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厚生労働科学研究に関する意見の概要(I)【国立試験研究機関】

未定稿

1.社会的背景と厚生労働科学研究の使命
項目 概要
社会的背景
(1)社会構造の変化
少子高齢化社会の到来
(2)国民意識の変化
国民の健康や安全性確保に対する意識や志向の高まり
(3)医療技術の進歩
生命科学をはじめとする科学の急速な進展とその社会的活用及び社会的理解・認知と倫理問題
(4)新たな脅威
感染症やテロ等の健康危機管理に関する問題の発生
(5)健康問題の国際化
国際競争の激化と保健医療分野における国際貢献の必要性
(6)公的資金配分の適正化
緊縮財政の中での健康や保健衛生の維持・向上に対する公的資金の配分の適正規模問題の表面化
研究の使命
(1)国民の健康確保
より質の高い健康や安全な生活の国民への提供 
健康被害の予防と拡大防止
健康安心・安全志向の高揚
様々な厚生労働施策への生命科学や先端技術の研究成果の応用
社会保障制度の在り方に関する検討
(2)科学技術振興
ライフサイエンス分野における科学技術の振興
(3)国際貢献
保健医療分野における各種国際活動を通じた国際貢献の推進


2.これからの厚生労働科学研究に関する基本的考え方について
項目 概要
基本スタンス
厚生労働科学研究は、すべての人間活動の基盤であり、源泉となる国民の保健衛生(健康を確保し、生を衛ること)の維持、増進、生活環境の安全確保等に関する研究を主体的に担うべき。
基礎から開発・応用まで一貫した統合戦略の中で、厚生科学研究は最終製品、最終評価者・利用者の視点に立った研究展開を行うべき。とりわけ国立試験研究機関を中心とした「能動的(前向きの、攻めの)品質・安全性研究や技術開発」が重要。
厚生労働科学研究は、前向きの国家保健衛生充実強化戦略(ナショナルセーフティイノベーション及びナショナルセーフティシステムの構築)というコンセプトを導入すべき。
研究者個々の自由発想による基礎研究等とは異なる、保健衛生面で国がなすべき、国でなければ実施が困難な俯瞰的、統合的なミッション志向型の研究を国益、国民益のために国立試験研究機関、ナショナルセンター等を中心に推進するという方針に軸足を移すべき。
人に関する研究(政策の評価、社会保障に関する研究、健康教育、リスク・コミュニケーション、疫学、行動科学などのキーワードを含む)
採択方針として、政策に反映させる科学的根拠をいかに設定しうるかを採択の基準の1つとし、厚生労働省の考え方も十分に反映されるべき。
自由発想に基づく基礎研究は、競争的研究費に相応しいが科学研究費との役割分担は必要。
政府の科学技術政策における位置づけ
公衆衛生と社会保障に関しては厚生労働省の考えが政府の考えであるという立場をとり、多くの省庁にまたがる社会保障に関する課題では厚生労働省は省庁間の壁を払って研究を推進すべき。
少子高齢化が急速に進むとともに社会経済が大きく変化している中で、今後人口問題及び社会保障制度の研究の重要性がますます増加するため、人口問題及び社会保障制度に関する研究の重要性をもっと考慮すべき。
省庁間の横断として、医学(生物学)研究を厚生労働省に一本化させ、医療、医学等の政策に直結させる研究と基礎科学研究推進とに分けて実施するべき。


3.これからの厚生労働科学研究の体制の在り方について
項目 概要
研究の枠組み
研究内容によっては、先進的であり重要なものでも大規模研究班を必要としない研究内容もあり、規模の小さい研究課題の公募も考慮すべき。
経常研究費、指定型研究費、競争型研究費のバランス配分を適正化し、本来前2者に入るべきものでも競争型に入れる例を見直すことや、後者に資金総額が過度に偏在しないよう配慮すべき。
基本的な調査研究(例:食の安全・安心にかかわる各種一日摂取量の推定方法の精密化など)を厚生労働科学研究で実施することは避けるべき。
国家的・社会的課題に対応したものを中・長期的な研究として、総合化、重点化を図ることも必要であり、バラバラにしないで、総合的に結合して推進すべき。
長期大型課題は統合した総合研究として10カ年計画を策定。
指定研究を重視させ、一定期間に達成できるものを重点化し、課題を細分化しすぎたり、重複しないように明確なる目的を持つ研究に対し、大型研究費として投資すべき。
厚生労働科学研究は全てが最先端の科学技術を追求する研究である必要はなく、むしろ日常の国民のニーズに応えるような基盤的な研究も重要であり、競争的研究に加え、行政的評価に重きを置く国民のニーズに資する研究(例えば毒性の基礎的なデータの蓄積、現状の安全性評価、安全性を確保するための研究等)を実施する新規の枠組みを作るべき。
研究評価の在り方
学術的価値と社会的価値を共存・両立させるとともに、経常研究、指定研究、競争的研究を厚生労働省における研究の3つの柱として再確認した上で、前2者の選択や成果にもきちんとした評価制度をつけた上で奨励するべき。
純粋な科学的メリットに劣るものでも政策的・戦略的に重要な研究は採択し、そうした観点から評価することが肝要。
課題選択・分野設定の在り方
公衆衛生に関する研究は一見地味ではあるが、最も直接的に国民の健康保護に貢献するものであることから、継続して行われるべき重要な分野である。従って安全性の評価法の研究のみならず、安全を確保するための積極的な考え、技術開発が重要。
不測の健康被害、安全災害への対応は国の責任であるが、規制のみでは限界があるため、普段の経常的研究活動の蓄積が必要。
社会保障に関しては実証的な研究が少なく、科学的な社会保障政策のために大規模コホート研究を含む実証的研究を推進すべき。
その時代に合った研究課題だけでなく、今後どのような健康問題が生じるであろうかという研究にも目が向けられなければならないが、このようなモニタリングを役割を担う組織として統計情報部だけでは不十分であり、厚生労働科学研究のネットワークの中でも行われるべき。
競争的環境に馴染まない研究(「現行の安全性評価を評価する」ための研究など)を支える体制が必要。
申請事務・交付事務の効率化
厚生労働科学研究費を厳密な機関経理と透明性を前提として、文部科学省の研究費なみに使い易くすべき。
年度を繰り越しての使用若しくは年度開始にきわめて近い時期からの執行や、研究期間終了後でも当該研究関係への執行(米国NIH型)、賃金・備品等への使用、裁量的経費の枠外でのオーバーヘッドの支給等を視野に入れて検討すべき。
研究事業管理の在り方(FA)
厚生労働省の政策目標に沿った研究の進捗管理ができる各分野の研究機関が研究費の配分や研究の評価を行うべき。
体制強化
研究に必要な人的資源の確保(例えば推進事業制度の拡充による流動研究員(ポスドク)の確保)が必要。
現在の国立試験研究機関では研究を補助する人員の確保は困難であることから研究補助要員の確保に関してもよりきめ細かい配慮が必要。
第三者評価等の適切な実施は極めて重要であるが、評価に係る事務負担が過大となり、研究の円滑な遂行に支障を来すことがないよう配慮することも必要。
厚生労働科学研究費の適正な執行のために、執行状況を的確に報告することは理解できるが、その報告に係る事務負担が過大となっている面もあるので、研究の円滑な遂行に支障を来すことがないよう配慮が必要。
研究費にフレキシビリティをもたせることが必要。(設備、雇用等の面)。特に国立試験研究機関では、研究経費からの賃金が支出できないため、技術補助者の雇用が予算の範囲内のわずかな額に限られており、研究の強化と効率化のためにも、リサーチ・レジデント及び技術補助者の雇用促進のための支援事業の強化が必要。
現行制度の中で国研での民間からの受託金等は歳入見合いとして存在しているが、裁量的経費の枠内であり、これを拡充すれば他の既定経費を圧縮せざるを得ない状況にあることから、例えば産・官・学共同提案プロジェトを厚生科研費で採択し、それを核に産との共同研究契約のもと国研等への研究資金導入を裁量的経費の枠外で可能とするような制度設計あるいは拡充を考慮すべき。
それぞれの研究機関にはそれぞれ所管事項があり,役割分担が行われているが、多くの研究機関との連携も必要。
設立目的を持った研究機関、ナショナルセンターの本来目的に沿って、研究費の投資を拡大し、より一層の活性化を図り、厚生労働省として国民への貢献を強化すべき。
当該研究機関等が中心になり研究組織を構築し、直面する問題に科学的に対応できるようにするには各研究機関等の人員・予算・施設を含めた更なる強化をすべき。


4.具体的課題等について
概要
国民の関心が極めて高い医薬品等、食品(化学成分及び微生物)、化学物質に起因する健康被害対策の重点化
国民の安全確保の観点から、あらゆる健康被害を想定した日常からの中長期的視野での科学的研究の推進
地方衛生研究所との連携の強化による緊急時対応の迅速化
行政施策に直結する様な感染症サーベイランス機能の強化とその効率的遂行
日本がリーダーシップをとって、米国のCDC的な機能を持ったアジア諸国の研究機関との連携を強化
国際協力については、効率的で迅速な対応のために国際協力機構(JICA)等との関係を整備
実験者とサーベイランス担当者の連携を図る研究体制の強化(特にアウトブレーク対応時には重要)


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