04/10/27 社会保障審議会福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会第17回議事録    社会保障審議会福祉部会 第17回生活保護制度の在り方に関する専門委員会 日時:平成16年10月27日(水)10:00〜12:00 場所:厚生労働省 7階専用第15会議室 出席委員:石橋委員、岩田委員長、大川委員、岡部委員、京極委員、後藤委員、田中委員、      根本委員、布川委員        鈴木委員、八田委員、松浦委員は欠席 議題  :(1)母子加算の在り方について       (2) その他 (岩田委員長)  定刻となりましたので、ただいまより第17回社会保障審議会福祉部会生活保護制度の 在り方に関する専門委員会を開催します。今日は大変寒い朝でございますが、御多忙の ところ御参集いただきまして誠にありがとうございました。  それでは、まず事務局から、本日の委員の出席状況及び配付資料について御説明をお 願いします。 (事務局)  おはようございます。御出席の状況ですが、鈴木委員、八田委員、松浦委員から御欠 席との連絡をいただいております。また、社会・援護局長の小島については、国会の関 係で欠席させていただきますので、御承知いただきたいと存じます。  続きまして、資料の確認をさせていただきます。上から順番に、  議事次第  座席表  資料1「説明資料」  資料2「生活保護制度の在り方に関する専門委員会 報告書骨子(案)」  資料3「三位一体改革について」  第16回議事録(案) となっております。資料は以上でございます。お手元に以上の資料がない場合はお知ら せください。事務局よりお渡しいたします。  なお、第16回議事録(案)につきましては、これから各委員に内容を御確認いただく こととなっておりますため、委員のみの配付となっております。  以上でございます。 (岩田委員長)  それでは、本日が実質的な内容について議論する最後になる予定だと思います。次回 以降は具体的な報告書(案)についての御審議をしていただくことになると思いますの で、どうぞよろしくお願いいたします。  今日の議事は、これまで何回も議論しておりますが必ずしもはっきりした結論が出て いない幾つかの事項についてです。また、それ以外にも委員の皆さんがお気づきの点が あるかと思います。それらを最後に議論してまいりたいと思います。  議題のとおり、最初の議題は「母子加算の在り方」、そして「その他」という順に御 議論をいただきたいと思います。  まず、資料1の説明資料について事務局から御説明いただきまして、その上で御議論 いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 (岡田保護課長より資料1「説明資料」に沿って説明) (岩田委員長)  どうもありがとうございました。説明資料にあります「母子加算」、「自立支援プロ グラム」、「保護の要件」については、「保護の要件」は「稼働能力の活用」と「預貯 金の保有」がありますが、いずれも今まで議論してまいりました論点です。しかしなが ら、なかなか難しいといいますか、必ずしも御意見の一致をみなかったものです。今日 もどのあたりまで御意見が一致するかというのはわかりませんが、御議論いただきたい と思います。まず、母子加算の方から議論を始めたいと思います。どうぞ御意見をいた だきたいと思います。  これまでの母子加算というのは、母子といってもお母さんだけではなく、いろいろな タイプの子供を育てていらっしゃる、両親が揃っていない世帯に支給される第1類費に 相当するものとして理由付けられていました。しかし今日では母子加算を、世帯全体の 一人あるいは両親が揃わない状態で働いて子供を育てていくということにより生ずる何 らかのプラスアルファであると理解されていると拝見します。そうなりますと、前の議 論のときも例えば名称はともかく自立支援加算といった、必ずしも従来のような言わば 食料費に上乗せするというようなことと少し違って、もちろんそういう需要も含まれま すが、自立につながっていくような加算の在り方もあるのではないか、そういう議論の 流れの資料と拝見しました。  どうぞ、御意見をいただきたいと思います。 (後藤委員)  今日出された論点の中で、これだけが果たして事務局は何を言おうとしているのかと いうのが明確でなかったのですが、今、委員長が整理されたような方向性であるとする と、母子加算という名前を自立支援加算というような名前に変えて、依然として支払い 続けるという提案であると確認してよろしいのでしょうか。  そのときに、母子以外も含めた被保護者一般を対象とする自立支援プログラムとの関 係をどうつけるのかという問題が出てくると思います。自立支援加算をつけることの要 件としてそのプログラムへの参加という形で条件を設けるのか、更には自立支援の中身 として、市場に就労するという狭い概念に限るのか、それとももうちょっと広く、例え ばPTA活動を行うとか、コミュニティーで子供たちの安全の見張りをするとか、今働 く女性が増えている中で必要とされているそういう役割も幅広く自立支援加算の要件と するのかどうかを確認したいと思います。 (岩田委員長)  事務局、どうぞ。 (岡田保護課長)  その点につきましてはむしろこの場で十分御議論をいただきたいと思っております。 (岩田委員長)  この資料は特にその辺までを含んだものではないということでしょうか。 (岡田保護課長)  我々がこの説明資料をつくりました問題意識は、まず1ページ目で母子加算について いろいろと御指摘がある問題点をまず整理し、次に2ページ目でいろいろなデータを基 にして検証できることとそれに関連して論点と思われるものをお示ししたということで す。 (岩田委員長)  どうぞ、京極委員。 (京極委員)  私は、原則的には加算というのは現在の生活保護体系では余り望ましくないという総 論を持っていまして、これは高齢者の場合も母子もそうであります。  母子の場合、特に保育所その他では生活保護世帯ということで無料ですから、全体を 見ますと、金額だけみれば加算がなくてもある程度生活していける額が支給されている と言えます。ただ、母子家庭について何らかの政策的な優遇措置を考えるとすれば、加 算という形ではない方法で考えられるべきであると私は思っています。むしろ、前回も 出ましたが、教育扶助をきちっと高校まで認めることとか、保育所の利用についても弾 力的に行うことでかなり対応できるのではないか。昔の時代と違うのではないかと思っ ています。  かつては保育所でも30年ぐらい前までは生活保護世帯と市町村民税非課税世帯で8割 も占めていましたが、今は生活保護世帯と市町村民税非課税世帯で2割ぐらいしかな く、あとは勤労世帯で相当所得を持っている方となっています。そういう中で生活保護 に妥当するような人たちは無料ですから、一般の母子家庭世帯に比べて生活保護の母子 世帯は大変有利になり過ぎているきらいもあるのではないかという気もします。具体的 にいつ実行するかは政治経済状況の推移を見守らなければいけないものの、原則論とし て加算はなるべくしないで加算以外の体系で対応するということを考えています。 (岩田委員長)  ありがとうございました。加算については、この専門委員会の前半の議論のときも御 意見がありましたように、老齢や母子だけではなくてたくさんあります。京極委員がお っしゃるとおり、当然基準全体として今後どのようにシンプルにしていくかという問題 はございまして、いろいろ加算をくっつけるのではなく、本体をむしろ合理的な水準に もっていくのが本筋だろうとは確かに思います。ただ、いろいろな歴史的な経緯で加算 されてきたということも事実なので、今回、老齢加算と母子加算が焦点として私達の前 に投げ出されて議論しているわけです。 (大川委員)  私が新人の時にはこう教わりました。生活保護実務において加算は一時扶助と違って 基本的には裁量を入れない、つまり、母子世帯で基準に相当する世帯であれば基本的に は加算を出すという考え方であると。多分それは間違いないと思いますが、そうしたと きに先ほどの自立支援加算においては様々な裁量の問題が生じます。自立に向かってつ けていくという考え方が出てくるとか、あと過去の委員会の中でも議論がありました が、期限を決めて、例えば就労している、あるいは自立支援プログラムに乗っている世 帯だけ加算をつけるというような考え方も出ていましたが、そうすると、加算というも のの考え方を根本的に変更することになるのではないかと私は考えています。  もう一つ、京極委員の今のお話のように生活保護の生活保障を加算という形でやらな いという考え方をとるのであれば、あるいは先ほど岩田委員長の方から指摘がありまし たが、第1類費、要するに個人単位の経費への補てんではなく、第2類費の部分に加算 される読み方もできるという考え方をとるのであれば、これは老齢加算や母子加算にと どまらない、障害者加算やその他の加算も含めた、生活保護基準全体の在り方を考えて 見直さなければいけません。下手にここで母子加算だけ考え方を変えていじってしまう と、加算全体の考え方の整合性がつかなくなるのではないかというのが私の危惧すると ころです。  もう一つ、多子の問題が出ています。確かに多子世帯については基準が高くなるとい う指摘は、私どもも現場で日々感じておりますが、基本的には生活保護の基準の積み上 げ方式の考え方の問題と思います。例えば子供がいる世帯は子供が増えると基準が上が る、子供が減ると基準が下がる、これは当然私達、通常給与とか自営業とかで生活をし ている人とは違う所得のパターンになります。そういった意味でも、保護基準全体の構 造そのものの中で母子加算の在り方を考えないと、単純に母子世帯の一般の所得水準と 生活保護基準の比較をしても、私はいつまでたっても結論が出てこないのではないかと 考えます。これが、この専門委員会でずっとこの母子加算の問題を議論してきて、結論 が出なかったことの一番の原因ではないかと考えております。  以上です。 (岩田委員長)  おっしゃるとおりです。それともう一つは、母子世帯やひとり親世帯とか、あるいは 生活保護の場合は、先ほど言ったように例えば祖父母のどちらかと孫というような組合 せとか、いろいろなタイプの世帯があるわけですが、そういう生活状態を一般の例えば 全国消費実態調査のようなもので拾おうとすると、今日の資料でもありますように、例 えば第3/5分位なんていうと、集計世帯数が32とか57とか、非常に小さくなります。  私がちょっと危惧をするのは、前に出た数字で、母子の子供1人と子供2人とを比較 すると子供1人の方がちょっと高くなってしまうという資料がありましたが、集計数が 小さいために非常に不安定な数字が出てきております。その数字だけが一人歩きして、 それで高い低いということになると、なかなか決断ができません。もうちょっと安定し た集計数で母子世帯を本当に代表するような形で出ていないと。老齢加算の場合は集計 数が非常に多いので、老齢世帯の場合はある程度納得いくという点もありましたが。そ のことがやや危惧があります。  それから、今、大川委員がおっしゃったように、見直すとすると加算の性格が変わる ので、全体の見直しの糸口にならざるを得ない。だから、見直さないと言ったら変です が、この委員会では保護基準全体について検討する常設委員会で議論していただくこと にするのか、それとも糸口になろうとなるまいと、一回そこで踏み切るという方向に行 くのか、そこは議論の余地がまだあるかとは思います。  今回も社会生活調査をしておりますし、母子世帯については幾つかの調査が出ており ますが、家計の細かいところまで把握できるデータというのはなかなかないものですか ら大変難しいとは思います。危惧されていることは、多少専門的な用語ですが「貧困の 罠」と言われる状態があって、母子世帯の場合は働く環境も悪いものですから、生活保 護を出た後の方も大して収入が高くならないということがあらかじめわかってしまう と、やはり生活保護から出にくいとか、出ない方が得だという考え方が一種の合理的判 断として出てくる。これは当然そうだと思います。そうすると、ひとり親世帯だけでは なくて一般的に、出た方が得だとか、働いた方が得だというインセンティブが、やはり どこか制度の中にあった方がいいと思います。これが今回の自立支援の考え方に連動し ていくと思います。  ですから、後藤委員が先ほどおっしゃったように、それを自立支援プログラム全般と してやるのか、母子加算でもプラスアルファしていくのがプログラムと連動しているの か。あるいは、連動しなくて、プログラムよりは例えばここで言う母子等の世帯で勤労 している状況にあれば加算が自動的につくという形になるのか。この場合は、自立支援 といってもかなり小さな範囲でしょう。PTA活動とかそういうことではなく、やはり お金の問題ですから、かなり勤労に収れんされた形になっていかざるを得ないだろうな という気はします。その辺りはいかがでしょうか。 (岡田保護課長)  事務的な回答で大変申し訳ないのですが、今回の全体の検証をするときに消費のデー タをいろいろと集めました。実際に先ほどおっしゃったような調査もさせていただいた のですが、やはり特別な調査ではなかなか客体が大きくできず、これと例えば全国消費 実態調査を突き合わせると必ずしも均衡がとれていないデータになるので、非常に使い づらい。  それから、全国消費実態調査がいいのは、あらゆる世帯、それから所得の階層も結構 いろいろなところで調整しますから、比較が非常にきちんとできるという点です。これ と同規模の調査をやるというのは事実上なかなか考えづらいので、全国消費実態調査は 5年に1回ずつ行われていますので、これを基にして検証を行う以上に精度を高めるの はなかなか難しいというのが今の率直な感想でございます。 (岩田委員長)  技術的に大変難しいというのはおっしゃるとおりだと思います。例えば、生活保護基 準と比較すべき一般低所得母子世帯は、母子世帯のうち課長が大変苦労されて、第1/ 5分位ではなくて第3/5分位のところが妥当だという御説明をこの委員会の前半のと きにしていただいたのはそのとおりです。ただ、この中身を生活扶助相当額と見ていく ときに、集計数が30とか50ぐらいといった非常に少ない数ですと、一つ二つ非常に異常 な世帯、ここでいう異常なというのはその月の消費行動が普通でない世帯という意味で す、が加わったとしますと数値がとても乱れていくわけです。ですから、集計数が小さ いということに留意する必要があるという注をつけて使用することになるかと思いま す。ですから、これ自体が特に悪いとかいいということではありません。  この加算の話だけで終始すると、ほかの議論ができませんので、ある程度まとめる必 要がございます。 (京極委員)  加算に賛成の方が多そうなので、私は反対の意見をあえて述べさせていただきまし た。まとめるときは両論併記でも構わないのですが、一つの考え方として意見を述べさ せていただきました。  ただ大川委員がおっしゃったように、確かにこの問題を突き詰めていくと、生活保護 の歴史的な経緯で加算され、そのことで被保護者にとっても有利になったということ で、歴史的な価値を全面的に否定するわけではありません。しかしながら、今後21世紀 を考えた場合に、違った方向からもう少し考えるのはどうだろうかと思います。前も申 し上げたように、短期給付みたいな考え方と、長期的にずっと生きている限りは支給し 続ける考え方とを分けて考えないといけません。後藤委員のおっしゃるように、母子で あろうと、障害であろうと、短期的に半年とか1年という期間に、そういう意味で加算 をつけるなら今と考え方が全く違って、それなら意味があると思います。今のように母 子であるとか老齢であるからという要件で機械的に加算して、他の保護を受けていない 低所得者と比べて圧倒的に被保護者が有利になっていくのはやめた方がいいと考えま す。 (岩田委員長)  そのあたりは低所得者層全体への配慮といいますか、それを生活保護法だけが配慮す ると生活保護が縮んでしまうので、むしろ低所得者対策自体にそういう要素を入れるべ きという観点も私達としてはどこかで言う必要があると思います。  そうしましたら、母子加算については、母子加算という従来の一律的な在り方につい てそれでいいかどうか、やはり検討の余地がある。そして、資料として必ずしも十分で ないかもしれないが、その中で比較をすれば加算がついた分やや高めに出るということ は読みとれます。  しかし、他方で、これまでの経緯や、一人で子供を育てて、しかも働く、自立すると いうことは大変困難である状況もまた社会生活調査等で出ています。そのあたりに対す る配慮を、従来のような加算方式でやるのか、それとも少しいろいろな条件をつけた加 算ないしは別のやり方でプラスアルファするのかを今後検討していく。そういう書きぶ りであれば、両論併記でなくても済むということにならないでしょうか。 (布川委員)  老齢加算でも社会的な参加のニーズがあるなど幾つかの点は確認していたかと思いま すが、実質的には先に加算の縮減が始まってしまったわけです。全国消費実態調査で見 ると母子のケースの数字が少ないかもしれませんが、他のいろいろな母子家庭の調査を 見ると、やはりそれなりにとても大変な生活状況だということは出ていると思います。 ですから、金額が高いからまずは減らすということが先行しないような配慮は十分しな いといけないと思います。  また、就労の問題で言うと、母子家庭に関する就労に関する調査もいろいろ出ていま す。この間、玉田さんという方と大竹先生が新たに出された調査が目に止まりました。 そこで日本とアメリカの制度を比較されており、制度的にはアメリカの方がとても就労 促進的だが、実際には日本の母子家庭の方がもっと就労しているという結果も出ていま す。幾つかの調査を検討しながら、今まで出てきた生活の実態や就労の実態を踏まえる と、思い込みを前提としている論点もまだあると思います。そういうことも含めて、お 金が減ることが先になるということがないようにまとめていただきたいと思います。 (岩田委員長)  そうですね。特に母子世帯は、先ほどの課長の御説明にもありましたように、多人数 世帯がその中にある程度含まれるとすると、世帯人員の調整を行えば、かなり高い高い と言われていたところが下がることになると思います。多人数世帯の是正をした上で、 自立支援プログラムがきちんと入った形で全体的に見直すのではなく加算の見直しだけ 先行させると、被保護世帯にとっては非常に不安だけが募り、自立に向けて取り組んで いる場合ではないということになると思いますので、そこは是非慎重にやっていただき たいと思います。  それから、日本の母子世帯は、8割が働いておりますし、被保護者でも4割が就労し ており、世界的にみて非常に勤労的です。それはどこから来ているのかよくわかりませ んが、その辺りも少し念頭に置きながら、この加算については、委員会としては明確な 結論というよりは、幾つかの変更の可能性をお示しするということで、その後について は基準の委員会で詰めていただく。また加算全体に対する見直しも必要であれば、その 委員会で性格づけについても詰めていただく、とまとめてはいかがでしょうか。 (大川委員)  少しだけ補足します。もし、今の結論でいくと、既に減額が決まっている老齢加算に ついても同様の議論になると思います。幸い経過措置にとどまっています。また「生活 保護制度の在り方についての中間取りまとめ」では単身世帯の生活扶助基準の見直しが 論点としてありましたので、加算問題に戻るとすれば、その辺りを加味した方向でまと める必要があるのではないかと思います。 (後藤委員)  スケールメリットのところについて一点だけ申し上げます。世帯人数が多くなれば規 模の経済が働いて費用が節約できるという直感が何となく働くのは確かです。しかし、 少人数では費用を節約できるかもしれないものの、子供の人数もあるところから、つま りたった一人で何人かの子供を育てなければならないとなれば、また費用が逓増する可 能性もあるという感じがします。いずれにしても余り簡単な直感に収れんしない方がい いと思います。 (田中委員)  母子加算の問題は、額の問題等はいろいろあると思います。ただ私が気になるのは、 資料の1ページ、それから2ページにもある記述です。母子加算の現在の問題点とし て、母子加算の2の(1)の一番下の方ですが、「母子世帯の保障水準が相対的に高くな り、結果として就労意欲を阻害しているのではないか」を挙げているのがちょっと気に なります。2ページに、やはり同じように、「母子加算を加えた被保護母子世帯の最低 生活費が相対的に高いため、結果として自立・就労意欲を阻害しているのではないか」 とあります。これはそういうふうに見る人の表現だと思いますが、これは母子加算を論 ずる場合に、高い低いという比較の上であった場合に、こういう指摘があるから云々と いうことなのでしょう。ただ母子家庭の母の就労意欲ですが、先ほども委員長がおっし ゃっておられたようにかなりの被保護世帯が現実に働いているという実態もあるような ので、高いために就労意欲を結果として阻害しているという表現が果たして適切かどう か、ちょっと私は心配です。その辺りはどうでしょうか。 (岩田委員長)  どうぞ。 (大川委員)  その点で言えば、母子加算の存在が就労意欲の阻害に直結しているということはまず ないと言っていいと思います。現実には、例えば母子世帯の方が努力して正規の仕事を 見つけても生活保護水準に満たない賃金しかもらえないという、つまり今の賃金の問題 の方がむしろ大きいと思います。生活保護から脱却、つまり経済的な自立がしにくいと いうところはあるかもしれませんが、私は就労意欲を阻害しているということは恐らく 言えないのではないか、母子加算の問題とはまた別の視点ではないかと考えておりま す。 (岩田委員長)  これは多分、この委員会でこういう意見が出たというよりは、委員会に問題提起され たときに指摘が挙がっていたことだと思います。恐らく福祉事務所のレベルでこういっ た指摘がなされていると御説明いただいたと思います。したがって、そういう認識をし ている方達もいるということです。  しかし、その点も含めて、仮に4割就労していて6割が就労していないとしますと、 就労していない理由がどういうことなのか、病気だとか、まだ子供が大変小さいとか、 解雇されたとか、いろいろな理由があると思いますが、そういうことなのか、それとも 生活保護でいた方が楽で快適だということなのか。多分田中委員の御質問はそういうこ とがちゃんと検証されたのかということだろうと思います。 (田中委員)  検証問題は別として、もし母子加算の場合にその指摘はもっともだということになれ ば、これは単なる母子加算の問題だけではなくて、いろいろな理由で受ける生活保護そ のものに対して同じような指摘が繰り返されるのではないかと、ちょっと心配します。 (岩田委員長)  おっしゃるとおりです。それは保護基準のところでも議論しましたし、全体的な保護 基準、つまりミニマムが全体として下がるということになることについては委員会とし てやや慎重にという意見にどうしてもなりやすい。社会全体としてそのことが本当にい いのかどうかという意見はずっと出ていたと思います。ですから、今日の御議論もその 趣旨でなされたのだと思います。  そして、今日の現状は現状として、ただ制度の設計として、生活保護から出るインセ ンティブというのもないともちろんまずいわけです。その辺りをどういうふうにインプ ットするか、一方それなりの理由があって生活保護を受けている人が安心して一定期間 生活を立て直すという状況に置かれるべきだという意見も大変もっともなことなので、 その辺りを十分考える必要があります。単に生活保護基準が高い低いだけで母子加算を 廃止するという考え方は、先ほど京極委員がおっしゃったように、生活保護のパスポー トが手に入ればいろいろな制度利用のときに減免等の措置があるのに、何らかの形で生 活保護から排除されてしまうとそういうものがないので、逆転現象と言いますか、「貧 困の罠」としてかかってくる。そうすると、それは何か別の形でやはり補っていかない と出るに出られないということはあると思います。  ですから、低所得者対策や自立について、先ほど御説明がございましたように、生活 保護から出た後や早期に支援策を実施するという問題も勘案しながら検討すべきです。 また、加算の在り方は、一次扶助とかその他いろいろフリンジがあるわけで、その辺を どう考えるかにかかってきます。これは先ほどの資産保有などにも大変絡んでくると思 います。  こうしたことから、この委員会では母子加算について、平成11年度の全国消費実態調 査を基に議論していましたが、もう全国消費実態調査の新しい調査の時期になっている わけですから、その結果が出た時点で十分検証していただくという結論にするのが妥当 だろうと思います。ただし、余りに無責任ですから、いろいろな意見については、こう いう方向があり得ると列挙してはどうかと思います。  そうしましたら、次の点に移りたいと思います。2番目が自立支援プログラムです。 自立支援プログラムについて、先ほどの御説明が幾つかありましたが、これは今回のこ の議論の中心課題ですし、制度改革の一つの中心になると思います。どうぞ御意見をい ただけますでしょうか。 (大川委員)  初めに確認ですが、今回、罰則ということが中身に加味されている、もちろんそれだ けではですが、これは自立支援システムの中に何か罰則を設けるということではなく て、現在ある生活保護法27条、62条の中に絡めてやっていくという理解でよろしいです か。 (岡田保護課長)  基本的には御質問のとおりです。 (大川委員)  ありがとうございました。 (岩田委員長)  そのほか、どうぞ。 (根本委員)  今の質問の関係で質問です。全国で、27条、62条のペナルティーを伴う措置がどの程 度の件数になっているのか、その実態がもしおわかりになればお示しいただきたいと思 います。 (事務局)  各都道府県で状況の把握の仕方も違いますし、私どもも監査におじゃまする際に福祉 事務所単位で把握したりしておりまして、ちょっと限界がございますが、御説明する方 向で検討させていただきたいと思います。 (岩田委員長)  今のところの論点は、これまで自立支援プログラムの議論、例えば前回いろいろ議論 したわけですが、そのときにプログラム自体は一種の契約といいますか、利用者と内容 についてよく話し合ってやってはどうかという意見が出たことに対して、これは法律上 も当然、被保護者は最低生活の保障の権利とともにこういう義務を負う、それについて 実施機関が指導・指示できるという法的な根拠があるということで、やはり契約にはな じまないということと思います。その辺りはいかがでしょうか。何か御意見はございま すか。 (事務局)  流れ図の方にも書いておりますが、契約にはなじまないと申しますか、契約という御 趣旨によると思います。参加するプログラムの選定については、御本人の事情を勘案す るという意味において同意が原則と考えてございます。  ただ、先ほど大川委員の御指摘のように、自立支援プログラムを導入するのに対し新 しい罰則制度を取り入れるのではないことを説明させていただきたいと思います。 (大川委員)  確認ですが、そうすると、この自立支援システムというのは、今言った、従来やって いる27条、62条の、いわゆる罰則といいますか、これを判断する上での基準と考えると いう理解でよろしいのでしょうか。 (事務局)  そのような御理解でよろしいかと思います。今まで「就労の努力をしていただけませ んでした」という割と漠然とした状況であったとしましたら、今度はプログラムへの取 組状況という、お互いが目に見えるもので判断をすることとなるというものだと思いま す。 (岩田委員長)  ちょっと言い方が難しいのですが、こういう努力をしなければいけないというか、義 務を負っているというのはこのとおりです。また、その義務を履行しているか、履行し ていないか。履行していない場合に、それについてペナルティーがかかるというのもそ のとおりです。しかし、自立支援プログラムに乗せるときに、私が契約という言い方を 前回か前々回にしたのは、義務を履行するということについては義務を負っているもの の、個々のプログラム内容については契約という形に持ち込んだ方が、現実的に履行を 促しやすいのではないかと考えています。  指導・指示とそれへの違反ということになりますと、例えば解釈をめぐって訴訟が続 出するのではないかという心配があります。妙な言い方ですが、お互いにこういう内容 でやりますよ、いいですよ、あなたがいいと選んだのですねと、ハンコでも押していた だいた方がずっと実質的に指示したことになるのではないかと思います。  こうしたことから、こういうプログラムは見直しを図りながらやらざるを得ないとこ ろもあるので、今の社会福祉全般の流れの中で、いろいろな自立支援計画を作っては見 直し、作っては見直ししていく方法に近い方が現実的なのではないかと思います。法律 論から言えば、契約という形がむしろ正当ではないかという気がします。 (岡田保護課長)  契約という言葉をどういうふうに捉えるのかということと絡んでいると思いますが、 参加しやすいという意味では、要するに御本人とよく話をして、よく相談して、御本人 の同意を基本的には得てプログラムを適用するというむしろ手続的な問題ではないかと 思います。契約という言葉については、個人的にはもうちょっと法的には整理が要るの ではないかと思っています。民法上の契約などとは趣旨が違うと思っていまして、契約 という言葉になじむかどうかについては若干の違和感がございます。  ただ、ご指摘のところは、実施するのに当たり、被保護者本人と福祉事務所とのやり とりの際には留意すべきと考えています。 (大川委員)  契約というのは一つの手法ですから、利用制度という考え方で整理してはどうでしょ うか。そうすると、生活保護法に27条の2が追加されていますが、自立支援のために積 極的に福祉事務所が提供できるサービスという整理をするのが適切かと思います。 (京極委員)  それでいいと思います、自主的に利用するということで。 (岩田委員長)  そうですね、自主的にという整理で。 (京極委員)  それを義務というのはちょっと強過ぎるし、契約というと何か、課長がおっしゃった ような感じですので、ここは言葉が一人歩きしないように現実的に考えた方がいいと思 います。 (岩田委員長)  後藤委員、どうぞ。 (後藤委員)  8ページのこの流れはとてもきれいに書かれていると思いますが、「実情に応じた自 立支援プログラムへの参加を指導」というところから全部右に流れてきています。そし て、ここのプログラムの立て方それ自体を検証する矢印がないところが恐らく問題だと 思います。  つまり、この「※1」はプログラムへの参加以外の方法で自立・就労に向けた取組を 行うことを被保護者が希望する場合にはこれを尊重という形で書かれているのですが、 そのプログラム自体が恐らく非常にケースバイケースとか、地域の事情とか、それこそ 就労の活用の場との関係でかなりセンシティブな問題になると思います。したがって、 10ページの右側にある見直しの方向性の真ん中に、「事務処理の指針を示すことが必要 」と書かれていますが、この指針というのは非常に大事だと思います。この指針の中に ちゃんと逆の矢印も入れる。つまり、本人たちが、これは自分達にとっては余り適切で はないと言ったとしたら、その声をちゃんと聞かなくてはならないということも入れる 必要があると思います。  もう一つ付け加えると、せっかくこういう図を事務局の方たちが作ってくださってい るので、もしできれば、これを具体化するためのフローチャートを作ってくださるとあ りがたいと思います。つまり、どういうことかというと、自立支援プログラムを実際に 動かしていくためには、恐らくそれぞれの福祉事務所の働きと、それをサポート、受入 れをする、例えば前にもちょっとお話ししましたが、アメリカの場合だったらNPOで あるとか、コミュニティーの活動であるとか、ボランティア活動なんかをそこにうまく フィットさせるような仕組みがあって、それで恐らく国はこの指針を出すというような ところで役割を果たし、なおかつNPOやボランティアやコミュニティー活動にある程 度のグラント(補助金)をどこかで出せるとか、そういう具体的なフローチャートが描 けるともう少し現実化するのではないかと思います。 (事務局)  今の後藤委員の左側へ行く流れがないという御指摘ですが、一応「自立支援プログラ ムへの取組状況の評価」の上半分にございます。取組状況がよくて次の段階に行けれ ば、もう少しプログラムの上の段階に行きます。また、取組状況がもし不十分であった 場合に、それは御本人の取組が足りないという場合があり得る一方、今御指摘のとおり プログラム自体が今の御本人の段階に合っていなかったという場合も有り得ます。最初 に決めるときには合っているとケースワーカーと被保護者の間で一応同意していただい たものであっても、実際にやってみると合っていなかったということがあれば、その時 点で左に戻りまして、もう一度プログラムを見直すということを前提としております。 このあたりをサイクルとして定期的に評価をしていって、本当に御本人に合ったものを 実現していただこうと考えております。  それから、先ほどの契約とか、そのあたりのことですが、プログラムへの参加ではな くて自力でやりたいという方もいらっしゃると思いますので、プログラムへの参加自体 は最初から契約なり義務ととらえてしまいますと、そういう方があり得なくなってしま う、あるいは、そういう方の意思を無視することになってしまいます。資料6ページ下 の四角の一番上ですが、あくまでプログラムというのは実現手段の一つであり、プログ ラムに従う義務があるのではなくて、保護の要件を満たすないしは勤労の努力義務の実 現手段の一つであるととらえておりますので、先ほどおっしゃったように、福祉事務所 が提供するサービスであり、かつ被保護者としては積極的に利用していただくものとい う整理の方が、契約ということなり最初から合意があってのものというよりはよろしい のかと考えます。 (岩田委員長)  どうぞ。 (後藤委員)  一点だけ発言します。先ほど具体的な図をお願いしたわけなのですが、そこのところ にもう一つ国の役割として付け加えます。就労支援相談員を設置しているところはうま くいったと書いてありますが、それぞれの地方がきちんとこういう就労支援のための人 員をどう確保するかということもやはり国の役割として考えなければならない。  アメリカのTANF制度の場合もそうであって、TANF制度それ自体、つまり公的 扶助それ自体の支出は減っているのですが、それは統計上のあやがあって、その背後に は現金給付以外の支出や国の役割はいろいろな形で逆に増えている。だから、そこのと ころは是非入れておいていただきたいと思います。  付け加えるならば、能力活用の義務というのは本人の義務だけではない。それは前に も言いましたが、むしろ教育の義務、就労の義務と同じように、そういう場を提供する 国家の義務であり、国民の義務であると思っています。  以上です。 (岩田委員長)  多分この図の後藤委員がおっしゃった点は、取組が不十分な方についての流れである 下半分の点線で囲まれている字の方が大きくて細かいのでこっちに目が行きがちである という点ですが、事務局がおっしゃったのは、上半分にも流れがあってもう一回戻ると いうのもあるということです。できれば、こういうことをやった場合にはペナルティー が課せられるということが強く出るというよりは、むしろうまくいくという方を中心に 書いていただきたい。保護の停廃止等は、どうしても意図的に拒否というか、自分で選 んでおきながら一回も出てこないとか、そういうような非常に悪質な場合だと思いま す。だから、取組状態として意図的に取り組まないということがあった場合に、まずそ の理由を十分納得いくまで聴取した上で、もう一回指示するなり促して、そして必要な 手続を経てというように、こっちも同じぐらい細かく書く。それから指導という表現 を、先ほど京極委員がおっしゃったように、プログラムも例えば複数を示してどっちに するかということもあると思うので、例えば自立支援プログラムを提示し、幾つ書くか はさておき本人が選択するというように書いていただく。契約でも指示・指導でもなく て、全体的な義務は義務としてありますし、福祉事務所の指導・指示というのもあるの で、その中でプログラム自体は本人がむしろ納得して選んで初めて、自分が選んだのだ から一生懸命やろうということになる。あるいはそのプログラムの見直しも可能である というこの表の上半分の矢印、ここがもうちょっとうまく回るように描く。その上でそ れでもうまくいかないというケースは指導・指示などの手続になる。そういうふうにお 書きになると、それほど皆さんが考えていることが違うわけでもないと思いますが、ど うでしょうか。 (布川委員)  6月の専門委員会で、この62条にかかわる問題提起をさせていただきました。自立支 援をちゃんとやる場合に、今の62条の規定は、取組が不適当である場合やケースワーカ ーの言うことに絶対服従しない場合に、保護の不利益変更をされてしまうという規定に なっています。プログラム自体が選択できるという点を担保するためには、62条の規定 を6月に提案させていただいたように変えていただく。被保護者の自由を不当に妨げな いような規定を入れることが必要でしょう。もう一つは、不利益変更する場合にも、自 立の支援の中で不利益変更するわけですから、それが結局その人の自立に逆行してしま うような不利益変更というのはあってはならないのではないかと思います。また、不利 益変更によって最低生活費以下の生活をさせるということに対して、ちゃんとした対応 が必要だと思います。こうした観点から、62条そのものも法的に内容を見直すことが必 要ではないか、その課題も出てくるのではないかと思います。 (岩田委員長)  どうぞ。 (大川委員)  今回、罰則ということが新聞報道で表に出されて、事務局の説明を聞いてちょっと安 心した面もございます。問題は、今、布川委員からの御指摘があったとおりで、生活保 護法27条と62条の内容が非常にあいまいになっていることです。  生活保護の停廃止というのは、言ってみれば生存権保障の剥奪ですので、被保護者の 行為に非常に重大明白な法違反がある、もう一つはそういう不利益な処分をかけるとき に、ちょっと大げさな言い方をすると、刑法で言うと構成要件の該当性に相当する、つ まり何を犯したらこういう不利益になるのかということが今の制度の中では全く明記さ れておりません。  今回の自立支援システムで、私もいろいろ現場の方から意見を聞くと、やはり訴訟を 恐れているのです。つまり、中には自立支援システムに乗らないという方がいると思い ます。あるいは稼働能力の活用をやらない。そのときに保護の停廃止をするとしたとき に、どういう理由で停廃止ができるのかということが法の中に明記されていない問題が あります。  前にも、審査請求の資料を出させていただきましたが、審査庁、あるいは裁判所によ って判例が割れていますから、私はそういった意味では今の布川委員の御指摘のとおり で、最低生活保障を剥奪する重い処分については、こうこうこういうときにやる、もっ と言うならば、指導・指示が今回かなり正面に出てくると思います。指導・指示につい ても、どういった項目だったら被保護世帯に対して指導・指示ができるのかということ も法の中にないのです。  散見すると、ちょっと逸脱としか思えないような指導・指示があるというふうに思っ ておりますし、次回、事務局から件数を出していただけるということになっています が、この機会に生活保護の停廃止の27条と62条について、是非、整理・見直しをかけて いただきたいというのが私の意見です。  以上です。 (岩田委員長)  そうしましたら、例えば先ほどの図の下半分で、この「必要な手続を経て保護の変 更、停止又は廃止」というところの左側にある囲みのところに、「保護の要件を満たし ていないと判断される場合」という表現に変えて、「更に改善が認められず、保護の変 更、停止又は廃止に十分客観的な条件がある場合」というような表現にするとか。 (大川委員)  あるいは「法律違反があるような場合」。 (岩田委員長)  というような表現にするとか、その辺が変えられるかどうか事務局に御検討いただい て、そういう意見があったということを何らかの形で報告書のどこかに書いておくとい うことでいかがでしょうか。よろしいですか。 (岡田保護課長)  結構です。ちょっと蛇足かもしれませんが、62条には確かに布川委員の御指摘のよう なことですが、資料の7ページをごらんいただければと思います。27条の第2項、第3 項には基本的な考え方として、指導・指示というのは被保護者の自由を尊重し、必要の 最小限度にとどめなければならない、第1項の規定は、被保護者の意に反して、指導又 は指示を強制し得るものと解釈してはならないという規定が入っておりますので、法令 的には指導・指示がそういうような形で出されるという整理になっています。  それから、具体的にどこまでできるかというのは、これは被保護者のケースがいろい ろとばらばらですので、法律で書くのは非常に難しいのではないかと直感的に思います が、御指摘の点については十分御検討させていただきたいと思います。 (岩田委員長)  こういうのはやはり事例を積み上げていって、何が合理的かということをその都度、 ある時代背景の中で考えていかなければならないと思います。  それでは、時間がだんだん押してきましたので、自立支援プログラムについてほかに 御指摘がありますか。 (田中委員)  保護施設からの立場から、この委員会で自立の問題、あるいは自立の努力、あるいは それに対する評価の問題がどういうふうに今後方向づけをするかということは、実は私 どもにとってもかなり大きな影響があると思います。  現実には、実施機関から施設に入所措置をとる、今は措置制度ですからそういう名前 を使いますが、措置をしますと、自立の問題等々についてはほとんどそこで切れて、も う一切が施設の範疇に入ってしまいます。入所者の方の意識は必ずしも実施機関と切れ てはおりません。どうして来ないのだろうかと思われております。1年に1回来ると か、いろいろな方がおられますが、実態は実施機関によってはただ文書がちょっと来る だけで、実際には面接等々についてはほとんどお見えになりません。やはり入所者の中 には、たまには来てほしい、お越しになる福祉事務所とそうでないところがあるのは確 かですが、やはり来てほしいという人もいるのです。しかし、現実にはあとは施設に全 部任せてあるという形で、施設にとってはありがたい面もあるのです、かなり自由裁量 でできますから。ただ、今の自立の問題については、実施機関が入所措置をとる、その こと一つはその被保護者に対する生活のための自立のための一歩を踏んだことになると 思うのです。施設はそれを受けて、最近では個別支援計画を作成して、その人の自立生 活はいかにあるべきかということをきちっとやっているつもりです。しかし、施設にお ける被保護者の自立助長あるいは自立の成果をどういうところで見るかということは我 々も非常に悩むことでありまして、施設から地域に出す、あるいは施設から在宅に戻す ということも一つの成果ですが、施設から地域に出すということは、地域の受け皿が相 当しっかりしていないと難しい。幾ら施設側で、こういうふうにできるとか、本人も希 望しているし地域生活が今はできるはずだと言っても、実施機関の努力でもどうにもな らない地域の受け皿実態があるのです。そういう問題をたくさんはらんでおりますの で、私はいろいろな御意見を拝見しながら、この自立助長の問題が本委員会でどういう ふうな方向づけで、どういう考えで、どうなるかによって、先ほど契約云々のことも出 てきたのですが、私どもも相当対応が変わってきます。そういう問題も実は保護施設と の関連があると思います。そういう意味で、実質的に今日委員会の議論が終わるという ことを先ほど伺ったのですが、その辺はどうなるのでしょうか。 (岩田委員長)  今の点は田中委員が再三この委員会で御発言されていますし、それから今のような議 論をすると、一体だれが自立支援をするのか、そんなことをやれる人員が福祉事務所に 今あるのかという反論がすぐ来ることが想定されます。ですから後でちょっと見ていた だきますが、報告書案としてはまず自立支援の推進体制について項目立てをして、そこ で委員会で出た今のような御意見、保護施設について言えばやはり福祉事務所との関 係、あるいは福祉事務所の中での保護決定と自立支援との分業のようなものがどういう ふうになされていくかとか、ほかの外部の機関との関係とか、そういうものが入ると思 います。それから保護施設自体についても別立てで、つまり、全体の制度・運用のとこ ろで保護施設という項目を立てる案として今日お出ししていますので御懸念はないと思 います。 (田中委員)  ありがとうございます。 (布川委員)  今の点はどの程度の議論に。 (岩田委員長)  報告書の内容についてはここで次回議論します。 (布川委員)  自立支援プログラムという形で前回6つの例が出されました。その中身を見ると、労 働行政がやっているものとか、いろいろな施策を活用するということですが、では生活 保護として何をやるのかがまだ不明瞭です。実施体制とか相談体制を詰めて、そのため にはこういうものが必要ではないかという財源の問題提起も含めて、議論した方がいい のではないかと思います。  生活保護でというときには、生業扶助そのものを自立支援扶助というような形でもっ と広げていく可能性があるかと思います。生活保護としてどこまでどういう体制を組め るのかというのも議論ができればと思います。 (岩田委員長)  それについて十分議論している時間はございません。詰めてはいないかもしれません が、今のような御意見はもう既に出ていますので、それをきちっと入れるような項目立 てにしたいと思います。財源のこともそうですし、体制もそうですし、それからプログ ラムについては、事務局としては例示として、今の生活保護の現状から見ると、例えば こういうようなことが考えられると出していただいたわけでして、それがすべてだと か、変えられないとか、そういうようなことではないと思います。その細かいところま でこの委員会で詰めていくと、もう一年議論しないとならないので、そのことについて の御意見も含めてどこかに書き込めるようなことにしたい。特に推進体制が大変大事で す。夢物語を言っていてもしようがないし、具体的に推進できなければここで1年かけ て議論した意味がありませんので。それは報告書の内容のところで、こういうふうな意 見が委員会で出ていたし、あるいは付け加えてこういうことを是非入れてほしいという ような形で反映していただきたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは、最後に労働能力の活用と資産問題です。特に預貯金保有ですが、これもな かなか難しいといいますか、結論が出にくいというか、結論に至らなかった問題です。 労働能力の活用については事務局が今日お出しいただいた資料はいろいろなこれまでの 判例も踏まえて、(1)、(2)、(3)という3つの要件を客観的に評価できるような総合的 な指針といいますか、評価基準というのを出していってはどうかという御提案なのです が、いかがでしょうか。布川委員、どうぞ。 (布川委員)  1点目です。資料10ページの左下の「※1」です。稼働能力活用要件ということで は、とりあえず稼働能力を活用できていない状況であるが、こういう状況にあるなら ば、能力を活用していないとは言えないから保護を適用するという判例を踏まえたもの だと思います。これについては何回か議論をして、ある程度の意見としては、保護の申 請時には就労活動しなさいと言われてもなかなか大変でできない状況がある、それも考 慮するならば、申請時に能力を活用していないとは言えない、活用していないからだめ だということではなくて、活用しようにも活用しようがない状態というのがやはりある のではないか、という点についてはある程度意見の一致があったのではないかと思いま す。その議論を踏まえたまとめになればというのが一つです。  2点目です。前回、今度は自立支援について議論をしてみたときには、申請に来られ た方に対して、その人がどういう稼働能力、どの程度のどういう能力を持っているの か、可能性があるのかとか、その人の自立の阻害要因、就労の阻害要因は何があるのか というのを自立支援の観点からはかなり丁寧に見ていこう、そこから援助していこうと いう議論をしたと思います。こうしたときに、能力の活用の見方というのを可変的に見 ようということで議論したかと思います。  保護を出すか出さないかということでアセスメントをするし、自立支援をちゃんとし ようということでまた同じようなこともするのでしょうが、中身、性格が全く違うよう なことにもなりかねない。保護を出すか出さないかということと、どういう援助を早め にやっていくかというところの議論をもう少し組み合わせないといけないのではないか という感じがします。  いずれにしても、申請時に自立の支援を始めるという状況を踏まえたときに、保護を 出すか出さないかということに限って言うと、その人は経済的には困っているものの、 この人には自立の支援が必要ではない、自分でどうにかできるという人の場合には保護 は出さなくていいということになるかもしれません。しかし、経済的に困っている方で 自立支援はしていこうという場合にはなるべく早めに、せめてその人がどういう問題と か可能性を抱えているかというアセスメントを受けたという時点から、保護を始めると いうことでもいいのではないかと思います。ちょっと長くなりました。 (岩田委員長)  この自立支援プログラムは、どこかにも書いてありましたように、保護に先立って相 談に来たときから早期に適用しようという考え方に立つとすると、二重基準というより もむしろそっちが先行するという可能性があることになります。だから、この総合的評 価というのは実は自立支援プログラムに先立つというか、連動していかざるを得ない。  そうすると、こういうことになるのではないかと私は思っております。つまり自立支 援プログラムに乗っていく人と乗れない人が分かれて、乗れないというのは今病気だと か、非常に高齢だとか、ここで言うと(1)のところに抵触するということです。労働市 場にはフィットしないということがはっきりする場合です。また、自立支援プログラム の方に乗れた人については、特に就労に関しては2つにまた分かれて、つまり貧困要件 がまだぎりぎり生活保護になるまでになっていないという場合と、これはこれから言う 資産ともかかわりますが、収入がぎりぎりのところで何とかやっていけるという人と、 もう既にない、生活保護の場合は、要するに保護基準、平たく言ってしまえば貧困かど うかということですから、貧困な人は生活保護を受けてそのプログラムに乗る。ぎりぎ りまだちょっと頑張ることができる程度の収入はあるとか、資産がある人は、そのこと で今までは「さようなら」だったわけですが、そうしないで、このプログラムに先に乗 ってもらえば、もしかするとそのまま生活保護ではなくていける人もいるだろう。この ように、かなり一般の低所得者対策っぽくなるわけですが、そうならざるを得ないので はないかという気がします。  もちろん、自立支援プログラムは就労だけではないので、労働能力がないと言った人 も、例えば病院には通う。こういうことは大変大事なことで、今回の議論で余り出てい ませんが、実際上は医療扶助の問題がコストとしては一番大きいわけです。だから、長 期入院に至らないように、やはりそこも早期に働きかけるというのは、実は生活保護の 費用をもしも安くあげようと思えば、医療扶助問題を何とかしないとだめなわけで、幾 ら就労促進をやっても現実的な話ではないのです。  だから、いろいろなことを早めに入り口のところで相談に乗っていくという方向は、 一見、私もわからないわけではないというか、理論的には稼働能力を活用する意思があ れば、それで生活保護を受けてもいいと思います。理屈としてはそうだと思いますが、 もしも先立ってやるということになりますと、結局はそういうふうになるのではないか という感じもします。その辺りはいかがでしょうか。 (岡部委員)  その件に関連してですが、保護の要件に関しては要否判定という、委員長がおっしゃ られた従来の生活保護に該当するかどうかという形の要件と、生活困窮のおそれにある 者に関しては生業扶助をもっと積極的に活用するという観点を考えるならば、自立支援 扶助的な形で、旧来の要否判定に先立って生活困窮のおそれのあるという基準で行う、 あるいは、医療扶助あるいは住宅扶助を単給で行うという制度に作り変えなければいけ ないと思います。  ですから、ここでの要否判定というのは、現行の要否判定として捉えるのか、前もっ て生活困窮のおそれのあるものという予防的なものを含めた、先ほど言った二重基準的 な形で捉えるのか。そういうことをセットにしながら、少し制度の構造を考えるべきだ と何回か議論されました。その基調というのは、報告書の骨子の中で、導入をどう考え るのか、要否判定をどう考えるのか、あるいはその体制をどう組むのかというところに 一本通していただきたいというのが私の意見です。 (岩田委員長)  そうですね。では、そういう方向で少し。多分このこととそんなに違わないだろうと 思います。早期に支援に結びつけようというのはここの委員会でも、もちろん事務局の 御提案でもそのことが一つの非常に大きな柱でしたので、それを低所得者対策としてや るのかどうか。医療扶助の場合は当然今でも二重基準というか、ちょっと上の層でもそ れを出さないと生活保護以下になるよという場合に単給でやっていますし、事実上、介 護保険でも似たようなことをやっているわけですが、何かその辺りの整理が必要だと思 います。この委員会で十分整理するまでには至らなかったので、低所得者対策との関係 も含めて生活保護制度自体でも、例えばこういう方法も今後考えられるかもしれない、 生活保護でやらないとすると低所得者対策としてこういうのが必要かもしれないという 整理はできるのではないかと思います。 (岡部委員)  考え方として出していただきたいと思います。 (岩田委員長)  稼働能力の活用は大変難しいのですが、この表現の問題もあるので、事務局としても 先ほどの自立支援プログラムとこの問題を少し整理していただいて、報告書の内容とし て出していただいたときに最終的に詰めたいというふうに思いますが、よろしいでしょ うか。  それでは、最後に預貯金の保有容認額ですが、参考資料として出されたのは、今は最 低生活費の0.5ヶ月分であるが、これは収入認定する場合であって、実際上は 1か月を 下回っていれば保護の要否判定としては要であるという制度であるという追加資料を出 していただいています。  これは私がこだわって破産法と言い出した責任もあって申し上げます。なぜ預貯金を 持っていた方がいいかというと、早めに生活保護を適用した方がいいということもある のですが、もう一つは、先ほど出ていた判例にもあるように、自立支援という今回のト ーンと一致させるには、大川委員の言うように、丸裸論ではなくて、家計運営とか、お 金を少しためて後で使うという意識はもっと高く評価されるべきことで、それを収入認 定でそがれてしまうと、むしろ非常に保護依存的になっていく。  だから、一方では自立支援の観点から一定程度の預貯金の保有を認める。そして、そ れが家計運営的に使われるというのが片一方にある。これは保護受給中の話です。入口 のところでは最初のアプローチの段階で必要な生活費と、それからスタートしたときの 最初の運営資金的なものが必要なのではないかという気がします。ただ、その金額につ いて1か月が妥当なのか、2か月が妥当なのか、3か月が妥当なのかというのは、まさ に今の国民生活全般の中で国民感情もあるでしょう。何が最低生活維持にとって、いわ ゆる資産ではなくて、やり繰り資金なのか。あるいは特に生活保護を出た後もいきなり 何も持っていないのではなくて、ある程度持っていた方が出やすいというような状況に なって、しかもかなり持っていると思われないような基準はどのぐらいかということで はないかと思います。これは最高裁判決でもそういう書き方をしていると思います。  それで、破産法は個人破産を大変考えているわけで、最近、企業破産だけではなくて 個人破産が非常に増えているわけです。もちろん趣旨が生活保護法と破産法は違うとい うのはおっしゃるとおりで、破産法が3か月だから3か月にしなければならないとは私 も思わないのですが、そうすると今の0.5から3か月ぐらいの幅の中でどの辺りがリー ズナブルかということではないかと思います。 (大川委員)  いただいた資料を見て、最初に参考1ということで、現在2分の1まで認めていると いうことで、丸裸にしているわけではないという御趣旨かと思いますが、やはり2分の 1が少ないということがこの間の議論の中で言われているのだろうと私は考えていま す。変な例えですが、下着だけでは町を歩けないといいますか。ですので、やはりこの 2分の1ということをまず見直すということが第一です。  もう一つは、破産法との比較ですが、私は破産とかの御相談もありますが、通常、生 活保護に相当する生活費の部分は基本的には破産についても処分の対象から外している という考え方の上で、なおかつ自由財産について3か月認めていこうと私は理解してい ます。そういった意味で考えると、この比較の仕方に一つ疑問を感じるというのがある のと、逆に、例えばこの上の破産についての考え方というのは、まさに私達が今自立支 援で議論してきた内容、つまり再挑戦のために一定の資金の必要があるということで す。つまり、破産ですらここまで考えが変わってきているのですから、この破産法の改 正を私達は読み込むべきではないかと考えています。  そういう意味では、ここにも判例が出ていますが、今やる課題とすれば、資産を認め るか認めないかということよりも、まさに健康で文化的な最低限度生活、あるいは自立 助長という趣旨に沿って、なおかつ国民一般の感情から違和感を覚える程度の高額の預 貯金ではないというのはどのくらいなのか。つまり、その資産保有の範囲をもっと認め るということを前提に、具体的に議論する時期に来ているのではないかということがこ の判決や破産法の改正、あるいは世論の流れがそのようになっているのではないかと理 解しています。 (岩田委員長)  もちろん、これまでも最低生活費の0.5ヶ月分まで認めるという形で生活保護自体も 少し変化してきているわけですが、もうちょっとあってもいいのではないかということ なのです。ですから、非常にあいまいな報告書になりそうで恐いのですが、今の0.5か 月より少し余裕があって、なおかつ国民感情から見ておかしくない範囲で、しかも生活 保護を利用している人たちが自発的に家計運営を行い、自立を自分で促していけるよう なものとしての預貯金は収入認定しない、それから、申請時もそれを認めるという方向 が妥当ではないかという結論ではいかがでしょうか。これが1か月なのか、2か月なの か、3か月なのか、私個人的には3か月だという意見です、極めて個人的ですが。  しかし、破産法は大川委員がおっしゃったとおり、収入は収入で賃金の全部を押さえ るわけでもありませんし、預貯金は預貯金で考えますので、要するに最低生活における 預貯金の最低ということです。これは言わば調整資金といえます。ただ、私はもしもそ れをある程度の幅で認めるなら、一次扶助のような臨時的なものはまず調整資金である 預貯金を最初に使えという指導はあり得るということも併せて考えてもいいと思ってい ます。  では、ここで2か月とか3か月という結論を出すだけの根拠が大変乏しいので、破産 法やその他の調査等も十分勘案して妥当な基準を決めることが望ましいという報告書に なるかと思いますが、いかがでしょうか。そのような集約点でよろしいでしょうか。事 務局、よろしいですか。 (岡田保護課長)  これについては賛否両論がございまして、今日出席されていない先生方もいらっしゃ いますので、そういう意見も入れていただきたいと思います。 (岩田委員長)  そうですね。 (後藤委員)  非常に初歩的な質問かもしれないのですが、今日の説明の中でも強調された預託する 仕組みの中身がわかりにくかったのですが、個人アカウントのようなものをつくるとい うような発想でしょうか。 (岡田保護課長)  基本的には、例えば保護受給中の期間でもたくさん預貯金が貯まったりしているとい うケースがあるわけですが、そこについていろいろな御批判があります。その中で自立 を目的とする資産については、ある程度用途、使途を制限して、こういうものに使って もらうということで保有を容認する考え方があるのではないかというのが預託の考え方 でございます。 (後藤委員)  そうなると、入るときに、例えば最低生活費の0.5ヶ月分以上、3か月分とは言いま せんが、それぐらいの資産をもし持っていたとして、それをきちんと預託していれば、 それでうまく自立支援活動がうまく動いて回って、早期に出て、預託されたものを自分 自身の更なる自立に使っていくというイメージならば、預託ということをきちっとする のだったら、たとえ多少増やしても問題ないという論理にはなりませんか。 (岡田保護課長)  そこは、そういう点も踏まえて、全体として最初の入り口の保有はどうかという点に ついてはこの場で何度も御議論があったところです。  それから、先ほどの判決の趣旨は、保護金品として支給されたものを本人の節約によ って貯金をしたものをもう一度収入認定するのはおかしいのではないかという判決でご ざいますので、入口のところの収入認定の方法と保護受給中のものというのはやはり質 が違うのではないかと考えていますが、それについては今まで何度も御議論していろい ろな御意見があったところだと考えています。 (岩田委員長)  では、そこも多分もめると思いますので、報告書の中で。おっしゃるとおりだと思い ます。そして、また逆の意見もあると思います。保護金品でためるとは何事かという意 見もあるとは思いますので、その辺りを含めて。  それでは、今日はもう時間も遅くなってしまったのですが、資料2として起草委員会 として2回委員会をやりまして、報告書の骨子案というのを今日お付けしています。今 日はこの御議論をする時間はないので、見ていただいて御意見をいただきたいと思いま す。 (京極委員)  骨子案に絡むのですが2点ございます。これは今日の議論と関係することが1点とも う1点大きな問題でございます。  委員長も先ほどちょっと触れられたことなのですが、1点目は不動産の問題で、確か に生活保護法第4条で資産の活用が要件とされていますが、家を売って資産として活用 するまでは生活保護を受けられないというわけにはいかない例もあるわけなので、その ときに活用しなくても、死後それを弁済するということも資産の活用の一つではない か。そうしないと、遺産相続人がその不動産を相続するということになるので、社会道 義的に、これはやはりおかしなことです。ここのところはどこかで触れていただかない といけない。  もう一つは医療扶助のことであります。介護扶助のように、被保護者も国民健康保険 の一員にして、生活扶助の中に国保の保険料を加算して、そして医療扶助はあくまでも 本人の利用者負担についての扶助である、その他は国民健康保険が出すという形にすべ きです。  これは市町村が非常に抵抗いたしまして、国と自治体のせめぎ合いというか、それに 県が絡んできて、なかなか簡単にいかないことは重々承知しています。方向としては国 民皆保険の中でやはり介護がそうなっているわけですから、医療保険についても将来検 討する課題として是非指摘をしていただきたいと思っております。 (岩田委員長)  今の2つの点についてはこの委員会でももう既に御指摘がありましたし、固定資産に ついては京極委員の方から先ほどのような御意見もいただいております。第3の2の 「資産・能力の活用等の在り方」のところに、今日の議論も含め住宅の問題とか自動車 保有の問題とか、ここで議論したことは全部入れてまとめることになるかと思います。  医療扶助については、第3の4として新規項目を立てるか、あるいは第4の2の「低 所得者対策等他施策との連携」の中に国保との関係で入れるか、どちらがいいでしょう か。その辺りもお考えいただいて、そのことも当然触れることになると思います。 (大川委員)  もう一つ、今の国保の問題をもし仮に達成するとすれば、一番大きな問題は三位一体 改革、国庫負担金の問題かと思います。今日は時間的に議論は厳しいのですが、一つは どこの項目に入るかということと、私は、この間の専門委員会の議論をずっと聞く中 で、委員の方々にほぼ共通して国庫負担金の問題については非常に危惧をしている、あ るいは、私も含めてはっきり反対と意思表示をしている人がいると思います。  これは生活保護制度の根本にかかわるといいますか、生活保護制度はそもそも何なの かということもありますし、あと社会政策上、これからいろいろ制度を変えていかなけ ればいけないときに、今、国庫負担率を変えてしまったら、極端な話、例えば自立支援 システムを作るであるとか、救護施設の位置付けを考え直すとか、そういった私達が議 論してきたものが吹き飛びかねない状況ではないかと思います。  したがって、もしこの専門委員会の議論を集約するということであれば、先ほど申し 上げましたが、国庫負担金の問題については、危惧あるいは反対というか異議申立てに 近い表現になるであろうと思いますし、是非報告書の中にこれを入れていただきたいと いうのが私の強い意見です。 (岩田委員長)  財源問題については、第4の1の「実施体制」のところで当然財源とか組織とかどう いう単位で実施をしていくかということも触れることとなりますが、国庫負担金の問題 いかんによっては非常に鋭い矛盾として出てくることになると思います。ただ、どうい うふうに出るかというのはまた御議論いただきたいと思います。  それでは、今日は三位一体改革についても資料を出していただいております。時間が 過ぎましたが、今の御意見もございましたので、ちょっと御説明いただけますでしょう か。 (岡田保護課長より資料3「三位一体改革について」に沿って説明) (岩田委員長)  まだ、かなり流動的ですが、私達も傍ら三位一体改革が進んで、傍らここで議論して いるという大変難しい状況で、なるべくここで議論したことが実現できるような財政基 盤や実施規模といいますか、実施のエリアというか、何かそういうものが合理的に設定 されていくようにということを願うばかりでございます。 (布川委員)  質問はいいですか。 (岩田委員長)  では、手短に。 (布川委員)  この率を引き下げるという根拠ですが、何かこの分を移譲するとか、この分を切り分 けるという、何かそういう手当があるのですか。率を引き下げる根拠というのはどうい うことになるのですか。 (岡田保護課長)  具体的な提案でしょうか。 (岩田委員長)  地方と国が、生活保護行政の実施の中でどこについて国が出して、地方はどこの部分 をやるからそれで地方の負担を増やすという話になるのかどうかということです。 (布川委員)  他省庁だったら人件費分は外すとか、そういう議論をしているのだと思います。どう いう論理でこれだけ下げるということになっているのかの質問です。 (岡田保護課長)  生活保護についてということでございますか。それについては明日の締め切りに向け てまだ検討中なので、具体的な成案がまだ出るに至っていないというのが現状でござい ます。 (岩田委員長)  その辺りは、生活保護はなかなか難しいところもあって、それこそこの自立支援プロ グラムがもっと進んでいって、地方が独自にいろいろな状況に応じて取り組み出したり すれば切り分けとかできる可能性もありますが、ちょっと難しい状況かもしれません。 (大川委員)  私どもは財源移譲で担保されるという説明しか受けていないのですが、現実問題とし て財源移譲されたものが本当に必要な分として生活保護に充当されるかということは、 理屈はともかく相当危惧されているのです。  先ほど地震があったので思い浮かんだのですが、例えば地震から避難した村が仮設住 宅を造ってある大きな市に移ったとすると、従来年金と田畑だけで生活されていた高齢 者の方が要するに被保護者になるわけです。そういったことは、当然自治体は地方財政 計画の中で想定しているわけではありませんし、更に言えば、被保護者が増えるという のは、自治体の経営とは別の様々なもっと広域にわたるいろいろ経済要件の中で起きる ことです。財源移譲によって本当に生活保護の必要な予算が担保されるかどうか、これ をきちっと押さえてやらないといけません。裏を返せば、生活保護制度というのはそう いう予定しないものに対して国家が負担するという考え方に立つべきではないかと考え ているのです。ですので、単なる足し算と引き算の説明ではなくて、そういった意味で 生活保護制度の位置付けがどこにあるのかを踏まえて、比較をしてはいけませんが、国 民健康保険や児童扶養手当とはかなり性格の違うものだということを具体的に報告の中 に入れるべきではないかと考えています。 (岩田委員長)  それはこの三位一体改革だけではなくて、社会保障の一体改革の中でも、生活保護の 独自な位置は強調しておかないと、知らない人は知らないので、同じように考えられて しまうということがあると思います。  おっしゃるように、あらゆる予想もつかない理由や非常に個別的な事情の複合的な要 因の中で貧困に陥るというのを最後にここで支えるということになりますので、その点 も十分踏まえて捉えないと、過去に負担率が落ちたときに保護率が下がっていくことに ならないような方策が同時に何か行われたとしても、安心はできないと思います。  ただ、非常に流動的ですので、少しその辺りを見ながら、こちらが報告を出す方が早 いのか、向こうが決着する方が早いのか、ちょっとよくわかりませんが、何らかの形で そうした危惧をどこかで表現するということにならざるを得ないと思います。三位一体 改革と書くかどうかというのはまた別の話です。  そのほか、よろしいでしょうか。 (岡部委員)  その件に関して、第1回の委員会から話し合われたかと思いますが、生活保護制度 は、要するにナショナルミニマムの制度である、その中で制度改革をどうするのかとい う話が出たと思います。国庫補助率の変更というのはこの根幹にかかわる話です。今回 自立支援の話が多く出ていますが、その前提には最低生活の保障があります。自立支援 の制度に転換するから国庫補助率を変更するという説明は筋が違います。ですから、補 助率が変更されると非常に厳しいということを私はお伝えしておきたいと思います。  しかし、自立支援は、それは地域の中で大切なことですので、地域住民や国民の方に 自立支援の方策を提供するというのは必要なことです。自立支援を非常に積極的にやっ ている自治体もあれば、非常に不十分な職員配置で十分な質が担保されないところで展 開している自治体もあり、国民、住民に不利益が生じている。ですから、生活保護制度 はどういう制度なのかという位置付けの中で、国家としての役割と一緒に自治体の姿勢 というものも積極的に位置付けていただきたいと思います。  三位一体について私の個人的な意見をお話しいたしました。 (岩田委員長)  どうぞ。 (後藤委員)  やはりアメリカでも州格差が大変問題になっています。財源移譲をしたところで、税 金を払えない人達が集まって、そしてなおさらその人達が何ももらえないという地域が 出てしまうのは目に見えています。それが先ほど言ったナショナルミニマムの意味で す。ですから、地方の自立性を高めるということは、財源の問題とは切り離して考える べきだと思います。  以上です。 (岩田委員長)  どうぞ。 (京極委員)  私は、皆さんの考えと同じで、国の責務というのは極めて生活保護については大きい と考えています。これは皆さん共通ですが、かつて生活保護の国庫負担率は10分の8の 時代があって、これが行革の中で10分の7になって、私も当時、他の分野でしたがいろ いろ運動して、10分の7.5になったわけです。  今度の場合は、私は10分の7.5が一番いいとか、10分の8がいいというのではなくて、 私は10分の7とか、そういう数字もあり得て、国がかなりのカバレッジを持っていれ ば、そしてその財源を市町村なり地方自治体に委ねるわけですから、完全に地方の予算 を増やさないで負担だけを求めては大変なことになるものの、補助負担金の移管によっ て負担割合を大きく持ってもらうということに私はそれなりに意味があるのではないか と考えています。ただし、国があくまでも過半数というか、3分の2なり、10分の7な り持っていることは大事だと思います。そこは譲ってはいけないが、ちょっとでも譲れ ば地方が苦しくなるということではなくて、国が補助金を出している10分の7.5の部分 を一部削って地方にお渡しするわけだから、それは保護の水準が下がるとか、そういう こととはちょっと違って理解しております。  前のときは、橋本内閣だったか忘れましたが、行革でともかく一律に全部国の補助率 を1割カットでやったので、これは地方が大変困ってしまった。だけど、今度の場合は 補助負担金の国から地方への移転の問題があるので、少し考え方も整理して妥当なとこ ろでやるということです。  厚生労働省は実際に苦しいと思います。そうでなかったら、今度は児童とかその他の 予算をどんどん切るのかということになります。私も介護保険の部会でも申し上げまし たが、去年私は夏休み前に子育て支援などの次世代育成支援政策の方向性を委員会とし てまとめて厚生労働省へ出しましたが、厚生労働省はそれに基づいて今年度の小泉内閣 の目玉予算にしたわけであります。にもかかわらず、今回の地方6団体の提案を見たら 削る一覧の中心に子供の問題が入っている。こんな1年間で様変わりするというのはあ り得ないのですが、そういうばかばかしい矛盾が起きないように、ある程度リーズナブ ルな対応をせざるを得ないのではないか。もし、数字合わせということであれば、もう 少し適当な数字合わせがあるのではないかと私は思っています。 (岩田委員長)  議論は尽きないと思いますが、国と地方ということもあるし、今度、地方と地方とい いますか、地方の内部の規模や地域事情によって違うので、現実的な対応としてはその 辺りまでにらんで、実際上ナショナルミニマムがどうやって確保できるかというふうに 考えないと、やはり後世に禍根を残すというか、いろいろな社会安定の一番底ですか ら、その意味では少し慎重にというか、センシティブな検討が必要だと思います。た だ、私の委員会のできることにも限界があって、私達が三位一体改革の議論をこの場で できるわけではありませんので、それぞれ委員の方々が別の場でその辺りを御発言いた だきたいと思います。しかし、委員会報告の中では同じ生活保護を扱いますので、京極 委員や岡部委員の御意見もありましたので、その辺りも含んで、いずれにしても生活保 護行政に支障のないような形にするにはどうしたらいいかという観点は加えたいと思い ます。  大変タイトな時間の中で、多少強引な議事運営で大変申し訳ありませんでした。今日 は時間延長をしてしまいましたが、議論はここまでにさせていただきたいと思います。  それでは、次回の予定について事務局から。 (事務局)  次回の委員会につきましては、11月30日火曜日の10時から12時に、この同じ部屋、厚 生労働省7階専用第15会議室にて開催を予定しております。詳細につきましてはまた追 って御連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。 (岩田委員長)  それでは、どうぞよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございまし た。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)