04/10/29 第24回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会議事録          厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会                  第24回 議事録             平成16年10月29日(金)15:00〜17:15             厚生労働省共用第7会議室(5階) ○永野補佐  定刻になりましたので、ただいまより第24回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞 移植委員会を開催いたします。  本日は、小澤委員、柴田委員、新美委員、西川委員、麦島委員からご欠席との連絡を いただいております。  また、本日は、議事に即し、東海大学の加藤先生、日本赤十字社血液事業本部の白戸 副本部長、田角献血推進課長に参考人としてご出席いただいております。  議論をいただく前に、厚生労働省に人事異動がございましたので、健康局疾病対策課 長の関山よりご挨拶をさせていただきます。 ○関山課長  関山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○永野補佐  次に資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第の裏の配付資料一覧に基づ きまして紹介させていただきます。  資料1、造血幹細胞移植におけるウエストナイルウイルス対策について  資料2、臍帯血ドナーの白血病発症事例について  資料3、骨髄ドナープール拡大のために  資料4、骨髄ドナーの適応年齢幅の拡大について  資料5、平成17年度移植対策関係予算概算要求の概要  資料は以上ですが、不備等がございましたら事務局までお申しつけください。  それでは、議事進行を委員長にお願いいたします。 ○齋藤委員長  早速、議事に入ります。今から5時までの2時間を使いまして充実した議論をしたい と思います。よろしくお願いします。  まず第1の議題は「造血幹細胞移植におけるウエストナイルウイルスへの対応」であ ります。この問題については、以前、当委員会でも議論をしていただいたところです。 今般、献血におけるウエストナイルウイルスの取り扱いが若干変更され、また、臓器移 植においても献血と同様の考え方で取り扱いが変更されこととなっております。従っ て、造血幹細胞移植においても取り扱いの変更を検討する必要があるのではないかとい うことです。  まず、事務局から説明をお願いします。 ○斎藤主査  資料1に従いましてご説明申し上げます。ウエストナイルウイルス対策につきまして は本委員会においても第12回、第17回でご議論いただいております。臓器移植対策室と いたしましては、これまでの議論の結果、また献血の取り扱い等も踏まえまして、ドナ ーの渡航歴について問診より確認を得なければならない期間を、ウエストナイルウイル スの流行地域より帰国して3週間以内としております。  具体的な内容については通知として出させていただいておりまして、資料1の5ペー ジに通知の写しを掲載しております。  要約しますと、米国等のウエストナイルウイルス流行地域から帰国後3週間以内のド ナーについては原則として造血幹細胞の採取を行わない。やむを得ない場合であって、 PCR検査等で陽性でないことを確認できる時は例外としております。  しかしながら、今年7月に、従来考えてきたよりも少ないウイルス量で感染する例が 米国でありましたことから、資料の2ページ、3ページにありますとおり、ウイルス血 症の期間がさらに長くなる可能性があることを踏まえて、献血においては供血者の採血 禁止期間について国外からの帰国後3週間から4週間へと延長されたところでございま す。なお、この通知においては、対象となる地域がすべての国外となっております。  ウイルス血症の期間の延長に関して、4ページに概念図をお付けしています。これは 国立感染症研究所の岡田先生が7月に血液事業部会運営委員会でのご説明でお使いにな った資料です。これは米国での輸血によるウエストナイルウイルス(WNV)感染例を 模式的に表したもので、米国では輸血用血液に対してWNVの核酸増幅法による検査を 導入していますが、何人かが輸血によって感染を起こしました。これらの例では、複数 ドナーのプール検体に対する核酸増幅法では陰性でしたが、個々の検体をもう一度調べ ますとウイルスが検出されました。そこで、プール検体で核酸増幅法をすり抜けた血液 中のウエストナイル感染の可能性を調べて、その結果をグラフとして示しています。  グラフの横軸は感染後の時間、縦軸はウイルス量を表しています。pfu というのはプ ラーク・フォーミング・ユニットという単位です。横線が2本ありまして、上の線を越 える期間が感染可能な期間と考えられていましたが、実際にはこれが0.06ぐらい、すな わち下の横線を越える期間において感染が成立していたということです。そのため、感 染可能なウイルス血症である期間が延長することを想定しまして、安全期間としてさら に1週間を追加するという提案がなされたということです。  以上、献血における採血禁止期間の変更を踏まえまして、造血幹細胞移植においても ドナーの渡航歴について確認を要する期間を帰国後4週間以内とさせていただくこと、 またWNVの拡大を踏まえまして、対象国をすべての国外とさせていただく案について ご議論いただきたいと思います。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。  ただいまの説明につきまして、ご意見をお願いします。献血はもちろん、他の臓器移 植もこのように変更されたということですが、よろしいでしょうか。  それでは、事務局から通知の発出等、必要な作業をしていただくようお願いします。  次は2番目の議題に移りたいと思います。当委員会ではかねてから造血幹細胞移植を 4つの視点から議論してきましたが、その大きな柱の1つ、「臍帯血移植における安全 性の確保」について議論したいと思います。この問題については、前回、7月23日の委 員会において麦島委員から、臍帯血ドナーの白血病発症について問題提起をいただいた ところです。  この点について、事務局において現状及び今後の対応に関する資料をまとめています ので、説明をお願いします。 ○斎藤主査  資料2に基づいて、「臍帯血の白血病発症事例について」説明いたします。この議題 につきましては臍帯血と薬事法の関連ということで、ドナーの遡及調査という類似した 話題に関して以前ご議論いただいた経緯がありますが、ドナーが白血病を発症した事例 についてご議論いただくのは最初になるかと思います。  まず、事務局が把握している事例の3例についてご説明いたします。1.事例の概要 のところにある3例ですが、いずれの例でも急性リンパ性白血病(ALL)と診断した 医療機関が、その患児の提供歴を知ったために、家族の同意を得て、自主的にバンクへ 報告したという例です。該当する臍帯血は、いずれも移植には使用されていませんでし た。  ただし、2番目の例は若干複雑でして、発症した患児の兄(姉)も臍帯血を提供して おり、事例報告時には健康状態は良好でしたが、兄(姉)の臍帯血は事例報告時には既 に使用されていました。しかしレシピエントは移植合併症のため早期に死亡していまし た。  2.臍帯血ドナーとなる新生児及び母親の健康状態の把握についてですが、現在は次 のような方法で把握しています。  具体的な基準については3ページ以降にありますが、さい帯血バンクネットワークの 技術ガイドラインに則って行われています。  母親の既往歴、家族歴、海外渡航歴等に関する問診の実施、また遺伝性疾患や遺伝に よる影響が無視できない疾患等について除外することとしています。  臍帯血採取の6カ月後にも提供児の新生児健診・代謝疾患スクリーニング結果等につ いて親に健康調査を実施していまして、その健康調査の内容は6ページにあります問診 票を送付して行っています。  このような事例に対する対応ですが、2ページの3.今後の対応のところをご覧いた だきたいと思います。小児の白血病の発症率は10万人当たり数名とされていますが、こ のようなドナーが提供した臍帯血が使用されることがないような予防的な処置がとられ るべきであると考えられます。その対策として、次の2点が考えられます。  ・ドナーに対する追加的な健康調査の実施が考えられます。しかしながら現在、ドナ ーの親に対して提供後にも協力を求めるということは出生6カ月後の健康調査を除いて は行われておりませんので、ドナーの親に対してさらに協力を求めることについて負担 とならない方法があるか検討していく必要があると思われます。  ・当面の対処として、白血病等を発症した患児を診察した医師に協力を求め、バンク への提供歴があるか確認し、提供歴があった場合には、バンクに対して報告していただ けるよう、関係機関へ協力を依頼することが考えられます。  この際、どのような疾患を報告の対象とするかについてですが、案として悪性腫瘍、 血液疾患をあげています。  5ページをご覧いただきますと、3.1.4新生児からみて二親等以内に悪性腫瘍(家族 性の発症が疑われる疾患)、血液疾患(臍帯血移植により伝播の可能性がある疾患)の 家族歴を有する場合は採取の対象としないとありますが、この2種類が報告の対象にな るのではないかということで、案を示させていただいております。これで十分かどうか についてはご意見もあるかと存じますが、当面の処置ということと、協力依頼であると いうことが前提としてあるということです。  どの年齢までの患児について確認を求めるかということについては、バンクネットワ ークの発足が99年であること、また、バンクに登録・公開されてから実際に使用される までの年数などを勘案して実務レベルで決めていただくことになろうかと思います。  正確な数字ではありませんが、使用される臍帯血はほとんどが保存期間3〜4年程度 であると聞いております。この点についてもご議論いただきたいと存じます。  また、確認をいただくのは発症した患児本人の提供歴のみでよいか。事例の(2) のよ うなケース、これに類似したケースで、患児は提供していないが、健康な兄弟が提供し ていたというケースですが、これについても一親等、二親等の症状まで追跡していきま すと、例えば母親が何らかの疾患を発症した場合も対象となってしまうことが考えられ ます。  当面の予防的対策ということですので、まずは提供者本人が発症している場合に限っ て良いのではないかという論点もあります。  医療機関へ協力依頼をした結果、既に移植してしまったという事例が報告される場合 が考えられます。この場合には、レシピエントに対する情報の取り扱い等について医学 的な観点から個別的に評価をして検討することになるのではないかと考えられますが、 この点についてもご議論をいただきたいと考えております。  なお、本日は日本さい帯血バンクネットワークから参考人として東海大学医学部の加 藤先生にお越しいただいておりますので、加藤先生からご発言いただいてよろしいでし ょうか。 ○齋藤委員長  お願いいたします。 ○加藤参考人  加藤でございます。ただいま斎藤さんからお話がありましたが、提供歴のある3人の お子さんが、のちに白血病を発症されて、いずれも子どもの白血病ですので最も多い急 性リンパ性白血病で、最初の方が2歳、2番目の方が3歳、3番目の方が5歳という年 齢です。小児の白血病の発症のピークは2歳から3歳ですので、それを反映していま す。また、臍帯血を提供したお子さんたちは最長で5歳から、ネットワークが発足する 前の方を含めますと7歳程度ですので、そこまでの年令に集中するのは当然のことであ ります。  この3人の発病をどのように考えるかですが、このお子さんたちの臍帯血の段階で、 その細胞がいずれ白血病になる運命をもっていたかどうかという観点が必要かと思いま す。現時点では、そういう性格をもった白血病もあると考えられています。特に乳児に おける白血病は、その起源が出生前にさかのぼることがあり得ますので、このグループ における白血病は、その臍帯血を使った場合、レシピエント側に発病する可能性はあり 得ると思います。  その後、10歳、20歳、30歳で発病した方について遡及して、臍帯血がそのような性格 を帯びているかとなると、これはかなり否定的であろうかと考えられます。それでは何 歳ぐらいまでをもってその可能性なしとできないかというと、そのあたりは医学的にま だエビデンスが全くないところですので、小児の白血病の最初のピークである幼児期ま では「可能性がないとは言えない」という判断になろうかと思います。  小児の白血病の発生率ですが、小児人口10万当たり3.5人と言われています。小児と いうのは15歳までですので、最初のピークである5歳までの白血病が約半数を占めてい ると考えられます。5歳までの小児人口10万当たりに換算しますと5.25という数が出て くるかと思います。これまで臍帯血を提供してくださったお子さんは約5万人と推計さ れますので、このように必然的に、のちに白血病を発症される方々がある程度出てくる ことは、このシステムとして最初から抱えている問題であると考えます。  白血病以外の疾患、遺伝性の疾患で造血細胞そのものに異常が内包されているような 疾患、先ほど説明がありましたような血液そのものの病気、免疫に関する病気、代謝に かかわる病気に分けられますが、こちらは生後6カ月までの健康調査で把握できるもの とできないものが存在します。そのリスクは最初から了解した上で患者さんたちは移植 を受けていただくということで成立していますが、臍帯血バンクが発足して5年以上経 過した現在でも、そのような考えでいいかどうかということについては、このような審 議会で議論すべきことだと考えております。とりあえず最初の意見として、そのような ことを述べさせていただきました。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。  この問題は非常に重要な問題ですので少し時間をとって議論したいと思いますが、ま ず、今までの説明に対して何かご質問はございますでしょうか。  加藤先生のご説明では、この3例の頻度としては、一般人口における予測される頻度 の範囲であるということでしょうか。 ○加藤参考人  3例のみであれば、そのようなことになっております。 ○石井委員  幼児の発症の場合、出生前にその原因が考えられる場合があるとおっしゃったんです が、どの程度のことがわかってるんでしょうか。 ○加藤参考人  いくつか系統立った研究がありまして、臍帯血そのものを調べることによって、のち に白血病を発症するリスクが非常に高いと思われるような特殊な遺伝子異常あるいは染 色体異常がわかっているものはあります。しかし、それはごく一部でありまして、その 多くは現時点では可能性が否定できないというレベルのものというふうにご理解いただ きたいと思います。従って、ここでの議論は、科学的にどこまで詰められるかというこ とを言い始めますと、それはそもそも難しいというのが私たちの現在の理解でありま す。 ○齋藤委員長  この事例のうちの第3例の場合は提供してから6年後ですよね。提供が1998年8月 で、2004年7月に急性白血病が発症しているわけですから、かなりの期間ですね。 ○加藤参考人  同様のことは骨髄バンクでも起こり得るわけでありまして、30歳まで健康でいらっし ゃっても、その後の人生で何の病気も発症しないということはあり得ないことですの で、いかなるドネーションも、それまでの段階ということに我々の基準は限定せざるを 得ないわけです。 ○齋藤委員長  この3例の場合は二親等とか三親等とか比較的近い家系内に白血病の発症者があった かどうかというのは調べられてるんですか。 ○加藤参考人  このお三方は、あるバンクからの報告でありまして、私自身はそれ以上の詳しい情報 は持ち合わせておりません。 ○齋藤委員長  4ページの家族歴調査票の2で、三親等以内で下記の疾患に罹患したことがあるかど うかというのを聞いておりますね。私も見たことがないような非常に稀な疾患ばかり書 いてあるんですが。妊婦さんがこれを書かれる時に採取施設がアドバイスすると思うん ですが、聞かれてもわからないですよね。こういう疾患が本当にあるのかないのか。 ○加藤参考人  ないということを全員の方が認識することは難しいと思いますが、あるということは 知っておられることが多いのではないか。非常に珍しい病気ですので、少なくとも二親 等ぐらいのところまではその情報は共有しておられる可能性があるのではないかと思い ます。 ○小達委員  日本で3件あったわけですから、世界でもこういう事実があったと思うんですが、結 果的に移植されて、何か不都合が起こったという例は出てるんでしょうか。 ○加藤参考人  臍帯血については、少なくとも私が知る限りではそのような報告、論文は見たことは ないんですが、のちに白血病を発症された方が骨髄ドナーであったとか、そういうこと は散見されると思います。そのことで移植によって白血病が発症したという報告はない と理解しております。 ○橋本委員  医学的エビデンスが乏しいというのは、おっしゃるとおりだと思います。欧米ではこ ういった状態ではどういう対応をしているとか、いまALLが問題になっていますが、 ALL以外に注意すべき疾患が欧米で問題になっているようなことがあるかどうか、そ のへんを教えていただきたいと思います。 ○加藤参考人  腫瘍性疾患が移植によってドナーからレシピエントにうつるかということについては わかっておりませんので、諸外国においても我が国とほとんど同等の対応をしていると 考えられます。臍帯血については発足はやや遅れましたが、規模については日本は最も トップランナーの一人でありまして、諸外国のことを常に参考にできるという状況では ないと思っておりますので、私たち自身がそれを考えて、むしろ世界に発信すべき立場 かと思っております。 ○齋藤委員長  臍帯血でも骨髄移植でも未知のリスクがあるとおっしゃいましたが、そういうことは 患者さんやご家族に知っていただく必要があるわけですよね。  2ページの上半分に2つの対応が出ておりまして、下のほうが現実的だろうという説 明が事務局からありましたが、この点についていかがでしょうか。 ○小寺委員  白血病等の患児を診療した医師に協力を求めると書いてあるんですが、どうやって協 力を求めるんでしょうか。もう一つは、臍帯血ということと、患児の年齢が何歳までと きちんと限定しないと混乱が生ずるのではないかと思いますが、特に診察医への協力依 頼の方法はどんなことを考えておられるんでしょうか。 ○斎藤主査  医療機関への協力の依頼としては、臓器移植対策室から関係の学会、医師会等へ依頼 文を出させていただきまして、その経路を使って周知をさせていただきたいと考えてお ります。  対象となる年齢ですが、加藤先生からお話がありましたように、3歳、4歳ぐらいが 好発の年齢であろう。臍帯血バンクの発足が99年であるということも踏まえまして、現 状では4歳から5歳程度の患児が対象になるのではないかと考えております。 ○加藤参考人  ネットワークとしても議論をしている問題でありまして、ネットワークの中に検討会 を発足させて、そこでまとめた答申では、現時点においては、1番目の案にあります提 供者に確認をとるのが最も確実な方法であるわけですが、6カ月時点での健康調査をも って、その後はそれ以上のご負担をかけないというお約束をして提供していていただい ているということを重視すべきではないかという考えがありまして、その後のコンタク トについては原則としてしないとしているものを守るべきであるという意見が多くあり ました。  しかし一方で、献血や臓器移植については遡及性、追跡調査の可能性を全く閉じるこ とには問題があると思いますので、最初の案についても完全に葬り去るものではないと 考えております。  2番目の案ですが、実際に白血病や、ここに書いてあるような非常に珍しい病気の患 者さんたちを診療するとなりますと多くは病院になると思います。ほとんどが小児科医 が診ることになると思いますので、直接的な働きかけをすべきところは日本小児科学 会、あるいはその関連の学会になります。  臍帯血の場合、提供した方々ご自身が提供したことを必ずしも覚えておられないとい うことがあります。いくつかのバンクでは、母子手帳に、この方は提供されましたとい うシールを貼って、ありがとうございましたという感謝を込めてそのようなことをして いるわけですが、もう少し大きなものをそこに何らかの形で貼るなり書くなりというこ とをしたらどうか。これだけの病気を発症した方が医療機関を受診した時に私たち小児 科医は母子手帳を見ますので、その目にとまるような形で記録を残しておくことが、も う一つの方法かと考えて、ネットワークの中でそれを具体化することを検討しておりま す。 ○齋藤委員長  ここにあげられている3例は、主治医がバンクへ報告したことによってわかってきた わけですよね。このバンクは同じバンクなんですか。 ○加藤参考人  たまたま一つのバンクですが、ほかのバンクで同じような例がゼロであるかという と、まだ正確に把握されておりませんので、少なくとも3例というふうにご理解いただ きたいと思います。 ○齋藤委員長  対応ですが、一番理想的なのは最初の事例の、移植が行われる時点での確認ですけ ど。発症が6年後で、まだ使われてなかったわけですね。使う時点での確認ということ ですよね、今の話は。 ○掛江委員  先ほど斎藤主査から報告年齢が4〜5歳くらいというお話がありましたが、3番目の 事例では6歳の時に発症してるわけですよね。4〜5歳というのはサイエンティフィッ クに妥当であるという議論をどこかでされての結果ということなんでしょうか。 ○斎藤主査  サイエンティフィックというよりはバンクの業務上の実態を考慮しているという部分 もございます。移植に提供された臍帯血が何年保存されてから使われたものかというこ とを調べてみますと、96%程度が3〜4年の保存期間で提供されていた。それ以上の期 間、バンクの中に保存されていたものについては移植に使用される確率が非常に低いの ではないかということがあります。それだけでは根拠としてどうかということがありま すので、先ほど加藤先生からありましたような好発の年齢も踏まえて設定する必要があ ると考えております。 ○加藤参考人  いま斎藤さんから話がありました多くは3〜4年というのは、たまたままだ3〜4年 しかないという、それだけのことであります。今後10年、20年ということになれば、移 植医は必ずしも採取された時期がいつかということまでを基準として選んでいるわけで はなく、細胞数が多い、あるいはHLAが合っているということを優先してやっており ます。  今度は別の問題になりますが、臍帯血は何年使えるのかということについて、そろそ ろ明確にしていきませんと、これからの全体の事業のあり方に大きくかかわります。ネ ットワークとしては少なくとも5年は大丈夫と考えております。10年を超えたものは様 々な理由で使いにくくなるのではないだろうか。5年あるいは10年を一つの考え方の基 として、今後の事業のあり方を立てていく必要があるだろうと思います。  それとあわせて考えていきますと、臍帯血に原因があって何らかの問題が起こり得る という目的で、ドナー側を観察しなければいけない期間というのは概ね5歳を超えるこ とはないのではないかと考えられます。となりますと、5歳までの5年間をどのように フォローアップするかということを私たちが考え、そしてここでご議論いただくべきこ とではないか。5歳というのは母子健康手帳がアクティブに使われている期間でもある ので、一つのツールとして有効に働くのではないかと申し上げたわけです。 ○中林委員  最近の臍帯血の使用の具合を見ますと、細胞数の多いものほど早く使われるんです ね。8割方の臍帯血移植が大人に使われていて、小児に使われていない。細胞数の少な いものは長年使われない可能性が高い。しかし多いものは比較的早期に使われてしま う。それは非常に求められているから、すぐ出てしまうわけです。それでは5年間スト ックしておかなければいけないのかという問題が出ますね。1万例に1例出てくるもの を恐れるのと、現在の白血病その他の疾患に対してこれが非常に有効であるということ から、これを行わなければ死亡する可能性が高いということ、両者を臨床的に考えてい く必要があろうかと思います。 ○齋藤委員長  たった一つしか合った臍帯血がなくて、たまたまその提供者が白血病になった時に、 それを選択するかどうかというのはなかなか難しいですね。 ○青木委員  非常に難しい問題で、ドナーが白血病になった、その細胞を使えば白血病になるかと いうと、そうでもないわけです。ドナーが白血病になって、移植をされた患者さんにど うするのか。医学的にかなりの確率でその細胞を使えば白血病になるということがない 以上、レシピエントに教えて、余計な心配をかけることのほうがむしろ問題ではないか とも考えます。ドナーのお子さんが白血病になったことがわかった時点で、まだ使用さ れていなければ、それを取り除くという程度しかできないのではないのかなという感じ がいたします。  6カ月後のアンケートでも住所が替わったり、住所がわからなくなったりというケー スが相当ありますので、これを3年、4年、5年と延ばしたら、かなりの人が現住所を 把握できない状態になりますので、1番の方法はちょっと難しいのではないか。2番 も、報告があった時点で残っているものは取り除くという程度しかできないのではない かという気がいたします。 ○齋藤委員長  青木委員が言われたように、使われてなければ破棄するという選択肢があるわけです が、使われてた時にどうするかということもありますよね。それをレシピエントにお話 しするかどうかということを含めて。  今まで出たご意見では、今後の対応については後者のほうですね、学会を通じてお願 いして、白血病の子どもを診察した医師がいた時には、赤ちゃんの時にバンクへ提供し たかどうかを確認して、提供歴があった時には、ご家族の了解を得てバンクに報告して もらう。とりあえずそういう対応でよろしいでしょうか。  これは事務局から学会への通知発出をお願いするわけですが、小児血液学会のほかに どのような学会が考えられますか。 ○加藤参考人  私は白血病の問題よりは遺伝性疾患のほうがより問題であろうかと認識しておりまし て、白血病はこのように問題になっておりますので手を打たなければいけないと思いま すが、遺伝性疾患となりますとかなり広範にわたりますので、大本の日本小児科学会に はお願いしなくてはいけないと思います。ここにあげられている疾患は血液の細胞に問 題があるということになりますと、白血病以外の血液疾患と代謝異常、免疫不全という ことになりますので、その3つのそれぞれの分科会としてある小児血液学会、小児免疫 学会、先天代謝異常学会、このあたりにはお願いしておくべきかと思います。 ○齋藤委員長  もちろん日本医師会にもお願いするということですね。 ○橋本委員  文書でいただければ、全国47都道府県医師会会長に通達できますので、ぜひおっしゃ ってくださればと思います。 ○齋藤委員長  それでは議題の3にいきたいと思います。「骨髄ドナー登録の推進」であります。こ の問題につきましては、前々回4月23日、前回7月23日においてご議論いただいており ます。  まず、骨髄ドナーの登録要件につきましては、(1)ドナー登録から骨髄提供までの時 間に鑑み、体重や家族の同意の点について、ドナー登録の要件と骨髄提供の要件は一致 している必要はないこと、(2)骨髄ドナー登録の要件としては、骨髄提供について理解 していただいた上で登録していただく必要があることという結論になっています。  また、骨髄ドナー登録推進のための目標設定につきましては、登録者を増やすという のではなく、登録機会を増やすことを目標にすべきではないかというご意見をいただい ております。  これらの点を踏まえ、事務局で資料を作成しておりますので、まず説明をお願いしま す。 ○永野補佐  お手元の資料3と追加配付資料を使いまして説明させていただきます。  追加資料の1枚紙のほうをご覧いただきますと、現在の受付の形態として、日赤の窓 口での登録、保健所の窓口での登録、集団登録会での登録がありますが、この中にはい ろいろな形態があります。公民館などで行う集団登録会、事業所で行う集団登録会、あ るいは献血と並行して行われる献血並行型の登録会があります。登録までは行わないの ですが、骨髄ドナー登録に関する説明だけを行って、採血は別に行う説明会方式を平成 15年度から取り入れています。  資料3は「骨髄ドナープール拡大のために」ですが、ドナープール拡大のために検討 すべきこととして次の4点を掲げています。  まず1番目はドナー登録機会の拡大ですが、今のような様々な受付の形態で工夫を施 し、あるいはドナー登録の要件の見直しなどもいたしまして、どのようにドナー登録の 機会を増やしていくかというところを検討していきたいということです。  2番目は骨髄提供意思確認の実施です。これは関係機関の協力を得ながら、普及啓発 を図るとともに、種々な機会を捉えドナー登録者の募集強化を図る必要があると考えて おります。  3番目は地域間格差の解消及び取り組みの強化です。骨髄ドナー登録の事業は地域の 自主性に任せることになっておりますので地域間格差がありますので、地域レベルに応 じた目安としての目標を提示し、関係者間の連絡を強化する必要があると考えておりま す。  4番目は骨髄提供年齢の拡大です。現在は骨髄提供年齢が20歳以上50歳以下となって いますが、上限を55歳まで引き上げることにより、ドナープールの確保を図る必要があ る。また、登録年齢も20歳以上50歳以下になっていますが、下限年齢についても見直し の検討を行う必要があるのではないかと考えています。  2ページからは各論に入りまして、「ドナー登録要件の緩和について」ですが、これ は前回から引き続いてのものです。  1.検討のポイントですが、ドナープールの拡大の観点に配慮し、ドナー登録の要件 及び運用を見直す必要があります。  2.現在のドナー登録要件及び運用についてですが、現在のドナー登録の要件につい て確認したいと思います。  5ページの別紙1に現在の登録の要件を4点ほど書いています。  1点目は、骨髄提供について必要かつ十分な説明を受け、骨髄提供の内容について十 分理解した上で同意した者。(次を続ける)  2点目は、年齢が20歳以上50歳以下の健康な者。  3点目は、体重が、男性は45kg、女性は40kg以上の者。  4点目は、骨髄提供について家族の同意を得ている者。この4つの要件に大きく分か れています。  2ページの2の(1)ですが、ドナー登録の要件について、登録から提供するまでの時 間を鑑みますと、今の提供と登録の要件を合わせることは合理的でないものもありま す。  提供から登録までの期間ですが、9ページのグラフで期間を示しています。大半の方 は1年以内になっていますが、平均で2.8年ぐらいかかっているという結果になってい ます。  以上のようなことを考えますと、体重の下限及び家族の同意に関する要件を課する必 要はないと考えられます。  2ページの2の(2)ですが、これは現行の登録の要件、運用とかかわってくるもので す。お手元に「骨髄バンクにご登録ください。チャンス!」という黄色い冊子と「日本 骨髄バンクに登録される方へ」というピンクの冊子を配付させていただいております が、実際の登録に際してはこれらのものが使用されます。  ピンクの冊子を1枚おめくりいただきますと、「日本骨髄バンク登録申込書」という ものが入っています。これを見ますと、「私は、骨髄バンクのしおり『チャンス』をよ く読み、以下の1〜7の項目の内容について十分理解し、了承しました」ということ で、署名をしていただくという運用になっています。  現行において、ドナー登録者は「チャンス」を読んだ上で登録を行うこととなってい ることから、「チャンス」を読んだ上で骨髄提供の内容を十分理解しているのであれ ば、先ほどの現行の登録の要件で説明が必須のものとなっていましたが、その説明を受 ける、あるいは説明の代替手段としてのビデオを視聴する必要はないと考えられます。  ただし、説明やビデオという措置を講じないと内容が本当に十分理解できるかという 疑問が残りますので、「日本骨髄バンク登録申込書」の中で確認すべき項目のところは 書いていただいてるわけですが、これらの項目をより充実するため、前回お示ししまし たチェックリストをここに組み込めないかと考えています。  次に2ページの(3)です。先ほど申しました説明会方式は平成15年度から始まったも ので、採血と説明を分離して、採血をする際に医師が確保できない時に説明だけ行って いただいて、後で時間のある時に採血を行って骨髄バンクに登録をしていただくという ものですが、説明員の不足等の問題が指摘されていまして、実績もあまり上がっており ません。  ちなみに、平成15年度は説明会は93回開催されています。説明会を受講された方は 「登録申込書」に署名をして、その裏に説明した方の名前を書いていただくことになっ ていますが、登録済み証明書の発行枚数が426枚で、実際にドナー登録をしていただい た方は182人となっておりまして、あまり機動的に対応できていないのではないかとい う問題がありますので、運用方法について今後工夫をしていくことも考えるべきだと思 います。  続きまして3ページの3.ドナー登録要件及び運用の見直しの案です。  以上のような点を踏まえまして、(1) 見直し後のドナー登録要件の案ですが、これは 非常に簡単なもので、20歳以上50歳以下の健康な者で、骨髄提供の内容について十分理 解した上で同意した者であること、ということです。  ドナー登録者が理解すべき内容は以下のような項目です。  ・「チャンス」に掲載されている内容(骨髄移植の内容、提供のプロセス、骨髄採取 の方法、骨髄提供要件)などです。  具体的に申しますと、骨髄及び骨髄移植の内容について、ドナー登録から骨髄提供に 至るまでのプロセス、採取の方法等について(採取方法、安全性)、コーディネート時 に骨髄提供が可能な者の要件について(健康状態、体重、家族の同意等)となっていま す。  ・「日本骨髄バンク登録申込書」に書かれている手続きに関連する項目ですが、登録 の際に必ず知っておいてもらうべきことですので、お読みいただいて了解していただき ます。  具体的には、ドナー登録時の登録者の要件について。骨髄バンク事業を担う各機関と 役割について。骨髄データセンターへの登録について。検査用採血について。登録確認 書の交付、登録後の連絡、登録の取消しなど登録の手続きに関することです。  4ページは(2) ドナー登録要件の運用方法(案)です。  まず1点目は、ドナー登録希望者は、原則として「チャンス」及び「日本骨髄バンク に登録される方へ」をお読みいただき、提供の内容について十分理解し了承した上で署 名をして登録申請をする。  2点目は、ドナー登録を行う者は、「骨髄提供の内容について十分理解し、了承した 上で登録する」ということについて自分自身で申告し署名を行ったことを確認する。  3点目は、ドナー登録受付を行う者は、ドナー登録希望者の骨髄提供の内容について の理解を深めるために、必要に応じ、説明員等による説明やビデオの視聴等を行う。  4.説明会方式の機動的運用についてです。  説明会方式については、現行の説明会の利便性を生かしながら、ホームページなどで 日本骨髄バンクの登録申込書を発行できないかと考えています。具体的な案としては、 ドナー登録希望者に対して「チャンス」を送付し、登録の要件や骨髄提供の内容の理解 度をホームページなどで確認した上で、最終的に登録説明証を発行するシステムを構築 できないかと考えています。  発行されたものを採血の場に持っていって採血を行っていただくという運用も可能で あると思います。これに限らず、今後いろいろな運用の仕方を考えて、登録の機会を増 やす余地はあると考えております。  5ページの別紙1は、現在のドナー登録要件についての考え方です。前回ご説明させ ていただきましたので、今回は省略させていただきます。  次に各論の2番ですが、10ページの地域間格差の解消及び取り組みの強化についてで す。  1.論点ですが、ドナー登録推進について地域における取り組みの差を解消し、ドナ ー登録を拡大するために、地域においてどのような目標を設定し、その目標を達成する ためにどのような取り組みを行うべきかということを考えていきたいと思います。  9月の初めに全国知事会から各都道府県にドナー登録について協力してほしいという 依頼が出されていると伺っておりますので、都道府県でドナー登録を行う際にどのよう なやり方をすべきかということを私どもとしても示さなければいけないと考えていま す。  2.今後の対応方針の案として、次の3点を考えています。  1点目は、集団登録会や献血併行型登録会について各地域の積極的な関与や、保健所 の窓口の拡大を促して、登録機会の増加を図っていただく。  2点目は、全国ベースでのドナープール・サイズ30万人の目標を達成するために、ド ナー登録者の目標値の目安を示し、事業を推進する上で参考指標としていただく。  3点目は、ドナー登録を推進するために、各都道府県ごとに関係機関による連絡協議 会を設置し、関係機関の連携を強化していただく。  以上3点の内容を含んだ依頼文を私どもから自治体に出させていただければと思いま す。  11ページの(別添1)は都道府県別ドナー登録会開催状況を示しています。固定窓口 は除いていますが、献血併行型登録会の開催回数と登録人数が増加していて、集団登録 会のほうが減少しているという状況になっています。  12ページの(別添2)は、30万人のドナー登録目標に対して、20〜49歳の人口割で、 登録の目標試算値を出して、登録目標達成率をB/Aという形で示しています。これを 目標とするなら、この目標を達成している県は今のところ3県です。右半分では、患者 の居住地と提供者の居住地を用いて、県内での充足率を出しています。  13ページ以降は、平成16年6月、私どもから都道府県に対して、ドナー登録について どのような取り組みを行っていただいているかについてアンケートをした結果です。  1.連絡協議会の設置状況ですが、設置してしている県が17県、設置していない県が 29県、その他の回答として「常設ではない」が1県ありました。設置している17県につ いても、開催の頻度を聞きますと、年に1回程度となっています。設置していない県の 中でも、設置していない理由としては、随時連絡をとっているので、常設の機関を設置 する必要はないという意見もありました。  2.集団登録会への関与ですが、88%の県が何らかの関与をしています。  3.献血併行型登録会への関与ですが、86%の県が関与しています。  4.事前説明会への関与ですが、関与している県は40%にとどまっています。  5.自由記載欄を設けまして、都道府県の担当者に自由に意見を書いていただきまし たので、14ページから16ページまでに、そのまま載せています。  (1) 今後の取り組みとしてどのような活動が必要かという問いに対して、普及啓発・ 広報などが必要だと20自治体が答えていますが、その中でも若年者への普及啓発が必要 とする県が目立っています。  そのほか「登録機会の増大・登録場所の利便性」をあげているのが6自治体、「献血 併行型登録会の開催」をあげているのが6自治体ありました。  16ページは(2) 登録事業の実施に当たり、疑問点・問題点ですが、国、財団、日赤、 その他の予算などについて要望を出していただいております。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。  30万人の目標達成のためには多くの関係者の方々がどのように協力して、どこを強化 するかという具体的なことを考えなければいけないわけですが、ご質問、ご意見をいた だきたいと思います。 ○石井委員  登録の拡大が必要であることは十分わかるんですが、最終的な提供者を増やすために 登録を増やすのだと思います。その点で気になることがあります。1点目は登録要件の 緩和です。体重の下限、家族の同意等は登録の時にはなくてもいいのではないかという ことですが、そうすると、コーディネートが始まってから、実際は提供していただけな いということが増えることにならないか。せっかく登録をしていても、要件が満たされ ていないために、コーディネートが始まってからだめになるケースが増えてしまうと、 かえってマイナスが大きいのではないかというのが1点です。  説明についても、コーディネートが始まってから十分に説明されるということですと 問題で、十分理解した上で登録していただいたほうが、後で提供できないというケース が少なくなるので、そのほうが重要ではないかと思います。 ○齋藤委員長  資料3の8ページの上の表は、コーディネート総件数に占める成立・不成立の割合を 示していますが、不成立のうち、ドナーの理由によるものが60%あるわけです。そのう ち健康上の理由が50%、家族の同意なしが10%です。登録時には同意があっても途中で 取り消される場合もあるわけですし、体重はもちろん変わります。登録の時は要件を満 たさなくても、後で気が変わる人、あるいは体重が増える人を取り込みたい。そういう 希望で、この案が出てきたのではないでしょうか。 ○石井委員  登録時に家族が同意しても、10%は、その後、家族が反対してる。登録の時に聞かな かったら、家族が不同意ということがもっと増えてしまうということを私は懸念してる んです。 ○永野補佐  家族の同意の点も含めて、提供の時にどのような方が可能であるかという要件につき ましては登録の時に理解していただいた上で登録をしていただくことになりますので、 提供の際には家族の同意をとってください、今は時間もありませんのでそういうことが できないということで理解をしていただけるのではないかと考えております。 ○掛江委員  家族の同意をご本人が確認するかバンクが確認するかということだと思うんですが、 そこに私はちょっと不安があります。8ページの表では、「本人の意思なし」が0.7%、 「本人の不安や迷い」が0.7%と非常に低いんですね。ある程度理解をして登録してい るから低いのかもしれない。登録のところで敷居を下げると、あとからこういうところ の割合が増えてしまって、コーディネートの段階で支障をきたす可能性もあるのかなと いう不安は確かにあります。  前回の議論の時に私も申し上げたのですが、登録の時に理解していただくべき内容 は、なおさらきちんとしたものであってほしい。かつ、その内容の確認ができているほ うがいいのではないかと思うのですが。 ○小寺委員  それは骨髄移植推進財団の中でもいつも議論されてることなんですが、8ページのデ ータを見ると、提供に至らなかった理由の半数が健康上の理由で、それも重病とかそう いうことではなくて、検査値異常その他があったということと、ご本人の都合でタイミ ングが合わなかったということが多くを占めている。  説明については、登録された方がドナー選定される、その後さらに確認検査を受ける など、いろんな段階で財団のコーデーィネーターが非常に詳しく意思確認をしながら進 んでいくということがあります。  遠方にご両親がいらっしゃるとか奥様がいらっしゃる場合、家族の同意がその場で得 られないために登録されないということになりますと、財団としては接触する機会がな くなります。登録があって初めてドナー候補者と財団のコーディネーターと接触するチ ャンスが生まれますので、そういうチャンスを増やすという点で、最初の登録の時に必 ずしもすべてを満たしていなくてもいいのではないかという考えでこの案が出てきてい るのではないかと思います。 ○石井委員  今のような考えですと、最終的な登録の前の段階で情報を提供する対象者、次の登録 の機会の案内を送る協力者名簿というような形で第1段階の登録を設けてもいいのでは ないか。それは十分な説明がなくてもいいかもしれないし、家族の同意がなくてもいい かもしれない。そういう2段階方式は考えられないかというのが1点です。  私が先ほどから申しておりますのは、コーディネートが始まる時は患者側に必要な状 況が発生しているわけです。今でもコーディネートから実際に提供が行われるまでに時 間がかかりすぎるという問題がある。それがもっと延びてしまう危険性があるのではな いか。登録の時に十分な意思確認とか条件確認ができていないと、コーディネートには 手間や時間が余計にかかることにつながってしまうとすれば、あまり望ましいことでは ないと思います。 ○小達委員  自分の目の前でドナーが見つかりましたよと連絡を受けながら、結果的にドナーサイ ドの理由でキャンセルされたという人を何人も見てきています。その方々にとっては僕 らの想像以上の悲しみとか困窮があるんですね。広報の原点だと思うんですけど、まず 知ってもらう、知識を得てもらう、これを初めにどんどん前に出さなくてはいけないこ となんですね。興味を持ち、理解した上で参加してもらう。知識を持つということはド ナーだけじゃなくて国民全体という話になるわけですけど、家族であれ全く他人であれ 基本的な知識が一貫してきて、その基本的な知識の中から理解が高まり、興味を持ち、 そして参加をしてもらうという形に落ち着けなければ、どこまでいっても抜本的な部分 ではいろんな問題が起きる。  そろそろ問題が絞られてるわけですから、本人のための注意事項、こういうことが起 こるんですよというとともに、その登録があった時に、家族や身内の方にお見せくださ いというものも個別に作る必要があるのではないかという気がします。 ○齋藤委員長  8ページの表が示すように、コーディネートを始めても移植までいくのは5%以下な んですね。20人コーディネートして1人がたどり着くかどうかということで、もともと 効率は決してよくないんですね。 ○加藤参考人  小達委員がおっしゃったように、登録時に家族の同意を絶対視するというのはあまり なじまないのではないか。実際にコーディネートが始まった時に、例えば親元を離れて いるお子さんが、突然、ご両親に来月提供するというとをおっしゃったら、ご家族はび っくりされて、なんで自分のためにならないことを、と考えられるのは通常の方の反応 だと思います。もしそこに考える時間があれば、うちの子どもも立派になったもんだと いうところまで考えが及ぶんですが、時間がない中で判断を求められれば、ノーと言わ ざるを得ない方がおられる。  そこで、登録をされたら、まずご家族にそのことをおっしゃっていただきたい、そし てご家族に考える時間を持っていただきたいということに財団は努力すべきだというこ とを申し上げてきたんですが、実際にそれがなかなか実現されてないので、石井委員が 言われるような心配になるわけです。こういう提案をする時は、その後にそのような手 だてを講じていくことがあれば、そのようなご懸念は少なくなるだろうし、今よりもっ といい状況をつくることができると思いますので、そのような努力をすべきだと思って おります。 ○小達委員  日本人は体力も向上して、国際的にも小さいという部類ではなくなってきているわけ ですから、少しの拡大は検討すべきではないかという気はします。 ○坂本委員  前回もこの問題の時に申し上げたんですが、県とか市町村では集団登録会を別個設け るというのは非常に難しいことだと思うんですね。だから集団登録は伸びない状況です ので、むしろ献血併行型をいかに効率よく、しかも理解していただきながら進めるかと いうことを基本に、いろんな方法を考えたほうがいいのではないかと思います。献血と いうのは日本人になじんでる、日赤が作ってくださった優れたシステムだと思います。 ○齋藤委員長  今の坂本委員のご意見は、追加配付の1枚の紙がありますが、下のほうの円グラフに 表れてますよね。献血併行型登録会が33%に対して集団登録会が10%です。固定窓口と いうのが57%あって、日赤と保健所と両方あるんですが、この割合はわかりますか。 ○永野補佐  57%のうち保健所が10%ぐらいで、残りは日赤です。 ○小達委員  この委員会の中では日赤と保健所は区別がつきやすいんですが、普通の方にとっては 日赤に対する意識はあまり大きくないんですね。何も知らない方にとっては保健所とい うのは大きいんですよ。最も多く受ける質問は「どうしたら登録ができますか」。そう すると「とりあえず財団にお問い合わせください」という返事しかできない。財団法人 というのは普通の人間にとってけっこう重い言葉なんですね。非常に難しいのかなとい う発想をしてしまう。保健所でも、やらないところのほうが多いんじゃないですか。 ○永野補佐  保健所はやらないところも多いですし、午前中だけとか時間を限ったりとか曜日を限 ったりしているところも多いと伺っています。 ○小達委員  医療に関する質問の受付所は保健所だと思ってる人がものすごく多いんですよ。従っ て、そこの機構の構築を考え直すことが必要になってくるんじゃないかと思います。 ○坂本委員  保健所は血液事業に関しては窓口になっているところが多いですから、保健所に問い 合わせてくださったら、もし血液事業と併設していれば、身近なところでどこでありま すということはご案内できるんですが、保健所に採血のできる窓口を常設するというの は、これ以上は進まないだろうと思います。献血の行われているところを保健所がご紹 介して、身近な献血会場に行かれるというシステムができれば、アクセスしたいところ が確実に地域で紹介されるという形になるんじゃないでしょうか。福岡市だったらそう いうことは可能だと思います。ただ、今はどこで献血と一緒に骨髄バンクの申し込みが できるのかがよくわかりませんので、保健所もご紹介しにくいところがあるんじゃない でしょうか。 ○齋藤委員長  せっかく日本赤十字社から二人の方にご出席いただいておりますので、登録に関して 何かご意見はありますか。 ○白戸参考人  前回の時に日赤としても登録の受付、普及啓発などについても検討させていただきた いという発言をさせていただきました。赤十字病院も入れますと日赤は全国津々浦々に ありますが、血液センター、献血ルームなど血液事業関係に限定しますと200弱です。 保健所の数は600いくつあると思いますが、都道府県、市町村にありますので、保健所 のほうも登録受付をやっていただくべきではなかろうかと思っております。  私どもも普及啓発を含めてどうするか、赤十字の奉仕団なりボランティアの人たちに ついてもそういう協力が得られないかどうか、社内でいろいろ議論をしているところで すが、普及啓発については国、地方公共団体なり財団にやっていただくということで、 私どもは受付から4つの業務を基本的にやっていきたい。  いま私どもは非常に困っておりまして、最近、厚生労働省の医薬食品局の担当課長か ら通知を出していただきましたが、22号、23号の台風が日本列島を縦断していったり、 集中豪雨があったり、加えて新潟の地震があったりで献血者が激減しています。兵庫の 豊岡には私どもの出張所がありますが、そこが水害にあって献血車が出せないとか、新 潟の場合は長岡に出張所がありまして、これも稼働できない。加えて、バスをもってい ってもドナーがいらっしゃらないような状況で、血液が非常に不足しています。例年の 在庫に対して先週は81%で、今週はちょっと回復して88%になっていますが、例年この 時期は安定在庫を100%超えていないと、年末年始と新年度の3月、4月には献血者が 減るんですね。こういう時期に血液がうまく供給できなくなってしまいます。  昨年、法律ができまして、私どもは採血事業者でもありますし医薬品製造業者でもあ りますので、採血事業者の責務として安定的に献血者を確保しなさい、製造業者として 安定的に安全な血液製剤の供給をしなさいという責務があります。そういうことで、昨 年から安全な血液の確保対策について8項目を打ち出しまして、やっております。  HIVの検査目的と思われるドナーが増えてきまして、今年10月から献血の際には身 分を証明できるものを提示していただいております。パスポートなり運転免許証なりの 提示を求めることを全国一斉にやりだしているために、献血の受付窓口の職員の業務が 非常に多忙になっています。献血者が減少ぎみでして、献血者の安定確保について政策 を練っております。そのようなことで、私どもは骨髄ドナー登録者の確保に向けて定期 的な関与をという気持ちはありますが、今の時点ではそこまでできかねるという状況を ご理解いただければと思います。 ○齋藤委員長  日本赤十字社を頼りにしてますから、よろしくお願いします。  登録要件の緩和に戻りたいんですが、体重と家族の同意に関して、その後で十分説明 するという条件付きなら、石井委員、この緩和はよろしいですか。この条件は原則的に 無理でしょうか。 ○石井委員  一つの方法としては、登録の時には必要ないとしたら、その後で家族説明用文書と家 族の同意書をお渡しして、後日、送っていただく。それがそろった人がコーディネート の対象になる。それが戻ってこなかったら、登録を受付けたところで、その後、ご理解 いただけましたでしょうかという形のアクセスをする方法をとる。そういうことをしま せんと、家族の同意のない人にもコーディネートが行われてしまう危険性があるのでは ないかと思います。 ○齋藤委員長  今でもコーディネートを始める時点では家族の同意は確認してるんじゃないですか。 ○加藤参考人  コーディネートを始める時点では遅いのではないかと石井先生は言われるわけです ね。家族の同意を絶対とするのであれば、もっと早い時期にアクセスをしておかないと スムーズにいかないのではないかと私も思っておりました。石井先生がおっしゃったよ うに、登録してすぐに同意書がなければとなると、これもまた性急かなという感じもす るんですね。実際に提供された方々は登録からの期間を考えますと、決してすぐではな いんです。忘れたころにやってくるということが多いので、ある程度の猶予はもってい ただいて、その間、財団側から何度か情報を提供しつつ、忘れないように、そして意識 を高めていただくような努力を続けていく結果として最終同意をいただければいいと思 いますので、家族の同意がなければコーディネートを開始してはいけないというところ まで厳しくやりますと現実的には難しいかと思います。 ○石井委員  コーディネートを始める時に、条件がそろっている人を第一候補としてあげること、 それまでに期間があるので、家族の同意がいただけるように財団として努力をするシス テムをきちんと作るべきだと思います。 ○齋藤委員長  それは可能ですか。 ○小寺委員  家族の同意が確認されないと財団はコーディネートを始めないと思います。今は登録 要件の中で確認してるんですが、これはコーディネートを始める時に最初に確認する事 項の一つだと思いますので、現在のシステムでも十分いくと思います。 ○掛江委員  家族の同意の件は、どちらかというと私も石井委員のご意見に賛成で、家族の同意書 を後日送っていただくまでは仮登録で、その書類がそろった時点で本登録となり、コー ディネートの対象の方となるというような処理が財団のほうでできるのであれば、そち らのほうがいいのではないかと思います。  体重の下限の件ですが、20歳を超えてから、つまり成長期を過ぎてから、この規定の 体重を超えるというのは、ただの肥満かと思いましてので「健康な者で」という条件と のバランスなんですけど、どうなのかなと思ったのです。身長と体重のバランスを満た してない方が、20歳を過ぎてから体重が超えることを期待して体重の下限を外す必要は あるのかどうか。肥満の方はそもそも「健康な者」という定義からずれるのではない か。そう考えますと、体重の下限を登録時に設けておくことは意味があるし、かつ、こ れを外したからといってドナーが増えるとは思えないんですが、そのあたりは医学的に はどうなんでしょうか。 ○加藤参考人  その点については同じような意見であります。 ○齋藤委員長  本人の意思があっても、体重のためにできない方がどのくらいおられるのか、手元に はデータがないんですけどね。 ○南委員  先ほど保健所の話が出たんですが、感染症とか何かの時に保健所の話が出るたびに問 題になるのは、全国的に保健所というのは広域化して数がどんどん減って、自分の最寄 りの保健所がどこなのかもよくわからなくなっているわけです。医療の窓口というと保 健所ということであればいいんですけど、それがわかりにくくなっている現実がある。 57%の固定窓口というのはけっこう大きいんですよね。医療の窓口というと、かかりつ けの先生とか診療所とか地域医療の場というのは大きいのではないかという気がするの で、地域の先生方はお忙しいんですけど、協力していただけると違うのかなという気が します。日本医師会になるのかもしれませんけど。 ○橋本委員  そのとおりだと思います。保健所の機構がだいぶ変わってきてるんですね。おっしゃ るように、地域医療を担う、かかりつけ医にこのあたりのことをもう少しプロモーショ ンをしていただくほうが効果的ではないかと思います。 ○小達委員  一般レベルの民間人からは、いまだに保健所という言葉が出てくる。それが変化を始 めてるわけですから、その情報もきちんと国民に対して出していただきたいと思いま す。 ○齋藤委員長  ドナー登録の要件の緩和に関しては、体重について本当にこれが有効かどうかという ご意見がありました。この点は少し考えるとして、その他の点は資料3の2ページにあ るようなことでやってみようというご意見だと思います。早速、連絡協議会に運営につ いて協力依頼をするとともに、地域格差を解消するために目標の数値を各都道府県に送 って、各地域で協力いただくことを始めるということでよろしいでしょうか。体重のこ とは、どの程度有効性があるのか考えます。 ○片岡室長  都道府県に対する協力お願いということで、平成13年度に同じような形で、このよう な目標値、県内充足率をつけて、これを指標として各都道府県に取り組んでいただきた いというお願いをしております。今回もアンケート結果等がまとまりましたので、より わかりやすい形で都道府県に対してお願いしたいと思っています。 ○齋藤委員長  それでは4番目の議題で、「骨髄提供可能年齢について」議論をしたいと思います。 この問題については、1年半ほど前、平成15年3月の第17回で議論しております。  このたび骨髄移植推進財団の常任理事会において、提供年齢の拡大について認める方 向での結論が出ましたので、これまでの経過も踏まえて、事務局より説明をお願いしま す。 ○斎藤主査  それでは、資料4「骨髄ドナーの適応年齢幅の拡大について」、説明させていただき ます。  1.論点の位置付けですが、先ほど議題の中で扱われました「骨髄提供年齢の拡大」 と一緒でして、ドナーの方々の母数を増やすための一つとして年齢幅の拡大があるとい うことです。  現在、提供可能年齢は20歳から50歳までの骨髄採取に耐える健康な方となっておりま す。アメリカでは提供年齢の下限が18歳、上限が60歳で、諸外国では55歳あるいは60歳 となっているところが多いような状況です。  骨髄移植推進財団において本件に対する見解をまとめられたようですので、のちほど 参考人の加藤先生からもご報告をいただく予定ですが、まず私から説明させていただき ます。  2.登録年齢・提供年齢の下限の引き下げについてですが、これまでの意見として は、そこにお示ししてあるような論点が出ております。  論点としては、本人の判断能力と年齢の関係をどう考えるか。登録と提供の年齢の下 限設定を別々にするのか、一緒にするのかということがあります。  登録時の同意については、20歳未満の本人の同意について法律上の問題点はありませ んし、献血における成分献血の下限が18歳になっていること、諸外国でも18歳を提供の 下限としている国が多いということがあります。  医学的な条件については、13ページ以降にアメリカの状況についてまとめております が、20歳未満のドナーの安全性について特段問題になるような傾向は認められないとい う背景があります。  3.提供年齢の上限の引き上げに関してですが、これまでに以下のような意見が出て おりまして、これについては是非が分かれております。そこで、論点を以下の3点に整 理をさせていただきました。  まず1点目は、ドナーの安全性確保の観点からという点です。  現在、骨髄採取に伴う適性度の判定につきましては、18ページ以降につけております が、ドナー適格性判定基準により行われています。ご覧いただくとわかりますが、かな り詳細に基準が設定されています。  ・提供年齢の上限を55歳に引き上げると仮定した場合、現行の安全性判定基準で適性 とされたドナーの安全性については、それ以下の年齢のドナーの安全性と比較してどの 程度なのかというところが問題になると思われます。判定基準に何かを追加しなければ ならないのか、どういうものを追加するかということについては、生活習慣病や循環器 疾患といった検査項目が候補になると考えられますが、これを現行の基準に上乗せする ことの必要性、50歳以上の方だけに上乗せすることでよいのかという点も議論になるか と存じます。  ・骨髄採取時については、骨髄採取量について現行でもドナー本人に合わせて個別に 対応されているものと考えられますが、これを何かルール化して設定しておく必要性が あるのかどうかということがあります。  ・採取に伴う副作用の件ですが、11ページに骨髄移植推進財団からご提出いただいた 資料がつけてあります。再手術後2日以内に出現したものについて財団に報告のあった 事例を男性・女性別に分けたものです。  16ページにはアメリカの副作用のデータを載せております。一概に比較はできません が、同じような項目について比較してみますと、出現率は日本のほうが非常に低いこと がわかります。アメリカのデータを見ますと、各項目で年齢階層別で有意差が認められ るものもありますが、加齢に伴って明らかに上がっていることは認められないようで す。  3ページに戻りまして、2点目は移植の効果を担保するという観点です。  加齢に伴い骨髄中の有核細胞数が減少傾向にあるということについては、これもアメ リカのデータになりますが、13ページのドナー年齢階層別平均有核細胞数のグラフで、 加齢に伴い減少傾向にあることが示されています。それがドナーの移植成績にも若干な がら影響してくるという報告については17ページに示されています。  こうした点を踏まえて、移植の効果を試すためには、現行の適格性判定基準でどの程 度判定できるのかという論点があります。  3点目はコーディネート実施の観点からという論点です。  5ページの棒グラフをご覧いただきますと、健康の問題によるコーディネートの中止 というのは加齢に伴って増えているようです。コーディネートが進んだ段階で中止とな る事例が増加し、結果として非効率化を招くおそれがあるということがあります。  また、採取医療機関においては、ドナーの加齢に伴う有害事象の発生について危虞さ れているところもあると伺っていますので、これに対する対応をどうするのか。  また、現在登録されているドナーの方々からは50歳までの提供をお願いしますという 同意しか得ておりませんので、上限が引き上げられた場合には再度同意を得る必要があ るのではないかということがあります。  3番のコーディネート実施の観点については、移植の実施主体である骨髄移植推進財 団において具体的な議論を進めていただくことになると思われますので、この委員会で は1番のドナーの安全性確保の観点、2番の移植の効果を担保する観点のところを主に ご議論いただければと考えています。  以上のような点を踏まえまして、年齢幅の拡大について本日中に結論をいただくこと は難しいと思いますが、今後の検討の方向性についてご検討いただければと考えており ます。以上です。 ○齋藤委員長  それでは加藤先生、よろしくお願いいたします。 ○加藤参考人  年齢の問題は、我が国において骨髄バンクがスタートする直前から議論されてまいっ たことであります。20歳以上50歳以下というのは、下限については家族の同意という問 題、上限については健康・医学的な面から、それぞれ当時の考え方として決められたも のです。こういう制度がまだないところに導入する際には、より堅固なシステムの構築 が必要ということから、最も確実な線ということで決定されたというふうに理解してお ります。  当時においても下限が20歳というのは本当に妥当かどうか、いろいろ議論がありまし た。諸外国において18歳と決めているところが多いということから18歳という議論もあ りましたが、同意という点を優先すべきだという行政及び法律関係の方々のご意見か ら、20歳と決まったのだと思います。  しかし実際に登録をしていただく呼びかけをする際の対象になる方々は大学生から始 まりますので、18歳のところに呼びかけの線を置いておきませんと、同じ対象であって も半分の人は対象外、半分の人は対象という集団に呼びかけるのは現実的に難しいとこ ろがあります。  また、先ほど話がありましたように、献血は18歳からとしていて、それが国民に広く 受け入れられていることから考えますと、20歳という線にこだわる理由はさほどないの ではないかと考えております。  財団においては、特にボランティアの方々からこの要件を拡大する要望が強く出され ておりまして、たび重なる検討の結果、常任理事会及び理事会において登録の下限を18 歳、2年間の猶予をもって提供できる下限を20歳とすることに決定され、承認されまし た。  上限につきましては、50歳という年齢は健康をはかる上で一つの重要な条件ですが、 それがすべてでないことはいうまでもありません。健康というのは個人差が大きいもの ですから、50という年齢にこだわることなく、その人の健康度を最も優先するようなシ ステムを構築していくべきではないだろうか。50としているところを諸外国並みに55あ るいは一気に60まで上げていくという議論もあろうかと思いますが、財団としては55歳 に上げるということを決めたわけです。  決める過程で、ドナー安全委員会から、現在でも40歳を超えたドナー候補者の方々は コーディネートの途中で落ちてしまわれる確率が高いので、上限を上げることについて は効率という面で問題が残るのではないかという指摘がありました。そのことは考慮に 入れた上で決めなければなりませんが、そのことを考慮した上でも、実際に選ばれた方 々における合併症の発生は若い年齢層に比べてもなんの差もありませんので、ドナーの 方の安全を確保するという観点からは、現在のコーディネートのプロセスを踏む限りは 担保されるのではないかという考え方をしております。  移植をする側の考え方からしますと、できるだけ若いドナーの方からの骨髄を移植し たいという心理が移植医には働くことは事実であります。先ほどご紹介がありましたア メリカのデータですが、17ページにありますように、ドナーの年齢と移植結果の間には 緩やかな弱い関係があることは事実であります。しかし、これが絶対ではありません。 このようなことを含めて、移植医はドナーの選定をしておりますので、仮に年齢が55歳 に上がったとしても、その方々が真っ先に選ばれるというものではないだろうと予想さ れます。それなりのアルゴリズムに沿って移植医は選択していくだろうと考えられます ので、安全を最優先にする考え方で、現場の運用は移植医側が判断をするとお考えいた だいてよろしいのではないかと思います。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。  年齢の下限と上限に分けてディスカッションしましょうか。まず下限についていかが でしょうか。 ○掛江委員  下限についてなんですけど、そもそも論としては、家族の同意を必ず得るわけですか ら、18歳でも提供年齢としては可能ではないかと私は考えています。理解力、判断力と いう問題に関しても、18歳と20歳と何が違うのか。18で高校を卒業して、麻酔などのリ スクも説明されて理解をして判断することができる方がおられると思いますし、18歳に 下げたからといって理解してない方がドナーとされてしまうわけではないですから、そ の意味では問題ないのではないかと考えています。  登録のところで同じことを加藤先生がおっしゃってたと思うんですが、お話しする場 合にも大学などいろんな場面を使うことの効率性とかいろいろ考えますと、提供年齢に ついて18歳というのを何が妨げる要因になっているのかあまり明確にわからないでいる んですが。 ○石井委員  諸外国は18歳というのは、多くの諸外国の場合は18歳が成年年齢として選挙権等々で 成年として取り扱われているという状況における18歳と、日本では成年年齢が20歳で、 法律行為能力について20歳としているところと同じにはできないだろうと思います。  家族が同意しているからといった場合、未成年者にとっての家族の同意の意味と、成 年者にとっての家族の同意の意味は違うだろうと思いますので、家族の同意があればと いうことで同じにいうことはできないのではないかと思います。  自分のためではなくて人のためにすることで、よいことではあるけど危険性もあるの で、社会的に見れば未成年であって十分ではないとされている者について対象とするこ とは慎重であるべきだと思います。 ○掛江委員  石井委員の最初のご指摘に関してですけど、諸外国で18歳を下限にしている国が成人 年齢を18歳としているかというと、必ずしもそうではないのではないか。私自身は調べ たことがないので、成人年齢が20歳とか22歳というところでも18歳というのがあるので はないかと推察するのですが、そのあたりは確認していただくことは可能なんでしょう か。 ○斎藤主査  事務局でもそういった点については調査をしておりませんので、調べてみたいと思い ます。 ○齋藤委員長  石井委員に伺いたいんですが、提供は20歳以上という条件だったらいかがですか。 ○石井委員  先ほどと同じで、18歳は仮登録という取り扱いだったら問題は少ないのではないかと 思います。20歳の時にもう一度きちんと確認された上で提供する。 ○齋藤委員長  登録から提供までに平均3年ぐらいの期間がありますからね。下限については、石井 委員も含めて、18歳登録、20歳以上提供という案でよろしいでしょうか。 ○青木委員  前回、時間がかかるから20歳から登録を始めたのでは遅いでしょうと私が言ったわけ です。助走期間として18歳からPRしていって、仮登録をして、20歳ぐらいから提供で きる。期間としてはそのくらいかかるのではないかと思いますので、先ほどの案で結構 だと思います。 ○齋藤委員長  時間がきたんですが、上限のほうはどうしましょうか。 ○石井委員  表の中で50歳以上という統計が出てくるのは50歳だけですか。50歳を越える方も入っ てるんですか。 ○斎藤主査  事務局から説明させていただきます。現在でもコーディネートの途中で51歳になられ てしまった方については提供していただいておりまして、国内のデータに載っている50 歳以上というのは51歳の方というふうにご理解いただければと思います。 ○石井委員  財団のほうで伺った時には親族間での移植の統計がないということだったんですが、 親族間ですと50歳以上でも行われていると思うので、そちらについて学会等を通じて何 らかの資料を集める努力をしていただけないでしょうか。 ○小寺委員  日本造血細胞移植学会で、このたびドナー委員会というのができました。今までは血 縁者の同種末梢血幹細胞ドナーの安全性を見極めるための委員会だったんですが、その 機能を拡大して、血縁のドナーの方、それもさかのぼっていろんなデータを取るという ことをしようかと思っております。すぐにはデータは出ませんが。今まで我が国ではそ ういうデータは、非血縁のドナーを除けば、ないということになります。 ○齋藤委員長  そのデータは時間がかかりますよね。上限については次回、継続的にディスカッショ ンをする。提供時には全身麻酔を受けるので、50歳以上の方の全身麻酔のリスクなどに ついて麻酔科の専門の方のご意見を伺うとか、そのようなことも必要ですよね。よろし いでしょうか。 ○掛江委員  加藤先生のご説明の時に40歳以上は現実的にはドナーになっていないだろうというお 話だったと思うんですけど、それでも上限を上げるメリットがあるのは、あまりたくさ んおられない珍しいHLAの方の細胞が確保できる可能性があるという理解でよろしい ですか。 ○加藤参考人  コーディネートの過程で、ご本人の健康上の理由でコーディネートが中止になる割合 が40歳を過ぎると高くなるということです。一方、提供しようという意思のかたさは40 代、30代の方のほうが20代の方々より高い、家族の同意の得られる率も高いということ になります。それぞれの面を考えて、この問題は判断していかなければいけないと思い ます。 ○片岡室長  資料3の9ページをご覧いただきたいんですが、ドナー登録をしてからドナー確定す るまでの期間として、平均が2.83年、中央値が2.17年で、3分の1の方は1年未満でヒ ットしております。20歳になるまで待ってる期間があるから提供の下限は18歳にしても よろしいんじゃないかというお話でしたが、諸外国の成人年齢などを事務局で調べます ので、提供年齢も下げることができないかどうか、再度ご議論いただきたいと思いま す。 ○齋藤委員長  上限については継続して議論しますけど、橋本委員は上限についてご意見はあります か。 ○橋本委員  特別にはございません。何か医学的な理由があるのでしたら、慎重にということだと 思います。 ○齋藤委員長  本日は最後まで詰められませんでしたが、この件については継続ということにしたい と思います。  次に、「平成17年度造血幹細胞移植対策予算概算要求の概要について」事務局より報 告をお願いします。 ○片岡室長  時間が超過しておりますので簡単にご説明いたします。資料5をご覧いただきたいと 思います。平成17年度概算要求の概要ですが、8月末に厚生労働省から財務省に提出し た内容で、12月の予算編成までに査定されることになっております。  この委員会に関係しますのは2.造血幹細胞移植対策のところです。  まず1番の骨髄移植対策ですが、従来行っていた事業に加えまして、今回、(1) 骨髄 移植対策事業費として、マル新とあります骨髄提供登録者フォローアップ事業、これは ドナー登録者に骨髄移植に関して引き続きやっていただけるという意識を持続していた だくために、年2回、そのための冊子を送ってはどうかという経費です。  次のマル改とあります2つは同じですが、いまドナー募集に当たっては、全国骨髄バ ンク推進連絡協議会のボランティアの方々にご協力いただいておりますが、日本赤十字 の赤十字奉仕団の方々にもご協力いただけるようにという趣旨で増員の要求をしており ます。  2番のさい帯血移植対策ですが、マル新とあります、さい帯血の安全な管理に係る費 用の補助、これは凍結保存を行うために必要な液体窒素の経費が補助対象外となってお りますので、それについて補助対象とするという内容です。  以上、概算要求は出しておりますが、これから財務省の査定を受けることとなります が、できるだけの予算を確保できるように頑張りたいと思っております。以上です。 ○齋藤委員長  全体を通して何かございませんでしょうか。 ○加藤参考人  本日は参考人として出席させていただきましたが、審議会に常時出席できるものでは ありませんので、要望を一つだけ申し上げたいと思います。今日配付されている資料の 中で「何々の者」という表現が残っておりますが、こういう善意の方々を対象としたシ ステムの時に、「人」とか「方」とか、そういう表現に改めていただくよう、この審議 会が先頭に立ってやっていただけたらと思います。 ○齋藤委員長  わかりました。  最後に、事務局より報告事項をお願いします。 ○永野補佐  次回の日程につきましては、各委員の日程を調整させていただき、決まり次第、文書 にてご連絡をさし上げます。先生方におかれましては、お忙しいところを恐縮ですが、 日程の確保方どうぞよろしくお願いいたします。 ○齋藤委員長  それでは、以上をもちまして本日の会議を終了いたします。どうもありがとうござい ました。                                    −終了−                     ┌―――――――――――――――――┐                     │問い合わせ先:健康局臓器移植対策室│                     │担当者:斎藤・永野        │                     │内線 :2362・2366    │                     └―――――――――――――――――┘