04/11/16 労働政策審議会労働条件分科会第37回議事録            第37回 労働政策審議会労働条件分科会                    議事録                     日時 平成16年11月16日(火)                     13:00〜                     場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○西村分科会長  ただ今から、「第37回労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。本日 は、荒木委員、岩出委員、渡辺章委員、紀陸委員、谷川委員が欠席されております。ま た、紀陸委員の代理として川本さん、谷川委員の代理として尾辻さんが出席されており ます。  本日の議題は、第1に、「労働基準法第六十一条第五項の規定により読み替えられた 同条第二項に規定する厚生労働大臣が必要であると認める場合及び期間を定める告示案 要綱」についての諮問案件。第2に、「時短促進法について」です。  それでは第1の議題から始めたいと思います。「労働基準法第六十一条第五項の規定 により読み替えられた同条第二項に規定する厚生労働大臣が必要であると認める場合及 び期間を定める告示案要綱」について、本日厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛諮 問が行われました。これを受けて、当分科会において審議を行うこととしたいと思いま す。  まず、事務局からご説明お願いします。 ○労働基準局長  本件の告示案要綱についてですが、演劇子役の就労可能時間を午後8時までから午後 9時までに延長することとするものです。詳細は監督課長から説明させますので、どう ぞよろしくお願いいたします。 ○監督課長  お手元の資料1の「労働基準法六十一条第五項の規定により読み替えられた同条二項 に規定する厚生労働大臣が必要であると認める場合及び期間を定める告示案要綱」につ きましては、いわゆる演劇子役について、深夜の就労可能な時間を延長する告示です。 演劇子役の就労可能時間に関しては、昨年来、社団法人日本演劇興業協会などから要望 があり、昨年9月の構造改革特別区域推進本部における政府の対応方針、及び、本年3 月に閣議決定されました「規制改革・民間開放推進3か年計画」において、平成16年度 中に、「義務教育を修了するまでの演劇子役の就労可能時間を、現行の午後8時までか ら午後9時までに延長することを検討し、措置する」ものとされたところであります。 同じく、本年3月の労働条件分科会においても、その旨をご報告させていただいたとこ ろです。これらの詳細は資料2の別紙3及び別紙4を御覧ください。  それでは資料に沿って説明させていただきます。資料2を御覧下さい。現在、義務教 育終了前の児童については、原則として午後8時から午前5時までの間は使用してはな らないとされております。ただし、厚生労働大臣が必要と認める場合には、当該時間に ついて、地域又は期間を限って、午後9時から午前6時までとすることができるものと されています。これらを表にしたものが別紙1で、この表の下2段、特に黒く網掛けを しております中に○と書いてある部分が、厚生労働大臣が告示等で必要と認めた場合に 延長できる部分です。  本件告示については、先ほど申しました閣議決定等を踏まえ、厚生労働大臣が必要で あると認める場合を、演劇の事業に使用される児童が演技を行う業務に従事する場合、 すなわち、いわゆる演劇子役が演劇に従事する場合とし、その期間については当分の間 とするものであります。別紙1においては、今般告示によって措置する部分について斜 線で示しております。また、施行日は平成17年1月1日よりとすることを予定しており ます。  また、本件告示案については、平成16年9月6日から10月6日までの間、いわゆるパ ブリックコメントの手続を行ったところですが、特段の御意見はいただかなかったとこ ろです。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。 ○西村分科会長  本件について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。 ○須賀委員  御説明によりますとパブリックコメントが1つもなかったという話であり、どこにニ ーズがあったのかなという気がしないでもないのですが、それはそれとしておきます。 延長によりいろいろと影響が出てくる可能性はあると考えているのですが、健康面や就 学面に関して、どのような影響が考えられると把握されているのか、あるいは、仮に1 時間程度延長されたとした場合に、どういう影響が出そうだという認識にたたれている のか、その辺についてお伺いしたいと思います。 ○監督課長  今回この告示をする前にヒアリング等もさせていただき、それぞれ懸念等も出てきて います。ヒアリング対象としては、小・中学校長会、PTA全国協議会、児童健全育成 推進財団等です。就学状況等についていえば、例えば演劇子役の児童はプライドやスタ ー意識を持ったり、鼻持ちならないなどということをいわれた人もいますし、あるい は、睡眠時間等の問題もあります。そういうことで、児童の福祉及び道徳の保護、心身 の正常な発育を図る必要性は当然あろうと思います。それらにつきましては、使用許可 に当たり留意すべき事項ということで、局長通知で発出することとさせていただきたい と考えております。  例えば、使用許可に当たりましては、児童は修学時間外においてのみ使用することが できること。児童は休憩時間を除き、修学時間は通算して1週間について40時間、1日 について7時間を超えて労働させてはならないこと。賃金は直接本人に支払われる必要 があること。あるいは、稽古及び衣裳替えの時間等も原則として労働時間であること。 これらは当然のことですが、その他の留意事項としては、保護者等による送迎を行われ る等の必要な配慮がなされるように努めること。必要に応じて就労時間中に食事時間が 与えられている等の必要な配慮がなされるように努めること。ほかに十分な睡眠時間が 確保される等児童の健康及び福祉に必要な配慮がなされるように努めること。こういう ことを発出することも考えております。また、同時に、子役の適正な就労について関係 団体への要請も行っておりまして、関係団体からも子役の就労の適正化に向け、自主的 にパンフレットを作成し、広報を行うなどの活動が行われていると承知しております。 ○新田委員  いまお話がありましたが、要するに大臣が認めるということは、その日のことを、A 君をこの舞台でということで、こういうふうにやりますよ、ということを提出して了解 を取るということですか。 ○監督課長  基本的には、個別の許可については労働基準監督署長が許可をするわけですが、今ま では午後8時までの分しか許可ができなかった。それについて、今度厚生労働大臣の告 示といたしまして、暫定的ですが、当分の間は演劇子役に限って午後9時まででもいい と、こうするための告示です。 ○新田委員  ここにありますように、大臣が認める場合には、こうこうだということを言っておら れますよね。 ○監督課長  はい。 ○新田委員  認める条件というのは、いま言われたタイムテーブルなどが提示されればOKです よ、ということになるのですかということを聞いているのです。よろしいですよという のは、どう確認するのかということです。 ○監督課長  それは労働基準監督署長に許可申請を出します。そのときに学校長の証明書も付けさ せますし、それは修学上問題がないとか、そういうことを確認した上で許可を出すこと になっております。 ○新田委員  番組で午後9時までですというのは、午後9時までですということを出せば、それで いいのですか。 ○監督課長  番組が何時かは別として、午後9時以降はきちんと帰らせるということを条件にいた します。例えば、演劇ですから、こういう演目について期間、いつからいつまでの演劇 としてやりますということを書いて、申請していただくという形になります。 ○新田委員  それは、それぞれですね。 ○監督課長  はい。 ○渡邊(佳英)委員  演劇と書いてありますが、例えばコーラス、あるいはオペラはどうなるのですか。 ○監督課長  今回午後9時までとするのは演劇ですので、歌のみのものは駄目です。 ○新田委員  これは舞台だけですか。舞台の演劇ということですか。 ○監督課長  これは演劇に限るということです。 ○奥谷委員  要するに、これはナマの舞台だけですか。例えば、テレビで番組を収録するとか、何 とかというようなことは入らないのですか。 ○監督課長  それは入りません。 ○新田委員  もともと2の経緯に、特区で出たのでしょう。 ○監督課長  はい。 ○新田委員  これは何が出たのですか。 ○監督課長  もともと社団法人日本演劇興行協会から特区の要請が出ました。これは舞台で大体演 目が終わるのが午後9時なり午後10時までということが多くて、子役がカーテンコール に出演できない。折角演劇に出たにもかかわらずカーテンコール前に帰らされてしまう ので、本人の達成感がないといった要望がございました。 ○新田委員  特区ですから具体的に要望があったわけですね。 ○監督課長  はい。それについては刑罰にもかかわるようなものですので、区域を限定してという のは適当でないので、全国的にできる部分について行うということで、午後9時まで延 長するものとされたところでございます。 ○新田委員  要するに、東京の何々劇場という地域の限定ではなくて、この協会は全国的にそうい うことを求めたわけですか。 ○監督課長  はい。 ○新田委員  特区として。 ○監督課長  特区としては、もちろん区域はあったのですが、我々としては区域に限定するのは適 当でないので、全国的に扱おうと。 ○新田委員  それは分かるのです。特区の所はどのようになったのですかと聞いているのです。 ○監督課長  特区は、東京23区と、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、福岡市、札幌市と。 ○新田委員  そういうのがあったわけですね。 ○監督課長  はい。 ○新田委員  それで、いま言われたようなことが、達成感も含めての意見だと、OKだったという ことですね。 ○監督課長  はい。 ○新田委員  それで広げようと。 ○監督課長  はい。 ○奥谷委員  旅役者というか、家族の一座で動いているのがありますが、朝8時からとか、夜9時 からといっても、時間の制限はないですよね。午後9時以降でも、午後10時以降でも芝 居があればやっている状況ですが、そういった所まで、いちいち監視するのですか。 ○監督課長  家族だけでやっている場合は別です。そういう親族だけで行う場合は労働基準法の適 用がない場合があります。それはケース・バイ・ケースで見させていただきますが、基 本的には、労働者となれば、この基準でやっていただくこととなります。 ○奥谷委員  家族の場合は構わないと、それで労使関係になると、これは適用されると。そうなる と、別の部分で児童福祉法違反になるのですか。もし午後9時以降になると。 ○監督課長  児童福祉法の話は別です。これがいいからといって、児童福祉法の適用がないという ことにはなりませんので、それは別の話です。ただ、基本的には、児童福祉法に反する ような形態については、許可の対象とならないものです。 ○奥谷委員  これは法律としてはあまり意味ないですね、午後8時にしようが、午後9時にしよう が。 ○監督課長  劇団の公演においては、現在は午後8時までしか出られませんので、まだ演目が続い ていましたら、子役の演技は午後8時までしかできず、それ以降は帰らせるしかなかっ たわけですが、それが午後9時まで可能になれば、午後9時まで出演することができ る。午後9時までにカーテンコールがあるのであれば、カーテンコールにも出られると いうことになります。そういうことでもともと特区要望が出ていたのです。 ○労働基準局長  そこの宝塚劇場ではよく子供向けのをやっていますが、そこではたくさん子役が出ま す。午後6時とか午後6時半からやって、2時間とか2時間半の公演のときに、午後8 時までしかやってはいけないということになると、その後の出番をつくれなかったり、 出番があるものは大人に代えてやったりするのです。それが午後9時までになると、大 方、公演全部を完了することができるだろうということで要望も出たし、そういうこと をやったらどうでしょうかということで、現行の許可の仕組みの中できちんとやればい いのではないかということで出しているということです。 ○奥谷委員  だけど、オペラなどは子役で出てきて、確かにカーテンコールは出てこないのは圧倒 的です、大体終わりは午後9時以降になりますから。これは午後9時でおしまいですか ら午後9時以降のカーテンコールには出てこれないということになるわけですね。 ○労働基準局長  大方午後6時とか午後6時半に始まるのが多いですから、午後9時までなら大方大丈 夫だろうということです。遅いものをいつまでも遅く、どれでも全部というわけにはい かないと思います。 ○佐藤(みどり)委員  別紙1の表を拝見して、終わりの時間が1時間延長するとなりますと、始まりの時間 は、注1の所で「午前6時となる」となっていますが、そういうことになるのでしょう か。 ○監督課長  夜を延長する場合は、朝はずれることとなります。 ○佐藤(みどり)委員  そうすると午前6時からでいい、ということでしょうか。 ○監督課長  午後9時まで及び午前6時からの形で行うということになります。ただ演劇ですの で、早朝というのはあまり考えられないと思います。 ○佐藤(みどり)委員  もちろんそうですけれども。事前の準備とかいろいろあるでしょうし。そういう時間 も、当然就業時間となるわけですか。 ○監督課長  そもそも1日7時間という限度もありますので、午前の時間もずれはしますけれど も、それはやむを得ないということと、朝からというのはあまり考えられないというこ ともありますので、そういう形で措置するということです。 ○西村分科会長  法律では「映画の製作又は演劇の事業」となっておりますが、今回は演劇の事業に限 っているということですか。 ○監督課長  はい。 ○西村分科会長  それは要望が、映画の製作についてはなかったということですか。 ○監督課長  はい。 ○新田委員  念押しですが、これは本当に舞台ですね。テレビ収録とか、その種のものは該当しな いわけですね。 ○監督課長  はい。 ○新田委員  映画、演劇というと、その範疇に入ると思ったのですが。 ○西村分科会長  今回は、映画の撮影のようなものは入っていないということですね。 ○監督課長  はい。 ○新田委員  混乱しないようにきちんと明示して提示されるようにお願いします。 ○監督課長  はい。 ○西村分科会長  ほかに何か、御意見、御質問はございませんか。ほかに御発言がなければ当分科会と して、「労働基準法第六十一条第五項の規定により読み替えられた同条第二項に規定す る厚生労働大臣が必要であると認める場合及び期間を定める告示案要綱」については、 妥当と認める旨の報告を私から労働政策審議会会長宛に行うこととしたいと考えます が、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○西村分科会長  それでは、そのようにしたいと思います。なお報告文については、私にご一任いただ くということでよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○西村分科会長  それでは、そのようにしたいと思います。ここで労働基準局長から、挨拶がありま す。 ○労働基準局長  ただいまお諮りをいたしました告示案要綱について、妥当という旨の報告をいただき ありがとうございます。労働政策審議会の運営規定により、本部会の議決をもって審議 会の議決ということにされておりますので、労働政策審議会として妥当である旨ご了承 いただいたことになります。私どもとしては、この告示案要綱に基づき、速やかに告示 の制定作業を行い、円滑な施行に努めてまいりたいと考えております。今後とも、ご協 力のほどお願いいたします。 ○西村分科会長  それでは次の議題に移りたいと思います。第2の議題は、「時短促進法について」で す。これまでの御議論を踏まえ、分科会における検討結果の骨子等の資料が事務局から 提出されております。事務局から説明をお願いします。 ○勤労者生活部企画課長  資料3を御覧ください。前回及び前々回の労働条件分科会での議論を踏まえ、資料3 にありますように「分科会における検討結果の骨子(素案)」としてまとめておりま す。  まず、労働時間等をめぐる現状と課題についてです。時短促進法に基づく労使の取組 等により労働時間の短縮は着実に進んできているところであり、総実労働時間は同法制 定時と比べ約100時間短縮している。一方で、近年、労働時間別にみた労働者分布の 「二極化」が進展し、週労働時間60時間以上の労働者が増加している。また、年次有給 休暇取得率については、引き続き低下し、47.4%となっている。こうした中で、過重労 働による健康障害が深刻化するとともに、育児・介護や自己啓発など多様なニーズを満 たすための時間の確保が求められている。このため、労働時間、休日及び休暇の在り方 を、労働者の健康確保や生活に配慮したものとしていくことが重要な課題となってい る、というのが現状と課題であります。  その上での時短促進法の見直しの方向ですが、基本的な方向性は、時短促進法につい て、労使の自主的な努力を促進するための法律という基本的な性格は保ちつつ、「年間 総実労働時間1,800時間」という目標に向けて、計画的に時短を進めるための法律から、 労働者の健康や生活に配慮した労働時間等の設定の改善を進めるための法律、「労働時 間等設定改善法(仮称)」に改正することとしてはどうかということです。  2枚目は、具体的な改正内容などについての案です。1点目は、労働時間短縮推進計 画についてです。現行の労働時間短縮推進計画に代えて、法に基づき厚生労働大臣が労 働時間等の設定の改善に関する指針を定めることとし、これに盛り込まれた内容を参考 として、個々の労使が実情に応じた自主的な改善の取組を進めることができるよう、指 針の内容を定めることとしてはどうかということです。指針の内容としては、例えば、 事業場内の体制整備等の基本的事項、長時間労働者に対する事後措置などの健康の保持 に係る事項、育児・介護や自己啓発等を行う労働者のニーズに見合った労働時間等の設 定のための事項を考えており、具体的には、フレックスタイム制度などの弾力的労働時 間制度の活用、短時間勤務制度の導入、有給教育訓練休暇の付与といったこと、それ と、計画的付与制度の導入促進など年次有給休暇の取得促進のための事項などを考えて おります。  2点目は、労働時間等の設定改善の実施体制についてです。事業主は、事業場内の体 制整備を行う観点から、現行の労働時間短縮推進委員会の設置に代えて、労働時間等の 設定の改善を図るための委員会の設置に努めなければならないこととしてはどうかとい うことです。  3点目は、労働時間短縮支援センターに係る規定の削除等です。「公益法人に対する 行政の関与の在り方の改革実施計画」等を踏まえ、指定法人及び指定法人に対する交付 金等の規定は削除することとするが、業種によっては労働時間が相当長いことや、年次 有給休暇の取得促進が課題となっている現状にかんがみれば、労働時間等の設定の改善 に向けた事業主等に対する国の支援に関して、その方策については工夫し、何らかの措 置を講ずることが必要なのではないか。  4点目は、その他事項です。労働時間の短縮実施計画等について所要の改正を行うと いうことです。  「3.その他」についてです。まず1点は、労働者側委員から、週労働時間の特例措 置及び割増賃金率の見直しについて、使用者側委員から、労働時間規制の適用除外につ いて、それぞれ意見が示されたこと。2点目として、先ほどの2の(2)の(2)の労働 時間等の設定の改善を図るための委員会を設置することが困難な事業場については、労 働者の健康増進との関連を考慮して、衛生委員会で一定の要件を満たすものを同委員会 とみなすことができることとしてはどうかということです。  骨子の素案は以上ですが、参考として、衛生委員会等の資料と、前回10月14日と前々 回9月28日の統計資料等をお配りしておりますので、それをお手元に配付させていただ いております。 ○西村分科会長  ただ今事務局から説明のあった資料をもとに、意見交換を行いたいと思います。御質 問を含めて、自由に御発言をお願いします。 ○石塚委員  現状と課題の所ですが、この資料はあくまで骨子ということだと思いますが、私ども として気になっているのは、100時間短くなったとか、時短が進んだという点です。こ れは事実だと思いますが、あくまでも一般労働者と短時間労働者との平均値だと思って います。したがって、短くなったということの要因の中には、比較的勤務時間の短い労 働者が増えてきたということ、そうした労働者を含めたアベレージだと思いますから、 その認識をはっきりと出す必要があるということです。それと、一般労働者において は、依然として時短はそんなに進んでいないわけで、総実労働時間は2,000時間程度だ と思いますから。  したがって、確かに数字を見れば時短は着実に進んでいるとなっていますが、その中 身について、短時間勤務労働者の増加という問題と、依然として一般労働者、ないしは 正社員と言ってもいいかもしれませんが、それに関しては、それほど時短は進んでいな いという認識を、報告において、認識として盛り込むべきだと思います。その方が正確 なのではないかと思います。 ○渡邊(佳英)委員  時短促進法が制定された時に比べて、やはり年間総実労働時間が100時間減ったという ことは、時短促進法という時限立法の効果があったということでありまして、これも労 使双方の努力というもので評価されるべきではないかと思っています。  そこで資料3の2の(1)ですが、時短促進法に代わって、労働者の健康や生活に配 慮した労働時間等の設定の改善を進めるための法律を創設するということについては、 この労働条件分科会でその創設を提言するということに関して反対したいと思います。 この問題というのは、安全衛生分科会で、すでに過重労働やメンタルヘルスについて議 論が行われております。そして、今現在、まさにそういう議論をしている最中であり、 従来より、従業員等の健康については安全衛生分科会で議論しているわけで、今さら労 働条件分科会で、労働時間を絡めて健康という問題を取り上げるのは、いかがなものか という意見です。 ○山口委員  新たに法律の名称を変えるというところで、「労使の自主的な努力を促進するための 法律という基本的な性格は保ちつつ」という所と、その後に、「『年間総実労働時間 1,800時間』という目標に向けて計画的に時短を進めるための法律から」という意味合 いを確認したいと思います。過去の分科会でも議論になりましたが、今後は、年間総実 労働時間1,800時間をターゲットにはしないのだという意味合いなのか、あるいは、そ の数字も含めて、計画的に時短を進めるということを、今後は目的としないという意味 なのか、ここに書いてあるフレーズの意味合いをご説明いただきたいと思います。 ○勤労者生活部企画課長  その点については、この分科会で御議論を進めていただければと思っております。前 2回の分科会で議論されたことを振り返ってみますと、1つには、年間総実労働時間 1,800時間については、労使の努力もあって、この目標に向けて総実労働時間の短縮が 進んできたわけです。他方で、資料3の1の2つ目のポツ以下にありますように、そう した中で二極化が進展していることとか、年休取得率の問題とか、過重労働に伴う健康 障害、あるいは育児・介護といった生活上の問題、そういった新たな課題が出てきてい ると指摘がなされたわけです。  そうしたことを踏まえれば、1,800時間という目標について、これからも法に基づい て自主的な取組を進めていくことよりは、そうした新たな課題に対応して、すなわち健 康とか生活に配慮した労働時間の取組を進めるべきだという御意見でしたので、資料3 の2の(1)にあるようなまとめ方をしたわけです。 ○山口委員  今後さらに議論を重ねるということですが、先ほど意見にもありましたように、時短 が進んだということについての分析といいますか、考えはいろいろあるかもしれませ ん。何度も申し上げるようですが、実質的な労働時間の短縮について私たちはまだ成果 を出していないのだという認識です。それをきちんと、先ほどありました現状と課題に 書き込むというか、より分析したものをここに書き込まないと、この時短促進法の基本 的な性格が保たれないと思いますので、その辺、再度の整理をお願いしたいと思いま す。これは意見でございます。 ○須賀委員  同様の視点からの意見です。現状と課題の1つ目と2つ目のポツは、時短促進法の見 直しの方向性を決める非常に重要な課題の指摘、あるいは、現状の分析だと思います。 そういう意味からしますと、確かにここは骨子ですから、この程度の内容の表現でも、 ある意味やむを得ないかなと思いますが、ここはきちんと、なぜそういう状況になって いるのか、特に二極分化の関係については分析する必要があると思います。先ほど紹介 しましたように、この時短促進法が制定されて、その後の取組、もちろん労使の取組が あったことも事実ですし、一定の時短が進んだことは事実です。しかし、その後、正社 員は時間延長になっているのです。就業時間そのものが延長になっていて、さらに、そ れにオーバータイムが入ってきて長時間労働になっている。  一方で、正規型、あるいは一般型と言った方がいいのかもしれませんが、正規型・一 般型ではない短時間労働者、あるいはパートタイム労働者等の比率が大幅に増えてき て、先ほど石塚委員も発言しましたが、アベレージで見て、この年間平均総実労働時間 の数字が出てきているだけで、そこのところをきちんと表現しないと、本来時短促進法 の基本的な性格として持っておりましたものが、引き継いでいけないのではないかと私 どもは認識をします。だから、ここの分析はきちんとした表現をしていただきたいと考 えます。  もう1つお願いしたいのは、先ほど労働安全衛生法の見直しについて他の分科会で検 討されているとのお話がありました。先ほどのお話とは逆にこの新しい法律の連携は是 非必要だと私どもとしては考えております。特に結果において長時間労働が身体的な、 あるいは精神的な部分まで含めた健康や、生活の面まで含めて、その影響は非常に大き いわけです。仮に時間短縮が必要ないという視点に立つのであれば問題ないのですが、 時間短縮は依然として一方で必要だと、なおかつ健康の問題や生活にかかわる問題を背 景に抱えているとすれば、そうした意味での労働安全衛生法との関係を十分に考慮した 形の中で、労働時間に関して新しい法改正をしていくため、連携をきちんととる必要が あると考えております。 ○勤労者生活部長  先ほどの渡邊(佳英)委員からの御意見の趣旨ですが、健康に関連して法律改正をす るという議論を、この場でするのは反対と言われたように思いますが、ここで議論する ことが反対というのか、この時短法を改正すること自体、中身が反対で、時短法を廃止 しろというお気持で言われたのでしょうか。手続論なのか中身なのか、もう少し、理由 も加えて教えていただきたいと思います。 ○渡邊(佳英)委員  それは手続論です。なぜかと言いますと、現在安全衛生分科会で月100時間、または 2ないし6カ月間に、月平均80時間を超える時間外労働を行った者に対して、医師の面 接指導やメンタルヘルスチェックを義務化するという議論がされているわけです。それ に先行して、このような形での法改正はいかがなものか、というのが私の意見です。 ○勤労者生活部長  確認します。今の御意見は、安全衛生関係の議論と同時ないし遅れてやるという手続 であれば議論しても構わないという趣旨でしょうか。手順だけでしょうか。 ○渡邊(佳英)委員  それであれば、安全衛生という問題をここで、先ほども言いましたが、連携するなら ば徹底した議論をするべきだと思います。この1行2行の中でやるというのは、いかが なものかということです。 ○勤労者生活部長  今まで何回か積み上げてきた議論の中で、現行の時短促進法は労働基準法のような法 定労働時間を守る守らないという議論とは別に、ここにありますように労使が自主的に 自分たちでより良い労働時間の短縮を目指すという、いわば任意の世界の話をしており ました。それで、その性格を引き継ぐということは当然合意した上で今までお話をして いたのですが、使用者側の提案としては、そういう任意的な仕組みを安衛法の義務的な 仕組みと絡めるかどうかを議論しようということなのでしょうか。それとも、やはり任 意的なものは任意的だということは譲れないということでしょうか。 ○渡邊(佳英)委員  任意的なものは任意的だということです。 ○勤労者生活部長  そうすると、基本的な性格において譲れないというものを、ここで連携して議論とい うのは、どういう趣旨なのでしょうか。それぞれ性格の違うものとして議論していただ くということで、いかに自主的に労働時間を短くするか。それを今までのように、1,800 時間という目標に向かって一律に労働時間の短縮をやってきたやり方をもう少し工夫し て、今労働側の言われたような実態分析をきちんと踏まえて、いわゆるパートが増えた から総実労働時間が減ったのではないか、あるいは本当に時間を短縮すべき方の労働時 間が減っていない中でどういう工夫をするか、という議論を進めてきたはずだと思うの です。  それと、安衛法でやっている議論、そこはある程度きちんとそれぞれの立場で整理さ れれば、それぞれの議論が可能だと思うのですが、おっしゃったような手続論はどうも 合点がいかないのです。これは事務局というよりか、むしろ労働側とお話をやってきて いるわけですから、そこのところはもう少し納得していただかないと。急に議論できな いというのも、合点がいかないのですが。 ○渡邊(佳英)委員  急に健康と生活という形で時短促進法が延長されることに対しては、もう少し議論を しなければ、急にこういう形で出るのに対しては納得がいかないということです。 ○勤労者生活部長  もう一度確認いたしますが、ここで健康と生活というのは、むしろ生活の方に配慮さ れておりまして、実質的に24時間の中で働く時間と私的な時間をどう割くかということ を考えれば、働く時間と生活時間についてよくよく考えて、労使が主体的にどう配分す るかを今後話し合っていくべきではないか。そのための場を設定する道具として今まで 議論を進めてきたという認識でありまして、時間の配分の中身については、ある意味で 象徴的な1,800時間の数値目標を置いてでも、今後、指針の中でいろいろ書いていくこ とで、より良いものにするために、もう1回しっかりと現場に即応した議論を行ってい ただくということです。もちろん十分整理することは必要だと思いますが、労働安全衛 生法の議論と絡めてこれ以上議論できないというのは、どうも生産的ではない気がして 仕方がないのです。 ○田島委員  安全衛生分科会の中で、時間外労働が100時間を越える労働者について面接を実施す るという話がありましたが、私らから見ると、今起きている過労死、躁鬱の問題、いわ ゆるメンタルヘルス問題は、労働時間との関連で言えば氷山の一角ではないかと思って います。そういう意味で、労働時間の基礎の部分をどうするかが重要です。これについ ては法律があって、時間外労働の枠組みがあって、特別条項がある。しかし、それより も大幅にオーバーしている部分が過労死やメンタルヘルスというところにつながるわけ ですから、そういう意味で、二極化が進んでいる問題についてしっかり分析し、対策を 立てていく必要があるだろうと思っています。  今日出されている第35回の分科会の資料の3−1の2頁にあるように、一般労働者と パートタイム労働者の労働時間の推移を見ても、先ほど石塚委員、須賀委員、山口委員 が主張したように、一般労働者の時間は、結局は減少しておらず、時間外労働を含める と、ここ数年は若干伸びているのではないかと思います。しっかり対策を立てて時間外 労働を削減することによって、労働時間の短縮を図るということは、やはり自分たち自 身の健康と生活の問題、あるいは、働く者としての生きがいなど、極めて重要な課題だ と思います。氷山の一角を安全衛生分科会でやっているからこちらの分科会でやらなく ていいということではなく、ここでもしっかりと労働時間について対策を立てていく必 要があると思います。勤労者生活部長が言われたとおり、この法律は強行法規ではな く、労使が自主的に取り組んでいこうというものです。労使とも労働時間をきちんと守 ってやっていこうというのは、前回、前々回で合意されている事項だろうと思います し、この場で時短促進法が期限切れでなくなるということではなくて、やはり継続性を 持って対策を立てていくことで、是非進めていただきたい。  ただ労働側とすれば、これは前回、前々回の議論ですが、いわゆる閣議決定で1,800 時間がなくなってしまったというのはおかしいと思っています。しかし、いま1,800時 間という具体的な目標値ではなく、健康なり生活時間を1つのキーワードにしながら、 是非この場で協議をしながら、継続性を持って対策を立ててほしいと思っていますの で、意見として述べておきたいと思います。 ○平山委員  意見と質問です。時短促進法自体については、この冒頭で整理されている。労働時間 短縮のための制度といったものについては、この法の趣旨が生かされて、これは労使で 努力して、かなり進んできた。国としての目標、ビジョンを掲げて、それに取り組んで きた。その評価はきちんとする必要があると思います。  先ほど渡邊(佳英)委員が言われたことについて言いますと、資料3の2枚目に指針 の内容として、例えば、こういう列挙が今回出てきているということで先ほどのような 御意見も出たのだと思います。労働安全衛生法の議論は労働安全衛生法の議論としてや るということ。時短促進法と労働安全衛生法を関連づけて議論することではないだろ う。こういう趣旨ではないかと思います。  提案されている今回の労働時間等設定改善法、これについて言えば、例えば時短促進 法が制定されたときは国際的な労働時間比較などの中で、労働者側と使用者側との立場 の違いがあったにしても、かなり共通軸があったと思います。共通軸がかなり形成され て、そういうビジョンを掲げて制度化を進めていこうと。その大きな軸に沿って合意形 成が比較的できやすかったと思うのです。  労働時間等設定改善法について質問します。具体的にこの労働時間等の設定の改善の ための指針を示して進めていこう、促進していこうというときに、いくつかの例示が出 ていますが、例えば育児・介護とありますが、これに関連していろいろな制度というこ とでしょうが、育児にしても介護にしても法制化されていますし、長時間労働の健康障 害についてもガイドラインが示されて、それぞれの企業がいろいろな対応をガイドライ ンに沿って尽くしています。いろいろな法制やガイドラインが出ていて、それに即して 労使間でいろいろな仕組みを整えてきている。そういった中で今回の改善法が出てく る。今の育児・介護の法制だとか、それに伴う制度がどう普及しているのか、あるい は、いろいろなガイドラインの浸透度、そういうのにどういう問題がある、あるいは、 もっとこういうところを進めていかなければいけないといったニーズをどう理解されて いるのか。私は、かなりのところで整えていると思いますが、事務局はこの点、どのよ うに認識されているのでしょうか。また、具体的に企業の取組を促進していくときに、 どのような後押しの仕方をお考えなのか、その辺りをお聞きできればと思います。 ○勤労者生活部長  今の御指摘は、まさに今回の改正作業の本質をついた御質問だと受け止めておりま す。それぞれの健康管理であるとか、育児・介護、諸々の労使が話し合って決めるべき 事項、これは専門の分野でそれぞれ労使が合意しながら必要な法律も作っていただき、 合意できたものを逐次実施するという、いわばサブ・コンセプトはできつつあると思う のです。典型的には、例えば次世代支援法などは少子化対策のためというか、家庭生活 と職場の生活とを併せて考えるということで、事業主としてどんなことをやるかという メニュー例を国が作って、各企業に計画を立てて取り組んでいただくということを来年 からやろうとしています。  今回の法律は、ここの名前にも出ておりますが、労働時間をどう設定するかというサ ブジェクトについて、労使が話し合う場を設定するものと考えていただければと思いま す。そういう意味では、労働時間をうまく設定しましょうという場を提供し、具体的な 内容についてはここで議論していただくという仕組みにならざるを得ないと思います。 見ていただくと分かりますように、この法律は至極シンプルなものになると思います。 目的を書いて、その目的も労働者の方々の時間配分をうまくしましょう、そして、それ にふさわしい取組を事業主にお願いする。どうやったらいいかということをお願いする というようにして、中身は今から議論して、施行までに1年ありますから議論していた だくことになると思いますが、どういう項目についてどのようにやるかを、例えば、例 示的にたくさん書いて、事業場ごとにそれぞれ合意した事項を採用し、ルールを設定し ていく。そのような話し合いの場をつくるような道具にならないかなと思っています。  その際に、今まで時短促進委員会の設置状況はどうかと、労使がやると言っても組合 のある所、ない所といろいろな実施状況がありますから、できるだけそういうものをや っていただくようにしていく、ということで努力義務として考えております。労使で話 合いをやりましょうということを合意し、場合によっては、それをやることについて支 援がいる業種、業態があれば、支援措置を何か工夫することも必要だと思っています。 これはいちばん初めに導入議論を申し上げたときに、引き続き時短促進法と同程度の支 援措置も要るのではないか、ということを使用者側からも御発言いただいております し、そういったこともやる必要があると思っています。  ただ、そうした支援は予算措置ですから、ここの法律で今やるべき対象にはなってお りませんが、そういった支援も必要ということを最終的に取りまとめる建議の中で明示 していただければ、翌々年度の予算要求等に跳ね返らせるということも考えられます。 そういう意味では、ソフトな手段を使って労使が話し合う場を世の中にたくさんつくっ ていく、時間設定の委員会を世の中に普及させるための基本的なコンセプト法だと思っ ていただければと思います。 ○尾辻氏(谷川委員代理)  今のお話について、私は同じような意見を持っております。まさにこの時短促進法に より、労働時間については労使でかなり話をしてきたというか、これまでかなり労使が お互いにかなり努力してきたのではないかと思います。ただ、現在、先ほど言われたよ うに二極化している部分もあるかもしれません。でも、一方ではかなり進んだという部 分もあるでしょう。私どもも所定内労働時間というよりは、今オーバータイムをどうす るかという問題の方が大きいです。やはり労使においては、労働時間は労働条件の基本 的な部分ですので、労働時間の問題が労使の話合いの対象から欠落するのは考えられな いと思っております。時短促進法の基本的な性格を保ちつつとまさに資料3にもありま すし、労使の取組が逆戻りすることは考えられません。  その中で、今私どもの最大の関心は、労働時間の短縮に始まった問題が、先ほど言っ たように徐々に、第2ステージに移行しているのではないのですかということです。も ちろん労働時間の短縮というものを忘れてはいけないのですが、健康の問題であった り、ニーズがいろいろと多岐にわたってきているのだと思います。先ほど平山委員も言 われたように、雇用の形態も企業によっては幾つかの雇用形態が出てきております。ま た、日本では女性の活用問題も取り組まれるべきところであり、特に既婚者を今後どう 活用していくかという問題も含めて、労働時間にどうフレキシビリティをもたせていく か。あるいは再雇用の問題でも60歳以降の人をどうしていくかという問題もあります。  そういった問題を数字だけではなく、数字も大事ですが、もう少し、そういったこと について労使の中で様々な形で議論ができるようにしていくことが必要だと思います。 何が労使にとって大事なことなのか、ということを議論できる場を、いろいろな形で設 けていただけるような、そうしたことを促進するような方向にもっていっていただきた い、というのが率直な意見です。  文面が非常にまとまっているため細かい所が分からなかったのですが、今の御説明 は、趣旨を含めて、よく理解できたと私自身は思っております。 ○新田委員  今もお話がありましたが、私もずっとこの議論が始まったときから言っているのです けれども、時短促進法の制定以降、時短に向けた取組を進める中で私たち労働側の意識 も使用者側の意識も大きく変わってきたと思うのです。お互いにぶつかり合うところも あるのですが、今も同じ場で議論をしながら進んでいこうという意識はものすごく高 く、時短の方策について何かを見つけ出さなければならない、何も見つけ出せなければ ちょっと恥ずかしいという意識がつくり上げられてきたと思うのです。  それが、今後時短促進法がバッサリと終わるというのはどういうことかと思うわけで す。それも1,800時間目標についてどんな議論があったのかも分からないのに消えてい くというのはどういうことなのか、未だに釈然としていないのです。しかし現実にそう いうことになっているのです。こうした中にあって、これまで作り出されてきた意識や 労使それぞれの立場の責任感をどうつないでいくのかということは、大変重要なところ だと思います。  ここで時短促進法が作り出してきた労使の意識を切ってしまうと、どうなんでしょう か。育児・介護休業法や職業能力開発促進法などの法律も整備されつつあるではないか ということもあるかもしれないけれども、労と使の話合いの場所をどう設定するのかと いうのは、原点であり、いちばん大きな問題だと思います。それには、私達労働側も言 っていますけれど、現実をもっときちんと分析する必要があると思います。特に私の経 験でいえば、長時間労働が諸悪の根源だと思います。先ほど健康の問題が言われており ましたけれども、離婚の問題だって長時間労働がその原因となったというようなケース にいくつか直面した経験もあります。そうした意味からも、労使の話合いの場の設定を どう続けていくのかということが大事だと思っていますので、今勤労者生活部長のおっ しゃったことを含めて、その方向をどう残すのかというか、継続するのかというところ が見えないと、無責任だと言われるのではないかと考えています。  そういう意味では、形として時短推進委員会がありますけれども、そうした場をどう 設定するのかということがなければ、時短促進法を改正する、あるいは継続する意味合 いはなくなるのではないかと思います。  また、現行の時短促進法では、労使が向き合える場の設定に加えて、支援センターと かが作られて、時短に向けた自主的な取組が難しいところも含めて支援していくことが なされてきたわけですが、今回、考えられている時短促進法の改正の中で、より広く、 よりきめ細かく、より多くの働く者、使用者双方が責任を持って取り組んでいけるよう にするための担保となる措置をどう作っていくかというのは、大変重要であり、求めら れることだと考えているわけです。そうした支援の仕組みをどう作っていくかというこ とを議論して、その上で改正の内容を決めていくことになるのではないかと思います。 僕はそうした方向に進むべきだというような気がしてならないのです。 ○川本氏(紀陸委員の代理)  前回、前々回の議論の中でも申し上げたことがありますが、やはり1,800時間とか、 画一的にこうだと、みんなこういう方向を目指せという時代ではもうなくなっていると 思います。そういう議論が前回も随分出たかと思います。やはり個人のニーズ、これは 働き方も労働時間も含めて多様化しています。一方では、産業や企業の置かれた環境も 状況も随分違ってきていまして、その意味からも、かなり多様化が進んでいます。した がって、多様化が非常に進んでいる中で、今回労使が自主的に話し合う場をセッティン グして、そこで自分たちの会社、働く者がいちばんいいと考えるところに向けて、いろ いろなアイディアを出しながら、相談をして決めていくという形がいちばん時代に合っ ているのではないかと思っています。今回、こうした考え方が出ているのは、とてもい いことだと思っています。併せて、資料には、指定法人に対する交付金のこともちょっ と書いてありますが、一部、そういう問題については今後工夫するとなっていますが、 基本的には画一的な進め方に関する部分は削除していくということになっており、基本 的にいい方向であろうかと思っています。単に使用者側の立場からという話ではなく て、そうした考え方は時代に即しているのではないかと思っています。  それから、先ほど、労働安全衛生法との関連で問題が出ていましたが、これは基本的 に全然違う視点からの法律ですし、違う視点から議論の場がセッティングされ話し合わ れている問題でありまして、そもそも連携するとか、より緊密にとかという話にはなら ないのだと私は思っています。先ほど、松井部長からも、いろいろなものがありますと いう話がありました。いろいろなものが結果的に結びついていくことはあると思います が、それぞれは違った目標、目的に向かって話し合っている。法律体系も違う、審議す るときの切り口も違うところから始めているわけですので、あくまでも切り離した議論 の中で進めていくべき問題と考えています。以上でございます。 ○奥谷委員  今の意見と同じ意見ですが、やはり各企業及び業種、業態によって、かなり違います し、まさに国際競争の中で、それぞれの企業が競争していく中で、ましてソフト化、サ ービス化という時代に入り、知的創造型の産業というか、そうした部分をもっと強化し ていく時代の流れの中で、時間という概念で縛られている業務は、これからかなり比重 が低くなっていく方向にあると思います。  1,800時間であるべしとか、時間短縮云々という画一的な固い枠組みの中で決めてど うのこうのとする時代では本当にないと思います。むしろ各企業の中で、労使で決めて いくような形に持っていく必要があると思います。厚労省は「こうであるべき」という べき論をボンと出す、これは1つの方向性としてはあるかもしれませんが、それを強制 していくという時代ではないと思います。特に労働行政に関しては、こうあるべしとい う方向性は本当に各企業、業種、業態によって変わってくると思いますので、労使の間 での解決の場の設定を後押しすることこそが大変重要なポイントだと思います。 ○勤労者生活部長  今までの議論をいくらか整理させていただきますと、労使の現場で本当に起こってい る事象をつぶさに、正確に分析して、皆様方に提示することは必要だということは、当 初労働側の委員から言われたとおりでありまして、平均値で時間が下がっているという ことだけではなくて、もっと現場の実態について、報告の中でも示せということだと思 います。それはやる必要があると思います。  その上で、それを踏まえての対応ですが、これはまた使用者の言われるように、国が 一定の方向に向かってすべてあれこれやれという状況ではないということだと思いま す。今後はますます働き方は多様化し、それぞれが多様なスタイルを選べるような条件 設定をどうするかということが必要だということも、今までの御意見を総合すると不可 欠だと思います。  その際、ただひとつ言えるのは、漠然とした方向ではありますが、厚生労働省とし て、長いスパンで健康でやる気のある労働者をいかに培っていくか、そういう視点は欠 かせないし、その基盤である家庭というか家族構成、そういったこととのバランスは是 非とも労働者のみならず使用者の方もよく考えていただきたいと思います。短期的なス パンに加えて長期的に国も含めて、各事業体が社会的責任をどうするか。そのくらいま では国として言っていいと思うのですね。それをどう実現するかは、やはり事業所ごと に雇っている労働者の働かせ方のバリエーションとか、業種や業態によってそれぞれ違 うと思います。  ですから、一律にすることは非常に難しくなると思いますが、バランスをとって、そ れぞれの立場で、本当に生き生きできる状況を作るという今、申し上げた総論について は政府として言い続けていいし、これは、言わなければ誰も言わないということかなと 思っています。そういう枠組みを設定するためのツールとしてこういった法律を何らか の形で、国会として承認していただくという段取りをお願いしたいと思います。  予算措置につきましては、ここで出てくる予算というのは、主に事業主の方に出捐し ていただくお金をどう利用するかということを基本としていますので、そのお金の効果 的・公正な配分ということも必ず頭に入れておかなくてはならない。そうすると、この お金がまさに今申し上げた目的にうまく向くようにどうセットするかということですか ら、こういった場で考え方を出していただき、それをうまく調整してくれというふうに 基本的な考え方を打ち出していただければと思います。  実はややもすれば、なるべく使用者は負担を軽減する方向で調整をということになり がちですが、出していただいているものについては、有効活用するんだという視点でし っかり議論していただければと思います。その際、今までは、こういう枠組みを作る上 で、どちらかというと、指定法人などのシステムを使ってやるという傾向がありました が、今回はそれをもう少し効率的にやるということで時短支援センターを廃止すること にしています。  さはさりながら、時短支援センターがやってきた支援の中で効果的な部分について は、何らかの形でやはり残すべき部分がありましょうから、この場でそういうことを言 っていただき、たぶん改正法の施行は平成18年4月以降、再来年ですから、来年の予算 編成の時期に改めてこういう支援が必要かどうかということを議論させていただけれ ば、手順としてもうまく乗るのではないかと思っています。その際のご議論をまたお願 いしたいと思っています。 ○廣見委員  先ほど、松井部長からの御説明で、今回の考え方のポイントの1つとしては、労使の 労働時間の設定、改善のために労使で話し合う場を作る、これが1つの核であるという ことで、その点は大変よく理解できると思います。ただ、1点、目的の関係で申します と、確かに企業の中には、労働時間の設定をいろいろな形でしていかなければならない 多様な場面があると思います。しかし、そのすべての労働時間の設定について、この場 が活用されるのかというと、必ずしもそうではないのではないかと思います。ここにも まさに書いてある2つの視点とされている「健康」と「生活との調和」、この2つの視 点に限定された労働時間の設定を適切に行っていくための労使の場を作り、それを促進 していく、このように理解していいのかと私は思っているわけです。そういう意味で は、すべてのことではなくて、目的や視点による限定というのはやはりあるのだろうと いう気がしています。  それとの関係でもう1点申し上げますと、この「労働時間等の設定」という「設定」 という意味なのですが、2頁に書いてありますが、やはり何らかのものを定めるという ことですから、労使により企業内における労働時間等に係る枠組みを設定するといった イメージがピッタリ合うのかなと思います。定められたものについての個別の対応とい うものはあまりここでは考えられないのかなという感じなんですね。というのは、そこ に渡辺(佳英)委員のご懸念もあったのかなという気がするのですが、この表現を見ま すと、「例えば」ということで、2つ書いてあります。  2つ目のポツに「長時間労働者に対する事後措置など健康の保持に係る事項」とあり ます。これは、もしも長時間労働した人についての個別の事後措置まで含むということ になってくれば、それは労働時間等の設定という概念を少し超えているようなものがあ るのだろうと思います。そうなってくれば、設定だけでなくて管理運営とか運用とか、 そういうものにまたがってくる。ですから、そこは設定にとどまっているのか、そうで ないのかということも少し整理していただいたらどうかと思います。  設定にとどまるのであれば、先ほど来いろいろお話が出ていますが、健康に係る安全 衛生分科会での検討の問題と、ここでの重複というものはなくなると思います。こうい う「健康」と「生活との調和」の視点からする労働時間等の設定ということになります ので、それはかなり限定的であり、画された一定の範囲の問題だということになりま す。このように理解ができるのかなと思っているのです。私の若干の私見を含めて申し 上げました。 ○勤労者生活部長  今の御指摘もまたごもっともでありまして、そういう話合いの場を作るということが 主目的ですから、個々の方についての措置をここでやるというところまでは、想定して いません。先ほど言われた字句等について、資料の「長時間労働者に対する事後措置な どの健康保持に係る事項」との表現が個々のケースを扱うように見えるという御指摘の ように聞こえましたので、端的に書き直せば、「長時間労働者に対する健康保持に係る 措置」と直ちに書き直すことも可能です。ここは、そういうシステムをどうするかぐら いを議論するという意味ですので。字句が多少足りなかったかと思います。 ○須賀委員  先ほどの私の発言の中で、労働安全衛生法の検討との連携ということを言ったのです が、趣旨としては、労働安全衛生法の話をして申しわけないですが、労働安全衛生法は 専ら労働者の健康、あるいは衛生を中心に、その視点から、法はどうあるべきかという 検討をしています。この時短法は労働時間がどうあるべきか、結果において、それが健 康だとか生活に影響するという、それぞれどこから切っているかの違いがありますの で、そういう意味からしたら、今回の切り口というのは、時間はどうあるべきかを定め るために、まず今の生活だとか健康がどうあるべきかということについて、労使が自主 的に話し合って、その上で時間を設定していくという枠組みです。ですから、そういう 意味からしたら、内容的には支持できるという趣旨での発言です。  もう1つ、労使の自主的な努力を支える枠組みとして、これが機能していけるように なることを望むわけでありますが、労使の自主的な努力といいましても、今日このメン バーで労働側で参加しているのは、労働組合の代表者ばかりです。ご承知のように組織 率が2割近辺で労働組合がない事業場で働く大半の労働者に対して、労使の自主努力と いうものをどう徹底させるのかというのは、非常に大事になってきますし、そういった 意味では、衛生委員会をみなしていこうというのは、1つの工夫として考えられている 部分で、なかなか面白いことを考えたなと思っています。ただ、そういう意味からしま すと、よほど労使の自主的な努力をちゃんと支えるようなシステムにしていかないと、 実効が得られないのではないかと考えますので、是非この点についてはご留意をいただ きたいと思います。  その上で、衛生委員会の性格づけなのですが、参考資料にも出ていますように、従来 の時短推進委員会と安全衛生法にあります衛生委員会は、双方若干性格が違うものにな っています。ご案内のように委員会の構成も違いますし、そこで取り扱う内容、あるい は審議することも若干違うと思われます。したがって、衛生委員会をみなすのであれ ば、従来からあった時短推進委員会の機能をきちんと担保できるような、そういう衛生 委員会をみなしていくというのか、どう表現したらいいのか私もちょっと分からないの ですが、この資料の表現を借りれば、「一定の要件を満たすものを同委員会とみなす」 ことについては、きちんと機能できることを担保するような、そういう要件を設定して いただかないと、そもそも違う性格のものを同じようにみなしていくということに私ど もは問題があると考えていますので、ここは是非きちんとしたみなすための要件整備を していただきたいと思います。以上です。 ○勤労者生活部企画課長  今の点につきましては参考で、衛生委員会と、現状の労働時間短縮推進委員会のいろ いろな機能であるとか、委員構成についての対照表を付けていますが、それを御覧いた だいても分かりますが、委員構成などにおいて違う点があるわけです。例えば、衛生委 員会ですが、議長を除いた委員の半数が過半数労働組合等労側の推薦に基づいて指名す ることになっていますが、労働時間短縮推進委員会については、議長を含めて半数につ いては労側の推薦が必要だということになっています。そういった意味で、仮に衛生委 員会を新しい労働時間設定改善委員会としてみなすことの要件としましては、今御指摘 もありましたが、労働時間短縮推進委員会について設けられた要件、即ち議長を含めて 半数については労側の推薦を受けて指名するといった要件ですとか、あるいは、そもそ もこういった衛生委員会で労働時間等の設定について議論するというのは、労働時間の 設定改善委員会が設けられていない場合ということになると思いますし、更に、労使に 自主的にこういったことに取り組んでいただくということからしますと、衛生委員会で 労働時間等の設定について議論することについて労使が一致して認めていることが要件 だと思います。例えば、労使協定で認めた場合だけみなすことができると。「一定の要 件を満たすもの」と書いていますが、これについては、いくつかの要件を具体的に定め ていくことを今後検討していきたいと思っています。 ○勤労者生活部長  今の課長の説明で足りているとは思いますが、気持の部分の説明をさせていただきま すと、先ほど申し上げましたように、労使の話合いの場を広げていくという枠組みを今 度の法律で提示したいというのが第一義的な目標です。その上で現行の時短促進法にお ける時短推進委員会の普及状況を見てまいりますと、法律制定当初はだいぶ広がったの ですが、成果とともになのか、慣れとともにというか、なかなか普及してないというこ とも見てとれます。更には、時短推進委員会の設置の届出など各種の届出の規制緩和等 を行った結果、委員会の設置数などについて正確な数字をフォローするシステムを廃止 しました。そこで、今回、やはり自主的に設定するという枠組みにしていますが、でき れば、企業の中でたくさん作られている○○委員会について、いろいろな看板を掛け替 えてでもまとまりのある議論をしていただくようにできないだろうか、というのが第2 番目の目的でした。  そこで探しますと、衛生委員会という本来別の目的を持った場で、義務的に設けられ ているものがありましたので、これならば、一定の要件の下、看板を掲げていただいて もいいではないかと考えたわけです。さはさりながら、時短促進法は任意の措置の法律 ですから、それを義務的にするのもおかしいから、こういった主体的なものが作れない 場合、つまり自らで、なかなかすぐに時間設定のための委員会ができない場合に限っ て、かつ、時間を設定するための委員会の要件を満たすことについて、関係者が合意を した場合に衛生委員会を労働時間等の設定の改善の委員会とみなすということです。そ れを一定の要件としてあります。それは構成面でも、運営面でもきちっと了解した上 で、わざわざ新しく作るよりはこれを利用しましょうという合意が取れれば、それを前 提にみなすという法律効果を与えてはどうだろうかいうのが1つであります。  それから、よく考えますと、この衛生委員会などは事業所規模が50人以上と、一定規 模以上の事業場でその設置が義務づけられているので、それ以下の所はどうかという御 指摘がありまして、実はここは先ほど来言っていますように、もしこの場で、引き続き いろんな有効な支援措置が必要であるということを御指摘いただきますならば、業種、 業態にも着目して、支援措置が必要となるのではないかと考えております。今後そうい う視点で予算措置が可能かどうかを見ながら、またしっかりとした議論をさせていただ きたいと思います。 ○小山委員  念のため確認なんですが、この参考資料にあるように現行の法の中で、労働基準法の 適用の特例が認められているわけですが、これは引き続いて、この新しい法律にもそれ を継続するということ、並びに、監督署への届出をどうするかについてはどう考えたら よろしいのか、その点を確認をしておきたいのですが。 ○勤労者生活部長  新しく設けることとしています労働時間等の設定の改善の委員会ですが、これにつき ましては現行の労働時間短縮推進委員会と同じような労使協定代替決議と申しますか、 そこにありますような、参考資料2頁目のいちばん下ですが、決議をした場合の法的効 果を認めようという考え方です。  監督署への届出については、36協定以外については免除するというのが現行の時短 推進委員会の規定ですが、そういった手続緩和も引き継いでいきたいということです。 ○原川委員  私も画一的、あるいは1つの方向で縛るよりは労使双方のニーズに基づいて労働時間 を設定していくというような方向で労使が自主的にやっていくということには賛成で す。ただ、ちょっと気になるところがありまして、資料3の1枚目の下から3行目に法 律の名前が書いてありますが、細かいことは2枚目に書いてある指針などに盛り込まれ ると思いますが、「労働者の健康や生活に配慮した労働時間等の設定」、これが目標と か方向になると思いますが、ではどういう時間設定になれば配慮したことになるのかと いうことで、逆に中小零細の企業などで言いますと、この考え方をめぐって、労働時間 の設定のときに、普段すんなりいくところで揉め事が起こる可能性もあるということ で、そこはこれから検討の段階で考える必要があると思います。  もう1つ、先ほど松井部長がおっしゃったことですが、資料3の3枚目で、「労働時 間等の設定の改善に向けた事業主等に対する国の支援に関して」という所ですが、もち ろんインセンティブ効果を与えるために国の支援について工夫を講じることは必要だと 思いますが、何よりも支援という場合には啓発、啓蒙、あるいは普及というようなこと を一生懸命やる必要があると思います。規制ということばかりではなくて、労使にそう いう認識を持たせて、そういう気持にさせないといけないと思いますので、これも是非 一生懸命やっていただきたいと思います。 ○小山委員  話を戻すようで恐縮ですが、最初の時短という問題についてなのですが、先ほど労使 がだいぶ近付いてきているような気がしたのですが、何かちょっと違うなというところ があります。要するに労働時間の短縮について、どう考えるかということです。確かに 1,800時間という目標を、いわゆる一般労働者からパート労働者全部を引っくるめて計 算をして、達成しようというような目標の立て方は、一律的過ぎるし、おかしいという のはそのとおりだろうと思うのです。しかし、今ここで、この法改正をめぐって、もう 労働時間の短縮という目標は捨てた、これからはもうそれぞれやっていきましょうと、 それぞれの状態に合わせてやっていけばいいじゃないですか、というメッセージを社会 に与えるような法改正というのは、本来ここで議論している趣旨とは違うと思うので す。  むしろ生活とか健康ということに本当に配慮しながら労働時間を適正にしていかなけ ればいけないという方向で、結果的に労働時間短縮が進むようにしていくというのが今 回目指している方向だろうと思うのですが、間違ったメッセージが世の中に伝わらない ように、この取りまとめをしていただかなければいけないと思います。その点について 是非そうした方向でのまとめ方をお願いしたいということです。 ○勤労者生活部長  ただ今の点は誠に重要な点でありまして、労使それぞれの御意見をよく咀嚼しまし て、工夫したいと思います。また本質的な議論はこの大枠をご了解いただいた後で、労 使が自主的に取決めをするけれども、さて、そうは言っても、個別の事業主が判断をす るための、いわば例示モデルを作っていくという作業、それがたぶん指針づくりになる と思うのですが、そこで改めてしっかりしたメッセージを作れるようにご議論いただけ ればと思っています。 ○川本氏  すみません、ちょっと話が戻ってしまうのですが、資料3の1で、「現状と課題」と いうことで、先ほど労側の方からはもうちょっと労働時間の中身の話を分けてというこ とがありましたが、私の方からは、先ほど言ったことと関係するのですが、ここには育 児・介護や自己啓発など多様なニーズとか、健康障害の問題が書いてありますが、労働 時間に関するニーズ、働き方のニーズ、企業のニーズも多様化していますので、もう1 つの柱としてそういうことも、もしここに書き込めるのであれば、入れておいていただ きたいというのが1つです。  もう1つは、実は「その他」の(2)の衛生委員会との関係ですが、先ほど言った安 全衛生の関係と、この労働時間の話とは、本来切り口が違うという中での措置だと思っ ています。実は非常に微妙な問題でして、これにつきましては私どももいろいろ意見を 交換してみないと、いちがいに結論を申し上げられないところでもあるのですが、た だ、あくまでもここでは、困難な事業場についてはみなすことができるんですよという ことで、自主的に判断ができるものと一応解釈をしていますが、それでよろしいのでし ょうか。 ○勤労者生活部長  はい。 ○奥谷委員  この資料3に「労働者の健康や生活に配慮して」とありますが、健康と生活だけが入 っているところが目立ってしまって、仕事の仕方にも配慮するといったことが入ってい ないのはちょっと腑に落ちないのですが。健康と生活だけに重点を置くのではなくて、 むしろ仕事の仕方がこれからいろいろ多様化するわけであって、労働時間も含めてです ね、そこを是非入れていただきたいと思います。 ○勤労者生活部長  工夫をします。 ○佐藤みどり委員  前回、前々回と私出席していませんで、皆さんは、もうほとんど議論を尽されている とは思うのですが、年間の労働時間1,800時間というこの時短促進法、これはある程度、 労側も使用者側も了解の下に進めてきたことであって、それが前提にあって、また今後 これからは現状に即した話合いを労使ともにやっていこうということの方向性ですか ら、これは私も非常にいいことだと思っています。また先ほど、労側の方の意見にもあ りましたが、組合がある所、ない所、また、事業場によって、企業の状況によって労働 者の声が反映されない所もあるのではないかという危惧の声も聞かれましたが、例えば 私どもの所で申しますと、今現在組合が2つありまして、なおかつ全く組合に所属して いない方たちもいます。  ですから、私どもの所では、3つの働き方がありまして、労使ともに話合いによっ て、働き手のほうもいろいろな働き方を望んでいらっしゃるわけですし、時間に縛られ ることなく、もちろんある程度の範囲の中で健康に配慮しつつ、ご自分のライフスタイ ルに合わせて、育児・介護等の状況にも合わせて、働き手のほうにもそれなりの働き方 というのがありますし、それは組合があるから、ないからということには関係ないこと だと思います。やはり経営者側も働く方々の声は当然拾っていかなければいけないし、 話合いの下に、了解の下にやっていくことが前提であれば、これはそんなに心配される ことなく、また経営側にも確かにいろいろありますが、今後時短促進法がなくなるから とか、あるからということに関係なく、当然労働者との議論は各事業場で進めていかな ければならないことだと思います。また、それは必然だと理解しているところが多々あ るのではないかと考えています。  少子高齢化が御存じのとおり、ますますこれから進んでいきますから、労働力がどん どん不足していって、これはもう国際競争にも太刀打ちできないような状況になってい くことも予想されますし、労働者としても、経営者としても、これは企業の存続、働く 場を提供し、なおかつ働きたい方が働けるような状況を作るということが、労働時間に 縛られずにその話合いの中でやっていくということが最善ではないかと思っています。 以上です。 ○田島委員  この課題の中に働き方云々とありましたが、働き方そのものに合わせて、これまで制 度変更を随分してきたのではないかと思います。例えば、変型労働時間制も週、月、年 間とありますし、フレックスタイムとか、あるいは企画業務型裁量労働制とか、そうい う制度的な形でこれまで進んできたと思います。しかし、第35回に出された資料の14頁 にある労働時間についての満足度を見ると、やはり長時間労働に対する不満が働く側に は多いということです。あるいは、今日も監督課長がいらっしゃいますが、不払い残業 が横行している現実とか、一部には過労死のような実態があります。  そうすると、単に働き方云々ではなくて、時間管理という側面で、この法律は継続性 を担保すべきだと思います。1,800時間の目標そのものは閣議決定でなくなったといい ますが、やはり時間管理、あるいは設定をきちっとして、今後の日本の労使があるべき 方向性を歩んで行くという意味では、指針づくりがこれから大切になるのではないかと 思いますが、単に、これから働き方が変わっていくのであるから、それを念頭に入れて というのは、メインのテーマではないと私自身は思いますので、一言述べさせていただ きました。 ○勤労者生活部長  今のお言葉に触発されて、あえて申せば、ここで議論していただいている法律は明ら かに罰則を背景としていません。やるとしても努力義務ということです。ですから、こ れは労使の方がきわめて遵法精神の高い方々であって、なかなか労働時間等の設定の改 善を図ることができない方を、どう触発すると世の中がうまくいくだろうかという視点 から、まず基本的な枠組みを作っているということを御理解いただきたいと思います。 そして、世の中の事象の中には問題である事象もありますから、それを中心にしなが ら、是正すべきものをどう取り込むかという視点も、もちろん取り込んでいきたいと思 います。  ただ、その取込み方は、先ほどから出ていますように、事業場ごとに、良識ある労使 がよく話し合って、どう工夫するかということをやっていただきたいと思います。つい つい対応が遅いということで、強制的な法律が必要であるという議論が出てまいります が、それはまた別にそういった装置が必要かどうかをしっかり議論することにしていた だいて、ここでは自主的な取組みで成果が挙がったものを引き続きしっかりしたものに 組み換えていくという視点を中心に、是非とも御理解いただければと思っています。 ○小山委員  誤解されているといけないので先ほどの話と重ねてお話をさせていただきますと、 1,800時間目標というのは、一般労働者が1日8時間で完全週休2日で、祝祭日を休ん で、有給休暇をちゃんと取得することで、1,800時間を目指そうと言ってやってきまし た。厚生労働省も進めてきたし、我々労働組合もそういう目標で進めてきました。その 目標を今回ここで変えようということではないですよね。我々もそういうつもりはあり ませんから。そこのところが、1,800時間というのが2通りの意味合いがあって、一般 労働者と短時間労働者を合わせた平均値で出す計算、実労働時間で計算する数字と、い わゆる正規従業員、一般労働者の労働時間短縮の目標として設定してきた1,800時間と、 いくつかの意味合いがその数字の中に込められているわけです。  そこは誤解のないように整理していかないといけないと思います。もう1,800時間は いいんだ、時短の時代は終わったんだという間違ったメッセージにならない方法という のは、是非しっかりと押さえていっていただきたいということを重ねてお願いをしてお きたいと思います。 ○奥谷委員  今の御意見について質問をしたいのですが。間違ったメッセージというのはどういう 意味ですか。 ○小山委員  労働時間管理を緩やかにして、国の目標の1つとして取り組んできた労働時間短縮は もうやめようよ、もうやめたんだ、もう少し、そこのところは柔軟にそれぞれの労使で 対応してくださいよというようなことが、この法改正をめぐって社会に伝わるといった ことを指して間違ったメッセージと私は申し上げています。 ○奥谷委員  一般的に使用者側がそういった捉え方をして、例えば3,000時間になってもいいとい うような発想を持つことはまずないと思うのです。むしろ効率的に生産性をどう上げて いこうかと考えているわけですから、基本的には時短の方に流れていくと思います。む しろ長時間労働については、会社側としてはどうやって短縮していこうかという方向性 にどんどん流れていくわけで、むしろフレキシブルにしていくことが重要ではないかと 思います。過労死の問題もそうですが、自分の仕事を個人でどう管理していくかという 個人の責任みたいなものを、もっと労働者側に明確に持ってもらいたいという使用者側 の意思もあるわけですから、使用者が強制的に徹底的にやらせて過労死に追い込でいる というような一般的なイメージではなくて、むしろ自分の業務をどうこなして、勤務時 間の中でどう処理していくかという自己管理能力というものも必要である、ということ を労働側もよく理解していただく必要があると思います。過労死はすべて会社の責任だ というような責任の持たせ方というのは、少し間違っているのではないかという気もし ます。 ○須賀委員  今の話は仕事の与え方の話であって、この場にはなじまないと思います。私どもの言 っている誤解のないようにというのは、1,800時間という目標値が閣議決定の中で、国 の中期的な目標値という意味では、言い方は適切ではないのかもしれませんが、公式の 場からやや下りてきた。いちばん上の方に掲げられていた数字からかなり落ちてきた。 このことが、世の中全体に向かって、もう時間短縮は要らないんですよというメッセー ジとして伝わらないようにという意味です。労働時間はやはり短い方が効率的ですし、 その短かさをどう設定するかということをいま議論をしているわけであります。労働時 間の在り方に関して、どんな働き方をするかはそれこそ完全に労使の自主努力の話です から、そこは是非区別をしていただきたいと思います。私どもがあえて発言させていた だいた労働時間の間違ったメッセージというのはそういう趣旨であります。是非御理解 いただきたいと思います。 ○西村分科会長  そろそろ時間がまいりましたので、特に御発言がなければ、今日の分科会はこれで終 了したいと思います。次回は、今回議論をいただいた御意見等を踏まえまして、最終的 な分科会の報告の案を事務局に提出していただいて、取りまとめの議論をお願いしたい と思います。最後に次回の分科会の日程等について、事務局から説明をお願いします。 ○勤労者生活部企画課長  次回でございますが、12月17日(金)午前10時からを予定しています。場所は経済産 業省の8階827号会議室を予定していますので、よろしくお願いいたします。 ○西村分科会長  それでは本日の分科会はこれで終了したいと思います。今回の議事録の署名は石塚委 員と佐藤みどり委員にお願いをしたいと思います。それではこれで終わります。どうも ありがとうございました。                (照会先)                  労働基準局勤労者生活部企画課(内線5349)