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資料2
ALS以外の在宅療養患者・障害者に対する
たんの吸引に関する論点整理メモ(案)


 研究の趣旨

 今回の研究は、「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」の検討・結論を踏まえ、ALS患者以外の在宅療養患者・障害者について、改めてたんの吸引の取扱いについて整理するもの。


 これまでの経緯

 医師法等の医療の資格に関する法律は、免許を持たない者が医行為を行うことを禁止しており、たんの吸引は、これまで、原則として医行為であると整理されてきた。

 現在の法体系の下で、類似の問題についてどのような解決が図られてきたのか。

(1)現行の法規制

(ア)関係条文
 医師法第17条
 「医師でなければ、医業をなしてはならない」
 医業とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為を、反復継続する意思をもって行うことと解釈。

 保健師助産師看護師法第31条
 「看護師でない者は、第5条に規定する業をしてはならない」
 保健師助産師看護師法第5条に規定する業とは、「傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療上の補助を行うこと」であり、看護職員が行う医行為は診療の補助行為に位置付けられるものと解釈。

(イ)学説・判例
 医業については、行政の有権解釈と同様に解釈。なお、医師法17条の背景にある無資格者による医業を規制するとの趣旨から、危険性については、個別の個人に対する具体的危険でなく、抽象的危険でも足りるとする。


(2)実務的対応

(1) 在宅ALS患者に対するたんの吸引
 在宅で療養しているALS患者に対するたんの吸引行為については、基本的には医師又は看護職員が行うことが原則としつつも、3年後に、見直しの要否について確認することを前提に、医師の関与やたんの吸引を行う者に対する訓練、患者の同意など一定の要件を満たしていれば、家族以外の非医療職の者が実施することもやむを得ないものとされている。
 ※ 法的には、刑罰法規の構成要件に該当する行為が、一定の要件の充足により正当化され、違法性が阻却されるとする「実質的違法論」の立場に立つものと考えられる。

(2) 盲・聾・養護学校における教員によるたんの吸引等の取扱い
 本研究会において、盲・聾・養護学校の教員による(1)たんの吸引、(2)経管栄養、(3)自己導尿の補助についての検討が行われた。
 医療に関する資格を有しない者による医業は法律により禁止されているが、たんの吸引、経管栄養及び導尿については、看護師との連携・協力の下に教員がこれらの一部を行うモデル事業等が、平成10年度以来文部科学省により実施されている。このモデル事業において医療安全面・教育面の成果や保護者の心理的・物理的負担の軽減効果が観察されたこと、必要な医行為のすべてを担当できるだけの看護師の配置を短期間に行うことには困難が予想されることから、このモデル事業の形式を盲・聾・養護学校全体に許容することは、医療安全の確保が確実になるような一定の要件の下では、やむを得ないものと整理した。
 ※ ALS分科会と同様の法律的整理を行った。


(3)在宅ALS患者に対するたんの吸引の取扱いとその評価

 たんの吸引は安全に実施されているのか
> 要件の遵守
 ◇ 研修
 ◇ 医療関係者の関与

 実施上の問題
 ◇ 同意書の作成
 ◇ たんの吸引を行うホームヘルパーの確保

 在宅ALS患者の療養環境の整備状況


(4)これまでに提出された要望書や、ヒアリングの場での団体の意見の概要

 患者・家族からはどのような要望があるのか


 ALS以外の在宅療養患者・障害者のたんの吸引についての考え方の整理

(1)在宅のALS療養患者に対するたんの吸引についての整理を踏まえ、ALS以外の在宅療養患者・障害者に対するたんの吸引についてどのように考えるか。

(ア)対象者の範囲

 今回の検討では、対象者の範囲についてどのように考えるか。

 典型的な例としては、嚥下機能が弱くなっている者や気管切開を行っている者などで、病状が安定しており、ある程度の長期間にわたってたんの吸引が必要な者が想定されるのではないか。

(イ)家族以外の者が安全に行うことのできるたんの吸引の範囲

 ALS分科会の報告では、ALS患者に対する家族以外の者が行うたんの吸引は、口鼻腔内吸引及び気管カニューレ内部までの吸引を限度としていたが、「ALS以外」の在宅療養患者・障害者に対するたんの吸引についても同様でよいか。

(ウ)たんの吸引を家族以外の者が実施する上で最低限必要な条件は何か

 ALS報告書では下記の条件が列挙されたが、他に検討すべき要素はあるか。

(1) 療養環境の管理
 医師及び看護職員の支援と関係者間の連携体制の確立

(2) 適切な医学的管理
 医師及び訪問看護職員による定期的な診療や訪問看護

(3) 家族以外の者に対する教育
 たんの吸引を実施する者に対する医師や看護職員による教育指導

(4) 患者・障害者本人の同意
 たんの吸引を医師又は看護職員でない者が行うことについての本人の同意

(5) 医師及び看護職員との連携による適正なたんの吸引の実施
 医師及び看護職員による医学的管理
 たんの吸引の範囲の限定(上記(イ)参照)

(6) 緊急時の連絡・支援体制の確保
 家族、医師、看護職員、当該家族以外の者の間の連絡支援体制の確保


(2)法律的な考え方をどう整理するか

 ALS検討会報告書を踏まえた通知や、養護学校等における3行為についての取扱いに関する通知と、違法性阻却の考え方は同様でよいか
 (1) 目的の正当性
 (2) 手段の相当性
 (3) 法益衡量
 (4) 法益侵害の相対的軽微性
 (5) 必要性・緊急性

 法の下の平等の観点から、ALS患者と同様の措置を執る必要はないか。


(3)その他

(1) ALS報告書は、3年後の見直しをうたっている。仮に、ALS以外の在宅療養患者・障害者に対するたんの吸引についてALS患者と同様の取扱いをした場合、同時期に見直すのか。

(2) ホームヘルパーがたんの吸引を行う場合、事業主の関与についてどのように考えるか


 今後の課題

今後の在宅療養の基盤整備・政策的対応の在り方について、どのように考えるか


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