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第3回
資料5

最低賃金制度のあり方に関する意見

平成16年11月12日
全国中小企業団体中央会
調査部長 原川 耕治


1.最低賃金制度に求められる意義・役割

 最低賃金制度は、あくまで労働者の賃金の最低保障を行うものとして、セーフティネットとしての役割を果たすところに意義がある。

 最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払い能力の三要素を総合的に勘案して定めることとされているが、最低賃金決定の重要な要素として、最低賃金の影響を最も受けやすい中小零細企業の実情や支払能力を重視すべきである。

2.安全網としての最低賃金制度のあり方

 地域別最低賃金が、全国的に整備・適用され、セーフティネットとしての役割を果たしており、すでに定着している。

 現在の地域別最低賃金は、各地域それぞれの特性や実情を踏まえて、これまで積み上げられてきたものであり、この事実を重く受け止めるべきである。

 社会経済の動きとは無関係に毎年諮問・改定がなされる現在の方式は、下方硬直的であり、かつ、非効率である。賃金が大きく変化しない一定の場合には、中央、地方ともに、「2年に一度」諮問・改定を行うシステムに改めるべきである。

 毎年諮問・改定を行う最低賃金の現行方式は、毎年賃金が右肩上がりに上がる時代に、それに対応して最低賃金を引き上げるために定められたものであり、多分に、最低賃金は引き上げるべきものという上昇志向的な考え方が働いているとの指摘がある。
 毎年諮問・改定が行われる結果、膨大なエネルギーと費用をかけて、「0円」「1円」の攻防が繰り返されているが、近年の国際競争の激化や賃金決定機構の変化などの社会経済環境の変化に照らせば、賃金が毎年大幅に上昇することは考えにくく、諮問・改定を無条件に毎年行うことの必要性・意義は薄れている。
 したがって、最低賃金の諮問・改定を、賃金が大きく変化しない一定の場合には、中央、地方ともに「2年に一度」にすることに改め、行政コストの大幅な削減、制度の効率化・スリム化を図るべき時期にきていると考える。なお、このように改めた場合でも、賃金改定状況調査の実施(3年分の賃金の記載)については、不可能ではないと考える。

 最低賃金は、社会経済情勢を踏まえ時宜にかなった改定をすべきという趣旨にかんがみれば、改定の際には、「引上げ」「据え置き」だけでなく、当然に「引下げ」も決定し得ることを制度として明確にすべきである。

 熾烈な国際競争の中で、コスト削減が中小企業の最大の経営課題であり、今後も中小企業は、景気が回復したとしても大幅な上昇は望めず、低空飛行での厳しい経営を強いられる状況が続くことが予想される。
 こうした状況を背景に、賃金決定機構が大きく変化しており、定期的に上がる時代から、企業の業績に応じて上がり下がりする時代へと変化してきている。
 最低賃金においても、社会経済情勢を踏まえ時宜にかなった改定が行われるならば、「引下げ」も当然起こり得ることであり、これを含めた制度とすべきである。


3.最低賃金制度の体系のあり方

 産業別最低賃金制度を早急に廃止すべきである。

 地域別最低賃金が全国的に整備・適用され、賃金の最低保障としてのセーフティネットの役割を果たしており、すでに定着しているところである。
 強行法規である最低賃金法で、罰則付き最低基準の二重底の設定を一部の産業に限って認めることは、最低賃金法第1条の趣旨からみても、大いに疑問である。
 地域別最低賃金以上の賃金の設定が必要な場合には、罰則付きの強行法規によるのではなく、個別企業労使間の協約・協定で自主的に定めればよい。


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