第一 | 総則 |
一 | 目的
この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とするものとすること。 |
二 | 定義
1 | この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいうものとすること。 |
2 | この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち18歳未満のものをいうものとすること。 |
3 | この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいうものとすること。 |
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三 | 国及び地方公共団体の責務
1 | 国及び地方公共団体は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害の早期発見のため必要な措置を講じるものとすること。 |
2 | 国及び地方公共団体は、発達障害児に対し、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、学校における発達支援その他の発達支援が行われるとともに、発達障害者に対する就労、地域における生活等に関する支援及び発達障害者の家族に対する支援が行われるよう、必要な措置を講じるものとすること。 |
3 | 発達障害者の支援等の施策が講じられるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)の意思ができる限り尊重されなければならないものとすること。 |
4 | 国及び地方公共団体は、発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育及び労働に関する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、犯罪等により発達障害者が被害を受けること等を防止するため、これらの部局と消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うものとすること。 |
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四 | 国民の責務
国民は、発達障害者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障害者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならないものとすること。 |
第二 | 児童の発達障害の早期発見及び発達障害者の支援のための施策 |
一 | 児童の発達障害の早期発見等
1 | 市町村は、母子保健法による1歳6か月児健康診査及び3歳児健康診査等を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならないものとすること。 |
2 | 市町村の教育委員会は、学校保健法による就学時の健康診断を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならないものとすること。 |
3 | 市町村は、児童に発達障害の疑いがある場合には、適切に支援を行うため、当該児童についての継続的な相談を行うよう努めるとともに、必要に応じ、当該児童が早期に医学的又は心理学的判定を受けることができるよう、当該児童の保護者に対し、発達障害者支援センター、第三の二により都道府県が確保した医療機関その他の機関(二1において「センター等」という。)を紹介し、又は助言を行うものとすること。 |
4 | 市町村は、1から3までの措置を講じるに当たっては、当該措置の対象となる児童及び保護者の意思を尊重するとともに、必要な配慮をしなければならないものとすること。 |
5 | 都道府県は、市町村の求めに応じ、児童の発達障害の早期発見に関する技術的事項についての指導、助言その他の市町村に対する必要な技術的援助を行うものとすること。 |
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二 | 早期の発達支援
1 | 市町村は、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、その相談に応じ、センター等を紹介し、又は助言を行い、その他適切な措置を講じるものとすること。 |
2 | 一4は、1の措置を講じる場合について準用するものとすること。 |
3 | 都道府県は、発達障害児の早期の発達支援のために必要な体制の整備を行うとともに、発達障害児に対して行われる発達支援の専門性を確保するため必要な措置を講じるものとすること。 |
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三 | 保育
市町村は、保育の実施に当たっては、発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとすること。 |
四 | 教育
1 | 国及び地方公共団体は、発達障害児がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるようにするため、適切な教育的支援、支援体制の整備その他必要な措置を講じるものとすること。 |
2 | 大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとすること。 |
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五 | 放課後児童健全育成事業の利用
市町村は、放課後児童健全育成事業について、発達障害児の利用の機会の確保を図るため、適切な配慮をするものとすること。 |
六 | 就労の支援
1 | 都道府県は、発達障害者の就労を支援するため必要な体制の整備に努めるとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、社会福祉協議会、教育委員会その他の関係機関及び民間団体相互の連携を確保しつつ、発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保に努めなければならないものとすること。 |
2 | 都道府県及び市町村は、必要に応じ、発達障害者が就労のための準備を適切に行えるようにするための支援が学校において行われるよう必要な措置を講じるものとすること。 |
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七 | 地域での生活支援
市町村は、発達障害者が、その希望に応じて、地域において自立した生活を営むことができるようにするため、発達障害者に対し、社会生活への適応のために必要な訓練を受ける機会の確保、共同生活を営むべき住居その他の地域において生活を営むべき住居の確保その他必要な支援に努めなければならないものとすること。 |
八 | 権利擁護
国及び地方公共団体は、発達障害者が、その発達障害のために差別されること等権利利益を害されることがないようにするため、権利擁護のために必要な支援を行うものとすること。 |
九 | 発達障害者の家族への支援
都道府県及び市町村は、発達障害児の保護者が適切な監護をすることができるようにすること等を通じて発達障害者の福祉の増進に寄与するため、児童相談所等関係機関と連携を図りつつ、発達障害者の家族に対し、相談及び助言その他の支援を適切に行うよう努めなければならないものとすること。 |
第三 | 発達障害者支援センター等 |
一 | 発達障害者支援センター等
1 | 都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福祉法人その他の政令で定める法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(以下「発達障害者支援センター」という。)に行わせ、又は自ら行うことができるものとすること。
(1) | 発達障害の早期発見、早期の発達支援等に資するよう、発達障害者及びその家族に対し、専門的に、その相談に応じ、又は助言を行うこと。 |
(2) | 発達障害者に対し、専門的な発達支援及び就労の支援を行うこと。 |
(3) | 医療、保健、福祉、教育等に関する業務((4)において「医療等の業務」という。)を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し発達障害についての情報提供及び研修を行うこと。 |
(4) | 発達障害に関して、医療等の業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を行うこと。 |
(5) | (1)から(4)までに掲げる業務に附帯する業務 |
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2 | 発達障害者支援センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、職務上知ることのできた個人の秘密を漏らしてはならないものとすること。 |
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二 | 専門的な医療機関の確保等
1 | 都道府県は、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければならないものとすること。 |
2 | 国及び地方公共団体は、1の医療機関の相互協力を推進するとともに、1の医療機関に対し、発達障害者の発達支援等に関する情報の提供その他必要な援助を行うものとすること。 |
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第四 | 補則 |
一 | 民間団体への支援
国及び地方公共団体は、発達障害者を支援するために行う民間団体の活動の活性化を図るよう配慮するものとすること。 |
二 | 国民に対する普及及び啓発
国及び地方公共団体は、発達障害に関する国民の理解を深めるため、必要な広報その他の啓発活動を行うものとすること。 |
三 | 医療又は保健の業務に従事する者に対する知識の普及及び啓発
国及び地方公共団体は、医療又は保健の業務に従事する者に対し、発達障害の発見のため必要な知識の普及及び啓発に努めなければならないものとすること。 |
四 | 専門的知識を有する人材の確保等
国及び地方公共団体は、発達障害者に対する支援を適切に行うことができるよう、医療、保健、福祉、教育等に関する業務に従事する職員について、発達障害に関する専門的知識を有する人材を確保するよう努めるとともに、発達障害に対する理解を深め、及び専門性を高めるため研修等必要な措置を講じるものとすること。 |
五 | 調査研究
国は、発達障害者の実態の把握に努めるとともに、発達障害の原因の究明、発達障害の診断及び治療、発達支援の方法等に関する必要な調査研究を行うものとすること。 |
第五 | 施行期日その他 |
一 | この法律は、平成十七年四月一日から施行するものとすること。 |
二 | その他所要の規定を整備すること。 |
一 | 、発達障害の早期発見は、発達障害者に対する早期の発達支援に資するためのものであることに留意し、障害者福祉、医療・保健、保育・教育にかかわる関係者の間における発達障害に関する理解の促進と認識の共有を図ること。 |
二 | 、発達障害児に対する保育及び教育的支援と支援体制の整備に当たっては、発達障害児が障害のない児童・生徒とともに育ち学ぶことを基本としつつ、発達障害児及びその保護者の意思とニーズを最大限尊重すること。 |
三 | 、発達障害者の就労を支援するための体制の整備を進めるに当たっては、障害者の就労の機会の確保に配意し、障害者の雇用の促進等に関する法律について、必要な見直しの検討に速やかに着手すること。 |
四 | 、発達障害者及びその家族に対する相談・助言体制を可及的速やかに拡充し、及び医療・保健、福祉、教育、就労その他の支援を行う専門的人材を早急に育成する必要性にかんがみ、予算措置を含む適切な措置を講じること。 |
五 | 、発達障害者に対する支援の実効性を確保するため、障害者基本計画についての必要な見直しを行うとともに、都道府県及び市町村が策定する障害者計画についても本法の趣旨が生かされるように、必要な助言等を行うこと。 |
六 | 、発達障害者に対する施策の在り方について、医学的知見や介助方法の向上等、国際的な動向等に十分留意し、常に見直しに努めること。 |
七 | 、包括的な障害者福祉法制及び施策の検討に当たっては、障害者の自己決定権及び発達の権利を含む権利・利益の尊重と侵害に対する迅速かつ効果的な救済、経済、社会、文化その他の分野における分け隔てのない参画の促進と自立に向けたきめ細かい支援、障害を理由とするあらゆる差別の排除と差別のない社会の実現を基本的視点として行うこと。 |