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<II.厚生科学基盤研究分野>

 厚生科学基盤研究分野は、臨床に直結する成果が期待できる基盤研究に対して補助することを目的としている。厚生科学基盤研究分野は、「先端的基盤開発研究事業」と「臨床応用基盤研究事業」から構成されている(表3参照)。

表3.「厚生科学基盤研究分野」の概要
研究事業 研究領域
3)先端的基盤開発 3−1)ヒトゲノム・再生医療等
3−2)疾患関連たんぱく質解析
3−3) 萌芽的先端医療技術推進
(ナノメディシン・トキシコゲノミクス)
3−4)身体機能解析・補助・代替機器開発
4)臨床応用基盤 4−1)基礎研究成果の臨床応用推進
4−2)治験推進


3)先端的基盤開発研究事業
3−1)ヒトゲノム・再生医療等研究
@ ヒトゲノム研究
事務事業名 先端的基盤開発研究
ヒトゲノム・再生医療等研究経費(ヒトゲノム・遺伝子治療分野)
担当部局・課主管課 研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要(継続)
 今世紀初頭のヒト遺伝子の全解読等のゲノム科学の進展を受けて、ゲノム創薬、テーラーメード医療に代表される次世代医療の中心を担うヒトゲノム・遺伝子治療分野における研究競争が国際的に激化している。このような状況において、本研究事業により、ヒトゲノム研究を強力に押し進め、幅広い分野での新産業の創出を図るとともに、バイオテクノロジーを活用したゲノム創薬につながる研究の推進及び強化が必要となっている。
 具体的には高齢者の主要疾患に関連する遺伝子を解明し、個人の特徴に応じた革新的な医療の実現などに資する以下の研究を実施する。
高齢者に主要な疾患に関連する遺伝子の解析や遺伝子治療の基盤となる研究
遺伝子治療に用いるベクターの開発及び遺伝子治療に用いるベクターの安全性・有効性評価方法に関する研究
ヒトゲノム分野、遺伝子治療分野及び再生医療分野研究に関連する倫理に関する研究

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
2,356 2,356 2,118 2,179 2,179

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 21世紀に入って、ヒトの遺伝子が解読され、ゲノム科学やたんぱく質科学等を応用した新しい創薬手法であるゲノム創薬による新薬開発競争が激化する一方、ヒトゲノムの多様性を解析することで、遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握し、個人の特性にあった診断・治療・予防、薬の投与を実現するいわゆるオーダーメイド医療が現実味を帯びてきている。しかしながら、我が国のバイオテクノロジーに関する研究開発の現状は、特にヒトゲノム分野において研究の水準、研究者の層、民間投資のいずれにおいても、欧米特に米国に大きく水をあけられ、このままでは、我が国はバイオテクノロジーのもつ巨大な可能性を活用しえず、世界の流れに遅れをとるとともに、高齢化社会への準備を十分に整えられない可能性がある。
 2000年を境に、生命科学はDNAの構造解析主体の時代から生命現象への解明へと進み、世界の各国が本格的な競争へと移行している。そのため、ゲノムに係る研究開発を強力に推し進めることにより、高齢者にとって活気ある社会への道を切り拓き、医薬品の安全性の確保と国民の理解の増進を図りつつ、幅広い分野における新しい産業の創出を図るとともに、バイオテクノロジーを活用したゲノム創薬につながる研究の推進及びさらなる充実が必要である。
他省との連携
 研究の進捗に応じて、必要があると認められた場合には、関係各省との連携について検討する。
期待される成果
 先端的な技術を臨床応用に導く極めて新しい研究分野であり、疾患関連遺伝子の同定、遺伝子治療製剤の臨床研究や安全性に関する研究、病変の遺伝子診断技術、などを実現する研究である。これまでの研究により、肝特異的なトランスポーターのSNPとスタチン系薬物による横紋筋融解症との関連性解明、骨粗鬆症関連遺伝子のSNPと骨量との有意な相関関係を明らかにする等着実に成果をあげてきたところである。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 本研究事業では、新規採択課題については、研究者への研究課題の周知徹底、適切な事前評価を実施するとともに、継続課題に対しては、中間・事後評価を厳正に実施し、質の高い研究課題の採択を図っている。
 これらによって、これまでに骨粗鬆症関連遺伝子のSNPと骨量との有意な相関関係を明らかにする等の成果を着実に挙げており、今後とも、ヒトゲノム研究を強力に押し進め、幅広い分野での新産業の創出を図るとともに、バイオテクノロジーを活用したゲノム創薬につながる質の高い研究を継続する。

(5)事業の概略図

ヒトゲノム・再生医療等研究事業(ヒトゲノム・遺伝子治療研究分野)
研究内容
(ヒトゲノム分野) 高齢者の主要疾患関連遺伝子の解析等
(遺伝子治療分野) 遺伝子治療に用いるベクターの開発、ベクターの安全性・有効性評価等
(生命倫理分野) ヒトゲノム分野等に関連する倫理に関する研究
目標 疾患関連遺伝子の同定、遺伝子治療製剤の臨床研究や安全性に関する研究、病変の遺伝子診断技術、研究資源の提供を目的とした細胞バンクなどの管理基盤整備に関する総合的研究など、創薬のための基盤的支援技術に繋がる研究を実施
予算: 平成17年度概算要求として、22億円(前年度同じ)

図


B. 評価結果

(1)必要性
 医療分野においては、ヒトの遺伝子情報の解析により、病気の発生原因や発病メカニズムを根本から解明し、痴呆、がん、糖尿病、高血圧等、従来の手法では解決することが難しかった疾病も克服することが可能となる。また、ヒトゲノムの多様性を解析することで、遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握し、個人の特性にあった診断・治療・予防、薬の投与が可能となり、いわゆるオーダーメイド医療の実現が可能となる。
 しかしながら、我が国のバイオテクノロジーに関する研究開発の現状は、特にヒトゲノム分野において研究の水準、研究者の層や民間投資のいずれにおいても、欧米に、特に米国に大きく水をあけられ、このままでは、我が国はバイオテクノロジーのもつ巨大な可能性を活用しえず、世界の流れに遅れをとるとともに、高齢化社会への準備を十分に整えられない可能性がある。
 2000年を境に、生命科学はDNAの構造解析主体の時代から生命現象への解明へと進み、世界の各国が本格的な競争へと入っていくが、2000年からの数年間こそが、我が国の遅れを取り戻す数少ないチャンスである。そのため、ゲノムに係る研究開発を強力に推し進めることにより、来るべき新世紀を高齢者にとって活気ある社会への道を切り拓き、安全性の確保と国民の理解の増進を図りつつ、幅広い分野における新しい産業の創出を図るとともに、バイオテクノロジーを活用したゲノム創薬につながる研究の推進及び強化が必要である。

(2)有効性
 厚生労働省においては、本研究事業について、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」を踏まえ、本研究事業に関する評価指針を策定し、高齢者の主要疾患に関連する遺伝子を解明し、個人の特徴に応じた革新的な医療の実現を図るため、研究課題を専門家等により、厳正に評価(事前評価、中間・事後評価)を実施しているところであり、妥当である。

(3)計画性
 ゲノム創薬に向けた研究開発が国際的に激化する中において、生物遺伝資源に係る研究を国家事業として整備していくことが極めて重要であり、本事業において指定型の研究として推進することとしている。また同時に、競争的資金による公募型研究課題を採択することにより、多様な研究者の有する資源や研究手法を広く集め、ヒトゲノム研究を強力に推し進め、幅広い分野での新産業の創出、バイオテクノロジーを活用したゲノム創薬につながる研究の推進及び強化を行う。

(4)効率性
 ゲノム創薬、テーラーメード医療に代表される次世代医療の中心を担うヒトゲノム・遺伝子治療分野における研究を推進し、優れた医薬品を創製し、革新的な医療の実現を図ることを目標としており、それに対しての寄与によって達成度が示される。これにより、効率的な運営がなされていると考えられる。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 今世紀初頭のヒト遺伝子の全解読等を受けて、ゲノム創薬、テーラーメード医療等の次世代医療の中心を担う分野の研究競争が国際的に激化している。このような状況において、本研究事業により、ヒトゲノム研究を強力に押し進め、幅広い分野での新産業の創出を図るとともに、バイオテクノロジーを活用したゲノム創薬につながる研究の推進及び強化が必要である。
 本研究事業においては、これまでにプリオン異常型凝集体に対する特異的なモノクローナル抗体の樹立、肝特異的なトランスポーターのSNPとスタチン系薬物による横紋筋融解症との関連性解明、骨粗鬆症関連遺伝子のSNPと骨量との有意な相関関係を明らかにする等の極めて重要な研究成果をあげてきたところであり、一層推進するべき分野として、今後の研究の進展に期待したい。


A 再生医療研究
事務事業名 ヒトゲノム・再生医療等研究経費(再生医療分野)
担当部局・課主管課 健康局 疾病対策課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標  自己組織の自律的な修復能力を高めることによる治療方法の実現を目指すとともに、現在行われている臓器移植・骨髄移植の改良に寄与する。
施策目標 新たな治療方法の開発及び確立
  厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること。

(2)事務事業の概要(一部新規)
 目的としては、1)痴呆をもたらす脳梗塞、2)寝たきりに伴う床ずれ、3)骨粗鬆症による骨折、4)糖尿病に伴う動脈硬化症、5)高血圧に伴う虚血性心疾患等の高齢者の主要な疾患について、生物の発生・分化等の機構の解明に基づき、自己組織の自律的な修復能力を高めることによる治療方法の実現を目指す。
 具体的には、新たな再生医療技術の開発を各分野((1)骨・軟骨分野、(2)血管分野、(3)神経分野、(4)皮膚・角膜分野、(5)血液・骨髄分野、(6)移植技術分野)で行うと同時に、新たな医療技術の実用化に必要な品質管理・品質保証に関する研究を推進する。
 本事業においては、このような行政上必要な研究について公募を行い、専門家、行政官による事前評価等により採択された研究課題について補助金を交付する。なお、得られた研究成果については、適切に行政施策に反映させる。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
1,104 1,104 993 933 1,500

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 新たな医療技術を生み出す本分野での研究開発を推進することは国民にとって、非常にメリットがあり、また同時に、新たな医療技術に対しての品質保証に資する研究を行うことも、安全に再生医療技術が利用されるために併せて必要不可欠であり、国が牽引すべき事業である。
他省との連携
 特に連携した研究は実施していない。
期待される成果
(1) 新たな再生医療技術の開発
 それぞれの分野において、新しい医療技術が開発され、ベットサイドにおいて安全に利用できることが期待できる。具体的には、(1)骨・軟骨分野では、骨髄細胞からの骨再生、注入型人工骨の開発、(2)血管分野では、骨髄細胞移植による血管新生療法が高度先進医療として認定されたことに続いて、冠動脈創成を心筋組織内で誘導する技術の開発、(3)神経分野では、脊髄内神経幹細胞からの神経細胞の分化促進する遺伝子治療、低分子化合物によって神経幹細胞の分裂増殖を促進する治療の開発、(4)皮膚・角膜分野では、難治性眼疾患に対する羊膜移植術が高度先進医療として認定されたことに続いて、角膜の再生技術の開発、(5)血液分野では、ミニ移植の検証、活性化CD−34によるDLIの開発、(6)移植技術では、基礎医学的なメカニズムを解明し、臓器の保存液の改良等、新たな医療技術の開発を目指す。
(2) 新たな医療技術の実用化に必要な品質管理・品質保証に関する研究
 感染性ウイルスの迅速・高感度検出法の開発を行い、細胞変性を指標とする方法に比べて非常に高感度に感染性ウイルスを検出できることを明らかにしたところであるが、今後は総合的に再生医療技術の安全性を担保する方策を開発する。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 事前評価、中間評価ともに実施されており、より効率的な研究が行われるように検討がなされている。

(5)事業の概略図

厚生科学研究(再生医療分野)における成果と今後の計画

図


B. 評価結果

(1)必要性
 近年の科学技術の急速な進展に伴い、ヒトの体細胞が有する自己修復能力のメカニズムを応用する再生医療、移植医療の発展に関する期待は高く、実際に本研究事業の中からも、「骨髄細胞移植による血管新生療法」や「難治性眼疾患に対する羊膜移植術」などが高度先進医療に認められるなど、新たな医療技術を生み出している。
 今後もこの分野で新たな医療技術の開発を行い、かつ、開発された医療技術が実際の医療現場で安全に利用されるために具体的な基準作りをおこなう必要がある。

(2)有効性
 この厚生労働科学研究費補助金においては、1研究課題あたりの金額は平均約3800万円であり、適正な規模の研究が効率的に実施されている。
 評価方法についても適切に整備され、評価委員会が最新の知見に照らした評価をおこない、研究費が配分されていることより、効率性、妥当性は高いと考えられる。
 限られた予算の中で、公募した研究課題から約2割の課題を採択し、研究を実施することにより、必要性、緊急性が高く、予算的にも効率的に研究課題が採択され、研究が実施されていると評価できる。
 医学の進歩の一助となっていることが、論文発表、特許申請として現れていると同時に、現行医療の改善のために新たな医療技術を生み出している。
これまで達成された成果・今後見込まれる効果
(1) 新たな再生医療技術の開発
(a) 骨・軟骨分野:自家骨の有効な保存法開発のために新規デバイスを開発。さらには自家骨髄細胞から分化させた骨・軟骨細胞による膝関節症、股関節症、歯槽膿漏、下顎骨損傷に対する治療法の開発を始め、すでに臨床研究を始めている。増殖が現状では困難な間葉系幹細胞の増殖法を確立し、産業化に取り組む。
(b) 血管分野:骨髄細胞を用いた血管新生療法の基礎、臨床に関する研究の推進を図るとともに肝細胞増殖因子を用いた難治性血管障害の治療に関する研究が臨床応用され良好な成績を収めており、平成15年には「骨髄細胞移植による血管新生療法」が高度先進医療として認められた。今後は、ヒト幹細胞を用いた心筋梗塞を中心に有効な治療法を確立するとともに、そのメカニズムについての解明も進める。
(c) 神経分野:平成12年度からの研究により確立した神経幹細胞の単離、分化、増殖機構の解明に基づき、動物実験においてパーキンソン病モデル動物にて有効な治療成績を得ている。平成15年度から臨床応用に向けた取り組みを行う。
(d) 皮膚・角膜分野:同種皮膚の無細胞化マトリクスを用いた臨床研究を行い、これまで困難であった難治性皮膚潰瘍、熱傷等の疾患に対し良好な成績を収めている。今後は発汗能や発毛能等を備えた機能的な皮膚を、幹細胞を用いて開発し、より機能的な移植用皮膚および毛髪再生の開発に努める。
 角膜に関しては、「難治性眼疾患に対する羊膜移植術」が高度先進医療として認められており、今後は再生表層結膜について動物実験を行い、臨床応用へとつなげる。
(e) 血液分野:機能障害に陥った自己造血幹細胞を他家幹細胞を用いた治療成績(さい帯血移植、末梢血幹細胞移植、ミニ移植)のエビデンスを得ることが出来た。今後は、造血系の疾患のみならず、固形腫瘍も念頭においた治療成績向上のための造血幹細胞移植技術の革新を目指す。
(f) 移植技術:移植技術に関しては、新たな技術の開発(臓器保存液の開発等)を目指すとともに、新たな移植ルール検討のための研究(新ABOルール)を行っている。

(2) 新たな医療技術の実用化に必要な品質管理・品質保証に関する研究
 再生医療をより安全に行うための取組としては、品質、安全性評価技術を確立するために、微量ウイルス等の濃縮法を開発した。今後は、新たなに開発された医療技術の品質管理・品質保証が行われ、実際の医療現場において安全に実施されるよう総合的な検討を行い、必要な基準を検討する研究を開始する。

(3)計画性
 平成12年度より再生医療分野の研究事業が行われており、現在までに、「骨髄細胞移植による血管新生療法」や「難治性眼疾患に対する羊膜移植術」などの新しい医療が生み出されてきたところ。
 現在、世界的な動向として、新たな医療技術である再生医療特有の環境に合致した安全性や有効性の担保の必要性が求められているところであり、今後は、新たな医療技術の開発に取り組むと同時に、再生医療技術の品質保証に資する研究を推進する予定としている。

(4)効率性
 いずれの事業においても、研究課題の目標の達成度は高く、国際的な水準に照らし合わせても有効な研究が推進されている。
 再生医療分野に関しては、国際的にみても学術的な新規性の高い研究が多く実施され、世界にひけをとらない研究を実施している。
 これらの研究とその成果は、我が国に新たな医療技術をもたらし、先進医療である臓器、造血幹細胞移植のより高いレベルを保つためにも大きな貢献をおこなっているものと考える。

(5)その他
 本事業では、これまでに、世界にひけをとらない再生医療技術の開発、臓器・造血幹細胞移植のより高いレベルの保持に寄与してきたが、今後は、研究水準の向上や、患者を取り巻く医療環境の変化にあわせて、行政ニーズと学術的な問題点とを十分に把握した上で、効率的に研究を進める必要があると思われる。


C. 総合評価

 自己組織の自律的な修復能力を高めることによる治療方法の実現を目指す再生医療分野においては、世界のレベルを常に意識し、高いレベルの研究を実施し、臨床応用に結びつけるよう努力する必要があり、また、現在行われている臓器移植・骨髄移植の改良に寄与できる調査・研究も継続して行われていく必要がある。
 本事業では、すでに新たな医療技術の開発(「骨髄細胞移植による血管新生療法」「難治性眼疾患に対する羊膜移植術」)において実績を持つところであるが、現在も、新たな技術開発への取り組みや、新たな医療技術の品質確保・品質保証を組み合わせて、効率的に研究を進めており、今後も、再生医療の推進や、臓器移植・骨髄移植の改良に寄与できるものと考えられる。
 なお、本事業がさらなる貢献をできるよう、評価体制の強化についても常に検討をおこなうべきである。


2−2) 疾患関連たんぱく質解析研究
事務事業名 疾患関連たんぱく質解析研究
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
 医薬品開発のシーズとなる疾患関連たんぱく質を発見し、その知的財産権を確保することは、激しい国際競争が繰り広げられている医薬品産業の今後の発展に必要不可欠である。
 このため、高血圧、糖尿病、がん、痴呆等を対象に、産学官が連携して、大規模かつ集中的に疾患関連たんぱく質を同定し、データベース化を行う基盤的研究、医療機関からの提供サンプルの採取・保存方法や効率的なハイスループット分析方法などの基盤技術を確立するための研究、疾患関連たんぱく質のデータベース構築に必要なバイオインフォマティクスに係る研究などを進め、国際的に競争力のある医薬品開発のシーズの探索を図る。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
  4,300(補正) 500 662 662

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 既に、スイス、ドイツ等欧米諸国では、疾患からのアプローチとしてのプロテオミクス研究を国家的規模のプロジェクトとして、大量の予算を投入している状況にあるが、我が国においては、欧米のような大規模かつ集中的な疾患関連たんぱく質に関する研究はいまだになく、また、多額の費用を要することなどから企業単独で取り組むことも困難である。
 このような状況を踏まえ、我が国においても、産学官の強力な連携のもと、患者と健常者における疾患に関連した、たんぱく質の量と種類の違いを同定するための大規模な基盤整備を国家戦略として進める必要がある。
他省との連携
 本研究事業は、新薬のシーズ開発を目的として、ヒトの疾患という観点からのアプローチを行うプロテオミクス研究であり、他に類似の研究事業は認められない。なお、研究の進捗に応じて必要があると認められる場合には、関係各省との連携について検討する。
期待される成果、波及効果、主な成果と目標達成度
 たんぱく質解析研究の進捗は、我が国の創薬研究の活性化につながり、医薬品産業がスパイラル的に発展することにより、日本の医薬品産業の国際的競争力が強化されるとともに、日本国内はもとより世界の患者に質の高い医薬品を提供することが可能となる。
 また、多数の最新鋭機器を用いる大量かつ高効率のたんぱく質解析技術及び対応する情報処理解析技術等の最先端の科学技術・産業分野における我が国の技術水準の向上、さらには層が薄いと言われる我が国のプロテオミクス研究やバイオインフォマティクスに関わる人材の育成に資するものである。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 前年度の総合科学技術会議において、他省庁のプロジェクトとの連携を考慮するよう留意事項で求められたところである。しかし、本研究事業は、創薬基盤を強化し画期的な医薬品の開発を推進することを目的として、ヒトに限定して疾患に関連したたんぱく質に係るプロテオミクス研究を行う事業であり、マウス等他の動物も含めた一般的なたんぱく質の基本構造を解析する文部科学省の「タンパク3000」等のプロジェクトとは明確に異なるものである。
 本研究事業は、国立医薬品食品衛生研究所、国立高度専門医療センター等医療機関及び製薬企業から構成される指定型のプロジェクトである。これまでに、関係機関・企業との間で知的財産権の帰属・成果の配分等も含めた共同研究契約を結び、産学官共同による運営・実施体制を整備するとともに、サンプルの採取・管理から前処理、質量分析、創薬ターゲット探索用データ解析までを一括管理するシステムを構築し、運営を開始したところである。
 なお、本研究事業は全て指定型のプロジェクトであり、従来より公募は一切行っていない。また、知的財産権については、本プロジェクト終了後一定期間が経過した後、関係者と協議の上、その成果を対外的に公表することとしている。

(5)事業の概略図

疾患関連たんぱく質解析プロジェクトの概要

 官民共同プロジェクトによる最新鋭の質量分析計の集中配備、医療機関の協力の下、我が国の主要な疾患である高血圧、糖尿病、がん、痴呆等の患者と健康な者との間のたんぱく質の種類・量の集中的な解析・同定、疾患関連たんぱく質に関する創薬基盤データベースの構築により、画期的な医薬品の開発に貢献する。

事業の概略図
企業による画期的新薬のシーズの発見


B. 評価結果

(1)必要性
 既に欧米諸国では、疾患からのアプローチとしてのプロテオミクス研究に国家的規模のプロジェクトとして取り組みに着手しているが、我が国においては、欧米のような大規模かつ集中的な疾患関連たんぱく質に関する研究はない。また、多額の費用を要することなどから企業単独で取り組むことも困難である。このため、我が国においても産学官の連携のもと、患者と健康な者との間で種類等が異なるたんぱく質を同定し、これに関するデータベースの整備を図ることにより、画期的な医薬品の開発を促進する必要がある。

(2)有効性
 本研究事業の推進にあたっては、国立医薬品食品衛生研究所、国立高度専門医療センター等の医療機関、製薬企業からなる共同研究体制を構築し、大規模かつ集中的な疾患関連たんぱく質に係るハイスループット解析の実現等効率的な事業運営を図るとともに、本研究に関する知見と経験を有するプロジェクトリーダーを置き、その下に独自の倫理審査委員会や部門別実施組織を編成するなど、産学官が連携した有効な共同実施体制が構築されている。

(3)計画性
 本研究は、平成15年度から開始した、産学官連携で実施する共同研究である。これまで産学官共同による事業運営・実施体制を整備するとともに、サンプルの採取・管理から前処理、質量分析、創薬ターゲット探索用データ解析までを一括管理するシステムが構築された。今後は、これらを基盤にして、生体試料分析のための前処理等の研究手法や技術の開発も進めながら、共同研究体制を構築した医療機関と協力して本格的に網羅的な疾患関連たんぱく質解析を進め、データベース構築が本格化する予定であるなど、計画性をもって研究が進められている。

(4)効率性
 創薬研究の活性化につながり、我が国における医薬品産業がスパイラル的な発展を行うことにより、日本の医薬品産業の国際的競争力が強化されるとともに、国内はもとより世界の患者に質の高い医薬品を提供することを目標としており、これらの目標に対する寄与によって達成度が示される。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 欧米諸国では既に疾患からのアプローチとしてのプロテオミクス研究に国家的規模のプロジェクトとしてその取り組みに着手しているが、我が国においては欧米のような大規模かつ集中的な疾患関連たんぱく質に関する研究はない。また、多額の費用を要することなどから企業単独で取り組むことも困難である。このため、我が国においても産学官の連携のもと、患者と健康な者との間で種類等が異なるたんぱく質を同定し、これに関するデータベースの整備を図ることにより、画期的な医薬品の開発を促進する必要がある。
 本研究は我が国で初めての産学官が連携した大規模かつ集中的な疾患関連たんぱく質に関する研究であり、これまでに産学官共同による事業の運営・実施体制等を整備するとともに、ヒト試料の採取・管理から前処理、質量分析、創薬ターゲット探索用データ解析までを一括管理するシステムを構築したことは評価できる。
 今後、生体試料分析等研究手法や技術のさらなる開発を進めつつ、引き続き関係機関との密接な連携の下、疾患関連たんぱく質のハイスループットの集中解析を一層推し進めることにより、我が国における医薬品産業の国際競争力の強化が図られ、産業発展の原動力であるイノベーションが次々と生み出されるとともに、国内はもとより世界の患者に質の高い医薬品が提供されることを期待したい。


2−3)萌芽的先端医療技術推進研究

i ナノメディシン
事務事業名 萌芽的先端医療技術推進研究経費(ナノメディシン分野)
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(一部新規)
 超微細技術(ナノテクノロジー)の医学への応用による非侵襲・低侵襲を目指した医療機器等の研究・開発を推進し、患者にとって、より安全・安心な医療技術の提供の実現を図る。具体的にはナノテクノロジーを用いた、より精密な画像診断技術の開発、生体適合性の高い新材質の開発、より有効性・安全性の高い医療機器・医薬品の研究開発等以下の具体的な目標に関して研究を行う。
超微細画像技術(ナノレベル・イメージング)の医療への応用
微小医療機器操作技術の開発
薬物伝達システム(ドラッグ・デリバリー・システム)への応用
がんの超早期診断・治療システムの開発
 このうち、今年度新設するがんの超早期診断・治療システムの開発(要求中)については、医薬工連携を前提とし、PET等の画像診断装置やナノメディスン(DDS)による分子イメージングの手法を組み合わせ展開する研究を公募し、がんの画期的な診断・治療手段の速やかな実用化を狙う。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
0 1,384 1,203 1,303 2,403

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 総合科学技術会議における「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」の中で、超微細技術(ナノテクノロジー)分野は国家的・社会的課題に対応した研究開発の分野として、特に重点を置くべき4分野に挙げられている。
このようなことから、本事業ではナノテクノロジーの医学への応用による非侵襲・低侵襲を目指した医療機器等の研究・開発を推進し、患者にとって、より安全・安心な医療技術の提供の実現を図る。これにより、健康寿命の延伸を実現するとともに、萌芽的先端医療技術の研究開発を推進することで我が国の医療機器分野の技術革新を促すことを目的とする。
他省との連携
 研究課題の重複、分野の偏り等を防ぐため、総合科学技術会議に設置されたナノメディスン分野の府省連携会議等を活用し、関係省庁と情報交換を十分に行い、当省と関係省庁の施策が効果的に実施されるよう、適切な連携を図ることとする。
期待される成果
 期待される成果・波及効果:超微細技術(ナノテクノロジー)の医学への応用による非侵襲・低侵襲を目指した医療機器等の研究・開発を推進し、患者にとって、より安全・安心な医療技術の提供を実現させる。
 主な成果・目標達成度:心筋トロポニンの結晶構造の分子イメージング化の成功、ナノテク技術を応用した埋込型突然死防止装置の開発の進展、経皮的インシュリン投与を可能にするパッチの動物実験の成功等、着実に成果をあげている。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 前年度総合科学技術会議の施策評価における留意事項の中で、ナノテク技術導入促進のために、医薬工連携及び関連分野との連携を一層強化すべきとの指摘があった。この指摘に対し本事業では、17年度より医薬工連携型の研究枠を新設(要求中)することによる連携の強化を図ると同時に総合科学技術会議に設置されたナノメディスン分野の府省連携会議等を活用し、関係省庁と情報交換を十分に行い、当省と関係省庁の施策が効果的に実施されるよう、適切な連携を図ることとする。
 また、事前・中間・事後評価への取り組みとして、新規研究課題の採択については、研究者への研究課題の方向性を周知徹底し、適切な事前評価を実施することにより、レベルの高い研究課題を採択するようにしている。また、継続課題に対しては、中間・事後評価を厳正に実施することにより一定水準以上の研究を継続させることとする。

(5)事業の概略図

ナノメディシンプロジェクト
 超微細技術(ナノテクノロジ−)の医学への応用による非侵襲・低侵襲を目指した医療機器等の研究・開発を推進し、患者にとってより安全・安心な医療技術の提供の実現を図る。

ナノメートル単位 超微細技術を用いた医療技術開発
事業の概略図
5〜10年後の実用化を目途に研究推進

超微細画像技術(ナノレベルイメージング)の
医療分野への応用
(例)・ たんぱく質の直接描出による高精度な診断
たんぱく質の構造を基にした創薬技術の開発

医療機器操作技術の開発
(例)・ 微小カテーテル・内視鏡等の制御技術開発

ナノレベル・ターゲッティング(薬物伝達システム)
(例)・ 薬物を内包することのできる高分子粒子を開発

その他 独創的な医療技術の開発
(例)・ 既存の医療機器に様々な特性・機能を付与する等生体親和性の高い素材の開発


B. 評価結果

(1)必要性
 総合科学技術会議においても強調されているように、ナノテクノロジーは、今後、非常に重要になる基盤的技術であることから、この5年〜10年の間に集中的にナノテクノロジーの研究開発を進めることで我が国が世界的にも優位な立場に立つことが重要とされている。なかでも、医療分野は、ナノテクノロジーの応用分野として非常に期待されている分野である。当該事業では、ナノテクノロジーを医療分野に活かす研究として(1)超微細画像技術(ナノレベル・イメージング)(2)微小医療機器操作技術の開発(3)薬物伝達システム(ドラッグ・デリバリー・システム)への応用(4)がんの超早期診断・治療システムの開発を4つの柱と位置づけており、より効果的で侵襲性の低い診断・治療機器の開発を目指すものである。

(2)有効性
 「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」を踏まえ、本研究事業に関する評価指針を策定し、専門家等による評価(事前評価、中間・事後評価)を実施している。

(3)計画性
 ナノメディシン分野における国際競争力強化のために国家事業として着実に推進していくことが極めて重要である事業に対しては、重点的資金による指定型の研究として推進することとしている。また同時に、競争的資金による公募型研究課題を採択することにより、分子イメージング技術を用いたがんの超早期診断・治療システム等の新しい医療技術の創生を促す。

(4)効率性
 医薬品産業ビジョン(2002年8月)及び医療機器産業ビジョン(2003年3月)において、国際競争力強化のためのアクション・プランが打ち出されたところである。本研究事業は、この両アクション・プランに基づいて、画期的な医薬品や医療用具の研究開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ることとしており、これらの目標に対する寄与によって達成度が示される。これにより、効率的な運営がなされていると考えられる。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 ナノテクノロジーという我が国が国際的に優位性を持っている技術をライフサイエンス分野の医療に応用するという取り組みであり、異分野との融合研究という観点からも、その意義は高い。また、研究テーマの選定も将来に向けた応用の基礎となる分野であり適切である。研究実施体制についても、民間企業との連携が図られており、より安全・安心な医療技術の提供の実現、医薬品及び医療機器産業における国際的競争力の強化等の成果が期待される。


ii トキシコゲノミクス
ii−1 【トキシコゲノミクス:公募分】
事務事業名 萌芽的先端医療技術推進研究経費(トキシコゲノミクス分野)(仮称)
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
 今世紀初頭のヒト遺伝子の全解読等のゲノム科学の進展を受けて、ゲノム創薬に関する研究競争が国際的に激化している。このような状況において、本研究事業により、医薬品やその候補化合物(以下「医薬品候補化合物等」という)について、迅速・効率的に安全性(毒性・副作用)を予測する基盤技術であるトキシコゲノミクス研究を強力に押し進め、バイオテクノロジーを活用したゲノム創薬にかかる研究のより一層の推進及び強化が必要となっている。
 具体的には、医薬品の研究開発の初期段階で、将来の副作用発症の可能性をある程度予測できれば、製薬企業は広範な非臨床試験や臨床試験を行う前に、新規化合物の安全性を評価することができ、より安全性が高い医薬品を迅速かつ効率的に上市することが可能となる。
 そのため、ゲノム科学やバイオインフォマティクスを活用した医薬品候補化合物等の選定のための新規スクリーニング技術の開発を目的として、多様な研究者の有する資源や研究手法を公募により広く集め、医薬品候補化合物等に関する動物試験及び臨床試験に関するデータや、DNAチップを用いた医薬品候補化合物等投与後の動物及びヒト細胞等のmRNAの発現変化に関するデータを収集し、各種データの相関関係をバイオインフォマティクスを活用し解析等することにより、創薬のさらなる効率化、迅速化を目指す。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
710(新) 525 484 1,177(指定分との合算)

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 ゲノム科学を初めとするライフサイエンス分野は、米、英、独等の先進国において経済発展の牽引分野としての国家戦略として位置づけられ、重点領域化して取り組みを強化しているところである。こうした中で、ゲノム創薬の激しい国際競争に伍していくためには、医薬品候補物質から迅速かつ効率的に安全性(毒性・副作用)を予測するための技術、すなわち安全性予測技術の開発を行い、我が国の創薬技術の向上を図ることが重要である。本研究事業では、ゲノム科学やバイオインフォマティクスを活用した医薬品候補化合物等の選定のための新規スクリーニング技術の開発を目的として、多様な研究者の有する資源や研究手法を公募により広く集め、トキシコゲノミクスに関する研究を積極的に押し進め、他国に先んじる日本発の画期的な新薬の開発を強力に推進していく必要がある。
他省との連携
 研究の進捗に応じて必要があると認められた場合には、関係各省との連携について検討する。
期待される成果、波及効果、主な成果と目標達成度
 ライフサイエンス分野における研究が進展し、ゲノム科学を用いた画期的な医薬品開発等が期待されている中で、本プロジェクトにより、医薬品開発の促進、安全性確保の基盤整備の両面に寄与するトキシコゲノミクス分野の研究が促進され、我が国における医薬品産業の国際競争力の強化が図られる。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 本研究事業では、副作用回避の基本的手法の開発等、萌芽的要素の強い研究開発に関して、国際的な研究の動向等も踏まえ様々な研究者が有する知見を広く集積することが望まれるため公募型研究で実施している。これまでに、ヒト組織に特異的に発現する薬物トランスポーター遺伝子の発現変化の解析や免疫抑制剤等の薬剤と相互作用をするたんぱく質の解析法の確立等の研究が進んでいるところである。
 新規採択課題については、研究者への研究課題の周知徹底、適切な事前評価を実施することにより、レベルの高い研究課題を採択するようにしている。また、継続課題に対しては、中間・事後評価を厳正に実施することにより、質の高い研究を継続させることとする。

(5)事業の概略図

トキシコゲノミクス・プロジェクト(公募)の概要

トキシコゲノミクス・プロジェクト(公募)の概要の図


B. 評価結果

(1)必要性
 ゲノム科学を初めとするライフサイエンス分野は、米、英、独等の先進国において経済発展の牽引分野としての国家戦略として位置づけられ、重点領域化して取り組みを強化しているところである。我が国においても、国家戦略としてミレニアムプロジェクトによる疾患遺伝子の解明、メディカルフロンティアによる疾患タンパク質の解明を押し進めることにより、画期的な医薬品開発等が期待されているところである。
 この中で、ゲノム創薬の激しい国際競争に伍していくためには、ミレニアムプロジェクトをはじめとするこれまでのゲノム科学の進展により蓄積された成果を踏まえ、医薬品候補物質から迅速かつ効率的に安全性(毒性・副作用)を予測するための技術、すなわち安全性予測技術の開発を行い、我が国のゲノム創薬技術の向上を図ることが重要である。
 本研究事業は、ゲノム科学やバイオインフォマティクスを活用した医薬品候補化合物等の選定のための新規スクリーニング技術の開発を目的としており、多様な研究者の有する資源や研究手法を公募により広く集め、トキシコゲノミクスに関する研究を積極的に押し進め、他国に先んじる日本発の画期的な新薬の開発を協力に推進していく必要がある。

(2)有効性
 厚生労働省においては、本研究事業について、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」を踏まえ、本研究事業に関する評価指針を策定し、ヒトにおける副作用の早期予測、臨床における医薬品の予期しない副作用発現率の低下、より安全性の高い医薬品の創設、さらには創薬の一層の効率化等を図るため、研究課題を専門家等により、厳正に評価(事前評価、中間・事後評価)を実施しているところ。

(3)計画性
 本研究事業は、ゲノム科学を活用し、医薬品の候補化合物等について、迅速・効率的に安全性(毒性・副作用)を予測する基盤技術に関する研究である。多様な研究者の有する資源や研究手法を広く集めるため、競争的資金による公募型研究課題を採択し、トキシコゲノミクス研究を強力に推し進め、バイオテクノロジーやバイオインフォマティクスを活用したゲノム創薬につながる研究の推進及び強化を行う。

(4)効率性
 医薬品候補物質から迅速かつ効率的に安全性(毒性・副作用)を予測するための技術、すなわち安全性予測技術の開発するトキシコゲノミクス研究を推進し、我が国のゲノム創薬技術の向上を図ることを目標としており、それに対しての寄与によって達成度が示される。これにより効率的に事業が進んでいる。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 現在、医薬品の開発においては、研究開発の初期段階における動物実験、それに引き続き行われる臨床試験において最終的な安全性を確認することとなるが、この過程で、多大な時間を要するとともに、多数の候補物質が安全性等の問題により製品化が断念される等、時間及び開発費の損失が生じているのが現状である。
 本研究事業では、すでにヒト組織に特異的に発現する薬物トランスポーター遺伝子の発現変化の解析や免疫抑制剤等の薬剤と相互作用をするたんぱく質の解析法の確立等着実に成果を挙げているところである。今後とも、我が国におけるゲノム創薬技術の向上を一層推進するため、このトキシコゲノミクス研究事業の進展に期待したい。


ii−2【トキシコゲノミクス:指定分】
事務事業名 萌芽的先端医療技術推進研究経費(トキシコゲノミクス分野)
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
 医薬品の研究開発の初期段階で、将来の副作用発症の可能性をある程度予測できれば、製薬企業は広範な非臨床試験や臨床試験を行う前に、新規化合物の安全性を評価することができ、より安全性が高い医薬品を迅速かつ効率的に上市することが可能となる。
 そのため、国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)と製薬企業が共同で、実験動物(ラット)、ラット初代肝細胞及びヒト培養肝細胞を用いて、医薬品候補化合物の暴露実験を行い、主に肝臓・腎臓における遺伝子発現変化を網羅的に解析する。解析された遺伝子情報を基にデータベースを構築し、バイオインフォマティクス技術を活用して、遺伝子の変異と副作用の発生を関連づけ、医薬品候補化合物の安全性を従来の毒性試験よりも早期に評価・予測するシステムを開発する。これにより初期の創薬過程における医薬品候補化合物の選定のための研究に資する。さらに、安全性評価(リスクアセスメント)に用いることができるデータベースを構築し、創薬のさらなる効率化、迅速化を目指す。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
746(新) 746 692 1,177(指定分との合算)

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 ゲノム科学を初めとするライフサイエンス分野は、米、英、独等の先進国において経済発展の牽引分野としての国家戦略として位置づけられ、重点領域化して取り組みを強化しているところである。こうした中で、「ゲノム創薬」の激しい国際競争に伍していくためには、医薬品候補物質から迅速かつ効率的に安全性(毒性・副作用)を予測するための技術、すなわち安全性予測技術の開発を行い、我が国の創薬技術の向上を図ることが重要である。本研究事業では国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)を核として、国内製薬企業との連携の下に、医薬品の研究開発に必要な安全性予測技術の基盤整備を行うプロジェクトを積極的に推し進め、他国に先んじる日本発の画期的な新薬の開発を強力に推進していく必要がある。
他省との連携
 研究の進捗に応じて必要があると認められた場合には、関係各省との連携について検討する。
期待される成果、波及効果、主な成果と目標達成度(継続の場合)
 ライフサイエンス分野における研究が進展し、ゲノム科学を用いた画期的な医薬品開発等が期待されている中で、本プロジェクトにより、医薬品開発の促進、安全性確保の基盤整備の両面に寄与するトキシコゲノミクス分野の研究が促進され、我が国における医薬品産業の国際競争力の強化が図られる。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 前年度総合科学技術会議の施策評価における留意事項の中で、諸外国でも研究が進んでいる分野でもあり、製品化されているものもあるため、国際的な研究状況を考慮しつつ進める必要があるとの指摘があった。
 この指摘に対し本事業においては、実験動物(ラット)、ラット初代肝細胞及びヒト培養肝細胞を用いて、医薬品候補化合物暴露による遺伝子解析データ、毒性・副作用情報、病理学的・生理学的情報を集積した世界最高レベルの毒性データベースを構築し、ヒトにおける早期の副作用予測技術を実現しつつあるところである。
 一方、指摘された米国等における既存の毒性・副作用情報のデータベースは、内分泌攪乱物質や発がん性物質について急性毒性のみの評価を主としたものであり、本研究事業で構築しているような、150の医薬品候補物質を対象とし、28日間の長期慢性毒性評価を含む総合的データベースとは、規模の面からも目的の面からも全く異なるものであり、本研究事業の成果は極めて大きいものであると考えられる。

(5)事業の概略図

トキシコゲノミクス・プロジェクト(指定)の概要
 最新のゲノム関連技術を駆使して、世界的レベルの本格的な毒性データベースを構築し、医薬品開発の早期にヒトにおける副作用予測を可能にすることにより、開発効率を著しく向上させ、安全性及び有効性が高く世界に通じる新薬を早く患者に届けることに貢献する。

トキシコゲノミクス・プロジェクト(指定)の概要の図


B. 評価結果

(1)必要性
 ゲノム科学を初めとするライフサイエンス分野は、米、英、独等の先進国において経済発展の牽引分野としての国家戦略として位置づけられ、重点領域化して取り組みを強化しているところである。我が国においても、国家戦略としてミレニアムプロジェクトによる疾患遺伝子の解明、メディカルフロンティアによる疾患タンパク質の解明を押し進めることにより、画期的な医薬品開発等が期待されているところである。
 この中で、「ゲノム創薬」の激しい国際競争に伍していくためには、ミレニアムプロジェクトをはじめとするこれまでのゲノム科学の進展により蓄積された成果を踏まえ、医薬品候補物質から迅速かつ効率的に安全性(毒性・副作用)を予測するための技術、すなわち安全性予測技術の開発を行い、我が国の医薬品の開発力の向上を図ることが重要である。本研究事業では国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)を中核として、国内製薬企業との連携の下に、医薬品の研究開発に必要となる安全性予測技術の基盤整備を行うプロジェクトを積極的に押し進め、他国に先んじる日本発の画期的な新薬の開発を強力に推進していく必要がある。

(2)有効性
 厚生労働省においては、本研究事業について、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」を踏まえ、本研究事業に関する評価指針を策定し、ヒトにおける副作用の早期予測、臨床における医薬品の予期しない副作用の発現率の低下、より安全性の高い医薬品の創設、さらには創薬の一層の効率化等を図るため、研究課題を専門家等により、厳正に評価(事前評価、中間・事後評価)を実施しているところ。

(3)計画性
 本研究事業は、ゲノム科学を活用し、医薬品の候補化合物等について、迅速・効率的に安全性(毒性・副作用)を予測する基盤技術に関する研究である。そのため、着実な推進を図る観点から、国立医薬品食品衛生研究所と製薬企業の共同研究として実施しており、計画性をもって取り組んでいる。

(4)効率性
 医薬品候補物質から迅速かつ効率的に安全性(毒性・副作用)を予測するための技術、すなわち安全性予測技術の開発するトキシコゲノミクス研究を推進し、我が国のゲノム創薬技術の向上を図ることを目標としており、それに対しての寄与によって達成度が示される。これにより効率的に事業が進められている。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 現在、医薬品の開発においては、研究開発の初期段階における動物実験、それに引き続き行われる臨床試験において最終的な安全性を確認することとなるが、この過程で、多大な時間を要するとともに、多数の候補物質が安全性等の問題により製品化が断念される等、時間及び開発費の損失が生じているのが現状である。
 本事業において、国衛研及び国内の製薬企業と共同で、遺伝子発現変化データの精度管理、肝毒性を有する医薬品の遺伝子発現変換解析等を行うことにより、医薬品候補物質から安全性や有効性に優れた医薬品を選択するための技術である安全性予測技術の開発を行っている。今後とも、我が国における医薬品の開発力の向上を一層推進するため、このトキシコゲノミクス研究事業の進展に期待したい。


2−4)身体機能解析・補助・代替機器開発研究
事務事業名 身体機能解析・補助・代替機器開発研究経費
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課、障害保健福祉部企画課
関係課 老健局総務課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
 近年のナノテクノロジーを始めとした技術の進歩を基礎として、生体機能を立体的・総合的に捉え、個別の要素技術を効率的にシステム化する研究、いわゆるフィジオームを利用し、ニーズから見たシーズの選択・組み合わせを行い、新しい発想による機器開発を推進することが求められている。
 平成17年度においては、これまでの指定型研究に加え、脳機能解析装置等の身体機能解析、インテリジェント義肢等の身体機能代替、盲導犬ロボット等の身体機能補助の3分野において公募枠を新設(要求中)し、産学官の連携の下、画期的な医療・福祉機器の速やかな実用化を狙う。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
700(新) 700 1,900

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 国民の保健医療水準の向上に貢献していくためには、最先端分野の医療・福祉機器の研究開発を進め、臨床現場へ迅速に導入することが重要である。厚生労働省としては「より優れた」「より安全性の高い」我が国発の革新的医療機器の開発を通じて、保健医療水準の向上に貢献し、医療機器産業の国際競争力の強化を図るべく、有識者の意見をふまえ、平成15年3月31日に「医療機器産業ビジョン」を策定したところである。本研究事業は、本ビジョンの具現化の為に国が実施すべき施策である。
他省との連携
 必要に応じ文部科学省、経済産業省等と連携を取りながら、研究を進めていく。
期待される成果、波及効果、主な成果と目標達成度
 新しい発想による医療機器開発を推進し、画期的な医療機器が開発されれば、身体、臓器に不可逆的な障害が生じても、通常の生活機能を営むことが出来るようになる。なお、平成15年度から開始した5年間の指定研究については、先端に複数の手術用器具を装備する内視鏡的手術器具の基本概念の確立、超低エネルギー除細動法の基礎検討をシュミレーションで行う、高次脳機能障害診断のための誘発脳波等基礎データの収集等の成果が得られている。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
(1) 要素技術の開発だけでなく、機器の実用化の可能性について十分な検討を行い、課題を決定することが必要である。
 → 産学官連携の下、速やかな実用化を目指しており、本研究事業の採択については、実用化を促進する観点より、民間企業との共同研究を条件とする。
(2) 海外市場も視野に入れた課題決定が必要である。
 → 海外市場も視野に入れ、研究課題の採択を行う。

(5)事業の概略図

身体機能解析・補助・代替機器開発プロジェクト
人にやさしい機器の素早い開発を通じた経済活性化
 近年のナノテクノロジーを始めとした技術の進歩を基礎として、生体機能を立体的・総合的にとらえ、個別の要素技術を効率的にシステム化し、ニーズから見たシーズの選択・組み合わせを行い、新しい発想による機器開発を推進する。

既存の医療・福祉関連技術
画像診断機器(MRI、PET)
遠隔ロボットシステム
画像解析システム
生体センシング技術
放射線技術
新規技術の効率的な組み合わせ

民間企業・大学・ナショナルセンター
産学官連携による研究体制
医学・工学等の公的研究機関・大学・企業の融合
シーズ選択・統合
ナノテクノロジー、IT、バイオテクノロジー等
主な研究開発分野(例)
身体機能解析・補助機器
画像ガイド下手術ロボット等
低侵襲治療支援機器
身体機能代替機器
人工アクティブインプラント
(埋込型除細動器)
17年度の方向
昨年度からの指定研究に加え、広く公募型で産学官の連携を促す。

研究開発分野及びテーマ(例)
<身体機能解析分野> 分子イメージング、脳機能解析装置、被爆量低減型CT 等
<身体機能代替分野> 人工臓器、インテリジェント義肢、人工感覚器 等
<身体機能補助分野> 盲導犬ロボット、介護労力低減装置 等
公募による
参画
→
民間企業


B. 評価結果

(1)必要性
 国民の保健医療水準の向上に貢献していくためには、最先端分野の医療・福祉機器の研究開発を進め、臨床現場へ迅速に導入することが重要である。厚生労働省としては「より優れた」「より安全性の高い」我が国発の革新的医療機器の開発を通じて、保健医療水準の向上に貢献し、医療機器産業の国際競争力の強化を図るべく、有識者の意見をふまえ、平成15年3月31日に「医療機器産業ビジョン」を策定したところである。本研究事業は、この「医療機器産業ビジョン」における研究開発の考え方に沿ったものであり、行政的、専門的、学術的な意義は大きいと考える。

(2)有効性
 本研究事業の採択については、実用化を促進する観点より、民間企業との共同研究を条件としている。

(3)計画性
 本研究事業は、国として着実な推進を図る必要のある基盤的研究については、指定型で実施し、また、広く知見を集積し、産学官の連携を促進するための研究においては、評価委員会にて公募課題を計画的に設定し、募集を行う。

(4)効率性
 本研究事業により、画期的な医療・福祉機器が開発されれば、身体、臓器に不可逆的な障害が生じても、通常の生活機能を営むことが出来るようになり、社会・経済への貢献は大きいと考えられる。これにより、効率的な運営がなされていると考えられる。

(5)その他
 特になし。


C. 総合評価

 国民の保健医療水準の向上に貢献していくためには、最先端分野の医療・福祉機器の研究開発を進め、臨床現場へ迅速に導入することが重要である。厚生労働省としては「より優れた」「より安全性の高い」我が国発の革新的医療機器の開発を通じて、保健医療水準の向上に貢献し、医療機器産業の国際競争力の強化を図るべく、平成15年3月31日に「医療機器産業ビジョン」を策定している。本研究事業は、この「医療機器産業ビジョン」における研究開発の考え方にそったものであり、行政的、専門的・学術的な意義は大きいと考える。また、産学官連携の下、速やかな実用化を目指しており、画期的な医療機器が開発されれば、身体、臓器に不可逆的な障害が生じても、通常の生活機能を営むことが出来るようになり、社会・経済への貢献は大きいと考えられる。



4)臨床応用基盤研究事業
4−1)基礎研究成果の臨床応用推進研究領域
事務事業名 臨床応用基盤研究
基礎研究成果の臨床応用推進研究経費
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要(継続)
 我が国で生み出された基礎研究の成果を臨床現場に迅速かつ効率的に応用していくために必要な技術開発、探索的な臨床研究等を推進するとともに、画期的かつ優れた治療法の確立を目指すことを目的とする。具体的には、主任研究者又は分担研究者が出願している薬物又は医療技術等の基本特許を活用して、画期的かつ優れた治療法として3年以内に探索的な臨床研究に着手しうることが明らかな薬物又は医療技術に関する研究を公募条件としている。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
1,250(新) 1,100 1,034 1,034

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 我が国においては、企業が治験等の実用化直前の研究に資金を多く向ける傾向があり、基礎研究成果の実用化の可能性を見極める研究については投資が少ない。このような基礎的な段階に留まっている研究成果について実用化の可能性を探り、有用な医薬品・医療技術等を提供する機会を増加させるため、探索的な臨床研究、先端技術の臨床周辺技術に関する研究を推進することが必要である。
他省との連携
 関連分野における省庁間の連携の重要性に鑑み、プロジェクト実施上、必要な連携体制について検討を行うこととしている。
期待される成果・波及効果
 基礎的な段階に留まっている研究成果について、実用化を促進することにより、国民に有用な医薬品・医療技術等を提供する機会が増加することが見込まれる。
主な成果・目標達成度
 平成14年度から開始された事業であるが、すでにいくつかの研究においては、基礎研究成果の臨床応用が開始されており成果が期待される。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 前年度総合科学技術会議の施策評価における留意事項の中で、文部科学省の「がんトランスレーショナル研究」などとの情報交換・推進体制などの連携の必要性を指摘されており、関連分野における省庁間の連携の重要性に鑑み、プロジェクト実施上、必要な連携体制について検討を行うこととしている。
 また、事前・中間・事後評価への取り組みとして、新規研究課題の採択については、研究者への研究課題の方向性を周知徹底し、適切な事前評価を実施することにより、レベルの高い研究課題を採択するようにしている。また、継続課題に対しては、中間・事後評価を厳正に実施することにより一定水準以上の研究を継続させることとする。

(5)事業の概略図

基礎研究成果の臨床応用推進
基礎から臨床への橋渡し
新領域研究におけるトランスレーショナルリサーチ

事業の概略図
疾患Aの原因は
脳内の物質Bの不足
物質Bを効率的に人の疾病部位に送り込む研究
疾患Aに対する医薬品・
医療技術の実用化促進


B. 評価結果

(1)必要性
 日本の生命科学基礎研究の進歩は目覚ましく、その成果は欧米に劣るものではないが、それらを応用する保健医療分野の臨床研究は、一部に特出した研究があるものの、欧米に比べて一般に活発ではない。このため、治療技術等として医療現場において実用化できる可能性のある画期的な基礎研究成果が、日本で実用化されるよりも前に、欧米で実用化される例も見られる(例:乳がんに対する画期的な抗がん剤であるハーセプチン)。
 また、日本においては、企業が治験等の実用化直前の研究に研究費を多く向ける傾向があり、基礎研究成果の実用化の可能性を見極める研究については投資が少ないのが実態である。
 このような中、本研究事業により基礎的な段階に留まっている研究成果について実用化が促進され、国民に有用な医薬品・医療技術等を提供する機会が増加することが見込まれる。こうしたことから、基礎研究成果を臨床に応用することについて、その有用性の見極めや臨床応用に際しての課題を解決することを目的とした研究を推進するものである。

(2)有効性
 「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」を踏まえ、本研究事業に関する評価指針を策定し、専門家等による評価(事前評価、中間・事後評価)を実施している。

(3)計画性
 基礎レベルでとどまっている成果の臨床応用を促進するため、応募する研究者が薬物又は医療技術等の基本特許を持ち、その特許を活用して画期的かつ優れた治療法として研究期間内に探索的な臨床研究に着手しうることができる研究を公募型として採択している。

(4)効率性
 基礎的な段階に留まっている研究成果の実用化を促進することにより、国民に新たな有用な医薬品・医療技術等を提供する機会が増加することを目標としており、それに対しての寄与によって達成度が示される。これにより効率的な運営がなされていると考えられる。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 近年、医薬品の研究開発を巡っては製薬企業間によるグローバルな競争が激化しているが、残念ながら、創薬環境として我が国の市場は国際的に魅力的なものとはなっておらず、我が国における医薬品等産業の国際競争力の弱体化が懸念されている。さらに、日本においては、企業が治験等の実用化直前の研究に資金を多く向ける傾向があり、基礎研究成果の実用化の可能性を見極める研究については投資が少ないのが実態である。
 このような状況において、基礎的な段階に留まっている研究成果について実用化を促進することにより、国民に有用な医薬品・医療技術等を提供する機会が増加することが見込まれる。こうしたことから、基礎研究成果を臨床に応用することについて、その有用性の見極めや臨床応用に際しての課題を解決することを目的とした研究を推進することは重要と認められる。
 平成14年度から開始された事業であるが、すでにいくつかの研究においては、基礎研究成果の臨床応用が開始されており成果が期待される。
 今後については、更なる努力を重ね、着実に成果をあげられるよう期待したい。


4−2)治験推進研究領域
事務事業名 臨床応用基盤研究経費(治験推進研究)
担当部局・課主管課 研究開発振興課
関係課  

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
 医薬品が上市されるためには治験が不可欠であるが、我が国の状況を見ると、治験届出数は年々減少し、我が国で治験が実施されない状況(治験の空洞化)にある。このような治験の空洞化は、(1)患者にとっては、国内での治験が遅れることにより、最先端の医療(海外で流通している新薬等)へのアクセスが遅れる、(2)製薬産業等にとっては、国内企業の研究開発力が低下するほか、新事業創出、雇用創出といった面でマイナスである、(3)医療機関や医師等にとっては、技術水準のレベルアップが遅れるなど、我が国の保健医療水準や産業の国際競争力に対してマイナスの影響が大きい。
 とりわけ、欧米では標準的な医薬品・医療機器でありながら日本国民がアクセスできないものが多数存在していることは早急に対応すべき問題である。これらの医薬品等は海外における臨床データはあるが、日本人の特性を踏まえた安全性を確認するための臨床試験データがない状況にあり、新たに海外データを日本人に外挿するための橋渡しとして小規模な治験を日本で実施する等の必要がある。
 このような状況の下、平成15年7月より、薬事法改正の一つとして、医師が主導して治験を実施できる制度(医師主導治験)が新たに加えられた。この医師主導治験の活用により医療上必要な医薬品等の承認取得を促進することができる。このため、医師主導の治験を迅速かつ効率的に実施できる環境整備を進めることが重要である。
 以上のように、本研究事業は欧米で標準的な医薬品等に対する日本国民のアクセスを改善するため、医師主導治験の実施を支援する。また、治験の実施を通じて、質の高い治験症例数が速やかに確保されるような体制が整備されるよう、治験環境の充実を図るものである。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
850(新) 1,082 2,155

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 厚生労働省としては、欧米では標準的な医薬品等を迅速に日本国民に提供するだけでなく、我が国発の画期的な医薬品等を開発することが重要であると考えており、医薬品産業ビジョン、全国治験活性化3カ年計画等を策定し、治験インフラの整備等を提言している。本研究事業は、これらのビジョン、計画を具現化する重要な事業であり、国が率先して事業をすすめる必要がある。
期待される成果波及効果、主な成果と目標達成度
 研究課題については、臨床現場で必須であるが適用外で使用されている医薬品を日本医学会を通じて各学会から推薦を受けてリストアップし、その中から必要性、緊急性、実現可能性を勘案して選択する。
 17年度中に、10の医薬品について医師主導治験を開始することを目標とし、既に設立された治験促進センターと500を越える登録医療機関から成る大規模治験ネットワークを基盤として、選択された医薬品につき医師主導の治験として実施する。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 治験にかかる業務を科学的かつ効率的に実施するため、総合事務局として、治験促進センターを整備し、各疾患ネットワーク参加医療機関と密接な連携の下に、治験参加基準への適合性の確認、計画書の策定、治験データ管理等の事業を実施又は、支援する。

(5)事業の概略図

治験推進研究の充実

目標: 治験供給力の競争促進を通じて、治験期間の半減、質の向上、コスト低下を実現するとともに、国民に、世界最高水準の医薬品・医療機器を速やかに提供する。

事業の概略図


B. 評価結果

(1)必要性
 医薬品が上市されるためには治験が不可欠であるが、我が国の状況を見ると、治験届出数は年々減少し、我が国で治験が実施されない状況(治験の空洞化)にある。このような治験の空洞化は、(1)患者にとっては、国内での治験が遅れることにより、最先端の医療(海外で流通している新薬等)へのアクセスが遅れる、(2)製薬産業等にとっては、国内企業の研究開発力が低下するほか、新事業の創出、雇用の創出と言った面でマイナスである、(3)医療機関や医師等にとっては、技術水準のレベルアップが遅れるなど我が国の保健医療水準や産業の国際競争力に対してマイナスの影響が大きいと考えられる。
 したがって、画期的新薬の開発を促進し、患者に対して迅速に新薬を提供していくためには、我が国における治験環境の充実を図り新薬の開発に資する魅力ある創薬環境を実現していく必要がある。このため複数の医療機関からなるネットワークを形成し、質の高い治験が迅速にかつ適切な費用で行うことができるようになることは重要である。

(2)有効性
 治験推進研究(治験活性化プロジェクト大規模治験ネットワーク構想)は、平成14年10月に行われた総合科学技術会議における「平成15年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて」で、S評価を受けている。
 本事業に関して、全体的な管理・運営や評価等を実施する総括事務局を設置し効率化を図っている。

(3)計画性
 治験促進センターと500を越える医療機関からなるネットワークを通じて治験インフラの整備を行う。臨床現場で必須であるが、効能上は適用外の医薬品を日本医学会を通じてリストアップし、上記の大規模治験ネットワークにおいて医師主導の治験を実施する。さらに、現在実施している医師主導治験を引き続き実施するとともに、今後も新たに治験を開始する。

(4)効率性
 本事業における医師主導の治験によって、欧米で標準的な医薬品等がより迅速にわが国で使用できるようになると考えられる。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 医師主導の治験実施を通じ、欧米で標準的な医薬品等がより迅速にわが国で使用できるようになることは重要である。そのために、本研究を通じ、総合事務局としての機能をもつ治験促進センターと500を越える登録医療機関から成る大規模治験ネットワークが整備されたことは評価できる。今後は、医師主導治験の実施に加え、質の高い治験症例数が速やかに確保できるような治験環境の整備により一層努めるべきと考える。


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