04/11/24 予防接種に関する検討会第2回議事録            第2回 予防接種に関する検討会 議事録                          平成16年11月24日(水)                              9:30〜12:30                        於:厚生労働省6階共用第8会議室                   議事次第              1. 麻しんの予防接種について              2. 風しんの予防接種について              3. その他 ○江崎課長補佐  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第2回予防接種に関する検討会を開 催いたします。  委員の皆様、それから、参考人の皆様には、御多用のところ御出席をいただきまし て、ありがとうございます。  本日の検討課題に関します専門家として出席をいただいている参考人の御紹介を簡単 にいたします。  CDC客員研究員の加藤参考人でございます。 ○加藤参考人  加藤です、よろしくお願いします。 ○江崎課長補佐  帝京平成短期大学副学長の川名参考人でございます。 ○川名参考人  川名でございます。産婦人科の医師でございます。 ○江崎課長補佐  川崎医科大学小児科助教授の寺田参考人でございます。 ○寺田参考人  寺田でございます。よろしくお願いします。 ○江崎課長補佐  北里生命科学研究所ウイルス感染制御学研究室の中山参考人でございます。 ○中山参考人  中山です。よろしくお願いします。 ○江崎課長補佐  なお、事務局の方で、本日は瀬上大臣官房参事官が出席をしております。 ○瀬上参事官  瀬上でございます。よろしくお願いいたします。 ○江崎課長補佐  それでは、本日の検討課題につきまして、牛尾課長より説明させていただきます。  お断りしておきますが、本日、岩本委員、蒲生委員、竹本委員は欠席をしておりま す。 ○牛尾結核感染症課長  おはようございます。  委員の皆様、そして、参考人の皆様方におかれましては、本日は朝早くから検討会に 御出席いただきまして、ありがとうございます。10月15日に第1回の検討会を開催させ ていただきましたが、その際には初回だったということもございまして、予防接種全般 について御議論いただきましたが、今回から個別の疾患について数回議論をしたいと思 っております。  なお、前回の検討会の場でいただきました点つきまして、私の方からその取扱いにつ いて、まず御報告させていただきたいと思います。  まず、座長から、風しんについては是非CDCの加藤先生にお話ししていただくよう にということで、本日、実現いたしました。ありがとうございます。  それから、雪下委員からであったと思いますが、インフルエンザ予防接種の痴呆症の 方、「痴呆」という名前が変わるようでございますけれども、それから、接種料金の話 がございました。これはインフルエンザのときに議論させていただきたいと思っており ます。  それから、岡部先生から文部科学省との連携の必要性。  それから、これもやはり座長からであったと思いますが、労働関係部局において、接 種日の休業等の取扱いについて御指摘がございましたが、これはどの予防接種というこ とにかかわらず横断的な課題だと考えておりますので、しばらく先になると思いますけ れども、来年度にその横断的課題を検討するときに、関係部局に是非声を掛けたいと思 っております。  さて、本日は予防接種におきまして、特に緊急性の高い課題でございます麻しんと風 しんの予防接種の在り方について、集中的に御議論いただきたいと考えております。  まず、麻しんにつきましては、昨年3月にポリオ及び麻しんの予防接種に関する検討 小委員会において取りまとめていただきました提言に基づき、1歳直後での接種率の向 上を図るための取り組みを進めているところでございます。この数年間で自治体や医師 会等での積極的な取り組みにより、全国的な接種率が向上したこともあって、昨年・今 年と麻しん患者の定点報告数が大幅に減少しております。感染症発生動向調査のデータ から推計しますと、全国の麻しん患者数は昨年は8万人程度、今年は2万人以下に減少 するのではないかと見込んでおります。  こういった患者数が減少している状況において、更に麻しんの患者を減少させるある いは国際的に求められているeliminationという方向に向かっての方法として、2回接 種の導入の必要性が高まりつつあるのではないかと考えています。  一方、風しんにつきましては、今年は春先に一部地域での風しんの局地的流行が認め られまして、特に先天性風しん症候群、CRSの発生が懸念されたところでございま す。緊急に研究班を設けまして、その研究班には8月末に緊急提言を取りまとめていた だきました。この提言を踏まえまして、幼児や妊娠の可能性のある女性などに対し、予 防接種の勧奨を行っておりますが、残念ながら、今年になりましてCRSの症例が8件 既に届けられております。今後の風しん対策の在り方について、更に検討が必要ではな いかと思っております。  本日は、そういう意味で、麻しんと風しん、この2つの疾患に絞りまして、専門的な 見地から忌憚のない御意見をいただきますようお願い申し上げまして、ごあいさつとさ せていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○江崎課長補佐  それでは、この後の議事の進行につきましては、加藤座長、よろしくお願いいたしま す。 ○加藤座長  おはようございます。  それでは、本日の議事を進めさせていただきます。事務局の方から、資料の確認だけ お願いいたします。 ○小林専門官  それでは、資料の確認をさせていただきます。  議事次第の1枚紙をめくっていただきますと、本日出席いただいている先生方の名簿 がございます。  その次に、資料一覧でございますが、以下をめくっていただきますと、資料1といた しまして「麻しん及び風しんに関する現状と論点」、これは第1回目の検討会の資料3 の中か麻しんと風しんの部分を抜粋させていただいたものでございます。  それから、資料2といたしまして、事務局の方でまとめさせていただきました「麻し ん対策に関する世界の動向」についての資料がございます。  それから、以下資料3、資料4、資料5といたしまして、後ほど岡部委員、中山参考 人、加藤参考人の方から発表いただきます資料をプリントアウトしたものがございま す。  それから、資料6として寺田参考人の資料とございますが、これは時間の都合で印刷 が間に合ってございません。申し訳ございませんが、パワーポイントで発表いただく予 定で、資料は準備いたしておりません。  それから、資料7といたしまして宮崎委員から発表いただく資料がございます。  それから、参考資料1といたしまして「今後のポリオ及び麻しんの予防接種に関する 提言」。  参考資料2といたしまして「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊 急提言」。  参考資料3といたしまして「平成14年度感染症流行予測調査報告書」、風しんと麻し んの該当部分についてコピーをいたしております。  資料は以上でございます。不足等ございましたら、お申し出ください。 ○加藤座長  ありがとうございました。資料はよろしゅうございましょうか。  それでは、時間が余りありませんので、早速議事を進めてまいります。今日は今、課 長からお話がありましたように、はしかと風しんのワクチンについて集中的に議論して いただいて、できれば本日中に、この2つの予防接種ワクチンの接種の仕方について、 この会で意見をまとめたいと考えております。各委員または参考人の先生方に、お一人 大体15分程度で御発表いただきまして、その後、もし事実確認程度の御確認がございま したら、1〜2名ほどいただいて、そして、全部が終わったところで麻しんは麻しん、 風しんは風しんで議論していただきます。また、両方またがる場合には、またがったこ とについての参考意見をお聞かせいただきたいと考えます。  それでは、まず、岡部委員に感染研としての麻しん及び風しんの流行状況や抗体保有 状況について中心に御発表をお願いいたします。それでは、岡部委員、よろしくお願い いたします。 ○岡部委員  おはようございます。国立感染研の岡部でございます。  今日、私は、はしかと風しんの状況について御説明するようにという指示をいただき ました。  私のプレゼンテーションは資料3にございます。  それから、先ほど事務局から紹介がありました、「麻しんに関する提言」のところで まとめたこと、「風しんの研究班」でまとめてあること、大方のところはそれらの資料 に沿っております。  WHO資料ですが、麻しんワクチンの接種率が上がっていくにしたがって、世界での患 者数はどんどん減ってきており、世界じゅう全体で、はしかという病気は確かにその数 が下がりつつあるということは明らかですが、2002年のデータをもってみても、はしか で命を落としている子どもさんがやはりまだいっぱいいます。  2002年のデータでは、世界の半分ぐらいのところでは、まだまだはしかは流行してい ます。そして2002年は残念ながら、我が国も麻しん流行国に分類されています。  WHOは、とにかく麻しんによる死亡をまず減らすんだということが1つ。そして、 その先として、はしかに対してゼロを目標にしようかというようなことを検討している わけですけれども、はしかに対する死亡率をどんどん減らしていって、さらにそこの地 域でゼロにするという目標(elimination)を既に設定している地域が幾つかございま す。南北アメリカについては、これをほぼ達成し、ヨーロッパ、旧ソ連、地中海地域な ど目標を2007,2010年に設定しています。まだ達成の目標設定をしていない地域もあり ます。  日本の属しているアジア西太平洋地域(WPRO)は、これをいつにしようかという ことで議論が随分行われたんですけれども、なかなか達成目標の設定ができていなかっ たのですが、今年の会議で、WPROも2012年を目標にしようとまとまってきておりま す。日本はそれに協力する、中国もこれに一応賛成を表明したことが、最も大きい元に なっています。  WPROでの例を挙げます。隣の韓国は2000〜2001年に掛けて、はしかのアウトブレ イクがありましたが、その後強力な予防接種推進キャンペーンを行って急速にそれを減 らしていったという歴史があります。あるいはこれはベトナムですけれども、ベトナム もはしかのサーベイランスを強化するにしたがって、その数がだんだん明らかになって いくわけですが、はしかに対して強力な予防接種推進をやることによって、はしかとい う病気を著しく減らしている実績が、隣の国もありますし、ベトナムといったような国 でも見られる。ただ、このベトナムが麻しんを非常に減らしたという原動力になってい るのは、日本からの資金供与であり、ワクチン製造への技術供与が大きく影響を与えて います。  カンボジアは最貧国というふうに位置付けられていますが、ここでもサーベイランス の強化にしたがって、はしかのケースがだんだん浮き彫りにされて大きくなり、それに 基づいて、強力な予防接種推進を行って、その発生数を急速に下げてきているという状 況であります。  このはしかのワクチンの強化というのは、徹底してはしかのワクチンのカバレッジを 上げるということと一緒に、いずれの国も本当にゼロに達成するに近いことをやるため には、どこかのタイミングで2回接種法を導入しているということがございます。  我が国でありますけれども、定点、現在は3,000か所の小児科の先生から患者数の報 告をいただいてサーベイランスを行っております。1980年代からずっと数を追っていき ますと、だんだん減っているのは確かです。一時増えているといっても、それはこの流 れからみれば余り大したことはないというのが、ここに見られております。2001年とい う年をとってみますと、2001年は、今までずっと減ってはきているなかで、ちょっと増 えた時期であります。しかし、少ない中で少し増えたとはいえ、年間推計では20〜30万 人ぐらいのはしかの患者さんがいたということになります。この現象は、我が国でもは しかのことが問題になることとなり、その対策として1歳で早くワクチンを接種といっ たような大きいキャンペーン、厚生労働省も12〜15か月に、はしかのワクチン接種を早 く行ってほしいというようなことを言った結果減少傾向となり、2004年についてはガク ッと減っていまして、過去20年で最低の数に推移しております。届出数として、2万人 を切るか切らないかというようなところです。  感染症流行予測事業ということを厚生労働省の事業として感染研でやっております。 その中でみているワクチン接種率ですが、2001年と2003年で年齢別にワクチン接種率を 比較してみます。年齢層の高いところでは、結構90%前後ぐらいのカバレッジが比較的 きちんと保たれているということがありますが、患者数が多い1〜2歳でカバレッジが 非常に低いというのがわかります。2001年では、52%ぐらいが1歳児のワクチン接種率 であります。それがキャンペーンを行うことによって2003年は、63.4%というふうに接 種率が上昇しております。また、2歳児においての接種率ということであれば、80%で あったのが90%ぐらいに上昇しているというのがありますから、確実に小さいお子さん に対するワクチン接種率というのは全国的な運動の展開の結果、上昇していると言えよ うかと思います。  そして、この事業による血清抗体の保有状ですが、1歳におけるはしかの抗体保有状 況というのは、43.9%というふうに非常に少なかったのが2001年であったわけですけれ ども、2003年の同じような調査をやって、1歳児における抗体保有状況を見ますと、60 %を超えてきております。したがって、ワクチン接種率も上がっているし、それによる 血清抗体保有状況も当然ながら上がってきて。その結果として、患者さんの数が減って いる、というような状況であります。  もしかすると自然のサイクルで、はしかは減っているのであろうというような考えも あります。ターゲットにしたのは、はしかの患者さんの多い1〜2歳にかけてですが、 両方合わせると34%というのが、2001年の状況だったわけですけれども、これが2003年 になりますと両方合わせた数は27%と、1〜2歳代の数が少なくなってきていることが 明らかです。ということは、ターゲットにした年齢層における予防接種率が上がり、は しかの患者さんの数が少なくなっているということですから、自然減ではなくて、やは り感受性者の数が予防接種によって減ってきたためと考えられる結果ではないかと思い ます。ただ相対的に年齢の高い層での患者数が増加しています。  これは後で、いろいろな先生から出てくると思いますけれども、はしかを徹底的に少 なくするためにはどうしたらいいかという、米国の例であります。米国もかつては1回 接種を行って、1歳代の数をかなり少なくし、結果として全体の数を少なくしたんです けれども、その状況は数年経つと、ワクチン接種者においても10歳ぐらいからその数が 増えてきているというようなことが、1980年代の結果として示されています。ちょうど 今、日本はこの状況に近づいてきているのではないかと思われます。つまり、小さい年 齢でのワクチン接種を徹底することによって、かなりその部分の数は減っていきますけ れども、相対的に、だんだん年齢の高いところでの人数が増えてきている傾向にあると いうことがあります。  そこで、彼らは全体の感受性者を減らすために、2回目のはしかのワクチン接種導入 を行って、結局この10才台の患者数も減らした結果が、年間で数十例ぐらいの発症数に 抑え込んだということになります。では、この2回目のはしかのワクチンのタイミング をいつにしたらいいかということは、この後の議論で恐らく出てくることだと思いま す。どういうストラテジーをとるかによって、そのタイミングは違ってくると思いま す。  それから、もう一つの風しんについては、つい最近に風しんワクチンに関する状況を まとめた、横浜市大産婦人科の平原教授のグループで風しんに対する提言というのが出 されております。私たちもその中でことにワクチン戦略に関する提言に関与しておりま す。それも、この資料の中に入っておりますけれども、風しん患者さんの報告、これも 小児科の定点3,000か所からいただいている報告では、我が国の風しんは1980年代から たまにピークはありましたが、着実にその数は減らしきていることが明白であります。 自然減の部分もありますが、風しんのワクチンを受ける人が増えてきて、それにしたが って感受性者の数が減ってきているというのは間違いない状況であります。  しかし、その数は残念ながら中途半端なところに推移していると言えると思います。 麻しんほどの患者数ではないけれども、定点から報告いただいている患者さんの数は大 体年間に3,000人前後。それから、推計しますと、このところ年間に3万人前後ぐらい の患者さんがいるだろうと考えられます。2004年ではその数が今までより、決してこの 数が急激に上がったということではないんですけれども、全体の報告数から言うと、既 に昨年を上回っている数が出てきております。  2000〜2004年のまとめでは、風しん発生の地域性はバラバラとあちこちで出ているも ので、どこかに集中して現れたり、あるいは全国一面に風しんが流行しているという状 況ではありません。地域的な流行の中で年齢層に一つの特色が出ております。ただ、年 齢構成は主に小児科から風しん患者数が届けられているので、大きい年齢層ははっきり わからないというのは確かにございます。しかし主に小児科から届けられていながら、 大人層の風しんがだんだん厚みを増してきているというのが最近の現象であります。少 ない風しんだけれども、地域的な流行は見られて、その中には成人層での風しんが厚み を増してきているといったようなのが、現在の特徴であるとまとめられます。  先ほどと同じ血清抗体の保有状況というものを国の事業としてキャッチしておりま す。これは男性、女性における年齢別の風しん抗体保有状況をワクチンある、なしとい うことで見ていますが、白抜きになる部分が結局は陰性者の数になります。2001年の調 査でありますけれども、特に、女性の場合の風しんの感染が問題になるというのは御存 じのところですが、女性の予防接種率はそんなに低いものではないけれども、10%前後 ぐらい抗体陰性者が見られるというのが、女性における成人層の特徴です。また、一部 谷のようになって抗体陰性者の多くなる年齢層が見られるというのも特徴です。  そして、風しんは決して女性だけの病気ではなくて、男も陰性であればかかるわけで すけれども、男の抗体陰性者というのは、女性に比べかなり年齢が幅広く見られている という特徴もございます。  そういうようなところから、風しんの推計感受性人口を見ております。これは、各年 齢層でどのくらいの人が、風しん抗体に対して陰性で感染の可能性があるかということ を男女別に分けてあるわけです。1〜39歳の女性で見てみますと、風しんの免疫を持っ ていない人は250万人以上、あるいは妊娠があり得る一番多い年齢層である20〜30歳代 の女性で見ると、その年齢層で78万人が陰性です。したがって、この中から風しんの感 染者が出てくれば、胎児への影響も出やすいというようなことがあります。しかし、こ れは女性だけをターゲットにして風しんの対策を行っても、男の方で流行があれば風し んは減らないわけですけれども、20〜30歳代の男性で風しんの感受性者は450万人とい う膨大な人数になり、風しんの感染の可能性を持っているということになります。  そういう状況の中で、風しんで危惧されるのは、先天性風しん症候群(CRS)として ハンディキャップを持って子どもさんが生まれるということであり、これをなるべく防 ぎたいというのが風しん対策の最大の目的であります。1989年からこれまでは年間に1 例ぐらいの報告であったCRSの患者さんですが、今年に入って既に8例の報告が出て います。これは、報告の定義に当てはまった患者さんだけですから、これに当てはまら ないけれども風しんの感染を受けたという子どもさんは、もっと多くいるだろうとは想 像ができます。  世界の状況は、風しんは必ずしも麻しんのように全世界的にコントロールについて展 開されているわけではありません。経費その他からまだそこまで手が回らない国も多い という理由です。風しんのワクチンについて定期的にルーチンの形で接種を行っている という国は、図の青いところで示しております。我が国も勿論その中に入っているわけ であります。この風しんのワクチンを中途半端な形で推移すると、どういうことになる かということをギリシャが残念ながら示してくれています。  ギリシャにおいては、風しんのワクチンは1970年代から導入しております。しかし、 強力にキャンペーンや何かを行っているわけではないので、50%前後ぐらいのワクチン の接種率ですが、そうすると、ワクチンを接種すれば当然風しん全体は減ってきます。 一方、小児での発生は少なくなるけれども、ワクチン接種を受けていない、いわば積み 残しであった若年成人での風しんが増えてきたという状況がございます。かつては子ど もの病気であった風しんが、風しんのワクチンを中途半端にやっていると、だんだんそ の年齢層は積み残しである成人層に移ってくるという現象が見られたわけです。そして その結果として、大流行ではないけれども、成人層での風しんの患者さんの数が増えれ ば、追いかけるようにしてCRSが増えてくるという現象があり、現在の我が国はこれ に近いものになり得るというふうに言えると考えられます。  これは、ブラジルのデータであります。ブラジルは1992〜2002年にかけて、一度増え てきた風しんをコントロールするために、12〜39歳の女性をターゲットにして、特定の 地域においてピンポイント攻撃みたいなことをやって、その結果として、全体数をきれ いに減少させているといったようなことをやっております。  いろいろな状況をまとめ、風しん研究班において、「現在の状況は放置しておけばC RSの発生に関して危機的な状であるということで、緊急にこの風しんに対する対策も とるべきである」という提言をさせていただきました。  その主要な点は、(1)妊婦の夫・子ども及びその他同居家族への接種を勧奨する、こ れは任意になります。(2)定期接種を強化しなければいけないということ。(3)特に妊娠 中あるいは妊娠前後に関する女性に対して、その状況をきちんと調査した上で家族への ワクチン接種、そして妊娠中は別として本人に対してきちんと免疫を与える といった ようなことを展開すべきである、というものです。  現在の麻しん、風しんの我が国の状況というのを簡単ですけれども、かいつまんで御 説明させていただきました。  以上です。 ○加藤座長  岡部先生、どうもありがとうございました。岡部先生から、はしかの疫学と抗体保有 状況についてお話を伺いました。はしかについては、死亡ゼロに向けて作戦が練られる べきであろうと。その目標が西アジア太平洋地域で2012年ということで、大体の合意が 得られているということです。歴史的に見ても、米国等の歴史的な技術から見て、今、 日本ではキャンペーンをしたことによって、10万人程度あった患者さんが2万人程度に 減少しているということですが、これは自然のサイクルで減少しているとは考えにく く、やはりキャンペーンの努力であろうということの御発言と伺いました。  また、米国で完全になくすためには1回接種では不可能であったので、これを2回接 種することによって現状に至っているという御説明だったかと思います。  また、風しんに関しましても、まだ日本には約3万人程度の患者さんがいるというこ とでして、その流行は集中的に流行しているわけではないけれども、ばらついた地域で の流行が見られる。特に問題であるのは、現在日本では乳幼児に接種をしているところ ですが、接種から外れてきている高年齢層、成人に、どうも発症の厚みがある可能性が 高いというところでして、年齢別に見ると、場合によっては10%近くに抗体を持ってい ないグループが出てきている可能性があって、その結果かどうかわかりませんけれど も、CRSがここ1〜2年の間に9例ほど出現しているということが非常に心配であ る。  また、ギリシャの現状を見ると、どうも日本と非常に似ておりまして、乳幼児に接種 したワクチンの結果、積み残しの成人が出てまいりまして、その積み残しの成人の中か ら発症者が出てきて、そしてCRSも上昇してきているというような御報告だと思いま すが、大体そんなところでよろしゅうございますね。  そうすると、今日、御出席の皆さんから何か御質問、また後ほど今後の対策につい て、これを基にお話ししていただきますけれども、個々の事実関係について何か御質問 がございましたらどうぞ。  岡部先生、今、日本では2002〜2003年ぐらいで、はしかの死亡数はどのくらいです か。 ○岡部委員  はしかによる死亡数というのは、年間多いときでも20〜30ぐらいの届出なわけです が、届出ではわからないので、ある地域での流行をとって推計すれば80〜100人ぐらい だろうというのが1999〜2000年ぐらいの状況だったんですが、この数は極めて少なくな ってきております。現在、死亡届ということだと、手元にはっきりした数字はないんで すけれども、10前後あるいは10以下になっていると思います。しかし、例えば、最近で ははしかの接種を受けていない、子どもさんを持ったお母さんが、はしかに感染して急 性脳炎で亡くなったという急性脳炎としての届出があったりしており、決して安心な状 況までは至っていないというところだと思います。 ○加藤座長  そうですか。あくまでも死亡数をゼロにするということだと。  よろしゅうございますか。 ○廣田委員  ちょっと1点よろしいですか。風しんの方ですけれども、20歳以上で厚みが増すとい う表現をなさっていますが、これは若年層で人数が減っているから相対的に割合として 増えたのか、それとも実数として増えているのか、どちらでしょうか。 ○岡部委員  相対的に増えているというふうにしか言えないと思います。それは、成人層における 風しんの数をちゃんとキャッチできるシステムは残念ながらないので、あくまで定点の 中での人数の割合でとっていますから。 ○加藤座長  よろしゅうございますか。ほかに。 ○加藤参考人  流行予測事業の中で、風しんの女性の抗体価の分布、年齢別分布がありましたね。 2001年の例が出ていましたけれども、10歳代の後半の辺り、女性だけが下がっているの がありますね。あれは前から気になっているんですが、あれは、たまたまその年にサン プリングした対象者では低いだけで、前後の年で見るとそれほど低くないのではないか という気がするんですけれども、それでよろしいでしょうか。 ○岡部委員  前後の年で見ていると、大体同じ年齢層はそのまま、少ないまま推移していると言っ た方がいいと思います。 ○加藤参考人  ということは、あそこにやはり抗体陰性者の大きなグループがあると。 ○岡部委員  そういうふうに考えられます。 ○加藤参考人  そうですか。 ○加藤座長  それは、MMRと関係ありますか。年代的にちょっと……。 ○岡部委員  MMRというよりは、どうしても経過措置というところで接種率が落ちているグルー プに、やはり女性における風しん抗体の陰性率が低いと言えるかと思います。ただし、 そのとき男の方はそんなに落ち込んでいないというのがあるので、その辺がきちんと明 解に答えが出ないところではあります。 ○加藤座長  要するに、ポリオと同じようにコンタミをずっと追いかけているということですね。 ○岡部委員  その原因をよく考えるんですけれども、しかし余り原因について議論に終わるより も、現象として事実はそこが少ないというのがあるので、そこに対する対策はとらなけ ればいけないだろうと思います。 ○雪下委員  よろしいですか。麻しんの一番最後のスライドの2回接種したものと1回接種のとの アメリカでの比較がありましたけれども、余り差がないように思いますが……。 ○岡部委員  これは結果ではなくて、この現象で2回目接種を導入したということを、このスライ ドではお示ししてあります。この結果としては、全体数が数十例の単位までアメリカは コントロールしたというのは、この次に出てくるスライドに続きます。 ○雪下委員  わかりました。 ○加藤座長  このピンクと赤のグラフは、そのまま同じものが出ているということですね。 ○岡部委員  はい、同じものです。すみません、誤解がありました。こういう状況だったので、ア メリカはその次に2回目のワクチン接種を導入したというところを書いています。その 結果は、スライドにお示ししなかったんですけれども、全体数を数十例までに減らした ということですので、その効果は著しかったという意味を申し上げたかったものです。 失礼しました。 ○加藤座長  ありがとうございました。よろしゅうございますか。  それでは、お時間もございますので、先に進めさせていただきます。次に、中山参考 人に、はしかの基礎的な観点から御発表をいただきたいと思います。よろしくお願いい たします。 ○中山参考人  おはようございます。北里生命科学研究所の中山と申します。  麻しんの撲滅に関する話なんですけれども、先ほど岡部先生から世界の状況のお話が ありましたが、なぜ今、日本で麻しんの撲滅を急がなければいけないのかという話をし たいと思います。  私がお話しいたしますのはウイルス学的な方からでして、麻しんウイルスのウイルス 学的な性状や血清疫学調査の結果から、やはり今、麻しん対策を急がなければいけな い。世界の中で日本はちょっと取り残されている状況にあるというのは、岡部先生の話 にもあったわけですけれども、麻しん撲滅のターゲットの年が決まっていないのは、日 本を含めた東南アジアであります。  それで、今日お話ししたいのは、麻しんのウイルスの話なんですが、これは先ほどの 岡部先生からもありましたように、感染症サーベイランスの中で大きな流行が1984年 と、その後1987年、1988年、1991年、2001年と流行があったわけです。その流行のたび に、麻しんウイルスの遺伝子のタイプがこういうふうに変わってきておりまして、今、 麻しんでは世界じゅうで22の遺伝子のタイプが報告されております。  その中で、日本で流行している株は流行ごとに変わってきておりまして、その中でこ うしたD3、D5というのは、グアム、パラオに輸出され、それからアメリカの流行の 原因になったということで、この辺りから日本は麻しんウイルスの輸出国だと言われて いた状況です。  麻しんというのは人にしか感染しないわけですから、人の動きと同じように日本から 出て行く。ですから、逆に日本に入ってくるという動きもありまして、Chicago-89株は 先ほどの1989年アメリカの麻しんの流行の最後に分離されたウイルスですけれども、こ の後、この株を最後にアメリカで流行はなかったわけですが、その後世界じゅうを回っ て1997年にインドで我々は分離しております。その後沖縄で流行したものが、この同じ ウイルスChicago-89タイプです。  今、流行しているタイプのH1タイプは1993年に中国で分離されまして、その後2000年 に韓国で分離されまして、その後2000年にちょうどワールドカップのときで、日本と韓 国の行き来が激しいといったころに流行が起こってきております。  今、一番問題にされておりますのは、H1からD5を含めた日本の株が、アメリカ、 ヨーロッパ、オーストラリアに流行を起こしています。大きな流行にはならないんです けれども、外国に持ち出しておりまして、麻しんの輸出国ということは今は言われてい なくて、野生株の貯蔵庫と言われております。  そういう意味合いから、ウイルス学的にも日本はもっと真剣に麻しんの対策をやらな ければいけないというのは、世界から突っつかれている状況にあります。  麻しんウイルスの抗原性の変化ということが問題になるわけですけれども、今、世界 で使われているワクチンウイルスは1954年に分離されましたエドモンストン株からつく られています。これはGenotypeAで、日本で分離されたウイルスの遺伝子タイプはC1, D3,D5,H1の4種類です。エドモンストン株で免疫血清をつくりまして、2の7乗の 中和抗体価を示します。ほかのウイルスに対しては大体低くても2の6乗ぐらいで、1 管ぐらいの差ですから、高いレベルの中和抗体では、抗原性の大きな変化はないという 検査結果になります。  ところが、今問題になっておりますのは、成人含めてsecondary vaccine failure、 ワクチンを受けていても、また麻しんにかかる。一応、個体側の免疫機能が低下すると いうことで考えられていますけれども、ウイルス側の方で見ますと、中和抗体が陽性で も中和し切れないウイルスがいます。中和血清を加えていないところで4の3.5乗TCID50 程度のウイルスが増殖しまして、中和抗体を加えることによって増殖が抑制されます。 ただ、何例か中和抗体があっても増えてくるようなウイルスがあります。  免疫血清の中和抗体価のレベルが高い場合には問題ないわけですけれども、中和抗体 のレベルが低くなっているときには、こうした中和抗体から逃れて増えていくようなウ イルスが今は出現しているということがわかります。  これは、麻しんのワクチンを接種後、血清の中和抗体価がどのくらい続くのかという ことですが、1994〜1998年の血清でずっと見ますと、ワクチンを受けて15年以上経って も、中和抗体が2の2乗以上の高いレベルを維持するという結果が出ています。このデ ータからだけでは、免疫原性が高くて抗体も長く続くんだからいいじゃないかというこ とになるわけですけれども、実際この時代、麻しんが少なからず流行していたわけです から、ワクチン接種で獲得した免疫能が数年たったら低下し、boosterを受けて上がっ てくる。これを繰り返しているのではないかということが想定されます。  実際に、麻しんが流行している時代に病院で、これは1か月に麻しんの患者さんを診 た数ですけれども、そのときに同じ外来に通ってくる元気な子どもたち、お熱もなく て、発疹もなくて、麻しんを疑わせるような症状はないわけですが、リンパ球の検査を しますと麻しんウイルスの遺伝子が大体10〜15%の割合で見つかります。つまり、麻し んが流行している状況の中では、健康な子どもたちはいつもboosterを受けて麻しんウ イルスの感染を起こしている。しかし、発症することはないということがわかります。  そうすると、大人はどうなるかということで、大人は骨髄液が残っているものを検査 しました。こうした悪性腫瘍の患者さんの残りの骨髄で検査しますと、やはり同じよう に10%前後の割合で麻しんのウイルスの遺伝子が見つかっています。つまり、子どもた ちだけではなくて、大人たちの間にも麻しんウイルスの不顕性感染が存在している。こ うした不顕性感染を繰り返すことによって、あたかも麻しんワクチン接種後の免疫能が 長く続くというような結果になります。  そうしますと、そうした途中の不顕性感染がなければどうなのだろうかということで すが、社会全体の中で麻しんが流行しているわけですから、流行のない閉鎖集団の中を 何か所かずっと検査してきたわけです。これは、盛岡の身体障害児施設ですが、15人の 収容児に対してワクチンをやりまして、ワクチン接種児ではHI抗体は2例陰性ですけ れども、中和抗体を見ますと陽性ですから、全例の免疫能を獲得しています。5年経っ て血清を調査しますと、HI抗体が6例陰性になりまして、その中の1例が中和抗体も 陰性になります。この間、個人で見ますと、HI抗体の上昇している例はないわけです から、この閉鎖集団の中での麻しんの流行はなかったということです。  そうしますと、5年経ちますと15例中1例ぐらいの割合で、中和抗体がなくなる子ど もたちが出てきます。これは東京都内の小学校ですけれども、1学年130人ぐらいです。 1982年から、ずっと入学したときの血清抗体価を測定しています。このブルーがHI抗 体の陽性率で、1990年代からずっとHI抗体の陽性率が下がっています。小学校1年生 に入るときにほとんどの子どもたち、98%の子どもたちが麻しんのワクチンをやってい る私立の小学校です。1996年以降ではHI抗体陽性率が下がってくるんですが、中和抗 体で見ますと98%陽性ですから、いいじゃないかと思ったんですけれども、2001年にな りますと、入学時の中和抗体の陽性率が80%を切っております。2001年に入学した子ど もたちは1996年、1997年ぐらいにワクチンを受けています。その後、流行はほとんどか ぶっていないわけですから、この間にboosterを受けている機会がなければ、先ほどと 同じように、集団でも大体80%の陽性率、大体20%が低下してくるのではないかと思い ます。  その後、2001年の流行をかぶった2002年に入学した子どもたちは、前と同じように95 %の陽性率に戻ります。それから、その後も同じです。  今までは経年的な変化ですが、これは2003年を年代別で見ますと、小学校1年生は 2001年の流行もかぶっているわけですから、95%の中和抗体の陽性率。同じく小学校4 年生、中学1年生、高校1年生、それから、看護学生で見ますと、各年代層で10%ぐら いはワクチンを受けていても中和抗体が陰性になっている子どもたちがいますし、20歳 ぐらいになりますと25%が陰性になります。  実際、そうしたbooster効果があるのかどうかをみますと、1998年に入学した1年生 は2001年で小学校4年生ですから、2001年の流行をかぶっていないので抗体の上がる boosterというのはこの3例しかないんですが、この図のように1999年の1年生は2002 年で小学校4年生になっているわけですから、2001年の流行はかぶります。そうします と、1〜4年生の間に赤丸のところの11人がboosterを受けるということになります。 そうしますと、流行のある、なしによって抗体、血清学的にもboosterにかかるという ことがわかりますし、先ほどの遺伝子の検査から見ても、大体11%の割合でこういう boosterがかかる、つまり麻しんの不顕性感染を繰り返しているということがわかりま す。  そうしますと、最近では2001年の流行があったわけですが、2001年の流行のなかった 姫路市の岡藤先生のところでずっと血清疫学調査を続けています。バックグラウンドと しまして麻しんの流行は1978年、1981年、1984年、1987年、1996年が最後で、1997年 以降は地元からの患者さんの発症のない状況です。その中で、5年ごとの麻しんワクチ ンの接種率が最近で大体93%を保っているということです。調査の血清数が700前後の 血清数です。  それで見ますと、青いところが1994年から1998年に得られた血清の中和抗体の陽性率 です。この年代では麻しんの流行が1996年ぐらいにありますから、みんな流行がかぶっ ているわけですから、この時代の陽性率は100%です。横軸はワクチンを受けた後の接 種後の年数です。この緑のところが一番最近の1999年から2003年に得られた血清です。 そうしますと、3年目ぐらいから中和抗体陽性率は少しずつ下がってきまして、6年 目、7年目ぐらいになりますと大体90%になりますから、10%の子どもたちが6〜7年 経ちますと中和抗体が陰性になります。そして、こういうふうに持ち上がってくるの は、1997年ぐらいの流行をかぶっているグループのところで、また陽性率が上がってく るということがわかります。  これは、その接種後の年数による平均の中和抗体価のレベルです。1994年、1998年で 少しずつ下がっています。  我々がずっとおそわってきたことは、麻しんというのは終生免疫であって、ワクチン 接種後の抗体も長く続く。そして、麻しんの抗原性も変化しないと考えられてきたので すけれども、調査の結果では、不顕性感染を繰り返すことによって抗体が維持されてお りまして、ワクチンを接種することによって流行規模が小さくなりますと免疫能は低下 します。麻しんウイルスの遺伝子は22タイプあって、抗原性も少しずつ変わってきてお ります。今日はお話ししませんけれども、生物学的に性状の異なる麻しんウイルスも存 在してきております。麻しん撲滅のためには、ワクチンの接種の向上が必要となりま す。現行のワクチンで違うタイプの麻しんウイルスに対してもワクチンは有効でありま すけれども、撲滅のためには、各年代層に高い免疫能を維持することが必要になりま す。  そのためには、やはり2回接種になるわけですが、2回接種するときに接種前に中和 抗体があれば、ワクチンは無駄になるのではないかということが考えられますが、ワク チンを受ける前に血清の中和抗体価を測定しまして、8倍、32倍、64倍、この3人は細 菌の研究室の学生でありまして、麻しんをいじっていない研究員生です。こちらは麻し んをいじっている研究員生で、こういうふうに最初から高い抗体価を持っています。こ ういう8倍、32倍、64倍でも麻しんワクチンをここで接種することによって、抗体がち ゃんと2倍以上に上昇してboosterを示します。この接種前32倍の抗体を持っていても、 リンパ球からPCRで遺伝子が検出されます。つまり、32倍ぐらいの中和抗体価があっ ても、ワクチンを接種することによってboosterは確実に得られるということがわかり ます。  そうしますと、小学校1年生の各年代によって32倍以下の子どもたちがどのくらいい るのかということですが、仮に小学校1年生に入る前に麻しんワクチンの2回目を接種 するということになりますと、32倍以下の子どもたちが恩恵をこうむるわけですから、 ポピュレーションとしまして大体50%くらいの子どもたちが32倍以下に相当します。麻 しんの流行がずっとある年、それからなかった年、流行が最近あった子どもたち、こう いうふうに抗体のディストリビューションが違うわけですけれども、32倍以下の子ども たちはどの年でも大体50%はいます。そうすると、小学校に入る前にワクチンを2回接 種することによって、50%の子どもたちは抗体を高いレベルに維持することができま す。  これは、いろいろなところで麻しんワクチン2回接種法の効果が出ているわけですけ れども、はっきりしているところでは、ワクチンを全然受けていなければ流行時には麻 しんに半分かかって、1回接種しておりますと5.5%の子どもたちがかかる。2回接種 すると1.9%になって、ワクチンの有効性は90〜95%になるというデータが出ておりま す。  まとめますと、不顕性感染を繰り返すことによって、ある程度高いレベルの抗体を維 持されてきたと推定されますし、流行規模がこれから小さくなりますと不顕性感染を受 ける機会がなくなりますから、抗体レベルは低下してきます。約5年間のうちに全然流 行がなければ、中和抗体がなくなる子どもたちが出てきますし、集団でも6年、7年の 間で中和抗体が低下しております。32倍以下になれば、確実にbooster効果が期待でき まして、その人口は大体、小学校1年生で見ますと50%を占めるということが考えられ ます。  以上です。 ○加藤座長  中山先生、どうもありがとうございました。  中山先生からは、麻しんの遺伝子タイプのお話から主に自然のboosterの話と、それ から、麻しんワクチンを接種することによるbooster効果についてのお話を伺いました。 何か中山先生にデータ的に基本的なことで御質問はございますか。  先生、自然のboosterについては抗体価からの御説明ですけれども、ちょっと素人的 な御質問で申し訳ないんですが、それが自然のboosterであるかどうかということは、 遺伝子学的に証明できるんですか。要するに、ワクチンをやっていた方は遺伝子学的に わかるわけですね。それで、自然のboosterであろうと思われると、先生がお話になっ たように抗体価が維持されている、または上がっているということで自然のboosterと お話になったけれども、自然のboosterである限りは、自然のboosterがかかるウイルス がワクチンの遺伝子と違うウイルスであろうと推測されるわけですが、そういう意味で の証明はできるんですか。 ○中山参考人  血清学的には難しいですけれども、ほかの状況としまして、不顕性感染を受けている 子どもたちから遺伝子が検出された子どもたち、正常の骨髄から遺伝子が検出されたも ので遺伝子の検査を行いますと、一番最初に示しましたように、流行のたびにその遺伝 子タイプが変わっていますから、検出されたウイルスの遺伝子は、そのときに流行して いるタイプの遺伝子が全部つかまっています。その前に流行した、特に成人の場合には 昔にかかったウイルスが持続感染していて、それが活性化させるのではないかという側 面もあったわけですけれども、検出されるウイルスが全部その時代に流行しているウイ ルスの遺伝子のタイプが検出されますから、その時代のウイルスに感染することによっ てboosterを受けたというふうに考えられます。ワクチン株が検出されることは、まず ないです。 ○加藤座長  そうすると、やはりワクチンだけでは寿命があると。ある程度は。今、各地でおさま っているのは、はしかがはやっていない国ではワクチンのboosterの効果であって、ワ クチンが日本のように1回きりしか行われていないところは自然のboosterであろうと いうことでよろしいですか。 ○中山参考人  そうです。これからそれが明確に変わっていって、自然のboosterがなくなりますか ら、どこかでboosterをかける。そのboosterをかけるという意味合いではなかったんで すけれども、本来、感受性者を減らすという意味合いだったわけです。1回目の接種漏 れ者の救済と免疫能の低下した子ども達にboosterをかける。ですから、すべての意味 合いで感受性者を減らすという意味をもつと考えております。 ○加藤座長  ありがとうございました。そうすると、大体5〜6年経つとワクチン効果は減少して くるであろうと。 ○中山参考人  secondary vaccine failureの発症の時期が大体10年前後が多いわけですけれど も、実際に免疫能として中和抗体の免疫が落ちてくるのは、やはり6〜7年ぐらい経つ となくなる子どもたちが出てくる。ただ、中和抗体がなくなることで感染は起こすんで すけれども、発症を抑える細胞性免疫能は残っているわけですから、その時代は感染は しても発症しない、それから、もっと免疫能が落ちてくることによって9年、10年経っ たぐらいに細胞性免疫能も落ちてきて、発症する子どもたちが増えてくるのではないか と思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  どなたか御質問ございますか。 ○川名参考人  booster効果で高くなったとしたら、今度はどのくらいもつと考えますか。 ○中山参考人  外国のデータから見ても、その辺のデータはやはり少ないです。やはり2〜3年経つ と、同じタイプのウイルスで測ってみますと1年半ぐらいで下がってきます。そこのと ころでboosterをかけるという意味合いが、また細胞性免疫能に刺激をかけるわけです から、液性免疫だけではなくて、細胞性免疫能にもboosterがかかるわけですから……。 それは限界がありますから、2回接種したからといって万全ではないわけです。アメリ カでも、やはり2回接種しても大学生には麻しんの患者さんは出ているわけですので、 そこのところを3回目をどうするかということになると、我々が考えなければいけない かどうかはわからないですけれども、そこのところは個人の責任において免疫能が落ち ているのだったら、個人防衛の考え方で・自己負担で……ということではないかと思い ます。 ○加藤座長  どうも中山先生、ありがとうございました。  それでは、はしかは以上で、また後ほど御議論いただきますが、風しんの方に移らせ ていただきます。  それでは、CDCからいらしていただきました加藤先生から、風疹についてお願いい たします。 ○加藤参考人  御紹介ありがとうございます。CDCからこのために帰ってまいりました。明後日の 金曜日にまた戻る予定ですが、わざわざアメリカまで声をかけていただいて大変うれし く思っています。  私は風しんということでお話ししたいと思います。日本における風しんの現状ですけ れども、岡部先生が疫学的にお話しされましたが、風しんそのものと先天性風しん症候 群の2つの対象疾患がありますが、私が強調したいのは、それ以外に実は流産の影響が 非常にあることです。  風しん患者数は、岡部先生と同じデータを使っていますが、先天性風しんに関して は、私が病院調査をした結果を風しん患者数のグラフに重ね合わせております。そうし ますと、日本は1977年女子中学生に風しんワクチン接種を開始して、1989年にMMRワ クチンを男女幼児に接種して、これは挫折し中止されたのですが、改めて風しんワクチ ンを全男女幼児に1995年から打っています。その時経過措置として男女中学生にも打っ ていますが、それも2003年で終わっています。  こういうワクチン状況の中で、風しんの流行そのものは赤で描いております。女子中 学生に打っていた時には患者数に影響を及ぼしていないけれども、男女幼児に打つとい うことが大変大きな影響を与えて、ここからは大きな流行は1997年を最後に無くなっ ているということです。  その風しん患者発生とCRSも病院の調査結果が見事に一致します。風しん流行のた びにCRSが起きるということです。この年には109例起きていますから、それぐらい は出ていたということです。最近では、ラッキーなことに非常に減っているということ です。  風しん流行の年が1976年、1982年、1987年、1992年、1997年と5回あるのですけれ ども、この棒の長いもの(1976、1982、1987年)が全国規模で大流行、1992年が中流 行、1997年が小流行、これ以降はないということです。この風しん流行の時代という か、ステージに合わせて、実はこれは人口動態表からとったのですが、自然流産のカー ブに、風しん流行年に合わせてピークが見られることがよくわかります。  一方、人工流産も同じことですが、こういうふうに流行に合わせて、見事にピークが 一致している。1987年以降では減ってきています。つまり、二十数年前は、風しん流行 時代にかなりの数の人工流産があったということです。  これを実際の例数はどれくらいかというのを計算した推計図です。まず、人工流産の 方なんですが、これが推計値で、出生数当たりの人工流産比から計算したもので赤線の グラフです。縦軸の点線が風しんの流行時なので、当然ながら風疹の流行時には人工流 産がかなりの数あったということです。  一方、この青線は、厚生労働省の統計局に登録されている、何ゆえ人工流産したかと いう理由を書いた書類がありますがそれを仔細に集計していただいて出した数字です が、かなりの数の人工流産があります。1992年頃から先は減少していますが、それは理 由として風しんということが書かれなくなってきているからだと思われます。  いずれにしましても、風しん流行のたびに人工流産がかなりありまして、実際の報告 数対推計値の比が3.6倍ぐらいある。したがって、報告数よりも3.6倍ぐらい実際には多 くあるだろうという意味です。  これは大体予想されたことなんですが、驚いたのはこちらでありまして、風しんの流 行年に自然流産というのが意外にあるということです。これは、報告数の方はこんなに 少なくて、1976年に小さなピークがあるぐらいなんですが、実際に推計値で見ると、流 行年に毎に大きな山が出ます。報告数と推計値の開きが22倍。ですから、1つの報告数 の影に22倍の自然流産があったということです。  なぜ、両者の値がこんなに開くかというと、どうも御両親もあるいは担当された産婦 人科医も、流産が起きたときに、これの原因は風しん感染だという認識がなかったから ではないか。1つは発疹が出たかどうか、また実際に不顕性感染があったかどうかとい う問題もありますが、流産したというそれだけの事実だけがあって、因果関係は余り詳 細に検討されなかった結果だと思います。ですから、この報告数よりも推計値が22倍も あるということは一つの驚きでありまして、現在のように少子化に悩む日本では、数が 少ないとはいえ、これは本来ゼロにできる数ですので、非常に重大な数ではないかと思 います。  これをまとめますと、1968〜2002年までの35年間での自然流産と人工流産、すべて推 計値でありますが、合計で3万8,496になります。35年ですから、大体年間1,000人はあ ったということです。その中で、自然流産と人工流産の比は1対1.83、大体2倍と言っ てもいいかもしれません。人工流産は以前から問題視されていたのですが、実はその半 分ぐらいの数の自然流産が風しんの流行年に起きていたということが今回新たにわかり ました。  それから、流行期の数字とバックグラウンドに当たる数字ですが、流行期が2.06に対 して、バックグラウンドは1、だから流行期は当然多いんですけれども、そうでない年 も意外にあるということです。いずれにしましても、3万8,000を多いと見るか、少な いと見るかでありますが、これはワクチンでゼロにできる数字ですので、日本の現状か ら見ると、これは是非ワクチンでゼロにしたい、あるいはできるという数字だと思いま す。  一方、先天性風しん症候群(CRS)と流産との比を見ますと、1978年からの統計で すが、25年間で先天性風しん419に対して流産は、人工及び自然を合わせて2万4,000。 つまり1対58.8になります。これは何を言っているかというと、先天性風しん症候群が 1例生まれている背景には、自然及び人工流産が合計で約60倍あるということです。こ れもかなり予想を上回る大きな数字です。これはゼロにできる数字ですので、是非達成 したいなと思います。  ここから2回接種ということでお話ししたいと思うんですが、この419例を調べた中 で2回目の感染、すなわち再感染でCRSになった例が41例見つかりました。つまり 419例中41例ですから、1割ぐらいはもしかすると抗体がかってあったにもかかわらず 再び感染した、あるいはワクチンを打ったにもかかわらず、また感染したという例で す。  では、2回目の感染と思われるときに、かつて抗体価があった記録があったかどう か。13人に記録があります。その記録はHI抗体価で見ますと、64、32、16、8なん ですが、3年前に64あっても再感染してCRSになった。これなどは10か月前ですね。 だから、濃厚な密接な感染があった場合、64倍の抗体価でも再感染があって、CRSが 出ることがあり得るということです。そういうことを含めると、やはりboosterをかけ て抗体価を上げる方がより安全だと思われます。絶対的に防げるかどうかはわかりませ んが。  これを防ぐためには感染源を絶つのが最良ですが、それは一気には達成できません。 しかし、boosterをかけることによってかなり減らせるだろうということです。  それを年次別に見ますと、当然ながら、昔は自然感染の後で再感染していますが、最 近ではワクチン接種した後に感染しているケースが増えてくる。このワクチン接種例 は、本当に抗体価が上がって接種が上がったという保証がありませんので、実はprimary  vaccine failureの可能性も残っていますが、近年ではこういうケースが増えていると いうことであります。  岡部先生もお話になりましたが、患者年齢が年々上がってきていまして、10歳以上、 15歳以上、20歳以上が、今年ではかなりの比率になっているということです。将来的に は、これが更に上がってくると思います。したがって、患者総数が減るにもかかわら ず、成人に近い人たちの患者比率が増えてくる。つまり、風しん患者の数に対してCR Sの可能性が高まっているということであると思います。  年齢別抗体保有率は岡部先生がお出しになったのと同じであります。男女を重ね合わ せているだけです。男性の20歳以上が少ない、それから、先ほども議論になりました が、10歳代半ばの女性が低い。ですから、ここについては、何らかのこのグループを対 象にした抗体をあげるキャンペーンが必要なのではないかと思います。  これから申し述べたいのは、風しん対策の強化の必要性ということでありまして、皆 さんお話しになっていますが、これはいろいろな形の強化がありますが、ここではMM RまたはMRを2回接種するということで強化を図るのが一つであろうということで す。問題は、では、2回目はいつであろうか、いつがふさわしいかということになって くると思います。  まず、強化の必要性で今まで述べたことを含めてお話ししますと、(1)大規模な自 然流行の消滅によりbooster効果がなくなった。それにより、抗体価の減衰が加速され ている。(2)患者年齢の上昇。(3)再感染によるCRSが存在する。これは対策と しては、免疫の強化が必要になる。それから、(4)風しんによる自然流産、人工流産 がいまだに存在する。これは、ワクチンでゼロにできるという数値であります。(5) 妊娠可能年齢女性の個人防衛というよりも、感染源を絶つ戦略の方が効果的であると思 います。英国の戦略変更というのは日本と同じように、女子中学生だったのを男女幼児 に切り替えたことによって成功しているわけですが、後ほどお話ししたいと思います。 これは、(6)風しん単味、麻しん単味ということではなくて、少なくとも2つ、でき れば3つをMMRまたはMRという混合で打つ方が、全体の接種回数を増やさないある いは減らせるということだし、かつ、2つか3つの疾病を同時に制圧できる。そういう ことで今後は、混合ワクチン以外あり得ないだろうと思います。  それから、(7)主要国に関しては既にMMR2回接種を導入しており、これらの疾 病の撲滅にほぼ成功しているということです。  更に、2回接種は1回目接種後ではワクチンで抗体ができなかった例、つまり primary vaccine failureをカバーできるというような理由で、混合ワクチンで2回 接種というのが一番強化なると思います。  主要国の例は、資料にも出ていましたけれども、私は先進8か国しか調べませんでし たが、MMRを2回打っております。1回目で大体1歳直後、2回目はいろいろですけ れども、大体4〜6歳くらいかなということです。  アメリカは、MMRとしては2回打っているんですが、ワクチンのリコメンデーショ ンとしては2回目は必要ない、1回で十分だということを言っています。でも、現実に はMMRは2回打ちますが、リコメンデーションは1回でいいというようなことであり ます。  では、2回目を打つのをいつにするかということで、先ほどの日本ワクチン学会、今 年の10月にありましたが、そこで三重病院の庵原先生が報告されたデータを麻しんにつ いてでありますが、お借りしてきたものです。そうしますと、麻しんワクチン接種後の 抗体価の半減期は31ないし36か月、つまり3年前後で半分に減った。これは普遍的に認 められる数値だろうと思います。しかも、boosterが中和抗体2の4剰以上でかかると 仮定すると、ワクチンを打つのにふさわしい時期は74〜100か月という数字です。これ は6〜9年ぐらいでしょうか。そこで打てばboosterに関してはベストであろうという ような報告がありました。したがって、庵原先生は、これは麻しんワクチンですけれど も、2回目接種時期は初回接種後7ないし9年以降が適切と推定されるということでご ざいます。これは、あくまでも1回目が90%以上の接種率があった場合という前提。中 山先生もおっしゃいましたけれども、早くて3年ぐらいで抗体が下がってきますし、 boosterのことを考えると7ないし9年後には打った方がいいということです。  今回、外国から来ましたので、アメリカとイギリスの教訓というものをお話ししたい と思います。英国というのは先ほどもお話ししましたように、日本と同じ戦略をとりま して女子中学生しか打っていなかったのですが、男女幼児のMMRワクチンに転換し て、ほとんど抑え切ったということです。  アメリカは、勿論成功したんですけれども、それには強化策として学校保健法という ことで接種率を上げているということです。  まずイギリスでありますけれども、日本と全く同じことをやりまして、風しんワクチ ンを10歳代女性に接種開始したのは1969年です。このとき同時に妊娠中のスクリーニン グと、もし抗体がなければ分娩後のワクチン接種をしておくということもスタートして います。それから、1988年にはMMRの全幼児接種開始というアメリカ方式に転換する わけです。その後もそれを続けまして、1994年には接種率92%になっているということ です。それで、ここまでは1回接種だったんですが、1996年からは2回目接種を導入し た。それは、3ないし5歳という時期である。  そうしますと、英国では、実線が風しんによる中絶ですが、それも減ってきました。 それから、先天性風しんの出生数は以前はイギリスも多くて、年間50例とかそういう数 がずっとあったんですが、ここから下がり始めて現在ではCRSがほとんどなくなって きたという形です。  例えば、これがそうなんですけれども、風しんワクチンだけのときは患者がこれぐら い出ていたんですが、MMRに変えてからは、ここからですが、どんどん患者が減っ て、ゼロではないですがゼロに近いようなところまで来ております。だから、風しん単 味から、これは女子中学生ですね、幼児のMMRに変えた効果がありました。日本は、 これを目指していると言っていいと思います。  それで、風しんの届出数と確定数が最近ではこうなっています。確定症例は1996年を 最後にほとんどなくなってきていまして、届出数はありますが、これは実は風しんでな いケースがいっぱい入っているということです。ですから、戦略の転換がいかに画期的 な効果を及ぼしたかということです。  一方、米国から学ぶことは何かというと、これはCDCのデータですけれども、学校 保健法、School health lawというふうに言っていますが、それを導入して接種率を 上げているということです。これは、牛尾課長からの報告にもありますが、文部科学省 を巻き込むという必要性を新たに示唆するものであると思います。アメリカは連邦政府 ではなくて、予防接種は各州法で規定されています。50州ありますが、ちょっと古いデ ータですけれども、1998〜1999年のデータですが、全州でこのジフテリア、ポリオ、麻 しん、風しんをやっていまして、1州を除いて破傷風、6州を除いて百日咳、おたふく 風邪はまだ7州が入っていないという状況です。学校保健法を導入した州としない州 を、これは古い話ですが、25年前に麻しんの発生数を見て比較しています。州法が学校 保健法でワクチンを接種しなさい、接種しないと入れませんよと厳しくした州としない 州の比較です。  1年目は47と50で余り違わないんですが、2年目は40と90、3年目になったときには 学校保健法を導入し、厳格に適用した州では、麻しんが10万人に対して2.7人。一方、 導入しないと35.2人。いかに学校保健法が患者を減らすのに重要であるかということで す。  同じく、これはMMRの2回目の接種に関してですが、2回目7学年ということは中学 1年生の場合ですけれども、学校保健法で接種要求をした場合には、1年経ったときの 2回目接種率が60%まで上がりました。接種する前、要請する1年前ではわずか13%し か2回目を打っていません。要求しないと同じ学年でも27%。これはもっと今は上がっ ていると思いますが、やはり学校で接種の証明を要求するということがいかに大事かと いうことだと思います。だから、学校のことを除いて接種率を上げるのには限界がある と言ってもいいかと思います。  今年の10月29日にCDCの会議で、米国土着の風しんはなくなったということを宣言 しました。麻しんについては、もう少し早く宣言しています。そして現在、風しんの数 は年間10例とか20例あるんですが、それはすべて輸入例。日本とかメキシコとかロシア とか、そういうところからであるということが遺伝子のタイプでわかりました。したが って、土着はもうなくなった。逆に言うと、一国で幾ら排除しても、輸入例は消えな い。だから、地域的あるいは世界的な規模でやらない限り、排除はできないということ でありますが、米国はここまで来ております。  最後にまとめとして、私としてはMMRかMRと言われたときに、とりあえずはMR ワクチンの2回接種でいいかなと思って、MRワクチン2回接種を提案させていただき たいと思います。(1)感染源の排除は、妊娠可能年齢女性の個々への予防対策という よりも、感染源排除の方がより効果的で根本的であるということです。  (2)日本製のMRワクチンは副反応の点でMMRより勝るので、日本の現状ではま ずMRワクチンを採用する。麻しんと風しんの排除後には、MMRまたは更に増やして MMRV、これは水痘ワクチンを加えた四種混合ですが、そういうものを検討するというこ とです。  (3)1回目の接種は、前から皆さん議論されているように、12か月齢でいいと思い ます。もし、12か月未満で麻しん、風しんの患者数が増加した場合には、WHOなどが リコメンドしていますように、少し早めて9ないし12か月齢の接種も考慮する。とりあ えずは12か月でいいと思います。  (4)2回目の接種は、小学校入学前の4ないし6歳とすると。これは、学校保健法 を考えた場合、リコメンデーションなりチェックができるという理由です。風しんを考 えた場合は、急いで4ないし6歳に済まさなくても、例えばもう少し長くして4ないし 12歳というのもセカンド・チョイスとして考えられると思います。アメリカもある時期 4ないし12歳ということで2回目を接種していました。現在アメリカは4ないし6歳に 統一しております。  (5)これも議論が既にありましたが、文部科学省と協力して、学校入学時の接種証 明の要求制度を取り入れる。日本の場合、これを義務にして接種していなければ入れな いということまではできないと思いますが、かなりそれに近い形で制度を確立すれば、 接種率を上げられるのではないかと思います。日本の場合、小学校以前に保育園、幼稚 園もありますが、そういうところすべて可能な限り広く入学時に接種証明を要求する。 そうすると、学校内での流行とかそういうことも防げるということです。接種率は勿論 上がります。  (6)それから、女性の10歳代あるいは20歳代以上の男性などの抗体保有率の低いグ ループがありますが、これは何らかの措置、例えばキャンペーン接種などでカバーして 特別な対策、ワクチン定期接種ということではなくて、何らかの行政上の特別な対策で クリアできるように思います。  もう一度まとめますと、MRワクチン2回接種、1回目は12か月、2回目は4ないし 6歳。入学時に接種証明の要求をする。抗体保有率の低いグループのキャンペーン接種 をする。私の現在考えてきましたこれを議論の下地として提案させていただきたいと思 います。  どうもありがとうございました。 ○加藤座長  加藤先生、どうもありがとうございました。  前段は風しんによる流産のこと、少子化の中で風しんによる、CRSによる人工流産 または自然流産があるのではなかろうかということ。それから、後段は、それらをなく すためには、やはり風しんの発症そのものをゼロにすることが最優先ではなかろうかと いう御議論であったかと思います。そのためには、後ほど総合の討論をいたしますけれ ども、2回風しんの予防接種が必要であろうということでまとめられたかと思います が、前段の妊婦に関する風しんについては、緊急提言もなされておりますが、川名先 生、何か付け加えることがございましたら。 ○川名参考人  最初に、加藤先生のデータについて、ちょっと教えていただきたいことがあります が、自然流産というものの半分ぐらいは、恐らく染色体の問題だろうと考えられており ます。残りがよくわからないと。その中に、もしかしたら風しんが入っているのではな いかということは、私たちは普通、自然流産ですと不顕性感染まで考えて調べることは まずありませんので、こういうことがあったとしたら非常に重大なことだと思います が、1つお聞きしたいのは、リンゴ病でございますが、リンゴ病も風しんとほぼ同じサ イクルぐらいで流行すると言われておりますが、先生の流産の数の中に、もしかしたら リンゴ病によるウイルスによるものも、場合によっては入っているのかなと思ったんで すが、その辺いかがでしょうか。 ○加藤参考人  風しん流行期に関しては、流産指数にピークが出るので、まず間違いないと思うんで すね。常にあるバックグラウンドの数値に関しては、いろいろなものが入ってきている と思うんです。それについては、実はわからない。わからないんですが、なぜ私が比率 を出したかと言いますと、流行期における登録された流産数と、推計された流産数の比 を出して、その比をすべての年に当てはめた。つまり、どれくらいの比率で報告されて いるかということをもとにして出した数値です。  それで、原因については、当然ながら検査依頼の来たもの以外全くわからないんです が、私のところに来た流産の例が6例ぐらいありますが、風しんを疑われてきたものか らは全部風しんウイルスの遺伝子がとれました。だから、風しんを疑われた流産は間違 いなく風しんですね。  それ以外については、実は先生がおっしゃるようにサイトメガロもありますし、パル ボB19もあるし、いろいろあると思いますので、今後、感染症をやられる方が流産につ いて注目して、やはり原因を解明していく必要があるかなと思いました。これは風しん だけで言えることではなくて、多分ほかの影響もあり得ると思います。ただ、推計値と してはそんなに違っていないなと私は思っているんですが。 ○川名参考人  それから、もう一点は、最後の提言のところで、2回目の接種をかなり小さい年齢で ございますが、赤ちゃんをつくる年齢というと今は25歳以上が多くなっていますけれど も、風しんの流行が完全にゼロになれば問題ないと思うんですが、そこまでいかないと すると、その年齢までもってくれるかなということでございますが、いかがでしょう か。 ○加藤参考人  これも、先ほど中山先生に対しての質問にありましたように、boosterをかけたから といって生涯免疫になるわけではないんですね。そうすると、風しんだけに限って言う と、本当は遅い方がいい。この間までやっていました中学生に対するワクチン経過措 置、あれぐらいでもいいかなと思います。ただ、混ぜた場合は麻しんを基準にすると、 世界的には4ないし6歳だから、これぐらいの方がいいかなと思います。その代わり、 もし風しんを気にするのだったら、私は今回書かなかったんですが、3回目に女子中学 生だけやるというのが、もっともいいと思うんですね。ただ、3回までいきなり持ち出 すのは厳しいかなという気がしますので、できれば3回目に女子中学生だけやる。これ は、更にいい案だと思うんです。  そういうことがあったので、アメリカなども初めのころは4ないし12歳と、かなり後 まで接種機会を与えているんです。だから、チョイスとしては4ないし6歳というチョ イスもありますが、4ないし12歳と幅広くして、少し風しんのことを考慮するというの が現実的かもしれない。これは皆さんに議論していただく必要があると思うんですが、 私としては世界的には4ないし6歳で、その国の土着のものが排除されているわけです から、これでいけるのだと思います。できれば、3回目を女子中学生を考慮するという のを付け加えさせていただく方がいいかなと思います。 ○川名参考人  ありがとうございました。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。  米国では、2004年10月29日に、土着の風しんの流行はもうないと宣言されたというこ とですね。 ○加藤参考人  はい、宣言しました。それで、公式の文書としては出ていませんが、これは全米のワ クチン関係者が集まったところで、例えばProtkinとかHinmanとかOrensteinとか、そ うそうたるメンバーが全部集まって、それでいいということになりました。 ○加藤座長  どうも加藤先生、ありがとうございました。  それでは、続きまして、風しんについて寺田先生からお話を伺いたいと思います。 ○寺田参考人  川崎医大の寺田と申します。よろしくお願いします。  私に与えられましたテーマは、風しんの流行を防止し、先天性風しん症候群をなくす ためには、どのように接種するのがいいのか。それから、はしかも同じように。それか ら、2回接種する場合には、どの年齢が適切であろうかということと、2回接種となる 場合には、MRワクチンあるいは単独ワクチンが適切であろうかというようなことでテ ーマをいただきました。主に岡山県でのことについてお話をさせていただきたいと思い ます。  我が国における20年間の風しんの流行の状況でありますが、何回も出てきております けれども、ほとんど流行がないという状況になっております。ところが、先天性風しん 症候群の発生でありますが、1999年に全数把握をするようになりまして、1例かゼロだ ったんですけれども、今年はこれまでに8名も出ているということであります。流行が 非常に少ないにもかかわらず、このように起こっているのはなぜかということです。  そして、岡山県が2002年12月と2004年に2例出ましたので、そのことについてもお話 させていただきたいと思います。  これが、岡山県における風しん流行の状況であります。1993年、1997年は、2002年や 2003年の2〜3倍からの流行があったんですが、この年度には先天性風しん症候群は私 どもはキャッチできておりません。ところが、2002年、2003年の低い流行で先天性風し ん症候群が出たという状況であります。  これが2002年の岡山県の風しん患者さんの年齢分布であります。岡山県の感染症サー ベイランスのデータがこちらにあります。15歳以上の患者さんが増えておるということ が先ほどから出ておりましたけれども、これは15%に増えておるんですが、川崎医大で 皮膚科や内科や小児科、全部大学の病院の中での患者数を見てみますと、15歳以上が74 名、14歳未満よりも多くなっておりまして、サーベイランスと比べますと、おおよそ5 倍ぐらいの15歳以上の患者さんが出ておるというわけであります。  要するに、大きい年齢の方で風しんが流行したために、先天性風しん症候群が出た。 小さい子どもでの流行は小さいということであります。  これが、我が国における風しん感受性人口の推計であります。男性が多いということ は、先ほどから何度も出ておりますけれども、よく見ておりますと女性が15〜19歳ある いは10〜14歳と定期接種が終わった年齢の感受性者が随分増えておるということであり ます。そして、今後流行が余りない場合は、これがこのまま右の方に移動していくとい うことになります。ということは、女性の感受性者の方が今後、随分増えてくるという 状況があります。  そして、これは目立ちますが、男性と女性を足して上につけますと、そんなにここの 年齢のところは感受性者が少なくなっておるという状況ではないということでありま す。  それでは、女性の風しん抗体の陰性率であります。こちらに年代を書いてあります。 38歳以上で9%と少し高くなっておりますが、これは1977年で女子中学生に予防接種を するようになったわけですが、それ以前の方が含まれているので9%と高くなっており ます。ほとんど5%ぐらいだったんですけれども、20歳や21歳、どんどん年齢が下がる ことによって、風しんの抗体の陰性率が多くなっておる、高くなっておるということで あります。  このままこれが移動すると大変なことが起こるということでありますし、現在こうい う陰性率が高くなっておるということが原因で、先天性風しん症候群が増えておるとい うことになります。  次は、岡山県の大学入学時に接種歴と既往歴のアンケート調査をしまして、そして、 感受性者には予防接種を打ってください、そして、打った接種証明書というのを各大学 に返していただくということをやっております。今年から始まりました。おおよそ3分 の2の大学に参加していただきました。それで、はしかを見てみますと、はしかの感受 性者、予防接種も打っていないし感染もしていないというのが4.7%ありました。風し んにつきましては、13.6%の感受性者があったわけであります。  川崎医大の方で抗体の陰性率というのを調べてみますと、はしかは3.4%が陰性です し、風しんは16.5%が陰性でありました。  それから、接種証明書を返していただくということをしたわけですが、一部分の大学 では25%の感受性者の方が予防接種を打ったという御報告を受けましたが、多くの大学 では接種証明書を返したという方は非常に少ないという現状でありました。  次に、大学の新入生のアンケート調査で、予防接種歴と既往歴というのが別々に書い てあったのをまとめてみますと、はしかについては76%の接種歴がありました。風しん については50%の接種歴で、既往歴は27%と。この既往歴は、風しんにつきましては余 り信用できないと思いますけれども、およそ12%の感受性者がおるということになりま した。  次に、大学生の男女別の接種率であります。風しんにつきましては、男性も女性もお よそ80%前後というふうに差はないのですが、風しんについて見てみますと、やはり女 性の方が少し高くて、20%高い65%の接種率を持っておりました。男性の場合は46%と 女性に比べて20%も低いというところが問題であります。  続きまして、倉敷では入学時にはしかと風しんを、先ほどの大学と同じように既往歴 と接種歴をチェックしておりまして、感受性者については予防接種を打ってくださいと いうことで、接種証明書を各学校に返すというようなことをしております。そうします と、幼稚園、小学校、中学校で見てみますと、中学校入学時に35.2%と非常に高い風し んの感受性者があるということであります。これはなぜかといいますと、定期接種をし て接種できる期間が非常に短かった時期の中学生というか、そのころ小学生だった生徒 がこういうふうに感受性が高いということであります。  はしかにつきましては、接種歴は90%ぐらいありまして、感受性者については、不明 がありますけれども、5〜3%前後が予防接種の感受性者というふうに考えられまし た。  今までのところを少しまとめてみますと、成人及び経過措置対象者、それから、その 後の接種期間の短かった小児において、風しんワクチンの接種率が低くて、抗体保有率 も低いということであります。  風しんの流行は、成人及び年齢の高い小児で流行しておりまして、小児を中心としま した感染症サーベイランスでは把握できない状況にあるということであります。  それから、風しんの流行と先天性風しん症候群を減らそうとすると、この成人や経過 措置対象者、それから、接種期間の短かった小児を対象に接種していかないといけない ということがわかると思います。  続きまして、風しんワクチン2回接種が必要な理由であります。これは、はしかでも 同じですが、primaryあるいはsecondary vaccine failureがあるということで、2 回接種が必要であります。  もう一つは、風しんは、はしかと異なりまして再感染がある。そのために、できるだ け免疫を高く維持したいということがあります。  それから、一番大切なことですが、先天性風しん症候群を防ぎたいので、成人以降も 免疫を高く維持したいとなると、2回目は遅い方がよいというのは当然であります。  風しんワクチンの接種後、どのくらいの期間免疫が維持されるのかということが大き な疑問でありますし、いつ2回目を接種するのがよいのかということが問題になりま す。私どもの方で急きょ、風しんワクチン接種後の抗体を調べさせていただきました。 予防接種のロット番号と接種日が明らかになっている患者さんで調べました。数が余り 多くありませんので、あれなんですけれども、過去の風しんの流行にさらされているの で、減衰の評価がこの数では非常に難しいということがわかりました。  それが、次に多分、宮崎先生もお出しになると思うんですけれども、植田先生のグル ープでされました障害児の施設で、風しんワクチン接種後の抗体の推移を見たものであ ります。風しんワクチン接種後の年数、それから、HIの抗体価であります。接種後15 年ぐらい経過しますと8倍未満というのが12%と少し多くなります。それ以後、12%、 10%前後というのは余り変わらないと思います。ところが、16倍以下というところで見 てみますと、4〜7年経過しますと4〜58%と急激に増加いたします。大体4〜7年ぐ らいで風しん16倍以下というのが増加し、そして、23年も経ってしまいますと、16倍以 下というのが92%にもなってくる。この16倍以下というのは、風しんの緊急提言を出し ましたが、妊婦さんで抗体を測りますが、産じょく後風しんのワクチンを打っていただ きたいという抗体価が16倍以下であります。  次に、風しんワクチンを遅く打ったら、どんなことが起こるかということでありま す。これは、倉敷市の風しんワクチンの接種数であります。中学生で以前は集団接種し ておったんですが、1995年に予防接種法が改正になりまして、個別接種になったわけで あります。そうしますと、2,000ずっと接種数があったのが、急激に減少いたしました。 一生懸命キャンペーンを行いましたが、なかなか増加が難しいという状況でありまし た。プリントやポスター、それからビデオを各学校に配りまして、ビデオを見ていただ いて、子どもたちが予防接種を打っていただく気持ちになるというようなことをやりま したけれども、中学生ぐらいになりますと子どもたちの意思が出てきます。痛いことは したくないというようなことで、予防接種を受けなくなるという状況であります。だか ら、2回目の接種時期を遅くすると、接種率が低くなるというようなことで、矛盾点が 出てまいります。  次に、倉敷市の入学時調査勧奨しまして、感受性者が接種証明書を提出した割合であ ります。はしかを見ていただきますと、小学校入学時、感受性者だから予防接種をして くださいと言いますと、85.3%も接種証明書を返していただきました。といいますの は、90か月まではしか、風しんのワクチンというのは無料、定期接種できますので、駆 け込み効果と言いますが、もう少し経つと有料になるということで、多くの方がはしか の予防接種を受けたという状況になります。  風しんにつきましては28.2%と、はしかほど高い効果は見られなかったんですけれど も、もうすぐ経つと予防接種が有料になってしまいますよというキャンペーンというの は有効だと感じられました。  次に、岡山県で昨年度、風しんのキャンペーンを行いました。予防接種の研修会とい うか、公開講座もしましたし、それから、予防接種の県内相互乗入れというものも行い ました。小さいお子さんで見てみますと、平成14年度はおよそ1年間で2万人なんです が、平成15年度前半、半年間で1万2,000人という患者さんが接種をしていただきまし た。9月にキャンペーンをしたのですが、9月のキャンペーンでは18%、およそ6分の 1ですので、小児の方はキャンペーンでは増えていないということがわかります。  ところが、経過措置対象者を見てみますと、その前年度1年間で2,000人ちょっとだ ったんですが、半年間で1万6,000人の方が受けるようになりました。特に、キャンペ ーンをした9月は1万2,000人ぐらいの方が受けられまして、5倍ぐらい接種者が増え たということであります。  このキャンペーンというのは、9月を過ぎますと風しんは有料になりますよというよ うなキャンペーン、そして、風しんの危険性についてもお話をしたわけなんですけれど も、こういう不景気な状況の中で、もう少しすると有料になりますよというのは、非常 に有効ではなかったかなと考えております。  実際にキャンペーンを行いまして、風しん抗体の陰性率を見てみますと、このころは 集団接種していたころですが、3.4%の陰性率でありました。法改正がありまして、大 体陰性率が12%ぐらい、4倍ぐらいに陰性率が上昇しておったわけなんですが、キャン ペーンをしまして、これが六・何パーセントでおよそ半分に減少することができまし た。まだ、集団接種していたころの3%前後までは下がってきてはおりませんが、キャ ンペーンによって風しん抗体陰性率というものも減少しているということがわかると思 います。  以上、小さなまとめですけれども、風しんワクチン接種後陰性化というのは12〜15年 で約10%ぐらい、23年後でも15%。HI抗体16倍以下というので見ますと、4〜7年で 60%、23年後には約90%となってしまうということであります。  小学生以降で接種しますと、子どもの意思が入って接種率が低下するだろうというこ とが想像できました。  キャンペーン、特に期間が過ぎると有料になるというような宣伝というのは、こうい う時期ですと効果を上げるのではないかと考えております。  それで、私が考えました提案なんですけれども、1回目の接種をMRワクチンで1〜 3歳半にする。というのは、漏れ者対策として3歳児の市町村による健診がありますの で、そこで引っかけることができます。そして、そこで半年ぐらいの余裕があります と、その方がもうちょっとの期間無料で接種できるということでキャッチアップでき る、受けていなかった方がチェックして、そこで受ける期間がまだ少し残っておるとい うことが有効ではないかと思いました。  そして、2回目の接種もMRワクチンで、これも72〜90か月で、漏れ者対策を入学時 の健診で引っかけまして、やっていない方は、あと少しだけの期間ですけれども予防接 種ができますよというキャンペーンができるということであります。  もう一つは、このMRワクチンを子どもたちに一生懸命接種しましても、もう大人あ るいは若い子どもたちは、抗体が陰性の方がたくさんおるわけですから、これだけをし ても先天性風しん症候群を減らすことはできません。同時に、10歳、20歳あるいは30歳 代の方の接種のキャンペーンと、できれば時限的に定期接種として風しんワクチン、単 独ワクチンでいいと思うんですが、やっていただきたい。そのキャッチアップをしない ことには先天性風しん症候群というのは、あと数十年続くというような状況ではないか と思います。  そして、漏れ者対策としては、高校や大学の入学時にチェックするということと、で きれば成人式、そして、妊娠したときに抗体価を測りますので、こういう方が産じょく 後予防接種を打っていただくというようなことで、急速に風しんの抗体陰性者を減らす ことができるのではないかと考えております。  ありがとうございました。 ○加藤座長  寺田先生、どうもありがとうございました。  日本では平成6年から予防接種法が変わりまして、風しんを乳幼児に接種するという 方針に転換いたしましたが、そのために風しんそのものの流行はおさまりましたけれど も、なぜかCRSがこのところ増えてきたということで、成人の感受性が高いのではな いかというお話でした。  それから、やはり2回接種法が多分必要なのであろうということで、7年ほど経ちま すと16倍以下になってくるというようなところから、最後のおまとめでは2回の接種、 1回目は1〜3歳半、また次には6〜7歳ぐらいで接種が必要かと思われる。時限的な 接種方法も考えられるであろうと。いずれにしても、キャンペーンが必要であろうとい うことでおまとめいただいたと思いますが、何かお一人でも御質問がありましたら、ど うぞ。よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、はしかと風しんを含めまして臨床方面から宮崎先生からお話 をお願いいたします。 ○宮崎委員  もう議論がほとんど尽きているかなと思いますし、先生方がおっしゃられたことに私 もほとんど賛成なんですが、少し補足的なお話を簡単にさせていただきたいと思いま す。  今回、予防接種法の見直しの議論が起こっていますけれども、ポリオは世界根絶の動 きとどう連動するかという話だと思いますが、今日も話題になっていますはしかと風し んというのは、近い将来疾患とウイルス排除がともに、少なくとも日本では可能であろ うと私も思います。ただ、そのためには、いろいろ工夫が必要であろうということです ね。  ジフテリアと日本脳炎は、患者さんが10人を切ってゼロレベルに近くなっていますけ れども、ウイルスや細菌の性質上、病原体は残りつつ患者がなくなっていく疾患だろう と思います。  結核はキャリアといいますか、体内に長く住みつくような性質もありますから、もう しばらく患者発生が続くだろうと思います。それ以外の任意の接種をどうするかは、今 後の議論になっていくのだろうと思います。  はしかは、小児科医にとって本当に重篤な疾患で、やはり肺炎、脳炎、SSPE、こうい うものがあって、先進国でもやはり亡くなる病気であるということです。5〜6年前の 沖縄の流行で二千数百人の患者が出て、600人以上乳幼児が入院して、8人亡くなられた というのは、最近では一番大きな被害だったと思います。  これは厚生労働省の予防接種研究班で、小児の急性神経系疾患の調査が前からずっと 行われているんですけれども、1980年代から最近までの脳炎と脳症の主な原因ウイルス の変遷を示したものです。はしかは、この1981年以前に幼児での定期接種が始まってい ます。風しんが定期接種、幼児で始まったのはこの時期ですけれども、ごらんになって わかりますように、はしかと風しんが、主な脳炎・脳症の原因であったということで す。  風しんは意外に軽い病気と思われていますけれども、大きな流行をするときには、は しかの何倍も脳炎患者さんが出ていました。感染症サーベイランスの細かい脳脊髄炎の ピークを見てみますと、風しん流行に一致して脳脊髄炎のピークが認められます。最近 はワクチン効果でかなり減ってきていますが、最近インフルエンザの脳症が増えてきて います。  この数字は、全国でたかだか10か所ぐらいの選択された地域での調査で、この程度の 数字ですから、全国的にはこの10倍以上の患者さんが出ていたと思われます。  これは2001年、2002年に福岡市で久しぶりで大きな流行が起こったときの福岡市立こ ども病院・感染症センターへ入院したはしかの患者さんの年齢分布です。小児と成人、 両方入ってこられるんですが、やはり多いのは0〜1、2歳、1歳がピークなんです が、学童期にも1つ小さな山がありますし、20歳を越えて30歳を越えた患者さんも実際 にはしかで入院されているというのが最近の現状です。肺炎を合併しているケースは小 児に多いんですけれども、やはり年長児、成人の入院患者さんが増えているというの が、全国的な傾向だと思います。  はしかに関しては、平成6年の予防接種法改正を期に、長く70%台で低迷していた予 防接種率が90%以上に上がってきました。最近のプロジェクトによってもう一段上がっ てきているということで、はしかの経験は、いわゆるシステムといいますか、法令を整 えることによってかなり率も上がるし、しかし、それで上がり切れなかったところはキ ャンペーンで上がるということをよく示しているのだろうと思います。それにつれて流 行もおさまってきているということです。  局地的に見ますと、これは北九州市ですけれども、平成11年と平成14年を比べると、 全国的にキャンペーンが行われてから、やはりはしかも風しんも一段と接種率が上がっ てきている。ただし、どうしても風しんは、はしかほど接種率が上がってこないという のが全国的な傾向だろうと思います。  これは月齢別に何パーセントの子どもたちが接種を終わったかという全数調査ですけ れども、例えば、かつて1歳半のときにはしかが70%だったのが85%とか、特にやはり 小さい子の接種年齢が一番流行が大きいですから、そこを上げることは一番公衆衛生学 的には効果があるということです。逆に言いますと、予防接種法改正前は1回目の接種 が70%しかなかったわけですから、なかなか2回目を5歳でやるとか、12歳でやるとい う議論ができなかった。その前にみんなかかってしまっていたということですが、幼児 の接種率が90〜95%まで上がってきた今こそ、やはり次のステップへの準備ができたと 思います。  はしかは旧法では接種義務があったのが、新法では努力義務と少し和らげられたにも かかわらず、予防接種率が上がりました。一番効いたのは、恐らくこの接種時期を早め たことですね。昔は広く標準的な接種年齢を定めていたものを12〜24か月に持ってきま したけれども、これを更に今12〜15か月ということで早めるということが、一番、接種 率の向上と疾患の抑制に役立っているのだろうと思います。  はしかは、人だけが感染し、かつ、持続感染は基本的にない。患者発見が容易で、有 効なワクチンがあって、世界的な排除・根絶の動きもありますので、やはり我が国でも 排除・根絶が可能な疾患であると思います。最終的に、はしかは非常に伝染力の強い疾 患ですから、感受性者をゼロに持っていかないと難しいのだと思います。基本的には95 %の接種率で今年のように流行は抑制されていますが、それでも5%残ってしまった ら、毎年5万人の患者発生を防ぐことはできない。つまり、ワクチンを打たない限りは 必ずかかる病気でありますから、最終的には100%に持っていかないとはしかは難しい のだろうと思います。  しかし、ワクチン接種後の抗体陽性率というのは95%以上ありますが、やはり100% にならない、抗体持続には個人差があるということ。boosterを期待するのであれば、 先ほどの庵原先生のデータも含めて、少しゆっくり目の方がよろしいのでしょうけれど も、後で私のデータも示しますが、やはりもう少し早い方がいいかもしれない。  もう一つは、先ほど先生方もおっしゃっておられますように、学童期の予防接種率を 上げるのは現在なかなか難しい。はしかは個別接種に持っていって義務を緩めても率は 上がりましたけれども、日本脳炎の学童期接種、それから、風しんの中学生の接種、D T2期の6年生の接種率はなかなか上がらなかったわけですね。ですから、そういうこ とを考えて、基本的に根絶には要するに早期に感受性者をなくすということが排除・根 絶への道ですから、そのためには少し早い方が、やはり有効ではないかと思います。  そして、先ほどから先生方が言われるように、風しん、はしか同時に解決していくの が有効な方法だろうと思います。  それから、2回接種法には、先ほどから出ていますように、2回接種機会を与えると いう考え方と、1人2回接種をするという考え方があります。恐らくこれはきれいに分 かれない考えだろうと思いますが、例えば、2回機会を与えるという意味では、定期接 種を受け損ねている人、あるいは1回目でワクチン効果がないprimary vaccine  failureに対して2回目の接種機会を設定するという意味もありますし、1人2回打つ というのは、どちらかというとbooster効果をねらったということでしょうが、これが ない交ぜになると思います。いろいろなアイデアがありますけれども、1つは、乳児期 と1歳過ぎてもう一回というアイデアもありますが、これもなかなか現実にとることが 難しいと思いますので、やはり(1)か(2)、どちらかというと私は(2)(1歳と入学前) がいいのかなと思っています。  乳児へのはしかの予防接種というのは、現在はしかが流行しているときに緊急的に乳 児の罹患を防げるという意味では、非常に有効な方法だと思いますけれども、どうして も母子免疫の影響が多少あるということと、確認のためにもう一回1歳過ぎにしておい た方がいいというようなこと、あるいは国内では沖縄をはじめ何箇所かで乳児の緊急接 種が大変規模に行われたところがあり、今のところ問題は出ていないですが、接種経験 が少ないということがあります。  これは、はしかのワクチン接種後の中和抗体価をある施設で長年見たものです。接種 をして5年まではじわっと下がってくる感じですね。そして、ちょっとここは間が抜け ていますけれども、10年を超えてくると、やはりかなり中和抗体を見てもboosterがか からなければ、やはり陰性者が出てくるということです。  これ以外に、一般の小学校で長く追跡したことがあるんですが、はしかの流行が起こ って、クラスにはしかの子が出ますと、ほかの子どもたち、ワクチンを受けている子ど もたちの抗体価が次の年によく上がってきます。やはり、自然のboosterというのは非 常によくかかっているということがわかりました。  これは、十分なデータではなく、HI抗体で見たもので、平成10年で少し古いんです けれども、小学校1年生に入学するときに、はしかのワクチンを打った子でも3割ぐら いはHIで見れば陰性という結果が出てきました。こういうこともあって、余り遅くな い方がいいかなと最近は思っています。  それから、ワクチンを受けていない子も含めると、ある小学校ではHIで見ると、も う40%ぐらい陰性になっている。つまり、流行が少なくなるとワクチンだけで免疫をつ くらないといけませんから、やはりこういうことも起こってくるということです。  問題点としては、乳幼児健診に来ないグループあるいは保育園に早くから入っていく 子どもたちの接種率が、実際は低いというデータがたくさん出ております。  それから、麻しん感受性者、これは接種していない人、かかっていない人、接種後抗 体が減衰した人が小、中、高、大学生、若年成人にかなり残っているということ。それ から、成人麻しん、大人になって麻しんにかかった患者さんが、なかなか早期に診断さ れていないというのも研究班で報告をさせていただきました。  あと、もう一つ、これは是非やってほしいんですけれども、就学前後の健診での指導 を有効に働かせないといけない。現在12〜90か月までに予防接種の定期接種を定めてい るのは、6歳の入学前健診で全くワクチンを打っていない人でも、それから始めても間 に合うようにわざわざ90か月までしてあるんです。実際入学する子たちの就学前健診は 義務になっていますが、その後の指導がほとんど行われていないというのが現状として はあると思いますので、いろいろ教育委員会も含めての協力が必要だろうと思います。  それから、学校予防接種法というのはいつも話題になります。日本でそれができるか どうかわかりませんけれども、少なくとも予防接種法の1類疾患については、受けるよ う努めなければならないという努力義務が課されているわけですから、もう少しこのと ころは文部科学省も理解していただきたいと思っています。  それから、風しんも詳しく先生方に述べていただきました。追加だけです。先天性風 しん症候群は、本当に大変な障害を残しますが、実は後天性の普通の風しんでも、先ほ ど述べましたように脳炎がかなり出ますし、その倍ぐらいの率で血小板減少性紫斑病が ありまして、風しんの流行期にはたくさん入院をされてきます。  これは、妊婦さんの風しんの罹患時期、妊娠して早い時期だと胎児の異常率がかなり 高くなり、かつ、目や心臓や難聴といったものを併せ持つ子が多いと。後になるにした がって、難聴だけが残り、ある時期からは症状が出なくなるということです。  これは、最後の大流行になりました1987〜1988年に、私が1人で福岡で診た先天性風 しん症候群の子が8例おられます。やはり教科書どおり、妊婦さんの風疹罹患が早いと いろいろな臓器に異常が出てきて、週数が上がると障害は軽くなってなくなっていくと いうことです。このときは福岡市内だけで8例出たわけですから、恐らく全国掛け算す ると(報告数としてはこのとき全国百幾らなんですが、)もっと多かったのではないか と思っています。  それから、疾患排除を目指した風しんの戦略ということで言えば、風しんもはしかと 同じように人だけが感染する。しかも、持続感染は基本的にはしない。ただ、患者発見 ははしかほど容易ではありません。有効なワクチンもあります。世界的な動きも始まり つつあって、はしかほどの動きにはなっていませんが、それでも国内排除が可能だと思 うのは、はしかはやはり接種率を95〜100%まで持っていかないと疾患がなくならない と思うんですが、風しんは大ざっぱで言えば7〜8割の人が免疫を持ってくれば、その 地域の流行は一旦おさまります。ただし、残ったところにぽつぽつと出てくるというの が今の現状だろうと思います。したがって、定期接種率が徐々に上昇して、今70〜80% までいっていると思います。このレベルだと全国流行は、やはり今言った理論で出てこ なくなるんですが、地域流行は阻止できないレベルである。しかも、昔の大流行という のは、1週当たり定点当たり10人ぐらい出ていたわけですが、今は0.1ぐらいのレベル ですから、その程度なんですが、先ほどからの寺田先生の御説明等々で、これでもCR Sはゼロにならないということですね。やはり排除へ持っていくには、幼児の接種率の 一層の向上がまず必要で、恐らくはしかと同等の接種率に上がると、もう一段、局地流 行も下がってくるだろうと思います。  ただ、最後に、一番風しんで難しいのは、大量に残っている年長小児から成人の感受 性者対策をどうするか。かつて男性は風しんワクチンから阻外されておりました。その 阻外された成人男性の大きな陰性群が残っております。妊婦さんを取り巻く年齢層に、 そのところがありますので難しいなと。やはり総合的な取り組みというのが必要なのだ ろうと思います。  これは風しんの長期のデータで、先ほど寺田先生にお示ししていただきましたけれど も、やはりこの辺を過ぎるとだんだん下がってきまして、10年を過ぎるとHIで陰性者 がたくさん出てまいります。これは、そういう下がってきた人たちにワクチンもう一回 打ったらどうなるかということですけれども、大体HI抗体で16倍未満ですと、ほとん どboosterがかかってきます。32倍ぐらいからは余りかかりませんが、自然流行をかぶ ったケース、兄弟とか家族に風しん患者が出た場合は、64倍でも抗体上昇を私たちは確 認しています。  ということで、風しんの自然感染後のHI価は高く持続し、長く続くんですけれど も、ワクチン接種後の抗体価はその後暴露を受けないとかなり低下してきます。陰性、 弱陽性は抗体価がきれいに上がってきます。boosterを期待するのであれば、2回目は 初回から5ないし10年ごろかなと思いますが、やはりはしかと一緒に議論していくのが 一番有効な公衆衛生対策ではないかと思います。  以上です。 ○加藤座長  どうも、宮崎先生ありがとうございました。お席にお戻りください。これで諸先生か らのお話をすべて終了させていただきました。  それでは、トータルで残った時間で本日のまとめの討論をしてまいりたいと思いま す。大体各参考人、または委員の先生方の御意見で大きな食い違いはなかったのではな かろうかと考えますが、私なりに考えましたところで、もう一度各委員、参考人の御意 見を再確認またはお聞かせいただければ幸いと存じます。  まず、はしかからまいりますけれども、はしかに関しては、大体の各参考人、委員の 御意見からいきますと、2回接種が妥当であろうという御意見が多かった、ほとんどで あろうかとお聞きいたしました。その大きな理由としては、やはりはしかに関しては死 亡をなくすことが必要であろうということが大きな根拠であろうかと思いますし、疾病 をなくす必要があるであろうと。すなわち流行をとめて、最終的には疾病を排除する必 要性があると。そのためには、2回接種が必要ではなかろうかという御意見が多かった かと思いますけれども、各委員または参考人からの御意見を求めます、どうぞ。 ○岡部委員  中山先生「麻しんの根絶」という言葉をお使いになりましたが、「eradication」で はなくて「elimination」の意味でよろしいですね。 ○中山参考人  基本的には同じになるわけですけれども、次に目指す段階としては麻しんの患者さん をゼロにしなくてもいいわけですね。要するに、その中に持ち込まれても、流行が広が らない状況をつくり出すということは、我々がこれからやらなければいけないことだと 思います。 ○加藤座長  ということは、結局当面の目的としては、ゼロにすることではなくて流行を完全に食 い止めると。 ○中山参考人  外から入ってきたときにも、それが国内で広がらない状況をつくっていく。 ○加藤座長  要するに、今の米国並みという考え方でよろしいのでしょうか。 ○中山参考人  はい。 ○加藤座長  このことに関してどうでしょう。 ○岡部委員  追加させていただいてよろしいですか。WHOの定義で「eradication」というのは 天然痘あるいはポリオのように全く地球上からゼロにするということなので、はしかに ついては多分それは無理だろうと考えられています。しかし、その地域においてゼロを 目指して、よそから入ってくることはあるかもしれないけれども、ですから、地球全体 としてゼロになるわけではないけれども、できるところからゼロに持っていきたい、こ れが「elimination」という言葉になると思うんです。ですから、ポリオと天然痘のよ うなeradicationを目標にしているわけではないというところを少し明確にしておく必 要があると思うんです。日本語でなかなか翻訳しにくいので、混乱しているところがあ ると思いますけれども。 ○加藤座長  「eradication」と「elimination」の違いということですね。 ○岡部委員  ですから、日本も目標はeliminationであろうと。中山先生のおっしゃっているのも eliminationを目標にしようということだと思います。 ○加藤座長  ちょっと言葉の遊びで申し上げますと「control」というところとの兼ね合いは、岡 部先生、どうですか。 ○岡部委員  「control」はもうちょっと緩くて、例えば死亡数もゼロになるし、患者数も少なく なっている、極めてあいまいですから今より状況をよくしていくというような意味が controlになると思いますけれども、eliminationになるともう少しはっきりしてきま す。 ○加藤座長  そこの検討会で目指すところはどこに置く、まだ日本は残念ながらコントロールもさ れていないが、国際的にはeliminationを求められていると考えていいんでしょうか。 ○岡部委員  最終的にWHOで宣言されていないと思うんですけれども、WHOの西太平洋地域は 2012年を一応目標として、eliminationを掲げるということを前提に検討をすすめてい ますから、その中にメンバー国として入っている我が国も、今までの日本の現状も含め てeliminationを目標にしていくということが妥当だろうと思います。 ○加藤座長  いかがでしょう、はしかのeliminationを目標にするという観点から、今後どのよう な対策をとっていくか、それが予防接種行政を変えていく一つの根拠となるということ で、今日各委員、参考人からお話があったことが一つの論拠となろうかと思いますけれ ども。 ○岡部委員  たびたびすみません。決してWHOが言っているから日本がやるというのではないと 思います。確かにWHOが言っているから、我々もやるということにはなりますけれど も、日本にとってはしかというのはどういう問題があるかということを考えたときに、 日本の子どもたちあるいは青年も含めて、はしかという病気はやはり疾病としてのイン パクトが多いので少しでも減らそうということが第一義であると思います。その目標が eliminationであって、それはWHOも目標にしているので我々も一緒にやるというよ うな考え方で、WHOがやるからというわけではないというのを一言言っておきたいと 思います。 ○加藤参考人  質問をいいですか。岡部先生の方が定義としてお詳しいので、私ではない方がいいか と思いますが、日本語と英語との対応をきちんとしておいた方がいいと思うのです。加 藤達夫先生がおっしゃった「control」というのは、日本語では今「制圧」と訳してい ますね。それから、「elimination」を「撲滅」と訳して、「eradication」を「根絶」 と訳していると思います。ですから、日本語と英語の意味が違うかもしれませんが、そ ういう対応できちんと理解しておけば、まずいいのかなと思います。  それから、将来の目標について私もWHOも含めて、やはりeliminationしか今は言 えないと思うんですね、撲滅。だけれども、すべてのWHOのエアリアで撲滅が完成す ればeradicationという提案が出てくるのではないか。そうでなければ、ワクチンを無 限に打ち続けなければいけないわけで、努力する最終目標にならないと思うんです。だ けれども、今は根絶というのは、やはりいろいろな意味で無理なので、撲滅を日本国と しても、WHOとしても掲げるというのでいいのではないかと思っています。麻しんと 風しん、どちらも同じだと思います。 ○加藤座長  今は麻しんについてお話をしておりますが、麻しんと風しんに大きな違いがあるかど うかということをちょっと。 ○岡部委員  すみません。言葉はきっと後で混乱すると思うんですけれども、「elimination」は 日本では、今、先生がおっしゃった「撲滅」という言葉ではなくて、例えば、麻しんに 関する提言書などでは「measles elimination」を「麻しん排除」という言葉を使って います。 ○加藤参考人  そうすると、今は「排除」の方がいいですか。 ○岡部委員  それはどこかで定義をして、全国的に認められている語ではないんですけれども、こ の提言のところで使ったり、それから、感染研で発行しているIASR(病原性微生物検出 情報)などでは「elimination」というのは「排除」という語を使っています。これが 適切かどうかというのは、いろいろな議論があるのは承知していますが、一応私たちの 提言書の中ではelimination=排除というふうな言葉の使い方に統一しています。 ○加藤参考人  そうですか。数年前は「elimination」は「撲滅」というふうに聞いていたものです から。 ○加藤座長  一応、マスコミ等で報道される可能性もありますので、この検討会で一応、言葉上マ スコミのときに英語は出てこないと思うので、日本語の定義として「elimination」は 一応「排除」という言葉遣いにしておくということで、共通でよろしゅうございます か。 ○加藤座長  形だけの問題ですが、言葉だけが先走りますので。  そうすると、この検討会としては、日本の国の中で、風しんも同じでよろしいです か。では、はしか及び風しんに関しては、我が国の目的とするところは、この両疾患を 我が国から「排除」することを大きな目的とするということで共通認識と考えてよろし いでしょうか。何か御異議がある委員・参考人の方は御意見ください。  その「排除」する論拠ということは、先ほど来、岡部先生、中山先生とはしかに関し てはお話しいただきましたし、また、加藤先生または寺田先生、宮崎先生におかれまし ては、風しんについては、その論拠となる点が発表されたわけでございますので、その 点はよろしゅうございましょうか。何か付け加えることがございますでしょうか。 ○川名参考人  産婦人科の立場から、もう一つ申し上げたいと思いますが、現状の妊婦診察におい て、風しんで非常に混乱しているといいますか問題になっていることが2つございま す。1つは、不顕性感染でもCRSが起きるということが言われておりますので、そう しますと、血液の抗体を測定することによって不顕性感染の有無を判断しているわけで ございます。しかし、特にIgM抗体を見ることによって、初感染かどうかということを 調べることになりますが、このIgM抗体の評価というものが大変混乱をしておりまして、 恐らく最近の感染とは言えないような場合でもIgM抗体が陽性になるというケースは結 構あるようでありまして、そういう例でも心配だからということで中絶してしまうとい うことが現状で起きております。  それから、もう一点は、先ほど来出ておりますが、再感染でも起きるらしいというこ とがだんだんわかってまいりまして、一遍ワクチンさえやっておけば、もう心配ないと いうのが私たちの常識だったのでありますが、どうもそうではないらしいと。しかも、 昔は8倍は危ないけれども、16倍以上あれば大丈夫だと言っていたのが、16倍でも危な いし、32倍でも危ないなどという話になってきますと、では、私たちは現場でどのよう にしたらいいのかということで、正直言って大変悩んでおります。  こういう状況を考えますと、CRSをなくす2つの大きな戦略の中で、やはり社会か ら風しんウイルスをなくしていくというのが最も確実であると考えます。  それから、もう一方では、先ほど来出ておりますように、現在の感受性者に対する対 策も緊急にしないと、CRSはなくせないということは明らかでございますので、この 両方の面から対策を立てていただけると大変ありがたいと思っております。  以上です。 ○加藤座長  ありがとうございました。今、川名教授からは、不顕性感染でも起きること、それか ら、風しんでは再感染があるということが非常に危惧されるということですけれども、 この検討会の中で論じるとすると、私が判断するに、個々の例については確かに問題点 は多いのですけれども、個々の例を1つ1つ取り上げるとなりますと大きな問題があり ますので、最後に川名先生がおっしゃったとおり、これらをすべて解決していくために は、個々の免疫状況を云々するというよりも、日本国全体で感受性者をなくしていこう という方向に行くべきではなかろうかという御意見と承りましたけれども、それにはこ れからのストラテジーが大切でして、そこでまた先ほどに戻りますけれども、日本国で ははしか、風しんにおいて、その疾病の「排除」を図るという方向で進んでいくことに よって、現在、危惧されている不顕性感染であるとか再感染というものも、今すぐには 無理だけれども、それを進めることによって、将来的にはそれもなくなるであろうとい うふうな了解でよろしゅうございましょうか。 ○岡部委員  個々の例を考えると、やはり検査法というのは決して100%正しいわけではないので、 確かに混乱があるのは事実ですけれども、その「混乱」という言葉が独り歩きすると、 全くわからないで困っているということではないというふうに思います。  この参考資料の中にあります「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する 緊急提言」、参考資料2ですけれども、そこの12〜13ページの間に、これは平原先生及 び川名先生も入っていただいている産婦人科のグループが、もし個々に困った場合の妊 婦さんについては、どういうふうな相談をしたらいいかという、一応の指標といいます か、ガイドラインを出していますので、もし困られたときは、これを参考にしていただ くということも広く知っていただくといいのではないかと思います。 ○加藤座長  当面のところは、この資料にあります提言の2のところの、今、川名先生がお話にな ったことに対する対応方法として12ページのところで対応していただきたいと、当面の ところはですね。そういうことでよろしいですね。  よろしゅうございましょうか。風しん及びはしかの予防接種は、どうも先ほど来の各 委員、参考人の御意見を伺いますと、2回接種はよろしいのではないかという御意見が 圧倒的だったわけですけれども、その根拠となることについて、何か御意見がおありの 先生。雪下先生、何か御意見ございませんか。 ○雪下委員  今は特別ございません。 ○加藤座長  特に各委員に対して反対の御意見、または賛成の御意見。 ○雪下委員  今、日本でも学校保健法で具体的にというような話がありましたが、アメリカでは学 校保健法で記載されているのかどうか。それに関連した条文というのはあるのでしょう か。 ○加藤参考人  私は、現行の法律を持ってきていないんですけれども、各州で学校保健法を決めてい るんですね。だから、州ごとに事情が変わるという側面がありますが、小児科医の Cooperが精力的に回って、ほとんどの学校では程度の差は州ごとに違うかもしれない ですが、それを導入してみた。ですから、高くリコメンドされたものは、みんな学校保 健法でカバーされていると思います。 ○雪下委員  それは、例えば、入学時あるいは就学時に接種証明がなければ入学させないとか、そ ういうようなことでしょうか。あるいは、今、日本では集団接種がほとんど学校で行わ れなくなりましたし、それによる接種率は確かに全体的には落ちてきている一つの原因 になっていると思いますけれども、そんなことでアメリカでは集団接種を学校内でする とか、そういう方法は何かとられているのでしょうか。 ○加藤参考人  集団接種に関しては、学校は基本的にやっていないと思います。学校保健法で要求し ていることは、小学校入学時には、例えばMMRで言いますと、MMRの二度接種の証 明書を持ってください。なければ接種してから来てください。そうでないと、基本的に 学校に入れませんということです。絶対入れないのかどうか、そこはよくわかりません が、そういう証明書を要求しています。  それから、もう一つ最近になって大学も同じことで、大学生でも改めてMMRの二度 接種の証明書の要求をしています。そうでないと、打ってから入学してくださいという ことです。ただ、強制力がどの程度厳しいか、州法にもよるんですが。岡部先生。 ○岡部委員  やはり個人の権利ということにもかかわってくるので、いずれの州も接種をしなけれ ば絶対に入れないということではないというふうになっていないと思います。ただ、接 種しない場合には、それなりの根拠を明らかにし、宗教的理由とか疾患による理由が当 然入ってきますから、その場合は例外として認めるということになります。それはきち んと文書として書いてもらうというような形になっていると思います。  それから、そういう方々が仮にもし発熱をしたり、あるいは仮にはしか、風しんとい うような病気が疑われた場合は、直ちに学校を休んでくださいといったようなことも書 いてあるように思います。 ○加藤座長  school lawとか先ほど雪下先生からお話のありました文部科学省絡みでのことも大 変大切な話であろうかと思いますが、それはこの検討会は約10か月ほど続くと思います が、その中でまた議論を進めていただくということにして、今日ははしかと風しんにつ いての集中議論ですので、兼ね合いはあると思いますけれども、それはまた後に総合的 な話でしていただくことにして、はしか、風しんについて、このようなまとめでよろし いかどうかをちょっとお伺いいたします。  はしかにつきましても、風しんにつきましても、目的といたしましては、この両疾患 の発生を我が国で「排除」することを目的とするということが大きな目的である。その ためには、両疾患を「排除」する方法として、現在行っているワクチン接種は1回接種 でありますところを、2回接種の導入ではいかがかという御意見が、今日は多数を占め ていたというふうに拝見いたしました。  その理由としては、1回の接種だけではすべての人口を網羅するだけの免疫効果が上 がらない場合があると。約5%程度は最初の接種で免疫が獲得できない方がおられて、 それがだんだんと蓄積していって、蓄積した段階でそれが増えてきたときに、流行を来 たす可能性があるということが第1点。  それから、第2点は、いずれにいたしましても、1回の接種が非常に盛んになって接 種率が上がってきた場合を想定しても、これは昨年の検討小委員会でも出ましたが、疾 病そのもの、すなわちウイルスそのものが自然界からだんだん少なくなってくると、先 ほど中山先生がおっしゃったような自然のboosterというものが非常にかかりにくくな ってくるであろうということから考えると、予防接種による効果にも寿命があるであろ うということから、1回だけの接種で自然のboosterが期待されなくなる時期がやがて 訪れて、そのためにはワクチンによってbooster効果を得るために2回接種の必要性が あるであろうという点が1点。  それから、もう一つは、今法律でかなりの年齢の幅をつくって1回接種法というもの をつくってあるわけですけれども、その幅を超えても更に接種の機会が失われている方 もおられる可能性もあるというようなところから、1回接種によっては何らかの原因に よって接種の機会を失っている方もおられる可能性があるので、その方々を救うという 意味においても、2回接種をすることによって、それらの方々も救えることができるの ではなかろうかと。大きな理由はそのようなことがあろうかと思いますけれども、いか がでございましょうか。モチーフとしては、そんなことでよろしゅうございますか。何 か御意見を伺いますが。 ○廣田委員  先ほど先生がおっしゃったeliminationのところで、疾病の発生を「排除」するとい う御説明だったかと思うんですけれども、これは患者の発生と考えてよろしいんです か。 ○加藤座長  一応、患者の発生でよろしいと考えますけれども。先生が言っているのは、感染と感 染症の違いということですね。感染症でよろしいかと思いますが。 ○寺田参考人  2回接種については勿論賛成なんですけれども、風しんにつきましては、今、抗体陰 性の方がおられますので、2回接種だけでは先天性風しん症候群もあるいは大人の今流 行している風しんというのは減らないので、今そういう経過措置あるいは以前の男性、 それから、接種期間が短かった方も予防接種の対象になるようにするということが大切 ではないかと風しんでは思います。 ○加藤座長  ちょっともう一回。ちょっとわかりにくかったので。 ○寺田参考人  すみません。風しんにつきましては、現在大人、それから、子どもの大きい年齢で流 行しているわけです。それによって先天性風しん症候群が出ているわけなんですが、2 回接種をとるというのは、あと10年後、20年後ぐらいには、風しんの流行やあるいは先 天性風しん症候群はなくなると思うんですが、抗体が陰性の方をそのままにして2回接 種を導入しても、残った方がそのままであれば、風しんの流行やあるいは先天性風しん 症候群というのはなくならないと考えます。 ○加藤座長  わかりました。それは、先ほどの川名先生の御意見とちょっと近いかなと思いますけ れども、先ほど来私が申し上げているのは、特殊と言っては大変失礼ですが、個々の例 をこの際考えるのではなくて、日本トータルとしての方策をまず考えていきたいと。そ こをベースとして、まずベースをつくった上で、川名先生、または寺田先生がおっしゃ ったような、全体に即さないようなものに対してはどう対処するかということを附則的 なこととして取り上げたらいかがかなと私は思っております。まず、トータルとしてま とめるものを1つまとめておいて、それプラスそれに当てはまらないものについては、 どのようなことをこの検討会では提言したいということでまとめたらいかがかと思いま すが、いかがでしょうか。それでよろしゅうございますか。  そうすると、トータルでどのようにしたらよろしいかということを考える。先ほど私 が申し上げたような、まず2回接種を導入するという理由と申しますか、趣旨というも のは、そのようなことでよろしゅうございますか。特に反対の御意見がなければ、で は、そのような形でまた事務局と御相談した上で取りまとめまして、また先生方の御意 見を伺いたいと存じます。  それでは、その次に進めさせていただきますが、そういうことで御了解を得たとし て、両ワクチンを2回接種すると決めたときに、その接種の時期がまた問題になろうか と思います。これも先ほど来、各先生方からお話が既に出ておりますので、大体のとこ ろはまとまったというふうに拝聴いたしました。そのことについて、何か追加意見等ご ざいますか。 ○澤委員  1歳で1回目を行うという話なんですけれども、宮崎先生が1歳未満の子どもさんへ の接種で、ちょっと一言気になったんですが、母体の免疫の方はいいんですけれども、 経験が少ないということをおっしゃいましたよね。私ども現場で働いておりますと、保 育園に入園して1歳未満での接種が行われているような状況もあるんですね。2回目を 区が出しています無料の券を使って、かなり後の方でやっていると。1回目は自費で1 歳未満にやってしまうという方もいらっしゃるので、その辺のことを1歳でという年齢 が一番ふさわしいということは大体先生方のお話でわかるんですが、1歳未満のところ をもうちょっと教えていただけないでしょうか。 ○宮崎委員  もともとは、はしかが常に流行しているような状況のときには、お母さんも免疫を持 っていて、たくさんの移行抗体を与えていて、赤ちゃんはかからない。ですから、乳児 期は抗体がある状況でワクチン接種をする。だから、何%かはつかない人も出てくるだ ろうということで、余り早くし過ぎると難しいので、1歳以降と。ただ、現状はもうワ クチン免疫がメインになってきているお母さんたちの中で、実は6か月ぐらいで抗体が なくなってきているというのも事実ですよね。そういう中で、実際に今、はしかが近く で流行しているというようなときには、やはり1歳まで待つか、今ワクチンを打った方 がいいかという判断の中では、やはり乳児期の接種というのはあり得るのだろうと思い ます。  ただ、かつて、日本ではありませんけれども、外国で、早い時期に高力価のはしかワ クチンを打った後に、むしろ1〜2年後ですけれども、死亡率がかえって高くなったと いうようなデータがあったりするので、少し小さい時期の接種を気にされる方もおられ るわけですよね。そういうものをまた、本当に安全だというデータを一からつくってい くよりは、マスとしては1歳から、つまり12か月になったらすぐやるという方が進めや すいということがあるかと思います。現実的に私は例えば10か月、11か月で今、日本の ワクチンを接種して危険だとは思っていませんけれども。そういうようなお答えでよろ しいでしょうか。 ○澤委員  小児科医の先生方によって、若干考え方が違う部分がおありなので、早く打った方が いいとおっしゃられて打たれる方もいるということなので、そんな先生方にお話しする ときに、どのようにお話ししたらいいのかなというのをちょっと思いましたので、お聞 きしました。大体先ほどからのお話を聞いていて、1歳でいいのではないかと私も個人 的には思っていますけれども。 ○宮崎委員  アメリカも実は少し早目に打って流行を抑えてから、だんだん上げていったという状 況があるんです。ですから、日本に麻しんがもっとたくさんあったら、本当に乳児期を 真剣に考えないといけなかったかなと思うんです。最近はかなり流行が抑えられてきた ので、という気はしているんですけれども、私も微妙な問題があると思います。 ○岡部委員  もう一ついいですか。2回接種をするという意味合いは、2回どこかでやっておけば いいぞということではなくて、1回接種が12〜15か月に95%以上きちんと行うというこ とが前提であると思います。そうすれば、1歳以下にやる、やらないというデリケート な問題に踏み入らなくて済むのではないかと思うんですけれども。 ○加藤座長  昨年提言がまとめられました検討小委員会の中でも、この話題が出ましたが、結論的 にはすなわち1歳代での流行を食い止める、先ほどお話ししましたこの検討会の目的 は、はしかについては「排除」することを目標としておりますので、その疾患が「排除 」されるような方向で動いていけば、それに巻き込まれた形での1歳未満の方々の発症 も減るであろうということが基本的な考え方にあろうかと。大流行してしまいますと、 もうこれは5か月の方でも6か月の方でも、はしかにかかってしまうということは明ら かなものですから、全体としての地域での流行さえ食い止めれば、やはりかかりやすい のは1歳代が圧倒的に多いということで、そういうような基本的な考え方でよろしいの かなというのが、大体の考え方かと思いますが、よろしゅうございますか。 ○澤委員  わかりました。 ○加藤座長  ほかにいかかでございましょうか。接種時期の話を今、進めているところでございま すが。はしか、風しん同じ時期でよろしいか、よろしくないかということからいきまし ょうか。  大体先ほどの各先生方の御意見でいきますと、風しんに関しては若干先に延ばしても よいと思われるけれども、日本の今までの経験からいくと、例えばDTの二混のワクチ ン、それから、日本脳炎の就学以降の予防接種の率、それから、風しんの移行措置にお いて、風しんの予防接種が集団接種から個別接種に入って中学生で行われるようになっ たときの接種率等々を考え合わせると、どうも就学期になってから予防接種を行うと、 予防接種率が日本の場合には極めて低いという御意見が数人の先生から出されておりま す。ただ、学問的と言いますか、抗体保有の時期から見ると、それは学童期に入ってか らなくなってくるという、7年とか9年ということが出てまいりましたし、風しんの場 合には3歳までにやればいいと。そこから7〜9年経ちますと就学年齢になりますが、 そのような御意見もあったように考えますけれども、そのような観点からいかがでしょ うか。風しんとはしかの予防接種、2回接種することは大体御意見が一致したと思いま すが、今、時期のお話をしておりますけれども、一緒でよろしいか、よろしくないかと いうことについて御意見を。中山先生、いかがでしょうか。 ○中山参考人  麻しんに関しては、地域によってかなり今までの過去の流行が違いますから、東京の 我々のデータと姫路の状況、それから、庵原先生の状況とかなり結果が違います。我々 のところは5〜6年経つと下がり始めるのが10%程度。岡部先生の姫路では7〜8年、 庵原先生のところもそのぐらい。そうすると、ワクチンの接種率と過去の流行の状況か ら見ると、これからは東京と同じような状況に全国がなっていくと思いますから、やは り小学校入る前、それからワクチンの効率等含めて小学校に入る前に追加すべきだと思 います。  風しんの抗体の推移のことですけれども、それも流行があった状況の中で宮崎先生が お示しになっている状況ですから、それがこれから何年か同じ状況であるということ は、まず保証はできないわけですから、ワクチンの効率とか今の抗体の推移から見る と、小学校に入る前にやるべきではないかと思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  寺田先生、いかがですか。 ○寺田参考人  私も、風しんにつきましては、遅い方が学問的あるいは先天性風しん症候群を予防す る意味では意味があるんですけれども、接種率を上げるという意味から考えますと、や はり小学校に上がる前に2回MRで打つのが妥当ではないかと考えます。  もう一つお願いしたいのは、接種漏れ者の対策がそれに含まれていますと、接種率を 更に上げることができると思いますので、3歳の市町村の健康診査のときに予防接種が 打てない方を探し出す、そこで予防接種を打ちなさいという勧奨ができる。それから、 小学校の入学時に、またそういう方を探し出して打てる、その時期からちょっと長く定 期接種で予防接種ができるという状況を維持していただきたいなと思っております。 ○加藤座長  そうすると、具体的な時期と申しますと、先生の御提案は入学前ということですか。 中山先生と同等と考えてよろしいですか。 ○寺田参考人  はい。それで期限というのがあると思うんですが、1歳からなんですが、1回目は3 歳児健診が終わって6か月で、42か月まで。それから、2回目は90か月までという形で 6か月余裕を持たせていただければ、漏れ者対策ができると考えています。 ○加藤座長  川名先生は若干、成人の方に偏ると思いますが、今ちょっと全体的なお話に参加して いただいて、いかがでしょうか。 ○川名参考人  小学前でいいと思いますが、それが成人になってどのくらい続くかということがまだ わかりませんので、その状況によっては3回目ということも妊婦、女性に限ってあって もいいかもしれないという程度でございます。 ○加藤座長  それは、また最終的に附則的な提言ということでよろしゅうございますね。  加藤先生。 ○加藤参考人  私も提案のときに申し上げましたが、基本的には1回目は1歳、後ろが3歳半がいい かどうかはわかりませんが、寺田先生のように少し余裕を持たせるというのは非常にい いと思います。2回目は4ないし6歳。これも寺田先生がおっしゃるように7歳半ぐら いまで広げた方が、あるいはいいかもしれませんが、メインはそれでいいと思います。  根拠はやはり2つありまして、1つは、皆さんがおっしゃいますように、小学校入学 時でチェックできる。これは非常に大きいと思います。それで接種率を上げるというこ とですね。  それから、もう一つは、いろいろな国がいろいろなことを考えて、いろいろな対策を やりましたけれども、最終的には全部4ないし6歳ぐらいで落ち着いて、それで国内的 に排除を成功させている。そうすると、風しんのことは心配ではあるけれども、4ない し6歳で二度目がいけると思います。  それで心配なのは、川名先生がおっしゃいますように、日本の場合まだ成人女性の抗 体保有率が風しんの場合完璧ではないことがあるわけですが、その場合は私も提案しま したが、MMRは小学校入学までに2回打って、風しんの単味ワクチンの製品が残ると しますと、それを中学生で打つなり、成人式で打つかわかりませんが、3回目を女性に 限って風しん単味で打つ。男子の成人もいいかもしれませんが、そういう抗体価が低い ところのグループに関しては、キャンペーン的な形で風しん単味を使うというのはあり 得ると思うんです。すべて一律にする必要はないかなと思います。だから、緊急的なそ ういうリスクグループについては、柔軟に対応した方がいい。それは法律的なことでは なくて、実用的な対策でいけるのではないかと思っています。  以上です。 ○加藤座長  ありがとうございました。  雪下先生、よろしくお願いします。 ○雪下委員  先ほどから先生方の報告をお聞きしまして、2回接種は私も賛成であります。先日、 就学時健診を実際に私もしばらくぶりでやってまいりました。そのときに、今年は、私 の市でも予防接種のチェックをすることにいたしておりまして、それを一人一人実施し ました。かなり接種率が最近上がっているなという感じでしたけれども、一部していな い子どもたちがいるわけで、そこで母親が大体ついてきておりますので、厳重に接種す るようにということを勧めてまいりました。それは大変有効なのではないかというよう な気がいたしました。したがって、先ほどの麻しん、風しん、いずれも5〜10歳ぐらい までということだとすれば、就学時健診のときにチェックできるように、それを含めた 時期をとってもらえればというふうに思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  宮崎先生。 ○宮崎委員  やはり、基本ははしかをまず考えて、風しんはそれに連動する形で考えた方がいいと 思うんですけれども、風しんは先ほど示しましたように、かつてはワクチンを打って、 例えば、長崎の出口先生のデータだと17年ぐらい経っても全然HI抗体は落ちないとい うデータだったんですが、余り周囲との接触がない、つまりboosterがかからない状況で は、かなり下がってくるというデータがありますので、風しんも早目に持ってきた方が 疾患の排除にはやはり有効であろうと思っています。ですから、CRSは疾患を日本か らなくすことによって防いでいくという基本路線で基本的にはいけるだろうと。ただ、 短期的にこの数年、5年、10年というのは懸念は残りますので、先生方が言われたよう に、やはり特別対策のようなものがあればいいなと思います。  それから、これは風しんを平成6年に変えるときにもかなり議論したことなんですけ れども、移行というのはなかなか難しくて、日本の法律の中で1期、2期、3期という ような考え方で期限を区切っていくのがいいのか、接種時期を広く設定しておいて、そ の中で2回をやるというような設定がいいのかとか、そういう技術的なことはもうちょ っと詰めて考えたらどうかなと思っています。  例えば、先ほどの寺田先生の方式は期を区切っていくという方法ですけれども、例え ば、12〜90ヶ月までの中で2回、その中で標準的な接種時期を含める方法もあるでしょ うし、思い切って15歳ぐらいまで法の中に含めるというようなこともあるかもしれませ んし、その辺がちょっとまだ私の頭の中でどれが一番いいか、整理ができていない部分 です。 ○加藤座長  ありがとうございました。  今日は12時半までギリギリで終わらせていただきますので、廣田先生、御意見があっ たらお願いします。 ○廣田委員  2回接種は全く同感でございますが、ちょっと議論が複雑にならないように。先ほど から「トータルで」とか「マスで」という言葉が出るんですが、これは要はルーチンな ワクチネーションを検討するということですよね。したがって、そこで漏れ者とか、あ るいはCRSの問題というと、例えば、特別対策であるとか付加的なものとして取り扱 う。まずルーチンとしてベストの方法を検討して、その後そういったことを併せて含め ていくというふうに割り切っておいた方がいいのではないかと思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。廣田先生おっしゃるとおりと考えております。  では、澤委員。 ○澤委員  今までの議論の中で私もほとんど納得しておりますので、2回法、接種時期はいいと 思うんですけれども、今、廣田先生がおっしゃったように外れる話なのかもしれないん ですが、寺田先生がおっしゃいましたように、ある程度どこかでチェックできる、その 後受けられるという、無料で受けられるという範囲を設定しておかないと、かなり受診 率を上げていくのは難しいかなと思うんですね。その辺、ちょっと幅を持たせたところ が非常に大事なところではないかと思っておりますので、そんなふうにまとめていただ きたいなというのは、行政側からの意見です。 ○加藤座長  ありがとうございました。  岡部先生。 ○岡部委員  もう尽きていますので。ただ、例えば4〜6歳というのは、いわゆる標準年齢であっ て、実情からいうと寺田先生のおっしゃる90か月までといったような形の方が、チェッ クをしておいて後でできる。90か月というのは非常に微妙なところをよくとらえている と思うので、それは私は生かしていった方がいいのではないかと思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。大体議論は出尽くしたと思いますけれども、特に御発言は ございますか。 ○寺田参考人  宮崎先生から区切らず長くしてみたらどうかという御意見があったんですが、区切る というのも非常に有効でして、といいますのは、その期間までにしないと有料になりま すよと、その間に有料の期間がありますと、それを過ぎたら有料になるということで、 そこまでにしておかないといかんなという意識を親御さんに植えつけるということにな りますので、できればずっと長く、90か月までというわけではなくて、一旦区切って早 期にそこで接種率を上げるということが大切ではないかと考えております。 ○加藤座長  ありがとうございました。  大体議論が出尽くしたと思われますので、まとめは最終的に事務局と私の方でいたし ますけれども、トータルで大体おまとめいたしますと、はしか、風しんに関しては、我 が国の目標としては、この両疾患を「排除」することを目標とする。現段階ではこの 「排除」がなされていないので、それをするためには両疾患とも2回接種法で「排除」 を図ることが妥当であろうと。それは、5%程度免疫獲得ができない者がおるというこ とと、それから、更に自然boosterが得られなくなってきた場合には、ワクチンによる boosterが必要であろうと。それから、たまたま機会を失った方もおられるであろうか ら、その方に対しては、最低1回は接種できることになるだろうということが理由であ るということでございます。  また、接種時期に関しましては、就学以後になりますと接種率が極めて下がるという ところから、現行の予防接種法にある90か月以内という範囲の中で2回接種をすること が妥当であろうと。その中で、更にいつを標準的な年齢にするかについては議論が多い ところでございますけれども、私個人的な考えでは、はしかに関しては今現在、1歳代 で推進している真っ最中でございまして、今日の御報告にもありましたように、その効 果が出てきておりまして、はしかに関しては罹患者が減ってきているところであります ので、この基本的な一線は、1歳代でとりあえず1回接種をすることについては疑問は ないところであろうと。それに連動して、風しんの予防接種も接種していったらいかが であろうかと。  それから、はしかに関しては、第2回目の接種は大方の先生方の御意見では4〜5歳 ぐらいがよろしいのではなかろうかという議論が多かったところですけれども、そこを 標準的年齢にするか、または90か月までの幅をとるかということに関しては、若干事務 局と煮詰めさせていただきたいと考えます。  また、今日は時間がありませんでしたし、これもまだ何とも決まっていないことです ので議論はできませんけれども、はしかのワクチンも2回、それから、風しんのワクチ ンも2回といたしますと、個々のワクチンを別々に1回ずつ接種いたしますと4回接種 ということになりますので、もし、MRワクチンというワクチンが日本の国で認可され れば、それを接種することによりまして風しんのワクチンの接種率も向上いたします し、また、トータルの予算的なことも考慮いたしますと、それが有効な手段であろうか と思いますし、接種する側の労力や、または、被接種者側の来院する機会ということ、 すなわち接種率ということも考えますと、もし、それが認可されるということであれ ば、コンビネーションワクチンも使用していくということも考慮に入れていきたいとい うことでございますが、そのようなことでよろしゅうございましょうか。  それでは、本日用意いたしました議題は、その他というところがございますけれど も、何か特に御発言ございますか。 ○加藤参考人  少し申し上げましたけれども、今回の予防接種法見直しではいいと思うんですが、更 に5年後もし見直しがあるとすれば、MとR、風しんと麻しんは多分そのうち状況が改 善されると思いますので、将来は更に増やしてMMRVというような四混ワクチンも考慮さ れるようになってくると思うので、5年後の見直しのときには是非この議論ができるよ うな状況になっていたいと思いますし、そういう議論をしていただきたいと思います。 ○加藤座長  先ほどちょっと申し忘れましたけれども、そのほかに、この検討会としての附則条項 といたしまして、先ほど来、川名先生、寺田先生がお話になっているように、90か月を 過ぎた例えば成人層におきましても、リスクが高い方に関しては、一定のキャンペーン を張る等の措置をしていただきたいということが検討会で話し合われたということを補 足させていただきますし、また、先ほど途中でお話を止めましたけれども、就学時に対 して文部科学省等の協力を得て、未接種者に対する接種漏れ者に対するチェック等も、 この検討会では要望があったということを附則事項として加えていただくということで よろしゅうございましょうか。  それでは、長い間お忙しい中を検討会に参加していただきまして、御意見をいただき まして、ありがとうございました。私の方からは、この検討会を閉めさせていただきま す。  事務局から何か。よろしゅうございますか。  それでは、どうもありがとうございました。                               照会先                         健康局結核感染症課予防接種係                         TEL:03-5253-1111内線(2385)