04/10/06 第22回厚生科学審議会科学技術部会議事録                   第22回               厚生科学審議会科学技術部会                    議事録              厚生労働省大臣官房厚生科学課             第22回厚生科学審議会科学技術部会                   議事次第 ○日時    平成16年10月6日(水)15:00〜17:00 ○場所    厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階) ○出席委員  矢崎部会長        今井委員 井村委員 垣添委員 金澤委員 北村委員 倉田委員        笹月委員 佐藤委員 柴田委員 高久委員 長尾委員 長谷川委員        南 委員        (事務局)        松谷技術総括審議官 上田厚生科学課長 高山研究企画官 他 【議題】  1.平成17年度科学技術関係予算概算要求等について  2.平成17年度厚生労働省科学研究費補助金公募研究事業について  3.『今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会』について  4.戦略研究の進捗状況について(報告)  5.『医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会』について  6.遺伝子治療臨床研究に関する報告について(報告)  7.その他 【配付資料】  資料1 平成17年度科学技術関係施策について  資料2 平成17年度厚生労働科学研究費補助金公募要領(案)  資料3 『今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会』につい     て  資料4 戦略研究プロトコール策定に関する研究の進捗状況  資料5−1 『医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会』の       これまでの開催状況について  資料5−2 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」における個人情報保       護に関する見直しの方向性について  資料5−3 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」における研究の進展       等に伴う見直しの論点について  資料6 遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について  参考資料1 平成16年度厚生労働科学研究費補助金採択課題一覧  参考資料2 厚生労働省の平成17年度研究事業に関する評価  参考資料3 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿 ○高山研究企画官  ただいまから第22回厚生科学審議会科学技術部会を開催します。本日は加藤委員、黒 川委員、竹中委員、中尾委員、中村委員、松本委員からご欠席のご連絡をいただいてい ます。また、高久委員におかれましては少し遅れるというご連絡を頂戴しています。委 員20名のうち、出席委員は過半数を超えていますので、会議が成立することをご報告し ます。  初めに、事務局のほうで異動がありましたのでご紹介させていただきます。7月23日 付で技術総括審議官に就任しました松谷有希雄、厚生科学課長に就任しました上田博 三、健康危機管理官に就任しました岩ア康孝でございます。最後に、7月30日付で研究 企画官に就任しました、私、高山昌也です。よろしくお願いします。  本日の会議の資料を確認します。議事次第の下に配付資料として書いております。資 料1「平成17年度科学技術関係施策について」、以下資料2、資料3、資料4、資料5 −1、資料5−2、資料5−3、資料6ならびに参考資料として採択課題一覧、参考資 料2、参考資料3として名簿が付いています。もし資料がないようでしたら、事務局に お伝えいただければ揃えますので、ご確認をお願いします。  それでは部会長、議事の進行をよろしくお願いします。 ○矢崎部会長  本日はご多用のところ、委員の皆様にはご出席いただきましてありがとうございまし た。本日、議題の内容が豊富ですので、円滑に運営を進めていきたいと思いますので、 どうぞよろしくご協力のほどをお願い申し上げます。  議事を進める前に、最初に事務局を代表して松谷技術総括審議官から挨拶をお願いし ます。 ○松谷技術総括審議官  7月23日付で人事異動がありまして、いまご紹介申し上げましたように事務局が総替 わりをしまして、委員の先生方にはご不便をおかけしたかもしれませんが、一生懸命に やってまいりますのでよろしくお願い申し上げます。また、本日は大変お忙しいところ をお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。  ご存じのとおり、現在、政府では、科学技術創造立国の構築を国の最優先課題の1つ として、平成13年度から平成17年度までの5カ年間を期間とする、第2期科学技術基本 計画を閣議をもって定めて、国際競争力のある研究成果の創出を目指し、ライフサイエ ンスなどの重点分野における戦略的研究開発や研究評価の一層の徹底といったような改 革を推進しているところで、先生方もご案内のとおりです。  こういった政府全体、我が国の政府の方針を踏まえながら、厚生労働省としても国民 の健康・福祉の増進や安全の確保を実現するために厚生労働科学研究等を推進して、そ れらによって得られた成果を実際の行政施策に的確に反映させていくことが求められて います。このため、先般8月末に平成17年度の概算要求をしましたが、平成17年度の科 学技術政策についてはその方針として、1つ目は健康・安心の推進、2つ目は健康・安 全の確保、3つ目は先端医療の実現といった3つの柱を重点事項として掲げて、健康フ ロンティアをはじめとする重点施策を推進すべく、来年度の予算要求を行ったところで す。  また、今後、政府においては総合科学技術会議を中心にして現行の第2期の科学技術 基本計画をさらに推進する、第3期の科学技術基本計画の策定を行うこととなっていま すが、厚生労働省としても総合科学技術会議との連携を図りながら、中長期的な科学技 術政策の方針を検討していきたいと考えていまして、この点については本日もご審議を いただきますが、是非とも審議会の先生方のご意見を賜りたいと考えている次第です。  これらさまざまな課題があるわけですが、私どもとしても厚生労働省の科学技術政策 を総括する立場から全力で取り組んでいく所存ですので、どうぞよろしくお願いを申し 上げたいと思います。冒頭に当たって、ご挨拶を申し上げました。私からは以上です。 ○矢崎部会長  それでは、「平成17年度科学技術関係予算概算要求等」について、事務局から説明を お願いします。 ○高山研究企画官  資料1「平成17年度科学技術関係施策について」をご覧ください。今回の概算要求に 当たりましては先の部会でもご報告していますが、平成17年度科学技術分野の重点事項 について総合科学技術会議でお決めいただいたものを念頭に置いて4点あります。例え ば「安心・安全な生活を実現する科学技術活動の推進」などがありますが、このような ものを考慮しながら重点事項として、先ほど審議官から申し上げました「健康安心の推 進」、「健康安全の確保」、「先端医療の実現」という形のものを重点的なものと考 え、概算要求の中心としています。  概算要求額は右にありますが、科学技術関係予算については対前年度比14.9%増の 1,482億円です。そのうち、特に科学技術の振興に関係する科学技術振興費は、対前年 度費16.9%増の1,259億円です。1つ、相当の額の伸びがありますが、これについては 平成17年度の概算要求に従って、特に科学技術振興費については要望を従来より積み増 しをして要求してもいいということですので、このような10数パーセント台の伸びに要 求しています。ただ、今後の予算編成においてはいろいろと財務省当局と折衝の上、査 定されていく予定です。それだけ注釈を付けます。  また、1の「健康安心の推進」と3の「先端医療の実現」については、特に先ほどご 紹介申し上げた「健康フロンティア戦略の推進」に関係するところで、健康フロンティ ア戦略は5月19日に与党のほうでお決めいただき、また、政府全体として6月4日の概 算要求の方針などを決めた「骨太2004」に入っているものです。  次の頁に概算要求の概要の全体像があります。科学技術振興費については厚生労働科 学研究補助金がありまして、その内訳は3つあります。それ以外に試験研究機関の予算 があります。特に平成17年度は、独立行政法人医薬基盤研究所というのが開設されます ので、その交付金などが新規のものです。また、国立高度専門医療センターの特別会計 予算など、その他科学技術関係予算がありまして、このような内訳となっています。こ の中で健康フロンティア関連経費は、平成16年度ベースで199億円が平成17年度の要求額 としては322億円という形で、特に重点的な要求となっています。  次の頁は、「厚生労働科学研究費補助金概算要求の概要」です。従来より進めている 大きな4つの分野において、その中で18、さらにその枝番もありますが、その伸びの内 訳が示されています。この中で今回の要求の特色として、行政政策分野の中の(1)ウ の社会保障国際協力推進研究経費については、厚生労働科学研究補助金以外の項目とし て平成16年度に要求していた日米医学委託費は、発展的にこちらに入れる形のもので大 きな予算の伸びとなっています。簡単ですが、以上が全体像です。 ○矢崎部会長  ただいまの説明について、何かご意見、ご質問はありますか。一応、全体で16.9%の 増額で概算要求したということです。 ○北村委員  三位一体改革をどのように厚生労働省が対案で示していかれるのか、決定はまだして いないのだと思いますが、あちらのほうが進むことによって科学技術振興の経費も、あ の9,400億円の中に含まれている部分がたくさんあって、大幅な変更をしなければなら ないような説明が別の会でもありました。そのような状況は、いまどうなっているので しょうか。 ○松谷技術総括審議官  三位一体改革については報道等でもご存じかと思いますが、国から地方公共団体への 補助金等を見直して、移譲できるものは移譲してほしいという審議会からのご意見でし た。もちろんこれは三位一体ですので、税源の移譲、あるいは地方税の見直しなどと一 体的に暮れに向けて進めていくことになっています。個別の話は、これから政府部内で も、あるいは地方公共団体との話も進められていくところです。  厚生科学の科学技術推進費の関係については、地方公共団体への補助金等ではありま せんので、一応その枠とは別の議論になっていて、予算要求上もいろいろな一般経費等 を増要求はできるのですが、最終的にはシーリングでご存じのとおり、−3%、−2% といったような枠がありますが、科学技術振興費関係は政府全体の方針ですが、対前年 度同額まで認めるという大きな方針が出ています。  科学技術関係の予算は、そのような枠組で行われているということで、三位一体と直 接は関係ありませんが、政府全体の予算編成の中で国家予算全体がどういう規模になる かは、三位一体は大きなことですので、その間接的な影響というのは最終的な予算査定 の中では出てくる可能性はもちろんあるということです。 ○北村委員  一応、現状では1,259億の科学技術振興については、9,440億円というお金のほうとは 別と考えていいですね。 ○上田厚生科学課長  地方6団体から要求されているものの中で、すべての補助金が9,000何百億に入ってい るわけではないので、そういう精査は必要ですが、あの中には入っていない、全く別個 のものだということでご理解いただければと思います。 ○矢崎部会長  そのほかにいかがでしょうか。 ○長谷川委員  ここに並んでいる、たくさんの研究対策の推進の中身は大体想像がつきますが、「こ ころの健康問題への取組の推進」は具体的にどんなことが想定されているのか。かなり 額も大きくなっていますが、いままでと違ってどんなことになるのか、ほかに比べて具 体的なことが頭に浮かびませんでしたのでお願いします。 ○上田厚生科学課長  担当課が来ていますので、担当課から詳細に説明をします。 ○障害保健福祉部企画課  「こころの健康科学研究経費」は128.5%ということで増要求をしています。思春期 のこころの健康問題、発達障害、引きこもりといろいろな課題がありますが、特に中高 年の自殺が増加していることもありまして、自殺と関連の深いうつ病の対策が1つの大 きな課題と考えていまして、今後この会議でもご議論いただきながら、うつ病対策にも 力を入れながら進めていきたいということで、こうした要求をしています。 ○高山研究企画官  このこころの問題については、循環器の糖尿病関係と関連して、後ほど説明します資 料4に「戦略研究」という枠組も検討していますので、これについてはそのときに説明 させていただきます。 ○矢崎部会長  具体的には、例えば資料2の43頁の11「こころの健康科学研究事業」ということで、 事業の概要、具体的な内容が出ていますので、ここを参照していただければいいかと思 います。そのほかは、よろしいでしょうか。  それでは、本当にご苦労かと存じますが、重点事項が文字通り重点項目になるように 予算獲得に奮闘していただければありがたいと思いますので、よろしくお願いします。  続きまして、「平成17年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業」について、事務 局から説明してください。 ○高山研究企画官  資料2「平成17年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)」に従いましてご説明 申し上げます。これについては、公募要項の部分と各研究課題の案が出ています。一括 してご説明しますが、これについて今日ご審議いただき、ご了解いただきましたなら ば、10月中下旬ぐらいからおよそ1カ月半程度厚生労働省のホームページを利用して公 募する形で考えています。  目次の次に「厚生労働科学研究費補助金の目的及び性格」という記載がありまして、 従来にお示しいただいているとおり、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法 律」の適用を受けるものです。したがって、各種規定に従って実施していただくととも に、問題がある場合はいろいろな措置を取らせていただくことを記載しています。  「公募研究事業」の下に注釈がありますが、本来予算がきちんと決まった上で公募し たらどうかという意見がありますが、最近はできるだけ早期に補助金を交付すべきだと いう政府の科学技術予算関係の改革もありまして、その趣旨に沿う形で、予算が成立し てそれを前提として課題が決定するわけですが、その前に見込みという形での公募をす るということですので、実際、予算の成立状況によっては、新規採択予定課題数を下回 ることがありますので、ご了解いただければと思います。  また、その下に「循環器疾患等総合研究事業」のうち糖尿病対策に関する研究と、先 ほど話題となった「こころの健康科学研究事業」のうちうつ病対策に関する研究につい ては、別途、戦略研究課題として、後ほど資料を読んでご説明申し上げますが、検討し ていまして、今回の公募には入っていません。  その下の注釈として、「平成16年度までに採択された研究課題と同一の研究は採択の 対象となりません」というお断りがあります。  2頁は「応募に関する諸条件等」です。この中ほどに「不適正経理に伴う補助対象者 の見直しについて」とありまして、ここに「不適正経理を行ったことを理由に、平成16 年度以降、補助金適正化法第17条第1項の規定に基づき、当該事業の全部又は一部を取 り消された場合については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ一定期間、当該研究者を 本補助金の交付の対象外とします」という規定を明確化しています。  あと、従来の支出項目などがありまして、5頁の上には、従来からお願いしている補 助金の管理及び経理事務は、主任研究者等の所属機関の長に委任していただくというこ とがあります。  いちばん下の提出期間については、事務作業を進めてここに明記する予定です。あと は従来とほぼ同様です。  8頁の最後に、同一課題で他省庁で採択された場合については、ご連絡いただくとと もにご辞退いただくような取扱いがあります。  9頁に「照会先一覧」がありますが、15の(1)の食品部分については、申し訳あり ませんがワープロ等のミスで、後に出てくるほうが正しいので、後日訂正します。  10頁からは「研究課題の評価」、「公募研究事業の概要」があります。課題の評価に 当たりましては、現在、「中間評価」を適正に実施させていただいていますが、中間評 価により中途で終了することがあることも明記しています。  11頁から各事業に沿って、事業の概要ならびに新規課題の採択方針または個別の課題 が一覧となっています。「政策科学推進研究事業」について、特に「平成17年度の新規 研究は、出生率等の仮定設定等人口・少子化問題、女性・若年者の就労形態の変化の動 向、社会保障と地域・家族等私的ネットワークとの役割分担、年金・医療等制度相互の 給付の調整、年金制度の一元化など当面の行政課題に関するものを重点的に採択するこ ととする」ということとともに、「多職種による共同研究で施策に直結し、短期間で具 体的な成果を上げることが見込まれる実証的研究を積極的に評価する」という形で記載 しています。  以下に課題がありますが、今回私ども事務局としては、できるだけこの採択方針など について重点化するものを公募要項で明示するような形で、従来より取組みを進めてい るところです。  13頁の「統計情報高度利用総合研究事業」は、統計調査などで得られた情報の高度利 用に関する研究などですが、新規課題採択方針として特に「統計行政の新たな展開方向 」がホームページに出ていますが、それを踏まえた研究及び厚生労働大臣官房統計情報 部所管の統計調査に実際に応用が可能な研究を評価するという形での方針が出ていまし て、あと課題があります。  14頁の「社会保障国際協力推進研究事業」は、社会保障に係る国際協力の効果的実施 に資することを目的として、以下戦略的重点的方策に関する研究について募集を行うこ とと、WHO等の国際機関を通じた多国間協力及び二国間での国際協力を進めるにあた って、その具体的な方向性を示すための基礎資料となる研究を採択するなど、重点事 項、新規採択のことを記載して、以下課題です。  15頁の「国際健康危機管理ネットワーク強化研究事業」については、国際健康危機管 理ネットワーク強化研究事業及び国際的な健康危機管理の人材養成・効率的人材活用に 関する研究、NBC災害対応体制のあり方に関する研究について募集を行うなど、新規 課題採択方針を記載していまして、16頁に具体的な課題を明示しています。いちばん上 に注意事項として、「高い緊急性に鑑み、より短期間で成果を得られる研究を優先的に 採択する」とあります。  17頁の「ヒトゲノム・再生医療等研究事業」は、ゲノム科学の成果に基づく個人の特 徴に応じた革新的な医療の実現、自己修復能力を利用した骨、血管等の再生医療の実現 などを目指す。また、これらに関わる安全性の確保のための研究を進める。なお、本研 究事業は、総合的かつ効果的な推進のために、文部科学省等との協力・連携を図ってい くこととしている。このような形のもので、ヒトゲノム分野、遺伝子治療分野、生命倫 理分野、再生医療分野での各募集につきまして記載していまして、そのあとに公募課題 を具体的に示しています。  19頁のいちばん下に、「萌芽的先端医療技術推進研究事業」がありまして、20頁にナ ノメディシン分野、トキシコゲノミクス分野、ファーマコゲノミクス分野とあります。 例えばナノメディシンについては、「超微細技術(ナノテクノロジー)の医学への応用 による非侵襲・低侵襲を目指した医療危機等の研究・開発を産学官の連携により推進 し、患者にとってより安全・安心な医療技術の提供の実現を図ることを目的とする」と ありまして、21頁の下の留意点に、「新規事業である『(4)がんの超早期診断・治療シ ステムに関する研究』に関しては、NEDOとの共同事業であるため、以下の事業に留 意して応募すること」という注意があります。  20頁のファーマコゲノミクス分野は、今回新規で上げているものです。その概要は21 頁の上に「重篤な副作用又は大きな効果の差異が生ずる原因が、患者のゲノムレベルで の個人差によることが推定される医薬品について、関連するSNPsやマイクロサテラ イト等を同定し、解析方法・ツールの開発等を行い、その成果に基づいた最適処方・副 作用回避等への活用手段を検討する研究」ということです。  24頁は、「身体機能解析・補助・代替機器開発研究事業」です。産学官連携の下、画 期的な医療・福祉危機の速やかな実用化を目指すための研究で、いわゆるフィジオーム と称しているものです。必要な研究資金の一部が、参加民間企業により補われるような 研究を優先するということで、このようなものも審査対象にするとして記載していまし て、具体的な分野は以下のとおりです。  その下の「臨床応用基盤研究事業」の中においては、「基礎研究成果の臨床応用推進 研究事業」という事業がありまして、我が国で生み出された基礎研究の成果を臨床現場 に迅速かつ効率的に応用していくために必要な技術開発、探索的な臨床研究等を推進す ることを目的とするというものです。なお、注意として、ここではがんに関係する部分 は別のところで募集しますので除外しています。特に公募研究課題の注意点としては、 「3年以内に探索的な臨床研究に着手しうることが明らかな薬物又は医療技術に関する 研究」という注意点があります。  次に「長寿科学総合研究事業」です。「老化・老年病等長寿科学技術分野」、「介護 予防・高齢者保健福祉分野」、「痴呆・骨折等総合研究分野」について分けていまし て、いろいろと各種課題の募集を行うものです。その留意点としては、25頁の下に「基 本的に、厚生労働行政と一体的に推進する研究や、老人福祉法、老人保健法、介護保険 法等による実際のサービス提供への応用が可能な研究を採択する」。あるいは26頁の中 ほどに、「より短期間で成果を得られる研究を優先的に採択するとともに、特に高齢者 介護に関する課題採択にあたっては、『高齢者介護研究会報告書』、『高齢者リハビリ テーションのあるべき方向』の趣旨を踏まえ、高齢社会の将来像を見据えた高齢者の尊 厳を支える介護及び保健福祉施策の確立に資するものを優先的に取り扱う」という形で の注意事項がありまして、以下公募課題を挙げています。  29頁は「子ども家庭総合研究事業」です。これについては子どもと家庭を取り巻く社 会的状況を勘案し、行政施策の推進のために必要性及び緊急性の高い課題について、実 際のサービス提供への応用が可能な総合型研究を採択する。注意として、課題(1)のア 〜オについては、研究相互の情報交換を密にして連携した取組みを行うように努めると いうことで、(1)は「子どもの心と体の健全な発達支援体制整備のための総合研究」で す。その他、公募課題を挙げています。  30頁は「小児疾患臨床研究事業」です。小児疾患について、より効果的かつ効率的な 予防、診断、治療等を確立するための質の高い臨床研究を募集するということで、具体 的に薬剤などを挙げて記載しています。  31頁の「第3次対がん総合戦略研究事業」は、先ほど予算にもありましたが実際の総 合研究と、がん臨床研究事業がありまして、総合研究の事業については現時点では新規 公募はありません。「がん臨床研究事業」は、がんのより効果的かつ効率的な予防、診 断、治療法等を確立するための質の高い臨床研究及び全国的に質の高いがん医療の均て ん化に資するための臨床研究であって、我が国におけるエビデンスの確立に資するよ う、必要な症例数の集積が可能な班構成により実施される多施設共同研究を採択する方 針で、具体的課題については下に出ているとおりです。  32頁は、「循環器疾患等総合研究事業」で、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞等、その他の 生活習慣病について、より効果的かつ効率的な予防、診断、治療法を確立するための質 の高い臨床研究であって、我が国におけるエビデンスの確立に資するよう、必要な症例 数の集積が可能である班構成により実施される多施設共同研究で、なお書きとして、各 公募研究課題にある留意点を考慮した総合的な研究を優先して採択するという形の採択 方針がありまして、それぞれの分野に分かれて課題と留意点などを記載しています。冒 頭に申し上げたとおり、戦略的に実施する部分はここにはありません。  34頁の「障害保健福祉総合研究事業」です。障害全般について、地域移行や地域生活 支援に資する総合的な技術開発及び体制づくりに関する研究等を実施する。現在の研究 において実施中の課題と重複しないことを改めて明記しています。施策に役立つものを 期待するということで、以下、公募研究課題を挙げています。  36頁は「感覚器障害研究事業」です。視覚、聴覚・平衡機能領域における障害及び日 常生活上の支障をもたらす状態について、その原因となる疾患等の予防・治療及び障害 の除去・軽減に資する研究開発等を実施する。ただし書き以下は先ほどと同じで、課題 は右に記載しています。  37頁の下は、「エイズ対策研究事業」です。38頁の上の中ほどに、「本事業はその疾 病の特殊性から常に最新の治療法の開発、治療ガイドラインの作成や、社会的側面や政 策的側面も配慮した医学的・自然科学的研究等、エイズに関する基礎、臨床、社会医 学、疫学等の研究を総合的に推進するとともに、エイズ対策に必要な施策を行うための 研究成果を得ることを目的とする」というもので、公募課題はその下に示されているも のです。  39頁の中ほどは、「肝炎等克服緊急対策研究事業」です。肝炎ウイルス等について、 その病態や感染機構の解明を進めるとともに、肝炎、肝硬変、肝がん等の予防、診断及 び治療法等に資する研究について採択するもので、課題は以下に出ています。  40頁は「新興・再興感染症研究事業」です。中ほどに、「本事業は、世界保健機関、 米国疾病管理センター等との研究ネットワークを構築・強化していくことにより国内外 の新興・再興感染症研究を推進し、研究の向上に資するとともに、新興・再興感染症か ら国民の健康を守るために必要な施策を行うための研究成果を得ることを目的とする。 本研究事業は、総合的かつ効果的な推進のために文部科学省、農林水産省、環境省との 共同・連携を図っていくこととする」ということで、この特徴として、感染症対策につ いて一層強化すると。例えば研究費の規模は、(1)〜(3)は1〜2億円程度で、研究の集 中的かつ集約的かつ効率的な研究を行いたいということで、新型インフルエンザ到来に 備えての診断、予防対策への基盤的研究などの項目を募集します。  42頁は「免疫アレルギー疾患予防・研究事業」です。免疫アレルギー疾患について影 響を与える要因及び治療法、診断法に関する研究について、アレルギー疾患に関するも の、リウマチ・免疫疾患に関するものについて公募する形で記載しています。  43頁は、「こころの健康科学研究事業」です。近年、重要性が注目されているこころ の健康の問題、精神疾患及び神経疾患等について、最先端バイオ・メディカル技術の活 用、疫学調査による病因・病態の解明、予防・診断・治療に関する研究開発等、最新の 医学的知見を施策の企画・立案及び実施に反映するための研究開発を実施するという採 択方針で、先ほどお断り申し上げましたが、うつ病の関係について戦略的に行う部分は ここに含まれていません。以下、公募課題があります。  45頁は「難治性疾患克服研究事業」です。難治性疾患の克服に向け、特定疾患調査研 究分野の範疇に含まれる疾患の臨床調査研究、横断的基盤研究及び治療成績やQOLを 著しく改善させることが期待できる治療法の開発を重点的に行うというものです。課題 はその下に示されているもので、各種疾患などについて具体的に公募課題を挙げていま す。そして横断的分野、重点分野と続きます。  50頁に「医療技術評価総合研究事業」があります。医療システムを構築・評価する研 究、医療安全体制を確保するための研究、医療の質と信頼を確保するための研究等を支 援し、より質の高い効率的な医療サービスの提供に資することを目的とするもので、そ の下の「医療提供体制の改革のビジョン」に示された医療提供体制の将来像のイメージ の実現に資するような研究を最優先に採択するということでの方針が出ています。その 下に、個別の公募課題を記載しています。  55頁は、「労働安全衛生総合研究事業」です。この中の新規課題採択方針にあります ように、平成15年度を初年度とする第10次労働災害防止計画及びその施策課題を明確に するための4つの検討会「今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会」などがあり まして、そこで示されている課題への事業場の取組みを促進するために調査研究を行う ものを優先採択するということで、以下課題があります。  57頁は「食品の安心安全確保推進研究事業(仮称)」で、平成16年度から名称を変更 する予定で挙げています。食品の安心・安全推進研究等の横断的基盤研究及び健康食品 等、BSE、食品の添加物、汚染物質、微生物、アレルギー表示、輸入食品の安全性等 の個別課題に関する研究を採択する方針で、58頁に横断的基盤研究分野など具体的に公 募課題を挙げています。  59頁は「医薬品・医療危機等レギュラトリーサイエンス総合研究事業」です。具体的 な課題については中ほど下にありますが、注意事項としては、基本的に、薬事法、薬剤 師法、麻薬及び向精神薬取締法、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律等に よる医薬行政施策への応用が可能な研究を採択するということ、また、採択にあたって は、国際的動向も視野に入れつつ、医薬品等の品質・有効性・安全性確保の観点から、 国民の保健衛生の向上に資するものを優先的に取り扱う形で、項目とともに60頁に具体 的な公募研究課題を挙げています。  61頁は「化学物質リスク研究事業」です。化学物質リスク評価・管理技術に関する研 究、内分泌かく乱化学物質(ダイオキシン類を含む)総合対策研究及び家庭用化学物質 の安全対策に関する研究を公募するという形で、その下に具体的な公募課題を挙げてい ます。  63頁は「健康科学総合研究事業」です。今後の公衆衛生組織等に関する方向性を明確 化し、公衆衛生の基盤を強化するための「公衆衛生の基盤確保に関する研究分野」や 「地域における健康危機管理に関する研究分野」、「疾病の早期発見と対策に関する研 究分野」、「健全な水循環の形成に関する研究分野」、「生活環境に関する研究分野」 等、各分野において、健康科学に関係する基礎から応用に至る幅広い研究を総合的に推 進することを目的として、その下に募集課題を具体的に挙げています。  以上が公募課題の概要です。今後の手順等については73頁に「公募研究事業計画表」 があります。そのあとから具体的な研究費を積算するにあたっての積算単価など、ある いは77頁からは「研究計画書の様式及び記入例」を挙げていまして、研究計画書の提出 にあたって参考となるような資料を付けています。  少し説明が長くなりましたが以上です。よろしくご審議のほど、お願いします。 ○矢崎部会長  内容が大部にわたり、ご意見が出るのは困難かと思いますが、何かありますか。 ○今井委員  ちょっと哲学的な話になってしまうかもしれませんが、「健康安心の推進」の部分に 「健康寿命の延伸」があります。これだけではなくその下の「健康安全の確保」も考え てみると、これらの中に入っていることが、もう既にかなり生きた大人用という感じが あります。例えば乳幼児に関することがあまり考えられていない。ですから既にいる人 たちに対してはかなりいろいろなことが考えられているけれど、今から生まれてくる子 ども、もしくは生まれたてから3歳児ぐらいまでの子どもたちについてはあまり考えら れていない。地球レベルで言えば問題はないけれど、実は何を隠そう、いま日本は少子 化で問題になっている割には、健康で元気な子どもを産み育てる、国が育てるという意 味での項目が少ないのかなというのがあります。  11頁の公募の研究事業の中に、「人口・少子化問題に関する調査研究」というのが入 っています。「男性の育児休暇取得」云々のような項目があったり、「子どもを持つ世 帯の実態と子育て支援に関する研究」、その他にも「地域における少子化対策の評価に 関する実証研究」がありますが、何かひとつピンとこないのは実態に全く即していない 気がするからです。  例えばインターネットの書き込みチャンネルの2チャンネルなどを見ると、「私が産 むから国で育てて」、男性からは「自分で育てるなら金髪で青い目の子がいい」とあり ます。これは冗談ばかりだとは思えないのです。私たちの世代から団塊の世代下ぐらい までは、1つの常識みたいなものが一緒で一致しているけれども、今の若い人たちとは コミュニケーションが取れない部分がかなりあると思うのです。  中には「子育てで参った。病院へ乳児健診に行けば『大丈夫ですよ、元気に育ってい ます』、友だちに相談すれば『勝手に産んだんじゃない』、親に相談すれば『私たちが 育てるときはもっと大変だった』と。誰に相談してもどうやって育てていいかわからな い」というような書き込みがいっぱいあったりするような時代です。彼ら、彼女たち は、ぬいぐるみかペットを育てているような意識しかなく子育てが始まっているので、 とてもではないけれど本当に子育てということができない。ぬいぐるみなら投げても壊 れないけれど、それと同じ感覚しかないような人たちが育ってきているのです。そうい う人たちが子どもを育ててくれるのだということを考え、まともに健康安心の推進とい うことを考えたときに、もうちょっと踏み込んだ形で少子化対策問題についての部分を 考えたほうがいいのではないかと思います。  そこで、多分、公募でいろいろなものが出てくると思いますが、これは国が今までも ずっとそうだったのですが、私が女性だから言うわけではありませんけれど、育てる側 を視点にした子育て援助みたいな問題というのは今まで全然考えられてきていないので す。子どものためになるような何とかというのはあるのですが、例えば母親の精神状態 や知識レベルの問題、それから母親をどのように休ませて、どのように働かせたら子育 てはうまくいくのかなどという研究はほとんどないのです。  例えば36頁には、「精神障害についての正しい知識の普及啓発法の評価とモニタリン グに関する研究」というのまで入っているのですから、同じように母親だけではなく、 両親、保護者、誰でもいいのですが、子育てをする人たちに対する普及・啓発みたいな ものを入れるか、もしくはそれに近いような研究を応募してきたときに、そちらを重点 的に頭の隅に置いていただきたいと思います。以上です。 ○矢崎部会長  包括的な少子化対策を思案に入れたご意見ですが、いかがでしょうか。 ○上田厚生科学課長  ご指摘の点ですが、担当課も来ておりますけれど、研究については先ほどの安心・安 全というのは確かに成人を中心に考えています。ただ、最近では、いわゆる生活習慣は 子どものときからついてきますので、まさに健康づくりというのも乳幼児期から始める べきであるという考え方もあります。この点はさまざまな面で我々も取り組んでいきた いと思います。  ご指摘の内容の課題ですが、29頁の「子ども家庭総合研究事業」の中に、今ご指摘の 点を含めて何か1つ項目を立てることは可能ですので、そういう形で取り組ませていた だければと思います。 ○今井委員  親側の視点からという形で。 ○上田厚生科学課長  はい、そのように考えたいと思います。「すこやか親子21」というも政策でやって おりますので、担当課から説明願います。 ○母子保健課  ご質問いただきありがとうございます。私どもの研究としては、子どもの心の総合研 究という枠組みもありますが、いま厚生科学課長も申しましたように、「すこやか親子 21」の枠組み中で、例えば子育て支援について、親と子と両側を支援するような国民 的母子保健の運動計画があります。子どもの心の総合研究の枠組みの中では、これらの さまざまな政策課題が4本ほどあるのですが、それに即した形で、例年研究課題を立て ていて、例えば先ほど先生からご指摘のありました子育てについても、母親側の育児不 安の軽減や、産後うつ病に対する支援といった研究などもこれまで進めてきています。 ○上田厚生科学課長  先生からご指摘いただいた点も含めて、今後対応させていただきたいと考えていま す。 ○笹月委員  いわゆるゲノムのミレニアムプロジェクトというのが今年度で終わりますが、これま での5年を考えてみると、例えばシステムがきちんと構築された、機器が整備された、 人材が育った、そしてそれを利用した成果が出てきた。それが来年度からの予算ではど ういう形で受け継がれるのか。あるいは、今のままがそのまま出てくるのがよいという 意味ではありませんが、どういうフレームワークとして我々は理解していればよいの か、ご説明いただけますか。 ○上田厚生科学課長  後ほど担当の研究開発振興課から補足もあるかと思いますが、先ほどから申しあげて いる「健康フロンティア」の中で、ゲノムというものも疾病の疫学的な観点でも攻めて いくことになると思いますので、これまでのさまざまなメディカルフロンティアといっ たものもまた引き継いでいきたいのです。さらに来年4月に独立行政法人の医薬基盤研 究所というのができますので、その中でゲノムのこともさらに扱っていくことになりま す。そういうハード面、ソフト面、両方から我々は整備していきたいと思います。ま た、研究費もしっかり確保していきたいと思っています。補足があれば担当課から補足 させます。 ○研究開発振興課  いま課長から説明がありましたように、基本的にはミレニアムプロジェクトの次のこ とについては、来年4月に設立する医薬基盤研究所で具体的に進めていきたい、予算に ついてもそちらで確保していきたいと考えています。研究の内容については、現在、理 事長予定者がもう発表されましたので、新たな理事長予定者のご指導の下、詳細に詰め ていきたいと考えています。  併せて、先ほど企画官からご説明しました公募課題の中にも、「ヒトゲノム・再生医 療等研究事業」があり、その中でもミレニアムの成果について活かした課題を採択して いきたいと考えています。以上です。 ○矢崎部会長  その他にいかがでしょうか。先ほどの長谷川委員のこころの科学の研究についてはあ とでご説明があるのですね。 ○柴田委員  38頁にエイズ対策がありますが、いま先進国の中で、エイズ患者が増えているのは日 本だけだという報道を見たことがあります。それが本当なのかどうか。もし本当だとす れば、この増加の傾向を何としても止めるべく、研究だけではないとは思いますが、も う一段何かやったほうがいいのではないかと思いました。質問を兼ねて。 ○上田厚生科学課長  少し数値に絡むこともありますので、担当課から説明を願います。 ○疾病対策課  ご指摘がありましたように、先進国の中で唯一増えているかどうかはいろいろな統計 の読み方等もありますが、我が国のエイズの感染者の数というのは非常に増えている状 況が確かにあります。そういった中で私どもとしては、特に研究の中でも取り上げてい ますように、ハイリスクグループと言われる方に対する介入を積極的に行うような研究 を進めたり、特に研究の中では今は治療法が非常に進んできましたが、そういった進ん だ治療法の中でも新たな問題等が出てきています。そういった点について積極的に研究 を進めていきたいと考えています。また、エイズ感染の予防、それから感染予防のため の普及・啓発等についても、施策の中でも積極的に進めていきたいと考えています。 ○佐藤委員  課題の中に若手研究者の養成・育成など、そういう部分を含んだ課題もありますが、 厚生科学で今までこういう取組みは初めてなのか、また今後こういう部分を厚生科学で はどのように考えていけばいいのか、考え方を教えていただきたいと思います。 ○事務局(眞鍋補佐)  全体に関わる話ですので、厚生科学課の事務局からご説明いたします。若手研究者の 養成については、総合科学技術会議でも若手研究者向けのグラウンドを増やすべきであ るという指摘がされています。厚生労働科学研究費において、従来から若手向けのやや 低額ではありますが、研究費枠を設けてきました。今年もその枠を設けているとご理解 いただければと思います。以上です。 ○笹月委員  各論的で細かいかもしれませんが、例えば新興・再興感染症のプロジェクトの中に、 アジアとの共同戦線やネットワークという研究テーマがあります。これは実際に共同研 究を進めるにあたり、相手国に研究費を厚生労働科学研究費でどの程度支給できるの か、あるいは公的にどうやってトランスファーするのか、その点が、実際に実施してい る現場から、常に聞かれる質問です。例えばこういう公募の要領の中にも、何パーセン トは相手方に与えられるのか、その辺がきちんと記載されていると非常にありがたいと 思いますがいかがでしょうか。 ○事務局(眞鍋補佐)  厚生労働科学研究に関しまして、研究組織を構成することは、ほとんどすべての研究 班でされていると思うのですが、その中で分担研究者として海外の研究者の方がお入り いただくことは可能です。ですからその方が使われたお金なども、厚生労働科学研究費 から出すことは事務的には可能です。一般的にはそういうところですが、そのあと実際 に使う面でどういう事務的なことがあるのか、そこは少し検討の余地があるのかもしれ ません。一応形として、今でも外国の研究者が分担研究者でお入りいただいて、分担研 究報告書を書いていただき、その前提の中で貢献していただくということはできます。 以上です。 ○北村委員  6頁、研究の推進事業に伴う「厚生労働科学研究費補助金による推進事業の活用につ いて」のところで、別の会議で循環器疾患等総合研究推進事業については、(ウ)の 「リサーチ・レジデント事業」が付いていないというようなことがあったのですが、こ の(ア)(イ)(ウ)の3つは、ここに挙がっているすべての研究事業に付けていただ いているのですか。例えばここに書いてあるように、「関係公益法人において実施しま す」というのは長寿財団等で行っていると思うのですが。 ○事務局(眞鍋補佐)  まず全体のことをご説明いたします。推進事業のメニューですが、(ア)(イ)(ウ )はすべてメニューとしては揃っています。その中で厚生労働科学研究費をある一定の 枠で予算要求して、それに付随してこの推進事業の額も要求することになっています。 ですので、メニューの中に「リサーチ・レジデント事業」を組み込むかどうかは、一義 的にはこちらの担当しているそれぞれの課の判断ではありますが、そこに組み込まれて いればこちらのリサーチ・レジデント事業でしていただいて、こういう方を募集して採 択されることは可能です。  ご指摘の「循環器等」について、担当の者がいれば回答させていただきたいと思いま す。 ○北村委員  ありがとうございます。確かに循環器疾患等の名称でこの事業のまとめ方は、つい2 年ほど前から始まっただけで、正確にはなっていなかったのだろうと理解しています。 今後これについても(ウ)の項目を是非お加えいただきたい。 ○生活習慣病対策室 循環器疾患等総合研究事業については、「若手医師協力者活用等 に関する研究経費」ということで、リサーチ・レジデントも一応項目として臨床研究実 施チームのほうではあるということです。 ○北村委員  ありがとうございます。よろしくお願いします。 ○金澤委員  全体的に拝見して、非常によくできていると思いますが、研究期間について、例外的 にあるのかもしれませんけれど、3年を超えるものはほとんど見あたらないのです。こ ういう研究期間は今後少しフレキシブルになさるお考えはありますか。少し長期のもの もあってもいいのではないかという気がするからです。 ○事務局(眞鍋補佐)  原則3年ということでこのような形になっていますが、例えば短期間で成果が出るこ とが見込まれるような、あるいは短期間でやらなければならないというものに関して は、例えば1年という課題もあります。逆に、基盤的なもので長期にやらなければなら ないというもので、指定型で5年という研究も事実としてあります。今の原則3年とい う中でも若干バラエティはあるのですが、そういったことも含めて、次にお諮りいたし ます中長期の厚生労働研究の在り方のところで、今後ご議論していただく場を設けたい と考えています。 ○矢崎部会長  その他いかがでしょうか。ご議論いただきましたこの公募要項については、ご意見を いただいた今井委員をはじめとする方のご趣旨を、実際の採択のときによく反映するよ うに考慮いただいて、一応この公募要項を本部会でお認めいただけますでしょうか。                  (異議なし) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、このような平成17年度公募要項で、研究 を募集していただくということでよろしくお願いしたいと思います。  続いて「今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会」につい て、報告をお願いします。 ○高山研究企画官  資料3、「今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会」の状況 について、経過報告をいたします。  設置の経緯については、6月の当部会においてこのような委員会を設置することを、 お認めいただきました。その後、事務局において、実際どういう課題があるのか、ある いは関連する事業はどういうやり方をしているかなど、いろいろ調査検討したり、ある いは冒頭で申し上げました総合科学技術会議においても、今回の概算要求に当たっても ヒアリングを受けたり、いろいろ意見交換をさせていただいている中で、ご指摘いただ いている事項などを検討していましたので、全体像を出す時間が少し遅れましたことを お詫び申し上げます。  2は、その中で検討した課題(案)で、厚生労働科学研究費の現状や厚生労働科学研 究費をめぐる課題。例えばこの場合については有識者からの意見聴取を行ってはどう か。また、今後5年間を見据えた厚生労働科学研究の在り方として、厚生労働省の果た すべき役割と厚生労働科学研究の位置づけ、分野構成、他の研究機関、研究費との関 係、社会への環元と共に、先ほどご指摘いただいた研究期間については、現在のやり方 と共に、さらに短いもの、長いものをどのように考えていけばいいのかということで す。  また(4)の厚生労働科学研究を運営する制度として、先ほどご説明いたしましたと おり、現在、事業についてはそれぞれ事業所管課で運営していますが、こういうやり方 について今後どうすべきであるのか。あるいは政府全体における競争的資金改革におい て、プログラムオフィサー(実際に事業を運営する者)、あるいはプログラムディレク ター(事業全体、制度などを考えていく者)の配置や、研究費の独立して配分する機 関、現在、基本的には厚生労働本省から研究費の配分をしていますけれど、それとは別 に、例えば文部科学省の科学研究費補助金については、学術振興会が関与しています が、そういったもののファンディングエージェンシーの関係についてどう持っていくべ きか。あるいは事務の電子化については、政府全体の動き、社会の動きですし、こうい う公募事業についてもさらに進めて迅速化できればという観点など。このような事業の 内容に係るもの、枠組みに係るもの、進め方に係るもの、あるいは運営に係るものにつ いてご検討いただければと思います。  スケジュール(案)については、11月上旬頃に第1回を、その後1カ月に1回程度の 割合で開催し、有識者からの意見聴取・論点整理等を行い、一方で、内閣府にある総合 科学技術会議においても、今後第3期の科学技術基本計画を視点において、いろいろな 検討が進められますので、そういう動きと共に、現在、第2期の科学技術基本計画の最 後に当たり、制度改革等も進めておりますので、そういうものとの連携を図りながら、 平成16年度の年度内を目途に一定の報告書を取りまとめていただければと思います。  委員構成については、保健・医療・福祉分野の厚生労働科学研究者、保健・医療・福 祉関係者、試験研究機関関係者等から構成するという形で、委員及び委員長については 科学技術部会長が指命することでご了解をいただいています。以上、進捗状況はこのと おりです。 ○矢崎部会長  この厚生科学審議会について、私どもの科学技術部会ではなかなか中長期的な視点で 議論ができないので、このような専門委員会で、今後の在り方を検討していただくこと は長年の懸案だったのですが、それを実際に具体化していく上で、何かご意見はありま すか。内容は研究の方向性や実際の研究費をどう配分するかなど、そういうところまで 含めた、極めて広い範囲の議論を進めなければならないところです。 ○井村委員  (3)のところに「今後の概ね5年間を見据えた」という期限が切ってあるのですけ れど、この数字はどういう根拠で出てきたのでしょうか。 ○高山研究企画官  1つ、厚生労働省において、従来、研究の進め方、在り方については、概ね5年ごと にある一定の報告書を取りまとめてきたこともありますし、一方で、先ほどちょっと触 れさせていただきましたが、政府全体としては平成7年に科学技術基本法が制定され、 平成8年から5年間の第1期の科学技術基本計画、平成13年度から平成17年度まで第2 期の科学技術基本計画、さらに、おそらく平成18年度からは第3期の5年間の科学技術 基本計画というのが策定されるのではないかと推測しています。概ね5年という一定の 期間は、研究事業の中で1つの区切りというようなこともあり、5年間を見据えた進め 方をご議論いただければということです。 ○井村委員  もちろんそれも1つ入ってよろしいと思うのですが、その先を見据えたということは 考えなくていいのですか。 ○上田厚生科学課長  中長期と言っていますので、5年、10年ということもあるでしょうし、やはり今後の 大きな展開、長期的なことを見据えた展開ということでご議論をいただければ。ただ、 国全体の科学技術基本計画が第3期に入っていくようですから、取りあえず5年という のを1つのメドにはしますが、それとタイアップするためにも、おっしゃるような長期 的な視点というのを必ずこの中で議論したいと考えています。 ○柴田委員  この科学技術部会の下の小委員会は、今いくつぐらいあるのですか。 ○垣添委員  先ほど部会長がご指摘のとおり、厚生労働科学研究の中長期的な展望というのは非常 に重要な話で、いくつも専門委員会ができるとしても、これは是非進めていただきたい 課題だと思っています。その中で、この4月以降、国立病院・療養所が独立行政法人化 してナショナルセンター国立と言っています。ナショナルセンターは一応日本人が罹り 得る多くの疾患の代表的なものをカバーするような形になっていますが、ナショナルセ ンターが国立でいくというときに、厚生労働省の重要な課題として健康はもちろんのこ と、疾病科学、要するに疾病を課題として進んでいくというところが非常に重要な部分 だと思いますので、そこにナショナルセンターがどう関わるかということも含め、この 専門委員会でご検討いただければ大変ありがたいと思います。希望です。 ○矢崎部会長  おそらく研究費配分機関(ファンディングエージェンシー)も絡んだお話になるかと 思います。 ○垣添委員  そのとおりですね。その際には、単に研究費の配分だけではなく、その研究費をどう いう所に配分していくかを考えると、結局は政策決定などに関わってくるところがあ り、中長期的に非常に重要な部分ですので是非ご検討いただければと思います。 ○上田厚生科学課長  この部会の下にいくつの専門委員会があるかということですが、例えば遺伝子の治療 臨床研究作業委員会等々4つありまして、今度の中長期のものが入って5つになりま す。なお、専門委員会ですから、当然、ここで議論したことはこの部会にその都度上げ て、また委員でご審議、ご精査いただくことになろうかと思います。 ○松谷技術総括審議官  補足いたします。いまの垣添委員からのご指摘も踏まえ、この審議会でご検討いただ き、最終的には当部会でお諮りをしたいと考えていました。大変に重要なご指摘だと思 います。  いま課長が申し上げましたように、当部会の下には、今度設けようとしている専門委 員会を含めて5つの委員会が設けられることになります。ただし、このうちの3つは、 いわゆる指針の策定に係る委員会で、ご報告いたしましたとおり、もうすでに策定をし ていますので、いま、そういうのは動いていません。  いま動いているのは、医学研究における個人情報の取扱いに関する専門委員会で、こ れは垣添先生にお願いしてあります。来年度から個人情報保護法が全面施行になります ので、それに向けて研究における指針についても、個人情報保護の観点から見直しをし なければならない点があるかどうかを精査していただきます。早ければ今年11月にもそ の見直しをするべく、いま、相当に急ピッチで審議をしていただいています。関係の他 の指針の専門委員会等も、これに関係するところがありますので、必要によってはまた そちらにお諮りすることがあるかもしれません。以上です。 ○矢崎部会長  この部会はあまり専門委員会がないことと、討論の結果は必ずこの部会でご審議いた だくことになっています。 ○柴田委員  決して多いからいけないということではないと思います。むしろ、専門委員会は効率 を上げるという意味で、短い期間にきちんと結果が出てくることが大切なのではないか という気がします。 ○矢崎部会長  それでは、「今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会」を、 早速立ち上げさせていただくということで、ご了承を得たと思いますので、よろしくお 願いいたします。  続きまして、「戦略研究の進捗状況について」、事務局からお願いします。 ○事務局(眞鍋補佐)  それでは「戦略研究プロトコール策定に関する研究の進捗状況」ということで説明さ せていただきます。資料は4です。表紙をおめくりいただくと、横長でイメージがあり ます。この紙で、戦略研究準備のイメージを説明し、その後、最後の頁で、現在どのよ うな進捗状況にあるかを説明申し上げたいと思います。  まず、本戦略研究については、先ほど高山研究企画官からの説明のとおり、今回の公 募対象ではございません。いま、その準備に時間がかかっているところです。6月1 日、そして7月12日に、私ども厚生科学課の事務局から資料を出しました。これまでよ り大型で、長期にわたる、しかもちゃんと成果を見据え、それが確実に出るようなデザ インを予め作った研究をしようではないかということを説明いたしまして、概ねお認め いただいた、そういう下で作業をしているものでございます。  まず、戦略研究の準備イメージです。これは右から説明いたします。右側に「成果目 標」がございまして、糖尿病関係あるいはうつ関係ということで、いまのテーマをヒア リングなどを行い、選定中です。どんな介入をすれば、どんなアウトプットがあるかと いうことを想定し、成果の目標を立てることが、最初の段階です。  その後に「2004特別研究」。いま特別研究班を設け、そこで具体的な研究計画を 選定し、そして計画策定という作業を進めているところです。この研究計画、特別研究 の下におきまして、課題提案、優先課題の選定、そして研究プロトコール、これは大事 だと思っていますが、確実に研究の成果が出るようなプロトコールを作成するというこ とで、案を作っていただける研究班を、いま作っています。  その後、こちらの科学技術部会でその計画に関して、研究班からか、あるいは事務局 からか分かりませんが、その案を説明いたしまして、そこでご議論いただき、ご承認し ていただくと、そういうプロセスを経るということです。  そうしますと、年内あるいは年が明けてしまうかもしれませんが、委託先の団体を選 定し、ミニファンディングエージェンシーの形で、研究費配分機関を選定し、そこが研 究計画を何らかの形で、インターネットに載せるなりという形で公募し、それに参加し ていただける機関や研究者、あるいは地域を公募し、研究費を交付する準備をすること になっています。それに呼応する形で、研究機関なり研究者の方々が、そのプロトコー ルのこの部分なら参加できるということで、そこに応募いただくことになるのだろうと 思っています。  例えば、先ほど長谷川先生からありましたうつ病関連ですと、一般の方々かどうかも いま検討しているところですが、一次予防、それからその治療のところ、それぞれター ゲットを絞って公募するわけですが、一次予防ですと地域、その市町村とか保健所、そ この研究者の方も応募していただけるような形になるのではないかと考えています。  3枚目で準備状況を説明いたします。右側に「これまでの準備状況」として、6月と 7月の科学技術部会で、概ねこういう研究を立てるということに関してはご了解いただ いており、先ほど申し上げました、厚生労働科学研究の特別研究事業を設け、成果目 標、それを可能にする発症予防・診断・効果的治療技術に関する研究戦略の骨格をまと める作業を、この研究班にお願いしています。  2つ研究班を立てていまして、戦略研究プラットホーム策定、プロトコールを書く、 その研究計画を立案するという作業を、当部会の委員でもある黒川清先生にお願いして おります。もう1つ、自殺関連に関しては、ちょっと分野が特殊であり、専門性を要す るということから、別にサブグループのような研究班を立て、精神神経センターの樋口 先生を主任研究者にお願いして、プロトコールの案を作っていただいております。両研 究班において、いま、それぞれ3回から4回研究班会議を行い、精力的に関係学会ある いは研究者の方々、あるいは地域の一次予防の取組みをされている方々から、どんな取 組みをされているかの事情をお話しいただき、研究結果に反映させる作業をやっている ところです。  今後の予定ですが、左側にカレンダーがございます。平成17年に入る頃から委託先の 選定を進めるとともに、こちらの科学技術部会でその内容に関してご審議いただき、そ の結果ご承認いただけましたら、それに従い、委託先の団体でこの研究に関して公募の 手続に入り、平成17年度から研究開始ということで進めたいと思っています。以上で す。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。この戦略研究プラットホームは、包括的なプラットホームではな く、もう大体、うつ病と糖尿病というふうに理解してよろしいのですか。 ○事務局(眞鍋補佐)  そのとおりでして、前回の7月12日の科学技術部会で、当方から「健康フロンティア 」の一環ということで、大型の研究を設けたい、その対象としては、糖尿病とうつ病を いま考えているということでお諮りし、その線で進めているところです。 ○矢崎部会長  予算的にはどのぐらい考えていらっしゃるんですか。 ○事務局 定性的な言い方ですが、大型でチョッキと言っております。具体的な研究費 がいくらというのはまだで、もちろん私どもとして、研究の事業自体はこれまでの既存 の循環器等の研究事業と、それから「こころの健康科学」の両方を使い、大幅に伸ばし て要求をしているところですが、そこは企画官から申し上げましたとおり、研究の最後 の査定段階でどの辺に落ち着くかというのは、ちょっと見えないようです。もちろん従 来よりは大型にしたい、期間は5年にしたいということは決まっているところですが、 具体的にいくらというのはここでは申し上げられない状況です。 ○上田厚生科学課長  大体、いままで研究1課題、最大3,000万とか5,000万というのが多かったですが、や はりそれは億単位にならないとまずいだろうということで、1本億単位の研究になると は思っておりますけれども、全体的な予算の査定もこれからございますので、それを見 て効果的な大きさにしたいと思っています。また後日、予算が固まりましたら、ご相談 する機会があると思っております。 ○矢崎部会長  そうしますと、黒川班、樋口班の腕次第ということにも、ある程度なりますね。 ○北村委員  この戦略研究と、先ほどからご説明のありました、資料1にある「健康フロンティア 戦略事業」というのとは、これは含まれるものなのですか、別ものなのですか。何か糖 尿病とこれであれば、含まれる部分がありますが、こちらに書いてある戦略では違うも のも入っているかと思いますが。これは一部と考えるのか、こちらのほうが広いと考え るのか、全く別の事業として計画されているのか。そしたら2005年といったら、もう来 年ですので、なぜこの予算審に出てこないのか、ちょっとご説明をいただきたい。 ○事務局(眞鍋補佐)  健康フロンティア戦略自体は来年度からということで、政府全体で厚生労働省中心に 進めていくことにしております。ご回答から申し上げますが、健康フロンティア戦略の 中に位置付けております。健康フロンティア戦略自体は、健康寿命の延伸ということ で、そのために生活習慣病対策、それから疾病負荷の大きいようなものの対策、あとは 介護予防といったものを中心に新しい柱だてをしておりますが、その一環です。  予算においては、「こころの健康科学研究経費」とか、これまで糖尿病とかが含まれ ていた循環器等の研究費の中で膨らませて、増額要求をさせていただいているところで す。 ○北村委員  そうすると、健康フロンティア戦略のほうがむしろ大きくて、この5年計画性を立て た戦略研究というものを、この中から位置付けている。したがって、この予算も、先ほ どのご説明の中に含まれたものということで理解してよろしいですか。 ○事務局(眞鍋補佐)  そのとおりでございます。 ○北村委員  ありがとうございました。 ○柴田委員  これは、5年というものを目指す戦略研究とかを毎年決めていくという予定で考えて おられるのか、5年経ってから、次はその5年後ということになるのかということが1 つです。もう1つは、毎年でも5年後でもいいのですが、そういうのをやっていくこと と、先ほどの中長期計画を考えるという専門委員会との関係は、何かあるのかどうか。 その2点をちょっとお尋ねします。 ○事務局(眞鍋補佐)  まず、1点目のご質問の、毎年5年で考えていくのかということですが、研究計画自 体が5年経って、やっとその症例も集まり、あるいはそのデータも集まり、いま、この 研究班で考えていただいているような、エビデンスが出るような計画を立てていますの で、計画自体は1回立ててしまって、公募してからは、その計画どおりにいっているか どうかを管理することが主になると思います。  もう1つ、違うご指摘かもしれませんが、毎年5年を考えるのかというのは、糖尿病 ではない、例えばほかのものに適用していくかということだと思うのですが、それはま さに2つ目のご質問とも絡むとも思うのですが、今後の中長期的な厚生労働科学研究費 の在り方を考えていく中で、成功するように私ども頑張っているつもりですが、ほかに も広げていくべきだとか、そういうことをご議論していただければと考えているところ です。 ○高久委員  この「健康フロンティア」と「戦略研究プロトコール」、その前にミレニアムが終わ りますね。それをある程度引き継ぐ形で、この2つを進めると考えていいのですね。 ○高山研究企画官  ミレニアムゲノムプロジェクト、あるいはメディカルフロンティアということについ て、この全体の流れから申し上げますと、新たに平成17年度からやっていく健康フロン ティア戦略の中にその成果を生かす、あるいは一部残っているものは、そちらに発展的 に引き継いでいくという形で考えています。 ○矢崎部会長  進捗状況ということで、これが具体化すれば、委員の皆様にまたご検討いただくこと になるかと思いますので、よろしくお願いいたします。  次は、「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会」につい て、事務局からお願いいたします。 ○高山研究企画官  資料5−1、5−2、5−3ですが、「医学研究における個人情報の取扱いの在り方 に関する専門委員会」のこれまでの開催状況と、そこでご審議いただいた結果などを報 告させていただきます。この委員会については資料5−1のとおり、6月の科学技術部 会において委員会の設置についてご了承いただき、7月に委員と、また委員長ついては 当部会の垣添先生にお願いしているということで、その報告をさせていただいたところ です。そして第1回を7月14日に開催し、個人情報保護をめぐる現状についての説明 と、これまでの医学研究に係る倫理指針について、個人情報保護の観点等から検討すべ き点をご議論いただいたところです。  この中で、特に「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」については、平成 13年に文部科学省、経済産業省とともに、三省指針という形で作り上げたもので、各指 針の中ではいちばん早期に出来たものもございます。これを、まず検討するという方針 において、第2回以降については、三省で作っておりますので、三省のそれぞれの委員 会の合同委員会という形で、全体の座長を垣添先生にお願いし、3回開催しておりま す。その委員会において精力的にご検討いただき、一定の結論というか、方向性をお示 しいただいたところです。それが資料5−2、5−3です。  その中において、1つは個人情報保護の関係での整理を行い、それが資料5−2で す。特に、「個人情報」の定義について、この研究では連結可能匿名化及び連結不可能 匿名化という作業を行っています。その段階において、情報の整理を行うことについて 非常に慎重にご議論いただき、一定の整理を見たところです。そして匿名化以降、対応 表がない所においては、個人情報保護法にいう「個人情報」の定義には当てはまらない であろうと。ただ、遺伝情報などのセンシティブな情報を扱いますので、ゲノム指針に おいてはいろいろな安全管理措置をつけており、それに基づいて適切に扱うべきだとい う形のものです。  そのほか、2頁の「安全管理措置に係る規定」については、詳細について規定する方 向でご議論いただきました。組織的安全管理措置について組織体制の整備や、人的管理 措置については守秘義務の徹底、あるいは物理的なもの、技術的なものについて具体的 なものを記載するということとともに、この委託先の監督について、明確なものがござ いませんでしたので規定を追加する、というものが主なところです。  三省で作りました「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」について、個人 情報の観点から見直していただいているところで、どうしても研究の進展と関係がござ いますので、それについては資料5−3で、併せてご議論いただきました。  資料5−3では遺伝情報(ジェネティック・データ)の定義については、当時の提出 資料のままですので、結論がここには書いてございませんが、いちばん最初の所は、そ の方針でよろしいであろう。プロテオーム情報については、この方針でよろしいであろ う。透明性の確保に関する視点については、地域住民との断続的な対話に努めるなど、 もう少しこの内容については詳細を規定すべきということ。国際共同研究における指針 の運用の考え方は、この方針でよろしいであろう。教育目的の遺伝子解析については、 この方針でよろしいであろう。2頁、責任体制の在り方については、研究機関の長とし ての責務として、「研究機関の長が研究の的確な実施のために全般的かつ統括的な責務 を有する」と規定したらどうか。そして(2)の、ここで匿名化作業を委託するかどうか については、これは改正しないと対応しないという結論になっています。その下の個人 情報管理者は、この方向性です。そして、一般の外部委託の手続きはこの方向です。多 施設共同研究も、こちらの方向です。倫理審査委員会の議事内容の公開についても、こ のような方向です。  次頁のインフォームド・コンセントの対応者の要件については、説明者と対応者、取 得者で整理が必要で、取得者は守秘義務がかかるべきものであるとの意見があり、ここ までご議論いただいたところです。次回、10月13日、以上の点を踏まえて、改正内容を 明確にしたもので、最終的なご審議をいただく状況での報告となります。  少し経緯がございますので、説明いたします。専門委員会においての審議は、個人情 報保護法の規定がこの指針に基づいてきちんと盛り込まれているかどうかについて、必 要な規定の整備を行っていただいたところです。  また、「遺伝子治療臨床研究に関する倫理指針」、「疫学研究に関する倫理指針」及 び「臨床研究に関する倫理指針」についても、この三省の「ヒトゲノム指針」を手本と し、同様にその整備を進めるというところです。  一方で、政府全体の流れとして、この個人情報保護法については、医学研究のほうは 除外されているのですが、元々の法律については来年4月1日全面施行という形で、併 せてそれらと一緒に検討しているものについて、どういう措置が必要なのか、あるいは 指針を少し手直しするのであれば、どういう措置が必要かということを、その対象とな る方に早くお示ししなさいという方向性があり、少し委員会の先生におかれては非常に 大変なところを、集中的にご議論いただいたところです。現在までに概ねの整理ができ ており、次回は最終的なパブリックコメントを求める形でのものを確認いただき、それ ぞれのところでパブリックコメントを求め、その意見を踏まえて、11月中には関係者に 周知したいと考えているところです。この残りの指針についても、文部科学省と厚生労 働省の二省で行っているもの、あるいは厚生労働省単独で行っているものについても、 それぞれの二省委員会あるいは単独委員会でご議論いただく予定です。流れから、この ような経過で行っております。本日ご了解いただければ進めたいと思いますが、ご意見 をいただきたいと思います。 ○矢崎部会長  期限が迫っているということで、座長をしていただいた垣添先生、何か。 ○垣添委員  大変な座長をさせられて困惑しているところがあるのですが、いま事務局から説明い ただいたように、平成13年3月に、いわゆる三省ゲノム指針が出来て、約3年経った。 この間に研究も進展している。来年4月から個人情報保護法が正式に施行される。その ときに、それ以前に作られた三省ゲノム指針が、この個人情報保護法と整合性に欠ける 部分がないかどうかを点検するというのが、主な作業です。しかも、いま説明いただい たように、非常にタイムスケジュールが切迫しておりまして、専らそちらのほうが中心 で動いている。大体の整理が出来ましたので、先ほど説明されたとおりです。  もう1つ、この3年間に研究の進展に伴って、三省ゲノム指針を見直す必要があるか どうかということで、それの作業をいま進めているところですが、そちらのほうはいま 説明いただいたように、研究機関の長の責務を明示するとか、あるいは集団を対象とし たゲノム疫学研究などを進めるときには、対象集団に対して事前に十分説明をする、な どといったことを盛り込むということがあります。インフオームド・コンセントを取る 際に、研究現場の人たちからは、説明をする人が、いま、臨床治験などの場合にケミカ ルリサーチコーディネーターとかリサーチナースといった、ああいう人たちが次々に入 ってきていますので、こういう大規模な試験などをする際に、やはり説明者がそういう 非医学の人たちも入ってくる可能性がある。それをどうするかということを、いま議論 の最中です。おそらくこれは、説明者はそれでよろしいでしょうけれども、インフォー ムド・コンセントを取得する人は、いまは医師でなくてはいけないということになって いますが、これをどうするかということをもう少し議論して、研究に関する結論を得た いということです。  それで内閣府のほうからは、近々にこれをまとめて、パブリックコメントにかけて、 確か11月中に関係者に周知するということですので、かなり急がなくてはいけないとい うことで、整合性のほうは大体きちんとまとめられると思いますが、三省ゲノム指針の 研究内容の、うんと立ち入った検討に関しては今回はちょっと苦しいかもしれないとい うことを考えています。以上です。 ○矢崎部会長  最終的な結論に至っておりませんが、一応、いまのご報告でご了解いただけますでし ょうか。                  (了解の声) ○矢崎部会長  そうしましたら、具体的な規定の見直しについては、専門委員会の垣添委員のご意見 を十分踏まえ、私と事務局でこれをまとめさせていただくということで、よろしいでし ょうか。                  (了承の声) ○矢崎部会長  ありがとうございます。  それでは、「遺伝子治療臨床研究に関する報告」で、その実施計画について、事務局 からお願いいたします。 ○事務局(渕野調整官)  それでは資料6、「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」の説 明をいたします。千葉大学医学部附属病院で実施されている、進行食道癌(扁平上皮癌 )非切除症例に対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治 療臨床試験において、報告書が提出されておりますので、本件について説明をさせてい ただきます。  千葉大学からの第一報は、本年9月14日です。患者は70代後半男性で、進行食道癌で す。本年7月13日より8月12日まで遺伝子治療を行っていましたが、誤嚥性肺炎並びに 胸腔内播種性転移が出現し、その後、次第に呼吸状態が悪化し、癌悪液質により全身状 態も悪化しました。その後、呼吸不全状態になり、9月13日に呼吸停止、心停止をきた し、お亡くなりになられたとのことです。病理解剖に関しては、ご家族のご意向もあ り、行っていないということです。  本症例に関して、千葉大学における遺伝子治療臨床研究審査委員会の見解では、死亡 は病変の進行によるものと考えられ、また、最終投与から1カ月以上経過しており、治 験薬投与との因果関係はないと判断をした、とのことです。  次に、前回の科学技術部会で報告いたしました、「遺伝子治療臨床研究に係る生物多 様性影響評価の進行状況」についても、特に資料は用意しておりませんが、併せて説明 いたします。こちらの科学技術部会の下に設置した「遺伝子治療臨床研究に係る生物多 様性影響評価に関する作業委員会」において、本年7月及び8月に2回の審議を行った 結果、現在実施中の臨床研究を中断させるほどの問題点は指摘されませんでした。  また、第一種使用規程承認申請の際に、法第4条第2項により提出が義務づけられて いる生物多様性影響評価書の作成に当たっての記載すべき事項を、より適切に整備する よう、該当施設に対して、改定の指示を出したところです。今回の改定の指示結果を、 次回の科学技術部会に報告する予定です。以上、併せて報告いたします。 ○矢崎部会長  千葉大の例で、笹月委員から何かございませんか。 ○笹月委員  例えば、外国で行われた遺伝子治療、肺癌あるいは食道癌で、動脈壁にまで癌細胞が 転移していて、それが遺伝子治療によってむしろ癌細胞が死亡して、癌細胞を殺すとい う意味では治療効果があったのだけれども、そのことによって動脈の破裂といいます か、大出血をもたらした。遺伝子治療の効果による、逆に死亡という例が報告されてお ります。今回の例はそれと全く異なりまして、いわゆる癌の進行、それによる死という ことですので、遺伝子治療との関わりはおそらく全くないと考えてよろしかろうという のが、結論だと思います。 ○矢崎部会長  それでは、その他ですが、前回の本部会で議論していただいた「厚生労働省の平成17 年度研究事業に関する評価」について、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局(伊藤調整官)  参考資料2です。前回7月の科学技術部会において、同じタイトルに加え、括弧書き で、「予算概算要求前の評価」と書いてあるものをご審議いただきました。今回の資料 も、基本的にはそのときの資料と同様です。なお、いくつか変更点がございますので、 その点について簡単にご説明申し上げます。  まず、8月末に、平成17年度概算要求額が確定しましたので、それぞれの研究事業に おいて以前は空欄でしたが、追加をしています。  また、7月の科学技術部会での審議内容を踏まえ、さらに総合科学技術会議の方針に 沿い、反映をさせて改定した部分がいくつかございます。まず16頁からの社会保障国際 協力推進研究の概略図を改定等しました。また20頁からの国際危機管理ネットワーク強 化研究において柱を組み換え、これは21頁の趣旨にありますが、1「核、化学物質によ る災害、テロ」、2「SARS、インフルエンザ、BSEなど」と改定をしました。ま た95頁からの、エイズ・肝炎・新興再興感染症研究において、新興再興感染症研究の概 略図を改定しました。また152頁からの健康科学総合研究において、疾病の早期発見と 対策に関する研究を追加しました。  なお、本日ご審議いただいた、戦略研究における糖尿病対策研究及び自殺関連うつ病 対策研究については、この時点で具体的にはなっていませんでした。それは、この時期 にはまだ枠組みが確定していなかったためですが、実質的な内容については、既存の研 究事業の枠組み内で説明いたしております。以上、ご報告申し上げます。 ○矢崎部会長  一部訂正、概略図を訂正させていただいた部分がございますが、お認めいただけます か。                  (了承の声) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。これですべての議事が終了したところです。その 他、事務局から何か追加はございますか。 ○高山研究企画官  特にございません。 ○矢崎部会長  それでは、本日の部会をこれで終了させていただきます。お忙しいところ、委員の皆 様にはお集まりいただき、熱心にご討論いただきまして、ありがとうございました。 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111    (直通)03-3595-2171