04/12/15 社会保障審議会福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会第18回議事録    社会保障審議会福祉部会 第18回生活保護制度の在り方に関する専門委員会 日時:平成16年12月15日(水)10:00〜12:00 場所:霞が関東京會舘「シルバースタールーム」 出席委員:石橋委員、岩田委員長、大川委員、岡部委員、京極委員、後藤委員、根本委員、      布川委員、松浦委員        鈴木委員、田中委員、八田委員は欠席 議題  :(1)報告書(案)について       (2) その他 (岩田委員長)  それでは定刻となりましたので、ただいまより第18回社会保障審議会福祉部会生活保 護制度の在り方に関する専門委員会を開催します。委員の皆様方におかれましては、年 末の大変御多忙なところ御参加いただきましてありがとうございました。  それでは、まず事務局から本日の委員の出席状況及び配布資料について説明をお願い します。 (事務局)  委員の出席状況でございますが、鈴木委員、八田委員及び田中委員から御欠席との連 絡をいただいております。京極先生は、遅れていらっしゃいます。  続きまして、資料の確認をさせていただきます。  上から順番に、  議事次第  座席表  資料1「三位一体の改革について」  資料2が手違いで資料1となっておりますが「生活保護制度の在り方に関する専門委 員会報告書(案)」  それから委員の皆様のみ第17回議事録案  となっております。  資料は以上でございます。お手元に以上の資料がない場合にはお知らせください。事 務局よりお渡しいたします。  なお、議事録案につきましてはこれから各委員に内容を御確認いただくため、委員の みの配布となっております。 (岩田委員長)  ありがとうございました。それでは、議事に入ります前に先般、政府・与党の合意に 至りました三位一体改革について、資料1に沿って事務局から御説明いただきます。 (岡田保護課長より資料1「三位一体の改革について」に沿って御説明) (岩田委員長)  ありがとうございました。それでは、本日の議事に入りたいと思います。 (松浦委員)  ちょっとよろしいですか。この注の(1)は、合意の中でこのとおりのことが書かれてい るわけですか。 (岡田保護課長)  そうでございます。 (松浦委員)  補助率の見直しについてでありますが、平成18年度から実施するということでしょう か。 (岡田保護課長)  これは協議機関を設置して検討を行い、17年度秋までに結論を得て18年度から実施す るということで、これ以上、私としてはコメントのしようがございません。以上でござ います。 (松浦委員)  わかりました。 (岩田委員長)  松浦委員には大変御心配なところだと思いますが、私どももその後の議論にもなりま す。大変微妙な表現ではございますが、これ以上この場ではいたし方ないということな ので、御説明いただいたということにとどめておきたいと思います。  本日の議事は、いよいよ17回というこの種の専門委員会としては大変長い議論を踏ま えまして、そして2回ほど延長戦ということになりまして本日を迎えました。この委員 会でお認めいただきました起草委員会において文案を練りまして、そして委員の皆様に 何回か案をお送りして御意見をいただき、修正するという作業を加えまして、ようやく お手元の報告書(案)を取りまとめることができました。  そこで、本日はこの全文を読み上げていただきまして、その上で各委員から御意見を ちょうだいして最後の修正としてまとめたいと思っておりますので、どうぞよろしくお 願いいたします。  それでは、ちょっと長くて恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。 (事務局より「生活保護制度の在り方に関する専門委員会 報告書(案)」朗読) (岩田委員長)  長文をどうもありがとうございました。それでは、今読み上げていただきました報告 書(案)について御質問も含め、自由に委員の方々の御意見をいただきたいと思いま す。どうぞどこからでも結構です。 (大川委員)  1か所、私の方で修正も含め論議をお願いしたい点がございます。11ページの「財源 の確保」のところですが、文章の提案としてこのような表現にすることはできないだろ うかというものです。「生活保護制度は国が国民の最低生活を保障する制度である」の 後ですが、「このため、国は」として「いかなる突発的な事情において〜憲法上保障さ れた生存権を保障する機能を果たし、社会的不安定性が生じることを防ぐ責任を負って いる」という形にすることができないかどうか、提案をしたいと思います。 (岩田委員長)  ありがとうございました。今の御指摘の箇所あるいは「財源の確保」についてその他 御意見はございますか。御意見があれば一緒にと思います。 (後藤委員)  はじめに、全編を通じて、「生活保護給付」を、「自立支援」と「自立を支える所得 扶助」とのセットとして位置づけた上で、とりわけ後者に関してその対象を低所得者の 方にまで広げる必要があると指摘されている点を確認したいと思います。そのうえで、 今後検討していただきたいことは、両者の財源をどのように確保するのかという問題で す。現金支給のキャッシュの部分と諸々の自立支援サービスの部分をまとめて、アメリ カで実施されているように、ブロックグラントの形で補助金を支給するのか、あるい は、2つを異なる政策として分けた上で補助金を別枠で支給するのか。前者には、地方 自治体の裁量のもとで両者のウエイトを変えながら使えるというメリットがあるのです が、バジェットの総量が大きくなりますから景気の変動によってカットされやすくなっ てしまうというデメリットがあると思います。以上です。 (岩田委員長)  松浦委員、何か御意見はありますか。 (松浦委員)  私の意見は、是非原案のままでお願いしたい。我々もいろいろと議論をしてきていま して、一方で三位一体改革というものが動いていますから、いわゆる国と地方の持ち分 の部分にも触れるおそれがあるのです。ですから、それは政府と地方6団体の協議の場 でやってほしいということが根底にありますので、私はこの文章でお願いしたいです。 (岩田委員長)  起草委員会としても一応そのことを含んで、そのほか八田委員からも今、後藤委員か ら御指摘があったようなことと関連した御指摘もありました。それで、その辺まで踏み 込むと負担問題そのものに入っていきますし、もちろんこの委員会でもかなり議論され ましたので、財源のところそのものをカットするのはやはり議論を無駄にしてしまうの で、なるべく反映させた形で取りまとめたつもりです。つまり今、後藤委員がおっしゃ った点はこの後、非常に大事になると思いますが、私どもの議論としてはともかく国の 制度として財源確保というものがまず非常に大事である。それから、自立支援プログラ ムを今回かなり強調して提案をしておりますので、その財源もきちんと裏付けてやらな いと、前に石橋委員が御指摘されたようにアメリカ等のような結果になってしまうおそ れもあるということで、その点にとどめたというような次第です。  「国が」という今の大川委員のところはいかがでしょうか。 (松浦委員)  私は今、三位一体改革についてのペーパーの中で、注の中に「生活保護費負担金及び 児童扶養手当の補助率の見直しについては、地方団体関係者が参加する協議機関を設置 して検討を行い」と書いてありますので、私はそちらの方に任せて議論をしてもらった 方がいいのではないかと思います。 (岩田委員長)  いかがでしょうか。 (大川委員)  私が今「国が」という主語を入れるように言ったのは、この趣旨を我々の論議をより 強化するという意味で申したのですが、もしそのようなことで今、出された意見で確認 されるということであれば、私も了解させていただきたいと思います。 (岩田委員長)  多分、大川委員の御指摘のところは、そんなことを書くまでもなく、「生活保護制度 は国が国民の」という一文を入れたのはその意味だと御了解いただければありがたいと 思います。 (松浦委員)  そういうことは、地方の方としては多分主張していくと思います。 (岩田委員長)  そうですね。そういうことでよろしいでしょうか。後藤委員の御意見は本当に大事な ことなので、是非来年度の議論で外野の席から後藤委員が大きな声で言っていただきた いと思います。  そのほか、いかがでしょうか。 (布川委員)  表現が少しわかりにくいと思うのは、これは八田委員の御意見だと思うのですが、最 後の辺りで「生活保護制度は地方のサービス競争には適さないとの指摘もあった」とい うところです。今日八田委員がいらっしゃれば含意をもう少し丁寧に聞けたかと思うの ですが、私が受けたイメージだと、生活保護制度というのは地方自治体にとって拡充す るインセンティブのない制度だというようなことと、逆に財源がちゃんと保障されない と供給が減っていってしまう。供給過少になってしまうのではないかという問題提起も 一緒にされたのではないかと思うのです。  その辺の含意が、「サービス競争には適さない」というだけだと伝わりにくいかと思 うので、もう少しわかりやすい表現になればと思います。 (岩田委員長)  何か対案がございますか。 (布川委員)  対案というか、八田先生がいらっしゃればと思ったのですが。 (岩田委員長)  そうしたら、そこに少し言葉を補って、地方のサービス競争によって拡大されると か、よくなったり悪くなったりする制度ではないという表現に変えましょうか。 (布川委員)  そうですね。財源についてちゃんと保障されないと、自治体によっては少なく供給せ ざるを得なくなる場合もあることも含めたのではないかと思いますので。 (岩田委員長)  では、文言は八田先生の御発言の議事録等を参照して、後ほど私と事務局との方で調 整させていただいてよろしいでしょうか。 (松浦委員)  しかし、また触るとなると・・・。私は全体を代表して物を言っていまして、個人で 物を言っておりません。 (岩田委員長)  では、このままでいきますか。言えばいろいろ丁寧に言った方がいいところはたくさ んあるのですが、かなりこれは当初の案よりも分量も多いのです。それで、なるべくた くさんの方に読んでいただきたいということもありますので、では財源のところは手を 触れないということで御了解いただけますか。 (布川委員)  ほかのところも触れたくないですか。 (松浦委員)  それはありません。特に神経質になっているのはこの財源の部分ですから。 (岩田委員長)  それでは、京極委員どうぞ。 (京極委員)  遅れてきてすみません。これは文章を直せということではなくて、最後の会なので3 点ばかり議事録に是非記録をしていただきたいと思って発言させていただきます。  1点目は国と地方の関係で、これはさっき市長会を代表しておっしゃっていたので、 この文章をいじれとは申しませんが、やはり所得保障の一番の根幹である生活保護制度 については国の責務が大きいというのは十分でございますが、現行では福祉事務所があ る自治体がかなり責任を負うという形になっています。  福祉事務所の在り方との関係で今後どうするかということはあるのですが、21世紀を 展望したときに広域行政で考えるとなると、国と県あるいは政令指定都市という形にす べきであり、現行のまま市町村が中心になって福祉事務所を持てば機械的に生活保護制 度の所管が責任を負うというのはいかがなものか、ということが1点ございます。  医療保険制度もだんだんと広域化ということを考えていますので、介護保険とか対人 福祉サービスと違って、市町村との関係で見ますと、所得保障の役割というのは大分違 うのではないか。イギリスみたいに完全に国が社会保障事務所として生活保護と年金の 両方を所管するというのがいいかどうか。これは国情が違いますので簡単には言えませ んが、議論としては論点としてこれから検討する必要があるのではないか。  2点目は、国民皆保険化の一方で、被保護者については基本的には国民健康保険から 抜ける形になっています。介護保険では基本的には生活保護者も被保険者にとどまって おり、その保険料は生活扶助から出しています。同様に、市町村の反対があるのは重々 承知しておりますが、やはり被保護者も国民の一員として皆保険化においては被保険者 として国民健康保険のメンバーになって、それで医療扶助部分は個人負担の部分のみ、 2割あるいは3割にすべきではないか。  これは大議論になります。国民健康保険の制度が一体、今のように零細町村まで含め た形でいいのかどうかということが絡んでおりますので、これが大規模化した場合はや はり変わってくるのではないかと思います。これが2点目であります。  3点目は、福祉事務所の在り方と関係して、生活保護業務のアウトソーシングについ て、元局長の炭谷さんなども大分強調されていました。それはそれで一つの考え方で、 専門家の知見を借りるのはいいのですが、生活保護行政は生活保護制度ができる前から もともと専門吏員が行うこととなっていたものです。法律上は社会福祉法に、福祉事務 所があって、福祉地区があって、そしてそこに主事を置くという構成になっているので すが、これは法の構成でありまして、歴史的な順序としてはまず人があったのです。専 門吏員を置いて、専門吏員が集まる場所が福祉事務所で、その福祉事務所が所管するの は大体人口10万ぐらいがいいのではないか。  当時は旧自治省と旧厚生省と大分綱引きがありまして、自治省は市町村に全部置けと いう考え方ですが、厚生省は、そんなに1万2,000もあった市町村に福祉事務所を置い てもどうにもならないので、どちらかというと県レベル置くという考え方でした。綱引 きの結果、市は必置義務で町村は任意ということになって、県が実質的にはカバーする ということになりました。  その人材について今、主事というものがあるのですが、社会福祉士及び介護福祉士法 ができたときに、もう主事は要らないのではないかという議論がありました。しかし、 そこは妥協線で、現実に底上げをしているのが主事でありますので、有資格者だけ採用 していたのではとても行政はできない。かといって、逆に現状のように福祉事務所に社 会福祉士がいなくて自主指導もろくにできないという状況は決して望ましいことではな い。福祉事務所長は役人のトップですから必ずしも専門吏員でなくてもいいと思うので すが、特に査察指導とか、その辺りについては社会福祉士を設置するのを義務付けるの は難しいですが、少なくとも指導上、置くということで機能を高めて、そしてそういう 人の研修をきちんとする。そういうことであれば可能性がありますので、この人材につ いては従来の主事の強化のみならずそういう点も考えるべきではないか。  以上、3点をとりあえず議事録に残していただくために発言させていただきました。 (岩田委員長)  では、根本委員、大川委員とお願いします。 (根本委員)  私も議事録に残していただくという趣旨で発言させていただきます。  1つ非常にうれしいと思ったのは、当たり前のことなのですが、生活保護の機能がき ちんとこのペーパーの中においても委員会の名において確認できたということです。つ まり、国の責任で国民に対して最低生活を保障する。そして、国民と社会の安定、安心 を図るというふうな生活保護の機能がこのペーパーにおいて確認できたということはと てもうれしいことだと思っております。  2点目は最低生活を実際に保障する基準の在り方ですが、その算定に関して一定のル ールができたというのも一つの重要なポイントかと思います。  しかし、これはいつか申し上げたように、私は今のいかなる国においても本当の意味 で金額的に最低生活ラインを出すということは相当困難というか、恐らく不可能ではな いかと思うところもございます。  一方、そういう意味で今回の議論を通じて、もちろん算定の在り方に関して、より合 理的に金額的なラインを追究するということはとても大事なことですが、その一方、国 民の合意をいかに得るかという、そちらの仕組みづくりをきちんとつくっていくという こともとても大事なポイントとして今後あるのではないかと思いました。  3点目は自立支援のプログラムですが、これも以前申し上げたように、このアイデア が出てきたときにやっと着地点が見えたということでほっとしたという感想を申し上げ たのですが、今でもそう思っております。  合わせまして、自立の概念について、社会福祉法との関連で、より積極的に自立の概 念が確認できたということも非常にうれしいことかと思っております。ただ、このプロ グラムのアイデア自身を生かすも殺すも、今、京極委員が言われたように実施体制の在 り方に関わってくるのだろうと思います。人次第というところもあると思います。  そして、この委員会の中でも明らかにされましたように、福祉事務所の現業員につい ての最近のいろいろな意味での質量両方の困難性の問題は、特に平成12年の法定数から 標準数への流れの中でそういう問題が大きくなってきたということも相当明らかにされ てきたのだろうと思います。  そういうことに対してどう対応していくのかということも、法的な部分も含めてきち んと、これは別の次元の話と思いますが、整理、検討していっていただきたい。合わせ て、これも京極委員が言われていることでありますが、県と市の福祉事務所の在り方 等、その実施体制についてきちんと整理をしていく必要があるのかなと、その辺りを今 後の課題として感じておりますので、述べさせていただきました。 (岩田委員長)  では、大川委員どうぞ。 (大川委員)  先ほどの京極委員の御意見に戻ってしまうのですが、私も12ページの(2)の「組織 的取組」の部分で、福祉事務所が本来の公的、社会的な責任を果たす中で生活保護制度 が適切に運用されていくという視点を入れ込むことは重要かと考えております。  その上で、アウトソーシングの話が出ておりましたが、自立支援プログラムの中にア ウトソーシングを一つの手段として入れるということは多分この間、論議をされてきた と思うのですが、(2)の「組織的取組」の中に「アウトソーシング等の推進などによ り」と入れてしまうと、むしろ本来福祉事務所がやるべきことまでもアウトソーシング してしまうということで言葉が一人歩きをするおそれがあるのではないかということを 危惧しております。ですので、ここは可能であれば「利用できる社会資源の拡大」とい うところに表現を修正していただけると、よりここで論議された趣旨が適切に伝わるの ではないかと思います。  更に言えば、これからの福祉事務所あるいはケースワーカーというのは、被保護世帯 の問題を聞き取ることによって新たな社会資源をつくっていく。つまり、ソーシャルイ ンクルージョンであるとか、あるいは古くはコミュニティワークということが言われて おりますが、こういったものの一翼を担うのも生活保護ケースワーカーの役割であると いう位置付けも入れていくべきではないか。これは個人的な意見ですが、いずれにして も今までの論議に沿ってここの表現を考えると、私は「利用できる社会資源の拡大」と いうところに訂正をした方が適切ではないかと考えます。以上です。 (岩田委員長)  今、修正の動議がございましたので、12ページの(2)の「組織的取組」のパラグラ フ2のところの「アウトソーシング等の推進などにより」を「利用できる社会資源の拡 大などにより」という表現に修正してはどうかという御意見ですが、いかがでしょう か。確かにいきなりアウトソーシングありきというよりは、当然そういうことも視野に 入れた社会資源の活用の拡大、あるいは活用等によるとした方が適切かと思います。 (大川委員)  活用のみならず、新たにつくるということも必要かとは思います。あるいは、問題発 見とかいろいろな要素はありますので。 (岩田委員長)  それでは、「社会資源の拡大」という御提案ですが、いかがでしょうか。もしよろし ければ、先ほどの京極委員の御発言もございまして、ここだけが一人歩きして福祉事務 所の中における専門的な職員の拡大ということでネガティブな採用をするということも 危惧されるということがありますので、ではここを「利用できる社会資源の拡大などに より」というふうに修正したいと思います。よろしいでしょうか。  そのほか、よろしいでしょうか。 (布川委員)  違うところですが、2点修正ができたらと思う点があります。  1点目は自立支援プログラムの中身です。意義付けについては先ほど根本委員がおっ しゃられたとおりの意味があるかと思います。ただ、こういうプログラムを始めると、 どうしても取組が不十分なケースというものが多々出てくるのは予想されるところで す。専門委員会として残念なことに、それをどう積極的に動機付けていくかというとこ ろまでは十分議論ができなかったと思うのです。動機付けの手法や仕組みなど、取組が 困難で不十分な人に対してどうインセンティブを高めていくのかについては、現場の方 にこれからいろいろな実践をしていただくという形で解決するしかありません。  そうした前提の上で、7ページ目の(3)の取組が不十分な場合の扱いについてです。 まずは「プログラム自体が被保護者にとって適当か否かについてよく検討する」という 見直しをする。その次に、見直しをしたものの、「取組が不十分な場合」には「文書に よる指導・指示を行う」となっています。ここでいう「取組が不十分な場合」に、もう 一回プログラムの見直しにいくのか、それとも、そのまま文書指示で指導・指示、それ はペナルティの方向にいくということになりますが、ここの区分けがもう少し明確にで きた方がいいのではないかと思うのです。一度見直せば、次は制裁の方向にいっていい というふうにも見えてしまうものですから。  後の方を「取組が著しく不十分な場合」というふうに直していただくか、「取組が不 十分な場合や被保護者が合理的理由なくプログラムへの参加自体を拒否している場合な ど、著しい問題のある場合は」とか、そのような文書を入れていただけたらと思いま す。それが1つ目のお願いです。 (岩田委員長)  今のことは7ページの(3)のところです。「地方自治体は被保護者の取組状況を定期 的に評価し」となっていますが、これは段階を追って確かに書いてあって廃止、停止と いうようなことは慎重にやるべきだというニュアンスがかなりこめられているところで すが、「定期的に評価し」ですから当然最初は1回評価してすぐこうなるということで はなくて、定期的に評価した結果ということですが、しかし、いろいろな誤解があると すると、例えば2段落目を「定期的なプログラムの再度の見直し等にもかかわらず」と いう表現にしましょうか。「著しく」というのも、ではどこが著しいかということにな るので、むしろ「プログラムの定期的な見直しを重ねたにもかかわらず、取組状況が不 十分な場合や」というようにすれば多分布川委員の御疑念はなくなるかと思います。  「それでもなお」というのがまたきますから、この辺りも実際にやる場合は確かに、 では何回やればどうだということになるかもしれませんが、こういうことはケース・バ イ・ケースということが大変あると思うので、むしろこういう評価機構全体を逆に評価 するといいますか、つまりチェックが働くことが大事で、幾らここで段階を丁寧に書い ても、むしろ繁雑になるかなということもあります。  でも、それにもかかわらず、どうしてもということでしたら、この2段目のところに 「プログラムの定期的見直し等」と入れれば、何回かやったというイメージにならない かと思いますが。  では、根本委員どうぞ。 (根本委員)  (3)のところに、定期的に評価し、必要に応じて見直しを行うとありますので、2段 目の最初に「定期的かつ必要なプログラムの見直し等にもかかわらず」と、例えばそう いうふうな形で入れてもよろしいかと思います。 (岩田委員長)  今の修正でいかがでしょうか。2番目のハイフンの後に「定期的かつ必要なプログラ ムの見直し等にもかかわらず」と入れる。定期的という場合、単数のということにはな らないと思うので。 (後藤委員)  12ページの「組織的取組」の2段落目の上から2行目ですが、今の点に関連して、自 立支援プログラムの策定の際にはその取組の評価の実施方法に関して検討していく、つ まり、例えば、「取組状況が不十分だというのは何をもって不十分と判断するのか」を これから詰めていくことがここで書かれていると理解してよろしいのですか。 (岩田委員長)  マニュアル的に整理されるというのはそうですね。  それで、この報告書には出していませんが、以前事務局からも図で御説明があったと おり、何度もぐるぐる回るというイメージなので、その点を今後進めていく上で各自治 体、福祉事務所によく事務局の方から御説明いただいく、あるいは具体的に事務局の方 で恐らく今のようなことをもっと細かく落としたもので御説明になると思うので、そこ に今の御意見を十分反映させて、いきなり刀を抜くのではなくて、むしろプログラムを 効果的にするということに主眼があって、しかしもちろんいろいろなケースがあります ので、そのときにどういうふうにするかということとして今のことを整理していただく ということでいかがでしょうか。よろしいですか。  そうすると、さっきの7ページの2段落目に「定期的かつ必要な」という言葉を補う という修正にさせていただくということで御異議ございませんか。  そのほかのところはいかがでしょうか。 (布川委員)  もう一点よろしいでしょうか。稼働能力活用に対して10ページ目に「意見があった」 というものが2つ載っているのですが、関連がわかりにくい表現になっているかと思い ますので、修正をお願いしたいと思います。まず、私なりに2つの意見の違いをこんな ふうに解釈していますということを説明させていただいた上で、このように直していた だきたいという提案をさせていただきます。  専門委員会としては、自立支援、就労支援を開始するためには生活困窮に陥った人を なるべく早目に保護の対象とすべきという議論をしてきました。そのためには能力活用 に関して、1つは現行の稼働能力活用の規定に基づいてその運用基準を弾力化するとい う方向での議論をしたと思います。もう一つは、時期的にはこちらの方を私が先に提起 をしたつもりだったのですが、そもそも現行の稼働能力活用規定、前のページの(1)か ら(3)までのことですが、それも見直すべきではないかというような提案もし、意見も 出したかと思います。  それで、10ページ目の最初の方の「なお」から「また、そもそも」の前までの「意見 があった」という文章は、現行規定の枠内の議論のまとめになるのではないかと思いま す。その後の「また、そもそも」以下の方は、現行の規定そのものの見直しにつながる 提案になるのではないか。そういうふうに位置付けを明確にした方がいいのではないか と思うのです。  まず、最初の「意見があった」についての修正に関わることです。現行の規定を前提 にした範囲での議論を6月末の第13回の専門委員会で行ったと思います。特に申請時に 稼働能力活用要件をどう扱うべきかという議論をして、そのときには一定の意見集約も できたかと思います。それが、ここの「なお」以下の最初の文章の表現になっているの ではないかと思います。  これは、繰り返しになりますが、9ページに示されているような現行の稼働能力活用 の要件規定そのものをなくすとか、(1)から(3)までありますが、それを2つだけにする とかということではなくて、現行規定の(3)「実際に稼働能力を活用する就労の場を得 ることができるか」を申請時の実態に合わせて弾力的に判断しようというものだったと 思うのです。特に申請時には稼働能力があってもいろいろな就労阻害要因を抱えていた り、努力しようにも努力しようがない状況にあったりというようなことで、能力の活用 の場そのものを得るのが難しい。就職活動も十分できない。そうしたことを踏まえて、 稼働能力活用の場を得ようにも得られないのだから、そういう状態を認めようというこ とだったと思います。これは、その意味付けからすると(3)の判断をできるだけ弾力化 しようということであって、(3)の判断要素そのものをなくそうということではない議 論だったと思います。そんな位置付けの議論だったかと思います。  現行の規定をあくまでも前提にしていますから、(3)はそれで弾力化してクリアはで きるものの、(2)の「意思の確認」というものをどうするのか。これが必要になるとい うのはそのとおりのことだと思います。第13回委員会ではこの意思の確認をどうするの かというのは余り具体的には詰められなかったかと思いますし、(3)の判断をそのよう に弾力化していくことに対して法的に妥当かという疑義も出されたかと思います。  意思の確認をどうするかとか、そうした弾力的な運用が妥当なのかどうかは、結局今 日までのところで十分詰め切れなかったと思います。ただ、6月29日の専門委員会のと きにはこの(3)の弾力的な運用については意見があったというよりも、もう少し意見の 集約もあったのではないか。なるべく早目に生活保護を使ってもらうという方向で、そ れで自立支援をしていこうということでの意見集約はあったかと思うのです。「意見が あった」という書き方ですと、集約したというところには至らずまだ課題が残ったとい うことになります。例えば経過を表す意味で「検討をした」とか「議論をした」くらい のことに直していただければというのがまず1つ目です。  長くなって恐縮ですが、2番目の文書の方で「また、そもそも」以下の「意見があっ た」についてです。これは現行規定そのものの見直しが必要なのではないかという意見 になると思います。特に先ほど言ったように、就労の意思が確認できない人というのは 現在の規定からするとどうしても保護の対象にならないということになりますから、こ れは自立支援の議論の中ではやはり意思がなかなか明確に示せない人も含めて、今の社 会の状況からすると社会的な「ひきこもり」の人なども含めて自立の支援をしていくに は、稼働能力活用の意思があるという判断要素があると、そういう人たちがなかなか保 護の対象にならないのではないか。入口で入ってこられないということになると思いま す。  そういう点も考えますと、これは5月の委員会などで私が申し上げた意見ですが、そ もそも生活保護法というのは旧生活保護法と違って勤労の意思のない者とか、勤労を怠 る者なども絶対的な欠格者とはせず、一応まずは保護の対象として自立支援を始めると いうのが今の生活保護法の位置付けなのではないかということも申し上げましたし、そ れに近いような御意見が出たようにも記憶はしております。  ですから、2番目の「意見があった」の方は、現行の能力活用に関わる運用規定、9 ページ目の規定そのものの変更の見直しという意見であるということがわかるようにし ていただきたい。2番目の「また、そもそも」というところに少し文章を足していただ けたらと思います。足していただきたい言葉としては例えば「また、生活保護制度の在 り方を自立就労支援の観点から見直すに当たっては」というのを次に入れていただい て、「そもそも稼働能力活用の現行の要件規定自体を見直し、就労を怠る者や稼働能力 活用の意思のない者もとりあえず保護の対象とし、自立支援ができるようにすべきであ るとの意見もあった」というようなことにしていただくと、2番目の意見の趣旨がはっ きりするかと思います。 (岩田委員長)  今の上の方はいいですか。「なお」のところですが。 (布川委員)  とりあえずということで。 (岩田委員長)  それでは、今の提案の「また」以降のところで今、布川委員がおっしゃったことを私 は全部書き切れなかったものですからもう一回言えないのですが、そのように文言を修 正するということについていかがでしょうか。 (布川委員)  上の方は、最後の「意見があった」という表現の微調整ということです。中身ではな くて、まとめ方の表現が少しどうかなということです。 (岩田委員長)  私の記憶では、「稼働能力の活用の要件を充足していると考え、保護を開始すべきで あるとの意見があった」というふうにせずに、稼働能力を活用する意思がある旨表明さ れれば、このプログラムの適用を積極的に進めるべきであるというところまでは完全に 一致したと思うのです。  だから、例えば「なお、自立支援プログラム導入後においては、就労していない者か ら保護申請があった場合、何らかの就労阻害要因を抱え、十分な就職活動ができない状 態にある者と判断し、稼働能力を活用する意思がある旨表明されれば、このプログラム の適用を積極的に進めるべきである。」というのはどうか。ここまでは多分、委員会 も、あるいは事務局が先ほど読み上げたところにもありましたように、低所得者にちょ っと足を伸ばすということもあって、ただ、生活扶助を含めた生活保護制度の経済給付 全体への適用にするかどうかのところで少し判断が分かれたと理解しております。  ただ、それは生活扶助の扱いも含めて検討すべきであると指摘していますので、もし も今のところを修正するとすれば、例えば「意思がある旨表明されれば自立支援プログ ラムへの適用を積極的に進めるべきである」とすれば、委員会の議論はそのまま反映さ れるかなと。そして「また」以降を、布川委員がさっきおっしゃったように変えていけ ば、布川委員が御指摘されたことも反映されると思いますが、いかがでしょうか。 (大川委員)  私は、前段の部分は今のまとめでいいかと思うのですが、後段の部分で率直に言って 危惧するのは、表現の問題もございますが、能力活用を怠る者も保護の対象にするとい うことについてです。  確かに制度発足時の無差別平等原則の導入の際にはそういったことが当然意識として ありましたし、今回の専門委員会の中でも単に怠るということではなくて怠らざるを得 ない状況はどういう事情があるのかということを踏まえて判断すべきだという論議はあ ったように思うのです。  ただ、その表現をそのまま使ってしまうと、私は今回の論議で一番重要だったのは、 より積極的に生活保護が一歩前に出て、そういう困窮者も対象としていこうという理念 を入れたときに、その文言が入ることによって逆に自治体側、実施機関側が、あるいは 国民の側が不必要に反発をして、そういう人まで保護をするのはおかしいのではないか という意見につながってしまうことを大変危惧する面がございます。  ですので、布川委員の今、言った部分をどのように盛り込むかとすれば、かなり大仰 な話になりますが、制度発足時の無差別平等原則の考え方をどこかに入れる。それはあ くまでもその欠格条項を外し、基本的に無差別平等である。ただし、補足性の要件は満 たしていただくという考え方で制度ができているということを入れるという整理でいか がでしょうか。  ついでながら、それをもし入れると、この報告書には生活保護の4原則は全部入るの です。国家責任、無差別平等、補足性の原理、最低生活保障の4つの原理が全部入り込 むことになりますので、柱とすると非常にしっかりしたものになるだろうという考えも ありますので、そういう形ではいかがでしょうかという提案です。 (岩田委員長)  具体的にもう少しお願いします。 (大川委員)  具体的な表現が出てこなくて申し訳ないのですが。 (岩田委員長)  欠格条項とか、資格についてはその前の案で一回入れ込んだときもあったのです。し かしながら、そうでなくてもここの記述は少し長いです。長いから入れないなどという のはけしからぬという話になるかもしれませんが、ただ、よく読んでいただければかな り前のところにそういうことを書いているのです、機械的にやってはいけないとか、保 護の必要な人が適切に保護を受けられる等々。  それで、前に石橋委員が御指摘になったように、無差別平等欠格条項というものと保 護の要件というものは極めて微妙なバランスの上に立った綱渡りみたいな制度だと私は 常々思っていますが、要件を資格としていませんから、詰めれば詰めるほど袋小路に陥 るところもございます。ですから、無差別平等と言ったら皆いいじゃないかとなるし、 しかし、この種の公的扶助制度である以上、要件というものは恐らく社会や国民は要求 するだろうという、そのすれすれのところでつくられる。  ただ、この委員会の意見としては余りにそれが恣意的に使われたり、ある面で広げて しまったり閉めてしまったりというようなことを勝手にしないような、皆が納得できる ところでやるにはどうしたらいいかということだと思うのです。  ただ、もちろん委員個々人の御意見はそれぞれ微妙にその辺の解釈でも違いますし、 また実施機関も実際上かなり微妙なやり方でやっていると思うのです。  そこで、これは割合よく読んでいただければそういうふうになるとは思うのですが、 後藤委員から何か御意見はありますか。 (後藤委員)  1行目に無差別平等が書いてあります。 (岩田委員長)  そうですね。かなりそういう意味ではこの種の報告書としては理念的過ぎるくらい大 上段に振りかぶっているのです。それで、大上段に振りかぶることも大事ですし、私た ちは繰り返しそこに戻るということは大変大事ですが、ではそこに戻れば全部解決する かというと、その解釈にやはり幅がある。さっき根本委員もおっしゃったように、最低 基準でさえある種の幅がありますね。  ただ、それは実施の過程で絶えずチェックし、やはり検証ということが大事になって きます。行政にしても、基準にしても、外部が入りながら検証をしていく。もちろん生 活保護は国民の権利ですから、利用者や国民がそれを求めていくというような形で、そ こが担保されるしかないのではないかと思うのです。  ただ、ここでの問題はここのまとめ方になりますので、特に「また」以降は布川委員 の御意見を反映したということでもあるので、もちろん布川委員だけではなくてかなり それを支持する類似の発言なのですが、それにもかかわらず先ほどの大川委員の御指摘 があったわけですが、この直し方について布川委員はいかがですか。 (布川委員)  「就労を怠る者」というのは、ちょっと表現が古いとは思うのです。もう一つ「稼働 能力活用の意思のない者」の方は、能力活用の意思を示せない人ということです。具体 的にはそうした人で、保護と自立支援が必要な人は今たくさんいると思うのです。だか ら、そこもちゃんと自立支援のみならず、生活保障もできるようにするには、どうして も現行の3つの規定が壁になるのではないかと思いますので、文章的にはそこの見直し が入るようなニュアンスに変えていただければと思います。 (岩田委員長)  いずれにしても、このなお書き以下は自立支援プログラムを今回積極的に導入するこ とによって、例えばこういうふうに解釈することもできるという展開ではまずいでしょ うか。  布川委員のおっしゃることは理解できるのですが、そのようなそもそも論にするとさ っきの資格と要件の極めて微妙なことに触れなければならない。だから、「なお、今回 提案した自立支援プログラムの導入によって」というような文言を入れて、前段は「就 労していない者から保護申請があった場合、何らかの就労阻害要因を抱え、十分な就職 活動ができない状態にある者と判断し、稼働能力を活用する意思がある旨を表明されれ ば、このプログラムの適用を積極的に進めるべきである」。「意見があった」ではなく て、「ある」でそこを止めまして、「また、そもそも稼働能力活用の」、もしも必要で あれば「その意思の表明いかんを問わず、稼働能力活用の要件自体を見直し、就労して いない者についてはとりあえずこのプログラムと保護の対象」、あるいは「保護の対象 」でも結構ですが、そう「することも考えられるとの意見があった」ということでいか がでしょうか。  大川委員は、よろしいですか。  では、今のパラグラフをそんなに長くはならないようにして今、私が言ったような感 じで修正したいと思います。今、私は口でしゃべってしまったので書いていないので… …。 (松浦委員)  この案は、一度は配布をされているわけでしょう。それを全部読んでいますから余り 動かすと、今、議論がずっと進んでいましたが、ちょっとまずいところがあるのです。 ですから、それは是非この案が配られたときにやっておいてほしかったと思っているの が今の私の感じです。  それで、今この文章を読んでそう逸脱しないのであれば、私は原案のとおりいっても らった方が、余りたくさん文言が変わってしまいますと、趣旨は変わらないでしょう が、その辺も少し気をつけて取り扱っていただきたいと思います。 (岩田委員長)  いかがでしょうか。 (布川委員)  ただ、前の方の文章は今、直していただいたものの方が、委員会としての正確さが出 るのではないかと思います。 (岩田委員長)  では、前段だけ直して後段は、多分布川委員にとってはかなり御疑念があるでしょう が、後段はこのままでも読めば布川委員がおっしゃったようには読めますから大丈夫だ ろうと私は思います。いかがでしょうか。よろしいですか。  では、余り直さない方がいいという大原則を生かして、前段だけ先ほどのように修正 してということでいかがでしょうか。よろしいですか。  では、そのようにさせていただきます。  そのほかございますか。だんだん残り時間も少なくなってまいりましたが、一番先に 言わなければならなかったことを忘れていました。今月の初めに福祉部会がございまし て、本来であればそこにこの結果が報告されるはずだったので、今日に延期になったこ とを申し上げましたら、御質問が福祉部会の委員から出まして、母子加算について慎重 に議論してほしいという意見を伝えてほしいということがございましたので、お伝えし たいと思います。かなり慎重にやったと思っております。  それから、御欠席の田中委員から御意見をいただいておりますので、御紹介いただけ ますか。 (事務局)  田中委員の御意見につきまして御紹介いたします。  本日は、18回にもわたる生活保護制度の在り方に関する専門委員会の最終回にもかか わらず出席することができず、申し訳ありません。専門委員会の報告書案を拝見して、 救護施設の立場から最後に御意見を申し上げたいと思います。  今回、生活保護制度を自立支援の観点から大きく見直すという中で、救護施設を始め とする保護施設はこれまでも自立支援について積極的に取り組ませていただいており、 私が言うのも恐縮ですが、実績もそれなりに積んでいると考えております。  こうしたことから、報告書案にも少し記載していただいていますが、これまでの自立 支援の取組も評価していただきたいという思いとともに、今後も入所者の自立支援に十 分取り組むため、救護施設を始めとする保護施設の条件整備を検討していただきたいと 思います。以上です。 (岩田委員長)  そのほか、修正意見はございますか。 (後藤委員)  最後の13ページのその他の指摘事項の(1)番です。これを入れてくださったことは非 常に感謝します。その上で、若干の付記をしたいのですが、それが松浦委員の許容範囲 であるかをお聞かせください。  「生活保護制度に関する積極的な啓発」というものを「生活保護制度の意義とそれを 支えることの意味に関する」というふうに、「意義」という言葉と「それを支えること の意味」という2つを入れてほしいと思います。  提案の理由に関しては、議事録に残していただくだけで構わないです。恐らく就労能 力あるいは保護廃止という問題とも関わると思うのですが、労働することができ、資源 を他者に提供する余裕のある人たちが、自分のためのみならず、また、自分の家族のた めのみならず、働き資源を提供することの意味、その結果、本当に困っている人たちに 対して資源を移転することができることの意味を、教育の場でもそうですが、国民にき ちんと伝えるべきだと思います。このような視点をもつことは、生活保護制度にとって 重要であるだけでなく、個々人の生にとっても重要かもしれません。「やりたいことを やれ」と言われ続けたものの、何のために働くのかという疑問を払拭しきれないでいる 学生たちを見ていると、そんな気がしてなりません。以上です。 (岩田委員長)  ありがとうございました。最後の13ページの第5の(1)で「生活保護制度に関する積 極的な啓発」を「生活保護制度の意義とそれを支えることの意味に関する積極的な啓発 」というふうに修正してはどうかという御提案です。 (松浦委員)  特にこういうものができると直接我々がお金を使いますから、この文言があるではな いか、だからもっと使えということにならない範囲ならば結構です。私は今の修正は大 丈夫だと思います。 (岩田委員長)  啓発は多分お金がかからないと思います。 (松浦委員)  啓発が入っているわけですから、意義とそれを支える意味くらいだったら結構だと思 います。それにお金がばんと跳ね返ってくると、私にも物を言わせてもらわなければい けませんが。 (岩田委員長)  これについては以前、後藤委員が今おっしゃったこととはまた違う文脈ですが、八田 委員も非常に広い意味での保険、社会にとっての広い意味での保険とか、あるいは松浦 委員も社会の安全とか、いろいろな形でおっしゃったことなどが盛り込めるかと思いま すので、それではそこをそのように補いたいと思います。 (岡部委員)  直接報告書を直していただきたいということの要望ではないのですが、今回の専門委 員会の在り方に関する私の今後の要望です。生活保護制度の役割として報告書の1ペー ジの箇所に書いていただきました。生活保護制度の大きな役割として2つ、すなわち、 国民の最低限度の生活を保障することと、最後のセーフティネットとしての役割を果た すこと、これらは社会保障制度を根幹から支える制度として今後も機能しなければいけ ませんし、これまでも機能してきたのではないかと考えております。  その上で、今回この専門委員会においては、生活保護の法律の名称になっている保護 という観点を内容的には大きく変えるような、つまり、保護という消極的な意味内容の 議論だけではなく、自立に向け積極的に生活再建を行う給付水準であるとか制度内容、 そして、それを支える運営実施体制や援助方法等という議論とその結果としての報告書 ができあがっていると思います。  そこで、私自身としては法律の名称が「生活保護法」となっていますが、今回の論議 されたことは生活保護の内容をより充実させる側面もありますが、保護という観点を大 きく脱皮する、制度の名称の中身まで踏み込んで論議されていたのではないかと思いま す。そこで将来的には生活保護法の内実に沿った制度の名称変更も含めて検討していた だければというのが私の要望です。 (岩田委員長)  ありがとうございました。それでは、時間も押してまいりましたので、特に絶対ここ を変えないとだめというところがなければ、一応本日の修正を最後にしましてこれを本 専門委員会の最終報告として福祉部会に報告させていただきたいと思います。よろしい でしょうか。  ありがとうございました。では、私の方からこれを報告書として福祉部会に報告した いと思います。 (大川委員)  最後なので、申し訳ないのですが、是非申し上げておきたいことがあります。今回の 制度改正で、私はやはり一番大きかったのは自立という考え方が身体的あるいは社会的 な自立に広がったということが非常に大きい。これは、やはり失業も含めた経済的困窮 に陥っている人たちに対して大変福音になりうる報告書だと考えています。  ただ、一方でやはり私は現行年金制度と生活保護制度の在り方について、是非本体の 社会保障審議会福祉部会の中で御論議いただきたいと思っています。というのは、今の 年金制度というのは一企業に長期就職して、かつ右肩上がりの収入ということを前提に 制度設計がされているのです。  ところが、最近は御存じかと思いますが、非正規雇用あるいは短期就労といったもの が非常に増えていく中で、1つは年金の空洞化という問題が起きている。つまり、未納 者が増えているという問題。それともう一つは、所得が右肩上がりではなくていわゆる のこぎり型の所得動向を示している人が大変多い。これは、私どもが現場で最近非常に 痛感している傾向でありますが、こういった状況がある。  加えて、最近は所得というものが必ずしも生産と反映しなくなってきた。というの は、この典型例がヘルパーさんたちで、ヘルパーさんたちの賃金所得は政策動向によっ て左右されてしまいます。もっと言うならば、生産と全く関係ない社会的な意義として 働いているNPOの人たちは収益を上げることを目的とした事業ではありませんので、 当然これは所得に反映しない。つまり、言ってみれば低賃金が固定するという構造にな っています。  ですので、こういったことを前提に年金制度あるいは社会保障制度全体の制度設計を 考えていかないと、結局低年金者が増えて、それを全部生活保護が引き受けなければい けない。これはまさに次の危機ではないか。ケース増が加速することになるのではない かと思っています。  裏を返せば、これはまじめに働いても先々は生活保護しかないという制度になってし まったら、これはまさに社会保障制度全体の信頼に関わる問題ではないかと思っていま す。 それで、社会手当、失業手当、あるいは生活保護の探求ということが今回の報告 書の添え書きの中の最後のところに述べられていますが、是非この問題について社会保 障審議会福祉部会の中で制度全般の論議の中で触れていただきたいと思います。既に現 場はこれから低年金者が増えて保護世帯が増加するという危機感を持って日々仕事をし ています。ですので、是非その辺についての見解を添えて報告を出していただくことを 私は希望します。以上です。 (岩田委員長)  ありがとうございました。福祉部会の報告の際には、その御意見を御紹介したいと思 います。  長い間、ちょっと延長になってお忙しい秋から年末にかけて皆様に御協力していただ きまして本当にありがとうございました。非常に深い議論ができたと私は思っておりま す。それで、私は貧困研究者なものですから、最後に一言その観点から言わせていただ きたいと思います。  日本の貧困層というものを、生活保護基準を使うにせよ、ほかの基準を使うにせよ、 測定しますと、今回期せずして取り上げた高齢単身世帯と母子世帯の貧困になる確率が 非常に高く出てきます。これは、今だけではなくて少し前から測定しますとそういうふ うになります。  こうした問題について、あるヨーロッパの社会政策学者は、貧困層がいろいろなグル ープで構成されているか、あるいは特定のグループに代表されるかによって、その社会 の貧困の在り方がわかると言っています。いろいろなグループが入れ替わり立ち代わり 貧困層を構成するのではなくて、特定集団が貧困層として現れるようになるのは社会全 体、つまり生活保護ということではなくて今、大川委員のおっしゃった社会保障全体あ るいは雇用構造等と関連しており、特定の層がその結果貧困に固定されやすいというこ とになります。今回私どもはこの特定層の貧困問題を加算という形で取り上げたことに なるわけですが、もともと保護率も世帯保護率もその2つの層は高いのです。貧困率も 高いですから、その中で比較するという大変困難なことをしたわけです。  ですから、これは母子世帯のところでは事務局にも随分御努力いただいて、現在ある データの中で一番下ではなくて、全体が低いのだからもう少し上の方で比較しようとい うふうないろいろな工夫はいたしましたが、私どもがやれることはその程度だというこ とです。  逆に言いますと、その2つの固定した生活困難を抱える確率の高いグループの生活は どうするかというのは、社会保障や労働政策全般の在り方の中で考えないと、生活保護 のところだけで小手先で加算を取ったり増やしたりしてもどうすることもできないとい うようなことが1つはあるかと思いました。  それからもう一つは、既に皆さんおっしゃられたとおり、生活保護自体はもう少し大 きな枠で議論することが恐らく今後求められていくことになるだろうと思います。とり わけ他の社会保障との関係、先ほど京極委員がおっしゃられた介護扶助の意味といいま すか、ああいう形で入れ子にしていくというのは選別的普遍性という言葉でよく言われ るのですが、そういうような中に生活保護の捕捉的な位置を発揮していくというふうな 方向で今後進んでいくといいと私も思っております。  いずれにしても、いろいろな議論の糸口が今回かなり出ました。福祉事務所の問題等 々、あるいは地域の問題は私どもが取り上げた以上に大きいと思いますので、松浦委員 の御心配は大変よくわかりつつ議論してまいりましたが、その辺りは恐らく次のラウン ドで本格的な議論が進められることを是非期待したいと思っております。  それでは、議事のその他がございますので、もし皆様からこの取扱い等々を含めて事 務局に対して何か確認が必要とか、そのほかありましたらどうぞ。よろしいでしょう か。  それでは、最後に小島局長からごあいさつをお願いしたいと思います。 (小島社会・援護局長)  生活保護制度の在り方に関する専門委員会の報告書の取りまとめに当たりまして、一 言御礼のごあいさつを申し上げます。  委員の先生方におかれましては、昨年8月の第1回から1年4か月にわたり、また18 回の大変多くにわたりまして参加をして議論をしていただきまして、大変充実した実り ある御議論だったと思います。私ども社会・援護局保護課を中心とした職員も大変啓蒙 されたと思っているわけでございます。皆様方の御苦労に心から感謝を申し上げますと ともに、特に岩田委員長におかれましては取りまとめに大変な御苦労をされました。ま た、起草委員の先生方に対しても心から感謝を申し上げたいと思います。  生活保護制度の創設始まって以来と言えるほどの総合的な議論が行われたわけでござ います。私ども、これから生活保護制度の見直しを順次行ってまいるわけでございます が、皆様方からいただいた報告書あるいはこの懇談会におきます議論というものを十分 尊重させていただきまして行政を進めていきたいと思っています。  特に御提案をいただきました自立支援プログラムにつきましては、これが定着してい くかどうか、あるいはどのように定着していくのか、生活保護制度については大変大き な問題だと思っていまして、私ども国として何ができるかということを考えて、地方と も相協力してこれをやっていきたいと考えております。  生活保護制度の改革は、まだまだこれから何年もかけて新しい時代の制度に変えてい かなければならないものだと考えております。本委員会はこれで大きなひと区切りを迎 えることになりますが、またお願いすることがあるかもしれません。委員会という形で はなくても、是非とも私どもに御指導、御鞭撻、御意見を賜りますようお願いを申し上 げまして、最後のごあいさつにさせていただきます。どうもありがとうございました。 (岩田委員長)  どうもありがとうございました。  最後に、事務局の皆様には、とりわけこの取りまとめに際して最後までいろいろ多様 な意見を集約するのに時間を費やしていただきまして誠にありがとうございました。本 当に長期間、皆さん熱心な御議論をいただきまして、また傍聴の皆様にも大きな関心を 持っていただきましてどうもありがとうございました。  では、以上で本日の委員会を終了させていただきます。                                    (以上) (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)