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科学技術政策(ライフサイエンス)の一つの考え方と厚生労働科学研究の評価等
内閣府科学技術政策統括官付 参事官
外山 千也

 1 省庁再編以降の構図
 (1)組織等
内閣府(内閣補助事務(総合調整))
科学技術の総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策に関する事項
科学技術に関する予算、人材その他科学技術の振興に必要な資源の配分に関する事項
その他、科学技術の振興に関する事項
総合科学技術会議
内閣総理大臣のリーダーシップ、政策推進の司令塔
各省庁
文部科学省、各省(政策調整)

 2 ライフサイエンス分野の推進(図1図2
 (1)重点領域・推進方策決定の背景
科学技術創造立国の実現を目指す。国家として最重点政策。
 (→科学技術基本法、第1期科学技術基本計画・・・)
21世紀は生命科学の世紀。
医学の発展や食料環境問題の解決など人々の生活に直結した多様な領域での貢献が期待
大きな経済波及効果も期待
第2期科学技術基本計画、分野別推進戦略。
「BT研究の推進について」→「バイオテクノロジー戦略大綱」(わが国としての統一的な戦略)
 3つの戦略、50の行動指針、200の詳細行動計画
「ライフサイエンス分野研究の新展開」−ヒトゲノム解読を受けて−
ヒトゲノムの塩基配列の完全解読等→ポストゲノム研究やその成果の産業への応用が加速
知的財産に直結→各国の競争は激化、総力戦
 (米国との競争、中国の台頭
 (2)3つの研究ターゲットを定め、施策を展開
日本が優位にある分野
今後の発展が見込まれる分野
劣勢であるが強化が必要な分野
 評価、フォローアップの実施

 3 生命倫理関係
   ・「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」のとりまとめ(本年7月)
   ・その他

 4 厚生労働科学研究費等の評価
 (1)全体像
第1回、資料4のとおり。
 (2)競争的資金制度の評価(参考資料集2−9)
 行政事業的要素が強い課題の検討(競争的資金の適切性)
 米国NIHに類似した独立した競争的研究資金の配分機関の創設
 (3)国家的に重要な研究開発の評価
(厚生労働省関係の例―第3次対がん10か年総合戦略に基づく研究開発)
 (4)科学技術基本計画(平成13年度〜17年度)に基づく科学技術政策の進捗状況
 (5)平成17年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて(厚生労働省関係抜粋)(参考資料集2−7)

 4 第3期基本計画の主要検討課題(別添

 5 ライフサイエンス分野の一つの議論(連携施策群、図3−1図3−2
 ライフサイエンスは、研究開発の力が、それを実現する力と直結しており、研究開発と実用化との距離が極めて近い特徴を持っている。
(1)省庁の取り組み方
 第3期基本計画立案においては省庁の枠組を越えた連携が、重要な課題となっている。現場に近い省庁においては、現場からのニーズを背景とした、基礎から実用化までの一貫した研究体制を国を挙げて実現していくことが肝要であり、これらを構想の枠組みに組み込めるかどうかが主体性の維持に大きく影響する。
 特に厚生労働省については、患者という究極のニーズを抱えている点や国民の安全・安心に直面している立場を重視し、他省のプロジェクトをそれらにあわせた計画に動かすため、入り口(基礎)を見据え、目標を明確にした統合プランの策定が必要。
|(2)国の投資が適切な分野
社会の基盤となる研究を促進し、研究全体の底支えを図る分野は?
社会のニーズに応える研究成果を、国民に早期に還元する分野は?
その他、多様性研究
(3)体制等
一元的な体制
応用研究は短期、長期の目玉。縦の連携強化と実現化に力点(ヘッド)
特に、多様性研究は一定期間の成果を求める



図1
ライフサイエンス分野の推進

21世紀は「生命科学の世紀」「バイオテクノロジー(BT)の世紀」ライフサイエンス分野は、「生きる」「食べる」「暮らす」の3場面に直結

ライフサイエンス分野の推進の図

ライフサイエンス分野関連予算の推移のグラフ
(注1)各府省提出データに基づき内閣府で集計。今後の精査により数値の変更がありうる。
(注2)国立大学に係る予算等は除く。
(注3)独立行政法人の運営費交付金や競争的研究資金(推定値)を含む。

今後の課題

BT戦略大綱の進捗状況把握とフォローアップ
BTに関する国民との双方向コミュニケーションの強化
「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」報告書を受けた関係省のガイドライン等策定への対応等及び新たな生命倫理の課題の検討



図2
 ライフサイエンス分野の主な施策(暫定版)
ライフサイエンス分野の主な施策(暫定版)の図



図3−1
ポストゲノム−健康科学の推進−
想定される関連府省
文部科学省、厚生労働省、
農林水産省、経済産業省

ポストゲノム−健康科学の推進−の図
(背景画は理化学研究所提供)



図3−2
新興・再興感染症
想定される関連府省
文部科学省、厚生労働省、
農林水産省、環境省

新興・再興感染症の図



(別添)
資料2
主要検討課題

今後の基本政策専門調査会の議論(6月を目途とする中間的集約までを念頭)の中で取り上げることが現時点で適当と考えられる主要な課題を事務局・内閣府においてとりまとめ、第1回(平成16年12月20日)の議論に供するもの。予め議論の範囲を限定するものではない。

I.第3期基本計画の理念

1)近年の注目すべき状況
ア.近年の科学技術を巡る諸情勢で重視すべき点、特に第2期計画期間中で新たに顕在化した点は何か。
イ.たとえば中国の台頭、国際テロリズムとの対峙などの国際情勢の変化、食の安全や生命倫理など社会的側面の顕在化、大学や独立行政法人など、科学技術を担う組織の構造変化などが考えられるがどうか。

2)今後重視すべき諸情勢
ア.今後の内外の諸情勢で重視すべき点は何か。
イ.たとえば、多くの科学技術分野で依然残る世界トップとの格差、厳しい国際競争の継続、国民生活の質への関心の強まり、少子高齢化の本格化、男女共同参画、財政負担の増大傾向、地球規模での持続可能なシステム構築の必要性(食糧、人口、環境、エネルギーなど)などが考えられるがどうか。

3)第2期基本計画の進捗状況の評価
ア.第2期基本計画の進捗状況を総括すればどのような評価となるか。
イ.研究開発投資の拡充による研究水準のレベルアップ、重要分野への予算重点化の進展、研究開発課題の事前・中間・事後評価への取り組み、システム改革の一定の前進、科学技術を担う諸機関(政府各府省、独立行政法人、大学、民間企業等)の連携の必要性の認識の高まりなどが考えられるがどうか。

4)第3期計画の位置付け、性格付け
ア.第3期計画においては、これまでの科学技術投資の拡充を踏まえた、科学技術成果の社会への還元−国家や公的主体による活用、国際協力・外交への活用、産業競争力への還元など−を強化すべきとする意見についてどう考えるべきか。他方で科学技術の進歩はそれ自体で大きな価値があると評価する意見もあり、どのように考えるべきか。
イ.計画の概念範囲を、「科学技術の振興」から、より幅広い「イノベーションの創出」や「ナショナル・イノベーション・システムの構築」に拡大して考える必要はあるか。

5)第3期計画の理念・目標の考え方
ア.以上を踏まえ、第2期計画の3つの理念、すなわち、目指すべき国の姿としての(1)「知の創造と活用により世界に貢献できる国」、(2)「国際競争力があり持続的発展ができる国」、(3)「安心・安全で質の高い生活のできる国」は、修正を要するか。修正すべきとすればどのような点か。
イ.また、第3期計画を主導するスローガンやキャッチフレーズはどう考えたらよいか。さらに、政府研究開発投資の目標設定についてはどのように考えるか。

II.新しい科学技術戦略

1)全体的方向
ア.基礎研究及び重点分野の研究開発を推進する第2期計画の科学技術戦略の成果をどう評価すべきか。基本的な枠組みとして維持すべきか、修正が必要か。
イ.基礎から開発応用まで一貫した戦略を設定すべきという考え方についてどう考えるか。

2)基礎研究の推進戦略
ア.基礎研究について、その実態把握を進める必要はあるか。その範囲、分類、位置付けについて、明確化すべき点はあるか。新たな推進方策は必要か。
イ.基礎研究の中で、いわゆるビッグ・サイエンスとスモールサイエンスの位置づけ、バランスはどうすべきか。

3)分野別戦略的重点化の評価と今後の対応
ア.第2期計画による戦略的重点化の評価、「分野別」手法(4分野の設定と分野別推進戦略の策定)の有効性をどう評価するか。重点化が行き過ぎて将来への十分な目配りができていないとの意見、目標設定が明確でなく重点化の成果が上がっていないのではないかという意見についてどう考えるか。
イ.現在の分野設定を維持すべきか。新たな分野を設定すべきか。新たな分野を設定する考え方はどのようなものがあるか。また、「国民生活の安心・安全」など、新たな視点をどう組み込むべきか。

4)新たな重点的推進の仕組み
ア.重点的推進の新たな仕組みは必要か。どのようにすれば、具体的行動につながる仕組みを作ることができるか。
(1)「国家重要基幹技術(クリティカル・テクノロジー)」の概念に基づく仕組みを構想し得るか。
(2)国家的、社会的、経済的な科学技術の活用目標を設定し、一定領域の研究開発活動を連携調整し、また研究開発以外の関連施策を総合的に進めることにより、重点化の成果を上げる仕組みは考えられないか。
(3)国際ベンチマーキングを行うなど、戦略性を強める仕組み作りの必要はあるか。

III.第3期における科学技術システム改革

1)科学技術を担う優秀な人材作り
ア.人材システムの流動性、多様性、国際性の実現という点での第2期計画における実績をどう評価するか。新たな施策として必要とされることは何か。
イ.科学技術分野を魅力あるキャリア・パスとするための方策は何か。各機関(大学、研究機関、企業)の内部での人材育成・待遇のあり方、高等教育のあり方について講ずべき方策は何か。
ウ.科学技術人材の需給状況はどう評価されるか。人材マッチングの新たな施策はあるか。専門的能力に加え、分野融合的な指導力やプロジェクト運営能力など、新たに必要とされる人材・資質はあるか。

2)研究開発資金の配分の方向
ア.研究開発の質を高め、創造的研究を促進するための資金配分のあり方についての一層の改革は必要か。
イ.特に、(1)競争的研究資金を研究開発予算の中でどのように位置づけ、目標設定すべきか、(2)競争的研究資金は既存の意見具申に沿った制度改革に加え、審査システムなどについて新たな改革が必要か、(3)政策目標達成型研究予算、その他の研究予算の位置づけをどうすべきか。競争的研究資金とも併せて資金配分のあり方をどう考えるか。(4)また、大型プロジェクトへの配分をどう考えるか。
ウ.研究発展段階に応じた資金配分のあり方を検討すべきか。

3)各研究機関における研究活動への動機付け
ア.各機関における創造的で活発な研究活動への動機付け(特に今後の科学技術を担う若手を含め)は十分か。年齢や性別にかかわらず能力を発揮できるようにする研究環境整備は十分か。
イ.特に、任用・報酬体系のあり方、処遇、研究資金付与・獲得のあり方などについて見直しが必要か。どのような施策や制度改革が必要とされるか。

4)知的財産権
ア.科学技術の成果を社会に効果的に還元するため、進捗しつつある制度環境整備を確実に進めることに加え、何が必要とされるか。
イ.たとえば、大学における知的財産を有効に活用したり、企業による知的財産の戦略的活用を促進するための新たな施策はあるか。

5)研究開発評価
ア.研究開発評価の進捗状況はどうか。
イ.また、成果の把握手法の開発や評価の高度化・戦略的活用に向けた新たな方策は何か。

6)産学官連携
ア.第2期計画下における産学官連携の成果をどう評価すべきか。新たな推進方策は何か。

7)地域科学技術振興
ア.地域科学技術の振興をどう進めるべきか。科学技術による地域経済の振興に加え、中央主導の科学技術に対置代替しうるものとして位置づけることは可能か。現在進められている地域科学技術クラスターの連携の一層の強化のための施策は何か。

IV.創造的科学技術推進に向けて各主体が果たすべき役割とその実行手段

1)政府
ア.政府においては、予算の優先順位付けの改善、連携施策群を含む研究予算の改革による調整機能の強化に加え、予算配分以外の様々な制度改革などについてどう進めるべきか。

2)大学
ア.大学については、自律的、主体的な運営確保により国立大学を活性化するという国立大学法人制度への移行を踏まえ、国家財政から投入される資金が科学技術振興に有効に活用されることを確保するための新たな政策枠組みはあるか。基礎研究を担う主体としてどのように責任を果たしていくべきか。
イ.施設整備のあり方についてどう考えるか。

3)公的研究機関
ア.公的研究機関は大学と産業の間にあって、わが国の科学技術においてどのような役割を果たすべきか。
イ.独立行政法人化の下での任務の付与と評価の仕組みは、財政資金を科学技術振興に有効に活用する上で十分か。新たな仕組みが必要か。

4)民間企業
ア.民間企業においては、研究開発税制の拡充などによる施策の効果、欧米諸国に比して規模の小さい公的資金の流れをどう評価するか。
イ.我が国研究開発資金の約8割を担う民間部門の活力を最大限活用するためにはどうすべきか。他機関との連携の強化の必要性はあるか。

5)主体間の競争と連携
ア.それぞれの主体に健全な競争を通じた活性化効果は機能しているか。
イ.また、多様な主体を連携させることは必要か。具体的な仕組みとしてどのようなものが考えられるか。

V.社会・国民に受容され、支持される科学技術の推進方策

1)科学技術と社会・国民
ア.科学技術推進を重要な国家戦略として位置づける一方で、国民の「理科離れ」が進む状況をどう評価すべきか。
イ.また、科学技術の進歩が国民生活に様々な便益をもたらす一方で、悪用される可能性の増大など、国民の不安も存在する現状をどのように考えるべきか。

2)具体的施策
ア.科学技術の社会への貢献を高めること、科学技術を身近な存在にすることなどが、国民の受容度を高めるために寄与すると考えられるが、具体的施策として何が考えられるか。
イ.科学技術システムのオープンネス(開放性)や透明性を強めることは、科学技術への信頼を高めることにつながるか。科学技術の光のみならず、影の部分も率直に社会に伝えるべきか。科学技術コミュニティ(アカデミア)の果たすべき役割は何か。
ウ.社会的チャネルの構築、幅広い理解増進活動の推進など、施策推進の体制を如何に構築すべきか。

VI.科学技術の国際的展開

  ア.日本の科学技術水準のレベルアップ、中国の台頭など変化する国際情勢、我が国に引き続き期待される国際的貢献などを踏まえると、第3期においては、科学技術力を通じた地球的課題への国際協力を一層強化すべきか。
  イ.具体的方策として何が考えられるか。

VII.総合科学技術会議の役割

  ア.以上の検討を踏まえ、第3期基本計画の下で総合科学技術会議はどのような役割を果たすべきか。
  イ.科学者コミュニティとの連携はどうあるべきか。


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