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社保審―医療保険部会 資料2-(1)
第10回 (H16.10.22)

「三位一体改革」の趣旨及び経緯

 趣旨

国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討(「骨太の方針2002」(平成14年6月閣議決定)) )

「官から民へ」、「国から地方へ」の考え方の下、地方の権限と責任を大幅に拡大し、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主・自立の地域社会からなる地方分権型の新しい行政システムを構築していく必要がある。
このため、事務事業及び国庫補助負担事業のあり方の抜本的な見直しに取り組むとともに、地方分権の理念に沿って、国の関与を縮小し、税源移譲等により地方税の充実を図ることで、歳入・歳出両面での地方の自由度を高める。
これにより、受益と負担の関係を明確化し、地方が自らの支出を自らの権限、責任、財源で賄う割合を増やし、真に住民に必要な行政サービスを地方自らの責任で自主的、効率的に選択する幅を拡大する。
同時に、行政の効率化、歳出の縮減・合理化をはじめとする国・地方を通じた行財政改革を強力かつ一体的に進め、行財政システムを持続可能なものへと変革していくなど、「効率的で小さな政府」を実現する。
(「骨太の方針2003」(平成15年6月閣議決定))


 これまでの経緯

【平成15年度】

 ◇  「骨太の方針2003」(平成15年6月閣議決定)
18年度までに、概ね4兆円程度を目途に国庫補助負担金の廃止・縮減等の改革を行う。
廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについては、税源移譲する。

 ◇  総理指示(平成15年11月)
平成16年度予算において1兆円を目指して国庫補助負担金の廃止・縮減等を行う旨の総理指示

 ◇  三位一体の改革に関する政府・与党協議会(平成15年12月)
 厚生労働省は、平成16年度予算において、2,150億円*1の国庫負担金の廃止を行う。また政府・与党は以下について了承する。
 ・ 民間保育所に関する国の負担については、今後とも引き続き国が責任を持って行うものとする
 ・ 生活保護費負担金の見直しについては、地方団体関係者等と協議しつつ、検討を行い、その結果に基づいて平成17年度に実施する

【平成16年度】

 「骨太の方針2004」(平成16年6月閣議決定)
平成18年度までの三位一体の改革の全体像を平成16年秋までに明らかにし、年内に決定する。
全体像には、平成17年度及び平成18年度に行う3兆円程度の国庫補助負担金改革の工程表、税源移譲の内容及び交付税改革の方向を一体的に盛り込む。
そのため、税源移譲は概ね3兆円規模を目指す。
税源移譲の前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する。
国庫補助負担金の改革については、税源移譲に結び付く改革、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革を実施する。併せて、国・地方を通じた行政のスリム化の改革を推進する。その際、国の関与・規制の見直しを一体的に行うことが重要。

 8月24日 地方6団体*2が「国庫補助負担金等に関する改革案」を総理に提出
  ⇒  ・  廃止対象補助金  約3.2兆円 (うち厚生労働省分 9,444億円)
 ・  税源移譲額  約3.0兆円

 9月7日 三位一体の改革に関する大臣会合*3開催
 ⇒  官房長官より今後のスケジュールが示されるとともに、地方からの改革案に意見がある場合には、提案されている廃止額に見合う代替案を提出するよう指示

 9月14日 国と地方の協議の場*4開催

 10月12日・19日「国と地方の協議の場」テーマ別会合(社会保障分野)の開催


 今後のスケジュール

 10月28日 各省案の提出期限

 11月中旬 全体像の取りまとめ

*1 児童保護費等負担金(公立保育所運営費)、市町村事務取扱交付金(児童手当)、水道施設整備費補助等
*2 地方6団体・・・全国知事会、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会、全国町村議会議長会
*3 三位一体の改革に関する大臣会合・・・内閣官房長官を中心に総務大臣、財務大臣、経済財政政策担当大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、国土交通大臣、環境大臣、経済産業大臣等で構成
*4 国と地方の協議の場・・・地方6団体と関係閣僚で構成


社会保障分野に係る地方6団体からの提案の概要

 対象額:             約9,440億円
 対象事業:
 
【特別会計事業関係: 約480億円】
 ○  児童育成事業
 ○  離職者等の職業訓練費 等

【施設整備関係: 約1,580億円】
 ○  社会福祉施設の整備  (特別養護老人ホーム、障害者施設、保育所等)
 ○  保健衛生施設の整備  (老人保健施設、精神障害者施設、市町村保健センター等)
 ○  医療施設の整備  (へき地診療所、救命救急センター等) 等

【運営費、事業費関係: 約7,390億円】
 ○  SARS、予防接種等の感染症対策  ○  エイズ対策等
 ○  民間保育所運営費  ○  障害児施設等の運営費
 ○  延長保育、つどいの広場等  ○  児童養護施設・乳児院等の措置費
 ○  養護老人ホームの運営費  ○  児童虐待対策・DV対策等
 ○  在宅福祉事業費補助金(介護予防等)  ○  老人保健事業
 ○  へき地医療対策、救命救急センター  ○  母子家庭等自立支援対策
 ○  ホームレス対策、地方改善事業(隣保館等の運営費) 等


地方公共団体向け国庫補助負担金の状況

地方公共団体向け国庫補助負担金の状況の図

地方6団体の提案の問題点

 提案は、介護費用、老人医療費、国民健康保険医療費、生活保護費等の負担金に関しては具体案を示さないという基本的問題がある一方、少子化対策等に係る補助負担金と裁量的補助金の全般を廃止することとしているが、次のような問題がある。
(1) 国民の安心と安全を守るべき社会保障について、一定水準のサービスをどの地域においても格差なく保障するという国の責任が果たせなくなる。
(2) 毎年の介護・医療の給付費の相当部分が国税や労使の保険料で賄われているにも関わらず、介護施設の整備や生活習慣病対策の補助金などが廃止された場合には、国はこれらの給付費の適正化について責任を果たせなくなる。
(3) 本年6月に少子化社会対策大綱が策定され、来年度から次世代育成支援対策推進法に基づく10ヵ年計画が実施されるなど、国を挙げて少子化対策に取り組もうとしている矢先にも関わらず、国が施策の実施について責任を果たせなくなる。
(4) 障害者施策については、入所施設の運営費のうち18歳までの障害児は地方が、18歳以降の障害者は国が、それぞれ担うということでは、支援の一貫性が分断される。
(5) SARS対策などの健康危機管理、電子カルテ導入などの先駆的・モデル的取組の実施や検討について、国が責任を果たせなくなる。
(6) 事業主拠出金など租税財源でない国庫補助金も廃止移譲対象としているが、これは今回の趣旨にそぐわない。


厚生労働省の対応の方向

 厚生労働省としては、地方6団体提案について検討を行ってきた。

 地方6団体提案の国庫補助負担金のうち一部については廃止の方向で検討するが、大部分については既に明らかにしたような様々な問題点があり、廃止することは困難である。地方公共団体の自主性・裁量性にできる限り配慮しつつ、国において実施することが適当である。

 したがって、代替案を提示することとし、社会保障制度の今後の在り方を踏まえ、また、地方の役割を強化することで一層的確な運営が図られ得るものとして、次の事業における国庫負担の見直しを行っていくこととしたい。
○国民健康保険
○生活保護
○児童扶養手当


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