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資料No.3-1

「職場における化学物質のリスク評価委員会」中間報告概要


 趣旨・目的
 事業場において有害性の高い化学物質を取り扱う作業等のうち労働者へのばく露が大きく、健康障害の可能性及びその程度(以下「リスク」という。)が高いと予想されるものについては、国においてリスク評価を行うこととされていることから、リスク評価の方法及び考え方について検討を行うものである。

 リスク評価の概要
 リスク評価は、化学物質等の有害性の種類及び程度の特定、労働者のばく露量の把握、ばく露量に応じて生ずるおそれのある健康障害の可能性及びその程度(以下「量―反応関係」という。)について把握し、ばく露量と量―反応関係から得られたばく露限界等を比較し、リスクの判定を行う。
(1) 化学物質等の有害性の種類及び程度の特定
 信頼できる主要な文献等から、「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」に従い有害性のクラスを分類し、その種類及び程度を特定する。
 有害性のクラスは、急性毒性、皮膚腐食性・刺激性、眼に対する重篤な損傷性・刺激性、感作性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性、及び臓器毒性等とする。
(2) 健康障害の可能性及びその程度(量―反応関係)の把握
 信頼できる主要な文献等から、量―反応関係等の有害性データである許容濃度、無毒性量(NOAEL)等、LC50、LD50等を把握する。
(3) ばく露評価
 次の手順によりばく露量を把握する。
 評価の対象となる化学物質等の有害性等、取扱量、用途等により優先順位をつける。
 労働者に対するばく露が大きいと判断される作業について、用途、ばく露データ、使用形態等から、作業環境等の対象とする作業を選定する。
 選定した作業について作業環境の測定、個人ばくろ濃度測定により、ばく露量を把握する。
(4) リスクの判定
 作業環境の測定等から算定した予測ばく量と、量―反応関係等から得られた許容濃度、無毒性量(NOAEL)等の有害性データを定量的に比較し、リスクを判定する。
 発がん性以外のリスクの判定
 発がん性以外の場合では、許容濃度、又はTLV―TWAが存在する場合には、許容濃度等と予測ばく露量を比較し、予測ばく露量が許容濃度等以上の場合には詳細な検討を行う対象とする。
 無毒性量等が得られた場合には次の式によりMOEを算定する。
 MOEが1以下の場合には詳細な検討を行う対象とする。1より大きく5以下の場合には、今後とも情報収集に努めるものとする。
  MOE= 無毒性量
――――――
予測ばく露量
 発がん性のリスクの判定
 発がん性の場合には、閾値が存在する場合には、アと同様とする。閾値が存在しない場合には、がんの過剰発生率を算定する。リスクの判定は、当該値が概ね1×10―4より大きい場合には詳細な検討の対象とする。
(5) 詳細な検討等
 リスクが高いと判定された化学物質等を取り扱う作業等については、有害性データ、ばく露データを検証又は追加し、再度リスクの判定を行う。
 リスクがあるとされた場合には必要な措置を講ずることとする。

 ばく露等に係る考え方
(1) ばく露に係る考え方
 評価の対象となる作業
 リスク評価は、化学物質等を取り扱う作業を全体として評価の対象としていることから、評価の対象とする作業は、通常行われている典型的で、定常的な作業とし、事故時は想定しない。
 測定データの無作為抽出
 測定の対象となる事業場については、ばく露の程度が大きいと想定される典型的な作業を有する事業場を対象として、無作為に選定することを原則とする。
 ばく露の経路
 労働現場においては、吸入による経路が最も重要であることから、呼吸器からの吸入を主経路として考えるが、皮膚からの吸収等が無視できないと考えられる場合等においては、当該経路についても考慮する。
 保護具の考慮
 リスク評価においては、作業場における局所排気装置の設置の有無については考慮するが、保護具の装着の有無については原則として考慮しない。
 ばく露モデルの使用
 ばく露モデルの完成度等を考慮するとばく露モデルによるデータから算定した値よりも、作業環境の空気中の濃度を測定したデータを優先的に用いることが望ましい。
(2) リスク判定の考え方
 MOE
 労働現場においてリスクの判定を行う際には、事業場において作業に従事する労働者は比較的均一性のある健康な人々の集団であること、その後の健康影響についても継続的に健康管理ができる可能性が高いことから、MOEの値の値を一般環境における値よりも小さくすることは合理的と考えられる。
 がんの過剰発生率
 一般環境のばく露対象者と労働環境における労働者の違い、一般的な交通事故等のリスクを考慮すると、がんの過剰発生率について、概ね10―4以上について詳細な評価の対象とすることは妥当と考えられる。

 考慮すべき事項
(1) 有害性データは、多くの場合動物実験から得られたものを用いていること、ばく露データについても、労働者のばく露量を作業環境中の空気中の濃度の測定データから推定していること、作業環境等の測定についても測定を実施した事業場の一般性については十分な検証が必要なこと等の不確実性について十分留意する必要がある。
(2) 科学的知見に基づいて評価する必要があり、必要に応じて学識経験者の意見を聴く必要がある。


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