04/10/29 平成16年度第1回雇用政策研究会議事録            平成16年度第1回雇用政策研究会議事録                       日時 平成16年10月29日(金)                          10:00〜12:00                       場所 共用第7会議室 ○小野座長  ただいまから、雇用政策研究会を開会いたします。初めに、事務次官からご挨拶をお 願いいたします。 ○戸苅厚生労働事務次官  事務次官の戸苅でございます。お忙しい中、雇用政策研究会委員の就任を引き受けて いただき、大変ありがとうございます。今日発表になりました9月の完全失業率4.6% ということです。有効求人倍率が0.84倍ということで、一時は失業率が5.5%に達し、 有効求人倍率も0.51倍ということだったのですが、最近、着実に改善が進んできている ということです。ただ、中身を見ると、15歳から24歳の男子の失業率が11.2%、同じく 55〜64歳の男子の失業率が5.3%ということで、若年者・高齢者の雇用問題が大きな課 題になっているところです。  雇用者数も昨年の暮れ辺りから増え始めているのですが、男女別に見ると、男子の雇 用者はなかなか増えてこないというのが実情です。これは就業構造の変化等もあろうか と思いますし、企業の経営方針といったものもあるのかと思います。その辺りを考える と、若年者の雇用対策、高齢者の雇用対策等の施策により4.6%まで下がっていますが、 今後、ミスマッチ失業を減らしていかないと、おそらくこの4.6%はどこかで下げ止ま ってしまうのではないかという思いもあって、ミスマッチの対策、地域の対策、いろい ろな対策をこれからさらに充実をしていきたいと考えているところです。  今回、また雇用政策研究会を開催させていただくことにしましたのは、2007年に人口 が減少に転ずるということ、それから、690万人ほどいる団塊の世代が60歳に到達して くるということがあります。これは労働市場はもとより、経済・社会、産業、地域に非 常に大きな影響を及ぼすことになるのではないかということで、厚生労働省で申し上げ れば、社会保障が、自然増で毎年9,000億ぐらい増えているわけで、社会保障の担い手 をどうしていくのか。それから、今回の新潟県の中越地震を見ていても、被災地では高 齢者と子供が被災していて、壮年層、若年層の姿がなかなか見えないという辺りも、こ れから先、少子・高齢化が進んだときに地域社会はどんな姿になるのかという辺りも、 やはり大きな問題ではないかと考えているところです。  そういった中で、日本の経済、産業、労働市場をどのように考えていくのか。労働力 率を高める、あるいは生産性を高めるということで、極力、1人当たりのGDP、ある いは全体のGDPの持続的な、あるいは安定的な成長を図ることを目指すのか、あるい は人口の減少に見合った経済・社会、産業、労働市場の姿を目指すのか、大きな選択肢 だろうと思います。そういった選択肢の中で、雇用政策はどうあるべきか。いまや雇用 政策といっても、労働市場の対策だけでは、おそらく十分な効果を上げ得なくなって、 社会保障制度をどうするのか、あるいは労働条件をどうするのか、総合的、体系的なあ り方を言うのが、従来以上に重要になっているのではないかという辺りも、我々として は問題意識があるわけです。何せ我々も初めて経験する人口減少社会ということですの で、是非、専門分野での学識の深い先生方に活発なご議論をいただいて、我々としても その成果を参考にして、政策の充実に努めてまいりたいと考えております。お忙しい中 ではありますが、是非、よろしくお願い申し上げたいと思います。 ○小野座長  続きまして、職業安定局長よりご挨拶をお願いいたします。 ○青木職業安定局長  職業安定局長の青木でございます。お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとう ございます。この研究会の歴史は長く、雇用対策基本計画の策定、その他、節目節目に 重要な見解を私どもに伝えていただいております。最新では、平成14年7月に「雇用政 策の課題と当面の展開」というレポートをまとめていただきました。我が国の集中調整 期間に当たる期間に、どのような雇用対策なりスタンスが必要かということでご議論を 賜り、重要な示唆をいただきました。ともすると、雇用・労働対策を1個1個見ると、 ほとんど関連性のないように、いろいろな政策が打ち出されているように見えますが、 こういった中でのご議論を通じて、一体性のある、相互に関連のある政策展開が可能に なっているところであり、厚く御礼を申し上げたいと思います。  今回の研究会において、ご議論いただきたい主要なテーマについては、ただいま事務 次官のほうからお話をさせていただきました。極めて重要な時代の転換期ですので、ご 議論をよろしくお願いします。私どもからは担当として、資料No.4に今回ご議論をい ただく論点ということで、案を示しています。もちろん、これにこだわるものではあり ませんが、私どもとしては今後10年ぐらいを見据えたときに、どんな経済・社会の展望 が描けるかをひとつご議論いただきたいということが1点です。  また、そういった社会の動きの中で、労働力の面で見ると、労働力需要にどのような 影響を与えるのか、そして、こういった大きなデモグラフィック・チェンジがある中 で、労働力の供給がどのように描けるかというのを、2番目の論点としてご議論いただ きたいと思います。労働力供給と言っても、みんながフルタイムだという時代はもう過 去の話で、今までとは違った局面からの推計その他行わなければならないと思いますの で、この点についてもご議論を賜れば幸いです。  そういった中で、3つ目として、雇用・労働政策として、あるいはそれを超えた部分 も含むのですが、どのような政策方向を打ち出したらよいかということに関しても、併 せて最終的な結論部分としてご議論を賜りたいと思います。  この研究会は、通常の審議会と違って、自由にご議論をいただける、私どもにとって は貴重な機会ですので、十分活発なご議論を賜りたいと存じます。いずれにしても、私 どもとしても来年の初夏ぐらいまでには取りまとめをいただければ、また次のステップ の政策策定に大きな助けになるものと信じますので、どうかよろしくお願い申し上げた いと思います。 ○小野座長  次に、委員の異動がありましたので、ご紹介します。資料No.1に委員名簿がありま す。今野委員、神代委員、篠塚委員が退任されましたのでご報告いたします。新たに、 国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部第2室長の大石亜希子先生、本 日はご欠席ですが政策研究大学院大学教授の黒澤昌子先生、東京大学社会学部研究所助 教授の玄田有史先生、労働政策研究・研修機構副統括研究員の小杉礼子先生、慶應義塾 大学法科大学院教授の山川隆一先生に委員に就任していただきましたので、ご紹介いた します。  なお、島田委員は、本日所用のため、遅れて来られるという連絡をいただいておりま す。  それでは、新たに委員に就任された先生方に、一言ご挨拶をお願いしたいと思いま す。 ○大石委員  国立社会保障・人口問題研究所の大石でございます。労働経済学の大家の先生方にご 一緒させていただくので、大変緊張しております。私は社人研のほうで年金と高齢者雇 用の問題、女性の就業と保育の問題などについて研究してまいりました。また、人口推 計の基となる出生動向基本調査の実施・分析などにも従事しております。こういった業 務を通じて得られた知見などを、こちらの研究会のお役に立てることができればと考え ております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○玄田委員  玄田です。よろしくお願いします。 ○小杉委員  小杉でございます。よろしくお願いいたします。私は、学校から職業への移行という のを主な研究テーマにして、一人前の職業人になるまでのプロセスの研究をずっとやっ てきました。学校教育と就労との狭間の問題をすごく感じているところです。是非、そ ういうところに政策の手が伸びるようにお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願 いいたします。 ○山川委員  慶應義塾大学の山川と申します。よろしくお願いいたします。専攻が労働法で、しか も雇用政策という面は、これまであまり十分に研究してこなかったものですから、どれ だけ役に立てるかわからないのですが、何とか少しでも貢献できればと思っておりま す。よろしくお願いいたします。 ○小野座長  次に議事の公開について、事務局から説明をお願いいたします。 ○中井雇用政策課長補佐  資料No.2、資料No.3ですが、当研究会については、資料No.2の開催要領のとおり、 今後運営させていただこうと考えております。資料No.3の議事の公開については、前 回、平成14年度の第1回雇用政策研究会の場において、「雇用政策研究会を原則公開と する。ただし、金融市場や労働市場等に与える影響を考慮し、完全失業率や労働力需給 の推計に関する議論をする場合など、座長が非公開が妥当であると判断した場合には、 非公開とする。」という決定をされたところですので、引き続きこの方針に沿って進め させていただければと思っております。 ○小野座長  ただいまの説明について、ご質問、ご意見等はありますか。特にないようでしたら、 事務局の原案どおり進めることでお願いいたします。  続いて、今回、当研究会で議論を行う論点及び今後の進め方について、関連資料も含 めて、事務局より説明をお願いいたします。 ○勝田雇用政策課長  資料No.4の「雇用政策研究会で議論して頂く論点」と資料No.5のスケジュールにつ いて、説明します。先ほども次官、局長のほうからご挨拶の中で申し上げたとおり、今 回の研究会は人口減少という、私どもの国が初めて迎える経験の中で、今後の雇用・労 働政策のあり方を議論していただこうということを考えております。それに沿って、論 点(案)という形で、この研究会でご議論いただく点の原案のペーパーとして、資料No. 4を用意しました。  最初に、この研究会で議論していただくに当たり、労働市場の問題を考えるにして も、全体の経済・社会の姿がどういうことになっていくかということが重要かと思って おります。そこで、最初に「今後の我が国経済・社会の展望」という論点を出しており ます。人口が減少する中で、どういう社会を目指していくのか、あるいはどういう社会 が考えられるのかということです。この場合、論点の重要な問題として、全体の経済の 規模といった成長の問題もあるかと思います。それから、経済や産業の構造の変化とい った問題もあろうかと思っております。  特に、生産性の上昇ということを考えるに当たっても、経済産業構造の変化というの は重要な論点かと思っていますが、実際に生産性を上昇させるために、経済産業を高付 加価値のものに特化させることを考えた場合でも、高齢化に伴って、例えば現代のサー ビス産業が伸びていく中で、どのような社会が現実には可能と考えられるかといったこ ともあるかと思います。もちろん、そもそもの問題として次官のほうから申しましたよ うに、今後とも経済の規模、あるいは豊かさの拡大を目指すのか、あるいは、それはほ どほどといった形でもよいのかといったことも合わせて、経済・社会の姿をご議論いた だければと思っています。  そのご議論いただいた経済・社会の姿を基にして、1つは労働力の供給を中心とし た、労働市場の展望をご議論いただきたいと思っています。この場合に、労働力供給に ついても、できるだけ多くの人が就労していく、高齢者も女性も若年者も就業して、労 働力率、あるいは就業率が上がっていくというケースを考えるのか、それとも、高齢 者、女性、若年労働者といったところの労働力率がこれまでのように推移することによ って、全体の労働力率が減少していくケースと、2つのケースが考えられるかと思いま す。また、それぞれの状態に応じて、1とも関係しますが、生産性の上昇をどの程度見 込むことができるのかによって、ある程度の上昇を見込めるケース、あるいは見込めな いケースといった場合分けも必要かと思っています。  こういったご議論を基にして、2030年ごろまでの労働力の需要・供給の推計を行って いきたいと考えております。推計を行うに際しては、これまでの性、年齢別の労働力率 の推計を行うとともに、特に労働力率の向上に資する施策を行った場合に、どの程度ま で引き上げられるのか、あるいは政策的に引き上げないで、これまでの労働力率で推移 した場合どうなるのかといった比較を行っていきたいと思っております。  今回、1つの大きな問題として、先ほど申したように、パートタイマー等の増加もあ ります。これまでのようにフルタイマーを前提として、1人頭だけではなくて、労働時 間の要素を加味した形での労働力供給、マンアワー当たりの推計を行えればと考えてお ります。  もちろん、産業別、職業別といったことも必要になってまいります。今回、人口減少 の中で、地域社会がどうなっていくのかというご議論の関係で、地域別の労働力の需給 の見通しがある程度できればと考えています。  この全体の姿、あるいは労働市場の展望を行っていただいた上で、今後10年間程度の 雇用・労働政策のあり方について、ご検討をお願いしたいと思っています。この検討事 項がこれで網羅されているのか、あるいはこれでは不要なものもあるのではないかと、 またいろいろなご議論をしていただきたいと思っています。ここで挙げているものとし てはまず、労働力率、いわば供給の量に関する問題を中心とした政策の問題がありま す。それから労働力の質が中心になってこようかと思いますが、生産性に資するような 能力の問題、その能力を引き出すような雇用管理のあり方等の問題があります。人口減 少ということで非常に関係のある少子化との関係で、労働政策・雇用政策の中でどうい うことを行うべきかという少子化対策に関する政策があります。それから、地域社会と の関係で、地域雇用の関係の政策があります。そして、人口減少の中で、巷間でよく議 論される外国人労働者問題との関係をどのように考えるべきかということについて、こ の問題の考え方の整理も併せてご議論いただければと考えています。  資料No.5のスケジュールですが、基本的には今回、経済・社会の展望についてのフ リーディスカッションをして、次回併せて、労働市場の展望の最初の部分の労働力供給 の面での関係のシナリオ等のご議論をしていただければと思っています。そのあと、本 年中に2回ほど、12月に会議を予定していますが、ここでは労働力需給の推計について のご議論をいただき、年明けからは個々の政策の分野別のご議論をいただき、最終的に は5月ごろを目途に報告をまとめたいと考えています。 ○中井雇用政策課長補佐  引き続き、資料No.6に基づき、労働力供給面の現状について、かいつまんで簡単に 説明します。  資料の2頁は「総人口の動向」ということで、先ほども話がありましたとおり、2007 年から人口が減少に転ずるということですが、先行きをみたときには、2030年には2003 年と比較して約1,000万人減少するということです。内訳は、高齢者が1,000万人増加す るのに比較して、残りの世代で2,000万人ぐらい減少するという姿になっているところ です。  3頁の「生産年齢人口の動向」ですが、15〜64歳ということでみた場合には、人口よ りもさらに減少幅が大きくなっており、2030年では約1,500万減少するという状況にな っています。  4頁は「団塊の世代の高齢化」ということで、団塊の世代(1947〜1949年生まれ) は、2000年で約690万人いらっしゃるわけですが、この層が2007年に60歳に、2012年に 65歳に到達するということで、団塊の世代の高齢化が進んでいくという状況です。  6頁は「労働力人口の動向」ということで、将来の見通しについては、前回の平成14 年の研究会を開催したときに同じタイミングで報告書に盛り込んだものです。今後の労 働力率をどう見るかにより、労働力人口の見通しが変わってくるということです。各年 齢層の労働力率が各種対策を講じることなどにより上昇すると見込んだ場合、現状2003 年では6,666万人ですが、2015年で見ると6,600万人ということで、現状より若干の減少 にとどまる。ただ、20年後までいくと6,300万人まで減少する見込みになっています。  一方で、右の下のグラフの各年齢層の労働力率が2003年の水準と同じで推移したと考 えた場合には、2015年では6,300万人、2025年では6,000万人ということで、労働力率が 上がった場合と比較して、各々さらに300万人減少するという見込みを現在のところ作 っています。これについては、今後、労働力の推計をする予定で、その中で最新の数字 を含めて、再度、推計していきたいと思っております。推計については、いま労働政策 研究・研修機構にお願いしているところで、結果については順次、本研究会に報告する とともに、ご議論いただいてこちらでの考えを推計に反映させていこうと考えています ので、よろしくお願いします。  7頁は「年齢別労働力率の推移」をみたものです。10年間で、全体で3ポイント低下 しています。特に、男性の低下が女性の低下幅の倍になっているということです。次の 頁からこれを年齢別にみたものがありますが、時間の関係で省略します。若年について は女性の上昇幅のほうが大きくなっている。30〜59歳については、男性は低下、女性は 上昇、60歳以上については男女とも低下していますが、特に男性の低下幅が大きくなっ ています。  13頁は「年齢別就業率の推移」ということで、これは働いている者の人口に占める割 合です。これを見ると、10年間で4.6ポイント低下しているということです。男性の低 下幅は6.1%で、女性の低下幅の約2倍になっています。これを年齢別にみると、若年は 男性で低下、女性で上昇しています。30歳以上についてはいずれも低下していますが、 男性の低下幅のほうが特に大きくなっています。  34頁は、就業形態の多様化が進んでいる状況について、「非正規雇用者数の推移」を みたものです。2001年から2002年にかけて統計が変わっていますので、単純に比較はで きませんが、この10年間で569万人増加をしております。そのうち男性が184万人、女性 が383万人増加という内訳になっています。  37頁のグラフは、これを比率でみたものです。非正規雇用者比率は、この10年間で 10.8ポイント上昇しております。上昇幅は女性のほうが大きくなっていますが、男性も 6.7ポイントと、かなり上がってきています。特に年齢別では20代前半において、男性 も2割近く上昇して、全体で40%ぐらいということで約2倍になっていまして、若年層 の非正規雇用者比率の上昇が目立っております。  41頁ですが、若年者においては、フリーター、NEETという話がありますが、厚生 労働省で推計したフリーターの数は2003年で217万人ということで、約10年前と比較し て倍以上に増加しています。  42頁の無業者ですが、15〜34歳の若年無業者については、10年前と比較して24万人増 加、約1.5倍になっています。  44頁の労働時間の話については、43頁で全体の労働時間は減少しているという話があ りますが、これを一般とパートに分けてみたものです。それを見ると、一般、パート、 それぞれの総実労働時間はこの10年間で各々10時間、15時間増加しています。パートの 比率が上がってきたことによる労働時間の減少ということがおわかりになるかと思いま す。  45頁の「短時間就業者比率の推移」ですが、この10年間で全体で5.1ポイント上昇し ており、男性で3.3ポイント、女性で7.1ポイント上昇ということで、女性の上昇のほう が大きくなっていますが、男性についても上昇していることがおわかりかと思います。 特に高齢者及び若年者の上がり方が大きくなっています。  49頁の地域の人口については、国立社会保障・人口問題研究所で行われた推計を基 に、2030年までの都道府県別人口の見通しを表にしたものです。大都市圏では2015年ぐ らいまでは人口が増加する一方で、沖縄を除く地方圏においては、人口が減少するとい う見通しとなっていますので、現状のトレンドでいくとこういう姿になるということで す。その後、2030年においては、ほぼ全国的に人口が減少する見込みになっています が、地方圏のほうが減少幅が大きいという見通しになっているところです。  50頁では、人口の高齢化ということで、全国的に年齢別にみると、高齢者の増加幅が 大きくなっているところですが、2020年を境に高齢者も減少する県がみられていくとい うことで、今は高齢者の増加が進んでいる状況ですが、2030年ぐらいを見通すと、全体 の人口が減る中で、高齢者の人口も減少に転ずるということです。  51頁の人口に占める高齢者比率ですが、大都市圏と地方圏で比較すると、地方圏のほ うが高齢比率の上昇幅が大きくなっていくという見通しになっています。2030年では、 全体の3割が高齢者となる見込みですが、地方圏において特にその比率が高まるという 数字になっているところです。  52頁の外国人労働者の数の推移は、外国人は全体で2003年時点で約79万人という推計 結果になっていますが、そのうち、合法的な外国人労働者が約57万人となっておりま す。内訳はそこに書かれているとおりで、合法的な外国人も引き続き増加しているとい う姿になっております。 ○小野座長  いま説明がありましたように、人口減少という切り口で、今後の政策を考えていこう ということです。労働力人口の供給の推計は2030年までやる。だけど、展望する期間は 大体今後10年ぐらいで考えてみたらどうかということですね。 ○勝田雇用政策課長  需給推計については2030年まで行う予定です。一方、政策的な部分については今後10 年程度ということでお願いできればと考えています。 ○小野座長  ただいまの資料No.4、資料No.5、資料No.6について、ご自由にご発言をいただき たいと思います。 ○玄田委員  たくさん資料等をご紹介いただきましたが、私自身がいちばん大事だと思うのは、今 後10年の見通しを考えるときに、特に優先すべき指標というか、特に何を重点項目とし てみていくべきかというのが、まずは大事な論点かという印象があります。というの も、労働力率や失業率というのは、当然、指標として注目されるわけです。1990年代以 降、非常に問題を難しくさせているのは、失業者と非労働力の境界というのが、以前に も増してグレーゾーンが広がっているのではないか。もちろん、定義上は完全失業者の 定義というのはあるわけですが、特に職探しをしている、inaction、行動しているとい うことのあり方が、インターネット等の整備もありますし、非常に境界線が曖昧になっ たりしています。  労働力率といっても、本当は非常に境界が曖昧なものをみているのではないかという 印象があります。もちろん、大きな流れとしては労働力率というのは大事だと思うので すが、一方で、昔ざっとラフな推計をしたときに、就業者数はいまのあり方でいくと、 2050年ぐらいには人口のうち2人に1人ぐらいは就業者にならない。いったいこれから 何をいちばんターゲットにするのか。もちろん労働力率や失業が大事ですが、就業者は とにかく働けばいいのではないかと。  もっと言えば、私自身は見たことがないのですが、もし「納税就業者」という概念が あれば、それがいったいどうなるのか。非常に極端なことを言えば、フリーターだろう が何だろうが、ちゃんと納税していれば、国家財政、社会保障等に関してはある程度運 営ができるわけで、小杉委員などの研究グループがなされるように、フリーターでも実 際には正社員と同じような労働時間をしている人が非常に多いということを考えていく と、納税がすべてだとは言いません、保険加入資格がある就業者でもいいと思います が、もう少し社会全体のことを考えていくときに、就業者とか、その中でもタックスを 払っているかどうかなど、何かみていくときの目安となるようなものを改めて考えてい くべきではないかという印象を最初は持ちました。 ○小野座長  納税就業者というのは、どこかにあるのですか。 ○大石委員  見たことはないのですが、やはり女性の問題もそうで、少子化対策をしたら女性が働 くといった場合にも、働く形態がパートで、結局103万円の壁以内だったり、130万円以 内だったりする可能性もあります。頭数で勘定するのか、時間ベースで勘定するのか、 いま玄田委員がおっしゃったような納税や社会保険への加入というベースで考えるの か、いろいろなレベルがあるというので、いまのご指摘は貴重だと思います。 ○小杉委員  どういうのが一人前かというと、私もやはり税金を払うことが一人前という話をよく してしまっているのです。そういう意味では、就業というところで問題にする、就業率 で考える。その就業の中でも、若者の話をすれば、何が一人前かという話になると、や はり納税しているかということがキーポイントになるかと思います。  それから、若者の問題で言うならば、就業の場合にさまざまな形態がある。雇用形態 の問題と、労働時間の問題と、学校との関係ですね。これまでのように22とか18まで学 校で、そこから先は就業という区切り方が、これは変わってこざるを得ないし、変わる べきだと思うのです。そうすると、パートタイムの学生であり、パートタイムの就業者 である。これからそういう形態を想定していかなければいけないのではないか。そこ で、どのように彼らの労働への参加をカウントしてくるかというところが1つポイント かと思います。 ○大橋委員  いまの玄田委員の納税就業者という話ですが、その前の厚労省の方のお話は、人口が 減っていくから、それに対してどうしたらいいのかというのが基本的なテーマだと思う のです。それに対して、例えば納税就業者さえ増えれば問題ないとは言いませんが、財 政などの視点が入ってくると、こういった納税就業者のような概念も重要になってくる でしょうということです。その点では、メリットはあまりないと思いますが、労働力人 口の減少が持っているメリット、デメリットを少し整理する。単に人手が足りないから というような話ではなくて、もう少し効果のようなものを整理する必要があるかとは思 います。 ○小野座長  人口減のですね。 ○大橋委員  そうですね。 ○小野座長  その点、事務局ではどのようにお考えですか。 ○勝田雇用政策課長  いま大橋委員がおっしゃったとおり、人口減になっていく中でどうなるかということ で、メリット、デメリットをご議論したいというのは非常に重要だと思っています。も う1つ考えているのは、そもそも人口減の中で、本当に労働力が不足するのかどうかと いうところが、1つ大きな問題としてあるのではないかと考えています。というのは、 1つはいまのままの労働力率なり、玄田委員からお話のあった就業者数、あるいは就業 率という考え方もあり得るかもしれませんが、全体の人口は減少しても、あるいは生産 年齢の人口は減少しても、どの程度まで労働力の供給を確保していくことができて、そ れは実際に経済全体を運営していく上で、不足になるのか、不足にならないのか、ある いはその中でどういうメリット、デメリットが起こってくるのかというご議論かとは思 っています。 ○玄田委員  いろいろなパターンを想定するというのもとても大事だと思うのですが、極端に言え ば最悪のケースを想定して、それに対してある程度危機管理ができるというのがリスク 管理ではないか。過大推計とか楽観的な見通しすぎると怒られるに決まっているので、 そう考えると最悪の場合に対して、国家財政もそうだし、個人的な生活もそうだし、地 域の偏りやばらつきの問題もそうですが、まあ、何とかなる。何を安定と考えるか、何 をリスク管理と考えるかというのがいちばん大きな議論だと思いますが、起こり得る最 悪の事態に対してあるべき備えをしておくというのが、これからのいちばん大事な雇用 政策的な視点ではないかと思うのです。 ○大石委員  生産性上昇をどのぐらい見積るかというところが、過去からの推計でやってみたりす ると上ブレしたりしやすいということもありますので、あまり過大な見通しにならない ように、把握しにくいものなので、その辺を固めに見ておくというのが必要かと思いま す。  それから、別の分野では、少子化が進んでも1人当たりの資本装備率は高まって、生 産性が高まるのだから、別に少子化が進んでも問題ないという議論もあるのですが、本 当にそうなのか。いままで人口が減少したことがないので、そういった循環が本当に働 くのかどうかというところがまだ検証されておりません。本当に皆、資本装備率が高く て、私たちの3倍ぐらい高賃金で、税金も社会保険料も3倍ぐらい実質で払えるような 子供たちがぞろぞろと出てくるのなら、何も問題ないのかもしれないのですが、そうい った議論に対してこちらの研究会でどのように回答するのかということも、少し考えて おいたほうがよろしいかと思います。 ○小野座長  大石委員はいろいろご存じだと思うのですが、ソービーという、もう亡くなってしま った人口学者がいますね。あの人が書いた『人口の一般理論』というのを読むと、イギ リスが7つの海を支配した当時、大いに活動したのは次・三男だというのです。長男は あまり思い切ったことはやらない。7つの海を支配したときに活動したのは次・三男で あると。ずっと前に読んだ論文ですからうろ覚えなのですが、サイモン・クズネッツも 何か同じようなことを言っていたような気がするのです。そのように若い人たちが減っ てしまって、思い切ったことをやるような人が少なくなると、私はそれはちょっとマイ ナスの効果を持ってくるのではないかという感じもするのです。これは今後いろいろな 機会を通じて議論の中に、人口減少が持つメリット、デメリット論というのは出てくる と思います。 ○小杉委員  働くことの意味のようなもののアプローチもあると思うのです。就業を通しての社会 的統合という考え方もありますし、若い人にとって働くことの意味というのが非常に重 要で、その辺からも切り込んでもいいのではないか。労働力率がどうなるという、産業 側の需要の問題だけではなくて、働く側にとって働くことというのはどういうことなの か。そこの部分も必要ではないかと思います。 ○大橋委員  それは特に高齢者について、これから働いてもらわなければいけないというときに、 年金の話がよく出てくるのですが、年金の話というのはむしろ厚労省のほうが先導して 年齢の引上げということがありましたから、論拠としては高齢者にとって働くことがす ごく生きがいになるという話も、当然あって然るべきだと思うのです。だから、そうい う点では非常に大事だと思います。  話が変わりますが、私はこの研究会に10年ぐらい前から出させていただいています が、昔は労働力需給の推計式が出てきたような気がするのです。最近はあまり出てきて いないような気がするのです。それで、最終的には労働力人口はこのような推計になり ましたと。実は私はこの研究会は結構さぼっていますから、私がいないときに報告され ている可能性もあるので、その場合にはそれはちょっと申し訳ないと思うのですが。労 働力推計をする場合、結局は需給関係のバランスで最終的にこういう結果が出てくるの ですが、いまの皆さん方の話を聞いていると、要するに労働力需給を推計するプロセス で、いろいろな仮定等をおいていく。そのときの仮定で、いま玄田委員がおっしゃった ように、最悪の事態はこれだと。だから、いろいろなケース分けをしていく、実はその プロセスが面白いのではないかと思っているのです。そういう点では結果だけではなく て、少しプロセスを見ながら、ケースをきちんと見ていくということが非常に大事にな るかと思うのです。かなり間違った情報を持っているのではないかと思いますが。 ○中井雇用政策課長補佐  今後の予定にも書いてありましたが、需給推計については推計式なども含めて、どう いう考え方に基づいてどう整理するかというのは、この場においてもどんどん出してい きたいと考えています。 ○大橋委員  そのプロセスでこういうケースを入れたら、ここのところがどうなるか、というよう なことを報告していただけますね。 ○中井雇用政策課長補佐  はい。 ○玄田委員  いまの大橋委員の関連で、高齢化や労働力人口の減少という話を、どのぐらいミクロ ベースで議論できるのかというのは、とても大きな問題のような気がします。人口減少 などは非常に大きな話すぎて、通常はマクロの連立方程式などを推計してやることにな るのでしょうけれども、最終的には家計であったり個人の行動が変わらない限り、外国 人の移民を除けば、労働力人口というのは影響しないわけで、最終的な目標としては、 「ああ、そうか、こうなるんだ。だから、自分のビヘイビアはこうしたほうがいいだろ う」と言って、もし人口が増えればいいのだったら、結果的に家庭を持って子供を持つ ことが自分にとって有利なのだ、という具体的なイメージが持てるようなことをしない と、折角ここで一生懸命考えても、「そんなこと言われたって、私たちにはどうしよう もないわ」となるし、もっと言えば、最悪の議論というのは、出生率が1.29に下がりま す、これでは大変なので、女性は子供を産んでくださいみたいなことになったら、反発 して誰も産まないわけです。  そういう全体の議論を踏まえた上で、どのぐらいミクロの意思決定に影響を与えるよ うなヒント、情報提供などができるのかというのはとても大きいかと思います。もちろ ん、それは制度的にいろいろなものを変えていくというのもあるのでしょうけれども、 最終的にはこういう議論をどのぐらい、マクロ的な連立方程式を解くということと同時 に、ミクロ的なビヘイビア、例えばすごい極端な話、インターネットか何かで自分のケ ースを入れていくと、自分は何人ぐらい子供を産みそうで、こうなると自分の将来はど んな感じかということが、ロールプレイ的なものでもいいからわかると、こういう議論 が単なる行政だけの計算ではなくて、いい意味で国民全体を巻き込むような議論になり 得るかなという気がしているのです。マクロ的な推計と同時に、マイクロデータを使う か何をするかわかりませんが、ミクロ的な個人の家計としてこういう選択をした場合な どということがあったら、議論が広がるような気がします。 ○山川委員  いまの玄田委員のお話と関心は似ているのですが、ミスマッチ解消をするための企業 側のコストというか、ミクロ的なことでも、企業としてどういうコストがかかるのかと いう点も関心があります。経済の素人なのですが、例えば資料No.6の44頁で、先ほど ご紹介にあったように、労働時間の短縮というのは、結局のところ一般労働者もパート タイム労働者も、労働時間は別に減ったわけではなくて、単にパートタイムが増えたた めに総労働時間が減ったということで、これまでのような働き方ではなかなか新たな労 働力率を増やすような方向性は難しいとすると、先ほどの次官のお話にもあったよう に、パートと一般の差があまりにも極端な状況を直していくということになろうかと思 います。おそらくいまのような現状になっているのは、企業にとってこのような一般正 社員とパートタイム労働者の使い方がある意味では使いやすいというか、それほどコス トがかからないからではないかと思います。これを変えていくためには、そのためのコ ストをどうやって企業として減らしていけるのかということが重要になると思います。 その前提として、一般労働者とパートタイム労働者の境界のようなものを減らしていく ために、どういうコスト計算があるのかということも、ミクロの視点としてはあり得る のかと思います。 ○大橋委員  いままで日本の企業は、パートなどを使って、かなりいろいろと凌いできた面がある し、また使い勝手もいいということで使ってきたのですが、パートの供給がこれからま だ続くのかどうかというのは非常に大きな論点になってくると思うのです。だから、景 気が少し良くなったら、パートの求人倍率が5、6倍になるとか、そうなったらどうな るのか。この推計に当たって、それは1つの大事なテーマになると思っています。 ○大石委員  おっしゃったとおり、パートの供給源の大きな部分を占める有配偶女性自体が高学歴 化していますので、大学を出た女性がパートになるかどうか。団塊の世代の女性が一斉 に退職したあとで、どうなるのかというのは、すごく大きな問題だと思います。 ○大橋委員  現在は仕事がないからパートをやっている人も結構いるようですから。 ○玄田委員  企業側の問題というのは、もちろんパートの動向というのがとても大きな問題だと思 うし、本当は人口問題などを考えた場合、パートは女性だけではないですが、女性が多 いということを考えると、男性の働き方ということに対して、企業側にどのように場合 によっては危機感なり意識を持ってもらうかというのは、とても大きいと思っていま す。  長時間労働をやりすぎると、いろいろな意味で、やはり子供はできません。それは企 業として人手が足りないから、働いてもらわなければしょうがないのですが、だからと いって、あまりにも長時間労働をすると、家庭を持つとか、家庭を顧みる余裕がなくな れば、それは子供だって産めなくなるので、こういう問題は実は企業の雇用管理のあり 方というのが間接的に非常に少子化に影響を与えているのです。  昔、厚生労働白書に出たかもしれませんが、産後うつ病などということも、もう少し 情報として提供していかないと、いま正確には何パーセントか知りませんが、出産した 女性の17%が産後うつ病にかかる可能性があって、そのときに父親の支えや協力がない と、その状態が非常に深刻化するのだと。だから、男性に育児休業させるなんてという ことを言うわけですが、安心して子供を産めるためには、ミクロ的には企業の雇用管理 が変わらないといけないし、パートだけではなくて、むしろ正社員の雇用管理が本当は 非常に大きな問題になるだろうと思っています。  先ほどの団塊の世代の話を考えると、もちろん団塊の世代の方がいなくなると年齢構 成など、がらりと変わるわけですが、こういう議論のときにあまり出てこない中間管理 職というのが、いまどの程度元気なのか。正直言って、かなり痛んでいるのではない か。団塊の世代がいなくなって、本来ならそこで中間ではなくてトップの責任者になる べき現在は中間管理職クラスが、もう元気がなくなってしまって、いなくなったからと いって「やるぞ」ということにならなければ、どんなに危険な状況か。そう考えると、 すぐ若年とか高齢者という所に焦点が当たりますが、たぶん霞が関の厚生労働省もそう ですが、本当は中間管理職で30代、40代ぐらいで、相当苦しい生活をしている人たち に、極端に言えば夢を与えられるかということがないと、こういう議論はあまりにも数 字の計算の話になってしまって、盛り上がりに欠けるのではないかという気がします。 ○小野座長  いまの長時間労働が子供の数に影響するだろうというのは、私もそう思います。もっ と一般的に考えて、出生率に影響する要因というのは、通説としてどんなものが考えら れているのでしょうか。 ○大石委員  大雑把には、晩婚化が止まらないことに加えて新しい動きとしては夫婦出生力の低下 があります。いままででしたら夫婦は2人ぐらいの子供を産んでいたものが、それさえ も下がってきており、理想子供数も下がってきているところもあるのです。結婚してか らの年数が短い若い夫婦ほど、そういった傾向がはっきり出ています。  今までの少子化対策というのは、保育所をつくるとか、育児休業を普及させるとか、 割合と狭義の少子化対策というイメージの中に入っていたような気がします。しかし結 婚して間もない世代の出生行動の変化とか、若いほうでの晩婚化がいつまでも止まらな いということの背景には、もっとマクロの状況、極端に言えば、経済状況の悪化がある と思っています。個人的には、狭義の少子化対策もどんどん続けてやるべきだと思いま すが、マクロの経済運営もしっかりやらないと、少子化はなかなかストップしにくいの ではないかと思っています。 ○島田委員  今度、久し振りに雇用政策研究会ということで、大きな課題を本格的に攻めようとい うときに、いまの事例に出ている少子化問題というのは、新しい視点で本格的に書き込 むべきではないかと思います。これまでの雇用政策というのは、そういう状況は、やや 所与として需給のマッチングなどをやっていましたが、そこのところは問題提起とし て、本当にそこを本格的に書き込めるのかどうか、書き込めるのだったら思い切って書 いたほうがいいと思います。  大石委員が言われたことは私も賛成です。晩婚化あるいは非婚化が急速に進んでい て、日本の場合は結婚しないと子供は産まれないわけです。結婚した人は2人ほど産ん でいたのですが、それも少しずつ下がるのではないか。子供を産まなければいけないと いう議論も一方であるのですが、それは適切な議論ではないと思っています。産みた い、育てたいと思う人が良い環境がないというのは、これは絶対に整えないといけない ことであって、それは何だということを、やはり我々の観点から、今回の研究会で正面 から捉えたほうがいいのではないかと思います。  晩婚化・非婚化というのは一連の理由があるのだと思いますが、大石委員が言われた ように、理想的な子供の数が下がっていくというのは、理想というのは、理想ではなく て、このぐらいしか育てられないよね、というのではないかと思うのです。いろいろな 人の話を聞いていると、2人とも会社で働いている、1人産んで精一杯、2人目なんて とてもじゃない、3人目は全然とてもじゃないという感じがあると思います。みんな苦 労しているから、1人もどうかなという。その辺の環境をきちんと整える必要がある。 労働時間問題なんていうのは全く最たる問題の1つであると思います。  保育所もとても大切ですが、責任ある親から子育てということを考えたときに、いま の日本の都市環境の中で、田舎もそうですが、本来、親がケアしなければいけないとこ ろを働いているから十分ケアできないのですが、以前は社会が面倒を見ていた面があり ます。いま社会が子育てを面倒見てくれるという機能は、ほとんどなくなっています。  したがって何が起きるかというと、いちばん大きな問題は、実は小学校低学年までの 問題だと思っています。つまり、子供たちは、幼稚園、小学校というのは2時ごろ終わ って家に帰って来ます。親御さんは、大都会の場合には、フルタイムの人というのは仕 事して帰って来るのが8時過ぎになりますから、私はそれを「魔の6時間」とか「魔の 8時間」と言っているのですが、きちんと面倒を見る人は隣にいないのです。結局、ど こへ行っているかというと、ゲームセンターへ行ったり、塾にたたき込まれたりしてい ますが、いろいろなことがあって事故や犯罪に巻き込まれています。そのような環境の 中で子供を育ててみろといっても、仕事をしている人は不安で駄目です。  先のことを考えて、きちんと責任を持って育てようと思ったら、この国は子供を育て られる環境になっているのかと思います。その辺りも大いに研究して書き込んでもらい たいと思います。これは厚生労働省の問題でもあり、文科省の問題でもあり、警察の問 題でもありますが、総合対策が必要です。1つの省では抱えきれない、家庭の直面して いる問題というのは社会全体です。  少し前までは、例えば親が帰って来なくても、子供はどこかでご飯を食べて、夕方に は家に帰って来て、近所が面倒を見ていたわけです。その機能が今はほとんど失われて います。朝、隣に警察が来てガサガサやっているので何だと思ったら、死んで白骨化し ていたとか。そう言えば挨拶していなかったね、というような社会になっているわけ で、全部切れているわけです。かつて社会が担っていた子育て機能を全部政策的に押さ えないと、一生懸命働いている親は子供を育てられないというような非常に危険な状況 があります。  もう1つは、これはいろいろな文献がありますので研究してもらいたいのですが、北 欧やフランスなどは出生率が戻ったわけです。それなりに努力しているわけです。フラ ンスでよく言われるのは税制の「二分二乗方式」です。分かりやすく言うと、子供の数 によって所得を割る形になりますから、非常に負担が軽くなるので、高所得者にとって はすごく有利です。そういった抜本的なことを考えなければいけないところにきている と思いますので、是非、それをやっていただきたい。  もう1つは、晩婚化・非婚化というのは、結婚したときの家族絡みの、しがらみのう ざったさがあって、若い人はそれはいやだと。だから結婚しなくてもいいではないかと いう問題提起があり得ると思います。いわゆる旧制度の結婚でなくても、2人で愛し合 って子供ができればそれでいい、社会的に結婚と言わなくてもいいだろうと。その人た ちを、子供を持っているということで、正式に結婚して子供を育てている人と同じよう な、社会的に、政策的に、制度的な対応をすることを考えなければならないときがもう きていると思います。国として、社会として、全体として子供を産みたい、育てたいと いう人は、本当に気持良く産んで育てられる環境をつくらなければいけない。  そうでない人に、産めとか、結婚しろというのは人権冒涜ですが、やりたいと思って いる人ができない国です。実は、G8諸国で高齢化対策と家庭支援対策でどのぐらい公 的資金が使われているかをいろいろな形で調べられます。ざっと見て、西欧諸国は7対 3ぐらいの比重です。高齢化に7の公的資金をつぎ込んで、子育ては3ぐらいです。日 本は9対1ぐらいです。要するに子育て支援への公的な資金配分は3分の1か4分の1 です。  私は日本人が子育てをネグレクトしていたとは思わないのですが、日本人は真面目で すから、30〜40年前から「高齢化、高齢化」と騒いでいたわけです。そこへ向けて、あ らゆる資源を投入してきているから、今の高齢者は、年金も1つですが、所得配分は非 常にいいのです。少子化はごく最近言い出したことで、これから真面目だからやり出す と思うのですが、効果が出てくるのは30年後ですからね。だから、ほとんどtoo lateか なと思いますが、だからと言ってやらないわけにはいかない。私はこの研究会が、今ま で需給バランスばかり言っていたのが、本気になってそれをやり出したということにな ったら、それなりのインパクトがあると思いますので、是非それを座長にお願いしたい と思います。 ○小杉委員  少子化絡みで、晩婚の原因の1つに若い人の就業の問題がかなりあって、まずフリー ターの男性は絶対にもてないですから、フリーターというだけでも全ての対象から外さ れます。雇用者の中の男性でも3割がフリーター時代になっていますから、若いときの 収入をどうするかというのと少子化はすごく関係あると思います。非正規型の雇用をど う処遇していくのかという問題と絡めて、やはり少子化の問題にもつながるのではない かと思います。 ○島田委員  フリーターは、結婚は難しいですか。 ○小杉委員  はい、男性は結婚市場から落とされます。これは樋口先生の研究であるのですが、女 性のフリーターも、最終的には安定的な男性と出会うチャンスがなくて、どんどん晩婚 化するということになります。 ○大石委員  親元にパラサイトしている独身者というのは、結婚が遅いとか、結婚しにくいという 研究があって、一橋の北村先生などがなさっている研究の成果があります。そして、就 業状況が悪い非正規雇用だったり、フリーター的な仕事をしている人は、親と同居しや すいという傾向があります。きちんとした仕事に就けない、それで親と同居する、同居 すると晩婚化していくというルートが、何かできつつあるような状況です。いま小杉委 員が言われたように、若年就業対策は少子化対策としても役に立つのだよ、というとこ ろは見ていただければと思います。 ○小野座長  人口の議論になりましたが、労働力率についてはいかがでしょうか。ここに事務局が 作成したいろいろな資料がありますので、それに関連してご議論がありましたらお願い します。 ○島田委員  仕事の需要構造の話ですが、資料No.6の5頁「定年による離職者の推移」で、定年 を理由とする離職者数は40万人ぐらいです。これが1つの手掛りです。もう1つは、資 料No.7の24頁、地域別の失業率の動向です。この2つを念頭に置いて問題提起をさせ ていただきます。  これから5年、10年後の日本の労働市場、あるいは就業構造を地域別にみたときに、 いまご議論になっている少子化の問題も影響が出てくるわけですが、東京は高齢化はす るけれども人口流入はあると思います。地域でも沖縄など人口が増えている所はありま すが、トータルの人口ですと、若年者はどんどん減っていますし、トータルの人口はも うすぐ減り出すわけで、10年ぐらい経つと、四国、北陸、九州、東北、北海道でどうい うことが起きるか。東京など大消費地は人口があまり減らないとすると、トータル人口 が減っていくということは、そういう地域はものすごく減ります。そういう所の経済循 環はどういうことになるのかをよく見ておいたほうがいいと思います。  いま政策的に見ても、三位一体だとかいろいろなことを言っていますが、今まで地方 は大体、交付税、補助金、公共工事、工場誘致で食べていたわけですが、これからはこ の4つは全然利かなくなります。三位一体と言ってもパイが減ってくるわけですから、 あまりいいことはないはずです。補助金も減るし、これから減税はあり得ないし、工場 も来ない。人口はどんどん減って経済循環は停滞して、循環がどこかで壊れていきま す。これは悪循環に入るおそれがあります。そういう地域の分布を我々の研究でよく見 ておく必要があり、これは私の事実展開についての1つの見方です。  それではどう対応したらいいのかについて一言申し上げたいと思います。それは健全 な意味での人口の再配分だろうと思います。一昔前もさんざんその議論があって、つま り、地域が良くなっていくために雇用の機会をつくらなければいけない、雇用の機会が ないから人は来ないという議論がずっとありました。今は大変面白いことが起きている と思います。それは何かと言うと、高齢社会なので、実は雇用機会をつくらなくても人 は誘引できる可能性があるのです。それが定年退職者の問題です。ここでは離職者が40 万人ですが、是非、今回の研究会で数字を揃えていただきたいのは、定年退職者そのも のは何人いるのかということです。離職統計だとこうなりますが、人口と雇用の関係か らみると、だいぶ多いだろうと思います。  大体、首都圏や大都市圏に比例的に集中していると思います。その人たちの中で、老 後の生活を首都圏その他でやるのがハッピーな人は結構ですが、本当はハッピーではな いと。もっといい所があれば行きたいとか、ただアクセスがない、情報がない、何も知 らない、受入れがないということで動かない、という人たちがいるとしたら、そういう 人たちが生活条件の良い、全国各地の地域に定年後戻っていただく。Uターンである必 要は全くなく、またIターンの必要もなくて、自ら自分の故郷を探すということだと思 います。要するに、工場誘致ではなく、これからは人材誘致の時代だと思うのです。  実際、全国各地の地方自治体でかなりその動きが起き出していて、何とかいい人たち に来ていただきましょうと。  観光戦略は実はそれとつながっています。観光は一過性で来てもらっても意味がな い。最近の観光は長時間いて、参加していろいろなものを学ぶというようなパターンに なってきていますが、その先には、ここに住んでしまおうかというのがあります。た だ、1人で住むのは非常に寂しいので、何十人か何百人かがまとまって。そうするとす ぐ地方自治体が、住宅団地をつくらないとというようなことを考えるのです。  住宅はいま全国に5,300万戸あって、家庭は4,600万ぐらいしかないので、数百万戸住 宅は余っています。全国各地で空家だらけです。住宅団地をつくるというような発想は 一切なしにして、空いている所を人々の好みに合わせて、どんどん紹介していくこと が、これから重要になることを地方自治体は気がつきはじめているのです。いい意味で の人口の再配分といいますか、そういうのが1つ大きな可能性だろうと思います。  この辺は地方自治体はかなり関心を持っていますが、きちんとしたデータがあったほ うがいいと思うのです。つまり、定年退職者はどのぐらいいるのか。これは特別調査で もしなければならないのでしょうけれども、本当は生活条件の良い所に安く家とかが買 えたら行きたいのだと。  例えば首都圏の埼玉や神奈川でマンションを買って老後というと5,000万から6,000万 しますが、北海道や九州は2,000万以下で、完全に3分の1ぐらいです。しかも空気も いいし、水もきれいだし、食べ物もあるし。ただ、排他的だから近寄れない、情報がな い、アクセスがないとみんな言っているわけです。それは地方自治体が非常に怠けてい る面もあるのです、外の人が来るのは嫌だというね。外の人が来るのが嫌だと言ってい る自治体は先はないのですよ、はっきり言うと。ですけれど、だんだん気がついている 所はありますから、これから何年か経つと、その問題は非常に大きい。  かつて、戦後の工業化のときに工場がどんどん首都圏や工業地帯に集中したのと同じ ような意味で、高齢化社会で、今度は健康を求めて逆流していくのを推進することがあ ってもいいのではないか。そうなると、逆に首都圏の生活もしやすくなる。多分、その ような可能性が非常に大きい可能性として残された選択肢かなという感じがしていま す。こういったことも視野にあってもいいのではないかということです。  そういう方々が行きますとサービス業が出てくるわけです。本屋もレストランもタク シー会社も必要だし、地元の若い人たちに雇用機会が出てきますから、一言で言えばそ ういう生活立国ですね、そういう時代がきているのではないか。まさに、高齢成熟社会 だからこそ、そういう可能性が出てきているのではないかという気がいたします。それ のベイシックなデータを少し揃えていただくことがあっていいのではないかと思いま す。 ○小野座長  地域の問題は大切な問題の1つとして扱いますので、それの関連で今のようなことを 考えていただければということですね。 ○島田委員  そうです。定年退職者の数をいろいろな角度から、しっかり調べるのは重要ではない かと思います。 ○小野座長  定年による離職者は雇用動向調査から出したものですか。 ○中井雇用政策課長補佐  はい。 ○小野座長  あれは規模が5人以上でしたね。 ○中井雇用政策課長補佐  そうです。 ○小野座長  就調からアプローチできますか。 ○玄田委員  労働力調査から5歳刻みでできます。 ○小野座長  離職した理由のところをつかんでいけばできるわけですね。 ○玄田委員  そうです。 ○小野座長  それは地域別には難しいですかね、就調とか労調では。 ○玄田委員  難しいですね。 ○小野座長  島田委員のご意見は、そこの地域でやる必要はないわけですね。東京で辞めた人が、 再配分ですからね。 ○島田委員  まず最初に、いろいろなデータソースから、定年を迎える人の数を調べてもらいたい わけです。それは小野座長が言われるように、年齢ですから就調もできます。これは国 調もできます。だから、何も離職なんて言わなくていいのです。離職者からみるのは労 調ですが、国勢調査、就調からは60歳ないし65歳、年齢階層で有業者が何歳になってい るかだけでもいいです。そこからいちばん大きな数がみえるはずです。  政策的に関心があるのは、その人たちが今まで住んでいた所にずっと住むのか、それ とも、本当はもっと良い所があれば行きたいと思っているのか。実は、私も国の「観光 戦略推進委員会」をやっていますが、日本の観光は滅茶苦茶です。展望としては、これ からは参加型の長期ステイで、おじいちゃん、おばあちゃんが住んでしまおうという感 じのほうが将来の姿になっていくと思います。しかし、これは相当時間がかかると思い ます。地方自治体が自覚を徐々に始めているところですが、そういったものをもう少し エンカレッジできるようにということです。  かつての、所得があって現役の人たちがどう分布しているかというのではなく、高齢 社会・成熟社会で、とりあえず最初の仕事は終わったが、その人たちがどんな生活で、 どこに住みたいと思っているのか。この人たちの比重が非常に増えてきますから、この 人たちがどこへどう配分されて何をするかで、国の経済活動が決まってくる面があると 思うので、そういう一連のデータを揃えたほうがいいのではないかということです。 ○玄田委員  島田委員が地域と言われましたが、もちろん高齢者や定年退職者の問題も重要だと思 います。一方、先ほど座長がおっしゃった「労働力率」ということを考えると、地域の 中で若い人たちが働くこと自体を諦めてしまっていて、働くことに希望を持てなくなっ ている人が、ものすごくいま増えています。いろいろな家庭の事情で都会には出て行け ないのだけれど、地元にはやりたい仕事がないから諦めてしまっている。だから、労働 力率にもならない人たちがものすごくいる。  それをどうするかというときに、昨日たまたま全国のジョブ・カフェの現場監督たち と飲んでいたら、いま利益相反問題が非常に大きくなっていて、つまりジョブ・カフェ で何とか就業者になってほしいと応援するわけです。そのときに、いろいろな意味で目 標をつくらないといけないというので、やはり数値目標が実際あるわけです。これだけ 労働力率になることを促進するのはとても大事ですが、数値目標をあまりやりすぎてし まうと、結局、非常に困難な状況にある人に時間をかけている余裕がないわけですか ら、カウンセリングもそうですし、十分な対応ができなくて、比較的労働力率になりや すい人に特化する形にならざるを得ないのです。気持としては、いちばん苦しい人にも きちんと対応しなければいけないという部分、もともとカウンセリングやキャリア・カ ウンセリングに情熱を燃やしている人たちは、そういう苦しんでいる、労働力率になら ない子たちを応援したいという気持と、一方では、少しでも多く労働力率を高めるとい う利益は相反するので、ここのところをきちんと目配りして政策なり評価をしないと、 最終的に労働力率を高めるために努力をしている人たちとか、その政策というのが、結 局いいとこ取りのようになってしまうと大変だから。  先ほどミクロのような話を少し強調しすぎましたが、これから実際に労働力率を高め るための政策をするときに、多分、至るところで、いま言ったような利益相反の問題 や、場合によっては、いいとこ取りのような問題が起こり得る可能性があると思って政 策を評価したり、実際に現場を見たほうがいいような気がします。数値目標はとても大 事ですが、裏側で数値目標をやりすぎることにより、こぼれ落ちる部分があることに、 どれだけ目配りをするかが、特に地域の若年問題をみるときに大事だと思いました。 ○島田委員  いまの話の継続ですが、地域の高等学校卒業生の就職が大問題になっていて、3分の 1も就職できないという地域がずいぶんあります。1つは、いまそのヒアリングをして いますが、非常に工夫をこらして頑張っている民間の団体がいくつかあって、そういう 所へ県が委託をして成果が上がったという例もあります。そういうのがいろいろありま すので、研究すると何かヒントがあるかもしれない。ジョブ・カフェも非常に重要な役 割です。それはある意味でジョブ・マッチングを、もっと効果的にやるという話だと思 います。  それで先ほどの話につなげたいのですが、地域に就業機会をつくることが大変重要で す。就業機会をどうつくるかについては先ほど力説したつもりですが、公共工事は減る 方向しかないわけですし、補助金も減る以外にないわけです。また、減税の余地もな い。就業機会は、お金ではつくれないので、仕事がなければ無理です。それで仕事とい うのは産業しかないのです。だから産業をつくらなければいけない。それで産業は何が あるかというと、工場誘致が無理だということになると、それで私は先ほどから人材の 移動を言っているのです。つまり、そこそこ所得のある、あるいは資産のある方だと、 数百人や数千人の単位でアメニティのいい所へ皆さんが行く。アメニティのいい所とい うと、すぐ地方は「団地」と考えるが、これは絶対駄目です。全国各地空家だらけだと いうことをよく自覚することです。  本当に情報やアクセスやプログラムなどは欠けているし、また、そういう発想が非常 に薄いです。そういう考え方を持っている自治体はごくわずかです。これからはそれし かないだろうと私は思っています。そういう形で生活者は、アメニティのいい所へだん だんと移る。要するに、戦後の東京一極集中の逆流です。高齢化社会だからできること であって、それを展開していくと、かなり、サービス業の就業機会が出てきます。ガソ リンスタンドや本屋やレストランも出てくる。そういう展望が、これからの労働力政策 というよりは、もうちょっと広いのでしょうけれども。  労働力政策なんて言ってられない時代がきている、ということをはっきり私は言って おきたいのです。つまり、住宅、交通、生活、医療、介護とかというのはトータルで、 基本的に地域の若者たちに仕事を提供する機会になるのだということだと思うのです。 機会があるのに就業しない人もいるわけで、ここのところはカウンセリングの問題でし ょうし、非常にミクロの、コストと時間のかかる問題です。これは社会的・心理学的な 問題ですからやらなければいけないのですが、その前に需要構造を変えていくというこ とは、やはり高齢社会を踏まえて考えなければいけないところにきているだろうと思い ます。 ○山川委員  先ほどの少子化といっても、今のお話とも関連していると思いますが、共働きで保育 所を探すのが大変で、それでお金もかかる、介護についても同じという状況があるよう な気がします。何か対人サービスのようなものが非常に必要とされている状況自体はた くさんあると思いますが、その割には、そんなに進んでいないということがあって、こ れは雇用政策というより産業政策なのかもしれないのですけれども、ある意味で、産業 の中で需要と供給のミスマッチがあるような気がします。なぜそういったビジネスがう まくいかないのかというと、人材面もあるのかもしれませんけれども。  そういった対人サービスのコストを低減させるとか、あるいは、うまい方法のマッチ ングとかをしていることがあれば産業も盛んになって、場合によっては、労働力率を高 めるのに多少役に立つのかもしれないという気がしますので、産業政策という観点から 少子高齢化を考えることもできるのかなと思います。 ○玄田委員  私もそれは大賛成です。多分、これからの有望産業はコミュニケーション産業です。 人と人をつなぐことが産業になる。今ものすごくコミュニケーション・スキルが強調さ れて、それがなければ生きていけないと言われる時代の中で、自分はできない、いっぱ いいっぱいだと思う人がこんなに増えています。それから高齢者も、何が少子高齢化で 怖いかというと、孤立化で、人とつながれない、自分だけ生きている、誰ともつながり がないという、この孤独感はない。  もっと言えば、専業主婦が何で専業主婦が嫌かと言うと、今まで一生懸命バリバリ働 いていろいろな人と出会いがあったのが、急に家庭だけで、向かい合うのが子供だけに なると、ものすごく孤立感があって、やはり人とつながりたいという気持がものすごく ある。職業紹介でも、結局はいまコミュニケーション・スキルをかき立てたり応援した りしているわけで、コミュニケーション産業を育成するほうが本当はいいのではないか と思っています。そこにはいろいろなものが入り得て、いまコミュニケーション産業で 明確なのは一部のNPOです。  有料職業紹介を本気で考えていかないと、結局コミュニケーションをさせるきっかけ を作っているわけですから、あの部分でもっと産業として、心の病の人もそうだけれ ど、人とつながりたいという気持がありながら少子高齢化とか、自己責任を強調される 中で、コミュニケーションができなくて苦しいという人がこれだけいるということは、 本当はそれはビジネスとして成り立つはずで、これからいろいろな意味で孤立化を避け ていくためには、対人でもいいし、サービス業でもいいのですが、もっと新しい概念と してコミュニケーション産業とか、コミュニテイ産業をつくるのだと謳ってもいいよう な気がいたします。 ○大橋委員  いまの島田委員、玄田委員、山川委員の話は、需要があって人が来るというのではな く、人が集まる所に需要ができるという、供給が需要をつくり出すという話です。それ は確かに今まで見過ごされてきた話で、これから特に地域の問題を考えるときには大変 重要になると思います。  ただ、地域のアメニティということを言われたのですが、例えば、私たちが定年退職 後、どこか地方に行くと。どの地方がいいかなといったときに、やはり東京を念頭に置 いて考えてしまいます。東京に近い所がいいと。例えば八ヶ岳だと東京まで1時間で来 られる。逆に四国だと大変になる。その辺もうまく考えないと。  一方、人の集まる所に需要ができるというところまできて、そこから一歩どうするか というのは大変重要な問題で、これから考えていくテーマだと思っています。  最初に小野座長が言われたように、次男、3男がいいことをすると。 ○小野座長  そうでもないですか。 ○大橋委員  今までの話は、そうでもないという話なのですが、フラフラするというね。だから次 男、3男にも期待できないし、アメニティという話になると、本当の地方はもっと大変 だろうと思います。 ○島田委員  そういうコメントはあります。これは価値観の分布の問題で、男性はかなりアメニテ ィのいい地方で、温泉があって、海釣りができると行きたいと思うでしょうが、大半の 女性は嫌だと、あなた勝手に行きなさいということになると思います。わざとジョーク っぽく言ったのですが、ことほどさように人の価値観は違いますから、いま大橋委員が 言ったとおりだと思います。  にもかかわらず、先ほどの子育て問題もそうですが、そんな可能性があるのだったら やりたいと思っている人に、アクセス、情報、あるいはコミュニケーションかもしれま せんが、そういうものがあるかというと、実はものすごくないのです。私は、地域はも のすごく不勉強だったし努力していないと思います。というのは、先ほど言った4つの 勝利の方程式、つまり、交付金、減税、補助金、工場誘致、何かあったら陳情、これで 足りているのです。都会の人に来ていただきましょうかというと、地域はそういう発想 は全くない。もっとひどいのは、すぐよそ者扱いをします。「あの嫁は先祖が江戸時代 に来たからよそ者だ」と。では、いつ来ればよそ者ではないのだというと、平家時代だ と。馬鹿なと思うのですが、そういう所がすごく多いです。  東京に集まるというのは戦後ずっと大運動でしたから起きてしまいましたが、実は全 国各地で、新しい意味での人材誘致、定住計画は重要なのだ、残された非常に数少ない 戦略の1つなのだという考え方は出てきています。それと高齢者は、比較的アメニティ がいい、施設介護がいいというのがあって、いま全国各地ラッシュでそういう施設が出 来ていて、地方自治体は悲鳴を上げています。そんなことをしたら介護保険の負担がか かってたまらないと。それについて送り出しの地域から負担してもらいましょうよとい うことになって、これはものすごい重要な考え方だと思います。そうすると、全国各地 は心置きなく高齢者を受け入れられるわけです。  でも、本当のことを言うと、高齢者を受け入れるというのは、やはり負担が大きいの です。本当は、定年退職を機会にしてアメニティのいい所で、東京近辺や首都圏などで 家をつくらないで、そちらのほうを計画していくというのを誘引するような努力を地方 自治体は持たなければいけない。かつての工場誘致と同じようなインテンシティでやら なければいけないのですが、そういう動きが出てきておりますので、そういう人たちに 対して、基礎データがこの委員会から出ているというのはやっていただきたいと思いま す。 ○山川委員  直接関係あるかどうかは分からないのですが、住みやすい都市ということで、日本で どのくらいそういう統計、あるいはアンケートでも意識調査でもいいのですが、やって いるのかなと今の話を聞いて思いました。アメリカはわりとそういうことをやってい て、例えば1位がポートランドだとかシアトルだとかという話が出てきます。最近の『 ビジネスウイーク』を読むと、キャリアウーマンにとってアイオワ州デモワンという都 市が非常に住みやすい都市として人気を集めております。それは仕事の機会もあります し、住みやすいというようなことです。東京しか日本人は頭にないのですが、住みやす い都市、あるいは働きやすい都市という情報提供があればと思います。 ○島田委員  何回か総合的な調査はやっていると思います。たしか内閣府がやっていると思いま す。一度出してもらうといいですね。 ○青木職業安定局長  前に経済企画庁が出していましたね。 ○島田委員  経済企画庁でしたかね、出していましたですね。 ○青木職業安定局長  埼玉県知事が、ずいぶん怒ったなんていうことがありましたが。 ○島田委員  埼玉県は低かったですからね。 ○小野座長  学者が個人でやっているケースもありますね。富山県とか何か、あちらのほうがえら くランクが高いとか、そういうことをやっていますね。 ○島田委員  住宅が広いですからね。いま函館市にお願いしているのですが、東京にあるものと函 館にあるものと、100のプラス・マイナスという表を作ってもらっています。 ○青木職業安定局長  12、3年前に、この研究会で「地域雇用対策」の議論をしていただいて、そのときに 当時の政令指定都市だけで、アンケートをとって比べていただいたことがあります。 ○島田委員  参考になるデータはありますよね。 ○青木職業安定局長  それがいま残っているかどうか。私の記憶では、仙台と福岡が上位で、北九州と川崎 がずいぶん下のほうだったと思います。 ○小杉委員  誰にとっての住みやすさというのがありますので、ここで新たに作ったほうがいいと 思います。働く人にとって住みやすいというのではなくて、定年後に住みやすいという ことが条件になってくるのですから。 ○小野座長  どういう視点からという問題が。 ○島田委員  言われるとおりです。それが戦略的な意図です。つまり、雇用機会がなくても、まず 人が行って生活してくれる。そうすると雇用機会がそこから出てくるのです。それが狙 いです。今までの調査は、現役の人たちにとって住みやすいかどうかです。現役以降の 高齢者の人口がどんどん増えてくるわけですから、その方々が持っている資産や活力 を、存分に活用するのは重要だと思います。 ○小野座長  そういうことでランクを付けるような調査をやったとしても、府県別で足りますか。 ○島田委員  全然足りません。これは町です。だから、我々がやることではないのです。地方自治 体がやればいいのです。よそ者が来るのは嫌だなんて言っている所は、はっきり言って 自業自得なのです。 ○小杉委員  募集すればいいわけですよね。こういう項目でトップテンを募ります、是非、手を挙 げてくださいという感じで応募をかければいいのですよね。 ○島田委員  北海道の伊達市では面白いことが起きたのです。そういう考え方を伊達市長も商工会 議所も持っていて、わりと高級な住宅を、ちょうどいい住宅地の所にたくさんつくった のです。あそこは雪が降らないですから、もともと定年退職者は札幌で働いて伊達市で 住もうということになっているのですが、それを道外とか、カナダと比較したけれどこ ちらがいい、という人がだんだん出てきて、人口が1万何千人しかない町ですが、ネッ トでこの3年間に500何十人も住みついたのです。そのお蔭で、2年前の地価調査です が、2カ所でやったのですけれども、全国住宅地地価調査で伊達がトップと3番目を取 っています。すごく珍しい。これは1つの例ですが、そういう時代になってきたのでは ないかと思うのです。この問題について言いすぎましたが、データが整備されたらいい だろうということです。 ○小野座長  事務局でたくさん資料を作っていただきましたが、これは今後いろいろ議論するとき のもとになるデータです。また、必要があれば事務局にお願いして出していただくわけ ですが、この資料について、何か質問等ありますか。  私は2つあります。資料No.6の6頁、「労働力人口の動向」ということで、対策が 有る場合と無い場合で、300万ぐらい労働力人口が違ってきますよということですが、 何もやらなかった場合というのはいいのですが、「各種対策を講じる」と書いてありま すが、具体的にはどのようなことをやった場合でしょうか。 ○中井雇用政策課長補佐  前回の推計に基づいて「各種対策を講じた場合」という表現にしましたが、実際は労 働力率関数に反映されることにより、労働力率が今後上がることを見越すということで す。これは雇用対策ということもあります。全体的に経済雇用情勢が良くなるというこ とで、失業率が下がることにより、労働力率が上がるという話もあります。女性につい て言えば、子育て支援の関係で保育所が充実した場合も変数に入れています。  あるいは、多様な就業形態ということですが、短時間雇用者比率が上昇することが、 特に女性の労働力率にプラスに働いているということがありますので、そういったもの を政策的な効果として入れて、将来を見通し、それに基づく推計です。諸々が関数の中 に入っています。 ○小野座長  まさに各種対策になるわけですね。 ○島田委員  諸々が入ると、諸々なので理解がしにくいのです。ですから、問題提起をしておきた いのです。需要不足のお蔭で労働力率が上がらないという面もありますし、玄田委員が ずっとやっておられる心理的障害というか、これは構造的ミスマッチなのでしょうね。 そういう問題があります。また、情報がないためにという摩擦的なミスマッチがありま す。これは失業率に跳ね返ると言われておりますが、その原点のところ、つまり供給側 の要因としては労働力率そのものに影響するので、諸々が全部入ると、何をやっていい か分からないので、少し要因分解みたいなことを。この変数だけだと要因分解はできな いのですが、何か少し工夫して、もう少し一声、こういうことの手掛りが見えるような 分析をやっていただいたほうがいいかなと思います。 ○中井雇用政策課長補佐  今後どういうふうに見通すかというのは、可能な限り、この場でお示しできればと考 えております。 ○島田委員  変数の方程式でやるのは伝統的な方法論ですが、もう少し工夫して何かやりません か。つまり、需要不足でどうだとか、フリーターはどう見るかとか、一本の方程式にす ると乗らないのだけれども、何か少し。この枚数はものすごく多いのだけれども、こう いう議論のためには情報がもう少し開発されてもいいような気がいたします。 ○小野座長  何かモデルを作るときに、それが入れられればいちばんいいのですが。入れられない 部分があるのです。 ○島田委員  いま関連の補足データをどう理解するかというのが、すごく重要な時代にきていると 思うのです。現役世代中心の時代から、かなりの部分が定年退職だし、若年者のかなり の部分が、これまでのようにまともに就職のチャネルに入っていかないということがは っきりしているわけでしょう。大変大きな変化の時代にきていますから、これまでの方 法論で分析するといっても、政策への手掛りは得にくいと思います。だから、この辺を もう少しやりましょうよ。 ○中井雇用政策課長補佐  最低限、個々のものについては、可能な限りどう考えるかというのは整理をしたいと 思っております。その先については、ここで検討していただきたいと思います。 ○島田委員  委員の方々はみんな意見を持っていますから、委員会もいいのですが、個別にお願い して、アイディアをもらうとか。次回は、こんなにいろいろな情報を開発してくれた と。大変だけれども、やりませんか。 ○中井雇用政策課長補佐  検討させていただきます。 ○島田委員  私も応援いたしますので。 ○勝田雇用政策課長  よろしくお願いいたします。 ○小野座長  もう1つの質問は、資料No.6の42頁の「無業者の増加」です。これは最近になって 急に増えています。2001年から2002年にかけて増えていますが、どう理解すればよろし いのでしょうか。 ○小杉委員  なぜこの年というのは分かりません。労働力調査だとこうだけど、例えば国勢調査を 使うと、1995年と2000年でも増えています。タイミングが違ったりしていて、入ってい ないという人なんで、残余的な概念なので非常に説明が難しいのです。よく聞かれるの は、ずっと長い間就職できなかった、就職が難しいことがあって、特に国勢調査で1歳 刻みでやると19歳と23歳が多いということがあります。就職環境の悪いことの結果、就 職活動をしなくなった人たちが出ているのではないか、というような説明はするのです が、なぜこの年というのは分かりません。 ○小野座長  労調でやればこうなるということですね。 ○小杉委員  はい。 ○島田委員  仕事と子育ての関係についてですが、本当は子供を産んで育てたいのだが、仕事との 関係、労働時間との関係、労働環境の関係で、この辺でやめておこうかとか、そもそも 子供を産まないということがずいぶんあるような気がするのです。そういうことが分か るようなデータは、専門の皆さんは何かあるのですか。 ○大石委員  うちの研究所の調査でも調べてはおります。「なぜ希望するだけの子供を持たないの ですか」と言われたときに、「仕事を続けるのが難しいから」といった理由の人もいま す。でも、やはり圧倒的に多いのは「子供にはお金がかかるから」という答えです。 ○島田委員  ヨーロッパのことなどを考えると、税制とか、そこのところは本当に議論したほうが いいと思います。厚生労働省がそういうことを言い出すと、また財務がごちゃごちゃ言 いますけれども、それはいいのではないかと思いますね。私は児童手当は意味がないと 思っていますが、むしろ税制ではないか。 ○小杉委員  私は教育費がすごくかかるというのは問題ではないかと思っています。 ○島田委員  教育の仕方ですよね。教育費と一言で言っても、東京のような所でお受験というと目 の玉が飛び出ますが、全国各地はどうなのでしょうか。 ○小杉委員  日本の場合は、いま高等教育を卒業しないとなかなか就業しにくい時代になっていま すが、高等教育はほとんど家計でやる。日本の場合は、公的な部分が非常に小さくなっ ていますので、高等教育政策はこれでいいのかという問題がすごくあると思います。 ○島田委員  地方の人が子供を東京の大学に入れると、生活費の半分ぐらいをその子供に費やさざ るを得ないという実態があるのです。それを考えるとね。でも、子供を産もうか、育て ようかといっているときに、そこまで考えるでしょうか。 ○小杉委員  考えると思います。 ○島田委員  長期プランニングですね。 ○玄田委員  データについて今後のお願いです。最近の厚生労働行政で注目を浴びた数字は、1つ は、最近の『労働経済白書』の52万人の無業者や207万人のフリーター、それと、例の 「753転職」です。やはり特別集計をして、日ごろ見えないものをパッと簡単に数値 を示すのは非常にインパクトがあったと思いますので、ここでも将来の動向を見るとき に、特別集計をしていただきたい。753転職が何で分かったかというと、「雇用保険 業務統計」という日本で唯一とは言いませんが、非常に包括的で追跡可能なパネルデー タです。これを使って何か社会全体に問題提起をしないといけないのではないかという 思いは非常にあります。  例えば、いますぐ思うのは、こちらの関連資料にはありますが、自営業や創業した人 が、その後うまくいかなくなったときにどうなったとか、そういうことが分からない と、チャレンジしてもその後は何となく駄目みたいだということになると苦しいし、状 況次第ではうまくいっているとか、非常に積極的にチャレンジした人がどうなっていく のか、どうすればいいのかということは追跡しないと分からないので、いま私が理解し ている中で唯一そういうのができるのは「雇用保険事業統計」です。やはり労働市場の 動向を明るく見通すためには、自分でチャレンジした人が成功していって、そこに雇用 機会も生まれるというのは、10年後も20年後も大きいと思います。  「雇用保険事業統計」が無理ならば言いませんが、追跡調査をして今後の見通しを見 ないと、机上の空論のようにならないかなという気持はあります。そういう意味では、 就調の2002年は使えますし、そういう形で特別集計のようなことを考えていただいて、 まずインパクトのあるものを。いろいろな角度から新しく見るときの情報提供を少し考 えていただければと思います。 ○島田委員  いま言われたことは大変大切なので補足いたします。「雇用保険事業統計」は、雇用 保険の受給資格のある人で、それをもらっている人はいいのですが。長期失業者の中 で、それが切れて、何をやっているのか分からないのです。このことは労調では特別集 計しないと出てこないのですが、二度ばかりやっていただいたのですね。あれは立ち切 れてしまいましたね。 ○青木職業安定局長  していませんね。 ○島田委員  面倒臭いという話になるのでしょうね。労働市場のいちばんフリンジのところでどう なっているのかよく分からないというのは、これまでの統計では出てこないですから、 きちんとやったほうがいいのですが、この研究会は予算はあるのですか。 ○青木職業安定局長  よく話を伺って、次回ご報告できるようにしてください。 ○東労働政策担当参事官  はい。 ○島田委員  そういうことをやる予算はあるのですか。 ○青木職業安定局長  ないようです。 ○島田委員  ないけれども、あれはやったのですよね。 ○青木職業安定局長  統計局は制度的に無理があるとか、何かいろいろ言っていたのですよね。 ○島田委員  はい、言っていました。 ○青木職業安定局長  それで、かなり準備作業も重ねてやっておりましたので、その辺はどうなっている か。 ○島田委員  報告してもらいたいですね。あのとき、厚生労働省から要望がないのだと言ってきた のですよ。統計の項目を組むときに、厚生労働省から要望があって、それは審議会を通 って、2年後ぐらいに調査は変わることがあるのだってね。2年経ったら日本は終わる ぞ、と私は脅かしたのですが、そうしたら統計局長が、やりますと言ってやったので す。あれは予算の問題ではないですよね。 ○青木職業安定局長  むしろシステムです。ある意味で、従来の規制ですね。 ○島田委員  それから、審議会で合意が得られていないので、そのようなことはできないとか。こ ういう所で問題提起をして合意を得て、厚生労働省としてはやってもらいたいのだ、と いうようなことを言うのは非常に大切なのですね ○小野座長  それは大切です。以前より、いろいろな個表は使いにくくなっていますね。 ○島田委員  いま、目的外使用はうるさくなっていますね。 ○小野座長  特に労調などはね。個人の名前を隠せばほとんど分からないでしょう、個人情報は。 ○大石委員  今日のテーマは「全体の経済社会の展望」ということですが、いま1つ大きな問題と なっているのは、所得格差や、不平等度というのか、それが拡大しているのではないか と言われております。多くは高齢化のせいだと一応言われておりますが、いろいろな部 分で格差の拡大や階層化が現われつつあるように思いますので、この研究会の中で、ど のようにその部分を反映させたらよろしいか、少し議論したらいいと思います。 ○小野座長  事務局は、いまの格差や所得の不平等という問題については、どのようなお考えです か。中に含めることは可能ですか。 ○勝田雇用政策課長  この研究会でやっていただくことについて、ここまでですという限界はありません。 一度、その資料を整えたいと思います。次回以降、必要に応じてご議論いただきたいと 思います。 ○島田委員  外国人労働者問題ですが、これは産業界を中心にして、もうその時が来たという議論 がずっとあります。私も前はさんざんそれをやって、本も書いておりますので、両方見 ているつもりですが、確かに、そのニーズを非常に強く感じている面は否定できませ ん。製造業は海外移転ということがありますのでまだいいのですが、介護などのサービ ス業は国内でやらなければいけません。そのサービスワーカーが足りないので外国人と いうのが1つあります。これは今度のFTA問題でも、タイもフィリピンも、そうでな ければ嫌だとまで言っているわけです。ある意味では需要と供給はマッチしているので すが、日本としての受止め方が整理されていません。しかし、この問題は避けて通れな いと思います。  1つは、フリーターがあって、失業者があって、地域は疲弊していて雇用機会がない と言っているときに、なぜ新しい労働力なのだという議論は当然あるわけです。他方、 人口はどんどん減っていくので、このぐらいのレイバーインプットだと、長期的には日 本の経済成長率は維持できないという両面があるわけです。一見矛盾しているようにみ えますが、実は矛盾はしていないのです。その辺をきちんと整理をして、この委員会 で、その点について見識を出す。労働市場から見るとこうだ、というのがあったほうが いいと思います。これは資料にも出ていますが、考え方をきちんと整理したほうがいい と思います。 ○小杉委員  今回は出ませんでしたが、「職業能力の向上」という。供給面の問題としては、今ま での職業能力形成プロセスがずいぶん変わっていると思いますので、その辺についても きちんと議論しておく必要があると思います。能力をどう形成するかということです。 学校と企業との関係はずいぶん変わってきますので。 ○大橋委員  最初に厚労省の方が、もうすべてがフルタイムで働く時代は終わったという話があっ て、あとでフリーターがどうのこうのという話があって、そうするとこの2つの議論が どうやって折り合いをつけるのか。島田委員は、外国人労働者については矛盾しないと 言われたのですが、フリーターの問題とフルタイム、就業形態の多様化の問題と、どう 折り合いをつけるのかが1つのテーマではないかと思っているのです。 ○島田委員  一見矛盾しそうなのが多いですので、きちんと整理しないといけませんね。 ○小野座長  いろいろご意見ありがとうございました。初回はこのようなところですが、事務局、 よろしいでしょうか。 ○勝田雇用政策課長  いろいろありがとうございました。資料のご要請等もありましたので、出来る限り私 どもやらせていただきたいと思っております。今回、全体の経済・社会の姿ということ で言えば、ご議論し尽くされていない部分も残っているような気もいたしますので、ま た次回、今回の続きと、労働力供給・需要の関係の基本的な部分のシナリオ等について のご議論をしていただければと思います。島田委員のお話を含めて、個々の委員の方々 のご意見等を伺い、できるだけ次回に備えて準備を進めたいと思います。 ○島田委員  久し振りの研究会ですから頑張ってください。 ○小野座長  それでは本日の議論はこれで終わります。基本は資料No.4を中心に、今後議論して いきますが、それに応じて必要な追加等はあると思います。事務局は、本日の議論を反 映して、いろいろ検討事項を修正していただければと思います。  次回以降について、事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。 ○中井雇用政策課長補佐  次回は11月19日(金)午前9時30分〜11時30分まで、本日と同じ共用第7会議室で開 催することとしておりますので、よろしくお願いいたします。また、今後の開催につい ても、委員の方々は忙しい方ばかりですので、なるべく早めに日程調整をさせていただ ければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○小野座長  それでは、以上で終わります。どうもご苦労さまでした。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係 TEL:03−5253−1111(内線:5732) FAX:03−3502−2278