04/11/16 第9回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録          第9回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会 1  日時 :平成16年11月16日(火)10:00〜 2  場所 :厚生労働省職業安定局第1会議室 3  出席者:委員  (公益代表)椎谷座長、白木委員            (雇用主代表)奥田委員、才賀委員、下永吉委員、林委員            (労働者代表)池口委員、池田委員、笹田委員        事務局 大石職業安定局次長、吉永建設・港湾対策室長            小宅補佐、森下補佐、下出補佐        オブザーバー            職業能力開発局育成支援課 杉澤補佐            国土交通省総合政策局建設振興課労働資材対策室 藤田補佐 4:議題 :新たな建設労働対策の検討について 5:議事 ○森下補佐  ただいまから、第9回労働政策審議会建設労働専門委員会を開催いたします。本日の 出欠状況ですが、冨田委員及び寺沢委員が所用のためご欠席となっております。それで は、議事に入りたいと存じます。椎谷座長、議事の進行をお願いいたします。 ○椎谷座長  前回11月2日に開かれた会合では、「新たな建設労働対策の基本的方向(たたき台素 案)」につきまして、事務局から説明をいただいた後で委員の皆様にご議論いただいた ところでございます。特に、前回のご議論におきましては、委員の皆様から、新たな需 給調整システムに関する具体的な仕組み、さらに、新たなシステムにおける労働関係法 規の適用関係等について説明を求めるご意見がありました。これらの点を踏まえた資料 を事務局で作成していただいておりますので、まず、その資料を説明していただいて、 新たな建設労働対策のあり方について議論を深めてまいりたいと思います。それでは、 事務局より資料の説明をお願いいたします。 ○森下補佐  本日、「新たな労働力需給調整システム(案)の概要」という5枚紙をお手元に用意 しております。この資料ですが、前回の議論で、特に委員の皆様から、新たな需給調整 システムに関して具体的にどんなことを考えているのか、あるいは新たな調整システム において労働法規はどのように適用されるのかというご意見、さらに説明を求めるご意 見をいただきましたので、この点を整理し、この点を踏まえた資料を作成しておりま す。この5枚紙に即して説明をさせていただきたいと思います。  今回、導入を検討しております新たな労働力需給調整システムですが、その「背景・ 趣旨」のところはこれまでも何回もご紹介してきていると思いますが、その概略を説明 させていただきます。背景といたしましては、建設業におきまして、最近、投資額の減 少が続いておりまして、いまなお厳しい状況が続いているということで、今後、雇用あ るいは就業の場が一層縮減していくのではないかということが見込まれております。  ただ、その一方で、建設技能労働者については、過剰を感じている企業と不足を感じ ている企業がほぼ同数、一定程度共存しているような現状です。さらに、高齢化が進展 しておりまして、建設技能労働者が総体として今後不足に転じるのではないか、という ことも見込まれておりまして、今後、建設業に必要な技能労働者を業界内に確保し続け ていくことが喫緊の課題となっております。さらに、ここには書いておりませんが、構 造改革特区の要望も寄せられているところです。  こうした状況を踏まえまして、雇用管理の改善と一体的に労働力需給調整システムを 新たに導入することが必要ではないか。また、そのために、雇用の安定を図るための緊 急避難的、かつ限定的な仕組みを導入していくことが必要ではないかということを前回 の中でたたき台としてお示しさせていただいたところです。  次に、「新たなシステム(案)の概要」についてご説明いたします。説明の順序が前 後いたしますが、5枚目の紙の横表をご覧いただきたいと思います。「建設業務労働者 就業機会確保事業(仮称)の概要」ですが、大きく分けまして、左側部分に、事業主団 体が改善計画を作成する第1段階の取組みを記載しております。それに引き続きまし て、右側部分で事業主団体の構成事業主が許可を受けて事業に取り組むという、その左 側と右側という2段階の構成をとっております。  最初に、左側の部分ですが、この事業の仕組みとしては、初めに事業主団体が改善計 画なるものを立てるところから出発しております。その改善計画ですが、(1)から(5)の 事項を記載していただくことになっています。その中で(1)から(3)の所は必須の部分で す。雇用改善あるいは安定の目標、実施の時期、雇用管理改善の内容、この3つにつき ましてはこの計画の中で必ず書いていただきます。その上に付け加えて、(4)に書いて あるような建設業務有料職業紹介事業に関する事項、あるいは(5)に書いてあるような 建設業務労働者就業機会確保事業、この(4)(5)につきましてはいずれかを必ず記載して いただく構成をとっております。  そのうちの(5)の所ですが、この就業機会確保事業というのは、事業主Aの送り手側 から事業主E、F、Gの受け手側に対して、どのような時期にどのような数の労働者を 送るか、あるいはその職種は何であるかという組み合わせについて、個々に記載をして 計画に添えていただくということです。  この改善計画は、いま申し上げましたように、単に労働力の需給調整ということでは なくて、全体として地域の雇用の安定に資するものであるということです。したがいま して、その計画が、その地域の雇用の安定に一定の効果がある、というように判断され た場合には大臣の認定を受けることができる仕組みになっております。先ほど申し上げ ましたように、この事業主Aの出し手側と事業主E、F、Gの受け手側を計画の段階で 明記させる仕組みでありまして、これによって出し手側、受け手側のいずれの中にも不 正な者が参入してこないかがチェックできるとともに、あらかじめ早い段階から、行政 のほうでもどういう者がこの計画に入っているかということを把握できますので、その 把握に基づいて機動的な対応をとることも可能になります。以上が左側の部分で、これ が第1段階の取組みの仕組みです。  それに引き続きまして、右側の所に移ります。この計画を立てた事業主団体の中で、 その構成事業主が実際の事業に取り組む場合には、さらに大臣の許可をとっていただく ことになっております。これは、その個々の構成事業主が、事業の実施主体として適正 な能力を備えているか、例えば個人情報の管理が適正にできるかどうか、適正の事業の 実施ができるかどうかというところをチェックするものでありまして、このチェックを クリアーしてはじめて、右下に書いてある「建設業務労働者就業機会確保事業の実施」 ということができるわけです。  この事業の実施にあたりましては、計画を立てた認定団体から指導・援助という関与 が行われます。ただし、事業実施の過程の中で不適切な行為が見受けられた場合は、行 政から指導、改善命令、あるいは、行為の性格が大変な悪質な場合には認定の取消とい うことで対応してまいりたいと思っております。この認定の取消というのは、その左側 に紹介しているような改善計画の取消でありまして、この計画が取り消されると、計画 に参加している事業主はすべからくこの事業は実施できなくなるという効果を受けるこ とになります。いわば、その違法行為が見つかった場合にはその計画自体が取り消され て、その計画に属している事業主全体の行為がそこでストップしてしまうこともあり得 るわけです。このように、左側の部分と右側の部分の2段階の規制を設けた仕組みとな っております。以上が就業機会確保事業の概要です。  1枚前にお戻りいただきたいと思いますが、需給調整システムの一環として、建設業 務有料職業紹介事業という仕組みの導入も併せて検討しておりますので、これも簡単に ご説明させていただきます。この事業の仕組みも、先ほど申し上げました就業機会確保 事業と基本的な骨格は同様です。まず、左側で、事業主団体が改善計画を作成する。そ の計画が適正であると認められた場合に、はじめて右側に移りまして、認定団体あるい は事業主団体が個々の有料職業紹介実施に取り組めるという構図になっております。  左側からまいりますが、事業主団体が改善計画を作成する。その計画の中では、これ も先ほど申しましたように、目標なり実施時期なり、あるいは雇用管理改善の取組み内 容を書いてもらいます。その上で、(4)あるいは(5)、有料職業紹介事業あるいは就業機 会確保事業について取り組んでいただく。こういう計画の中身が適正と判断された場合 には、右側に移りまして、計画を立てた団体が主体となって自ら有料職業紹介事業に取 り組むことができるという体系になっております。  具体的に申しますと、その認定団体内において、事業主Aと労働者dを結び付けるよ うな事業。あるいは、網掛けしている所が建設業ですが、建設業内において、認定団体 の内外を結ぶような取組み。あるいは建設業の外にいる者(労働者F)でも、建設業に 対して職を求めようとする労働者Fと建設業の中の事業主Bを結び付ける事業を実施す ることを考えております。もちろん、この事業の対象となる労働者は、いちばん下に書 いてありますように、常用の建設労働者を想定しております。以上が、有料職業紹介事 業の概要でございます。  大変申し訳ないのですが、再度、いちばん最初に戻っていただきまして、若干重複す るかもしれませんが、新たなシステム案の概要を説明させていただきます。1頁の(1 )です。「厚生労働大臣による建設雇用改善等計画の策定」です。これは、現行の建設 労働者の雇用の改善に関する法律の中におきまして、中長期的な施策の方針を定めるも のとして建設雇用改善計画というものを策定しております。現在は、平成13年に第6次 のものを策定しておりまして、これは5年置きに立てることになっております。平成1 3年度に立てましたので、平成13年から平成17年までの計画を立てているわけですが、 次期の計画につきましては、先ほど紹介した就業機会確保事業を含める雇用の安定に向 けた取組みに関する重要な事項を、中長期的な施策の方針である建設雇用改善計画の中 にしっかりと位置づけていくことが必要ではないかという提案でございます。  (2)の「事業主団体による改善計画の作成と大臣の認定」ですが、これは、最初に 申し上げました就業機会確保事業あるいは有料職業紹介事業の前提として、まず、その 事業主団体がその地域においてどのように雇用の安定を図っていくか、ということにつ いてしっかりとした計画を立てていただくということです。その計画の中身は、まず、 雇用管理の改善を図る取組み。それに加えて、就業機会確保事業あるいは有料職業紹介 事業のどちらか、あるいは両方ですが、こういうことを一体として実施することを計画 に盛り込んでいただく必要があります。そうした上で、その計画が雇用の安定に資する と判断された場合には大臣の認定を受けることができるという仕組みでございます。  その認定を受けた上で、(3)あるいは(4)ですが、(3)の場合には有料職業紹 介事業に取り組むことができるのですが、ここも、計画の認定を受けたから直ぐできる というわけではなくて、さらに加えて、(3)で言いますと、事業主団体が職業紹介事 業を実施するにあたりましては、計画を立てた上で厚生労働大臣に許可の申請を行うと いうことです。その上で、事業を適正に実施する能力があると認められる場合には、そ の事業に着手することができるということです。もちろん、その事業の実施にあたりま しては、不適切な運営が見られた場合には指導なり事業停止命令なり、あるいは許可の 取消なりを機動的に行政側として対応してまいりたいと思っております。  (4)です。これも、(2)の所で申しました計画の認定を受けた上でこういう事業 に取り組むことができるという体系をとっております。認定を受けた事業主団体の内部 において、その構成事業主が就業機会確保事業の実施に着手することができるというこ とです。詳しく申しますと、構成事業主が常用の建設労働者を他の構成労働主に送出 し、その事業主の指揮・命令関係の下で就労する機会を与えるというものです。もちろ ん、これも(3)の有料職業紹介事業の実施の場合と同様に、事業の実施につきまして 不適切なところが見つけられた場合には行政から指導、事業停止命令、あるいは許可の 取消という措置が機動的に講じられるということです。  以上が仕組みの概略ですが、前回の議論の中で、新しく導入する仕組みについて労働 保護法規の適用関係はどうなっているのか、というご意見がありましたので、参考とし て整理させていただきました。今回の仕組みにつきましては、送出事業主と労働者の間 に雇用関係が成立しておりますので、労働保護法規は全面的に適用されるものとなって おります。  (2)の使用責任の帰属ですが、使用責任がどのように帰属するかということを整理 させていただいております。今回の仕組みにおきましては、送出事業主と労働者の間に は雇用関係が成立している。その一方で、受け手側の事業主と労働者の間には指揮・命 令関係が成立するということです。こういう関係を踏まえて、使用責任がいくつかの事 項に分かれておりまして、その事項ごとに判断する必要があるだろうということです。 例えば、強制労働の禁止であれば、それは出し手側、受け手側、両方の事業主に責任が 帰属するのではないか。賃金の支払いであれば、雇用関係を成立させている送出側の事 業主。労働時間であれば、指揮・命令関係にある受入事業主。元方事業主の講ずべき措 置等は、指揮命令関係を有している受入事業主。雇入れ時の安全衛生教育につきまして は、雇用関係を有している送出事業主。危険有害業務就業時の安全衛生教育につきまし ては、指揮命令関係を有している受入事業主。健康教育等につきましては、雇用関係を 持っている送出事業主と指揮命令関係を持っている受入事業主双方の責任に帰属すると いう関係になっております。  (3)ですが、これは、労働者を送出した後にどのような労働条件が具体的に設定さ れているかということです。(1)の労災補償ですが、基本的な考え方としては、送出側 の事業主は自己の命令で受け手側に労働者を送出しているという事情を踏まえますと、 送出事業主側が補償する責任を負うのではないか。労災保険料も送出側が負担すべきで はないか、という整理をしております。(2)は賃金です。賃金は、指揮命令関係がどこ に所在するかということとは関係なく、その雇用関係が成立しているところに発生する ものです。したがって、雇用主である送出側の事業主が全面的に責任を負うという整理 ができるのではないか、ということを記載しております。  以上、新たな労働力需給調整システム案の概要を説明させていただきました。それ以 外に、前回の会合の中で、建設業界における過不足感に関するデータを示してほしい、 というご意見もありましたので、本日、参考に2枚程度付けさせていただいておりま す。ご参考までにご覧いただきたいと思います。説明は以上でございます。 ○椎谷座長  ただいま説明いただきました新しい需給調整システム、そのほかにもいろいろとご意 見もあるかと思いますが、ご質問、ご意見のある方はご自由に発言いただきたいと思い ます。 ○池田委員  11月2日に、文章化ではなかなか難しいので、図表というか、スキームを出してほし いということで今回出てまいりました。いちばんいいのは、5頁の図表の中にありまし た「建設業務労働者就業機会確保事業(仮称)の概要」が出ております。おさらいです が、この機会確保事業は労働者派遣法ではやらない、建設雇用改善法の中でやるのだ、 ということは11月2日にたたき台の中で確認したところです。  そこで、ご質問をさせていただきます。たたき台の中で、緊急避難的かつ限定的な形 で、地域における雇用の安定を図る手法であるというように明確に位置づけをされまし た。第1にお聞きしたいのは、事業主団体とは何なのか。私は、社団法人建設業協会を 指しているのではないかと思いますが、そのほかにそういう団体を入れるのであるのか ないのかということを質問させていただいて、それからまたご意見等を言いたいと思っ ております。 ○吉永室長  ご指摘いただいた点がいくつかございます。池田委員ご指摘のとおり、現在考えてお りますのは、労働者派遣法ではなく建設雇用改善法でやることで考えております。ご指 摘のように、あくまでも緊急避難的な措置として、地域の雇用の安定のために導入する ということで考えているものでございます。  具体的なご指摘として、事業主団体の範囲についてのお話がありました。地域におい て、建設業の事業主団体として主なものと言えば、都道府県単位の建設業協会がありま すが、まさに、この部分について積極的な役割を担っていただけるのではないかと考え ております。具体的な運用については、全体の建設業協会そのものでやるのか、あるい は支部単位でやることもあり得るのかと考えておりますが、いちばん念頭に置いている のは都道府県の建設業協会でございます。  ただ、一方で、そのほかの団体として事業協同組合などもあるわけです。正直申しま して、事業協同組合も、玉石混淆ということがあろうかと思っていますが、実際に活動 し、積極的にこの事業を担い得る能力を持っている所もあるのではないかと考えており まして、一定程度の要件をかけることが必要ではないかとは思っておりますが、その一 定の要件を満たしたものについては事業協同組合についても認めていきたいと考える次 第です。 ○池田委員  やはりそうですか。事務局にお聞きしますが、事業協同組合は全国でどのぐらいあり ますか。 ○吉永室長  都道府県単位での認定になっておりますので正確な数は把握しておりませんが、おお むね1,100から1,200程度あるものと理解しております。 ○池田委員  11月2日にたたき台の中の具体的な対応の方法でやりましたが、このシステムは悪質 なブローカーの介入をやめさせる。暴力団の介入も阻止するのだと。そのことによって 賃金の中間搾取等々も防止できるのではないか、ということになっていたわけです。そ うすると、確かに、縛りをきかせるといいながらも、事業協同組合というものは、悪質 なブローカー、暴力団が介入する要素がたくさん出てくるのではないかと思っておりま す。それから、今ある事業協同組合、これから新しくできる事業協同組合というものも 考えなければいけないのですが、そういう縛りはどのようにするのか。 ○吉永室長  一つ申し上げられるのは、休眠している事業協同組合については一切認めることはで きないということです。ですから、いわば派遣をやるために事業協同組合を使うような ブローカーの介入は阻止しなければいけないと思っております。事業協同組合は、正直 申しまして、設立は比較的容易です。ただ、設立に伴いまして、定期的な事業報告を主 務官庁に提出しなければならないという規定があります。当然、そういうものについて 一定の期間提出していることが実際に事業を実施していることの前提となりますし、ま た、継続して一定の事業をやっているということは、その事業報告書等でどういう事業 をやっているのかということを見ることは可能だと思っております。  ですから、実際に事業協同組合としての実態がある、事業協同組合としての福利厚生 事業やその他の事業をやっている、ということが前提であって、今回のスキームを活用 するためにだけ使われるのではない、ということを実質的に判断した上で、問題がない と考えられる所について事業を認めるということを考えている次第です。 ○池田委員  事業主団体とは何者かというのはわかってきた。社団法人建設業協会と、事業協同組 合等も参入させる、1,100ぐらいあるということですが、私は事業協同組合については 大変危惧をしているところです。それと同様に、今度は、事業主団体の構成事業主につ いて、右側で大臣の認可を取ってもらうことになるわけです。先ほどから言っています が、悪質ブローカーの介入や暴力団の介入は、この構成事業主の認定のときにどのよう な縛りをすればいいのか。確かに、事業団体は大臣が認定をした。これは合格として も、中身の構成事業主が暴力団とかかわりがあったり、偽って仮の構成事業主になって いたり、いろいろなことがあるわけです。あるいは、前科を持っていたりする。そうい う縛りを大臣許可の中でどのようにしていくのか、次回辺りに出てくるのかわかりませ んが、素案がありましたら聞かせていただきたいと思います。 ○吉永室長  ご指摘の点はもっともな点だと思っております。そういう意味で、単純な事業主に許 可をして事業をさせる形ではなく、その前段階にワンクッション入れる。事業主団体の スクリーニングを入れて、少しでもブローカーが入ってくる可能性を排除するというの が第1段です。  ご指摘の第2段の許可の段階でどういうものを見るのか。まさに、事業主がブローカ ーではないということをどう見ていくのかというのは非常に重要だろうと思っていま す。詳細につきましては次回にお出ししたいと思っていますが、例えば、役員などに一 定の暴力団関係の犯歴がないことを見るのは当然ですし、また、実際に、これは人を送 り出すことが事業ではなく、あくまでも、建設業をやっている中で付随的に雇用の安定 のために人を出すということです。そういう意味で、例えば、新しく会社をつくってそ の人を送り出したいというものについては排除したいと考えております。また、自分で 実際の建設業をどのぐらいやっているのかというところを見て、送出のための会社では なく、あくまでも、建設業の許可を持って建設業を実施しているということをきちんと チェックした上で、その上で雇用の安定のために常用労働者を他の企業に送り出すこと をやるのだ、ということをきちんとチェックする体制をつくりたいと考えている次第で す。 ○池田委員  いま言われた、構成事業主の条件で、許可業者に与えていく、許可業主だから大丈夫 だ、というのは危険ではないかと思います。室長も知っているように、不景気で倒産を する、1年間に5,000件以上というのが5年間ぐらい続いているのですが、許可業者は 56万で変わらないのです。ですから、潰れた所がまた2つ3つつくってしまうわけで す。そういう中に悪質なブローカーなどが入ってくることが考えられるのではないか。  もう1つ、非常に問題があるのではないかと思うのは、おくゆかしい事業主A、右側 にE、F、Gとありますが、極端に言いますと、この事業主Aが本来の現場一品生産、 受注事業がなくて手配師的に送り出すばかりになったときに、それでもオーケーという ことも考えられるのです。そういうときのチェックはどうするのですか。 ○吉永室長  一つ典型的に申し上げられるのは、事業主Aが建設業務労働者就業機会確保事業を実 施できるのは、あくまでも、事業主の改善計画に基づいて、その計画の期間の範囲でし かできない。この計画期間が満了した場合について、仮に引き続きやろうとするのであ れば改めて許可を取っていただかなければならないということで、その許可の段階で再 度精査をするということがありますので、この段階で確実に落とせるだろうと。  あるいは、それを待たなくても、毎年度、事業報告等々の提出を求めますので、そう いうものを見れば実際の業務量等がわかりますので、その上で問題があるものについて は指導をする。指導に従わなければ改善命令を出す。改善命令で利かなければ許可を取 り消す。あるいは、そういうことを指導するという形で団体にもご協力をお願いしてい るところですので、団体にもお願いをする。団体が動かなければ団体の計画そのものの 認定を取り消してしまうということで、いわば、業界の共同責任としてきちんとした事 業を実施していただくということを考えている次第です。 ○笹田委員  私はワンテンポもツーテンポも遅れていると思うのですが、これまで、特区の関係を 含めて、だからこの委員会でもやるのだということを言われたと思うのですが、私自 身、特区の仕組みがわからない。それで、そこからご説明願いたい。特区というのは、 ある意味で無法地帯なのか。つまり、派遣法という縛りがある中で、特区は何をやって もいいということなのか、そんなに権限を持っているのか。権限はどこで持っているの かわかりませんが、その仕組みを教えていただけないかと思います。今までの流れの中 で、何となく「特区、特区」と言ってきたのですが、まず、その中身について説明をし ていただけないかと思います。 ○吉永室長  特区につきましては、新聞誌上でも出ていますので当然のような形でご説明をしてお りまして、改めて説明しなかったことを申し訳なく思っております。今は詳細な資料を 持っておりませんが、基本的な枠組みとしては、法律に基づいて内閣府の中に特区の本 部を設けて、そこに対して、市町村、都道府県、あるいは民間の方が、法律でできない ものをこういう形でやらせてほしい、という申立てをすることができる。そして、その 特区の事務局が各省庁に割り振りをする形で、それが具体的に履行可能かどうか、とい うことを照会する。最終的に、各省庁が履行可能であると言えばそれで済むわけです が、履行可能ではないと言えば、本当に履行可能ではないのかということで、特区の本 部長は内閣総理大臣ですので、総理を含めて、やるのかやらないのかということを判断 することになります。  特区というのは、今の規制でできないことを地域レベルでやるということで、地域の 活性化という面もありますが、ある意味実験的な面があります。全国展開するには問題 があるかもしれないので、小さいエリアで実際にやってみて、問題があればやめればい いし、問題がなければ全国展開しましょうと。そういう意味で、むしろ、問題があるも のこそ特区に馴染むのではないかという基本的な考え方があります。例えば、長野県の 小谷村の要望は労働者派遣法の労働者派遣をやりたいということですが、小谷村なら小 谷村でそれを認めてしまう。これで問題がなければ、おそらく、周辺の地域もやりたい と言いますから、地域を広げる、最終的には全国展開をする動きになる、ということだ ろうと考えている次第です。  正直申しまして、需給調整という観点からすると、非常に小さいエリアで問題が生じ るのかどうかという点からすると、おそらく、それほど大きな問題は生じないことも、 ある程度想定されるのではないか。ただ、全国的に展開されてしまうことがそもそも適 当なのかということを考えると、産業ブローカー等が入ってくることが考えられますの で、そこは非常に慎重に考えなければいけないだろうと。  そういう意味で、私どもとしても、一つの選択として、特区を認めて実験的にやると いう選択肢はあったわけですが、そういうことはとるべきではないと。むしろ、需給調 整のあり方として全国的に通用するものであって、かつ問題のないもの、そして今まさ に建設産業が必要となる部分に限る。そういう意味で、緊急避難的な地域の雇用の安定 を図るという目的で今回のスキームをご提案している次第です。ですから、繰り返しに なりますが、特区は問題のあるものを実験的にやるという色彩からすると、かなりの程 度のものが導入される可能性があるということです。その点について、正直申しまし て、私どもも危惧している次第です。 ○笹田委員  つまり、要望が出されますね。そうすると、内閣府に寄せられる。それを内閣府が、 厚生労働関係だったら皆さんに相談があるという流れになるわけですか。そこでいろい ろなことがあるのでここで議論をしているということになるわけですか。ただ、どうな のでしょう、内閣府の権限と行政に携わる方の立場の関係はどっちがどうなっているの でしょうか。 ○吉永室長  内閣府は内閣府の所掌事務がありますし、厚生労働省は厚生労働省の所掌事務がある ということで、一義的には、厚生労働省所管部分については厚生労働省の見解を尊重し ていただきたい、というのが私どもの立場でございます。ただ、内閣府は、各省庁の事 務をいろいろな形で調整するという総合調整機能を持っております。しかも、特区の関 係では、特区の担当大臣まで置かれているということで特区を専門に対応しているとい うことで、大臣同士の話合いにもなるというものです。さらに、特区の本部の長は内閣 総理大臣ですから、そういう意味で、私どもがノーと言えば政府全体として100%ノー が履行できるかといいますと、そういうものでもなく、総理の政治的な指揮の下に物事 が進んでいくということでございます。  そしてまた、今の政府の基本的なスタンスというものは、規制改革を進め、構造改革 を進める。特区については最優先で対応するというスタンスです。そういう意味で、正 直申しまして、私どもが適当ではないと言ったからといって、それがそのとおりになる というのは非常に難しい情勢にあるということが1点です。  また、特区そのものが、私どもの見解を否定するものではなく、ともかく実験をしよ うという考え方に立ちますので、そういう意味では、基本的な考え方として、特区に導 入するにはかなり説得力のある材料がないと難しい、というのが実態ではないかと考え ております。 ○笹田委員  そうなりますと、当然、厚生労働大臣も知っていらっしゃるというのは当然の話です ね。前回は坂口さんでしたよね。そして、この委員会絡みになろうかと思うのですが、 坂口元大臣は、こういう委員会がいろいろありますが、議論しなさいということを言わ れてきたわけですよね。 ○椎谷座長  私が言うのはおかしいのですが、笹田委員のご質問は、先ほど、特区の問題があるか らこの委員会を開かれたのかと言われたので、それと関連してお答えになるといいと思 います。 ○吉永室長  坂口前大臣は、前の特区担当の大臣と大臣接衝を1回やっております。その後、検討 したらどうかという指示は受けております。ただ、全体としての特区の流れの中と実際 の建設業の実態を総合的に勘案して、現在、私どもで審議会に検討をお願いしている次 第です。 ○笹田委員  大臣とは関係ないと。つまり、そういう動きがあるから、ある意味では自主的にやっ ているのだということですか。 ○椎谷座長  私の理解では、いちばん最初にこの委員会を開いたときに説明があったのは、特区も 1つの要素である、ただし建設業そのものの問題がほかにもたくさんある、それらを総 合的に勘案してこれからの新しい建設労働対策を考えたい、という趣旨でこれが始まっ たのです。ですから、特区の問題も1つの要素であると理解してこれを始めたと思いま す。 ○吉永室長  座長ご指摘のとおりでございます。本日の議題は、この需給調整の関係1つになって おりますが、4項目お願いしているわけでございます。この項目も1つですし、全体と しての景気が回復する中で建設業だけが取り残されているという状況の中で、積極的な 雇用対策あるいは新分野進出等を実施していく必要があるということ、それを総合的に 勘案した形で審議会の議論をお願いしている次第です。 ○笹田委員  何となくわかりました。もう少し突き詰めて言えば、大変悪いのですが、仮にここで 結論が出なかった場合には、特区との関係ではどういう動きになっていきますか。 ○吉永室長  正直申しまして、結論が出ないということはなく、一定の結論をいただけるものと確 信している次第ですが、万が一、ご指摘のような事態になりますと、先ほど申しました ような特区についての政府部内の調整の機能が働いて、実験的な形での全く別なスキー ムの導入もあるのではないかと考えております。 ○笹田委員  つまり、建設における派遣法はそこで突破される。特区でそこが認められるという話 になってしまうのですか。 ○吉永室長  特区でやることになれば、まさに、労働者派遣法の特例としての労働者派遣が導入さ れる可能性はあると思っております。 ○椎谷座長  特区で要請があるけれども、そのとおりにやるかどうかというのは調整事項ではある のでしょう。 ○吉永室長  座長ご指摘のとおりでございまして、調整事項ではあります。ただ、まさに、特区を 実現するのは基本的に特区の要請に従った形になりますので、この委員会でこういう案 がいいということを提案しなければ、ほかに提案がないという形になりますので、いち ばん単純化された例としては、労働者派遣法の適用除外業務について例外的な取扱いが されるという、法的な手当が半自動的になされてしまう可能性はあると思っておりま す。 ○笹田委員  わかりました。我が内部でも、特区の関係が理解できない、ということもありまし て、再度確認をさせていただいたということでございます。 ○椎谷座長  私が聞くのもおかしいのですが、特区もいまのところ2つ出ていますよね。例えば、 長野県と岐阜県がありましたけれども、特区でも違うことを言っていますよね。それを 認めるとすると、別のものを2つ認めることになるのですか。 ○吉永室長  それぞれ、特区で特別な手当をする形になれば別のものになると思っております。 ○池田委員  11月2日に素案の中で確認したところの1つですが、建設業における需給調整システ ムについて基本的な考えという形で派遣法ではしないのだと。新しく雇用改善法の中で やると。その労働者保護の観点で万全を期するという文章がありました。そこで、先ほ どの5頁の右側のいちばん下にあるのですが、「対象となる労働者は常用の建設労働者 (現場作業者)」と書いてあります。具体的には、これはどういう業種があるのかとい うことが1点です。  2点目は、送出事業主の所で雇用関係が結ばれている。甲という労働者でもいいと思 います。そこで結ばれている雇用契約では、受入事業主の所には社内規定、就業規則の 中に何も書いていないことになります。そうすると、「俺、嫌だよ。あんな送り先なん か行くのは」と言う労働者も出てきますよね。そのときには、差別というか、送り出す 側の事業主が差別をしたり、あるいはリストラ、クビ切りをしたり、いろいろな攻撃が かかってくると思います。これはどうなるのかというのが2つ目です。  3つ目は、先ほどからのスキームの中にはないのですが、最後の労災のことで森下補 佐が言ったことですが、2頁から3頁にわたるのですが、ここはどうもおかしい。建設 業のシステムというのは、ご存じのように重層下請になっている。その重層下請の中で 元請責任が非常に重要視されています。ところが、1頁から2頁を読みますと、「自己 の命令で当該受入事業主の元へ労働者を送出したこと、受入事業主の事業場において送 出労働者の安全衛生が確保されるよう配慮する責任がある」という形で、最後には、 「保険料も送出事業主が負担する」となるわけですね。これはおかしいのではないか。  確かに、雇用関係は送出事業主とある。ところが、今度は、受入事業主の所に行く。 そうすると、2つの問題が出てきますよね。1つは、受入事業主が指揮命令を甲という 労働者にする。その労働者は指揮命令に逆らえませんから、受入事業主が元請している 現場で働いて怪我をした。その場合にはどうなるのか。保険料は送出事業主が負担する ことになっています。受入事業主で怪我をしたのだから、受入事業主の保険を使って、 手続も全部やって、補償も基準監督署に行ってきちんとしてもらう。もう1つは、受入 事業主が下請であって、元請で怪我をした場合、すなわち、元請事業主の現場で怪我を したのだから元請の所の労災を使い、手続もしてもらう。これが長年の建設業のあり方 なのです。つまり、元下関係がきちんとしているのです。ところが、これだと元下関係 が完全に崩れてしまう。全建総連は大変心配しております。室長、これについてよろし くお願いします。 ○吉永室長  1点目の対象の職種についてですが、考えているのは技能労働者に限っております が、基本的には建設業の現場作業の全職種を考えております。2点目の、実際に送出の 対象になることを拒否することができるか、という点ですが、他の事業主の指揮命令を 受けて就業するということは、基本的な労働条件の重要な変更になります。そういう意 味で、当然に本人が同意しなければそういうことはできないということで、そもそも、 建設業務労働者就業機会確保事業の対象労働者になるためには、その労働者がそれにつ いて同意をすることになろうかと思います。したがいまして、その同意の範囲によって 一定程度留保するということも当然可能だろうと思っております。ご指摘のような事態 について拒否することはできますし、契約の変更を拒否したからといって、差別的な取 扱いが行われることになると、それは一般的な意味で問題だということになるのだろう と思っております。  3点目の労災の問題ですが、これは非常に難しい問題だと思っております。ご指摘の ように、建設業界において元請が重要な機能を果たしてきた、請負という形で機能して きたことはご指摘のとおりだと思っております。そういう意味で、労働安全衛生法の考 え方からすると、今回の案でも、使用したことについての責任は受入れ側の事業主にか かるということで考えておりますし、その現場で働いていたので元方の責任も当然にか かるということで、安全衛生体制の意味では、まさに、現場における責任がかかってく るということになろうかと思います。  一方、労災保険という意味で言うと、労働者の側から見れば、実際に保険料は誰が払 ったかということではなく補償の対象になるわけです。ここに書いてあるのは労災保険 の保険料を誰が払うべきかという議論でございます。もちろん、建設業で一般的に取り 行われているのは、その請負事業の中で元請が一括して労災保険の適用事業主となり一 括で支払うという形が通例で、これはご指摘のとおりでございます。  しかしながら、今回のスキームで、実際に雇用主が誰かということを考えた場合に、 雇用主はその請負の体制の外にいるわけです。通常の請負い事業の一括の場合では、そ の請負事業主は元請との直接の契約に基づいて一定の行為を行う。その縦系列の中に入 っているものについて、労働保険の徴収の関係の手続ですが、請負事業の一括という特 別なものがある。今回の場合は、その請負の枠の外にいる事業主が労働者甲を送り出し て請負の現場で就労させるということです。この場合に、ご指摘のように、元請側に支 払わせるという考え方も成り立ち得るのだろうとは思っておりますが、正直申しまし て、実際に雇用をしている、労災保険の保険料の支払いの義務は基本的には雇用契約に 基づき雇用主の安全配慮義務の反映したものだろうと思います。  しかも、他の事業所に行って就労をさせるのは本来の事業主がやっているということ で、自己が指揮する場所ではない所に自分の労働者を送り出すという、ある種、特殊な ことをやらせるわけです。そういう意味で、安全配慮義務なり雇用契約上の責任は送出 側に100%負わせるべきではないか、という発想に立って今回の案を作成した次第です。  もちろん、建設業の特殊な世界というものはあるのだろうと思っておりますし、こう いうご提案をすると、現場を知らないのではないか、というご指摘もあろうかと思って おりますが、こういう特殊な形態で就労させる場合について、その雇用主は雇用主とし て100%の義務を負うべきではないかという形で現在の案をご提案している次第です。 技術的な問題もあるのだろうとは思っておりますが、私どもの立場で現在はそういう考 え方でつくってあるということをご説明したいと思います。 ○池田委員  今、室長が一言「保険料の徴収については」云々と言ったから非常にわかりにくいの ですが、我々から見ると、こういう建設業労働者の需給調整という特別なシステムをつ くることが一般の建設業の労災の問題にすごく影響しているのです。特に、建設業とい うのは、室長も知っているように、全産業の中で死亡率ナンバーワン、怪我だってナン バーワンですよね。そういう中で、今みたいに、送出事業主が保険料を全部払うことに なってくると、まさに、元下関係が崩れてしまう。特に、このシステムはゼネコンやサ ブゼネコンではないのです。その下辺りの専門業者を見ているわけです。そうすると、 大体が一括有期事業ではないですか。5月に確定し、更新も5月にやっていくという方 針です。そうすると、その徴収は、先ほど言ったように、Aの送出の労働者をBが受け 入れる。そのBで働いて、Bの現場で怪我をした場合には、私は、Bの労災保険を使っ てきちんと手続をとるべきだと思っているのです。さらに、もっと複雑になって、この 受入事業主が大きなゼネコンの現場に行って、そこで怪我をしたときにこの保険料はど うなっていくのですか。結局、送出の保険で確定申告をするのでしょう。だから私は、 そこが難しくなるのではないかと思っているのです。 ○奥田委員  実態からいって、送出が労災保険料を負担するというのは実態から駆け離れていて、 処理が現実的ではないと思います。今の元方事業責任は、管理責任上、労災保険は全部 払っているわけです。今の現実的な処理としては、私は、それがいちばんいいのかな と。安全の管理責任は元方がとるのだという、調整の責任も含めてとるという建設労働 の実態から併せて、元方の事業責任というのは大事なことだろうと。だから、この仕組 みの中に送出の事業者が労災保険料を負担するというのが、あえて、そこで別立てです る必然性はどこにあるのか。実態からいって、その辺の理解をどうしたらいいのかとい うのは、私も、今の議論を聞いていまして、ふと思ったのです。何か、そこにこだわる のかな、というのが勉強不足な私の知恵で、その辺は法律的にどうなのか、それが現実 的に処理できるのか、というのが少し疑問のあるところです。 ○才賀委員  今の室長のお話ですと、現状の建設現場を見たときに、我々の言う二次下請も送出に なると思うのです。そうすると、一次が労災保険もかけなければいけないという話に変 わってきてしまうのではないですか。私はそんなふうに感じるのです。 ○笹田委員  もう少し図解をしてね、ゼネコンさんがいて、こうあって、こうあって、と重層下請 制度の図を描かないと駄目ですよ。これは矛盾ですよ。 ○吉永室長  労使の各委員からご指摘をいただくと非常につらいところではあるのですが、才賀委 員ご指摘のような、一次下請が責任を負うべきかどうかということについては現行どお りで全く問題はないと思っております。といいますのは、請負の契約の中で元請があり 一次下請専門工事業者があり、その下に二次下請がいるという、その請負の枠の中で事 業がなされている。そこは、完全に請負契約の中ですべての契約がなされているという 中で労働保険料の支払いの観点から元請を事業主とみなすという取扱いが労働保険徴収 法でなされていることからすると、今、私どもが提案しているものの考え方からして、 一次下請が責任を負うべきということは考えていない。  労使の委員からご指摘いただいたので非常に説明しづらくなっているのですが、基本 的な考え方は、請負の体制の外にいる事業主である、そこに労災保険等の責任が本来あ る。その場合に、請負の縦系列の中にあるものとみなして、元請に労働保険料の支払い を義務づけていいものだろうかという点でございます。繰り返しますが、安全衛生法上 の責任等々は、既存の体制の中でその労働者についても当然ワークするわけです。いま 申しているのは、労災保険料をどこが持つかという意味では、本来の事業主が持つべき ではないかということで考えております。その趣旨は、労働者にとって、請負の枠の中 で働く場合ではなく他の事業主の指揮命令の下で働くという非常に特殊な場合につい て、送出側の事業主にきちんと責任を持っていただきたいし、ある意味、持つという意 識を持っていただきたいという私の願望的なものでもあるのですが、そういう意味でこ ういうご提案をしている次第です。正直申しまして、不勉強なのですが、実際に、既存 の枠組みとは変わってきてしまうわけですが、こういう取扱いをした場合について実務 上かなり問題が生じるということでしょうか。 ○林委員  実務上は徴収が難しいと思います。送出事業主の方から徴収するのは難しいし、皆さ んご指摘のとおり、現在は建設工事の労災保険は元請が一括して掛けていますが、送出 事業主が持った労災保険料は元請が一括支払した労災保険から引けるかというと、多 分、これは引けないと思いますので実質的には二重払いになってしまいます。だから、 実務的には非常に難しい。  ただ、私の意見は、この案自体は画期的だと思うのです。建設団体がかねてから申し 入れていますが、もともと、雇用保険も労災保険も事業主が持つ。これは、ほかの業種 ではあたり前なのです。建設業は専門工事業者に力がついていないということで、今ま では元請が一括で支払っているのです。だから、一部の有力な専門工事業の人は、自分 たちで保有して労災のメリットも享受したいと。こういう業者もありますので、その点 では流れとしてはよくわかるのですが、実務上は、現状では非常に考えづらい。それ で、送出事業主で労災保険をかけない所が出てくるのではないかということも考えられ ます。現状からすると、送出事業主に労災保険の責任を持たせて保険料を支払わせると いうのは実務的にも難しいと思います。 ○池口委員  私が最初に理解したのは、例えば、1つの現場があります。その現場の中で、ある作 業員の方が怪我をしたときはその現場の元請責任があると思うのです。例えば、この人 が大工さんだとして、加工場で型枠のパネルを加工していました。そこで怪我をしたと きは、現場から離れていますから、多分、そこの協力会社さんの労災保険の範疇ではな いかと思うのです。この大工さんが、実は、別の所から派遣されていた人だったとき に、この人が家から加工場まで通う間の通勤災害は送出会社の労災ではないかと思うの です。私はそういうイメージだと理解したのです。 ○林委員  加工場の話は池田委員がおっしゃったとおりですが、今、室長が説明されていたのは 工事現場の中に来ている大工さんの話をしているのです。 ○池口委員  私が最初に理解したのはそういうイメージだったのです。でも、それが現場の中での 災害に対して送出ということだと、経験上から言うと少し無理があると思います。 ○林委員  実務上から、経験上から言うとそうですね。 ○才賀委員  池口委員が言うように、通勤災害にしろ加工場の災害にしろ、専門工事業者50万社近 くいる中で自社で保険をかけている企業が何社ぐらいいるのですかということになるの です。ある程度の所はかけているけれども、ほとんどがかけていないのではないかと思 います。それと、各現場で起きている通勤災害、その他においても、逆に言うと、ゼネ コンさんが面倒を見て「何とか労災にしてやれよ」とか「じゃあ、うちのを使えよ」と いう企業が多いのではないかと思うのです。その差が、かけている業者とかけていない 業者の差が一つのもので競争しているから、どうにもならなくなる。その辺をきちんと していただければ、林委員が言うように、専門工事業者が直に労災保険をかけて、逆に 言えば、職長に「よくやった、事故がなければいくらかでも還付してやる」というプラ スが出てくるのではないかと思うのです。その辺が全体的にレベルアップしてこないと 労災の問題は非常に難しいのではないですか。 ○林委員  労研のほうで11月5日に建設技能労働者の受給調整の件に関して提言を発表いたしま した。かねてから言っていますように、このシステムについては技能労働者の働く場所 の確保とともに、悪質業者の介入を阻止するのは当然のことだと思います。労研の案 は、需給調整で建設業団体等がやられる場合についてのセンター構想を出したのです が、センターの設立は時期的に非常に難しいということで、それを外しますと、今回お 出しになられた概要案と非常に似通ったような案になっています。こういうスキームは どこかで成功した例ができれば普及するのではないかと思います。こういうものは、悪 質業者を排除しようとか、いろいろ枠をはめ過ぎると、熱意を持ってスキームの目的に そって立ち上げようとする人達にとっては、ヤリづらくなるという二律背反のようにな ります。しかし、そうかといって枠を緩めると悪質業者が入ったりブローカーが入った りとか、そういうものは排除しなければいけないですから、少し難しいかなとは思いま すが。いずれにしても技能労働者の働く場所が確保できるということで、このスキーム を成功させるように、決まれば努力する必要があるのではないかと思っております。  次回のときになるかもしれませんが、もし答えられたらお願いしたいのですが、今、 この表を見せていただいて、どのようにお考えになっておられるのかお聞きしたいと思 います。表の左側に雇用機会確保事業の改善計画があります。送出事業主を受入事業主 の組み合わせを届け出るようなことになっているのですが、計画段階でこれをすべて届 出るのは、実際には難しいのではないかと思います。出せと言われても完全なものはな かなか出しづらいのではないかと思います。  2つ目は、右側に行きまして、事業主に対して大臣が許可をする実際の認定業務はど こで担当するお考えになっているのかという質問です。3つ目は、その下の図で、事業 主Aが申請するような話になっていると思いますが、例えば受入れ側は申請もなにもな くて、全く関係なしでいいのかということを考えたのです。要は送出事業主の申請と許 可だけでいいのかどうかということです。それから、常用労働者についても、例えば、 理屈の上の話ですが、事業主Aが100人雇っていて、仕事がないから100人とも出せるの か、2割とか3割という制限枠を多少考えておられるのか。本当は、具体的な案が出て からのほうがいいのかもしれませんが、今の段階でお考えになっていることがあれば教 えていただきたいと思います。 ○吉永室長  林委員のご指摘にお答えする前に、先ほどの労災の関係は再度整理いたしまして、ま た関係部局とも調整をした上で改めてご相談したいと考えております。林委員のご指摘 の点ですが、1つは、改善計画を出しづらいのではないかというご指摘がありました。 確かに、このスキームは、人が足りないから何人くれとか、ある意味でブローカー的な 人出し的なものを期待されると、正直言って使いづらいとかなと思っております。た だ、今回の枠組みが、あくまでも、雇用安定のためのスキームとして各企業が協力しな がら実施するものであれば、事業主団体の関与の下にその適切な情報の調整等がなされ る。そういうことからすれば、結果として、その目的の範囲ではそれほど使いづらいも のではないと考えてご提案している次第です。  2点目、送出側の事業主に対する許可の関係です。これにつきましては、具体的な手 続は都道府県労働局ですので、そこに申請をしていただく形で厚生労働大臣の許可を出 すことで考えております。現在、まだ案ですが、審議会にお諮りすることも考えた次第 でございまして、そういう意味で、悪質な事業者の情報があればその段階で排除するこ とができるのではないかと考えている次第です。  3点目といたしまして、受入事業主について何らかの規制をかけるべきではないか、 というご指摘ではないかとお聞きいたしました。受入事業主も、単に、送出事業主から 労働者を受け入れて何でもできるわけではなく、実際の就業管理はしていただかなけれ ばならないわけです。先ほどの説明にもありましたとおり、例えば労働安全衛生法の勤 務などがダイレクトにかかってくることはあります。そのほかに、きちんと就業管理を するために、この人間が受け入れた労働者の雇用管理を行う、ということで人を決めて いただくとか、具体的な内部の苦情処理の手続とか、そういうものは当然かかってくる と思っております。  ただ、実際には、ある意味でサービスを受ける側ですので、許可を必要とすることま では必要ないのではないかと考えている次第です。ご指摘のように、実際に、受入事業 主がこの就業機会確保事業をきちんと使っていただけるかどうか、ということをきちん と見ていく必要はあると思っております。そういう観点から、改善計画の側に、受入事 業主の側についても契約の中に盛り込んでいただく。そういう意味で、きちんと就業管 理をしているかどうかということの管理もできるのではないか、団体としても管理して いただけるし最終的に行政としての管理もできると考えている次第です。  最後ですが、人数についての制限は考えているのかというご指摘がありました。正直 申しまして、人数による管理は実務的に難しいのではないかと考えております。端的に 言えば、ある1週間、仕事が全くないときに労働者すべてを就業機会確保事業に使うこ とを否定するのは難しいかと思っております。さはさりながら、繰り返し申し上げてい ますとおり、この事業はあくまでも需給調整を目的としたものではなく、仕事の繁閑に 応じた、仕事のない期間に雇用の安定を図るための措置であるという意味では、本業の 建設事業をやっていただくことが前提になっていると思っております。そういう意味 で、実際の売上高等から勘案して、実際に建設事業は0である、就業確保事業が100で ある、という結果になれば、当然、そういう事業はやめていただく必要があると思って います。そういう意味での事業量についての確認、あるいはチェックサンクションはか けていこうと考えている次第です。 ○林委員  私の1番目の質問は、左側の表の組み合わせが送出事業主Aから受入事業主E、F、 Gのすべてを記入することとされていますが、これを具体的に出すのは非常に難しいと 思うのです。ここの点は、実際の取扱いの話になりますので、30日の案が出てから改め て質問させていただきます。ありがとうございました。 ○下永吉委員  次回以降に向けて1つ2つお願いしたいのです。改善計画を作成する事業主団体の範 囲なのですが、県内でも、県庁所在地と郡部では大いに違います。雇用環境も違うし経 営状況も違うと思うのです。ですから、県協会というよりも支部単位で事業主団体を範 囲として定める方向で検討してもらえないかということが1点です。  それから、この需給調整システムなのですが、いろいろ厳格にするということでチェ ック機能を設けているのは理解できるわけですが、この制度を活用する事業主の側から すれば、非常に使い勝手が悪くなるのではないかという気もします。もし可能であれ ば、事業主の適正な取組みに対して行政が支援をするようなことは考えられないのか、 こういう検討も重ねてしてもらえればと思います。 ○吉永室長  1点目ですが、ご指摘のとおり、県の協会に主体的な役割を果たしていただこうと思 っておりますが、小さい県であれば県単位も可能であろうと思っておりますが、大きな 県になると県でやることは難しかろうと思っております。その辺り、実務的な取扱いも 含めて、実際には支部単位で動くケースが多くなるのではないかと考えております。正 直、これをどういう形で制度に反映させるのかということを検討しているところです が、運用も含めて、実務的に問題のないように対応できる形にしたいと思っておりま す。  2点目は、財政的な面も含めての支援を考えろということですが、正直申しまして、 まだ報告できる段階ではありませんが、財政当局に対しては一定程度の支援の枠組みに ついて相談をしているところでございます。あくまでも雇用の安定のためのスキームと いうことで、雇用の安定を促進する観点から、どういう形での財政支援が可能なのかと いうことを検討しているところでございます。具体的なものにつきましては、もうしば らく時間をいただければと考えております。 ○池田委員  30日に、さらに具体的なスキームが出てくると思っておりますので、注文だけしてお きたいと思います。1つは、事業主団体に対する縛りをさらにきつくしたほうがいいと 思います。概要の1頁の(2)に「事業主団体による改善計画の作成と大臣の認定」が ありますが、この中で「改善計画を作成し、構成事業主の雇用労働者の雇用の安定等に 資すると認められる場合には厚生労働大臣の認定を受ける」と。即、認定であります。 私も、労働者派遣法を検討している委員として、あそこでは派遣元の認定を審議会でや っているわけです。あまり具体的なことは言えませんが、今は参考に言ったのですが、 そういう縛りをきつくしないと暴力団の餌になってしまうと思っています。  2つ目は、構成事業主に対して許可業だけでいいのか。私はこれは問題だと思ってお ります。悪質ブローカーや暴力団等がスッと介入してくるだろうと思っておりますの で、ここにも本当に強い縛りを加えないと問題が出てくると思っています。したがっ て、30日に具体的に出てきますから、今度は意見も出したいと思っておりますので、そ こらはお考えになっていただきたいと思います。 ○吉永室長  2点ご指摘がありました。正直申しまして、ブローカーをどう排除していくかという ことが、今回の制度が成功するかどうかの1つのキーだろうと思っております。そうい う意味で、ご指摘の点も踏まえて検討をして、次回に資料を提出したいと思っておりま す。 ○池口委員  事業主団体が、各都道府県、支部という本当に細かいところに分けてやるのは、事業 主を一つひとつフォローしていくには非常にいいことだと思うのです。例えば、需給の 過剰と不足の原因の中にはいろいろあると思いますが、大手と中小の間の過不足感のア ンバランス、地方と首都圏という話、あとは季節的なものがあります。例えば、北海道 で雪が降っている間は作業ができない方が首都圏に出てくるとか、そういう地域性、季 節的なものがあります。  特に、この特区で、小谷村の場合は冬のレジャー産業に人がすごく多い。雪が降って いないときに、普通であれば、その人たちが農業や公共事業をやっている中のそのバラ ンス感が崩れたという話を聞いているのです。その中で、都道府県とか地域でやる場合 には小谷村は非常にいい例だと思うのですが、全国規模で、北海道と東京とか、東京と 地方とか、大手と中小という、全国規模の過不足感のバランスを調整する役割もここに はあると思うのです。ですから、都道府県、支部での事業主団体が統括するのもいいの ですが、全国規模でそれをどのように統括するのかということを具体的に知りたいと思 います。 ○吉永室長  ご指摘の点もあろうかと思っております。今回のスキームは、基本的には地域におけ る雇用の安定を主眼として考えております。かといって、地域を絞って、この範囲でや れというような、例えば都道府県単位でしかできないということを考えているわけでも ないのですが、実際の事業主、雇用主が他の事業主の元へ労働者を送り出した場合に、 その労働者の雇用管理ができる範囲ということが非常に重要なポイントだろうと思って おります。そういう意味では、自ずから地域が限定されるだろうと思っております。  ただ、ご指摘のように、北海道と東京という形での全国的な需給過不足の調整もあり 得るものと思っておりますし、その辺り、正直申しまして、雇用管理が具体的にきちん とできるのかという点を検討する必要があると思っております。そういう意味で、正 直、今回のスキームに完全に乗るかどうかというのは検討が及んでおりませんが、基本 的な考え方として影響がないのであれば、そういう形の活用もあり得ると思っておりま す。ただ、このシステムを考えるにあたっての基本的な考え方としては、あくまでも、 メインとしては地域における過不足の調整ということで立案しているという点は申し上 げておきたいと思っております。 ○白木委員  最初の説明のときも地域という言葉をおっしゃっていましたが、文言の中には一切入 っていないですよね。これは、限定して入れられるかどうか、どっちかに決めたほうが わかりやすいと思います。 ○吉永室長  地域の範囲をどうするかというのは悩ましいところでありまして、今回のペーパーに は入れておりません。基本的な考え方としてはあくまでも地域単位ということで考えて いたということです。あくまでも雇用管理ができる範囲ということであれば、自ずから 範囲は絞られるであろうと。例えば、川崎の会社が東京の大田区にこういう形で需給調 整ができないかと言えば、そういうことは適当ではないと思っております。ただ、小田 原の業者が東京にするのはどうか、あるいは静岡はどうか、と言い始めると、その範囲 を限定するのは非常に難しいだろうと。そういう意味で、基本的な考え方としては、自 ずから出来上がる労働市場圏の範囲ということだろうと思っておりますが、それを超え て実際に活用することができないかと。ある意味、制度の員外利用的な考え方で実際に 問題がないような形ができるのかどうかという点につきましては、引き続き検討をし て、次回以降、資料を作成して報告をしてご審議いただきたいと思います。 ○椎谷座長  本日は、新しい需給調整システム、特に、就業機会確保事業について詳細な説明とご 議論をいただきました。悪質な事業主が入らないようにどうするかとか、かなり具体的 なご提案もありました。特に、労災保険の問題につきまして、保険料の徴収に関しては 労使双方ともご議論がありましたが、おそらく、ここに出されている案は、1つは、下 請、元請という請負事業の枠の外にあることを前提に考えられたものですが、実際の建 設業の現場ではそうではないのが実態だということです。  ただ、その枠外で言えば、この就業機会確保事業に類似の労働者派遣法の場合には、 雇用関係のある事業主と指揮命令権のある事業主との間で保険料の徴収はどうなってい るかということを参考に書かれたのだと思います。実際に、皆様方から出たご議論に基 づいたことをやろうとすれば、おそらく、労災保険関係の部署なり法律との関係がかな り出てくると思いますので、次回はその辺も踏まえた具体的な説明をいただいてご議論 いただければよろしいかと思います。  それでは、時間でもございますので、本日はこの程度にとどめ、次回ということにさ せていただきたいと思います。本日はどうもご苦労さまでございました。ありがとうご ざいました。 ○森下補佐  次回の日程ですが、11月30日の10時からを予定しております。どうぞよろしくお願い いたします。                      照会先:厚生労働省職業安定局                          建設・港湾対策室 建設労働係                      TEL 03-5253-1111(内5804)