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資料

メリット制に係る検討メモ


項目 課題( 論点 ) 意見
 基本的な考え方
業務災害に係るメリット制は、業種区分が同一であっても、無災害の事業場と労働災害を発生させている事業場との間において保険料に差を設けることが、労働災害防止のインセンティブを促進するという点で必要な制度と考えるが、どうか。

全般的に災害率が低下している中で、労働災害防止のインセンティブをより高めるという観点から、メリット制がどのような役割を果たし得るかについては、どう考えるか。
 
 メリット制の適用要件
メリット制にかかる適用事業場の要件をどのように設定すべきか。

適用要件の緩和は財政面では保険料収入が減少する効果をもたらすことから、その減少分を確保するために全体の労災保険率が引き上がり、メリット制が適用されない事業にとって不利になることについては、どうか。
メリット制適用事業場数は全事業場数の約5.7%にとどまっているが、労働災害防止のインセンティブを促進させるため、適用事業の要件を緩和し、適用対象の事業場数を拡大することを検討すべきである。
 たとえ労働災害防止努力によることなく保険料負担が軽減される事業場が現れたとしても、努力した事業場が必ず評価される制度にすべきであり、労働災害防止のインセンティブ促進の観点からメリット制適用対象を拡大する価値はある。

以下のような要因から、適用事業の要件緩和は難しいのではないか。
小規模事業場の災害発生割合は、全産業平均の半分以下 であり大半の事業場が無災害であるが、この無災害が安全衛生対策を行った結果によるものか、たまたま無災害であったのか、現行のメリット収支率の計算に用いる給付データからは判断できないこと。
適用要件の緩和は、適用拡大される小規模事業場の多くの事業場が無災害であることから、単なる保険料の引下げの措置と同様に、保険料収入が減少する効果をもたらし、全体の労災保険率が引き上げられること。
小規模事業場において労働災害が発生した場合には、メリット収支率が急激に悪化することから、無災害の場合に最大引下げ(−40%)、労働災害が発生した場合に最大引上げ(+40%)となるケースが多いこと。
 メリット増減幅
メリット増減率の幅をどのように設定すべきか。

メリット増減率の拡大は財政面では保険料収入が減少する効果をもたらすことから、その減少分を確保するために全体の労災保険率が引き上がり、メリット制が適用されない事業にとって不利になることについては、どうか。
労働災害防止のインセンティブを促進させるため、メリット増減幅を拡大すべきではないか。

メリット増減幅の拡大又は縮小等の見直しの必要性については、以下に留意し、慎重に検討すべきである。
メリット増減幅の拡大は保険料収入の減少を伴うことが予想されるが、その減少に見合う業種全体の労働災害の減少による保険給付費の減少がない限り、この保険料の減収分は全産業で負担することから、もともとメリット制の適用がない小規模事業場において保険料負担が増加する恐れがあること。
過去の高度経済成長期においては、労働災害が多発していたため、メリット増減幅の拡大は、結果として労働災害防止に効果があったといえるが、近年のように労働災害の発生件数が下降している状況では、メリット制の要件緩和と増減幅拡大により事業主の労働災害防止意欲を高揚させる効果を予測することは難しいこと。また、災害発生件数の減少の効果が現れるか疑問であること。

継続事業と有期事業の間に、メリット増減率の幅に差があることについては、どうか。
継続事業と有期事業のメリット増減幅に差を設けるべきではない。
 特例メリット制
・特例メリット制については、充分活用されていない現状を踏まえ、中小企業の安全衛生水準の向上等に資する有効な政策として活用を推進する方策については、どうか。
特例メリット制について申請実績が少ないことから、その要因について検証が必要ではないか。
 その他
(労災保険部会での意見)
メリット増減幅の拡大に伴う労災防止インセンティブの効果については、どうか。また、労災隠しを招きかねない、との意見についてはどうか。
メリット増減幅の拡大が労災防止インセンティブを推進することは証明できず、逆に労災隠しを招きかねないため、メリット増減幅を拡大すべきではない。
メリット制の問題については、増減幅の拡大が労災防止インセンティブを推進することは否定できないが、別途、労災隠し対策をとる必要がある。

※ 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会


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