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資料2

「医療計画の見直し等に関する検討会」
<検討すべき課題と方向性>(案)





平成17年1月25日


目次

I 医療計画制度を取り巻く環境の変化

 はじめに

 1.国の役割及び都道府県の役割
 2.医療制度改革の方向性に沿った医療計画の在り方
 3.医療に関する規制改革と医療計画
 4.わが国の今後の医療需要の変化等への対応
 5.患者の視点の尊重


II 今後の医療計画制度のあり方について

 1.医療計画制度のあるべき姿

 2.医療計画に盛り込まれるべき内容
  (1)目的
  (2)圏域
  (3)基準病床数
  (4)記載事項
  (5)病床の特例
  (6)既存病床数の補正

 3.作成手続き
  (1) 医療計画を有効に機能させるための情報収集等
  (2) 関係者等の意見調整(関連する他の計画との調整)
  (3) 住民参加を求める仕組み

 4.医療計画に基づいた都道府県の執行管理と推進の方策
  (1)医療計画に基づいた都道府県の執行管理の方策
  (2)都道府県の医療計画推進の方策

 5.医療計画に関する評価とその結果の都道府県行政への反映
  (1) 評価の重要性と評価方法
  (2) 目的の明確化
  (3) 住民の視点に立った評価方法(ライフコースアプローチ)の提案


III 当面取り組むべき課題

  基準病床数の算定式


I 医療計画制度を取り巻く環境の変化


はじめに

   医療計画制度が1986年8月に施行されて以来、47都道府県における医療計画の作成は、1989年3月までに一巡した。その後、5年以内の期間ごとに改定を重ね、全ての都道府県において医療計画の改定が行われている。
 医療計画の内容は、医療圏を設定し、基準病床数を算定することにより適切な病床数を確保すること、救急医療等の記載事項に基づき二次医療圏に必要な医療機能等を確保するため関係者間での調整を行うこと等で構成されているが、基準病床数の算定に係るもの以外、現行制度の下では具体的な目標となる数値がなく、都道府県が実効性をもって医療計画の内容の実現に向け推進でき、住民等がその内容を客観的に評価できる事項が少ない。
 また、医療計画の内容の実現に向けて、政策目的達成の有効な手段の一つである補助金については、現状では、都道府県における医療計画の作成のための「医療計画推進事業」や医療施設の機能分化を推進するための「医療機能分化推進事業」に係る補助金があるが、これらによって二次医療圏ごとの医療施設の機能分化や連携が図られているとは言えず、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」に基づく国庫補助負担金の改革(いわゆる三位一体改革)を通じ、保健医療提供体制に関係する各種の国庫補助負担金と医療計画制度を密接に関連させ、都道府県が自らその裁量性を発揮し、医療計画に定めた医療提供体制の確保に向けた実効性のある補助金制度に改革する必要がある。
 そのほか、医療計画を取り巻く環境としては、以下のことがあげられる。こうした環境にあることを踏まえ、今後の医療計画制度のあり方については、最終利用者である住民や患者の声が、医療計画にうまく反映されるよう、更なる工夫が望まれる。また、保健、健康増進、福祉、介護など関連した計画との整合についても重要な課題である。

1. 国の役割及び都道府県の役割

 国及び都道府県の役割としては、医療サービスに係るルールを明確にし、モニタリング、評価などを行うことを通して、質の高い医療サービスが患者に提供されるようにすることが期待されている。
 また、医療サービスの安全性や医療サービスのアクセスの公平性、必要なときに誰でも医療サービスを受けることができる、いわゆるセーフティー・ネットの確保といったことが一層期待される傾向にあることを踏まえると、国及び都道府県の役割としては、直接医療サービスを提供する機能(役割)よりも、医療サービスに係るルールを調整する機能(役割)、医療サービスの安全性や医療サービスのアクセスの公平性を監視する機能(役割)等を果たすことへの期待が高まっている。
 さらに、国と地方に関する「いわゆる三位一体の改革」の推進により、今後は都道府県の権限と責任が大幅に拡大され、歳入・歳出両面での都道府県の自由度が高まることで、真に住民に必要な行政サービスを都道府県が自らの責任で自主的・効率的に選択できることになる。このため、医療提供体制の整備においても、国民皆保険の下で、国民がどの地域においても、安全・安心で一定水準の医療を受けられることを前提とした上で、都道府県が地域保健・健康増進体制と医療提供体制との連携を充実・強化し、限りある保健医療資源の有効な活用に向けて都道府県が主体的に取り組めるようにすることが重要である。これらを踏まえ、厚生労働省においては平成18年度から、保健医療体制関係の補助金を一本化し、透明性の高い客観的指標に基づく交付額算定が可能となるよう改めることとしている。
 こうした補助金制度の見直しも併せて進めながら、生活習慣病の予防に始まって、医療機能の分化・連携そして介護サービスの提供につながる一体的な保健医療提供体制を都道府県において構築できるようにし、もって、良質かつ効率的で患者・住民の視点に立った医療提供体制が整備されるよう医療計画制度を見直す必要がある。

2. 医療制度改革の方向性に沿った医療計画の在り方

 今後のわが国の医療提供体制の改革については、患者と医療人との信頼関係の下に、患者が健康に対する自覚を高め、医療への参加意識を持つとともに、予防から治療までの医療ニーズに応じた多様なサービスが地域において一貫して提供される患者本位の医療を確立することを基本とすべきである。このためには、患者が地域の医療サービスを客観的に選択できるための情報提供の推進、質の高い医療を効率的に提供するための医療機関間の機能分化・連携の推進と医療機関を支える医療法人をはじめとした開設主体ごとの経営効率の向上と透明性の確保、医療を担う人材の確保と資質の向上、生命の世紀の医療を支える基盤整備などの分野での改革が必要とされている。
 このような状況の中で、医療計画がこれらの改革に資するための都道府県段階における実行計画としての機能をより発揮するため、医療計画制度そのものの積極的な見直しが求められている。

3. 医療に関する規制改革と医療計画

 2004年12月に規制改革・民間開放推進会議が提言した第1次答申では、医療計画におけるいわゆる病床規制について以下のことが指摘されている。
 (1)いわゆる病床規制については、既存の医療機関の既得権益を保護することによって、新規参入を阻害し、もって医療機関の健全な競争が働かない等患者視点に立ってみると弊害も見られるところである。したがって、医療計画制度における都道府県の役割も踏まえながら、質が低く、都道府県の改善命令に従わない医療機関に対する開設許可の取り消し等実効的な手段によって退出を促すことにより、地域が真に必要とする質の高い医療サービスを提供する医療機関の参入を阻害することのないような方策を検討するべきである。なお、いわゆる病床規制を撤廃するためには、どのような条件整備が必要かについても検討すべきである。【平成18年の医療制度改革で措置】
 (2)当面は、急性期医療が中心となっている一般病床のいわゆる病床規制は、地域の実情・ニーズを適切に踏まえた基準病床数の算定基準を公正に設定した上で、適正な病床数に管理されるようにし、一般病床が本来の目的に利用されるような状況を実現すべきである。また、療養病床については、近年の介護・福祉施設の充実に伴い、医療機関における療養病床の果たす役割を見直す必要があることから、介護・福祉施設との関係を踏まえながら、その在り方について検討し、必要な措置を講ずるべきである。【平成17年度早期に措置】
 また、医療資源の集中と地域連携医療の推進に関し、以下のことが指摘されている。
 (1)限られた医療資源が最適・有効に活用されるよう、医療機関の機能分化、医療人材も含めた地域内の施設・設備の共同利用促進による地域連携等、各都道府県が実効性のある医療計画を策定する上で必要な措置を講ずるべきである。【平成17年中結論、平成18年の医療制度改革で措置】
 (2)予防、診断から治療、療養、在宅ケア、緩和ケア等、疾病の経過に基づいたシナリオに沿って医療施設が整備され、継続して質の高い医療が提供される環境の整備を図る等、各都道府県において実効性のある医療計画が策定できるよう、医療法他諸法令の規定の見直し等を行うべきである。【平成17年中結論、平成18年の医療制度改革で措置】
 (3)医療資源の地域間格差の是正や、へき地問題の解決は、必要不可欠であるとしても、不採算等の理由により、医療機関の任意の協力により解決することは難しい。公的な医療機関の政策医療への機能特化や、民間医療機関に対する公的な支援等、実効性のある医療計画を策定するとともに、都道府県が早期に問題を解消できるような具体的施策を講ずるべきである。【平成17年中結論、平成18年の医療制度改革で措置】
 (4)医療計画の策定に際し、政策的な医療を行うよう都道府県知事が指定する公的医療機関及び民間医療機関のいずれについても、政策的な医療に要する施設整備等の費用に関する都道府県からの資金援助の在り方を見直していくことを通じて、政策医療が円滑に実施できるよう早急に措置すべきである。【平成18年の医療制度改革で措置】

 これらの指摘を踏まえ、医療計画制度の見直しを行う必要がある。

4. 我が国の今後の医療需要の変化等への対応

 今後の疾病構造については、早期の退行性病変、がん及び循環器疾患から、後期の退行性病変、すなわち老人性痴呆や寝たきりに移行してくると考えられる。また、これから10年後には人口の4分の1が65歳以上に、さらに30年後には3分の1が65歳以上という社会を迎えるわが国の高齢者についていえば、一般に多種の慢性疾患を抱え、増悪と軽快を繰り返すことから、医療サービスを提供する側は、このように慢性化し、かつ、急変する1人1人の医療需要への適切な対応が求められ、医療機能の分化と連携の推進が不可欠となる。
 また、近年の医療事故の多発によって国民の医療に対する不信感が高まり、安全で良質な医療サービスの提供が強く求められていることなど、大きな課題が存在する。
 このような課題に対応するため、医療計画制度を見直すことによって、医療提供体制に係るシステムの再構築を図ることにより、国民の医療に対する信頼を回復するための重要な手法とすることが期待される。

5. 患者の視点の尊重

 厚生労働省が2003年8月に公表した「医療提供体制の改革のビジョン」における大きな柱は患者の視点の尊重であり、

 (1)医療機関情報の提供の促進により患者、国民が容易に医療に関する多様な情報にアクセスできること
 (2)診療情報の提供の促進により、患者の選択を尊重した医療が提供され、患者も自ら健康の保持のための努力を行い、自覚と責任をもって医療に参加すること
 (3)最新の科学的根拠に基づく診療ガイドラインの整備と情報提供が行われ、患者は必要な情報を得た上で治療を受けることができること
 (4)医療安全対策が徹底され国民が安心して医療を受けることができること

等を通じ、患者が望む医療を実現していくこと、そして、こうした患者の選択を通じて医療の質の向上と効率化が図られることが期待されており、医療計画制度においても患者の視点に沿った見直しが求められている。


II 今後の医療計画制度のあり方について

1. 医療計画制度のあるべき姿

 医療計画制度については、先に述べたとおり、具体的な数値目標が示されていないことや、これまではとりわけ病床数の適正化を目的とし、特に制度発足当初は、必要病床数の算定による病床規制に主眼が置かれる傾向にあったことが指摘できる。近年では、医療資源の量的な充実に伴い、質の高い医療の確保に加え、医療機能の分化と連携の推進等が求められる傾向にあり、医療計画制度のあるべき姿も見直される必要がある。
 また、「いわゆる三位一体の改革」の推進を踏まえ、医療提供体制の整備においても、国民皆保険の下で、国民がどの地域においても、安全・安心で一定水準の医療を受けられることを前提とした上で、都道府県が地域保健・健康増進体制と医療提供体制との連携を充実・強化するとともに、介護サービス提供体制とも密接に連携をとることが重要である。生活習慣病の予防、医療機能の分化・連携そして介護サービスの提供につながる保健医療提供体制の構築が都道府県で実施できるよう医療計画制度のあるべき姿を見直す必要がある。
 医療を取り巻く状況、現行の医療計画制度の問題点等を踏まえると、医療計画制度が今後目指すべき方向、すなわち、医療計画制度のあるべき姿について、次のとおり提言したい。
 ○ 都道府県が、住民に対し、中長期的な期間でとらえた将来の医療提供体制のあるべき姿及び、それに向けた整備の目標と手順を、自ら明らかにするためのものとすべき
 ○ 次の「2.医療計画に盛り込まれるべき内容」を基本とし、いずれも具体的な数値目標の設定と住民等による評価が可能なものとなるよう内容を充実すべき
 ○ 医療計画の作成のみで終了とせず、作成から執行、評価そして次期計画への反映を一つの循環となるようにすべき

2.医療計画に盛り込まれるべき内容

(1) 目的

 わが国の患者の医療需要の変化等に対応した医療提供体制を実現するための手法として医療計画が実効性のあるものとなるためには、都道府県が具体的な数値目標を掲げて医療計画を作成するよう、医療法等においてその考え方を明確に定める必要がある。
 このため、これまで医療計画制度の目的であった「地域における適切な医療の確保」と「医療提供体制に係る地域格差の是正」に加え、医療計画制度において「患者の望む医療の実現」と「質が高く効率的かつ検証可能な医療提供体制の構築」をその目的に新しく位置づけるべきである。

(2) 圏域

1) これまでの圏域設定の考え方と実例にかかる評価
 これまで二次医療圏は、身近で一般的な医療を確保できる圏域であって、保健医療施策を担う中核的な行政機関としての保健所が原則として各1か所含まれる範囲が標準的なものとされてきた。また、二次医療圏の平均的な人口規模は約35万人であって、わが国の圏域数は341から370前後で設定されてきた。この規模は広域市町村圏等の数とも一致し、日本人の日常生活圏と重なることから、全体としては一定の合理性を認めることができるが、一方では、以下の問題点も指摘できる。

 (1)人口、面積の大きなばらつき
 二次医療圏の実態を分析すると、人口や面積に大きなばらつきがある。また、人口全体の約半分が全医療圏の4分の1に集中しており、人口規模最大の大阪市は最小・隠岐の100倍の規模であって、3分の2の二次医療圏は人口が平均以下となっている。さらに、二次医療圏の面積が最大の十勝は最小の南河内の273倍の広さを有している。

 (2)辺縁問題
 二次医療圏の設定が都道府県単位で完結することとなっていることから、都道府県を越えた県境地域の住民の受療行動を反映できない。

 (3)大都市問題
 大都市では人口が密集し、医療機関もそれに対応して多数存在している、また交通網の発達により、住民の受療行動が一定の地域内で完結しないことが指摘される。このため、大都市においては、全体を一つの二次医療圏として捉えるべきとの考え方があり、二次医療圏の概念を実現しにくい状況となっている。

 (4)二次医療圏と日常生活圏の不一致
 一部の二次医療圏では市町村等の既存の行政区域を重視し、日常生活圏や住民の受療行動と合わないものも存在する。

 (5)消防本部圏域、老人保健福祉圏域等他の行政区域等との不一致
 都道府県においては、様々な行政区域が存在する場合があり、特に、消防本部圏域、老人保健福祉圏域等、医療と関連の深い行政区域と必ずしも一致していないところがある。

2) 今後の方向
 臓器移植等三次医療圏を越えて広域的なネットワークが存在する医療や、救命救急センター、総合周産期母子医療センター等、二次医療圏と三次医療圏の中間に属するような医療が存在することから、医療に関してその機能ごとに明確に一次医療圏、二次医療圏又は三次医療圏と振り分けるのは困難である。
 また、医療の質及び効率性と医療の近接性には、トレードオフの関係があることが指摘されている。つまり、医療の質及び効率性を高めるためには、マンパワーの確保等の観点から医療資源の集中化が求められるが、一方で、医療の近接性が犠牲にされる場合があるからである。このため、患者数が少なく高度な技術、小児救急医療など専門医の確保が困難な分野等は、医療の近接性をある程度犠牲にしても医療資源を集中化することが望ましく、慢性疾患のケアなど、医療資源の確保が比較的容易であり、継続的な医療が必要とされるものについては医療の近接性が重視されるべきである。
 こうした考え方を踏まえ、今後、圏域設定を検討する際には、次の2点について考慮すべきである。

 (1)地域特性への配慮
 生活時間が短く資源が集中している大都市圏やその郊外、さらには医療資源が集中している地方の大都市と、人口や患者数が少なく、医療資源も相対的に少ない郡部等、地域特性を考慮する必要がある。

 (2)二次医療圏における必要な医療の確保
 身近で一般的な医療については、二次医療圏における確保が基本となることから、地域における住民の年齢構成、疾病構造等を勘案した上で、都道府県が医療というサービスの消費者である住民の視点から医療の質及び効率性と医療の近接性のバランスを勘案して医療資源の確保に関する具体的数値目標を設定することとなる。言い換えれば、都道府県がこれらの目標を達成するために必要な医療資源が確保できる規模として二次医療圏を設定することとなる。その際、市町村等の既存の行政圏域にとらわれず、住民の受療行動、救急搬送などの実施状況や消防本部圏域、老人保健福祉圏域等、医療と関連の深い行政区域等に照らし、身近で一般的な医療について地域(二次医療圏)で完結できるようにすべきである。

(3) 基準病床数

1) 基準病床数を設定することについての考え方
 基準病床数については、地域ごとに必要な病床数を明らかにすることにより、効率的な医療資源の分配を可能とし、地域格差の是正が図れるとする積極的な肯定評価と、医療ニーズ(特に入院受療)に関する必要性を評価する適切な基準がない状況においては病床数により制限を行うほかに供給者誘発需要(supplier-induced demand)をコントロールする方法がないという消極的な肯定評価がある。
 一方で、先に述べた規制改革・民間開放推進会議の第1次答申においては、基準病床数制度の問題点として、現在の基準病床数制度が医療機関(病床)の量的なコントロールのみを行っていることにより、既存の医療機関の既得権益を保護することによって新規参入を阻害し、もって医療機関の健全な競争が働かないこと、人口当たりの病床数や医療機関数が他国に比し群を抜いて多いため、医師を含め医療資源が分散していること等の問題点が指摘されているところである。

2) 適正な医療提供の確保との関係でみた基準病床数制度の要否の検討
 限られた医療資源を効率的に活用し、医療の必要度に応じて入院治療が必要な患者が速やかに入院治療を受けることができるよう適切な機能別の病床数を確保することが必要性である一方で、供給側による誘導の結果として入院の必要度が低い患者が入院治療を受けるといった事態が生じることがないようにしなければならないという状況を踏まえると、基準病床数制度を廃止する場合、適切な医療提供体制を確保するために最低限必要な条件として次の事項が必要である。

 (1)入院治療の必要性を検証できる仕組み
 (2)入院治療が必要なくなった時点で、退院を促す仕組み
 (3)地域に参入する医療機関の診療内容等の情報が公開され、患者による選択が促進され、医療の質の向上と効率化が図られる仕組み
 (4)救急医療やへき地医療等、政策的に必要な医療に関し、医療機関の経営、あるいは特定診療科の経営が採算に乗らない地域では、それを担当する医療機関に対して、補助金や診療報酬上の評価その他の手法により、引き続き医療サービスの提供を保障あるいは促進することができる仕組み

 この仕組みを支えるためには、各医療機関により、1)正確な分類に基づいたケースミックス(各種疾患を診断群に整理分類する方法)を用いた患者構造の明確化、2)治療結果、3)在院日数、4)費用(経営指標)が一定のルールにより都道府県に報告されることにより、医療の透明性が確保され、患者の選択の促進と競争環境の整備が図られるべきである。
 なお、これらは基準病床数制度廃止のみに限らず、わが国の医療の質の向上と効率化において必要不可欠な基盤であるという点に留意すべきである。

3) 基準病床数制度を維持する場合に必要な改善点
 上記の最低限必要とされる条件が整備されるまでの間において、適正な医療提供の確保のため基準病床数制度を維持する場合には、現行において指摘されている問題点を踏まえ、少なくとも以下の点について検討され、改善される必要がある。

 (1)地域の医療ニーズに基づいたものであること
 地域の人口構造から、全入院需要や主要疾患ごとの入院需要を計算し、これを基準病床数に反映させるようにすべきである。また、主要疾患のうち、特定の疾患の入院需要が他地域と比較して特に高い場合には、都道府県はその状況について分析し、改善に向けた方策を直ちに実行するという責任を負うべきであり、これらについて、都道府県が作成する医療計画において明らかにすることが考えられる。

 (2)地域にとって真に必要な質の高い医療を確保するための対応が図られていること
 現行の医療計画は既存病床の既得権益化が生じ新規参入が妨げられているとの指摘もあることから、質が低く、都道府県の改善命令に従わない医療機関に対する開設許可の取消しなど都道府県がこれまで以上に実効力をもって医療機関を地域から退出させることによって、地域にとって真に必要な質の高い医療サービスを的確に確保される必要がある。

 (3)病床の機能や主要な疾患の臨床経過を反映したものであること
 主要な疾患ごとに、発症から急性期医療の実施、リハビリテーションの提供そして在宅療養などの臨床経過を設定し、それぞれの主要な疾患別の臨床経過ごとに必要となる入院需要を算定し、これを踏まえ、基準病床数は、それぞれの主要な疾患別の臨床経過に係る病床機能ごとに明らかにされる必要がある。
 基準病床数は、理想的には、以下の算定式により求めることができる。
Σ{(主要疾患ごとの入院治療が必要な患者発生数)x(基準在院日数)x(1/病床占有率)}

 (4)介護との整合が図られたものであること
 医療用の療養病床と介護用の療養病床は、本来異なる役割を有しているが、医療保険制度及び介護保険制度の見直しに際して、診療報酬と介護報酬、入院基準と入所基準等における両者の機能等について、更に検討を加え、その結果を踏まえ、療養病床に係る基準病床数が算定されるよう検討する必要がある。

(4) 記載事項

1) これまでの記載事項の考え方と果たしてきた機能に関する評価
 医療計画に必ず記載しなければならない事項として、主として病院の病床の整備を図るべき地域単位として区分する区域(二次医療圏)の設定、基準病床数の算定及び地域医療支援病院の整備の目標、休日夜間等の救急医療の確保、へき地医療の確保等が医療法により規定されている。この他、政策的に推進すべきものについて厚生労働省の局長通知である医療計画作成指針に示されているものを含め、都道府県においては、それぞれ地域の実情を踏まえて医療計画に記載することにより地域の医療を提供する体制の確保に関し一定の効果を上げているところである。しかしながら、医療計画制度については、これまで明確な目的とそれに基づく具体的な数値目標が示されていないことから、作成された医療計画では、記載事項についても理念的なものにとどまり、医療計画の達成度を住民が把握、評価し、次の医療計画の作成に結びつくような具体的な内容にまで踏み込んでいる例は少なく、住民が医療提供体制の整備に係る進捗状況を逐次把握し評価できる仕組みとはなっていない。

2) 今後の方向
 今後の方向としては、医療計画制度における新たな目的を明確化した上で、記載事項については医療計画の目的を達成するための具体的な数値目標として位置づけ、医療提供体制の整備に係る進捗状況の把握とその達成度の評価を実施できるよう、あらかじめ数値化できる適切な指標を選択し、導入しておく必要がある。
 平成18年の医療制度改革に向け、例えば以下の事項について、評価可能な形で医療計画に記載すべきものとして追加することを検討するべきであり、引き続き本検討会に具体的な検討を行うこととする。

 (1)政策的に推進すべき医療や機能との関連
 医療を取り巻く最近の情勢や新たに政策的に推進すべき医療施策を踏まえ、次の事項を医療計画に記載すべきものとして法令上明確に位置づける必要があるのではないか。

 医療安全支援センターが行う活動
 身近な地域において医療に関する患者の苦情や相談等に迅速に対応する相談体制を整備し、患者・家族等と医療人・医療機関との信頼関係の構築に取り組んでいくため、都道府県並びに二次医療圏ごと、並びに保健所設置市及び特別区において医療安全支援センターを設置することとされており、医療政策上、医療安全対策が重要な課題となっていることを踏まえ、医療安全支援センターが行う活動については医療計画に位置づける必要があるのではないか。

 医師等の医療従事者の確保等
 へき地を含む地域における医療提供体制の確保は、医療政策における重要課題となっている。特に医師の地域偏在は依然として大きな問題であることから、厚生労働省、総務省及び文部科学省で構成された「地域医療に関する関係省庁連絡会議」により、「へき地を含む地域における医師の確保等の推進について」が取りまとめられ、医師等の医療従事者の確保のため、地域における医療対策協議会の開催が推奨されているところである。一方で、医師等の医療従事者の確保については、既に医療法に基づき、医療計画に記載することとされているが、今後は、臨床研修指定病院の活動や医療対策協議会の開催等を含め、医師の確保に関するより具体的な数値目標について医療計画に記載する必要があるのではないか。
 また、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の確保についても、より具体的な数値目標について医療計画に記載する必要があるのではないか。

 小児医療・小児救急医療の推進
 近年、小児医療の確保が課題となっている。小児医療の高度化、患者ニーズの変化等に伴い、小児科医の相対的な不足が指摘されている。地域において小児医療体制を確保するためには、小児科医の数的な確保に加え、24時間体制の小児救急医療等、高度な医療の集約化と、診療所を中心とした初期救急等を地域で適切に対応できるように確保するとともに、これらの小児医療施設の有機的連携が図れるようネットワーク化を進めるなど、総合的な対策が必要とされることから、これを医療計画に位置づけ、国においても都道府県による計画的な整備を促す必要があるのではないか。

 周産期医療の推進
 妊産婦死亡、周産期死亡等の改善により安心して出産できる体制を整備するため、少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画(子ども・子育て応援プラン)(平成16年12月24日少子化社会対策会議決定)により、各都道府県において総合周産期母子医療センターを中核とした周産期医療ネットワーク(システム)を整備することが求められている。今後も地域における周産期医療体制の構築を図るため、周産期医療ネットワーク(システム)の整備を医療計画に位置づける必要があるのではないか。

 地域がん診療拠点病院の位置づけ
 わが国において、がんによる死亡は1981年以降死亡の第1位を占め、がん患者数は毎年増加傾向を示している。このような状況から質の高いがん医療の全国的な均てん化を図るため、地域がん診療拠点病院を二次医療圏に1か所程度整備することとされ、かつ、その提供するがん医療の質について均てん化する必要がある。このため、今後も地域がん診療拠点病院の設置と質の高いがん医療を推進するため医療計画に位置づける必要があるのではないか。

 重症難病患者に係る入院施設の確保対策の推進
 ALS(筋萎縮性側索硬化症)等における人工呼吸器装着患者のように看護や介護に多大の労力を要する患者が存在すること等の状況から、病状の悪化等により居宅での療養が極めて困難となった重症難病患者に対し、適時に適切な入院施設を確保等できるよう、地域の医療機関の連携による難病医療提供体制の整備を医療計画に位置づける必要があるのではないか。

 エイズ治療拠点病院の整備推進
 エイズ診療については、住民に身近な医療機関において一般的な診療を行い、地域の拠点病院において重症患者に対する総合的、専門的医療を提供する等、その機能に応じて診療することが必要であることから、これらエイズ治療拠点病院の整備について医療計画に位置づける必要があるのではないか。

 病院前救護のメディカルコントロール体制
 病院前救護体制の充実を図るためには、メディカルコントロール体制を構築することが必要であり、都道府県メディカルコントロール協議会及び地域メディカルコントロール協議会の適切な運用と、常時指示体制、事後検証体制及び再教育体制等の充実が必要である。救急救命士の業務の高度化と処置範囲の拡大が図られている中で、適切な病院前救護体制を確保するためメディカルコントロール体制の充実が課題となっていることから、その整備について、医療計画に位置づける必要があるのではないか。

 在宅医療の推進
 わが国は、欧米諸国と比較しても少子高齢化のスピードが速く、介護を必要とする高齢者は、既に約390万人にのぼっている。患者のQOLの向上を図るため、できるだけ地域・家庭において日常生活を送ることができるよう在宅医療の推進が求められている。在宅での療養を可能とするためには、患者の病態に応じた医療と介護の両面からの支援が必要であることから、2000年度から介護保険制度が開始されているが、今後、医療と介護の連携を図る上で、医療計画に明確に位置づける必要があるのではないか。

 精神救急医療の整備
 精神障害者が地域において、緊急時における適切な医療及び保護の機会を確保するため、これまでの病院群輪番制等による精神科救急医療体制の整備に加え、単独で24時間、365日急性期患者等を受け入れる(個室での手厚い医療の提供を行うことにより患者の早期退院を促す)ことができる特定の救急医療機関を中心とした精神科救急体制の整備を都道府県単位で図る。
 このため、この基本的な方針について、医療計画に位置づける必要があるのではないか。

 精神障害者の退院促進
 精神科病院への入院患者数は、2002年時点で32.1万人であり、受入条件が整えば退院可能な者も約7万人存在するが、このうち、短期間で退院している患者群と滞留している患者群があり、この動態を各都道府県ごとに分析しつつ、その解消を10年間で進める必要がある。
 このため、今通常国会に提出する予定の障害者自立支援給付法案(仮称)に規定する都道府県障害福祉計画と相まって、都道府県単位で地域実態を正確に把握し、医療と福祉が連動した計画的な取組を進めるため、医療計画においても、障害者の動態等を踏まえた基本的な目標値を設定し、精神障害者の退院促進のための計画的な取組を進める必要があるのではないか。

 (2)公的病院等が提供する医療サービスの明確化
 地域における医療機関の機能分担と連携の確保については、医療計画作成指針において、公的病院等と民間の医療機関との役割分担を含め、医療に関する施設相互の機能分担及び業務の連携を踏まえたものを記載することとされているが、これまでは医療機関の提供する医療サービスの内容や患者構造について十分に検討が行われてこなかった。今後は、医療計画において、個々の公的病院等がどのような役割を担い、その役割に基づいてどのような医療サービスを提供していくべきなのかについて明確化する必要があるのではないか。

 (3)認定された医療法人が提供する公益性の高い医療の明確化
 住民にとって望ましい医療であって採算性からみると提供に困難がみられるもの(救急医療、へき地医療、小児医療、治験の実施にみられる高度な医療など)については、これまで公立病院をはじめとした公的病院が主に担っていたが、今後は医療法人が主体である民間医療機関において中心的に提供されることが期待され、都道府県はこのような民間医療機関に対し公的な支援を行うことが求められる。このため、都道府県において認定した医療法人が提供する公益性の高い医療については医療計画において明確に位置づけることとし、これにより認定された医療法人の公益性を高める必要があるのではないか。

(5)病床の特例

1) 現状
 特定の病床等については、各区域で整備する必要があるものに限り、各区域で基準病床数を超える病床が存在する等(病床過剰地域)の場合でも必要に応じ例外的に(都道府県知事の勧告が行われることなく)整備できるものとされている。
 特例の取扱いは、基準病床数の見直しの際、大規模な都市開発等により急激な人口の増加が見込まれ、現在人口により病床数を算定することが不適当である場合等、医療計画公示前に基準病床数に含める場合と、医療計画公示後において、がん等の特定の病床に係る特例の対象となる病院の病床等を基準病床数とみなす場合とがある。
 最近の特定の病床等の特例に関する改正としては、構造改革特区に関する地方公共団体等からの第2次提案における要望を踏まえ、国内の治験を推進する観点から患者以外の被験者に対する臨床試験に係る病床を医療法施行規則第30条の32の2第1項に規定する特例の病床等の特例として追加している。

2) 今後取り組むべき方策
 現在の医療技術の進歩や疾病構造の変化を踏まえ、(1)その病床において提供される医療の内容、質に照らし、地域における既存病床数と基準病床数の関係如何を問わず特例的に整備すべきもの、(2)こうした事情が認められなくなっているものに着目し、見直しを検討すべきではないか。その際、現行の医療法施行規則第30条の32の2第1項各号に定められている14項目の病床について、例えば次のように見直すことを検討するべきであり、引き続き本検討会で具体的な検討を行うこととする。

 (1)がん及び循環器の病床に係る特例
 第1号のがん及び循環器の病床は、1998年以降、特例の病床として都道府県から厚生労働省(旧厚生省を含む)に対する協議と同意の実績がないことから、特例病床の一類型として位置づけ続ける必要性は乏しいのではないか。

 (2)リハビリテーションの病床に係る病床
 第4号のリハビリテーションの病床は、発達障害児の早期リハビリテーション、その他の特殊なリハビリテーションに係る病床に限定されているが、亜急性期のリハビリテーションを行う病床の整備の必要性が高まっている最近の状況に鑑み、これについても病床の特例に位置づけるべきではないか。

 (3)緩和ケアの病床に係る特例
 第8号の緩和ケア病床は、全国的に整備されつつあり、一般的な特例の対象に位置づける必要性は弱まっている。今後は、引き続き「特例」の制度を維持する場合であっても、緩和ケアに関し地域の中核的、指導的な役割を担うもの、例えば、地域がん診療拠点病院に設置される緩和ケア病床等に限定すべきではないか。

 (4)診療所の病床を転換して設けられた療養病床に係る特例
 第14号の診療所の病床を転換して設けられる療養病床に係る特例は、1998年3月31日に現に存する病床を転換して設けられた療養病床と限定されている。療養病床については、第4次医療法改正により、医療法上も一般病床と区分され、全国的に整備が進んでいることから、診療所の病床を転換して設けられる療養病床を、今後も特例病床として継続する必要性に乏しいのではないか。

(6) 既存病床数の補正

1) 現状
 既存病床数の補正は、次のとおり、医療法施行規則第30条の33で規定されている。

 (1)職域病院等の病床数の補正
 職域病院等の病床(診療所の療養病床に係る病床を含む。)は、一般住民が利用している部分を除いては、職域関係者など本来の目的とされる利用者の利用実態に応じた病床数に限り、既存病床数には算定しないこととなっている。

 (2)ICU病床等の病床数の補正
 ICU病床等のうち、バックベッドが確保されているものは、患者一人で2床を占有する形態となっていることから、ICU病床等を既存病床数として算入しないこととしている。

 (3)介護老人保健施設の入所定員に係る補正
 既存の病床数の補正に関し介護老人保健施設の入所定員の取扱いについては、医療法第7条の2第4項において、当該地域における既存の病床数を算定するに当たっては、介護老人保健施設の入所定員は、厚生労働省令の定めるところにより、既存の療養病床の病床数とみなすとされており、その取扱は次のとおりである。

医療法施行規則第2条の2及び第30条の33第1項第3号の規定により、介護老人保健施設の入所定員数に0.5を乗じて得た数を既存の病床数として算定する。
1991年6月26日以後に開設又は入所定員の増加に係る変更の許可を受けた介護老人保健施設の入所定員は、医療法施行規則第48条第1項の規定により、当分の間、既存病床数として算定しない。
2003年4月1日以後、転換型介護老人保健施設の入所定員は、医療法施行規則第48条第2項の規定により、当分の間、既存病床数として算定する。

2) 今後取り組むべき方策
 これらの補正については、最近の環境の変化を踏まえて例えば以下のように見直すことを検討するべきであり、引き続き本検討会において具体的な検討を行うこととする。

 (1)職域病院等の病床数の補正
 職域病院等の範囲に指定されている病院の中には、重症心身障害児施設である病院のように入所患者が限定されているものから、一般住民も入院できる病院まであり、現在は、病院ごとに病床の補正の式により算定した数が0.05以下であるときは補正しない(病床数全てについて既存病床数として算定する)こととなっている。今後は、補正対象の病院を原則、重症心身障害児施設である病院、肢体不自由児施設である病院若しくは自閉症児施設である病院のように入所患者が限定されているもの又は法務省が開設する医療刑務所病院、自衛隊駐屯地内の自衛隊病院等地域住民が通常利用しないものに限定すべきではないか。

 (2)ICU病床等の病床数の補正
 ICU病床等の範囲は、放射線治療病室(RI病床)、集中強化治療室(ICU病床)、心疾患強化治療室(CCU病床)及び無菌病室(無菌病床)であるが、実態として、必ずしも後方病床が確保されていない場合があることから、こうした実態をどう評価すべきかの検討も併せて行いつつ、現状を踏まえ、今後は、補正の対象としないこととすべきではないか。

 (3)介護老人保健施設の入所定員に係る補正
 介護老人保健施設は介護保険法に基づく福祉的な側面が強い施設であること、入所定員の取扱いについて、既存病床数への算定方法が統一されていないことから、既存のものを含めて、病床数の算定対象から除外すべきではないか。

3.作成手続き

(1) 医療計画を有効に機能させるための情報収集等

 医療計画が有効に機能し実施されていくためには、地域の実情を踏まえた具体的な数値目標の設定、設定した数値目標に向けて現実に実行に移すための医療計画の作成そして数値目標の定期的な評価と医療計画の見直しという一連の政策の流れを確立することが必要である。
 このような一連の政策の流れを実効性あるものにするためには、医療計画の作成と実施に必要な時間、予算及び地域の医療機能を把握するための調査手法の3つが重要な要件となる。特に、地域の医療機能を把握するための調査手法については、これまでの国や都道府県、あるいは市町村で行った調査内容をまず分析し、それをもとに必要な部分を補うための費用対効果の高い調査を行うようにすべきではないか。そしてこれらの調査の過程において医療計画を点検し、評価できるような仕組みを当初から考えておくと効率的である。
 一方で、現在、都道府県においては、医療機関の施設、設備、症例数、平均在院日数、紹介先とその件数及び専門職員数等に関する調査(医療機能調査)を行い、調査に基づき医療機能の整備の必要性を検証し、不足している医療機能については、その整備の方法及び整備の目標等について医療計画に記載しているところであり、今後とも、医療計画の数値目標の設定と評価を行う際の基礎資料として、医療機能調査を充実し、有効に活用すべきである。

(2) 関係者等の意見調整(関連する他の計画との調整)

 医療計画の作成に当たっては、医療計画に関係する部局との連携を図り、数値目標の設定を適切に行うのみならず、執行管理、評価そして医療計画の見直しを含めて効率的・効果的に実施できるような組織横断的な体制づくりが不可欠ではないか。その際、健康づくり対策、介護保険、母子保健等、関連のある他の計画等との調整を行う必要がある。
 また、市町村、関係団体、学識経験者、健康増進事業実施者等の意見を反映しながら計画を策定する必要がある。

(3) 住民参加を求める仕組み

 医療計画を通じて患者の視点を尊重した医療提供体制を実現するためには、情報の発信者(専門家、行政機関、医療機関、健康増進事業実施者等)と、患者や住民との間の情報量の格差を是正する仕組みが必要である。
 住民が計画作成に積極的に参加し、住民の医療ニーズを反映した医療計画を作成するためには、住民が有する情報量を増大させ、医療機関、医師会、健康増進事業実施者等の関係団体及び都道府県が有している情報量との格差を可能な限り是正していく必要がある。
 また、情報の格差の是正については量的なものに限らず、解釈するための能力の格差を克服する必要がある。情報量の格差の克服は、情報公開による対応が必要であり、解釈するための能力の格差の克服のためには、都道府県又は専門家側が住民に対して、わかりやすい言葉で説明し十分かつ対等な立場で議論できる環境を整備する必要がある。
 具体的な住民参加の手法としては、積極的な参加を拡充する方策として、パブリックコメント、アンケートなどが制度的に用いられているが、実際に住民の意向がどの程度反映されるかについては保障され得ない。現実には、専門性の高い分野ほど住民側の持つ情報の量が乏しいと考えられ、その意向が反映される程度は制限されることに配慮すべきであり、積極的に住民が参加できるシステムを構築する必要がある。
 さらに、都道府県においては、各医療機関が設備、提供する医療サービスの内容、症例数、平均在院日数、専門職員数など医療機能調査によって把握した結果の情報整備及び公開を積極的に推進することによって、住民をはじめとする利用者や各医療機関、その他の関係者が当該情報を活用できるよう環境整備に取り組み、医療機関の機能分化と連携、患者の選択を通じた医療の質の向上を推進すべきである。

4.医療計画に基づいた都道府県の執行管理と推進の方策

(1) 医療計画に基づいた都道府県の執行管理の方策

 医療計画が有効に機能し実施されていくためには、地域の実情を踏まえた具体的な数値目標の設定、目標に向けて実施するための医療計画の作成、定期的な評価とそれに伴う医療計画の見直しが必要である。
 例えば、住民の視点に立った評価手法として、後述する「ライフコースアプローチ」(主要な疾患・健康問題について、患者の病態に応じて必要となる医療サービスごとの供給量や質に係る指標を用いて、地域ごとの医療サービスの現状を把握し、整備・改善のための数値目標を設定することにより地域医療水準の定量的評価を行う方法。)を用いる場合には、まず、(1)地域の医療機能をはじめとする実情を把握した上で、(2)当該地域における確保すべき医療提供体制についての指標を設定し、(3)設定された指標について具体的な数値目標を定める。そして(4)この数値目標を達成するための活動計画としての医療計画を作成し、(5)一定期間の後に、数値目標と現実の達成度とを比較して評価を行い、(6)評価結果のフィードバックにより医療計画の見直しを行う、という過程を経て医療計画の執行管理を行うこととなる。指標の設定については、原則として、都道府県が地域の保健医療に関して抱えている課題の実情に即して決定する必要があるが、全国的な課題については、都道府県間の比較ができるよう、国において共通の指標を導入することも検討する必要がある。
 このように、医療計画の進捗状況を逐次把握し、定期的な評価を行うことにより、医療計画の推進に関して関係者の動機付けを図るとともに、評価結果に基づき、執行方法や医療計画の内容を見直すことが可能となる。 都道府県における行政の透明性の確保と説明責任を果たすためにも、医療計画の作成プロセスの明確化と評価結果の住民への公表など積極的な情報公開が必要ではある。

(2) 都道府県の医療計画推進の方策

 都道府県の医療計画担当者に対し、医療計画を推進する際に有効な方法について、アンケート調査(「医療計画策定のための調査」(2001年3月))を行った結果、有効とされたものは次のとおりであった。

 (1)計画推進のための委員会の設置・開催(1.46位)
 (2)補助金を出す(2.17位)
 (3)医師会や病院協会の会合に定期的に出席する(2.78位)
 (4)市民へのPR(3.17位)
 (5)医療監視(3.92位)

 医療計画の推進方策として、都道府県の担当者は「計画推進のための委員会の設置・開催」が最も有効であると考えている。市民へのPRも4番目に入っているが、委員会の開催や医師会、病院協会の会合に出席すること等に比べると順位が低い。先に述べたように、従来の医療計画は、医療提供側の視点を中心に作成される傾向が強く、患者や住民等、消費者側の視点が反映されにくいものとなっていることが推測される。
 このため、今後は医療計画の具体的な数値目標や評価結果等について、都道府県が住民に対し積極的に情報公開することにより、住民の意見が反映され、都道府県や医療提供側が住民等、消費者側のニーズに即した医療サービスの提供を実施していくインセンティブを働かせることが重要である。
 また、アンケート調査によると、医療計画の推進方策として「補助金を出す」ことが有効である。国や都道府県においても、医療提供体制の整備に関する国庫補助負担金は種々あるが、医療計画とこれら医療提供に係る各々の国庫補助負担金との整合性が十分図られていないのが現状である。今後、医療提供体制の充実を図るための総合的な計画として医療計画を位置づけ、推進するためにも、都道府県における国庫補助負担金等関連制度の運用に当たっては、医療計画と有機的関連づけを図り、もって国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保する必要がある。

5.医療計画に関する評価とその結果の都道府県行政への反映

(1) 評価の重要性と評価方法

 医療計画の実効性を上げるためには、具体的な数値目標の設定と評価を行い、医療計画の推進に関して関係者の動機付けを図るとともに、評価結果に基づき、執行方法や医療計画の内容を見直すことが重要である。 都道府県における行政の透明性の確保と住民に対する説明責任を果たすためにも、医療計画の作成プロセスの透明性の確保と評価結果の公表が必要である。
 評価を行う時期については、事前・中間・事後の3種類があり、評価方法も定性的な方法又は定量的な方法の両方がある。評価を効率的・効果的に行うためには、医療計画を作成する際に、同時に評価方法等についても検討し、でき得る限り定量的な方法で実施することが必要である。そのためにも、評価の手法、着眼点等については、あらかじめこれを明らかにしておくことが重要ではないか。あわせて、これらを補強するためにも医療機能調査の充実が有効である。

(2) 目的の明確化

 評価を行うためには、医療計画の目的が明確化されていることが必要である。なぜなら評価というのは目的の達成度を測定することだからである。しかし、目的は階層構造をなしており、一つの要因のみで目的を達成しうることは一般的に少ない。その要因が目的達成にどのくらい影響を与えたかを明らかにするためには、目的の階層と因果の構造を明らかにし、影響する他の要因を同定する必要がある。

1) 数値目標設定の意義
 医療計画の目的が明確化され、その実現に向けて執行する過程においては、数値目標を示し、数値目標に対する執行状況を測定することにより問題解決過程を管理することが可能となる。従来、医療計画の中に具体的な数値目標を記載しているところはほとんどなく、こうした視点が欠けていたことは否定できない。
 以上から、国において医療機能についての全国的な指標を示すことにより、都道府県が容易に医療計画の目的を明確化した数値目標が設定でき、もって都道府県が医療計画に基づいた行政を執行し、これを管理するとともに、執行後の政策評価を実施することが可能となる。

2) 数値目標設定の方法
 数値目標の設定では、医療計画が達成されたときの状況の具体的予測が求められる。「誰が」「どこで」「何を」「どのようにして」「いつまでに」「どうする」のか(5W1H)を明確にする必要がある。更に、「わかりやすく」「測りやすく」「較べやすく」「変えやすく」という基準から目標を選ぶ必要があるのではないか。
 また、数値目標は住民にとっても分かりやすいものであり、かつ、地域における健康課題の解決に有用なものを選定する必要がある。

(3) 住民の視点に立った評価方法(ライフコースアプローチ)の提案

1) 情報格差の是正の重要性
 近年、行政施策への住民参加が求められており、また、「医療提供体制の改革のビジョン」においても、患者の視点の尊重が重要な柱となっている。医療計画の作成に当たる都道府県医療審議会等においても、一般的に、住民代表が参加している場合が多いが、医療に関しては、提供側である医療関係者等と消費者側である患者・一般住民との間に圧倒的な情報の非対称性があることから、これまでは医療提供側の視点に立った計画にならざるを得ない面があった。
 こうした状況を踏まえ、ここでは主要な疾病に関して疾病の経過に基づいたシナリオを作成することにより、医療サービスの消費者・提供者の双方が情報を共有し、評価することができる新たな方法(ライフコースアプローチ)を考えてはどうか。

2) ライフコースアプローチの活用
 医療計画を住民の視点に立った計画とし、実効性あるものとするためには、次のような基本的な命題に応えていく必要があるのではないか。

 あなたの都道府県の医療計画は、
「性別や年代によって、重要な健康上の問題が何であるかを分かりやすく示していますか?」
「病気にかかったときに、地域においてどのような医療サービスを受けることができるかについて患者の立場から分かりやすく示していますか?」

 こうした命題に応える上では、

 (1)地域の主要な疾病構造等の特徴を踏まえ、都道府県が地域住民に提供しようとする医療サービスを明示する
 (2)地域住民が遭遇することの多い主要な健康問題(疾病)を取り上げ、地域においてどのような医療サービスを受けることができるかを具体的に記述する
 (3)上記の主要な疾病ごとに、その治療経過中の各過程において必要な診療機能ごとに指標を設定し、これに関する到達度評価を行うことを可能とする

という具体的内容が必要であり、これに対応するためにはライフコースアプローチを具体化することが有効ではないか。

3) 医療計画における執行管理と主要な疾病の選定
 ライフコースアプローチを用いて医療計画の執行管理を適切に実施するためには、地域の主要な疾病構造等を把握した上で、その状況や住民のニーズ等を踏まえ、取り上げるべき主要な疾病の優先順位を設定する必要があるのではないか。一般に、優先順位は、社会的影響、医療計画による介入の効果、その他の価値(公平性、費用など)等に基づいて決定される場合が多く、疾病の選定過程、その根拠となるデータ等は公表されることが必要ではないか。その際、都道府県は、優先順位を設定するためのデータ等を入手する手段についての検討が必要となるのではないか。
 実際に都道府県において医療計画を作成する際の取り上げるべき疾病の優先順位の設定、ライフコースアプローチを用いた医療計画の執行管理の具体的な方法等は、それぞれ都道府県において検討されるべきものである。以下は主要な疾病の代表的なものである。
 (1)小児救急
 (2)糖尿病
 (3)急性心筋梗塞
 (4)がん
 (5)脳卒中
 (6)その他
4) ライフコースアプローチを用いることにより期待される効果
 地域において主要な疾病が選定され、疾病に係る治療等の過程として地域における医療機能が明らかにされ、それらを指標とした達成度を評価することによって、種々の波及効果が期待される。例えば、地域における必要な医療の確保状況はもとより、選定する疾病に係る指標によっては、医療施設の機能分化の状況や機能連携の状況等が明らかになり、住民に対して地域の医療機能の現状が分かりやすく周知されることが可能となるのではないか。また、これらの状況を踏まえ、都道府県が今後強化すべき医療施策が明らかになることにより、予算の確保や医療施策に対する住民の理解を得ることが容易となるのではないか。さらに、医療を提供する側にとっても地域で求められる医療機能が把握されることによって効率的な体制を確保することが容易となるのではないか。

5) ライフコースアプローチの具体的なシナリオと評価
 以下に乳がんを例にとり、ライフコースアプローチの具体的なシナリオと評価の実例を示す。


【例:乳がん】
■シナリオ■
 Aさんは4 5歳の主婦である。定期健診1で乳房のしこりを指摘されて、近くの病院を受診した。そこでは画像検査の結果、乳がんと診断された。
 医師は乳房を切除する手術を勧めたが、Aさんは、他の治療法がないか別の医師の意見を聞きたいと申し出た。これによりエックス線などの資料のコピーを借りて、別の専門病院を受診した2。専門病院はその地域でも手術件数が多く、治療成績が優れていることで知られている3。そこでは乳がん専門のB医師の意見を参考にして手術を行った。術後の経過は順調で、切除した乳房の美容形成についてもB医師から別の医師の紹介を受けた4
 3年後、定期的な経過観察で乳がんが骨に転移し再発していることが確認された5。B医師から放射線治療医、がん化学療法専門医6の紹介を受け、相談の結果、放射線療法を選択した。
 がんは、一旦は縮小したものの、その後、別な場所にも転移が見つかった。このため、化学療法に切り替えて、治療を継続したが、次第に抗がん剤の効かなくなり、Aさんは痛みから夜眠れずに体力が衰えてきた。そこでAさんには、自宅の近くで、在宅医療、緩和ケアを行っている病院が紹介された7。以降、定期的に訪問診療・訪問看護を受けて、睡眠薬、鎮痛薬の処方をしてもらい、体力が衰えたときや痛みの強いときに数日間入院することを繰り返している。

1検診:一定以上の年齢の住民は、主要ながんについてがん検診を受けることができること。
到達度評価の指標:がん検診受診率、サブグループ別、個人ベース。
2情報:重大な疾患についてはセカンドオピニオンが可能なこと。
到達度評価の指標:セカンドオピニオン対応医療機関数・患者数(疾患別)。
3医療の質:病院の特徴、主要な手術・処置の件数、成績などの情報が整備され、受診にあたって参考とすることができること。
到達度評価の指標:情報のフォーマットの整備、公開している医療機関数・割合。
4連携:患者中心の医療サービスがseamlessに用意されていること。重要な疾患についてはこのようなケアコーディネーションを行う体制が整備されていること。
到達度評価の指標:主要ながんについてのケアプロセスを明示し、それぞれ満たしている医療機関数・割合。
5追跡:術後のがん登録、長期間のフォローアップが行われ、長期の治療成績などの情報が整備されること。
到達度評価の指標:がん登録割合、フォローアップ率。
6がん専門医:二次医療圏ごとに、がんに対する放射線治療、癌化学療法を行う専門医が整備されていること。
到達度評価の指標:放射線治療、癌化学療法専門医師数。
7緩和ケア:二次医療圏ごと、在宅医療、緩和ケアを行う施設が整備されていること。緩和ケアは長期間の入所を目的としたもののみではなく、外来を中心として短期間の入所を行う施設も用意されていることが望ましい。
到達度評価の指標:緩和ケア実施医療機関数、在宅医療実施医療機関数。


評価例■(案)

県別指標の評価の例

表図

図

目盛りは、47都道府県の中での順位。


III 当面取り組むべき課題

   IIの今後の医療計画のあり方を展望しつつ、第4次医療法改正の趣旨を踏まえ、また、規制改革・民間開放推進会議第1次答申において平成17年度早期に措置することが求められていることを考慮すれば、当面取り組むべき課題として、以下のとおり、基準病床数の算定式を作成する必要がある。その際、社会経済状況の変化等に対応した同じ医療圏内において一般病床から療養病床、あるいは療養病床から一般病床への転換が硬直し妨げられることに対し配慮することが必要である。

基準病床数の算定式

1) 現状
 現行の基準病床数の算定式は、二次医療圏ごとに算定する療養病床及び一般病床に係る基準病床数に関するものと、都道府県の区域ごとに算定する精神病床に係る基準病床数、結核病床に係る基準病床数、感染症病床に係る基準病床数それぞれに関するものを定めることとなっている。
 2003年8月末までに届けられた病床区分の届出は一般病床923,047床、療養病床346,045床であったが、その後の医療施設動態調査(2004年9月末概数)における両病床は、一般病床912,635床、療養病床348,688床となっている。
 療養病床及び一般病床に係る基準病床数は、新たな病床区分が定着するまでの間(2001年3月〜政令で定める日(現行では未制定))は現行の一般病床・療養病床全体で一つの基準病床数算定式により算出した数が標準となっているが、新たな病床区分が定着した後は、療養病床、一般病床の病床の種別に応じて算定した数の合計数を標準とするとされている。

2) 当面取り組むべき方策

(1)一般病床・療養病床
 一般病床及び療養病床について、2003年9月末から2004年9月末までの医療施設動態調査(概数)により、一般病床と療養病床の間の移行状況をみると、一般病床から療養病床へ移行する傾向は継続してみられているものの、大きな変動はなく、新たな病床区分は、ある程度定着したものと考えられることから、一般病床と療養病床の新たな算定式を作成する必要がある。
 一般病床は、近年の医療の進歩に伴い平均在院日数の短縮が著しいが、一方、高齢化により入院回数が増加することが予測される。これらが相まった各地域の医療需要については、平均在院日数と退院患者数を基礎に算定することができる。そこで一般病床の算定式は、平均在院日数×退院患者数/病床利用率とすることが考えられる。
 平均在院日数は、地域格差を是正しつつ地域の特性も加味したものとするため、全国9ブロック毎の平均在院日数を基本とし、今後の平均在院日数の短縮の見込みも考慮して使用することが適当ではないかと考えられる。退院患者数は各ブロックでの年齢階級別・性別の退院患者率を基礎に算出できる。病床利用率については全国値を使用すべきである。
 療養病床については、一般病床の算定式とは異なる考え方に立つことが求められる。すなわち、高齢者等が生活する場としては在宅が望ましく、病状やニーズに応じて在宅、次いで保健施設や福祉施設、そして医療施設であると考えられるとともに、各都道府県、各地域において、長期にわたる療養・介護を必要とする者を在宅あるいは各施設類型のもとでどのようにケアしていくかの考え方、また、各サービスの整備状況や整備計画によって、全体として需要が同じだとしても、療養病床として整備が必要な数は変わってくるからである。また、もともとの地域性や、介護予防や健康増進の取組等により、全体としての需要自体についても地域による差が生じ得るものである。
 これらを踏まえると、療養病床数の基礎となる数値については、地域において長期療養に係る医療又は介護を必要とする入院・入所需要から、在宅及び介護施設(介護療養型医療施設を除く。)において対応可能なケースを差し引いた数となると考えられ、この考え方にふさわしい式を設定することが適当である。

(2)精神病床
 精神病床の算定式は、精神病床等に関する検討会において別途検討がなされ、報告されたところである。

(3)結核病床
 全国一律の病床数算定基準を廃止し、新規感染性結核患者の感染性消失までの入院に要する病床数及び慢性排菌等長期の入院に要する病床数等、公衆衛生上必要な病床数を都道府県知事が定めることとする予定。

(4)感染症病床
 現行の基準病床数は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第38条第1項の規定に基づき厚生労働大臣の指定を受けている特定感染症指定医療機関の感染症病床並びに同条第2項の規定に基づき都道府県知事の指定を受けている第1種感染症指定医療機関及び第2種感染症指定医療機関の感染症病床の数を合算した数を基準として都道府県知事が定める数とするとなっており、引き続き、同様の取扱いとすべきである。


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