期間の延長については財政支出増要 因で、1歳から1歳半まで延びるケースが出てくるということです。(2)の介護休業 給付の受給回数の見直しについては、給付増要因ですが、金額的にはそれほど多額の金 額にはならないものです。(3)の期間雇用者の適切な取扱いについては給付増要因に なります。有期雇用者について、新たに一定の方について新しく休業給付を求めること になるので給付増要因になります。(4)の端数期間の処理の見直しについては、月割 りで育児休業給付を支給していたのですが、1カ月ずつ順番に切っていったときの最終 月で、休業期間としてはみ出した日数が5日や7日というときも、1カ月分の育児休業 給付、介護休業給付を出していたものを、日割りにして出す整理にしています。(4) で財政的な節約ができるということです。財政中立を目指すとすれば、(4)が節約要 因で、(1)(3)が出増要因ですので、その間でバランスを取るということです。  ただ、今回の要件自体は財政中立のためだけにやっているわけではなくて、そもそも 雇用継続給付制度の趣旨が、失業給付を受け取らずに雇用継続給付を受け取ってもらっ て、長い間働いてもらうということですので、その原則を確保するのは当然の大前提と しつつ、財政的な中立にも配慮したものということです。 ○長谷川委員  今回の提案は非常に問題があると思っています。雇用均等分科会の議事録が配付され ておりますが、労側委員は今回の有期雇用者に対する給付の適用についての事務局案に 対しては反論しているわけですが、2つの観点から見たときにどうしても納得ができな いわけです。  1つは少子化と言われているわけですが、少子化に対して国を挙げて一生懸命やろう と、ヨーロッパも最近は出生率は上がっていますし、アメリカでも上がっています。何 で我が国は上がらないのかが非常に言われています。どんどん下がっています。何でか と言えば、産まないと思っているのです。働けないからです。ある一定の所得を得て豊 かな生活をしようと思ったら、2人で働かなければいけないから、子どもを2人も3人 も生んでいられないのです。もしかしたら、子どもを生んで働こうと思ったら職場がな いかもしれません。だったら1人でやめてしまうとか、生まないというのが、女の人の 働いている人たちはそんな気持だと思うのです。だからなかなか上がらないのです。  どうしたら女の人たちが子どもを生んでも働くか、という条件整備をしない限りは誰 も生まないです。子どもを生んだら職場を辞めてしまうとか、子どもを生んだら働けな いというのなら嫌だと思うのです。  国がやらなければいけないのは、女の人たちが働きながら子どもを育てても生活もう まくできるし、子どももちゃんと育てられるし、職場でも自分の力が発揮できるという ことが揃うことが見えない限り、誰も生むはずがないわけです。そういう意味では、少 子化に対して歯止めをかけようという国家政策をやろうというときに、このような制度 がなぜ堂々と出てくるのか、私は納得ができません。これが第1点です。  2つ目は、おそらく皆さんは労働基準法の改正のときにいなかったのだと思うのです が、私は前回の労働基準法の改正のときの事務局でしたので、有期雇用についての議論 をずっと思い浮かべています。あのとき公益と使用者は何と言ったかというと、これか ら雇用・就労形態の多様化が進むから、いろいろな雇用・就労形態は労働者にとって も、使用者にとっても、非常に好んでいるのだと言ったわけです。そのときに、いまま で期間の定めのある雇用については原則1年だったものを、原則を取って1年を3年に 延ばして、3年、5年で、3年と5年の有期をつくったわけです。その有期について は、一時的、臨時的だという考え方も全部取ったわけです。期間の定めのある雇用は3 年と5年です。それで良好な雇用機会だと言ったわけです。  良好な雇用機会だというのなら、期間の定めのない雇用者と同じような扱いを全てす ればいいのです。そうしたら、良好な雇用機会だから、自分の人生観、自分がどう生き ていくのかを考えれば3年の有期、5年の有期もいいかなと。5年の有期で次々に職場 を変えながら、自分のスキルアップをしていくのか、そういうことも選択できるわけで すが、このような制度だったらそういうことにもならないではないですか。  だから、基準法のときの期間の定めのある雇用の、期間の延長のときの3年、5年の 議論と、今回の議論は全然違うわけです。あのとき良好な雇用機会だと言ったのだか ら、だとすれば期間の定めのない雇用者と全く同じ扱いをしてほしいわけです。このよ うな制度を見たときに、誰が私も頑張って子育てをしながら働こうと思うのでしょう か、私は思わないと思います。  私の担当ではないのですが、最近いろいろなところで、次世代支援法の話をしてくれ と言われ話して歩いているのですが、そうしたときに何を言われるかというと、子ども を生んで、育てて、働いてというふうに言われるのですが、文書で出てくるのは確かに いいのですが、実際に育休を取ると自分たちの生活が一気に落ちてしまうわけです。2 人で働いていた所得がなくなるわけです。もっと給付水準を上げてくれと言われるわけ です。  いろいろと財政問題もあるからと言っているわけですが、給付水準を上げてほしいと いうのは、期間の定めのある雇用者であろうが、期間の定めのない雇用者であろうが、 みんな同じなのです。だとすれば、ここは有期の労働者についても、期間の定めのない 労働者と同じような給付にすべきだと私は思っています。  おかしいではないですか、育児休業はいままでの雇用期間が1年で、それで2年とい っているのに、給付のところではこの図を見たら一目瞭然ではないですか。考えたらこ れは5年の有期にしか対応していないのです。3年の有期もつくったのですから、ちゃ んと3年の有期にも対応するようなものをつくればいいと私は思います。  おそらくこういうことは雇用均等分科会でも言われていたわけで、財政中立の話が言 われていまして、前回の雇用保険法の改正のときにどういう議論をされたかも、私も前 任者から聞いて知っております。しかし、本当に有期の労働者が育児休業を取ったから 財政が直ちに破綻するような状況なのかどうか、私は疑わしいと思います。 ○部会長  中島委員がお手を挙げておられましたので、どうぞ。 ○中島委員  そもそも雇用保険の制度の趣旨からいうと、我々のそもそもの主張は、育児休業とか 介護休業の給付を、この保険から出すこと自体がおかしいのではないかというのが主張 です。したがって、現実にそれがいろんな経緯を経ていまこういう形になってきて、あ たかも少子化対策保険のような錯覚をしたような発言をされているようですが、本制度 は、これも改めて言うまでもないですが、みんながお互いに助け合いの精神で保険料を 負担し、国も一部補助を出していますが、万が一事故があったとき、「失業」という事 故があったときに、それはみんなで面倒見てやろうじゃないかというような趣旨なわけ ですよね。  それで、もちろん育児という観点で、そこで一旦辞めてしまうとこれは失業保険を出 さなければならない。それに比べて言い方はちょっと失礼ですが、保険の財政面から見 ても、失業保険を出さずに育児休業で然るべき給付を出して、また復帰していただけれ ば保険料を負担していただけるわけですから、保険の制度の趣旨でもそれは結構だろう ということで、育児休業給付は対象になっているわけですが、これも結局、基本的には お勤めして定年になって会社を辞めるまで、ずっと保険を払っていただけるという前提 の制度なわけです。  それを、突然真ん中で期間限定したものがポコッと入ってきて、保険料を何年払うか わからないけれども、そのことだけで常勤者と同じ処遇を与えろなどというのは、そも そもとんでもない話なのですが、これも千歩譲ってせめて4年間くらいこの制度にかか わって、保険料を負担していただければ、まあそれは少子化対策という観点もあるしと いうことで、我々としてせめてこのくらいならやむを得ないなということでここまでき ている話ですから、いまさらそんな常勤者と同じにしろなどという発想は、とても私た ちとしては理解できません。  ですからさらに言わせてもらえば、この3年いて1年間、あるいは1年働いて3年 間、この約束を守ってくれない人は給付を返してもらいたいです。1年働いてあと3年 間、事業主が雇ってやると言って支給した。ところが子どもの世話が大変で1年で退職 してしまう。これはとんでもない話で給付を返してくれと言いたいくらいということで す。 ○三木委員  いまの働き方、雇用形態の関係からいくと正規よりも非正規のほうが非常に増えてい るという実態がありますね。そういうことになれば、正規が雇用保険給付の対象であっ て、非正規が特殊な働き方かということが、一般的にはもう言えなくなってきつつある のではないか。  確かに雇用保険から育児休業給付を出すというのは、私も中島委員と同じ考えはちょ っともっています。いまそれを議論するつもりはありませんが、本来なら育児休業の趣 旨で、そういう働き方の中で、言ってみれば少子化を含めて対策を進めていくという国 の政策の中で出てきた問題から、いま育児休業の改正ということで、有期にも拡大しよ う、広げようということになっているのではなかろうかと思います。  この有期の場合でも、現状から言えば35%くらいに達しますね。労働力の人口からい えば1,500万人ということになってきますと、これもさらに増えつつあるような状況だ ろうと思います。  そういう意味からすると、有期であろうとやはりきちっと育児休業で適用されるよう な給付の条件も同じにするというようなことは当然の話であって、それがおかしいとい うのは、逆に言えば育児休業の給付を別に出すという制度も含めて考える方向が正しい かと思います。しかし、現状の中で育児給付がそのように改正されたということであれ ば、雇用保険の給付もやはり同じようにすべきではないかということは、当たり前の話 ではないかと私は思います。 ○部会長  生田課長、どうぞ。 ○保険課長  いまほどの長谷川委員からのお話と三木委員からのお話に、若干まとめてお答えさせ ていただきますが、少子化対策の問題ですが、これは本当に大事だと私どもも思ってお ります。それで、国を挙げていろんな角度からいろんな対策をとらなければいけないと 思っておりますし、雇用保険の観点から、できることはできるだけやるという気持は全 く同じでございます。  ただ、雇用保険で給付を制度化する場合に、保険制度ですので保険料をどれくらい納 めていただいたか、あるいは納めていただけるかという要件は少なくとも必要で、それ が一定期間の雇用見通しということで、ここで整理させていただいておりますが、それ は常用労働者と期間雇用者、要するに正規と非正規で差をつけているつもりではなく て、一定期間の保険料負担、あるいは保険料負担の見通しという要件を設けているだけ で、差別をしているつもりは全然ないのです。  ですから、今回は最低限この程度の要件がなければ、雇用保険法上の雇用継続給付と して制度化するというのはなかなか難しい、ということで考えさせていただいたもので す。正規、非正規で、できるだけ同じ要件でもっていくのは当然のことだと思いますの で、できるだけそういう要件でもっていこうと思っています。そして、保険制度である 以上一定の保険料を納めていただいた期間、あるいは保険料を納めていただける可能性 のある期間という要件を要求すること自体は、やむを得ないのではないかと考えていま す。 ○栗田委員  私も認識の違いかもしれないのですが、前回、1年前の報告書で、財政的に中立とい うことが書かれた時点の状況ということで、生田課長が言われたように、保険財政が破 綻して逼迫した状態の中で種々の改正を行った。これは全体的な取組みの中でやりまし ょうと。その一環で、育休のほうはたまたま手を付けなかった。それで今回育休のほう も見直すということであれば、全体的なスタンスの中で中立性を保つというような認識 をしていたわけですが、そうではなくてピンポイントの育休に対しての中立性だという ように捉えたわけですが、実際問題当時の失業率ということでは5.6、5.7という、6% でも場合によっては耐え得る、長期的な雇用保険の見直しをしましょうということで変 えたはずなのです。  それでいまの状況からいうと、雇用保険料はまだ4月から上がっていないわけです が、実際にはかなり改善されていると見ております。その状況から1年後の、いまの状 態とかなり違うのではないかということからすれば、先ほどの失業給付と同じ条件でい いのではないかと見ているわけですが、その辺、財政状況を見てどうなのでしょうか。 ○保険課長  先ほども申し上げましたが、財政中立というお話については、雇用保険部会報告でご 指摘いただいたときの趣旨は、育児・介護休業法の改正に伴って、雇用保険も育児・介 護休業給付についての規定を見直すという、その規定を見直す際に財政的な中立を図る ということで書かれているのだとは思っています。  雇用保険財政自体は、前回の改正のときに相当厳しい状況の中で改正させていただい て、雇用状況も徐々に改善してきて、収支自体は改善基調にはございますが、まだ安定 している状態にはなっていない。安定に近づいているという状態だと思います。  これは平成15年度決算の数字しか出ていないので、はっきりした数字でご説明するの は難しいのですが、平成15年度末の雇用保険の積立金が、大体8,000億円くらいという ことでございます。  平成16年度、17年度と、プラスになるかマイナスになるかまだはっきりしないわけで すが、雇用保険の財政安定というものを考える場合には、積立金の規模が年間の失業等 給付支出額の1倍から2倍が適正水準であるという整理になっていますので、8,000億 円ではまだ全然届かない状態です。これから、これがどうなるかまだ誰にもわからない ので、本当に安心できるかどうかというのは本当は誰にもわからないというのが財政状 況です。  今回の育児介護休業の見直しの中の、期間雇用者の取扱いについては、先ほどありま した財政中立というものが当然指摘の中にはあるのですが、財政だけでやっている話で はなく、保険料を納めている被保険者の方が、同じような要件を満たしていただいたと きに、育児休業給付をお出しするというときに、期間雇用者の方について、常用雇用労 働者の方のように今後ともずっと雇われる可能性があると言えない方について、どうい う要件まで満たしていただければ出すのかという問題です。  ですから、保険制度として設計する以上、雇用継続の可能性というものを、ある程度 要件として取らざるを得ないというふうに考えています。財政中立だけでやっているな ら、いろいろな説明の仕方があるのかもしれませんが、雇用保険法に書いてある雇用継 続給付制度自体が、職場復帰後の雇用継続の可能性というものをある程度要求している 前提で条文が出来上がっていますので、それに反したような制度設計というのは、非常 に難しいということだと考えます。 ○長谷川委員  いまの課長の説明は、もともとの育介法を作ったときから議論があるわけです。育介 法をつくったときに、じゃあ休業給付の所得保障をどうするかという議論があったとき に、基金でやるのか何でやるのかということで、私は当時から基金でやるべきだと思っ ていたのですが、当時は妥協の産物で、雇用保険法を使うことになったわけです。  それで、いま言われたように何か出てくれば、必ず雇用保険の性格について、制度の 趣旨について言われるわけです。ところが一方では、非常に少子化が進んでいくわけで す。そういう意味では制度のバランスがないというか、何かちょっとチグハグな制度に なってくるわけです。  女の人が働いたとすると、例えば1年働いて妊娠出産すればいいです。もしかした ら、有期の人は3年働かなければいけない。こんなバカなことってないと思うのです。 学校を卒業してきて働いたけれども、結婚してすぐ子どもが生まれたという人だって出 てくると思うのです。そういうものには全然対応する制度ではないわけです。  やはりそういう意味では、今日、使用者側委員からも言われましたが、雇用保険でこ れ以上いろんなことをするのは、非常に難しい状況になってきていることは事実だと思 うのです。そのことをどうするかというのは議論の1つに置いていただいて、今後と も、ずっと雇用保険でやっていくのかどうなのか。もっと少子化に対応した制度にして いくのかどうなのか。そういうことはこの雇用保険部会ではない、もっと別のところで 議論してもらったほうがいいと思うのですが、そういう時期にきたのではないかと思っ ています。  それはそうとしても、では実際に今回の育介法が変わって、期間の定めのない人たち のところについては制度が適用されて、有期の人たちには適用されないというのは、私 はどう考えても納得できない。なぜかというと、これは有期というけれども、有期とい うのはどういう形で働いているかといえば、例えば1年契約の契約社員というのが職場 にいますが、そういう人たちは全部有期ですよね。パートタイマーだって有期です。1 年という契約なんかない。パートの人の契約書を見たら、みんな2カ月とか3カ月の契 約で更新しています。  派遣労働者もそうです。派遣労働者で期間のない人なんかいないです。派遣労働者の 人たちは、全部1年とか2カ月とかという契約になっています。  派遣労働者とかパート労働者とか、契約社員というのは、全部有期なわけです。雇 用、就労形態が多様化しているのにもかかわらず、何でこのときはこうなのかというの が私はやはり納得できない、説明ができない。まして前回の基準法改正のときに良好な 雇用機会と言ったのですから。それに対して、やはりいろんな制度も合わせていかなけ ればいけないのではないかと思うのです。  これからは常用労働者だけではないと思うのです。30何パーセントも非正規がいると 言われているのですから。そうすると、派遣労働者とかパートタイマーとか、それから 契約社員だとか、そういう人たちに対応できるようなものを作らなければ、どうしよう もないんじゃないですか。  そういう人たちはいいですよ、というふうにはやはりならないですよ。特に女性の場 合、子どもを産む女性がそういうところにいるわけです。女の人たちが大体どういう所 で働いているかというと、みんなここで働いているわけでしょう。契約社員だったりパ ートタイマーだったり、派遣労働者だったりする。何でそこのところに適用されないの ですか。 ○部会長  先に輪島委員、手が挙がっていましたがよろしいですか。それでは、まず三木委員、 それから輪島委員、中島委員というふうにお願いします。 ○三木委員  いま長谷川委員も言われましたが、率直に言って、私はどうしても納得できないので す。というのが、先ほど、「有期と正規と差別するつもりはない」ということを課長が 言われましたが、現実に1年・3年、3年・1年というのは、明らかにこれはどう見て も差があります。  それともう1つは、継続雇用されていると、保険財政から見ても継続雇用されている という、その負担を継続してやるということも含めて考えているんだと言いますが、現 実的に、通常の労働者だって同じだと思うのです。休業してさらに1年でも、別に1年 1年でも雇用は継続するわけですから、それを証明できるわけですからその点は別にい いのではないか。ただしその場合、1年・3年とか3年・1年ということになれば、仮 に有期の人たちが育児休業を取ります、取りたいんですということで、その条件を満た している場合に、3年などということになれば、1年の雇用は継続されている、さらに 3年ということになれば、経営者でも、「わかりました。じゃあ、やりましょう」とい うことになりますか。現実的にそんなことは、1年間休業してさらに3年ですよ。4年 ですよ。そこまで保障すると思いますか。  逆に言えば、これで不利益取扱いの禁止が、これの中で出ましたが、「更新手続は期 間を定めて雇用される者について更新をしないことは、更新改正の上限の引き下げを追 加」ということで、不利益取扱いの中に入りましたね。しかし、3年なんていうことに なれば、現実的にこのようなことが起きる可能性は十分あるわけです。私はそういう意 味でいくと、有期の人たちも実際には取りにくい、という状況になってしまうのではな いかという気がします。 ○輪島委員  ここまでの経過というのは長谷川委員がご指摘のように、基準法の改正があって、そ れに伴う育児・介護休業法の改正があって、育児・介護休業法の改正に伴う雇用保険法 の改正というのは、私どももそう理解しておりまして、基準法の改正のときで、育児・ 介護休業法の改正ということになったわけですが、今度の関係で、均等分科会の使用者 側の委員等に、私もそれなりに確認したわけですが、そもそも育児・介護休業法を改正 するときに、期間雇用者の取扱いについてどういうふうに考えるのか、使用者側として どう考えるのかというと、それは先ほど中島委員がおっしゃったように、やはり1年も しくは3年、5年と期間を限定して働く形ですから、例えば1年という雇用契約の期間 の中に、「育児休業1年」というのが、中にボコッと入ってくるというのは、やはり働 き方としてはかなり難しいことだと。  それに途中1年の雇用契約の中に、育児休業が1年入ってくるというのは、ある意味 では債務不履行といいますか、雇用契約の中でやっていくというところに育児休業を取 るというのは、その使用者側と労働者側との契約概念の中からいえば、やはりなかなか 難しい話なのではないか。  さらに、期間が満了して退職するということが予定されているわけですから、そこに 対して育児休業をとるというのは、使用者側としては大変難しい、与えにくい制度であ るということです。  しかしながら、基準法の改正に伴う仕組みですから、百歩譲って千歩譲って、期間雇 用者についても、やはり対象にすべきであろうというところまでいっているわけです。  そのときに、そもそものところで、使用者側が育児・介護休業法に対して、期間雇用 者に対してどのようにしたらいいのかといったら、それは、シンプルな制度にしてほし いという趣旨からは、過去実績5年あれば、長谷川委員ご指摘のように、1年でも3年 でも、2カ月でも半年でも、期間雇用の継続が繰り返されていて、過去実績が5年くら いあれば育児休業を与えてもいいのではないか。制度をシンプルにしてほしいと言った わけですが、そこのところは、どうもあまり労働側の委員は乗ってこなくて、過去実績 と現契約と、将来の契約、そこのところが大事だという話になって、非常に制度が複雑 になってしまったと聞いております。  ですからそれに伴って、育児・介護休業法がそういうふうな改正をして、それに伴う 雇用保険法の改正がここまで議論になっているわけですから、もともとのところで制度 を複雑にしているところがあり、施行まで、4月1日まで非常に時間がない中で、期間 雇用者に対して、ここの制度が違うということをおっしゃっても、それはなかなか難し い話だと思います。  それから、いまの均等分科会での議事録を見ますと、17頁の所に、私ども使用者側委 員の発言がございますが、長谷川さんがご指摘になった所は、17頁の2行目ですが「本 来的には一般財源という話で考えるべき問題なのではないか」というようなことで、使 用者側としても雇用保険制度の中で、いつまでも少子化対策というところからいって、 するということはやはりいかがなものなのかなというふうには考えておりますので、制 度全体の見直し、それが雇用保険部会なのか労働政策審議会全体なのかはよくわかりま せんが、そういう制度本来の趣旨に沿った見直し作業は行われるべきだと思っていま す。 ○中島委員  いま申し上げたかったので、長谷川委員の説明の前段のほう、そもそも少子化対策と か育児休業給付を、雇用保険という制度の仕組みの中でやること自体がおかしいと思っ ていましたが、いろんな背景でこうなってしまったので。そこへまた、この改正の話に なると、結局そこが同じ議論の根底になってしまうということで、そういう意味では、 これは保険制度ではなくて、税金の世界で、一般財政の中で、少子化対策を国が本当に やるなら、きちっとやってもらう必要があるだろうということは、使用者側も労働者側 も全く同じご意見なのではないかと思います。  それはこの雇用保険部会の場ですることではないと思いますが、それだけは是非申し 上げておきたいと思います。 ○部会長  ちょっと待ってください。原川委員、どうぞ。 ○原川委員  この前の雇用保険法の改正で、喧々諤々の議論をして給付の削減をした上で、保険料 の引上げを行わざるを得なかったというような経緯があるわけで、その保険財政が改善 されたかといえば、雇用情勢はやや好転はしたものの、十分にまだそのすべてが回復し ているわけではないと思いますし、まさに、再建途上にあるということが言えると思い ます。  あのときあれほど議論をして、給付を泣く泣く削減し、我々も保険料引上げについて は強硬に反対したわけですが、それも保険財政の危機を救うために、認めざるを得なか ったというような経緯があります。そういうことがあって、育児・介護休業法の改正の ときは財政中立と。この前の部会報告では財政中立ということが、大きな問題として出 てきたわけです。  もしそのときに、財政がそれ以上悪くなるというような状況でしたら、ああいう部会 報告にはならなかったと考えております。少し雇用が改善したからといって、これでも 雇用保険で負担してもいいじゃないか。そういうような安易な考え方というのはいかが なものかと思うわけです。少子化対策については危機感をもっておりますし、反対する ものではありませんが、そういうことでしたら、この雇用保険の制度の域を超えるとい うようなことで、この制度でそういうことをすべて手当するというのは、非常に無理な ことではないかと考えます。  したがって、先の雇用保険法改正のときに、我々も育児休業保障については、別の制 度でやったらどうかということは申し上げたわけですが、この際、雇用保険制度以外の 制度で対応するというようなことを、やはりもしそういう議論をするのであれば、考え るべきだ、考えざるを得ないのではないかと思います。 ○保険課長  三木委員からご指摘いただいたことに、若干対応するものですが、育児休業給付の支 給要件は、今回、「雇用見込み」というものを要件とさせていただいております。過去 1年の勤務実績がある場合は、3年の雇用見込みということでございます。この3年の 雇用見込みについては、まず常用雇用労働者とのバランスで申しますと、常用雇用労働 者の方は、もっと雇用見込みがあることが前提ですので、要件として差をつけているつ もりはもともとないというのは、先ほど申し上げたとおりですが、実際にこの「3年以 上」という要件を判定する際の方法については、雇用見込みということですので、事業 主の方が3年以上雇用をする可能性があるということがはっきりすればいいということ でございます。  その際には、私どもでいま現在考えておりますのは、例えば、経営状況とか、あるい は労働者ご本人の能力とか意欲とか、そういうことが支給申請時点と変わらないという ことを前提に、事業主の方にそういう見込みについて言っていただくということが1つ です。それから、あくまで雇用見込みなものですから、労働契約の内容と一致するとは 限らないということだと考えております。  ですから、仮に労働契約では3年以上雇うということになっていないとしても、雇用 見込みとして申し出ていただくことは可能だというふうに考えておりまして、そういっ た手続については、雇用見込みがあるということで、本来休業給付が取得できるような 方が確実に取得できるような内容になるように、様式とか手続面での工夫というのが当 然必要になってくると考えています。あと、そういった内容について、事業主の方に周 知をし、実質的に期間雇用者の方が、育児休業給付の取得ができるような体制にもって いきたいと考えています。 ○部会長  いろいろ皆様方から矛盾点、問題点のご指摘がありました。これは振り返ってみる と、この制度を、こういう育児休業給付を入れたときからあったわけです。そのとき私 も委員として参加しておりまして、論理的に言うなら、少子化対策という議論は、その 頃はそんなに言っておりませんでしたが、少子化だったら一般財源で、家族政策でいく か、それから年金財政が実は少子化には最初に影響がくると考える場合、むしろ年金保 険というのがこれに対応すべきである、などと議論しました。  労働省(旧)の側でするとなるとどうしても雇用者しか、雇用されている人にしか対 応できなくなりますから、一般に就業しているその他の人たちには、保護の手を差し延 べることができなくなるのですが、それでいく場合でも、雇用保険でいくか労災保険で いくか。労災保険は変じゃないかといいますが、実は福祉という考えからいくと、理論 的には、絶対そっちもおかしいというわけではない。  そういう中で、誰も手を出していないときに、誰かがやるときに、どこがいちばん相 対的に座りがよくて、かつ、当時の状況の中で何とかやれるかということで、実は雇用 保険が財源的に余裕があったということも大きかったのですが、ともかく雇用保険の中 に乗せる。乗せるとすると雇用保険の論理でいきますから、雇用継続ということは絶対 に避けることはできませんし、また、失業した場合の給付との財政中立も保険原理から いって、これも避けることができない。こうして、非常に綱渡り的な論理で、給付制度 が生まれました。  その後、少子化問題が大きくなり、また、今回のようなさまざまな法改正等が起きて きますと、雇用保険でいくと限界があるじゃないかということになる。そのとおりなの です。最初から、限界があることは誰もがわかっていたわけです。ですが、当面、他の 選択肢が閉ざされている状況で、その限界のある中で、やれるだけのことをやっていこ うという、こういう考え方で制度を設計し、運営してきました。いまの生田課長の説明 などにありましたように、相当程度確かにもう綻びつつありまして、家族政策として、 あるいは年金の方面の法改正などの下で、もっと本格的な考え方をしていただきたいと いうふうには、我々としては要望すべきだと思いますが、さはさりながら、我々の雇用 保険部会としては、ここが扱う現時点での役割との関係では、どうしても現状のこうい う制度の中で、どこまでギリギリいっぱいできるかということになろうかと思います。  したがって私としては、まだまださまざまな思いはあろうかと思いますが、当部会と しては、当然省令案要綱については、厚生労働省案のような辺りでいかざるを得ないの ではないかというのが、やはり率直な思いですし、皆様の意見を聞いておりましても、 雇用保険財政、雇用保険の制度ということを考えると、ここら辺が1つの考えだろうと 思いますが、今日の時点でおおむね妥当というところまでは、なかなか議論が煮詰まっ てはいないだろうと思います。そこで今回の議論をよく踏まえていただいて、また事務 局としては、いろいろ様式等の工夫もしてくださるということがありますから、そうい うものを踏まえて、次回是非この線で皆様のご了承をいただきたいと思っております。  皆様の意見が少なくとも今日一致したことは、雇用保険制度の内部でやれる限りやる ということと、それからそれでは足りないであろうから、一般財源を含めたさまざまな 他の制度の下で、さらに政府としての議論を進めていただきたい。これは我々からの要 望になりますが、ここを合意いただけたと思いますので、雇用保険制度を前提とする と、なおさらに、現実的な案として今回以外の案があり得るかどうか等、次回考えた上 で最終的にご議論の結論をいただきたいと思います。よろしいですか。  それでは、これらの意見が一致した事柄を含めて、本日の審議経過については職業安 定分科会に報告したいと思いますので、その際には私のほうからも是非、重要な問題で すので一定の文章化等も考えつつ、次回の部会でご議論いただきたいと思っておりま す。よろしいですか。                  (異議なし) ○部会長   ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。事務局から何 かございますでしょうか。 ○保険課長補佐  次回の日程ですが、明後日です。1月14日、時間は11時からでございます。場所は第 1会議室です。よろしくお願いいたします。 ○部会長  それでは、どうぞよろしくお願いいたします。以上をもちまして、第21回の雇用保険 部会を終了させていただきます。本日の署名委員は、雇用主代表は中島委員、労働者代 表は豊島委員にお願いいたします。委員の皆様には、お忙しい中を朝早くからご参集い ただきまして、大変ありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたしま す。 照会先:職業安定局雇用保険課     企画係 内線5763