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ヒトゲノム・遺伝子解析研究等に関する
個人情報保護の観点からの法制化について


【ヒトゲノム・遺伝子情報に関する個人情報保護の必要性】
センシティブ情報に関する個人情報保護法の規定
適正な取扱の厳格な実施を求められる個人情報について、保護のための格別の措置が求められていること(法第6条第3項)。

個人情報保護法に対する国会の附帯決議、個人情報の保護に関する基本方針(H16.4.2 閣議決定)

個人情報保護法の適用除外規定
学術機関等での学術研究について個人情報保護法で適用除外。

ヒトゲノム・遺伝子情報の特殊性
ヒトゲノム・遺伝子情報については個人情報保護の必要性が高い情報ではないか。


【研究分野における指針の見直し案】
 ・個人情報保護の責任主体を研究を行う機関(=法人等)の長とするなど、個人情報保護について機関ぐるみの取組を求める。
 ・個人情報保護法で求められる個人情報取扱事業者の義務等を全て盛り込むとともに、(1)5,000件以下のケースも対象(データーベース化されていないものを含む)、(2)研究者の守秘義務、(3)死者の情報の安全管理措置など、個人情報保護法を上回る規制とする。


【個人情報保護法で求められる事業者の義務等の法制化について】
事業者の義務等について法制化することに対する考え方
どのような切り口(研究、医療、遺伝情報、生命倫理等)で包括的な法律を設けたとしても、罰則等による実効性の担保を法制化の重要な意義と考えるのであれば、個人情報保護法で求められる各種の個人情報取扱事業者の義務等(安全管理措置、苦情相談、第三者提供、開示等)を法制化する必要があるのではないか。
 ※法律の中で基本原則及び罰則を規定し、具体的な内容を指針で規定することについては、罪刑法定主義の考え方から問題があるのではないか
その場合に、こうした各種の義務等を法制化することについて、どのように考えるのか。

法制化に賛成する立場及び反対する立場の意見
[法制化に賛成する意見]
指針では違反したときの罰則がなく、個人情報保護の実効性が担保される保障がない。
個人情報保護は憲法が保障する個人の保護・尊重に深く関わる問題であり、学問の自由と同様に尊重されるべき問題。
法律により個人だけでなく研究者も保護されるのであり、きちんとした仕組みが構築されることで研究がやりやすくなる。
問題が生じてから法制化を考えるのではとり返しがつかない可能性有り。

[法制化に反対する意見]
罰則等に対して研究者が萎縮する可能性があり、研究の進展が妨げられるおそれがある。
研究の内容に関わる問題であり、学問の自由という憲法上の保障がある中で、そうした規制を行うことは問題である。
法律では指針と違って、研究の進展に対応して迅速かつ柔軟に見直すことが困難。
現実に特段の問題は生じておらず、現場では指針でも十分守られており、法制化する必要性に乏しい。今回見直した指針の実効性を見極めた上で、必要に応じて法制化の検討をすべき。

[その他法制化に関する主な意見]
仮に法制化を行うとしても、ヒトゲノム・遺伝子解析に限った法制化を行うことについては、個人情報保護の視点から見ても不十分であり、むしろ中長期的な課題として十分な時間をかけて、より広範囲をカバーする法制化を検討すべきではないか。


【法制化する場合の論点】
法律の枠組み(個別法or横断的な法律or基本法)
 → 具体的には、横断的な法律又は基本法については、以下の「中長期的な課題」で整理
遺伝情報は研究分野を含め幅広い利用が予想されており、こうした中で法的な規制の枠組みの必要性をどのように考えるか。
情報の漏洩を完全に防止することが困難である中で、遺伝情報を解析する側とその情報を別目的で利用する側の規制のバランスを図ることが必要ではないか。

法律で保護すべき遺伝情報の範囲
遺伝情報が示しうる個人の遺伝的な特徴及び体質に関わる情報は、差別につながり得るものからそうでないものまで非常に幅広く、また、必ずしも遺伝的な特徴及び体質を決定的に示すものではなく、こうした中で保護すべき遺伝情報の範囲や保護の程度をどう考えるべきか。
死者の情報についてどのように考えるべきか。

その他
規制を課して個人の保護や適正な研究の実施を図るとともに、研究の実施を支援するような法律を考えるべきではないか。
研究の進展に対応して迅速かつ柔軟に見直しを図るべきではないか
(※法律の枠組みの議論とも関連)。
研究者の守秘義務を設けるべきか。
組織としての匿名化のインセンティブを阻害するのではないか。


【当面指針で行う場合の論点】
個人情報保護の実効性の確保
指針という罰則がない制度の枠組みの中で、個人情報保護の実効性をどのように確保していくのか
(1)国の機関や国立大学等については、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」や「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」等により個人情報の保護を担保。営利企業の研究機関等については、「個人情報保護法」の対象。
(2)個人情報保護に関する各種法律の対象とならないものとしては、私立大学や公益法人等が想定されるが、こうした者の個人情報保護の実効性を確保するために、
現状では、指針違反の場合には科学研究費補助金を受けられないなどの措置を講じており、当該措置を引き続き厳格に実施するとともに、他の国からの資金提供や国のプロジェクト関係についても、同様の措置を講ずべきではないか。
所管省庁の監督権限の中で指針の実効性を確保できないか。
問題が生じてから対応するのではなく、改定指針の実効性が確保されているかをきちんとフォローアップし、その結果を踏まえ、法制化を含めさらに検討すべきではないか。


【法制化に関する中長期的な課題等】
ヒトゲノム・遺伝子解析研究に限った個別法ではなく、横断的又は基本法的な法律の策定
考えられる法律の形式としては、
(1)4つの研究指針を統括した研究一括法
(2)医療・研究情報全般についての個人情報保護法の特別法
(3)医療・医学研究や産業における利用も含めた個人遺伝情報一般法
(4)生命倫理全般を取り扱う生命倫理基本法
などがあるのではないか。
法に盛り込むべき事項としては、(1)遺伝情報に基づく様々な差別の禁止、(2)差別の元となり得る個人遺伝情報の保護などが考えられるのではないか。
こうした横断的又は基本法的な法律の枠組みの中で、個人情報保護に関する事業者への義務等について、どのように規定するのか。
 →
 (1)法律の中に規定し罰則を科す
 (2)法律の中で基本原則のみを規定し、具体的内容を指針で規定(罰則を科す)
 ※罪刑法定主義の考え方から問題ではないか
 (3)法律の中で基本原則のみを規定し、具体的内容を指針で規定(罰則を科さない)


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