04/10/27 医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会第7回議事録     第7回医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会                    日時 平成16年10月27日(水)                       18:00〜                    場所 厚生労働省共用第8会議室 ○樋口座長  では、まだお二方くらい委員が遅れておられるようですが、定刻になりましたので、 ただいまから第7回医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会を開催い たしたいと思います。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中ご出席いただきまし て、まことにありがとうございます。まず、委員の出欠状況の確認から、事務局の方、 お願いします。 ○事務局(総務課長補佐)  本日は、大山委員、高橋委員から欠席の連絡をいただいております。また、山本委員 からは10分程度遅れるという連絡をいただいております。寺野委員は、間もなくいらっ しゃるかと思います。以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。それでは、早速議事に入りたいと思いますが、前回の議事 録が出ているようです。今日は久方ぶりなのですが、前回の検討会で「ガイドライン (案)」について議論をいただきました。いくつか詰めなければいけない点があって、 少し時間をいただいたわけであります。その間、メール等で事務局あてにいろいろなご 意見をいただいておりまして、これから説明があると思いますが、本日配られている資 料は、一応各委員からいただいた意見をすべて反映させた形で作成してもらった修正案 です。これについて議論をしていただき、可能であれば本日でガイドライン(案)の取 りまとめを行いたいと思っておりますので、できればご協力をお願いいたしたいと思い ます。10日ほど前の日本経済新聞の見出しに医療のガイドラインが遅れるという記事も 出ていて、私が見たところでは叱咤激励されているような感じがいたしましたが、とも かく今日は一生懸命頑張ろうということです。  ここで資料の説明に入っていただきますが、修正箇所を中心に事務局から説明してい ただき、サッと全体を見ていただこうと思っておりますので、内容の確認等、あるいは まだ問題点が残っているかどうかご意見をいただきたいと思います。それでは、早速配 付資料について事務局から確認をいただくとともに、資料の説明を伺いたいと思います。 ○事務局(企画官)  配付資料ですが、議事次第の一枚紙と座席表のほかに、本日お配りしておりますガイ ドラインを綺麗に打ったものである資料1と、前回からの修正点がわかるもので見え消 しになっている資料2です。そのほかに、委員の皆様には前回の議事録を未定稿でお配 りしておりますので、ご確認いただければと思っております。それでは、資料の説明に 入らせていただきます。もし、途中で乱丁や落丁を見つけられましたら、適宜ご指摘い ただければと思います。  まず、資料2を使って前回からの修正点等を中心にご説明します。最初に、目次で申 しますと「I本指針の趣旨、目的、基本的考え方」の部分、「II用語の定義等」の部分ま で、続けてご説明したいと思います。「本指針の趣旨、目的、基本的考え方」の1頁目 については、前回から変更はありません。2頁目は、細かい修正がいくつかあります。 上のほうの3番の最後ですが、「法令上の義務等」と、「等」を入れています。些細な 話ですが、法令上の義務といいますと法的な義務と努力義務もあるものですから、 「等」を入れました。4番で「カルテ」を「診療録」に直しておりますのは、全体で 「カルテ」と「診療録」が混在していたものですから、診療録に統一したという趣旨で す。  3頁ですが、6番の3つ目のパラグラフの「苦情処理の体制等」を、用語を適正な表 現にとの前回のご意見を踏まえまして、「苦情への対応等」と変えております。7番の 下から3行目の「苦情処理等の受付」を「苦情への対応等」に変更しているのも同趣旨 です。また、「苦情の窓口を設置」と書いておりましたが、前回のこの会議の場で、専 門の窓口がいるのか、小規模事業者はどうするのかとのご指摘がありまして、機能があ ればいいと趣旨を明確にしたものです。  8番の「遺族への診療情報の提供の取扱い」の4頁ですが、診療情報の提供等に関す る指針との関係で、それを「参考に」と書いてありましたが、それに則って、従ってや るべきだとご意見がありましたので、「従って」に変えております。9番と10番はだい ぶ技術的なことになりますが、9番につきましては、個人情報が研究に活用される場合 の取扱いです。「治験等における取扱いについては、本指針のほか、薬事法及び〜省令 の規定や」という所です。治験の場合は厚生省令に従い、そうでない場合省令は当たり ませんが、ここを直しましたのは、そういった治験に至らないそれ以外の研究の場合に も本指針や関係団体等が定めるガイドラインに従うことが必要ですが、別表5に掲げる 指針も必要になってくるであろうと、そういった趣旨の修正をしたところです。  10番につきましては、「〜という場合」というタイトルを9番の表現に揃え「診療に 活用する場合の取扱い」と直しました。1行目で「本人の体質」を「遺伝子・染色体」 とより丁寧に書いてあり、また3行目で、その情報が生涯変化しないことが遺伝の場合 重要であること、4行目では、苦痛だけでなく被害も出るであろうということ。これは 専門の方から別途でご意見を頂戴したものですから、それを踏まえて反映した形で修正 しました。  5頁の12番の修正は、元の文章は「医療・介護関係の団体等は認定個人情報保護団体 として」ですが、医療・介護関係の団体が皆認定団体になるかのように誤解を招くおそ れがあるだろうと、「認定団体となった関係の団体は」と文章を直したところです。以 上がIです。  次に6頁、IIの用語の定義等です。1番は、個人情報の所で「また」以下にパラグラ フを1つ追加しております。ここは前回の検討会で、診療録に記載されている情報の中 の患者の個人データはまさに患者のものですが、診療録に記載された判断や評価は患者 本人の個人情報であるとともに、医師個人の情報でもあるのではないか、そのような二 面性があるのではないかという議論がありまして、そこはそうであるとこの会議の場で も明確になったわけです。そこで、診療録全体が患者個人に関する情報に当たるが、併 せて医師個人に関する情報にも当たる部分があることをここに明記しました。この辺り の整理はどうなるのかは、前回この場でも議論がありましたが、いろいろなところから 問合せがあり、ここは明確にしておいたほうがいいだろうと考えた次第です。  なお、これに関しても前回の議論、この場では少なかったかもしれませんが、患者の ほうから開示の請求があった場合に、医師の個人情報でもあることをもって、そこは自 分の情報だから開示できません、と言うことができるのではないかと思われてもいけな いので、30頁の法第25条の「本人からの求めによる保有個人データの開示」の部分です が、法の規定により遵守すべき事項等ということで、1パラグラフ追加しております。 「II1.に記したとおり、例えば診療録の情報の中には、患者の保有個人データであって 診察した医師の保有個人データでもあるという二面性を持つ部分が含まれるものの、そ もそも診療録全体が患者の保有個人データであることから、患者本人から開示の求めが ある場合に、その二面性があることを理由に全部又は一部を開示しないことはできな い」とここで誤解のないように書いています。ただし別の話として、それを開示するこ とによって本人又は第三者の権利や利益を損なうおそれがある場合、あるいは診療情報 提供ガイドラインで言えば、患者の心身に悪影響を及ぼすおそれがある場合は、全部又 は一部を開示しないということはありますが、二面性があることを理由に開示の原則が 妨げられることはないことを、併せて追加・記載しました。  6頁の定義の1番には、診療録の言葉を直したものがあります。中ほどの(例)に 「医療・介護関係法令において、医療・介護関係事業者に作成・保存が義務づけられて いる記録例は別表1参照」とあります。38〜43頁にかけて、さまざまな医療機関等ある いは介護関係事業者等々が、それぞれの法令でどのような記録の作成・保存が義務づけ られているかの別表を作っておりますが、この間担当部局で精査をしまして、事項の追 加や条項の記載の誤り等がありましたので、その訂正をしています。そこの説明は省略 いたします。  2番の「個人情報の匿名化」では、7頁にかかったところで修正をしております。匿 名化をどの程度する必要があるのか、匿名化する処理を行ったとしても、その事業者内 で得られるほかの情報と照合すれば匿名化ではなくなるのではないか、その場合どの程 度やればいいのかという議論があるわけです。3行目にありますように、個人情報保護 法では「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別すること ができるのであれば個人情報に含まれる」となっておりますので、そういったことを明 確に明記する。また前回から残している文章、「当該情報の利用目的や利用者等を勘案 した」のところがキーフレーズになるわけですが、それによってどの程度匿名化をして 使うことになるかは、匿名化の程度も勘案して本人の同意を得ることも合わせながら、 個別の具体的なケースに応じた形での匿名化をしていく必要があるだろう。しかし、基 本的には、他の情報と容易に照合することで特定の個人を識別できるものであれば個人 情報に当たる匿名化にはなっていないということで、文章の修正をしました。  7頁の3番ですが、個人情報保護法の言葉である「保有個人データ」について、この ガイドライン上で何回か出てくるのですが、定義を置いておりませんでしたので、定義 を書きました。基本的には法第2条第5項、あるいは政令の第3条、第4条に書いてあ るのをそのまま書き写した内容を5行にわたり書いています。その定義の下で、「保有 個人情報データ」の「情報」を削っていますが、これは法令上の言葉でない「個人情報 データ」を何箇所か使っていたので、法令用語の「個人データ」に修正した次第です。  8頁の最後ですが、なお書きの所で、判断能力に疑義がある場合、意識不明の患者と 同様の対応を行うとともに、意識が回復してもまだ判断能力が回復していない段階では、 説明・同意はなかなかできませんので、前回は適切な表現がなかったのですが、「判断 能力の回復にあわせて」と修正しました。IIまでは以上です。 ○樋口座長  以上、IとIIまで説明をいただきましたが、この部分について何かご意見がおありでし ょうか。 ○高津委員  細かいことですが、6頁の中段辺りに「医療機関等における個人情報の例」とあり、 その例の中に看護記録とありますが、私たちの業界でも歯科衛生士業務記録が法律的に 義務づけられていますし、後ろのほうの関連項目にも、それと同じように医療機関で保 存が義務づけられている歯科技工指示書、こういうものは入れておいたほうがいいかな と思いますので、その2つをご検討願います。 ○寺野委員  よくわからないのですが、6頁のIIの1ですが、「二面性を持っている部分もあるこ とに留意が必要である」と書きながら、30頁において、「二面性があることを理由に全 部又は一部を開示しないことはできない」とあります。その整合性はその場で議論が終 わっていなかったのかもしれませんが、説明がよくわからなかったのですが。 ○樋口座長  宇賀委員のほうからお願いします。 ○宇賀委員  診療録は評価も含めて患者個人のデータとなるわけですが、他面で、医師が自分で評 価をしたということは、その医師自身のデータである側面も持っているので、二面性が あるわけです。では、もし患者から自分の診療録の開示請求があったときに、医師が評 価の部分は自分のデータでもあるのだから、そこは出さないと言えるかというと、個人 情報保護法で開示等の求めについての権利を与えているわけです。それについては、第 25条ではそこに書いてある不開示情報に該当する場合以外は開示を義務づけていますの で、医師のほうで自分の個人データだからと開示を拒否できない。しかし、個人情報保 護法第25条第1項の各号の不開示事由に該当すれば、それは拒否できるという意味です。 ○寺野委員  留意というのはそのような意味なのですか。前回出てないので、申し訳ありません。 ○楠本委員  同じ所の話なのですが、診療情報のガイドラインについて、基本指針では、「従う」 となり、30頁の開示のところでは「配慮する必要がある」となっておりまして、ここの 使い分けをもう一度教えていただきたいと思います。4頁と5頁では、指針の取扱いに 定められている取扱いに従って、となっていまして、開示のほうでは配慮するという トーンになっています。この記載のところを教えていただきたい。もう一つは、先ほど 診療録については医師の判断とありましたが、診療録には看護記録も含まれておりまし て、看護者も判断をし、というところがありますので、「医師等」と、「等」を入れて いただけたらと、些細なことですがお願いしたいと思います。その2点です。 ○樋口座長  どんどん先へいってしまうので、先ほどの高津委員のご意見についてはいかがでしょ うか。 ○事務局(企画官)  整理して入れさせていただきたいと思います。 ○樋口座長  いまの楠本委員からの「従う」と「配慮する必要がある」の点はいかがですか。 ○事務局(企画官)  4、5頁につきましてはものの考え方で、基本的な考え方の部分ですから、インフ ォームド・コンセントの理念も踏まえて行われる診療情報提供の場面は、そちらでやる のですよ、という意味で「従う」にしたわけですが、当然のことながら個人情報保護法 が排除されているわけではないわけです。個人情報保護法が決めている内容と診療情報 提供ガイドラインが決めている内容には矛盾がありませんので「従う」にしているので すが、開示の場面は、30頁は個人情報保護法第25条の解説ですから、「配慮」という言 葉で書いています。基本的な考え方で「従う」としておりますので、そこの考えが見合 うわけではないのですが、個人情報保護法第25条の解説の意味合いで書いている関係上 「配慮」を残しているのが原案です。 ○樋口座長  30頁の4行目の「配慮」は、アフターリスクについて、やはり個々の事例への適応の 場面を考えていて、診療情報の提供等に関する指針を見ると、実際に○か×になってい ないのです。そういう意味では、「従う」と書いても結局個々の事情を勘案して判断す る必要があることになるので、この程度の表現で中身は同じことになるのではないかと 思っておりますが、この部分について言えばそうなると思います。 ○楠本委員  指針の扱いとアフターリスクの扱いも、実はよくわからなかったものですから。では、 いまの解釈で。 ○事務局(企画官)  最後にありました「医師等」にしたほうが望ましいのではないかの部分ですが、診療 録にはさまざまな情報が書かれるものですから、「等」を入れるか入れないか、診療録 以外のこともあるなどいろいろ考えたのです。私ども事務局の趣旨としては、例えば一 つの例として、診療録には医師の情報もあることを例示として書いていて、それ以外の こともあるだろうと、「例えば」から4行の間は1つの例だけ書いています。従っての 所は、「診療録等」「患者等」「医師等」という頭の整理でこの文書を作ったのですが、 よろしいでしょうか。 ○楠本委員  読みが足りなかったようで、失礼しました。 ○大道委員  6頁のIIの1、先ほど寺尾委員が指摘された点です。前回あるいはそれ以前の検討会 で若干この件について指摘をさせていただいた立場から申し上げます。診療録の情報と いうものが、患者さんご自身の個人情報があることはもちろんでありますけれども、併 せて医師等医療従事者側の判断又は評価について、一方でそれが医師の個人情報である という二面性を明確にされたことは、評価できると思います。評価できるというか、あ る意味ではありがたいことと思います。  その文言の後に、「留意が必要である」とあります。この留意は一体どういう意味で すかと問いかけられる可能性が強いのですが、ここはちょっと「留意が必要である」と いう表限がよろしいかどうか分かりません。医師あるいは医療を提供する側からすると、 先ほど来出ている、診療情報提供等のガイドラインの中で非開示、つまり患者さんが求 めてもこれを開示しないところの事由が2つあり、以下は繰り返しやったことです。患 者さんの心身の状況に悪い影響があること等について、診療する側あるいは医療提供側 であるとすれば開示しないことができる。この項で運用していく、とも読めるわけです。 それなりの連動あるいは両ガイドラインとの関係づけが明確になったということなので す。  一点、この留意の中に、実は医師又は医療提供側の判断又は評価の情報そのものが、 患者さん個人にとってみると、非開示の事由になるところを含んでいるものが現実多い わけです。そういった中で留意する必要があるというのは、つまりそこの部分にこそ要 望があっても、あるいは請求があっても、なかなか開示できないということがある、こ ういう状況に留意するという意味あいで、たぶん医療提供者側がこれを取ると思います。 そこの所に、医師又は医療提供者側の判断又は評価の情報こそが、請求に対してなかな か対応できない、これは患者さんのためにならない、あるいは適切な医療を行うために 決して良い結果をもたらさないだろうという判断で、ここの部分が留意されるというよ うなことに、どうも受け止められる可能性が強い。  私は、さっきも申しましたように、これで大変ありがたい、よろしいかとも思うので す。現実の問題として、まさにそこに該当する部分の記載又は記述、あるいは個人情報 としての部分、患者さんの個人情報、総体の中のその部分はお示しすることによって、 いま申し上げたことが起こるのですが、そうでない部分は、むしろしっかりお示したほ うがいいだろうという判断があり得るのです。  そのときに、一部又は全部を開示することができる。こういうふうな流れになってき たときに、一部又は全部のときの「一部」のところが、医療現場でまだ決してある種の 前例というか、方式が定まっていないわけです。従って、判断又は評価のところで大変 つらいところがあるので、お示しできませんということで、全体をお示しできないよう な状況がいままでの流れなのです。今回のこのガイドラインでは、一部又は全体のとこ ろの「部分」の運用を示すことがなかなか難しいので、触れられておりません。これは 今後、医療を提供する側の医療現場で考えていかなければならない問題であるなと、改 めていま思っています。そういう受け止め方をしています。  反対側に、初めて明示的にお示しいただいた3の項、保有個人データの定義がありま す。その中の(2)「6カ月以内に消去することとなるものは除く」、保有個人データとい うには当たらないというこの書き込みは、同じく医療を提供する側からすると、実は急 速にかなり重い意味を持ってきます。6カ月以内に消去するというようなことであるな らば、従来診療録等に記載していたことでも、保有個人データにはならないという受け 止めをされることにたぶんなります。  非常に煩雑かつ複雑な医療行為の中で、実態としては様々な記録が起こります。業務 上便利なために、現場では様々なメモやある種の記録が残るわけです。実際にはそれは 患者さんの本来的な診療録、あるいは医療記録として永久的に保管・保存するものでは ないという趣旨の位置づけというのが、このガイドラインでかなり急速に鮮明になって くる可能性があります。6カ月ということが法律本則にあるのであれば、これはこれで たぶん活きることになるのだと思います。  今後医療における記録の運用の中で、いま大変難しい医療における個人情報のあり方 を含めると、この辺りが大変重要な意味あいというか、医療現場にとって重く受け止め られてくる可能性がある。現にこれまでも、いわゆる電子カルテ等で一時的な情報の入 力ということがなされており、一定期間が経ったときにはこれを消去をするというのは、 実際に行われている。このことが場合によっては今後、医療の現場での記録の中で、こ このガイドラインのこの部分を捉えることが、いま申し上げたような意味あいで、非常 に新しい視点として浮き上がってくるという印象を、いま改めて強くしています。決し て反対とか賛成とかそういうことではなく、こういうことであるならば、そういう受け 止め方をしたいという趣旨の私の意見です。以上です。 ○樋口座長  いまの大道委員のご意見、いずれも重要な点だと思います。その第1点は、先ほど事 務局からも説明があったように、30頁にあるように、その二面性はあるけれども、開示 との関係では、これは評価部分だからとか、あるいは医師の情報だからという理由で、 開示請求を拒むことはできないということを、やはりもう1回明らかにしておきたいと 思っております。 ○大道委員  本来この法律の趣旨はそういうことですから、そのとおりでよろしいのだと思います。 ここの所は、前回宇賀委員から繰り返しのご説明もあります。そこはそれで、医療側は 受け止めるべきだというのが、私の意見です。  ただ問題は、再三申し上げるように、先行した形になっている診療情報提供等の、あ のガイドラインの中では、非開示の事由がすでにあるわけです。それに準じてではなく、 それに従ってと、こう書いてあるわけですから、あの部分は厳然としてもちろん活きて いるわけです。開き示すことができないということもありますよ、ということで言って いるのです。それは医師の個人情報だからということで、開き示すことをしないという 意味ではないのです。患者さんと医療者との間で、こういうことを開き示すと、患者さ んのためにならない。そういうことで開き示さないのですよというのが、診療情報提供 等のガイドラインで示されているわけです。  ただ、これは運用がなかなか難しいところがあるのは事実です。だからそのところは、 今回のこの一連の議論で一定程度クリアーになったのです。医師の側、あるいは医療従 事者の側で判断又は評価したものには、医師の側あるいは医療従事者の側にコントロー ル権があるという考え方は、間違いなく医療側にいままでございました。だからこそ、 その部分は我々というか、医療提供側の個人情報と言うかどうかは別として、我々の判 断、我々の評価なのだから、これは患者さんご自身が見せろと請求されても、いきなり 見せることはないという考え方は、結構先行した考え方の中にあるのです。  ところが、繰り返しのご説明で、宇賀委員もご指摘になったとおり、今回のわが国の 個人情報保護法というのはそういうことではないのだという法律本則が出来上がって、 国民の合意の下で法が成立しているわけです。そこは、わが国のこういう法体系として 受け止めざるを得ないのではないでしょうか。そういう意味で受け止めているのです。 相変わらず問題が残ることは事実なのです。  そういう中で、先ほどの「6カ月以内に消去する」という辺りに、ほかとの関係が全 くないとは言えないのかなという気はします。例えば、あまり細かいことをどこまで申 し上げていいか分かりませんが、いま医療安全上のインシデントレポートという情報の 流れが非常に急速で、もう際どいところで実害はなかったけれども、危うく誤った薬を 患者さんに投与してしまうのではないかという、いわゆるニアミスを二度と起こさない ために、インシデントレポートを院内で組織的に集約をし、様々な医療安全上の対策を 構じています。この種の情報の扱いというのは、従来から微妙な問題でした。医療記録 の中に位置づけられるべきなのでしょうか、あるいはそうではないのでしょうか。本来 的な目的が、事故防止のためなのだから、本来の事故防止の目的が達せられたら、消去 という言い方が適当かどうか分かりませんが、要は済んだ情報として脇に置く。あえて 捨てるとまでは言わなくてもいいのですが、従来から患者さんの請求には対応しなくて もいいのではないかというような考え方で、運用されてきているところがあるのです。  ただ、これは医療安全上のインシデントレポートというわかりやすい引用をしました が、ほかにも様々な医療の現場での、先ほど申し上げたような情報のやりとりの中で、 当面はどうしても必要だが医療の流れが決まる、あるいは患者さんに対して一定の安定 した状態と医療の成果が得られるというのであれば、この情報はもはや記録として留め なくていいという判断が、この定義を出すとあり得るのです。この辺りは大変難しい問 題を持っているということを重々わかった上で、この視点というのは非常に重要な問題 になると、医療の現場では受け止めるでしょう。  さっきの話の裏返しですが、法律本則に書いてあるのを引用されたということですの で、包括法としての個人情報保護法と、医療という非常に特異な分野での個人情報の保 護との関係を整合させようと思えば、こうならざるを得ないのかなという思いで、いま 我々、医療の側にいる立場からは受け止められます。おそらくパブリックコメントの段 階でも、ここら辺りをめぐってかなりの意見が出てくるかとは思います。委員の立場で は、最終場面ですからしっかり申し上げたいという意味で、こういうことで受け止めら れるのではないでしょうかと、一応ご意見として申し上げたい。 ○樋口座長  ありがとうございました。ちょっと私も、これは全く余計なことなのかもしれません が、初めのほうの、「医師の情報でもある」の部分では、いま日本では直ちに想定して いるのかどうかというのは、1つ問題ですが、私もたまたま最近こういう経験をしまし た。  世界医師会へ行ってみましたら、私の隣りはカナダからの代表の方でした。カナダで 問題になっているうちの1つに、ある特定の医者がどういう薬の処方せんをどんどん出 しているかという情報を、例えば製薬会社の人が集めたがっている。まさに処方せんは 診療記録ですから、その中で一定の価値がもちろんあってということなのですが、これ はやはり医師の情報でもある。これをどういう形で保護するのか。本人が、どんどんど うぞと言うのなら構わないと思いますが、そういう問題が割に大きな問題として出てき ているという話を聞きました。付随的にはそういう話もあるのかなと。  「6カ月以内に消去する」の部分、重要なご指摘だと思います。これに、何か付随的 なコメントはありますか。 ○事務局(企画官)  まさにいま大道先生からありました。先ほど私も申しましたが、個人情報保護法にお いての保有個人データ、この法律の対象とする開示との対象となるものについて、法律 では1年以内の政令に定める期間以内に消去するものは除く。政令でといっても、1年 では長すぎるということなのか、6カ月となっています。この個人情報保護法の法体系 でそうなっているということで、医療・介護の場合にそれを更に変えるとかいうことで もないだろうということで、今回はここに。もともと何も書いてなくても、法律上そう なっているわけです。ガイドラインに定義を書くに当たり、そのまま法律上のものを持 ってきたということです。 ○樋口座長  ほかに、このIとIIの部分について何かご意見がおありですか。何もないようですので、 次のIIIに移ります。 ○事務局(企画官)  それではIIIの1〜5までを説明いたします。まず、IIIのタイトルですが、従来「責 務」と書いていたのですが、まさにこれは法律上の義務が書いてある所であるにもかか わらず、責務はちょっと弱いのではなかろうか。といって、「努力すべき事項」もあり ますので、「義務等」と表現を直した所です。  10頁の(2)(1)の中ほど、「事業税による質問」も、「個人の事業税に係る質問」と 表現の適正化を図りました。11頁は、「その他の事項等」にあった3行を、「法の規定 により遵守すべき事項」に移しました。前回、26頁でこれは法律に基づく話だから、書 く場所が違うだろうというご指摘がありましたが、ここにも同じような趣旨のものがあ りましたので、場所を変えました。  11頁「その他の事項」に、「法令に基づく場合」の後に「等」、あと「当該法令等」 と、「等」を入れました。要は、利用目的の制限の例外に該当するとして、例外になる 場合でも出す。利用目的以外のものまで出すということは、その法令に基づく場合、11 頁でいえば(1)だけに該当するのではなく、(2)、(3)にも必要最少限で開示提供なりをす る。利用するというのは当然なので、「等」を入れました。  12頁、13頁について修正点はございません。14頁、15頁についても修正はありません。 あと16頁の(1)では、漢字を間違えていたので直しました。17頁の(7)では、「個人情報 データ」という不適切な用語から、「情報」を取りました。18頁、19頁の辺りは、前回 もあまり議論のなかった所で、特に修正はございません。  20頁以降の個人データの第三者提供の部分です。まず簡単なものから、21頁の「学校 からの照会」で、「先生」を「教職員」と直し、表現の適正化を図りました。  22頁の第三者提供の部分で、前回は黙示の同意という話で、要は第三者提供を行う場 合には同意を得る必要があるというのは、原則的な考え方なわけですが、その同意をど ういう形で取ることが必要なのか。特に、例えば医師賠償責任保険のような場面でどう 考えるかという議論が前回ありました。  そこについての整理ですが、まず(3)をご覧ください。「本人の同意が得られてい ると考えられる場合」 に、かなり文章を書き込みました。医療機関における本来の利用 目的という部分に係るわけですが、医療機関の受付等で診療を希望する患者は、その傷 病を希望する患者は、傷病の回復を目的としている一方、医療機関等はその目的として、 適切な医療が提供できるように、医療機関として取り組むとともに、必要に応じて他の 医療機関と連携を図ったり、専門とする他の医療機関等の医師等に指導・助言を求める ことも、日常的に行われる。この場面では、第三者提供が起きています。  また、その費用を公的医療保険で請求する場合と、その傷病の回復と、そのものでな いけれども医療の提携では、必要な医療目的として提供する場合もある。この文書上は 書いてませんが、医療機関を経営していく中で、何らかの不慮の事故等に対して賠償責 任保険というものに入っていることもある。従って、第三者の情報の提供のうち、患者 の傷病の回復等を含めた患者への医療の提供に必要であり、個人情報の利用目的として 院内掲示等に明示されている場合は、原則として黙示による同意が得られているものと 考えられる。  これに関係しては、44頁別表2「医療・介護関係事業者の通常の業務で想定される利 用目的」です。「病院」を「医療機関等」に直しているのは、薬局などほかの機関とも 読めるように表現を直しました。この表の44頁は医療機関等、45頁では介護関係の事業 者の場合です。この上のボックスの下のほうに、「医師賠償責任保険などに係る医療に 関する専門の団体、保険会社等への相談又は届出等」と記載しています。  こういったことについても、医療機関の通常の業務で想定される利用目的であるとい うことです。このようなことに使うという第三者は、真ん中より少し下の「他の事業者 等への情報提供を伴う事例」のグループにありますが、どのように利用するのかを、院 内掲示の形で掲示をしておき、それにより原則として黙示の同意が得られるという整理 をしたところです。  22頁に戻ります。こうした形状は、第三者提供をして利用をするということも含め、 こういうふうに使うということを表示をしておくということです。なお書きはとばしま す。これについての解説は23頁に縷々書きました。もちろん23頁にあるように、(1)は、 いまの繰り返しのような話です。  (2)では、もちろん同意しがたいものがある場合には、そこについて明確な同意を得る よう、医療機関に求めるという形で、院内掲示されていることによって、こういうふう に使うのか。しかし、それはそういうふうに使ってほしくないというようなことは、ち ゃんと言うことになっています。その意思表示はいつでも変更できるということが、書 いてあります。  その上で、前回議論になりました医師賠償責任保険の関係で、相談なり、保険会社へ の届出等といったことを出来るのかという場面がございました。金融庁のガイドライン のほうでは、保険会社を含めた金融機関というのは、その本人の同意なく、その保険医 療等に関する情報を取り扱ってはならないとなっているわけですが、そことの関係がど うなるかということがございます。  これについては、まずは基本的には、第三者への提供ですから、同意を得ていただく というのが基本で、それは院内掲示によって同意を得ていただくということです。ただ し、その上で同意が得られないような場合、あるいはこの部分については使ってほしく ないという、拒否されたというようなケースが生じ得るわけです。  その場合の解釈として、21頁の下のほうになりますが、「第三者提供の例外」という ことで、「次に掲げる場合については、本人の同意を得る必要はない」というものの(2) に、「人の生命、身体、財産の保護のために必要がある場合であって云々」がございま す。この「人」というのは、個人も法人も含みます。財産の保護というのがございます ので、その医療機関たる法人、あるいは医師たる個人の財産の保護のために必要がある 場合には、その本人の同意を得ることが困難な場合であれば、第三者提供の同意を得る 例外になるということです。  例えば賠償責任保険を使わないことによって、その医療機関が倒産をしてしまうよう なケースとか、様々ななケースがあるわけですが、この「人の財産の保護のために必要 がある場合」という所に、その賠償責任保険のための利用というのは当たり得る。ただ し、そこは個別具体的なケースで、本人の個人情報の保護ということと、この「人の財 産の保護」というもののバランスをどう考えるかというので、個別具体ケースになるわ けです。ただ、その保険を利用するというのが、人の財産の保護のために必要な場合と いうのに当たることがある。すべての場合が当たるとは言えませんが、という解釈を前 提としています。  22頁の例の下に、なお書きで書いてあります。22頁の例には、同意を得ることが困難 なときのケースで、意識不明云々と、物理的なケースを例示しています。それ以外にも、 本人の同意を得ることが困難であるときには、本人に同意を求めても同意しない場合と か、あるいはその時点の両者の関係上、そうした手続を経るまでもなく、同意を得るこ とができないというような場合も、「同意を得ることは困難であるとき」に当たる。解 釈として、当たるということです。  財産の保護のために必要である場合については、個別具体的なケースです。すべてが というわけではないですが、本人の同意を得ることが困難であるときの解釈は、一義的 にこうなるということで、記載しています。  金融庁のガイドラインのほうは、法律に違反した者あるいは違反しているおそれのあ るものを受け取らない、取り扱わないということですので、まず同意が得られていれば 良いですし、同意が得られてなくても、その同意を得ることが困難であるということで 第三者提供の例外になる場合に当たるものとして出てくれば、それは別に違法なものを 受け取ることではないので、ガイドラインへの抵触には当たらない、生じないというよ うな整理になろうかと考えています。ちょっと長くなりましたが、医師賠償責任保険の 関係は以上です。  23頁に戻ります。一番下の2行は、46頁の別表3に書いたので、重複するので落とし ました。24頁(3)は、健診等のデータの取扱いの関係で、表現を正確に記しました。25頁 (5)は、先ほど匿名化の所を頭のほうでも修正しましたが、ちょっと表現に練られて いない部分について、表現を適切なものに修正しました。最後26頁です。先ほど11頁で 申しましたが、同意の取消しがあった場合というのは、「法の規定により遵守すべき事 項」ということで、取り扱いを「その他」ではなく、上に場所を変えました。とりあえ ず5まで、以上です。 ○樋口座長  いくつかこうやって消された部分とか、付け加えられている部分がありますが、いか がでしょうか。 ○寺野委員  これも議論されたことなのでしょうけれど、22頁の(3)が非常に問題です。44頁の 別表2というのは、例示と考えるのか、もう制限されたものか。利用目的というのはこ れに限るということ、つまり院内掲示すればいいということになりますと、いくらでも 範囲が広がって、ああ掲示しておけばいいのかという話になってしまうのです。その場 合の利用目的とか、そういうことを掲示する内容は、この44頁別表2に限定すると、そ ういう趣旨に解するのですね。そのほかにどういうものがあるか、ちょっといま思い出 せないのですが。 ○事務局(企画官)  一応、通常の利用目的として想定されるものを書いたつもりです。もしこういうのも あるのではないかというのがあれば、これまでもかなり議論があって、どんどん付け加 えてきて今に至っているので、何かお気づきの点がありましたら、またご指摘いただけ ればと思います。現時点では一応ほかにもあるという前提ではなく、これが通常の利用 目的として想定されるものと考えています。 ○寺野委員  例えば、院内掲示するような場合というのは、44頁のいちばん下に「症例研究」とあ るのですが、症例研究だけではなくほかの研究もあります。ただ、これは法第50条の例 外になっていますから、それはそれでいいのですが、患者さんから見れば、何かやはり 問題になるのかなと感じるのではないかと思うのです。そういう例示というものと、法 の中にあるものとの関係、やはりそれも繰り返し出しておいたほうがいいのかなという 気もしないではないですけどね。例外として、例えば、もう研究面等についてはこの法 の例外ですね。 ○事務局(企画官)  学術研究を目的とする団体の活動ですね。法第50条の関係をおっしゃっているかと思 いますけれども。 ○寺野委員  この問題も、例示だと何か加えていいのかなと。もしあれば、加えてもいい。いま思 い出せないのですが、いまだにそういうものなのかなと。だから、この黙示による同意 ということで、もうほとんど空洞化するのでは、非常に困るわけです。どうなのでしょ うか。 ○樋口座長  寺野先生がおっしゃるとおりですね。こういう形で出て、この院内掲示は誰も見ない。 何か問題があったときには、あそこに掲示してあったでしょう。こういうのは、我々の 本意では全然ないですね。特に、先生が最初に指摘した、他の事業者への情報提供を伴 う事例というのは、明らかに普通の言葉で言えば、第三者提供ということになりますか ら、1つひとつ同意を取ってというのが原則になるはずです。この22頁で典型的に出て くるようなものは、例として44頁にも掲げた外部の医師等の意見・助言を求めるのに、 次に患者さんが通院してくるときまで待って、「これから相談してみますが、いいでし ょうか」と言う必要が本当にあるのだろうかというもので、それはちょっと馬鹿げてい ますね。  ですから一定の医療については、そういう形で形式的に法律を、もちろん法律を守る ことは当り前なのですけれども、医療に特化したような何らかの配慮をする必要があり ますので、別表2のような所へこういうことを入れておいたらどうかということなので す。これはやはり限定ではないと思うのです。これ以外は駄目ですよというガイドライ ンではなくて、やはり個々の医療機関も様々ですので、これは一般的なガイドラインで すから、個々の医療機関の性格に、あるいは医療機関の種類に応じて、この後、こうい う事例もやはり書いておいたほうがいいのではないかと思うようなものがあれば、それ は含まれていくと思うのです。しかし、寺野先生がおっしゃるように、ここを抜け道に して何でもというのはやはりおかしい。ここにあるのは、いかにもこれは仕方ないなと いうものしか、我々は入れてないつもりだと思いますが、それでよろしいですか。 ○事務局(企画官)  そういう整理で結構です。あと念のため、13頁に、この利用目的の公表のことで、注 意書きをたくさん書いています。「その他の事項」で、2つ目のポツです。「その掲示 に当たっては、受付の近くに当該内容を説明した表示を行い、初回の患者・利用者等に 対しては受付時、利用開始時において当該掲示については注意を促す」。それだけでは なく、手引き等、お渡しするものにも出来るだけ書く。あるいは最初はばたばたしてい るので、また落ち着いたときに改めて説明するとか、そういった形で、掲示してあった でしょうという話にならないように、いろいろ気を使ってくださいということを、ここ に書いています。 ○樋口座長  そうですね。23頁の真ん中の(2)ですが、これは先ほども説明があったのですが、この 「黙示の同意」というのは、本当に先生がおっしゃるように危険なのです。その中でも、 院内掲示等においては同意しがたいものがある場合は、ちゃんと言うことができるので すよという話と、異議を申し出るということ。ウでも、一旦同意したからといっても、 あきらめることはない。そこまでやはりちゃんと患者さんに分かってもらうというか。  しかし、逆のことを言いますと、やはり今回の医療情報の関係では、患者の方々にも、 医療情報が自分の診療を直接の目的とする場合以外にもこういう形で現実に利用されて いて、しかもそれは正当なものがたくさんあるという、その情報の価値というのですか。 それを理解していただくということは必要なのです。  だからこうやって院内掲示を小さくしておいて、隠そうというのではなく、むしろ積 極的にこういう形で、何といいますか。皆、地球の一員みたいな話ですが、結局のとこ ろは社会の一員であって、こういうことでやっているんですよということを分かってい ただくことが、大事だと思うのです。 ○寺野委員  それは結構なのですけど、難しいところで、そうかなと思っただけなのです。 ○樋口座長  5までの点で、ほかにはいかがでしょうか。また後で、返ってくることはできるとい うことにして、次に移っていただけますか。 ○事務局(企画官)  では27頁からご説明いたします。  27頁の下のほう、「第18条第4項第1号から第3号まで」というのは、条文の引用を 正確にしたところです。4行目のエで、「苦情処理の申出先等」とあるのは、ここはア 〜エで、上の法律の第24条、政令第5条の関係をまとめたのですが、全部を書いてはな いので、「等」を付けました。28頁、29頁は修正はございません。30頁は、先ほど6頁 との関係で説明した部分です。31頁、32頁、33頁までは変更ございません。  34頁、前回ちょっと議論になった所です。「データ量が膨大であるなど、全体の開示 等が困難又は非効率な場合、その本人が開示等を求める情報の範囲を特定できるよう、 医療・介護関係側が配慮する」という所が、どうも医師が裁量的に何か制限できるよう に読めるおそれがあるということでしたので、データ量が膨大で、コピーすれば何十万 も係るようなケースと、この部分の求めているところが利便性のこととより分かりやす いような修文をしたつもりです。  35頁の最後の代理人からの求めについても、個人情報保護法のルール上、今回対象に なっているわけです。そうした場合に、どの範囲で本人のその情報を開示できる代理権 を持っているのかをちゃんと確認をしてから、また確認をして本人の意思を踏まえて対 応ということで、その確認をしてから代理人への開示することを明確にしたところです。 36頁は修正ございません。37頁は修正ございませんが、指針の見直しと事例集の作成と いうことを書いて、この事例集の作成についてはガイドラインに書ききれていない部分 で、こういうものがもっとあったほうがわかりやすいということを今後事例集として出 していくために、いろいろとお知恵をお貸しいただければと思います。以上です。 ○樋口座長  それでは27頁のIIIの6からIVまでについて、いかがでしょうか。 ○辻本委員  前回苦情処理について意見を申し上げたのですが、ここでもまた2カ所に「処理」と いう言葉がそのまま使われています。27頁の下から5行目の「苦情処理の申出先等につ いて」と、30頁のいちばん下の行の「苦情処理の体制についても」の「処理」を、「対 応」という言葉に置き換えていただけたらと思います。よろしくお願いします。 ○樋口座長  これは見落としですね。ありがとうございます。 ○事務局(企画官)  落としておりました。あとは36頁のタイトルがまさに「苦情処理」で、法律の引用の 部分はしょうがないのですが、下の文章は直させていただきたいと思います。申し訳ご ざいません。 ○樋口座長  ほかにいかがでしょうか。 ○寺野委員  34頁が、いちばん表現の難しいところだったのだろうと思います。33の(1)は難し いのでしょうが、先ほどのように生存説に従って考えるしかないだろう。苦労されてい るのがよくわかります。 ○樋口座長  駆け足で全体を見て、あとはこれに資料と別表が付いていますが、別表等は細かな条 文等になりますから、直ちにということはなかなか難しいかもしれません。全体的に見 て改めて何かご指摘があれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○高津委員  細かいところですが9頁の(1)の2行目。1行目からの「個人情報取得」の「取 得」という言葉と、14頁の下の「法の規定により遵守すべき事項等」の5行目あたりに 「収集」という言葉の2通りが出ていますが、収集と取得は何か特別に意味があって使 われていますか。普通は「情報の収集」と言っていて、「情報の取得」とあまり言いま せんが。 ○事務局(企画官)  これは、基本的には取得で統一するのが望ましいことだと思いますので、そういう形 で整理をしたいと思います。「その他の事項」の1行目には「入手」という言葉を使っ ていますが、法律の第17条のいちばん上に個人情報取得という言葉になっていますので、 それで統一をしたいと思います。 ○樋口座長  法律のほうは「取得」となっていますね。OECDの原則のときは収集制限の原則と いう訳が当てられて、できる限り違うことを意味しているのかと疑われるようでは困り ます。そこのところはなんとかなれば。これは前に私が紹介したように、今後検討会の 段取りというか、これがいわば第一ステージである。パブリックコメントに出せるよう な叩き台を我々がまず作るということです。このあとパブリックコメントをお願いして、 広くどんなご意見が出てくるかという形のものがあってこれが第二ステージで、それを 踏まえて第三ステージで最終的にガイドラインを確定させよう。しかし時間的に非常に 限られているので、今日いちばん初めにそういう意味では私は言い過ぎたのかもしれま せんが、できれば早いうちにというか今日のうちにガイドラインを全部確定してという ことを申し上げて、いまのところは大方これでいいかなという感触を得ているのですが、 事務的にはどういう形にしたらいいですか。いくつかの細かな修正はありましたが、大 体はこうだということになると文言の修正を含めて、この場で全部確定させてというほ うがよろしいですか。 ○事務局(企画官)  整理しますと、ただいまこの時間帯にいただいた話は歯科衛生士、歯科技工士の関係 の言葉を整理する話と、苦情処理の対応、情報の取得など言葉遣いの修正があったかと 思いますが、もしよろしければ事務局のほうで修正をしたものはそれだけかと思います ので、これで座長にご覧いただいて、事務的にパブリックコメントをかけることでお許 しいただければと思います。 ○大道委員  事例を示すというところで先ほども申し上げたことを繰り返しませんが、診療録ない しは医療記録の利用をそれなりに議論し検討してきた立場から申し上げますと、我が国 の診療録には医師法の定めがあって、ご案内のように患者の氏名、年齢、処方及び処置、 病名ないしは診断名、診療年月日を書く範囲の法的な枠組みしかなかったところがあり ます。医療機関の病院、診療所それぞれに機能分化が激しくて、特に機能水準は高度医 療を担うところから長期療養まで、非常に多岐にわたってその記録の実情というのは広 範囲です。そういう中でそれなりのスタイルというのは、医学教育の中でもそれなりに 出来上がってきたようなところがあります。やや専門的になりますがPOMRとか昨今で はまた新しい記載の方式なども提案されている中で、今回のこの個人情報保護の枠組み は適切な医療を提供するために医療従事者がしっかり記録を取りましょうと、言ってみ れば素朴な観点でのさまざまな方策、方式が検討されてきた中で、まさしく患者の個人 情報の総体としての医療記録の捉え直しがかなり急速に起こる可能性があって、その中 で先ほど触れた6頁の前半の書き込みと保有個人データを6カ月以内に消去することに ついては、これを除くというあたりが従来の流れから見ると新しい局面なのです。これ は医学教育又は診療録ないしは医療記録のあり方を議論してきた中で、より適切な医療 記録のあり方を我が国の状況を踏まえて、しっかりと形を作っていくという問題だと思 いますが、いちばん危惧されるのは先ほどの「6カ月」です。  保有個人データはこれに該当しないのねというと、6カ月が経つと消去するみたいな ことを想定した記録が出てくることは必ずしも適切ではなくて、ここを抜け道にするの は言語道断とはいいながら微妙に難しい記録がたくさんあります。このあたりはここの ガイドラインで示す問題ではないと思いますので、本来医療記録の有り様とかさまざま な学術団体、医療関係団体のほうでこの辺をどうするかは別途示していくことかもしれ ません。ただ、それにしても先ほどの例示で、こういうことは適切でないとか法の趣旨 に合わないということは、いまの段階でしっかりと示していただかないと、いろいろな 状況がはびこってから「さあ、どうしよう」といっても収拾がつかなくなる可能性も想 定されるので、このあたりは包括法に限界があると言うと申し訳ないのですが、医療と いう特別な状況に適応することの包みきれないところは残っているのかなと正直に思い ます。ここをどうするのかはいま申し上げたとおりですが、せめて例示のあたりで一定 の枠組みをお示しいただくことは必要な気がします。  いま申し上げたことをこのガイドラインの中に書き込むと、非常にやっかいな話にな りますのでそれは適当ではないと思いますが、いま言った例示の枠の中はかなり柔軟に 書けると思いますので、そこをお願いしたい。そのあたりも座長にお任せして、いま言 った例示的なところも含めてお示しいただかないとパブリックコメントがワッと発散し てしまう可能性もあるので、むしろお示しいただきたい気がします。 ○事務局(企画官)  いま例示とおっしゃったのは、このガイドラインに例示として書き込むという趣旨で はなくて、事例集にということですね。 ○大道委員  そういうことで結構だと思います。ガイドライン本体ではないというほうが、むしろ 事例集としてはお示ししやすいと思います。ここに書いてあるではないかという言い方 は、医療の現場での問合せ処理は少なくはないのです。こういう場合はどうなのだとか、 今後どうなっていくのだという議論の中で、「趣旨はこうです。現実に事例としては、 こういう条項は趣旨に合わないですよ」ということを言っていかないと、いま申し上げ たことが起こってしまうのではないかと危惧しますので、そこを申し上げています。 ○樋口座長  一般的にも私だけではないと思いますが、いまの先生のお話との関連では診療録につ いて5年間の保存期間というのが定められていて、5年経ったら捨てていいのかという とそれはあり得ないような話ですよね。この個人情報保護はそれこそ取得を制限したり 囲ってしまうほうだけを考えていますが、医療の場面だと医療機関がまさに患者の情報 をずっと管理してという責任もありという話なので、個人情報の保護のほうだけを考え ると消去制限の原則はきっと8原則の中に入っていないのでしょうが、簡単に消してい いよというのもおかしな話で、ここではなくてということだと思いますが何らかの形で 今後とも考えていかないといけない部分だと思います。 ○辻本委員  議論を蒸し返すようで申し訳ないのですが、全体的な問題の中で家族の特定を特に示 していないように読めます。例えば私どもの電話相談などでも、おじいちゃんの世話を している長男の嫁の有り様に不満を持つ遠くに住む弟の嫁あたりからご相談の苦情とか、 いろいろと届くわけです。現場の方たちのお声を聞くと、特にナースの方たちから家族 という範疇をどう捉えていいかという相談というか意見を求められることもあって、私 もそれには答えられないということで言葉を濁してしまっているのです。このガイドラ インの中で特に8頁の5に「家族等への病状説明」と書いてある中に、「現に患者の世 話をしている親族及びこれに準ずる者」と記載がありますが、いまの大道委員のご意見 をお聞きしながら、ある程度それが事例集で出てくればいいなと期待を持ちたいと思い ます。家族という問題を少し議論していただけたらよかったなと思います。いまになっ て、すみません。 ○樋口座長  でも、それは重要な点でかつ本当に困難な点でもあります。ここのところはいま辻本 委員がおっしゃったちょっと前のところへ、結局本人に対してあらかじめ病状説明を誰 に言ったらいいかという対象者を確認し、本人から申し出がある場合には現実に患者の 世話をしている親族及びこれに準ずる者という形で、本人のところを尊重してという、 家族も本当にいろいろですので、やはり一般的なことはなかなか言い難い。患者のため の治療ということを考えると、患者に聞くことを原則にしようということは、ここでは っきり出ているような気がします。そういう方策以上に何か出てくるかは、またいろい ろな質問や何かで出てきてうまく事例に書き込めるようであれば、それはそれで検討す ると思います。 ○岩渕委員  先ほど座長がおっしゃったことの関連で、5年以上経っている情報は5,000件の中にカ ウントされるのでしょうか。その問題は簡単な話だろうと思いますが、どういうことに なっているのですか。 ○事務局(企画官)  事実として持っていれば、それはカウントされるということです。保存義務の期間と は関係なく、現に持っているかどうかという話になります。 ○寺野委員  現場からいいますと、5年の保存義務があるけれども10年が経ったカルテはものすご い量で、ともかくこれを処分しない限りはスペース的にも保存できないというのが現実 です。だから、これをいかに廃棄するかということで非常に問題になっていますが、こ れに対することとの関係で何かありますか。 ○事務局(企画官)  それはないです。 ○寺野委員  これは極めて重要な問題で、いい加減に処理業者や廃棄業者にポンとやっている所も ある可能性があります。大道委員、それはどうですか。 ○大道委員  先の診療情報提供等の検討会で、診療情報としての診療録の保存期間については当初、 論点に上がっていたのです。しかし正直、開示等の関連の問題で話が錯綜したわけでは ないのですが取りまとめに時間がかかって、あえてその論点の話はしないということに なりました。それ以前のおおむね5年ほど前になりますが、診療録ないしはカルテの開 示についての法制化の議論のときにも、この話がありました。さらには、HIV等の薬 害に関連して遡って10年程度前、あるいは10年前後前の投薬の事実の検証などが行政上 必要になってきたときの対応の問題があったとか、さまざまなことで診療録としての保 管年限については、従来からかなり長い議論があります。  明治の医制の導入以降、診療録の保存期間は制度的にもこうだったという議論もよく 取りざたされて、現行の5年はいちばん短い期間です。1948年の現行医師法の制定のと きにそうなったのですが、ここの議論はいまご指摘の物理的な保管年限の問題もありま すが、多くの病院は入院診療録は永久保管を前提としてやっておられるところが多いと 思います。外来の診療録はこれもかなりの状況があって、永久保管することはどちらか というと少ない。むしろ、これは今日の議論に関わりますが患者ではなくて診療サイド で5年で廃棄してもらっては困るという、主として医師サイドからの要望で抽出しても らってそれを保管する。その保管の場所が本来病院で保管すべきなのでしょうが、場合 によっては自分の書類棚のような意識の中で保管されている可能性もないわけではない という、個人情報保護からいうとやや、やっかいな状況があり得る気がします。  昨今では永久保管を極めて大事に考えて、紙のカルテで保管するから場所が多くなる ので、これらを画像化する。古いカルテは画像化せざるを得ないのです。それをディス クやDVDなどのメディアに収録してコンパクトにして、オリジナルはやむを得なく廃 棄する。本当はいけないので、いろいろ議論がありますが、それでもって替えているの だと。法律上は5年の範囲だから構わないだろうという趣旨での保管の仕方もあります。 古くはマイクロフィルムにマイクロ化するという言い方をしていましたが、これはお金 の問題などや、見るときの検索が必ずしも容易でなく、時代的にも合わないといって、 いまは廃れました。けれども、もうすでに電子カルテの時代が来ています。ITに伴う 医療記録のああいう形での運用、場合によっては保管が現実のものとなりつつあります から、この議論はそういう意味では紆余曲折を辿って今日があるといってもいいのです。 けれども5年がいいのか10年なのか永久保存なのかを制度としてどうするかは、相変わ らず議論として残っているということだと思います。 ○樋口座長  ありがとうございました。個人情報保護法をこうやって医療の面で適用していくと、 それ以外の要素もあると思いますが、診療録の書き方にも影響を与えるのは当然であり、 診療録の保存の仕方あるいは年限等の話も新たな視点で見直す必要が出てくるというこ とかと思います。  では、事務局のほうからご提案がありましたが、一応字句の訂正等については座長の 私に一任していただいて、修正したものを私がチェックした上で第二ステージのパブリ ックコメントへ出して、まさにパブリックのコメントを仰ぐ形にしたいと思いますが、 よろしいですか。                  (了承) ○樋口座長  ありがとうございました。ただ、これで仕事が終わったわけではなくて、これからま だいくつかあるので、今後のスケジュール等について段取り等がありましたら事務局か らお願いします。 ○事務局(総務課長補佐)  本日ご議論いただきましたガイドライン(案)については、座長にご一任いただくと いうことですので、事務局のほうでただいまご指摘をいただいたおよそ3点、歯科衛生 士関係、歯科技工士関係の修正の部分、苦情処理という用語の修正の部分、取得や収集 という用語の統一の部分のすべて修正を行って、座長にご確認をいただくことにします。 それによりまして検討会としてのガイドライン(案)とさせていただきたいと存じます。  また、今後このガイドライン(案)については厚生労働省からパブリックコメントを 行います。パブリックコメントの結果は今後本検討会に結果を報告しまして、さらに議 論が必要な論点が指摘された場合は改めてご議論をいただくことになります。またこの 検討会は今後、個別法の必要性も含めた医療機関等における個人情報保護のあり方全般 について、引き続きご議論いただくことを予定しています。  なお、次回は本日お手元に配付している日程調整の用紙にご記入いただきまして、本 日机に残しておいていただくか、今週中にFAXで事務局あてに送り返していただくよ うにお願いします。 ○樋口座長  残る作業としては、パブリックコメントの様子を見るということですよね。パブリッ クコメントというのは、どのぐらいの期間にどういう形で求めることになるのでしょう か。 ○事務局(総務課長補佐)  私どもとしては標準の期間として定められている4週間程度の期間を予定しておりま す。方法としては、厚生労働省から広報室を通しての資料配付及びホームページへの掲 載となります。また、この検討会についてはパブリックコメントが終了した時点、もし くはその途中の段階である程度意見が出てきている場合は、その時点ということもある かと思いますが、本日いただく日程調整によりまして日程調整を行い、次回以降ご議論 いただくことを考えています。 ○樋口座長  大体11月の1カ月ぐらいパブリックコメントを求める。しかし全部が終わってという ことでなくても、途中で大体の感じは出てくると思いますから、それを含めたものでど んな反応がありましたということをこの検討会にまたフィードバックすることと、もう 1つの宿題は個別法の必要性についての議論が必要ですよね。次回はそれの予定だと考 えていいですか。 ○事務局(総務課長補佐)  個別法の必要性についても、可能であれば年内に一定の方向性をつけたいと考えてお り、そういう観点で次回は11月中に日程の調整が整いましたらお願いをして、その後12 月にもう一、二度ということも考えています。 ○楠本委員  事例集は、どんな作業手順になっていますか。 ○事務局(総務課長補佐)  また次回、次々回の検討会で資料を用意する予定ですので、ご議論いただくことを考 えています。 ○樋口座長  本日は、これで閉会します。本当に大変お忙しいところ、ありがとうございました。                  照会先  医政局総務課                  担当者  濱田・安川                  連絡先  (代表)03-5253-1111 (内線)2522