2004/12/16 第9回医薬品・医療用具等対策部会議事録             第9回 医薬品・医療用具等対策部会                     日時 平成16年12月16日(木)                        15:00〜16:30                     場所 厚生労働省専用第18〜20会議室 ○事務局  ただいまから、「第9回医薬品・医療用具等対策部会」を開催いたします。委員の皆 様方におかれましては、ご多忙のところご出席いただきありがとうございます。本部会 の委員は15名ですが、本日は井上委員、奥村委員、望月委員から欠席のご連絡をいただ いております。  なお、前回の部会開催以降、事務局側に人事異動がありましたので、ご紹介させてい ただきます。大臣官房審議官医薬担当の黒川審議官です。医薬食品局安全対策課安全使 用推進室の森口室長です。医政局総務課医療安全推進室の北島室長です。  それでは部会長、議事の進行をお願いいたします。 ○桜井部会長  最初に資料の確認からお願いします。 ○事務局  資料の確認をさせていただきます。表紙は「第9回医薬品・医療用具等対策部会」議 事次第です。次に配付資料一覧があります。  資料9−1は「コード表示標準化について」です。ここには9−1−(1)、9−1− (2)と2つあります。  資料9−2は「第11回ヒヤリ・ハット事例収集結果について」です。こちらは「医薬 品・医療用具・諸物品等情報の分析について」というもので、9−2−(1)は医薬品情 報、9−2−(2)は医療用具情報となっております。  資料9−3は「医療機器安全対策検討ワーキンググループの設置について」です。9 −3−(1)は運営要綱、9−3−(2)は委員名簿です。  資料9−4は「その他」です。9−4−(1)は点滴用キシロカイン10%製剤の販売中 止について、9−4−(2)はインスリン製剤の取扱いについて、9−4−(3)は平成17年 度予算概算要求についてです。  参考資料として、9−1はヒヤリ・ハット事例収集等事業参加登録状況、9−2は開 通確認ポスター、9−3は前回の議事録です。 ○桜井部会長  お手元の議事次第に則り、最初は「コード表示標準化について」ですね。事務局から ご説明願います。 ○事務局  「コード表示標準化について」、ご説明いたします。資料9−1−(1)をご覧くださ い。こちらは検討会とワーキンググループの開催状況と今後のスケジュールです。な お、スケジュールの日程はまだ入っておりませんが内容です。  2頁の「製品特定のためのコード体系案」は、5月27日から第4回までのワーキング グループの中でまとめた代表的な3案です。その後検討会で、この3案のうち、どれが 実現性があるかについて検討しましたので、それらについて簡単にご説明いたします。  第1案は、製品に付いております既存のJANコードをベースに、新しいGTINと 言われる14桁にしたものを製品に添付して使うものです。それぞれに特徴として、基本 的にJANコードは二次容器、通常の10本入りなら10本入りの箱に対して付いているも ので、個別の中の製品までコードを付けた場合に、箱のサイズにより異なるコードが存 在するというものがあります。  あと、問題点としては、箱によってコードが全部違いますので、箱のサイズによっ て、中に入る製品1個1個に別のコードが付くことになります。それをデータベース等 で同じものであるということを担保する必要があります。そのような特徴を有しており ます。  5頁は第2案です。外の箱には現行のJANをそのまま残し、中の製品に現行のHO T番号をGTIN化(14桁)したものを添付し、同時に、有効期限及びロット番号を表 示するものです。この特徴は、一次容器と二次容器、中身の製品と箱に付くコードが異 なることから管理が難しくなる可能性があると言われております。  8頁は第3案です。これは全く新しいコードを作成しようというものです。現行で は、新しくJANコードを振り直してGTIN化、14桁化するものです。なお、それに より現行で箱単位で付いていたJANコードを、使用単位、アンプルやバイアル単位か ら付け直すことにより、製造から使用までの一気通貫を確保しようというものです。欠 点としては、新しく構築しますので時間が必要になるということがあります。  以上3案が検討会で出ており、現行では第3案の新しいコードを作成するということ で、いま検討が進んでいます。現行では検討中で、最終的な結論には至っておりませ ん。その結果、平成17年4月に推奨時期として導入を考えていたのですが、まだ最終結 論に至っていませんので、この時期にとらわれず、今後継続検討を行うことになってお ります。 ○桜井部会長  説明を聞いただけでは何のことだか分かりませんので、土屋委員、解説していただけ ませんか。 ○土屋委員  第1案、第2案、第3案とありますが、第1案と第3案が究極にあって、第2案がそ の間で、暫定的にという感じで出てまいります。  第1案というのは、現在JANコードというものが振られております。これは包装単 位ごとに振られており、100錠包装、1,000錠包装というようなことについて1つずつJ ANコードがあり、それがバーコード表示化されているということです。したがいまし て、同じものでありながら100錠包装と1,000錠包装ではJANコードが異なるために、 それを一般単位に付けようとすると、100本入りの1本と、10本入りの1本とでは違う 番号が付くことになります。外箱と同じ番号を1本当たりに付けようというのが第1案 です。  第3案は、全く新しいものを作ろうということです。どうしてかと言いますと、現在 の基本としては、先ほどからGTINとありましたが、Global Trade Identification Numberということで、世界共通のルールとしてGTINというのが14桁と決まっており ます。これは会社コードなどを含みますが、原理原則は1製品1コードです。第1案は 1製品複数コードです。したがって、1製品1コードにするように、振直しをしたらど うかというのが第3案です。  振直しをするのには少し時間がかかることが予測されますので、第2案は、とりあえ ず箱には今までのJANコード、そして、一次容器というのはアンプルとかそういうも のだと思っていただいて結構ですがそういったものには、とりあえず単品を識別するH OT番号を表示しようということです。この場合は暫定的なやり方ですので、将来、G TIN化で、14桁のものができたら、それに移行するということで第2案が組み立てら れております。  なぜ第1案や第3案が出てくるのかと言いますと、結局切替え時期とルールをどう守 るかです。我が国がルールを守るのになかなか難しいのは、実は包装形態が世界の国に 比べて非常に細かい。例えばアメリカでは、調剤は100錠のボトルがほとんど主体です。 我が国のように10錠シートとか14錠シートはほとんどないのが現状です。我が国は、そ ういう細かい包装形態がいっぱいできているところが世界標準ルールに合わない、先に 進んでいるだけに合わない。それを無理やり合わせようとするといろいろな苦労がある ので、さまざまな検討を行っているということになります。  したがいまして、全く新たに付けるときに、第1案の「二次容器」の所に、上のほう にコードUCC/EAN、下のほうにJANと書いてありますが、UCC/EANと は、商品番号のほかにロットや使用期限をバーコードの中に一緒に表記することができ るという体系です。そういうものが付けられるといいのですが、これを1回やりだしま すと、もし途中で中身を変えるなんていうことがあると現場は大混乱になります。した がって、第2案では、将来第3案ができたときのために、UCC/EANによるバーコ ード体系は使えないということになって、外しているということです。第3案になりま すと、最初から新しいコードを作りますので、そういった場合は両方とも並記が可能で あるということです。  日本の医薬品が特に難しいのは何かと言いますと、世の中の多くのものが流通すると きに、この会社のこのものと、先に会社が決まってから「これ」と決まるのが普通だと 思います。バッグなら何でもよいというのではなく、どこどこのメーカーのこのバッグ という決め方をすると思います。ところが医薬品は、この成分のものであって、どこの 会社でもという、要するに会社が後ろにくるのが医薬品を使う場合の基本的な考え方で す。会社を頭に持ってこなければいけないのか、後ろに持っていってもいいのかという ところが、世界標準は最初に会社がこないといけない。そうなりますと、成分的に同じ ものを一緒にまとめたいといっても、それはできないということになるわけです。その 辺をいま苦慮しながらやっているところだとお考えいただければ結構です。 ○桜井部会長  何かご質問はありますか。国際的にはどうなっているのでしょうか。ハーモナイゼー ションという。 ○土屋委員  国際的にはGTINと言われるものであれば、そこに何を入れるかは、それぞれの国 が決めていいわけですが、日本の場合は、基本的にはJANコードを入れるのがルール になっております。そのときには1製品1番号になっています。現行の医薬品のJAN は1製品1コードになっていないですから、その辺が問題ですので、JANを振るにし ても「新JAN」ということで、新しいものを振り直す必要があるということです。国 際標準はGTINという考え方で、1製品1アイテムを守りながら14桁で表してくださ いということになっています。 ○桜井部会長  ほかにはいかがでしょうか。企業からは何かご意見ありますか。 ○吉澤委員  特にありません。 ○桜井部会長  特にないということは、どう決まっても従うということですね。 ○吉澤委員  企業の代表もワーキンググループに入って一緒に活動しておりますので、企業側とし ては、そちらで決められたことは守っていきたいという意味です。 ○桜井部会長  いまのところは第3案でいきそうだと。ほかに何かありますか。 ○原田委員  JANコードを振り直すのに少し時間がかかるという、その少しというのはどのくら いなのか、その結果としてどのくらい遅れるのかを教えてください。 ○土屋委員  振直しですし、しかも再使用しないとか、そういうルールを決めた上での振直しです ので、やはり準備が必要で、来月のという話ではないです。 ○原田委員  1年単位ぐらいですか。 ○土屋委員  ぐらいを見ていただければ、それは確実かなという気はいたします。全部振ったとこ ろでもう一度チェックしなければいけないものですから、そこに少し時間がかかるかな という気がいたします。 ○桜井部会長  数としては何製品ぐらいあるのでしょうか。 ○土屋委員  アイテム数としては、いまのJANコードは5万とか6万になります。医薬品の数は 2万ぐらいですが、今のは包装単位ごとで違いますので、包装単位数で言えば5万と か、そういうオーダーになると思います。 ○桜井部会長  それでは「コード表示の標準化について」は、そういうことでお進め願いたいと思い ます。次は、議題2「第11回ヒヤリ・ハット事例収集結果について」です。事務局から ご説明願います。 ○事務局  「医薬品・医療用具・諸物品関連情報収集結果について」の報告をいたします。資料 9−2をご覧ください。こちらは平成16年2月24日〜平成16年5月25日までに報告のあ ったヒヤリ・ハット事例のうち、医薬品・医療用具・諸物品等に関する情報の報告状況 について収集したものです。内容としては、総分析事例数31、うち医薬品事例数が17、 医療用具事例数14、諸物品は0です。  事例が少ないので代表的な事例を医薬品から紹介いたします。資料9−2−(1)の7 頁、事例5をご覧ください。プロスタール錠を調剤するところ誤って強心剤のプロタノ ールS錠を調剤した事例です。プロスタールとプロタノールは「名称類似薬剤」と昔か ら言われているもので、非常に注意を要するものです。このケースを含め、名称の類似 している薬剤に関しては、必要に応じ、後発品の採用などの対策を講じることが望まし いと思われます。  8頁の事例7は規格違いの事例です。患者が持参したラシックス20mgの半錠を40mgの 半錠と思い込んで与薬してしまった事例です。確認が不十分であったことは確かです が、そもそも持参薬の鑑別方法や使用基準などについて、医師、看護師、薬剤師などの 関連職種間での協議が不十分であった事例と考えております。  事例8は勘違いの事例です。返却されたカイトリル注をサクシゾンの場所へ戻したた めに、払出しの際にサクシゾンの溶解液と間違ってカイトリル注を払い出した事例で す。改善手段としては、注射薬の払出し時の確認は必須とし、そのほかに調剤中に返却 処理を行わない、もしくは、返却する人を調剤者と別にするなど、返却に関する一定の ルールを確立する必要があると思われます。  9頁の事例16は、ベイスンの規格違いの取り違いの事例です。ベイスン0.2mgを調剤 するところ0.3mg錠で調剤してしまった事例です。糖尿病薬に関しては、患者への病名 確認や薬歴の確認など特別な過誤防止対策が必要と考えます。なお、前回の部会で報告 したとおり、6月2日付で、医政局長及び医薬食品局長の連名通知により周知徹底を図 ったところです。  10頁の事例17は、麻薬であるオキシコンチン錠の準備中に一時業務が中断されたこと による与薬忘れの事例です。麻薬に関しては、準備から与薬、記録の記載までの手順の 徹底とともに、与薬に関しては患者が確実に服用したことの確認と、各勤務時間帯での 残数チェックが重要であると思われます。  戻りまして8頁の事例10は確認不足の事例で、二槽バッグの開通忘れの事例です。二 槽バッグに関しては、すでに参考資料9−2にありますポスターを業界で配布しており ます。なお、このポスター中の製剤の写真については、現在、開通忘れ防止対策である 開通確認シールや、隔壁部の赤い点線が切り換え過渡期のために対応できていません。 写真は点線のあるものと無いものが混在しておりますが、こちらの整理ができ次第、新 しいものをもう一度配布する予定になっています。医薬品については以上です。  続いて医療用具の事例を紹介いたします。12頁の事例1は、人工呼吸器の気道内圧チ ューブと温度プローブの差し込み部位の誤接続事例です。本来、気道内圧チューブと温 度プローブの差し込み部位は径が異なっており接続できない構造になっております。当 該機器に関しても企業による接続実験が行われており、誤接続状態での固定不可能とい う結果が出ております。しかしながら、報告のとおり接続が可能だったとするならば、 気道内圧チューブが本来の製品ではなく他機種用のものを転用した疑いがある事例で す。  事例2は、輸液セットの濾過網とルートの接続部が外れた事例です。本製品について は過去に同様の事例が3件報告されており、回収した現品を調査した結果、いずれも所 定の機能を有しており、製造上の異常は認められておりません。なお、当該接合部は 2000年10月製造品から接着剤の塗布による強化改良が行われており、その後、同様の事 例報告は全くありません。したがって、本事例は、折り曲げ、押し込み、引っ張りなど 過度の負荷により生じた可能性が否定できない事例です。なお、この接合部について は、過度の負荷が加わると外れる可能性があることは、既に注意喚起がされておりま す。  13頁の事例5は機器が誤作動した事例です。本事例は医療機器不具合・感染症症例報 告書にて報告もされている事例で、早送りスイッチに触れてONという信号が、表示制 御部のコンピューターが認識した後に、静電気による一時的なリセットがかかり、その リセット中にスイッチを離したためにCPUがOFFであることを認識できず、再起動 後、薬液が早送りで注入されたと思われる事例です。なお、当該医療機関では静電気が よく発生する使用環境であったことが確認されているとともに、実験によりリセットの 再現性が確認されております。なお、本事例に限らず電子部品を使用している医療機器 は、静電気によって機器の設定がリセットされてしまう可能性がありますので、不用意 に機器に接触した場合は、動作確認及び監視が必要と思われます。また、静電気の発生 や停電時等により突然機器が停止しても、患者に致命的な健康被害を及ぼすことのない ようなフェイルセーフシステムを取り入れた機器を、今後は選択し使用することが推奨 されます。  14頁の事例8は、医療機器安全性情報報告書にて報告されている事例です。人工呼吸 器の加湿器チェンバーにひびが入って、そこから液漏れを起こした事例です。企業によ り調査されており、ひび割れの入ったチェンバーすべての外壁表面に白い点状の汚れが 確認されております。ひびもその白い点の所から生じていることが確認されており、そ の汚れがキシロカインスプレーによるものであることが確認されております。なお、キ シロカインにはプラスチックに対する悪影響(腐食性)が確認されていることから、ベ ッドサイドで使用したキシロカインスプレーが付着したことにより、プラスチックが腐 食し、そこからひびが入って液漏れを起こしたものと思われます。今後、加湿器チェン バーに薬液等を付着させないよう、もしくは機器の配置等も含めて注意する必要がある と思われる事例です。  15頁の事例10は三方活栓の中に脳圧センサーを通して使用していたが、伝達不十分の ために、センサーを通してある三方活栓を閉めてしまおうとした事例です。なお、モニ タニング・カテーテル製品には、三方活栓の中をセンサーが通っている構造のものはな く、また、三方活栓の中に通して使用するものも、現在承認されておりません。当該医 療機関において、医療機器の通常の使い方が若干異なる疑いと、業務の中での情報伝達 の不徹底さが問題であると考えております。医療用具については以上です。 ○桜井部会長  ただいまのご報告に対して、ご意見なり、ご質問なりありますでしょうか。 ○吉澤委員  医薬品関連情報が前回の31から17とかなり下がってきています。医薬品の企業もいろ いろな医療事故防止対策で努力していますし、また、医療関係者の先生方も、ずいぶん 医療事故防止に努力されてきていますが、それらの努力の結果が分からないのです。31 から17に下がったのは、下がったと見るかどうかということもあるのですが、収集され て分析されたほうとしては、事故がだんだん下がりつつあると見られているのでしょう か。 ○事務局  収集した全体の症例数は、あまり差がないところです。ただ、今回報告いたしました 期間は収集期間の変更過渡期になっており、……情報等棲み分けの変更もありましたの で、このぐらいの症例数になっていると思っております。次回は、報告されている症例 数も増えていると聞いております。ですから、一時的なものと考えております。 ○桜井部会長  後半の医療機器の所で、購入年が書いてあるのと書いていないのがありますが、書い てないのは分からないのですか。 ○事務局  報告された報告書の中に書いてなかったものですから、書いてなかったものは記載な しという形になります。 ○桜井部会長  薬と違って、医療用具の場合は購入した年、どのぐらい経っているかは大事なファク ターになると思いますが。 ○事務局  耐用年数等もありますので、購入した年数は必要だと思います。 ○目黒委員  医療機器で、いちばん最初の人工呼吸器のチューブが違う件ですが、温度プローブの 所に別がものが入っているという。基本的に、こういう所に臨床工学技士がいて、きち んと指導されていてこういうことが起こっているのかなと思ったものですから。今後は 記載の際、施設の所できちんと機械を見る方々がいる、要するに臨床工学技士がいるの かどうかも1つの指標になるのかなという感じがしていますので、今後調査の際は考え ていただきたいと思います。 ○桜井部会長  ヒヤリ・ハット事例の収集は、こういうことがあった、こういうふうにした、という ことだけで終わっているのでは、あまり意味がないような気がします。言葉を変えて言 うと、結局ハザード分析をやっていると。薬のほうはちょっと分かりませんので後でま たご説明されると思いますが、医療用具の場合は、ある1つの医療機器についてどうい うリスクが内在しているか、あるいはリスクを起こし得る要因になるかという、いわゆ るハザードですね、損害のもとになる潜在的な源というハザードの分析をしているとい う解釈でいかないと。これは個別の事例案件を集めて、どうだったということだけで終 わってしまう可能性があります。これから医療用具などの承認の場合も、リスク管理的 な思想がそこに盛り込まれていないとまずいという流れになっており、その基本にある のはハザード分析です。  例えば、ガスは台所にあると非常に便利ですが、同時に火災の源にもなるという、そ れがハザードです。電気も同じです。そういうハザード分析。それは多分、設計、製 造、保守管理から、ユーザビリティというか、使う場から廃棄まで、その物のあるライ フサイクル全体にわたってハザードは内在すると思います。いろいろなハザードがあり ますよね。「エッセンシャ・プリンシプル」にもいろいろ書いてあります。機械的なハ ザードもあれば、エネルギー的なハザードもあります。  ヒヤリ・ハット報告も非常にたくさんの例を集められているわけですが、先ほど目黒 委員からご指摘のあった臨床工学技士がいるかいないかということは、非常に大事なフ ァクターになります。また、耐用年数の問題もそうです。そういうところをきちんと押 さえないと、ただ集めて、これはこうしました、これはああしましたというだけに終わ ってしまうということでは。  私はこの前、医療安全対策検討会議に出たときに、医療用具は設計、製造、保守管 理、使用まで一貫して安全が保たれていないと、どこか1カ所抜けても、そこで事故が 起こるわけです。製品でも使い方が悪いとまずいわけですし、設計が悪ければもちろん まずいわけです。あるいは説明がまずいとか、取扱い説明書がまずいとか、いろいろあ ると思います。ヒヤリ・ハットを集めるについて一体どこに問題が内在しているのかが 明らかになるようなスタイルで、ヒヤリ・ハットのアイテムを決めないと。これは非常 に労力がいる仕事だと思いますので、労作だとは思いますが、それはそれで終わってし まうような感じがしますので、その辺を。  先ほどクリニカル・エンジニアがいるかいないかという問題は非常に大事なご指摘だ と思いますが、そのほかにも、もし何かあればお願いいたします。 ○土屋委員  医薬品の8頁の7番、持参薬の問題がヒヤリ・ハットで過去にも最近も出てきていま す。現実として最近、この持参薬で事故も起きております。持参薬について医療機関の 取扱いルールをきちんとしなければいけないという気がしています。背景的に言います と、以前、持参薬は使わないというルールを決めていたところが、包括制度が入ってき て、折角持ってきたものは使おうではないかという医療機関側のこともあって、最近使 われる率が高くなってきています。そうしますと今まで扱っていなかった医薬品、自分 の所で扱っているものと同一成分でありながら違うものがあるとか、飲み方が違ってい たとか、そういう情報の伝達がうまくいっていない。本来、持参薬は物で調べるのでは なく、医師から医師への紹介状などできちんと書かれるべきだと思いますが、実はそこ にさまざまなエラーが起きることがあります。  私どもの経験では、持ってきた持参薬を実際飲んでいるのかというと、そうではなく 在庫品を全部持ってくるという事例も結構あります。したがって、そのまま飲ませる と、いまアクティブでない薬まで飲ませることになってしまう。私どもでは処方医に問 い合わせをしたりしていますが、そういったことから言っても、「持参薬についてのル ールの確立」は極めて重要だと思いますので、何らかの形で注意喚起ができたら、この ヒヤリ・ハットはヒヤリ・ハットとして役に立つのではないかと思います。 ○桜井部会長  言われるとおりだと思います。こういうのがあるということは知らなかったのですけ れども。 ○原田委員  医療機器に関連してですが、1つは静電気の問題です。当該機器については保守され たということですが、一般的に医療機器をつくるときには、こういう安全策を作りまし ょうというようなことが可能なのかどうかです。  もう1点はモニタリング・カテーテルの件です。これはメーカー側が考えているのと 全然違う使われ方がされていた可能性が高いということですよね。でも報告を読む限り では、それはごく自然にといいますか、その病院の中では通常のように使われていたと いうような書き方、知らなかった、私が悪かったみたいな書き方になっています。こう いう問題をどのようにしていくかについて、考えをお聞かせいただきたいのです。 ○桜井部会長  静電気に関しては、山本委員、いかがでしょうか。 ○山本委員  ほかの機器にもあるかどうかというのは、いま業界でも調査しているところです。 ○桜井部会長  これも1つのハザードというか、大事ですね。 ○山本委員  非常に静電気の起こりやすい状態になっている所があるということは、通常どの程度 で、どれを超えたらということをきちんと調べないといけないと考えております。 ○目黒委員  重要な機械である輸液ポンプなど、要するに誤動作を起こしやすい機械に関しては、 たしか一定の規格があったと思うのです。何点何キロボルトの静電気に耐えるような仕 組みとか。特に心臓関係の人工心肺装置、循環関係の機械に関しても、最近では静電気 に関する防御をする構造になってきていると思います。もともと外来の機械に関して は、特にアメリカの機械の場合は、生命に直接関する機械に関しての静電気防御がかな り働いています。それが新しく出来た機械、あるいは日本国産の機械にきちんと徹底さ れているかどうかについては、私も見えない部分があります。これは参考意見です。 ○桜井部会長  もう1つの点は、15頁の10ですが、目的外使用と情報伝達の不徹底に関してですが。 ○目黒委員  安易にというわけではないのですが、基本的に医療業務を行う上において、例えば、 あるチューブとチューブをつなぐものがそこになかったと、でも、何か代用ができて必 要になるようなものがあれば使うということは、医療現場では、時にはあります。それ が目的外使用であるような場合もあります。例えば、プラスチックで非常に弱いような 三方活栓があるのですが、いま在庫がないとなれば、チューブと注射器をつなぐために 使わざるを得ない状況は起こり得ることだと思います。それが慢性的に行われるとなれ ば、困る事態ではあるのですが、どうしても必要な場合においては、使用することはあ ります。  その目的外使用は、私達の場合は、一応医師の判断の下で、万やむを得ず使うという ことであれば、しようがないと思います。それがリスクとベネフィットだと思います。 使わないことによって起こり得ることと、使うことによって得ることがありますから、 そこで判断できて、そんなに大きな問題にならなければということなのです。それがだ んだん発展して事故につながるのは困ると思いますが。 ○桜井部会長  医療の現場では、いろいろな機械なり、ディスポーザブルもそうだと思いますが、あ る日突然全取り換えして、それで2〜3年経ったら全取り換えする、そんな病院はない と思います。要するに溜まっているのがあって、その上でまた買う。要するに、いろい ろなものが混在しているのが実態だと思います。これは医療経済の面からもそういうこ とにならざるを得ないのだろうし、最近はモデルチェンジも多いですから。そういう所 におけるリスク管理が1つの新しいテーマとしてあるのです。 ○寺井委員  先ほど、桜井部会長がヒヤリ・ハット事例収集の方法のお話をされておられました が、テーマを決めて集める試みをしてもいいのではないかと思います。10月に報道で、 国立病院機構の病院では、人工呼吸器で過去3年間に15例が亡くなり、23件の事故が起 きていたという報道がありました。最近、人工呼吸器装着患者が増えている状況が背景 にあることもありますが、例えば人工呼吸器の事例を集中して集めるといったようなテ ーマを決めて収集する。そこから多くの事例が集まれば、頻発している事象なども分か り、対策が立てやすいといったようなこともあるのではないかと思います。 ○山本委員  これはお願いですが、人工呼吸器は2002年に対策を施したわけですが、対策を施した ものかどうかが分かれば、その効果があったかどうかが分かりますので、そういうこと が分かるような調査の方法をお願いします。  それから、病院環境が、例えば集中治療室にあったのか、一般病棟にあったのかも非 常に重要です。単に自分たちが悪かったという反省をされているようなケースが非常に 多くて、私たちも機器の改良に結び付けていただくためには、背景因子がどうであった か、先ほどお話のあった臨床工学技士がきちんと見ていたかどうか、耐用年数がどうか ということが是非わかるようにしていただけたら、大変有り難いと思っています。  今年から医療機器管理室整備事業が始まっていますので、本当に整備されている病院 かどうかも含めて調べていただければと思います。やはり背景因子をどれだけ捉えるか が、対策をしっかりするためには重要ですので、そういうところを分かるようにしてい ただけたら大変有り難いと思っております。 ○土屋委員  同じように医薬品についても、今回はたまたま少ないということでしたが、やはりメ リハリのついた調査をすべきと思います。例えば名称類似や外観類似ということで言え ば、新規発売になったものは、まさに副作用も市販直後調査があるわけですが、重点的 にこの1年以内に採用された医薬品や新規発売された医薬品については、それを取り違 えたものについてはどんどん報告してくださいということをやると、名称類似が起きて いるのかどうかが把握できるようになると思います。また、新たなものが出て外観が類 似してしまったとか、そういうものをやると、いまヒヤリ・ハットの中で3分の1ぐら いは、実は100ミリと20ミリを間違えたとか、複数規格の話がいくら出てきても、ここ で対策を立てるわけにはいかないのですが、新しく出たものとか、新たに採用されたも のとの間での事象をたくさん報告していただくことによって、いろいろな対策が取りや すくなるという気がいたします。重点的な収集方法を考慮されてもいいと思います。 ○山本委員  昨日、医療機能評価機構でヒヤリ・ハットの事例を集めるような話が出ていたのです が、厚生労働省との作業の切り分けを説明していただければと思います。 ○医療安全推進室長  ヒヤリ・ハット及び事故等の事案については、まず医療機能評価機構で全部収集して おります。匿名化、マスキングという作業をし、整理したものを私どもに頂戴している 状況です。匿名化を保つということで、第三者機関として医療機能評価機構にそういっ た事業をやっていただいておりますので、これらの情報も医療機能評価機構が窓口にな って収集したものです。 ○外委員  第11回の分析結果が出たわけですが、毎回聞いていて私も桜井部会長と同じ感想を持 っています。個別の事例に関し分析をして、こういう原因だったということが分かって も、収集の意味が薄れていると思っていました。今回別の医療機能評価機構で収集する ことになったので、これからは件数もすごい勢いで増えていくのではないかと思いま す。この件数ですと1つの病院としても少ないぐらいのヒヤリ・ハット事例の報告です から、これからはその何十倍も集まってくるのではないかと思います。そういうことが 可能になってこそ、分析結果の全体の中での位置づけや改善方法が見えてくるのだと思 っています。  もう1つ言いたいのは、このように集まったものをどう活かすかです。今回も医療機 器に関して言えば呼吸器と点滴関係の事例が多く、このところずっと続いています。特 に、生命維持装置の人工呼吸器は非常に重要で、そのヒヤリ・ハット事例がある確率で 毎回上がってくるというのは、やはり大きな事故につながる要素をはらんでいると思う のです。単に呼吸器自身の持つ問題もありますし、それを操作する側や保守点検の側な どいろいろな要素が絡んでいると思います。そのことが個々の事例で、ああこうだった というのではなく、焦点を絞り、11回まで何百例が集まっている、その中でこういうこ とが見えてくるというところを探していかないと事故は防げないし、折角のヒヤリ・ハ ット事例収集の意義がないと思います。  人工呼吸器に関わる事故が発生しました、そしてアラームの問題点が指摘されて、こ のような検討会である改善策を作ったわけですが、それ以外のいろいろなヒヤリ・ハッ トが上がってきていますから、そういうものの中からハザード分析、いろいろな分析手 法を用いて新しい対策を打つ必要があると思います。そういう意味では、特に今回感じ るのは人工呼吸器でしょうし、点滴関係、輸液関係と言っていいのでしょうか、その辺 も1つのテーマになり得る。  医薬品に関しても、これだけ出てくると何となく見えてくるところはあります。いつ も出てくるのは何ミリグラムといった量の問題です。それは何が問題なのか。それは記 載の方法とか、もしかしたら国全体で考えなければいけないこともあるのではないか。 そういうところに焦点を絞って分析するのが非常に重要なことかなと思いました。 ○桜井部会長  私が思いますのに、リスク管理や安全管理というのはいくつか要件があると思いま す。1つは、病院なり企業なり行政なりの1つの組織に安全意識文化といいますか、そ ういうものがないといけない。底辺にそういうものがないところにはリスクマネジメン トはなかなか実効が伴わないという気がいたします。  もう1つは、リスク管理というのは決して精神論やかけ声ではなく、科学技術的な手 法で、メソドロジーです。科学技術的手法は何かというと、その再現性がないと意味が ないわけです。いつでも、どこでも、誰でも再現性を持って実行できるということでな いとできないのです。このヒヤリ・ハットの事例はそうではなく、こういうのが起こり ました、こうですという形だけで、これでは再現性が担保できないと思います。だか ら、これを分析し、アセスし、そこから再現性が担保できる形でのフィードバックとい うか、そういうものがないとまずいのではないかという気がいたします。  医療用具に関しては設計開発から製造、使用まで一貫してリスク管理なり安全対策が なされていないといけない。どこか弱い所があるとそこが破れ目になりほころびますか ら、全体が完備していなければいけない。  そういう意味で先月、医療安全対策検討会議があったときに、ヒューマンエラー部会 というのがほかにあって、これは物の安全を考えましょうという部会ですが、この2つ の部会が1年に1回ぐらいは合同で顔合わせをして問題点を洗い出さないと、物は物で すよ、ヒューマンエラーはヒューマンエラーですよとバラバラにやっていたのでは、一 貫した安全は保たれないのではないかという感じがいたしました。 ○北澤委員  私も全く同感です。いろいろな医療ミスのことを後から取材等で話を聞いたりします と、物は物だけ、ヒトはヒトだけということはなく、物のせいもあって、ヒトのせいも あって、それから環境やお金とか、いろいろなものがあって事故に結び付いているとい う、そういういろいろなものが複合的に絡み合って事故になるのだということをどの先 生も言われます。多分、本当にそうだろうと思います。ですから、せっかく集まった情 報を分析することも大事ですし、物は物だけ、ヒトはヒトだけと分けないで、一緒に考 えることができないのかといつも感じます  いま、分析して次に活かすということを何人かの委員からお話がありましたが、一次 情報としては非常に貴重な情報で、その後の解析の仕方によっては新たなフィードバッ クが出てくる可能性があると思いますので、こういった基のデータを、個人は分からな いようにした上で、安全工学の専門の先生や分析のできる方に研究資料として使ってい ただき、また新たな解析をしていただき、学術的に高めていくこともありなのかなと、 今日の議論を聞いていて思いました。 ○菊地委員  基のデータを分析し有効なフィードバックをする必要性は、これまでも言われてきま した。しかし、問題は、むしろ分析以前にあるようです。つまり、エラーの背景にある リスクまで明らかになるようなデータの集め方、分析に値するデータの集め方ができて いないところに問題があります。  注射の事故の例でみますと、事故報告書には、ほとんどの場合、記載忘れや見落とし といった個人のエラーレベルに関する記述だけで、事故の背景要因を見つけ出そうとす る記述はありません。しかし、事故発生の経緯を丹念に記述してみますと、組織に存在 するリスクが自ずと明らかになってくるということがあります。たとえば、診療録の指 示記載に統一した取り決めがなく見難いことや、エラー発生の確率を高くする転記を行 っていること、また間違い発見のための照合作業においては、転記と転記を照合してい るに過ぎないことなど、いろいろな組織の不備が発見されることがあります。そして、 その組織要因が個人のエラーを誘発しているのが見えてきます。  事故予防には、個人のエラーとそれを誘発する背景要因との循環を断つこと、言い換 えれば、組織の潜在リスクの発見と、そのフィードバックが必要であること、そのため には、基になるデータを適切に集めなければならないということになります。 ○桜井部会長  いろいろなご意見が出ました。リスク管理に直接役に立つ、立たないということで、 ガーベージ・イン、ガーベージ・アウトという言葉があって、コンピュータに入れたも のがごみならば、出てくるのはごみしか出てこないということです。ごみをいくら集め ても仕方ないわけです。役に立つ情報を得られるような情報収集設計をしないといけな いということです。 ○土屋委員  1点だけ確認ですが、先ほどヒヤリ・ハット事例が今度から医療機能評価機構に移っ ているということですが、医薬品・医療用具・諸物品情報も、すべてが向こうに移ると いうことですか。 ○医療安全推進室長  収集については全部まとめて医療機能評価機構で実施しております。 ○土屋委員  少し心配なのは、医薬品・医療用具についてのヒヤリ・ハット事例は、早く情報を知 って対応をとることもあるので、迅速な対応が確保できるのかなという危惧感がありま す。その辺りは大丈夫でしょうか。 ○医療安全推進室長  そこについてはもちろん医薬品に関しては別途報告がございますし、事故情報などで もできるだけそういう体制をとるように、私どもから評価機構にお願いしています。 ○桜井部会長  よろしいでしょうか。次は3番目の「医療機器安全対策検討ワーキンググループにつ いて」、事務局からご説明願います。 ○事務局  「医療機器安全対策検討ワーキンググループについて」、ご説明いたします。資料9 −3−(1)をご覧ください。いまの議論の中にもありましたように、医療機器については 現在、報告された個別の事例についての対応、もしくはそれに関連して全体の指導は実 質行われてはいますが、基本的に全体をというのは、何か案件がなければ行われていな いのが事実です。それについて今度ワーキンググループでは全体の標準化なり、必要な 医療機器に関する事前の安全対策を検討していこうというワーキンググループになって おります。メンバーは次頁に記載されているように基本的には6名で構成しようと考え ています。検討する内容により、専門家を2人ぐらい加え、それぞれ個別の事例等に対 応していこうかと考えております。 ○桜井部会長  いつから発足でしょうか。 ○事務局  委嘱はただいま手続を行っており、12月に設置ということになっております。1回目 は年明けに実施して、年度内にもう一度開催しようと考えています。第1回では、現在 どのような医療機器が検討すべきかということで、まず案を出していただき、何から行 うかという優先順位付けをしたいと思っています。 ○桜井部会長  外先生から何かご発言ございますか。 ○外委員  やれと言われましたのでやらせていただきますが、結局、検討するためにはどういう 材料を使うかが大事だと思います。いま言われたことが大事であろうし、折角、今度医 療機能評価機構にインシデントではなく、アクシデントが収集されますので、そういう ことを貴重な資料として使うべきではないかと思っています。 ○桜井部会長  よろしいでしょうか。それでは「その他」のことについて事務局からご説明をお願い します。 ○事務局  「その他」についてご説明いたします。資料9−4−(1)は「点滴用キシロカイン10 %の販売中止のお知らせ」です。キシロカインについては、既に注意喚起等が各団体よ り行われていましたが、この度、アストラゼネカ社から販売中止をしたい旨の申し出が あり、現在、医療機関に配布されているお知らせがこちらです。現在、販売中止に伴 い、移行等の手続に移っているはずですので、何も問題がなければもうすぐ経過措置品 目に移行するものと考えております。  9−4−(2)は、「インスリン製剤の取扱い」に関してです。最近、事務局から発出 しました「緊急安全性情報」および3頁にあります2002年10月に各社から出されている 「インスリン40単位の販売中止のお知らせ」の用紙です。  7頁は「ペンフィル」というペン型注射器に入れるカートリッジで、現行で1.5・の カートリッジと3・のカートリッジの2種類がありますが、この度、1.5・のカートリ ッジの販売中止が決定しております。これでカートリッジのサイズとしては3・のカー トリッジ1種類になると思います。  インスリンについては前回のヒューマンエラーの会議で、インスリンの注射器に関す る話が出ていましたが、口頭ですが簡単にご説明いたします。現在、ペン型注射器に付 けるディスポーザブルの針は、ISOの規格で統一規格と非統一規格ということでタイ プA、ノンタイプAという2つの規格があります。日本国内ではほとんどがタイプAで 互換性のあるタイプが採用されています。なお、注射器に入れるカートリッジは、同じ ISOの規格でこちらはノンタイプAという、他メーカーのものに入らない規格で統一 がなされています。こういうことでヒューマンエラーの席で出たようなどれでも使える ようなというのは、実現性は難しいかと考えています。注射器そのものの装填なりの手 順については、カートリッジとは関係がありませんので、別途検討する余地はあると考 えています。  次は9−4−(3)、「平成17年度の予算概算要求」についてです。1頁の3は、本年 は医薬品表示コード化による医療事故防止対策の推進ということで、6,000万円の要求 をしています。中身については下の「○」のとおり、「医薬品の名称や外観の類似によ り生じる製品の取り違えの医療事故を防止するため、医薬品へのコード表示に必要なコ ード体系データベース等の整備を図る」ということで請求しています。  3頁の2番目の「○」、医薬品・医療用具等対策部会、本部会の運営費は前年度と変 わりはありません。  次に、本部会も含め12月1日の医療安全対策検討会議でも確認いただきましたが、各 部会のあり方についての検討に関して医療安全推進室長の方からご説明いたします。 ○医療安全推進室長  ヒヤリ・ハットの事例収集等いろいろなご意見を頂戴しておりますが、今年4月から 対象医療機関を全国に拡大したことに伴い、現在約1,300の医療機関がこの事業に登録 している状況です。多くの医療機関がヒヤリ・ハット事例の院内報告制度を持つこと は、大変望ましいことですが、国レベルでこれらすべての医療機関から情報をいままで どおり収集していくのかどうかは検討課題です。  今月1日に開催した医療安全対策検討会議でも委員の先生から、病院では報告物が非 常に多く、忙しくてかえって事故の原因になる可能性もあるのではないかというご指摘 もあり、効率のよいシステムデザインをそろそろ考える必要があるという指摘を受けて おります。本日の部会でも先生方からご指摘がありましたとおり、この事例をどのよう に活用していくのかということも考える必要があります。  こうした中で、ヒヤリ・ハット事例については、10月1日からスタートした事故と事 案の収集と同様に、来年度から医療機能評価機構に分析も含めてお願いをする予定とな っています。こういうことでヒヤリ・ハット事例の収集方法については、医療機能評価 機構と調整の上、今年度中に少し効率のよい方法に見直すことを検討したいと考えてお り、併せて各部会からご意見を頂戴しているように、このヒヤリ・ハット事例の有効活 用ということで、医療安全対策検討会議の部会のあり方と役割分担についても、再度検 討が必要と考えております。 ○桜井部会長  ただいまの「その他」の中で、キシロカインとインスリンについて何かございます か。 ○外委員  キシロカイン10%の販売中止は、この部会も含め厚生労働省のいろいろな取組みも含 めて、1つの成果だと評価します。患者が亡くなるような大きなリスクが医療現場には 潜んでいますが、これをきっかけにリスクを縮小させるように、こういう部会も積極的 に動かなければいけないと思っています。  キシロカイン10%に関しては確かになくなりましたので、この10%による事故はなく なると思われます。ここに代替製品のご案内もありますが、この量がすべて入ればやは り致死量をはるかに超える薬剤が準備されているわけですので、使用方法によっては、 やはりそのリスクは回避できていないわけです。ですからこのことの注意喚起、添付文 書を含めて、継続的な施策なり教育が必要かなと思います。是非、厚生労働省もそのリ スクをいつも念頭に置き、日本からキシロカインに関する事故を、ゼロにできないとは 思いますが、減少させるべく引き続き努力をお願いしたいと思います。 ○桜井部会長  予算とヒヤリ・ハットについてはいかがでしょうか。 ○北澤委員  登録施設数は1,257ということですが、そこから報告された3カ月分というのが総事 例で31ということなのでしょうか。 ○医療安全推進室長  4月から対象医療機関を拡大してこの数になりましたので、今回報告している事例に ついては、拡大以前の情報です。 ○北澤委員  何でこんなに少ないのかなと思いましたので、お尋ねしました。 ○山本委員  予算案ですが、医療機器管理室の整備事業というのが医政局であったと思います。医 療機器の企業にとっては大変ありがたいことだと思っていたのですが、この予算の中に は欠けているような気がしました。 ○医療安全推進室長  手元に資料を持参しておりませんが、大きな施設整備の中の事業であったかと記憶し ております。ここのPR版と呼んでいますが、この整理の中に項目立てをしていないと いうことです。 ○事務局  北澤委員の先ほどのご質問について補足させていただきます。今回事例が非常に少な いということですが、報告されている中に、いままで医薬品のものだと思われることは 思われるのですが、記載が不十分で、これが医薬品であるかどうかがはっきりしないも のがいくつも入っていたものと思います。今回こちらの17例というのは、医薬品名等必 要な情報がすべて揃っているものだけになっておりますので、それで若干少ない報告数 になっております。先ほど室長が申し上げたとおり、登録医療機関数が増えていますの で、次回からは数的にはかなりあるものではないかと考えております。 ○堀江委員  ヒヤリ・ハットについての事例は、このようにかなり蓄積されていると思いますが、 各施設でも安全管理・安全対策に向けて当然事例をまとめて、個々の事例の内容ごとに 対策というのがかなりまとめられて対応が進んでいるのだろうと思うのです。ここに第 11回としてこういうデータがありますが、いままで集計されているヒヤリ・ハット事例 を各要因ごとに分けて、それに対して各施設の対策などをまとめていけば、どのような 方向性がとられているのか、ただ単にデータを集めるだけではなくてという話がありま したが、そういうことも当然このデータからでも可能なのだと思うのです。特にいろい ろな要因の中で、危険度の高い、重大な事故につながっていきそうなものについては、 各施設で改善策として、あるいは対策としてどういうことがとられているのか、そうい うこともまとめてみれば、それがいろいろな施設に対して情報として、こういうことが 実際に取り組まれているということも伝えられれば、対策の1つとして重要な意味があ るのだろうと思います。これからは機構としてデータの集め方とともに、おそらく対策 も情報としてまとめていかれるのだろうと思いますが、いままでのデータについてもそ ういう取組みもやってみたらできるのではないでしょうか。 ○医療安全推進室長  他の部会も含め、私どもそういうご指摘をいただいておりますので、その問題につい ては厚生科研費などで一度きちんと分析して、これまでの集計などにも取り組んでいき たいと思っております。 ○桜井部会長  いまの堀江委員のご指摘のようにフィードバックの問題があります。結局、集めた個 々の例はこうでしたで終わっているような印象を我々は受けます。やはりフィードバッ クをして、有効に活かされないと、リスク管理というのは研究と違いますから、実効性 がないと意味がありません。そういうフィードバックの方策もお考えいただきたいと思 います。  ここでこういうことを申し上げるのは無理難題かとも思いますが、予算というのはど のようにして決めるのでしょうか。医療安全対策検討会議でも申し上げましたが、アメ リカのクリントンがIOMの「人は誰でもエラーをする」というので、年間で4万〜9 万人死んでいるというわけです。それを5年間で何億ドルかかけて半減させると言った のです。日本の場合は報告書もそうですし、予算もそうですが、目標設定がないので す。これをやったらこうなる、これに400万円かけたらこうなるというものが全然なく て、ただこれがゼロから400万円になりましたとか。増えるのは結構なのですが、何か 目標を立てて、これをやるためにはこれだけの金が要るのだから、要求するという論理 なのですか。それとも何となく前年よりも増やしておこうという感じなのですか。ここ で言うのも無理かとも思いますが、そういう目標設定がないと。  ヒヤリ・ハットにしてもそうです。結局ヒヤリ・ハットの事例というのは減るほどい いわけでしょう。そうするとやはりいま何千例かある報告の件数が、何年経っていくら かけたら半分になったなど、そういうはっきりしたコストと年限と目標、この3つが三 位一体で出てこないと。厚生労働省だけでなく、ほかもみんなそうなのですが、目標が ないのです。実は私がその質問をしましたら、どういう答えが返ってきたかというと、 「目標設定をして、もしもそれが出来ないと大変だからしないのだ」ということでし た。なるほどそういう考え方があるのだなと思い、感心しました。 ○目黒委員  また今年もがっかりしているのですが、いろいろな委員会で、医療機関の中で臨床工 学は組織化がないと言ってきました。多分、今年も組織化にはならないのだろうと思う のです。既存の薬剤、検査、放射線など組織がある部門ではいろいろな要望があり、い ろいろな形で物事が動いていくのですが、私たちは組織がなく、手術部等の下で動いて いるのが実態です。それを組織化しないと、私たちの意見は病院の中、あるいは医療機 関の中の組織の声として、上に上がっていかないのです。それと数が少ないために、医 療機関側も国に対して意見を上げていかないのだろうと思うのです。そういう所にはで きるだけ、こういうようなヒヤリ・ハット、あるいは医療機器の事故事例等があるわけ ですから、できれば臨床工学部門あるいは医療機器管理部門についての、モデルの医療 施設を考えるなりの予算化の配慮がほしいと思っています。この何年間かはこの予算を 見るたびにがっかりしています。 ○吉澤委員  ヒヤリ・ハット事例を分析する際のお願いです。母数が非常にわかりにくいので、医 療機関を限定してで結構なのですが、例えば規格違いの医薬品のヒヤリ・ハット事例が 結構多いです。それに対して企業側は表示でもういろいろ努力をしてきていて、いまは PTPシートの裏側を見れば、規格はもう一目瞭然で、ほぼ100%わかるようになってい るわけなのです。そういうようにヒヤリ・ハット事例の母数が多少曖昧であっても、対 策を講じて本当に減ったのか、その対策が本当に効果があったのかどうか、きっちりは 掴めないまでも大ざっぱに掴んでいかないと、それでも全く減ることなく規格違いの事 故あるいはヒヤリ・ハット事例が続くようだと、全く観点を別にした対策を検討しなけ ればいけないと思うのです。ですから検討されるとき、解析されるときに一工夫してい ただけたらと思っています。よろしくお願いします。 ○原田委員  大きなお話が続いた後に細かな話で恐縮ですが、インスリン製剤の取扱いについてで す。私自身が理解するまでに時間がかかり、質問が遅くなって申し訳ないのですが、緊 急安全性情報の所で2点、自己注射用注入器に問題があったので気を付けましょうとい うご指示を出していただいているのだと思うのです。こういう事故があったから、こう いう使い方はやめましょう、あるいはやめるように指示してくださいというのは、これ は第1次の施策としては絶対必要なことだと思います。しかしそれで終わりでは駄目だ と思うのです。とりわけ自己注射用というのは、いろいろなタイプのいろいろな方が、 いろいろな所で使うので、やはりいかにしてデザイン側、作る側で、やってはいけない ことはやらせない、あるいはやっても大丈夫なようにするというデザインの変更は不可 避だと思うのですが、その点はどのようにしてモニタリングしていらっしゃるのかをお 聞きしたいのです。安全性情報を出したらこれで終わり、ということではないのだとい うことは是非お考えいただきたいと思います。 ○桜井部会長  事務局としてはどうでしょうか。 ○安全対策課長  緊急安全性情報以降もメーカーに調査を命じており、発生頻度等の変化をフォローし ております。もう1つ、この機械そのものが、若干取扱いに不具合を生じ易いという傾 向がありますので、より改良されたものを早急に供給するよう指導しております。近 々、新たなものに切り換えられていくことになっています。新たなものでも同じように 発生すると困るので、それについてもさらにフォローするようにしております。  このメーカー自体が新たに入ってきたメーカーで、すでに経験のある2社はかなり安 定した使い勝手のものを供給しております。それに比べてこちらは新たなものなので、 少し機能を追求しすぎたのかなという嫌いがあるのですが、より改善するようにという 指導と並行して走っております。さらに事故の内容の中で、我々として困るのは過量に 投与されるインスリンにより低血糖が起こることで、事故につながるだろうということ です。そういう事故が発生しているかどうかを常に見守っております。 ○原田委員  どうもありがとうございました。対策をきちんと見守っていただいているということ で少し安心しました。同時に、やはり新しいものを出してみました、今度は違うタイプ のエラーが起きましたというのでは困ると思います。ですから出す前の事前のテストの 仕方をいくつかの方法でやるようご指導いただければと思います。つまり、実際のユー ザーの方がいろいろな使い方をしても大丈夫だ、ということをきちんとテストすること をお願いしたいと思います。 ○安全対策課長  時間的にかなり短期にやりましたので、新たなものを出すにあたっても、徐々に使い 勝手を見ながら、テストしながら、導入していくことをこの改良版については考えてお ります。そちらのほうもうまく機能すれば、スムーズに導入、切り換えがされていくの ではないかと考えております。 ○桜井部会長  ほかに何かございますか。では大体時間ですので、予定の議題はこれで終了です。ほ かに事務局から何かございますか。 ○事務局  次回の日程については、委員の先生方のご予定を後日調整して、ご連絡いたします。 なお、本日参考資料3として付けております前回の議事録については、こちらで誤字等 を確認はしておりますが、もし何か間違い等がございましたら、今月24日までに事務局 にご連絡いただければ修正いたしますので、よろしくお願いいたします。なお、この議 事録については今後厚生労働省のホームページに掲載したいと考えておりますので、そ の旨ご了知お願い申し上げます。 ○桜井部会長  どうもありがとうございました。これにて閉会いたします。 照会先 医薬食品局安全対策課安全使用推進室 電話 03-5253-1111(内線2751)