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5. 基礎研究推進事業費(独立行政法人医薬品医療機器総合機構開発振興勘定運営費交付金)

事務事業名 基礎研究推進事業費
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
保健医療分野における基礎研究を強化し科学技術の充実を図ること
施策目標 2 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること
付加価値の高い医薬品の開発や医療技術の向上に寄与することが期待される、疾病構造の解明や遺伝子治療技術等の基礎研究の実施
画期的新薬・新医療機器の創製に必須な科学的知見等の知的資産の形成

(2)事務事業の概要(既存)
 保健医療分野における基礎研究推進事業は、国民の健康の保持増進に役立つ画期的な医薬品・医療機器の開発につながる可能性の高い基礎的な研究を国立試験研究機関や大学等に委託して実施し、その成果を広く普及することを目的として、平成8年度に創設された。本事業においては、(1)一般公募による研究事業、(2)遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業、(3)メディカル・フロンティア戦略に係わる基礎的研究を実施している。これらのうち、(1)においては、特に基礎研究の成果が画期的な医薬品・医療機器の開発に繋がる可能性の高い研究課題に重点をおいて公募課題を採択して研究を実施しており、(2)においては、いわゆる「ミレニアム・プロジェクト」の一環として、がん、痴呆、糖尿病、高血圧などの疾患関連遺伝子の解明とそれに基づく治療・予防法の確立、画期的新薬の開発の推進などを目指した研究を実施している。また、(3)においては、ゲノム科学、たんぱく質科学や医用工学を応用した新しい治療技術・新薬等の研究開発を実施している。
 また、公募研究課題の採択評価、採択課題の中間・事後評価等のために、医学、薬学の他、生命倫理や知的財産権等の専門家により構成される「基礎的研究評価委員会」を医薬品医療機器総合機構に設置しており、同委員会に本事業担当の行政官の参加を求めて、専門的及び行政的観点からこれらの評価等を実施している。
 さらに、実施された研究の成果の普及のため、基礎研究推進事業研究成果発表会(シンポジウム)を年1回程度開催している。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
10,870 7,062 6,062 8,071 11,995

(4)趣旨
 保健医療分野において、いわゆる生活習慣病の予防や治療技術の開発、老人性痴呆の研究は、高齢化社会を迎えた我が国の重要な課題であり、またエイズ等の感染症の克服は喫緊の課題である。これら多くの課題に対して有効な対策を講じるためには、国として、これらの課題の共通の基盤となる基礎研究の推進に力を注ぐ必要がある。
 本事業は、このような背景から、保健医療分野における基礎研究の充実により、がん、エイズ等に対する画期的な医薬品・医療機器の開発を振興するため、疾病メカニズムの解明や遺伝子治療技術等の基礎研究を行うことを目的に平成8年に開始された。現在は、(1)ゲノム情報等をもとにした画期的な医薬品又は新規のコンセプトに基づく医療機器の開発を目指した、成果の実用化に向けた明確な計画を有する研究を広く公募採択して実施している他、(2)がん、痴呆、糖尿病、高血圧などの疾患関連遺伝子の解明とそれに基づく治療・予防法の確立、画期的新薬の開発の推進などを目指した研究、(3)ゲノム科学、たんぱく質科学や医用工学を応用した新しい治療技術・新薬等の研究開発を実施している。
 これらのうち、(2)については、いわゆるミレニアム・プロジェクト(疾患遺伝子プロジェクト)の一環として、痴呆、がん等の各疾患サブチーム毎に文部科学省担当部分との連携をとりながら研究を実施しているところである。
 平成15年度においては、(1)一般公募による研究事業:15課題、(2)遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業:7課題、(3)メディカル・フロンティア戦略に係わる基礎的研究:16課題の研究プロジェクトを実施しており、また、平成16年度には新規に9課題の研究プロジェクトを採択した。
 また、これまでに得られた主な研究成果としては、腸管出血性大腸菌O157に対する新規抗体医薬の研究開発や、クロイツフェルト・ヤコブ病の新規診断法の開発等が挙げられる他、平成15年度までに各研究プロジェクトの成果として111件の特許出願が行われた。

(5)事業の概略図
事業の概略図

* 遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業及びメディカル・フロンティア戦略に係わる基礎研究のうちの指定研究分については、厚生労働省から研究の基本方針、研究実施機関などの指定を受けて実施している。


B. 評価結果

(1)必要性
 感染症やがん等の疾病の克服に資する、画期的な医薬品、医療機器の開発は、国民の保健医療水準の向上に寄与するのみならず、国際社会にも大きく貢献するものと考えられる。近年の遺伝子治療や再生医療等をはじめとする先端的科学技術が目覚ましい進歩を遂げている中、こうした技術の基盤となる基礎的研究は、ますますその重要性を増している。
 本事業においては、このような背景から医薬品、医療機器の開発に繋がる成果の実用化を目指した研究や、疾患関連遺伝子の解析、疾患関連たんぱく質の機能や相互作用の解明、医用工学の応用等により、疾病の診断、治療法の確立やテーラーメイド医療を目指した研究等を実施しており、これらの研究は疾病の克服・健康の保持増進に大きな役割を果たすと考えられる。
 画期的医薬品、医療機器の研究開発を推進するためには、国の関与による基礎的研究への重点的な投資が必要であり、本事業の着実な実施が望まれる。

(2)有効性
 本事業における研究プロジェクトは、(1)一般公募による研究事業、(2)遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業、(3)メディカル・フロンティア戦略に係わる基礎的研究により、それぞれ最長5年計画で実施されている。
 (1)及び(3)のうちの成果実用化研究については、研究課題の公募が行われ、(2)及び(3)のうちのタンパク質科学・医用工学研究については、厚生労働省から実施課題、実施機関等を指定を受けて実施している。
 公募研究プロジェクトの採択審査、継続研究プロジェクトの年次評価、中間評価、事後評価等については、外部の専門家からなる基礎的研究評価委員会に本事業担当の行政官の参加を求めて、評価実施要領に基づき専門的及び行政的観点からの評価を実施しており、評価の結果に基づき、採択課題の決定及び研究費の配分等を行っている。また、医薬品医療機器総合機構において、研究機関の実地調査も行い、研究実施状況及び研究費の執行状況等の確認を行っている。
 以上のように、適切な研究プロジェクトの選定と、適正な事業の実施が図られている。

(3)計画性
 本事業においては、従来より医薬品医療機器総合機構(旧医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構)に研究者出身の顧問を置いて、業務の技術的事項についての助言を受けていたが、平成16年度より、プログラム・ディレクター、プログラム・オフィサーの制度を導入し、研究経験のあるこれらの職員により、本事業の運営について主体的に計画し、実行して行く体制を整えている。
 また、医薬品医療機器総合機構では、各研究プロジェクトの実施状況について提出された研究成果報告書、実地調査等により把握するとともに、採択時及び研究実施期間中に毎年度、基礎的研究評価委員会による評価を行っており、それらの評価の結果を各研究プロジェクトの総括研究代表者に通知し、また、それらをふまえた研究計画の変更等の提言を行っている。

(4)効率性
 本事業の研究プロジェクトとしては、平成15年度においては、(1)一般公募による研究事業:15課題、(2)遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業:7課題、(3)メディカル・フロンティア戦略に係わる基礎的研究:16課題の研究プロジェクトが実施されており、平成15年度までに111件の特許出願がなされている。また、クロイツフェルト・ヤコブ病の新規診断法の開発など社会的注目度の高い研究成果もあがっている他、いくつかの研究プロジェクトでは臨床研究が実施されている。このように、本事業によって、保健医療の向上に結びつく知的資産の形成などの成果が出てきており、本事業の目標の達成度や有効性は高いと考えられる。
 各研究プロジェクトの採択時及び研究実施期間中に毎年度行われる評価においては、外部の専門家により組織された基礎的研究評価委員会による専門的及び行政的観点からの評価が、評価要領に従って定量的に行われており、それらの評価に基づき、研究費の配分額が決定されているほか、研究計画の見直しや成果が上がっていない研究プロジェクトへの支援打ち切り等が行われ、効率的な制度の運営が行われている。
 また、各研究プロジェクトの成果については、成果報告書を冊子として関係機関等に配付している他、成果報告書の概要、基礎的研究評価委員会等による評価結果等をインターネットのホームページに掲載している。また、年1回程度、基礎研究推進事業成果発表会(シンポジウム)を開催して、成果の普及等を行っており、制度の透明性の確保を図っている。

(5)その他
 本事業の実施運営主体は、平成15年度までは、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構であったが、政府の特殊法人等改革により、同機構が国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター等と統合され、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が設立されたことから、平成16年4月より本事業は新独立行政法人に移管された。
更に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法の国会審議の際、平成14年12月12日の参議院厚生労働委員会において「独立行政法人医薬品医療機器総合機構の在り方に関する決議」がなされ、本事業を含む研究開発振興業務が分離されることとなっている。そのため、本事業は平成17年度より新たに設立される「独立行政法人医薬基盤研究所」に移管される予定である。


C. 総合評価

 画期的な医薬品、医療機器の開発は、疾病の克服に必要不可欠であり、新規の作用機序やメカニズムによる医薬品、医療機器の開発に資する疾病構造の解明や遺伝子治療技術等の基礎研究の重要性は益々高まっている。
 本事業は、このような背景の下、画期的な医薬品、医療機器の開発に結びつく可能性の高い研究課題を選定して研究助成を行っており、また、研究実施期間においては毎年度、厳正な評価を行い、その結果に基づき研究費の配分額の決定や、研究計画の修正、中止等を求めるなど、適正な事業の運営に努めていることが伺われる。
 また、平成15年度までに111件の特許申請が行われるなど、期待される知的資産の形成や、研究成果の実用化も認められるなど、その有用性も高く評価できる。
 以上より、今後とも推進すべき研究事業であると判断する。


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