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第4回
資料3
諸外国の最低賃金制度における
減額措置・適用除外の考え方について
総論
ILO事務局ジェラルド・スタール「世界の最低賃金制度」(「Minimum wage fixing」, 1981)(旧労働省賃金時間部訳)より。

○適用除外と軽減
 最低賃金の保護の適用範囲について本章において考えるべき最後の側面は、一定の範疇の労働者の適用を除外したり、ある範疇の労働者に対し一般に適用される率よりも低い特別の率を適用することである。これらの適用除外や軽減は法律によって特定されていたり、最低賃金当局の決定によることもある。これが最もよく適用されるのは、労働生産性が低いと考えられ、かれらの仕事の見込みを深刻な危険にさらすことなく一般最低賃金を支払うことが困難な労働者である(例えば、若年者、学習中の者、障害者)。また、例えば、公的部門の賃金規制の手続や好ましい労働協約の適用を受けていたり、高い所得を得ているなどの理由により、最低賃金の保護が必要ないと考えられる者が除外されていることもある。これらの適用除外や軽減は、時として一定の範疇の労働者についてはその雇用関係の特殊性によって最低賃金の適用を強制することが不可能でないとしても困難であることにより正当化されていることもある(例えば家事手伝い人、「外回り」の歩合給セールスマン、チップをもらっている者)。
 何らかの適用除外は事実上すべての国に存在するが、その範囲や重要性は非常に様々である。いくつかの場合には、起こりうる最低賃金の逆効果を和らげようとして幅広い適用除外がなされた。したがって、バングラデシュやスーダンでは、最低賃金は10人以上の労働者のいる組織にのみ適用される。他に、最低賃金は農業に適用されなかったり(例:カナダ、パキスタン)、部分的にしか適用されない(例:ドミニカ共和国では、10人以上の労働者のいる農業企業にのみ適用)ところもある。アメリカ合衆国では、専門的職業活動や会社の製品や規模の種類(例えば、取締役、管理者、専門的被用者や外回りのセールスマン、一定の小売やサービス事業場、季節的娯楽施設、免税小売店での顧客向け製造業、魚や海産食料品の捕獲と加工業、農業の一定の種類、小さな新聞社、小規模の電話事業の交換手、外国船の水夫、臨時のベビーシッター、コンパニオン業)に基づいて、非常に複雑で広範な適用除外の体系がある。他方、開発途上国を含む多くの国では、最低賃金はできるだけ広く適用されるべき基本的権利であると考えられている。いくつかの生産性の低い労働者の範疇に対する適用除外(後に述べる)を除き、最低賃金は、経済上の適応と履行確保についての最大の問題のある地域を含め、民間部門のいたるところで適用されるようになっている。したがって、フランスでは、最低賃金は、別の賃金規制手続の下にある公的企業、家事使用人、所定労働時間のないビルの監督者や歩合給セールスマンを除き、あらゆる部門に適用される。このように限られた例外を除いて広く適用されるのは、アフリカ、ラテンアメリカ、中東の大部分の国において典型的である。例えば、ほとんどのアフリカのフランス語圏の国々では公的部門の被用者だけが保護から除かれている。
 完全な適用除外よりも軽減のほうが一般的である。多くの国では、若年労働者について、低い率がしばしば定められている。一般最低賃金から何パーセント減少させるという形である。しかし、適用除外の水準とこれが適用される年齢の限界は非常に異なる。工業化された市場経済の国々の中で、オランダでは、年齢の限界が最高で、全国最低賃金は23歳以上の者にしか適用されない。23歳未満のものは1歳につき最低賃金の7.5%ずつ減じられている。フランスでは、適用除外は比較的少ない。18歳以上の労働者は最低賃金を、16歳と17歳の者はそれぞれ最低賃金から20%と10%減じたものを受ける権利がある。カナダでは減少率は非常に小さい。ほとんどの管轄区域では18歳または17歳以下の労働者に5%から15%の間の率を減じた率を適用している。アイルランド、ルクセンブルクと連合王国では、若年労働者の軽減はいま述べたような率の間にある。開発途上国では、若年労働者に軽減をすることは普通であるが、優勢な慣行ではない。このような軽減の規定があるところでは、18歳がしばしば限界となっている。アルゼンチンでは、1日6時間働く若年者は、18歳から1歳若くなるごとに、10%を減じた賃金を得る。エジプト、ケニア、タンザニアでは、18歳以下の者に独立の最低率が設定されている。インドとスリランカでは、若年労働者に対する様々な種類の減額が最低賃金規定の一般的な特色となっている。
 多くの国ではすべての若年労働者に対してより低い最低賃金を設定してはいないが(例:カメルーン連合共和国、コロンビア、コンゴ、コスタリカ、ホンジュラス、ジャマイカ、フィリピン、タイ、アメリカ合衆国)、通常、徒弟には軽減がある。徒弟の最低賃金は普通、法的な一般最低賃金か一人前の職人の率の一定の割合の形で定められており、訓練の年数によって漸進的に増加する。いくつかの国では学習中の者も低い率を適用する。アメリカ合衆国では、一般の若年者への軽減は存在しないが、時間、数、労働者の割合とサービスの長さについての限度を特定する規制に従って、特別な許可証を得た場合には、見習や徒弟を最低賃金率より低い額で雇用することができる。特定の雇用形態で、ある条件の下でフルタイムで働く学生については、一般最低賃金の15%まで減額することができる。同様にジャマイカでは、登録された徒弟、休暇中に雇用される学生、特定された基礎学校や託児所や保護された仕事場に雇用される個人、認定された職業訓練施設において訓練の一環として働く個人、見習として認められ、彼の許可証の中で特定された期間に訓練の一環として働く個人は、1975年の全国最低賃金から除外されている。
 障害者に対する軽減も広く行われている。通常、労働省には、これらの労働者の最低の雇用条件を決定する裁量の余地がいくらか残されている。例えば、ケニアでは、使用者または被用者は、被用者が病弱であったり、身体に障害があるために最低賃金を稼ぐことができない場合には、労働省の職員または労働基準監督官に申請を行うことができる。そして、この職員が事実を確認した場合には、彼が適当であると考える条件の下に、最低賃金以下の支払を認める許可を与えることができる。
 家事使用人は、国によって非常に異なった取扱いを受けている。多くの国では、雇用関係の特殊性とこれの適用が明らかに困難であるために最低賃金法令から除外されている(例:ブラジル、カナダ、フランス、タイ、ウルグアイ)。家事使用人にも非常に減額された率が適用されるところもある(例:エクアドルとパナマでは、非農業部門最低賃金のほぼ40%を受ける権利がある)。さらに別な国では、他の労働者と同様の最低賃金を受ける権利がある国もある(例:カメルーン連合共和国、ジャマイカ、アメリカ合衆国)。
 他にも驚くほど多様な適用除外と軽減がある。オランダでは、通常の労働時間の3分の1以下の時間のみ働くパートタイム労働者は適用から除外されている。さらに、要求があれば、ある事業、産業や職業の部門が深刻な危機にさらされている場合に、所管大臣は、関係する労使の団体と協議したうえで、労働基金で議論を行った後に、最低賃金以下を支払うことを許可することができる。ポルトガルにも同様の規定があり、10人以下の事業については、関係する官庁が、全国最低賃金の規定を適用することはその事業にとって経済的に実行不可能と考えた場合には、適用しないことができる。また、政府は、危機的な状況にあると考えた部門や地域に、最低賃金より低い特別の率を適用することができる。1974年のフィリピンの労働法典では、労働長官は、深刻な不況地域で雇用機会を提供する企業に対して、最低賃金より50%まで低い額を支払うことを認めることができるとしている。登録された家内工業は完全に法律の適用から除外されている。エクアドルでは手職人が、ホンデュラスでは5人以下の事業所が、より低い最低賃金の適用を受ける。コロンビアとエジプトでは、事業の大きさによって最低率が異なっていたが、この慣行は最近これらの国ではなくなった。女子労働者に対する適用除外は、かつては非常に一般的だったが、今日では全くなくなった。アメリカ合衆国では、1980年1月1日現在、一定額以上のチップを受ける被用者については、最低賃金規制の40%まで貸方に記入することができる。また、カナダのいくつかの州では、チップによる収入が重要である産業には、特別の低い最低限が適用される。しかし、この段落で述べたすべての適用除外や軽減は、一般的な慣行ではなくむしろ例外であり、1つ、あるいはいくつかの国に限定されている。


※ 以下、「OECD Employment Outlook,1998」より。

B.OECD諸国の最低賃金制度
1.最低賃金の適用範囲、運用及び決定

 ほとんどの国は、全国一律最低賃金を設定することを選んでいるが、若年者や見習生といった一部のグループに対して減額又は「準最低賃金(sub-minimum rate)」が存在するものがある。(略)

 適用範囲は国によりかなり異なる。障害のある労働者はしばしば除外されるか、別の規制を受ける。見習生や訓練生はしばしば除外されるか、減額のみが適用される。公務員には適用されない場合もある(フランス、ギリシャ、ルクセンブルグ)。カナダとアメリカでは、管理的被用者や運営的被用者は通常、除外される。

 若年労働者に対する準最低賃金(sub-minimum rate)はかなり一般的である。減額の幅は様々であるが、次表の半分以上の国で、減額が適用される。オランダ、ベルギー、ルクセンブルグでは成人の最低賃金(adult rate)はそれぞれ23歳以下、21歳以下、18歳以下で1歳ごとに連続的に減額されている。17歳以下の減額もフランスで設定されているが、比較的少数の労働協約にしか組み込まれていない。若年者の最低賃金を設定しているその他の国では単一の最低賃金のみが設定されている。いくつかの国では、例えばフランスのようにSMICより低い賃金を支払うか社会保障費用を低くするかのいずれかを使用者に認める特別の雇用プログラムがあることにより事実上の準最低賃金が存在している。

 若年労働者の法定最低賃金の設定はいくつかの国で近年変化してきた。スペインでは、1990年に18歳未満の全ての労働者に適用される一律の最低賃金が設定され、17歳未満の最低賃金は廃止された。スペインでは、さらに1998年の初めに、年齢による差のない単一の法定最賃が導入された。1994年、ニュージーランドでは20歳未満の労働者に対して別の減額(大人の最低賃金の60%)が導入された。カナダでは、いくつかの州で若年者の最低賃金が存在するものの、近年これらの最低賃金は廃止される傾向が著しい。それとは対照的に、アメリカでは連邦レベルでの若年者の最低賃金は1996年に導入されている。しかし、その最低賃金は就業開始後最初の90日間にのみ適用される。

国名、導入された年 除外される労働者 若年労働者の最低賃金(年齢と成人の最低賃金に対する割合) その他
ベルギー(1975) 公共部門の労働者、見習生、訓練生、授産施設の労働者 20歳94%;19歳88%;18歳82%;17歳76%;17歳未満70%  
カナダ
(女性:1918−1930、
男性:1930s-1950s)
見習生、農業従事者、管理的・運営的労働者はしばしば州法により除外 若年者に対する減額は一般的に廃止されている。  
チェコ共和国(1991) MWT(Minimum Wage Tariffs)は労働協約によりカバーされない労働者のみに適用。公共部門は別に定められる。 若年成人に対する減額はないが、未成年に対する減額あり 障害者には減額適用。MWTは仕事の複雑さ、責任、肉体的困難性に応じて変わる。
フランス(1950;現在の形になったのは1970) 政府一般職員、障害者(別の規則でカバーされる) 在職6ヶ月未満の労働者について、17歳90%;17歳未満80% 見習生と訓練生は年齢や訓練の段階に応じてSMICの25%から78%
ギリシャ(1953;現在の形になったのは1990) 民間労働者のみに適用。公共部門は別に政府により定められる。 減額なし 勤続や配偶者の有無により高い最低賃金が適用
ハンガリー(1977;現在の形になったのは1992) 見習生は少なくとも最低賃金の10% 減額なし 特定の場合には低い最低賃金率が適用されうるが、実際には施行されていない。
日本(1959;現在の形になったのは1968) 公務員、見習生、訓練生、障害者、断続的労働従事者、試用期間中の者、短時間労働者 減額なし  
韓国(1988;現在の形になったのは1990) 10人以上の企業のみ適用。見習生、訓練生、試用期間中の者、障害者、断続的労働従事者 在職6ヶ月未満の労働者について、18歳未満90%  
ルクセンブルグ(1944) 民間労働者にのみ適用 17歳80%;16歳70%;15歳60% 技能労働者には20%高い最低賃金。配偶者の有無、家族構成により最低賃金が変化
メキシコ(1917;現在の形になったのは1962) 適用除外なし 減額なし それぞれの地域の88の職業にはより高い賃金率適用
オランダ(1968) 労働契約のあるすべての労働者に適用。1992年に週13時間未満の労働者にも適用範囲が広がった。 22歳85%;21歳72.5%;20歳61.5%;19歳52.5%;18歳45.5%;17歳39.5%;16歳34.5%;15歳30%  
ニュージーランド(1945;現在の形になったのは1983) 見習生、訓練生、障害者 16〜19歳60%  
ポーランド(1990) 適用除外なし 減額なし  
ポルトガル(1974) 軍隊 18歳未満75% 見習生、訓練生、内勤者、障害者には低い最低賃金が適用
スペイン(1963;現在の形になったのは1976) 適用除外なし 18歳未満89% 1998年1月1日以降若年者の減額廃止
トルコ(1971) 見習生 16歳未満85% 1989年8月、農業従事者に低い最低賃金を設定
アメリカ(1938) 役員、管理的・運営的被用者、他の特別の小さな集団 1996年10月より20歳未満の労働者の最初の90日は4.25ドル/時間 ある条件のもと、訓練生に連邦最賃の85%、フルタイムの学生や障害者に低い最低賃金を支払える



アメリカ
在米日本大使館のアタッシェが、アメリカ労働省賃金時間部のSenior Analystより聴取したところによると、次のとおり。

適用除外の考え方
管理職、専門職、外部販売員
 これらの雇用者は、主に、他の労働者を管理し、責任が重く、給与も高いので、給与を労働時間で測ることは適当でないため、除外されている。

特定の小規模新聞社の雇用者、小規模電話会社の交換手
(アメリカでは法律を作るのは議会であり、)議会が、その時々の利害関係者の意見を聞いて、適用除外を決めることがある。
 小規模新聞社が市場で生き残るためには、コストが大きな問題であったため、(利害関係者からの要請に基づき)議会が適用除外とした。
 小規模電話会社についても、コストの問題から、電話会社が議員に要請し、議会が適用除外としたと考えられる。

外国船籍乗組員、漁業従事者
 これらの仕事は、あるときは働き、あるときは働かないという労働形態であることから、給与を労働時間で測ることが適当でないと考えられたため除外された。

新聞配達員
 一般的に子供の仕事と考えられており、子供が働けるように配慮され、適用除外とされた。

小規模農場の農業従事者
 やはりコストが問題であったため、市場で生き残るために、議会が適用除外とした。

臨時ベビーシッター
 家庭内の雇用であり、政府は家庭内を規制したり、調査したりすることを望まないことから、適用除外とされた。

減額措置の考え方
20歳未満の若年者(就業後最初の90日間)
 若年者の雇用を促進するためである。一般に、21歳未満の者は、生産性が低く、雇用に当たり、より長い訓練が必要と考えられている。

障害者
 障害者の雇用を促進するため。
 使用者は、Timetestと言われる個々の労働者の生産性を測るテストを行い、それぞれの生産性に応じて、賃金を支払うことができる。例えば、一時間に4枚のシャツを作ることができる労働者の賃金が5.15ドルの場合、Timetestで、一時間に1枚のシャツしか作ることができない労働者には、賃金を1ドル程度にすることができる。

チップを得る従業員(定期的に月30$以上のチップを得るもの)
 チップを支払われる労働者は、3.02ドルが最低賃金であるが、使用者は、2.13ドルのチップが支払われるようにすることが必要。結果として、チップを得る従業員も、5.15ドルの賃金を得ることができる。



イギリス

 イギリス政府(貿易産業省(Department of Trade and Industry))は、1999年の最低賃金法施行時点においては、16歳〜17歳を適用除外とし、18歳〜21歳を減額措置とした。
 これは、1998年6月の低所得委員会(Law Pay Commission)の第1次勧告を踏まえたものであり、その勧告によると、適用除外及び減額措置の考え方は下記のとおり。
 (なお、低所得委員会は21歳には減額措置を求めていないが、政府は21歳も減額措置とした。)

・「最低賃金」低所得委員会の第1次勧告(1998.6)
  (「The National Minimum Wage」First Report of the Low Pay Commission)
(賃金時間課仮訳)
5 訓練と開発
 訓練と開発は人々のエンプロイアビリティを改善し、より高い賃金を得る能力を増進する。特に若年者は職業生活の準備のために必要な指導、経験、訓練を受けなければならない。仕事に就いているすべての16歳と17歳の者は何らかの教育か訓練を受けるべきである。見習制度は若年者に良質の訓練を提供し、訓練は支援され、奨励されるべきである。よって、すべての16歳と17歳の者及び公式の見習制度を受けている者は最低賃金制度の適用除外とされるべきである。
 理想を言えば、仕事に就いている18〜20歳の大部分が何らかの形の認定された訓練を受けるようになるとよい。しかし、現在のところ多くの者が訓練を受けることができず、労働市場の中で非常に弱い立場にある。これらの若年者は彼らが働く産業が突然の労務費上昇に見舞われた場合、失業の危険が非常に大きい。彼らにとって最も重要な問題は仕事の機会を守ることである。我々は慎重でなければならない。18〜20歳の若年者には、労働市場における彼らの地位を守るため、使用者が訓練を行っている間、Development Rate(減額措置)に設定された最低賃金を支払うことができる。しかし、訓練はすべての年齢層に関係がある。21歳以上の者で新しい使用者のもとで新しい仕事を始める者であって、認定された訓練を受けている者には最長6ヶ月Development Rateを適用してもよい。

 しかし、低所得委員会は、2004年3月、第4次勧告を提出し、その中では、下記のような考え方で16歳〜17歳も適用すべき(見習生は除く)と勧告した。政府はこれを受け入れ、2004年10月より、
 16〜17歳 3.00£(時間額)
  16歳〜17歳の見習生は適用除外
とした。
(参考)
22歳以上 4.85£(main (adult) rate)
18〜21歳 4.10£(development rate)
22歳以上であっても新しい使用者の下で新しい仕事を始める者であって認定された訓練を受けているものは、最初の半年間は4.10£(development rate)


・「若年労働者の保護」低所得委員会の2004年勧告(2004.3)
  (「Protecting Young Workers」 Low Pay Commission Report 2004)
(賃金時間課仮訳)
3 16、17歳
 最初の3つの勧告の中で、我々は16〜17歳は最低賃金制度の適用除外とされるべきであると提言した。これは、16〜17歳は完全な労働力というよりは職業生活の準備をしており、労働市場の中で異なる区分を形成しているという我々の見解を反映したものであった。おおよそ70%がフルタイムで教育を受けており、多くの者がパートタイムで教育や職業訓練を受けている。そして、理想的にはすべての16〜17歳の者は教育又は高い水準の職業訓練を受けるべきである。
 しかしながら、4番目の勧告の分析の中で、我々は極端に低い賃金で最小限の職業訓練しか行わず、進歩の見込みがほとんどないフルタイムの仕事があることを懸念した。そのため、16〜17歳のグループを今年詳細に再検討し、若年者が教育から離れることを促進せず、かつ、職業訓練の機会も減らすことなく、明らかな搾取に歯止めをかける最低賃金を導入できるかどうか助言すると政府に対して提言した。
 我々の結論は、このバランスは可能であり、16〜17歳の者に最低賃金制度は導入されるべきであるというものである。欧州雇用指令(2000/78/EC)の年齢と矛盾がないという条件のもとで、2004年10月より16〜17歳の者に時給3.00£の最低賃金を導入することと現在の19歳以下の見習生に対する最低賃金の免除の継続を提言する。我々はまた、16〜17歳の特定のpre-apprenticeship programの参加者は16〜17歳の賃金率から除外すべきであると提言する。
 我々は、提言された賃金率は慎重なものであると信じているし、この年齢層を労働市場から閉め出すリスクは避けるべきである。これは定期的に再検討されるべきものであるが、この水準を自動的にyouth Development Rate(減額措置)と結びつける理由はないと考えている。数年後に見習生とpre-apprenticeship programの参加者の地位を再検討できればと思う。
 16〜17歳の賃金率の導入は法施行と周知についてもこの年齢層に拡大することを意味する。我々は、たとえば、様々な媒体や学校、地域ラジオなど特定の伝達経路を使って若年者に賃金率と法施行の仕組みについて周知を促進すべきであると政府に提言する。
 若いときの職業経験は人生の将来展望を形成する。最低賃金制度は、搾取という最悪の問題を解決しなければならない。そして、16〜17歳の賃金の下限は、初めて労働市場に入ってくる人々を守るのに役立つであろう。また、これらの年齢層に雇用に係る権利について一般的な認識を増やすのに役立つであろう。それに加え、イギリスを、すでに16〜17歳を適用している最低賃金制度を持つ他の主要な国々と同列に引き上げるであろう。


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