04/11/15 基準濃度等検討会議事録                 基準濃度等検討会                          日時 平成16年11月15日(月)                             13:00〜                          場所 専用第17会議室                   照会先:厚生労働省労働基準局安全衛生部                       化学物質対策課化学物質評価室審査係                       TEL 03-5253-1111(内線5512) ○大淵有害性調査機関査察官  本日は大変お忙しい中、また足元の悪い中、ご参集いただきまして、ありがとうござ います。定刻になりましたので、ただいまより「基準濃度等検討会」を開催いたしま す。私は化学物質評価室の大淵と申します。座長が決まるまで司会進行を務めさせてい ただきます。  はじめに古川化学物質対策課長よりご挨拶を申し上げます。 ○古川化学物質対策課長  本日は非常にお忙しい中、「基準濃度等検討会」にご出席を賜りまして、誠にありが とうございます。心から御礼申し上げたいと思います。  ご案内のとおり私どもでは、国内で大量に製造・使用されている化学物質につきまし て、日本バイオアッセイ研究センター等に委託を行い、がん原性試験等を行っているわ けですが、その結果、がん原性が認められる物質については、労働者の健康障害を防止 する観点から指針を公表してきているところです。これまでに厚生労働省などで指針と して公表したものは12物質ございます。  指針の中身については、ばく露軽減対策、労働衛生教育と並んで作業環境測定が指針 の中に謳われております。事業場の中で有害物質について、作業環境測定をしていただ くことは、単に測定をするだけではなく、その結果を評価し、その評価結果に基づいて 必要な改善措置を講じることが、非常に重要なことであろうかと思います。  今までに12物質を公表しておりますが、そのうち酢酸ビニルとパラ-ジクロルベンゼ ン、ビフェニル、アントラセンの4物質については、これまで測定結果の評価の基準と なる濃度は決まっておりませんでした。そういうことから昨年度に検討会を開催して、 4物質について検討いただきましたが、このうち酢酸ビニル、パラ-ジクロルベンゼン、 ビフェニルの3物質の基準濃度については、結論を出していただいたところです。  今回お願いしたいのは、すでに公表している12物質の指針に続いて、今後、新たに6 物質について指針を公表することを予定しておりますので、この6物質のうち、キノリ ン等5物質について、本検討会において基準濃度及び作業環境測定方法等について、ご 検討をお願いしたいということで、今回の開催をさせていただきました。非常に限られ た時間ですが、ご検討のほど、よろしくお願いいたします。 ○大淵有害性調査機関査察官  続きましてご参集の先生方の紹介をいたします。お手元の資料番号−2に参集者名簿 がありますので、その順に沿ってご紹介いたします。慶應義塾大学医学部教授の大前和 幸先生は、本日は所用により欠席です。労働科学研究所名誉研究員の木村菊二先生、元 産業医学総合研究所長の輿重治先生、中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター 所長の櫻井治彦先生、産業医科大学産業生態科学研究所教授の田中勇武先生、大阪府立 大学総合科学部教授の辻克彦先生、麻布大学環境保健学部教授の中明賢二先生、早稲田 大学理工学部教授の名古屋俊士先生です。産業安全技術協会の松村先生は本日所用によ り欠席、東京大学名誉教授の和田攻先生は、ご連絡がなく遅れていますが出席の予定で す。  オブザーバーは、産業医学総合研究所主任研究官の菅野先生、日本作業環境測定協会 精度管理センター係長の鈴木様です。  事務局側は、先ほど挨拶した課長のほかに、化学物質評価室長の角元、環境改善室副 主任労働衛生専門官の早木です。  それでは、議事に先立ちまして、本検討会の趣旨、目的等について最初に説明をさせ ていただきたいと思います。資料番号−1の開催要綱です。上から順に読み上げます。  1「目的」 職場で問題となるがん原性が疑われる化学物質については、従来職業がん 対策専門検討会等で検討を行い、行政対応が必要なものについては、労働安全衛生法第 28条第3項に基づき、「化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針」を公 表しているところである。  当該指針には、健康障害防止対策の一つとして、作業環境測定の実施を規定している ため、その結果を評価するために使用する濃度(以下、「基準濃度」という。)を定め ている。これらを踏まえて、最近新たにがん原性が疑われている化学物質のうち、平成 15年度に開催した職業がん対策専門検討会で、行政対応が必要とされた化学物質につい て労働基準局長の下に有識者を参集し、平成16年度末を目途に、当該物質等の基準濃度 及び作業環境測定方法について専門的な検討を行い、報告をとりまとめる。  2「検討対象物質」 キノリン、グリシドール、クロトンアルデヒド、1,4-ジクロロ-2 -ニトロベンゼン、ヒドラジン一水和物の合計5物質。  3「検討事項」 (1)検討対象物質の作業環境測定方法、(2)検討対象物質の基準濃 度の値、(3)その他。4については、事務手続等ということですので、読上げは省略さ せていただきます。  4の(1)に、会議については、座長を置くと規定してありますので、これから検討会 の座長の選任に進みたいと思います。基準濃度等検討会を今回開催しましたが、従来か ら行政のほうで開いていた管理濃度等検討会があり、今回の会議とは非常に関連の深い 会議ですが、事務局としては、管理濃度等検討会で座長をしていただいた輿先生に今回 の検討会についても座長をお願いしたいと思っております。いかがでしょうか。                  (全員了承) ○大淵有害性調査機関査察官  それでは、輿先生よろしくお願いいたします。 ○輿座長  早速ですが、ご指名によりまして進行役を務めさせていただきます。最初に議事に入 る前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○大淵有害性調査機関査察官  それでは、配付してある資料の確認をいたします。項目がかなり多くなっていますの で、資料番号を見ながらの確認ということでお願いしたいと思います。  資料番号として枝番を振ってあるものが1〜11番まであります。そのあとに参考資料 として1〜4番まで配付してあります。もし欠けているものがありましたら、事務局へお 申し付けいただきたいと思います。 ○輿座長  資料はよろしいですか。よろしいようでしたら、今回の検討会の基本方針、あるいは 検討対象物質をどうするか、先ほどお話が出ましたが、事務局から改めてお願いいたし ます。 ○大淵有害性調査機関査察官  それでは、説明いたします。本題に入る前に、これまで出されている指針の内容につ いて、先生方に改めて確認をいただき、そのあと「検討会の基本方針」「対象物質」の 説明をし、資料番号−3〜5、参考資料の1〜3を使って順次説明をいたします。  資料番号−3は、これまでに出している「『健康障害を防止するための指針』及び運 用通達の内容」です。先ほど古川課長からも申し上げましたが、国で一定の化学物質に ついて、がん原性試験を実施し、その結果、がん原性が認められた物質については、労 働安全衛生法第28条第3項に基づいて指針を出しており、平成3年以降、現在までに12物 質について指針が公表されています。今後はプラス6物質について出していく予定です。  指針の中身については、(1)〜(5)に項目を並べてあり、ばく露を低減するための 措置、作業環境測定、労働衛生教育、製造等に従事する労働者の把握、危険有害性等の 表示等が書かれています。指針を出すときには、併せて留意事項について記載した「運 用通達」も示されております。  本日の資料の参考資料−1の上半分には、いま申し上げた労働安全衛生法第28条第3項 の条文が書いてあり、下半分には、その法に基づいて厚生労働大臣が化学物質を定める という手続がありますので、その定めた物質の告示を載せています。12の化学物質につ いて五十音順に並んでいます。  念のため労働安全衛生法の条文の該当部分を簡単にご紹介しますと、第28条第3項で すが、「厚生労働大臣は、次の化学物質で厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取 り扱う事業者が、当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を公表す るものとする」ということで、具体的には、第二号で「前号に掲げる化学物質以外の化 学物質で、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるもの」というこ とで、この規定に基づいて従来から指針を公表しています。  参考資料−2には、これまでに公表している指針は公示という形式をとって公表して いますが、それを平成3年から公表年月日順に12本並べてあります。このような形で指 針を公表しています。  資料番号−3の2です。先ほど対策の(1)〜(5)を紹介しましたが、このうち、作業環境 測定については、指針及び運用通達に記載するときに、物質の区分によって、その記載 内容が異なっているのが従来の経緯です。次の頁の表1に指針について対象物質の区分、 指針の記載内容、運用通達の記載内容を表の形で示しています。左側の物質の区分のA で、法定の測定対象物質、具体的には有機則なり特化則の対象物質となっている物質の 場合ですと、指針の記載内容としては、作業環境測定基準に基づき測定する、作業環境 評価基準に基づいて測定結果を評価するということで、具体的には管理濃度と比較する ということが決まっています。  A以外の物質、法定の測定対象以外の物質では、大きく2つの区分に分かれ、Bとし て、日本産業衛生学会等のばく露限界濃度があるもの、Cとして、ばく露限界濃度がな いものということです。  まずBについての指針の記載ぶりは、測定については定期的に測定する。評価につい ては、測定結果を評価するということが簡単に書いてあります。  それを詳しく書き下ろしているのが運用通達で、測定方法の具体的なやり方、評価方 法の具体的なやり方が示されており、特に評価方法については、計算式によって算出し た「評価値」を、日本産業衛生学会等のばく露限界濃度と比較するという書きぶりにな っています。  Cについては、指針の中では、定期的に測定することが規定されており、運用通達で 具体的な測定方法を記載しているという状況です。  これまで公表している12の指針対象物質について、このA、B、Cのどれに当てはま るかを表2の左半分に示しています。Aの区分に入るものとしては、有機則の対象物質 としてクロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロルエタン、ジクロロメ タン、テトラクロルエチレン、1,1,1-トリクロルエタン。特化則の対象物質としてパラ -ニトロクロルベンゼンです。Bの区分としては、酢酸ビニル、パラ-ジクロルベンゼ ン、ビフェニルの3物質です。Cに入るものがアントラセンです。このうちBに入る酢 酸ビニル、パラ-ジクロルベンゼン、ビフェニルについては、平成15年度に開催された 管理濃度等検討会において、基準となる濃度を検討していただきました。  以上、指針・通達の概要ですが、念のため実際の指針・通達の該当する箇所をご覧い ただきたいと思います。参考資料−3が通達等を示しています。ここには、平成9年に出 した通達と平成14年に出した通達の2つが入っています。いま申し上げたA、B、Cの 区分に対応した形で順に見ていきますと、Aの区分、すなわち法定の測定対象物質の場 合の記載例の指針の部分については、23頁の3「作業環境測定について」から24頁にか けてがジクロロメタンの測定関係です。内容としては、有機則適用業務とそれ以外の業 務ということで書き分けはしていますが、いずれについても作業環境測定基準での測 定、評価基準に基づいての評価が規定されています。  先ほど申し上げた区分の中では、Bの区分、すなわち産衛学会等のばく露限界濃度が あるものでは、酢酸ビニルの例をご紹介したいと思います。11頁の上から4分の1ぐらい の、3「作業環境測定について」に記載があります。この中で(1)としては、定期的に 測定することと記載されています。また(2)には、測定を行ったときは、測定結果の 評価を行うということが書いてあります。  これに関する運用通達が、同じ資料の4〜5頁にあります。まず、4頁の真ん中ですが、 「作業環境測定について」の(1)で、測定のうち具体的な方法について書いており、 測定方法のうち捕集方法や分析方法、あるいは測定点の取り方等を書いています。5頁 の(2)では、具体的な評価の仕方について書いてあり、イでは、作業環境評価基準に ならって、単位作業場ごとに次のように評価を行うこと、評価値を国内外の産業衛生学 会等が提唱しているばく露限界濃度と比較すること、そして、実際に評価値を計算する ための計算式が載っています。  先ほど区分ではCの区分、すなわち産衛学会等のばく露限界濃度がない場合の例とし て、アントラセンの指針及び通達を見てまいりたいと思います。まず指針については、 資料の20頁の上から4分の1辺りですが、「作業環境測定について」ということで定期的 に測定することと書いてあります。ここでは評価については、特に触れていません。運 用通達は14〜15頁で、14頁の(2)「作業環境測定について」に測定の具体的な方法を 書いています。  以上がこれまでに出ている指針及び運用通達の内容です。これを確認していただいた ところで本題に移りたいと思います。  今後新たに6物質について指針を公表するということで、それに当たって、この検討 会ではどういう基本方針で検討をしていくかです。資料番号−4の「指針対象物質に係 る作業環境測定結果の評価指標についての考え方及び基準濃度の設定の基本方針(案) 」ですが、Iの「指針対象物質に係る作業環境測定結果の評価指標についての考え方 (案)で、「労働者の健康障害を防止するための指針」の対象物質に係る作業環境測定 結果の評価指標についての考え方は、次のとおりとするとあり、1「法定の測定対象物 質の場合」、管理濃度により測定結果の評価を行うこととし、新たな評価指標は設定し ないこととする。2「法定の測定対象物質以外の場合」。(1)日本産業衛生学会等のば く露限界濃度がある場合、当該値を参考にして、新たに評価指標(以下、「基準濃度」 という。)を設定することとし、基準濃度により測定結果の評価を行うこととする。 (2)日本産業衛生学会等のばく露限界濃度がない場合、基準濃度は設定しないことと し、測定結果の評価は行わないこととするということで、3つの場合に分けて考えたい と思っております。このうち2の(1)の場合が基準濃度の具体的な検討の対象になりま す。  IIは、この場合の基準濃度の設定の基本方針(案)です。基準濃度の設定の基本方針 は次のとおりとする。1「基準濃度は、次の値を参考にして設定する」。(1)日本産業 衛生学会が勧告している許容濃度。(2)米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が勧告して いるばく露限界(許容濃度)。なお、対象物質について(1)、(2)の両方が存在する 場合には、基準濃度等検討会における専門家による検討を踏まえ、原則として次のよう に決める。(1)日本産業衛生学会の許容濃度とACGIHのばく露限界が一致している場合 は、その値を基準濃度とする。(2)日本産業衛生学会の許容濃度とACGIHのばく露限界が 異なっている場合は、いずれか一方の値を基準濃度とする。  2「基準濃度の設定に当たっては、次の点に留意する」。日本産業衛生学会の許容濃 度、又はACGIHのばく露限界が「天井値」として示されている場合。(2)当該物質の作 業環境測定技術(定量下限値)。このようなことに留意しながら、基準濃度の設定につ いての方針としたいと考えています。  この方針が妥当かどうかについては、後ほど先生方にご議論いただきますが、もしこ の方針でよろしいとなった場合、具体的に今回の検討会でどういう物質を検討していく かについて、引き続き説明をいたします。  資料番号−5の「『健康障害を防止するための指針』の対象予定物質の管理濃度・許 容濃度等一覧」ですが、いちばん左に6つの物質の名称、右に向かってCAS-No.、管理濃 度、日本産業衛生学会、ACGIH、IARC、アメリカのOSHA、イギリスのHSE、ドイツのDFG のそれぞれについて濃度の値、あるいは発がん性の区分、分類等を記載してあります。  6物質それぞれについて濃度等の状況がどうなっているかを見てまいりますと、まず キノリンについては産衛学会、ACGIHとも値が決まっていない状況で、先ほど申し上げ た方針では、今回は基準濃度を設定しないことになります。グリシドールは、産衛学会 の値はありませんが、ACGIHは2ppmという値を示していますので、これを参考にしなが ら、基準濃度を設定することになります。  クロトンアルデヒドですが、これも産衛学会の値はなく、ACGIHの値があります。Cは 天井値(シーリング)で具体的な数値としては、0.3ppmとなっていますので、これを参 考にして検討会で基準濃度を設定していくことになります。  1,4-ジクロロ-2-ニトロベンゼンについては、産衛学会もACGIHも値がありませんの で、基準濃度は設定していないことになります。  M,N-ジメチルホルムアミドについては、法令の規制対象物質、具体的には有機則の第 2種有機溶剤になっており、管理濃度はすでに10ppmという形で決まっておりますので、 今回の検討会では、特に新たな濃度設定は行いません。  ヒドラジン一水和物については、産衛学会は0.1ppm、ACGIHは0.01ppmで、両者異なっ た数字を示しておりますが、これらの数字を参考にして、この検討会で基準濃度を決め ていくことになります。そうすると、6物質のうち、この表のいちばん右に丸を付けて あるグリシドール、クロトンアルデヒド、ヒドラジン一水和物の3つの物質について、 今回の検討会で、具体的な基準濃度の数字のディスカッションをしていただくことにな ります。いま整理したものを確認のために示しているのが資料番号−3の表2で、右側で 今後指針を公表する予定の物質をA、B、Cの3つに分類しています。  以上がこの検討会での基本方針の案、基本方針が適当と判断していただいた場合に、 どういう物質を検討するかの事務局案です。 ○輿座長  ただいまの検討の基本方針と検討対象物質に関する説明について、ご質問がありまし たらお願いいたします。 ○田中委員  資料番号−4の基本方針の考え方で、1「基準濃度は、次の値を参考に制定する」。 (1)一致している場合はいい。(2)異なっている場合はいずれか一方にする。今から検 討するのは一方があって、一方がない場合がありますが、それはどうお考えですか。 ○大淵有害性調査機関査察官  片方しかない場合については、原則としてその値を採用するということで、提案理由 が正しいかどうかは、一応ディスカッションをしていただく必要があると思っていま す。 ○田中委員  もし一方がない場合には、(3)として、原則として提案理由を考えて、それを基準濃 度とするということになるわけですか。 ○輿座長  (3)はありませんね、加えましょう。 ○大淵有害性調査機関査察官  (1)、(2)の上に「両方の値が存在する場合には」という前書きがあって、そういう書 き方をしていますので、もし今のことを書き加えるとすれば、(3)というよりも、もう 少し別の書き方で追加することになろうかと思います。 ○田中委員  そういう原則を採るかどうかですね。一方がない場合は決めないとするのか、一方が ある場合はこれを参考にして決めていく方針なのか、その辺はどうなのですか。 ○輿座長  この場合には、いずれか一方という書き方になっていて、それをどうするのですか。 ○田中委員  一方だけしか提案されていない場合にどうするかということを、予め原則を決めてお かないといけないのではないでしょうかということです。 ○輿座長  異なっているというのは、片方がないというのも異なっている中に入るのではない か。ない場合も異なっていると言うのですかね。 ○名古屋委員  それはないのではないですかね。 ○輿座長  (3)をはっきり入れるということなら、それで構わないのですが、どうしたらいいで すかね。 ○櫻井委員  従来の管理濃度のときも片方しかない場合には、それを参考にして決めた場合を覚え ています。片方しかない場合、よく検討しないということではないと思います。今回も 片方しかない場合には検討しないということではなくて。 ○輿座長  (3)を入れて、一方しかない場合にはそれを使うという書き方をするか。 ○櫻井委員  提案理由をよく読んで、参考にしてということですね。 ○輿座長  (3)ではなくて、上のほうに入るかどうかですね。 ○大淵有害性調査機関査察官  どちらか一方しか値がない場合という項目を付け加えるということですね。 ○櫻井委員  はっきりしますから、そのほうがいいと思います。 ○輿座長  では、そうしてください。 ○大淵有害性調査機関査察官  はい、分かりました。 ○輿座長  ほかに何かございますか。 ○名古屋委員  管理濃度のときもお聞きしたことがあると思いますが、ACGIHとこれがないと、いつ まで経っても管理濃度、あるいは基準濃度が出てきませんね。もともと管理濃度の考え 方というのは、確かにこういう形で動物実験の影響が出てこなかったとしても、現場調 査をして、その中で環境管理がされていて、そこで疾病が出てこないときにはこれを管 理濃度とするという考え方は、塩ビの中で出てきているわけです。そうすると、この考 え方はもう切り捨ててしまって、濃度が出てこなかったら、永久に基準濃度も管理濃度 も決まらないと考えてよろしいのでしょうか。 ○角元化学物質評価室長  そこは従前の塩ビに関しては、そういう形で現実に被害発生の問題、波及性の問題等 から調査を尽くして、そういう決定をしたわけですが、現在、審議対象となっているの はとりあえず動物で出ましたと。これらの物質の使用の範囲などについては、また指針 化に際して調査をしています。その使用の範囲、それに従事する労働者数、その波及 性、問題の重篤性などから、必要があればそういう対応もあり得るとは思います。動物 実験で出たからというだけでヒトに関する知見がまったくないのを全部手間暇かけてそ こまでというところにはいかない。それだけの労を割くべき状況が懸念される場合に は、そういう対応もあり得る。現状はとりあえず材料のあるものでご検討いただきたい と考えております。 ○輿座長  塩ビのときには、社会的に非常に問題が大きかったから、かなり時間や労力をかけて やって、ばく露限界がないのに管理濃度を決めたということです。今のものについて は、それほど社会的な意味を持っていないという判断をされているということで、いい ですね。 ○名古屋委員  はい。 ○輿座長  1つ申し上げておきたいことは、資料番号−4の下のほうの(1)、(2)、2の(1)の辺り に「ACGIHのばく露限界」と書いてありますが、前の文章が日本産業衛生学会の許容濃 度と書いてあり、ACGIHはTLV(閾値)なのです。ばく露限界というのは、ILOが条約で 決めたいろいろな国にある数値をまとめて「ばく露限界」と呼びましょうという条約上 の決まりなので、使い方を間違わないようにしていただきたいと思います。 ○大淵有害性調査機関査察官  はい、分かりました。 ○輿座長  そのほかに何かありますか。 ○櫻井委員  直接今回には関係ありませんが、酢酸ビニル等、この3物質は、運用通達を出したあ とで、去年辺りに基準濃度を決めたわけですね。 ○大淵有害性調査機関査察官  はい。 ○櫻井委員  運用通達では、このままだと提唱しているばく露限界濃度等と比較すると書いてある のを変えるのですか。 ○大淵有害性調査機関査察官  今後、通達改正をする予定で、従来のスタイルだと、2つの値が産衛とACGIHで異なっ た場合に、事業者側がどちらで評価したらいいか迷ってしまうので、きちんと行政でオ ーソライズしようということで、平成15年度に検討いただきましたので、その結果を踏 まえて通達改正を近く行う予定にしています。 ○櫻井委員  この3つの物質についても変えるということですね。 ○大淵有害性調査機関査察官  はい。 ○輿座長  この辺りをはっきりさせたということですね。もう1つ申し上げておきたいことは、 今までは行政が決める数値は「管理濃度」という格好で決まっていましたが、今度は 「基準濃度」という文字が出てきておりますが、管理濃度と全く同じであると考えてい いわけですね。 ○大淵有害性調査機関査察官  はい。 ○輿座長  ただ対象が違い、法定物質については管理濃度を使い、通達によるものは基準濃度を 使うということですね。 ○角元化学物質評価室長  同一のものに対して、法令規制物と規制対象外で使い分けているということでご理解 いただきたいと思います。 ○輿座長  それはどこかで書いておいてくれないと、現場は非常に混乱すると思います。 ○大淵有害性調査機関査察官  今後出す通達の中で、定義はきちんと書き分けをしたいと考えています。基準濃度と いうのは、これこれこういう意味ですよというのが明確に分かるようにしたいと思いま す。 ○輿座長  それをよろしくお願いします。そのほかに何かありますか。それでは、よろしいとい うことで基本方針及び対象物質については、資料の中に書かれているとおりということ で、これから話を進めていきたいと考えております。  それでは、3物質についての基準濃度をこれから最初に決めなければならないわけで すが、それに関して、事務局から説明をお願いいたします。 ○大淵有害性調査機関査察官  基準濃度を検討していくための参考資料ということで、資料番号−6〜10、参考資料 −4でご説明いたします。  資料番号−6は、検討対象物質(3物質)についての用途、国内の生産量等を示してあ ります。まずグリシドールについては、エポキシ樹脂、アルキド樹脂の反応性希釈剤、 樹脂・農薬等の安定剤、木綿・羊毛等の改質剤、分散染料、反応性染料の染色性改質 剤、シランカップリング剤原料という用途で使われています。平成10年度の生産量は、 224tとなっています。  クロトンアルデヒドは、用途は、ブタノール、クロトン酸、ソルビン酸等の各種化学 品及び医薬品の原料。平成14年の生産量は、推定で約1万6,000tです。  ヒドラジン一水和物は、用途はプラスチック発泡剤製造用、清缶剤、還元剤、重合触 媒及び各種誘導体、試薬、農薬、水処理剤、エアーバッグ起爆剤で使われています。平 成13年の生産量は1万5,373tとなっています。  産衛学会あるいはACGIHの提案理由ということで、それぞれの物質について見てまい りたいと思います。まず資料の項目についてご紹介しますと、資料番号−7は、産衛学 会、ACGIHの許容濃度等の提案理由の概要を事務局でとりまとめたものです。資料番号 −8は日本産業衛生学会の提案理由書で、今回の3物質の中ではヒドラジンだけ産衛の資 料があります。資料番号−9は、ACGIHの提案理由書を日本語に翻訳したもので、3物質 ともあります。資料番号−10はACGIHの提案理由書の英語のままのものです。  本日は、概要をとりまとめた資料番号−7に基づいてご説明いたします。これは3頁あ り、1物質それぞれ1頁という形でとりまとめています。  1頁目のグリシドールですが、ACGIHのTLVとして、1995年に2ppmが提案されています。 「提案理由の概要」は、提案理由書の中の最後にある「TLV勧告値」と、その勧告値の 文章に関連のある箇所を、事務局で簡単にまとめたという作りになっています。 (1頁目を読み上げ)  続いて2頁のクロトンアルデヒドの提案理由です。こちらはACGIHのTLV-CEILINGとい う形で0.3ppmが1997年に提案されています。 (2頁目を読み上げ)  最後にヒドラジンですが、これについては3頁の資料の上半分が日本産業衛生学会の 提案理由、下がACGIHの提案理由です。まず日本産業衛生学会ですが、提案するときの タイトルもほかの場合と違って、無水ヒドラジン及びヒドラジン一水和物という形にな っており、許容濃度は0.1ppmということが1998年に提案されています。 (3頁目の上段を読み上げ)  次にACGIHです。こちらはTLV-TWAとして0.01ppmが、1989年に提案されております。 (3頁目の下段を読み上げ)  以上が提案理由書のそれぞれの概要です。  配付資料の最後に参考資料ということで、平成15年度に職業がん対策専門検討会で、 いま申し上げた3物質について、それぞれこの会議への検討結果としていただいた報告 を付けております。グリシドールが1頁目から、クロトンアルデヒドが5頁目から、ヒド ラジン一水和物が8頁目からということで、それぞれ評価のコメントと実際の動物試験 の概要が付けてあります。 ○輿座長  ただいまの説明に対して、ご質問ございますか。それでは、事務局のほうで、この3 物質についての基準濃度の案があったら出してください。 ○大淵有害性調査機関査察官  はい。そうしますと、先ほどご了承いただいた基本方針に基づいて、事務局としての 案をご説明したいと思います。最初のグリシドールについては、ACGIHが2ppmを勧告し ており、先ほどご説明した提案理由について、先生方のほうでこれで適当である、妥当 であるということで判断いただいた場合には、2ppmを基準濃度にしたいと存じます。  2番目のクロトンアルデヒドは、ACGIHが天井値ということで0.3ppmを示しておりま す。従来からあった管理濃度の検討においては、参考となる値が天井値という場合に は、その2分の1程度を管理濃度とするというようなルールがありましたので、この検討 会においてもそれに準ずるような形で考えたいということで、この場合だと0.3の約半 分で、0.2ppmではどうかと思っております。いずれにしてもこの提案理由書が妥当だと いう場合に、事務局としては0.2ppmではどうかと考えております。  3番目のヒドラジンは産衛学会が0.1ppm、ACGIHが0.01ppmということで、10倍の開き がありますので、これについてはどちらの値がより妥当かについて、先生方にご検討い ただきたいと思っていまして、特に事務局としてどちらの数字がよいという案はありま せん。以上です。 ○輿座長  ということでグリシドールについてはACGIHの2ppm、クロトンアルデヒドについては シーリングが0.3だから、2分の1の0.15ではなくて、丸めて0.2ppmという値を事務局と しては考えている。ヒドラジンについては、産衛とACGIHが10倍違うので、これは検討 会で考えていただきたい、こういう提案です。  1つずつやっていきたいと思います。まず最初にグリシドール。いま事務局から出さ れたのは2ppmです。これを基準濃度としてよろしいかどうかということですが、いかが でしょうか。櫻井委員、何か。 ○櫻井委員  これでよろしいと思います。 ○輿座長  これはヒトのデータも、1件ですけどありますからね。 ○櫻井委員  こういった論点以外にちょっと決めようがないと思います。 ○輿座長  グリシドールについては事務局提案どおり2ppmということでよろしいですか。 ○名古屋委員  定量下限とか、その辺はそのあとでいいのですか。いまのところは濃度だけなのです ね。 ○輿座長  はい、技術的な可能性ということで、あとからということになろうかと思います。だ から要するに、一応ここで決めるということです。 ○中明委員  2ppmが適当かどうかと言われて、やはりちょっと、何とも言えないなというのがあり ましてね。これは、ACGIHが出している提案理由なのだから、それはそれでということ なのですが、例えば産衛の提案理由もそのまま持ってくる、ACGIHの提案理由もそのま ま持ってくる。グリシドールに関するACGIHのTLVの勧告で言うと、櫻井委員がおっしゃ いましたが、必ずしもヒトの場合はこれで数値がいいのかどうか、もっと高くてもいい のかもしれないし、そこら辺の判断は。 ○輿座長  そういう可能性はある。 ○中明委員  これだけだとなかなか判断できないで、エイヤッでいいのだったらそれでも構わない けれど、ちょっと。それは管理濃度の部分でもそうなのですが、「このままいきますよ 」と言われても、これだけのデータでは、「ああ、そうですか」と、私はちょっと言え ないかなと思っているのです。 ○輿座長  だから本当は、2なら2で決めておいて、あと、それでもって作業環境測定をして管理 をしていって、第3管理区分でも何も出てこないというような状態があったら濃度を高 くする、あるいは逆の場合はもっと濃度を下げていくというような、そういう操作が必 要だと思うのです。それがいまの段階では作業環境測定の結果と、健康影響の健診です か、そういったものの結果とのすり合わせというのは全然、どこでもやっていないわけ です。それを将来やっていく必要があるのではないか、それ以外に方法はないと思うの です。 ○名古屋委員  値は確かにいいのですが、ただ、いままでのこういう提案理由の中に、ヒトの濃度と 動物実験が、これだけ離れた濃度というのはないですよね。先ほど言ったように塩ビの ような形で、塩ビ50のときに2が出てきて2になったというのと、全く同じような形にな っていますから。濃度そのもの自体はいいのですが、動物実験とこれだけ離れていて、 ヒトが2で出てきたから2というのは、なんとなくよく分からないのです。たぶん、2の 所が落とし所なのだろうなとは思うのですが、珍しい例だなという気はしますけどね。 ○輿座長  その辺はなんとも言えないと思うのです。要するに、測定値もいまはまだないわけで す。だから、なんらかの値を決めておかないことには話にならないというのが、事務局 の立場だろうと思うのです。 ○中明委員  発がん性物質と言ったときに、そこの2ppmが適当なのかどうかということには、やは りちょっと。アグリーメントは出せないかなと思っているのですけどね。ただ平成10年 度の、224tしか使われていないというこのデータでいけば、輿座長がおっしゃるよう になかなかデータが国内的にも出てこないと思うのです。 ○輿座長  いや、それは制度がそうなっていないからです。要するに、現在の法律の制度では作 業環境測定の結果と、健診の結果を合わせるというところがどこにもないわけです。だ から、それをなんとかしないといつまで経ってもこの問題はなくならないと思うので す。 ○中明委員  「測ろうよ、測ってデータを出せ」というのは、それはそれで構わないと思うのです が、全然ないと、それ以上ことが進まないから、それなりにデータは必要だと思います けど。それをやるのに2ppmが適当かと言われたら、私はまたちょっとなんとも言えない と。 ○輿座長  それは、皆さんそうだろうと思うのですけどね。しかし、これはちょっと離れすぎて いますが、ある程度データがあって、そのデータをどう決めるかと言った場合には、 ACGIHとか産衛にしても、かなり議論をしながらやっている話ですから。だから、その 辺を事務局は考えていると言うのだったら、その辺で決めておいても問題ないかなとい う気はするのです。 ○名古屋委員  技術上問題なかったら、濃度はいいと思います。 ○輿座長  いかがですか。 ○田中委員  アメリカのOSHAは50ですね。 ○輿座長  OSHAは大体、どれもみんな高いです。 ○中明委員  それにしても25倍というのはちょっとね。 ○名古屋委員  管理濃度の場合にはOSHAのほうが近いでしょう。本来的に、ACGIHというよりは、考 え方としたら。 ○田中委員  考え方の中にね。要するに、管理濃度の場合には、他国の規制状況を見てというのが 入っていたけれど、今回の検討の基礎の中には、他国の規制の状況を入れていないか ら、なかなかそれを採用しにくいのではないかなと思います。 ○櫻井委員  一応、動物に対する発がんということで、ヒトについては何もデータがないけれど、 そうだとしたらやはり、1ppmとか2ppmというぐらいのオーダーでないとね。もっと高い 数十ppmだったら、ヒトである程度の、そういったばく露の経験があって、これといっ たことは、少なくとも証明されない。ゼロであることを証明することは難しいけれど も、ポジティブだというデータがないということであれば、それはもう少し高くてもい い。しかし、この場合はそういうデータがなくて、2ppmならば何も見つからないだろう という。そのデータももちろん、完全にゼロであることを証明するほどのデータではな いにしても。では40とか50にできるかと言えば、それはできないと思うのです。 ○輿座長  うん、40、50はちょっと無理だろう。 ○櫻井委員  全然出さないという判定はあるかもしれませんが、出さないか、2を採るかどちらか。 ○輿座長  そうですね。採るとすれば。 ○櫻井委員  高すぎることもない。だから2ppmで、非現実的に低すぎるということであるならば、 実態調査をするとかいうことで、もう少しデータをしっかり集めるとか、新しいデータ を作るとか。 ○輿座長  だから本来は、ヒトのばく露を中心にしてデータを取って、それから決めましょうと いうのが本筋だと思うのです。 ○櫻井委員  だけど今後そういうことはできないと思うのです、どんな化学物質でも、ヒトのデー タがなくて決めなければならない場合のほうが増えると思うのです。 ○輿座長  そうです。だから私がさっき言ったのは、こういうものを使って一応決めて、そのあ と、作業環境測定も健康診断も全部法律で義務がかかっているわけですからね。それを 例えば、健診の個票のいちばん終わりの所に1行付け加えて、どういう物質の下で働い ていて、そこの管理区分がいくらだったということだけを書いておけば、あとでそれを ひっくり返せば全部わかるということになると思うのです。それで例えば、2ppmで第3 管理区分の所に何十人か何百人かいて、そこで何も起こらなかったとしたら、基準濃度 はもっと上げてもいいという問題になるのではないかと思うのです。逆の問題もあると 思いますね。第1管理区分で、なおかつ問題が起こったということだったら、もっと下 げなければいけない。だから、作業環境測定と健診のデータの突合せをいままでそれぞ れ、健診は健診、測定は測定で義務づけてありますが、その間のつながりが全くないわ けです。せっかくお金をかけて、労力をかけてやっているわけですから、そのつながり をつくっていく必要があるのではないかと思うのです。  それをやらないといまの議論はいつまで経ってもなくならないのではないかと思いま す。それはまさに、我々が管理濃度を考えるときに塩ビでいやというほど経験したわけ です。あれは半年以上かかりましたが、調査をして、その結果、2ppmという数値を出し た。こういうことですよね。そのときにはばく露限界はなかったわけです。それに従っ て、2ppmまでならなんとかできるだろうと、それだけのことで2ppmという数値を決めた わけです。  そんないきさつをご存じの方が何人ぐらいいるかわかりませんが、そういういきさつ で管理濃度というのができてきたということを考えると、健診と測定結果というのは、 もう少しくっついてもいいのではないかという気はするのです。それがない限り、いつ まで経ってもこの議論はなくならないと思うのです。ちょっと話がずれましたが。 ○田中委員  参考資料−4に、これが検討課題にあがった基本的な材料があります。「職業がん対 策専門検討会の検討結果の報告」というのがあって、櫻井委員がこの座長ですので、先 生の印象ではやはり2ぐらいが適当ですか。 ○櫻井委員  参考資料−4の3頁のデータを見ますと、グリシドールによる腫瘍の発生が、上のラッ トの場合で3と10と30ppm。10ppmで明らかに中皮腫の発生と乳腺の線維腺腫が増えてい ますね。 ○田中委員  3ppmぐらいからありますね。 ○櫻井委員  3ppmはコントロールと同じです。だから10ppm、これは有意であるかどうかは書いて ないのですが、印象としてはこれは間違いなく有意だと思うのです。マウスのほうで見 ても、13ppmからですね。この場合、発がんのNOELが3ppmということになりますね。で すから、もしこの動物のデータだけからいま決めるのだったら、少なくとも3よりもか なり低くしたいという気は起こります。だから2というのはぎりぎりの線だと思います。 でも、出さないより出しておいたほうがいいのではないですか。 ○輿座長  それはそうですよ。出しておかないと、いつまで経っても出てこない、何も出てこな いですからね。 ○田中委員  少ない資料から何か出さないと、前に進みませんからね。 ○櫻井委員  一応ACGIHが、4年ぐらい経ってこれを1998年に出しているということを評価して。こ れはそのもっと前から出ていたのではないですか。そうすると、一応そういう数字で長 く通ってきているという実態は、あることはあるわけですね。 ○中明委員  1995年ですね。文書改定は95年です。 ○櫻井委員  いちばん最初は95年ですか。今回の結果もほぼ同じような結果ですから。 ○中明委員  ヒトではわからないけど。 ○櫻井委員  ヒトではいまからも分かりませんし。 ○中明委員  そうすると、2でいいのかというのがある。当面いいですよね。 ○輿座長  差し当たりその辺で決めておく、決めるとすればその辺にしておく必要があるのでは ないかということですよね。 ○田中委員  それが前提条件として、ACGIHがある数値を採ろうという感じになっている。 ○輿座長  いかがでしょうか、グリシドール2ppmという数値は。中明委員、いいですか。 ○中明委員  はい、まあ、こんな。 ○輿座長  わからないけれど、しょうがないというところですか。  それではよろしいということで、一応、グリシドールについては2ppmということで。 あとから測定の問題が出てきますので、それまでの間、仮に2ppmという値にしておこう と、こういうことです。  次の物質はクロトンアルデヒドです。事務局のほうから説明をお願いします。 ○大淵有害性調査機関査察官  先ほど説明させていただいて、事務局としては、0.3の約半分ということで0.2ppmで いかがでしょうかということです。 ○輿座長  0.2ということですが、これは資料番号−7の2頁目にあります。事務局としては0.2を 採りたい。というのはシーリングが0.3で、シーリングのあるものは、作業環境測定の 基準としては大体2分の1にするというのが前からあるわけです。半分というと0.15にな りますが、そういう場合には一応切上げて0.2にしておくというのがいままでのやり方 です。そういうことを踏まえてシーリング0.3を、平均濃度として0.2にするという提案 です。いかがでしょうか。 ○中明委員  ACGIHのヒトの研究の所を見ると、4.1ppmぐらいを15分で鼻及び上気道に強い刺激で すね。だから、そういった刺激があるかないかということを1つのインデックスにする のかどうかということがありますね。もちろん結膜炎や不快感とか、そういうものもこ の中で、一応考慮していくのかどうか。 ○輿座長  ヒトではこういう実験しかなかったということです。 ○中明委員  そうするとまただいぶ考え方が違ってくると思う。その刺激作用云々というのが影響 だと。影響だと言えば影響なのだけど、それが比較的短時間です。この場合にはばく露 は顕著だけど、もとに戻るというのではなかったのですか。 ○輿座長  ここのヒトの研究では刺激性を書いてあるのですが、刺激性があるからこの物質を行 政が指定をしたいということではないわけですね。要するに、発がん性の問題でしょ う。発がん性があるからということでこの物質を。 ○中明委員  それだったらここは、ヒトの研究の中ではそういうものは。こういうものしかないわ けですから。発がんのことについてはここは何も触れていないわけですから。 ○輿座長  なかったということです。 ○中明委員  だからそうすると、そんなに高くなくてもいいのかという話にもなりかねない。櫻井 委員に出していただいたバイオアッセイのデータでいくと、動物実験で腫瘍の発生は、 3ppmでも、6ppmでもほとんどないわけです。12ppmで少し出てくる、そういうレベルで すね。低く抑えるのは、それはそれでいいのだけど、あまりにもACGIHのその提案理由 がベースになって云々ということでは、本当にこれでいいのか、大丈夫なのかと言われ たら、どうかなと思います。皮膚に対する影響などは、それは必要かもしれません。C マークをつけたのはたぶん刺激だろうと思うのです。 ○名古屋委員  でもこれは、グルタルアルデヒドのときもそうだったのですが、発がん物質ではない がCがついているというものについては、感作性のものがあるときにはその値を採って いるから、これは採らざるを得ないのかなと個人的には思います。動物実験でも、ここ には発がん性の証拠は認められなかったと書いてありますが、刺激性というのも1つ大 きなファクターにはなってくるのではないかと思います。 ○輿座長  動物実験の結果はかなり濃度の高い値ですね。 ○名古屋委員  高いです。さっきもそうですけどね。 ○輿座長  だから、ACGIHの0.3とはだいぶ話が違うということです。いかがですか。 ○田中委員  櫻井委員のところの委員会報告では、3ppmで1例出ています。非常に稀ないわゆる線維 腺腫。3ppmで、その10分の1を採れば0.3ということになってくる。 ○櫻井委員  これは他の発がん物質、ホルムアルデヒド等の類似性というようなことも言っていま すね。ホルムアルデヒドもごく最近、IARCでグループ1に格上げになってしまったりし たのですが、必ずしも変異原性に基づく閾値のない発がんと考えなくてもいいのではな いか。少なくとも、刺激のないところまで抑えれば、発がんも問題はないだろうという ような考え方が通常よく行われているわけですが、ホルムアルデヒドの場合にはそこま で下げるのは非常に難しいと思いますね。刺激のないところまで下げるというのは、現 実には非常に難しいので、いまは妥協でああいう数値になっているわけですね、刺激の 程度があまりひどくないということだと思うのです。この場合も同じように、ホルムア ルデヒドほど根拠は十分ではないけれど、動物に対して比較的低い濃度で発がん性があ るので、その刺激のないところまで抑えることができるなら、それを許容濃度にしても いいだろうというように考えます。  ですからこの場合は0.3をシーリングにしていますが、これもどれだけの根拠がある かどうかわからない。本当の意味で、0.3で全く刺激がないというのか、それとも、ひ どい刺激はないというのかよくわからないのですが。 ○輿座長  それはここに「作業場空気中、クロトンアルデヒド濃度0.1ppmに抑えることが他の刺 激物質と一致すると思われる」と書いてあるだけで、0.3だったらどうかということは 書いてないのですね。 ○櫻井委員  そこまで正確には出せないけれど、0.3あたりではないかという判断です。当面私は、 ACGIHの判断を採用してもいいのではないか、いつも、ACGIHにもいろいろ問題点がある ので、そのまま採用していいというようには考えていないのですが、この場合はそれで いいのではないかと思います。 ○輿座長  これは、現場で測ったデータというのは1つもないのですか。 ○大淵有害性調査機関査察官  現場で測ったデータは、私どもがいま直接は持っていないのですが、これから指針を 出すに当たって、近々、こういった物質を作っているメーカー等にヒアリングをする予 定でいまして、その際にもし作業環境測定をやっていれば、その結果について教えてく ださいということでお願いしたいと思っています。ですからそのときにわかるかもしれ ませんが、いま現在はデータを持っていません。 ○輿座長  現場の状況がもし10倍も100倍も違っているとしたら、そこへ急に0.2などと出した ら、仕事ができなくなってしまう可能性も出てくるわけです。 ○櫻井委員  クロトンアルデヒドというのは非常に刺激の強い物質だということは昔から言ってい るのですけどね。だから、0.3をシーリングしているわけです。 ○輿座長  このACGIHのを見ても、0.3というのは数字が出てこないですね。 ○田中委員  資料番号−10の7頁目「Chemical and Physical Properties」の3行目に、「The odor threshhold is reported as 0.12ppm.」とあり、非常に低い濃度で、0.12で臭うと書 いてありますよ。 ○輿座長  低い濃度で感ずることは感ずるわけですね。 ○田中委員  だから0.3だったら完全に感じます。 ○輿座長  だから0.3はシーリングなんですね。平均濃度にしたら0.2ぐらいという話。 ○田中委員  0.2で臭う程度にはなるでしょう。 ○大淵有害性調査機関査察官  ACGIHでホルムアルデヒドが、シーリングで0.3となっているので、その値を参考にし て決めたのかなと読みながら推測はしたのです。この資料には直接は書いていないので すが、ACGIHが示している表で予めホルムアルデヒドを見ました。そのときがシーリン グ0.3ということでした。 ○輿座長  あとは、その0.3にしたときに現場が追いつけるかどうかという問題です。努力する 必要はあるかもしれないけれど、追いつくことはほとんど不可能だというような話にな ってしまうと、これはまた問題があると思うのです。ある程度その技術・可能性があれ ば0.2でも構わないと思うのです。 ○櫻井委員  常にそれをクリアしていくというのは非常に困難なことですが、ある程度は。 ○輿座長  そうです。だから、どこかで決めておかなければいけないのだけど。 ○櫻井委員  この場合は、非常に刺激性の強いものだし、これぐらいに抑えて当然だと思います ね。また抑えられると思います。 ○輿座長  刺激性が強いものだから、おそらく現場でも抑えているだろうと思うのです。その抑 えているだろうと思われる濃度が現在どのくらいになっているかということだと思うの です。それが0.3とか0.5だったら、0.2にしても可能だろうと思うのですが、どうにも しようがなくても、測ってみたら50あったという話になると、その50を0.2にすること は可能かどうかという話も出てきてしまうわけです。 ○名古屋委員  分析的には菅野主任研究官のものだと、0.02が定量下限だから0.2にしても全然問題 ないので、分析は問題なくて、現場の話ですよね。ここの2つとも、要するに現場と動 物実験があまりにも離れすぎているデータがあってということですね。 ○中明委員  私はやはり、ここで刺激が大事だと言って、刺激も基準値を決める1つの指標にする のだと言うのだったら構わないと思います。 ○輿座長  刺激を基準にする。 ○中明委員  いま、これはそうでしょう。 ○輿座長  いや、これはそうだけど。 ○中明委員  刺激のファクターが問題なんですね。 ○櫻井委員  発がん性があるから問題になるわけですね。 ○中明委員  とりあえず刺激ですよね。刺激もやっぱり。 ○櫻井委員  許容濃度委員会でも、だんだん厳しい方向を採ってきているでしょう。そういう流れ できていて、私はやはり刺激というのは軽視してはいけないと思っていますし、特にこ の場合は発がんが懸念されているから、できるだけ刺激のないところまで。大体、刺激 のあるところで発がんも起こっていますよね、ホルムアルデヒドなんかね。 ○中明委員  それはそうですね。 ○輿座長  そうすると、一応0.2ぐらいで決めておいて、あと、データがどういうようになって くるかということではないかな。 ○中明委員  たぶん、ACGIHが0.3でCマークをつけているというのは、それなりの何かあったのだ ろうと思います、ここには完全にフォローアップしていないけれど。 ○輿座長  おそらく短い時間であったということではないかと思うのです。  いまのような議論で0.2でよろしいですか。では、クロトンアルデヒドは一応0.2とい うことにしておきます。  次にヒドラジンですが、これは事務局のほうでも数値を出していません。というのは、 ACGIHと産衛とで10倍違うということがあるために、一体これはどうなのかということ だろうと思うのですが、これは一体どちらを採ったらよろしいか。そういう議論だろう と思いますが、いかがでしょうか。 ○櫻井委員  私は産業衛生学会の0.1を採用するほうが適切だと考えています。その理由は、産業 衛生学会でその前に0.01を提案したことがあって、それを0.1に変えているわけです。 0.01に提案したのは1994年で、その後1998年に0.1に変えた。ACGIHはだいぶ古く、 1989年に0.01にしているのですが、文書改定が1996年。ですからその年代からいくと、 日本産業衛生学会が決めたのがいちばん最近だということ。その引用している文献にも 非常に大きな違いがありまして、いちばん新しい日本産業衛生学会のところでは、ACGIH の文書改定後に出ている文献をかなり大きな、重要な根拠にしています。それが2つあ って、資料番号−8の4頁、25)とNomiyamaらの26)、27)。 ○輿座長  25)は95年になっています。 ○櫻井委員  95年ですが、これはACGIHでは引用していないです。まだ出たばかりだったから、た ぶん目に入っていなかったと思います。その順番でいくと25)のMorrisらというのは、 3頁の左の真ん中よりちょっと上にありますが、作業者に関する疫学調査が報告されて いる。24)はACGIHも引用しています。427人の作業者を1971年から1982年まで、8,351 人年追跡調査したところ、「ばく露に由来すると思われる発がん率の上昇、あるいはが ん以外の死亡においても、非ばく露集団との間に差が見られなかった。この研究から、 1ないし10ppm程度のばく露では健康影響は認められないことを示唆している」。すぐそ の下2行で、「さらにこの追跡調査は10年後にも行われ、1万1,664人年の追跡でも同じ 結論だった」。これが25)ですね。この後のほうはACGIHでは引用していません。前の ほうは引用していて、それについては、ヒドラジンについて翻訳したものの18頁のいち ばん下のほう、「6カ月以上勤務する427名のコホートにおける死因からは、ヒドラジン へのばく露と死因との関連性は明らかにならなかった」。一応それは引用しています が、ACGIHがこの1から10ppmを採らないで0.01にしているのは、その「ヒトのデータ」 がまだ十分ではないと考えたのだと思います。そこのところはどこかに書いてあるので すか。それを評価しなかったとは書いてないですね。まず1つそういうことがあります。  Nomiyamaらの報告は、日本産業衛生学会の3頁の左下から右上にかけて。これは日本 人のヒドラジン一水和物製造工場の疫学調査。5工場で172名について調べて、結論的に 「日本国内のヒドラジン一水和物ばく露レベル2.8ppm・年では健康影響は認められない 」こういうデータがありますが、これはACGIHでは見ていません。それで、産業衛生学 会の論拠になっているのは、3頁の右下に書いてある、先ほどのサマリーでも示してい ただいたとおりで、「作業現場でのヒトの疫学情報によれば0.1ppmで、ばく露に関連し た健康影響はacetyltransferaseの表現形によらず」と書いてあります。表現形がラピ ッドでもインターミーディエートでも、あるいはスローでも証明されなかったというこ と。これは2.8ppm・年というのと0.1ppmと書いてありますね。0.1ppm・28年というのと ほぼ同等ですけど。 ○輿座長  提案理由を検討する限りでは、産衛のほうがきちんとした引用をして、妥当性がある ということですね。あと、もう少し乱暴なことを言うと、0.01と0.1とあるわけですね。 仮に0.01を採ったとして、これをずっとやっていたところ、0.01はどうしても低すぎ る、もう少し高くしてもよろしいと言ったときに、行政は高くできるかというと、おそ らくできないだろうと思うのです。というのは、現場は0.01を目標にして進んでいくわ けで、それをあるところで、そこまでやる必要はないということは、おそらく言えない だろうと思うのです。そうすると、現在のこの提案理由から見る限りでもACGIHより産 衛のほうが、この場合にはどうやら分があるという考え方をすれば、0.1を採っておい たほうが無難だろうという気はします。 ○櫻井委員  このACGIHの勧告値、資料番号−7の3頁のいちばん下に「勧告値」と書いてあって、 「0.05ppmにばく露させたラットで認められた鼻腫瘍の発現率がわずかに高かったこと に基づき」と書いてあるわけですが、0.05というのはわずかに高くて、しかも有意では なかったと書いてある。有意ではないわけです。だからこれを根拠にするということは 正しくないと思うのです。  それから、ラット及びマウスで、0.02ppmで鼻に対する刺激を含む他の毒性徴候がメ チルヒドラジン等のその他ヒドラジンで認められた。でも、それはやはりいくらなんで も、違う物質ですから、それをそのまま持ってくるというのは問題があると思います。  ですから、0.01という非常に低い数字を勧告しているけれど、その根拠は非常に薄弱 だと思わざるを得ない。 ○輿座長  根拠が非常に強ければいいのだけど。 ○櫻井委員  それに比較して、現在の産業衛生学会の根拠のほうが明確で、根拠としての確実性が 高いと思います。  それから、前に産業衛生学会が0.01ppmにしたときは、いま言ったような根拠がなか ったわけです。あとで追加されたその根拠がなかったということ。それで非常に無理を しています。私は、確認して読んできたのですが、ヒドラジンを発生することがわかっ ている薬剤を飲んでいる人との類推で、非常に無理した根拠を挙げているのです。その ときはACGIHも0.01だから、0.01にしておいたほうが無難かなということで、無理にそ ういう論拠をつくっていたと思えます。その後もう少しきちんとした根拠が出てきたの で0.1にしたという経緯があります。 ○輿座長  これは産衛が1回0.01にしたことがあるという物質ですよね。それをわざわざ0.1にし てあるわけだから、かなりの根拠がなければそれは、産衛としてはできないわけですよ ね。そういう意味では0.1にしておけばいいのかなという気はします。 ○田中委員  よくわかりましたから、これでよろしいのではないでしょうか。 ○輿座長  いかがでしょうか、よろしいですか では0.1ということで。  これで3つの物質の基準濃度は一応決まりましたが、その濃度が実際に測定できなけ れば話にならないということで、測定の技術的な検討をしていきたいと思います。それ についての資料の説明をお願いします。 ○大淵有害性調査機関査察官  測定関係の資料は資料番号−11です。「検討対象物質の測定技術に係る資料」という ことで、3つの物質について日本作業環境測定協会への委託研究、それと、産業医学総 合研究所の菅野先生に依頼して、適当な測定方法があるかどうかということで検討して いただいています。それを、1頁目は表形式でまとめたもので、2頁目からがそれぞれの 具体的な測定方法です。  まず1頁目ですが、それぞれの物質について産衛の濃度とACGIHの濃度を示し、それか ら試料採取方法、分析方法、捕集空気量、定量下限値を示しました。評価という所は、 その産衛なりACGIHの濃度の10分の1まで測定できるかどうかを実験で確認して、測れた という場合に○印をつけています。  グリシドールについては、試料採取方法は固体捕集方法で、分析方法はガスクロマト グラフ又は高速液体クロマトグラフで行って、捕集空気量は10ないし5L、そのときの定 量下限値は0.2ppmあるいは4.9ppb。先ほど、仮の基準濃度ということで2ppmというお話 でしたが、2ppmの10分の1というと0.2ppmですから、ここに書いてあるいずれの方法で もその10分の1という条件をクリアすることができるという状況です。  クロトンアルデヒドについては、測定方法はDNPH誘導体化捕集方法、分析は高速液体 クロマトグラフ、6Lを採取した場合で32ppb。これについては先ほど、仮の基準濃度と して0.2ppmというお話でした。このままの濃度だと0.2の10分の1で0.02ppm、ppbに直す と20ppbにはちょっと足りないというところになるのですが、採取する空気の量を増や せば十分可能だということです。  ヒドラジン一水和物については、固体捕集方法、液体クロマトグラフ分析方法で、 240L採取した場合0.58ppbというところまで分析できるということです。先ほどこれに ついては、産衛学会の0.1ppmを基準濃度にしようということになりましたが、その10分 の1の0.01ppm、ppbに直すと10ppbで、十分測定が可能ということになります。  時間の関係もありますので、具体的な測定方法については後ほど、必要があるときに 見ていただくということで、私の説明はこれで一旦区切りたいと思います。 ○輿座長  要するに、測定技術としてはいま仮に決めた値としても問題ない、10分の1までは十 分に測れるということです。 ○菅野主任研究官(産業医学総合研究所)  最初の表にしていただいたものは、OSHAのものをそのまま訳したもので、私が検討し たところでは、クロトンアルデヒドでは2Lの捕集量で0.02ppm、ヒドラジンについては 10Lの捕集量で7ppbと確認しました。 ○大淵有害性調査機関査察官  資料の18頁に、クロトンアルデヒドについて菅野先生に検討していただいたものがあ ります。下から6行目あたりに、「検量線に用いた最低濃度を定量下限とすると、相当 する気中濃度は捕集空気量2Lの場合0.02ppmである」と書いてあります。ヒドラジンに ついては21頁の真ん中あたり、「定量下限」という所で10L採取で7ppbと書いてありま す。 ○輿座長  これはスピードは1L毎分ですか。 ○菅野主任研究官  そうです。 ○輿座長  では、10分ですね。 ○菅野主任研究官  そうです。両方とも10分としてあります。 ○輿座長  そうすると、測定技術としてはどれも問題がないということですね。 ○菅野主任研究官  唯一問題があるのはクロトンアルデヒドのほうで、市販品のサンプラーというのがあ りますが、これが、たまたま私が購入したものがということかもしれませんが、ちょっ とバックグラウンドが大きくて、ここに書いた濃度まで測れるかどうかわかりません。 自分で精製して作れば測れることは明らかなのですが、製品によってちょっと問題があ るという感じです。 ○輿座長  それはガイドブックかなにかにきちんと書けばいいわけでしょう。 ○菅野主任研究官  はい、ですから精製して、自作すると書くほうがいいと思います。 ○輿座長  ガイドブックにきちんと書いていただくことにすれば問題はないと思います。測定技 術に関してそのほかに何かありますか。測定技術に関してはこれでいけると考えてよろ しいですね。 ○中明委員  資料番号−11のヒドラジン、液体クロマトグラフと書いてありますね。これは高速は 必要ではない、普通の液体クロマトグラフでいいわけですか。 ○菅野主任研究官  高速液体クロマトグラフです。私のまとめがちょっと不完全だったのか、ちょっと取 違えがあったようです。 ○中明委員  これでこのまま出てしまうとちょっとあれですよ。高速ですね。 ○菅野主任研究官  はい。 ○名古屋委員  だから、240が大気のものなのですね。 ○中明委員  普通の液体で241です。 ○輿座長  よろしいですか。  そうすると、これで今日の審議事項は全部終わったわけで、一応、予定の事項を終了 したということで、事務局から何かありましたらお願いします。 ○角元化学物質評価室長  本日のご検討、長時間にわたりありがとうございました。お礼かたがた閉めのご挨拶 をさせていただきます。  本日3物質についてご議論いただきました結果につきましては、事務局のほうで報告 書案を取りまとめの上、今月中に委員の先生方のほうへお送りして、年内には報告書と して確定させていただきたいと思います。これらの物質に係る健康障害を防止するため の指針につきましては、現在並行して作業を進めておりますが、来年の3月、本年度末 ごろを目途に官報公表、あるいは運用通達の形でのまとめをさせていただく予定にして おりますのでよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。 ○輿座長  それでは今日の検討会はこれで全部終了ということです、どうもありがとうございま した。