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疫学研究に関する倫理指針■■■
平成16年10月15日


個人情報保護に関して検討すべき事項(案)


■ 個人情報保護法と疫学研究に関する倫理指針の整理

 個人情報保護に関する法律は、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)」及び「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(独立行政法人等個人情報保護法)」がある。
 ここで、「疫学研究に関する倫理指針(疫学研究指針)」とこれらの個人情報保護に関する法律の関係を整理すると、個人情報保護法第8条に「国は、・・・事業者等が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針の策定・・・を講ずるものとする。」とあり、国が指針を策定することが示されている。疫学研究指針は、社会の理解と協力を得て、研究の適正な推進が図られることを目的に、個人の尊厳及び人権を尊重することを基礎として、策定されたものであるが、その基本原則の1つとして個人情報の保護を掲げており、疫学研究指針の一部は個人情報保護法第8条の趣旨にかなうものであるといえる。
 個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法及び地方自治体において個人情報保護法第11条第1項の趣旨を踏まえて制定される条例が適用されるそれぞれの研究機関等は、個人情報の取扱いにあたってはそれぞれに適用される法律又は条例を遵守する必要があることは言うまでもない。ただし、個人情報保護法の義務については、学術研究機関が学術研究の目的で個人情報を取扱う場合は、この義務の適用除外とされ、民間研究機関等が学術研究として疫学研究を行う場合に、個人情報保護法の適用を受けず、それらの機関等については個人情報保護に関して努力義務が課せられている。他方で、当該研究を実施する全ての研究機関等は、疫学研究指針の遵守が求められている。そこでは、個人情報の取扱いについて、国の研究機関、国立大学法人及び独立行政法人と民間研究機関等との間に区別はない。
 従って、ここでは、疫学研究指針において、少なくとも個人情報保護法の趣旨を踏まえているか整理を行った。

■ 定義
【個人情報保護法】
(定義)
二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
 この法律において「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物であって、次に掲げるものをいう。
 特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
 前号に掲げるもののほか、特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの
(略)
 この法律において「個人データ」とは、個人情報データベース等を構成する個人情報をいう。
 この法律において「保有個人データ」とは、個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データであって、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるもの又は一年以内の政令で定める期間以内に消去することとなるもの以外のものをいう。

【行政機関個人情報保護法】
(定義)
第二条 
 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう

【独立行政法人等個人情報保護法】
(定義)
第二条 
 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

【指針】
第5・13 用語の定義
 (5) 個人情報
 個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

 (6) 匿名化
 個人情報から個人を識別することができる情報の全部又は一部を取り除き、代わりにその人と関わりのない符号又は番号を付すことをいう。資料に付随する情報のうち、ある情報だけでは特定の人を識別できない情報であっても、各種の名簿等の他で入手できる情報と組み合わせることにより、その人を識別できる場合には、組合せに必要な情報の全部又は一部を取り除いて、その人が識別できないようにすることをいう。

 (7) 連結不可能匿名化
 個人を識別できないように、その人と新たに付された符号又は番号の対応表を残さない方法による匿名化をいう。

<整理すべき事項>
定義について
(1)  指針で定義される匿名化された情報は、法の「個人情報」の定義と照らして、どのように解釈すればよいか。
 
 法及び指針において、「個人情報」の定義は、個人に関する情報のうち、特定の個人が識別できる情報であり、識別可能性に基づき「個人情報」であるか否か判断されるものと考えられる。
 「連結不可能匿名化」の場合は、その人に新たに付与された符号又は番号の対応表を残さない方法による匿名化であり、この場合、個人に関する情報は特定の個人が識別できない情報しか残っておらず、法及び指針における「個人情報」には該当しないと考えられる。
 一方、「連結可能匿名化」(指針上は「匿名化」と記載。)は、必要な
場合に個人を識別できるように、対応表を残す方法による匿名化であるが、法と指針の「個人情報」に定義されている「識別可能性」に照らすと、この対応表を保有しているかどうかにより個人の識別可能性が判断される。つまり、法の趣旨を踏まえると、研究の実施及び資料等の提供が同一法人で実施されている場合においては、研究実施者が所有する情報(匿名化されている情報)と資料等提供機関が所有する情報を連結させることで、法人全体として、匿名化されている情報についても個人を識別できるものと整理され、個人情報に該当するものと考えられる。ただし、この考え方は、匿名化されている情報について匿名化されていない情報と同様の安全管理措置を一律に求めるものではない。なお、研究の実施と資料等の提供が別法人で実施されている場合においては、研究実施者が匿名化された情報から個人を識別することはできず、当該情報は「個人情報」に該当しないものと考えられる。
 
(2)  死者の情報については、法では対象となっていないことから、指針においても「生存する個人に関する情報」とするが、死者の人としての尊厳や遺族の感情等に鑑み、生存者の情報と同様に死者の情報においても安全管理のため、組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講じなければならないことを補足することでよいか。
 
(3)  個人情報保護法の「個人情報」では「容易に」が含まれているが、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人保護法の定義では「容易に」の文言はない。疫学研究指針に用いる個人情報は、その内容、質によって非常に多様であるため、「容易に」が含まれる個人情報保護法の定義でよいか。

 保有個人データの定義について
 指針には、本人(研究対象者)が当該本人の個人情報の開示・訂正・利用停止等を求めることができる個人情報の範囲が定義されていない。法では研究機関等がこれらの対応を求められた場合、応じることができる権限を有しているものの範囲を規定していることから、法に定義されている「保有個人データ」に該当する定義を追加して規定してよいか。

 「個人情報の保護に関する措置を行う者」の位置づけについて
 資料等の提供を行う者の所属する機関と研究機関とが同一法人内の別機関である場合があることから、指針では個人情報保護に係る規定においては法人の代表者又は行政機関の長などの機関の長を「研究を行う機関の長」とし、その責任を有するものとすることでよいか。なお、この場合、必要に応じて権限及び業務を研究者に委任することができる規定を設けてよいか。


■ 利用目的の特定、利用制限、利用目的の通知について
【個人情報保護法】
(利用目的の特定)
第十五条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。
(利用目的による制限)
第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
 法令に基づく場合
 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

(取得に際しての利用目的の通知等)
第十八条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。
 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、又は公表しなければならない。
 前三項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
 利用目的を本人に通知し、又は公表することにより本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該個人情報取扱事業者の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合
 国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合

【指針】
第1・3 研究者等が遵守すべき基本原則
(3)インフォームド・コンセントの受領
 (1) 研究者等は、疫学研究を実施する場合には、事前に、研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則とする。
第3 ・7 研究対象者からインフォームド・コンセントを受ける手続き等
 研究対象者からインフォームド・コンセントを受ける手続等は、原則として次に定めるところによる。
 ただし、疫学研究の方法及び内容、研究対象者の事情その他の理由により、これによることができない場合には、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を受けたときに限り、必要な範囲で、研究対象者からインフォームド・コンセントを受ける手続を簡略化すること若しくは免除すること又は他の適切なインフォームド・コンセント等の方法を選択することができる。
    <細則>
 倫理審査委員会は、インフォームド・コンセント等の方法について、簡略化若しくは免除を行い、又は原則と異なる方法によることを認めるときは、当該疫学研究が次のすべての要件を満たすよう留意すること。
(1)  当該疫学研究が、研究対象者に対して最小限の危険を超える危険を含まないこと。
(2)  当該方法によることが、研究対象者の不利益とならないこと。
(3)  当該方法によらなければ、実際上、当該疫学研究を実施できず、又は当該疫学研究の価値を著しく損ねること。
(4)  適切な場合には、常に、次のいずれかの措置が講じられること。
 研究対象者が含まれる集団に対し、資料の収集・利用の内容を、その方法も含めて広報すること。
 できるだけ早い時期に、研究対象者に事後的説明(集団に対するものも可)を与えること。
 長期間にわたって継続的に資料が収集又は利用される場合には、社会に、その実情を、資料の収集又は利用の方法も含めて広報し、社会へ周知される努力を払うこと。
(5)  当該疫学研究が社会的に重要性が高いと認められるものであること。

(1)介入研究を行う場合
 (1)  人体から採取された試料を用いる場合
試料の採取が侵襲性を有する場合(採血の場合等をいう。以下同じ。)
 文書により説明し文書により同意を受ける方法により、研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。
試料の採取が侵襲性を有しない場合
 研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。この場合において、文書により説明し文書により同意を受ける必要はないが、研究者等は、説明の内容及び受けた同意に関する記録を作成しなければならない。
 (2)  人体から採取された試料を用いない場合
個人単位で行う介入研究の場合
 研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。この場合において、文書により説明し文書により同意を受ける必要はないが、研究者等は、説明の内容及び受けた同意に関する記録を作成しなければならない。
集団単位で行う介入研究の場合
 研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない。この場合において、研究者等は、当該研究の実施についての情報を公開し、及び研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにしなければならない。
    <細則>
 研究対象者となることを拒否した者については、個人情報は収集しないが、集計に当たっての母集団に加えることができるものである。
 この場合の情報公開は、特に研究対象者が情報を得やすい形で行われることが必要である。
(2)観察研究を行う場合
 (1)  人体から採取された試料を用いる場合
 試料の採取が侵襲性を有する場合
 文書により説明し文書により同意を受ける方法により、研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。
 試料の採取が侵襲性を有しない場合
 研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。この場合において、文書により説明し文書により同意を受ける必要はないが、研究者等は、説明の内容及び受けた同意に関する記録を作成しなければならない。
 (2)  人体から採取された試料を用いない場合
 既存資料等以外の情報に係る資料を用いる観察研究の場合
 研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない。この場合において、研究者等は、当該研究の実施についての情報を公開し、及び研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにしなければならない。
 既存資料等のみを用いる観察研究の場合
 研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない。この場合において、研究者等は、当該研究の実施についての情報を公開しなければならない。
第3 ・8 代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける手続
 研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合には、当該研究対象者について疫学研究を実施することが必要不可欠であることについて、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を受けたときに限り、代諾者等(当該研究対象者の法定代理人等研究対象者の意思及び利益を代弁できると考えられる者をいう。)からインフォームド・コンセントを受けることができる。
    <細則>
 研究対象者本人からインフォームド・コンセントを受けることが困難であり、代諾者等からのインフォームド・コンセントによることができる場合及びその取扱いは、次のとおりとする。
(1)  研究対象者が痴呆等により有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断される場合
(2)  研究対象者が未成年者の場合。ただし、この場合においても、研究責任者は、研究対象者本人にわかりやすい言葉で十分な説明を行い、理解が得られるよう努めなければならない。また、研究対象者が16歳以上の場合には、代諾者とともに、研究対象者本人からのインフォームド・コンセントも受けなければならない。
(3)  研究対象者が死者であって、その生前における明示的な意思に反していない場合
第4・10 資料の保存及び利用
(2) 人体から採取された試料の利用
 研究者等は、研究開始前に人体から採取された試料を利用する場合には、研究開始時までに研究対象者から試料の利用に係る同意を受け、及び当該同意に関する記録を作成することを原則とする。ただし、当該同意を受けることができない場合には、次のいずれかに該当することについて、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を受けたときに限り、当該試料を利用することができる。
(1)  当該試料が匿名化されていること。
(2)  当該試料が匿名化されていない場合において、次のア及びイの要件を満たしていること。
 当該疫学研究の実施についての情報を公開していること。
 研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにすること。
第4・11 他機関等の資料の利用
(2) 既存資料等の提供に当たっての措置
 既存資料等の提供を行う者は、所属機関外の者に研究に用いるための資料を提供する場合には、資料提供時までに研究対象者から資料の提供に係る同意を受け、及び当該同意に関する記録を作成することを原則とする。ただし、当該同意を受けることができない場合には、次のいずれかに該当するときに限り、資料を所属機関外の者に提供することができる。
(1)  当該資料が匿名化されていること。
(2)  当該資料が匿名化されていない場合において、次のア及びイの要件を満たしていることについて倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長の許可を受けていること。
 当該疫学研究の実施及び資料の提供についての情報を公開していること。
 研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにすること。
(3)  社会的に重要性の高い疫学研究に用いるために人の健康に関わる情報が提供される場合において、当該疫学研究の方法及び内容、当該情報の内容その他の理由により(1)及び(2)によることができないときには、必要な範囲で他の適切な措置を講じることについて、倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長の許可を受けていること。
    <細則>
 既存資料等の提供を行う者の所属する機関に倫理審査委員会が設置されていない場合において、(2)又は(3)の倫理審査委員会の承認を得ようとするときは、他の機関、公益法人、学会等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することができる。
 倫理審査委員会は、(3)により、他の適切な措置を講じて資料を提供することを認めるときは、当該疫学研究及び資料の提供が、7柱書の細則の(1)から(5)までのすべての要件を満たすよう留意すること。

<整理すべき事項>
 利用目的の特定について
 法第15条第1項では個人情報保護の利用目的を特定することが規定されている。

 疫学指針において、倫理審査委員会へ提出する、実施計画において研究の目的を記載することとなっていることから、個人情報の利用目的は特定されていると考えられる。なお、この他に個人情報を利用する場合は、個人情報を取得するに当たって明確に当該利用目的の通知又は公表が必要となる。(○ 取得に際しての利用目的の通知又は公表 参照)

 代諾者等の同意について
 法第16条では、個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えた場合の利用にあたっての本人同意を得ることを規定しているが、指針では一定の条件の下、代諾者等の同意による利用も可能としている。

 疫学研究指針において、代諾者による同意を可能とする場合は、本人の同意を得ることが困難である場合に加え、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を受けた時に限る、との条件を設けていることから、法第16条第3項第3号の要件の妥当性を倫理審査委員会において審査されることにより、代諾者等による同意が可能であると整理してよいか。

 利用目的変更時の本人同意について
 法第15条では、個人情報保護の利用目的の特定、法第16条では、個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えた場合の利用に当たっての本人同意を、法第18条第3項では、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、又は公表することを規定している。
 疫学研究指針では、既存資料等((1)疫学研究の研究計画書の立案時までに既に存在する資料、(2)疫学研究の計画書の立案以降に収集した資料であって収集の時点においては当該疫学研究に用いることを目的としていなかったもの)の利用にあたって、要件を定めて提供者等の同意を得ないで利用を可能としている。なお、この場合、指針第4・11において、研究の実施状況について情報公開を図ること、また提供者等に試料等の研究への利用を拒否する機会を保障するための措置を講じることを求めている。

 第15条第2項において認められる範囲の利用目的の変更については、本人の同意は必要ないが、第18条第3項において、変更された利用目的の本人に通知又は公表することが求められており、規定を設けることでよいか。

 法第16条に該当する場合(利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱われる場合)は、改めて本人同意が必要であり、規定を設けることとする。なお、法第16条第3項の適用除外規定についても同様に規定を設けることでよいか。

 本人の同意を得ないで試料等を利用する場合、疫学研究は法第16条第3項第3号の例外規定の「公衆衛生の向上」の要件に該当すると考えられること、さらに、法第18条については、この場合は指針で公表することが規定されていることから、法の趣旨を踏まえた対応がなされているものと考えられる。

 取得に際しての利用目的の通知又は公表
 法第18条第1項において個人情報を取得した場合は、利用目的を本人に対して通知し、又は公表しなければならないこと、法第18条第2項において本人から直接書面で個人情報を取得する場合には、あらかじめその利用目的を明示することを規定している。
 疫学研究指針において、インフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない場合、当該研究の実施についての情報を公開することとしている。

 疫学研究指針において、インフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない場合、当該研究の目的についても情報を公開することを示すことでよいか。また、研究対象者から文書により研究の同意を得る時に、説明事項として、疫学研究の目的を説明することを明示することでよいか。


■ 適正な取得
【個人情報保護法】
(適正な取得)
第十七条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

【指針】
第1・3 研究者等が遵守すべき基本原則
(1)  疫学研究の科学的合理性及び倫理的妥当性の確保
(2)  研究者等は、科学的合理性及び倫理的妥当性が認められない疫学研究を実施してはならず、疫学研究の実施に当たっては、この点を踏まえた明確かつ具体的な研究計画を立案しなければならない。
(5)  研究者等は、研究対象者を不合理又は不当な方法で選んではならない。
(3)  インフォームド・コンセントの受領
(1)  研究者等は、疫学研究を実施する場合には、事前に、研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則とする。

<整理すべき事項>
 個人情報の適正な取得について
 法第17条において、個人情報を適正に取得することを規定している。
疫学研究指針において、研究の実施にあたっては倫理的妥当性を確保することを原則として規定している。

 研究計画が倫理的妥当性を踏まえて立案され、倫理審査委員会で承認され、研究機関の長の許可を受けることから、偽りその他不正の手段により個人情報を得ることは想定されず、指針において法の趣旨を踏まえた対応がなされていると考えられる。


■ データ内容の正確性の確保
【個人情報保護法】
(データ内容の正確性の確保)
第十九条 個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない。

【指針】
規定なし。

<整理すべき事項>
 指針に当該規定はないことから、個人情報を正確かつ最新の内容に保つよう努めることを規定する。


■ 安全管理措置
【個人情報保護法】
(安全管理措置)
第二十条 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
(従業者の監督)
第二十一条 個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
(委託先の監督)
第二十二条 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

【指針】
第1・3 研究者等が遵守すべき基本原則
(2 )個人情報の保護
 研究者等は、研究対象者に係る情報を適切に取り扱い、その個人情報を保護しなければならない。
第1・4 研究機関の長の責務等
(1 )倫理的配慮の周知
 研究機関の長は、当該研究機関における疫学研究が、倫理的、法的又は社会的問題を引き起こすことがないよう、研究者等に対し、疫学研究の実施に当たり、研究対象者の個人の尊厳及び人権を尊重し、個人情報の保護のために必要な措置を講じなければならないことを周知徹底しなければならない。
第4・9 個人情報の保護に係る体制の整備
 研究責任者は、疫学研究の実施に当たり個人情報の保護に必要な体制を整備しなければならない。
第4・10 資料の保存及び利用
(1 )資料の保存
 研究責任者は、疫学研究に関する資料を保存する場合には、研究計画書にその方法等を記載するとともに、個人情報の漏洩、混交、盗難、紛失等が起こらないよう適切に、かつ、研究結果の確認に資するよう整然と管理しなければならない。
第2・5 倫理審査委員会
(1 )倫理審査委員会の責務及び構成
 (3)  倫理審査委員会の委員は、職務上知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

<整理すべき事項>
 安全管理措置について
 安全管理措置について、疫学研究指針では研究機関の長が個人情報保護のために必要な措置を講ずること、研究責任者が個人情報保護に必要な体制を整備すること等が規定されているが、 個人情報の遺漏防止は個人情報保護にあたって重要であると考えることから、どのような措置が必要であるのか以下により示すこととしてよいか。
→(対応案)
取り扱う情報の性質に応じた組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講ずることを規定する。また、細則において、組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置について、以下のように示すこととしてよいか。
組織的安全管理措置について
 組織的安全管理措置とは、安全管理について研究従事者の責任と権限を明確に定め、安全管理に対する規定や手順書(以下「規定等」という)を整備運用し、その実施状況を確認することをいう。組織的安全措置には以下の事項が含まれる。
  (1) 個人情報の安全管理措置を講じるための組織体制の整備
  (2) 個人情報の安全管理措置を定める規定等の整備と規定等に従った運用
  (3) 個人情報の取扱い状況を一覧できる手段の整備
  (4) 個人情報の安全管理措置の評価、見直し及び改善
  (5) 事故又は違反への対処

人的安全管理措置について
 人的安全管理措置とは、研究従事者に対する、業務上秘密と指定された個人情報の非開示契約の締結や教育・訓練等を行うことをいう。人的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
  (1) 雇用契約及び委託契約時における非開示契約の締結
  (2) 研究従事者に対する教育・訓練の実施

物理的安全管理措置について
 物理的安全管理措置とは、入退館(室)の管理、個人情報の盗難の防止等の措置をいう。物理的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
  (1) 入退館(室)管理の実施
  (2) 盗難等に対する対策
  (3) 機器・装置等の物理的な保護

技術的安全管理措置
 技術的安全管理措置とは、個人情報及びそれを取り扱う情報システムのアクセス制御、不正ソフトウェア対策、情報システムの監視等、個人情報に対する技術的な安全管理措置をいう。技術的安全管理措置には、以下の事項が含まれる。
  (1) 個人情報のアクセスにおける識別と認証
  (2) 個人情報へのアクセス制御
  (3) 個人情報へのアクセス権限の管理
  (4) 個人情報のアクセスの記録
  (5) 個人情報を取り扱う情報システムに対する不正ソフトウェア対策
  (6) 個人情報の移送・通信時の対策
  (7) 個人情報を取り扱う情報システムの動作確認時の対策
  (8) 個人情報を取り扱う情報システムの監視

 なお、疫学研究指針では、守秘義務について、倫理審査委員のみの規定であることから、研究者等についてもこれを規定することとしてよいか。

 研究従事者等の監督について
 疫学研究指針では、研究従事者等の監督に関する規定はない。

 研究従事者等の監督について規定を追加することとしてよいか。

 委託先の監督に係る規定
 委託先の監督について、疫学研究指針に規定はない。
 委託先の監督に係る規定を疫学研究指針に追加することとしてよいか。


■ 第三者提供の制限
【個人情報保護法】
(第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
 法令に基づく場合
 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
 個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データについて、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。
 第三者への提供を利用目的とすること。
 第三者に提供される個人データの項目
 第三者への提供の手段又は方法
 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること。
 個人情報取扱事業者は、前項第二号又は第三号に掲げる事項を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない。
 次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前三項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。
 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合
 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合
 個人データを特定の者との間で共同して利用する場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。
 個人情報取扱事業者は、前項第三号に規定する利用する者の利用目的又は個人データの管理について責任を有する者の氏名若しくは名称を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない。

【指針】
第4・11 他の機関等の資料の利用
(2 )既存資料等の提供に当たっての措置
 既存資料等の提供を行う者は、所属機関外の者に研究に用いるための資料を提供する場合には、資料提供時までに研究対象者から資料の提供に係る同意を受け、及び当該同意に関する記録を作成することを原則とする。ただし、当該同意を受けることができない場合には、次のいずれかに該当するときに限り、資料を所属機関外の者に提供することができる。
(1)  当該資料が匿名化されていること。
(2)  当該資料が匿名化されていない場合において、次のア及びイの要件を満たしていることについて倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長の許可を受けていること。
 当該疫学研究の実施及び資料の提供についての情報を公開していること。
 研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにすること。
(3)  社会的に重要性の高い疫学研究に用いるために人の健康に関わる情報が提供される場合において、当該疫学研究の方法及び内容、当該情報の内容その他の理由により(1)及び(2)によることができないときには、必要な範囲で他の適切な措置を講じることについて、倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長の許可を受けていること。
<細則>
 1  既存資料等の提供を行う者の所属する機関に倫理審査委員会が設置されていない場合において、(2)又は(3)の倫理審査委員会の承認を得ようとするときは、他の機関、公益法人、学会等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することができる。
 2  倫理審査委員会は、(3)により、他の適切な措置を講じて資料を提供することを認めるときは、当該疫学研究及び資料の提供が、7柱書の細則の(1)から(5)までのすべての要件を満たすよう留意すること。研究責任者は、提供者本人から(2)によるインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合には、その実施しようとしている研究の重要性が高く、かつ、その人からの試料等の提供を受けなければ研究が成り立たないと倫理審査委員会が承認し、研究機関の長が許可した場合に限り、提供者本人の代諾者等からインフォームド・コンセントを受けることができる。

4・12 研究結果を公表するときの措置
研究者等は、研究の結果を公表するときは、個々の研究対象者を特定できないようにしなければならない。

<整理すべき事項>
 第三者提供の制限について
 法第23条において、第三者への提供が制限されている。
疫学研究指針では、既存資料等を所属機関外の者に研究に用いるために提供する場合について、研究対象者から資料の提供に係る同意を受けないで提供できる条件として、(1)資料が匿名化されている場合、(2)匿名化されていない場合で、研究の実施及び資料の提供について情報公開をしており、研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにすることなどが規定されている。

 連結不可能匿名化されている情報及び連結可能匿名化されている情報で対応表を保有していない場合は「個人情報」に該当しないため、これを明示することでよいか。

 なお、個人情報を第三者へ提供する可能性がある場合には、法第23条を踏まえ、あらかじめ同意を得ておくよう規定を設けるとともに、第三者提供の制限について規定を設けることとしてよいか。

 共同研究について
 法第23条第4項第3号において、個人データの共同利用において示された内容をあらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているときは、第三者提供に該当しないとされている。
指針では、示された事項について本人に通知又は本人が容易に知り得る状態に置くことについて規定されていない。

 インフォームド・コンセントの取得時に、共同研究であること、共同して利用される個人情報の項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称を説明することを規定することでよいか。


■ 保有個人データに関する事項の公表等
【個人情報保護法】
(保有個人データに関する事項の公表等)
第二十四条 個人情報取扱事業者は、保有個人データに関し、次に掲げる事項について、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む。)に置かなければならない。
 当該個人情報取扱事業者の氏名又は名称
 すべての保有個人データの利用目的(第十八条第四項第一号から第三号までに該当する場合を除く。)
 次項、次条第一項、第二十六条第一項又は第二十七条第一項若しくは第二項の規定による求めに応じる手続(第三十条第二項の規定により手数料の額を定めたときは、その手数料の額を含む。)
 前三号に掲げるもののほか、保有個人データの適正な取扱いの確保に関し必要な事項として政令で定めるもの
 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用目的の通知を求められたときは、本人に対し、遅滞なく、これを通知しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
 前項の規定により当該本人が識別される保有個人データの利用目的が明らかな場合
 第十八条第四項第一号から第三号までに該当する場合
 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの利用目的を通知しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

(保有個人データの適正な取扱いの確保に関し必要な事項)
第五条 法第二十四条第一項第四号の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
 当該個人情報取扱事業者が行う保有個人データの取扱いに関する苦情の申出先
 当該個人情報取扱事業者が認定個人情報保護団体の対象事業者である場合にあっては、当該認定個人情報保護団体の名称及び苦情の解決の申出先

【指針】
規定なし

<整理すべき事項>
 保有個人データに関する事項の公表等について
 法第24条では、保有個人データに関する事項、利用目的の通知について規定している。
 疫学研究指針では、法第24条第1項に係る事項が規定されていない。

 疫学研究指針では、インフォームド・コンセント取得時の説明文書において記載すべき事項の規定がないことから、指針における説明事項として法第24条第1項第1号、第2号、第3号のうち開示、訂正等、利用停止等に係る事項及び第4号に係る事項を含め、これを示すことでよいか。疫学研究指針においては、インフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない場合、当該研究の実施についての情報を公開することとしているが、公開する内容として、法第24条第1項第1号、第2号、第3号のうち、開示、訂正等、利用停止等に係る事項及び第4号に係る事項を示すことでよいか。

 法第24条第1項のうち利用目的の通知に係る事項、第2項及び3項については、疫学研究指針において、研究対象者から文書により研究の同意を得るときに、説明事項として、疫学研究の目的を説明することを示すことでよいか。また、インフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない場合、当該研究の目的についても情報を公開することを規定することでよいか。


■ 保有個人データの開示
【個人情報保護法】
(開示)
第二十五条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示(当該本人が識別される保有個人データが存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない。ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。
 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
 他の法令に違反することとなる場合
 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部又は一部について開示しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。
 他の法令の規定により、本人に対し第一項本文に規定する方法に相当する方法により当該本人が識別される保有個人データの全部又は一部を開示することとされている場合には、当該全部又は一部の保有個人データについては、同項の規定は、適用しない。

(個人情報取扱事業者が保有個人データを開示する方法)
第六条 法第二十五条第一項の政令で定める方法は、書面の交付による方法(開示の求めを行った者が同意した方法があるときは、当該方法)とする。

【指針】
規定なし。

<整理すべき事項>
 開示について
 法第25条では、定められた場合を除き本人から開示要求があった場合には、開示しなければならないと規定している。
 疫学研究指針では、研究対象者からの開示の求めについて規定していないため、追加して規定することでよいか。


■ 訂正及び利用停止
【個人情報保護法】
(訂正等)
第二十六条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。
 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの内容の全部若しくは一部について訂正等を行ったとき、又は訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を通知しなければならない。
(利用停止等)
第二十七条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第十六条の規定に違反して取り扱われているという理由又は第十七条の規定に違反して取得されたものであるという理由によって、当該保有個人データの利用の停止又は消去(以下この条において「利用停止等」という。)を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有個人データの利用停止等を行わなければならない。ただし、当該保有個人データの利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第二十三条第一項の規定に違反して第三者に提供されているという理由によって、当該保有個人データの第三者への提供の停止を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、遅滞なく、当該保有個人データの第三者への提供を停止しなければならない。ただし、当該保有個人データの第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合その他の第三者への提供を停止することが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
 個人情報取扱事業者は、第一項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について利用停止等を行ったとき若しくは利用停止等を行わない旨の決定をしたとき、又は前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について第三者への提供を停止したとき若しくは第三者への提供を停止しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

【指針】規定なし

<整理すべき事項>
 訂正等について
 法第26条において、保有する個人情報に関し、訂正等及び通知の規定がある。疫学研究指針には、このような規定はない。

 研究対象者又は代諾者から、研究機関が保有する提供者が識別される個人情報の内容が事実でないという理由によって当該情報に対して訂正、追加又は削除を求められた場合に、調査結果に基き、内容の訂正等を行うことを規定することでよいか。

 利用停止等について
法第27条において、法第16条(利用目的による制限)又は第17条(適正な取得)に反した個人情報の取扱がなされている場合に、利用停止及び消去を求めるなどの規定がある。
 疫学研究指針では、これらの規定はない。

 研究対象者又は代諾者から、法第16条又は第17条に反した個人情報の取扱いがなされている場合に、利用停止及び消去を求められた場合に、利用停止等を行うことなどを規定することでよいか。
 なお、ゲノム指針では理由の如何を問わずインフォームド・コンセントの撤回ができることが規定されているが、疫学指針には規定されていないことから、これを規定することでよいか。
 また、疫学研究指針では、インフォームド・コンセントの取得を求めない場合があるが、この場合は、研究対象者となることを拒否できることが規定されていない部分については、これを規定することでよいか。


■ 開示等の求めに応じる手続き及び手数料
【個人情報保護法】
(開示等の求めに応じる手続)
第二十九条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第二項、第二十五条第一項、第二十六条第一項又は第二十七条第一項若しくは第二項の規定による求め(以下この条において「開示等の求め」という。)に関し、政令で定めるところにより、その求めを受け付ける方法を定めることができる。この場合において、本人は、当該方法に従って、開示等の求めを行わなければならない。
 個人情報取扱事業者は、本人に対し、開示等の求めに関し、その対象となる保有個人データを特定するに足りる事項の提示を求めることができる。この場合において、個人情報取扱事業者は、本人が容易かつ的確に開示等の求めをすることができるよう、当該保有個人データの特定に資する情報の提供その他本人の利便を考慮した適切な措置をとらなければならない。
 開示等の求めは、政令で定めるところにより、代理人によってすることができる。
 個人情報取扱事業者は、前三項の規定に基づき開示等の求めに応じる手続を定めるに当たっては、本人に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない。
(手数料)
第三十条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第二項の規定による利用目的の通知又は第二十五条第一項の規定による開示を求められたときは、当該措置の実施に関し、手数料を徴収することができる。
 個人情報取扱事業者は、前項の規定により手数料を徴収する場合は、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならない。

(開示等の求めを受け付ける方法)
第七条 法第二十九条第一項の規定により個人情報取扱事業者が開示等の求めを受け付ける方法として定めることができる事項は、次に掲げるとおりとする。
 開示等の求めの申出先
 開示等の求めに際して提出すべき書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。)の様式その他の開示等の求めの方式
 開示等の求めをする者が本人又は次条に規定する代理人であることの確認の方法
 法第三十条第一項の手数料の徴収方法
(開示等の求めをすることができる代理人)
第八条 法第二十九条第三項の規定により開示等の求めをすることができる代理人は、次に掲げる代理人とする。
 未成年者又は成年被後見人の法定代理人
 開示等の求めをすることにつき本人が委任した代理人

【指針】
規定なし

<整理すべき事項>
 開示等の求めに応じる手続きについて
 法第29条では、開示等の求めを受け付ける方法を定めることができることを規定している。
 疫学研究指針では、このような規定はない。

 法では開示等の求めを受け付ける方法については、あくまでも「方法を定めることができる」としていることから、インフォームド・コンセント取得の際の説明文書に開示等(開示、訂正等、利用停止等)に関する事項を記載することを規定し、これらの求めを受け付ける方法を定める場合は、その方法についても併せて記載するよう規定することでよいか。

 手数料について
法第30条では、開示にあたって、手数料を徴収することができることを規定している。
 疫学研究指針では、このような規定はない。

 開示手数料を徴収する場合は、インフォームド・コンセント取得時に提供者に説明することを設けることでよいか。


■ 理由の説明
【個人情報保護法】
(理由の説明)
第二十八条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第三項、第二十五条第二項、第二十六条第二項又は前条第三項の規定により、本人から求められた措置の全部又は一部について、その措置をとらない旨を通知する場合又はその措置と異なる措置をとる旨を通知する場合は、本人に対し、その理由を説明するよう努めなければならない。

【指針】
規定なし

<整理すべき事項>
 理由の説明について
 法第28条において、第24条第3項(個人情報利用目的の通知)、第25条第2項又は第3項(個人情報の開示)、第26条第2項(個人情報の訂正等)、第27条第3項(利用停止等)の措置をとらない場合等に理由を説明するよう努めることとされている。
 疫学研究指針においては、このような規定はない。

疫学研究指針において、
 法第24条第3項(個人情報の利用目的の通知)に関して、疫学研究指針では、インフォームド・コンセントを受ける場合には、利用目的を通知しないことは想定されない。また、インフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない場合については、利用目的を通知しなくてはならないことを示すことでよいか。

 法第25条第2項に関し、開示ができない場合は、理由を説明するよう努めることを規定する。なお、正当な理由によりあらかじめ開示ができない事項が想定される場合は、インフォームド・コンセント取得時に提供者に説明し、同意を得るものとすることを示すことでよいか。また、疫学指針においてインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない場合については、当該研究の実施についての情報を公開することを規定しているが、あらかじめ開示ができない事項が想定される場合は、そのことを公開する内容に含めることを示すことでよいか。

 法第26条第2項(個人情報の訂正等)に関し、訂正要求内容に対して訂正しない場合は、その理由を説明するよう努めることを規定することでよいか。

 法第27条第3項(利用停止等)に関し、利用停止等ができない場合は、理由を説明するよう努めることを規定することでよいか。


■ 苦情処理
【個人情報保護法】
(個人情報取扱事業者による苦情の処理)
第三十一条 個人情報取扱事業者は、個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない。
 個人情報取扱事業者は、前項の目的を達成するために必要な体制の整備に努めなければならない。

【指針】
規定なし

<整理すべき事項>
 苦情処理について
 法第31条において、苦情の適切かつ迅速な処理に努めることとされている。疫学研究指針には、このような規定はない。

 苦情処理を実施すること及び苦情の窓口として、研究対象者又は代諾者が申し出のしやすい窓口の設置が配慮されるよう規定を設けることでよいか。


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