04/12/24 第25回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会議事録          厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細移植胞委員会                  第25回 議事録             平成16年12月24日(金)13:00〜15:00               航空会館  201会議室 ○永野補佐  定刻になりましたので、ただいまから第25回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞 移植委員会を開催いたします。  本日は、小達委員、新美委員からご欠席との連絡をいただいております。  また、本日は議事に即し、東海大学の加藤先生、(財)骨髄移植推進財団の堀之内常 務理事に参考人としてご出席いただいております。  次に、資料の確認をさせていただきます。  資料1 日本骨髄バンクの現状  資料2 骨髄ドナープール拡大のために  資料3 骨髄ドナーの適応年齢幅の拡大について  資料4 日本さい帯血バンクネットワーク1000例における移植成績  資料5 平成17年度移植対策関係予算(案)の概要  参考資料として、骨髄提供登録者の確保について(協力依頼)の通知です。  そのほかに机上配付資料がございます。おそろいでしょうか。不備等がございました ら事務局までお申しつけください。  それでは、議事進行を委員長にお願いいたします。 ○齋藤委員長  本日の議事は5つありますが、最初の3つが骨髄バンク事業に関することで、4番が 臍帯血移植の現状について、最後に17年度予算案の内示についてです。  まず初めに議事の(1) 骨髄バンク事業の現状について報告を受けたいと思います。当 事業につきましては、関係者のご尽力の結果、事業は順調に進んでおります。先月、移 植件数6,000例、ドナー登録者数20万人を達成いたしました。この点につきまして堀之 内参考人から説明をお願いいたします。 ○堀之内参考人  骨髄移植推進財団の常務理事の堀之内でございます。簡潔にご説明申し上げたいと存 じます。資料1をご覧ください。  まず1ページ、ドナー登録者数の推移ですが、11月25日に統計上20万人を達成いたし ました。11月17日に移植例数は6,000例を超えました。2004年度は11月末現在の数字で すので、単純にこのまま延ばしますと2004年度は29,000人となり、過去に例のない登録 者数となります。その理由ですが、マスコミの方、特に公共広告機構のPRの効果、夏 目雅子ひまわり基金のご協力によるものもあるのではないかと考えております。  2ページの上段の棒グラフは年齢別ドナー登録者数(男女別)ですが、これは2003年 12月末現在の年齢分布を示しています。30歳代半ばまでは女性のほうが多いのですが、 それ以降は男性のほうが多くなっています。  2ページの下の表は患者登録者数の推移ですが、国内患者と国外患者を分けて数字を 出してみました。国内患者は2000年から1,300人台で横ばい状態ですが、2004年は1,400 人を超えそうです。国外患者は数字の変動がありますが、韓国骨髄バンクとの提携が進 んでからの3年間は国外患者のウエイトが大きくなっています。右端に国外率とありま すが、4人に1人は国外患者という状況です。これは単年度で見ていますが、累積では 11月末で患者登録数は2,732人、うち国内患者が1,501人、55%、国外が1,231人、45% です。海外の患者は登録しているけど、そう頻繁にアクセスがあるわけではありませ ん。  3ページの上は初回検索の適合率ですが、血清型での適合です。一番上の線が国内患 者ですが、初回で92.4%の方が適合するドナーが1人以上見つかります。一番下の点線 が海外患者です。当初はアメリカ系の方の登録があったのですが、韓国との提携が進ん でからは韓国の方が大幅に増えましたので適合率が上がって5割ぐらいになっていま す。現在は海外患者の登録が多いので、全部を足した合計は停滞ぎみになっています。 実数としては適合率がどんどん上がっています。  3ページの下は骨髄バンクの移植例数です。11月17日に6,000例を超えたわけですが、 年度数値に直しますと2004年度は800例を超えるのではないかと予想されます。その理 由は、迅速コースを設定したとか、患者の高齢化が進んだこともあるのかもしれませ ん。  4ページの上は移植患者の疾患別内訳(累計)ですが、急性リンパ性白血病、急性骨 髄性白血病が多くなっています。  4ページの下は国内移植患者の疾患別推移(3カ年)ですが、慢性骨髄性白血病が15 年度、16年度と顕著に減少しています。その他の白血病が15年度で増えています。  5ページの上は国内移植患者の年齢別推移(3カ年)ですが、16〜25歳の方が減少 し、56〜65歳の方は顕著に増加しています。16年度は11月末の数字ですが、高齢者が顕 著に増加していると言えます。  その下は国際協力の状況ですが、大きな傾向として、近年は受入数が減少していま す。15年度は海外からの受入れは5件ですが、これはアメリカです。海外への提供は26 件ですが、うち24件は韓国です。近年、韓国への提供は増えていますが、16年度は少し 減少ぎみです。昔はアメリカから日本にたくさん来ていましたが、最近は減少している 傾向です。  6ページの上は急性骨髄性白血病の病期別生存曲線ですが、第1寛解期の5年生存率 は60%です。横軸は日数ですが、1800日経過後は第1寛解期の方はずっとフラットな状 態にあって生存している。  7ページの下は再生不良性貧血の年代別生存曲線です。0〜9歳では5年生存率は89 %ということで非常に高い。  8ページは認定施設別の累計の移植・採取件数を表にしています。  9ページからは迅速コースコーディネートの中間報告ですが、8月以降、財団では迅 速コースに取り組んでおります。迅速コースというのは、移植を急いでいる患者のニー ズに応えるために一定の管理目標を設定し、ドナーの協力を得て、少しでも早く移植が できるようにするというものです。  8月16日から11月15日までに国内患者登録365人のうち、迅速コースを希望された方 は85人、23%でした。  迅速コースコーディネートを開始したドナーが全部で772人でしたが、健康上の理由 等で中止になったのは51%、標準への変更が9%です。  コーディネートを進めることができたドナーの割合は44%で、そのうち迅速コースの 割合は35%、標準への変更は9%でした。すなわち、コーディネートを進めることがで きたドナーのうち約80%のドナーが迅速コースを応諾しています。  10ページですが、左はコーディネート期間の比較です。迅速コースについては、検索 開始から骨髄採取まで80日という目標値を設定しています。それに対して(2)の迅速コ ースの実績は96日となっています。左半分の送付〜受理までは当初の目標値40日と同じ ですが、右半分の選定〜骨髄採取のところが57日ということで目標値を上回っていま す。  (3)の2003年度実績は136日のうち、右側の数字が71日ですので、これに対して57日と いうのはずいぶん短縮されています。  ということで、迅速コース実績と2003年度実績の比較では40日短縮されましたが、ド ナー選定から骨髄採取までの日数が相対的に長めになっています。  右側の棒グラフは11月末時点で日程が決まった迅速コースドナーのコーディネート期 間です。短い順に上位10事例を並べていますが、(1)は69日、(10)は83日です。  ドナーの適格性判定から選定の期間が短いため、そこで短縮化が進んでいると言えま す。  11ページですが、左のグラフを見ていただきますと、前年と比較してドナーコーディ ネート期間が短縮されていまして、100日以内の件数が増えています。  今後の課題ですが、迅速コース実施にあたり、医療機関や医師の負担が大きくなって います。また、ドナーの負担についても留意する必要があります。  今後骨髄移植を推進する上での課題として、確認検査実施施設や採取施設の受入れ数 の増加がポイントになりますが、医療機関も大変になりますので、今後、いろいろ協議 しなくてはいけないと考えております。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。ただいまの説明に対して、ご質問、ご意見はございません でしょうか。 ○小寺委員  最後の今後の課題のところで、確認検査実施施設と採取施設の負担が大きくなると書 いてありますが、施設の地域別の偏りというのは何か特徴はありますか。 ○堀之内参考人  ドナーの方はお勤めを休んで行かれたりするものですから、近くで便利なほうがいい というご要望があるのですが、我々の認定施設は必ずしもそういうふうになってないと いうことがあります。施設自身を増やすとか、施設の中での受け方、医師の都合とか、 予約が必要ですから、そういう課題意識をもっています。 ○小寺委員  ドナーの供給地域としては首都圏が多いと思うんですね。3分の1ぐらいが首都圏だ と思うんですが、首都圏で確認検査とか採取でご負担願っているところの医師数を増や すことによって、かなり解決されるという見通しはあるのでしょうか。 ○堀之内参考人  8ページに認定施設別の移植・採取件数の一覧表を出していますが、首都圏が圧倒的 に多いんですね。こういう行為をした場合、診療報酬上の評価を高めていただきたいと いう気持ちもあるわけです。医療機関にとって魅力のある医療行為であるという要素も 必要だろうと思いまして、国に要望していきたいと思っています。 ○橋本委員  5ページの国内移植患者の年齢別推移で、若年者層が減ってきた理由はおわかりでし ょうか。  もう一つは、7ページの年代別生存曲線ですが、2003年の生存曲線はよくわかりま す。数年前のデータと比較した時に、どのくらい生存曲線はよくなっているのか。合併 症とか、拒絶反応の阻止とか、そのへんのことが進歩してきた結果がどう出ているの か、そのあたりを教えてください。 ○堀之内参考人  小寺先生にお願いしてよろしいですか。 ○小寺委員  10年以上たっておりますので、年代別の成績も必要かと思いますが、現在はスタート した時点からの生存率で見ています。初期の移植成績は再生不良性貧血において極めて 悪かったということがありますが、その後100例前後の段階で解析をして以降、非常に 成績がよくなって、特に小児においては高い生存率を示すようになったということはあ ります。  最初のご質問については、わからないですね。 ○加藤参考人  全体的な小児人口の減少というのが背景にあります。さらに小児では骨髄移植、臍帯 血移植以外の治療法によって治る患者さんたちの比率が高まっておりまして、移植の需 要そのものが相対的に少しずつ減っています。また、その適応がありながら、以前は受 けられなかった患者さんのかなりの方々が、臍帯血移植によって治療が可能になってき ました。そのような3つの点が相まって非血縁者間の骨髄移植の症例数が若干の減はあ りますが、このままずっと減っていくということでもなかろうと思っています。 ○小澤委員  迅速コースというのは非常にいいシステムだと思います。20%くらいが迅速コースと いうことですが、傾向としてはだんだん増えていくのか。期間の平均値は96日というこ とですが、慣れるにしたがって短くなる傾向があるのかどうか、そのへんを教えていた だけますか。 ○堀之内参考人  現在の段階で統計学的なことはあまりはっきり言えないのですが、特に今は年末年始 にかかっていて、年始に採取したりということもあるんですね。我々は短縮するのが目 標ですので、目標80日に向かって、現在の中央値が96日なので、短縮する方向で努力す るとしか申し上げられません。 ○小澤委員  韓国のバンクのサイズはどのくらいなのでしょうか。 ○加藤参考人  韓国には2つの骨髄バンクがありまして、1つがKMDP、もう1つがカソリック系 のものですが、日本の骨髄バンクはKMDPと提携しています。この2つは半々ぐらい のドナー数と理解しておりますが、具体的な数はすぐには出ません。 ○柴田委員  4ページの移植患者の疾患別推移を見ますと、白血病が減って、悪性リンパ腫、その 他の白血病が増えるような傾向が見えるんですが、今後、そのようになっていくのでし ょうか。 ○小寺委員  急性も含めて白血病が減るということはないと思います。リンパ腫がさらに増えるか というと、これも必ずしもそういうエビデンスはないわけでして、慢性骨髄性白血病が 減り、骨髄異形成症候群の患者さんの対象年齢がだんだん上がっていくにつれて増えて きている。それが特徴であって、それ以外の病気についてはこういう傾向が続くだろう と思っています。慢性白血病が今後もさらに減るかどうかということについては、グリ ベックという薬の歴史が新しいものですから、将来また増えてくる可能性がないわけで はないと思います。 ○加藤参考人  先ほど迅速コースについて小澤委員からご質問がありましたが、10ページの棒グラフ の行程ごとの日数をご覧いただくとおわかりのように、骨髄バンクの中で行われている コーディネートの期間はかなり短縮しています。しかし医療機関のほうでの日程調整等 々が時間がかかっていく可能性があります。したがって、今後、待つ場所がバンクの中 のコーディネートから医療機関での移植の最初の日程調整という方向に移っていきます ので、先ほど小寺委員がおっしゃいましたように、採取ならびに移植の医療機関への積 極的な行政上の様々なサポート、指導が必要になってくると考えます。 ○齋藤委員長  本委員会のテーマの一つは造血幹細胞移植の需給バランスなんですが、そういう点か らいっても、全国の移植医療施設あるいは移植のベッドが十分足りてるかどうかという と、足りないんじゃないかとか偏在しているのではないかというご意見がありますよ ね。そのへんについて、将来、一度議論をしたいと思います。 ○麦島委員  いま加藤先生から採取施設の問題ということがありましたが、現場で一番困るのは麻 酔科医が非常に少なくなってるという現状がありまして、これが大きな問題ではないか と思います。予定手術といえども、それがなかなか動いてないのが実態なので、そのへ んのことも検討していただければありがたいと思っております。 ○小寺委員  現場におりますと、実施する人が足りないというのが現状でありまして、そのために 非常につらい思いをしているところもあります。すべての移植施設の人を増やせという わけではないんですが、財団のほうからご発言があったように、魅力ある医療という か、何かインセンティブがあって、主たる施設において1人でもいいから、こういった ことに携わる人手が増えるということがあると違ってくるのではないかと思います。 ○齋藤委員長  ほぼご意見も出尽くしたようですので、議事の(2) に移ります。骨髄ドナー登録の推 進であります。この問題につきましては第22回の委員会以降、3回ここでご議論いただ いております。事務局において、これまでの議論をまとめ、対応策を検討しております ので、説明をお願いします。 ○永野補佐  資料2に沿って説明いたします。  1ページは「骨髄ドナープール拡大のために」と題しまして、骨髄ドナープール拡大 の観点に配慮し、次の4つの事項について引き続き検討が必要であると考えておりま す。  (1) 骨髄ドナー登録機会の拡大、(2) 骨髄提供意思確認の実施、(3) 地域間格差の解 消及び取り組みの強化、(4) 骨髄提供年齢の拡大です。  このうち(3) 地域間格差の解消及び取り組みの強化につきましては、前回の委員会の 議論を受けて、臓器移植対策室長名で都道府県に対して協力依頼の通知を出していま す。  2ページからは各論ですが、2ページは「骨髄ドナー登録時の要件について」です。 この問題については本委員会で議論をしていただきました。  1.前回10月29日の委員会までに提示された検討事項は次の2点です。  (1) ドナー登録時の体重の下限の要件ですが、男性45kg以上、女性40kg以上につい て、どのように考えるか。  (2) ドナー登録時に家族の同意を不要とした場合、骨髄提供について家族の理解を得 ないでドナー登録が行われ、結果としてコーディネートが非効率になるので、何らかの 工夫が必要ではないかという問題点のご指摘がありました。  4ページの(参考資料1)において、上の表は、1.コーディネート総件数に占める 成立・不成立の割合を示しています。  下の表は、2.時点別コーディネート不成立の割合を示しています。ドナー理由のう ち「家族の同意なし」のところをご覧いただきますと、初期の時点で家族の同意がない ためにコーディネートから脱落する人が多くなっていまして、初期のアンケート用紙な どを送付した時点で4.4%、確認検査前にコーディネーターが連絡した時に1.7%の人が 脱落しているという結果となっています。現在、ドナー登録時に家族の同意を確認して いますが、現在の運用についても不安があるのではないかと考えています。  2ページに戻りまして、2.対処方針です。  (1) 体重要件については、献血の体重下限要件と合致しているのですが、実務上、献 血ルームでドナー登録をしていただくことも多くなっているので、それと合わせておい たほうが混乱が少ないのではないか。また、体重自体は変動しますが、体重要件を登録 時の基準から外したとしても実質的な効果はあまりないことから、現状のままとしてお いてもよいのではないかと考えています。  (2) ドナー登録時に家族の同意が必要という要件はやめるにしても、提供の時には必 ず家族の同意が必要になりますので、提供時には家族の同意が必要だということを繰り 返し広報していく努力をしていきたいと思っています。具体的には、本日配付しており ますバンクニュース、マンスリーレポート、あるいはドナー登録後のドナー登録者に対 する手続きの完了通知などは活用してはいかがかと考えています。  5ページの(参考資料2)ですが、現在の骨髄提供における説明及び同意の取り方に ついて確認させていただきたいと思います。  家族の同意は、ドナー登録時に本人に確認する。また、コーディネート開始時、確認 検査の時に本人に確認する。最終同意面談の時点で家族の代表者に同席いただいて最終 的に確認するという状況になっています。コーディネーターに伺いますと、本人に確認 する時は家族には接触してないんですが、家族の方は何とおっしゃってますかと聞い て、具体的な言葉を聞き出すとか、家族構成を聞いて家族の同意の状況を確認するとい った工夫をしているということでした。  3ページの3.その他のところです。  現行において、ドナー登録希望者は、チャンス(骨髄ドナー登録の説明書)を読んだ 上で登録を行うことになっていますので、チャンスの内容を十分理解していれば、それ 以上に骨髄提供について説明をするとか、説明の代替手段としてビデオを視聴する必要 はないと考えられます。  体重の下限、家族の同意、年齢など登録要件のうちの年齢については後ほどご議論い ただきますが、今年度に登録時の検査方法が変わりますので、その時期と合わせて3月 ごろをめどにして、実務上のパンフレットの改訂などもして、登録要件の改正を行いた いと考えています。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。体重の下限については現状のまま据え置いたらどうか、家 族の同意については登録時には必ずしも必要としないということですが、いかがでしょ うか。 ○石井委員  以前にも申し上げましたが、登録時に家族の同意書を登録した人にお渡しして、その 書面に同意を書いて返送していただくという手続きを経て、コーディネート開始までに 家族との話し合いがなされて同意が得られるような手続きを介在させるほうがスムーズ に進むのではないかと思うので、そのようなことを考えていただきたいと思います。 ○齋藤委員長  5ページの表のように、最終同意面談の時は家族の方にも同席いただいてるわけです が、それ以前は本人を通じての確認だけなんですね。 ○石井委員  今でも初期の段階では家族の同意なしということですから、手間と得られる成果との バランスかもしれませんが、そういう手続きをして、なるべく理解を深めていただくほ うがいいのではないかと思います。 ○小寺委員  今年度中に基本的なところを変更したいということですが、画期的なことかと思いま した。石井委員のことについては技術的な問題だと思うんですが、財団のシステムとも 関係することですし、いいご提案だと思いますので、検討してみたいと思います。 ○青木委員  石井委員のお話は、安易に登録してしまう可能性をどうやって排除するかということ だと思うんですね。登録時に家族の同意を得なければ数だけ増えて実質的な提供者が少 なくなる可能性があるということだと思います。  先ほどから説明を聞いておりますと、今でも最初の登録の時はドナー登録をする人を 通じて家族の意向を聞いてる程度である。石井委員がおっしゃるのは、提供の時にスム ーズに家族が理解し署名できるような形をとっておけば、最初の段階で家族の同意書を とる必要はないのではないか。手続き問題だと思いますので、最初から家族の同意書を とる必要はないのではないかというのが私の意見です。  体重については、献血は男性45kg以上、女性40kg以上ですが、献血の場合は最低の採 取量が決まっていて、200ml の全血をとる場合はこうであるということです。骨髄提供 の場合は患者さんの体重によって骨髄採取は少ない量ですむという提供の仕方はあるん でしょうか。35kgの人でも採取できるような対象患者がいるとすれば、40kgで切ること もないだろう。  何センチの身長で何キロぐらいが平均だけど、その1.5倍ぐらい重い人もいるかもし れない。筋肉ばかり重くて、造血細胞の量と体重が比例してるのかどうか、そのへんが わかりませんので、教えていただければと思います。 ○齋藤委員長  骨髄採取マニュアルで全国同じようにとってるわけで、相手が子どもだからといって 量を加減するというのは難しいと思いますが、加藤先生、いかがですか。 ○加藤参考人  患者さん側の体重が一つの基本になります。体重20Kgの子どもの場合は300cc ぐらい の採取量ですんでおります。採取には30分もかからずに、麻酔の導入と覚醒の時間のほ うが長い場合も中にはあるわけです。兄弟間で移植を行う場合、ドナーが20kg、30kgと いうのは子どもの場合はありますから、そういう場合は体重の下限をもう少し下げても 問題ないんですが、成人の男性、女性の中で極端にやせてる方をドナーにすることは何 の問題はないかとなると、これは別問題として考えなくてはいけないと思います。  理想体重というのは我々は常日ごろ問題にするわけですが、ある身長に対して治療そ の他の理由で太ってしまっておられる方に対して、その体重を基準として採取量が決め られるかというと、理想体重に修正をして少なくするという考え方をもっている人たち もおります。ややこしくなるので、実務的には現実体重をもとに作業が進められていま す。 ○齋藤委員長  血縁者間の移植では体重も含めて、ある程度のリスクがあってもやるわけですが、非 血縁者間ではドナーの方の安全第一となると、統一の基準というのは難しいような気が しますね。 ○掛江委員  家族の同意の問題ですが、成人で同意能力のある方が自発的な同意に基づいて骨髄提 供される場合は家族の意思確認を求めないという原則であれば、あらかじめ同意を求め る必要はないと思います。ただし財団としては、もしもの事故などいろんなことを考え て、最終的に家族の同意を得る形で進めたいという方針でおられると理解しました。そ の場合、家族の同意が最終段階で得られないことによってコーディネートが流れてしま う、つまりレシピエントの生命が危険にさらされるという事態が生じることは避けなけ ればならないので、その意味では事前に本人が家族の署名を得ておくという手続きを必 ず経るシステムにすることによって、家族との話し合いを必ずしておいてもらうという 石井委員のご提案に賛成したいと思います。 ○齋藤委員長  途中の段階で家族の同意を確認することは可能なんですが、登録時に必要かどうかと いうことを問題にしているわけです。 ○掛江委員  どの時点で家族の気持ちを確認しているかというと、担当するコーディネーターのお 話の仕方によっても違うでしょうし、いろいろだと思うんですが、現行のシステムでは 最終面談の時になってますよね。もっと早い段階で家族も賛成しているような登録者を 増やす方向で考えたほうがいいのかなと思ったんです。負担とリスク回避という利益と のバランスではあると思いますが。 ○小寺委員  石井委員に確認ですが、石井委員のお話は、登録要件とはしないというのはいいわけ ですよね。本人から同意を得るまでの期間を使って書面でいただくといいというご提案 ですか。 ○掛江委員  コーディネートが開始されるまでに同意書をいただいておいたら安心ではないかとい うご提案だったんですよね。つまり、コーディネート開始要件と。そういう意味で、私 もそれには賛成です。 ○加藤参考人  コーディネートが開始されるまでにというのは実務上ではどういうことかと申します と、車の仮免許みたいなものかもしれませんが、家族の同意書が返送されるまではどう いう位置づけなのかというと、コーディネート過程で検索のリストに載らない可能性が あると思うんですね。その方は、まだ同意がないんですから。家族同意というのは取り 消し条件的に見るのか、ないしは発効条件的に見るのかわからないんですが、現在のシ ステムよりは厳しくなることは事実ですね。現在よりも絞り込みが厳しくなるという印 象を受けます。 ○小寺委員  コーディネートを開始し、確認検査をし、いろんな段階で我々は家族の同意が必要で あると説明してるんです。骨髄提供の要件であり、同意を得てくださいということはや ってるんです。石井委員のご意見は、同意書がなくてもコーディネートを開始しても構 わないというふうに受け取ったんですが、そうではないんですか。 ○石井委員  絶対にやってはいけないかといわれると判断に迷うんですけど、同意書がそろった人 からコーディネートを行うという手続きが望ましいと思うんです。できればコーディネ ート開始要件にしたいんですけど、そうすると今ある登録数が半減してしまうとか、そ ういうことになってしまったら困るだろうと思うので、絶対条件にしていいかといわれ ると、すぐに返事がしにくいんですが、本来はコーディネート開始要件にしたいと思い ます。 ○小寺委員  コーディネートというのは家族同意がありますかとか、そういうことを含めて、いろ んなことを説明しながらやっていくわけですね。何度も繰り返し説明しているので、そ ういう過程を経て、最終的に同意をとる少し前に、家族の同意が書面であるというシス テムを一つ加えるということだったらコーディネートに影響はないと思うんですが、コ ーディネート開始要件ということになると、コーディネート期間を短くしていくことに とっては障害になるのではないかと思います。 ○掛江委員  現在のシステムでも最終同意面接の時に家族の同意をいただくことが提供要件になっ てるわけですよね。提供要件になっていることをコーディネート要件にするというのは 少し早い段階にもってくるということで、トータルで見てレシピエントのためのコーデ ィネートを遅らせることにつながるとは思わないのですが、いかがでしょうか。。 ○齋藤委員長  資料2の4ページの下の表で先ほど永野さんから説明があった不成立になったドナー 理由の家族の「同意なし」というところをご覧いただくと、初期が4.4%、確認検査前 は1.7%あるんですが、それ以後は非常に少ないんですね。現状でもこのくらいあると いう見方もあるし、このくらいしかないという見方もあるんですが、いま議論している のは、登録時の要件を外しても大勢には影響ないだろう。今日、新しい提案として、面 談をして最終同意をいただく前に文書で同意書をとったらどうかというご意見が出て、 今後、財団で検討してもらいますが、今日、コンセンサスを得たいのは、登録要件とし て絶対に必要かどうかという点なんですね。 ○掛江委員  登録要件として必要であるという意見は申し上げてなくて、できればコーディネート 開始要件に入れていただきたい。さらに必ずそれがないとコーディネートを開始する人 のリストに載せるべきではないほど強い意見ではなくて、始める時点までに家族の同意 を得るような署名欄の入った資料のやりとりをして、事前に家族との話し合いを持ちか けるような機会をつくるとか、何か工夫ができるとより良いのではないのかという意味 です。 ○齋藤委員長  わかりました、それは今後、財団で検討していただくとして、登録時の要件として家 族の同意が必要というのを緩和して、3月から、他の要件の変更と併せて実施するとい うことでよろしいでしょうか。ありがとうございました。  それでは次に議事の(3) 骨髄提供適応年齢の拡大について議論したいと思います。こ の問題についても前回の委員会においてディスカッションしていただきまして、上限に ついては安全性に関して50歳以下と51歳以上とを比較して評価する必要があるというご 意見がありました。下限年齢については石井委員から諸外国における骨髄提供可能年齢 と成人年齢とを比較すべきというご意見をいただきました。事務局において資料をまと めていますので、説明をお願いします。 ○斎藤主査  資料3に基づいてご説明申し上げます。  まず1.論点の確認ですが、移植の成立率向上のためにドナー母数の増大が必要であ る。そのための方策の一つとして提供年齢幅の拡大があるということです。  本件に対する骨髄移植推進財団の方針を7ページにつけております。この中では登録 年齢の下限を18歳、提供年齢の下限を20歳、登録年齢の上限を50歳、提供年齢の下限を 55歳という方針となっていますが、実施にあたりましては本委員会の決定が前提となっ ています。  1ページに戻りまして、2.提供年齢の引き上げに関して前回もお示ししましたが、 以下のような意見が出ておりまして、上限の引き上げについては意見が分かれていま す。これらの意見について論点を整理しますと、主に3つに分かれます。1つ目がドナ ーの安全性確保、2つ目が移植の効果の確保、3つ目がコーディネート実施の効率性確 保という点です。  このうち2つ目の移植の効果の確保という問題についてですが、ドナーの年齢上昇と 移植成績の低下の間には弱い相関があるということは前回の委員会でもご確認いただき ました。しかしながら、提供上限年齢の引き上げにより、実際に提供に至るドナー全体 の年齢の上昇にただちにつながるということは予想しにくく、むしろ提供上限年齢の引 き上げによって適合するドナーの母数が増加する可能性のほうを重視するほうが合理的 であると考えられます。  3つ目のコーディネート過程の効率性確保という問題についても同様の考え方であり まして、引き上げに伴ってコーディネート業務全体が非効率化するという事態は考えに くく、この問題もドナー母数の増加という利点を重視した上で、コーディネート過程に おいて必要と考えられる措置を講ずることで対応可能と考えられます。  以上のことから、この問題については、1つ目のドナーの安全性確保について明らか にすることが先決であり、本委員会としてはこの点について説明可能な根拠に基づき方 針を決定する必要があると考えられます。  これまでも血縁者間骨髄移植におけるデータを収集して検討したらどうかという意見 が出されておりました。事務局では、献血における供血者の年齢制限の決定過程などに ついて調べましたが、例えば試行的に新たな基準を何名かの方に運用して実際の影響を 評価するという過程を経て決定しているということでしたので、本件について具体的な 調査を行うことによりこの問題に対処していきたいと考えています。  具体的には2ページで(今後の対応)という形でお示ししています。血縁者間骨髄移 植におけるこれまでの骨髄採取症例について調査を行い、その中で非血縁者間ドナーで の適格性判定基準及び採取基準にしたがって実施された事例について、年齢による安全 性に変化があるかを調査します。  「非血縁者間ドナーの基準に照らして適格であった」というのは、血縁者間骨髄移植 では統一された基準に基づいて骨髄採取が行われているわけではありませんので、この 点についてドナーの前提条件を統一して調査を行う必要があるということです。  これによって現行の適格性判定基準で適格とされた51歳以上のドナーの安全性は50歳 以下のドナーと比較して同程度かどうかということについて検討したいと考えていま す。  この調査については、厚生労働科学研究において東海大学の加藤俊一先生を主任研究 者として日本造血細胞移植学会の協力をいただいて実施していただき、結果については 来年度の前半に報告いただく予定としております。  3.登録年齢・提供年齢の下限の引き下げについてですが、これまでに以下のような 意見が出ています。論点としては、本人の判断能力と年齢の関係、また登録年齢と提供 年齢の下限を別に設定するかといった問題がありますが、本件については事務局より別 紙にてご説明いたします。 ○永野補佐  3ページ以降になりますが、骨髄提供年齢及び骨髄ドナー登録年齢の下限の引き下げ についてご説明いたします。  前回、宿題として骨髄提供可能年齢と成人年齢が諸外国でどういう状況になっている かということを調べておくようにということでしたので、私どもか調べたことを6ペー ジに掲載しています。  欧米では成人年齢は18歳、骨髄登録・提供年齢の下限も18歳からとなっています。韓 国では成人年齢は19歳、骨髄登録・提供年齢の下限は18歳です。欧米では成人年齢と登 録・提供の年齢が合っている、韓国では成人年齢よりも低い段階で登録・提供を行って いるという状況となっています。  3ページに戻りまして、1.論点ですが、次の3点を検討する必要があろうかと思い ます。  (1)未成年者であっても、骨髄提供やドナー登録に必要とされる判断能力を有してい るか。  (2)未成年者であっても、単独で、あるいは親権者の同意を得て骨髄提供やドナー登 録を行うことができるか。  未成年者が提供や登録を行う場合は自発的な行為ですので、親の同意というのは法律 的な意味で補完的に行われるということになろうかと思います。  (3)骨髄提供年齢の下限はそのままで、ドナー登録年齢のみ引き下げた場合、骨髄提 供をすることができない登録者が増えるだけであり、その効果はあるのか。  2.検討のポイントです。  上記(1)未成年者の判断能力については、自分の健康・身体についての判断を何歳か ら行うことができるかという点について明確な議論はないが、骨髄提供・ドナー登録に 関する諸外国の状況や、献血基準などを考慮して、18歳に引き下げることは可能ではな いか。  献血基準では、200ml 献血は16歳以上、400ml 献血と成分献血は18歳以上となってい ます。死後の臓器提供の判断や遺言能力は15歳以上の者については可能となっていま す。  上記(2)未成年者の法的な同意能力の点です。  ・骨髄提供は侵襲性の高い医療行為であり、諸外国の状況も考慮すると、単独で法律 行為を行うことができる成人年齢に達していることが望ましいのではないか。  ・また、ドナー登録は、将来の骨髄提供の意思表示であり、登録しただけでは提供に 至らず、その後、適合者に対するコーディネートの開始に当たっての意思確認や、確認 検査時及び最終検査時の意思確認を経てから骨髄提供となる。その期間が2年ぐらいか かりますので、ドナー登録については18歳からとし、骨髄提供については、登録年齢の 引き下げの状況を踏まえて、再度検討してはどうか。  上記(3)ドナー登録年齢のみを引き下げた場合についてです。  ・ドナー登録からドナーの確定まで平均2年以上かかっていることから、提供に至る までの準備期間と捉えることができ、20歳以降、速やかにコーディネートを開始するこ とができるので、効果が認められるのではないか。  ・大学等においてドナーの募集説明会を行う時など、成人の人は登録できるが、成人 に達していない人は登録できないということはなく、すべての人が登録対象年齢とな り、効果的に普及啓発を行うことができるのではないかと考えております。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。今までの議論を整理していただきましたが、いかがでしょ うか。 ○石井委員  登録から提供までには時間があるから、提供の時に年齢に達していればいいのではな いかということで、仮登録制みたいなことが前回出ました。仮登録ということは考えら れるとは思いますが、今の考えですと仮登録ではなくて、登録は18歳で、コーディネー ト開始は20歳にするということですよね。コーディネートのところで家族の同意を要件 とすることは問題だという話をしていたのに、そこで二段階論をとるということは果た して適当なのかということが1点あります。  年齢引き上げについて前から課題として議論してきたと思うんですが、年齢引き下げ については2回ぐらい前から話題になって、十分に考えられた上の問題ではないのでは ないかということが1点あると思うんですね。それにしては年齢の問題は大きいと思う んです。  ここでは献血は18歳からと書いてありますが、骨髄移植というのは重大な侵襲を伴う 行為で、全身麻酔をして行う。その危険性をどこまで評価するかということは別として も、自分のために全身麻酔をして治療を受けるとしたら、それを未成年者に本人の同意 で受けさせることができるかと考えた場合、本人のための治療であってもちゅうちょす るだろうと思うんですね。本人の意思だけでできるということは。  そのくらい重大なことだとすれば、簡単に18歳に引き下げるという結論を出せないの ではないか。ここで結論を出すことには慎重であるべきだと思います。諸外国を見ても 成人年齢ということは、社会一般の基本的な事柄について自己決定できる年齢として考 えている、その年齢を提供年齢としている。登録というのは提供するという意思を表明 する行為であり、提供年齢ではないからいいというふうに簡単に区別することはできな いのではないかと思います。  仮登録として、20歳になったら提供してもいいという考えを持っていた人にアプロー チして登録を求める、そういう形の手続きを考えるのでしたら私は賛成したいと思いま す。 ○齋藤委員長  おっしゃることはわかりますが、ここでは登録と提供は別だという視点からいってる わけでして、ドナーのリクルートのための説明の時に、18歳の人もいれば20歳以上の人 もいるグループに対して説明しにくい。そのへんのところから出てきてると思うんで す。 ○青木委員  18歳から登録というのは私の提案だったと思うんです。20歳から登録を受け付けるけ ど、準備期間で2年ぐらいかかる。ということは実質22歳からの採取ですから、若い人 たちに真剣に考えていただいて申し込みをしていただく。それが可能であれば20歳から 採取ができるからという単純な考えだったんですね。仮登録とするか登録とするかとい う部分はもうちょっと議論してもいいと思うんですが、採取は20歳というのが基本であ る。18歳から採取ということになれば医学的な見地からの議論も必要だと思います。  財団でも採取は20歳からということで、18歳から登録できる。これは大学生の年齢で すから、無駄なく、より若い人たちにアピールできる。そのへんは皆さん異論はないと 思うんですが、心配であれば、20歳までは仮登録でもいいと思うんですけどね。 ○齋藤委員長  ドナープールの中で年齢というのは常についてるデータであって、そのグループは仮 登録になってる。名前をつけるつけないにかかわらず、実際にそうなると思うんです ね。 ○掛江委員  確認なんですけど、登録による身体的侵襲というのは採血ですよね。それについては 献血で従来やっているということで、許容できるのではないか。登録自体の侵襲に関し ては小さいものであるので、18歳であっても登録することの意味とそれに伴う採血のリ スクについて判断できるだろうということで、登録するというのは可能ではないかと思 いますが、石井委員が矛盾を感じられるというのもわかります。  年齢の引き下げについて、社会における個人の権利と義務のバランスを考えますと成 人年齢を一つの基準にするということに強く反対するつもりはないんですけど、18歳と 20歳では判断能力にどれほど違いがあるのかということで個人的には疑問が残ります。 18歳以上の未成年者が自発的に骨髄提供を希望して、保護者がその意思を尊重して理解 を示した場合、それを許容することが我々の社会にどのような不利益を誰にもたらすの かという点でちょっと疑問があると申しますか、よくわからない部分がございます。い ずれにしろ、この点について我が国できちんとした研究も議論もされてないと思います し、この委員会での検討も十分されてないと思いますので、いま強引に引き下げるとい うのではなくて、今後も引き続きどこかで検討していただければと思います。 ○石井委員  掛江委員は登録の時の侵襲は採血だけだとおっしゃいましたけど、登録の意味は採血 ではなくて、重大な侵襲を伴うことを決断する意思決定ですので、採血だけだからいい だろうとは言えないだろうと思います。  もう一つは、引き上げのほうは、50歳から55歳になることによって、50歳で登録でき なきなくなった人が、なお5年間は登録できるという形で拡大するはずですが、引き下 げるほうは、2年待てば、その人は本来ならば登録できるわけですよね。なぜ2年間待 てないのかと考えると、必ずしも引き下げなくてもいいはずである。 ○齋藤委員長  移植を待っておられる患者さんにとっては早いほうがいいわけで、2年前に登録して おけば、20歳になってから登録していただくよりも、そのグループがドナーになる可能 性は高いわけです。そこから出てきたプラクティカルな考えだと思います。諸外国は成 人年齢が18歳なのに日本は20歳というのは法律で決まってるんでしょうけど、やや矛盾 があるような気もしますね。 ○掛江委員  登録は採血だけと私が申し上げた点について石井委員が指摘されたのはごもっとも で、その後に生命にかかわるようなドネーションという行為に関する重大な決定がある わけです。未成年の人たちが生命に関する重大な決定を冷静にきちんとできるかどうか については、できる場合であっても公的に保護者の同意契約に基づいて医療が行われて いるという実情も理解しております。しかし18歳の未成年時の同意だけでは提供できな いわけですし、このような限定のある状況下で重大な決定を含みもつ登録の意思決定を 18歳の未成年者がすることについて問題があるとは私は感じなかった。説明が足りなく て申し訳なかったと思いますが。 ○石井委員  そういうこともきちんとこの場に出てきて議論した上で引き下げるのならいいんです が、そういうことも何もここで議論しないで、2年後だからいいだろうという形で引き 下げてしまうことに私は疑問を感じるのが第一です。 ○齋藤委員長  議論がまだ足りないのではないかということを指摘されてると思うんですが、いかが でしょうか。 ○青木委員  引き下げると考えるからややこしいわけで、私は登録の開始を2年早めるという考え 方です。登録の開始を18歳にして、それだけ侵襲性の重いものを18歳で決断できるかど うか、決断させていいかどうかということですけど、意思を表示させるというだけの話 であって、実際に提供するのは20歳からで、その時点で最終的にドナーが決断するわけ です。準備期間が2年かかるので、20歳で登録すれば22歳にならないと提供できないの を18歳で登録させて、判断能力のできた20歳でコーディネートを開始して同意をすると いうことであれば問題ないのではないかと思うんですけどね。 ○西川委員  18歳では権利が与えられてないからドナーになれないというのは判断力の問題だと思 います。これはあくまでもドネーションの問題であって、権利・義務関係の問題で考え ることはないだろう。判断能力があるかどうかというのは極めて重要な問題だと思うん ですが、石井委員がおっしゃるように今後議論をしていく場合、何を議論したらいいの か。18歳のうちどのくらいの人たちが判断能力がないのか。18歳全般の判断能力を明確 した上で議論しないと、結局は何も議論しないのと同じことになると思うんですね。  今の世の中の状況を考えると多様な方がおられて、身体的にもそうだし精神的にもそ うだろうと思うんですね。こういうものは自らドネーションしたいという意思を重要に 思って受け止めていき、財団を含めて責任をとっていくということが本来のあり方だろ うと思います。18歳でも提供したい、なおかつ判断能力があって身体的に支障がないと 判断できる人はドナーとしての意思を発揮させてあげたい、それができるような国にす るというのが一番正しいあり方だと思います。  石井委員が議論が必要だとおっしゃるのは、18歳全般の判断能力を議論したらいいの か、あるいは権利・義務関係に基づいて議論をしたらいいのか、何を議論したらいいの か教えていただきたいと思います。 ○石井委員  先ほど年齢引き上げに関して、安全性については調査するとおっしゃいましたね。血 縁者間の場合は未成年者でも行ってるわけですね。緊急の場合、身近な人がいるから、 みんな喜んでドネートしてると思うんですが、そういう時に、年齢によってどの程度、 物事がわかっているかという調査はしようと思えばできるはずですよね。この場合も、 年齢によってどの程度のことが理解できていて、どう考えたのかということなどを調査 しようと思えばできるはずです。抽象的に18歳がどうかというのではなくて、やる気に なれば調査はできると思うんです。  18歳全般の能力を明確にする必要があると西川先生はおっしゃいましたけど、個別に できないからこそ一律に推定して、ある年齢になれば大丈夫だというのを法律で決めて るわけで、我が国では今までのところ20歳を成人年齢としているわけです。それを前提 に社会が動いてますから、そこを変えることについては、それで大丈夫なんだというこ とを十分理解していることが必要ではないかと思います。 ○西川委員  身体的な問題については資料を集めるのはそれほど難しいことではないですし、韓国 では同じ体格で、いろんな経験があると思いますから、十分出てくると思うんですね。 骨髄移植だけでなく他の臓器でも大事なのは、ドネーションという行為をどう考えるか だと思うんすね。そこでコーディネーターの役割が重要になってくると思うんですが、 コーディネーターはマニュアルどおりにこなしていくのではないと考えれば、待とうと いう決断は自由意思によるものであるのかとか、家族が強烈に反対しているのに本人の 意思だけが尊重されるとか、そういう問題を議論しなくてはいけない。本当に上げたい というのは一人一人の特殊な気持ちなのかもしれませんが、そういうものをちゃんと処 理できるような仕組みをどうしたら作れるのかという方向で議論していただきたいし、 私たちも考えていきたいと思います。 ○齋藤委員長  下限についていろいろなご意見がありましたので、未成年者の判断能力を含めて下限 については事務局に整理していただくということでよろしいでしょうか。 ○小澤委員  登録と採取の間に2年間のギャップがあるということについては、従来、トナー確定 までに平均2年以上かかってるからいいだろうという議論ですけど、HLAが合ってド ナー候補になるまでの期間にばらつきがあって、コーディネーションの期間はどんどん 短縮したいということなんですね。仮に18歳でドナー登録をして、2年間は実際の登録 はできませんよという仮免許みたいな人たちが多くなって、18歳くらいでHLAが合っ てドナー候補になるような人がいた場合、かえって混乱するのではないかなという気は するんですね。2年という言葉がトリッキーに使われてるような感じがするんですけ ど。 ○片岡室長  提供に関してはいろいろご議論があろうかと思いますので、再度、事務局で整理した いと思いますが、登録に関しても整理したほうがよろしいでしょうか。 ○石井委員  2年間というのは本当に2年間なのかということも考えますと、実際は登録に載って るけど提供できない人の数を増やすことの意味がどれだけあるかということも含めて考 える必要があると思います。 ○片岡室長  登録だけしておくというのは実際は検索対象になりませんので、仮登録という形にな ります。実際にヒットした場合、改めて本人の意思確認をしますし、対面して健康リス クなども理解しているかということを確認しています。 ○齋藤委員長  提供をスピードアップするために仮登録のグループを作ろうということだと思うんで すが、それでも難しいですか。 ○小澤委員  コーディネーションには入らないんですよね。 ○掛江委員  小澤委員が心配されてるのは管理の部分であると考えますので、その点については、 リストを完全に分けていただくことによって技術的に対応できるのかなと思います。コ ーディネーションを開始する時に確実に本人の意思が確認される。その時というのは20 歳以降であるということを考えると、18歳からの仮登録という制度を試行的に動かすと いうのは可能ではないかと思うんですが、いかがなものでしょうか。 ○石井委員  検索のリストに載らないということですか。 ○齋藤委員長  載らないわけですね。 ○堀之内参考人  はい。これはコーディネート過程には載りませんよね。今のルールでは提供は20歳で す。ですから登録要件を下げたらどうかといってるのであって、提供はあくまでも20歳 以降ですから、別のグループに入っていて、最初からあがってこない。20歳を過ぎたら 一斉に検索対象にあがってくるということになろうと思います。 ○齋藤委員長  登録要件の緩和を本委員会としてお認めいただいたいと思います。  それでは議事の(4) 臍帯血移植の現状について、加藤先生に報告していただきたいと 思います。バンクネットワークの設立から5年ですが、最近は年間700件と骨髄移植と 同じペースになっています。 ○加藤参考人  昨年12月に同様の報告をいたしましたが、1年たちましたので、最新の資料に基づい てご報告申し上げます。資料4をご覧ください。  これまでに2,000例を超える非血縁者間の臍帯血移植が実施されていますが、本日は データが確定できました1,300例ほどの患者さんの結果についてご報告いたします。  ○ 現在、11バンクによってネットワークが構成されていまして、公開臍帯血は 20,000件を超え、非血縁者間臍帯値移植は2,000例という実績をあげています。  ○ 我が国における非血縁者間の骨髄移植(黄色の棒グラフ)、臍帯血移植(赤の棒 グラフ)の年ごとの推移です。本年はほぼ同数になっていますが、骨髄バンクの数が多 くなる傾向にありますので、今後、ほぼ同数で推移するのではないかと推測されます。  ○ 臍帯血移植を受けた患者のうち、黄色の小児患者、赤の成人患者では強いコント ラストがあることにお気づきになると思います。先行して行われた小児における臍帯血 移植は評価も一定してきましたので、年間の移植実施数は100件前後で推移しています。 一方、当初は対象になりにくいと考えられていた成人患者に対する移植は、この2年、 爆発的に増加してきました。これには様々な要因がありますが、最近の2年間は80%が 成人患者で占められています。  ○ まず小児についてご報告いたします。非血縁者間臍帯血移植を受けた460名の小 児患者の疾患別構成ですが、白血病等々の血液の腫瘍以外に先天的な免疫不全、代謝異 常など小児独特の疾患が対象になります。  ○ 移植をした患者の体重1kg当たりについて、保存時の有核細胞数と、造血幹細胞 のマーカーとされるCD34陽性細胞数がどのくらいあるかを見たものです。白血球の好 中球の回復を見ますと、有核細胞数でも差は若干あるのですが、CD34の細胞数になる と顕著な差が出ます。今後、私たちが臍帯血の品質を見ていく際に、こちらのほうがよ り重要視されるだろうと思います。  ○ これは血小板の回復ですが、同様の傾向が見られます。  ○ 急性GVHDがHLAの適合度と関連するかということですが、従来から諸外国 でも我が国でも関連はないとされていました。若干の差はあるんですが、統計学的に見 て有意な差はないということになります。  ○ 慢性GVHDになると6/6マッチの人には全く発症していませんので、何らか の影響がある可能性はあります。  ○ 移植関連毒性による死亡、つまり治療によって死に至った患者さんですが、移植 時の病気、ステージ、進行度がスタンダートという早期の状態と進行期の患者では抱え ている諸臓器の機能、ダメージが違いますので、このような差が出てきます。一方、H LAの適合度については全く相関が見られません。  ○ 白血病の再発ですが、リスクの高い患者ほど高く再発しています。  右側はHLA適合度のグラフですが、HLAの適合度が高い6/6という小児患者で 最も再発率が高いという結果が出ています。ここ1〜2年、コンスタントにこの傾向は 変わりませんので、何らかの事実があるのではないかと思います。  ○ 移植後の無イベント生存率、つまり移植した臍帯血が生着して、原病が再発せず に生存中という患者ですが、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病ともに小児におい てはほとんど同じ生存率です。  ○ 移植後の無イベント生存率を移植細胞数とCD34で見ますと、当初から細胞数は 重要だといってきたわけですが、CD34のほうがその差がより明確に出ています。  ○ 移植後の無イベント生存率を移植時の疾患の状態で見ますと、スタンダードリス クのほうが上回っています。先ほどのHLA適合度と再発の裏返しになりますが、6/ 6の人たちが一番下にきています。どういう原因なのか、慎重に解析をしなければいけ ないと思っています。  ○ 移植後の無イベント生存率を移植時の病期別に見たものですが、急性リンパ性白 血病、急性骨髄性白血病ともに病期の早い時期に移植をした人のほうがよいということ がわかります。  ○ 以上、小児期白血病非血縁者間臍帯血移植における移植結果に及ぼす諸因子の多 変量解析、つまり一つ一つの因子が相互に関係するものを除外するというステップを踏 んで、最終的に最も重要な因子は何かということを見た解析です。  1.好中球の生着については、移植時のリスク、CD34の細胞数。  2.血小板についても同様です。1では有核細胞数が多変量解析では落ちましたが、 2では残りました。  3.治療関連毒性による死亡については、リスクだけが有意です。  4.再発についてもリスクだけです。  5.無イベント生存率については、リスク及びCD34の細胞数。  この1年間で明らかになってきたことは、従来、私たちが移植数と言っていたもの が、その中のCD34の重要性がさらに増してきたということが言えるかと思います。  ○ 次は成人についての話になります。冒頭に申し上げましたが、小児と成人とでは 同じ臍帯血移植でかなり違うということを確認しておきたいと思います。  このグラフは2000年以前から2004年までに成人における非血縁者間臍帯血移植のう ち、今回の調査票で解析できた患者さんたちです。そのうち、棒グラフの下の藤色の部 分はFullという移植で、通常の骨髄破壊的前処置をした患者さんたちです。その上のエ ンジ色のほうはミニ移植と呼ばれる移植を受けた患者さんたちです。  ○ Full移植を受けた患者とミニ移植を受けた患者の疾患の構成です。似ている部分 もありますが、大きな違いは、Fullのほうは若い患者さんたち、ミニのほうは高齢の患 者さんたちが大多数を占めるということです。  ○ FullとミニでHLAの適合度を見ますと、HLAの血清学的なレベル、DNAの レベル、GVHの方向と拒絶方向ということで合計4通りの適合度がありまして、それ をグラフに示していますが、最も多くの患者さんたちは4/6、2抗原ミスマッチの状 態で移植を受けているということです。  ○ 無イベント生存率を、以前に移植歴がある患者さんと、この移植が初めての移植 であるという患者さんと比較しますと、ともにそれほど高くありませんが、移植歴のあ る方々は非常に不利な中で行われている。なおかつミニ移植の患者さんたちの中には移 植歴のある方々がかなり含まれています。  ○ 初回移植の患者さんたちの生着率を見ますと、Fullの前処置を受けた方とミニの 前処置を受けた方では、Fullの移植のほうが高い傾向が出ています。  ○ 無イベント生存率、治療関連の死亡、全体の生存率、再発率を見ますと、Full移 植の人たちのほうがいいのですが、これは年齢の若い人たちがいいということを見てい るのかもしれません。  ○ 好中球生着を細胞数で見ていきますと、細胞数の多い患者さんのほうが生着が早 い。ここでもCD34が有意になっています。  ○ 最も重症のIII度以上の急性GVHDが発症している患者さんたちをいくつかの 条件で見ますと、GVHDの予防にメトトレキサートというものが入っている人は少な い。細胞数によって差が出ています。  HLAの一致度を見ますと、これはDNAのハイレゾリューションというところで見 た数字で、ここでも不思議な現象があるんですが、解析が十分でありませんので、この ような結果であったということにとどめておきます。  ○ ABOの血液型はこれまで私たちはあまり重要視しておりませんでしたが、メジ ャーのミスマッチ、つまり入っていく臍帯血のほうが患者さんの抗体で排除される可能 性が何かあるのかもしれないという結果を示す生存曲線です。  患者さんの年齢は、若い患者さんほどいいという結果です。  ○ リスクは、先ほど来述べているとおりです。  ○ GVHDがIII度以上になった方は、そのために生命に問題がありますので生存 率が下がっています。  急性GVHDをグレードで細かく分けますと、0度の人が一番いいわけではなく、I 度、弱い程度に起こって、治療を必要とせずに収まった方々が、最近の我が国における すべての解析において一番いいという結果が出ています。臍帯血移植においても治療と してステロイドホルモンを投与せざるをえなかった方々は、そのことによって感染症が 増えるという結果になりますので、わずかながらGVHDが起こった人たちが生存がい いという結果です。  ○ 治療関連毒性ですが、年齢が若いほど少ない。先ほど申しましたように、GVH D予防の中にメトトレキサートが入っている人のほうが少ないということです。  ○ 再発についてもハイリスクの人たちのほうが、より再発しています。  ○ 成人の急性リンパ性白血病において、無イベント生存率、治療関連毒性、再発、 いずれも小児と全く同じ傾向です。  ○ AMLにおいても同じです。  ○ 骨髄異形成症候群については、この解析ではスタンダードリスク、ハイリスクと いう分け方は不適切かもしれませんので、別の解析において、MDSの中のRAという タイプは良い生存をしていますが、それ以外の方々は劣るという結果です。  慢性骨髄性白血病においては、これまで臍帯血移植はあまり成績がよくないと言われ ておりまして、早期に移植が行われる患者さんたちは少ないのですが、ここでも2人し かやっておりませんので、この赤と青で差があるということを申し上げてるわけではあ りませんで、条件がよければ、慢性骨髄性白血病においても臍帯血移植は治療選択肢に なりうることを示唆するものと思います。  ○ HLAの4/6のマッチが一番多いと申し上げました。これはGVH方向の 4/6なんですが、裏返しの拒絶方向で見ますと、中には5/6、6/6とマッチ度が 高まる人たちもおられました。その方々を細かく見ていきますと、同じ4/6の中でも 少しいいところへいかれるかもしれないというデータです。  ○ 死亡の原因ですが、治療関連死亡が27%、25%、13%とそれぞれの時期ごとにあ りまして、最も多くを占めるのは感染症です。今後、臍帯血移植において生着の問題と ともに感染症対策にについて研究が進められるべきだと思います。  ○ 成人についてのまとめです。  これまで行われた706例で、Full移植の方々の76%、ミニ移植の65%の方々に持続的 な生着が得られています。ミニ移植では2/3は生着していますが、1/3は生着が得 られないか、その前に死亡しています。  Full移植とミニ移植の結果を見ますと、無イベント生存率はFull移植が22%、ミニ移 植が4%、治療関連毒性が50%、64%、再発が48%、67%という結果です。  一部の施設から非常にすばらしい成績が出ていますが、全体を見ますと、様々な悪条 件の患者さんたちがおられ、数字を見ると決していいものではありません。  ○ 我が国において複数臍帯血移植が11例の患者さんに行われました。これまでに得 られた結果ですが、無イベント生存率は70%で、先ほど来ご覧いただいている成人の成 績の中では一段といい成績が得られています。複数がよかったのか、あるいは非常に綿 密に治療計画が練られた研究計画書に基づいた研究が行われた成果なのか、両方であろ うと思っています。  ○ 全体のまとめです。  1997年から2003年に実施された1,166例の患者さんについて解析をし、小児460例、成 人706例です。全体でみると移植細胞数、特にCD34陽性細胞数が生着と生存に影響し ています。HLAの一致度とは弱い相関が認められますが、一部では逆転現象が見られ ますので、なお詳細な解析が必要だろうと思います。  成人での移植数が急速に増加していますが、その中で行われているミニ移植の評価の ためには、今後、観察期間を十分に持ち、綿密な治療計画に基づいた臨床研究が推進さ れる必要があるのではないかと思います。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。ご意見、ご質問、いかがでしょうか。  今までのところは臍帯血移植を受けられる患者さんはドナーが見つからなくて、最終 的に急いで移植をしたということもあって、骨髄に比べて成績はよくないんですが、い いところもあるということです。 ○橋本委員  大変すばらしいデータをありがとうございました。6/6マッチしていても成功率が あまりよくないということですと、現時点での先生のスペキュレーションとしては、H LAだけに頼っていてはいけないのか、それともヒストコンパティビリティ・アンティ ジェンというのはほかにも想像しなければいけないのかどうか、教えていただきたいと 思います。大変重要な点をご指摘いただいてると思いますが、いかがでしょうか。 ○加藤参考人  諸外国においても初期の時点ではHLAは細胞数ほど重要な意味を持たないというこ とについては一致をみています。しかし欧米においては私たちとは逆に、症例数が増え ていくにしたがい、HLAは重要であるという結論の方向にいってる。我が国における 成績もそうなるだろうと予想しておりましたが、今回のデータの解析だけから申し上げ ますと、そうでなかったというのは予想外の出来事でした。この点について軽々しくH LAは意味がないと申し上げるつもりは全くありませんし、欧米の成績と日本の成績が どういう点で違うかということを解明してこそ初めてHLAの問題についての結論が出 ると思っております。  移植医はHLAを無視して検索することは今後もないだろうと思います。細胞数につ いては、これまでの有核細胞数という一点とは異なり、CD34というものを重要視して いくだろうと思います。したがいましてネットワークとしては、細胞数の測定方法の統 一、CD34の測定の統一、精度の向上についてますます検討していく必要があろうかと 考えております。 ○中林委員  今の問題は簡単に考えると、軽度のGVHDのあるほうが成績がよさそうである。高 度で細胞死を起こしてしまうようなものは困るけど、悪性腫瘍に対して免疫機序を考え るといった方向の検討もこれからなされていくわけですね。 ○加藤参考人  中林先生がおっしゃったのは、GVL効果という、ドナーの細胞が白血病細胞の再発 を抑えるということを私たちは観察しているのであろう。私たちもそう思って見ている わけですが、単純にそういうふうに言い切れないところがいくつか残ることも事実で す。国際的にみてすばらしい成績が出ている日本のいくつかの施設での経験で明らかに なってきましたのは、治療の過程の中でステロイドホルモンを使わざるをえなかった人 と使わなくてもすんだ人の間に明らかに大きな差が出ています。諸外国ではその点が強 調されたものはありませんで、我が国での一つの新しい確認だと思いますので、今後、 そこを含めて解析する必要があると思います。 ○麦島委員  私的なバンクについてはいろいろ議論があったと思うんですが、ボストンでコードブ ラッドソサイエティのミーティングが1カ月ほど前にありまして、その時にファミリー コードブラッドバンキングという話が出てきまして、家族の中で血液の病気を持った人 たちの臍帯血をどういう形で集めるか。これは日本ではないわけで、そういう病気の患 者さんがいた時に個人的に集めるということをしておりますが、全体でやることが可能 なのかどうか。そういうことも一方で考える必要があるのではないか。  アメリカのコードブラッドレジストリーというのはプライベートバンクだと思うんで すが、ファミリーコードブラッドバンキングという形で1万ぐらいのコードブラッドを 既に保存してるんですね。アメリカの50州プラス・カナダとかメキシコとか。その中で 33名ぐらいの方がおやりになってるんですが、産んだお母さんに赤ちゃんの臍帯血を移 植するとか、自分のものを使うという形で成績を出してるんですね。  日本でも白血病の患者さんはたくさんおられると思うんですが、採取する場所がない ということで、どうしたらいいだろうかという投げかけがくるんですね。きちっとした 組織で、クオリティを保った形でやれる場所が必要ではないかと思うんですが、何かコ メントがありましたらいただきたいんですが。 ○加藤参考人  「見方を変えるといろんな意見が出てくる」という問題であろうかと思うんですね。 現在行われているプライベートバンキングというものが麦島先生がおっしゃったような 形で、医学的に見ても妥当性がある形に集約されていくのであれば、これは望ましいこ とだと思いますが、一般的な夢に基づいて無秩序に広がっていくということは私たちが 望むところではないと思います。  一方、血縁者間での臍帯血バンキングというのは現在は臍帯血バンクではなく、医療 機関が独自に努力をしてやっていますが、そこのあり方については、このような審議会 のテーマとして今後とらえていく必要があると思います。私個人として十分な整理がで きておりません。我が国においても自分のお子さんからの臍帯血移植を受けた方が複数 出ておられますから、そのような必要性はないわけではありませんが、もう少しいろい ろ整理をする必要があろうかと思います。 ○齋藤委員長  ほぼ時間になりました。ほかによろしいでしょうか。  臍帯血移植の成績については今後もネットワーク内で継続的に集計・解析を行ってい ただき、成績の向上につなげていただきたいと思います。  それでは議事の(5) 平成17年度造血幹細胞移植予算案の概要について、報告をお願い します。 ○片岡室長  資料5をご覧ください。平成17年度の予算ですが、造血幹細胞移植対策関係は2番に なります。一般歳出全体がマイナス0.7%という状況の中で、できる限りの予算を確保 するために頑張ってまいりました。  来年度の主な特徴ですが、1.骨髄移植対策の(1) 骨髄移植対策費の中で、骨髄提供 登録者フォローアップ事業というのを新たに設けました。既存の登録者の意思が変わら ないように継続的に提供の意思を持っていただくためのフォローアップの広報誌などの 経費です。  その下にマル改として普及広報委員・説明員による普及啓発事業とありまして、日赤 ボランティアの活用とあります。普及広報委員・説明員による普及啓発事業を充実させ て、日赤ボランティアの方々を募集して、その人たちに活動していただくための経費で す。  (2) 日赤に出している骨髄データバンク登録費については、全体の経費は合理化でき るところは合理化するということで若干減ってはいますが、検査対象人員については 30,000人から31,500人に増やして計上しています。  II.さい帯血移植ですが、(2) 保健衛生施設等設備整備費の中に自動血球計数装置の 補助単価の増とあります。今までは有核赤血球の細胞数を含めてしか測定できない装置 の基準単価でしたが、今回は310万円を2,400万円に基準単価を増やして、有核赤血球細 胞数を除くことができる機械も購入できるようにしています。  メニュー予算というのは、保健衛生施設等設備整備費は全体が47億円で、その中のい くつかの事項の中にこの機械の費用も入っておりまして、個別の内訳はないという意味 です。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。  最後に、事務局から報告事項がありましたらお願いします。 ○永野補佐  次回の日程ですが、各委員の日程を調整させていただき、決まり次第、文書にてご連 絡をさしあげます。先生方におかれてはお忙しいところを恐縮ですが、日程の確認をよ ろしくお願いいたします。 ○齋藤委員長  それでは、以上をもちまして本日の会議を終了いたします。どうもありがとうござい ました。                                    −終了−                     ┌─────────────────┐                     │問い合わせ先:健康局臓器移植対策室│                     │担当者   :永野、斎藤     │                     │内線    :2366、2362 │                     └─────────────────┘