04/11/11 社会保障審議会医療部会第3回議事録           第3回社会保障審議会医療部会 議事録(案)                      日時 平成16年11月11日(木)                         9:30〜                      場所 厚生労働省7階専用第15会議室 ○企画官(梶尾)  それでは定刻となりましたので、ただいまから第3回社会保障審議会医療部会を開催 させていただきます。皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席くださいまして、 誠にありがとうございます。  初めに、本日の委員の出欠状況についてご報告申し上げます。尾形委員、見城委員、 小山田委員、鮫島委員、辻本委員からはご欠席の連絡をいただいております。なお、鮫 島委員の代理としまして日本精神科病院協会副会長の谷野克爾参考人にご出席をいただ いております。お二人ほど遅れておられますが、野呂委員からは遅れるとの連絡をいた だいております。ご出席いただいている委員の皆様方で定足数を超えておりますので、 会議は成立しております。  次に資料の確認をさせていただきます。座席表と議事次第のほかに、資料1、資料 2、資料3の3種類。あと参考資料1、参考資料2、参考資料3で、資料番号等は付い ていませんが、国立成育医療センターのパンフレットをお配りしております。なお、前 回高智参考人からご報告いただいておりましたとおり、福島委員から参考資料の提出が ありましたので、健保連作成の「『ぽすぴたる!』について」という資料をお配りして います。不足等がありましたらご指摘いただきたいと思います。また、乱丁、落丁等が ございましたら、随時ご指摘をお願いいたします。  本日初めてご出席の委員のご紹介を申し上げます。全国知事会(三重県知事)の野呂 昭彦委員です。それでは以降の進行について、部会長よろしくお願いいたします。 ○鴨下部会長  本日は少しいつもより早いわけですが、お集まりをいただきましてありがとうござい ます。議事に入ります前に、いまお話がございました本日欠席の鮫島委員の代理として 出席をいただいております谷野克爾参考人の出席については、ご異議ございませんでし ょうか。よろしゅうございますか。                  (異議なし) ○鴨下部会長  ありがとうございました。それでは早速、議事に入らせていただきます。本日の議題 は、「質の高い効率的な医療提供体制の構築」です。全体の分量が大変多いものですか ら、大きく3つに分け議論を進めたいと思います。資料についても資料1から2、3と 分かれていますので、まずは資料1の「医療機関の機能分化・重点化・効率化について 」、約40分程度ご議論をいただきたいと思います。まず、最初の議題について、事務局 からご説明をいただけますか。 ○企画官  ご説明いたします。本日も参考資料1ということで、ビジョンの進捗状況の該当部分 をお配りしておりますが、ビジョンの大きな2つ目の柱である「質が高く効率的な医療 の提供」についての状況です。そのうちの「質の高い効率的な医療提供体制の構築」の 中の「医療機関の機能分化・重点化・効率化」ということで、資料1に沿って申し上げ ます。ビジョンにおいては将来像のイメージとして、急性期医療、長期療養など医療機 関の機能分化が進むとともに、病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション等が十分に 連携して、質の高い医療を効率的に提供するということで、急性期、長期療養などのそ れぞれの場面でイメージを掲げたところです。  1頁、医療提供体制に関する基本的なデータということで、最近の数字に更新し、統 計に一定の限界はあるわけですが、各国比較の資料を用意しました。定義も国によって 違いがあり、単純に比較できないところもありますが、本日のテーマに関する部分を取 り出して申しますと、日本は諸外国に比べ、人口当たりの病床数が多い、平均在院日数 が長い、あるいは外来を受診する回数も多いというような状況です。次頁以降に経年デ ータも付けています。経年データを見ていただきますと、それぞれ近年、いま申し上げ たような事項について改善がされてはいるわけですが、諸外国に比べますと、日本は未 だ多い、あるいは長いといった状況です。  こうした背景の下で、患者の病態に応じた医療を提供するために、より機能分化と連 携を図っていく必要があるということで、ビジョンで将来イメージを描いたわけです。 これを図に示したのが5頁です。左側が現在、右側が将来像です。このビジョンは昨年 8月に作りましたので、第五次医療法改正の一般病床と療養病床の届出が完了していな い段階だったものですから、左側はこういう図になっていますが、従来はその他病床の 中に長期療養が必要な患者を含め、さまざまな病態の患者が混在していたという状況を 改善し、それぞれの病態にふさわしい医療ができるように、前回の医療法改正におい て、病床区分の変更を行ったもので、ビジョンにおいてはこの区分を基本として機能分 化を推進するという文章を書いています。  なお、昨年9月の届出結果と、その後の状況については7頁です。昨年9月の届出の 段階では、1番の(参考)にあるような第四次医療法改正前の平成12年10月に比べる と、差し引きで10万床ほど療養型の病床が増えて、一般は92万3千、療床は34万6千とい うことでした。その後、本年7月の数字が概数で書いてあります。一般病床から療養病 床への若干の移行傾向が継続していますが、大きな変動はないという状況です。  この頁の2番として、療養病床のうち、介護保険適用と医療保険適用がどのようにな っているかという状況を示しています。総数が37万と前記の34万と違うのは、診療所の 療養病床などが含まれているので、総数は違っていますが、おおむね3分の1、37%が 介護保険適用、3分の2が医療保険適用ということになっています。  この療養病床に関して、そこにどういった病態の方々が入っているかというのが8頁 です。医療経済研究機構の実態調査で、医療保険の療養病床で43%、また介護保険の療 養病床で36%の入院患者が容態急変の可能性が低く、福祉施設や在宅によって対応でき る人たちであるという調査結果になっています。  9頁は医療療養病床と介護療養病床の比較をした表です。10頁以下は、介護保険適用 の療養型医療施設がほかの特養や老人保健施設といった介護保険施設と比較し、職員配 置や構造設備の基準がどうなっており、また、平均要介護度がどうなっているかなどの 比較表を付けています。こういった関連の制度も含め、幅広くご議論いただければと思 います。  12頁からは「医療計画の見直しについて」の資料で、前回10月の部会において、ワー キンググループの報告書をご紹介しましたが、医療計画の見直しについては、専門の検 討会で現在並行して検討をいただいているところです。ワーキングの報告書のポイント は13頁以降に文書を付けていますが、この1枚紙にまとめた絵で見ていただきますと、 12頁の右側の箱の中に「数値目標と定量的評価の導入」とありますが、今後、国で基本 方針、すなわち国としてあるべき医療提供体制のビジョンを示し、これに基づき都道府 県で具体的な実行計画としての医療計画へと発展させていただく。この実施に対しては 国が参考指標を提示するとともに財政支援を行う。その際には地域が自主性・裁量性を 発揮しやすいようにしていくという趣旨で、国と地方の役割分担という場面で、医療計 画の見直しと補助金改革の関係を前回のこの部会で説明しました。ワーキングのポイン トを飛ばして、17頁から3枚、10月末に三位一体改革に関する地方6団体提案に対する 厚生労働省代替案を出したわけですが、その一環として提出している「保健医療体制関 係補助金の交付金化・統合補助金化の概要」という資料を付けています。  これに似たような資料を前回の部会で説明したわけですが、前回と違うのは健康増 進、地域保健の関係も含めた包括的な形で整理をしているということと、18頁では補助 金改革として施設整備費については交付金化、また、事業費・設備整備費について統合 補助金化ということを明記し、また、補助金改革については18年度から前倒しで実施し ていくということが、具体的に明記した表現で前回と変わったところです。  20頁では病診連携、あるいは地域医療連携の推進、在宅医療、訪問看護といったこと についての部分です。「地域医療連携の状況」ということで、診療報酬の紹介外来加算 の適用機関数が、平成12年の制度の創設以来着実に伸びていること、あるいは地域医療 支援病院の開設数の伸びのグラフを付けています。  21頁には地域連携の1つの例として、10月22日の医療保険部会でも出された資料です が、「熊本市地域における急性期から慢性期に至る医療機関の連携」といった形で、地 域で話合いがされ、取組みがされている1つの例ということで紹介しています。熊本市 には急性期特定入院加算病院が4つあるそうですが、それぞれの特徴の違いが生じ、地 域の開業医等にとって、患者の病状により適切な提携先を見つけることが可能になって いるということです。この絵の右端のD病院というところに(1)で、地域との「連携 クリティカルパス」と書いてあります。22頁の左上、連携パスの基本構造は、自分の病 院内の各科連携といった単独のパスではなく、退院後の自宅に至るまでの計画を連携パ スということで、入院時に最初に作ってしまうという取組みが行われているということ で、右下の(4)に記載している転院や自宅退院に至る在院日数が短くなっている。早 く自宅にお帰りいただくことができているという導入効果も出ているということが、1 つの例として示されています。  23頁は平成9年の第三次医療改正で制度化された地域医療支援病院についての現状 で、今年になって開設主体の拡大や要件の緩和を行ったところですが、現在全国で85の 病院が指定されています。このパートの最後は、在宅医療の関係です。29頁、平成9年 に在宅医療に関する報告書をまとめており、さまざまな分野で推進策が必要であるとま とめたものです。改革のビジョンでは、かかりつけ医(歯科医、薬剤師)の普及・定着 や訪問看護ステーションの普及・充実が記載され、また、医療計画にも在宅医療の推進 を明確に位置付けるべきだということが、ワーキンググループの報告にも記載されたと ころです。  30頁は昨年3月の「新たな看護のあり方に関する検討会報告書」の抜粋ですが、在宅 医療にかかる部分としては、医師による包括的な指示の下で、疼痛などの苦痛症状に対 し、看護師が責任を持って症状を観察し判断し、適切な服薬支援をすることが望ましい ことや、在宅での終末期のケアの中で、死に立ち会った看護師のかかわり方や医師の連 携のあり方などが明確化されたところで、現在報告に沿ってさまざまな取組みを進めて いるという状況です。在宅医療の推進が求められる中で、訪問看護ステーションの役割 が重要になっているわけですが、なかなかその数が伸び悩んでいるという事実を踏ま え、31頁で、本年度からALS患者など人工呼吸器を装着しながら、在宅療養している 患者に対する24時間の訪問看護を充実するためのモデル事業など、医療ニーズの高い療 養患者の支援に向けて、訪問看護推進事業を実施しているところです。 ○鴨下部会長  大変資料が多岐にわたった内容ですがご理解いただけたでしょうか。ただいまのご説 明、あるいは資料に関する質問も含め、自由に意見交換をお願いしたいと思います。大 体30分ぐらい時間をとらせていただきます。どなたからでもどうぞ。 ○龍井委員  少し基本的な質問になるかもしれませんがよろしくお願いします。1頁目の毎回お馴 染みの数字なのですが、これは諸外国と比べて突出していることだけではなく、改善を しなければならない状況であるという問題意識があると思うのです。その場合に、特に 病床数当たりの医師数よりも、むしろ看護職員の数が、毎回ほかと比べて差がある。人 口当たりに引き直せばまた違うデータになるのかもしれませんが、ここがいろいろなト ラブルの発生も含めて、大変大きな問題だと我々は思っていまして、その辺、大きな改 革が必要だと思っています。この辺の要因をあらためてどのようにご覧になっている か。特にいちばん右側の外来受診率についても突出している。これは当然65歳や70歳以 上になれば、もっと受診率が高いと思うのですが、特に日本でこれだけ高い理由という のはどうなのか。これは診療科の方も含めて何かご意見があれば教えていただきたいと 思います。  8頁で、先ほどご紹介があったいちばん右側の42.5%とあるのはいわゆる社会的入院 といわれている問題だと思うのです。当然介護保険導入時にはこれをどうなくしていく かという基本的な問題で議論していたはずなので、これは平成13年になっているので、 その後とそれ以前の実態も知りたいので、どう推移しているかを教えていただきたいと 思います。もし、なければきちんと精査をする必要があるだろうと思っています。  17頁の説明で地域保健計画、いちばん右側にある現行のいろいろな老健制度に基づく 事業や諸々ある事業主体が違うものがあったりして、県として改めて地域保健計画を作 る場合に、確かに位置付けの明確化と書いてあるのでこれからなのかもしれませんが、 ほかの関連のものを単純に網羅してやるものなのか、あるいは都道府県の権限というと おかしいのですが、ある程度調整をした上で行っていくような、そういう計画をイメー ジされているのか、そこがつかめないものですから教えていただきたいと思います。  地域のネットワークのところで熊本の例が出されていましたが、たまたま熊本だから こういうことができるのだという評価が私どもにはよくわからなくて、うまくいけばこ れはモデルになり得ると思うのですが、ほかのところでそのようなチャレンジがされて いるのかどうか。熊本の場合にこういうシステムができたことによって、例えばトータ ルとしての医療費が少し減っているとか、何かそういう実績について、もう少しデータ があれば教えていただきたいと思います。 ○鴨下部会長  それでは事務局からお答えいただけますか。 ○総務課長  最初に外来率が高い理由ということで、先生方からもご意見をいただければと思いま すが、やはり外来が高いのは日本の医療保険が皆保険として整備され、適度な患者負担 で受診できるという医療保険制度が整備されていること。また、自由開業医体制という ことで、医師が自由に開業できるということで、医療提供体制が整備されてきたという いくつかの理由でなっているということではないかと思いますが、それにしても高すぎ る率をどう説明するかということについては、もう少し分析をしなければいけないとは 思いますが、そのように理解しています。  介護の療養病床の中の実態はその後どう推移しているかという質問ですが、一応私ど もの理解では、この調査は平成13年の時点で医療経済研究機構でやった調査で、フォロ ーアップはなされていないと聞いていますので、これ以外の調査で何か比較できるよう なものがあるかどうかは宿題事項として確認させていただきたいと思います。  熊本の例の話ですが、これについては私もたまたま先週末に熊本で学会があり、こう いった地域連携をテーマにしたシンポジウムがありました。そこで私が聞いたことで、 十分に理解していない面もありますが、医療費という面からいうと、そういった分析は まだできていないのではないかと思います。熊本の場合には、確かに病床数も多いとい うこともあって、その辺医療費にどう影響しているかというのは興味があるところです が、ただ、ここで申し上げたかったのは、私どもの医療計画の今後の見直しの中で、例 えば二次医療圏単位で、患者のQOLの向上という観点から安心して医療を受けていた だいて、そして質の高い医療を切れ目なく受けていただいて、1日も早く病気を治して 在宅に戻っていただく。そういう患者QOLの観点から、こういったシステムが地域の 中で、例えば二次医療圏の中で整備されれば、大変いいことではないか。患者のQOL の向上にもなりますし、また平均在院日数の短縮ということにも結果としてなってい く。そして、さらに医療費の縮減になれば言うことはないと思います。熊本の方式で医 療費のところがどうなっているかというのは、一般的には病床数が多いところは医療費 が高いですから、もう少しそこは検証しなければいけないと思っています。医療費縮減 はあくまでも結果であると理解していますので、医療提供体制を整備していく中では、 1つのモデルケースとしては、私どもとしてはいいのではないかと思って今日ご紹介し た次第です。 ○看護課長  看護職員の病床100床当たりの人数が大変低いというご指摘ですが、ここでは正確な 数字を出すことが難しいこともあり、表に掲げていませんけれども、人口1,000人当た りの看護職員数はOECD各国と比べて、さほど遜色のない数字でございます。そうい う状況から考えると、病床数が日本の場合は大変多いということにより、結果として薄 い配置になっていると言えるのではないかと考えています。 ○事務局  地域保健計画について位置付けの明確化という形で記述していますが、現在通知レベ ルで策定をお願いしているところです。通知の中で医療計画を作成する場合に保健も含 めて、地域保健医療計画という形で都道府県に作成していただくことにしており、ほか の関連する計画との関係のご質問がありましたが、この通知の中では関連する他の計画 とも調和を保つようにと明記しています。そういう意味で、ここのところはほかの計画 と比べて書き振りが違うところですが、こうした通知で行っているものについては、制 度として位置付けを明確化していく必要があると考えています。 ○渡辺委員  意見と質問です。1点は、いま医療機関の機能分化というタイトルでご説明をいただ いたはずなのに、いつも医療機関の機能分化と言いながら説明をやるのは必ず病床機 能。去年の8月に締め切った一般病床の説明があるし、連携の問題もあるのだけれど も、医療機関の機能分化というのはもっと幅広く、かつ深いものだと私は思います。例 えば臨床研修の義務化だって、受入れ病院だって、あれは一種の医療機関の機能だと私 は思っているし、あるいは医療安全対策をとっている病院も機能です。もっとほかにも 医療機関の機能というものがあるはずなのに、どうもこれまでの厚労省の説明だと、必 ず病床の機能ぐらいしか説明がない。それが非常に不十分だし、私は不満です。それは 本来ここで議論しなければいけないのかもしれません。  もう1点は、いま熊本の話が出ましたが、私自身も熊本は少ししか調べていません が、もっと要因分析として、私が取材した範囲でいうと、例えば熊本市は人口70万人近 い所で非常に地勢的にまとまっているという問題があるし、熊本という所は非常に面白 い所で、全部とは言わないけれども、熊本大学医学部出身者が九州の中でも圧倒的に多 い所です。そうすると、ここにも書いてあったけれども、診療所と病院の連携というの は大げさにいうと、ほとんど熊大同士の、つまり同窓の先輩後輩で連携がしやすいとい う特殊事情があると私のささやかな調査ではあります。そういった原因をきちんと分析 しないと、先ほどもどなたかが言いましたが、ほかの地域もできるかといったらなかな か難しいところもあるので、確かに良い例なのだけれども、医療関連の問題もあります が、なぜこういった地域連携ができるかという分析を、もう少し突っ込んでやらない と、ただ熊本だけに終わってしまうというおそれがあると思います。 ○佐伯委員  外来受診率や平均在院日数の第1頁で感じたことですが、日本の場合は医師・歯科医 師・薬剤師の調査ということになります。例えば医師の所へ行って、処方箋をもらって 薬局へ行ってというだけで2つになるわけです。ほかの所は外来医師受診回数となるの で、そうそう日本の国民がお医者さん好きということではなく、ただ行ったら結果的に 保険の回数が多くなってしまったということではないかという気がするのが1つです。  もう1つ、職員がやはり多いと手厚くなって、その分早く退院できるのかなという気 がしますので、数字だけを見ていると日本の国民は健康マニアみたいな感じで、長く病 院にいることが好きという、そちらの原因で医療費がこんなに逼迫しているというニュ アンスでとらえられてしまうのですが、そうではないという気がするのが1つです。  先ほど渡辺委員が言ったように、病床ということだけで言われてしまうような気がす るのですが、やはりもっとかかりつけ医ということの機能が充実してほしいと私は思い ます。特に在宅ということになると、例えば難病や高齢者、終末期ということが取り上 げられるのですが、むしろ私は小児、あるいは成人の一般の人が往診してもらって、そ こで簡単に片付くということが結構多いのではないかという気がします。特に小児の場 合は私はイタリアで5年間子供を育てましたが、往診の制度があったから育てられたと いう気がします。往診を是非積極的にやっていただく。そして、使える開業医といいま しょうか、かかりつけ医が増えてくれるような、そんな姿を望みます。 ○山本(信)委員  渡辺委員、佐伯委員からご指摘がありましたように、医薬品を扱う者としては、医薬 品が物としていままでは扱われてきたわけですが、前回の議論にもありましたように、 医療手段の1つと考えなくてはいけないのではないか。そうすると、患者に対して必要 な医薬品が必要なときに十分に提供できる体制を構築することが、医療提供体制を考え る上で重要な要素だと考えています。したがって、今回資料として病床の問題が出てい ましたし、外来受診率が出ていますが、現在外来患者の大半の方々は、前回、前々回の 医療法改正時と違い、地域の薬局から処方箋を通じて医薬品を供給しているわけですの で、地域においては病院、診療所の連携はもちろん大切ですが、それに加えて薬局も含 めた幅広な体制整備が議論されるべきであろうかと考えています。したがって、是非、 この中での体制整備についてもご議論いただきたいのと同時に、資料の後半ですが、在 宅医療を進めることが謳われており、今後そこが重要な要素になるだろうということで すが、在宅の患者にとっては医薬品は不可欠なので、医薬品を十分に安定して提供でき る体制をどう構築していくかということになりますと、当然診療にかかわる病院と診療 所の連携ももちろん大切ですが、医薬品を供給する薬局もどんな形で連携できるのか。 病院、診療所との連携が当然考えられなくてはならないことですので、是非医療提供体 制の中で、薬局をどういう位置付けにするのか、明確にしていただきたいと考えていま す。 ○村上委員  地域医療支援病院のところの参考2のところで、計算方法を今回変えられました。こ の辺のところで前から疑問に思っているのですが、厚生労働省のお考えでは、地域の実 際的な中核病院をできるだけ支援病院にもっていこうとして、紹介率をいろいろ計算さ れたのだと思いますが、実際にはこうやっても、この地域の紹介率の考え方は、まだ地 域で実際に中核病院が支援病院になれないというぐらい厳しいものだと思うのです。そ れで、これをクリアするためには、「門前クリニック」を地方によっては作っていかな いとクリアできないという現実があるというこの辺のところをご存じなのか。ですか ら、地域の状況に応じて、この地域医療支援病院を作るべきではないかと思っておりま す。増えてきた病院の一覧表を見ても、だんだんお望みのような地域の中核病院は入っ てきていますが、まだこれでは足りないわけですから、是非この辺の企画をこういう所 でも討議をお願いしたいと思っています。 ○杉町委員  1頁目の資料ですが、先ほどから医師数が足らない、看護師の数が外国に比べて少な いということはそのとおりなのですが、なぜこうなっているかという背景を考えなくて はいけないと思うのです。たまたま先日私は虫垂炎になり、入院して手術をしてもらい ました。そのときにかかった費用と、アメリカに友人がいるものですから、実際にもし 私がアメリカで手術した場合にいくらかかったのかという費用を比較しました。そうす ると、アメリカで同じ治療を受けた場合と比較して日本の医療費は8分の1だったので す。これだけ日本の医療費は安いわけです。したがって、同じ数だけ看護師や医師を雇 えないわけです。雇ったら当然病院は破産する。そのような背景があることもご理解い ただきたいと思います。  もう1つ、地域医療のネットワーク云々ということがありますが、地域医療のネット ワークを考えた場合に、医療サービスだけのネットワークを考えるのか、医療サービス だけでなく周辺には福祉サービスがあります。先ほどから話題になっている訪問看護ス テーション、介護老人保健施設などいろいろあります。その辺の医療サービスのネット ワークだけではなくて、私の考えとしてはその周辺とのネットワークも広げることによ って、病院に入院している患者を訪問看護ステーションに紹介するとか、あるいは介護 老人施設に紹介するなど、地域によってそのような福祉サービスとのネットワークも非 常に大事だと思います。  二次医療圏の話が出ていましたが、私は福岡にいるのですが福岡県の二次医療圏を見 てみますと、いろいろ医療圏がありますが、少ない医療圏は人口が9万人です。多い医 療圏は150万人です。福岡県だけでもこれだけ二次医療圏でそこに住んでいる人口が違 うわけですから、いろいろなネットワークを考える場合には、二次医療圏ということだ けで考えるのではなく、それなりにもう少し細分化するなど、そのようなことも考えな がらやっていかないとうまくいかないだろうという感じを持っています。 ○三上委員  1頁目の医療提供体制の表から申し上げますと、この表はどちらかというと、日本で は病床が多く、外来受診率が高い。これをまず是正する、病床を減らしたいという意図 が見てとれるわけですが、先ほどから人口当たりにするとドクター数、あるいはナース の数も遜色がないという話がありました。いま現在日本は1,000人当たりの病床が非常 に多い、外来受診率が高いことが本当に悪いことなのか。医療費を非常に高くしている か、あるいは医療の質を落として健康寿命が悪くなっているのかという検証なく、これ を単純に減らさなければならないという話は、少しおかしいと思います。確かに外来受 診については皆保険、フリーアクセスのために、かかりやすい状況があって、そのため に非常に健康度が高くなっているという一面があるかと思いますので、これを意図的に こういう表を見るというのは少し問題があろうかと思います。  機能分化については、病床区分の話が非常に多かったという指摘がありました。確か に機能分化は本来患者側の視点からすると、医療へのアクセスをどのようにうまく段階 的にというか、効率的にやるかという意味合いなので、どちらかというと、病床区分と いうよりは、外来の機能がどうなっているのか、例えば地域医療支援病院であれば紹介 型、急性期入院、特定を取るところも、紹介型の病院であるということで機能がはっき り分けられるということですが、病床区分で機能分化することになりますと、例えば熊 本の場合でも急性期のところから療養型にいったり回復期にいったり、あるいは老人保 健施設にいったりということで、患者は1つの医療、治療を完成させるために、いろい ろな医療機関を転々としなければならないということで、果たしてそれが幸せなのかと いう議論もしていただきたいと思います。  地域医療支援病院の紹介率の問題ですが、これをクリアするのが非常に難しく、門前 クリニックができるということもありましたが、確かに紹介率の計算が特定機能病院と 地域医療支援病院、それに一般の健保法上の紹介率と3種類あるということが、非常に 問題を複雑にしており、本来健保法上30%をクリアできないような紹介率が、救急患者 が多いだけで一挙に地域医療支援病院になる。それで紹介率が80%になって、入院基本 料に対する加算が非常に大きくなるというようなモラルハザードを起こす可能性があ る。そのために、いま門前診療所というのがこのごろたくさん増えてきたのだろうとい う気がしますので、この辺のところよりも紹介率の整理についても、もう一度考えてい ただきたいと思っています。 ○堀田委員  この資料を見させていただいて、なかなか頭に入りにくいのですが、発想がいわば施 設、病院の存在を前提として、そちらのほうの実態から入ってきて、連携という話にな っています。利用者の立場に立った分析と合わせてみないと実態が非常にわかりにく い。端的にいうとそういう資料があるのかどうか知りませんが、病気というのはどこの 国でも心臓病なら心臓病の同じような類型の病気があるはずですから、例えば日本とア メリカを比較するなら、日本で心臓病、あるいは糖尿病云々について、どういう治療を しているのか、入院期間が平均でどれくらいなのか、手術後どれくらいいるのか、そし て、その後どれくらいの薬の投与をしているのか。そんなにたくさんのモデルは要らな いので、それと同じようなデータをアメリカなりほかの国なりと比べていただいて、そ うするとそれでどれだけかかっているのか、そのように見せていただくと、費用の点も わかるし、機能的に分化できているのかどうかもわかるし、そういうデータがないと、 なかなか施設から見た数字だけではわかりにくいということを申し上げたいと思うので す。 ○鴨下部会長  課長には、最後に全体的なことでいまの点についてお答えいただきます。 ○古橋委員  今日のテーマの中では最後のほうに在宅医療の普及という問題が出てきました。これ からの時代は多くの方が亡くなる時代、21世紀は多死の時代とも言われるわけですが、 人々は本音では住み慣れた我が家でという思いがあっても、なかなかそういう選択がな されないという事情があります。看護協会等も在宅医療、あるいは訪問ケアがなかなか 進んでいかないことにある種の葛藤が、我々の看護会自体にもあるわけです。そこが進 まないことの1つに、在宅ケアを進めて支援する、そういったサービス機関がどちらか といえば小規模で、経営的な視点でもなかなかそういうことに熟達している人が少な い。それと、在宅医療に対する報酬の制度もどちらかというと施設医療に対して検討が 遅れている。端的に言えば診療材料等の負担に関しても、自宅療養なさる方の負担は高 いわけで、その辺りは課題にはなっていても、整理が付いていかないということがあり ます。  それと、特にかかりつけ医が終末期に対して積極的に行動してくださるかというと、 ある県の調査ではなかなかそうではないということもあります。また、看護職自身も、 もっとダイナミックに訪問看護を進めていこうというような戦略的な発想も少ない。私 は看護職の訪問看護は誠実で責任性の高いサービスを津々浦々でやっていると思います が、そうした仕組みや基盤整備が、抜本的になされていかないと、これからの多死時 代、あるいは地域ケアが急性期からやや慢性期に在宅にといく場合に、この一連の構図 の中で、居宅サービス、在宅サービスというものをもう少し基盤整備という視点で当事 者も行政も取り組む必要があると思っていますので、ここの課題ももう少し喧々諤々の 議論をしながら、いいモデルを、どこかの大きな資本を含めながら、経営的な骨太さも 持ちながら進めていくモデル展開が是非ともほしいと思っています。看護職の自らの努 力の底に、当然課せられるということはありますが、そんなことを考えております。 ○野呂委員  いままでの議論に参加しておりませんので、若干私の思いから申し上げます。今日の 説明の中で交付金化、統合補助金化など補助金関係のことが資料として含まれていま す。そこで、医療全体の視点の中でも、是非いま分権化が進んでいく中で、どういうよ うに考えていくかということについて、少し申し上げたいと思います。  地方分権ということがいま進められようとしています。何でもかんでも国からコント ロールしていくという時代は、もう過去の時代として、未来を見据えていかなければな らないことだと思っています。そういう意味合いでは、地方でできることに国が手を突 っ込まないということがいちばん大事で、補完性の原理ということが言われています。 これは究極を言えば個人ができることに行政が手を突っ込まない、それは個人の私とい うものの確立を強く求めていくものです。したがって、医療でも国民に対して甘えは許 さない。しっかりそれぞれがやってくださいと。しかし、やはり病気のことですから、 そういったものについてはしっかり体制をとっていきましょうという、非常に個人に対 して、あるいはそれぞれの地域に対して強くあり方を求めていくという姿勢が基本的に は大事だろうと思います。  どうも厚生労働省の考え方では、国としての基本方針、ビジョンを決めていくことは 結構大事なことだと思います。しかし、具体的な実行計画の策定についてはそういうと ころに委ねていく考え方はいいわけですが、それをしっかりやるところに必要なものを 補助金として出していきましょう。この思想は全くコントロールしようというところが 強く出すぎているのではないか。むしろ、地域地域でできることについてはしっかりそ れぞれ独立してやらせていく。ただし、国のビジョン、基本方針の中から達成しなけれ ばならないけれども、地域ではできないものについて、国として特化してどういうもの をやっていくかということを基本的に考えなければならないと思います。そうでないと 厚生労働省の社会保障の関係も個々の議論はいろいろあります。しかし、時代に厚生行 政、社会保障全体が立ち遅れていくことが起こり得るので、その辺は本当に十分に積極 的に前向きに考えていただきたいと思います。 ○大橋委員  23頁の地域医療支援病院についてなのですが、2番の制度の仕組みで、かかりつけ医 から地域医療支援病院へ、これは大変いいことで、現実に我々が地域医療病院へ紹介し て、救急の場合にとっていただけるのは非常に助かるのですが、実際には断わられてし まうことが多いのです。非常によくやってくれる病院でも、都会と我々田舎では違い、 原則として200床以上の病床というと、うちのほうは100床しかないので、原則だから100 床でも認めていただけるかと思うのですが、そういうときは結局はたらい回しになって いることが現実には多いのではないかと思いますので、その辺をよく考えていただきた いということです。 ○土屋委員  この地域医療支援病院について、このたびの平成10年の通知の改正で、逆紹介をこう いう具合にしましょうというのは、そもそもは現在支援病院になっているものが、60% で入ったのが、80%を超えないというところが何カ所かありますので、それに対するい うなれば救済策ではないかと私どもは受け止めています。では、それでもなぜ紹介率が 上がらないかというと、本来地域医療支援病院なるものは、病診連携なり、救急医療を 提供することなどを目的として設置されている筈ですが、そうではなくて、医業経営上 の動機から、地域医療支援病院に手を挙げたところがいくつかあるのではないかと思い ます。本来の目的をもって参入したのではないということが問題だろうと思います。さ らに問題なのは、救済策のつもりで、逆紹介率を導入したのでしょうけれども、紹介患 者の数や救急患者の数はすべて初診患者のみを対象にするということが今回明確化され ました。そのために、逆に紹介率が減ってしまったところがあります。ですから、本来 の地域医療支援病院としての役目を果たすことから考えると、紹介率については、今回 の改正は良かれと意図したことが、そうならなかったということは事実ですので、もう 1回検討し直してもらわなければいけないと思います。 ○山本(文)委員  1頁目の表を出した意図を教えてください。なぜこのような比較を出して、しかも1 頁に出すのかがわかりません。この比較表は現実と全然矛盾していると思います。中身 を言うと差し障りがありますから申し上げませんが、後で考えていただければおわかり になると思います。ですから、この1頁目の意図、なぜこんなものを出すのか。比較す るのはいいけれども、介護保険もこういうのを出しますが、全くやり方が違うのです。 違うものに対して比較して、ただ表に出ているものだけを比較して、日本はこうだああ だというのは議論の筋違いだと思います。我々に言わせると悪い考えで出しているので はないかと思うのです。  それから医療全体の判断をする場合に100床以上などということではやらずに、全体 の医療体系はどうなっているのかということをこういう表に表すべきではないでしょう か。患者対医師のいわゆる1対1のマンツーマンで始まっているのが日本の医療です。 ですから、このような表を出す場合は、日本の状態を出すことが必要ではないでしょう か。それが少し欠けているような気がします。そうしないと、私のような田舎のほう は、地域医療支援病院などというのはありませんから、全部開業医で賄っています。少 し病床数の多いところもあります。救急病院はあります。救急をやっているところはあ りますが地域医療支援病院はありません。だから、かなり離れた所に行かなければなり ません。したがって、言い換えますと、開業医たちがどう支えていくのかということが いちばん大事なことだと私は思います。  次は救急医療が非常に多いのです。私どものところは救急医療ばかりです。私は地元 の救急医療の運営委員長を30年、救急医療が始まって以来ずっとやっているのですが、 救急医療の患者のほうが多くて、そのうち救急車で搬送されてきた患者が、そのまま治 療を受けるかどうかというと非常に少ないのです。どういうことかさっぱりわかりませ ん。救急だから来た、来た途端に治るのかもしれませんが、救急医療から次にいくセカ ンドエイドが充実していないというところがあります。また、救急医療というのは病院 や開業医がお休みのときにやっているのです。ところがいないのです。  いまのような時代になって、救急医療を担当してくれる医師がいないのです。特に小 児科、いちばんいやなのは産婦人科がいないのです。ですからそういういない科の救急 の病人が発生するので、そういうことを考えると開業医を充実強化してあげるような体 制を作ることが、これからの日本の医療の安全を作っていくのではないでしょうか。で すから大病院は大病院できちんとやっていますから、それを重点で検討するのではな く、ゼロのところから検討していくことが必要ではないかと思いましたので、是非都市 の東京のど真ん中の話ばかりしないで、田舎があって都市があるのですから、田舎のほ うの医療が一体どうあったらいいのかということを、この中に入れておいていただいた ら非常に助かりますが、どうも皆さんは、田舎のほうを見ていただけないようですか ら、その辺りをひとつご配慮いただきますようお願い申し上げます。 ○鴨下部会長  いろいろご意見を頂戴しましたが、いまの点はちょっとお待ちいただけますか。いま のお話は次の地域医療のことにつながりますので、ここで一応いま出たご意見、ご質問 に総務課長からコメントなり、お答えをいただけますか。 ○総務課長  それでは簡潔にいくつかお答え申し上げます。まず1頁目の資料の件です。渡辺委員 からのご指摘も含め、もう少し考えて資料を出してほしいということで、今後、十分に 留意してやっていきます。ただ、この最初の資料というのは、こう言ってはなんです が、毎回医療提供体制の議論をするときの基礎資料みたいなもので、通常は更新して参 考資料という形でお見せしており、そういう意味で他意があってというと変ですが、問 題提起はもちろんしているつもりなのですが、それ以上の意図はありませんのでご了承 いただきたいと思います。資料作りについては今後、十分に留意していきたいと思いま す。  地域医療支援病院に関する意見が多く出ております。資料の23頁にありますように、 私どもは地域の中での医療連携の中核となるものとして、この地域医療支援病院、ある いはかかりつけ医の確保という意味でも、大変重要な役割を担っていると思っていま す。しかしながら、計画として二次医療圏に1つという目標からするとまだ90ほどです から、ご指摘のようにいろいろ課題があって整備されていないのだろうと思います。特 に門前クリニックの実態がわかっているかとのご意見もありました。これについては通 知の中でも、特定の患者が特定の医療機関から紹介されている、偏っているような場合 には都道府県において対応策を協議しなさいということを書いていますが、そうした問 題、あるいは紹介率のあり方の問題等々、ご指摘いただいた課題については、またこの 部会でもご議論いただいた上で、必要な見直しをしていきたいと考えていますので、よ ろしくお願いいたします。  堀田委員からご指摘いただいた、患者の立場から見た提供体制の分析が必要ではない かということですが、いくつか主要疾患についての国際比較したものがあったと思いま す。平均在院日数などは比較できるかと思いますので、次回にお出ししたいと思いま す。 ○鴨下部会長  それでは次の課題、「地域における必要な医療提供の確保について」、資料2です が、これについて事務局からご説明をお願いします。 ○指導課長  それでは資料2の前半部分について説明します。資料2の1頁、救急医療に関してで す。先ほど山本委員から手厳しいご指摘をいただきました。正直言いまして私ども救急 医療、特に小児救急を含め、大変難儀をしているところですので、その辺の実態も含め ご説明させていただければと思います。  まず救急医療全般の話ですが、日本の場合は、昭和39年から救急病院・救急診療所と いう告示制度というものが創設されまして、ここから本格的な救急制度が始まったので はないかと私どもは理解しています。その後昭和52年に初期、二次、三次といったよう な救急といってもレベルがありますので、そのレベルごとの救急医療体制の構築に向け て、行政としての手立てを始めたことが2つ目です。  若干視点が違いますが、平成3年に、従来はドクターだけで頑張っていたものを、救 急搬送をこれまでずっとやっていただいた救急救命士の方々にとりまして、何かやって いただくものはないかということで、救急救命士制度を想定することを始めたわけで す。現時点で具体的なトピック的なものとして下のほうに3つばかり述べております。 特に救命救急センターの整備に私どもは力を入れておりまして、脳卒中・心筋梗塞、自 動車事故を中心とする交通事故が大変増えてきていますので、高度な救急医療機関とい うものを県ごとに整備をしようということで始めています。原則100万人に1カ所ぐら いはちゃんとつくろうと考えていまして、現在170カ所あまり整備をされておりますが、 こういった所の充実に力を入れているのが1点です。  真ん中にドクターヘリと書いてありますが、救急士が搬送すればいいわけですが、な かなかそれだけでは緊急の場合に間に合わない、時間がないという場合に、ドクターが ヘリに最初から同乗して、救急の患者さんの手当も搬送中に行うといった仕組みができ ないだろうかということで、現在平成16年度まで7県において、8機ですが整備してい ます。県の負担が大きいということでなかなか伸びてはいませんが、今後この辺も力を 入れていく必要があると考えています。  先ほど申しました救急救命士の話ですが、救急救命士がやれる業務も徐々に拡大はし ています。この辺は医師の業務独占との兼合いがあり、どこまでできるかというのはな かなか難しい問題ですが、関係者のご理解をいただきまして、ここに書いてあるような 心臓の関係の除細動、呼吸のための気管挿管、薬剤の投与という形で徐々にですが、目 の前にいる本当に救える方は救急救命士の方にも救っていただいてもいいのではないか という発想のもとにいま進めているところです。  2頁は救急医療の体系図です。こちらからご説明したほうがよかったかもしれません が、下のほうから上のほうにずっと上がるにつれまして、初期救急、二次救急、三次救 急というレベルの高い救急にシフトをしています。初期救急というのはいわゆる風邪ひ き、腹痛の類からはじまります一般的な救急でして、こういったところを基本的に在宅 当番医制という、特に開業医が夜間に対応していただけるようなシステムが一つありま す。休日夜間急患センターは、市町村でそれぞれ整備をすることになっていまして、こ ういったもので大体夜間の初期救急というのは賄われています。右側に、特に子どもの 場合の救急が多いので、「新規」という所に囲みがあります。先ほどもご指摘がありま したが、かかりつけの地域の開業医の先生、従来ですと内科の先生も昔は子どもさんを ずっと診ていただいていた経緯があります。それが昨今薄くなっているので、今後内科 の先生にも若干研修をしていただいて、子どもさんの簡単な救急の手当をしていただけ るような仕組みができないだろうかということで、平成16年度からスタートしたもので す。  下に戻りまして、小児科医による電話相談があります。これは単に相談を受けて適切 なアドバイスをすれば救急の医療機関にかからずに済む子どもさんもいらっしゃるので はないかという発想のもとにこの事業を始めまして、全国47カ所で進めたいと思ってお りますが、現実にはなかなか難しく、今年初年度ですので、今年度末で半分ぐらいの所 がやれればいいかなという感覚で、いまのところはいます。  また上に戻りますが、二次救急レベルになりますと大人と子どもと若干分けて物事を 考えております。療院も輪番制といういわゆる休日夜間に病院が持ち回りで当番をする という制度が大人の場合の根幹です。あと共同利用型病院という仕組みがあります。2 以下の子どもの場合というのは、なかなか大人の患者さんを対象にした病院も輪番制で もうまくいかないことがありますので、小児を特に休日夜間で中核病院として見られる ような病院にチームを組んでやっていただく、これが「小児救急医療支援事業」という 名前を付けているものです。これは二次医療圏に1カ所、ちゃんとした病院が順番にで きる形が理想ですが、なかなかそうはいかないこともありまして、複数の二次医療圏を カバーするようなものでもやっていただけるのであればそれを制度化しようということ で、下に書いてある小児救急医療拠点病院という制度を設けて、いま進めているところ です。いずれにしてもこの制度は、まだ全国的に充実されるところまで至っておりませ ん。この辺にいかに力を入れていくかが我々に課された課題だと考えているところで す。  三次救急になりますと、これは大人も子どもも生きるか死ぬかの問題ですので、あえ て大人と子どもを分けておりません。救命救急センターが中心になりまして、本当に生 命に直結するような救急を担当しているのが現状です。基本的に先ほども言いました全 国都道府県に、100万人に1カ所という形での整備を目指しているところです。  右のほうに総合周産期センターがありますが、これは出産前後の母体、それから新生 児、未熟児、こういった方々の救急需要に対して特に周産期医療を行うために、全国で 各県1カ所の総合センターと、総合センターを中核としてネットワークを組むために地 域ごとに地域周産期母子センターを構築していただけるように、県のほうにお願いをし ているところです。これもまだ全国ですべて展開するわけにはいきませんで、我々に課 せられた課題であるという認識をしています。  3頁ですが、これが先ほどから申しております初期救急、二次救急、三次救急のそれ ぞれの各県別の整備状況です。地域の実情もあり、どういうパターンがベストかは一概 に言えないところがありますが、県の医療審議会等で望ましい体制を議論していただい た上で、できれば国のほうでイメージしている先ほどの救急医療体制の中で、各県の整 備を進めていただくというのが私どもの考えです。4頁は、いまのイメージを各県ごと にグラフにしたものですが、救命救急センターの整備状況についての視覚的なグラフで す。棒グラフが折れ線グラフの上に出ていれば、量的には充足をしていると読んでいた だければいいのかと思います。下回っている所も若干ありますが、この辺につきまして は是非県レベルで頑張っていただきたいと考えているところです。  5頁がドクターヘリに関しての若干詳細な資料です。繰り返しは避けますが、現在7 県8機で運行しておりまして、県内だけではなく県を跨って広域搬送をしている事例も あります。必ずしも各県に本当に必要かという議論も確かにあります。広域的に複数の 県に跨って運営していただけるのであれば、県と県とで協定を結んでドクターヘリを整 備していただくのも1つの考え方かと考えているところです。独自でドクターヘリを持 つことは県の負担にかなりなりますので、県では必ず防災ヘリを持っています。防災ヘ リにドクターが乗れるようなシステムを整備すればかなりの部分をカバーできますの で、その辺も県の実情に応じて整備を進めていただければということで、県のほうにお 願いをしています。  6頁以降につきましては救急救命士の業務の範囲につきまして、これも重複を避けた いと存じますが、それぞれ除細動の問題、気道確保の問題、静脈路確保に続きまして薬 剤を投与するといったことにつきまして、それぞれ段階的に業務の拡大を図って、目の 前で助けられる人は救急救命士の方に助けていただけるような仕組みを構築してきてい ることの説明資料です。7頁もそれに関します細かい資料ですが、時間の関係で省略さ せていただきます。8頁も一緒です。  9頁です。視点が若干変わりますが、感染症の指定医療機関についての説明です。特 に国際的なボーダーがなくなっている今日におきまして、輸入感染症だけには限りませ んが、広域的、広範囲な感染対策ということについて医療機関でも整備をしていただく 必要があるということで、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 」、俗に感染症法と言っていますが、平成10年に制定されたこの法律に基づいて感染症 の発生時における疫学調査等の対応のほかに、蔓延防止策として、感染症の患者に対す る良質かつ適切な医療を提供することが求められております。特にSARS等の一類感 染症患者を入院させるための第一種感染症指定医療機関については、各都道府県に1カ 所2床のベッドを確保することとされていまして、平成16年11月現在で15の都府県で18 医療機関34床という形に残念ながらまだとどまっておりまして、今後とも都道府県と連 携をしてその確保に努めてまいりたいと考えています。ここには一種、二種しか載せて おりませんが、当然三種、四種という病気もありますので、それに対応してそれぞれの 県において対応をしていただくことになっています。次の頁が、地図で見ていただき、 各県ごとの具体的な状況を視覚的に載せているところです。11頁も同じように、具体的 な病院名を載せています。  周産期医療ネットワークの話ですが、先ほどの体系図の中でも若干申しましたが、出 産前後の母体と、胎児、新生児の救急医療ニーズに対応するために周産期医療ネットワ ークの構築を目指しているものでして、各県1カ所の総合センターを中心にして、それ とネットワークを結ぶために数カ所の地域センターをサテライトとして整備していただ けるようにお願いをしています。切迫早産や未熟児医療を展開して、地域の分娩医療機 関をサポートするという仕組みです。事業概要は次の頁に載せています。総合センター は約半数に整備はされていますが、地域センターのほうの整備がちょっと遅れておりま して、この点につきまして私どもとしても課題であると認識しています。  続きまして、大問題になっている小児救急医療体制につきまして、若干説明をしま す。小児救急医療体制については、平成11年度から二次医療圏単位で小児救急への対応 が可能な病院を当番制により確保する「小児救急医療支援事業」を進めているところで す。従来ですと大人の輪番制のほうで面倒を見ていただいていたのですが、子どもの場 合はなかなか特殊性がありますので、こういったものをあえてその上に加えたというこ とです。  平成14年度になりますと、今度は二次医療圏ごとにやりたかったのは本音ではありま すがなかなか対応できる部分は少ないので、広域での対応を可能にするという意味で、 平成14年度から「小児救急医療拠点病院」ということで、複数の二次医療圏をカバーす る拠点病院でもこういったものをやっていただければ、是非それを進めていただきたい ということで進めています。「課題と現状」の所に書いてありますように、保護者の方 々の大病院指向、専門指向はかなりありまして、一部医療機関に子どもさんが集中しま す。現場が混乱しているのも現状だろうと思います。そういったところで、私どもとし ても今後の問題として、現在406の小児救急医療圏というものを二次医療圏とは別に設 定をしていますが、その中で是非小児救急の問題に対応したいと考えていますが、残念 ながらまだ182地区、率で申しますと44.8%の整備にしかなっていませんので、今後ま すます努力を傾けていかなければならないという認識をしているところです。  具体的な対応策として下のほうに書いてありますが、左のほうに「若手小児科・産科 医師の確保・育成に関する研究」ということで、これは救急だけではありませんが、小 児医療全般、産科医療全般につきましてどのような体制を組むかということを専門の先 生方に3カ年の研究ですが進めていただいております。お忙しい中座長の鴨下先生に主 任研究班の座長をお務めいただいておりまして、今年度が最終年度ですので、そのご意 見をもとに私どもとしても適切な対応を図ってまいりたいと考えています。これは説明 を省略いたしますが、参考資料の19頁に載せていますので、またご覧いただければと思 います。いま申しました研究の途中の成果を行政のほうにも反映させていただいてお り、その1つがガイドブックです。研究班の中で、いろいろ救急の場で使える科学的根 拠に基づく外来診療マニュアルを作っていただき、今後内科の先生でも子どもの初期救 急にガイドブックを使って対応していただけるようなものとして、都道府県にお配りし ています。  同じく14頁の右のほうに、平成16年度新規事業として電話相談のこともPRをしてい ます。これも研究班の中で、昨年度モデル事業としてある県で行いましたところが、か なり好評を博しまして、今年度から全国で展開をしたものです。そのほかに先ほどから 申していますように、内科医を対象とした小児救急に関する内科研修事業の実施や、I Tを活用して小児科以外のドクターが小児科専門医の相談・支援を受けることができる ようなシステムも構築を図っているところです。  15頁は、各県別の二次レベルの小児救急体制の取組状況です。16頁以降はへき地医療 です。へき地・離島の問題というのも大変大きな問題でして、無医村、離島におきます 医師の確保につきまして大変課題を抱えているわけですが、省庁の間でも大変共通の問 題として理解されていて、左のほうに書いてありますように3省庁による連絡会議を開 催しまして、今後我々として第10次のへき地医療計画をつくることにしていますので、 その中で省庁に横串を刺したような形の対応を図らせていただきたいと考えているとこ ろです。具体的には省略をしますが、17頁に書いてありますように、坂口前大臣からも へき地医療に関する提案、私案をご提言いただいておりますので、それを含めた形で若 干来年度の概算要求にも盛り込んでいます。それを延長する形で、今度の第10次のへき 地医療計画の中に盛り込ませていただければと考えているところです。  離島を含むへき地に関する補助金があるわけですが、この1点につきましても三位一 体改革の中で廃止の対象になっているところですが、この点につきましては、現行の補 助制度を存続してほしい旨の要望を現地のほうからいただいていまして、これも参考資 料2の28頁に付けておりますので後ほどご覧いただければと存じますが、こういったこ とも踏まえて、離島を含むへき地対策というのはなかなかデリケートな問題ですので、 併せて検討してまいりたいと考えています。時間がなくなりましたので省略しますが、 20頁にいまの第9次のへき地保健医療計画の概念図を載せています。また質疑応答の中 で必要があればご説明をさせていただきたいと存じます。以上です。 ○企画官  引き続きまして、成育医療センターの関係のパンフレットをお配りしています。成育 医療センターにつきましては、平成14年3月に設置されたわけですが、成育医療という のはこれまでの診療科、年齢の枠を超えて胎児から出生、小児、思春期を経まして成人 への発達、妊娠というリプロダクティブヘルスを対象とした新しい概念の医療というこ とでして、現在このセンターを中心として独立行政法人、国立病院機構をはじめ全国の 小児病院、大学病院、地域の医療機関等と連携して、成育医療の推進に取り組んでいる ところです。  成育医療センターの取組みとしましては、後ほどご説明します女性総合外来の設置の ほか、来年度に向けまして資料の22頁にありますが、女性特有の体や心の病気等に関す る情報についてのデータベースをつくり、広く一般国民や患者、医療関係者に情報発信 するというシステム構築についての新しい概算要求をただいまやっています。21頁には 女性の健康問題に関する研究、こんなことをやっていますという資料です。23頁は先ほ ど触れました成育医療センターに昨年7月に設置した女性総合外来の概要です。従来の 診療科にとらわれずに女性のちょっとした体の変調、ストレス等からセカンドオピニオ ンへの対応等も含めまして、妊娠出産への不安、心の問題まで幅広く対応しているとい う状況です。なお国立病院機構におきましても、全国に7つの医療機関で女性専門外来 を実施しているところです。  25頁からはがん医療についての資料ですが、ここにある「第3次対がん10か年総合戦 略」及び資料はないですが、「健康フロンティア戦略」におきまして、全国どこでも質 の高いがん医療を受けることができるように、26頁の3の(2)のように「均てん化」 ということを課題として取り上げています。がん医療の均てん化を推進するために、地 域格差の要因を検討して、是正のための具体的方策を提言しようということで、27頁に ありますように、この9月から大臣の懇談会として、がん医療水準均てん化の検討会を 開催して検討を進めています。29頁からの精神保健の関係は、後ほど担当課長のほうか ら話がありますので飛ばします。  36頁からは公的病院等のあり方についての資料ということで、各地域において公的と 民間とがともに参加する形で地域医療のあり方を協議いただく場が必要ということで、 昨年5月に各都道府県にそういう協議の場をつくってほしいということで依頼したとこ ろです。また37頁になりますが、医療計画にも役割分担を踏まえた総合連携のあり方を 記載することが望ましいということで通知を出したところです。現在の取組状況として は、38頁になりますが、約半数の23の道県にすでに協議会が設置されて、4県が設置予 定となっています。  39頁の終末期医療への対応につきましては、ビジョンで国民の意識調査を行うととも に、本人の意思を尊重した望ましい終末期医療のあり方について幅広く検討するとされ ておりました。この報告書は本年の7月にまとめたところですが、国民の関心は非常に 高いわけでして、またリビング・ウィルの考え方は受け入れられつつあるが、法制化に 賛成というのは半数を下回っているということで、医療現場の悩みも多く、また体制づ くりを進めていくことが必要です。また国民や関係者の理解を深め、議論を喚起してい くことが期待されているということで報告書をまとめたところです。  引き続き精神保健の関係をお願いします。 ○精神保健福祉課長  ではお手元の資料の28頁をお開きください。平成15年の5月に厚生労働大臣を本部長 とする精神保健福祉対策本部におきまして中間報告をとりまとめまして、「入院中心か ら地域生活中心へ」という基本的な方針に沿って、具体的に取り組むべき事項が4点こ こにあります。まず精神障害に対する国民の正しい理解を得るためのいろいろな普及啓 発。それから精神医療の質を向上するためにはどうしたらいいのか。それから地域の受 入れ、生活支援をするための地域の支援体制、支援のあり方に対してどうしたらいいの か。精神病院にはいま、受入条件が整えば退院可能な方が、約70,000人入院していると いう状況があります。この方々の対応をどうしていったらいいかということを具体的に 検討するための3つの検討会を、平成15年9月から平成16年8月にかけて開催しまし て、それぞれの検討会で方向をまとめました。これは後ほどご説明します。それを受け て今年の9月2日に対策本部で3検討会の成果を踏まえ、「精神保健医療福祉の改革ビ ジョン」をとりまとめました。  障害保健福祉施策全般ですが、精神などは縦割りではなくて、身体や知的も含めて、 まさに地域の生活の受け皿を整備するためのグランドデザインを10月12日に発表させて いただいたところです。  29頁ですが、精神の分野は改革を進めるためのビジョンの中身ですが、3つの検討会 の成果は3つともとても関連をしています。この3つがなければいろいろな意味での入 院医療中心から地域生活中心へということは達成できないわけですが、まず先ほど申し た精神病院に入院されている約70,000人の患者さんが早く退院できるようなシステム、 そういう意味での精神医療の質の向上を図るシステムがまず大事です。ただ病院から送 り出すというか、退院を促進させるだけではまた病院に戻ってしまいますので、地域の 受け皿をちゃんとつくらなければいけない。地域の受け皿がなければ、退院を促進して もちゃんと入院中心から地域生活中心にならないことはありますし、地域生活の受け皿 をつくるためには、なかなかこの分野については国民の理解が難しいので、いろんな意 味で地域で反対を受けたりする可能性があります。そういう意味では国民に正しい理解 を得ていただくために、いろいろな普及啓発をしている、こういう3つのものを総合す ることによって、入院医療中心から地域生活中心へ進めていくことができます。我々 は、こういうことを総合的にやった結果、10年間で精神科病床の約70,000床相当の病床 数の減少を促すことができるのではないだろうかということで、いま具体的な作業をさ せていただいています。  次の30頁の病院の機能強化を図る観点ですが、縦軸が入院したときの患者さんで、横 軸が入院期間になります。我々は、1年未満の入院期間の患者さんについてはなるべく 急性期医療をもっと充実をすることにより退院を促進することができる、これは一般医 療の仕組みが使えるのではないかと思います。  精神独特の問題ですが、1年以上入院される方が、どうしても10数パーセントいらっ しゃいます。これは治療に抵抗を示す方々ですが、こういう方々については社会復帰を 促進するための専門のリハビリができるようなものをつくる必要がありますし、社会復 帰を進めていく必要があります。重度の方でも、例えば地域で受け入れられるような仕 組み、包括的な地域生活支援のような仕組みをつくることによって、重症な方でも地域 で生活ができるような仕組みをつくっていく。痴呆の方も例えばただ病院に入院すると いうだけではなくて、地域で生活できるような在宅のグループホームなどを整備してい くことによって、病院の機能強化を図りつつ地域のほうに送り出していくことができる のではないかと思います。  31頁は、地域へ送り出したときに救急の問題があります、危機介入があります。いま 精神のほうには先ほど一般医療でご説明をさせていただきました三次救急に相当するも のがありませんので、私どもは精神科については一般医療の三次救急に相当するよう な、24時間、365日いつでも紹介患者さんを受け入れることのできるようなシステムを つくっていく必要があるのではないかと考えています。  32頁ですが、これは地域の受け皿のイメージです。これは精神だけではなく、身体、 知的も含めまして3障害共通の枠組みにしようと思っているものです。日中活動の場を つくっていく形、就労も含めた機能、住まいの機能などいろいろな支援、ショートステ イやホームヘルプサービス、こういうものを総合的にやっていく。この核になるのが基 本的には市町村が需要の主体になって、ケアマネジメントというものを制度的に導入す ることによって、医療だけではなく就労やいろいろな教育などもトータルにマネジメン トしていく仕組みをつくることによって、地域の中で安心して生活できるような仕組み をつくっていくことが大事ではないかということで進めています。  33頁ですが、これは国と都道府県、市町村の役割となります。基本的に私どもは地域 福祉は市町村の主体でやっていただこうと思っています。そういう意味では社会復帰に 関するいろいろな事務については、市町村にいろいろな計画を立ててやっていただくと いうことですが、例えば精神科救急のようなものは、都道府県のレベルでいろいろな体 制整備を図っていく、これは都道府県の役割になっていくのではないか。このような役 割分担をさせていただいています。  34頁の自殺の関係ですが、これにつきましてはいろいろな側面があるのですが、例え ば自殺未遂になった方は、特に一般の救命救急センターであれば救急患者として運ばれ ることもありますし、そうなる前ということであれば精神科、心療内科も含めまして、 うつ病を持っている方がかなり多いのではないかという指摘がされていまして、一般の 医療の中でもうつ病対策なども含めてやっていくことは重要ですし、そのための普及啓 発、いろいろな研究や研修を進めることによって、こういう分野の専門の人材を養成し ていくことが大事だと思います。  35頁はPTSDの関係ですが、これはいまの新潟中越地震の関係でもいろいろと活躍 をしていただきまして、まだ1カ月経っていませんのでPTSDということにはなって いませんが、早期に介入することによってPTSDになることを少しでも防ぐことがで きるのではないかと思っています。いま国立病院や日赤、自治体病院や日本精神科病院 協会等で医療チームを作っていただいて、現地に入っていただいています。こういう方 々にいま頑張っていただいていますし、私どもはいろいろな意味で日頃から相談支援な どができる専門の方々の研修をやらせていただいています。研究、普及啓発をさせてい ただくことで、一般の医療機関の中でもこのような方々のケアができるような体制が今 後必要ではないかと考えています。以上です。 ○鴨下部会長  ありがとうございます。地域の医療は大変身近ですのでいろいろご意見はたくさんお ありだと思います。  時間ですが、事務局のほうから許可をいただいたので延長します。ご都合の悪い方は 途中でのご退席もやむを得ませんが、最後の問題につきましては、本日は資料の説明だ けにとどめる予定でやらせていただきたいと思います。大変多彩な問題があるわけです が、どうぞ皆さんご自由に意見の交換をお願いしたいと思います。資料の頁を、最初に はっきりおっしゃるようにお願いします。 ○村上委員  救急医療全般について、先ほどの紹介率とのつながりの所で是非意見を言わせていた だきたいのですが、救急医療患者は、救急車で来ない限りは紹介率から外されていると いう現実があるわけです。先ほど山本委員から言われたように、地方をもうちょっと見 ることを私も言いたいです。田舎社会はむしろ車社会、公的な運輸機関がないので自家 用車です。そうすると、救急患者さんはほとんど自家用車で来ます。救急患者で来る患 者は1割です。私どもの病院は1次から3次まで、1年間に60,000人の救急患者が来ま すが、救急車で来る患者さんは6,000人です。それ以外の救急患者さんは紹介率の計算 の中ですべて分母に入ってしまうことになりますと、特に正月などは紹介率がガクッと 落ちるわけです。紹介率が現在いろいろな意味でインセンティブを付けて、厚生省の方 針の中で連携をするために、地域の連携ということで紹介率を非常に重んじているわけ ですが、実は地域のニーズでいちばん必要なところは救急であろうとも、根本的なとこ ろを救急車だけということに限っていることについて、私はこういう所でも論議してい ただきたいと思います。 ○山本(文)委員  16頁で、先ほどへき地と離島の話をしました。言っていいかどうかわかりませんが、 離島は外してあり、含まれていないです。先ほどの三位一体改革の外数になる可能性は あると私は思います。  ヘリなのですが、私の県も1機やっていますが、我々の所はヘリの影響を受ける地域 ではないわけです。ヘリで行くよりも救急車や自動車で行ったほうが速いのです。ヘリ はヘリポートも要りますのでいろいろ考えてやっていただかないと、ヘリで恩恵を受け ている地域はそれでいいかもしれませんが、  その負担はみんながすることになるわけですから、平等なヘリの配置を考えること と、少しずつのヘリ対策をやっても、それは10年やそこらで解決するようなものではな いと思います。もう少しその辺を考えて、やるならば徹底したやり方をすることが必要 だと思います。  精神科の退院後、これは障害者も同じなのですが、施設をつくるだけではやれないわ けです。そこで何らかの仕事をして、収益を得て、生活をしていくというやり方をしな ければならないわけです。ところが、どんな仕事、どういう作業があるのかを考える と、なかなか適したものが少ないのです。こういうような文章を、あなた方のほうで資 料を出すならば、そこまで考えてやらないと難しいと思います。言葉では言えます。例 えばこんな話をすると笑われるかもしれませんが、我々の所は子どもが減っているのに 中学校は3校もあるのです。中学校はもう1校でよくなってきたのです。では中学校の 跡地をそういう施設にしようかと私は考えました。ところが、何をやっていいのかわか らないのです。例えば食事をするときの割箸がありますが、ああいうものは極めて単純 な作業ですから、ああいうものでもやってと思うのですが、よほど大がかりでやらない と採算がとれないのです。例えば生活費が10としますと、そのうち5だけ稼げばあとの 5だけは何らかの援助をするというようなシステムができていれば、それはできると思 います。  ですから、こういう文章で書くのは極めて簡単ですが、現実はそれに伴ってついてい けないのです。その辺りまで突っ込んだ検討をしていただいて、こういう文章に表して いただくことが必要ではないかと思います。言われていることはまさにそのとおりだと 思います。早く社会復帰をさせることが目的です。しかし精神科の社会復帰は非常に難 しい、だから仮退院と言い、退院と言わないのです。そういう人たちが、これぐらいま でやればいいのではないかというものを示す必要があり、ガイドラインが必要なのでは ないでしょうか。先ほどの文章も、そこまでひとつ考えていただければと思います。  救急医療で、先ほど申し上げたのは、救急医療に来てセカンドエイドがない。救急医 療というのはお休みの日しかやらないのです。ですからお休みのときやっているのはセ ンターです。そういうときはセカンドエイドの担当の方がいないことが非常に多いで す。それは休みですからやむを得ないですが、その辺まで考えていかないと本当の意味 の救急ではないです。救急医療というのは365日ずっとやることのほうがいちばん望ま しいやり方だと思いますが、現実はそれができないです。しかも我々市町村に負担をさ せているわけです。市町村の負担がだんだん度を超していくようになりますと、いまの ような状況下ですからその負担に耐えられないということになりかねないのです。いま はそんなに多額ではありませんからいいですが、もしこれがどんどん負担が多くなるこ とになりますと、支えている市町村が負担をしきれないことになりますから、その辺り の救急医療には2点あります。負担はどうするのかという点と、もう1つはセカンドエ イドのほうが、きちんと対応できるように体制を整えることが可能かどうかということ で、救急医療というのはずっと充実をしていくのではないでしょうか。  先ほどのお話のようにタクシーで来たら救急医療ではないというのは、私は間違いだ と思います。救急車で行かないなら救急患者でないというのは、少し間違いだと思いま す。救急患者は救急患者ですので、トラックで行ってもいいと思います。私の所にはト ラックで来る人もおりますから、それでもいいのです。救急の患者ならトラックで来よ うと何で来ようと、それはかまいません。あまりそういうことで区別するのはおかしい と思いますので、よろしくお願いします。 ○大橋委員  小児科医として、少し救急医療についてお話させていただきます。いま救急医療につ いて山本委員、村上委員からのお話しで、小児の二次救急、三次救急を引き受けてくれ る病院というのが拠点病院の基本と思いますが、一開業医としても是非そうしてほしい と思います。  2頁の小児の救急2「医療体系」について、1つお聞きしたいことがあります。小児 救急医療拠点病院、これは病院でなければ駄目なのでしょうか。というのは、今は1日 300人位しか患者さんを診ていませんが、私がやっていた時は平均600人を超えていまし た。実際365日、24時間見ているわけですが、以前は、そのことが尊敬の対象になって いたのが、今では金儲け位にしか見られないこともあるようです。実際夜間救急をやっ ていると、沼津、三島、御殿場の救急センターから私の医院に送って来るのです。この 場合、重症患者を送ってこられるので、病室は16床ですが、2人の常勤小児科医と私と 3人で診療にあたると、大変に苦しい。正直なところ、病院にすると、規則が厳しくて 経営的に苦しくなるので、医院の形で救急を続けているのですが、その点も考えていた だきたいし、他にもそういう医院がでてくるのではないでしょうか。  しかし、基本は拠点病院をつくって、夜間の小児の重症患者を必ず引き受けてくれる 公的病院があれば、それに勝るものはないと思います。  もう1つ、内科医が小児科を診ているということですが、小児を診ることのできる内 科医を育てることも、現時点では必要かと思いますが、長期的には小児科医をどう育て るかが、むしろ大事かと思います。ある雑誌のアンケートでいい小児科医のトップに我 々の地域で内科医がランクされて、小児科医がその下にあったが、重症の患者さんを扱 う上で、かなり問題が生じる恐れがあると、小児科医としては思います。  次に、電話相談の件ですが、これもいい制度ではと思います。夜間重症患者さんに対 応していると、かかってくる電話に対応することが難しいことが多いので助かります。 行政の立場としても電話相談の窓口があるということを宣伝していますが、問題は、患 者さんとの信頼関係をどう維持するかということだと思うのです。いずれにしても、夜 間の重症患者さんを必ず引き受けてくれる拠点病院を充実していただきたいのが願いで す。 ○谷野参考人 参考人も意見を言っていいということですので、ただいま精神科が出た ので、それも踏まえて一言言いますと、全体に、誰か言われたように、こういう膨大な 報告書を見ていると、いちばん欠落しているのは、現場で働いている医者の姿とか患者 さんの姿が全然見えないのです。そこを踏まえて議論しないと、やはり国で考えたこと だけが現場で反映されるわけではないですから、そういう印象を受けました。  例えば、介護医療施設に入る、介護保険の施設に入る、特老に入る、患者さんにして みれば全然違いがないわけですから、はっきり言ってどちらでもいいわけです。そうい うことをもう少し明解にユーザーに分かるようにしないといけないと思います。  精神科に行きますと、いちばん問題なのは、私はこの地域支援の所に入っていたので すが、これは矢島さんに言うのは申し訳ないのですが、要するに金がないという話にな るわけです。非常にいい話ばっかり羅列されるのですが、金がないということでは何も できないのですが、私は金をばら撒いてもらう必要はないと思うのです。いまいちばん 大事なのは、精神障害者に対する啓発活動です。これを重点的にやってほしいのです。  私たちがいちばん苦労するのは、作業所一つつくる、施設一つつくると、住民の大反 対運動が起こるわけです。いつもそういう団交の場所に出て言うのは、国民の意見も分 かるわけです、あなた方(国)が啓発活動をやってないから。私は、国民が精神障害者 に偏見をもつのもよく分かると言っているのです。しかし、私たちはそういうのを乗り 越えて、厚労省が言うように、7万人いるかどうか分からないけど、社会復帰に努め る。しかし、抜き差しならぬ偏見があるとすれば、大々的にここにお金を費して、もう 月間行事でもいいですから、各都道府県でその啓発活動を行う。ついこの前言われたの は、救急医療に対して、我々が心臓蘇生を行うのは、テレビでよく出てくるから案外よ く分かっている。しかし、精神科の救急に対して、我々がどうやっていいのか分からな い。やはり、基本的に精神障害者というのは、まだ怖いというふうに見られる。その中 心はやはり統合失調症です。  ですから、いままでの議論のモデルは、私は最後に言ったように、どうしても統合失 調症モデルなのです。ですから、統合失調症モデルに対する偏見をどうするかについ て、お金を費して、大々的な啓発活動を行わないと、私は、7万人、そんなにスムーズ に脱入院化できないと思います。  いま、ちょっと気になったことに触れたのですが、精神障害者には社会復帰がない、 というようなことを言われたのですが、そういうのはもう半年で社会復帰していくわけ です。残った人たちをどう脱入院化させるか、あえて言うとすれば、社会的入院がいる のかも分かりません。私はあまりそういうことは言いたくはないですが。そういうこと を考えれば、やはりユーザーと国民と我々医療者側が、各都道府県、市町村ぐらいで合 同のシンポジウムでも開いてやっていかないと、この精神の問題は解決しないと思いま す。  例えば精神医療の向上とか何とかいうのは要らないお世話で、私たちが頑張りますか ら、そこの啓発活動にドーンとお金を使ってくださいよ。我々がこういうことに苦労し ないようにしてほしいのです。こういう施設一つつくるにしても団交ですよ。ですか ら、こういう苦労をしてまで、すさまじい精神科医療を私たちはやりたくないのです。 もうほとほと疲れていますからね。 ○野呂委員  私のほうから2点申し上げます。先ほど大橋委員のお話で、例えば小児救急拠点病院 は病院でなければならないのか、というご指摘がありましたが、私は、やはり、これか らの医療体制について、救急であれ、いろいろな体制を考えていく時に、一つの国の 「こうあるべき」という堅い枠組みをあまり持ち過ぎてはいけないと思います。最近 は、ローカルルールなどということがあって、地域地域でもっと準用できるような柔軟 性がとれるような考え方が必要ですし、ローカルルールとて、やはり国からの関与がか なり強く感じられます。そういう意味では、任せていい部分は地域のそれぞれの自主性 に任せていく、こういうことをしていかないと、東京のような大都市と過疎やへき地も 含めた非常に人口減少の進んでいるような地域とは、ちょっと違い過ぎます。  そういうことに柔軟に対応していくために、どうしていくかを考えてもらいたいと思 います。特に、国が行うことについては、どこの部分に力を入れていくのか、まず、民 間ができることにあまり口を突っ込む必要はないのではないか、あるいは、公的病院の 役割のあり方も、やはり民間ができることについては、公的病院がそれを重ねてやって いくようなことはいかがなものかという整理をしながら、しかし、やはり国でなければ 新しい医療を切り開いていくことができない部分のところへ特化していくというよう な、もっともっと国として行うべき方向へ集中していくことが大事なのではなかと思い ます。  2点目は、何と言いましても、私ども地域にとっては、医師の確保があまりにも頭の 痛い問題です。いま、医師の総数が制限されている中で、自由競争で経済的な誘導等に よって行っていくことになりますと、どうしても都市に医師が集中して偏在していく。 もちろん医師が偏在すると、そこへ医療事業がさらに追加して出てきて、今はそれを止 めようのない状況である。しかし、それが結果的には、先ほどもへき地の問題、離島の 問題がありましたが、私ども三重県においても、医師の確保が本当に大変な状況になっ ています。  そこで、県としては、いま就学資金等の貸付制度とか、自治医科大学の義務年限終了 医師等の定着をどう促進させていくかという対策とか、へき地勤務医師のプール制の確 立とか、いろいろな取組みを考えて行おうとしていますが、もっと根本的に国で、こう いったことについて考えてもらう必要があるのではないかと思います。例えば医療計画 をするにしても、やはりそれぞれの地域で必要とされる診療科目別に医師がどれだけ確 保されなければいけないのかとか、必要な医療機器について、どのように定めるのかを 検討していくことが必要で、医療法で規制されている病床数とか、病床単位の医療従事 者の数よりも、もっと具体的にこういったことに立ち入った形にしていくことが必要な のではないかということがあります。  どうしても都市等に医師が集中し、また医療需要もそこへ際限なく膨らんでいくの を、どこかで歯止めをかけてもらわないといけない。そういう意味では、私は、都市部 における医師とか看護師等の医療従事者について一定の制限を加えてもらいたい。そう でないと、私どもが、経済的な誘導によって何とかと言っても、先ほどの補助金とかい う話で、この問題が解決つく話ではないのです。  ですから、そこらを考えますと、やはり何か都市部への医師、看護師の集中を制限す る手立てを、それこそ医療の地域偏在をなくして、公平なことを行う国の性格、国の立 場からいって、大変大事なことではないかなと思っておりますので、そのようなご検討 を是非していただきたいと思います。 ○鴨下部会長  時間が押し詰まってまいりましたので、できるだけ簡潔にポイントだけを順番にお願 いいたします。 ○龍井委員  簡潔にいまの関連で、無医地区の問題だけに限って質問させていただきます。16頁の 資料で、いま少し減少しているという経過が出ているのですが、いま、ここの900地区 でどういう問題が生じているのかの実態把握をされているかどうかと併せて、いまご指 摘のように、多少これは政策的な優先順位から言うと、かなり高い問題だと認識してい るのですが、この減少について、どういう評価をしたらいいのか、目標を立てても全然 立ち遅れていると見るのか、いや、少しは進んでいると見るのかによって、やはりいま の施策が本当に抜本的に講じられなくてはいけないという判断をしなくてはいけないの ではないかと思っていますので、その辺についてのことを知りたいわけです。 ○松井委員  2点ほど手短に申し上げたいと思います。へき地医療の問題で、龍井委員からは問題 点を探るようにということがありました。野呂委員からは、都市部における医療従事者 について一定の制限を加えるという指摘がありました。制限について、現実にそれを機 能させるのは非常に難しいと思います。というのは、医師あるいは看護師にとっても、 職業選択の自由と、どこで働きたいかという自由は、やはりなかなか制限しにくいのが いまの現状だと思います。  そういたしますと、へき地医療における問題は、退職者を使う計画もありますが、若 い方に担っていただくのも一つかもしれない。しかし、ところが若い人たちは経験が少 なく、本当は、へき地に行ってすべてのものに対応できるのかと言いますと、医療的に は非常に難しい点もあると思います。このような現在の医者を育てる仕組みから変えて いかないと難しいのではないかと思います。新しい臨床研修制度では、スーパーローテ ートがありますが、それを終えたくらいでへき地の医療を自ら担えるかと言うと、若い お医者さんの言葉を聞くと、必ずしもできるものではないという、この点を十分踏まえ て対応しなくてはいけないと思います。  先ほど野呂委員がおっしゃられた、地域におけるものは地域で当然やるべきであると 思います。それで、医療計画の中に、その病床規制ではなく、やはり診療科別にそれぞ れに必要なものをきちっときめ細かく定めていくことが重要だと思います。  その上で、病診連携が十分できるような、熊本県のクリニカルパスがありましたが、 患者の立場からすれば、一旦病院へ行って手術をすると、やはりその病院にとどまりた いという気持は当然あると思いますので、そこの本当の逆紹介もできる仕組みが十分整 っていかなければ、機能分化しても病診連携、病々連携もなかなかうまくいかないので はないかと思います。  ですから、紹介率の算定の問題はいろいろ各委員から指摘がありましたが、それは結 果の問題で、そこをきちっと仕組んでいく仕掛けがないと、うまく回らないのではない かと思います。以上です。 ○堀田委員  簡単に3点申し上げます。小児科の問題で、この少子化の時代に小児科のなり手が非 常に少ないのは、大変大きな問題だと思っています。確保・育成に関する研究を進めて おられることは大変結構ですが、この項目の中に、いわば小児に対する治療の位置づけ と言いますか、大学教育の中における位置づけは、どうも不当に低いという感じがいた します。おそらく小児患者はものを言わないわけで、そこを、病因を探って治すとい う、極めて高度な治療ですので、そういう評価をしっかりと教育の段階からしていくこ とが基本的に必要なのではなかろうかと思います。  精神も大変難しい問題で、このところずっとお取り組みになっているのは素晴しいと 思います。緊急時を過ぎれば地域に戻そうというのも大変いい方向だと思っております が、その地域への戻し方ですが、例えば痴呆については、グループホームを作って、こ れが地域に受け入れられるようになっている。精神のグループホームも、少しですがで きつつあります。そういった形で、医療と連携しながらのグループホームあるいは、も う少し言えば、小規模多機能型の施設をこのごろ福祉のほうでもつくり出しています が、精神についても、そういった発想で地域に戻していくことが必要なのではなかろう かと思います。  最後に終末期医療の問題です。これは安楽死の問題とか、いわば法律問題とも密接に と言いますか、直接かかわる問題です。脳死の時に非常にやかましい議論が起きました が、もう一歩あれを進めた形での議論をして、国民的合意を得る必要があるので、医療 だけでなくて、そういった幅広い研究会を作って国民のコンセンサスを得る。特に、意 識が回復する可能性がない状態になってからのスパゲッティ医療は、言ってみれば、無 駄とまでは言いませんが、非常に医療費がかかっているところですので、その辺りのQ OLをどう確保するのか、詰める時期にきているのではなかろうかと私は思います。 ○山本(信)委員  野呂委員が申されたように、地域の事情に応じて、必要な医療施設、医療関連施設、 医療スタッフを整備できるような体制を国が支援するのが必要だということは、私も十 分にそのとおりだと思っておりますが、そうした場合に、ややもすると、いままでの議 論の中では、必要な医薬品がどう供給されるのかという体制が、よく抜けてしまうケー スがあります。  先ほど、前半の議論で申しましたように、医薬品は医療を提供する上で必要な道具に なっていますので、そうしたものを提供する仕組みができることを考えないといけない のではないかと考えています。東京でも、「へき地」と言ったらちょっと語弊があるの ですが、夜間になると医療過疎が起きていますので、そういった意味では、瞬間的なへ き地が起きるわけです。そうした時に、一体地域の中で薬局をどう確保するのかという ことが、全くこの議論の中では抜けており、例えば夜間休日当番体制を敷いている地域 が、この資料を見ますと、1,000近くあるわけです。そうしたところに協力している薬局 もあるのですが、地域の中では、そうした法律の中に規定されておりません関係で、十 分に地域住民に周知がされない。したがって、患者さんは処方箋を交付されても、どこ へ行って薬をもらったらいいか分からないという状況が生じて、その入手に大変苦労す るケースがあります。  へき地も同様で、薬局は偏在しますので、そうした体制もとりにくいということもあ りますので、今後の医療提供体制、あるいは地域医療計画を立てるうえで、基本となり ますこの大元の医療法の中で、薬局がどう働けるのかをきちんと明記していただけれ ば、それぞれの地域の中で検討される議論が、いま非常に進みやすくなると考えていま すので、そのあたりも含めて明記していただきたいと考えています。 ○鴨下部会長  お2人でお仕舞にしますので、すみませんが、短かくお願いいたします。 ○土屋委員  先ほど国民なり住民の啓発が必要であるというお話がありましたが、いま、医療提供 者の側も、特に若い世代の医師たちは、何科であるかを問わず、「専門医、専門医」と 言っています。国民も住民も「専門医、専門医」という何かちょっとおかしい状況にな っています。いずれ医学部を卒業して医者になった者は、いまの状況でいきますと、全 員専門医になってしまい、プライマリーケアが身についていない医師ばかりなってしま うことを懸念しています。  小児救急で言いますと、いま少子化の時代で、小児科医あるいは産婦人科医が少なく なっていくのは、必然かもしれません。実際は、小児救急で、小児科の専門医は少ない と言うのですが、調査してみますと、本当の専門医が診てよかったなあというのは、小 児救急患者の中の1割に過ぎないわけです。その他の9割は従来どうしていたのかとい う話です。それは先ほど出ましたが、あえてここにそういう研修をしなくても、厚労省 から出たデータを見ますと、「あなたが専門とするのを1つ挙げなさい」と言うと、数 パーセントの方が「私は小児科医だ」と言います。「2つ挙げなさい」と言ったら、10 数パーセントになるのです。小児科を診てもいいよいうのは、内科医だけでなくて、外 科、小児外科をやっている方だとかがいまして、そうすると、10数%になるわけです。 実際は、そこらあたりの医師たちも、日常は小児の救急なり小児科の診療に当たってい るのです。  ですから、体制をそういう格好で、体系図に盛られているのは、大変大事なことで結 構だと思いますが、それを受け手の側の国民なり住民を啓発、教育することも大事だろ うと思います。そうしませんと、折角救急センターを置いても、そこに初期救急で済む ような人がワッと押し掛けてしまうものですから、ここで本当の小児科の専門医として の仕事が実際はできない、その役目を果たせないのが現状ですので、これをよく国民に も理解してもらうことが必要だと思います。 ○鴨下部会長  そのとおりだと思います。 ○佐伯委員  私も、同じ14頁に書かれてあった表現で、ちょっと気になったのが、「保護者の大病 院指向」とか「一部の所に集中し現場が混乱する」、本当に保護者が悪いという表現で すが、なぜそういうことが起こっているかという背景を、やっぱりちょっと分析してい ただきたいなという気がいたします。  大事になってから初めて担ぎ込まなければいけないということで、救急があるのだと 思いますが、大事にならないうちに、日々安心して子育てができるような医療の支援 が、本当は必要であろうかと思いますので、安心して子供が産める社会をつくるための 整備が必要だと思います。それを知らないのは国民が悪いのではなくて、先ほど精神の ところでありましたように、やはりそれは国、全体がもっと力を入れて、いろいろなと ころで啓発する必要があると考えています。 ○鴨下部会長  いろいろご意見いただきまして、まだあろうかと思いますが、そろそろ時間も迫って きましたので、第3の「医療経営の近代化・効率化について」、資料のご説明、それと も小児救急に関して、指導課長から何か言っていただけますか。 ○指導課長  すべてに対するお答えにはならないと存じますが、いくつか出ましたご意見等につい て若干ご説明させていただきます。  まず、ヘリの問題で、山本委員からお話がありましたが、すべての県でドクターヘリ が必ずしも必要だとは我々も考えておりません。県で持っていらっしゃる防災ヘリをう まく活用するとかいう形での有効利用をしていただければいいのではないか、と県のほ うにもご指導を申し上げているところです。  救急時の市町村の負担等ですが、市町村がやはりその義務として初期救急は担ってい ただかなくてはいけないというのは、そのとおりです。ただ、2次、3次救急になりま すと、やはり県なりに役割分担がありますので、やはり役割はちゃんとそれぞれ分担し ていこう、と我々は考えておりますので、そこはご理解いただきたいと思っています。  大橋委員のほうで、拠点病院について、クリニック、診療所では駄目かというお話が ありました。実は、我々はそういう発想はなかなかありませんでしたので、ちょっと目 から鱗という感じがしておりますが、基本的には2次救急ですので、入院を必要とする 部分があるかと思いますので、無床では多分駄目だろうと、有床の場合、それだけのス タッフがいらっしゃって、救急能力があるということについては、本当に先ほど言いま したように、目から鱗ですので、この辺は今後ちょっと検討させていただきたいと思い ます。  野呂委員がおっしゃいましたローカルルールの問題ですが、これも実は今後の医療計 画の見直しの中で、やはり都道府県にもっていただくべきものはあるだろうと私どもは 考えています。小児救急の問題についてもそうだと思います。具体的にこれから詰める 段階ではありますが、知事さんの権限で、それぞれの県に応じた医療提供体制、例えば 複数の委員からご指摘がありましたが、診療科別に医療機関をどのように整備していく のかとか、主な疾病別にどのように医療体制を整備していくのかといったことを知事さ んの権限の中で、医療計画にちゃんと書き込んでいただけるような方向性は、我々とし てもちゃんと打ち出してまいりたいと考えています。ですから、そのための財政措置も できれば何らかの形で協力したいと考えています。  ドクターの都市からの引っぺがしの話ですが、ここではちょっとお答えしづらくて難 しいのですが、現状認識として、いまのままでは困るというのも、我々も認識としては もっています。それがどういう形でできるのかは、今後の課題として宿題で預からせて いただきたいと考えています。  小児科医療の位置づけが不明確である、大学レベルでの教育が必要であるというご指 摘もありました。その点については文科省ともまた相談させていただきます。問題につ いて、3省が合同になって、どうしていくかという場がありますので、私どもから、こ ういうご発言があったということで問題提起して、文科省にご協力を求めたいと考えて います。  無医地区につきまして、その現状をどう考えているのかというご指摘もありました。 実は、第10次のへき地医療計画を作る際に、無医地区の実態調査をまた行います。その 中で現状における評価もやらせていただきたいと考えておりますし、これまでだんだん 減ってきたことについて、私どもは決してこれで満足しているわけではありません。減 ってきたことの裏側に、例えば交通アクセスがよくなって、その要件から外れたことも 若干、確かにあろうかと思います。そういったことも踏まえて分析して、いまの段階で は十分だとは思っておりませんので、なお一層の努力ということで、対策を進めたいと 考えています。  私からは以上です。 ○鴨下部会長  精神保健福祉課長から何かありますか。 ○精神保健福祉課長  精神につきましても、いろいろとご指摘をありがとうございました。私どもは、精神 障害者が地域で生活するためのいろいろな仕組みについて、先ほどの就労の話も含め て、住まいの話も含めていろいろとご指摘をいただきまして、私どもは、そういうご意 見を踏まえて、地域の中で普通の生活ができるような仕組みも含めて、これから頑張っ ていきたいと思いますので、本日はいろいろなご指摘をありがとうございました。 ○鴨下部会長  次の課題に移ります。指導課長、お願いいたします。 ○指導課長  時間が押しておりまして、申し訳ありませんが、資料3のほうで。 ○山本(文)委員  次の会議がありますので、帰らせていただきますが、次の議題の最後の頁で書いてあ ることについて、私は、こういう認識はおかしいのではないかと思いますので、これは 是正してくださるよう、意見を申し上げて退席させていただきます。これをずっと追っ て意見を申し上げると、全部言わなければなりませんので、こういう認識で書かれるの は、極めて不見識だと思います。医療法人はたんさんあって、こういうふうに言われる と、これはここだけの問題で済まなくなります。ですから、もう少し実情をよく理解し て書くべきではないかと思います。 ○鴨下部会長  次回議論することになっておりますので、また是非次回お出でください。 ○山本(文)委員  すみません。次の会議がありますので。 ○指導課長  資料3について簡潔にご説明申し上げます。1頁は、現行の医療法人制度について、 こういう形での仕組みになっていることの説明ですので、ご覧になっていただきたいと 思います。2頁は、医療法人は、財団、社団といろいろあるわけですが、社団の場合の イメージを絵にしたもので、これも一目ご覧いただけばお分かりになるかと思いますの で、省略いたします。3頁は、医療法人と申してもいくつかあって、特にいま話題にな っている特定医療法人、特別医療法人について、それぞれの要件を表にしたものです。 これも後ほどお目通しいただければと思います。  4頁は、医療法人は、一応非営利と位置づけられていますが、医療の場以外を考えて も、非営利法人は、実はこれだけありまして、その中でも医療法人が、上のほうに5種 類書いてあります。同じようなものもあり、似ていないものもあり、ちょっと混乱をす る部分でして、こういったものをすっきりと整理してはどうかという意見も出ておりま すので、こういったものを参考に、我々としても整理したいということで、この表を出 させていただきました。  5頁は問題点です。医療法人制度は昭和25年に発足していますが、50年以上経過し て、実はいろいろな問題が指摘されています。非営利性からしますと、剰余金が医療以 外に投入されているおそれもあるのではないかという指摘があったり、公益性という視 点から見ますと、本当に住民が求めている公益性の高い医療が、本当に提供されている のだろうかという意見もあるにはあります。効率性からしますと、経営のチェック機能 が十分働いていないのではないかと、無駄な投資がされていたりということも、経営の 足を引っ張っているかもしれない、という指摘もあることはあります。透明性が確保さ れていない、医業が安定的に提供されていない、これは資金調達の面ですが、そういっ た指摘もされています。  6頁は、医療部会をはじめ、あと検討会とか、私どもがまとめた改革のビジョンの中 でも、これまで提言がいくつかまとめられておりますので、それを参考にして、7頁に 書いてありますような、できるものから順次対応してきたところです。理事長要件の緩 和にはじまり、「特別医療法人」制度を普及させたり、「特定医療法人」の要件緩和を したり等々、さまざまなことはしてきたつもりではありますが、まだなおほかの分野か らいろいろなご指摘があるのも事実です。その一例が、その8頁の経済同友会からの提 言と言いますか、改革の試案みたいなものもいただいています。詳細は省略いたします が、最終的には営利法人による医療機関設置を解禁してはどうかというご提言もあった りするわけです。  9頁は、規制改革・民間開放推進会議あたりから、参考資料の6を付けていますの で、後ほどお目通しいただきたいと存じますが、基本的に「民主導の経済社会の実現」 という中で、株式会社等の医療機関経営への参入についてのご提言があったりしていま す。  こういうことを踏まえて、10頁に、主な論点をこういう形で整理させていただいてい ます。問題点は、やはり非営利性をもっと徹底させなければいけないのではないか、公 益性も確立すべきではないか、効率性の問題もやはり疎かにできない、透明性も確保す べきではないか、安定した医療経営を実現すべきではないか、こういうところにこれま でのご提言が大体集約されるものと私どもは考えております。こういったことを念頭に おいて、今後、医業経営の非営利性に関する検討会を私どもは持っておりますので、そ の中で、さまざまなお立場の先生方にご検討いただき、次回の医療法改正を視野に入れ て、具体的な検討を行う予定にしています。  そのイメージですが、最後の頁に掲げていますように、繰り返しになりますが、左側 の上の箱に書いてありますように、いくつかの問題点が出ています。これは、我々とし ては、今後、医療法人は、医療提供体制の民間の有力な担い手として、やはり伸ばして いきたい、伸びていただきたいという視点をもっていますので、そういう意味からする と、さまざまなご批判に耐え得るような形での改革はある程度必要だろうという見方で す。  右側には、先ほどからずっと述べておりました、外からのお立場からのさまざまなご 意見がありますので、そういったものを議論していただいて、下に書いてあるような視 点で検討を加えて、平成18年度の医療制度改革の中で、反映できるものは反映させてま いりたいと考えています。  時間がありませんので、今日は資料の説明だけにさせていただき、詳しいご議論は次 回行っていただければと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。 ○鴨下部会長  ただいまのご説明は、次回の冒頭でもう一度簡単に繰り返していただいて、議論は次 回回しにさせていただきます。  ちょっと私は視野に入らなくて、福島委員、失礼したので、一言どうぞおっしゃって ください。 ○福島委員  全体的なこの会議の運営と言いましょうか、今日いろいろ医療提供体制の問題で、非 常に広範な問題がいろいろ提起されましたが、今後の各論の論議になる時に、やはり、 あるべき医療提供体制の政策誘導と言いましょうか、この委員会の権限でもないのです が、診療報酬体系のあり方も頭に置きながら、ここの論議では、こういう形にもってい きたいという誘導があっても、先ほども多少意見が出ましたが、やはり具体的に政策誘 導のための非常に力強いバックアップとしては、診療報酬体系に絡めて、これをどうし ていくかということも検討していただきたい。これは要望と言いますかお願いです。 ○鴨下部会長  それでは、だいぶ予定の時間よりオーバーしましたので、本日の議論はこれで終了さ せていただきます。何かありますか。よろしいですか。それでは、次回の日程につい て、事務局から説明をお願いいたします。 ○企画官  次回の日程は、12月16日(木)午前10時からを予定しています。また場所は決まって おりませんので、後日、正式な文書でご案内申し上げます。以上です。 ○鴨下部会長  本日はこれで閉会にいたします。大変熱心なご討論をいただいてありがとうございま した。 ┌――――――――――――――――――――――――┐ |照会先                     | |医政局総務課                  | |濱田、野崎                   | |連絡先:03−5253−1111(内線2518)| └――――――――――――――――――――――――┘